金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第5回)議事録

  • 1.日時:

    令和6年12月5日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所:

 中央合同庁舎第7号館 9階 905B共用会議室 ※オンライン併用

金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第5回)


【洲崎座長】
 定刻になりましたので、ただいまより損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ第5回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。
 
 本日の会合も、前回に引き続きオンライン会議を併用した開催とし、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせていただいております。
 
 また、議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願い申し上げます。
 
 メディア関係者の方々はここで御退席をお願いいたします。
 
(報道関係者退室)
 
【洲崎座長】
 それでは、議事に移らせていただきます。本日はまず、事務局より資料1の第4回ワーキング・グループでの議論を踏まえた考え方の再整理等、及び本ワーキング・グループの最終的な取りまとめを見据え、事務局にて報告書案を準備いただいておりますので、資料2の「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」報告書(案)について御説明いただき、その後、委員の皆様に御議論いただきたいと思います。
 
 それでは、事務局説明資料について事務局より説明をお願いいたします。
 
【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
 それでは、第4回ワーキング・グループでの議論を踏まえた考え方の再整理等及び「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」の報告書(案)について、お手元の資料1及び資料2に沿って御説明をさせていただきます。
 
 まず、資料1事務局説明資料の3ページを御覧ください。このページでは、企業内代理店の見直しに関する背景や方向性等を改めて整理しております。
 
 前回御説明した内容と重複する部分も多いのですが、真ん中の「企業内代理店の課題と実態」を御覧いただければと思います。企業内代理店は、その立場が不明確であること、実務能力が乏しくともグループ企業等への保険募集から一定の手数料が安定的に得られるため、代理店として存続できること、企業内代理店に支払われる手数料は保険料の割引になっているおそれがあり、他の代理店等の参入を妨げているのではないかという課題が指摘されております。他方、企業内代理店の実態は非常に多様であり、実態調査のヒアリングの中では、企業にとって不可欠な保険リスクマネジメントの機能を提供している、高度な実務能力を有している企業内代理店も存在するということが分かっております。
 
 その上で、特定契約比率規制の具体的な見直しを検討していく必要があるわけです。次の4ページを御覧ください。このページも前回御説明した内容と重複する部分も多いのですが、見直しの方向性を確認していただくために改めて整理をしております。
 
 まず、1つ目の四角、特定契約比率の適用の見直し、一つは、経過措置の撤廃です。近年の保険市場の実態をより正確に反映し、保険料の割引等を防止するとともに、保険代理店としての自立を促すために経過措置を撤廃する。もう一つは、特定者の対象範囲の拡大であります。特定者の範囲を連結の範囲に拡大する。ただし、親会社が有価証券報告書を提出する会社と会社法上の大会社以外の場合には、連結の範囲を特定することは実務負担が重くなり得ると考えられますので、基本的には現行の範囲を維持したいと考えております。また、前回委員から特定契約比率の計算に当たって企業内代理店の実務上の負担が大きい部分があるといった御指摘もいただきましたので、こうした部分は少し簡素化を図ることとしたいと考えております。
 
 その次の四角は、特定契約比率規制の適用除外の枠組みになります。前のページで企業内代理店の中には実務能力の低い代理店が存在する一方で、企業にとっては不可欠な保険リスクマネジメントの機能に貢献している、高度な実務能力を有している企業内代理店も存在するということを申し上げました。このため、特定契約比率規制の見直しに当たっては、そういった全ての企業内代理店に対して、特定契約比率規制を画一的に適用してしまうと、こうした、高度な実務能力を有している企業内代理店の機能を損ねてしまうのではないか、それは企業向け保険市場全体で見ても好ましくないことなのではないか、と考えられます。したがって、一定の適用除外という枠組みが必要なのではないかと考えております。
 
この適用除外の要件としまして、前回のワーキング・グループの中では、保険代理店として十分な実務能力を有しており、親会社等からの自立が図られていることと、保険料の実質的な割引が生じていないこと、この2つのいずれの要件も満たした場合に限って適用除外としてはどうかというような御提案をさせていただきました。ただし、この2つの具体的な要件の内容については、前回のワーキング・グループで多くの意見をいただいておりますので、この後のページで改めて整理をしております。
 
 一番下の四角ですが、保険仲立人に適用されている特定契約比率規制をどうするかという問題です。特定契約比率規制の潜脱として利用されるおそれがあるので、引き続き適用対象とすべきではないかと考えておりますが、この点についてもこの後資料を用意しておりますので、改めて御説明をさせていただきたいと思います。
 
 次に、5ページを御覧ください。特定契約比率規制の適用除外の要件に関する具体的な検討です。論点ですが、特定契約比率規制の適用除外の2つの要件、「一定の体制整備の要件」と「手数料の適正化の要件」これをどのように具体化していくのかという点になります。それらについての考え方をその下に整理しております。
 
