「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」(第4回)議事録
日時:令和6年6月7日(金曜日)16時00分~17時40分【洲崎座長】 それでは、全員そろわれましたので、ただいまより第4回損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議を開催いたします。皆様方にはお忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
前回までと同様に、本日の模様もウェブ上でライブ中継をさせていただいております。議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定です。
本日はこれまで、メンバーの皆様から頂戴した御意見、御議論をいただいた内容を踏まえた報告書案につき事務局から御説明いただき、皆様に御議論をお願いしたいと思います。
それでは、報道の方々におかれましてはここまでとさせていただきたいと思います。御退室いただきますよう、よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
【洲崎座長】 それでは、議事を進めさせていただきます。まず、事務局からの説明をお願いいたします。
【三浦課長】 保険課長の三浦でございます。資料1-1が報告書案の本体、資料1-2が報告書案の添付資料の位置づけとなっており、資料1-2はこれまでの有識者会合における説明資料及び代理店に関する公表データで構成されています。
それでは、資料1-1を御覧ください。まず、1ページ目が目次になりますが、全体の構成として、大きく、「はじめに」と、「顧客本位の業務の徹底」「健全な競争環境の実現」「その他の論点」と「おわりに」の5つのパートで形成されています。
2ページ目は、本会議のメンバー表になります。
3ページ目から4ページ目にかけては「はじめに」となります。ここでは、1つ目のパラで損害保険の意義や損保会社の役割、2つ目から4つ目のパラで保険金不正請求事案と保険料調整事案の概要や主な要因、3ページ下のほうから4ページ目にかけて、金融庁の行政対応や、有識者会議の開催に至った背景、問題意識、そして、これまで有識者メンバーの皆様に幅広く御議論を行っていただいたこと、そして、本報告書はそうした議論を取りまとめたものであることについて記載しております。
5ページ目からは具体的な中身に入ります。まずはⅡ、顧客本位の業務の徹底になります。柱書きでは改めて保険金不正請求事案の背景について記載するとともに、今後の講ずるべき取組として御議論いただいた論点を大きく5つに分けて、5ページ目後半から13ページ目にわたって記載しております。
まずは、大規模代理店に対する指導等の実効性の確保になります。ここではまず、代理店は保険会社が基本的に指導等を行う仕組みとなっているが、大規模代理店との間では保険会社がそうした機能を発揮できず、代理店の品質向上が図られていなかったことが、違法または不適切な募集行為が多数認められる一因となった旨が記載されています。
6ページ目には、具体的な取るべき対応として、まず1つ目のパラでは、まずは損害保険会社から保険代理店に対する指導等が適切に行われるよう、その実効性を確保すべきこと、2つ目のパラでは、当局においても、損保会社による代理店に対する指導等の状況について、立入検査を通じて見ていくなどモニタリングを強化すること、3つ目のパラでは、その上で、損保会社による代理店に対する指導等に対する補完的な位置づけとして第三者評価の枠組みを設けることを検討すること、特に大規模代理店等に対して有効に機能するような仕組みや、それ以外の代理店の指導等においても活用できる物差し、評価基準を検討することや、評価基準や項目については、代理店等の関係者も含めて十分に検討する必要があることが記載されています。4つ目のパラでは、損保協会で実施している試験制度や継続教育の高度化・厳格化、5つ目のパラでは、大規模代理店に対するより厳格な体制整備等を法令上の措置として求めることや、法令上に根拠を持つ自主規制機関等を設立することも視野に入れて検討を継続することが望まれる、といったことが盛り込まれております。
7ページ目は、代理店手数料ポイント制度です。前半の1つ目から3つ目のパラまでは、代理店手数料ポイントの概要、今般の事案における問題点として、規模・増収面を重視し、業務品質を適切かつ十分に評価していないことが、代理店に対して業務品質を軽視する不適切なインセンティブを与えていたおそれなどについて記載されています。そこで、4つ目のパラから8ページ目の頭にかけて、代理店手数料ポイントについて行うべき取組として、保険代理店自身に業務品質の向上に向けたインセンティブが働く仕組みを設け、消費者からも保険代理店の業務品質が確認できるような仕組みとすること、そうした観点から、損保会社においては、規模・増収に偏ることなく業務品質を重視する、更に業務品質の具体的な指標について、損保会社の事務効率化ではなく、顧客にとってのサービス向上に資するものとすることを検討すること、その際には、第三者評価の仕組みと連動させる、また、乗り合っている他の損保会社の手数料ポイントに追随することで、保険代理店における業務品質の向上に向けたインセンティブを阻害しないようにすること、加え、損保会社において業務品質評価割合の考え方を開示することや、特に大規模代理店については、損害保険会社別の手数料総額等の開示を行うなどの仕組みを設けることを検討することが望ましい旨を記載しております。
次に、8ページ目は保険会社による保険代理店等への過度の便宜供与等の制限になります。まずは、(1)のところで便宜供与の適正化について記載されています。(1)の1つ目及び2つ目のパラでは、損保会社が代理店等に対して様々な便宜供与を提供する慣行があること、今般の事案では、便宜供与の見返りとして、その便宜供与を提供した保険会社の商品を推奨することが顧客にとって適切な商品選択の阻害になり得ること、3つ目のパラから9ページ目の頭にかけては、便宜供与のうち、自社の保険商品の優先的な取扱いを直接的に及び実質的に誘引するもの、特にニギリやノルマと呼ばれるものは解消すべき旨が記載されています。
その次に、こうした便宜供与を解消するために、まずは損保会社において顧客の適切な商品選択を阻害し得る便宜供与を解消するための社内規程の策定等、実効的な体制の整備、さらには、損保協会においても、ガイドラインの策定や各社のフォローアップ、また、損保会社社員等が利用できる通報窓口の設置について記載するとともに、金融庁による適切な関与も必要といった内容になっています。
(2)は出向等の適正化です。出向や業務の代行も便宜供与の一類型と言えますが、これらについても、それが過度なものであれば、顧客の適切な商品選択が阻害されるおそれがあり、したがって、顧客の適切な商品選択を確保する観点から、自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するものを解消することは当然ですが、それに加え、そもそもとして、保険代理店としての自立に向けた動きを阻害するものは解消する必要がある旨が記載されております。
10ページ目は、1つ目から3つ目のパラにおいて、解消する必要がある出向等について具体的にブレークダウンしたものの事例を記載するとともに、4つ目のパラでは、各損保会社において、出向等の適切性確保のための体制を整備することや、損保協会におけるガイドラインの策定、フォローアップの必要性について記載してございます。
(3)は、入庫紹介の適正化です。まずは入庫紹介の概要、今般の事案における問題点、すなわち、営業優先、顧客不在で入庫紹介が運用されていた旨が記載されています。その上で、10ページ目の下段から11ページ目にかけて、適切な入庫紹介の実施を確保する観点から留意すべき点として、顧客が自動車修理工場を選択できることに関する顧客への明確な伝達、顧客に自動車修理工場を紹介する際において、原則として複数社を紹介することや、それらを紹介する理由の説明、顧客に紹介する自動車修理工場の業務の適切性や品質の定期的な検証、及び入庫紹介を受けた顧客の意見等も踏まえた入庫紹介の適切性を確認するための体制の整備を挙げております。
さて、次が11ページ目、乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保です。1つ目から2つ目のパラにかけては、保険業法上、乗合代理店に対して、顧客の意向に基づき情報提供して比較推奨販売を行うといった、適切な保険募集を求めている旨、そして、今般の事案ではそうした規定が不適切に運用されていたことが記載されております。3つ目のパラでは、比較推奨をゆがめていた便宜供与の解消に加え、改正金サ法の誠実義務の趣旨を踏まえた適切な比較推奨販売を行うことを求める必要性について記載するとともに、4つ目のパラでは、具体的に検討すべき点として、乗合代理店における保険募集の実務や募集形態等を踏まえた上で、保険募集人が顧客に対して比較推奨を行う場合においては、顧客の意向を踏まえ、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客にとって最適と考えられるものを比較または推奨提案し、比較に係る事項や提案の理由を分かりやすく説明すること、保険募集人の提案する保険商品がどのような商品群から選定された上で提案されているのかなどについて、顧客に対して、例えば取り扱う保険商品の範囲、募集手数料に関する情報、乗り合っている保険会社のリスト等の情報を提供するといったことを検討すべき旨が盛り込まれております。12ページの1つ目のパラでは、損保協会において顧客の利益につながるような情報や保険商品選択の参考となる情報等をまとめたガイドブックの作成・配布など、保険リテラシーの向上に資する取組を充実させるべき旨を記載しております。
