金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第3回)議事録
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1.日時:
令和6年10月30日(水曜日)14時00分~16時00分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館 9階 905B共用会議室 ※オンライン併用
金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第3回)
【洲崎座長】
それでは、定刻になりましたので、ただいまより損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ第3回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。
本日の会合も、前回に引き続き、オンライン会議を併用した開催とし、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせていただいております。
また、議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願い申し上げます。
メディア関係者の方々は、ここで御退席をお願いいたします。よろしくお願いします。
(報道関係者退室)
【洲崎座長】
それでは、議事に移らせていただきます。本日は、まず事務局より、「保険仲立人の活用促進に向けた施策、保険契約者等に対する便宜供与の解消」及び「第2回ワーキング・グループでの議論を踏まえた考え方の整理(案)」について御説明いただき、その後、委員の皆様に御討議をいただきます。
それでは、事務局説明資料について、事務局より説明をお願いいたします。
【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
それでは、「保険仲立人の活用促進に向けた施策、保険契約者等に対する便宜供与の解消」及び「第2回ワーキング・グループでの議論を踏まえた考え方の整理(案)」について御説明をさせていただきます。お手元の資料1に沿って御説明させていただきます。
まず、3ページを御覧ください。有識者会議の報告書の抜粋になります。今回は、保険料調整行為事案に対応する健全な競争環境の実現ということであります。まず、「Ⅲ.1.競争環境の歪みの是正」という部分です。企業向け保険の入札において、政策保有株式や便宜供与の実績が少なからずシェアに影響を及ぼし、公正な競争を阻害する要因になっていたのではないかということ。「Ⅲ.3.企業内代理店」の問題です。これは次回第4回に改めて取り上げる予定ですけれども、この最後の部分に、企業向け保険市場のさらなる発展を図る観点から、保険仲立人の活用を促進するための施策を検討するべきと、こういった点を御提案いただいているところであります。
4ページになります。これらの問題を図で整理しております。まず、真ん中の緑色の「損害保険会社」から下の「顧客企業」に伸びている点線が便宜供与でありますけれども、保険商品の内容や保険料の水準でなく、保険契約者への便宜供与等の実績で契約先の保険会社やシェアが決まりがちであったと、そういった慣行があったということです。
次に、右下の保険仲立人ですけれども、保険仲立人は、顧客の立場に立って保険契約の締結の媒介を行います。保険代理店とは規制の趣旨や創設の経緯が異なっているわけですけれども、その点がうまく認知されておらず、企業による活用が進んでいない、新規参入もなかなか増えない。こういった問題があります。
最後に、真ん中の企業内代理店ですけれども、企業内代理店が親会社の保険契約を締結する場合に、保険会社から企業内代理店に支払われる手数料がグループ全体で見ると保険料の実質的な割引になっているおそれもあるのではないか。このため、このバツの部分ですけれども、ほかの代理店や保険仲立人が、なかなか企業内代理店が有する契約を取ることができていないと、こういった問題もあります。こういったそれぞれの問題、保険仲立人、便宜供与、企業内代理店への対応を、この後それぞれ考えていきたいと思います。
まずは、保険仲立人への対応ということで7ページです。こちらは第1回のワーキング・グループにおける委員の皆様からの御発言の概要ですので、ここでは割愛させていただきます。
その次の8ページを御覧ください。これは保険仲立人に期待される役割を改めて整理したものになります。大きく2つあると考えております。一つは誠実義務に基づくベストアドバイスの提供です。代理店は所属する保険会社の商品しか取り扱えない一方で、保険仲立人は、多くの保険会社、外国保険業者の中から顧客に最適な商品を選ぶことが期待されているということ。もう一つは総合的なリスクマネジメントということで、保険仲立人は、保険商品の契約締結の媒介だけではなく、顧客、主に企業のリスク分析・評価を含めた様々なリスクマネジメントの向上のためのアドバイスを行うことが期待されております。保険仲立人にはこういった役割が期待されていることで、今般、保険代理店というチャネルで問題が生じたことを踏まえまして、販売チャネルの多様化、競争の促進という観点から、保険仲立人の活用促進に向けた施策を検討してはどうかと考えております。
9ページです。まずは、保険仲立人の制度の変遷を振り返ってみたいと思います。1992年、保険審議会の答申で、販売チャネルの多様化と競争の促進という観点から保険仲立人の導入が提言されております。1995年には保険業法が改正されまして、保険仲立人の制度が創設された。その後、2009年の金融審議会におきまして、保険仲立人の活用が進んでおらず、制度の見直しが必要ではないかという意見がありまして、2013年の金融審議会の中で具体的な見直しの議論がなされたということであります。そのときの具体的な内容としましては、保険仲立人の立場の明確化、結約書の簡素化、保証金の最低金額の引下げ、このような措置が講じられたところであります。
続きまして、10ページです。こちらは保険仲立人に関する制度になります。代理店と異なるものを中心に記載しております。まずは左の列の上から2番目、保証金の供託という部分です。保険仲立人は代理店と異なり、特定の保険会社に所属するものではありません。保険仲立人が契約者に損害を与えた場合であっても、保険会社が損害賠償責任を負うことはありません。このため保険仲立人において自らの賠償資力を確保してもらう観点から、保証金の供託が義務づけられております。続いて、その下の手数料の開示であります。保険仲立人は、顧客から求められたときは保険契約の締結媒介に伴って保険会社から受領する手数料の額を顧客に開示しなければならないという規定もございます。
右側の監督指針のレベルでも幾つか重要な規制がございます。右の列の上から2つ目、保険契約の締結の媒介に関する手数料は、保険会社に請求するということ。その2つ下、保険仲立人は、保険会社や保険代理店と協業をしてはならないと、こういった規定も設けられてところであります。
続きまして、11ページです。こちらは保険仲立人の活用の動機を整理したものになります。これは実際に保険仲立人を活用している企業の保険手配の担当者の方で、保険仲立人の活用の動機をヒアリングしたものを整理して記載しております。保険仲立人は、顧客に対するベストアドバイス義務を負っている。保険会社に所属しない保険仲立人のほうが保険会社に対する交渉力が高いと考えた。代理店が提案するのは所属保険会社の商品に限られてしまいますが、保険仲立人は多くの保険会社や外国保険業者の商品から選べるので、より適切な提案が期待できるのではないかということ。あるいは、1つ飛ばしまして、グローバルに事業を展開するような大企業ではグローバル保険プログラムを組成することがありますけれども、その際には保険仲立人が有する国際的なネットワークやITインフラが欠かせないと、こういった意見も聞かれております。
少し飛ばして、15ページを御覧ください。ここからが保険仲立人の活用促進に向けた施策、各論ということで、前回の保険仲立人協会からのプレゼンにもありました要望内容も踏まえ、事務局としての対応を検討したものになります。
まずは、手数料の在り方になります。現在、監督指針におきまして、保険仲立人の媒介に係る手数料は保険会社から受領することになっており、顧客からは受領できないこととされております。保険仲立人は、顧客の立場に立って、その顧客のために保険契約の締結の媒介を行う。このような保険仲立人の立場を明確にするためにも、手数料を顧客から受領できるようにすべきといった指摘があります。
対応の方向性になりますけれども、諸外国、アメリカ、イギリス、ドイツでは制度上、保険仲立人には保険会社と顧客いずれからも手数料を受領できる選択肢は与えられております。これを参考にして、少なくとも制度の中では、保険会社だけではなく、顧客からも手数料を受領できるようにしてはどうかと考えております。他方、顧客から手数料を受領するということを認めますと、保険仲立人が顧客と保険会社の双方から手数料を受領することも想定され、結果として顧客の保険調達コストが増加してしまうのではないかといった指摘もございますので、顧客と保険会社の双方から手数料を受領するという場合には、顧客に対して手数料開示請求権があるということをあらかじめ説明することとしてはどうかということを考えております。
続いて、16ページになります。こちらは保証金の供託になります。先ほども申し上げたとおり、保険仲立人は、賠償資力を確保するという観点から保証金の供託を求められております。この保証金の金額は過去3年間の手数料の合計金額、最低2,000万円、最高8億円とされておりまして、これが保険仲立人の財政的な負担になっているのではないか、あるいは新規参入を妨げているのではないかといった指摘があります。
対応の方向性になりますけれども、この2,000万円については、2013年のワーキング・グループの報告書におきまして、一定期間問題がなかった場合には1,000万円をめどにさらなる引下げについて検討が行われることが適当だとされております。その後も保険仲立人が保険契約者に大きな損失を与えるような事態は起きておりませんので、この機に2,000万円から1,000万円に引き下げてはどうかと考えております。また、過去3年間の手数料の合計額という部分についても、例えば合計金額ではなく平均金額にする、つまり、1年分にするという考え方もありますけれども、一定の賠償資力の確保という観点からは、金額が3分の1になるということ、この点をどう考えるべきなのかということを書かせていただいております。
続いて、17ページです。保険仲立人と代理店の協業の問題になります。現在、保険仲立人は、保険会社や代理店と同一契約の共同取扱い(協業)を行うことは認められていないということであります。これは顧客のために媒介を行う保険仲立人と、保険会社から委託を受ける代理店の立場の違いを踏まえたものとされております。
ここで問題となりますのが、次の18ページを御覧いただければと思いますけれども、複数の企業が出資するプロジェクトに対する保険を共同で組成するような場合に、出資する企業と関係のある代理店が参加することが実務上は多いということですけれども、ここに保険仲立人が参加すると、代理店との協業となりますので参加できないということであります。一方、国内外の保険会社にネットワークを有するような保険仲立人が参加することによってより適切な保険プログラムを提供できるかもしれないということであります。このため、保険仲立人と代理店の役割分担を事前に決めておく、それを顧客に事前に説明するということを前提としまして、保険仲立人と代理店の協業を認めてはどうかと考えております。
続いて、19ページを御覧ください。こちらは海外直接付保規制になります。現在、日本に支店を設けない外国保険業者は、原則として日本に住居を有する人に係る保険契約を締結することができないとされております。他方、今の業法上の規定には例外的な措置も設けてあります。保険契約者が自ら当局へ申請し、当局が個別に審査の上で許可を与えるという場合にはこれが可能になるというものであります。
課題になりますけれども、この許可の要件として外国保険業者と保険契約を締結しようという保険の内容について、日本国内の保険会社が同じ内容、同じ条件の商品を提供できないということを証明する必要があります。実務上は、保険契約者が国内の複数の保険会社に引受け不可と示してもらった書類などを提出していただいておりますけれども、この事務的な負担が大きいということで、当局への申請件数が僅かにとどまっているとされております。保険仲立人の中には国内外の保険会社にネットワークを有しているというところもありますので、日本国内の保険会社が同じ内容、同じ条件の商品を提供できないことの証明を、保険仲立人が保険契約者の代わりに実施した場合には十分に斟酌して行う、例えば現在この標準処理期間は60日間と規定されておりますけれども、これを短縮するようなことは考えられるのかというところでございます。