 まず、前提として特定契約比率規制の枠組みは、損保会社が各企業内代理店の特定契約比率の状況を確認することになっております。足元で損保会社と保険代理店の関係は力関係が逆転しているというところもあると言われております。とりわけ大規模な代理店に対しては損保会社が適切な管理・指導が行われていないのではないかと、そういった問題があります。したがって、まず、この関係を適正化する、損保会社による企業内代理店に対する適正な管理・指導が行われることが重要です。
 
 このため、今回のワーキング・グループにおいて審議されました一連の施策、特定大規模乗合保険募集人に対する損保会社の監督義務の強化や、特定大規模乗合保険募集人における法令等遵守態勢の強化、あるいは先般の有識者会議で提言されました損保会社から保険代理店への過度な便宜供与の是正、こういったものを着実に実現していく。これが実現すれば、損保会社と保険代理店の力関係が適正化されるものと考えております。
 
 その上で、この①、②の適用除外の要件の具体化に向けての取組みを進めていきたいと考えております。①は一定の体制整備の要件ですが、前回は法令等遵守態勢の整備と保険募集人の数という要件を示しておりましたが、企業内代理店の業務品質や募集人の実務能力を確認できる要件も追加したいと考えております。②は手数料の適正化、この部分は様々な御意見をいただいております。主には、企業内代理店が提供した役務に見合った手数料が本当に設定できるのかといった御意見だったかと思います。この点、まず、先ほど申し上げた、損保会社と保険代理店の関係の適正化に取り組んでいきたいと考えております。その上で、ここに書いてあります代理店手数料ポイントの見直しを進めると、損保会社が企業内代理店の業務品質や実際に提供した役務を適正に評価できる環境が整うものと考えております。
 
また、2つ目のポツですが、現在、日本損害保険協会におきまして保険代理店の業務品質を第三者が評価する制度の検討が進められておりますが、ここで得られた知見を損保会社にフィードバックすることで、損保会社は企業内代理店の業務品質をより適正に評価できるようになるものと考えられます。さらには、3つ目のポツですけれども、この手数料の適正化の取組みは損保会社自身で進めなければいけない問題でもありますので、当局としてもそういった取組みを強く促していきたいと考えております。
 
 最後の矢印の部分になりますけれども、こうした取組みによりまして、企業内代理店の手数料の適正化が進むことを前提として適用除外の要件をさらに具体化して、真に適正と考えられる企業内代理店が適用除外の対象となるようにしてはどうかと考えております。
 
 いずれにしましても、この特定契約比率規制の見直しにつきましては、まずは経過措置の撤廃と特定者の対象範囲の拡大を行う、併せて適用除外の枠組みを設ける、その要件は一定の体制整備と手数料の適正化という2つの観点から定められるものであること、まずは、ここまでの考え方を確認させていただきたいと考えております。具体的な要件につきましては、委員から御指摘いただいた点を十分に踏まえまして、今後事務レベルで検討を続けられればと考えております。以上が、企業内代理店の見直しの方向性になります。
 
 続きまして、保険仲立人への特定契約比率規制の適用という問題です。6ページを御覧ください。第4回でも御説明したとおり、特定契約比率規制は保険仲立人にも適用されております。保険仲立人を適用除外にすべきといった指摘もあるわけですけれども、このまま特定契約比率規制の適用を除外してしまうと、企業内代理店の特定契約比率規制の潜脱として利用されるおそれがあると考えられますので、引き続き特定契約比率規制の適用対象とすべきではないかと考えております。ただし、この点は前回の事務局説明資料の中では少し分かりにくい部分もありましたので、その事実関係を改めて整理したものが、次の7ページになります。
 
 まず、左上ですが、これは企業内代理店ではない一般の保険代理店が保険契約を締結した場合の資金の流れです。顧客企業が保険料100を損保会社に支払う、損保会社はこのうちの20を手数料として保険代理店に支払う、これが基本的な資金の流れです。
 
 次に、右上、企業内代理店の場合はどうか、この場合は顧客企業が保険料100を損保会社に支払う。損保会社はこのうちの20を手数料として企業内代理店に支払う、その際、顧客企業と企業内代理店は同一のグループに存在するため、グループ全体として見ると実質的には80を支払ったことになる。つまり、企業内代理店に支払われる手数料分だけ保険料が実質的に割り引かれているように見えるわけであります。
 
 次に、企業内仲立人の場合はどうかということです。まず、左下の企業内仲立人が保険会社から手数料を受け取る場合、現在の制度上、まさにこういった状況にあるわけですが、この場合はどうか、御覧いただくとお分かりになるかと思いますけれども、これは企業内代理店と全く同じ資金の流れの構造で、実質的な支払いは80になります。
 