次に、12ページ目、保険代理店の兼業と保険金等支払管理部門の独立性確保等です。こちらの5ポツの2つ目のパラで、顧客の利便性や被害者救済機能の低下を防ぐ観点から、保険代理店の兼業自体を禁止するのではなく、兼業に伴う弊害を適切に管理することが合理的であること、そうした弊害を防止するためには、例えば、保険代理店を営む企業において、当該企業内における保険契約者等の利益を損ね得る事業を特定した上で、その管理方針を策定・開示すること、損害保険会社において、業務委託先である保険代理店を営む企業との関係を踏まえた利益相反に係る管理方針を策定し、その内容をウェブサイト等で公表することといった措置を行う必要がある旨を記載しております。
また、3つ目のパラから13ページ目にかけては、損保会社における適切な保険金等支払管理態勢を整備していくに当たっては、迅速な支払いの重要性にも十分留意しつつ、例えば、営業部門と支払管理部門間の不必要な情報連携の防止、営業部門から支払管理部門に対する勧誘の排除、アジャスター等の専門家の適切な配置や活用、不正な保険金の請求に関する適切な検証態勢の確保といった措置を行う必要性について記載されております。
14ページ目からは、Ⅲの健全な競争環境の実現になります。柱書きでは改めて保険料調整事案の背景について記載するとともに、今後の講ずるべき取組として御議論いただいた論点を大きく3つに分けて、14ページ目後半から19ページにわたって記載しております。
まずは、競争環境の歪みの是正になります。(1)では、共同保険のビジネス慣行の適正化として、1つ目と2つ目のパラで共同保険の概要や今般の事案で起こったことについて簡単にまとめております。15ページ目の1つ目のパラでは、これまで行ってきた共同保険の慣行、すなわち、営業担当者間で情報を交換しやすい状況下で低い保険料を提示した幹事会社に他の損害保険会社が保険料を合わせるといった慣行を見直すべきこと、その際には、例えばシンジケートローンを参考にした方式や、各損保会社の保険料を統一せずに共同保険を補正する方式を参考にすることが考えられる旨を記載しております。2つ目のパラでは、単独で保険契約を引き受けられる場合であっても、便宜供与等の保険以外の要因を背景に、あえて共同保険を組成している慣行も是正することが重要である旨を記載しています。
(2)は、政策保有株式の縮減及び便宜供与の適正化についてです。こちらについても、適正な競争環境を阻害する要因となり得るような政策保有株式の保有や便宜供与は見直していく必要があること、特に政策保有株式については、本来は政策保有目的で保有しているにもかかわらず、純投資に区分されるなどして実質的に政策保有株式の保有が継続するといった、単なる純投資への看板の掛け替えが起こらないよう、金融庁が適切に監督することが重要である旨が記載されております。
次に、16ページ目の損害保険会社における態勢の確保に移ります。柱書きのところでは、今般の事案において、各損保会社において独占禁止法に関する教育等が不足していたのみならず、第2線、第3線の牽制機能が働いていなかったこと、経営陣においては、ビジネスモデル・経営戦略とコンプライアンス・リスクやコンダクト・リスクを含めあらゆるリスクについて幅広く検討する必要があること、さらには、そもそものビジネスモデルの持続可能性の観点から、企業向け保険市場における火災保険の赤字を、自動車保険を含むその他の保険種目の黒字で埋めてきていることが、損保会社の営業推進態勢や保険金引受管理態勢に影響を与えてきたと考えられるところ、こうした状況を是正していく方策も引き続き検討すべきであることを記載しております。
(1)の営業推進態勢の確保については、1つ目及び2つ目のパラにおいて、今般の事案では、火災保険の赤字が常態化する中、営業部門に対するプレッシャーが強まっていた結果、リスクに応じた適正な保険料を提示することが困難になり、保険料調整行為を行うインセンティブが高まっていたこと、このため、損保会社においてはコンプライアンス上不適切なインセンティブとならない評価体系の策定等、適切な営業推進態勢を構築すべきであり、取締役会等の経営陣においても、自社の営業推進態勢が適切に確保されているか検証するべきとの指摘があった旨を記載しています。
17ページ目の(2)保険引受管理態勢の確保については、損保会社がリスクに応じた適切な保険料を提示するため、保険引受管理態勢を一層強化すべきであること、そのために、例えば、各商品における適切な単位での収支分析、再保険会社からの評価を踏まえたポートフォリオ全体の分析等を実施することが望ましく、金融庁においても、各損保会社の保険引受管理態勢が適切に確保されているかどうかモニタリングすることが重要である、との内容になっております。
3ポツ、企業内代理店のあり方に移ります。1つ目から3つ目のパラにかけては、企業内代理店が損保会社の代理店であり、かつ顧客企業と密接な人的・資本的関係を有しているというように、立ち位置が不明確であることが独占禁止法抵触リスクを高める要因となっていたこと、損保会社にとって指導を行いにくい存在であったこと、また、実務能力が低くても、グループ企業等への保険募集を行ってさえいれば代理店として存続していけることから、保険仲立人や他の代理店の参入の妨げになり、企業保険市場の競争環境にゆがみが生じているおそれがあることについて指摘しています。
4つ目のパラから18ページ頭にかけては、企業内代理店においては、実務能力を高めて自立した代理店として仲立人や他の代理店と公正な競争を行っていくことがあるべき姿であり、それを実現する観点から、18ページ目から19ページにかけて、まずは、今般の事案の再発防止の観点から、企業内代理店の立場を明確化した上で、企業内代理店を介した情報共有に関する適切なルールを策定すること、企業内代理店の実務能力の向上を妨げるような業務の代行等は解消する必要があること、損保会社が企業内代理店に対して適切な指導等を行う体制を改めて整備すること、損保協会において業務代行等を解消するためのガイドラインの策定や募集人資格制度の充実を図る取組を進めること、特定契約比率における一定期間後の経過措置の撤廃及び特定者の対象範囲の拡大を検討するといった取組を進めるべきことについて盛り込まれております。
19ページの最後のパラでは、企業内代理店の実務能力の向上が図られ、一定程度自立が進んだとしても、その立場が不明確であることによる競争環境のゆがみは残るため、そうしたゆがみを是正するために、保険代理店の果たす役割に応じた手数料体系の在り方について検討を続けるべきこと、また、企業向け保険市場のさらなる発展を図る観点から、保険仲立人の活用を促進するための施策も併せて検討を続けるべき旨が記載されています。
20ページから21ページにかけては、その他の論点として、有識者メンバーから御提示があった特別利益の提供の禁止、個人の保険契約者に対するリスクマネジメントのインセンティブ付け、企業のリスクマネジメント意識の向上について触れております。
特別利益の提供の禁止については、今般の事案において、保険加入を条件に車両価格を値引くなどの行為を行っていた旨が指摘されているほか、一部の代理店において、保険契約を獲得するために保険契約者間の公平性を損なうようなサービスが行われているとの指摘もあること、これらの行為が特別利益の提供に該当するか否かは個々の事案ごとに判断されるべきものであるが、国民の損害保険業界に対する信頼を回復する観点から、保険契約者間の公平性を確保するための対応を検討すべきとの指摘があった旨を記載しております。
次に、個人の保険契約者に対するリスクマネジメントのインセンティブ付けでは、例えば、事故による損害額の大きさにかかわらず3等級下がるという業界ルールを変え、少額事項であれば免責とするという選択肢を保険募集時に示すと同時に、保険料に損害額の多寡という視点を入れることで、保険契約者自身のリスクマネジメントの向上に資するとの指摘があった旨を記載しております。
次に、企業のリスクマネジメント意識の向上については、企業による主体的なリスクマネジメントの重要性が高まっており、保険の活用に当たっても、自社のリスクを正確に把握した上で、自社の事業の変化に応じてその付保範囲等を定期的に見直していくことも重要であり、損保会社がそうした企業に対し積極的な支援を行っていくことや、高度なリスクマネジメントの体制を有する企業を対象とする規制の見直し等により、企業のリスクマネジメントに対する意識を高める取組を検討することも考えられるとの指摘があった旨を記載しております。
22ページ目の「おわりに」では、これまでの有識者会議における議論を踏まえ、直ちに実現可能なものについては、速やかに実施に向けた作業が進められること、さらなる調査分析が必要なものについては、関係者において速やかに調査等が行われること、法律改正が必要と考えられる論点については、今回の有識者会議で十分に議論し切れなかった論点も含め、今後、金融審議会の開催も視野に、金融庁を中心に必要な対応が行われること、今後、損害保険業態全体として、業務改善のための不断の取組が行われるとともに、ステークホルダー全体への影響を注視しながらPDCAを適切に実施することで、必要に応じ追加的な措置を検討していくべきこと、最後に、こうした取組を通じて、国民からの信頼を早急に回復し、保険市場全体が持続的に発展することで、我が国の損害保険が国民生活の安定、経済の発展に貢献することを強く期待したい、として結びとしております。
説明は以上になります。
【洲崎座長】 どうもありがとうございました。
