金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第4回)議事録

  • 1.日時:

    令和6年11月15日(金曜日)15時00分~18時00分

2.場所:

 中央合同庁舎第7号館 9階 905B共用会議室 ※オンライン併用

金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第4回)


【洲崎座長】
 それでは、定刻になりましたので、ただいまより損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ第4回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。

 本日の会合も、前回に引き続き、オンライン会議を併用した開催とし、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせていただいております。

 また、議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

 それでは、メディア関係者の方々は、ここで御退席をお願いいたします。よろしくお願いします。

(報道関係者退室)

【洲崎座長】
 それでは、議事に移らせていただきます。本日は、多くの論点について御討議いただく予定ですが、まず全ての論点について、事務局より、事務局説明資料に基づいて御説明をいただきます。その後、討議に移りますが、まず前半、115分程度を考えておりますけれども、「企業内代理店のあり方」、「乗合代理店における比較推奨販売の適正化」、「損害保険分野における自主規制のあり方」について御討議いただき、続いて、後半約30分程度を予定しておりますけれども、「火災保険の赤字構造」、「第3回ワーキング・グループでの議論を踏まえた考え方の再整理」について御討議いただきます。

 それでは、事務局説明資料に基づいて事務局より御説明をお願いいたします。

【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
 それでは、各種論点について御説明をさせていただきます。お手元の資料2に沿って御説明をさせていただきます。

 まず、3ページを御覧ください。前回の第3回ワーキング・グループでもお示しした企業向け保険市場の全体像になります。課題が3つあると申し上げましたが、今回は企業内代理店の問題を取り上げたいと思います。

 4ページは第1回ワーキング・グループにおける委員の皆様からの御発言のまとめでありますので、ここは割愛させていただきまして、5ページにお進みください。

 こちらは有識者会議の報告書の抜粋になります。1つ目の四角、企業内代理店の自立を促す観点から、特定契約比率規制を見直していくべきではないか。特定契約比率規制は、後ほど詳しく御説明いたしますが、企業内代理店のあり方を検討するに当たっての重要な規制になります。

 2つ目の四角、保険代理店の果たす役割に応じた手数料体系のあり方についても検討を続けるべきとされております。

 続いて7ページを御覧ください。まず、企業内代理店の概要になります。企業内代理店は事業会社と人的・資本的に密接な関係を有する代理店、主に事業会社の子会社となっているケースが多いようです。親会社を中心とするグループ会社の企業向け保険や福利厚生の一環として、従業員に関する個人向け保険を取り扱っております。大企業を中心とする多くの事業会社で企業内代理店が設置されているようですが、確たる定義がございませんので、実態が不明確な部分もあります。

 その下は、企業内代理店をめぐる課題です。3点記載しております。1つ目は、損保会社の代理店である一方で、顧客企業グループの一員ということで、その立場が不明確だという点です。2つ目は、企業内代理店は顧客企業グループの一員であるため、損保会社が適切に指導することが難しい。このため、代理店としての実務能力が低いところもある。他方、実務能力の低い代理店であっても、親会社やグループ会社への保険募集さえ行っていれば、一定の手数料が得られますので、市場で存続できてしまうという点です。

 3点目は、企業内代理店に対して支払われる手数料が保険料の実質的な割引になっているのではないか。つまり、企業内代理店が親会社の保険契約をアレンジする場合、親会社が保険会社に対して支払う保険料の一部が企業内代理店に手数料として支払われる。グループ全体で見ると、企業内代理店が受け取る手数料分だけ保険料が実質的に割り引かれているのではないかということで、他の保険契約者との関係で不平等、不公平ではないかということがあります。

 こういう状況にありますため、保険仲立人や他の代理店が参入することができていない。これが企業向け保険市場の競争関係をゆがめているのではないかという点であります。

 続いて8ページを御覧ください。先ほど申し上げた特定契約比率規制の概要になります。まず、特定契約比率規制の趣旨は、保険料の実質的な割引の防止と代理店の自立です。具体的な計算式はその下に記載しておりますが、特定契約比率は、分母は企業内代理店が取り扱う全ての保険料、分子は特定契約に係る保険料で計算されます。特定契約は特定者との契約とされておりまして、その下の点線の枠内に記載をしておりますが、特定者というのは企業内代理店と役職員の兼務関係がある法人や、企業内代理店への出資比率が30%を超える法人、主に企業内代理店の親会社が対象になっております。また、この対象となる保険種目ですが、基本的には全ての保険種目が対象になります。

 なお、注2に記載しておりますが、企業内代理店の中には福利厚生の一環として従業員に対して個人向け保険、職域での保険募集を行っているところもありますが、分子には加算されないということです。

 企業内代理店ですが、この特定契約比率を原則として30%までに抑制させることが求められております。30%を超えますと、損保会社が数値の改善に向けて指導を行うということになっております。

 まとめますと、特定契約比率というのは、企業内代理店が取り扱う全ての保険料に占める特定者の契約を一定程度に抑制することを求めており、保険料の実質的な割引による影響を低減させる。また、親会社以外の顧客への保険募集を求める。親会社以外の顧客への保険募集というのは、ほかの代理店との競争が必要になりますので、実務能力を高めなければいけない。そういった意味で代理店としての自立のインセンティブを確保しようといった狙いがあるということであります。

 他方で、この特定契約比率に関しても、幾つか問題が示されています。まず、一番下のオレンジの四角部分を御覧いただければと思いますが、この特定契約比率規制には経過措置が置かれております。平成8年3月31日以前に設立された等の要件を満たす企業内代理店、我々は旧基準の代理店と呼んでおりますが、この旧基準の代理店は、特定契約比率の算定対象を火災、自動車、傷害保険に限定するというものでありますが、近年この企業向け保険では、賠償責任保険ですとかサイバー保険といった新種保険の市場規模が拡大しているということで、こういった保険種目が算定対象に入っていないなど、この点については市場の実態がうまく反映されていないのではないかといった指摘がございます。

 もう一つは、特定者の範囲、今は基本的に親会社が想定されており、グループ会社は対象外となっております。保険会社から企業内代理店に支払われる手数料が保険料の実質的な割引のおそれがあるといった点は、親会社に対する保険契約だけではなくて、経済主体として同一と考えられるグループ会社の保険契約も同じではないかということです。グループ経営や連結決算が浸透しているといった状況では、こういった規制の趣旨と規制の内容が少し整合的ではない部分は見直していくべきではないか。そうでないと、特定契約比率規制の本来の目的が達成されないのではないか、こういった問題も指摘されているところです。

 いずれにしましても、こういった問題意識の下で有識者会議の報告書の中では、企業内代理店の自立を促す観点から、特定契約比率規制の経過措置を撤廃するということと、特定契約比率の算定の対象を、グループ会社にまで拡大するということを検討することが求められております。

 続いて9ページを御覧ください。先ほど、企業内代理店の全体像が把握できていないということを申し上げました。有識者会議の報告書の中でも、企業内代理店の規制のあり方を見直すに当たっては、まず実態把握も進めるべきという記載もありますので、事務局で企業内代理店の実態把握に関する調査を行っております。その結果をここで御紹介させていただこうと思います。

 まず、一番上の四角です。企業内代理店はそもそも何社あるか分からなかったわけですが、損保大手4社に対しまして、企業内代理店と認識している先を聞き、集計しましたところ、約9,530社ということでありました。

 また、2つ目の四角、大手4社に対して収入保険料の上位300社の代理店を洗い出してもらいまして、その中にどれくらいの企業内代理店が含まれるかを確認したところ、大手4社ですので、累計1,200社の代理店になります。そこから重複を排除すると736社になり、その中で企業内代理店は256社となっております。規模の大きい代理店の約3分の1が企業内代理店といった結果になっております。

 また、256社のうち、先ほど申し上げた特定契約比率規制の経過措置が適用されている旧基準の企業内代理店が約173社、約3分の2となっております。

 その下の円グラフになりますが、この経過措置が適用されている企業内代理店173社を対象としまして、特定契約比率規制を見直す場合の影響を確認しております。一番左の円グラフ、これは現状になりますが、特定契約比率が30%を上回っている企業内代理店、青色と水色の部分ですが、これが約15%程度存在。次に、その一つ右、経過措置を撤廃するとどうなるか、30%を上回る企業内代理店が32%になる。さらにその右の円グラフ、これは特定者の範囲を拡大する場合、今は親会社が特定者になっているケースが多いわけですが、これを連結決算の対象のグループ会社全体に広げるとどうなるかということで、30%を上回る企業内代理店が6割になる。こういう影響が出てくるということが分かったということです。

 続いて10ページを御覧ください。企業内代理店の実態把握の一環として、我々で幾つかの企業内代理店に対してヒアリング調査を行っており、企業内代理店の役割や実務能力の向上のための取組を聞いております。詳細は後ほどお読みいただければと思いますが、企業内代理店の中には保険募集人がごく僅かしか存在していないような、保険料の実質的な割引のためのツールになっていることがうかがわれるようなところがある一方で、コンプラ部門や内部監査部門といった一定の態勢整備を行っている、募集人の実務能力の向上に積極的に取り組んでいる、保険会社のサポートに頼らず自立的に業務を行っている、企業グループのリスクマネジメントに大きく貢献しているといったような前向きな取組を行っているところもあるなど、多種多様な企業内代理店が存在していることが分かっております。

 その上で、13ページ以降が具体的な対応策の検討になります。有識者会議の報告書の中では、特定契約比率の経過措置を撤廃すること、特定者の範囲を拡大すること、この2つが示されているわけですが、まずは経過措置の撤廃、2つ目のポツですが、近年の保険市場の実態をより正確に反映するため経過措置を撤廃してはどうか。ただし、企業内代理店の実態把握の中でも市場に一定の影響を及ぼすであろうということは分かっておりますので、例えば3年程度の準備期間を設けることとしてはどうかと考えております。

 次に、特定者の範囲の見直しです。2つ目のポツに整理しているとおり、特定契約比率の趣旨、保険料の実質的な割引の防止といった趣旨を踏まえますと、特定契約比率規制は経済主体として同一グループと認められる連結決算の範囲にまで広げていくことが合理的ではないかということです。

 続いて14ページを御覧ください。こちらは適用除外ですが、企業内代理店は多種多様ということと、第1回のワーキング・グループにおきましても、特定契約比率規制を全ての企業内代理店に対して画一的に適用することは慎重に考えるべきではないかといった御意見もいただきましたので、例えば、ここに書いてある2つの要素を考慮しまして、特定契約比率規制の適用除外の枠組みを検討してはどうかということです。

 1つ目は、代理店としての自立の確保ということ。契約者保護を確保するために必要な態勢が整備されていること。具体的には、適切な法令等遵守態勢が整備されているか、一定数以上の募集人を配置しているか、こういった要件が考えられるのではないかと思っております。

 2つ目は、保険料の実質的な割引の防止です。企業内代理店の手数料は保険料の実質的な割引のおそれがあると申し上げましたが、他方、その手数料が、企業内代理店が提供した役務に見合ったものであれば問題はないとも考えられるわけです。このため、これを確保していく必要がある。つまり、企業内代理店が受け取る手数料が、その企業内代理店が提供した役務に見合った額にする。そういう手数料の支払い方法にすることを保険会社と合意する。それで、保険料の割引を防止できないかと考えております。

 続きまして、15ページを御覧ください。再び手数料の適正化です。今、特定契約比率規制の適用除外の要件として手数料の適正化と申し上げましたが、これは特定契約比率規制の適用除外の対象とならなくても、例えば特定契約比率が5%、10%という低い水準の企業内代理店であっても保険料の実質的な割引を防止するという観点から、この手数料の適正化を求めていくことが重要であると考えております。そのため、今回、特別利益といった観点から、この手数料の適正化を図っていくことを考えております。

 次に、保険仲立人の特定契約比率規制は、保険仲立人協会から適用除外の要望が出ていたわけですが、このまま適用除外としてしまいますと規制の潜脱のおそれがある。企業内代理店から企業内仲立人に看板を掛け替えるだけといった状況も想定されますので、引き続き適用対象とさせていただきたいと考えております。

 最後、16ページを御覧ください。この特定契約比率規制の検討から少しそれますが、先般、公正取引委員会が保険料調整行為事案に関して大手4社等に対する処分を公表しております。今後金融庁としましても、独禁法違反行為の未然防止に向けた方策を損保会社、損保代理店といった関係者と共に検討していくことも重要であると考えております。

 ここまでが企業内代理店に関する御説明になります。

 続いて2つ目の議題、乗合代理店の比較推奨販売の適正化になります。

 22ページを御覧ください。まず制度の現状、一番上の四角ですが、現在の保険業法上、乗合代理店は、取り扱う複数の保険会社の商品の比較推奨販売を行う際に、幾つかの説明を行うことが義務づけられております。2つ目のポツ、顧客の意向に沿って商品を推奨するという場合には、その顧客の意向に沿った比較可能な同種の保険契約の概要や提案の理由を説明する。3つ目のポツですが、顧客の意向に沿って商品を推奨するのではなく、代理店のほうで商品を絞り込んで特定の商品を顧客に推奨するという場合には、その提案の理由を説明するということです。

 他方で、今般の保険金不正請求事案では、保険会社が代理店に対して便宜供与を積極的に行い、代理店はその見返りとしてその保険会社の商品を優先的に推奨していたということが分かっており、顧客の適切な商品選択が阻害されていたのではないかということです。現状の制度の下では、便宜供与の実績に応じて、特定の保険会社の商品を推奨していたとしても、その旨を顧客に適切に説明していたのであれば、直ちに法令違反になるわけではないと考えられます。

 ただ、先日新しい金融サービス提供法が施行されまして、保険募集人を含めた全ての金融事業者に対して、顧客の最善利益を勘案する義務が課されたわけですが、そういった観点からも、保険会社による便宜供与の実績に応じて商品を推奨するということは、顧客の最善の利益に資する対応とはなっていないのではないかというのが問題意識です。

 23ページを御覧ください。ここで対応の方向性を整理しておりますが、乗合代理店における適切な比較推奨販売を確保する観点から、顧客の意向に沿って保険商品を絞り込む。また、その絞り込みに当たっては、顧客が重視する項目を丁寧かつ明確に把握した上で保険商品を推奨することを求めることとしてはどうかと考えております。

 また、この実効性を確保する観点から、顧客に対して商品を推奨する基準や理由を社内規則に定める、比較推奨販売の実施状況の適切性を確認、検証していく、これらの取組を含めて代理店の規模や業務特性に応じた体制を整備することを求めてはどうかと考えております。

 続いて3つ目の議題、損保分野における自主規制のあり方です。

 28ページを御覧ください。まずは議論の背景を少し振り返ってみたいと思いますが、有識者会議の報告書の中では、保険募集人の募集品質の一層の向上を図る観点から、法令上に根拠を持つ自主規制機関を設立することも視野に入れて検討を継続することとされております。また、有識者会議の中では、損保会社による代理店に対する指導等を補完する枠組みとして、保険代理店と利害関係のない中立的な第三者が代理店の業務品質を評価する枠組みを設けるべきといった提案がなされております。