このため、企業内仲立人を単に特定契約比率規制の適用除外としてしまうと、企業内代理店が企業内仲立人に衣替えをすることで、従来の業務を特定契約比率規制の制約なく実施できることとなり、規制の潜脱のおそれがあるのではないかと考えております。
 
 最後に右下、企業内仲立人が顧客から手数料を受け取る場合ですが、企業内仲立人が顧客企業から手数料20を直接受け取る、その場合、親会社が保険会社に支払う保険料は80になります。手数料は顧客企業から直接支払われていますため、少なくとも理論的には保険料が割り引かれているという事実はないと考えられます。
 
 他方、企業内仲立人の手数料の受領方法についてはこのほかにも様々なバリエーションがあると思いますので、どこまでを適用対象とすべきかというのは引き続き検討を続けていきたいと考えております。
 
 この次のページの、情報漏えいの事案の概要については、後ほど監督局から御説明をさせていただくこととします。
 
 次は、資料2の報告書(案)を御覧いただければと思います。報告書(案)については、主なポイントのみ簡潔に御説明をさせていただこうと思います。
 
 まず、目次を御覧ください。大きな項目としては2つ、顧客本位の業務運営の徹底と、健全な競争環境の実現です。前者の中に、大規模乗合代理店に対する体制整備や乗合代理店における比較推奨といった論点、後者の中には、保険仲立人の活用促進、保険会社の便宜供与、火災保険の赤字構造といった論点を記載しております。
 
 まず、大規模乗合代理店に対する体制整備の強化ですが、5ページを御覧ください。どのような代理店をこの体制整備の強化の対象とするかですが、9行目において、「規模が大きい特定保険募集人」の中で一定規模以上の特定保険募集人を対象とし、これを「特定大規模乗合保険募集人」とする、さらには13行目では、その代理店の規模は手数料収入額を基準として用いる旨を記載しております。
 
 次に、その下の(2)では兼業代理店への対応を記載しております。具体的な取組みとしましては、その次の6ページ目の3行目になります。特定大規模乗合保険募集人のうち、保険金関連事業を兼業する者は不当な修理費等を請求するインセンティブがあることを踏まえまして、このような取引を特定する管理方針を策定・公表する、その他の体制整備を求めるとしております。
 
なお、この兼業代理店に関しましては、大規模な代理店への対応だけではなく、幅広い代理店に対応を求めるべきといった御意見もありましたので、その下の11行目を御覧いただければと思います。全ての兼業代理店に対して、顧客本位の業務運営の周知を図る、その規模・特性に応じた取組みを促していくとしております。
 
 次に、その下の(3)特定大規模乗合保険募集人に対する体制整備になります。26行目から具体的な取組みを記載しておりますが、営業所または事務所ごとに法令等遵守責任者を設置する、本店または主たる事務所に統括責任者を設置する、これらの責任者には一定の資格要件を求め、そのための試験制度を新設する。7ページに進みまして、このほかにも、保険募集指針の策定、苦情処理体制の整備、内部監査体制の強化といった体制整備を求めていくことを記載しております。
 
 次に、乗合代理店における比較推奨の問題になります。31行目ですが、乗合代理店における適切な比較推奨を確保する観点から、顧客の意向に沿って保険商品を絞り込む、その保険商品の絞り込みに当たっては、顧客が重視する項目を丁寧かつ明確に把握した上で、意向に沿って保険商品を推奨することを求めていくとしております。
 
 次に、その下の3ですが、今般の事案を踏まえますと、代理店の体制整備義務を強化するだけではなく、保険会社による適切な管理・指導の実効性を確保するといったことも重要であると考えております。そのため、16行目ですが、代理店からの不正な修理費等の請求に対して、保険会社のけん制機能が適切に発揮されるよう、支払管理部門と営業部門を分離する。委託先の代理店における顧客の利益等を害するおそれのある取引を特定して適切に管理する、さらには、大規模乗合保険募集人へ業務を委託する際には、その代理店の法令等遵守体制を検証するための管理責任者を設置するとしております。
 
 その次の9ページは、損害保険分野における自主規制のあり方です。損害保険分野は、他の分野と違いまして、会員となることが想定されている代理店の数が非常に多く、それらが幅広く加入している団体、自主規制機関の母体となるような団体は現時点ではありません。そのため、28行目ですが、現時点では自主規制機関を直ちに設置する状況にはないと考えられます。したがって、今は、先般の有識者会議やこのワーキング・グループにおける検討結果を踏まえた制度・監督面での対応、例えば、保険会社による代理店に対する監督の強化や代理店に対する適切な求償権の行使といった施策も盛り込んでおりますが、このほかにも現在日本損害保険協会で進めている第三者評価制度や教育・研修活動の高度化等、こういった取組みの効果を当面は見極めることとしまして、その効果を検証した上でその要否を改めて検討するということとしております。
 