続いて、21ページになります。こちらは不祥事件届出ということであります。現在、保険仲立人が不祥事件を起こしたときに、代理店のように当局に不祥事件を届け出る義務という規定はありませんけれども、今回、保険仲立人の規制の在り方を見直すに当たって、保険仲立人のモニタリングを強化するという観点から、保険仲立人が当局に不祥事件を届け出る義務を課したいと考えております。
ここまでが保険仲立人に関する規制の在り方ということで、続きまして、保険会社から保険契約者等への便宜供与の問題になります。
25ページを御覧いただければと思います。先般の有識者会議の中でも、損保会社から代理店への便宜供与の見直しということは取り上げられておりまして、とりわけ、自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するものは確実に解消していくこととされております。他方で、現在の保険業法の中には、少し観点は異なりますけれども、保険会社から保険契約者または被保険者に対して「特別の利益」を提供する行為を禁止するという規定があります。この規定は保険契約者間の平等性・公平性を確保する観点から設けられております。
従来この特別利益の対象としては、保険会社が保険募集の際に保険契約者等に対して各種サービスや物品を提供することが念頭に置かれてきたわけですけれども、業界の慣行の中では保険契約者のグループ企業から各種サービスや物品を購入する行為とか役務を提供する行為、このようないわゆる便宜供与の実績が保険契約の締結に重要な影響を及ぼしているおそれがあります。このためこの特別利益の対象に、保険契約者間の平等性・公平性を害し得るような便宜供与を追加するということとともに、特別利益の受け手の方に、保険契約者等のグループ企業を追加してはどうかと考えております。
最後は、前回のワーキング・グループで委員から様々な御指摘をいただきまして、28ページに整理しておりますけれども、主に、兼業や大規模の規制の対象となる代理店をどう考えるべきなのかと、そういった御指摘であったと思います。そういった御指摘での考え方をこれ以降のスライドで整理しております。
まず、29ページを御覧ください。こちらは兼業になります。兼業に関しては、事務局から、保険金関連事業、保険金を請求する事業を兼業する大規模な代理店に対して、顧客の利益を害することを防止するための体制整備を求めてはどうかという御提案をさせていただきました。この論点としましては、保険金関連事業を兼業する代理店以外に体制整備を求めるべき、そういった兼業事業はあるのか、あるいはこの対象は大規模の代理店に限定すべきなのかという点であります。
このスライドの考え方の部分を御覧いただければと思いますけれども、2つ目の四角であります。赤字部分ですけれども、保険金関連事業以外に顧客の利益を害するおそれのある事業はあるかということであります。
3つ目の四角ですけれども、中小規模の代理店への対応としましては、例えば次のようなものが考えられるのではないか。金融庁では、顧客本位の業務運営に関する原則を策定しまして、金融事業者に受入れを呼びかけてまいりましたけれども、現在この顧客本位の業務運営に関する原則に基づく取組方針を示している代理店はまだまだ少ない状況にある。そのため、全ての代理店に対して、この機に顧客本位の業務運営に関する原則の周知を改めて図って、この理念、とりわけ、この原則の中には利益相反の適切な管理という項目もありますが、その中では、利益相反の可能性を把握する、利益相反の可能性がある場合は適切に管理するということも記載されておりますので、これを踏まえた対応を促していくということが考えられるのではないかということであります。
このほか、委員から御指摘もありました、規模にかかわらず、全ての代理店に体制整備を求めるというアイデアも含めて、ほかに何か考えられるものはあるかということを記載しております。
続きまして、30ページであります。こちらは大規模代理店への対応ということであります。事務局からは、特定大規模乗合保険募集人という制度を創設する、保険会社による管理が行き届かない代理店を特定した上で、そういった代理店に対して法令等遵守責任者の設置、苦情・内部通報体制、内部監査体制の整備を求めてはどうかという御提案をさせていただきました。
論点としましては、規模の大きい特定保険募集人という枠組みが既にある中で、どのような代理店を体制整備の対象とするのか、あるいは一定の定量的な要件を設定しても潜脱が起きるのではないかといった点であります。
これに対して、このスライドの考え方の部分ですけれども、まず1つ目のバーのところ、今般の事案の再発防止という観点からは、規模が大きくなるほど保険会社からの営業上の配慮が働き、保険会社による教育・指導・管理の機能が弱まる。こういった代理店に対しては自らで必要な内部管理体制を構築する義務を課すべきではないかということであります。
その上で、次のバーですけれども、ここで32ページを御覧いただければと思います。これは第2回のワーキングで委員から御指摘いただいた代理店の手数料収入の分布を見たものになります。規模の大きい特定保険募集人は約450社おりますけれども、そちらの手数料収入の分布であります。左側から右側に手数料の小さいものから大きなものに順番に並べてみたものです。これを見ますと、1億円にも満たないところから数百億円に上るところまで規模のばらつきが非常に大きいということ、かつ10億円の部分に下線を引いておりますけれども、450社の約半数は手数料収入が10億円に満たない比較的小さな募集人であることが分かるということであります。
再度30ページに戻っていただきまして、今の点が2つ目のバーのところに書いてあります。
3つ目のバーについては、450社全体に同様の体制整備義務を課すと、当局としては、定期的なモニタリングを通じて、その体制が十分に整備されているかどうかを把握、確認することになるわけですけれども、このモニタリングのリソースとのバランスをどう考えていくのかということであります。
4つ目は、特定大規模乗合保険募集人以外の規模の大きい特定保険募集人に対しても何らかの対応が必要であれば、例えば、今、規模の大きい特定保険募集人に提出を求めている事業報告書の記載項目を見直すことが考えられるのではないかということであります。こちらは33ページを御覧いただければと思います。現在の事業報告書の記載項目には、内部管理体制に関する記載の項目はほとんどありません。右下に苦情件数やコンプライアンス部門の設置の有無という項目はありますが、今般これを少し詳しめに記載してもらうことで、この情報を当局のモニタリングの中で活用していくことが考えられるのではないかというところであります。
再度30ページに戻っていただきまして、最後は潜脱防止です。特定大規模乗合保険募集人を特定する際に、一定の数値基準を設定したとしても潜脱が起きるのではないかということですけれども、ここに書いてあるとおり、必ずしも特定大規模乗合保険募集人に該当しなくても、例えば今後一定期間のうちに体制整備義務の対象となると見込まれる代理店や、過去一定期間において体制整備義務の対象となっていたところなどを柔軟にモニタリングの対象として捕捉するということを検討しております。
次の31ページを御覧いただければと思います。今般、我々としては、特定大規模乗合保険募集人という制度を創設してはどうかと考えているわけです。だからといいまして、モニタリングの中で特定大規模乗合保険募集人だけを見ていくわけでは当然なくて、この辺りはグラデーションでの対応ということで、特定大規模乗合保険募集人に対しては上乗せ規制を課した上で、当局としても定期的にヒアリングを実施していく。それ以外の規模の大きい特定保険募集人は、特定大規模乗合保険募集人ほどではないですが、毎年、事業報告書を提出いただくことになっておりますので、当局としても、その情報に基づき、重点モニタリングの対象として機動的なヒアリングを実施する。このような形で規制とモニタリングをセットで考え、より実効性の高い枠組みとしていくことが重要ではないかと考えております。
事務局からの説明は以上になります。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。それでは、本日の事務局説明、前回御説明いただきました日本保険仲立人協会様のプレゼンテーションに関する御意見を踏まえて、委員の皆様方から幅広く御自由に御発言をいただければと思います。
全体の会議時間の制約もございますので、御発言のお時間といたしましては5分程度を目安にしていただければと思います。対面で御出席いただいている方々におかれましては、お名前の札を立てていただき、オンラインで参加されている方々におかれましては、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。
それでは、御議論をお願いできればと思います。では、中出委員。
【中出委員】
最初に発言させていただきますので、全体についてお話しさせていただければと思います。
まず、今回の問題は、BM社の事件やカルテル事件という辺りからいろいろな問題が出てきて、根本原因にメスを入れていこうということでいろいろな対策が考えられています。その中では、日本には特殊なビジネス慣行もあって、そういうものも見直していこうということであると思います。今、企業活動はグローバルに展開される中で、日本の仕組みや実務がグローバルな活動に調和するようにすることが重要と思っています。そうした中で、企業向け保険市場がさらに充実していき、同時に企業のリスクマネジメントが進化するということが重要でないかと思っています。その点から意見を述べたいと思います。
まず、第1の論点として、保険仲立人の活用促進について幾つかの案が出ていますが、1点目の媒介手数料の受領方法についてです。これは理屈から考えても、本来、依頼している人が報酬を払うというのが最も自然な形ですので、これを必ず保険会社からもらわなければいけないという規定は見直すことの合理性は十分にあると思います。しかし、いろいろな支払い方式が出てくると、一定の混乱も生じるので、手当てが必要と考えています。
第1回で話をさせていただきましたが、顧客が支払うフィーと、保険料の一部を構成して保険会社が払うというコミッションを欧米では分けたりしております。日本の場合には手数料という1つの概念で捉えているわけですが、欧米の実務と対比した場合に日本の支払いがどれに当たるかということを明確化することも重要であると思っています。
イギリスやドイツでは、顧客が払ってもよいし、保険会社が払うという両方が認められているのですが、いずれにせよ、最初の段階で顧客に対しては、どういう方式の報酬であるのか、そして誰が報酬を払うのかについて必ず情報を開示しなければいけないという形にして、そのうえで支払い方式を選択することになります。もし日本でもいろいろな支払い方式を認めるということであれば、最初にこの取引の報酬はいかなる方式で支払う報酬になるのか、そしてそれは誰が払うのかということを明確化すべきでないかと思います。このことは保険会社側に対しても言えることで、保険仲立人が保険会社からお金をもらうときに、顧客からももらうということを求めているのであれば、両方からもらうという形になるので、本来顧客が払う分について保険会社は額を減らしてもよいわけですから、保険会社に対しても、この報酬は保険会社だけからもらうのか、顧客からももらうのかを明らかにする必要が出てくるのではないかなと思います。要は、自由化には賛成ですが、情報の開示、説明ということが重要になると思います。
2番目は、保証金の供託についてです。現金を供託するというのは、欧米で見ても非常にまれかなと思っておりまして、保険制度を利用するというのが現代のスタンダードでないかなと思っています。現実に保険仲立人が賠償しなければいけないという事案はほとんどないとここに記されてございますので、そのことを考えると、現金での保証金を積むということは、本当にやむを得ない場合の措置としては理解できますが、できるだけ保険制度を活用していくという方向に進めていくべきでないかなと思います。英米あるいはドイツなどを調べても、代理店を含めて、賠償責任保険の手配を義務化しているわけです。ここに示されている金額について妥当かは私はよく分かりませんが、方向性としては、保証金という制度から保険制度のほうに移行していくことが重要でないかなと思います。
それから、3番目の代理店との協業ですが、これも英米や欧州との比較で言えば、いろいろな形態での活動がなされておりますので、これを禁じるということの理屈も少ないのかなと思っています。しかしながら、立場の違うプレーヤーが出てくることで一定の混乱が生じますので、17ページ記載のとおり、それぞれの役割分担を明確化させる、これは極めて重要でないかなと思います。そうでないと、報酬額や誰が幾らの報酬をどのような基準で払うのかということも明確になってこないので、複雑な組成になる場合にはそれぞれの役割を明確化させることが前提として必要だと思います。