 この代理店に対する第三者評価の枠組みについては、第1回のワーキング・グループにおきまして、日本損害保険協会からの説明にもありましたとおり、既にこの検討は始まっております。その上で、この第三者評価の枠組みがうまくワークしない場合には、そのエンフォースメントを強化するといった観点から、この第三者評価制度を運営する機関に対して当局の権限の一部を移譲して、自主規制機関として位置づけてはどうかと、そういった御意見がありました。

 その上で、まず自主規制機関とは何かということですが、真ん中の四角の部分を御覧いただければと思いますが、一般に、市場の公正性・透明性を確保するため、自主規制ルールを制定するとともに、自主規制機関に所属する会員が法令や自主規制ルールに基づいて適切に業務を行っているかどうかを監査する、こういった役割が求められる機関です。

 この自主規制機関を設置の要否を検討する際にどういった要因を考慮していくのか。過去の金融審議会における検討の中では、ここに書いてある業務の専門性、弾力的な対応の要否といったことを含めた様々な要因が考慮されてまいりました。

 次の29ページを御覧ください。この業務の専門性と弾力的な対応の要否という2つの観点からは、自主規制機関が設置されている他の金融分野と比べて、少なくとも現時点においては、損保分野は自主規制機関の設置が必要だと見られる特徴的な要素は認められないのではないかと考えております。

 また、こういった自主規制機関を設置するに当たっては、中心となる組織が既に存在していることが望ましいわけですが、損保分野は代理店の数が15万ということで非常に多い。この多くが加盟している組織・団体は、現時点ではないといった点にも留意する必要があろうかと思います。

 さらには今般、保険金不正請求事案が発生した業界に対して、当局の権限の一部を移譲してしまうことがよいのかどうか、問題が起こってしまったのであれば、まずは当局がしっかりと見ていくべきではないかと、こういった見方もできるかと思います。

 こうしたことを踏まえますと、今は有識者会議や本ワーキング・グループにおける検討結果を踏まえた制度・監督面での対応や、先ほど申し上げた日本損害保険協会による第三者評価の取組、あるいは日本損害保険協会が見直しを進めている教育・研修活動の効果を見極め、その効果を検証した上で、この自主規制機関の要否を改めて検討することとしてはどうかと考えております。

 続いて4つ目の議題、火災保険の赤字構造になります。

 まず、36ページを御覧ください。有識者会議の報告書の中では、近年の自然災害の頻発化・激甚化を受け、火災保険の赤字が継続していることを踏まえ、損保会社のビジネスモデルの持続可能性の確保といった観点から、その対応を検討すべきとされております。その上で、このスライドは、損保会社の保険引受利益の推移を種目別に見たものになります。赤い棒グラフが火災保険の収支ですが、多少の波はあるものの過去10年間、赤字の状態にあることが分かります。

 一方、青い棒グラフは自動車保険の収支でありますけれども、これは2013年以降は黒字にある。つまり、この自動車保険の黒字で全体の黒字を確保しているように見える。これが適切なのかといった問題が出てくるわけです。

 続いて38ページを御覧ください。火災保険の赤字の要因分析になります。近年の自然災害の頻発化・激甚化により火災保険の参考純率は引き上げられております。参考純率は損害保険料率算出機構という中立的な団体が算出している純保険料率の理論値のようなものですが、右上の緑色のグラフを御覧いただきますと、この参考純率は2012年時点と比べて40%も引き上げられてきております。他方、支払保険金の増加、既存の長期契約の影響、再保険コストの増加といった要因によって、火災保険の赤字が継続しているのではないかと考えられます。

 続きまして、39ページでありますが、損害保険商品の開発・引受プロセスの全体像です。先ほど御紹介した損害保険料率算出機構が参考純率を算出する。当局による審査を経た上で、それらを損保会社に提供する。損保会社はそれらを活用しながら保険商品を開発する。また、損保会社が新しい保険商品を開発する際には、当局に認可を申請する必要があり、その後、当局による審査を経たものが損保会社から顧客に販売されることになります。

 また、右側の下の四角ですが、この一連のプロセスにおきましては、損保会社の負担を軽減するための措置を講じております。1つ目は特約自由方式というもので、企業向け保険に関し、主契約以外の特約部分は当局の認可を受けずに自由につけられるといったもの。2つ目、3つ目、付加保険料率や純保険料率の設定に当たっても柔軟な対応が認められることを記載しております。

 こういった点を踏まえて、火災保険の赤字の問題に対してどのような具体的な取組が考えられるのかという点を、次の40ページ以降で検討しております。

 まずは企業向け損害保険商品のモニタリングの高度化です。先ほど申し上げたとおり、企業向け損害保険商品の開発に当たっては、損保会社の負担を軽減する措置といったものを講じております。こういった負担軽減措置が適切に運用されるためには、損保会社が適切な保険料率を設定する、あるいはその妥当性を検証するためのリスク管理を適切に行ってもらう必要があるわけですが、実際はリスクに応じた適切な保険料が困難になるケースもあった。これが保険料調整行為事案を引き起こした一つの背景であったということが分かっております。

 これらを踏まえての対応の方向性になりますが、当局による損保会社の商品開発管理体制のモニタリングの高度化を図っていく。具体的には、この負担軽減措置を運用するに当たっての損保会社の管理体制や主要な保険商品の収支を適時に把握して、その後の料率設定に反映させるための体制整備の状況、こういったものをモニタリングの中で確認をしていきたいと考えております。

 続いて41ページですが、火災保険の参考純率の算出方法の見直しです。先ほど、参考純率は、近年の自然災害の頻発化・激甚化の影響を受けて、徐々に引き上げられてきていると申し上げました。引き上げられてきてはいるのですが、なかなか実態に追いついてはいないのではないかといった見方もあるわけです。

 この参考純率の現在の決め方ですが、下の図にもありますが、従来は、基本は過去の参考純率の実績の平均値を用いてきたのですが、今後は気候変動の将来的な予測データといったものも活用してみようと。そういう検討を今後進めていきたいと考えております。

 42ページを御覧ください。参考純率と標準約款ですが、参考純率を算出する保険種目は現在、火災保険、自動車保険、傷害保険、この3種目が対象になっております。また、機構では、この参考純率を算出する前提となる標準約款といったものも損保会社に提供しております。現在、損保市場は大手4社の寡占状態にあります。この要因としては、いろいろと指摘があるところですが、その要因の一つに、大手以外の損保会社では、商品開発に必要なリソースが確保できない、あるいは自社のみで保険料率の算出に必要なデータを取得することが難しい、このため中小規模の保険会社にとっては自由に商品開発を進めることが難しくなっているのではないかといった指摘があります。

 このため、参考純率や標準約款の作成対象の保険種目を広げてはどうかと考えております。今は3種目に限定されているわけですが、それを広げていくことにより、保険会社の商品開発のコストを下げる。こういった取組を通じて中小規模の損害保険会社の商品開発を促進し、損保市場の競争を活性化できないかと考えております。

 また、参考純率の算出対象の拡大に伴いまして、機構に提供されるデータが増加することが見込まれますので、この機に機構におきまして、保険分野のデータ整備の取組といったものも進めていきたいと考えております。

 続きまして、最後の議題、第3回ワーキング・グループでの議論を踏まえた対応になります。

 44ページを御覧ください。前回、第3回ワーキング・グループにおきまして、保険仲立人の手数料を顧客からも受領できるようにしようという提案をさせていただきましたところ、委員の皆様から様々な御意見をいただいております。一番下の考え方の部分になりますが、委員の皆様からの御意見を踏まえまして、今回は保険仲立人が顧客からも手数料を受領できるようにする対象としては、企業向け保険に限定し、個人向け保険は中期的な検討課題と整理したいと考えております。

 また、顧客と保険会社の双方から手数料を受領する場合の対応についても様々な御意見をいただきました。この場合は、まず手数料をどちらから受領するかを顧客にあらかじめ説明する、また保険会社から手数料を受領する場合には顧客に手数料を開示する、そういう方向で進めることとしたいと考えております。

 長くなりましたが、私からの説明は以上になります。

【洲崎座長】
 御説明どうもありがとうございました。それでは、ただいまの事務局説明を踏まえまして、まず前半部分で、115分ほど時間を取り、企業内代理店のあり方、乗合代理店における比較推奨販売の適正化、損害保険分野における自主規制のあり方について、委員の皆様方から御発言をいただければと思います。

 なお、小林委員、中出委員におかれましては、17時頃に退席されると伺っておりますので、前半の討議におきまして、火災保険の赤字構造等の論点を含めて御発言いただくことも差し支えございません。全体の会議時間の制約もございますので、御発言の時間といたしましては5分程度を目安にしていただければと思います。

 対面で御出席いただいている方々におかれましては、お名前の札を立てていただき、オンラインで参加されている方々におかれましては、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力いただければと思います。

 それでは、御議論をお願いいたします。中出委員から御発言の希望があるようですので、中出委員、お願いいたします。

【中出委員】
 どうもありがとうございます。時間の関係から、全体について意見を述べさせていただければありがたいと思います。当局の詳細な調査で、いろいろな論点についてかなり深掘りした案が出ていると思います。その案について簡単にコメントさせていただきたいと思います。

 まず第1は、企業内代理店のあり方ですが、当局の詳細な調査で企業内代理店の体制は非常に多様であるということが明らかになりました。そのことを踏まえれば、原則的な立場は明確化した上で、適用除外として例外を認めるという提案は現実的な対応策と考えられ、賛成いたします。その上で、細かな点になりますが、3点ほど意見を述べます。

 1点目は13ページの特定者の範囲になります。特定者の範囲を拡大しないという方針は、これは実務面ではよく分かるところです。しかしながら、この規制は特別利益の提供の禁止という禁止規定に関係しますので、非上場であれば一律に適用しなくていいと言い切れるか、やや疑問があります。原則としてということであれば分かりますが、実態に応じて判断する部分も必要でないかと考えます。

 2番目は14ページの自立の確保ですが、特定契約比率規制の適用除外を認める場合として2つの例が挙げられています。適用除外の要件の一つに、自立の確保があります。その具体面としては、募集態勢の整備が挙げられていまして、態勢等が整備されていれば、仮に全てが特定契約であってもよいということになるものと理解しました。

 そうするとほとんどすべてが特定契約となる場合もあるわけで、その組織は会社の保険組織に極めて近くなってきますので、基本的に双方代理という特徴が強くなります。その面で問題ないかという点は慎重に考えるべきであると思います。適用除外の基準は定性的な基準になっていますので、公平性を踏まえて、例外については慎重に認めるべきでないかと考えます。

 また、自立性の判断の中で、募集人の専門性も重要と思います。資料では募集人の人数が示されておりますが、業界としての資格試験の保有者など、専門性を判断する材料も重要でないかと思います。

 それから3点目で、15ページです。保険仲立人への適用除外の観点ですが、保険仲立人が手数料を顧客からもらう場合は、特定契約比率規制からは除外するということが最後に記されております。その考え方は理解できますが、特定契約比率を下げるために顧客が手数料を払うような形の圧力が加わるようなことはよくないと考えます。また、顧客が手数料を払う場合には、それまで保険会社が支払っていた消費税を顧客が払うということにもなってきますので、実務も含めて適切な対応がなされるように留意する必要はあると思います。

 次に、2番の大きな項目になりますが、23ページです。乗合代理店における比較推奨について、この提案内容に賛成いたします。顧客の最善の利益を確保するという点も踏まえますと、資料に記されている対応の方向性と、もしかすると同じことを意味しているかもしれないですが、さらに踏み込んだプロセスは示したほうがよいように感じました。

 資料には、まず、顧客の意向に沿って保険商品を絞り込むこと、それから2点目に、絞り込みに当たっては、顧客の意向に沿って商品を選別することが記されています。つまり、顧客は、かなり絞り込まれたものが最初から提案される方式というようにも理解できます。私は、顧客がこのような保険商品が欲しいと言えば、扱っている会社の、どういう保険があるかというリストをまず示して、ただ、それでは数が多過ぎるので、顧客の意向を聞きながら絞り込んでいって、内容を説明していくことが必要ではないかと思います。比較推奨では、一番よいと考える商品を最初から提示するというよりかは、顧客との丁寧な対話が重要で、その中で絞り込んでいくというプロセスが大切ではないかと考えます。

 それから2点目として、比較推奨は保険商品の中身や価格が中心になると思います。生命保険の場合はそこが中心になるかと思いますが、損害保険の場合には損害サービスという点が非常に重要で、その点でも各社で競争がなされることも重要です。損害サービスについての比較は容易ではない面がありますが、比較推奨の中で損害サービスというものをどう捉えるかということは、さらに考えていく必要があるかと感じました。

 それから大きな3点目になりますが、損害保険における自主規制機関についてです。これも事務局案に賛成いたします。細かな点で2点ありますが、法令上の自主規制機関の設置は見送るということで賛成しますが、一方、業界共通の枠組みを生保あるいは損保でいろいろ立ち上げている中で、それらが実効性のあるものとして存続し、そして当局のモニタリングの効率性にも資するということを考えますと、当局とそういった機関との連携が非常に重要になるかと思います。

 また、そういった業界の制度を法的に裏づけられるような部分がどこかにあることが望ましいのではないかと思います。法律上または監督指針等で関連する規定を設ける形などが考えられるのではないかと思います。

 それから2番目に、また29ページのところになりますが、募集品質の取組として、募集人の教育についても触れられています。協会の取組に期待したいと思います。家計分野と企業分野では専門性の中身にかなり違いがあると考えます。特に企業分野の場合ですと、販売をしている、募集をしている主体が保険仲立人になるか、代理店かというような形態の違いで募集人に求められる中身とかレベルに大きな違いがあるということは望ましいとは考えません。代理店という形態である場合でも、企業のリスクマネジメントの高度化を助言できるような高度な募集人が必要で、その点は保険仲立人のレベルと同じような水準を目指して、業界の教育に期待をしたいと考えるところです。

 それから、後半の話題で申し訳ございませんが、4番目に、火災保険の赤字の構造の問題です。40ページになりますが、モニタリングの高度化についての提案に賛成します。まずは実態の把握を進めて、そして将来的には商品認可の制度のあり方なども検討していくということに賛成です。そういった場合には、企業保険市場が発展していくために、そして企業活動を支えていく上でどういうものが望ましいかということの視点を持ってモニタリングをしていくことも重要でないかと思います。

 それから42ページの参考純率、標準約款の点です。これも、算出対象種目を拡大し、さらにこの種目に限定せずに保険分野のデータ整備を進めていこうということは非常によいことでないかと思います。これは市場における効率を高め、全体としてのレベルアップも図るということになりますので、新規参入の障壁も下げることになります。今日の資料にも触れられていますが、米国やドイツなどでは、様々な標準約款、あるいはモデル約款というようなものをつくって市場に提供していますので、我が国でもそういった取組が進むような検討が必要かと思います。

