金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第2回)議事録
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1.日時:
令和6年10月16日(水曜日)13時00分~15時30分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館 9階 905B共用会議室 ※オンライン併用
金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第2回)
【洲崎座長】
それでは、定刻になりましたので、ただいまより損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ第2回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。
本日の会合も、前回に引き続きオンライン会議を併用した開催とし、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせていただいております。また、議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願い申し上げます。
それでは、メディア関係者の方々は、ここで退席をお願いいたします。
(報道関係者退室)
【洲崎座長】
それでは、議事に移らせていただきます。
本日は、まず事務局より、保険募集人に関する規制の見直しについて御説明いただき、次に、金融庁金融研究センターで実施している研究プロジェクトである監督当局及び保険会社による代理店管理の在り方における現状報告として、同プロジェクトの特別研究員の一人である中出委員から、諸外国における保険代理店に関する制度比較について御説明いただいた上で、委員の皆様に御討議いただきます。その後、日本保険仲立人協会様より保険仲立人の活用促進に向けた制度の見直しについて御説明いただきます。保険仲立人の活用促進に向けた制度の見直しについての御討議は、第3回会合において実施を予定しております。
なお、公務の都合により、伊藤監督局長、繁本企画市場局総務課長におかれましては13時30分頃より途中参加、油布企画市場局長におかれましては、14時25分頃に途中退席されることとなっております。
それでは、事務局説明資料について、事務局より説明をお願いいたします。
【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
それでは、保険募集人に関する規制の見直しについて御説明させていただきます。お手元の資料1に沿って御説明をさせていただきます。今回は大規模乗合代理店に対する厳格な規制の適用です。
1ページです。資料の全体像ですが、現在の保険業法上の代理店に関する制度を御説明した上で、各論、具体的には兼業と大規模乗合代理店の規制を御議論いただきたいと考えております。
3ページです。こちらは有識者会議の報告書の抜粋になります。
保険金不正請求事案を受けて、代理店について様々な御提案をいただいているところですが、とりわけ、「Ⅱ.1.大規模代理店に対する指導等の実効性の確保」の部分では、2点目のとおり、大規模な保険代理店に対するより厳格な態勢整備を法令上の措置として求めることを検討するとされております。
4ページは、第1回会合における代理店関係の意見の抜粋になります。大規模な保険代理店は社会的な責任を果たしていくことが重要で、業法上の枠組みとしても上乗せ規制を課していくことが重要ではないか。具体的な規制としては、内部管理体制の整備や管理者責任の設置といった措置が考えられるのではないか。さらには、代理店に関しては大規模だけではなく、兼業や乗合等の要素に起因する問題もあり、それぞれの問題に対して必要な規制が必要な範囲に課されるよう丁寧に議論することが重要というような御意見があったところです。
5ページは保険募集に関する規制の全体像です。
6ページは飛ばしまして、7ページです。こちらは2014年の保険業法改正時の改正の内容を整理したものになります。
2014年の改正内容ですが、①については、所属保険会社等による指導・監督に加えて、保険募集人自身に対しても、その業務を適切に行うための体制を自ら整備することを求めるというもの、②については、規模の大きい特定保険募集人に対して、帳簿書類の備付けや事業報告書の提出を義務付けるものです。現在、この規模が大きい特定保険募集人というのは約450社程度とされております。
ここまでが現在の保険業法上の代理店に関する制度の説明ということで、続きまして、今回の保険金不正請求事案を踏まえた課題と主な論点になります。
9ページを御覧ください。今般の保険金不正請求事案の概要です。先般の有識者会議の資料として活用したものを、そのまま引用してきたものになります。
簡単に御説明をさせていただきますと、真ん中に保険代理店を営む企業があります。その下に保険代理店の構成要素という記載があります。保険代理店の構成要素としては3つ、兼業、乗合、大規模があって、それぞれの要素に起因する問題があると考えております。
まず兼業ですが、今回の事案では、修理工場から不正な修理費等の請求がなされました。通常であれば保険会社による適切なけん制機能が発揮されるはずですが、今回の事案では、保険代理店が非常に多くの顧客を有していたことで営業上の配慮がなされ、適切な査定がなされず、過大な保険金が支払われてしまったことが分かっております。
次に、乗合ですが、乗合代理店は複数の保険会社の保険商品を取り扱っていることから、顧客に対して適切な比較推奨を行うことが求められておりますが、今回は保険会社から代理店への便宜供与が比較推奨をゆがめていたことが分かっております。
最後、大規模ですが、保険会社に対する影響力が大きくなって、保険会社による実効的な教育等が行われづらくなり、使用人等の業務品質が向上しなかった結果、右にありますとおり、不適切な保険募集が認められたことが分かっております。これが今般の保険金不正請求事案の概要になります。
続いて10ページは、今回の保険金不正請求事案を踏まえた課題と主な論点です。一つ前のページで、代理店が有する3つの要素、兼業、乗合、大規模があると申し上げましたが、こうした3つの要素に起因する問題のうち、この第2回会合では兼業と大規模にフォーカスをして御議論をいただければと考えております。
兼業と大規模という2つの要素について、保険会社と保険代理店、それぞれの課題を整理したものを、このページの下に記載しております。
左側の保険会社における課題ですが、課題①、兼業代理店に対して、その事業に伴う弊害を適切に管理・防止する体制が整備されていなかった。課題②、大規模代理店に対して営業上の配慮から実効的な教育・管理・指導を実施できていなかった。
その右側の保険代理店における課題ですが、①として、兼業代理店においては、その代理店が兼業する保険金関連事業に伴う弊害を適切に管理・防止する体制を整備できていなかった。②保険会社からの実効的な教育・管理・指導が困難になっていた大規模代理店において、十分な内部管理体制が確保されていなかった。
こういった課題を受けた論点を右側に示しております。保険代理店による兼業等への対応をどのように考えるべきなのか。大規模代理店への対応をどう考えるべきか。こういった論点について、保険会社、保険代理店、それぞれ具体的にどういった対応を求めていくべきなのかということです。
なお、比較推奨の部分に関しては、次回以降のワーキングで議論をしたいと考えております。
まずは兼業への対応について、12ページを御覧ください。
下の図を御覧いただければと思います。保険金を請求する事業、ここでは保険金関連事業と記載しておりますが、この事業を兼業する代理店は、自らの利益を得るために不正な修理等を請求するといった、不当なインセンティブが生じるおそれがあります。通常であれば、代理店から不正な請求があったとしても、保険会社の保険金支払管理態勢が適切に機能すれば、過大な保険金支払いは未然に防止されるはずではあります。他方、今回の事案では、この保険会社におけるけん制機能が適切に機能せず、代理店に対して過大な保険金が支払われてしまいました。この背景には、この代理店が多くの保険募集の実績を有しており、保険会社にとって営業上重要な存在であったこと、あるいは保険会社がコンプライアンスより営業偏重のスタンスを有しており、それが支払管理部門にも影響を及ぼしていた、こういったことが背景にあって、代理店からの不正な請求が通り、過大な保険金が支払われ、図の緑色の文字の部分ですが、保険料の増加を通じて顧客の利益が害されたということが分かっております。
13ページが、こうした兼業への対応に関する基本的な考え方です。
ここで、まず申し上げたいこととしては、兼業を禁止すればいいのではないかといった考え方もあろうと思います。他方、その点に関しては、有識者会議において、兼業を禁止すれば、自動車の購入と自動車保険の加入がワンストップで行えなくなる。そういった顧客の利便性が低下してしまうのではないかというような意見が多く出されまして、保険代理店による兼業自体を禁止するのではなく、兼業に伴う弊害をしっかり防止していくというふうなアプローチが現実的ではないか、そういった方向性でまとまったところであります。
その上で、どのような対応が考えられるのかということを、このページで整理しております。
まず、一番上の四角ですが、保険会社に対して保険代理店が兼業する保険金関連事業による弊害を防止する措置を講じることを義務付けるということ、次に、保険代理店自身に対しても、自らの不当なインセンティブを適切に管理する措置を講じることを義務付けるということ。その際、2つ目の四角に書いてあることは、この規制の対象について、どう考えればいいのかという問題でして、先ほど申し上げたとおり、代理店からの不正請求は、その代理店が大規模であることに起因する営業上の配慮というものが保険会社になければ、適切なけん制機能が発揮され、過大な保険金支払いは未然に防止されるはずであろうと。つまり中小規模の代理店であれば、保険会社も営業上の配慮をする必要はないのではないかと考えられます。したがいまして、自らの不当なインセンティブを適切に管理するという措置を義務付ける代理店の対象は、保険会社のけん制機能が発揮されにくい大規模な代理店に限定してはどうかと考えております。
14ページはまとめであり、兼業という問題に対して、どういった対応を取るべきなのかを改めて整理しております。
左側、保険会社に対しては、全ての保険金関連事業を兼業する保険代理店に対して、顧客の利益等を害するおそれのある取引を特定する。それを管理するための方針を策定・公表する。さらにはそれを防止するための体制整備、例えば、営業部門と保険金支払部門の分離のようなことを求めていくべきではないかと考えております。
一方、保険代理店に対しては、これも先ほど申し上げたとおりですが、中小規模の代理店は顧客の利益を害するリスクが低いのではないかということで、中小規模には少し配慮し、対象は大規模な代理店に限定する。その上で、そういった大規模代理店に対して、保険会社と同様に顧客の利益等を害するおそれのある取引の特定、管理方針の策定・公表・体制整備といったことを求めていくべきではないかということです。ここまでが兼業への対応になります。
続きまして、大規模への対応ということで、16ページを御覧ください。
今般の事案では、保険会社は自社に大きな収益をもたらす大規模な代理店に対しては営業上の配慮が大きくなる。保険会社による、そうした代理店に対する適切な教育・管理・指導が困難になる。その結果、代理店における募集品質が高まらず、不適切な保険募集が認められたところです。そのために、2つ目の四角ですが、今般の事案の再発を防止するため、保険会社による教育・管理・指導が特に機能しにくいと考えられる一定の規模以上の乗合代理店に対して、上乗せの体制整備義務を課す。また、保険会社に対しても、そうした乗合代理店における体制整備の状況を把握するための義務を求めてはどうかと考えております。
17ページですが、そこで、まずはその対象となる大規模な代理店というものを特定していく必要があります。冒頭、現在の保険業法上、規模の大きい特定保険募集人という仕組みがあり、事業報告書等の提出の義務を課していると申し上げましたが、ここからさらに絞り込む形で、特定大規模乗合保険募集人という制度をつくってはどうかと考えております。
具体的な要件としては、図の下にも記載しておりますが、従来の規模の大きい特定保険募集人の要件、乗合保険会社2社以上、かつ手数料収入10億円以上という要件がありますが、これを参考にしながら、例えば、手数料収入の金額等の一定の要件を設定してはどうかと考えております。
なお、規模の大きい特定保険募集人は450社程度と申し上げましたけれども、この大まかな内訳を申し上げますと、専業の代理店というのが相応に多くあり、それ以外は兼業代理店、主たるものは金融機関、自動車販売業、不動産業といった業種であり、これらで大半が占められています。
18ページです。次に、その特定大規模乗合保険募集人にどのような措置を求めていくかですが、その前に、今回の保険金不正請求事案で認識された課題を振り返ろうと思います。このページは保険金不正請求事案における行政処分から引用しておりますが、実際に認められた問題です。
経営管理体制に関しては、取締役会を開催していなかった。法令遵守担当の役員や苦情管理担当の役員を設置していなかった。保険募集を確保するための体制に関しては、各店舗への指導・教育を行う部署が段階的に縮小・廃止され、保険募集人への組織的な教育・管理・指導が行われていなかった。保険募集に関する内部監査部署を設置していなかった。こういった問題が認められております。
こういった課題を受けて考えられる特定大規模乗合保険募集人に求める体制整備が19ページになります。
部門別に記載をしており、まずは管理部門になります。
法令遵守責任者や統括責任者の設置、また第1回会合では資格試験等で能力を担保する仕組みをというような御意見もいただきましたので、こういったものに対しては、一定の能力要件を求めることとしてはどうかと考えております。
その次は、顧客本位の業務運営の原則に基づく保険募集を確保するという観点から、保険募集指針の策定・公表、その下は苦情処理、内部通報に関する体制整備を求めてはどうかと考えております。その下は、先ほど兼業への対応策として申し上げた顧客の利益等を害するおそれのある取引の管理ということ。事業部門の下には、保険募集指針を踏まえ、顧客本位の業務運営の原則に基づく保険募集をしっかりと行っていただき、最後は事業部門から独立した内部監査部門の設置を求めてはどうかと考えております。
一番下に書いておりますのは、現在の保険業法上、保険代理店が不祥事件を起こした場合に、当局に不祥事件届出を行った保険会社以外の所属保険会社等が、その届出の有無を確認する方法が今は規定されておらず、保険代理店と各保険会社で適切な連携がなされない可能性があるため、保険会社が保険代理店に係る不祥事件届出書を当局に提出した場合に、この保険代理店自身が、その旨を他の所属保険会社等に通知することを求めてはどうかと考えております。