それでは、メンバーの皆様方に御議論をいただければと思います。これまでも申し上げておりますが、できるだけ多くのメンバーの皆様方に御発言いただく機会を確保し、2度目の御発言の機会を設けるという観点から、1回目の御発言はお一人当たり5分程度以内を目安にしていただければと思います。また、御発言を希望される際は、本日は全員対面で御出席いただいておりますので、挙手をしていただくか、あるいはお名前の札を立てていただきますよう、お願いいたします。そちらを確認して私が指名させていただきますので、その後御発言をお願いいたします。
それでは、今御説明いただきました内容につきまして、メンバーの皆様方から御質問、御意見、どなたからでもお出しいただければと思います。いかがでしょう。では、中出メンバー、お願いします。
【中出メンバー】 中出です。どうもありがとうございます。有識者会議においては、極めて多くの論点が扱われ、全体を報告書としてまとめられた事務局の御努力に本当に敬意を示したいと思います。私の発言も反映いただいていて、お礼申し上げたいと思います。その上で、将来に向けた、私の感じるところを幾つかお話しさせていただければと思います。
まず、今御説明いただいた6ページの第三者評価のところですが、これまでの議論でも、第三者評価の必要性について多くの議論がございました。第三者の立場での評価基準をつくり、それを代理店評価ポイントに反映させたり、保険会社の代理店の指導・管理などに利用していくことは重要であると思います。また、今回問題が生じた大規模乗合代理店については、保険会社単体での対応が難しいということが明らかになりましたので、第三者の立場で牽制が利く仕組みが必要であるという点でも同意しております。
今後、具体的な枠組みをつくる場合には、サステーナブルで実効性が上がることが何よりも重要です。その際は、箱物ありきではなく、何を目的として、どうしたら効果が上がるか、対象の代理店をどうするか、コストは誰が負担するか、その機能がちゃんと発揮しているかどうかをどのように検証していくか、こういったことを十分に検討する必要があるのではないかと思っています。有識者会議では、枠組みの中身というか、具体的なところは議論したものではありませんでしたので、今後その辺りの検討を期待したいと思います。
それから第2は、兼業代理店の問題ですが、第2回の会議で私自身も、BM問題の本質として、兼業における利益相反の問題があるということを指摘しました。その点については、12ページの第3パラグラフを御覧いただくと、「兼業という立場を利用して自らの利益を得るために顧客の利益を損ねることは許されるものではなく」と非常に明確に記していただいております。この点は、将来的には監督指針とか業法の中においても明確に示していくことが重要でないかと思いますし、また、兼業における利益相反としての問題が生じた場合には、報告徴求や検査などが直ちに発動できるような枠組みというのでしょうか、それができる仕組みの整備を今後の課題として期待したいと思います。
それから、16ページの第3パラグラフですが、ここでは、企業向け火災保険の赤字を自動車保険などの黒字でもって利益を確保してきたという状況を挙げて、ビジネスモデルの持続可能性の確保の観点から問題意識を指摘しています。これは17ページの保険引受管理態勢の確保といった点でも明確に問題意識を指摘いただいているところです。この点は、健全な市場を維持していく点から極めて重要であると考えております。とりわけ、企業保険と個人保険の領域は、損害の予測性など、対象とするリスクの性格にも違いがあるように思いますし、ビジネスモデルとしても異なる面があると思います。保険商品は種目ごとにそれぞれ事業方法書に基づいて認可された枠組みのなかで運営されていますので、短期的にはやむを得ないとしても、長期的にはそれぞれの保険種類において収益管理を徹底していくことが重要であると考えます。
最後に、22ページの「おわりに」の最後のパラグラフになりますが、ここに有識者会議におけるメッセージが分かりやすく示されているように思います。また、今回の報告書の表紙のタイトルも「我が国保険市場の健全な発展に向けて」となっていますように、この提言は、保険市場が将来にわたって健全に発展する上での重要な考えとして示したものです。この提言の内容は、これまで長い間業界で続いていた慣行等を変更する部分が多くあると思います。そのため、対応が容易ではなく、時間がかかる領域もあるかと思います。当然ながらこの提言は、行政処分を受けた会社等に対するものではなくて業界全体に対する提言ですので、行政から改善を求められて取り組むという対応ではなく、市場の健全な発展に向けた重要な機会として前向きに捉えていっていただき、自律的に取組を進めてもらうことが極めて重要であると思います。その点で業界の能動的な取組を期待したいと思うところであります。
以上です。
【洲崎座長】 どうもありがとうございました。特に最後に言われた、業界として前向きに捉えていただく機会にしていただきたいという点については、この有識者会議の意見としてみてもやはり重要なことかなと私も今お話を伺って思いました。どうもありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。では、まずは増山メンバー、その後で大村メンバーに御発言いただければと思います。では、増山メンバー、お願いします。
【増山メンバー】 ありがとうございます。報告書を取りまとめいただきまして、どうもありがとうございます。私も報告書に記載されている内容につきましては、これまでの有識者会議で議論されてきたポイントが網羅されておると思っております。表現などやや濃淡があるというところはございますけれども、内容について大きく認識の齟齬があるというところはないと思っております。
概括いたしますと、今回のトピックは主に2つありますけれども、両トピックとも、損害保険契約に特に密接に関わっております損害保険会社であったり、仲介者であったり、我々のような大規模需要家については、プロフェッショナルであるべき、専門性を備えているべきだということであると理解をしております。第1回の有識者会議の場におきましても私のほうから、保険募集人の方につきましても個人とか中小企業のリスクマネジャーの役割ではないかということで述べさせていただきましたので、その視点で重要ではないかと感じた点につきまして御紹介をさせていただきたいと思っております。
前回も発表させていただきましたとおり、実は当社におきましては、保険のプログラムの説明会を毎年第1四半期に行っております。実はその中である方から御質問があったんですけれども、当社の保険プログラムは非常によいプログラムですということなのであれば、事業部門がそれぞれコストとか手間をかけてリスク改善の取組をやる必要があるんですかという御質問がありまして、要すれば、事故があったら保険を使えばいいんじゃないですかと、こういう御質問があったということです。
よく考えていただければお分かりのとおり、リスクマネジメントのプロセスというところで考えれば、当然リスクを洗い出して評価をして、それに対して回避とか改善を取った上で、その残余リスクの一つの手段が保険なのであって、いきなりリスク、イコール保険という話ではないというのは当然皆様御理解のとおりだと思うんですが、他方で我々もそうなんですけれども、担当している部分が保険リスクマネジメントというものですから、どうしても保険の説明から入ってしまいまして、本来あるべきその前のリスクマネジメントプロセスに少し穴があったかなというところは反省をしておるところでございます。
翻って、今の自動車保険なんかの重要事項説明なんかを見てみましても、保険の重要事項説明なので当然なんですが、用語の説明であったり、この保険種目というのは何々をカバーしております、年齢条件はこれこれこうでありますという保険の説明がずっと入っていて、実はやっぱりその前にリスクマネジメント、いわゆるリスクコントロールと呼ばれる部分のところが少し抜けているんじゃないかなというのを思った次第でございます。例えば一例で申し上げれば、高齢のドライバーの方が自動車保険の更新をされるときに、運転に御不安も少しあったりといったときに、例えばリスクアセスメントもやった上で、一つ、保険で支えるということもあれば、免許を返納されるという、これも一つのリスクマネジメントの取組じゃないかと、こういうふうに思った次第でございます。
損害保険の仕組み自体は、私は非常にすばらしいと思っております。類似のリスクを皆さんで集めることで、個々の皆さんが一人一人で保有されるよりも、リスクを集めることで効率的に保有ができるという非常にすばらしい仕組みだと思いますし、この仕組みの中では、皆さんのリスクがよくなると全員にベネフィットがありますと。例えば自賠責保険なんかで言えば、近年非常に事故の件数とか金額が下がってきて、それに伴って保険料も下がっているというものもあれば、逆に火災保険につきましては、近年御承知のとおり、自然災害が増加をし、毎年保険料が上昇しているということで、皆さんのコストに跳ね返っている。特に火災保険なんかでいきますと、自然災害については、場所で非常に起きやすい場所があるというところと、特にその逆選択性、自分が危ないところにいるというのが皆さん分かっているというところもあって、こういう状況になりますと、保険システムとしての持続性にもかなり影響が出てくるんじゃないかとも思います。
こう考えますと、今回の報告書の中では資格試験等に対する見直しも入っているのではないかと思いますけれども、その保険の商品のどういうものが何をカバーしている、こういう規定でこういう約款になっているという単純な話だけではなくて、今申し上げたとおり、リスクマネジメントのプロセスであったり、損害保険商品がどういうふうに成り立っているのか、それに照らし合わせると、リスク回避や低減というか、いわゆるリスクコントロールの部分を踏まえた専門性を備えたプロという方が増えていくような制度設計になるといいんじゃないかと思いますし、結果としてそういう方が活躍をされることで、本邦の保険加入者全体のリスクが改善されて、全員がそのベネフィットを受けると、こういう状態が理想的な状態ではないかと考える次第です。