 それから最後に、保険仲立人の利用促進についてですが、44ページになります。この媒介手数料の受領方法の自由化について、企業分野から始めるということについては、私もそれが妥当と考えます。ただ、この手数料の開示についての方針の最後の部分になりますが、保険仲立人は、今までは保険会社から手数料をもらい、これからは契約者からもらう、場合によっては両方からもらうということが出てくると、この取引の中では、契約者に対しても保険会社からもらうということをきちんと説明する必要もあるでしょうし、保険会社に対しても、顧客からいくらもらうのかということを言わないと、公正な取引が難しいのではないかという気がします。

 このように考えるのも、通常、保険仲立人が入った場合には、保険会社と顧客が直接交渉するということは少なくて、基本は、保険仲立人が調整する場合が多いのではないかと思いますので、取引の中で、手数料は誰がどのように負担するのかは、顧客にとっても保険会社にとっても重要ですので、明確化をして取引を進める方式がよいのではないかと思います。

 以上です。どうもありがとうございました。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。発言希望が多くの方から出ておりますので、先に進めさせていただきます。オンラインで柳瀬委員から御発言の希望がございます。柳瀬委員、お願いいたします。

【柳瀬委員】
 御指名いただきありがとうございます。初めに、事務局の御提案の方向性については基本的に賛成です。その上で個別の内容についてコメントさせていただきます。

 初めに、企業内代理店対応の方向性①についてです。事務局提案の特定契約比率規制の経過措置の撤廃及び特定者の範囲の見直しについては、実質的な保険料の割引等を問題視する観点から、当然に進めるべき方向性であると考えます。

 なお、特定者の範囲の見直しの対象から非上場企業等を除外するという点については、本来であれば対象に含めることが望ましいと思うわけですが、御提案のとおり今回は実務負荷の観点からやむを得ないとも考えます。

 ただし、中出委員からの御指摘と同じ趣旨にはなりますが、モニタリング等を充実するなど代替的な方法を使うことによって、規制の潜脱を防止する工夫も期待したいところでございます。

 次に、企業内代理店対応の方向性②についてです。今回、企業内代理店に関する実態調査によって、自立した専門能力の高い企業内代理店はグループ企業内という企業の業務等に精通できる立場をむしろプラスに活用し、企業の保険リスクマネジメントに貢献できる存在であることも確認されたところです。

 そこで、第1に代理店としての自立の確保と、第2に保険料の実質的な割引の防止が期待される場合には、たしかに、この特定契約比率規制の適用除外とすることで、むしろその自由度を高め、結果として顧客である企業の保険リスクマネジメントの高度化に資する役割を適切に果たす可能性もあります。

 他方で、ここで問題となるのは、保険料の実質的な割引に当たるか否かを誰がどのように判断するのかという視点です。この点、私は、顧客である企業の立場から評価するのが合理的であると考えます。その上で、企業内代理店が提供する付加価値が果たして適正な対価として見合っているのか否かという点に集約されると思われます。

 そもそも契約者である企業の立場から考えてみますと、企業内代理店であれ保険仲立人であれ、リスクマネジメントや保険手配に必要な様々な付加価値、例えば保険事故の求償支援などに加えまして、事故データの集計や分析あるいはリスクの削減の取組の支援、さらにはキャプティブの組成など、保険にとどまらないリスクファイナンス手法の提案などについて適正な対価で実施してもらえるかどうかが、結局のところ顧客である企業にとって本質的に重要ではないかと考えます。

 したがいまして、この点は対応の方向性の③にあるとおり、保険会社に対しては企業内代理店の提供する役務に応じた手数料の支払いを改めて求めること、これは当然のことであり、そうであるならば、例えば、保険料の多寡にかかわらない適正な対価としての手数料、あるいは手数料体系などというものが、その評価の参考になるかもしれません。

 加えて、契約者である企業がこの点、適切な判断を下すためには、必要な情報開示というものが重要だと思われますので、前回の保険仲立人の議論とのバランスを考えれば、今後の一つのテーマとしては、契約者からの開示要請に基づく開示義務を課すことも検討に値するのではないかと考えられます。

 次に、企業内代理店対応の方向性全般に関して若干の私見を述べさせていただきたいと思います。いうまでもなく、企業のリスクマネジメントの意思決定全体においては、保険購買というのはその一部を構成するもので、保険はリスクファイナンスのうちリスクの移転を担う手法の一つであり、それ以上でも以下でもありません。

 他方で、他の保険仲介チャネル同様、企業内代理店の主な収益が保険の媒介手数料等であることを考えれば、保険以外の代替的なリスクファイナンス手法の提案・採用に関するインセンティブが、少なくとも、無意識のうちに低下する可能性が懸念されます。

 極論を言えば、顧客企業のリスクマネジメント全体の意思決定において、保険手配を減少させることが、結果的に顧客企業の費用対効果の面から望ましい提案であった場合、保険仲介チャネルである企業内代理店にとってみれば、その媒介手数料が減少することになり得るので、こうした提案を無意識のうちにちゅうちょする潜在的な可能性もあるかもしれません。

 そうであるならば、仮に企業内代理店の保険リスクマネジメントに関する専門性あるいは自立の程度が仮に高い場合であったとしても、この保険仲介チャネルという立場に起因する問題はどうしても残るのではないかと思われます。この点は同じ企業グループ内にある企業本体のリスクマネジャーとは決定的に異なる点であると考えます。もちろん企業内代理店であっても媒介手数料ではなく、むしろ企業のリスクマネジメント全般にかかる、言わば請負業務を保険料の多寡にかかわらない適正な対価で受領することに、その収益上のインセンティブを持つのであるならば、この立場自体に起因する問題も解消されると思います。

 もちろん、専門的なリスクマネジャーが設置されているなど、企業のリスクマネジメント態勢・能力が十分に発揮される場合は、こうした潜在的な懸念がある場合であっても、契約者である企業がそういった提案を差し戻せばよいだけでありますので、適切な判断を下すことは可能かもしれません。

 他方で、リスクマネジメントの成熟度が必ずしも高くない企業の場合には、こういった適切な判断を下すことは難しく、仮に企業内代理店の専門的能力が高かったとしても、少なくとも無意識のうちにその立場に起因する問題、例えば保険料の実質的な割引等に相当する事案が生じる懸念もあるかと感じます。そうであるならば、対応の方向性②に関しても、特定契約比率規制の適用除外の検討に関して、企業内代理店が保険仲介チャネルであるという立場に起因する問題は、いずれにせよ一定程度残ってしまうと考えます。

 また、この点は、対応の方向性③のその他にある、保険仲立人に対する特定契約比率規制の適用について考える上でも有用な視点かもしれません。先に結論から申し上げますと、私はこの御提案に原則、賛成です。保険仲立人であるか、企業内代理店であるかにかかわらず、保険仲介チャネルである以上、先ほども述べましたとおり、その主な収益が保険料の多寡に連動する媒介手数料である場合には、保険以外の代替的なリスクファイナンス等に関する提案を行うことのインセンティブが無意識のうちに低くなる可能性があると考えます。

 そうであるならば、現状、専門能力の高いリスクマネジャーが設置されているなど企業のリスクマネジメント体制や能力が十分ではなく、その結果、企業が適切な判断を下すことが難しいかもしれないという、そういった現状認識に立つならば、今回の事務局提案にあるとおり、保険仲立人についても特定契約比率規制の適用対象とすることには一定合理性があると考えます。

 なお、顧客から手数料を受け取る保険契約は保険料の割引等に該当するおそれはないことから、この特定契約比率の算定対象から除外することも考えられるという点については、①保険以外の代替的リスクファイナンス等に関する提案を行うことのインセンティブが低くなるような状況にないこと、②仮にそういったインセンティブが低くなるような場合であっても、企業側のリスクマネジメント態勢の成熟度が高い場合であれば、特定契約比率の算定対象から除外するという方向性に賛同します。

 以上、企業内代理店に関する論点に関してまとめますと、本ワーキング・グループのそもそもの目的でもある損害保険業の構造的課題と競争のあり方に鑑みれば、企業のリスクマネジャーと企業内代理店の双方がそれぞれの立場を明確にした上で、それぞれが持つ能力や専門性を発揮し、適切な協業が可能となる環境整備が重要ではないかと考えます。そういう意味では、前回も少し申し上げましたが、最終的には企業のリスクマネジメント能力の向上がどう考えても大事であり、そのための教育体制や内容のあり方についても、産官学連携の下、議論が深められることを強く期待しております。

 その他、乗合代理店に関する比較推奨の適正化等々、その他に関しては特段具体的なコメントはございませんので、事務局提案の方向に違和感はございません。

 以上でございます。ありがとうございました。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして大村委員、お願いいたします。

【大村委員】
 御指名いただきありがとうございます。私の方からは、全部で3点、まずは企業内代理店のあり方からコメントさせていただきます。

 企業向け保険市場の状況を踏まえた経過措置の撤廃、3年間の準備期間の設定、特定者の範囲を連結ベースで捉えるといった点は、基本的に違和感ございません。ただし、3点目に関しましては、中出委員や柳瀬委員と同様の問題意識を持っておりまして、非上場会社であっても会社法上の大会社に該当するものは多数ございますし、常に連結ベースの算定が難しいといったわけではないとは理解しておりますので、もう少し非上場会社を細かく分類した上で、一定のところには適用させるか、または一旦非上場会社も含め全て適用とした上で一定の場合には除外するかを検討してもよろしいのではないかと考えております。

 そして、企業内代理店において最も重要な論点は、除外をどのように設けるかという点だと理解しております。まず、経過措置を撤廃し、連結ベースまで特定者の範囲を広げる等の規制強化を図った上で一定の除外を設けるという、その方向性自体に違和感はございません。

 加えて、14ページに記載されている、その際の考慮する要素として、自立の確保及び実質的な割引の防止2点を挙げていただいている点についても、抽象的なレベルでは違和感ございません。あえて申し上げると、特定契約比率規制の自立というのは、募取法の目的である広く保険を普及させるというところに、もともとの起点はございましたので、一般的な態勢整備といった意味での自立に留まらず、グループから自立して保険を販売できるといった意味での自立が問われていたのだと思います。ただし、それを今日的意味に捉え直して、態勢整備ができていることをもって自立として捉え、要件化とすること自体について大きな違和感はございません。

 また、保険料の実質的な割引の防止の点につきましても、実際に提供しているサービスに見合った額が代理店手数料として支払われるのであれば、それをもって特別利益の提供と解される懸念はなくなるものと思われます。また、カルテル事案において、企業内代理店が関与した主たる理由として、手数料が保険料をベースにプロラタベースで算出されていたという点は大きいものと考えており、そういった観点からも、手数料の算出が保険料をベースとしたプロラタベースから、実態に応じたフィーベースの支払い方となり、役務に応じた額となる方向で修正を加えることについては、大きな意味があるものと思っております。

 他方で、非常に難しいと思っているのは、誰が判断主体となり、また、どのように適正な保険料だと判断するのかという点でございます。

 まず1点目の自立の確保について、態勢を整備しているか否かというのは定性的な基準であり、判断が非常に難しいのではないかと思われます。もともと企業内代理店というのは、保険会社との間で力関係が逆転していたからこそ、便宜供与や出向等が横行していたというのは周知の事実であり、そのような中で、保険会社に態勢整備ができているかどうかを判断させるということになってしまいますと、常にオーケーと判断してしまうリスクというのは非常に高いのではないかと思っております。

 そういった意味で、自立の確保の点について、定量的な基準を設けられるのであれば、それはそれでよいのかと思いますが、それが設けられないのであれば、判断権者は第三者機関または当局がやるという形にせざるを得ないのかなと思っております。

 また、2点目の実質的な割引の防止のところの役務に見合った対価というのは、言うのは簡単ですが実際に何をもって役務に見合ったものと判断するのかは本当に難しいと思っております。実際に、賠償責任保険等で実費ベース、事務コストベースで手数料を算定している例がないわけではないとは理解しておりますが、これを全ての保険に適用しようとすると、保険種別ごとにどういった業務があって、それはどれぐらいの対価性があってということを全て算出していく必要があり、それができたとしても、各社で異なる基準を設けてきたときに、誰がどのように正しいと判断するのかは非常に悩ましい問題ではないかと思っております。

 多くの企業内代理店において、(2)を導入した場合、代理店手数料が下がることになると思われますが、それを避けるために役務に見合った対価を大きく見積もってくる社が出てくることは容易に想定できるところであり、そこをどうやって牽制していくのかは非常に悩ましいと思われます。この点については、例えば当局で一定の基準を示せるとよいと思いますが、競争領域でもございますので、どこまで、当局側が介入できるのか難しいところではあり、そうかといって個社に任せてうまくいくのかというと、そうではないようには思っております。

 この2点目に関しては、一般の代理店の手数料との兼ね合い等もございまして、相当実務的には難しいとは理解しておりますので、抽象的なレベルで(1)(2)に同意できたとしても、具体的な案が出てこない限り、これで良いかの判断はできないというのが正直な感想でございます。

 それに加えて、今回の除外要件がもたらす全体へのインパクト鑑みると、あとはお任せしますということはなかなか難しく、この点については、継続協議とせざるを得ないのではないかと思っており、どういった場で話すのが正しいのかは分かりませんが、平場で一定議論ができるような形で、きちんとこの自立の確保または実質的な割引の防止という趣旨に沿う基準がつくれることを検証し、その上で適用除外要件を設けることとした方がよいのではないかと思っております。

 次に、推奨販売の適正化に移らせていただきます。こちらにつきましては、当局資料にも書かれておりますが、金融サービス法の施行によって広く金融事業者一般に、顧客の最善の利益を勘案して誠実公正に業務を遂行するという義務が法律上の義務として課せられるようになっておりますので、現在、保険業法施行規則第227条の2第3項第4号ハ、いわゆるハ方式で認められているような代理店都合の絞り込みを認めるということは、当該規定と真っ向からぶつかる可能性があるものと考えております。したがって、ハ方式は廃止し、顧客の意向に基づく選別のみを認めるロ方式を徹底するというスタンスについて違和感はございません。

 今回の比較推奨の適正化に向けた当局案については、全体を通して違和感はなく、今後重要になってくるのは、ロ方式をどのように実務的に運用するかというところかと思っております。ハ方式をやめたところで、ロ方式において実質的にハ方式は残置しているのと同じような状況がつくられてしまうのであれば、何の意味もないだろうと思っております。

 提案推奨する基準や理由については、顧客の最善の利益に沿ったもの以外は認められるべきではないと考えておりますが、そのような抽象的な基準を掲げるにとどまらず、どのようなものが認められて、どのようなものが認められないかということは、監督指針やパブリックコメントを通じて具体的に示されるべきではないかと考えております。