21ページになります。
ここまで申し上げたのは、特定大規模乗合保険募集人、代理店に対する上乗せ規制ですが、代理店に上乗せ規制を課すだけではなく、その代理店に保険募集業務を委託する保険会社に対しても一定の規制を求めていくべきではないかということで、右側の水色の部分を御覧いただければと思いますが、1つ目は、特定大規模乗合保険募集人への業務委託に関する方針の策定。2つ目は、これは先ほど兼業への対応策として申し上げましたが、顧客の利益を害するおそれのある取引の管理。最後は、特定大規模乗合保険募集人の法令遵守体制を検証するための管理責任者の配置です。
続いて、23ページを御覧ください。保険会社による求償権行使という問題です。こちらは第1回の会合において、山下先生から問題提起があったものです。
まず、問題の背景ですが、保険業法上、所属保険会社は原則として保険募集人が保険契約者に加えた損害を賠償する責任を負うこととされております。また、その責任を履行した場合、保険募集人に対して求償権を行使することができます。
他方、問題行為を起こした保険募集人に対する求償権が適切に行使されない場合、保険募集人による不適切な保険募集への抑止効果が働きづらいという懸念があります。こういった懸念から、10年前の金融審議会において保険会社による求償権行使を義務付けることについて検討が行われたものの、義務付けの結論までには至らなかったという経緯がございます。
今般、この議論を取り上げるに当たり、我々事務局のほうで、理由を問わず顧客に賠償を行った合計金額のうち、保険会社が保険代理店の故意または過失を含む何らかの理由による求償を行った実績を調べたところ、金額ベースでは約25%の割合で求償を行っているということが分かっております。
こういった実態がある中での対応の方向性ですが、保険会社から保険募集人への求償権の行使に当たっては、個別事案ごとに保険会社が顧客に支払った賠償金の額、求償に係るコスト、保険募集人との責任割合等の事情を総合的に考慮する実態がありますので、一律の義務化は引き続き慎重に考えるべきではないか。他方で、保険募集人による不適切な保険募集行為の抑止という観点からは、監督指針において、保険会社に対して求償権行使に関する考え方を整理することや、これに基づく適切な求償権行使が行われていることを把握・管理することを求めることとしてはどうか。また、その対象は、全ての保険募集人としてはどうかと考えております。
最後26ページは、本日のまとめのスライドになります。ここまで兼業、大規模、求償権の対応を検討してまいりましたが、ここで全体像を改めて整理しております。
問題は何だったのかということで、上の図にもありますが、保険代理店の規模が大きくなるほど保険会社の営業上の配慮が大きくなる。その結果、不正な修理費の請求に対するけん制機能や代理店による教育・管理・指導機能が弱まることが分かっております。
これに対応するため、まず左側の保険会社に求める対応ですが、一番上は兼業への対応として、兼業代理店が顧客の利益を害することを防止するための措置を求める。この対象は保険金関連事業を兼業する保険代理店全てを想定しております。
その下は、大規模乗合代理店に対する指導力の強化を目的とした体制整備、さらには求償権行使の適切な把握・管理、これが保険会社に対する措置です。
右側は保険代理店に求める対応ですが、まず、上乗せ規制の対象とする代理店を特定するため、特定大規模乗合保険募集人という制度を創設する。その上で、そうした代理店のうち、保険金関連事業を兼業する代理店に対しては、顧客の利益を害することのないよう、その事業を特定するとともに、そのリスクを適切に管理するための方針の策定を求める。さらには、この措置を含めて、特定大規模乗合保険募集人に対しては内部管理体制の強化、具体的には、法令遵守責任者の設置や苦情処理・内部通報体制の整備といった措置を求めていくことを考えております。
最後になりましたが、保険会社や保険代理店に新たな措置を求めるだけではなく、我々当局としても、今般の事案を受けて、保険代理店に対するモニタリングを強化していくことが重要であると考えております。
とりわけ、この特定大規模乗合保険募集人に対しては、他の代理店と比べてリスクが大きいということに鑑み、定期的にヒアリングを実施するほか、必要に応じて立入検査を実施するなど、モニタリングを集中的に実施してまいりたいと考えております。
事務局からの説明は以上になります。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、中出委員から御説明をお願いいたします。
【中出委員】
中出です。お手元の資料の2になります。
金融研究センターのプロジェクトでは、表紙に記載しておりますように、𡈽岐先生、山下先生、鄭先生、そして私で、外国の制度の調査をメインに研究しております。
調査対象の国としては、イギリス、ドイツ、米国、韓国になります。
各国の保険募集関係の規制は非常に詳細にわたっておりまして、また、いろいろな法が関係したり、法律だけではなく、監督指針というものもいろいろありまして、大変複雑です。現時点では調査を完了しておりませんが、本日の論点に関係する点について、若干報告をさせていただければと思います。
最初のページに少し留意点を記しておりますが、保険募集人の制度は各国で共通する点と異なる点があります。前提となる募集の実態や法制度も同じではなく、また、用語の概念や定義も共通というわけでもないので、正確な比較は非常に難しい面があります。全体として、大きな傾向を御理解いただくことが重要でないかと思いますので、その観点から説明させていただきたいと思います。
次に、一覧表を出してございますが、代理店という用語について、タイトルも諸外国における保険代理店と記しておりますが、少し注意が必要な点もございますので、最初に前提条件となることをお話させていただければと思います。
まず、この比較では英国、ドイツ、米国、韓国とさせていただいていますが、イギリスについてはEUのメンバーであるときに、EUの保険の募集指令に従って、制度を変更していることもございます。EU離脱後も、基本的にはEUの指令に基づいたものにして、それを修正したり補強していると理解しています。
また、ドイツについても基本的な部分にはEUとしての指令がございまして、それをドイツにおいて修正しているという形になります。そういった形では、EUについては各国で詳細は異なってきますが、全般としては、基本的なEU指令に基づいた仕組みができていると理解できます。
一方、アメリカについてですが、これは御承知のとおり、監督法も契約法も州法が原則になっておりまして、それぞれの州で内容が異なっている点があります。州法の統一化を目指したモデル法が制定されておりまして、保険監督法の分野についても、このモデル法があるのですが、現時点で大体モデル法を採択している州が40ぐらいになっています。
ここでは代表的な例としてニューヨーク州を挙げておりますが、ニューヨーク州ではモデル法とは異なる部分が多くございます。
それから、韓国については代理店制度については全般的には日本との共通点が多いように理解しておりますが、特に大規模代理店の台頭などの実態を踏まえ、いろいろな変更をしてきている点が注目されます。
個別項目に共通する重要な点として、もう一つお話ししたいのは、募集制度が非常に多様化している中で、これまでは直販、代理店、ブローカーと、こういった区分の制度になっていたと言えると思うのですが、そういった基本的な構造に少し変更が生じているということがございます。
そのため、代理店という意味も少し意味合いが変わってきている面がありまして、例えば、イギリスやドイツでは、代理店については小規模で保険会社に従属する専属の代理店、それと乗合代理店で規模が大きいところ、こういうことを完全に分けていまして、後者の独立性が高いようなところは、規制の内容としてはブローカーと同じようなものにしていくということになっている点が注目されます。名称も保険仲介業者、インターミディアリーという名前にしているということがございます。
もっとも、同じインターミディアリーとしても、ブローカーの場合には、市場の中から顧客のために保険商品を探してくるというものですし、代理店の場合には、自分が委託を受けている保険会社の中から探してくるということで違いはあるのですが、基本的な義務や内部統制関係については同じようになっているということが言えます。
そして、イギリスやドイツの場合では、体制整備に併せて、問題を起こした場合、顧客に対して損害を起こした場合に備えて、賠償責任保険の手配も義務化して、その点についても非常に詳細に規定しているということがございます。
米国については、ニューヨーク州やカリフォルニア州では、代理店とブローカーと保険募集人の概念を分けているのですが、全米のモデル法では、両者を合体させて、プロデューサーという新しい概念をつくっておりまして、保険募集人のライセンスにおいても、この両者を分けずに、プロデューサーとして一元化しているようになってきています。こうした中で、全米の業者団体も、代理店業界とブローカー業界が一緒になっている状況です。
詳細の説明に入る前に、雑駁な大枠の話をさせていただきましたが、保険募集人の制度自身が非常に動いてきているということがあります。これは募集の方式が多様化する中で、顧客から見た機能を重視して、従属する代理店、そして独立性の高い代理店という形で分けてきているものと理解をしております。
その上で、お手元の資料の1番から御覧いただきたいのですが、まず項目の1の大規模であることを要件とする保険代理店に対する上乗せ規制といった点ですが、これは韓国では、代理店の規模を基に分けるという規制がございまして、個人代理店一般と法人代理店、それから保険募集人が100名以上の法人代理店、それから保険募集人500名以上の法人代理店という形で代理店を4つに分けまして、それぞれに適する規制を設けているといった点があります。当然ながら、大規模代理店については上乗せの規制がなされていると理解できます。
それ以外のイギリス、ドイツ、それから米国については、具体的な数字をもって、大規模、それ以外といった区分けをしているわけではございませんが、先ほどお話をしましたように、独立性のある保険募集人については一定の義務を課しているということもございますし、また、ライセンスを取ったり、エージェント、あるいはインターミディアリーとしての申請をする中では、規模に応じた体制の整備を求められているということがございますので、同じように大規模であることに従って、義務も、とりわけ体制整備義務についても重くなっていると理解をしています。
次に、項目の2、3、4、5でございます。2番は保険代理店における監督者または責任者の配置、3番は保険代理店における苦情処理体制の整備、4番は保険代理店における内部通報体制の整備義務、それから5番として、保険代理店における内部監査体制の整備義務ということで分けて記させていただいていますが、これはいずれもコンプライアンスや内部管理システムの構築に関係する項目です。詳細は国によって違いもございますが、全体として見ていきますと、保険会社に従属する代理店は別として、独立性のある代理店については、自らきちんとした体制を整備してくださいというのが基本的な考えになっていると思います。その中身が、責任ある人を明確化して、そして苦情に対しても適切に対応する。そして、特に内部通報制度は、これは国によって書きぶりが違ってきますが、非常に重要なので、これを適切に整備しなさいとか、内部監査体制を強化してくださいと、こういうことが法律あるいは監督指針で詳細に書かれている状況がございます。
それから、次に項目6、7になりますが、この2つは利益相反関係です。
海外の法制を調べていきますと、利益相反、Conflict of interestというのは非常に重要な項目として掲げられておりまして、これは保険監督法の中で詳しく書いてあるものと、あるいは一般法の中で扱うものと、位置づけに違いはあるかと思うのですが、とても重要な項目として位置づけられているということが分かります。
この利益相反については、利益相反によって顧客の利益を害してはならないということで、監督法の中で明確化して、そしてそのような取引を明確化し、対策を決めて、またその方針を明らかにして開示もすると、こういう流れを規定しているものが見られます。
実際、保険募集の中では、保険会社、保険募集人、顧客、そして兼業の場合には兼業の仕事、業務、こういった関係の中で、様々な当事者の間でいろいろな利益相反関係が生じてきますので、それに対する対策は非常に重要であると思っています。各国でも、その辺りを踏まえて、こういう規定を設けているのではないかなと思います。
この利益相反については、例えば、イギリスを見ましても、保険会社に求める具体的な内容と、インターミディアリーとしての保険仲介者に求める義務にはあまり違いを設けておらず、同じようにいろいろ配慮しなさいということが書かれているところです。
以上、概略のみを説明させていただきましたが、欧州や米国では、専属の代理店と独立性のある代理店というものを分けて、扱いに違いを設けて、そして独立性のある代理店は、ブローカーであるか代理店であるかということにあまり関わらず、同じような規制をかけていくというのが流れであると思います。
顧客から見た場合に、保険募集人が代理店であるかブローカーであるかで、あまり違ってしまうというのも適切でないということなのではないかと理解しております。これは募集の機能ということを見た上で、専属であるか、独立かということで分けているものです。これは会社の形態で分けていくという考え方よりかは、どちらかというと機能面を重視して分けて、実質的な効果を出していこうという姿勢でないかと我々は理解しているところです。
以上は非常に雑駁な現時点での認識ではありますが、引き続き制度の調査を進めていきたいなと思っているところです。ありがとうございました。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。今後のワーキングでの議論に大変有用な資料を御提供いただいたものと思います。
それでは、これまでの説明を踏まえまして、委員の皆様方から幅広く御自由に御発言をいただければと思います。全体の会議時間の制約もございますので、御発言の時間といたしましては、前回もそうでしたけれども、大体1人当たり5分を目安にしていただければと思います。
対面で御出席いただいている方々におかれましては、お名前の札を立てていただき、オンラインで参加されている方におかれましては、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力いただきますようお願いいたします。
それでは、御議論をお願いできればと思います。いかがでしょうか。
中出委員、どうぞ。
【中出委員】
よろしいですか。今、話をした後で申し訳ございません。