その他の点はおおむね賛成で、また、便宜供与について、詳細に、かつ分かりやすくまとめていただいていますが、この改革案に賛成いたします。
それから最後に、第2回のワーキングを踏まえた整理は、この前の意見を踏まえて再度御検討いただいてありがたいと思います。まず、兼業禁止の関係について、前回も申しましたが、今回の問題はビッグモーター社のいろいろな利益相反関係の問題から発生している中で、利益相反について一般的な禁止を設けることは厳しいとしても、兼業の場合には、問題行為を禁止するような手当ては必要でないかなと考えています。
なかなか一般的な規定として設けるのは難しいのかもしれませんが、保険金関連業務との兼業は、それがデフォルトではなくて、特殊な場合と位置づけられると思います。利益相反関係が生じやすいような兼業については、それに対しての手当てをしていることを前提として業務がなされるということでないかなと思っています。例えば、兼業を行う場合には、それによる不利益を排除するように努めなければいけないというような一般的な規定が設けられないかを検討いただくのがよいのでないかと考えます。
2番目の大規模乗合の点については、前回も意見として申し上げましたが、今回の資料で、さらにモニタリングを強化するという点でよく理解はできたところです。しかしながら、モニタリングはリスクベースで行うべきだと思いますし、大規模乗合の場合は、例えば銀行の代理店などが多いのではないかなと思いますけれども、必ずしも大規模乗合であるから全て定期的なヒアリングをするのがいいのか、その辺りはリスクベースで考えてよいのでないかなと思っています。その点から、事業報告書の項目を工夫するといった点については賛成しますし、それから、今、保険業界のほうで検討が進んでいるような第三者評価の制度とかが動いてくれば、そういったところでの結果とかもうまく活用してモニタリングを効率的に進めるのがよいのではないかなと思っています。
今回新たに特定大規模乗合保険募集人というものを法的な概念としても別のものとしてつくり上げるということになると、本当は、保険業法283条の保険会社が責任を負う対象から外して、自主性を認めて、アメリカ、ドイツ、イギリス等と同じように自主的な責任主体として認めるというのが一番望ましいのではないかなと思うのですが、そこまで行ってしまうと代理店制度そのものについての考え方の変更とかも出てきてしまってなかなか難しいのかもしれません。私は、中期的な検討課題となるかもしれませんが、一定の範疇をくくり出して当局がモニタリングを強化するという方式の場合は、ブローカーと同じように独立の存在として保険会社の責任からも切り離すというのが理論的には相当で、また、欧米等の制度とも整合的になるのではないかなという気がします。
以上です。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。基本的には、事務局の御提案を御支持されつつ、個別的な論点について幾つか注意すべき点についてコメントをいただいたかなと思います。どうもありがとうございました。
それでは続きまして、オンラインから御発言希望がございました片山委員、御発言をお願いします。
【片山委員】
連合の片山です。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
まず、お示しいただいた対応の方向性について異論はないということを申し上げさせていただきたいと思います。その上で、企業向け保険市場に関する制度、保険仲立人制度、あと、便宜供与について意見を申し上げたいと思います。
まず、企業向け保険市場に関する制度についてです。特定契約比率規制の経過措置について、代理店の自立を促す観点から、撤廃には異論はございません。他方、規制の対象となる特定者の対象範囲について、現時点においても、代理店との資本関係、役職員の兼務関係をはじめとする人的関係など極めて広い範囲に規制がかかっており、実務レベルでは特定者の把握に相当な負担が生じていると聞いております。このため、特定者の範囲をグループ企業全体へ拡大することと併せて、実務の煩雑さを軽減する観点から、特定者の範囲や事務手続の簡素化を検討いただきたいと思います。
次に、保険仲立人に関する制度について2点意見を申し上げます。1点目は、保険仲立人への監督の在り方です。保険仲立人の活用促進のための制度変更によって、様々な参入者が想定されます。しかし、初めから十分な内部管理体制を備えた参入者は多くないものと思います。保険仲立人についても、誠実義務や募集コンプライアンスの遵守など一定の質を担保できるように相応の体制整備を求め、金融庁がモニタリングしていく必要があると思います。そういった観点から、不祥事件の届出の義務化は必須であると思います。問題があれば登録を抹消すればよいという単純な話にならないよう、保険仲立人制度が発展していける枠組みを考えていく必要があると考えます。
2点目は手数料についてです。保険仲立人が顧客から媒介手数料を受領できるようになった場合、顧客間で手数料水準が異なるケースが生じ得ます。また、保険仲立人から手数料が開示されたとしても、顧客自身は自分の支払う手数料が高いのか低いのか比較判断できないので、顧客から受領する場合は、手数料の上限などを設定するなどの形で適切な範囲で手数料が設定されるような配慮が必要と考えます。
最後に、保険契約者への便宜供与の防止についてです。グループ企業を特別利益の提供に含め、業法上の禁止行為にすることは有効と考えますが、何が特別利益の提供に当たるかについては、保険会社、代理店、契約者で判断の差異が生じないよう、可能な限り具体的な事例を示すなどの対応が必要と考えます。また、保険会社の事業活動を行う上で必要となるサービスや物品を自社の契約者から購入することは当然に想定されるため、通常範囲の利用・購入が規制に当たることがないように留意すべきだと考えます。
私からは以上です。ありがとうございました。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。それでは続きまして、神作委員、お願いします。
【神作委員】
御指名ありがとうございます。学習院大学の神作でございます。私は保険及び保険販売の実務に明るくなく、そのような意味では実態を踏まえておらず、また、事実を誤認している部分もあることは重々承知しており、大変僭越ではございますけれども、資料を拝読した感想を述べさせていただきます。誤り等につきましては、どうか御教示、御指摘をいただけますと幸いです。
まず、スライドの15ページの媒介手数料についてです。保険仲立人は現状、保険契約締結の媒介に係る手数料等の全額を保険会社に請求し、顧客に請求してはならないこととなっておりますけれども、これを改め、顧客からの手数料等の受領も可能にすべきであるという御提案に賛成いたします。手数料を保険会社から受け取るのか、顧客から受け取るのか、あるいは双方から受け取るのかは、基本的にビジネスモデルの問題であり、監督法等により規制すべき問題ではないと思われるからです。特に保険仲立人は、現行法の下でも顧客に対し誠実義務を負っており、顧客の最善の利益のために保険契約の媒介を行うべき存在でございますので、顧客から手数料等の支払いを受けるということは自然なこととも言えると思われます。
もっとも、保険仲立人が保険会社と顧客の双方から手数料等を受領する場合には、手数料体系が不明確になり、顧客にとっても保険会社にとっても合理的な意思決定や業務を行うことが少し難しくなるという可能性があるかと思います。そこでまず、顧客に対しては、手数料等を誰から幾ら受領しているのか等に関する説明義務を課すことが適当と思われますし、保険会社に対しては開示すべきであると考えます。保険仲立人の手数料は、顧客が保険契約を締結するに当たって考慮すべき一つの事項であると考えられ、また、保険会社にとっては保険業務を営むに当たって重要な情報であると思われるからです。
現行法の下では、顧客から求められたときは、手数料、報酬その他の対価の額その他内閣府令で定める事項を開示する義務が課されております。そこでは、受領した手数料等の合計金額の総額に占める、ある保険者から受領した手数料の合計金額の割合などが開示されるにとどまっており、監督指針では、事業年度ごとに保険会社別に開示がなされるものとされております。このように開示される情報は、少なくとも顧客が保険契約を締結するかどうかの意思決定にはほとんど役立たないというか、あるいは全く役立たないものであるように思われます。顧客との関係では、保険契約を締結する前に手数料について保険仲立人から説明がなされることが望ましいと思われます。
さらに、顧客の合理的な意思決定に資するという観点からは、手数料の額や定め方に関する説明や開示は、本来であれば、保険仲立人が保険会社と顧客の双方から手数料を受領する場合に限らず、原則として説明義務や開示の対象にすることが望ましいように思われます。もっとも実態としては、手数料の説明や開示を求める場合にそれが不可能あるいは著しく困難であるという場合もあり得るでしょうから、そのような場合にはその旨を説明または開示するということになるのではないかと考えます。なお、本日のテーマから離れてしまうかもしれませんけれども、同じことは保険代理店の受け取る手数料についても妥当すると思います。
スライド16ページの保証金の供託について感想を申し上げます。保証金の最低金額を2,000万円から1,000万円に引き下げること及び過去3年間の手数料等の合計金額をその平均金額とすることについては賛成いたします。保険仲立人は、顧客から金銭を代理受領したり、顧客から金銭の預託を受けたりするものではなく、責任を負う場合には、説明義務違反とか適合性の原則違反などの不法行為に基づく損害賠償責任などが中心になると思いますけれども、これまでの実績等に照らし、保証金の額は引き下げる余地が十分にあると考えるからです。他方、所属制が採用されていない金融サービス仲介業者の保証金とのバランスには配慮する必要があると考えます。
スライド17ページの代理店との協業については、保険仲立人と保険代理店等の協業は、先ほどの御説明によりますと、ニーズもあり、また、顧客の利益にも資すると考えられることから、役割分担を事前に顧客に説明する等、保険契約者の誤認防止措置を講じるとともに、協業を解禁することが適切であると思われます。保険代理店も、改正金サ法が施行されたら、保険仲立人と同様、顧客の最善の利益を勘案し、誠実かつ公正に業務を営むべき法的地位にあり、保険仲立人と同じ方向を向くこととなり、協業に法的な支障はないと考えます。
スライド18ページの海外直接付保も、御提案に賛成です。国内では同等または有利な条件の保険が調達できないなど一定の場合には、保険仲立人の確認書を十分に斟酌して許可の審査を行うことは、事業会社等保険契約者の利益に資するという観点から賛成したいと思います。
スライド25ページでございます。保険契約者等への便宜供与の解消についてです。禁止される特別の利益、便宜供与の対象に、サービスの利用や物品の購入、役務の提供等を含むこと、及び保険契約者または被保険者のグループ企業を特別利益の受け手に追加するという方向性には賛成いたします。しかし、先ほども片山委員から御発言がございましたけれども、真に禁止されるものに限定されるべきであり、公正な取引や合理的な商慣行等に合致した取引等まで禁止されるべきではないと思われます。
他方、これは御質問も含む部分なのですけれども、24ページに記載されている、保険会社から保険代理店等への便宜供与というのは、スライドに記載されておりますように、顧客の適切な商品選択が阻害され得る点が問題であると思います。ところが、25ページに記載されている特別の利益の提供は、保険契約者間の平等性・公平性を確保するという趣旨でございますので、私は24ページと25ページを読んでいて、必ずしも一致しないと申しますか、ずれているのではないかと感じました。
サービスの利用や物品の購入、役務の提供等の経済的利益は、便宜供与に該当しなくても、顧客の最善の利益を勘案し、誠実かつ公正に業務を行うことに対し、ゆがんだインセンティブを与える可能性があると思います。そこで、便宜供与の禁止にあたる場合には、そのような便宜供与は行ってはならないわけですが、その対象外の経済的利益の受領につきましては、私が本日冒頭で述べました手数料等に関する説明や開示に係る規制の一環として、むしろそちらのルールに引き寄せる形で、少なくとも将来的には開示の対象にすることが望ましいように思います。