 また、顧客の最善の利益に沿っていない絞り込み理由に限らず、一見顧客の最善の利益に沿っていそうでも客観的な裏づけがないもの、あくまでも主観的な評価にすぎないような理由等については、恣意的に用いられ、潜脱の可能性があるため、認められるべきではないと考えております。

 さらに、形式的に顧客の同意を取りさえすれば、その後に代理店で行う絞り込みは顧客の意向に基づくものだといったような勝手な解釈も決して許容されるべきではないと考えております。もちろん、募集の現場において顧客が初めから意向を持っているとは限りませんが、その場合でも、一般的に顧客がどういった意向を重視するかといった項目を示した上で、できる限り顧客の意向を引き出し、それに沿った絞り込みを行う努力はすべきだと考えております。

 それでも特段の意思がない場合に、最終的に代理店側で絞り込みを行う場面が実務上は出てくると思いますが、その場合であっても、絞り込みの理由は顧客の最善の利益を勘案したものであるというところが大前提だと考えております。

 最後に、提案推奨する基準や理由を社内規則等に定めることを求めるのであれば、当該内容について当局がモニタリングを実施することは不可欠であると考えております。さらに問題行為が行われた場合には、行政処分が速やかになされる等、エンフォースメントがきちんと確保されるような状態をつくっていただければと考えております。

 3点目、自主規制のあり方につきましては、方向性としては、違和感はございません。ただし、理由づけの部分である、業務の専門性と弾力的な対応の要否の点ですが、損保の法人保険商品の複雑性は言わずもがなでございますし、貸金業等で自主規制機関があることも踏まえると、この2つの観点に則って、損保分野において自主規制機関の設置が必要と認められる特徴的な要素が認められないといった理由付けについては賛同しかねると考えております。

 他方で、母体となる団体が存在しないことや、多様な代理店が存在することから、設立に時間を要する点は確かでございますので、今回の金融審を経て、法令監督指針の改正が行われること、当局による検査、モニタリングの強化が期待できること、業界による取組等が行われていることから、その効果を見極めた上で自主規制機関の要否を検討するという対応の方向性については、違和感ございません。

 最後に、保険募集人の資格制度の概要、高度化についてですが、この資料だけを拝見すると、損保の場合、生保と比べて初期研修制度もなく、兼業の代理店の保険募集人も多い中で、合格率が97.2%というのは、難易度に問題がある可能性があるのではないかとは感じております。

 加えて、生保、損保共通して言えることだと思いますが、募集人の高齢化は大きな論点になっていると認識しておりまして、営業職員については各生命保険会社が一定、認知性の程度や法令の遵守状況についてケアをしているという理解ではございますが、代理店の募集人に対してはそのような手当は現時点では存在していないという理解でございます。そのため、高齢の保険募集人については、改めて研修制度や更新制度を設けることを含め検討がなされてしかるべきではないかとは考えております。

 また、今回認められた一連の問題は、いずれも乗合代理店に特有なものではございますし、今回、比較推奨販売に関する規制が変更されるのだとすると、それに基づいて募集実務も相当程度変わるものと思われますので、各協会の研修の中では乗合代理店特有の規制についても手厚く取り扱っていただけることを期待したいと考えております。以上です。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。続きまして、片山委員から御発言希望がございます。片山委員、お願いいたします。

【片山委員】
 片山です。御発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。私からは企業内代理店について2点、自主規制のあり方について1点申し上げたいと思います。

 まず、企業内代理店の特定契約比率規制の見直しによって、特定契約比率が50%を超え、代理店委託契約の解除等の措置が講じられる代理店が増えることが予想されると思います。こうした代理店で働く労働者の雇用や、取扱代理店の変更による顧客への影響等を考慮して、準備期間については、今回3年と提案されておりますが、十分な確保をお願いしたいと思います。

 次に、14ページのところですが、特定契約比率規制の適用除外のところで、(2)の保険料の実質的な割引の防止ですが、この中で例示いただいているように、保険会社と代理店での手数料の妥当性について合意するといった手法では、明確かつ客観的な基準が設けられない懸念があります。保険会社と代理店の関係性などにより、適切に判断されない可能性を排除するためには、第三者が妥当性を評価するなど、実効性のある制度を構築すべきと考えます。

 続いて自主規制のあり方についてです。29ページの保険募集人の品質向上のための対応のところで意見を述べさせていただきたいと思います。まず、業界での教育・研修活動の高度化や損害保険協会の第三者評価の取組の進展を期待したいと思っております。その際、代理店に対して業務品質を向上させることへのインセンティブとして、第三者評価の結果によって手数料ポイント制度に反映される仕組みなど、できるだけ多くの代理店が品質向上に取り組みやすい環境整備を検討することも重要だと考えますので、御検討をお願いしたいと思います。

 以上です。ありがとうございます。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、オンラインで小林委員が御発言を希望しておられます。小林委員、お願いいたします。

【小林委員】
 小林です。私からは本日の目的事項に沿って意見を述べさせていただきます。また、本日は早めに退室させていただくため、後半の論点についても併せて意見を申し上げます。

 まず、企業内代理店のあり方についてです。特定者の範囲の見直しについては、連結対象となるグループ企業の全体に拡大することには賛同いたします。また、非上場企業については、今回は例外とすることはよしとするものの、その規模に応じて適宜、今後見直しをしていくべきと思います。

 一方、そもそも論として、企業内代理店を特別なカテゴリーとして考えることには若干違和感を持っております。企業内であっても代理店は代理店であり、他の代理店と同様のガバナンスと質の担保が求められるべきであります。規制はそうした方向に企業内代理店を向かわせるものである必要があると考えます。現状の問題の真因は、多くの企業内代理店が親会社の傘の下、十分な機能を備えないまま、単なる取次窓口になってしまえることにあるかと考えています。また、保険会社の側も、親会社との関係を考慮し、必要な監督・指導を行わず放置、あるいは出向者を出して支援してきたという、そういう歴史に基づいているわけです。

 企業内代理店が使われる本来のメリットは、例えば小口で件数の多い職域保険の取りまとめをすることで保険会社の負担を減らすこと、あるいは、親会社の事業に対する専門知識を持ち、複雑な企業保険により適切に対応できる点と考えております。こうした業務を適切に遂行できる態勢構築を求めることは、他の代理店への期待と同様です。その意味では、14ページにお示しいただいた代理店としての自立の確保という点については、妥当な施策と考えます。

 一方、特定契約比率規制の経過措置は撤廃すべきと考えますけれども、現在の規制における特定契約比率を使うことには若干違和感を抱いております。例えば、企業内代理店がその専門性を生かして、大口の企業保険を締結した場合、30%あるいは50%であっても、優にその比率を超えることが想定されます。企業内代理店としてしっかりと機能すると規制に抵触するというのは本末転倒のような気がいたします。実質的に保険料の割引となる行為を防ぐことを目的とするならば、現在のフォーミュラとは違うものを構築する必要があるのではないでしょうか。

 また、企業内代理店に親会社のリスク管理機能を持たせることで、代理店として機能しているという意見もありますけれども、本来リスク管理は親会社本体でなされるべき機能であり、保険代理店の役割はあくまでも親会社が把握したリスクをマネージするツールの一つとして保険商品を提供することだと考えます。この点は保険仲立人の活用につながってくる問題点だと思います。

 また、企業内代理店への規制を厳しくすることで、代理店から保険仲立人へ潜脱が起こるのではないかという指摘もありますが、これも前回の議論の際に私が申し上げましたが、そもそも保険仲立業を行うための質、態勢のハードルを上げることで回避できると思います。以上が企業内代理店に関する意見です。

 続けて、ほかの4点について簡単に意見を申し上げます。

 まず、2点目の比較推奨販売の適正化については、お示しいただいた対応の方向性に違和感はありませんが、対応となる保険の種類を検討していただいてはいかがかと思います。一般消費者向けの保険については、類似の保険が各社から提供されていることが多い一方、企業保険において個別の事業やプロジェクトのリスク回避のために作成される保険については、オーダーメードの色合いが強く、類似の保険がないことを示すほうが難しいことがあり得るというのがその理由です。

 そして3点目、代理店の自主規制機関の設立については、兼業代理店も多く、またその代理店の規模も様々なことから、自主規制という概念は少しなじまないのではないかと思います。むしろ、監督責任がある保険会社の自主規制機関において各代理店の評価・指導を行うほうが自然ではないでしょうか。

 4点目、火災保険の赤字構造については、これは経営の問題であり、むしろ不当なダンピングの防止に対する当局のモニタリングを強化することがまずなされるべきことと考えます。

 そして最後5点目、保険仲立人による手数料の開示に関しては、個人顧客だけではなく保険会社にも開示をすべきと考えます。一方、情報の公平性を図る観点から、保険仲立人は顧客に対し対価となる保険料の内訳を開示することとし、保険会社に共有する金額はあくまでも保険の仲立に関する手数料に限定することとすれば、顧客、保険会社の双方にとって平等に情報が提供されることと思います。

 これを担保するために、できれば保険仲立人協会において、手数料の体系、項目の例などが提示されればよいかと思います。

 以上です。ありがとうございました。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、会場におられます小畑委員、お願いいたします。

【小畑委員】
 御指名ありがとうございます。まず、第1の課題であります企業内代理店のところについて申し上げたいと思います。

 今回の御提案では、規律については特例措置をなくして、対象を拡大するということでありますけれども、現在の企業内代理店の実情もよくお踏まえいただいて、適用除外規定を設けるという方向性が出されており、その点については歓迎するところでございます。

 その上で、若干規律の細かいところについて申し上げたいと思います。まず大前提として、8ページに、特定契約比率規制の目的は、実質的な保険料の割引・割戻しの制限並びに代理店の自立と書いてあります。この自立の部分ですが、これは何からの自立ということなのか、御教示いただければありがたく存じます。契約者からの自立なのか、あるいは保険会社から出向者が来ていることなどで依存体質にあることからの自立なのか、何からの自立なのかというところは、皆さんの中では自明なことかもしれませんが、改めて確認させていただければと思います。

 その上で、細かいのですが、まず8ページに具体的な計算方法というところで、特定者の定義が2つのチェック印で書かれております。今回見直しの対象となっているのはこの2番目の、「代理店への出資比率が30%を超えるもの」について連結ベースで判断すると理解しておりますが、第1のチェック印で、法人である代理店と役職員の兼務関係がある法人となっております。この件無関係の中身は、非常勤、出向及び出身者で、退職3年未満の出身者を含むとなっております。これは役職員で、全て働いている人ということになっており、あまりにもチェックする範囲が広過ぎないかということで、実務上はもう少し対象を絞ってもいいのではないかと考えております。

 先ほど自立というところを申し上げましたけれども、代理店の意思決定に関わるような人がしっかり自立していれば問題は起きないのではないかとは思っております。全ての役職員ではなくて、役員は当然だとしても、職員については必要ないのではないか、あるいは意思決定に関わるような重要な職員に限る、もしくは、退職者についてまで追いかける必要はないのではないかなど、こちらの見直しも併せて行っていただければと思います。

 その次に、同じ特定者の範囲で今回、14ページで特定者について連結グループというのが一つのメルクマールとして御提示いただいております。この連結グループには連結子会社や連結親会社がありますけれども、その他、持分法適用会社は含まれないという理解で良いでしょうか。また、連結財務諸表上には含まれない非連結子会社は連結グループには含まれないという理解で良いでしょうか。公表されております。今回、念頭に置いているのは連結子会社あるいは親会社、この範囲に限るということで理解してよいかというところを確認させていただければと思います。

 また、先ほど、現行の特定者の定義は、契約者のほうが代理店に対して30%以上出資している、すなわち契約者が親法人であるという理解でありますが、逆の場合で、親が代理店で、子が契約者であるという場合は現行法では含まれていないと考えております。連結グループということになれば、親が代理店である場合も今回含まれてくるという理解でよいのかという点も確認させていただければと思います。

 次に、特定契約比率規制の適用除外の部分について、2つのメルクマールで判定をしていくということですが、こちらについては、今後、実際に企業内代理店が、この除外規定に該当するかどうか、それを見極めながら、自らの存廃も含めて判断していくことになりますので、できるだけ明確なもので、早めに御提示いただければと思っております。

 それから、このメルクマールの2つ目にあるところです。役務に見合った対価、手数料を払っているかどうかをちゃんと見極めるというところは全くそのとおりだと思いますが、役務に見合った対価を支払うというのは、別に企業内代理店の手数料に限らずあらゆる代理店に関わる話だと思っておりまして、そこは、あらゆる代理店において役務に見合った対価が支払われるという実務を徹底していく必要があるのではないかと考えております。その意味でも、何が役務に見合った額なのかという判断基準については、できるだけ明確に示していただければと思っております。

 それから15ページの最後の論点です。保険仲立人も特定契約比率規制の対象とすることについては方向性には賛同するところでございます。その意味では、代理店であろうと保険仲立人であろうと、あまり機能に変わりがないと思っておりますため、「ただし」以下の一定の場合には算定対象から除外する必要はなく、一般的に代理店と同じ規律に服すということで十分ではないかと考えております。

 それから、22ページの比較推奨販売につきましては方向性としては全くそのとおりだと思いますが、実務上、顧客の意向をどこまで確認するか結構悩ましいのではないかと考えております。顧客の立場からしても、事細かに意向を確認されても、かえって煩雑過ぎるという反応にもなりかねないということで、この辺は実務上、対応できるような範囲で措置をしていただければと思います。

 それから最後です。自主規制のあり方については、損保協の取組をモニタリングしていくという方向に賛同しているところでございまして、今すぐに自主規制機関を設けるというところまでは必要ないのではないかと考えております。以上でございます。

【洲崎座長】
 ありがとうございました。ただいまの小畑委員の御意見中に御質問がいくつかあったと思いますので、事務局から、お願いいたします。

【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
 まず1点目、特定契約比率は何からの自立なのかということですが、こちらは親会社からの自立ということであります。特定契約比率の算出方法を改めて御覧いただければと思いますが、分母が取扱保険料全体で、分子が特定契約に関する保険料ということで、これを30%に抑えるということを求められております。つまり、外売りというかグループ外への販売を一定程度しなければいけないということですが、そのためには当然ほかの代理店と競争していく必要がある。その中でグループ外の契約を勝ち取るためには業務の品質を高めてもらう、実務能力を高めてもらう必要がありますので、これが自立のインセンティブになるということであります。

 連結の範囲についての御質問は、現時点では持分法適用会社までは含めないということを考えております。あくまでその連結決算の対象ということですが、今日いろんな委員の方から御意見いただきましたので、この辺りの詳細な定義というものは今後改めて検討したいということであります。

 親会社が代理店、子会社が受領会社というケース、これは不勉強で申し訳ないのですが、今のところ把握しているものではないのですが、こういったものがある場合に、ここも連結決算対象に入る資本構成になっている場合には、ここも当然含まれてくるということかと思います。以上です。