事務局資料を拝見しまして、有識者会議の議論を十分踏まえて、非常に論点を分かりやすくまとめられて、全体としては、ここに書いてある方向性で異論はないところです。その上で、3点ほど気になる点をお話させていただければと思います。
まず第1点として、大規模乗合保険代理店に対する上乗せの規制のことで、19ページになります。
代理店の規模には大きな違いがありますし、一律の規制では適合しないことは明らかですので、このような上乗せ規制が必要であるということは明らかと思います。
先ほど海外の状況についてお話をさせていただきましたが、流れとしては、保険会社に従属するような代理店と独立性の高いところで分けていくというような方向が一つ考えられるのかなとは思っています。
海外のような法制がよいかどうかは、さらに慎重に考えるべきですので、時間をかけて検討する、あるいは研究する必要があるかと思っています。現状では、保険会社による教育・管理・指導というのを基本にして実効性を補完するということで、上乗せ規制という形で求めていくアプローチがよいのでないかと考えます。
そのうえで、この上乗せ規制の対象について、これが非常に重要かなと考えたのですが、今回の提案の内容の上乗せ規制の中身については、基本的にはコンプライアンス体制の整備というような中身に非常に近いのかなと思いました。それは一般の企業でも求められるということで、例えば、責任者を明確にして、いろいろな苦情に対応しようとか、監査をしっかりしましょうとか、これは一般的なコンプライアンス体制のもので、決して特殊なものでありませんので、既に体制整備をしているところも多いのではないかなと思います。
今回の御提案ですと、特定保険募集人のうちからさらに絞り込んで、そこにのみこれを義務化しましょうということですが、既に特定保険募集人も、15社以上の乗合とか、手数料収入だけで10億円以上あるということですから、かなり大きなところで、重要性とか乗合を考えると、保険会社による指導・管理だけでは、なかなか厳しい面はないかなと思います。すなわち自主的な体制整備義務を本当は求めたい対象ではないかという気がいたします。
今回の話から少し離れてしまうかもしれませんが、現行法では保険業法283条で所属保険会社が保険募集人が契約者に加えた損害を賠償する責任を負うわけですが、仮に、この特定大規模乗合保険募集人については、その独立性を認めて、283条の適用除外とするようなことがあるのであれば、その場合には相当絞り込んで、まさにブローカーに近いものに限定するということはあると思うのですが、もし、ここの辺りの現行法制を維持して変更しないのであれば、さらに少数に絞り込む必要があるかは検討するべきではないかなという気がしました。
先ほどの話で、モニタリングを強化することが最後にございまして、特に大規模のところについて、当局によるモニタリングの強化というお話ございました。これはとても重要かと思いますが、モニタリング自体はリスクベースで行うものですので、この特定大規模乗合保険募集人となる前の特定保険募集人であってもモニタリングの対象になることもあると思いますし、3層構造にするのがいいのか、あるいはこの特定大規模乗合保険募集人をどのように構成するのかというのは、さらに検討する必要があるのではないかなと思いました。
このように話をしましたのも、もともとこのコンプライアンス推進というのは、コストだけではなくて、会社の企業価値を高めることでもありますので、できるだけ整備することを奨励していきたいということがあるかと考えています。
それから2点目は利益相反関係です。利益相反関係は、特に兼業や乗合の場合に生じるかと思いますが、本来は大規模かどうかに関係しない問題であると思います。
利益相反については、保険会社が適切に管理・指導することは必要だとは思いますが、兼業する代理店は、その規模にかかわらず、利益相反について自ら適切に管理するということも必要なのではないかなという気がします。
金融サービス提供法の施行によって、保険募集においても顧客の最善の利益を図るということが求められているわけですが、保険業法上も、保険事業を行う場合には、利益相反関係によって顧客の利益を害してはならない、そういうことについての一般的な規定を設け、それはその保険募集人も含めて全体に係り、その適切な管理体制として、いろいろなものをつくっていくというのが望ましいのではないかなという気がします。
今回の御提案の内容はおおむね賛成するのですが、その根っこにある、もともとの利益相反に対する考え方、あるいは原則といったようなことも根拠となるような規定を業法に設けることができればよいのではないかと思います。
それから、最後に3点目ですが、求償権の管理の話です。23ページになります。
損害賠償の事案は非常に多様ですし、保険募集人の規模も様々ですので、求償を一律に義務化することは適切でないと考えます。しかし、保険募集人に故意や過失がある場合に、全額を賠償させるか、求償するかどうかは別として、一定の求償をすることは原則でないかなという気がします。放棄する場合には、なぜ放棄するのか、その理由が重要になるのではないかなと考えます。
特に乗合代理店の場合には保険会社間の競争がありますので、代理店との営業関係から求償を放棄してしまうような場合もあるかもしれません。求償されないだろうと考えられてしまえば、抑止効果は弱くなってしまいます。求償に関する考え方や原則を当局の監督指針で示す提案がされており、これについて私も賛成いたします。
さらに業界内で、代理店求償に関するガイドラインのような形で、どういう場合に求償放棄をするかとか、その程度とか、当局のガイドラインよりさらに具体的なものをまとめていくことで、求償放棄が営業の手段として利用されてしまったり、会社によって取扱いが大きく違うということを避けていくことも重要でないかなと思います。
以上です。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。
求償に関して、資料23ページの算式の分母は、理由を問わず、保険会社が顧客に支払った賠償金額の合計値となっていますので、本当にこれが、保険募集上、保険募集人の故意・過失で顧客に損害が生じて、保険会社が賠償金を支払った額なのかどうかというのははっきりしていません。約款のつくり方がまずかったので、つまり保険会社にも相当過失があって、その結果、顧客に損害が生じたというケースもひょっとしたら含まれているかもしれませんし、逆に賠償金という形ではなくて、本当は免責事由に該当するけれども賠償の趣旨で、保険金として支払うという処理をしていることもあるかもしれません。ですから、この金額の資料、データだけから、求償が足りない、あるいは十分に求償しているということはなかなか言いづらいかなと感じました。
それから、中出委員が言われた、体制整備というのは、株式会社で一般的に行われている、特に大会社では法律上要求されている内部統制システムの一環として考えてもいいのかなと思います。そうすると実際に重要となるのは内部通報システムですね。言葉は悪いですが、垂れ込みができるような仕組みというのは、結局、内部統制システムでも重要な構成要素となりますし、中出委員をキャプテンとするチームで調査いただいたところでは、諸外国でも、内部通報システム、内部通報制度を整備することを求めているということのようですが、我が国では、これまでのところは監督上の規律としてそのような要求はしてこなかったかなという感じがいたしますので、この点は、この資料を読ませていただいて、私もなるほどなと思ったところでございます。どうもありがとうございました。
それでは、大村委員。
【大村委員】
事務局の皆様、中出委員、端的にまとめられた資料に基づき、丁寧に御説明いただきありがとうございました。お陰様で、私自身も考えが整理されました。
大規模代理店に対する上乗せ規制を行うことについて、異論はございません。行為規制とは異なり、体制整備義務については、規模に応じて規制の軽重があってしかるべきだと思っており、また、一般論として、大規模代理店は保険会社との間で力関係が逆転する可能性が高いことから、法令上は大規模代理店に限定した形での上乗せ規制とすることで特段違和感はございません。
他方で、前回申し上げたこととも重なりますが、過度な便宜供与や不適切な比較推奨販売を含む今回の問題が発生している兼業代理店の中には、必ずしも大規模代理店の定義には該当しない、今回の上乗せ規制の対象にはなってこない者が多数存在するという点には留意が必要であると考えており、かかる代理店については不適切事案の再発防止の観点から、別途、行為規制を課すとともに、監督指針等でグラデーションをつける形で体制整備義務を課すことが必要ではないかと思っております。
特に兼業代理店の兼業部分については保険会社の委託業務ではございませんので、保険会社がどこに利益相反関係が発生するかということを一から洗い出すことは非常に難しいと考えております。そのため、まずは代理店が、きちんと事業の全体を捉えて、どこに利益相反関係が発生いうるかということを考えていく必要があり、その観点からは、グラデーションをつける中で、兼業代理店については、利益相反管理体制の確保を求める旨、明記していただく必要があると考えております。
保険代理店への対応の大枠については、違和感ございません。
1点付け加えるとすると、事務局資料18ページのところで、不正請求事案において認識された課題の中に、法令等遵守担当の役員の選任、所管部署の設置を行っていないというものがございまして、それに対する対応というのが特に今回は入っていないのかなと認識しております。これは法令でどこまで求めていくのかは難しいと思いますが、個人的に事業会社も含めて、いろいろコンプライアンスを見ていく中で、やはり営業担当の役員とコンプライアンス担当の役員が両輪となって事業を行っているということが適正な企業経営にとって非常に重要だと認識しておりまして、そういった意味で、役員の一人にコンプライアンス担当の方がいるという状況に導いていくということは、長い目で見ると必要ではないかと考えております。
事務局資料19ページに記載いただいている具体的な対応の方向性についても、基本的には違和感はございません。ただ、中出委員もおっしゃっておられるとおり、多くの企業においては、既に整備していてしかるべき基本的なことが多いとは思っており、その中で効果が最も期待できると思われるのは、法令等遵守責任者等の設置になります。
これについては、どうやってその能力を担保するのか、どれだけ権限を与えるのか、そして、どういった粒度で配置するのかという3点が大きなポイントであり、能力の担保の部分では、やはり資格要件を定めた上で、試験制度の新設が有効ではないかと考えます。もちろん、現状ある試験制度を活用することでも問題はないと思いますが、その場合には、生保募集、損保募集の両方を見ることができること、また乗合代理店特有の問題点について、きちんと目を向けられることという2つの要件は不可欠であり、そういった点を確保できるような試験制度であるべきと思っております。
また、権限につきましては、どこまで法で規制できるかという問題はございますが、トップに対して、きちんとレポーティングできるラインが確保されていること、それから営業からの介入を受けることなく、きちんと自分の業務を実施できる体制が整備されているということが最低限必要だと思いますし、加えて、可能であれば、プレイングマネジャーといった、募集をしながら管理もするという形でなく、管理業務に専任できる形が望ましいのだろうと思っております。
その観点からは、また、そこまで求めるのだとすると、さすがに事業所単位での設置は難しいと思っております。特に生保の場合、大規模代理店でもショップ販売店と言われているような形で、2、3人の保険募集人で回すところがございますので、そういったところに1人責任者を置くというのは少々過度な要求になってしまうと思われ、40~50人の保険募集人がいるところに1人の目安で法令等遵守責任者等が置かれるようになると望ましいと思っております。それが代理店に対する対応になります。
次に、保険会社に対する規制の対応の方向性、事務局資料21ページに移らせていただきます。
こちらについても、基本的な方向性については違和感なく、保険会社の場合は、対象を特定大規模乗合保険募集人に絞る必要はないと思っております。もちろん法令レベルではそろえていかないと、規定がつくりにくい可能性はあり、監督指針での対応ということも考えられるとは思いますが、例えば、個社ごとに方針を策定するとか、利益相反の体制整備を求めることに関しては、特定大規模乗合保険募集人に限定せずに、広く乗合代理店を対象とする体制整備を求めてほしいと考えております。
また、法令で規制することは難しいということは分かっていますが、本来的に保険会社に対する規制の対象として一番重要なのは手数料、代理店手数料ポイント制度かと思われます。法令遵守等体制に問題があったとしても、最終的に代理店側が満足する代理店手数料ポイントひいては代理店手数料が手に入るのだとすると、代理店側としては規制を守るインセンティブがなくなるだろうと思っておりまして、そこをいかに公明正大な形に持っていけるのかというところが本来的には一番のポイントだと思っております。
もちろん競争領域ではございますので、法令でそこをがちがちに縛っていくのは難しいということは理解しており、今回の対応の方向性の中に入っていないことには違和感はないのですが、ただ、それについては監督指針であったり、モニタリングであったり、立入検査であったり、いろいろな手法を使って、きちんと適正さが担保されるような形にしていただきたいなと思っております。
最後に、保険会社に特定大規模乗合保険募集人への業務委託に関する方針を策定することとしてはどうかと書かれてありますが、ここの業務委託については、対象となる保険募集人の範囲を広げたうえで、保険募集に関する業務委託に限定せず、広く商行為全体についての方針を策定いただいたほうがいいのではないかと思われます。加えて出向や便宜供与についても、各保険会社で個社ごとの方針というものを策定していただくということが本来的にはあってしかるべきではないかと思っております。
第1回のワーキング・グループのときに、業界ガイドラインを制定していますというお話はあり、個社として制定している企業があることも認識しておりますが、末端の従業員に至るまで、きちんと知らしめ、また、自分事として捉えていただくためには、各社が自社の出向方針であったり業務委託の方針であったりというものをきちんと制定してしかるべきだろうと思っております。
これは損保特有の問題ではありませんが、現在、保険会社から代理店に対する不適切なお金の流れという意味では、必ずしも手数料ではなくて、例えば広告料を過度に支払う等の形で、もっと裏側をくぐる巧妙な形でのやりとりがなされているというのは周知の事実かと思われます。そういったものをきちんと捕捉できない限り、実効性のある公正な規制は実現しないだろうと思っておりまして、その観点からは、商行為自体を禁止する、例えば、広告を代理店に出してもらうこと自体を禁止するというのは、行き過ぎた規制になるかと思いますが、当該行為が適正な対価でなされるように、まずは保険会社ごとに、どのような方針で、例えば広告を出すのかといったことをきちんと検討いただき、規定を作成していただきたいと思っております。