最後に、大規模な乗合保険代理店への対応等について述べさせていただきます。規模の大きい特定保険募集人に内部統制体制構築義務を課し、さらに特定大規模乗合保険募集人制度を創設し、それに上乗せ規制を課すという方向性に賛成いたします。しかしながら、違法な行為や不当な行為は規模の大小とは関係なく発生すると思われます。保険代理人に対しては保険会社による監督がなされるといっても、全てについて万全な監督をするというのは難しいように思われます。むしろ先ほど御発言がございましたけれども、保険代理店も一金融事業者でございますので、自立した立場からきちんと、特に利益相反等についてはコントロールをするということが望ましいと思われます。ハードローでそのような義務を課すことが困難であるという場合には、事務局から御説明がございましたように、顧客の業務運営の原則を受け入れていただき、それを実践していただくということがまずは考えられると思います。
私からは以上でございます。どうもありがとうございました。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。御発言希望がたくさんの方々から出てきておりますので、先に進みたいと思います。続きまして、柳瀬委員から御発言希望がございます。
【柳瀬委員】
ありがとうございます。発言の機会をいただき誠にありがとうございます。
まず、結論から申し上げますと、保険仲立人に期待される役割が適切に発揮されるということを通じて企業保険市場の健全な競争環境の実現に資するという方向性に同意し、総論としてはこういった制度改正の方向性に賛成いたします。
その上で各論といたしまして、1つ目、手数料を顧客からも受領できるようにするという改正の方向性についてですが、こちらも基本的に賛成いたします。もちろん契約者保護の観点から、双方受領の副作用としての保険調達コストの増加の懸念はもちろんございますが、これは突き詰めて考えますと、保険会社・顧客間の情報の非対称性に起因する問題になると思われますので、適切な開示、顧客説明の手当てにより、この問題は緩和されることが期待されます。
2点目としまして、代理店との協業についても、やはり保険仲立人の活用促進という観点から、御提案にある役割分担の明確化など一定の契約者保護の手当てを施した上で認めるという方向性については違和感ございません。その上で少し、今回の議論に関連するところで2点コメントさせていただきたいと存じます。
今回各論において一定の懸念が生じる理由というものは、ほかの委員の方々もコメントされていましたとおり、主に契約者保護というものをどう考えるべきかに集約されると感じました。他方で企業保険と家計保険、あるいは同じ企業保険の中でも大企業を想定した取引とそうでない取引など、いわゆる契約者の顔というのは様々です。例えば当局調査の今回資料にありました保険仲立人の活用の動機等によれば、現時点で活用が想定されている保険仲立人の姿としては、専門性の高さや国際性の高さというものが指摘されていると感じました。こうした指摘は、私の研究室において過去数年間実施している、リスクマネジャーに対するサーベイ調査の結果とも整合的でございます。
そうしますと、活用が想定される契約者の顔としては、企業保険、とりわけ大規模あるいは専門性の高い企業保険分野が中心になるのかなという印象は持っています。したがいまして、情報開示を充実させることによって手当てしていくというこの方向性は極めて重要であり、正しい方向であると思う一方、そうした情報を適切かつ速やかに咀嚼できる経営者側の能力の継続的な向上も極めて重要な視点だと思っております。
したがいまして、一つの考え方としてリスクマネジメントの意思決定に関する、言わば被保険者の成熟度のようなものを、ある種の適格性の要件などを検討することを通じて規定し、各社の自己申告に基づきそうした適格性を有する被保険者登録を積極的に促していくというような方向性も同時に議論されてもよいのではないかと感じております。そうした適格性を満たした被保険者については、できる限りフリーハンドの保険取引を許容してもよいのだという仕分けができるのではないかと感じております。そうした自由で競争的な保険取引を通じた一種学習効果のようなものによって、我が国の保険会社、被保険者、そして仲介チャネルのいずれにおきましても、リスクを取り扱う上での専門性と成熟度、これを継続的に高めていくことが重要ではないかと考えます。これが1点目のコメントです。
2点目のコメントに移りますが、今回のワーキング・グループでの論点からはやや外れるかもしれないのですが、今申し上げたような方向性をもし議論していくとするならば、適格性をどのように定義するかといった技術的な問題が論点の中心になるかと考えます。結論を先取りしますと、適格なリスクマネジャーの能力を規定する上での一種の教育パッケージの内容についても、早々に議論を始める必要があるのではないかと感じております。
例えば私の知る限りにおきまして、米国では、知識が豊富で大規模な保険契約者をインダストリアル・インシュアードと定義する仕組みがあるようで、一つの参考事例になるかもしれません。そして、このインダストリアル・インシュアード、産業被保険者の要件は、売上高の大きさのような企業自体の属性というよりは、その中に適格なリスクマネジャーを設置しているか否かといった、言わば組織内のリソースの成熟度にあるようです。具体的にはリスクマネジメント、経営学、ファイナンス理論、経済学など言わば全社的意思決定として保険購買を含むリスクマネジメントの理解に資するような知識を包括的に有していることに加え、リスクファイナンスやクレーム管理等の実務経験を有しているということ、こういったことがどうも米国の一部制度の中には適格なリスクマネジャーの要件として規定されているようです。
企業保険に関わる詳細な技術的知識、これもすごく重要なわけですが、他方で保険購買をはじめとするリスクファイナンスに関わる意思決定がなぜ企業価値やあるいは株主価値というものに重要な影響を及ぼし得るのかという、言わばファイナンス理論、あるいは経済学に基づいたような本質的な理解を促す教育パッケージについても、我が国における、適格なリスクマネジャーの要件を考える上で重要になるのではないかと推察します。
最後、まとめますと、適格なリスクマネジャーが社内に設置され、特に全社的な財務的意思決定において重要な影響力を持つ会社のCFO(最高財務責任者)へのレポーティングラインにおいて、その重要性が社内的に認識されることは、当該企業にとっても、企業のリスクマネジメント体制・能力の継続的な向上における強いインセンティブになると推察します。
また、この点(適格なリスクマネジャーが社内に設置されること)は、我が国のコーポレートガバナンス力の向上にも資するものではないかと推察します。その結果、優秀な人材がリスクマネジャーとして各社に配置され、日本企業にそれが広く浸透していくことが、言わば成熟度の高い大人としての保険契約者、被保険者の下で、保険仲立人の活用促進の実効性をより高める大きな方向性ではないかと考えております。そのことが最終的には企業保険市場の健全な競争環境の実現に資するものと考えますので、こういった視点も、今回どう取り扱うかはさておき、今後も継続的に議論していただければと思います。
それ以外の観点に関しては、ほかの委員の方々と同じく、特に違和感はございません。
以上でございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。金商法の適格機関投資家と似た発想かなと思いました。適格リスクマネジャーがいるような会社については、登録させて、将来的に保険業法による規制の適用を緩和するようなことがあってもいいのではないかと、将来に向けてのご意見と伺いました。どうもありがとうございます。
それでは続きまして、小林委員、お願いいたします。
【小林委員】
御説明ありがとうございました。私は基本的には、御提示いただきました保険仲立人の活用促進に向けた対応の方向性に大きな異論はございません。その上で、各施策について若干コメントを申し上げたいと思います。
まず、1点目は、媒介手数料です。これについては、保険会社、そして顧客、双方から受領可能ということを認めるのは妥当だとは思いますが、一方、保険仲立人の手数料の構成の透明性も重要になると思います。手数料のレベルをある程度予見できるという意味では、手数料の内訳や項目を開示し、それを分類してある程度の目安を提示していくというようなことを業界としてやられるとよろしいのではないかと思います。
2点目の保証金の供託は、正直、過去において大きな事故はなかったということですが、そもそも保険仲立人が活用されていない時代の記録を基にして判断をしていいのかというのがまず1点目の疑問です。そもそも過去にあまり活用されていないということであれば、具体的な金額を妥当かどうか判断するのは非常に難しいと感じました。ですから、今回具体的な金額を出すのであれば、今後状況を見ながら見直すという前提で低い金額を設定するということは考えられると思いますが、先ほど他の委員からも御意見がありましたように、保険等でリスクをカバーしていく方向に進むほうが将来的にはよろしいのではないかと思います。
それから、3点目の協業は、非常に有効であると思います。もちろんここで御提示されているような国際的なネットワークが豊富ということもありますが、加えて、保険会社の代理店という視点と、被保険者の立場からの保険仲立人という、その双方の目線が入ることによって、どちらかに偏る抑止力になるのではないかと考えます。
4点目ですけれども、海外の保険会社との契約については、明らかに現行の制度は負荷が大き過ぎると思いますので、ここは保険仲立人が間に入ることによって、海外の保険会社との契約を認めるということは妥当と考えます。
いずれにしましても、こういった施策をするに当たって重要なことは、基本的に代理店と保険仲立人の役割が、現状、市場の方に話を聞いていると、かなりオーバーラップしているようですので、それぞれが担う役割をもう1度しっかりと整理をして、保険仲立人の役割、代理店の役割を明確にしていく必要があるという点が1点。
そして、2点目は、今までの議論の中でも、保険仲立人を活用するに当たっては、保険仲立人はより専門的な契約に関わる、リスクマネジメントも含めた内容に踏み込んでいただくわけですから、保険仲立人のクオリティー、専門性を担保する仕組みをつくっていく必要があるのではないかと思いました。
それから、便宜供与については、29ページの中にある、中小規模の保険募集人についてはどうするかということですが、例えば今はオンライン等を使っての講習等もできるかと思いますので、協会として講習会を開催するというようなことで啓蒙活動をしていただくということを補足してはどうかと思います。
最後の大規模乗合については、前回も同じ意見を申し上げましたが、そもそも乗合の者数あるいは金額等の定量的な基準で本当にこれからの不祥事を防げるのかということを考えますと、不祥事というのはいろいろなケースが考えられますので、私はむしろ新たな枠組みをつくるというよりは、リスクベースでモニタリングをするということが妥当かと思います。
以上です。ありがとうございました。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。それでは続きまして、大村委員、お願いします。
【大村委員】
御指名いただき、ありがとうございます。総論として、保険仲立人の活用による保険マーケットの活性化という方向性については違和感ございません。
ただし、その前提として、同等または類似の業務を行う者については、同等の規制が課せられてしかるべきであると考えております。また、片山委員からも指摘がありましたが、保険仲立人マーケットにはこれからいろいろな者が新規参入することが見込まれており、かつ保険仲立人の場合には、代理店と異なる管理監督する者が当局以外にはおりませんので、当局によるモニタリングはよりしっかりなされてしかるべきだと思われますし、将来的に問題が発生しないような規制の枠組みも予めきちんと確保されてしかるべきではないかと思われます。
その前提の下で、媒介手数料について、顧客から取ることを認めるという結論については違和感ございません。顧客側の代理として保険の手配を行うという業務の性質に鑑みれば、顧客側からの手数料の受領を認めることに合理性は十分あるものと思われます。
他方で、特にリテール、個人顧客のマーケットに関してのお話になりますが、私自身はやはり手数料の二重取りを防ぐ仕組みは必要なのではないかと考えております。第1回ワーキング・グループの際に洲崎座長のほうから、現在、保険会社のみから保険料を受領できる理由として、両方から保険料を受領したときには募集実務が混乱する可能性があることが背景ではないかといった御指摘があったかと思いますが、その懸念は現時点でも拭えないと考えております。