【洲崎座長】
 ありがとうございました。あと、これまでいただいた御意見を見ておりますと、企業内代理店に関する論点について多くの委員の方々が発言されたと思うのですが、とりわけ14ページの適用除外は、基本的な方向はよいのだが、適用除外に当たるかどうかの判断基準と誰が判断するのかについて、誰が判断するのかが資料でははっきりと示されていないような気もするのですが、これは第一義的には委託をする保険会社が見るという、そういう御趣旨でこの資料はできているのでしょうか。

【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
 資料上は一応そういう整理をしております。保険会社が一義的に要件に合致しているのかを確認していくということを想定しています。

【洲崎座長】
 要件に合致しないということは、適用除外には当たらないので、特定契約比率がそのまま適用されて、特定契約比率規制が、例えば50%超であれば委託を打ち切るという規律の枠組みで資料はできているという理解ですね。ありがとうございます。

 それでは続きまして、嶋寺委員から御発言希望がございますので、御発言をお願いいたします。

【嶋寺委員】
 ありがとうございます。既に他の委員からもコメントがありましたが、今回のテーマは、これまでの会議の中でも一番難しい問題ではないかと考えております。事務局からの提案は、様々な関係者の利害を考慮しながら作成された案であることは大変よく分かるのですが、何点か気になる点がありますので、最終的な中身の検討に当たって考慮いただければと考えております。

 まず、意見も多く出ております企業内代理店ですが、今の経過措置は、既に経過措置と呼べる期間をはるかに過ぎていると思いますので、撤廃をするということは賛成です。特定者の範囲についても、上場企業の連結対象を基本とするということについては、基準の分かりやすさの観点から一定の合理性があると思いますので、賛成です。

 ただ、今もある問題ではありますが、例えば親会社と子会社の間に別のビークルを挟んだり、形だけの別法人をつくるということで規制を逃れるということができないように、ルールの潜脱は許さないという点も盛り込んでいただいたほうがよいと思います。

 問題は、適用除外をどう定めるかということだと思います。14ページで、現在の案では、自立した社内態勢と役務に見合った手数料という2つの要件が提案されておりますが、いずれも基準として曖昧な点が懸念されます。自立の点に関しては、理念は非常によく分かるのですが、法令遵守管理態勢が整備されているかなど一律に判断できない基準を定めると、要件を満たすかどうかが不明確になりますし、それを先ほども議論があったとおり、保険会社が第一義的に判断するとなると、契約者である企業との力関係を考えた場合に態勢として不十分という評価を保険会社ができるかというと、非常に疑問があるところです。

 もう一つの要件である手数料が実際に提供する役務に見合った額かという点ですが、それこそ保険会社として、どうやってこの役務の対価を算定したらよいかが分からず、私は実務的にワークしないのではないかという懸念がございます。企業保険の支払い実務に関わっている中で、保険会社が契約者である企業やそのグループの代理店に対して相当気を遣っている実態を見ておりますので、代理店から、この役務はもっと高く評価すべきと言われたら、それを否定し切れない保険会社も出てくるように思います。その結果、他社もどんどん緩い認定に流れてしまい、ほとんど上限額に近い評価に張りついてしまうということが容易に想定されるところでございます。残念ながら、役務に見合うかどうかを保険会社が第一義的に判断する、しかもそれを代理店と合意するという仕組みは、なかなか実務的にはワークしないのではないかと思います。

 何らかの適用除外を考えることは理解できるところですが、そもそも代理店単位で完全に特定契約比率規制の適用を外して、親会社の契約だけを100%扱う代理店を認めるのは、今の経過措置よりも広く特定契約を許容する規制変更になるのではないかと思いますので、私は少し極端な部分があるという印象を最初に持ったところです。

 むしろ、ここでの問題は、先ほど他の委員からも少しお話がありましたが、グループ企業の包括契約のような規模の大きい保険契約があると、どうしてもその契約のせいで全体に占める特定契約の比率がぐっと押し上げられてしまう点にあるのではないかと思います。そうすると、特定契約として勘案する契約の範囲を限定すれば不合理な結論は避けられますので、規制の対象にはした上で、保険契約の単位で見て一定の要件を満たす契約を特定契約のカウントから除くことのほうが、規制としてはバランスがとれているのではないかという印象を持ちました。

 ただ、実際につくり込もうとすると、これも規制が非常に複雑になるというマイナス面があると思いますので、仮に最終的に代理店単位で適用除外を定めるような案になるとしたとしても、先ほど申し上げたような基準の曖昧さをクリアする必要があるのではないかと思います。例えば、自立性の判断要素という点については、企業保険という点に着目をした新たな資格試験のようなものを設けて、それに合格した募集人が一定数以上在籍していることなど、客観的な指標を基に判断することも考えられるのではないかと思いますし、ある程度、定性的な要素も入れて判断せざるを得ないのであれば、保険会社が第一義的に判断するよりも当局で審査をして認証を与えるような枠組みも考えられるのではないかと思いました。

 また、役務に見合った手数料の点ですが、保険会社の判断に委ねるのではなく、どの作業に対して何割程度の評価をするというようなこともなかなか定めにくい部分もありますが、監督指針等で考え方を明示していかないと、保険会社ごとに判断がばらついてしまうと思います。また、その差が不当な形での競争につながっていくことも懸念されるところですので、契約者である企業に対しての便宜供与につながっていかないように、保険会社ごとの判断のばらつきが生じないような制度的な担保をした上で、私は導入すべきではないかと思いますし、それがないと実務的にワークする仕組みにはならないのではないかと思います。

 長くなりましたが、もう1点、比較推奨についても一言申し上げたいと思います。顧客の意向を重視した理由の説明をする方向で案が示されているところについては賛成ですが、結果的に現場での説明が現状とほとんど変わらず、規制が骨抜きになることでは意味がないと思いますので、他の選択肢があることをきちんと顧客に認識をさせた上で、価格やサービスの質といった通常の顧客の関心事項を踏まえた理由の説明が、最低限求められるという観点を監督指針等で示していただくことが必要ではないかと思います。

 そうすることで保険会社からの便宜供与や、テリトリー制のように代理店側の都合によって顧客が保険会社を選択する機会が奪われるような事象をなくしていくことができるのではないかと思いました。

 私からのコメントは以上でございます。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして山下委員から、オンラインで発言希望があるようでございます。山下委員、お願いいたします。

【山下委員】
 御指名いただきありがとうございます。既に御議論いただいた部分と重なることも多いのですけれども、私から何点か意見を申し上げたいと思います。

 まず、企業内代理店の部分ですが、第1の特定契約比率規制の経過措置の撤廃については、特に異論はございません。また、第2の特定者の範囲の見直しにつきましても、保険料の実質的な割引の防止と自立の確保という特定契約比率規制の趣旨から考えますと、連結決算の対象となるグループ会社において、保険会社から企業内代理店に支払われる手数料が連結決算全体の収支という観点から見て、保険料の実質的な割引と見える余地があるということになりますから、特定者の範囲を連結決算の対象となるグループ会社の範囲全体へ拡大することについて賛成したいと思っています。

 そうしますと、既に何人かの委員から御指摘のとおり、上場、非上場は関係ないはずです。ただ、実務負担という観点から上場会社に限るということであれば、それはやむを得ないかなとも思うのですが、非上場会社への対応についてはモニタリングの強化も含め、引き続き今後の検討課題としていただきたいと思っております。

 3つ目、特定契約比率規制の適用除外のところですが、以上のように経過措置を撤廃し、特定者の範囲を見直す形で規制を強化するのであれば、もともとの特定契約比率規制の趣旨に反しない場合に適用除外を認める方向性を取ることは、理解できるところです。企業内代理店が企業のリスクマネジメントに貢献する場合があるということがヒアリング調査等でも出ているようでございますので、そうした実務を阻害しないようにすることは望ましいことであると考えております。

 企業のリスクマネジメントへの貢献を促進するのであれば、必然的に特定契約比率規制に抵触する場合が増えると、すなわちグループ各社の保険手配に関与することが増え、どうしても特定契約比率規制に抵触してしまいがちだということからすれば、特定契約比率規制の趣旨に反しない限りは適用除外を認めることになるのだろうと思います。

 そういう理由で適用除外を考えるのであれば、自立の確保のところでは募集態勢の確立だけでなく、グループ企業のリスクマネジメントに貢献できる、そういう実務能力を備えているか否かという点も入れたほうが望ましいのではないかと思った次第です。

 保険料の実質的な割引の防止は、一般論として保険料に対する一定割合で計算した手数料というのは実質的な割引と見やすい部分があります。また、もともと企業内代理店というのは企業外の一般の代理店と同等の条件で競争して、そのグループ内の企業から大きな契約を獲得したというわけではないのが通常だろうと思います。すなわち、そのグループの企業内代理店だからこそ、グループ内各社から契約を獲得できるという要素が強いとしますと、企業内代理店が契約を獲得することに向けた努力や貢献を適切に図る基準として、保険料の額は適切ではない、と。保険料の額が大きいことと、契約獲得の努力をした、努力して大きな保険契約を取ってきたということが直結するわけではないということになります。そうだとすると、保険料の額を基準に一定割合で手数料を算定することは、あまり合理的ではない気がいたします。

 そのため、代理店が実際に提供する役務に見合った額に着目すべきということは、合理的であると思います。もっとも、これも既に多々御指摘があったように、それをどう具体化するのか、あるいはどう判断するのかというところは、私もなかなか難しい問題だなと感じておりまして、その辺りについては、なお慎重な検討が要るのではないかと感じました。

 企業内代理店の最後に、保険仲立人に対する特定契約比率規制の適用ですが、潜脱防止のために引き続き規制対象とするということでよいのではないかと思っております。その上で、ただし書の点ですが、顧客から手数料を受け取る保険契約について、保険会社から経済的利益の提供がない点では保険料の割引等に該当するとはいいづらい点は、そのとおりだとは思いました。しかし、顧客から手数料を受け取る場合の保険仲立人の手数料、ないし報酬体系が現時点では必ずしも明らかではないので判断が難しいことと、特定契約比率規制の趣旨として、保険料の実質的な割引の防止だけではなくて自立確保という点もございますので、顧客から手数料を受け取る、それは保険会社からの経済的利益の提供ではないというだけで、直ちにこれを特定契約比率の算定対象から除外するというのは、なお慎重に考えたほうがいいのではないかと思いました。そうすると代理店の場合と同じで、特定契約比率規制の適用除外で考えるということがあり得るかしらと思っております。

 次に、比較推奨販売についてです。23ページの提案内容に、基本的に賛成でございます。もともと、意向把握義務を定める保険業法の294条の2は、顧客の意向を把握し、顧客の意向に沿った保険契約の締結、加入の提案及びその保険契約の内容の説明をし、保険契約の締結、加入に際しての顧客の意向と、その保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会を提供することを要求しております。今回の提案は、この294条の2が求めている、あるべき販売プロセスを忠実に実施してくださいということを意味するものと理解しております。

 もちろん、従来は保険商品の絞り込み推奨において、顧客の意向に沿った選別をすることなく契約の提案をすることも、提案の理由を説明さえすれば認められてまいりました。これは顧客が十分な説明を受けた上で、それに同意するならそれを尊重する、一種の自己責任原則のようなものから認められてきたものと理解しておりますが、改正金サ法における顧客利益最善勘案義務と従来の取扱いというのは、適合しない部分があるものと考えます。

 しかし、実務的には顧客の意向が曖昧で幅があったり、複数要素のバランスで保険料と補償内容の見合いで考えるというような、かなり多様な意向が出てくると思いますので、乗合代理店の側が主導して一定の絞り込みをすることは当然あり得ることと思いますが、その際に強調すべきは顧客本位の理由による絞り込み、推奨のみが許されることは確認しておく必要があろうかと思います。

 最後に、そうするとこれをどうやってモニタリングにエンフォースメントするかというところが問題となると思います。情報提供義務であれば、所定の書面に即して一定事項を説明するという話で、それを説明したか、していないかで義務違反の有無が分かれるので、まだわかりやすいのですが、比較推奨における説明の在り方ということになりますと、顧客と募集人との間のコミュニケーションの中で、そのときどきの状況に応じた臨機応変な対応が出てくる部分もあると思います。そのため、モニタリングやエンフォースメントが難しい面があるかと思います。
 そうすると、まずは募集担当者の教育や乗合代理店内の検証態勢の充実が必須で、その種の実効性確保のための措置についても23ページで提案されているとおり、積極的な対応が必要だろうと思います。理由説明の在り方について、今後の実務の動きを見ながら定型化できるものは、情報提供義務の内容として定型化して定めておくなどして、モニタリングしやすい形にしておくことが考えられるのではないかと思っております。

 自主規制機関の点につきましては、説明の内容には全く違和感はございませんでした。

 以上でございます。ありがとうございました。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 続きまして、オンラインで沖野委員から御発言の希望がございます。沖野委員、よろしくお願いいたします。

【沖野委員】
 沖野です。よろしくお願いいたします。2項目について申し上げたいと思います。一つはスライドの14ページの企業内代理店の対応という点です。これも既に御指摘のあった点と重複するのですが、14ページの2項目として出されている点は、(1)は自立とありますが、そこで問題とされているのは保険代理店として十分な実務能力を有しているのかと、代理店として立っていけるのかと、そういう意味であると理解しております。

 (2)は実質的な割引の防止ということですので、このこと自体は実は(2)だけではなく(1)も企業内代理店に特化した事項であるのかです。もちろん実務能力の検証という点からは、それぞれが置かれた状況がありますので、直接的な話は出てくるとは思いますが、一般論として言えば、あまねく求められることではないかと考えられます。

 かつ、この代理店は保険会社の代理店、代理人である位置づけであることから、保険会社が監督責任を負うというのが、まずは建てつけではないかと考えられるところです。

 そのような問題ではないかと考えますと、自立の確保と言われている保険代理店としては十分な実務能力を有しているのかというのは、言わば一般の保険代理店としても立っていけるだけの、それと遜色ない体制等を持っているのかというようなことは、保険会社の一般的な監督の内容として出てくることではないかと思っているのですが、それらと比較した上でチェックをするということではないかと思いました。

 ただ、大口顧客であって、それを実現しにくいということからスタートしているのだとすると、保険会社がなかなか監督権能を発動しにくいところからスタートして、最終的には保険会社にきちんとやってもらいましょうというのが本当にうまくいくのかというのは問題があるように思っております。

 しかし、それが例えば法定されるということであれば、それをしなければいけないのだということですとか、その後の処理、先ほど委託を打ち切るというのがありましたが、特定の保険会社と委託を打ち切るのではあまり実効性はないと思うのですが、規制があるので、どこからも打ち切られるようなことになりかねないというのは一つの効果として意味があることではないかと思います。そういうものを背景に、監督の権能を果たすことができるようにするのが、ここでの提案なのかと思っております。その上でも、しかし具体的にどうしていくのかという問題はあるのだろうとは思っております。