そのうえで、最終的に、そこがきちんと守られていることを確保できるかは、当局のモニタリング次第かと思っております。報告徴求等、当局は様々な権限を持っておりますので、不正なお金の流れがないかをきちんと見ていただくことが非常に重要になってくるのではないかと考えております。
以上です。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。
先ほど事業所単位で法令等遵守責任者を置くのは過度な要求になりかねないというお話がありましたが、まさに10人程度の保険募集人でやっているような事業所も結構あるだろうと思います。事務局が19ページで用意された資料に書いておられる法令等遵守責任者(事業所単位)と統括責任者(本店または主たる事業所)と、この2つが挙げられているということからすると、ここでの法令等遵守責任者には、そこまで重い責務を負わせるものではないのかなと。例えば、先ほどの内部通報システムによる通報があったときに、各事業者の法令等遵守責任者がそれを全部処理するということまでは想定されておられないという気がしましたが、いかがでしょうか。違法行為がありましたという内部通報があったときに対応するのは統括責任者であって、個々の事業所の法令等遵守責任者については、そこまでの仕事を想定しておらず、主として保険募集人の教育等を担当する人としてイメージされているかと思いましたが、そのような理解でよろしいでしょうか。
【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
その通りでございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。
山下委員からお手が挙がっております。御発言をお願いします。
【山下委員】
御指名いただきありがとうございます。山下です。
先ほど中出委員と洲崎座長の議論の中で、一つ分からなかったことがありまして、確認させていただきたいと思います。保険業法283条の責任の関係で、保険募集人に故意・過失がある・ないという話が出てきましたけれども、283条の責任というのは、保険募集人について不法行為責任が成立することが前提となります。283条の責任が成立するということは、保険募集人には常に故意・過失があるはずです。そのため、もし保険募集人に対して求償するのが原則だとすると、故意・過失があるからではなくて、故意と重過失があるとか、何か限定をかける必要があるようにも思った次第です。故意・過失があるからというと、常に求償ということになりますので。
【洲崎座長】
先ほど私が申し上げた分母のところは理由を問わずとあるので、まさに、今、山下委員が言われた、保険募集人には故意・過失はなかった、保険募集人については不法行為はなかったけれども、広い意味での保険会社が関わった保険募集について、何か保険会社としてこれはまずかったなと思うことがあったら、賠償金を支払っている可能性がありますので、それも含まれているのかと思います。
【山下委員】
保険募集人に故意・過失がなくても、保険会社に故意・過失があれば、保険会社自身の不法行為責任なので、それも全部包括していると。だから、保険会社が民法709条に基づいて責任を負う場合と、保険業法283条に基づいて責任を負う場合とが全部包括して分母に含まれている、ということでしょうか。
【洲崎座長】
はい、そうかなと思いました。だから、求償がどの程度行われているかをよりはっきりさせるためには、保険募集人に故意・過失があって、保険募集人が不法行為責任を負っている中で、保険業法283条に基づいて保険会社が責任を負った。その中で、求償した額、しなかった額というのが分かる、そういうデータがあれば、求償の実態というものがよりよく分かるかと思いますし、もしそういうデータを集めることが可能なのであれば、さらに保険募集人に故意・過失があって不法行為任を負う、そして保険会社が、保険募集人に代わって責任を履行したけれども、なぜ求償しなかったのか、それはいろいろな理由があって、保険募集人には資力がないとか、あるいは、保険会社側にもこれはまずいところ、先ほど言ったように、約款のつくりがまずくて保険募集人がちゃんと理解できないような約款のつくりになっていたようなケースもあるでしょうし、求償しなかった理由は何なのかということが分かるようなデータもあれば、より一層分かりやすいかなとは思いました。
【山下委員】
ありがとうございます。そういうことであればよく分かりました。
求償の話を続けさせていただきます。資料で求償の義務付けについて慎重に考えるべきだとあるのは、そのとおりだと思いました。というのは、資料23ページであがっているような各種事情を勘案して、結局、求償の費用対効果も考えないといけないので、それに対して一律の義務付けというのは、法制度としては少し無理があると思いました。そのため、ここはそのとおりだと思いました。
他方で、先ほど洲崎座長もおっしゃいましたし、中出委員のお話にも出てまいりましたけれども、求償するのかしないのかをきちんと理由づけて判断する必要はあると思っておりまして、その判断で考慮すべき事情は、まさに資料23ページの対応の方向性の1つ目の四角であがっているような事情だと思います。それについて、個々の賠償事案について、保険会社が事実関係の調査や分析をすることが必要だと思いますし、そういうことをきちんとすることを促すため、2つ目の四角であがっているような把握・管理の内容として求めるということであれば、非常に分かりやすい話かと思います。
そういうことだといたしますと、管理の対象をあらゆる保険募集人とするということは理解できるところです。その前提として、これは、求償権行使を適切に行うために把握・管理を求め、求償権の行使判断の前提として個々の事案の解明をしてもらうということであって、求償権を必ず行使しないといけないとか、求償権行使を無理強いするといった趣旨ではない、と。そうすると、賠償事案の全てについて管理・把握を求めるというのは、そう変な話でもありませんし、そうすると、管理・把握の対象として、あらゆる保険募集人というなら、生命保険募集人における営業職員も入ってくるわけですけれども、個人の営業職員の事案であっても、原因の把握は保険会社として適切に行うことが必要ではないかと考えますので、その範囲をあらゆる保険募集人にするということに違和感はありません。そして、把握・管理を求めれば、保険会社において、いろいろと調べていただけるということになるので、先ほど洲崎座長が求めていたような情報というのも、今後あがってきやすくなり、それを当局のほうでも把握しやすくなるのかと感じました。
求償は以上とし、利益相反の管理、13ページのほうに移りたいと思います。質問から入ったので、今回の提案に対する全体的な意見を申し上げる機会を失しましたが、まず、今回の提案全体は、大きく違和感があるわけではないということを申し上げます。特に利益相反管理のところは、兼業であれば利益相反は常に生じ得るというか、規模とは関係がなく、他方で、保険会社による監督の実効性という観点でいうと規模が問題となるというのは、まさにおっしゃるとおりだと思います。
その上で、提案において、保険会社については、利益相反管理は、委託先の全ての兼業の保険代理店を対象に行うということになっておりますが、それは、利益相反管理は兼業であれば常に生ずることなので、そのようにすべきだと思います。他方で、保険代理店における利益相反管理は規模によって限定するという提案になっており、その点について、中出委員が意見を述べておられました。この点についてどう考えるべきかは、私としても迷っていた部分ではありました。
中出委員がおっしゃるように、一般原則のような形で利益相反管理を求めるようなルールは、規模に関係なく置いてもいいのかなという気もする一方で、そこからさらに一定の体制整備を求めるのであれば、コスト負担能力との関係で、規模で切るということを考えるべきであるようにも思います。もし一定の体制整備を求めない形で利益相反管理をしましょうという抽象的なルールを置くのだとすると、販売時の顧客の最善利益を勘案するという義務との関係性や比較推奨の在り方とも関係する話だと思いますので、ここだけでは議論できないことかと思います。販売時の一般的な利益相反管理、顧客あるいは自己の利益を優先しないという話なので、今回の論点だけで議論することはできないのではないかという気がいたしました。
最後に、特定大規模乗合保険募集人の規制強化との関係で、事務局の説明の最後におっしゃってくださったことは非常に心強いと思っておりまして、モニタリングの強化について、明確におっしゃってくださった、この提案が実現した場合に、特定大規模乗合保険募集人について、相当モニタリングを考えて進めてくださる、強化してくださるということを明言していただけたということは、私は非常に心強く思っております。
以上でございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。では、小林委員、お願いします。
【小林委員】
御説明ありがとうございます。私もここに書かれている一つ一つのことに大きな違和感があるわけではないのですが、今回の事案で一番重要な問題は代理店と保険会社のコーポレートガバナンスが効いていないことだと思います。これは保険事業だけではなくて、本業においても恐らく効いていなかったのではないでしょうか。
その意味では、保険を扱っているか否かにかかわらず、当然のこととして内部管理体制を整備することが必要です。それを保険の分野の視点から規制や指針で実践させていくという考え方は良いと思います。
例えば代理店においては、保険部門の独立性が担保されていない、あるいは保険会社においては管理部門の独立性がしっかり担保されていれば、売上や契約件数と保険請求の割合が本当に妥当なのかというような様々な検証ができ、そこで何らかのアクションが取れるはずだったが、それが機能していない等という意味で、保険会社でのガバナンス、内部管理体制に不備があったということだと思います。これが根本的な原因だと思いますが、例えば代理店の中に統括責任者を置いたとしても、その人のレポーティングラインがどこにあるかによってガバナンスが効くか、効かないかというのは変わってしまうわけです。ですから、細かい一つ一つの規制や指針を作成するにあたっては、大きな目で見てどこに手を打てばガバナンス全体が強化されるのかを考えながら、一つ一つの項目を確認する必要があると思います。
加えて重要なことは、内部統制の整備を進めて、それをどういう監督体制で、第三者の目線でチェックをするのかを考え、あるいは開示を要求して外から見えるようにする、透明性を高めることを要求していくことだと思います。
具体的な点ですが、17ページの新たに特定大規模乗合保険募集人を創設するということについては、私は不要と考えます。わざわざ新たなカテゴリーを創設しなくても、特定保険募集人、あるいは、保険募集人に求められる内部統制の必要な条件、利益相反への必要な対応を明確にすれば、あえて、特定大規模乗合保険募集人というカテゴリーに限定しなくても、大きく網がかかるのではないかと思います。
一方で現在は、事業報告書が提出されているわけですが、事業報告書に何を書くことが要求されているのでしょうか。事業報告書の中で内部統制の管理の状況をしっかりと書いてもらい、そして第三者の目で、それが本当に実施されているのかということを検証するような監督の仕組みをつくる。監督の仕組みにおいても、例えば、自主規制機関が監督をするといった場合に、自主規制機関だけではなくて、プラスアルファで第三者の目が入ることを要求するような建て付けにすることがよいのではないかと思います。
以上のように、私自身は個別にこれが機能する、しないということを議論すると同時に、大きな目線で何を、どこを改善する、あるいはどういう枠組みをつくることによって、自主的にそれぞれの機能が外の目にさらされて、自主的に改善していくような仕組みにできるか、という目線で議論していくべきだと感じました。
これが私の全体としての意見です。同時に、これはこの場で議論することではないですが、そもそもネットの保険の利用が拡大するなど、保険の募集自体も変わってきている中で、従来の保険募集に関わる規制をベースにしてパッチをするだけでよいのか、それで本質的な問題が解決するのかということについては改めて考えていくべきではないかと感じました。なので、この機会ではなくても、保険行政の在り方というものについて、改めてしっかりと見直していく時期にあるのではないかと思います。
もう一点追加ですが、今日の議論は主にビッグモーターの件を念頭に置いた議論だと思いますが、生命保険なども含めて考えますと、マスの一般消費者に販売される保険を対象にする代理店の事業と、オーダーメイドでより複雑な保険、これはこの後の保険仲立人に関わってくると思いますが、そういった保険を販売する代理店や顧客とでは、求めるもの、求められる能力が異なると思います。今回の議論で全てを一つの規制や指針で網羅するのではなく、それぞれ少し焦点を絞って議論をしてもいいのかと感じました。以上です。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。17ページの図、現在は特定保険募集人のうち、規模の大きなものとして内閣府令で定める450社程度について、帳簿書類の備え付け義務、事業報告書の提出義務が課せられていますが、これをさらに絞るものとして、特定大規模乗合保険募集人を創設してはどうかということが、事務局の資料で書かれております。
【小林委員】
それまでは必要ないだろうと思います。
【洲崎座長】
この450社程度について、保険募集に係る内部管理体制の強化を図ればよいのではないかということでしょうか。
【小林委員】
はい。それを事業報告書にしっかりと書いてもらうと。
【洲崎座長】
事務局側での提案でなぜ対象の保険募集人を絞ろうとされたかというと、新しいタスクを課すときには、現在の450社全部に対しては、やりにくい気はしますし、弊害が特に大きそうな特定大規模乗合代理店に限るというのは、立法するときの一つ考えられるテクニックではあるのかと思うのですけれども、この辺りについて、事務局としては何か御感触のようなものはございますか。
【若原企画市場局参事官】
担当参事官の若原でございます。事務局内部でも随分、どういったところにフォーカスを当てるべきかを議論いたしましたが、本日の御指摘を踏まえまして、再検討してまいりたいと思います。事務局の原案としてこういったものを出させていただいたのは、内部でどういう議論をしていたかということを御紹介させていただきますと、例えば、責任者を置くときに、そこにどれだけの責任を求めるのかという話と相当リンクするのかというものになります。