 続きまして、11ページからが、2つ目の項目、健全な競争環境の実現です。まずは保険仲立人の活用促進ですが、12ページを御覧ください。①媒介手数料の受領方法の見直しです。現在、保険仲立人は手数料を保険会社に請求することとされておりますが、20行目の部分ですが、保険会社だけではなく、顧客からも手数料を受領できるように見直します。その際、手数料の受領先や金額は保険仲立人、顧客、保険会社の3者で調整をすることとしております。
 
また、手数料を顧客からも受領できるようにする場合は、顧客の保険調達コストが上がってしまう可能性もありますので、顧客の利益が害されないよう一定の措置を講ずべきであり、具体的には28行目ですが、保険仲立人は手数料を保険会社から全額受領するか、顧客から全額受領するか、保険会社と顧客の双方から受領するかを顧客にあらかじめ説明することを記載しております。さらに、次の13ページでは、こういった措置に関しては、まずは企業向け保険のみを対象として始めるとしております。
 
 その次の、保険仲立人の保証金制度の見直し、保険代理店との協業の見直し、海外直接付保における保険仲立人の活用、この辺りは少し省略させていただきます。
 
 次は15ページの保険会社の便宜供与の問題になります。便宜供与の問題は有識者会議の中でも取り上げましたが、有識者会議では、保険会社から代理店への便宜供与、今回は保険会社から保険契約者等への便宜供与の問題になります。
 
今般の保険料調整行為事案では、保険会社の便宜供与の実績で保険契約やシェアが決まってしまうという実態があることも分かっております。こういった便宜供与は保険業法上の保険契約者に対する特別利益の提供を禁止する規定との関係でも好ましくなく、また、保険業の健全な発展を阻害するといったことが指摘されております。
 
このため、25行目ですが、特別利益の提供として禁止される行為の対象に、保険契約者のサービスの利用や物品の購入、役務の提供等の便宜供与のうち、保険契約者間の公平性を害し、保険業の健全な発展を阻害するようなものを新たに追加するほか、特別利益の受け手の対象に保険契約者のグループ企業を追加することとしております。
 
 その次、16ページを御覧ください。3は、企業内代理店の問題でありまして、本日の御議論を踏まえて追記をさせていただこうと思います。
 
 その下の4、火災保険の赤字構造の改善です。具体策は、その次の17ページですが、18行目、まずは当局による損害保険会社の商品開発管理体制のモニタリングの高度化を図る、続いて18ページですが、5行目、火災保険の参考純率の算出方法について、気候変動が将来の参考純率の水準に与える影響を定量的に予測・反映するための手法についての検討を進める旨を記載しております。
 
 最後は、(3)参考純率及び標準約款作成の対象となる保険種目の拡大です。18行目、現在、この対象種目は火災・自動車・傷害の3種目ですが、保険料率の算出や保険約款の作成にかかるコストを低減することで、中小規模の損害保険会社の商品開発や新規参入を促進する観点から、この種目を拡大する。現在、損保市場は大手4社の寡占状態にあるわけですが、こうした取組みが中期的には競争の活性化にも資するのではないかと考えております。
 
 私からの説明は以上になります。
 
【下井監督局保険課長】
 監督局保険課長の下井でございます。私からは、情報漏えい事案の概要について説明いたします。足元、いろいろと報道等がなされておりますが、損害保険、生命保険両業界にまたがって情報漏えいの事案が判明しております。これに関し、金融庁としましても、保険業法及び個人情報保護法をはじめとする関連法令の遵守や契約者保護等の観点から厳正に対応すべき事案として、重く受け止めております。本日のこのワーキング・グループの場におきまして、こうした現状について御報告させていただきたいと思います。
 
 お手元の資料1事務局説明資料の12ページを御覧ください。今回の情報漏えいに関しては、大きく分けますと2つの事案があると考えられております。
 
 まず、1つ目の事案、左側の図になりますが、今年4月、大手損害保険会社において問題が明らかになったものです。その内容は、複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店である、自動車販売店、ディーラーの本部と各拠点との間において、本部から各拠点へ、顧客の保険契約の更新等の対応を指示するために、顧客情報を電子メールで送付する際、他の保険会社分の顧客情報も含めて、まとめて全ての保険会社へ送付していたため、他社の顧客情報が閲覧できる状況になっていた、というものであります。これをいわゆる「代理店事案」と呼んでおります。
 
 この問題を受けまして、大手損害保険会社4社、それに続いてその他の損害保険会社で調査が開始されまして、その調査の過程で、大手損害保険会社4社におきましては、もう一つの問題事案が判明しまして、それが資料の右側の図になります。その内容は、各保険会社から乗合代理店に出向している出向者が、その出向先の乗合代理店から、他社の顧客情報を出向元である保険会社に送付していた、というものでございます。これをいわゆる「出向者事案」と呼んでおります。
 