 それで、もう一つ、同じ項目の今度は15ページの保険仲立人についての話です。保険会社の代理店、代理人であるという構造でありながら、実は企業側、顧客側であるということであるならば、性質としては、むしろ保険仲立人を使うほうが望ましいとも思われるわけですが、しかし規制の潜脱の観点からそちらに切り替えれば、もう規制は及ばないのだとなれば、実質的な問題は相変わらず存在するということに対して、潜脱防止の観点は非常に重要であろうと思っております。

 その観点から見たときに、これも既に複数の方から御指摘ありましたけれども、ただし書の保険仲立人が顧客からも手数料を受領することが実現する場合には、顧客からもというのは双方からという場合もあって、顧客オンリーの場合もあるのですが、保険会社からももらうということであれば、これは妥当しなくて、顧客のみからという場合であろうとは思っております。

 それにしても、確かに形式的には、例えば保険会社から、どれだけのものを渡しますかということについての合意もそもそもできないようなものですので、素地がないとは言えます。しかしながら最初の問題はトータルで顧客の企業からといいますか、契約者の企業から支払われる金額のうち、一部が手数料という形で代理店に対して本来は役務の対価であるものが払われるべきところ、実はそれがグループであるとか親会社であるとかによって実質的に企業に還元されているということであれば、間に立つ代理店が取得する金額というのは結局、企業に行っているのだということであれば、言わば最初からその部分を仲立という形で企業から払って、その分はもう払っているのだからということで純粋な保険料だとか、プラスアルファの費用とかの部分だけを保険会社から取るということであれば、機能的にみると、最初から割引しておけば問題ないのですが、一旦払った後、一部戻すというときには問題ですというのは、実質から見ておかしいのではないかと思われます。

 とりわけ、ここが潜脱防止であるということであるならば、潜脱防止をさらに潜脱できるということになるのは適切ではないですし、さらには、ここは手数料関係のものですが、実務能力の問題は、なお残りますので、特にこのただし書のこの一事をもって除外というのは、あまり理由がないのではないかと思っております。

 これが1項目めですけども、もう1項目が、比較推奨の点でございます。スライドの22ページの半ばに書かれております、乗合代理店においても顧客の最善の利益を勘案した適切な比較推奨販売を行う必要があるというのは、これは、まさに本来そうあるべきものですので、それが改めて今回確認されることになるというか、それが実現されることになることが望ましいと考えております。

 具体的な在り方としましては提案されているような形で、そもそも最初に顧客の意向というのが大枠であって、その下で絞り込んでいくことが大事ではないかと考えられます。絞り込みの仕方は、恐らく徐々に徐々に絞り込んでいくようなことがあるのではないかと思いますが、それが具体的に実効性のある形になっているか、あるいは顧客が個人である場合と、法人であるような場合とではかなり理解や認識が変わってきますので、それぞれに応じたやり方というのもあるのかもしれないと思っております。

 大本のところでいくと、例えば個人の場合ですと、現在の理由を説明しそれに同意すればいいのだという、同意ベースでやっているような場合については、実質的な同意が本当に個人、特に消費者と言われるような人であれば取れているのかという問題があります。

 他方で、自由な意思決定というときも、あまりに選択肢が多いと、それは結局もう意思決定というか、選択自体ができないという、個人ですとか、消費者の場合の認識や認知には限りがあるということが共通の理解になっていると思いますので、両面からその特性を考えていく必要があると思っております。

 具体的な比較推奨販売規制の対応の方向性は結構ではないかと思っているのですけれども、それをどう実効性あらしめるのかということでして、この方向性で最初に21ページで問題事象として書かれておりました、本来の理由を隠した説明を行っているようなことが封じられるのかということです。それを封じるための各種の態勢の整備というのが一つだと思っております。

 もう一つ気になっておりますのは、現在、顧客の意向に沿って最終的な商品へと、あるいは契約内容へと結実しているのかという点については、顧客の意向把握義務や、そのための確認の書類やシートですとか、あるいは各種商品の比較につきましても重要情報シートの活用が求められていると思います。顧客の意向確認の枠の中では、そのような形で顧客側も改めてチェックできるとか、あるいは紛争になったときにどういう説明があったのか、あるいはどういう形で商品選択へとつながっていたのかということを確認できるような方法が、現在、既に行われている、あるいは、それが求められているのではないかと思いますので、そういったものに乗せていくことは考えられるのではないかと思いました。

 以上です。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 15ページの保険仲立人に対する特定契約比率規制の話ですが、顧客からも手数料を受領することが実現する場合というのは、今回のこの議論を経て監督指針が改正されれば顧客からも手数料を受領することが考えられますし、顧客のみから手数料を受け取る場合の話がここに書かれているのですね。沖野委員の御指摘は、潜脱に利用されるおそれがあるのではないかということでしたでしょうか。

【沖野委員】
 そういう趣旨です。

【洲崎座長】
 例えば、通常の代理店経由で保険料が100で、10を代理店が手数料として受け取るということであれば、その代理店が実は企業グループの代理店であれば実質の保険料は90になっていると。保険料は100なのだけれども10の部分は企業グループ、保険契約者に行くので、100の保険料が10割り引いて90になって、それが保険料の実質的な割引になるという話なのだけれども、保険仲立人の場合は元から保険料は90になっている、つまり保険仲立人が顧客から手数料を受け取るケースでは保険料は90なのですね。そして保険仲立人が保険契約者から10の手数料を受け取る。その場合、最初から保険料が90になることが分かっているので割引にはならないというのが、ここでの記述かと思ったのですけれども。沖野委員と事務局側の15ページの記述の関係は、私が分からなかっただけなのかもしれないのですが。

 すいません。沖野委員、お願いします。

【沖野委員】
 全く座長の御理解のとおりだと思います。ですから、形式的にはそうなるということなのだが、実質を見ると結局その10の部分は、保険料が仮に90で報酬の部分が10であるところを10を戻しているのと、最初から10を割り引くのとでは、特定契約比率が変わってくる。変わってくるというのは、そういう形になれば、もうそれだけで潜脱防止に対して潜脱にはならないということになるわけですが、それでいいのでしょうかということです。この割引自体にならないというのは、形式的にそういう形になるのはそのとおりで、だからその形式をもっておよそ除外してしまうということでいいのでしょうかというのが疑問です。

【洲崎座長】
 つまり顧客から手数料を受け取る保険仲立人を通じてやれば、保険料はもともと100のものが90になるのだが、それは不当な保険料の割引とは考えなくてよいという前提で事務局は考えられてきたと思うので、お答えとしては、そういうお答えになるのかと想像はしたのですが、そういう理解でよろしいですかね。

【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
 そうですね。ただ、保険仲立人の話は我々も引き続きどういう形で手数料を受け取ることになるのか、実務も確認しながら今の沖野先生の御指摘を整理してみたいと思います。

【洲崎座長】
 他の方々からも、このただし書については、これで本当に大丈夫なのかという御指摘があったと思いますので、事務局でまた精査をしていただければと思います。

 オンラインで松井委員から御発言希望がございますので、松井委員、お願いいたします。

【松井委員】
 よろしくお願いいたします。今まさに議論されておられました、この保険仲立人のただし書のところを伺っておかねばと思っていたところでございました。

 というのも、例えばなのですが具体的なお金の流れといたしまして、企業内代理店が保険仲立人に衣装替えをいたしまして、法的には顧客であるところの契約者から手数料と保険料を込みで受け取り、ただし保険会社がサービサーとしてお金の収受を担当するようなお金の流れをとった場合、その水準が保険料90と手数料10であるとして、その水準が適正であることが担保されているのであれば問題がないわけなのですが、これが企業内代理店として100をもらって10キックバックしていた時代と何も変わらない方式で水準が決定されているのであれば、それは元から水準の適正性が担保されていなかった状態が法的建てつけが変わっても変わっていないということになるのではないかと思ったからでございます。

 このことは結局のところ、本質的には従来保険会社が収受する保険料の中に手数料をいくら入れるかということを考慮したうえで、実質的に手数料を含んで保険料を受け取っていたが、これがどの程度、何についての役務なのかということがはっきりしていなかったことが背景にあるのではないかと思います。このことは何回も開催されておりますこのワーキング・グループの中でもフィーベースにするのがどうかや、あるいは今出てきたような、実際にたくさんの顧客と契約を結ぶという業務の効率化によって保険会社が得た便益がどの程度であるのかということをどう評価するのかと、そういった本質的な御質問がたくさん出ておりましたが、ここの水準が正しく評価できれば、問題としては解消するのではないかとは思っております。

 しかし、先ほどのように手数料を成約した保険料の100のうち10という保険会社及び会社が主導して決めたパーセンテージベースでもらっており、その部分を単に保険契約が90になり法的に保険契約者から10という手数料でもらっているというふうに変えただけであれば、特にお金の実質的な流れの部分が同じである場合には、簡単に保険仲立人に模様替えすることで規制を潜脱するようなことが起こりやすくなってしまうということなのではないかと感じたため、この手数料体系、そして、その中の手数料がどうやって決まるのかということについての分かりやすさということが非常に重要なのではないかと思ったということでございます。

 手数料体系や水準ということについては、恐らく会社がどういう事業部門を持っていて、どのくらいの人員がいて、ここを代理店に任せることでどのぐらい業務の効率化が可能なのかといったようなことは企業によって全く異なっているので、厳密にやろうとすると非常に難しいことであり、なかなか体系をつくるというのは難しいであろうことは分かるのですが、他方で、現在の保険料における手数料の計算の仕方というのが維持されていると、今のような両側から手数料がもらえる方式と、片方からキックバックされる方式というのが混在する状態の中では、結局のところ、たくさん手数料が取れそうな契約手続、あるいはお金の流れというものに、張り付きそうな気がするということがございます。

 また、自主規制機関については今般、実際には能力として、きちんとした代理店として立っていける能力ということを先ほど沖野先生もおっしゃっておられましたが、そういうものの体制整備ということに焦点を当てた自主規制機関の議論をしておりましたが、今は料率の定め方について定性的なものだけではなく、何かある程度、カチッと決められるような基準というものも必要だという御意見もありました。誰がこの点の適正性を担保するのかという点についても、この議論と併せて保険会社で決める、保険代理店等の交渉で決めるといったようなことに加えて、適正性が評価できるような仕組みというのも必要なのではないかと感じました。

 最後になのですが、火災保険についてでございます。40ページにありますとおり、料率の設定の仕方のほかに保険会社が具体的に組む保険の保険料の設定にはある程度、自由度が認められているのが実情ではないかと思っております。今回取り上げられた火災保険がここ10年来、赤字であることについての説明としては、実際のリスクが上がっていることによる保険料率自体が実情に見合わなくなっているという長期的な問題、これは現在生きている保険を更改するときにならないと変更が難しいということがありますが、そういったことと、それから販売するときの自由度が悪用されるというか、交渉力の中で保険の製品が成り立つぎりぎりのところまで保険料を減額してしまうというような運用になっていないかといったような、複数の点が関わっていると思いますので、それらについは別個のモニタリングが必要であり、この点は目のつけどころと申しますか、モニタリングの高度化に際して、どの点に赤字体質の理由があるのかということを深掘りして、モニタリングをしていただければと思っております。

 私からは以上です。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。15ページの保険仲立人の場合と、企業内代理店の場合の保険料の関係。これについては次回、補足資料みたいな形で具体的な数字を使って、何がよくて何がよくないのかというのを説明していただければよいかなと思いました。

 続きまして、上杉委員から、オンラインで発言希望がございます。上杉委員、よろしくお願いいたします。

【上杉委員】
 上杉です。御指名いただきありがとうございます。

 私からは、2点ほどになりまして、まず、1点目ですが、比較推奨販売の適正化ということにつきましては、スライドの22、23枚目の辺りになりますが、このような顧客本位の整理をする方向性については賛成ということで考えております。

 その点に関しまして、先ほど沖野委員からもありましたように、消費者は選択肢が多過ぎると何をどう決めていいのかと悩んでしまいますので、そういったところから事業者がそれなりにまとめるのはいいかとは思います。また、消費者は最初こう思っていたとしても、事業者からいろいろ聞いていくうちに考え方が次々と変わっていくことも特性として考えられると思いますので、保険を選ぶ際にはまず何に注意すべきなのかというところを説明していった上で、こういった形でどうですかというような形で比較推奨していただけるといいかとは思いました。

 先ほどの消費者の意向が最初の意向から最終的に変わってしまっているようなことも往々にあると思うのですが、そういった場合については何らかの客観的な資料を残して、トラブルなどに対応していくことができればよいかと思いました。そういった形を、記録を取るということによって、先ほど様々な委員からもあったと思いますが、比較推奨販売についてもモニタリングの対象として行うことができ、また、それにより実効性を確保することができるのではないかと思いました。

 モニタリングに関して対象とするということであれば、各乗合代理店もそういったところにも気をつけなければならないのかという形で緊張関係といいますか、ちゃんと意識をそこに向けるような機能も果たせるかと感じました。

 ここで23枚目の「なお」の部分について、非常に個人的な見解ということになってしまうのですが、これまでは25枚目の監督指針の部分で定期的かつ必要に応じて実施状況を確認、検証ということで、自分自身で体制整備してはどうかというところで、そうすると、ここを第三者が評価という形でもっていくと思うのですが、これを当局が行うのか、それとも33枚目に出てくる第三者評価制度ともリンクした上で、この辺りの適正化をいかにしてもっていくのかというところは考えていく必要があるのかなと思いました。

 もう1点、自主規制の在り方については、自主規制機関として設立することについては現状、少し難しいので、第三者評価という形で運用していくということで経過を見て見守っていくことになると思うのですが、ここで生命保険の第三者評価制度とは違いまして、こちらの損保会社の第三者評価制度は法令遵守というような形で、むしろ積極的に受けないといけないような状況の中でつくり上げられているものなので、受けることのインセンティブをどのように喚起していくかと、先ほど、ほかの委員からも御発言あったと思いますが、その辺りを今後考えていく必要があるのかなと思いました。

 あと、細かい点なのですが、消費者からの不適切事例の通報というところが33枚目のスライドの第三者評価制度のところにはあるのですが、ここが気になりました。相談、苦情は損保ADRセンターで対応し、適宜連携するということであると。現状の金融庁における金融モニタリング情報収集窓口みたいな形で運用していくのか、それとも、ここは消費者からの相談をダイレクトに受けて、検討した結果を消費者に還元していくのかという、その辺りを消費者にどう周知していくかということによって、消費者にここに情報を寄せようかという関心を起こさせることをしないと、結局窓口はあっても、この窓口が機能しないことになってしまうおそれもあるかと思いましたので、その辺りも今後検討していただければと思いました。