形だけの責任者を置けというのであれば、相当広く義務を課しても、取りあえずこの人を置くということになります。一方で、実際に中できちんと責任者に正しく統制を利かせてもらおうとすると、例えばフロントの人が、フロントの責任者ではなくとも、ミドルの責任者的なものを兼ねるとすると、事実上、けん制が効かなくなるのだろうと。やはりそこは、ある程度の規模の会社でないと、そこまで厳密にフロント、ミドルを分けた上で、それぞれにきちんとした責任者を置くというのは難しい等々が考えられますが、規制を導入するからには実効性がある、つまりはそれなりにコストを伴う措置として入れたいと思います。
形として、取りあえず何かあったときのために責任者を配置し、その人が一義的には、例えば当局から何か言われたら対応しろなどという話ではなくて、実際に効果が伴う、効果が伴う以上は、それなりにコストを要する措置を求めることといたしますと、きちんとした計数的なものをお示しできないので、そこはまた御検討させていただきますけれども、今の450社というレベル感からいうと、肌感覚ですが、全部が全部、それだけのコスト負担を求めるというのは現実的でない。あるいは、そういう人たちまで全てとなりますと、我々が思っているよりは軽めの体制整備を求めることになってしまいます。
この度は再発防止ということを考え、きちんと中身のあることを求めることといたしますと、現行の特定保険募集人でいうと、もう少し絞り込みをやることで求めるべき責任といいますか、制度の水準を高めることができるのかということを考えまして、このように御提示させていただいた次第でございます。
繰り返しになりますけど、御指摘を踏まえまして、内部で再検討させていただきます。
【小林委員】
わざわざ、こういう定義をしなくても、今の枠組みの中で規模の段階をつけると、ほかの方からも御意見出ていましたけれども、そういうやり方も考えられるかとは思います。
【若原企画市場局参事官】
ありがとうございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。それでは、柳瀬委員、お願いします。
【柳瀬委員】
ご指名いただきありがとうございます。今回、ご提案された点について、全体的な方向感に違和感はございません。戦前・戦後という長い歴史の中で形成されてきた日本の保険業の構造的特徴を良い方向に変革するという意味で、今回のワーキング・グループの議論は日本の保険業にとって、ある意味、変革に向けた最後のチャンスではないかと感じています。私は、規制は基本的に最小限にとどめる方向性が良いと思っています。市場の失敗を排するために、規制をやむを得ず設ける程度にすることがよいという立場です。
また、今般の一連の問題について、経済学でいうところの「エージェンシー問題」が様々なところで発生しているもの、として理解しています。「エージェンシー問題」の原因は、取引当事者間に存在する情報の非対称性と利害の不一致であるため、この問題に対する処方箋の方向性としては、モニタリングの強化あるいは適切なインセンティブの設計ということになります。インセンティブの設計に関しては、罰則のようなマイナスのコストを小さくしたいと思うようなインセンティブを与えること、あるいは、より高い満足を得られるというプラスのインセンティブをうまく設計することの2通りがあると思います。
その上で、いくつか申し上げたいと思います。一つ目は、4ページの4点目についてです。ここで述べられている「大規模」、「兼業」、「乗合」という3つの構成要素の背後において想定されている「エージェンシー問題」、それぞれに対してより丁寧に議論する必要性を感じます。例えば、「大規模」の背後に想定されているのは、保険会社への「交渉力」の強さだと思います。「乗合」に関しても、顧客・保険会社間の情報の非対称性を原因とする保険会社への「交渉力」の強さだと思います。ただ、これら2つの「交渉力」は質的に同じものなのでしょうか。他方で、「兼業」に関しては、いわゆる典型的なモラルハザード問題、具体的には、過大投資問題の発生が確認されます。「大規模」、「兼業」、「乗合」といった3つの構成要素の背後にある「エージェンシー問題」の共通点と相違点についても整理する必要があるのではないかと思います。
2つ目が特定大規模の範囲でございます。例えば、特定大規模の範囲を、15社・10億円と設定した場合には、14社・9億9、999万円のような「上限」ぎりぎりのゾーンに多くが張りつくことが懸念されます。この場合、特定大規模の範囲の対象外になってしまいますが、こうしたある種のグレーゾーンに対しては、モニタリング機能を柔軟かつ強力に発揮することが期待されます。その一方で、幾らモニタリング機能を強化するといっても、監督資源に限界がある中で、どうしても取りこぼしが出てくるのは否めないと思います。そうであるならば、やはり、モニタリング強化のみならず、適切なインセンティブの設計という方向での工夫も検討すべきではないかと思案します。この意味において、保険会社による賠償責任の適用除外は関連する論点かもしれません。代理店自らが賠償責任のコストをできる限り小さくしたいというインセンティブをうまく活用することができるのであれば、保険会社による賠償責任の適用除外についても、特定大規模の範囲の論点と併せて考えても良いかもしれません。
3つ目は、プラス面としての報酬制度、手数料設計のあり方についてです。具体的には、品質の高い代理店を評価し、そういったところに高い料率が設定されるような配慮というものが業界の中で自発的に行われるような、そういった仕組みというものをサポートするような環境整備の可能性はないのでしょうか。例えば、最近生保業界の取組みにおいて、業務品質を反映した手数料体系を入れ始めていると聞きます。もちろん、業務品質を反映した手数料体系が適切に機能するためには多くの努力が必要だとは思いますが、損保分野でもそういった取組みを参考にしてもよいのかなと思います。
最後に、今回の様々な問題は、代理店の問題だけではないと思います。当然、保険会社側の営業担当者の報酬や昇進などの場面においても、適切なインセンティブの設計が重要です。この点は、既に、トップライン至上主義からの変革を進めるという方針転換について、損保業界も取り組まれるとのことですので、今後、注意深く見守っていく必要があると思います。以上でございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。質の良い保険募集をする代理店に高い手数料が支払われるようなインセンティブを伴う仕組みがうまくつくれればいいですけれども、なかなか簡単ではないかなという気はいたしております。
それでは、続きまして、小畑委員お願いいたします。
【小畑委員】
御指名いただきまして、ありがとうございます。昨今の不正請求事案に鑑みましても、今回、御提示いただいた規律を強化していく方向性については、特段異論はないところでございます。もっとも、この中でいろいろ体制整備義務等が要求されることになりますと、実際に体制を整備するのにはそれなりに一定の時間がかかることもありますので、実際に制度に落とし込むときには、対応のための準備時間をきちんと御考慮いただければよいのではないかと思っております。
また、今回、保険会社それから代理店が、それぞれにおいて規律を強化していくということでありますけれども、そうした自浄作用のみならず、やはり第三者の目も重要になってくるのではないかと思っております。前回、日本損害保険協会から御説明いただいた第三者評価、こういった取組もなされているということがありますので、そういったものも活用しながら、全体として、しっかりとした規律が確保できればよいのではないかと思っております。
その上で、細かいところについて申し上げますと、まず、兼業のところですけれども、今回いろいろな体制整備が求められるものについては、保険金関連事業を兼業している事業者がターゲットになっております。兼業によって不当なインセンティブ構造があるということだと思いますが、不当なインセンティブ構造がある事業とは何なのかということを、最終的に制度に落とし込むときには明確にしていただきたいと思います。これに対応すべき兼業者は誰なのかというところを明確化するためには、そこのところは必要だと思っております。
次に大規模乗合保険代理店の点でありますけれども、現行でも特定保険募集人という形で450社ぐらいあるということでございます。これをさらに絞り込んでいくということになりますと、まず、現行の特定保険募集人のメルクマールとして、一つは手数料10億円以上というところがありますけれども、10億円以上の中で450社が、どういう分布状況になっているのかと、手数料収入の分布状況も見ながら、絞り込むべきターゲットを考えていく必要があるのではないかと思います。その観点で、現行の450社の手数料収入の分布状況について、後ほど教えていただければと思います。
一方、絞り込んだ場合、絞り込みをかいくぐるということで、代理店を細分化していくということが起こるのではないか、細分化による潜脱というのが起こるのではないかも危惧するところでありまして、そういったところに対する手当てというのはどうお考えなのか教えていただければと思います。
それから、資料の19ページで、管理部門がやるべき行為として、保険募集に係る苦情処理、内部通報に関する体制整備を求めてはどうかというところがございまして、現行制度でも、我が国の制度では、公益通報者保護制度、公益通報者保護法というものがありまして、従業員300人超の事業者については、内部通報を受け付けて処理する体制整備義務が課されております。そういうことからすると、今回ここに書かれているのは、保険募集に係る案件について、300人を下回るような保険代理店、こういったところについても体制整備義務を課すということなのか、また、現行の公益通報者保護制度では、通報の対象となる事案というのが、基本的には刑事事件に発展するような違法行為が対象となっているわけですけれども、保険募集に係る案件ということになりますと、必ずしも刑事事件に係るものでもないものについても対象事案となり得るのか。その辺のつくり込みについても、今後明らかにしていただければと思います。
以上でございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。450社の分布状況がどうかという御質問と、それから新たにつくるとした内部通報に関する体制整備と現在の公益通報者保護法との関係について、事務局からお答えいただければと思います。
【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
ありがとうございます。まず、450社の手数料分布の話ですけれども、この部分については、今、手元にデータがございませんので、後日どういった形でお示しできるかは内部でも確認させていただいて、後日お示ししたいと思います。
それと大規模について、何らかの要件を設定したときに潜脱というものが起こり得るのではないかという御指摘もありましたけれども、その部分に関しても、今どういった要件を設定するのがいいかということは検討しておりますけれども、その中で、潜脱が起こらないような要件設定はよく考えてみたいと思います。
最後の公益通報者保護制度でありますけれども、これは小畑委員御指摘のとおり、今の法律上、300人を超える会社に対しては窓口の設置というものが設けられておりますけれども、今の我々が把握している規模の大きい特定保険募集人の中には300人に満たないところもあるということでありますので、少し対象を広げるという点と、範囲についても、公益通報者保護法は刑事事件ということで限定しておりますけれども、保険募集に関して幅広く、そういった不正な情報を素早くキャッチするという体制を構築するという意味では、こういった法律に定められたものよりも対象を広くするほうがよいのではないかと考えているところでございます。
【小畑委員】
ありがとうございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、滝沢委員、お願いします。
【滝沢委員】
ありがとうございます。既に皆様からもお話ありましたように、こちらに出ている大きな対応の方向性については違和感がございません。
一方で、先ほど事務局の方々との議論の中にもありましたように、規制単品でこれが正しいのかどうか、適切なのかどうかを判断するのが少し難しいようにも感じております。規制法令、監督指針、ガイドライン、そしてモニタリングの仕組みとセットで考えたときに、これで実効性を保てるのだろうかというような議論をするのが本来的な在り方なのではないかなと思っておりまして、今回、事務局から出していただいた案の中に、議論をされる中で隠れた前提的なものがあるのかなと思ってお伺いしておりました。
例えば、実効性の担保ということになりますと、内部管理体制の強化における管理責任者に求める責任の重さであったり、業務の範囲といったところを、事務局の中で御想定がおありの上でこのように記載されているのかなというところであったり、保険会社に対する施策の一つとして、営業部門と保険金等支払管理部門の適切な分離ということを今回上げていただいていたと思いますけれども、適切な分離というのは、果たしてどういうものであろうかというところにも恐らくお考えがあったうえで、このような記載に落とされているのかなと思います。やはり規制と両輪かなと思っていまして、モニタリングのような実効性を担保するためにお考えのものもセットでお話しいただくと、より議論が具体的になるのかなと思いながらお聞きしておりました。
もう1点、いろいろな方から既に御意見が出ていますけれども、上乗せ規制のところで、さらに450社から絞るのであろうかというところは議論になるのかなと思っておりました。既に御説明のありましたように、実効性ですとか、コスト効率ですとか、そういったところをお考えの上で450社から絞るということを今、御提案いただいているのだとは思いながら、なかなかこの450社はかなり大規模な代理店ばかりありますので、影響力を考えたときにもし絞り込むのであれば、それなりのリーズニングが必要なのかなと思いながら、お伺いしておりました。
乗合比較推奨の問題点というのは、次回以降の御議論ということは理解しつつも、先ほど大村委員からもありましたように、例えば、では便宜供与といったところが大規模代理店のみに発生していたのかというと、そうではないのではないかなと思っていまして、いわゆる、ニギリとかノルマとかといったようなことで比較推奨がゆがめられているということは、必ずしも大規模代理店に限った話ではないと理解しております。大村委員からグラデーションという言葉をいただきましたが、私はこれが結構しっくりきていまして、大規模代理店に上乗せ規制をかけることとは別に、その下の層のところにも、どのような実効性のある打ち手をしていくのかというところは少し考えてみてもいいのかなと思っております。以上です。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。管理責任者の責任としてどういうものを考えておられるかということが御質問としてあったかと思いますが、例えば管理責任者として選ばれながら、その仕事をちゃんと尽くさない、例えば、隠蔽をしようとしたとかということになれば、その代理店自身の責任として、例えば登録を取り消すような処分になるかもしれませんし、管理責任者自身も、例えば、その後、保険募集の世界で活動することが困難になるようなこともあり得るのかなという気はしておりますけれども、その辺りについて、事務局として何かありますでしょうか。