私からは以上でございます。
【洲崎座長】 どうもありがとうございました。それでは、大村メンバー、お願いいたします。
【大村メンバー】 ありがとうございます。今回の報告書案は、これまで有識者会議でなされた議論が丁寧にまとめられており、特段違和感はございません。そこで、本日は、その先を見据えて、何点かコメントをさせていただきます。
まず、1点目は大規模代理店に対する指導等の実効性の確保についてのコメントになりますが、やはり牽制力、抑制力という意味では、当局の入検に勝るものはないと理解しております。代理店登録の取り消しに至るような事案が発生しており、似たような問題が他にも存在している可能性がある現在の状況下においては、やはり当局が積極的に出て、直近二、三年で、きちんと悪い膿を出しきってしまう必要があるものと考えております。そして、一定程度の品質が担保された状況で、第三者評価機関等に橋渡しをするという形を取らない限り、代理店に対する指導等の実効性は確保されないのではないかと思っております。そのため、もちろん限界があることは認識しておりますが、当局の人員増強および代理店検査・モニタリングの強化は不可欠ではないかと考えております。
その上で、やはり第三者評価についても非常に重要性が高いと考えております。この点、私自身が自主規制団体にこだわった理由は2つございます。一つは、いかにエンフォースメントを確保できるかという点でございます。受動的に評価をすることで事足りるのであれば、生保協会に倣った形での認定代理店制度で十分ではないかと思われますが、他方で、法令やガイドライン等を遵守しない者を摘発して正していくということまでを想定しているのであれば、一定程度の強制権限を有している必要があり、そのためには当局の権限を一定委譲できるような器が必要なのではないかと考えております。
また、規制の対象としてどこを想定すべきかという点が二つ目の理由になります。現行、保険業に関しては、損保と生保を1つの社で実施することはできない立てつけになっておりますが、代理店においては、このような制約はなく、一つの代理店で生保商品と損保商品の両者を扱うことが一般的になっております。この傾向は、今後のビジネスモデルの変革に伴いますます強まると思われますが、そういった中で、代理店の検査については、これまで同様、生保、損保が別々に実施するということでは、実効性のある監督はできないように思われます。そのため、新しく器を用意するのであれば、生保、損保を一体化した上で、両方を統一的に見ていけるような態勢を整えていく必要があるのではないかと考えております。
2点目が、代理店手数料ポイント制度についてのコメントになります。こちらについては、非常に悩ましいと思っているのですが、基本的に手数料ポイントというのは競争領域の話で、かつ民民の問題ですので、当局としても介入がしづらく、ましてや、損害保険会社が他社の制度の適否についてコメントをすることは難しいものと思われます。そのような中で、いかに適正化を図るのかは非常に悩ましいのですが、効いてくる可能性があるとすると開示なのではないか、市場であったり、顧客による評価によって、健全な競争が促進されるような状況を作出することが必要なのではないかと思っております。
その観点からは、今、報告書の中で記載いただいている業務品質評価割合の開示をするだけでも、大きな意味があるのではないかと考えております。ただ、他方で、現状、代理店手数料が相当上がってきているというようなお話も耳にしておりますので、それだけで本当に問題の解決に至るのかという点について、私自身は懐疑的であり、究極的には、各商品別の手数料の開示、顧客に対する開示ということも含めて検討がなされてしかるべきではないかと思っております。商品を買うときに、この商品にかかる手数料は幾ら幾らですと言われれば、顧客側は、代理店から受けられるサービスの内容を確認し、かかる手数料に見合ったサービスを受けていると思えばそこで加入するものと思われますし、昨今ダイレクトマーケティング等も増えておりますので、それに見合ったサービスは受けられていないと思えば、手数料がより低い保険を選択するようになり、それによっておのずと手数料等の適正化が図られ、健全な競争環境が作出されていくのではないかと思っております。もちろん、開示に伴う様々な問題があるということは承知しておりますので、それが絶対的な解だとは思っておりませんが、一つの検討の方向性としてはあり得るのかなと考えている次第です。
3点目は、過度の便宜供与等の制限についてのコメントになります。こちらについては、1つの施策で十分な効果が期待できるという類のものではなく、幾重もの施策を実行することで初めて市場の健全化が期待できるようになると思われます。現在の損害保険市場はスイッチングコストが低く、ややもすれば規制を潜脱した者が大きな利益を受けることが可能な状態となっております。そういった中で、今回の4社に限らず、他の国内損害保険会社および外国損害保険会社も含めた全ての社に規制を徹底させるためには、報告書に記載された手段以外に実効的な適正化手段がないか引き続き検討を行う必要があるのではないかと思っております。また、現在報告書に記載されている手段については、一定の効果が期待できるとは思われますが、PDCAを回していくことが必要ではないかと思っております。
例えば通報窓口一つにしても、本当に窓口は損害保険協会がいいのかは不明であり、今後の通報状況次第では、当局を含めたより第三者的な機関、通報者の心理的安全性が担保されるような通報先が検討される必要があるようには思われます。今回の有識者会議を受けて、できる施策から実行していただきたいとは思っておりますが、闇雲にそれを実行するのではなく、きちんと必要な振り返りを行い、実効性がないものについては随時改善をして頂きたいと考えております。
最後のコメントは、IV.その他の論点に関わるものになります。この有識者会議では、保険会社および保険代理店の問題点を中心に付随的に事業会社等の問題点についても言及がなされ、報告書も同様の形でまとめられていると理解しております。そのこと自体に異存はございませんが、保険市場の適正化という意味では、ほかのプレーヤーが果たす役割や、そこに存する問題の解決は非常に重要であることから、それらの点についても引き続きフォローアップをしていただきたいなと思っております。
一つ、今まで出てきていなかった問題について、せっかくの機会ですので問題提起をさせていただくと、ディーラー側が損保会社に手数料の引き上げを含む無理を強いている背景には、彼らが本業の自動車販売できちんとした収益を得られないような状況になっていることも一因であると伺っております。新車1台売ることによって得られる利益があまりにも少ないため、彼らの本業のみでは立ち行かず、保険のほうに乗り出して、高額な保険料を求めたり、無理な保険販売をしているといった側面はあるとのことです。
そのため、保険に直接関わるところだけではなくて、本業に関わる部分も含めて解決をしていかないと損保市場全体の問題について、根本的な解決にはならないのではないかと思っております。他省庁の管轄になる可能性はあるかと思いますが、そういった周辺の問題についてもきちんとフォローアップを行って頂きたいと思っております。
この点は、は事業会社のリテラシー向上の問題も同様です。本報告書IV.3.で、企業のリスクマネジメント意識の向上について損害保険会社がすべきことについては記載されておりますが、この問題に関して個社または業界ができることは限られているのではないかと思われます。そのため、当局に対して、率先して他省庁や業界団体を巻き込んだ上で、事業会社のリテラシー向上のために何ができるのかを検討し、必要な施策を打つことを期待しております。
以上です。
【洲崎座長】 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。では、滝沢メンバー、お願いします。
【滝沢メンバー】 では、滝沢のほうから発言させていただきます。報告書の骨子については、これまでの議論で俎上に上った検討項目と向かうべき方向性、これを網羅的に捉えていただいており、ほかのメンバー同様、異論はございません。一方で、この報告書はあくまでも検討の皮切りであって、今後引き続き、構造的な課題の解決に向けて実効性の高い打ち手をいかに迅速に実行できるか、改善を形にできるか、こういったところが何より重要であると考えております。
その意味で、大規模代理店に対する保険会社からの管理・監督は、その力関係が逆転しているということを考慮した上での実効性を担保する必要があると思っておりまして、その旨を考慮して、業界共通の評価基準、特に顧客本位の業務品質を盛り込んだ評価基準の策定及び第三者評価の必要性を報告書に盛り込んでいただいたことは非常に意味があると考えております。
また、適正な競争環境を阻害し、ひいてはお客様の利益を優先した商品推奨をゆがめていた乗合代理店に対する便宜供与、これにつきましても、損保会社それぞれが内規で解消に努めるだけではなくて、解釈次第となるような余地をできるだけ狭める具体的な形で損保協会としてのガイドラインを定めていただく、こういったことを盛り込んでいただいたことも大きな前進になるのかなと思っております。
また、リスクコントロールの重要性、これは増山メンバーからも念押ししていただいたのかなと思うんですけれども、損害保険の公共性、公の器としての重要性という点からも、企業のリスクマネジメント意識の向上、これは業界の持続的な成長のベースとして非常に大事であると考えています。突発性とか被害の大規模化、深刻化が進む災害リスク、そしてニューリスクと言われているようなサイバー攻撃リスクといった、より複雑さを増すリスクに備える手段として、企業の皆様には、保険会社の企業保険分野における御提案内容を、コストとしてではなくて、事業を支えるセーフティーネットの在り方として御検討いただいて、必要に応じてより専門性が高いプレーヤー、ブローカー等も活用することも御検討いただくとよいのかなと思っております。