 以上になります。ありがとうございます。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 23ページに書かれている体制整備を求めてはどうかと、これを求める意図は当局としても、これは監督の対象になるということでよろしいですよね。もし第三者評価をするのであれば第三者評価機関もその辺りは当然見ていくということで、どちらかだけがするというわけではないということだと私は理解しております。

 それでは、次の御発言で全員から御発言いただくことになるかと思うのですが、フロアにおられます滝沢委員、お願いいたします。

【滝沢委員】
 ありがとうございます。既にほかの委員の方から出ている御意見とかぶる点が多々あると思いますが、御容赦ください。

 まず、企業内代理店への対応について、特定契約比率規制の本来の趣旨と実務能力が低く保険会社に依存している企業内代理店が一定数あることを考えると、経過措置について3年程度の準備期間を経た後に撤廃することについて、この数字については合意いたします。また、保険料の割引防止の観点からも特定者の範囲を親会社に限らず、連結決算対象までを範囲とすることにつきましても、企業内代理店の位置づけを意図的に対象外となるように持っていくような潜脱行為を防ぐ観点から非常に合理的であると思っております。

 一方で、既に中出先生をはじめとする多くの方からも御指摘がありましたが、趣旨に鑑みると本来は上場、非上場の別なく連結対象は特定者とするべきであろうと思います。ただ、実務上の負荷から実効性、効率性が下がるといったようなことから、非上場については外す御判断はやむを得ないものかと思います一方で、明らかに潜脱行為が疑われるようなケースが出てくることも考えられるので、一律に外すと明記するかどうかについては慎重な対応が必要であるとも思っております。

 一方、同様に実務的な観点から考えましたときに、今回御提案されている適用除外については少々懸念もあるかと思います。まず、自立の確保ですけれども、コンプライアンス及び募集管理態勢が十分であれば適用除外ということですので、この基準の引き方によっては、言葉は悪いのですが、いかようにも取れてしまうということもありますので、具体的に求められる水準というのは一定、明文化していかないと、なかなか現場での判断というのは難しい上に、本来の経過措置撤廃の趣旨に反する結果となる可能性もあるかと思っておりまして、今後ガイドラインですとかチェックリスト等、業界共通で定義されていくべきものと理解しております。

 また、中出先生、嶋寺先生から出ていた企業保険の取扱いにおいては、より専門的なリスクマネジメントの資格を求める御提案は、別の形での自立を担保する意味で検討してもいいのではないかとお聞きしていて思いました。

 次に、実質的な割引の防止ですが、こちらも同じく業務内容、業務品質に対しての手数料の妥当性の判断、これをいかにして行うのか。これは業界としての共通理解が基準として定義されると理解しておりますものの、割引には当たらない、妥当であるという判断が代理店と保険会社の合意等によるものとなっておりますために、保険会社と大規模乗合代理店の力関係から圧力、忖度が働くことによって実質的な効力を失ってしまうといったリスクは既に皆様から御指摘あったとおり、一定あるものと思っております。当事者同士で合意すればよいとすると、実効性の観点から骨抜きとなる可能性がありますので、もう一段の仕組化、明文化ができるとよいと思っております。

 既に大分議論がありましたところ、繰り返しになって申し訳ありませんが、保険仲立人については潜脱リスクを遮断するためにも、引き続き特定契約比率規制の対象とするべきと思っております。その意味で、顧客のみから手数料を受け取るケースについては除外する点については、既に複数の方から出ておりましたように慎重な検討がこちらも要るかと思っております。

 比較推奨についてですが、保険商品というのはとかく消費者と保険会社、あるいは保険販売チャネルの間に著しい情報の非対称性がありますので、比較推奨理由が便宜供与により曲げられるような事態は業界の信頼を揺るがす大きな問題であると思っています。比較推奨の在り方を考える前に、まず、日本損害保険協会様で進められている便宜供与そのものを排除していく取組、これがきちんと機能していくものであることが大前提かと思いますので、この取組が機能することを強く期待しています。便宜供与自体が許容されなくなれば、比較推奨をゆがめる要素そのものがなくなりますので、その点を所与とできるのが理想的であると思っております。

 その上で、顧客の意向をきちんと確認した上で顧客の最善の利益に資する商品を提案していくこと、これは当たり前のことなのですが、実務上、どのように実行するのかという点はほかの方々からも御指摘ありましたように、まだ少し曖昧かと思っております。損害保険であれば生保と比べ、比較的、商品数も限られるので一定機能するようにも思いますけれども、生保商品となると多種多様な商品が存在するために、お客様の意向確認の内容、そして順番によっては、お客様の混乱、負荷が生じることもあり得るのかなと思います。

 一方、規模が大きい代理店に絞った便宜供与ではなくても、新商品のプロモーションや代理店にとっての説明のしやすさ、あるいは実務上、契約成立しないと手数料にはならないので、新契約査定結果が早く分かる等々の代理店側の理由から、あまたある類似商品のうち3つのみをお示しするようなケースは、代理店販売の中では、ままあるかと思いますので事前の絞り込みをどこまで認めるのか、隠れた推奨理由が一定あるところ、どこまでを顧客の最善の利益にする推奨理由であると認めるかというところが、少し議論が必要なように思いました。

 以上です。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 一応1周目の御意見はいただいたのですけれども、時間が押しておりまして2周目は難しそうですので、先に進ませていただきたく思います。

【若原企画市場局参事官】
 座長、1点だけよろしいですか。事務局から、お時間が押している中で恐縮ですが、本日お示しした事務局案につきまして様々御指摘いただいたものを重く受け止めて、さらに検討を深めさせていただきたいと思っております。

 1点だけ、先ほど、保険料の実質的な割引に当たるのではないかという特定契約比率のところにつきまして、現状の企業との力関係等々を考えると実効性がないという御指摘は現状に関してはおっしゃるとおりでございます。他方で、本ワーキング・グループでも代理店管理体制の強化で御協議いただいた評価でございますとか、あと、本日後半で御議論いただきます保険料のそもそものモニタリングの強化でございますとか、あるいは本ワーキング・グループというよりは、それに先立つ有識者会議で御議論いただきました代理店ポイント制度の見直しの話でございますとか、そのようなものに関して、そのような現状の企業との力関係等々については、また規制化を図っていく文脈でございます。

 確かにそのような施策が功を奏せずに現状のような前提が続くのであれば、恐らくおっしゃるとおり論外というようなことがあり得るかと思いますが、そもそもの前提として、手数料自体の水準の適正化を、今回の様々な施策全体として図っていくことを踏まえたものといいますか、現状では恐らく御指摘のような問題が多々あるかと思いますが、今後様々な措置を講じていく中で、そういったものも一定の適正化が図れる前提であればということを考えていた上での御提案だったということを、一言だけ添えさせていただきます。お時間いただいて恐縮でございます。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、オブザーバーの方から御発言をいただきたいと思います。まず、最初に日本損害保険代理業協会から御発言希望が出ております。よろしくお願いいたします。

【日本損害保険代理業協会】
 ありがとうございます。日本損害保険代理業協会、金澤でございます。3点ほど私から申し上げさせていただきたいと思います。

 まずは、1点目は御礼でございまして、今回資料の御説明のところでは触れられなかったですけども、企業内代理店のいろんな事例、ヒアリングの概要ということで、企業の保険リスクマネジメント等に貢献している事例も資料の中に入れていただきましたことを御礼申し上げます。こういうのを見て、ようやく自分たちの仕事が認められたと思っている企業内代理店は多いのではないかと思っております。

 次に、御議論いろいろありました14ページの特定契約比率規制の適用除外ですが、御議論はごもっともと思いますし、定量的な基準、客観的な基準といったようなものも何かこちらからお示しできることがあればということで検討していきたいと思いますが、ぜひ、この適用除外が実現する方向で御議論、御検討をお願いできればと思います。

 最後にもう一つ、特定契約比率規制の関係で、17ページの特定契約比率規制の範囲のうち(ウ)の人的な役職員の兼務関係のところで、先ほど小畑委員から御発言があったところとかぶるのですが、実はここの管理は代理店の中ではものすごい負担がかかっておりまして、先ほどまさに御説明いただいた、新しい人を採用したときに前職によっては特定者に入れて、3年たったらまた特定者から外すようなことをしなければならないということがございます。

 もともとの規制の趣旨からすると、一般の従業員等に対して、そこまでの縛りを本当にするのかというところは実務上も疑問に感じているところですので、今回の規制の検討と併せて見直しをお願いできると大変ありがたいと思っております。

 以上でございます。どうもありがとうございました。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、日本自動車販売協会連合会様より御発言希望が出ております。よろしくお願いいたします。

【日本自動車販売協会連合会】
 日本自動車販売協会連合会でございます。御発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。私どもからは、比較推奨販売の適正化について少しコメントをさせていただきたいと思います。

 これまで御説明にもありましたように、顧客の意向にかかわらず代理店独自の推奨理由に基づいて推奨販売できることになっていたのが、今後は認められないというのは、今回の検討の中でも比較的大きい制度変更であると思っておりまして、この運用の在り方によっては中小の代理店も含めて、現場の実務に非常に大きな影響が出る可能性が高いと考えております。

 私どもの話なので自動車保険について特化して申しますと、顧客の意向について、顧客の意向といっても、こだわりがあまりなかったり、非常に曖昧であるお客様もいらっしゃいまして、そうした中でお客様の意向を伺いながら最終的には代理店独自の理由で推奨している場合も現実には多いわけであります。したがって、今回の制度改正で入り口でオプションを示すというのは非常に大事な取組だと思っていますが、その先で現場を踏まえた非常に柔軟な対応というのは必要であると思っていまして、ここで画一的なやり方を強制されたり、あるいは非常に時間のかかるやり方が必要になったりすると、代理店のみならず、顧客にも大変大きな負担がかかるのではないかと考えております。

 したがいまして顧客の意向に沿って商品を選別し、商品を推奨する場合の対応の在り方については、ぜひ現場の声を踏まえた柔軟な運用になるように、また、そうした点についても監督指針なども含めて明確にしていただいて現場で混乱のないようにしていただけるようにお願いをする次第でございます。

 あと、仮に厳格な比較推奨や、そのための態勢強化を求め過ぎると、非常に現場に大きな負担がかかるため、結果として代理店は乗合の数を減らしたり、あるいは1社にせざるを得ない可能性も高いといったリスクを感じているという声も現実に出てきております。したがって、そうなるとかえって顧客の選択を狭めるというリスクもあることを、ぜひ念頭に置いて検討していかないといけないかと思っております。

 もう1点は、他方で私どもも顧客との接点にいる立場でございますので、顧客の立場から見ますと、残念ながら現状ではどこの保険会社の商品で契約しても、細かな違いはあっても補償内容、保険料はほとんど変わらない、差別化されていないと考えている、感じている顧客が非常に多いと思っています。したがって現実にはどこの会社でもいいと、任せると、むしろ、おたくのディーラーでしっかり事故のときには対応してくれという方が多いわけであります。

 したがって顧客の御不満があるとすると、それは現状、比較推奨が不十分なことでは必ずしもなくて、比較推奨の先にある商品の選択肢がほぼ一緒であることではないかと思っておりまして、こういった現状をしっかり認識して運用を考えていくべきだろうと思っております。あとは、むしろ顧客が話を聞いて、ぜひこの会社のこの商品を選択したいと積極的に意向を言っていただけるように、そういった差別化がされた商品がラインナップされているのが望ましいわけでありまして、そうなってきて初めて今回の比較推奨の適正化も実質的に意味を持ってくるものだろうと考えています。

 また、商品力で競争をされれば便宜供与を競うこともなくなると思っておりまして、ぜひ保険会社におかれては横並びではなく、商品開発競争をしっかりやっていただきたいと思っていまして、そこに本当に顧客の最善の利益があるのではないかと考えております。

 もう1点だけ、保険会社から代理店への出向の件で今回、比較推奨で求められる義務のレベルが上がっていくとすると、それに対応するために代理店でも何らかの態勢強化が必要になるわけでありますが、そうした中では保険会社からの出向によるサポートというのは、特に初期的には非常に有用ではないかとは思っております。

 今日の資料では顧客の選択をゆがめるような過度な便宜供与に当たるタイプの出向の話が記載されており、そういったものは、ぜひとも解消すべきであることには全く異論はないわけでありますが、有識者会議の御議論においても出向全てをなくす必要はなくて、むしろ保険会社の人材育成とか、あるいは顧客ニーズの把握などにプラスの面もあるといったような御意見も多かったものと承知をしております。まさに今回のような比較推奨の質を向上させて顧客対応を強化するための出向については、今後も認められるべきなのではないかと思っております。

 他方、そうした中で懸念をしているのは、保険会社による代理店からの出向者の引上げが今、急速に動いておりまして、先般、日本損害保険協会の出向ガイドラインが出されたわけでありますが、ガイドラインにかかわらず、現場で全ての出向者を引き上げる方針の会社もあると伺っておりまして、代理店の現場からは困惑の声も大変多く寄せられております。顧客サービス向上などに資する適切な出向については、ぜひ今後とも出向のもたらす弊害というのをうまくコントロールしながら継続していくのも重要な取組であると思っておりまして、保険会社におかれても、そういった観点から適切に協力していただくと、比較推奨の適正化も大変うまく進んでいくのではないかと考えております。

 私どもから以上でございます。ありがとうございました。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 もう御一方、オブザーバーからの御発言希望がございます。日本保険仲立人協会様からです。よろしくお願いいたします。

【日本保険仲立人協会】

 ありがとうございます。日本保険仲立人協会の平賀でございます。

 本日のトピック、テーマに即して1点だけ、私どもに関わるところでございますので、前々回、要望事項として私どもからお伝えしましたけれども、今回議論の中の結構ホットトピックの一つでございますので、特定契約比率規制のところにつきましてコメントを差し上げるとともに、質問が1点ございます。

 先ほど洲崎座長から、次回このポイントについては、また、さらに議論を深めるというお話もいただいていますが、前々回の繰り返しになりますが、特定契約比率規制に関する規制につきましては保険代理店の自立と専門性の向上、さらに保険料の実質的な割引の防止を則することが趣旨でありまして、もともと自立して専門性を有しているとして登録されている私ども保険仲立人が、代理店と同じ規制を受ける理由はないと考えております。また、保険仲立人につきましては顧客の委託を受けておりまして、顧客からの評価や満足度を満たしていることを反映した取引比率の多寡について規制を受けるのは、顧客本位の趣旨から外れるのではないかと考えております。

 それから、特定契約比率規制の潜脱については、委員の方々がかなり御懸念されていらっしゃいますが、もとより保険仲立人としての当局への届出、それに対しての承認は、かなりハードルが高うございまして、仮に登録をしていた場合でも毎年事業報告をして、当局に対して細かな説明、照会等々をしなければなりません。そのハードルの高さの中で、果たして潜脱として利用されるおそれがあるのかどうか。もちろんゼロということは想定できないまでも、雪崩現象のようにして企業内代理店の保険仲立人化ということは考えにくいのではないかと。先ほど申し上げた点も踏まえて、ぜひとも特定契約比率規制の適用の対象外として、保険仲立人の立場というものを尊重していただければと思います。