商事仲介において両方から取れるのであるから、保険仲立人においても両方から取れてしかるべきという説明がなされることがございますが、もともと商事仲介の場合は双方媒介が可能なのに対して、保険仲立人はあくまでも顧客側の代理であって、保険会社側の代理は認められておりませんので、両者には立ち位置の違いがあり、必ずしも商法の原則がそのまま適用されるわけではないと思われます。加えて、保険実務の観点からも一定の配慮が必要ではないかと感じております。私自身、保険の手数料というのは非常に分かりにくいと感じておりまして、手数料が保険料の外枠であればまだ理解は容易かと思われますが、保険料の内枠で、かつ付加保険料の一部を構成する形になっており、手数料が下がることは、保険料が下がることを常に意味するわけではございませんし、非常に複雑な形で算定されておりますので、個人顧客に対して、手数料を開示したから、分かっているはずだから適切に判断できますよねというのは想定している顧客のレベルが少し高過ぎるのではないかと思われます。通常、代理店に対する規制を考えるときに想定している顧客のレベルとリテラシーに大分違いがあるように感じておりまして、本来的には、顧客保護の観点もやはり重要であり、その観点から規制のありようが検討されてしかるべきではないかと思っております。
そのため、神作先生から、本来的に監督で手数料の取り方を規制すべきではないといった御指摘もございましたが、ただ、顧客保護の観点からはやはり一定そこは配慮されてしかるべきではないかと思っております。また、双方取りを認めるのであれば、きちんとした顧客に対する説明義務、かつ保険会社に対する開示義務は不可欠になるのではないかと考えております。
2点目の保証金の最低金額の引下げについては、小林委員と同じ感想を抱いております。今回、業容を拡大してこれから活性化させていきますという中で、従前、問題が起きていなかったので引き下げてもいいですよねというのは少々根拠としては弱く、そのような結論は導き出せないのではないかと思っております。
加えて、金融サービス仲介業者においては、もちろん銀行や証券を兼業することができるという特殊性があるので、直接の比較は難しいとはいえ、顧客保護の観点から取扱保険商品が限定されているにもかかわらず、最低保証金として1,000万円が設定されている中で、今後、法人マーケットで高額な保険を取り扱うことが想定されている保険仲立人に対して、同じレベルの保証金でいいのかというのは、やはり疑念が拭えないと考えております。
本来的な方向性としては、私も中出委員と同様に、保険で手当てをしていくべきではないかと考えております。この点、前回のワーキング・グループで、保険仲立人協会の方から、マーケットでの調達が難しいというようなお話がなされておりましたが、その背景として、監督指針が求める保険の要件が厳し過ぎるといったこともあると認識しております。そのため、そういった保険マーケットによる調達を妨げるような規制を緩和するという方向で、保証金ではなく、保険契約を促進する形での改正の方向性というのもあり得るのではないかと考えております。
次に、代理店の協業については、基本的に違和感はございません。ただし、保険仲立人と代理店では向いている方向が違うので、そこを顧客が混同しないようにといった趣旨からなされた規制だと認識しておりますので、顧客への説明に加えて、同意まで取った上で協業をしていただくことは必要になるのではないかと考えております。
また、海外直接付保についても、当局のほうで保険契約者保護の観点からの審査は個別に継続してなされるという前提であれば、使い勝手が悪いところを使い勝手がよい形に変更し、審査期間の短縮等を行い活用の促進を促すことについて、特段違和感はございません。
さらに、不祥事件届出については、冒頭申し上げたとおり、保険仲立人に対する規制は乗合代理店等と同等の規制にしていくべきだと考えており、かつ当局のモニタリングを今後強化していく必要があるという観点からも、不祥事件届出の義務化は不可欠であると考えます。
それから、保険関連業を兼業する募集人への対応につきましては、私自身は規模に関わらず、全ての保険募集人に体制整備等を求める形がよいのではないかと考えております。と申しますのも、今回想定されている体制整備の内容は、そこまで負荷が重いものではないという理解であり、小規模だからできないというような内容ではなく、むしろ兼業として保険関連事業をやっているのであれば、利益相反は精査してしかるべき内容だと思われます。加えて、保険会社のほうで、自らが委託していない兼業部分について正確に把握することはできないため、まず保険代理店において、どのような利益相反状態が発生しうるか等について検討を行っていただく必要性があるものと思われ、そのような観点から、規模に関わらず全ての保険募集人に体制整備を求めることが必要なのではないかと考えております。
最後の大規模な保険代理店への対応については、特段違和感はございません。
以上です。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、小畑委員、お願いいたします。
【小畑委員】
御指名ありがとうございます。今日のテーマのうち、まず保険仲立人の活用促進でございますけれども、多くの企業からも今後、保険仲立人を一層活用していきたいという声も聞いているところでございまして、企業向け保険契約において保険仲立人を活用していくとともに、それを促進するという今回の基本的方向については、大いに賛同するところでございます。
その上で、今回あくまで議論されているのが企業向けの保険だと理解しておりまして、今回の個別テーマになっている媒介手数料の受領方法とか、あるいは代理店との協業とか、こういったところが個人向け商品にまで拡大すると、やはり個人にとっては非常に分かりにくいものになるだろうと思っております。あくまでこれは企業向けの話だということで整理をしていただくのがよいのではないかと思っております。
その上で、個別の課題のところで媒介手数料でございますけれども、保険会社並びに保険契約者の双方から手数料を請求できるということを認める場合、二重取りのおそれもあります。契約者が求めた場合には、手数料を開示する、説明するということは当然必要ですが、もう一方の当事者の保険会社から聞かれた場合にも、個別の手数料についてちゃんと開示し、双方に答えるということが必要だと感じるところでございます。
また、保険契約者に媒介手数料を請求するということになりますと、これは保険料とは別枠の手数料ということになります。ちょっと別の話になりますけれども、保険料は消費税の対象外でございますが、手数料は消費税の対象になると、課税取扱いになるのではないかと思われますので、その辺の取扱いもはっきりしていただく必要があると感じるところでございます。
それから、保証金の供託ですが、これは2,000万円が1,000万円になることで大幅に保証能力が下がるかというと、そうでもないのではないかと思いますが、特に企業向けの保険で何か本当に事故が起これば、そういう金額では到底済まないというものでございます。そのため、当局の適切なモニタリングがより一層重要な役割を果たすということになってくると思っておりまして、その意味からすれば不祥事における届出を義務化する方向には賛同するところでございます。
それから、代理店との協業についても、基本的にそういう仕組みができることは有用だと考えております。しかしながら、やはりこれは紛れが生じるといけないので、契約者に対してちゃんと説明をして理解を得るということが重要になってくると思います。
それから、海外直接付保は、前回申し上げましたが、サイバー保険とか、あるいは航空・船舶、宇宙とか、なかなか国内の保険で受け切れないもの、あるいはキャパシティーが不足している地震などについては、海外付保の必要性は非常に高まっておりますので、直接付保がよりできやすくするというのは非常によい方向だと思っております。さらに一歩進めれば、先ほど柳瀬委員のほうから御意見ありましたけれども、能力のあるプロ契約者については、全く自由に保険契約を自分の責任で結んでいくことがあってもしかるべきではないかと思っておりまして、それがまた保険仲立人の活用にもつながるのではないかと思うところでございます。
それから、次の論点の保険契約者等に対する便宜供与の防止でございますけれども、方向性はそのとおりだと考えておりますが、資料25ページにも、「上記の趣旨に反するようなもの」について、便宜供与だということで特定して規定していくという記載がございます。この「趣旨に反するような取引」というのは何なのかというところを明確にお示しいただけると、法的な安定性が確保できるのではないかと思っております。
また、前回の議論を踏まえた考え方の整理につきましては、基本的に賛同いたします。やはり規制とモニタリングのセットで、モニタリングについてもリスクに応じてグラデーションを伴った形で実施していくという方向に賛同するところでございます。
以上でございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。保険仲立人が双方から手数料を受け取れるようにすることについて、総論としては賛成だという御意見の委員の方がほとんどだと思いますけれども、個別的な問題については、いろいろなコメントをいただきました。
例えば、保険者に対しても開示することを要求すべきだということ、これも複数の方から御意見をいただきました。あと、保険仲立人に関しては、この規律の対象というか、保険仲立人の募集活動が個人の保険契約者を想定したものになるのか、それともほぼ企業保険に限られるのかというところは確かに大きな論点でありますし、前回の保険仲立人協会様のプレゼンからすると、現状では企業保険にほぼ限られているということだったかと思います。確かに10年前の保険業法が改正された時点で見ると、将来生命保険の個人顧客を対象にするような募集、媒介が行われることになる可能性はありましたが、この10年間の様子を見ると、そういう方向での活動の拡大はなかったということかと思います。ただ可能性として残るのであれば、規律の対象として個人顧客も含めて考えるべきなのか、大村委員はどちらかというとそういう御発想だったかと思いますし、小畑委員は逆に企業保険の問題として考えればいいのではないかという、そういう御発想だったかというふうに思います。私も、そこの問題についてはどちらの考え方もあり得ると思いますし、規制を大幅に緩和するのであれば、個人顧客のものについてはちょっと別ですよという形の規律をすることも考えられますので、この辺りは委員の皆様方の御感触を得て、また事務局のほうでも検討をされるのだろうと思っております。
では、先に進みたいと思います。続きまして、嶋寺委員、お願いいたします。
【嶋寺委員】
ありがとうございます。既に複数の委員から意見が出ておりますので、重ならない範囲で私からもコメントをさせていただきます。
まず、保険仲立人の関係ですが、活用を促進するために一定の規制を緩和するという方向性については賛成ですが、ここで議論の前提とされているような保険仲立人というのが、現在の日本の実務の実態に即しているかというと少し疑問がございます。決して保険仲立人の実態を全て知っているわけではありませんが、私が企業保険の支払いの事案に関わっている中では、保険仲立人が関与する事案もそれなりに存在しております。保険仲立人が関わることで顧客に示すことができる選択肢が増えるというのは事実だと思いますが、保険仲立人の業務品質というのは、結局は人によるということになりますので、全員が保険代理店よりもレベルが高い仕事をしているかと言われると、実際には契約時や更新時の説明が不十分で契約者とトラブルになっているケースもございますし、情報の漏えいが問題になったようなケースもございますので、一律にレベルの高いサービスが提供できているかのようなイメージで議論するのは正しくないように思いました。
私はむしろ今回の活用促進というのは、企業内代理店が広く存在していることによって、企業保険の分野における商品選択の多様化が進んでおらず、結果的に企業自身がリスクを分析して適切に保険を付保するようなリスクマネジメントが十分でないという現状を踏まえて、保険の媒介業務に関する競争を促進し、企業が自らの判断で保険を選択する環境をつくっていくということにあるのではないかと理解をしております。その意味で、保険仲立人を活用していくことで競争を促進していくということが狙いであると思いますので、そのような位置づけからすると、媒介手数料の受領を保険会社からに限定する必然性はないと思いますし、保証金の引き下げであるとか、代理店との協業を認めるということも、私は可能ではないかと思います。
むしろ重要なのは、先ほど大村委員からも指摘がありましたが、保険仲立人の監督を適切に行うということではないかと思いますので、保険会社が責任を負うという仕組みでない以上、金融庁による直接の監督を充実させていくということとセットになると思います。そう考えますと、不祥事件の届出はもちろん必須であると思いますし、保険会社からの監督が及ばないため、日々の業務がノーチェックになるということが懸念されますので、当局による直接のモニタリングを強化していくことが重要になると思います。その中には、先ほどから議論になっております手数料の総額の適正の問題であるとか、個別の契約における説明義務、それから更新の管理、情報管理などの問題も含まれると思いますので、そこでのモニタリングの実効性との兼ね合いで、どこまで保険仲立人が扱う保険種目を広げていくのかというのが議論になっていくと思います。