 これらの顧客情報の漏えい事案に関しては、生命保険会社においても判明し、調査が行われておりまして、それぞれの業界ともに、現在、その事実関係の把握や真因分析等の検証が進められてきているところであります。金融庁としましても、引き続き、実態の把握を進めるとともに、事実関係や真因分析等の検証を実施し、検証を通じて問題が認められた場合には、法令等遵守や契約者保護等の観点から厳正に対応してまいりたいと考えております。
 私からの説明は以上でございます。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。それでは、本日の事務局説明を踏まえて、委員の皆様方から幅広く御自由に御発言をいただければと思います。なお、最後に御説明のあった情報漏えい等事案に関しましては、調査中ということですので、議論の範囲は限定的になるかと思いますが、御意見等がございましたらよろしくお願いいたします。
 
 全体の会議時間の制約もございますので、御発言の時間といたしましては、5分程度を目安にしていただければと思います。対面で御出席いただいている方々におかれましては、お名前の札を立てていただき、オンラインで参加されている方々におかれましては、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。
 
 それでは、御議論をお願いできればと思います。では、中出委員、お願いします。
 
【中出委員】
 ありがとうございます。中出です。
 
 まず、企業内代理店のあり方について、前回から続いている適用除外の点です。前回発言させていただいたとおり、適用除外を認める場合に2つの要件を設けること、その考え方については異論ありません。ただ、定性的な基準ですので、実務で適切に運営できるかどうかが一番の問題だと思っております。今回、前回の意見を踏まえた新しい案を提示いただきましたが、要は、要件をどこまで具体的に示せるかという点と、3年程度の経過措置を考えれば、その中で具体的な認定の落としどころを見いだしていくことが重要でないかと思います。

 まず、要件の具体化について、体制整備は、募集人の実務能力が重要であるということを今回書いていただいております。各種資格の保有状況等とございますが、どのレベルの資格であってもよいというものではもちろんありませんので、企業保険の募集を代理できるレベルのものである必要があると思います。その点で、保険仲立人は企業保険を中心的に扱っていると思いますので、それとの比較で遜色のないレベルの専門性というのが望ましいのではないかと思います。企業保険を扱うことに適合する資格が必要だということは、注に書いていただくことも考えられるのではないかと思いました。
 
 それから、第2の要件である手数料の適正化については、これは非常に運営が難しいと思いますが、特別利益の提供は、1つの契約からであっても生じる、そのような性格の問題ですので、代理店の全体で判断するのか保険の種類で判断するのかなど、判断が難しい面があると思います。資料では、保険会社に判断させると記載されているわけですが、この特別利益の提供は業法上の禁止規定ですので、法律に反するかどうかの判断を保険会社に委ねてよいのかという疑問があります。また、乗合の状況で、かつ顧客そのものと言えるような企業内代理店に対して適切な法的判断ができるか、いろいろ難しい面があるのではないかと思います。対象の代理店の数が非常に多いので、当局が個々に判定することは困難であろうとは考えますが、保険会社に求められる立場としては、判断ではなくて、当局の具体的な基準に実情を当てはめて判定するということではないかと思います。そして、具体的な判定において、保険会社と当局で認識に違いがあってはよくないと考えます。
 
 以上の2つの要件に対する具体的な対応としては、まずはできるだけ具体的な基準を示していくということだと思います。しかし、技術的に難しい面もあるかと思いますので、実務が定着する前は、特に特別利益の提供の視点については、都度、保険会社の認定と当局の認識にそごがないかを確認しながら徐々に除外を認めていくというのが現実的でないかと思います。経過期間を利用しながら、問題ないと認識できるようなところから運用していくということが必要でないかと思います。
 
 続きまして、全体の報告書案ですが、これまでの会議の議論を論理的かつ明確にまとめていただいておりまして、事務局の御努力に大変感謝申し上げます。全体の流れに違和感はありませんが、細かい点でいくつか意見を述べさせていただきます。
 
 最初に、6ページ目上から2段落目の利益相反のところです。保険金関連事業の兼業における利益相反は重要な論点として理解しており、保険金関連事業において顧客に不利益が生じるようなことはしてはならないといった、利益相反の一般的な規定を設けてはどうかということをこれまで私は意見として申してまいりました。
 