 それと1点質問として、経過措置の撤廃の猶予期間を3年と置いていますがこの3年という期間がどういう背景で成り立ったのかというのが、次回で結構ですけれども、御説明いただければありがたい限りでございます。

 私ども、仲立人協会は以上でございます。ありがとうございました。

【洲崎座長】
 ありがとうございました。

 企業内代理店の特定契約比率規制の潜脱として利用される可能性があるケースとして事務局で考えておられるのは、保険仲立人が企業内グループに属して、保険契約者である企業の子会社であるような場合を想定されていますので、それであれば潜脱の危険はあるのではないかと思います。現状では、そのような企業グループに属している保険仲立人はおられないのかもしれませんが、将来こういう形が起きる可能性は否定できないと思いますので、潜脱として利用される可能性がないと言い切れないのではないかと思っております。そのような理解でよろしいですかね。ありがとうございます。

 それでは、取りあえずここまでで前半の討議は終了させていただきます。活発な御議論いただきましてどうもありがとうございました。

 残り30分で後半の問題として「火災保険の赤字構造」、それから「第3回ワーキング・グループでの議論を踏まえた考え方の再整理」について、委員の皆様方から御発言をいただければと思います。

 大変申し訳ないのですが、残り時間の関係から御発言の時間はできれば1人2分当たりにしていただければと思います。

 それでは、御議論をいただければと思います。いかがでしょうか。

 では、嶋寺委員、お願いいたします。

【嶋寺委員】
 ありがとうございます。手短に申し上げますが、火災保険の赤字の問題についてコメントさせていただきます。

 この問題は、企業保険の支払い実務に関わっている中ではいつも違和感を抱くところでございまして、赤字の理由はいろいろあると思いますが、実際の実務に関わっている中で、事故が多発しているのに安い水準の保険料で継続している大口の契約があるというのが実態であると思います。それ自体が大口の契約者に対する利益供与になると思いますので、今後は金融庁のモニタリングを通じて適正な保険料が設定されることが重要ではないかと思います。

 そのモニタリングの際に併せてチェックいただきたいこととして、代理店手数料の適正化の点もあると思います。先ほども話題になっておりましたが、企業保険に関して高い手数料が支払われると、それがまた保険会社の利益を圧迫することになると思います。その際の手数料が何の役務に見合ったものかというのが、先ほどいろいろ議論している中では、何らかのリスクマネジメント、あるいはリスク管理みたいなことを企業内代理店にやらせればよいという感じのニュアンスにも聞こえたのですが、あくまでもこの手数料というのは保険契約の媒介の手数料だと思いますので、例えば親会社が本来やるべきリスク管理の機能を企業内代理店に背負わせることは、事実上親会社が負担する費用を企業内代理店で負担しているだけということであって、こういうことが適正化ではないのだろうと思いますので、その意味ではここでいう手数料の適正化という際に、何の役務をもって適正と考えるかという辺りも誤解のないような形の整理が必要かなと思いました。

 もう1点ですが、参考純率の算出であるとか、標準約款の対象となる保険種目を増やしていくということも賛成でございます。これは適正な保険料率の設定につながる意味でも赤字の解消につながると思いますし、あとは、大手保険会社の寡占による独禁法上の問題が生じにくい競争環境をつくることにもつながると思います。これによって、これまで以上に多くの企業が保険の加入を検討する機会に触れることにつながると思いますので、企業のリスクマネジメント意識の向上にも資する部分があると思いました。

 私からのコメントは以上です。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは大村委員、お願いいたします。

【大村委員】
 御指名いただきありがとうございます。

 1点目のモニタリングの高度化については、特段違和感はございません。カルテル行為において収益を悪化するような引受けがなされていたことは周知の事実ではございますので、まずは個社において、きちんとした収益管理をすることは前提となりますが、それを当局においてしっかりとモニタリングしていただきたいと思っております。

 また、2点目の参考純率の見直しについても、将来データを入れることによって精緻化するということについては違和感ございません。

 3点目の参考純率算出の対象品目の拡大については、私は反対というか、これがどれほど意味があるのかということに疑問を抱いているのが正直なところではございます。例えば、火災保険においては、実態として、参考純率をあくまで参考であり各社において独自のデータベースに基づいて、アンダーライティングをし、保険料の算出をしていると理解しております。他方で、自動車保険のようにボラティリティがないマスの保険については、参各社とも考純率に基づいて保険料を算出しておりますので、こういった保険については参考純率を出すことによってプレーヤーが増えると思いますし、意味があると思われます。

 今回挙げられている賠償責任保険やサイバー保険のようにボラティリティが大きく、また、現場におけるリスク実態、引受実態によって大きくかわって異なってくるような保険については、個社においてアンダーライティングができない、または、そもそもの保険料の算出ができないような社が参入することが適正な競争を促進することになるのかということについては、疑問を拭えず、逆に、ダンピング的なことが行われ、健全な競争が阻害される懸念のほうが大きい可能性はあるように思われます。また、蓄積データが少ないために参考純率が低くでてしまったような場合には、保険会社がそこに引っ張られて収益を悪化させる可能性もございますので、設定された課題に応える内容になっているのかという観点から、対象種目については慎重に御検討いただく必要があるのではないかというのが率直な感想でございます。

 次に、保険仲立人の活用促進に向けた施策につきましては、前回のワーキング・グループの議論を集約すると、1、2、3、4のうちの1、3だけにかけるという方向になり、企業向けについては手数料の顧客からの受領を可とした上で、かつ双方からの受領も可とせざるを得ないのかなと思っております。ただ、私自身の意見を率直に申し上げさせていただくと、企業向けに関して双方からの受領可とする緩和については、違和感を抱いております。

 企業と申しましても大企業ばかりではなく、個人が法人成りしたようなところもございますので、必ずしも顧客側においてきちんとした判断がなされることを期待できるものではございません。加えて、前回、保険仲立人協会からは、特段、両取りする意向はなく、顧客から手数料を受領することが可能になればよいといった御発言があったと理解しておりまして、要望は特段ないがリスクはあるといった状況かと思われます。

 さらに、現在、何も規制がなく新たに規制をかけるのであれば慎重に考えるべきかとは思いますが、現状の規制というのは、両取りはできません、かつ、保険会社のみから手数料をもらってくださいとなっており、保険会社のみからもらってくださいというところだけをとるのであれば規制緩和となります。2つとも緩和するのか、1つのみ緩和するのかといった議論の中で、現状の要望及びリスクを踏まえてなお2つとも緩和する必要があるのかということについては、個人的には疑問を持っております。

 ただ、それでも手数料の取り方について規制をかけるべきではないということなのであれば、双方からも受領可というのはやむなしとは思いますが、その場合には保険会社に対して、顧客からどれだけの手数料を受領したかということが開示されることが必要なのではないかと思っております。

 現在の当局案においては、顧客に対しては手数料を開示することが必要だとされておりますが、他方で保険会社に対しては開示しないことが前提になっていると理解しております。しかしながら双方取りの場合に、保険会社が適正な手数料水準に持っていくためには、そもそも保険仲立人がどれだけ顧客から取っているかということを知らないと判断のしようがないため、保険会社に対する開示は当然に求められるのではないのかと考えております。

 以上です。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 そうですね。両取りまで認める必要はなくて保険契約者からのみ認めるというのでも、現状からすると規制緩和になりますし、現場のプレーヤーが両取りまでは考えていないというのであれば、確かに大村委員のような解決法というのも一つあり得るかもしれないなという感じはいたします。

 オンラインで柳瀬委員から御発言希望が出ております。柳瀬委員、よろしくお願いいたします。

【柳瀬委員】
 御指名いただきありがとうございます。火災保険の赤字構造に関するコメントを端的に申し上げたいと思います。

 火災保険の赤字構造に関しては、必要な補償が将来にわたって安定的に提供されることを確保する観点から、当局による商品開発管理態勢等に関するモニタリングの高度化を図るという基本的な方向性について一定の理解はできます。他方で、火災保険の赤字構造の重要な背景でもある自然災害リスクに関しては、今後も不可逆的な形で悪化する見通しが高いものと推察されます。

 確かに以前は保険会社同士での保険料規模やマーケットシェアの競い合いというものがあったと認識するものの、こうした状況の中で、保険会社は既に保険料の引上げを行っており、収益性確保の観点から、保険金額の大きい企業向け火災保険を中心に引受けの縮小も開始しているようです。また、私の研究室が大企業を対象に実施しているサーベイ調査でも、キャパシティー不足がかなり進んでいるということが確認されております。

 したがって、当局の介入がなくても、自然に赤字が縮小していく可能性も十分にあり、民間の保険ビジネスに対する当局による過度な介入には、やや懸念を感じます。したがいまして今回の御提案に賛成しつつも、今後数年間の経過を見ながら、必要に応じてモニタリングの程度や要否について再評価する視点も必要かと思います。

 なお、こうした状況が中長期的にも続き、今後は特に自然災害リスクの高い領域、エリアに集積する大企業を中心に保険調達というものはさらに困難になることが予想されますので、今後は自助努力による保険カバーの代替手段、例えば積極的なリスク保有を企業がより行いやすくなるような、例えば異常危険準備金のような無税引当て制度の企業版の創設や、国内でのキャプティブ法制の整備など、そういった方向についても今後検討が必要ではないかと考えます。

 最後に、保険分野のデータの整備の取組は非常に大事だと思っております。特に、家計保険、企業保険別のデータの整備を進めていただくとともに、積極的な情報開示をしていただくことも、併せて御検討いただくことがよいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 続きまして、会場から片山委員より御発言希望がございます。よろしくお願いいたします。

【片山委員】
 ありがとうございます。私からは、火災保険の赤字構造についてコメントさせていただきます。

 補償に比較して適切な保険料水準が設定できるよう、商品開発管理態勢に対するモニタリングを高度化することは必要な措置かと思いますが、一方で、モニタリングによって監視が厳し過ぎたりすると、過度な負担となって必要な商品開発が滞ることも懸念されますので、その辺はバランスをとった対応をお願いしたいと思います。

 以上です。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、同じく会場から小畑委員、お願いいたします。

【小畑委員】
 ありがとうございます。まず、火災保険のところですが、実際に利用者である企業側からの認識でも昨今の自然災害の多発、こういったことから既に引受けが縮小していると、そういう現状認識があるということがありまして、安定的な供給という観点からもモニタリングの高度化というのは不可欠なのだろうと認識をしております。

 それから最後のページ、44ページの前回の取りまとめのところの最後のところですけれども、前回も申し上げましたが、顧客に対して説明するというところだけが書いていまして、保険会社からの求めに応じてもちゃんと説明することも併せて書いていただければと思っております。

 以上でございます。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、オブザーバーから御発言希望がございます。生命保険協会様より御発言希望が出ております。

【生命保険協会】
 生命保険協会の中村でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。議論いただいた5つのテーマについて、大きな方向性については異存ございません。そうした前提で、我々の業界に関連する2点について簡潔にコメントさせていただいます。

 まず、1点目は自主規制のあり方でございます。損害保険分野における自主規制のあり方として、資料29ページに記載がございますが、代理店の中には生損兼営で生命保険も扱っている代理店もございますので、コメントをさせていただければと思います。事務局から御説明いただいたとおり、膨大な数の代理店が存在すること、規模特性が様々であることを踏まえ、必ずしも自主規制機関を設立する必要まではなく、第三者評価や教育、研修活動の高度化の取組等の効果を見極めて慎重に対応を検討すべきという方向性については違和感なく受け止めております。ぜひこの方向でお進めいただければと存じます。

 2点目は乗合代理店における比較推奨販売の適正化でございます。23ページになります。事務局から提示された対応の方向性は、金サ法による最善利益勘案義務を踏まえ、比較推奨をゆがめ、顧客本位でない販売方法を防止するための措置を講ずるものと理解しており、この方向性にも異論ございません。実際の生命保険の募集の現場を見てみますと、募集の最初の段階から必ずしも明確な意思があるお客様ばかりではございませんので、ニード喚起をしながら御提案をする場面がございます。

 つきましては、顧客の意思が明確でない場合等に限って顧客の意思を明確に確認した上で顧客の最善利益に資する推奨基準、理由に照らして代理店が推奨する商品を提案することについて、ぜひ許容いただければと考えております。

 なお、委員の皆様からもありましたとおり、実際の制度設計を検討するに当たっては具体的にどのような形で顧客の意思を把握し、絞り込みを行うことが実効的かつ実現可能か等、顧客本位の比較推奨販売に資するかといった観点で、引き続き業界との丁寧な対話をお願いできればと存じます。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、もうお一方、オブザーバーとして、損害保険料率算出機構から御発言希望がございます。

【損害保険料率算定機構】
 損害保険料率算出機構の松本と申します。発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。お時間もないようですので簡潔にお話をさせていただきます。

 先ほど御説明、様々いただきました中で、皆様の中から自然災害の激甚化に対する対応というのは極めて重要であるとのお話がございました。今日、事務局からも御説明いただきましたが、参考純率というものが将来気候を反映した気候変動にも対応できるリスク評価、これを機構としては今、検討しております。参考純率をより、そのリスクに見合ったものにすべく、私どもとしては今後も努力をしていきたいと考えているところでございます。

 それと、参考純率や標準約款の対象範囲の拡大について御意見をいただいたところでございますが、こちらも企業物件のみならず、個人向けの商品につきましても様々、今後、マーケットの環境が変わってまいりますので、私どもといたしましても競争関係に限らず、消費者利益等に関して有益なものと認められれば、範囲の拡大も検討していきたいと考えております。

 また、データ関係も御意見いただきましたけれども、今後ますますデータの利活用というのが重要になってまいりますので、業界に対してだけでなく、いかに世の中に対して公表できるデータといったものを整理できるかということも機構としては重要な課題として考えているところでございます。

 以上でございます。

【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。

 滝沢委員から御発言希望がございました。よろしくお願いいたします。

【滝沢委員】
 極めて手短に。今、損害保険料算出機構様からありましたように、41ページのこの対応の方向性、これについては全面的に賛成でありまして、過去実績データとの平準化がベースということであると、今のような災害の激甚化には対応しかねるかと思いますので、その点はぜひ積極的に進めていただければと思っております。

 以上です。

【洲崎座長】
 ありがとうございました。よろしいですかね。

 どうもありがとうございました。

 本日は長時間にわたりまして、非常に多岐にわたる論点について多くの御意見をいただきました。事務局において、今後さらに検討すべき課題について整理をいただき議論を進めていきたいと存じます。

 また、次回日程につきましては委員の先生方の御予定等を踏まえまして、後日事務局より連絡をさせていただきたいと思います。

 それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。

 長時間誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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