先ほど座長からも、個人保険、企業保険という話がありましたけれども、その点はモニタリングなどとセットで考えますと、あまり範囲を広げ過ぎることについては少し慎重であってもいいのかなという感覚を持っております。
次に、大規模乗合代理店の問題でございますが、今回の資料を拝見すると、約450社の特定保険募集人も規模が様々であるということがよく分かりますので、そうしますと450社全てに同じ上乗せ規制を設けていくというのはあまり現実的ではないのかなという印象を持ちました。
そうすると、資料の31ページにお示しいただいておりますように、特定保険募集人の事業報告書の内容を拡充するととともに、さらに規模の大きい代理店を対象に体制整備を求めるという、ある意味2段階での上乗せ規制というものも一定の合理性があるのではないかと思いました。確かにどこで線を引くかというところは1つ問題になるわけですが、同じページにあるように、金融庁による定期的なヒアリングであるとか監督が行われるということがセットになっていると思いますので、そのヒアリング等を通じて金融庁のほうで実態の把握、それから、そこでの問題に適切に対処するという観点から、一定の規模の大きい乗合代理店に限定した体制整備義務を設定した上で、数年間実際に実務を回し、実態を踏まえて規制対象の拡大であるとか、あるいは別の切り口からの規制対象の切り分けというものを検討していくというのが現実的なアプローチではないかと感じたところです。
今回、有識者会議以降議論になっております損保業界の構造的な問題については、何十年にもわたって慣習となってきた根深い問題ではないかと思いますので、新たな保険業法の規制だけで容易に解消できるものはないと思います。今回こういう議論を行っていますが、また10年後にワーキング・グループであるとか有識者会議というものを開くということではなく、もう少し短いスパンで取組の実践状況を検証することとし、それによって規制の見直しも含めて検討するというような進め方が、私は効果的な対策ではないかと感じております。
私からのコメントは以上です。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、山下委員、お願いいたします。
【山下委員】
山下でございます。御指名いただきありがとうございます。私からも、何点か気になった点をコメント申し上げます。
まず、1つ目、保険仲立人の活用促進に向けた施策のうち、まず、媒介手数料の受領方法につきましては、顧客の利益が害されないようにする措置を講ずることを条件に、認めてよいのではないかと考えております。保険仲立人が双方から報酬を受けることは、仲立営業の性質に反するわけではありませんし、保険仲立営業に限ってみましても、比較法的に多くの国で認められております。また、特に企業保険分野におきましては、顧客企業が保険仲立人から受けたサービスに見合った報酬を保険仲立人に支払うということは、保険仲立人のサービス内容の競争促進という点でもメリットが認められるのではないかと考えます。
他方で、顧客の利益保護という観点も重要です。例えばアメリカでは、NAICのモデル法も、ニューヨーク州法も、そのルールの詳細は異なりますが、顧客と保険会社の両方から報酬を受ける場合には、両方から報酬を受けるということについて顧客に対して事前に説明をする義務があります。また、保険会社から受ける報酬の額を顧客に当然に開示するというパターンと、開示請求権があることの説明を顧客にするというパターンに分かれるのですが、いずれにせよ保険会社から受ける報酬の額を顧客に開示するという点で、おおむね方向性は共通しております。つまり、報酬を両方から受けるということの説明と、保険会社から受ける報酬の額の説明を顧客にするということがアメリカ法では求められておりますので、その辺りは参考になるのではないかと考えております。
次に、保証金の供託は、額自体はコメントがしづらいというのが正直なところで、ただ中出委員と大村委員から、賠償責任保険に移行したほうがよいのではないかという話がありました。それは、将来的な方向性としてはあり得ると感じたということを申し上げたいと思います。現時点の責任保険の仕組みでどこまでできているかはちょっと微妙なのですが、リスクベースで保険料を設定することを徹底すれば、被保険者の業務運営の適正さを確保したり体制整備をしたりするインセンティブを、保険加入を通じて与えるということにつながるので、将来的な方向性としては望ましいと感じた次第です。
ただ責任保険は、故意の場合は保険金が出ないという話もありますので、一定額の供託金は避けられないのかもしれませんが、大きな方向性として保険を活用するというのは、私は魅力的な提案であると感じました。
保険仲立人の活用促進の施策その他も、基本的には違和感はございません。ただ既に指摘がありましたように、保険仲立人の監督を、保険会社がすることはもともと想定されておらず、当局がするという建てつけになっておりますし、今回の一連の施策は保険仲立人の業務の適正さが確保されており、業務内容が適正で信用できるということが、各所で大前提となっているように思われます。例えば、海外直接付保なんかもそうだと思います。そのため、その辺りを確保するためのモニタリングを当局のほうでしっかりしていただきたいと考えております。つまり、モニタリングのリソースが保険仲立人にも十分に割かれるようになるということを期待し、その上で、活用促進の施策に賛成したいと思います。
関連して、保険代理店の規制のほうで、規模の大きな特定保険募集人が提出する事業報告書の記載内容の拡充が提案されておりますが、事業報告書は保険仲立人も出すものですので、拡充というのは並びで保険仲立人にも及ぶ話ではないかと思います。また、保険仲立人の活用促進の前提としては、顧客企業側のリスクマネジメント能力の向上というのが大前提となりますので、その意味では柳瀬委員が提案された適格被保険者制度というのは、将来的な検討課題として、非常に魅力的で有望であると感じました。
あと、便宜供与の解消について、私は特に違和感はありません。
最後に、第2回ワーキング・グループの議論を受けた考え方の整理につきまして、まず、兼業の利益相反については、度々申し上げておりますが、兼業による利益相反自体による弊害は、規模にかかわらず生じ得るということは、確かにそれはそうなのですが、一定のクオリティーを持った体制整備義務を求めるのであれば、それに相応するコストがかかると考えますので、私はやはり規模である程度区切らざるを得ないのかな、それが現実的かと思っております。
また、事務局案、資料の29ページの前回資料にも出ていたことですけれども、中小規模の保険募集人に対して、保険会社からの適切なけん制が機能してきたものと考えられるということは、私はある程度前提としていいのではないかと考えております。これは一般的な保険募集の話ではなくて、保険金関連事業の兼業の利益相反ですので、保険金の不正請求をする場合、支払査定部門がしっかり働くべき話です。しかし、今回のビッグモーターの件は、営業上の理由から、忖度なのか何なのか、いずれにせようまく支払査定部門による規律、けん制が働かなかったということですので、そうするとやはり規模というのは1つの考慮要素になるのではないかと考えました。
他方で、四角の3つ目で、中小規模の保険募集人に対する対応で挙がっている顧客本位の業務運営に関する原則の取組方針というのは、これは進めたほうがよいのではないかと思っております。改正金サ法が施行されて、顧客の最善の利益勘案義務を負うことになりますので、一般的にそういう義務がある上で、具体的には顧客本位の原則に関するソフトローアプローチで、差し当たりは自主的な取組を促すということが考えられるのではないかと思っております。
最後に、先ほど規模で体制整備義務を課すかどうかの範囲を画するという話をしましたが、しかし他方で潜脱防止というのも重要なので、今回提案されているようなグラデーションを持ったリスクベースのモニタリングというのは、私は大賛成でございます。
以上です。ありがとうございました。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、滝沢委員、お願いします。
【滝沢委員】
ありがとうございます。事業会社が抱えるリスクが多様化、複雑化する中で、企業のリスクキャパシティーを確保する手段の1つとしての保険仲立人の活用を妨げない規制環境、こういったものにすることがまず重要だと思っておりまして、当然に利用する企業側のリテラシーを上げること、これが両輪なのではないかと思っております。
その意味で、今回の検討、規制の範囲としては、私は勝手ながら企業保険分野に限った話なのかなと思っておりました。媒介手数料の受領方法は、既に複数の委員の方から出ていますが、立ち位置がお客様にとって最適なソリューション提供であるということを考えると、お客様側から手数料をいただくのが自然であると考えますので、基本はそれでいいのかなと思っております。
一方で、事務局案としては、開示請求権があるということを説明することを義務づけるとされていますけれども、本来的には経済合理性等を勘案して調達を決定するのかなと思いますので、受取手数料については、請求されなくても、誰から受け取ったのかということにかかわらず、開示できるような準備を整えることを検討していくのがよろしいのかなと思っております。
そのほか保険代理店との協業、海外直接付保、不祥事件の届出義務は、いずれも顧客保護のための手当てがきちんとなされるということを前提に、事務局案に賛成いたします。その上で、保証金供託の額の引下げは、小林委員、大村委員と同意見でして、今まであまり活用されていなかった中で、大きな損失を与える事態はなかったというのは根拠として少し弱いのかなと思っておりまして、今般の規制緩和で活用がより進むことを考えると、少し慎重に検討したほうがよいのかなと思っております。
特定大規模乗合保険募集人の制度新設に関しては、既に複数の委員から御懸念が提起されているとおり、原則として、今回御提案されているようなリスクベース、グラデーションをかけてやっていくのかなと思っております。手数料集計総額10億円を条件とするのが正しいのかというところは、繰り返しになりますけれども、少し疑問に思っておりまして、一定規模で切るということは効率性の観点からも必要とは思いつつ、今回課題となっているような、ディーラーのような損保だけを取り扱っている兼業代理店を考えたときに、10億円と言わず、もう少し下の額でも、かなり大規模代理店に当たるのではないかと思いますので、総額の代理店手数料収入だけで考えるのが適当なのか、少し検討したほうがいいのかなと思っております。
以上です。
【洲崎座長】
ありがとうございました。
この後は、オンラインから御発言希望がございます。まず沖野委員、お願いいたします。
【沖野委員】
ありがとうございます。3点お話をしたいと思います。
1点目は、保険仲立人の活用というのが、どのような範囲を対象にしたものなのかということについてです。私もこれは企業向けの保険を対象とした議論だと思っておりまして、その前提で資料なども拝見しておりました。この後申し上げます手数料関係につきましても、双方から取る余地を認めるという制度にした場合に、最終的には双方からということであれば3者で調整ということですけれども、こういった規律が企業と個人と双方に妥当するのか、個人を対象とするならば、また別の規律が考えられるようにも思われますので、企業向けのことを想定した規律ではないかと理解しておったところです。それが適切なのかどうかというのはありますが、現在、活用可能性が言われている分野、必要性というか望まれる分野ということを考えると、まずは企業向けの保険において検討し、さらに必要と望まれるのであれば個人向けを考えていくことがよろしいのではないかと考えております。
2点目は手数料の問題ですが、もともと顧客側に立ったベストアドバイスですとか、あるいは総合的なリスクマネジメントが期待されるということであれば、それに伴う手数料という名前での費用や報酬は顧客側から払われるのが、むしろ筋だと思われるところです。現在そうなっていないのは、海外法制を範としたからだということですが、海外法制自体も、制度としては双方いずれからでも取り得るという形になっているということからすると、あえてその道をおよそ封じるという必要はないのではないかと考えております。