【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
基本的に座長の御認識のとおりであります。あと1点だけ、営業部門と査定部門の分離の話を御質問いただいたかと思いますけれども、いろいろ代理店とか保険会社の関係者と話をしていますと、例えば保険会社の本店のほうでは、少なくとも役員、部長レベルでは営業部門と査定部門の担当者が分かれていて、そこはきっちりと分離がなされているという話は聞きます。一方で、代理店、支店レベルになりますと、そこの分離というのはなかなか実効的なものができていない。上は同じ支店長という形になっているところもあるようですので、例えばそういったところに関しては、支払部門に関しては支店長から少し切り分けて、本体に直轄でというような見直しは、一つアイデアとしては考えられるかなと思っております。
【滝沢委員】
ありがとうございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、嶋寺委員、お願いします。
【嶋寺委員】
私からも何点かコメントをさせていただきたいと思います。
まず、14ページのところで、保険会社の体制整備と、兼業代理店の体制整備に分けて方向性が示されておりますが、保険会社に対しては、全ての兼業代理店を対象とした体制整備を求めつつ、代理店側に対しては一定規模以上の場合に限定するという形で、両者の考え方を分けて提案がされているところです。一見すると、両者の不整合があるようにも見えますが、実態を踏まえますと、私はこのような整理の仕方には合理性があると考えております。
有識者会議でも、第1回ワーキング・グループでも意見がありましたが、保険代理店以外の業務を兼業している場合に利益相反の問題が生じるというのは、実は規模には関わらない問題であると思いますので、本来は兼業に伴う問題という意味では、全ての兼業代理店に体制整備を求めるということも考えられますが、どうしても体制整備の義務付けには対応コストが伴いますので、その兼ね合いの下で一定規模以上の代理店に絞るということは、バランスの取れた規制という観点からは説得力があると思います。
一方で、保険会社については、一定規模以上の兼業代理店にのみ監督・指導をすればよいというものではなく、もともと全ての代理店・保険募集人に対して監督・指導すべき立場にあると思いますので、対象を絞るべきではないと思います。特に今回の資料では、大規模になるほど営業上の配慮が働いて、保険会社のけん制が機能しづらくなるという点が問題として挙げられておりますが、実務に関わっている感覚で申し上げますと、保険会社の営業的な配慮というのは、中小規模の代理店にも働いていて、程度の差こそありますけども、保険会社の営業の立場として売上を減らしたくないというのは同じではないかと思います。そのように考えますと、保険会社の体制整備の必要性という点では、代理店の規模に関わらず、広く規制の対象としていくことがあるべき規制の方向性ではないかと思いました。
保険会社の体制整備の具体例として、保険金等支払管理部門と営業部門の適切な分離が挙げられておりますが、実際に個別の保険金支払事案に関わっていますと、支払部門が、声の大きい代理店の意向に配慮しながら支払い判断をしていると思われる実態があったり、あるいは、代理店であるとか、その意向を受けた営業部門が強く支払いを求めることが支払部門に対するプレッシャーとして働いてしまう、そのような実態もあることからしますと、営業部門からの分離というのは一つの方法ですけども、営業的な配慮から完全に切り離された適切な支払管理態勢を構築することが、今回の一連の不正請求事案を踏まえた、保険会社の対応として最も重要な部分ではないかと感じております。
既にほかの委員からも御指摘がありましたので、触れられていないところで申し上げますと、19ページの一番末尾の部分です。不祥事件届出書に係る情報を他の所属保険会社にも通知するという案が示されておりますが、それ自体は、代理店の業務の改善を図るという観点で望ましいと思いますが、実際、不祥事件の該当性に関する相談を日常的に保険会社等から受けている立場から申し上げますと、同じ代理店の行為であっても、それを不祥事件として届け出るかどうかというのは、かなり保険会社ごとに温度差があるような印象を受けております。代理店に配慮して届出の要否を判断したり、あるいは、不祥事件届出の数が他社よりも増えて目立ってしまうことを避けたいといった配慮が働くことがあったりしますと、このような通知制度を幾ら設けても意味がなくなってしまうと思いますので、恣意的な形で不祥事件届出の判断がされないようにするということが、そもそもの大前提になると考えています。
最後に、求償のところも少しコメントしたいと思います。23ページですが、既に各委員から御指摘がありましたとおり、私も義務付けまでは適切ではないと考えておりますが、実際に、保険会社として適切な検討プロセスを経て求償権を行使する・しないの判断がされているのかは疑問に感じるところがございます。特に募集時のトラブルに関しては、顧客と保険募集人の意見が食い違うということが非常に多いため、何が事実であるか、代理店にどの程度の責任があるかをきちんと特定をすることが必要だと思いますが、実際には、保険会社による事実確認や、原因調査の場面で代理店から十分な協力が得られず、そのために事実が特定できないまま判断をしてしまっているようなケースもあるように感じております。
実務上は、保険会社は保険募集人に対する調査を書面ベースで行うことが基本になっておりますが、書面の回答だけでは事実がよく分からないことも多いので、書面だけではなく、直接ヒアリングなども行って事実を特定することが重要であると思います。そのような事実確認を迅速かつ適切に行っていくためには、代理店としても保険会社の調査や監査を受け入れるということが非常に重要になってくると思いますし、それが代理店の資格を維持する要件にもなる重要な位置づけのものであることを明確にしていただいたほうがいいのではないかと思いました。
現状では、事実がよく分からないとか、代理店が責任を認めていないことを理由に、結論ありきで、安易に求償が難しいという整理がされているケースもあるように感じておりますので、代理店へのけん制という意味でも、顧客被害の再発を防止するという意味でも、保険会社がきちんと事実を特定した上で、求償の可否について適切な把握、管理を行っていくことが、最低限求められるのではないかと思います。
私からのコメントは以上でございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。この後も御発言の希望が続いておりますので、先に進ませていただきたいと思います。上杉委員、お願いします。
【上杉委員】
御指名ありがとうございます。
今回の御説明を受けまして、特にとりわけ保険代理店にも責任を持たせようという方向性に関しては賛同したいと思います。それはそうとしても、1点だけ、先ほど中出委員から御発言があったように、利益相反関係に関しては、一般的な規定を設けるというところについては私もそのように思っております。今回提示されたのは、兼業、乗合、そして大規模という類型でして、この点について、私は実務家ではないので、様々な業界の方に伺ったところ、この分類は今のところ最大公約数としては納得いくものだと伺っています。けれども、今後どのような形で不正なインセンティブが働くかは分からないので、原則論じゃないですけれども、そのような形で出すのがいいのかなと思います。ただ、先ほど山下委員もおっしゃったように、そこは体制規制ではなくて行為規制となるため、それについての細かな話については、次回以降になるかと思いました。
それとの関係で、先ほど小林委員からも発言があったように、今回、保険業法改正については損保にクローズアップされていますけれども、生命保険にも影響を及ぼすということを考えますと、既に、銀行窓販という形で一部の兼業に関しては上乗せ規制が設けられている状況の中ですので、どういった形で、規制していくかというところは、少し慎重に考えた上で検討していく必要があるかと個人的に思った次第でございます。
利益相反に戻りますけれども、例えば、民法では総則の部分で、利益相反の一般規定を設けており、そのあとに、個別具体的な例示が条文のところに入っているときもありますので、そのような形で一般的な規定を設けていただくことも1つかと思いました。
以上になります。ありがとうございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。オンラインでの御発言の希望が出ておりますので、順次御発言いただきたいと思います。最初に、片山委員、お願いできますでしょうか。
【片山委員】
連合の片山です。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
私からも、お示しいただいた対応の方向性については、特に違和感がございません。その上で、3点意見を申し述べたいと思います。
まず1点目ですが、保険会社に求める対応です。今回の事例にあった入庫誘導や人員派遣など、保険会社による代理店への便宜供与が代理店の比較推奨販売をゆがめた点について、保険会社の営業現場においては、シェア獲得や保険販売実績のために各社間で競争心理が働きやすい状況が背景にあったものと考えています。過度な競争に歯止めをかけるためには、今回、資料の21ページで御提案のあった特定大規模乗合保険募集人への業務委託に関する指針などの中で、禁止すべき便宜供与を明示した上で、監督官庁がモニタリングし、保険会社各社が、ルールを適切に運用できているかどうか確認する体制整備を行うべきと考えます。
次に、代理店に求める対応として、代理店自身のコンプライアンス体制の強化は不可欠だと思いますが、実効性をさらに高める方策として、公益通報制度の活用など、企業内での自浄作用が働きやすくなる環境整備を促すことも有効と考えます。
最後に、3点目ですが、特定大規模乗合保険募集人の監督強化についてです。現在の規模が大きい特定保険募集人は450社程度とのことですので、オフサイトモニタリングなどの金融庁検査を実施していると承知しています。既に監督官庁による検査が実施されていたにもかかわらず、今回のような問題が明らかになったわけですから、新設される特定大規模乗合保険募集人に対して、上乗せの体制整備義務を課す中で、一般的な金融機関と同様に、金融庁による定期的なオンサイトモニタリングなど、監督官庁としての役割発揮も期待したいと思います。
私からは以上です。ありがとうございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。続きまして、同じくオンラインで松井委員、お願いできますでしょうか。
【松井委員】
東京大学の松井でございます。発言の機会をいただきありがとうございます。
もう既に中出委員はじめ多くの委員が発言されている内容とかなり重なってはおりますけれども、全体像と代理店を捕捉するメルクマールに関して、続いて求償に関して、簡単に発言をしたいと思います。
まず、大きな全体像といたしまして、各委員の御懸念は、恐らく体制整備を必要としている会社をある程度広く捕捉する必要があるのではないかということ。他方で、後半部分の自分で責任を取る、ブローカーに近いような会社とは、相当程度絞った数になるはずでありまして、それらを1つの基準にまとめるのは、そもそも最初から難しいのかもしれないのですけれども、ここら辺についてどのように規制をつくっていくのかという点について、皆さん御関心があったのではないかと理解しております。
私の感触としては、やはり監督をするという実効性の観点、行政サンクションを伴う監督ということを考えますと、450社よりも絞るということはあるかと思いますけれども、その際に、絞る趣旨は何かということと、それから皆様が御懸念のような分かりやすいメルクマールによる潜脱で実効性が下がるということ、この2つに関しては配慮が必要だと思っております。
今回の特定大規模乗合保険募集人については、恐らく多くの契約を抱えていて社会的に大きな影響があることを考えて、このようなメルクマールがつくられているかと思いますけれども、今回問題となっているのは、保険会社との間で強い交渉力を有している保険代理店は何かという観点から絞り込むということを考えるわけでありまして、そこのプロキシとして、乗合であることと兼業であること、すなわち、顧客を維持、それから獲得する能力が高いかどうかということと、それからいざというときに、ほかの保険と販売推奨の観点で負けるのではないかというおそれがあること、この2つをてこにこのような目安を持って特定大規模乗合保険募集人というものを考えているのではないかと思うわけですけれども、このプロキシでいいのか。例えば、交渉力というのが強まるために15社の乗合が必要なのか、あるいは大規模であり交渉力を保険会社に対して持つというときに、保険料収入は10億円でいいのか。先ほど、手数料だけじゃなくて様々な対価関係があるという御指摘もありましたし、今回は恐らく自動車を念頭に置いてこのようなメルクマールになるということはあるかと思いますけれども、様々な保険者を考えたときに、手数料の額を一律の目安とする形になるというのが妥当なのかといったこともあるかもしれませんので、ターゲットの設計の仕方について、全く同じでよいのかどうかということは1つあるのかもしれないということも考えております。
そのようなことを含めて、その他様々な要件ということを考えるときに考慮をお願いしたいということであります。他の委員がおっしゃっておられたように、やはりこれらの会社だけを規制対象にしておけば、適正な代理店の行動が実現するというわけではありませんので、自主的なものを含めて広くガバナンスの改善を目指す体制を構築することを目指すのがよいのではないかと思っております。
他方で、先ほど申し上げたとおり、自分で責任を取れる体制、保険業法283条との関係という点では自分で責任を取れることがセルフディシプリンという観点からは望ましいということになるかと思いますけれども、今回のこの数の代理店が全て所属保険管理会社の監督義務の下から離れてもうまくいくような会社かというと、恐らくは、そのような感覚はないのではないかと思うわけで、顧客に対する責任を適切に負うのに、適切な規模は何かということを将来的に見極めるためにも、各委員御指摘のとおり、求償の実態と、その内容について、どの程度保険会社の側から請求できるようになっていくのかという点についての調査を含め見極めということは非常に重要だと考えております。