 今回、顧客本位の業務運営に関する原則の原則3をあげて、そこに利益相反についても記されているということがございます。しかしながら、この原則自体は法律でもありませんし、監督指針でもありません。報告書案でも、「自主的な取組みを促すことにより」というように、「自主的な」という話になっています。しかしながら、利益相反の問題は、自主的な取組みに委ねてしまってよい事項とは考えにくく、少なくとも監督指針などで、保険金関連業務を兼業する場合には利益相反は避けなければならないという考え方を記して、やってはならないことについて当局の考え方を明確に示すことが重要ではないかと思います。この点、御検討いただけたらと思います。
 
 次に、比較推奨の点の7ページから8ページにかけてのところです。8ページの7行目に、このパートの最後に、扱う商品や所属保険会社等のリストを提供することも考えられるとして、表現としては、そういった方法もありますというような表示になっています。これは、義務という形で位置づけられているわけではありません。どこまでを開示するか検討しなければならない点はあると思いますが、乗合代理店が比較推奨する場合には、まず、顧客が加入したいと考えている保険の種類について、どの保険会社の商品があるのかという情報を提示した上で、そこから比較推奨のプロセスに入るべきでないかと考えております。7ページに比較推奨の方式が記されていますが、その前に必要な事項として、顧客が加入できると考えている保険種類について扱う会社、商品のリストを示すことが必要でないかと思います。ここの最後に、併せてリストも提供することも考えられると書いてありますが、むしろこれは、最初にこういうことを提示した上で比較推奨をしていくというようなプロセスが必要でないかと思います。
 
 続きまして、11ページ、健全な競争環境の実現についてです。冒頭で市場環境の背景について書いてありますが、今回の事件が発生した背景として重要な点としては、日本の損害保険市場が寡占市場で、かつ各社間の保険商品にあまり違いがないということがあったかと思います。このような特性があったということを背景の理由に記してもよいのではないかと思います。
 
 それから続きまして、12ページの(3)、保険仲立人の媒介手数料の受領方法の見直しです。ここの箇所の中で1パラグラフ目の最後に、その際、手数料の受領先及び金額は、「三者で調整した上で決定することが考えられる」となっていますが、この文章の意味が分かりにくいと思いました。これまで保険仲立人の手数料は保険会社が支払う方式のみでした。そして、本来は顧客が支払う性格を有するということもありますので、支払方法を自由化するのであれば、実務に混乱が生じる懸念もありますので、当事者である3者で、手数料について誰が誰にいくら支払うのかを必ず調整して決定するということが必要ではないかと思います。ですので、そういう方法が考えられるという表現ではなく、むしろ、手数料の受領先や金額は3者で調整し明確化して、誤解が生じないようにする必要があると、そのようにしたほうが実務はうまく回るのではないかと思います。
 
 最後に、20から21ページの「おわりに」のパートになります。この最後のまとめは、ワーキングとしての強いメッセージも込められていて、この基調に賛成いたします。その上で、2点ほど要望を申し上げます。
 
 まず、日本の損害保険市場は寡占市場になっていて、各社の商品の違いも少なかったこと、そういうことが問題としてあったかと思います。この日本の市場の状況は、個人分野の商品においてもやはり同じような面がございますので、ここの「おわりに」の中では、日本の保険市場を発展させて、顧客の利便性を高めていく上で、各保険会社において、社会環境や顧客ニーズの変化を踏まえた多様な商品が開発されて、一層特色のある保険商品が販売されることが重要であるということのメッセージも明確に記したほうがよいのではないかと思います。これは当然そのようなことでないかと考えておりますが、明文でここに入れておいていただいたほうがよいと思いました。
 
 それから第2に、今回の提言は、既に生じた不祥事件を端緒として必要な措置を提言するといった点があるわけですが、ここで掲げている提言を実務に定着させるためには、今後とも当局と関係団体との継続的な対話や連携が重要になると思います。さらに、保険募集をめぐる環境は、プラットフォーマーの台頭やネット取引の増大ということもある中で今後環境が変わってくる可能性もあります。また、欧米においても、いろいろな制度改革がなされて、動きがある分野になっています。
 
 顧客本位や健全な市場を発展させるという観点から、望ましい制度のあり方については今後とも継続的に考えていくべき課題であると言えるものなので、本ワーキングの報告書は、今後のさらなる検討につなげていくことも期待したいと思います。当面は必要な法改正等について提言することが役割かとは思いますが、将来に向けた検討について、さらに続けていくというメッセージも残すことができればよいのではないかと思いました。
 
 以上です。ありがとうございました。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。多くの方々から御発言希望がございますので、先に進ませていただきます。沖野委員からオンラインで御発言の希望がございます。沖野委員、よろしくお願いいたします。
 
【沖野委員】
 ありがとうございます。大変時間のないところを申し訳ございません。前回の続きでもありますので、特定契約比率の保険仲立人に関する規律内容について、今回より整理してくださいましてありがとうございました。ただ、理解が及んでいない論点があるため、むしろ御質問という形で明確化をさせていただきたいと思いました。
 