ただ、気になりますところとしては、この資料に御紹介いただいておりますように、海外法制といたしまして、制度上はいずれからでも手数料の受領ができるとされながら、通常は保険会社から受領しているという点でございます。制度的にはいずれもありながら、また、本来は顧客側の立場ということであれば、各種のサービス提供に対する対価性あるいは費用性を持ったものは顧客から受領する方が素直なように思われるところ、なぜ保険会社からの受領が一般的になっているのかという原因や理由がもし分かるようなら確認しておいた方がよいのではないかと思いました。
さらに、仮にそのような制度にした場合、この資料の中では、監督指針の規定の削除をした場合に、顧客としては、自分だけが手数料を支払っているのかどうかが分からないにもかかわらず、自分だけが支払っているという想定で手数料を決めているということも生じますので、誤認を誘発しかねないということからすると、顧客の利益の観点から、一体手数料がどちらから払われているのかということが、少なくとも明らかにされるべきだと考えられます。その上で、保険会社からも手数料が払われるということであれば、保険会社の手数料分というのはどういう形になっているのかということを端的に開示するのか、開示請求権があるという形にするのかというのは、それはいずれも考えられると思いますけれども、資料で御準備いただいているように、この場合には手数料開示請求権がある旨をあらかじめ説明するというのは、やや中途なやり方ではないかと思われます。
と申しますのは、手数料開示請求権は、双方からではないものの場合も、現行法で認められているという理解をしておりまして、それに応じて開示する義務はあるということだとすると、開示請求権が認められる場合のうち、この場合だけ開示請求権があると伝えることになります。なぜ伝えるかというと、開示請求権があるのだけれども、それがあるということを認識しておらず行使ができないという可能性があるので、それを知らせて実効性あるようにするということだとすると、この場合に限らず、全ての場合に開示請求権があるということを伝えるべきではないかと考えられます。さらに言えば開示自体をするということまで踏み込んでいいのかもしれませんけれども、何かこの場合だけそれを伝えるということは、あまり合理性がないのではないかと思っております。
それから、ここでは最終的には3者調整で決めるということが考えられるのではないかということですけれども、双方から取り得て、かつ双方から取るというような場合を考えますと、同じことは保険会社にとっても、保険会社の方の保険料からと想定していたところ、顧客からも支払いがされるということだと設定が適切なのかという問題もありますので、そうだとすると、保険会社に対しても、どこから手数料というのが支払われるのかというのは明らかにする必要があるのではないかと考えられるところです。そうしたときにそれだけを言っても、この調整には十分に働きませんので、どれだけの額なのかというのが開示されることで、初めて3者調整の土台が整うのではないかと思うところです。
3点目といたしまして、前回の兼業関係の話で、スライドの29と31に関わるところです。現在、実際に問題になっている場面というのは非常に規模が大きい場合だけということは前回も教えていただき、今回も山下委員から、改めて確認をしていただいたところで、したがって、それに応じたものでよいということも考えられますけれども、スライドの29に示していただいているような顧客本位の業務運営に関する原則について、これをより実効的な形で取組を促していくというのは一般的に考えられて、兼業との関係でも特に重視されるということであれば、この方策というのはもう少し考えていってもよいのではないかと思います。
そうしたときに、顧客本位の業務運営に関する原則一般にするのか、それともスライドの31を見ますと、パッケージとしての規律が一覧になっており、この新設される上乗せ規制をあらゆる規模の代理店に求めるということはなかなか難しいし、必要性もないのではないか、あるいは監督のためのコストの実効的な使い方という点でも望ましくないのではないかということはそのように思われますが、このうちの例えば、下から2つ目について、不当なインセンティブによって顧客の利益、または信頼を害するおそれのある取引の特定だとか、管理方針の策定の公表といったものは、先ほどの顧客本位の業務の原則の中の利益相反管理の中で、特に兼業について可能性があるようなところはさらに一段、その部分までやってもらうというような形の組合せが考えられるのではないかと思いました。
以上です。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、オンラインで、上杉委員、お願いいたします。
【上杉委員】
上杉です。発言の機会をありがとうございます。
私は前回、保険仲立人協会の方からいただいた資料のうち、媒介手数料を受領することに関する要望のところで、家計分野の個人契約等について書かれていたので、これは将来的に消費者というリテール顧客も想定した上で検討してみましたので、ちょっとほかの先生方とずれるかもしれないですが、まず手数料について、現在の保険会社からのみではなく、本来の依頼人である顧客からも手数料を受け取ることができるという方向性については賛同いたします。ただ、顧客から手数料を受け取るということになりますと、報酬等手数料の線引きの明確化が、これから必要になるのではないかと思います。報酬と手数料の額をいかなる根拠で算出されたのか、また、そうした内容について顧客のなかには何をどのように聞くか、わからない者もおりますので、開示請求されて説明するという形ではなく、事業者が最初から説明するというような形が今後望ましいのではないかなと個人的には思いました。
そして、双方から手数料を受け取るとする場合、特にリテール顧客を想定してなんですけれども、双方取りの禁止を原則としつつ、例外的に、この場合には双方から求めてもいいという形を取ると、顧客保護に資するのではないかなと思いまして、その辺りの調整等、今後検討をしていく必要があるのではないかなと思いました。
あと、細かな点になってしまうのですが、便宜供与の点について、私も実務についてあまり詳しくないのですが、24ページ目の前回の有識者会議の報告書のところで、価格、数量、頻度の要素を総合的に勘案した上で実質的にと書かれておりますので、これまで御発言した委員の中には、具体的にこれというような形で明確化しておくと予見可能性が高まるということではあったのですが、業界の方から聞いた話によれば、市場価格での提供であった場合にも実態は便宜供与であることもあり、本当に必要な契約かどうかというのが主観的に定まることから、どこで区別すべきかが難しいところもあるのかなと。だからこの案でいこうということが考えきれなかったのですが、そういったところが少し気になった点です。
あと、前回までに出た発言の中で、兼業規制について、29ページの中にある点ですけれども、考え方の中で、特に3つ目の四角のところで2つほど。規模にかかわらず兼業規制による問題が生じることを考えれば、中小規模の保険募集人に対しても何らかの規制は必要になるということに関しては賛同するのですが、やはり中小ということになると、1人でやっているようなところもいることを考えれば、そういったところに過度な負担を課してしまうことによってリテール顧客に対しての何らかのデメリットの影響が及んでしまうということが考えられます。そうすると、自発的な取組という形でまずはやってもらった上で、その後、何年か経過を見守りつつ、やはり規制がなくては駄目だったという場合には、法的に一定の規制を課すという形で経過を見ながら、その先を考えるのがありかなと思いました。
あと1つ思ったのが、33ページですが、事業報告書の記載内容を今後拡充するということで、中でも個人的に、コンプライアンスに関する教育体制のありなしに関し、ありは当然だと思うのですが、やはりあり・なし、だとどういった形で内部統制されているのかということが外側の人間からは分からないので、こういった形での教育体制を敷いていますというところまでの記載を求め、第三者の目が行き届いた形で取り締まっていくというのが望ましいのではないかなと個人的には思いました。
以上になります。ありがとうございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございます。
それでは、同じくオンラインから、松井委員、お願いいたします。
【松井委員】
ありがとうございます。私も洲崎先生おまとめのとおり、全体として保険仲立人の参入する機会がどこまで広がるのかという点について、少し分からずに議論をしているという点がございますけれども、この点についての感触と、幾つかのそれに関する論点について意見を述べたいと思います。
まず、15ページの手数料に関する部分に一番関係するかと思いますけれども、今回の御提案に関しましては、委員の中でも、やはり双方に請求できるようになるという意味で受け取っているという方もおられれば、その点をより広く捉えて、フィーかコミッションかという点を含めた自由設計ができるというところに意味があるのだと思っておられる方もいたかと思います。私自身は、現状からそれほど大きな業態の拡大がないということを前提に考えておりまして、たとえば、企業向けの保険の媒介で、今までより多くの保険会社のリサーチをするという場合に、例えばコンサル料として、別途こういった料金が請求できるというような設計があった方が便利だという場合には、このような規制が妨げになっているのであれば、これがない方がよいであろうと思っておりました。逆に、今までは成功報酬制であることにより、少額の保険の媒介には手を出さないというような偏りがもしあったのだとすると、この点を自由化することによって、低額な保険、あるいはリテール向けの保険というところに拡大しよう、参入しようという方々が出てくる可能性はあるのかなと思いました。
もし報酬設計によって、消費者の側に業態を拡大して少額保険も販売するというインセンティブが出てきたときに、どういうことが考えられるかということなのですけれども、フィーを要求して、より多くの保険会社のリサーチをするという要求を顧客から受けることについては望ましいと思いますが、どちらの代理か紛らわしい形で単純な両手媒介のような形で、双方からただ単に報酬をもらうというようなことになる可能性、おそれはないだろうかと思っております。こちらの資料は、手数料という言葉で書かれておりまして、そのときの手数料というのは、やはり契約が成立したときのコミッションということになるかと思いますけれども、例えば、紹介をする数社の提案の商品の中に入れてもらうことのリベートのようなものは、ここに言う手数料の体系に入ってくるのかとか、細かく考えると課題となるような論点も含まれている可能性はあるかと思いますので、もし消費者向けの業務が可能になった場合には、この料金の体系は、ただ成立した契約についての手数料の中身だけということではなくて、もっと契約に至る様々な収入の内訳部分が広く含まれ、説明しなければいけないという性質のものになる場合があるかもしれません。また、それをしないのであれば、より強い監督をすることが必要ではないかと思っておりますので、この点については実態を注視する必要があると思います。
その次の保証金に関して、これも同じく、ニッチな保険に進出する専門家としての、規模は小さいけれども精鋭であるというような方々のチャンスを広げるということであれば、これは望ましいことかと思いますが、単に消費者向けに財政力のない方々も拡大して入ってくるというようなこともありうるのであれば、現在、問題が起きていないとしても、これからも問題ないとは言い切れない部分があるかと思っております。つまり、現状の保険仲立人の性格が大きく変わらないという前提であれば、この御提案というのは問題ないものと理解しておりますが、この点についても、もし事態が大きく変わるということであれば、適切な監督をするという金融庁のお仕事が増えるということになるかと思います。
協業に関して、共同保険の仕組みについて、この資料の中では書き方として分からない部分がありまして、対応の方向性の一番下ですが、事前に顧客に説明する主体は誰かを考えたときに、これは複数の保険のコンソーシアムを組んでいる幹事会社になるのかと思ったわけですけれども、一方で、保険仲立人を使ってでも、ある保険会社からの保険の提供を受けたい、アクセスしたいと思っている顧客がいた場合、この顧客は保険仲立人を通すということについてある程度分かっている可能性があり、逆に幹事会社は、なぜその保険仲立人を使うのかということについてあまり分かってないということがあるのかもしれないと思いました。少し実態がよく分からないため、顧客に説明する等というところの中身が、この提案が制度に反映されるにあたり、どういうことを説明するのかということについてはっきり分かると、実務としてもやりやすいのかなと思いました。