また、中出メンバーから業界の能動的な取組であってほしいというコメントをいただいておりましたので、それに付随して、今回の議論の趣旨ではないんですけれども、これらの施策の実効性を上げていく方策として、よりデータを使ったデータドリブンのオペレーションとかサービスの提供、こういったものが解になるとも考えておりますので、補足させていただきます。
例えば今回の事案になっておりました入庫紹介のケースなどは、例えば修理工場のメニューとか価格、得意分野、技術素養、混雑状況まで加味したような納期、こういったものをサービスを受けたお客様からの評価といったデータも加味した上で、データベースで一元管理し、最適な修理工場をリコメンドするアルゴリズム、こういったものを入れることで、お客様にも選択余地を与える、あるいは客観的な情報に基づいたリコメンドをお客様に御紹介する、こういったものがスタンダードになっていくということは可能であるのではないかなと思っております。海外では既に当たり前のように提供されているサービスでもございますし、お客様のサービスを改善するといった意味でも、業界を挙げてこういったことを御検討いただくといいのかなと思っております。
もちろんこれを入れていく中では、なぜそれが推奨になるのかというところの説明責任を果たせるアルゴリズム、AIであるということは大前提であるかなと思いますけれども、データ活用、デジタル化によって強制的に忖度が入る余地をなくす、こういったものは実効性を高める上で検討するべき視点なのかなと思いましたので、最後に付け加えさせていただきました。
私からは以上です。
【洲崎座長】 どうもありがとうございました。それでは、永沢メンバー、御発言をお願いいたします。
【永沢メンバー】 ありがとうございます。まず、短い期間で大変大きな問題について、このように整理をしていただいて報告書にまとめていただきました事務局に感謝申し上げます。私は一般国民として入らせていただいておりまして、ほかの皆様のような専門家ではございませんので、雑駁な感想と気になっている点を申し上げたいと思います。
今回の2つの事件は、一般国民からしてみますと、立派な業界と思っていた損害保険業界においてこんなことが行われていたのかと驚き、残念に思ったという一言につきます。報告書案は、問題の所在が的確に整理されており、進めていくべき方向も示していただいており、我々メンバーの意見が全てを代表するわけではないと思いますが、短い時間ながらもメンバー全員で考えたことも盛り込んでいただいております。損害保険業界の皆様にも我々の提言を真摯に受け止めていただけていると思っております。
報告書案を読みながら気になった点としては、「検討することが望ましい」という箇所が何か所か出てまいりますが、今後どこの場で継続して検討いただけるのか、という点です。我々の提言等は、損害保険業界で受け取めていただき、今後の議論を期待しています。
ところで、今回の報告書案のタイトルには「市場」という言葉が使われております。損害保険に市場という概念は比較推奨という話が入った時点で意識されていたことを足認識いたしましたが、損害保険業界において市場という視点でオープンな議論が業界内でなされてこなかったのではないかと思いました。今後、損害保険業界を中心に議論されると思いますが、その際には、市場というのは多様なステークホルダーで成り立っているものなので、議論はオープンに行われるべきだと思います。損害保険会社だけでのクローズドな議論ではなく、国民に開かれたオープンな議論をしていただきたいと思っております。
また、今回の有識者会議では、大型代理店の問題が俎上にあがりましたが、聞くところによると、中小代理店の問題もいろいろあるようです。そういった問題も含めて、いろいろと議論を見えるような形でしていただき、外野にあれこれと言われるはうるさいかもしれませんが、そういう声が入ることで、損害保険業界の感覚や、感度を高めていただくことができるのではないかと思います。何回も申し上げましたけれども、市場においては公正、フェアということが大事な価値観であり、フェアという考え方というのは時代とともに変わっていくものだと思っておりますので、業界の中だけでの議論ではなく、広く開いて声を聞き、厳しい声を受け止めることができる体制を整備されることが重要ではないかと思います。
最後に、金融庁の人員の強化が必要とも思いました。本日も副大臣がいらっしゃっていますので、予算確保をお願いしたいと思います。また、第三者評価についても提案させていただいておりますが、国民のお金、税金を使わないでどう回していくのか、これは損害保険業界に知恵を絞っていただきたいと思いますが、金融庁のほうからも何かやはり仕掛けていただかないと、お金のかかることですので、動かないのではないかと懸念しております。税金を使わない方法でできるよう、金融庁からも働きかけをしていただきたいなと思います。
本当に最後になります。やはり顧客本位の業務運営ということに尽きます。業務品質という言葉がキーワードで出てきておりますが、顧客本位の業務品質とは何か、その具体化を業界の中でしっかりとしていただき、これも国民に見える形で競い合っていただきたいと思いますし、そのためにも、共通の物差しを業界の中で考えていただくことを期待しています。
この有識者会議は終わりますが、この後の議論がどのように金融庁及び損害保険業界においてどう進められていくのか、メンバーとして参加した責任もありますので、注視していきたいと思います。私からは以上でございます。
【洲崎座長】 どうもありがとうございました。では、嶋寺メンバー、お願いします。
【嶋寺メンバー】 ありがとうございます。嶋寺です。私からもコメントをさせていただきます。まず、今回、短期間でこのような報告書をまとめていただきまして、ありがとうございます。今回の報告書の全体感についてですが、これまで3回にわたる会議を踏まえて、問題の背景や、各メンバーから出た意見がまとめられており、対応策についても、1つに決めるのではなく、取り組むべき視点と例を示すという形になっていると受け止めました。このようなまとめ方については、限られた時間での議論の取りまとめとして適切なものではないかと考えております。
その中でも、ビッグモーターの問題で顕在化した不適切な保険金の支払いに関連して、適切な保険金の支払いを確保するための措置を講じる必要性という点に言及されている部分や、共同保険をはじめとする企業保険特有の課題が取り上げられている点については、非常に意味があると考えております。これまで保険監督に関する議論の多くは、消費者を前提とした募集上の問題であったり、保険金の支払い漏れといった観点が多く、過剰に保険金が支払われているというような話や、企業を契約者とする保険の実態が議論されることは少なかったように感じております。ところが今回、損害保険会社を取り巻く構造的な課題を検討する中で、これまで広く知られていなかった実務上の課題に焦点が当たって、不健全な実務を是正するきっかけとなるような議論ができたことの意味は非常に大きいと思います。
今回の報告書の細かい書きぶりについてはコメントいたしませんが、一つ、大規模代理店の問題に関してですが、今回の議論をどのような形で実効性のある形で実務に反映していくかという点がやはり重要であると思います。その点で最も重要なのは、大規模代理店の実態をまず正確に把握して、金融庁の指導を通じて保険会社とのいびつな関係性を確実に解消する方向につなげていくことであると思います。金融庁のマンパワーの問題もありますので、金融庁による直接の指導だけに頼るのではなく、様々な関係者が関与しながら、実効性のある仕組みをつくっていく必要があるわけですけれども、そのためには、法令上の措置や、損保協会としての取組、それから、各保険会社による監査等を組み合わせていくということが必要であると思っております。
一部報道を拝見しますと、自主規制機関という単語だけが少し独り歩きしているような印象を受けておりますが、あくまでこの報告書では、今後の検討に当たっての選択肢の一つとして挙げられているものと認識しておりますし、何か新たな機関をつくれば問題は解消するというわけではないと思いますので、これらの様々な取組を組み合わせていくということが重要であると考えております。
今回の議論を受けて、今後さらに具体的な方策を検討して、それを実行に移していくということが重要であると思いますが、恐らく実行に移していく過程で、個々の代理店の反発を受けたり、営業の現場からの不満が出たりして、なかなか想定どおりに進まないということが考えられるかなと思います。あるいは、各社の思惑の違いというところから、制度をつくってもそれが骨抜きになってしまうというような事態も懸念されるところがございます。
また、業界内でガイドラインを作成するということをしようとしても、今回問題となりました独禁法違反の懸念から、なかなかスムーズに議論が進まないというようなことも想定されるところでございます。そこで、先ほど永沢メンバーからも指摘がありましたけれども、今後どのように進めていくかという中のあくまでも一案ではございますが、今回の取りまとめから半年とか1年とかいった一定の期間が経過した後に、金融庁が関与する今回の有識者会議のようなオープンな会議体の場で、実際の取組や代理店の対応について業界のほうから報告を受けて、その中身を検証するような機会を設ける。それによって実効性を担保していく、そんな方法も考えられるのではないかなと思った次第です。
私からのコメントは以上でございます。