 1点目は、これ自体は具体的なことですが、スライドの中で、手数料が顧客企業から支払われる契約については、算定から除外するということが書かれております。4ページの一番下に書かれていることと思いますが、算定から除外するというのは、分母と分子両方から契約の金額を除くのか、分子のみから除くのかというのが分からず、意味のある質問なのかどうかというのも分からないのですが、どういうことになるのかというのが1点目です。
 
 2点目は、顧客企業から手数料が受領されるという場合はもう対象としないということになりますと、理論的にはといいますか、扱う契約が全て、つまり100%グループ企業のものであるというときには全く問題ない、保険仲立人である限りは問題ないという、そういうことになるというのでよろしいでしょうかというのが2点目です。
 
 3点目が、代理店については、特定契約比率規制の適用除外の枠組みが方向性として出されていまして、この方向性は適切なことで、実際の実効性をどうするかというのが課題であり続けると思っております。その場合には、能力面と手数料面で、能力面自体は、全体としての体制や能力であるのに対して、手数料というのは、個々の取引や契約において手数料に見合った役務提供がされているのかという点の監督ということになると思うのですが、それで、両方が必要だというのが適用除外の要件ですけれども、この適用除外の枠組みというのは代理店のみであって、保険仲立人にはおよそこのような除外枠組みはないと、そういう理解になるのでしょうかというのが3点目です。
 
 4点目です。保険会社から手数料が払われるという場合に、代理店については、この手数料が実質割引になっていないかということについて、代理店自身が提供する役務提供が適切なものであるかということの確認や評価を保険会社がすると、それがまさに監督機能を発揮するということになっているわけですが、この点は、たとえ保険仲立人として役務提供をする形になる場合でも、保険会社としては、適切に役務提供がされている、その手数料が適切なものであるという評価、ひいては監督ができる、あるいはすることになっていると、そういう前提でよろしいでしょうかというのが4点目です。
 
 5点目が、この特定契約比率規制自体は、現行法も保険仲立人の場合にあるので、それを一定の範囲で維持することが適切であるということですが、そもそも現行法に保険仲立人についてもこの特定契約比率規制があるというその趣旨は、保険仲立人についてはむしろ必要ないのだけれども、代理店の潜脱に使われるということで潜脱防止の観点からそもそも置かれているというそういう規制であるのか、それとも、現行はそういう潜脱防止という観点ではない趣旨であるのかという点です。潜脱防止であれば、引き続き潜脱防止が必要で、潜脱防止でどこまで掛けますかという話になると思いますが、そうではないとすると、その趣旨は勘案しなくていいのかということが気になったものですから、以上、提案の内容をよりよく理解するために質問させていただければと思います。
 
 それから、報告書については、既に御発言、御指摘があった点ですので、繰り返すことになりますが、保険仲立人のところですが、手数料の受領の関係です。この受領の仕方が3パターン出てくるということで、一体どれでするのかというのは「三者で調整することが考えられる」とされておりまして、そして今度は具体的に顧客の保護の観点からは、顧客にこのような情報提供をしっかりしていくことが大事だということが書かれております。
 
 よく分からないと思いましたのは、ここに保険会社がどのように関わってくるのかということです。例えば情報提供がされる必要があるといった、その情報提供関係を保険会社との間で共有するというようなことは想定されないのかどうなのかということ、それから、3者で調整した上で決定することが考えられるとありますのは、望ましいぐらいなのかもしれませんが、それは踏み込み過ぎなのかもしれません。21行目から23行目の話と、「具体的には、」とされる28行目以下のところで、まさに具体的にはどういう発動の仕方になるのか、例えばまずは保険会社との間でいろいろ話をした上で顧客のほうにこういった情報提供をすることになると、そういうことなのかと思いましたが、どうも像が見えないものですから、その辺りの想定がどういうことなのかということが分かるとより理解が進むように思いました。
 
 以上です。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。いくつか御質問をいただきましたけれども、事務局のほうからお願いいたします。
 
【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
 まず、特定契約比率算定対象から除外するときにこの分母と分子の両方から除外するのか、分子のみかという質問ですけれども、これは分子のみから外れるということであります。
 
 2つ目の手数料を顧客企業から受け取るという場合は100%グループとの間でもやってもいいのかということですが、これも理論的にはそうなることが認められるということであります。一般的に特定契約比率規制の趣旨は、代理店としての自立の確保、あとは保険料の割引の防止という、この2つでありますので、この2つは少なくとも確保されていれば、100%でも構わないということになろうかということであります。
 
 この適用除外の枠組みでありますが、これは引き続きの検討課題かなというところは思っております。ただ、少なくとも言えますのは、保険仲立人に関しては代理店よりは、保険仲立人の資格試験もありますが、そういった厳しい要件がすでに課されているということや、保証金の供託も求められているということにも留意する必要はあるところです。
 