最後に便宜の供与に関して、この点、ガイドラインベースでなるべく行わない方向に誘導するという御提案と、開示による調整を施行するという御提案の2つがあったかと思いますが、便宜が何なのかは非常に多様ではないかと思いますし、リアルタイムで変わっていく可能性があるため、開示をする場合の開示の中身はなかなか難しいのかなと思いました。その意味で、ガイドラインが第一になるのかなと考えております。他方、出向など特定の項目で全てをやめることが難しく、かつ数量的に捉えやすい部分もあるかもしれませんので、そういう場合について、必要な部分についてはピックアップで開示をし、その他、細かく動きそうなところはガイドラインで押さえるといったような組合せでの調整ということがあり得るかと思いました。
以上です。ありがとうございました。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。
司会の不手際で時間が押しておりますけれども、この後、オブザーバーから御意見、御発言の御希望がございます。大変申し訳ないのですが、手短に御発言をいただければありがたく存じます。
まず、日本自動車販売協会連合会様、お願いいたします。
【日本自動車販売協会連合会】
日本自動車販売協会連合会ございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。
兼業をする募集人への対応について少しコメントさせていただきますと、兼業に係るリスク相反、利益相反などのリスクを適切に管理していくというのは、自動車ディーラーにとっては極めて重要でございまして、私どもの会員企業は基本的に地域社会においてビジネスをしている、そういった立場でありますので、顔の見える地域の顧客の利益、あるいは信頼を損なっては、代理店業務のみならず、本業の新車ディーラーもそもそも成り立たないということで、兼業のリスク管理はしっかり対応すべきものと考えておりますし、これまでもそういった努力をしてまいっております。
その上で、これまでは新車ディーラー業界全体としては、おおむねそうした兼業のリスク管理をうまくやってきているのではないかと思っておりまして、だからこそ多くの顧客が保険代理店を兼業するディーラーを信用していただいて保険に加入していただき、結果として日本の自動車保険というのは、世界最高水準の付保率を達成できるのかなと考えております。
一方で、今回のビッグモーターの事案はかなり特殊な事案であると思いますが、これを踏まえて一定規模以上の大きな代理店に体制整備等の義務を課すというのは理解をするわけでございますが、一方で、全ての代理店に法令上の体制整備等の義務まで求める必要があるのかという点につきましては、今回そこまでの立法事実は存在しないのではないかと考えております。先ほど委員の御発言にもありましたが、まさに一定のクオリティーの義務を課すのであれば、やっぱり対象は絞らざるを得ないという御意見がありましたが、そのとおりであるというふうに考えております。
次に、大規模な乗合代理店の対応、義務を課す特定保険募集人の範囲が論点なわけでございますが、手数料が10億円を超えたら直ちに保険会社の指導管理が働かなくなるとか、あるいはビッグモーターと同様の事案が起きるリスクがあるのかという点につきましては、現時点ではそうした明確なエビデンスもないのではないかと考えております。したがって、今回、大規模な代理店には、営業上の配慮から指導管理が働かなくなるおそれがあるというような仮説の下に新たな体制整備機能を強化するということであれば、その対象につきましては、まずは大規模代理店の中でも特に大規模なものに絞り込んでいただいた上で、当局において、十分な深度でモニタリングをしていただきまして、そういった仮説が正しいのか、あるいは体制整備義務のような施策は効果があるのかといったあたりも含めて、しっかり検証していただくということが重要なのではないかと考えております。
もう1点だけ、大規模代理店には営業上の配慮から指導管理できなくなるおそれがあるという前提について少しコメントをさせていただきますと、申すまでもありませんが、本来はそういう配慮があったとしても、しっかりと代理店を指導管理するのは保険業法上の保険会社の責務であって、大きな問題があるような代理店は、保険会社の側で委託を打ち切るというのが基本形であると考えております。現実問題として、保険会社に営業上の配慮のようなものが働いて厳しいことを言いづらいというのは理解をするわけですが、そのことを前提とか所与のものとし過ぎて、言わば基本形が働かない前提に立ち過ぎて、逆に代理店の側に幅広く義務を課したり、あるいは中小・中堅代理店にまで大きな負荷をかけたりということになると、これは制度の枠組みとしてバランスを失するということにもなると思いますし、また、かえって保険会社の指導管理を弱めたり、あるいは緩めたりする方向に働かないかということも含めて御検討いただくべきではないかなと思っております。
すみません、私どもからは以上でございます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、日本損害保険協会様、お願いいたします。
【日本損害保険協会】
損保協会の崎山です。発言の機会を頂戴しましてありがとうございます。
保険仲立人の活用促進は、顧客にとって保険に加入する際の選択肢が広がり、保険市場のさらなる発展につながるものと受け止めております。一方で、実際に保険仲立人を活用するか否かは顧客が決めることであり、規制見直しの検討に当たりましては、顧客視点での検討も重要であると考えております。
その観点では、媒介手数料の顧客からの受領解禁について、仮に保険会社と顧客の双方から手数料を受領する場合に利益相反になるおそれがあることや、顧客と保険仲立人との間で媒介手数料の取決めを行うに当たって、顧客によっては適切な手数料水準の判断ができず、結果的に顧客が支払う手数料込みのトータルの負担額が増加することにもつながりかねないとも思っております。
よって、そうした顧客に与える影響も考慮し、保険会社と顧客の双方から手数料を受領する場合は、保険仲立人が顧客から受領する手数料について保険会社として承知していないと、保険会社が保険仲立人に支払う手数料水準の判断ができない。また、本日御論議がございました代理店との協業についても、実際に緩和する場合には、その必要性がなおさら顕著になってくるかと思いますので、保険仲立人が顧客から受領する手数料は保険会社に開示することを求めるようなルールに変更していただくことを、ぜひ御検討いただけたらありがたく存じます。
以上となります。ありがとうございました。
【洲崎座長】
ありがとうございました。
それでは、最後になりますが、生命保険協会様、お願いします。
【生命保険協会】
生命保険協会の中村でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
資料の15ページに記載いただいている顧客からの媒介手数料の解禁についてでございます。事務局の提案どおり、保険仲立人が顧客に対し手数料開示請求権がある旨をあらかじめ説明するということについては、異論がございません。ただし、保険仲立人から顧客に対して積極的に手数料開示を行ってはどうか、保険仲立人に限らず積極的かつ一律的に手数料を開示すべきではないかといった意見については、慎重に検討する必要があると考えております。
各国の法制度を見てみますと、保険仲立人に対して手数料の開示規定を設けている場合でも、顧客からの要求がある場合や、事業のための高額な契約であること等、必要な場合に限定して開示を求めているケースもあると承知しており、一律的な開示を求めることにはなっていないと理解しております。
保険契約において最も重要なのは、お客様のニーズに応じた最適な保障を提供するということでございます。一律に媒介手数料を開示することで、保障や保険料ではなく手数料の多寡に過度にスポットが当たるということが、かえって顧客の商品選択を阻害することになるケースもあると承知しており、一律の媒介手数料を開示するに当たっては、その辺も考慮した慎重な検討が必要だと考えております。
先ほど挙げた海外での手数料開示における議論においても同様の指摘がなされていると認識しておりますので、手数料の積極的かつ一律的な開示は慎重な検討をお願いいたしたく存じます。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。
時間は超過しておりますが、本日のテーマからいたしますと、日本保険仲立人協会様からも御発言いただくのがよろしいかと思いますので、よろしくお願いします。
【日本保険仲立人協会】
手短に、感想といいますか、お礼も含めまして、2時間あまりにわたりまして、本日につきましては保険仲立人の有効活用、どういうふうに活用を促進するかという御議論をたくさん頂戴しましてありがとうございます。
我々協会としましても、個社としましても、クオリティーの担保とか、我々が果たすべき役割というか課題というのは幾つかありまして、今のままというわけにもいかないと思いますし、そのほか金融庁様のモニタリング、これは個社単位で現在、我々も事業報告というものを年度ごとに行っておりますが、個社単位で担当の財務局に訪問をして、細かな事業報告書の内容につきましては、広く開示、説明を行っております。ただ、これが十分に行き渡ってない、加盟会社が全てやっているかというとそういうことではありませんので、今後モニタリング、あるいは規制の強化とは言いませんが、しっかりと見ていただくということにおきましては、我々も自発的にそれを行っていかなければいけないのかなと思います。
その意味では、個社におきましては内部管理体制、それから管理体制、それから監査体制というものは敷いておりますけども、これも広く加盟会社、あるいは、当局に登録している各社に対しても、我々協会発でその辺は進めて、促進させなければいけないかなとは痛感しております。
やはり我々にとっては信用、信頼というのが大事ですし、それを担保するためにはどのように我々のステータスを高め、かつ我々の利用価値というものが企業にとって、あるいは保険会社にとりましても、きちっと理解していただくためには、やはりそこは切磋琢磨しなければいけないなと。
それと数多くいただいておりました個人、企業ということにつきましては、先ほどから金融庁様、あるいは洲崎座長のほうからのお話、それから委員の方々からも御質問もありましたが、大方はやはり企業保険に我々は軸を置いております。そういう意味では、今回のいろいろな進め方というのは、企業保険ありきでこの今回の制度といいますか、御議論というものは進んでいただいているという御理解でよろしいかと思います。ただ、我々が今後、将来にわたって個人、あるいは消費者に対してサービスを提供しないということではありませんので、そういう意味では、門戸をそこで閉ざすのではなくて、広く消費者、あるいは広域に個人に対しても、保険仲立人も活用する、利用するということも前提に置いていただきたいということは、お含みおきいただければなと思います。その意味で、今後立てつけをするときに、企業保険に関してはとか、ある程度前提を置くというのも必要かなとは感じております。
それから、手数料に関して申し上げますと、双方代理というのは商法の立てつけによって、双方から取る、お客様から保険会社から取るということを前提に進めていますが、少なくとも我々協会におきましては、双方取りということを目指しているのではなくて、あくまでも当事者、顧客、保険会社、そして保険仲立人の合意によって行うということであって、それがイコール双方取りということではないということは、御理解いただきたいと思います。どちらかに寄せるということが、実は我々の本当は主眼でございまして、そこはやはり変に混乱を来す、特にその顧客に対して説明責任が果たせないようなことは決して我々も行ってはいけないとは思いますので、どちらかに寄せるということは、我々の一応念頭には置いているということも御理解いただければと思います。その上で、今回の監督指針を撤廃していただいて、外していただいて、自由度を増して、3者によるきちっとした開示も含めた合意事項に至るということを進めていただければということで、今回、要望事項の1つとして入れさせていただいた次第でございます。
本日はありがとうございました。
【洲崎座長】
どうもありがとうございました。
時間が超過してしまいまして、誠に申し訳ございません。本日いただきました御説明、御意見等を踏まえまして、今後さらに議論を深めていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
次回日程につきましては、委員の先生方の御予定等を踏まえまして、後日、事務局より連絡をさせていただきたいと思います。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
(参考)開催実績
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