【洲崎座長】 どうもありがとうございました。金融庁のマンパワーの問題もあって、人員強化を図るべきだという御意見を複数の方々からいただきました。事務局のお立場としてはなかなか報告書には書きづらいかもしれませんけれども、複数の方から御意見あったということで書いていただいてもよいのではないかなと思います。どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。では、山下メンバー、お願いします。
【山下メンバー】 山下でございます。御指名いただきありがとうございます。まずはこの短期間にこういう形で報告書をまとめてくださった事務局の御尽力に敬意を表したいと思いますし、厚く御礼申し上げます。これまでの会議での議論を適切に反映してくださっていると思っておりまして、特に異論等はございません。
この有識者会議の議論は不祥事がきっかけということで、それは不幸なことでありましたけれども、今回この有識者会議を開き、議論をすることで、取引慣行から法制度に至るまで幅広い論点について検討することができました。そして、様々な課題が浮き彫りになるとともに、それぞれ一定の対策や改善の方向性も示すことができたのではないかと思っております。特に損害保険の販売に関与する様々な主体、つまり、保険会社や代理店あるいは顧客企業の利害構造が明らかになったということは、大きな成果であるというふうに思います。
大きな目標として、顧客本位の業務運営の徹底と健全な競争環境の実現が掲げられている中で、その目標の実現を阻害する様々な要因、すなわち利益相反構造だとか監督・指導の不足だとかが明らかになりましたので、そうした阻害要因を一つ一つ取り除いていくということが重要であるということを改めて申し上げたいと思います。そして、積み残された課題もなおありますので、引き続き継続的に検討することをお願いしたいと思います。それで、今後の課題として特に注目している3点について、コメントを申し上げたいと思います。
1点目は、代理店の指導・監督の在り方との関係ではやはり第三者評価の問題です。ただ、これは既に今日複数のメンバーの方からいろいろ発言がありまして、そうしたその中で示してくださった検討の観点に私も異論はございません。そういった観点から今後幅広く検討を深めて具体化していっていただきたいと思っております。
2点目としては、報告書でいいますと20ページから21ページのところで、個人顧客もですし、企業側も含めてということなのですが、リスクマネジメントの能力の向上ということが、今回の報告書で明記されており、これは重要だと思っております。つまり、保険商品の買手側も能力を高めることが業界の競争の促進につながりますので、そうした観点から、保険商品を買う側、これは個人も企業も含みますが、そうした買い手のリスクマネジメントについて、意識の向上及び能力の向上は重要ではないかと思っております。そのため、今回ここに記載してくださったというのは、非常によいことであると認識しております。
リスクマネジメント能力の向上は、今後の保険業の発展にも資するすごく前向きな話だと思っておりますので、業界におかれましても当局におかれましても、中長期的な課題として、継続的に取り組んでいただきたいと思っています。資産運用の文脈では、金融教育の充実とかというような話、あるいは取組が行われていますので、保険やリスクマネジメントについても、いろいろ検討していただきたいなと思っています。
3点目は、保険仲介者の規制の在り方について、今後さらに検討が必要ではないかと思っております。今回の報告書で重要な点といたしまして、比較推奨販売時の説明内容に関する記載がございます。すなわち、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客にとって最適な商品の提案とその具体的理由を説明するということが盛り込まれております。乗合代理店の法的立場は、保険会社側の代理店として保険会社側の立場で保険商品を販売するというものであるわけですが、しかし、顧客側としては、やはり顧客の利益のために最適な商品を提案してくれるのではないかという期待を持っているように思います。そのため、さきほど挙げた説明内容は、法的立場と顧客の立場のそごを解消する、あるいは改善するということにつながるのではないかと思っております。今後は、こういう説明義務があるということを前提に、保険仲介者の規制の在り方を幅広い観点から検討していく必要があるのではないかと思います。
その関係で報告書で書かれていることでいいますと、19ページの注25、26にある仲介者の報酬の在り方が重要です。保険仲立人についてすら保険会社側からのみ報酬を受けるというのが慣行ですけれども、果たしてそれでいいのか。あるいは、顧客側からの報酬を受けるということも考えていくべきではないかということ。これは仲立人だけではなくて、場合によっては代理店も含めまして、仲介者の報酬の在り方は、今後議論を深めていく必要があると認識しております。
最後の3点目、つまり、商品販売時の説明義務とか、保険仲介者の規制の問題というのは、理論的にも非常に重要で、研究者にとっても重要な課題だと思っております。我々研究者のほうでも今後検討を深めていく必要があるのではないかなと思っております。
以上です。
【洲崎座長】 どうもありがとうございました。では、金岡メンバー、お願いします。
【金岡メンバー】 金岡でございます。今、山下先生から研究者の立場として重要な論点を挙げていただきましたが、私もほぼ同様の意見でございます。
報告書11ページの乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保の最後の段落の、特に1番目に挙げていただけました、保険募集人が顧客に対して比較推奨を行う場合においては、顧客の意向を踏まえ、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客にとって適切と考えられるものを比較または推奨提案し、比較に係る事項や提案の理由を分かりやすく説明する。この内容を今後、保険仲介者の様々な関連する法を検討する際にぜひ盛り込んでいただければありがたいと考えます。
と申しますのは、私は、損害保険のADRで紛争解決委員も務めておりまして、乗合代理店が勧めた保険商品の内容について、保険契約者との間で行き違いがある事例を幾つか取り扱ってまいりました。そのような事例において募集人の方は、「この顧客は大体こういう補償が必要である」ということは、パンフレット等で説明しながら御理解されていらっしゃったと思います。次に重要な要素として、「その顧客は大体どれぐらいの水準であれば払える保険料であるか」ということを確認されたと思います。
この2つを確認して、「大体このような補償内容であれば、大丈夫でしょう」という形で勧めるその過程において、今回問題となりました裏の理由、つまり募集人自身が勧めたい保険会社とその保険会社が推奨する補償内容をパッケージにして、その顧客が払えそうな保険料の補償プランを提案しているという、理由を言わないで、「あなたが求めるのはこういう補償ですよ」という形で推奨している事例を見たことがございます。その補償パッケージの提案内容がその顧客にとって最適な補償内容であり、かつその顧客のニーズに合致したものであればよいのですが、保険金支払請求の段階になったとき、その顧客が実際に必要よしていた補償内容がその補償パッケージにはなかったことに気づかされたという場合もありました。このような紛争が起こること自体非常に残念であると思いますので、保険業法等において、この11ページの下から2つ目の線のところに書いていただいた内容を盛り込んでいただきますと、このような事例の紛争が減っていくのではないかと考えております。以上が1点目でございます。
それから、山下先生がおっしゃいました、これから、仲介人の報酬の在り方について見直しを検討していくということの大事な方向性として私が考えていることを申しあげます。現在、保険会社が保険代理店にお支払いしている手数料は、保険料に織り込まれていると思います。これを保険料から独立させて、補償部分の純保険料と、それから、保険会社が保険契約を維持・管理・運営するために必要な経費、その他いろいろなものを差し引いて、純粋に募集に係る費用としてそこを抜き出して、その部分を独立させて手数料ですよと、金額を示すことが果たしてできるか否かというところの検討まで踏み込む必要があるのではないかと考えております。
その場合、保険数理上の非常に難しい問題があると考えます。つまり、保険は、多数の契約を集合的に運用して、将来可能性がある保険金の支払いに備えるという仕組みによって成り立ってますので、その仕組みと調和した、今回の我々が検討してきた問題点を改善するような代理店手数料、仲介人に支払う報酬について独立した形で仕組みをつくることができるか否かということが、やはり今後の法制度等を検討していく上で非常に重要な課題になると考えております。以上が2点目でございます。
それから、3点目でございますが、報告書でいきますと、少し後ろのほうになりますが、17ページの保険引受管理態勢の確保のところでございます。こちらも、これからの法制度の改正、または金融庁が保険会社の保険引受管理態勢の適切な確保についてのモニタリングに関わるところで非常に重要な点を挙げていただきました。この点につきましては、やはりリスクに応じた適切な保険料を提示するということと、それから、リスクに応じた適切な保険料を保険会社が提示するために必要な分析を行っているか否かについて、金融庁のほうで積極的な監督をしていただきたいと考えております。