以上です。よろしくお願いいたします。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。特定保険募集人から、さらに規模の大きいものとして450社、そこから、新しい規律としてさらに絞るかという話の問題なのですけれども、ここに入ってくる450社、あるいはそれよりもさらに絞ったところに入ってくる会社としては、むしろ手数料額からすると、生命保険代理店のほうが多くなることが想定されるのでしょうか。自動車保険だけを売っている保険募集人は、そんなに手数料額は大きくないかという気はするのですけれども。
【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
450社とさらに絞り込む対象における生命保険を販売している代理店の割合を改めて確認しようと思いますけれども、いずれにしても、生命保険を販売している代理店がどちらにも相応の数入ってくるということは間違いないと思っています。
【洲崎座長】
分かりました。ありがとうございます。
それでは、沖野委員、お願いいたします。
【沖野委員】
ありがとうございます。東京大学の沖野でございます。
私からは、2点お話をさせていただきたいと思います。1点目が兼業について、2点目が求償についてでございます。
兼業について、これは既に御指摘がありましたように、兼業がもたらす利益相反の考慮から、顧客の利益や信頼を害するような行為をすることへのインセンティブが働くということに対して、顧客の利益や信頼をまさに害するような行為をどう防止するのかということが問題だと理解されますが、そのような誘因が生じるとか、そのような行為の可能性が高まるということ自体は、やはり規模とは関係がないものだと考えられます。
ここでの問題は、そのような行為の防止をどのように実現するかということと、そのためのチェックを誰がどのように行うか。また、透明性の確保をどう行うかという問題と、さらには、それがそのようなチェックや透明性の確保をきちんと行われているかということを行政が監督するという構造の中で、誰にどのような行動を求めるのかということが問題になっているものと理解しております。
その上で、今回の御提案は、特定の、つまり一定の規模の代理店については、代理店としても体制の整備を求め、他方で、保険会社については、どのような代理店であるか、規模に関わらず、体制整備などを求めるという形になっております。私が必ずしも理解できないところは、この代理店に求める事項が3点あると理解しておりまして、1点目が問題の取引を特定すること、2点目がその管理の方針を策定し公表すること、3点目として防止体制を組むことですが、これが全てセットなのかということでございます。と申しますのは、防止するにあたって、一体どういうことが問題となって、それにどのように取り組まなければいけないのかということを一番明らかにすべきは、どのような規模かに関わらず代理店であると考えられるからです。ただ、代理店の規模等によっては、そのような行為の特定や方針の策定はなかなか人的な資源等もあって難しいということがあるのかもしれない。しかしながら、他方で、保険会社にはそれが求められるわけですので、それをミラーするような形で、このような取引が問題であって、このような形で対応することにしていますぐらいは、規模に関わらず特定できそうな気がしますし、その認識や理解を深めてもらうためにも、そのようなことが必要になるということはあり得るのではないかと思うわけです。それに対して、防止体制としてかなり大がかりなものを組むとなりますと、それは適切なものというのは限られてくるだろうという感じがしています。
ですので、このような形でいいのだろうかというのは疑問には思うわけですが、他方で、保険会社の体制整備として問題となる取引を特定してどのような対処であるか方針を策定するといっても、結局、相手方にきちんとやってもらうということが一番大事ですので、結局は対象となるような代理店にしっかりとその認識を共有して対応していただくように徹底するということになるので、そこで組み込まれるかと思っております。
そのようなことから今のような御提案になるのではないかと理解しており、それであればそのような形で、規模に限らない問題ではあるけれども、このような形で保険会社の場合と代理店の場合とで一定の対象の範囲を違えてくるということはあり得るかと思ったところです。
2点目が、求償の関係ですが、求償については、結論としては、御提案のように全て義務付けるということではなくて、適切に管理をすることが妥当なのだろうと思っております。この求償の話については、先ほどの代理店が故意・過失に基づいて他人に大きく損害を加えたときに保険会社が責任を負うという規定ということで、民法715条の使用者責任に構造が類似していると思ったわけですけれども、使用者が被用者に対して求償することができるということですが、その対比でも、これは全件義務付けという性格のものなのだろうかと考えると、そうではなかろうと思います。保険会社と保険代理店は使用者、被用者ではないですし、何よりも保険会社は監督責任を負っており、その監督責任を適切に行使する観点からの求償権行使となりますので、全く同じには考えられない。基本的には、むしろ求償すべきものは求償するというのが方針であろうとは思います。まして、求償権があるということは金銭債権があるということですので、それを行使しない、あるいは放棄するということは債務免除ということになりますので、そのような経済的な便益を与えるということにもなります。ですので、適切に行使することが大事だと思いますが、それは監督権の行使としてであるならば、やはり全件というのは、過失もいろいろな場合もありますし、さらにはやはり内部的な割合の問題もあって、大部分が保険会社のほうが内部負担として負うべきような場合でも、僅かでも求償させるということが本当に適切かということもありますので、適切な裁量の行使によって、どのような場合に求償権を行使するかを判断していただくというのがよろしいし、そしてその相手方というのは、規模等に関わらず全部を対象に判断していただくというのが適切なように思われます。ただ、そうしたときに、適切に行使するといっても、行使を期待できるような状況にあるのかということでして、求償権の行使がどのようなことをもたらすのか、現在、その母数がもっと小さくなるのではないかということですけれども、25%程度の行使ということで、なかなか行使しにくい継続的な関係があって、それを切ることになりはしないかとか、そのようなことがあるとすると、適切な行使をサポートするような観点が必要ではないだろうかと考えております。例えばガイドラインなどによりまして、このような場合はむしろ原則として行使するものだということであれば、保険会社としてもこのような場合には行使をしなければならないのだということで、行使を正当化するというのは、もともと正当なのでしょうけれども、そのようなサポートや支援、あるいは期待できる最良の行使や管理を十分できるようにするという観点から何らかのサポートも考える必要はないのだろうかと気になっております。
以上です。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。兼業に関して一言申し上げますと、今回は兼業による利益相反について、一般的な利益相反が問題になったというよりは、自動車ディーラーで修理工場を持っている代理店が保険金詐欺をした、保険会社に対して保険金の不正請求をしたことが問題となっております。本来であれば、保険会社は、そのような請求に対してはきちんと調査をして、支払うべきものでないものは支払わないという態度を取るべきところ、大規模な保険代理店であるがゆえに営業のことも考えて、査定が甘くなってしまったという問題が根本で、有識者会議のときにほかにこのような問題が起こるようなことはあるのかということが議論になったと思います。
結局のところ、これは自動車修理工場という特殊なケースで起こる問題で、ほかではあまり考えにくいのではないかというようなことになったかと思います。そうすると、兼業の問題を一般的な利益相反の問題として規律することは、個人的にはどうかという感じがしております。山下委員もそのことを言われましたけれども、保険の募集に関しては利益相反に当たるようなことはたくさんあるわけです。それこそ、保険仲立人が顧客から委託を受けて保険会社から手数料、報酬を受けるというのも、考えてみれば一種の利益相反的な状況なので、利益相反に関する一般的な規律をどうするかということについては、いろいろなことも考えた上で慎重に考えていただくのがよいのではないかというのが、現時点での個人的な感想でございます。
オブザーバーからの御発言をいただきたいと思います。日本自動車販売協会連合会様から、御発言の希望がございます。
【日本自動車販売協会連合会】
日本自動車販売協会連合会でございます。御発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
私どもは新車のいわゆる正規ディーラー1,200社程度が参加する業界団体でございまして、多くの会員企業が主として自動車保険について代理店を兼業しておりますので、今回の有識者報告書につきましては大変重く受け止めております。先般も、私どもの委員会において金融庁から御説明をいただき、それを踏まえて、さらにコンプライアンスを徹底していこうということにいたしております。
その上で、本日の論点につきまして申し述べさせていただきますと、1つに、今回の検討のきっかけとなった大手中古車専用店の事案につきましては、私どもと違って極めて大規模に全国展開されている事業者におけるかなり特殊な事案かと思っております。資料の18ページに、今回認識された課題ということでいろいろな課題が列挙されておりましたが、このような課題が当てはまるような会員企業は、私どもの中にあまりないかと思っております。今回、私どもの会員企業で販売台数や手数料収入の非常に大きい数社にヒアリングをしたところでございますが、例えば定期的に保険会社と協議をして指導管理を受けているほか、既に2014年の法改正を踏まえて、ガバナンス強化あるいはコンプライアンス徹底のための社内ルールをつくるなど、そのような対応をしてきている企業がほとんどでございます。前回も本当に規模が大きくなったら直ちにすべからく指導管理が難しいのかといった御議論もあったと記憶をしておりますが、手数料収入が10億を超えると、直ちに管理指導が難しくなる、あるいは今回の事案のようなことが起きる明白なリスクがあるということでないように、私どもは思っております。
したがいまして、今回、大規模性に着目して上乗せの義務を課すことについては、特に異論はないわけでございますが、その対象につきましては、例えばビッグモーターと同等以上の、相当程度大きいものに絞り込んでいくような合理的な範囲にしていただくのが、あるべき方向性のような気がしております。また、求める体制整備や兼業に係る管理方針の策定につきましては、合理性のある内容だと思っておりますが、いずれにしても、実際に細かい規制とか運用を検討していく際に、代理店にとって過大な、人的、資金的負担にならないような、有効かつ必要最小限なものとしていただいて、結果的に代理店のトータルコストが上がって、顧客のほうに転嫁されるようなリスクもあろうかと思いますので、実態に即して合理的な義務を設定していただきたいと思っております。
私どもから以上でございます。ありがとうございました。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。生命保険協会様からも御発言希望がありますので、生命保険協会様より御発言いただきたいと思います。
【生命保険協会】
生命保険協会の中村でございます。発言の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
まず、全体としてでございますが、今回の大規模な乗合代理店等の業務品質を改善、向上させることを目的に、新たな枠組みとして、特定大規模乗合保険募集人を創設の上、当局の監督の下、保険会社及び特定大規模乗合保険募集人に関する上乗せの体制整備を行って、顧客保護に係る措置を求めていくという、大きな方向性については異存ございません。
今後の検討においては、引き続き不適切な事象の再発防止、これによって得られるベネフィットや規制の実効性、実現性等を勘案しながら議論をいただければと存じます。
生命保険協会といたしましても、顧客本意の業務運営の徹底に向けて、損保で発生した事案及び業界の本質的課題を見極めながら必要な対応を検討することを着実に進めてまいる所存でございます。
そうした上で、今回のテーマについて、2点意見を述べさせていただければと思います。
まず1点目でございますが、求償権の行使についてでございます。保険会社から保険募集人に対し適切に求償を行うことによって、不適切な保険募集行為へのけん制となるということで、求償権を適切に行使、把握・管理することは非常に重要な役割だと考えています。本資料の26ページに記載がございますが、今回の事案では、保険代理店の規模が大きいほど営業上の配慮が大きくなって、保険会社のけん制機能は弱くなるという、いわゆるパワーバランスの逆転が指摘されておりますが、求償権についてもこれと同じようなことが起こることはあってはならないと考えております。
これらを踏まえまして、資料の23ページにございます求償権行使の適切な把握・管理につきましては、主として特定大規模乗合保険募集人が対象、広く捉えても、複数の商品を取り扱う乗合代理店に限定すべきではないかと考えているところでございます。今後、議論の中で、乗合代理店に限定して行う旨を監督指針等で規定することも御検討いただければと存じます。
2点目は、特定大規模乗合保険募集人における法令遵守責任者や、統括責任者の設置についてでございます。
こちらも、本資料の19ページに記載のとおり、上乗せの体制整備として保険募集人の業務品質の向上を目的にこのような責任者を設置するということや、その要件となる資格制度を創出することは必要な措置だと受け止めております。
一方で、このような法令等遵守責任者や統括責任者の業務遂行能力を判定するため、試験の合否に基づく資格制度の創設については、このような制度が持続可能となるような体制を確保することも重要だと考えており、既存制度の活用の容認も含め、実効性と実現性に配慮した制度設計になるよう、引き続き御議論いただければと存じます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。1点確認したいのですけれども、求償の問題に関して相手方を大規模な乗合代理店に限るという話がありました。これは、求償を義務付けるとした場合に、そのように限定すべきだ、ということではなく、そもそも現行の保険業法283条を修正するということですか。
【生命保険協会】
求償権行使の義務付けのことではなく、把握・管理について、もう少し絞り込んでもいいのではないかという意見でございます。
【洲崎座長】
保険業法283条を改正して、一部の代理店や保険募集人に限定するということではないのですね。
【生命保険協会】
求償権の行使を限定するということではなくて、把握・管理について、乗合代理店に限定してもいいのではないかという意見です。
【洲崎座長】
把握・管理を求める対象を保険募集人全般にしなくてもよいのではないかということですね。分かりました。