最後ですが、戻りまして、6ページの自主規制機関等の設立に関する論点でございます。この論点については、もう既にメンバーの皆様から貴重な御意見をいただきまして、私も方向性は同じ考えでございます。1点だけ気になっておりますのが、6ページの最後の段落に書いていただきました、法令上に根拠を持つという内容でございます。皆さん懸念されていらっしゃるのは、人的、予算的、設備的、専門的能力等を持続可能な方法で担保した上で、我々が目指すような方向性を踏まえた自主規制機関が出来るか否かということであると考えます。そのために自主規制機関については、法令上の根拠を今後御検討いただけるという観点から、本報告書をとりまとめていただいたと解しております。ぜひこの方向で御検討いただけると大変ありがたいと思います。
私からは以上です。
【洲崎座長】 どうもありがとうございました。法学者お二人から手数料の問題についてコメントがございましたけれども、実は私、十数年前でしょうか、仲立人に関してちょっと研究をしたことがあるのですが、そのときに保険仲立人の報酬がどうあるべきかについて気にはなったのですが、結局分からずに、何も書けなかったということがございます。
保険仲立人というのは、保険契約者から委託を受けて保険契約者のために活動する者ですから、その報酬も保険契約者からもらうのが物の道理としては自然ではあるのですが、ただ、金岡メンバーからも御指摘ありましたように、現在のところ、保険商品の価格の中には手数料も含めた形で保険商品を買うということに一般的になっていますので、仮に保険仲立人経由で買う場合には、仲立人に対して顧客が別途報酬を支払うとなると、仲立人経由の保険の価格はその分低くしないと仲立人から買う人がいなくなってしまう、他方、保険募集人、代理店等から買う場合は手数料報酬も含めて保険商品をつくるとなると、結局、保険仲立人経由で買う場合と代理店経由で買う場合で保険料が違う、そういう世界を考えなければいけなくなってしまうということもあって、それは難しいのかなという気がして、結局そのときにはどうすればよいのか分からずに何も書かないで終わってしまったということがございます。
ただ、これは増山メンバーだったかと思いますが、企業保険に関してはその辺りをもっと自由にしてもいいんじゃないかというご意見をいただきました。企業保険の分野で仲立人がまさにいろいろな保険会社と交渉して顧客にとって最良の保険契約を提案するというような、そういう行動をする場合には、保険契約者が仲立人に対して直接報酬を支払うという形は十分に考えられるのかなという気がいたしております。その辺りも含めて、今後、特に法律学者が、実務家の御意見も聞きながらこの問題についてもう少し検討したほうがいいのかなと私も思いました。
それから、本日は8人のメンバーの方から御意見いただきましたけれども、皆様の御意見で共通していたのが、今回大変なスピード感を持ってこの報告書の取りまとめ金融庁のほうでしてくださったということについて、お褒めの言葉があったということでございます。私も大変困難なミッションを、考えられないようなスピード感でここまでたどり着いてくださったのではないかと思っています。
振り返って考えてみますと、昨年の7月にビッグモーター社の第三者委員会の報告書が出て、それから金融庁のほうでいろいろ調査をされて、年末には行政処分を出され、そして、有識者会議を立ち上げられて、4回で報告書の取りまとめのところまで来たわけでございます。私からもこの点についてねぎらいとお礼を申し上げたいと思います。
本日はまだお時間がございますので、2回目、2巡目の御意見をいただくことも可能かと思いますが、いかがでしょうか。御発言を希望されるようであれば、挙手をいただければと思います。増山メンバー、どうぞ。
【増山メンバー】 ありがとうございます。先ほど洲崎座長がおっしゃられたとおり、先ほどの手数料のところは、仲立人の手数料については、当社の例えばグローバルプログラムでいきますと、海外はフィーベースになっていて我々から払っていて、国内は今の監督指針に基づいて保険会社経由で払っている。そういう意味では、やっぱり実務と立場とが合っていないなというのは私自身も思っております。第3回のときに提言の中でも盛り込ませていただきましたけれども、特に大規模企業保険につきまして、やっぱり保険募集ということよりは、我々のリスクマネジメントの業務の一部を担っていただく役割という形になろうかと思いますので、それに見合う手数料体系が検討されてもよろしいのではないかということで提言をさせていただいた次第です。
一方で、御指摘のとおり、保険料の一物二価のような問題がどうしても出てきてしまいますので、いわゆるマスの商品とオーダーメードの商品をどういうふうに分けていくのかというところはやっぱり考えていかないといけないとは思っています。全部が全部そういう形になりますと、今度、事務も非常に煩雑になってしまうと思いますし、まさに一物二価で不公平じゃないかという議論も出てこようかと思いますので、どういうものがそういう扱いになるのかというところにつきましては慎重な議論が必要だろうとは思っております。
それから、先ほど嶋寺メンバーのほうから御提案いただいたオープンな対話の継続というのは、私もまさにそう思っております。今回いわゆる契約者の側の立場として初めてこういう場に出させていただいて、いろいろな議論ができたことは非常に有意義だったと思っております。それで、先ほどの17ページですかね、引受けの基準をもうちょっと厳しく見ていくべきじゃないかと。これも第3回で申し上げたかもしれないんですが、ある意味で契約者としては自分の首を絞めるというようなところもあります。現状なかなか、国内の保険会社さんに引き受けていただいているものというのは、かなりやっぱり無理をして大きなキャパシティーで支えていただいているものが、今回こういう報告書が出ることによってある意味で適正化されるということになりますと、我々は逆にその部分をどこかから見つけてこなければいけないと、こういうことになろうと思うんですが、残念ながら国内の保険会社さんで企業保険を受けられている会社さんは非常に数が限られておりますので、皆さんが一斉にそちらの方向に走られますと、我々は今度どこからキャパシティーを確保してくればよろしいのでしょうかというところにすぐに直面をするんじゃないかと思っております。
そういったところも含めて前回の提言のところでは、規制緩和も含めて御検討をお願いしますということで発言をさせていただいておりますし、最後の「おわりに」のところに書かれておりますけれども、今回のところは非常に多岐にわたっておりまして、すぐにできるものと法改正が必要なものとか様々あると思いますので、できるものはもう迅速にお進めいただきたいと思っております。
といいますのも、やはり市場の環境変化というのは非常に激しくて、数年前とやはり非常に状況が違いますというのは、我々の本業のビジネスもそうですし、保険業界もそうだと思います。今まではあまり何も考えなくても皆さんがやっていただけたものが、やはり企業も個人もある程度自分でリスクを取って、機会を求めねばならぬ、こういう時代にあると思いますので、そういうところに鑑みてみますと、やはりこういった場での共通のダイアログは非常に有効ですし、こういったオープンな対話を行うことによって、行き過ぎたものを戻したり、ここはもうしっかりやったほうがいいねというのを継続的にやっていくというのは非常に重要だと思います。
それから、山下メンバーのほうに御指摘いただきましたリスクマネジメントの向上、第1回からずっと私が申し上げているところだと思いますが、そういったところも継続的にぜひ議論をして、どうしたらこれが広まっていくだろうかと。特に企業につきましては、申し上げたとおり、第3回で柳瀬教授からもありましたけれども、企業が海外で収益を伸ばしていくという意味では、これもやはり追加のリスクを取ってビジネスをやっていかなければいけないというところですので、ますますリスクマネジメントレベルの重要性は高まってこようと思います。
第1回目でも発言をさせていただきましたけれども、その中では、リスクマネジメントの中でも、リスクコントロールの部分というのはまだまだできることがあるんじゃないかとも思っています。今回、企業代理店さんについてはかなり厳しい論調でレポートが書かれているとも思いますけれども、逆にそういったところで機会もある、チャンスもあると私自身は捉えております。我々自身もリスクマネジメント強化をしていく上で自分たちだけではできないことはたくさんあると思っておりますので、いろいろな皆様の知恵をお借りしながら、リスクマネジメントを高めていきたいと思っておる次第でございます。
以上です。
【洲崎座長】 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。永沢メンバー、お願いします。
【永沢メンバー】 このたびの損害保険業の市場の話とかと全く外れて、山下先生から大変貴重な御指摘があったなと思ったので、この機会に発言させていただきたいと思います。先生が2番目に今言われたリスクマネジメントの能力の向上、ある意味で教育の部分、金融教育においての部分が、先生が触れられてちょっと気になりましたので、一言この機会にお話しさせていただきたいと思います。
今、金融経済教育を国を、官民挙げて推進しておるところで、私も関わらせていただいていて、資産形成を中心に今、教材、それからいろいろなものを進めていますけれども、その中で今回、保険業界なんかはなかなかかめていないという状況もございまして、保険に関する教育をどういうふうに位置づけたらいいんだろうというところで苦労されているように感じております。損害保険協会と生命保険協会が一緒になって、保険教育をその中で入れようと一生懸命、今、手がかりを探っていらっしゃると私なんかは第三者的に見ておるんですけれども、そういう意味で、リスクという言葉について、投資、資産形成におけるリスクと、それから、いわゆるリスクマネジメント、企業のリスクマネジメントだけではなく、一般個人が人にどんな加害を与えて大きな負債を負うかもしれないとか、何か起きたときに大きな借金を背負うことになるんだよとか、そういうところについての教育が十分にまだ、特に学校教育においてできていないんじゃないかと。自分で備えるというところはあるんですけれども、人に何かしたときにというようなところちょっと欠けているように思っておりまして、こういうところを保険業界さんのほうがやはりもう少し前に出て、積極的に押してほしいなと思っておりまして、金融教育の中でもう少しこの立ち位置をしっかり持ってほしいなと思っております。
また、今回この会議に入りましたときに、保険を専門にされている学者の先生方から、だんだん保険を専攻する人が減ってきている、保険学を専攻する人が減ってきているんだという話も聞きまして、それは経済学者の方も、それから、法学者の方も少しそのように言われて、こんなに大事なリスクマネジメントの分野ですので、やはり若い方が、優秀な学者が入ってこられるように、その意味でももっとスポットライトが当たるような、学校段階からリスクマネジメントがどれだけ大事かということを教えるようにすることが必要なのかなと思いました。
時間が余ったようなので、山下先生のお話からちょっと気になりましたので、この機会にと思って申し上げさせていただきました。よろしくお願いいたします。以上です。
【洲崎座長】 どうもありがとうございました。今御指摘いただいた保険教育に関して損保業界と生保業界が協力してやるということについては、確かに十分考えられるというか、教育を受ける中学生、高校生からすると、やはり同じ機会に両方の保険について教えていただくというのはいいことだと思いますので、可能なのであれば両業界で協力して進めていただくのがいいかなと思います。
途中で大村メンバーから御指摘のあった、第三者評価について一緒にやるという点については、将来的にはあるとしても、すぐにはなかなか難しいのかなと思いますけれども、保険教育の面はそんな難しい問題ということはないような気がしますので、そういうことはあってもいいのかなと思いました。
では、嶋寺メンバー、どうぞ。
【嶋寺メンバー】 嶋寺です。少しお時間があればということで、コメントさせていただければと思います。先ほど増山メンバーからお話があった17ページの収支分析というところに絡む話でございます。これは、残念ながら外からは分かりにくいところがあり、実態を正確に把握できていない可能性がありますので、その点は割り引いて聞いていただければと思います。
私は企業保険の支払いの場面に関わることが多いのですけれども、なかなかその部分も外からは見えにくいと思います。消費者の保険というのはある程度リスクが定型化されているものが多いのですが、企業のリスクというのは非常に区々でございまして、実際に事故が起きた後にどんな作業をして保険金の支払いにつなげているかというのは分かりにくい部分があるかなと思います。
実情として、私が触れている範囲で申し上げますと、そもそも事故があっても原因が分からない。原因の分析だけで半年、1年かかるものも全然珍しくない、こういう世界でございます。その過程で保険会社の支払い担当者、営業担当者も関わりながら、原因の解明や、それが保険金の支払いの対象になるかどうかということを検討するのですが、実は保険会社の中で完結するわけではなくて、鑑定人であったり、技術士であったり、あるいは場合によっては実験をやったり、そういうことをしながら非常に手間がかかるプロセスを経ております。そのような形で保険会社としてもかなりのコストをかけて、ようやく支払いにたどり着く。しかも、支払いになったときの金額が非常に大きい。こういうことが企業保険の特徴としてはあります。
あと、私もいろいろな事案を見ていて感じるのですが、事故がほとんどなくて、10年に1回しか事故が起きない、こういう企業があると、以前申し上げたとおり、いつの間にか入った保険と事業のリスクがずれてしまっている、こんなことにつながりやすい。他方で1年のうちに何度も事故が起きると、こういう企業もあって、これはまさに増山メンバーからお話があった、企業としてリスクマネジメントができていないというところもあり、本当に企業ごとに様々でございます。
ただ、事故が多い企業の保険契約を見ても、保険料を見ると意外と安い、この保険料で本当にやっていけるのですかと、そういうふうに外からは見えたりするものもあったりします。恐らく個人の保険に比べてやはり大数の法則が働きにくい、企業の分野の収支分析はかなり難しいのだろうということは認識をしておりますが、それでもなお、本当にこの企業とは、単なるお付き合いではなく、保険取引として正常な関係を継続していけるのかという見方で保険料を見直していくとか、補償内容を場合によっては狭くしていくとか、こういうことをやっていくことが健全な保険制度につながっていくのかなと感じております。
今回、カルテルの場面で入札という話が出ておりますけれども、入札の場面を私もたくさん見ているわけではないのですが、幾つか触れたものの中には、極めて低い金額を提示する保険会社もあって、ほかの保険会社からすると、もちろん競争なのですが、あの金額でできるはずがないというような数字でとにかく契約を取りにいくような、こんな実情も一部には目にしております。その意味でも、やはり適正な保険料ということに対する意識を保険会社としても持つ必要があると思いますし、企業側としても、それはリスクマネジメント、リスクコントロールのために必要なコストだという認識を持ってもらって、ぜひとも保険業界が永続性のある形で健全な形で発展していってほしいなと思います。そのような観点で、正確に把握し切れているか分かりませんが、収支分析というところに絡めて御意見を申し上げました。
以上でございます。
【洲崎座長】 どうもありがとうございました。ほかに御意見はございませんか。
よろしゅうございますか。まだお時間はございますけれども、本日は一通り皆様から御意見をいただいたということで、自由討議は以上で終わらせていただきたいと思います。多くの貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。
最後に、本報告書案の今後の取りまとめについて御相談をさせていただく必要がございます。私といたしましては、本日お示ししました報告書案につきまして、おおむね御賛同をいただいたものと理解しております。つきましては、本日いただきました御意見を踏まえて、事務局を通じて各メンバーの方々と必要な調整を行ってもらいながら、本日の案文に一部表現等の修正はあるかもしれませんけれども、そういった所要の修正をさせていただいた上で、本有識者会議としての報告書案とさせていただきたいと思いますが、メンバーの皆様方、よろしいでしょうか。
どうもありがとうございます。先ほど申し上げたとおり、事務局を通じて必要な調整をさせていただきますが、最終的な修正や報告書の公表時期、方法につきましては、座長である私に御一任いただければと思いますが、これについてもよろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。今後の進め方についても御了承いただいたものとして扱わせていただきます。
それでは最後に、井林副大臣から御挨拶をいただければと思います。それでは、副大臣、よろしくお願いいたします。
【井林副大臣】 金融担当の副大臣の井林でございます。閉会に当たり、私より御挨拶を申し上げさせていただきたいと思います。
洲崎座長をはじめ、損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議のメンバーの皆様方におかれましては、4回にわたりまして、また非常に短い期間でございますが、積極的に議論に参加をいただきまして、誠にありがとうございました。
今後、本日の議論を踏まえた必要な修正を行った上で報告書を取りまとめ、その後、報告書の内容を踏まえながら、金融庁を中心に制度や監督の在り方について具体的な検討をしっかりと進めてまいりたいと思っております。恐らく、永沢メンバーからありました「検討することが望ましい」という点については、金融庁が誇る伊藤監督局長が率いるパワフルな監督局がしっかり検討をしていくと思っておりますので、御理解を賜れればと思っております。
保険会社の役割は、自然災害の頻発や激甚化、また、日本企業を取り巻くリスクの多様化が進む状況において、各経済主体がリスクを取って新たなチャレンジを行うことを支えるという観点で、適切な保険商品サービスの提供が不可欠であり、ますます重要になっていくものだと認識してございます。損害保険業が本来持つ機能で国民の生活の安定及び経済の発展に貢献できるように、損害保険会社が今般の事案を踏まえて業務改善のための不断の取組を自ら行うことが重要だと考えております。それは報告書の終わりの部分にも書かれていることだと思いますし、これを実現することこそが本有識者会議の最後の答えだと私は思っております。
金融庁としてもそうした対応を監督し、しっかりフォローアップしてまいります。これからの進め方についてはまたよく相談をさせていただきますけれども、今後とも先生方の御指導賜れますようにお願いを申し上げまして、また短期間でのこの議論への積極的な参加に最後に御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
【洲崎座長】 副大臣、どうもありがとうございました。
それでは、本有識者会議を終了いたします。皆様、本日はお忙しい中、御参加いただきまして、どうもありがとうございました。
―― 了 ――
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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
監督局保険課(内線 3863、3340)