どうもありがとうございました。それでは、日本損害保険代理業協会様、御発言をお願いします。
【日本損害保険代理業協会】
日本代協の金澤です。
利益相反について、先ほどから規模に関係なくというお話もありまして、利益相反自体はそうだと思います。恐らく自動車修理業整備事業がほとんどというような、先ほど洲崎座長からもお話ありましたけれども、そこが中心になると思いますけれども、いろいろな管理の仕方につきましては、資料の13ページにもありますけども、中小規模のところですと、なかなかどこまでというところがありますので、過度な負荷にならないよう御配慮いただければと思っております。
それからもう1点、19ページの法令等遵守責任者、統括責任者について、内容としては、特段の違和感ございません。もし試験制度を新設するということであれば、多くの代理店が生保も損保も両方扱っておりますので、生保だけ損保だけということではなく、生損共通の資格制度をつくっていただければありがたい、損保で受けて生保でも同じようなことを受けるということではない制度があればと思っております。よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。本日は、日本保険仲立人協会様からプレゼンテーションをいただくことになっております。
日本保険仲立人協会理事長の平賀様から御説明お願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【日本保険仲立人協会】
よろしくお願いいたします。
今御紹介いただきました、一般社団法人日本保険仲立人協会の理事長を務めております平賀でございます。本日は、御覧いただいておりますとおり、3つのトピックについて、まず、なじみがなかなかない保険仲立人につきまして簡単に御紹介させていただきまして、2番目としまして、保険仲立人活用のメリット、そして3つ目に保険仲立人の活用促進に向けて現行制度などの見直しに関して検討を要望する事項につきまして、御紹介をさせていただきたいと思います。何とぞよろしくお願いいたします。
1ページを御覧ください。まずは、保険仲立人につきまして、第1回目に事務局から概要を説明していただいておりますが、ここで改めて簡単に御紹介させていただきます。
保険業法の299条には、保険仲立人は、顧客からの委託を受けて、その顧客のため誠実に保険契約の締結の媒介を行わなければならないと記されています。保険仲立人制度は、御存じのとおり1995年の保険業法の改正以降に導入されましたが、保険会社から独立し、改正前から存在している保険代理店とは違う立場で、保険を媒介することだけが目的ではなく、顧客が保有しているリスクに対してベストアドバイスあるいはベストソリューションを提供する、言わば専門職業人、これが保険仲立人、保険ブローカーであります。
2ページを御覧ください。1995年前後で比較しますと、95年までは、損害保険分野では、損害保険料率算定会の下、保険はそれぞれ同一の条件あるいは保険料率でありました。企業が購買する保険は系列取引が主流であり、競争原理を基にした保険会社の選択はあまり一般的ではありませんでした。企業ごとに保険代理店をつくり、手数料収入を得ることで、保険料の割引効果を享受していました。95年の業法改正によって損害保険の自由化が起こり、企業のグローバル化に伴って株主構成も変容し、先ほどから出ておりますコーポレートガバナンスが重視されてきたことから、保険政策は企業のリスクマネジメントの一環として考え始められるようになり、保険仲立人の存在が注目されるようになりました。
3ページを御覧ください。保険業界は、最近多発している激甚災害、主に自然災害ですけども、激甚災害などの対応に追われています。企業保険に関しましても、現在世界的な問題になっていますのが、補償ギャップです。企業に関しましては、大きな災害が発生したときの個社の経済的損失と、従来から購買している、あるいは持っている保険の保険金支払いの差額であり、十分な保険を買っていなかったことによる実質的な自己負担が発生しています。申し遅れましたけども、我々保険仲立人が扱っている分野は主に企業分野でございまして、家計分野につきましては全く扱っていないことではありませんけども、今日お話しする内容の多くは企業保険に類しているということで御了解いただきたいと思います。
今の自己負担の発生に伴って、結局、リスクの大きさを十分に検証しないまま、そして、十分な保険市場調査、いわゆるマーケティングをしなかったことでこの差異が生まれて、企業の健全な財務経営に影響を与えてしまう可能性をはらんでいます。
4ページを御覧ください。それでは、どのような検証が十分ではなかったのでしょうか。これは、日本企業のリスクファイナンス、特に保険プログラムの課題につきまして、3つほど要点を絞っております。まずは、企業に潜在するリスクの総量を含めて、リスクの実態を十分に分析・検証していないこと。本来転嫁手段として有効な保険を十分に購買していないこと。そして、どの保険に転嫁するかというプロセスを実施していなかったことが挙げられます。リスクに対する個社自身の管理、リスクマネジャーなどの不在、あるいは保険仲立人を含む社外からのアドバイスを受けるような環境になかったことが原因と考えられます。
5ページを御覧ください。そもそも資産や売上げが数十、数百億規模の企業にとりまして、保険を1円から購買するという必要はありません。どれくらい自己負担、あるいは自己保有するかの検証や決定が肝要であり、そのことで保険コストの削減、その削減によってほかのリスクを新たに保険として購買をする、転嫁するなどの措置を取ることも可能になりますが、それが実践されていないケースが企業の多くに見られます。
6ページを御覧ください。御覧いただいていますのはリスクのドミノ効果といいまして、リスクがどのように波及するかを示しています。保険仲立人は、保険という商品を媒介することだけが目的ではなく、企業であります顧客に潜在、内包しているリスクにどのようなものがあり、それがほかのリスクにどのように波及、連鎖するかを分析し、それらのリスクに対応するためのベストアドバイスを提供することが主体であり、その結果として、リスクの対応手段の1つである転嫁手段、つまり、保険の媒介行為も実施しています。
7ページを御覧ください。御覧いただいています図は、企業のリスクマネジメントを説明するときに用いるリスクマネジメントのプロセスです。企業のリスクをいきなり保険に転化させるのではなく、企業に潜在しているリスクの洗い出しから始まり、処理すべきリスクの優先順位を決め、そしてリスクの処理手段を保有、転嫁、軽減あるいはコントロール、回避、いずれにするかを決める一連のプロセスの中でベストアドバイスを提供するのが保険仲立人の義務であり仕事であります。顧客にとって保険を単に買うのではなく、どのように買うのか、あるいは買う必要があるのか、なければどのようにリスクに対応するかの提案力が、まさに保険仲立人のビジネスの真骨頂であります。
8ページを御覧ください。例えば、御覧いただいている図は、企業が実際に購買している保険の区分け、我々はパネルと呼んでいますが、企業が購買する保険は、時として保険会社1社では引受けができず、マーケティングを介して保険プログラムに参加してもらう保険会社を複数者、国内外で探してこなければなりません。単に探すのではなく、保険仲立人がつくった保険条件に同意してくれるかどうかの交渉、さらには保険金額を幾らまで拠出してもらえるかなどの交渉があります。結果として、図のように複数の保険会社が参画して、ようやくプログラム、パネルが出来上がります。海外市場や、あるいは再保険の分野に精通している保険仲立人であればこそ完成できるプログラムであります。
9ページを御覧ください。先ほどのパネルは、いろいろな手法を用いて完成できるものであります。縦割りの共同保険、あるいは横割りのレイアリング、そして、その両方のパターンを組み合わせたパネル型など、リスクに応じたスキーム、あるいは保険プログラムの構築は、繰り返しになりますが、まさに保険仲立人ができる領域であり、保険マーケットに精通しているからこそでき得るものであります。
10ページを御覧ください。リスクの転嫁手段の1つである保険は、既成の保険商品を媒介することではなく、テーラーメードで発案し、その内容で同意・引受けをしていただける保険会社をどれだけ募れるかにかかっております。顧客の立場で彼らのニーズやリスクをしっかりと把握し、保険条件などを顧客にしっかりと説明できる専門知識を有していかなければなりません。リスクといいましても、業種や職種によってリスクの形態は様々であります。それぞれの専門家を配するだけでなく、ベストアドバイスを提供するために、海外のネットワークなどを含む様々な専門家と連携することも保険仲立人の責務であります。
11ページを御覧ください。保険仲立人は、企業が抱えるリスクに対して、保険による転嫁手段の提案ばかりでなく、リスクマネジメントのプロセスの図で御紹介したリスクの処理策である軽減・保有・回避などに関するアドバイスやコンサルティングを提供しています。
今御覧いただいておりますのは、エンジニアリングサービスあるいは戦略のリスクコンサルティング、安全衛生リスクコンサルティングと多岐にわたっておりますけども、自然災害や火災・爆発が起きた場合に予想される損害額の算出や分析、工場や職場で労働災害を起こさないためにどのような手段を講じることで安全安心を担保できるのか、実際に災害が起きたときの初動や事業復旧に向けた事業継続プランの提供など、リスクなどの有事の事前・事後対応に関して、トータルでサービスやコンサルティングを提供できることが、保険仲立人を活用するメリットであると確信しております。
12ページを御覧ください。今まで保険仲立人の立ち位置やビジネススコープについて御紹介しましたが、保険仲立人の活用促進に向けて現状確認をしますと、共存している乗合代理店と保険仲立人の機能的な差異が分かりにくいこと。それにもかかわらず、規制制度においてはイコールフッティングとは言いがたい状況であること。その制度の見直しをぜひともお願いしたいと考えております。今回は、今御覧いただいております5つの要望事項につきまして御説明をさせていただきます。
13ページを御覧ください。まず1点目は、保険仲立人の保証金供託制度を見直しして、供託に係る負担を軽減していただきたいことです。細かい字で恐縮ですけれども、いろんな同業他社あるいはほかの業界の供託金の金額水準を置いています。現在、保険仲立人の最低供託金は2,000万円ですが、これを1,000万円に減額し、また、保証額についても、現行の受け取る媒介手数料の3年分合計額から3年の年間平均額に変更していただきたいと考えております。御覧のとおり、同業界や他業界で比較しましても、2,000万円の設定は高いと感じております。加えて、保険仲立人制度ができてから裁判外の紛争解決手続、ADRへの持込み事案はなく、顧客に損失を与えるリスクが希少であること、協会なりに行ったベンチマークでは1,000万円が妥当であると判断しております。供託金の代替となる法定要件を充足する専門職業賠償責任保険、プロフェッショナルライアビリティ、プロフェッショナルインデムニティと呼ばれていますけれども、この購入が容易でない現状を鑑みますと、この法定要件の見直しも、ぜひとも御検討いただきたくお願い申し上げます。
14ページを御覧ください。2つ目は、保険仲立人が媒介手数料を顧客から受領することを当事者の合意にゆだね、監督指針の改定をお願いしたいことです。保険仲立人は、顧客の委託を受けて、保険契約を媒介することをなりわいの1つとしていますが、手数料を保険会社経由で受領することは、保険仲立人の立場と矛盾しているように感じられます。手数料の受領に関しては、顧客・保険会社、そして保険仲立人の合意によって決定できると指針の改定をしていただきたいですが、先ほど申し上げたとおり、家計分野などのいわゆる定型的な保険契約につきましては、実務的な効率性や顧客のニーズ、あるいは利便性との兼ね合いを考えてみる必要があると考えております。
15ページを御覧ください。3つ目は、損害保険代理店における特定契約の取扱いの保険仲立人への準用を廃止していただきたい点です。特定契約比率に関する規制は、保険代理店の自立と専門性の向上を即すことが趣旨であり、もともと自立し、専門性を有しているとして登録されている保険仲立人が代理店と同じ規制を受ける理由はないと考えております。また、保険仲立人は顧客の委託を受けており、顧客からの評価や満足度を満たしていることを反映した取引比率の多寡について規制を受けるのは顧客本位の趣旨にそぐわないとも考えております。
16ページを御覧ください。4つ目は、保険仲立人と保険代理店等との協業の許容をし、監督指針の改定をお願いしたい点です。かなり画期的な事項ではありますが、顧客にとってのリスク処理の最善策の1つの組合せであると思い、要望の1つとしてお願いいたしたいです。ただし、前提とすべき条件として、保険仲立人と企業内を含む保険代理店が顧客に関する情報を共有し、協業することに対して同意すること、さらには、協業する場合のそれぞれの機能や役割、そして報酬などの分担に関し、顧客を含めた3者の合意がなされ、かつ、保険会社の了承も得ることが肝要であると考えています。当然ながら、包括的な協業は意味しておらず、あくまでも個別契約ごとに合意を取り付けるということが必要であると考えております。
17ページを御覧ください。最後の5つ目は、海外直接付保の保険の例外対象とされている保険以外の新たなリスクの保険転嫁に際して、海外直接付保の申請プロセスを簡明化していただきたいことです。御存じのとおり、グローバル化や急激な環境変化、そして技術革新によってリスクも多様化してきております。企業が抱えるリスクの保険対応も多様化してきている中で、顧客のニーズに的確に対応するためには、従来の申請プロセスではなく、新しいリスクへの迅速な対応をするために、事前申請手続を簡素化し、プロセスのリードタイムを短くしていただきたい所存であります。
非常に駆け足で恐縮でございますけども、以上が、先ほど申し上げました、保険仲立人の概要、活用のメリット及び検討要望事項の3つのポイントにつきまして、簡単に御紹介させていただきました。
洲崎座長にお戻しします。御清聴ありがとうございました。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。保険仲立人に関する御議論は次回の会議でさせていただきたいと思います。
本日いただきました御説明、御意見等を踏まえまして、今後さらに議論を深めていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
次回日程につきましては、委員の先生方の御予定等を踏まえて、後日事務局より連絡をさせていただきたいと思います。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
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