 最後の特定契約比率規制が設けられた趣旨ですが、この部分はやはり代理店との並びという形で設けられている規制であるということです。つまり、割引の防止と自立の促進といった観点から設けられているということのようです。
 
【洲崎座長】
 ということでよろしいですか。もう一つ、保険仲立人の役務提供の適切性について、保険会社が判断するのかどうなのかという御質問があったような気がしますけれども、沖野委員いかがでしょうか。
 
【沖野委員】
 ありがとうございました。手数料の適正化の要件のところは、保険会社から手数料が払われる限りは、保険仲立人についても同じように及ぶという想定だと思っておりまして、そうするとここはしっかり、保険仲立人であったとしても保険会社がチェックをするということが前提になっていて、それができるし、やっていると、そういう前提でよろしいのかということです。全体の規律がどのように及んでいるのかということです。
 
【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
 保険会社による業務品質の監督は、代理店とは違って保険仲立人はやはり顧客の立場ということですので、少なくとも保険会社が監督をするという立場には、保険仲立人との関係ではそういう形にはなっておりません。
 
【洲崎座長】
 そうはなっていないのですが、保険会社から手数料報酬を受け取る場合は、適用除外等の判断においても代理店と同じように考えていくということではなかったでしょうか。
 
【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
 そうですね、そこまで踏み込んだ議論はまだできていなかったのですが、コンセプトとしては、やはり一定の体制整備と適切な手数料設定ということだろうと思っております。
 
【洲崎座長】
 そうですね。この枠組みからいくと、保険会社が個々の保険仲立人を通じた募集に関して見ていくということになって、そういう要件を満たしていない保険仲立人についてはもうお付き合いはしないという、そういう判断を保険者がしていくことになるのでしょうか。代理店であれば、委託を取り消してしまうというやり方はありますが、保険仲立人だとそこのところが、直接的な委託関係があるわけではなくて、あくまでも契約を取ってきてくれたらこういう報酬を支払いますよという、そういう形でしか保険者と保険仲立人の関係はないので、代理店の場合の枠組みがそのまま同じ形に使えるかというとそう簡単にはいかないのかもしれないという。これは多分多くの人が見落としていた論点かと思いますが、沖野委員、御指摘いただきまして、どうもありがとうございました。
 
 私が今申し上げたことは、沖野委員の問題意識と大体同じであると理解してよろしいですか。
 
【沖野委員】
 この特定契約比率規制が保険仲立人に及ぶときには、どういうようなことが想定されて、かつ代理店とどこがどう違ってくるのかということが非常に気になったものですから、もう少し整理をして、違うなら違うで、その理由がつくのかということも確認をしておいていただくとよろしいのではないかと思いました。
 
 以上です。
 
【洲崎座長】
 確かに、現在一応ルールとしてはあったとしても、企業内仲立人というものがあまり存在しない状況なので、そのルールを実際適用する必要もこれまでのところはなかったということかなと思いますが、今後そういうケースが出来てくるのであれば、具体的にこの適用除外ルールをどうワークさせるかというのは考えていく必要が出てくるのかもしれません。どうもありがとうございました。
 
 尾﨑審議官からもご発言希望がございます。
 
【尾﨑監督局審議官】
 中出委員、沖野委員からあった話だと思いますが、保険仲立人と保険会社と顧客の3者で調整した上で決定することも考えられるとしている点についてです。保険仲立人が顧客に対して行っているサービスの対価を保険会社が肩代わりをする一方で、保険仲立人が顧客からも取り、両者で分担しますというときには恐らく両者の調整が必要になると思います。他方で、例えば保険仲立人が顧客に対するサービスの対価は顧客から受け取って、保険会社に対するサービスは保険会社から受け取るという形で両者から手数料を受け取るという場合には両者の調整が必ずしも必要にならないかもしれませんので、その具体的な対応に応じて必要になったりならなかったりする可能性もあるのではないかなと考えております。その辺のところをもう少し詰めて考える必要があるなと思いまして、現段階では「考えられる」とした次第でございます。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。先に進んでよろしいですかね。オンラインで柳瀬委員から御発言の希望が出ております。柳瀬委員、よろしくお願いいたします。
 
【柳瀬委員】
 御指名いただきありがとうございます。今回のワーキング・グループの一連の議論を通しまして、企業保険市場の健全な競争環境の実現のためには、保険の利用者である企業自らが自律的・持続的に発展していくためのリスクマネジメント体制・能力の高度化の促進が極めて重要であると強く感じているところです。これまで多くの大企業が、自ら行うべきリスクマネジメントの一部である保険手配について、保険会社や企業内代理店任せにして主体的に関わってこなかったとすれば、そのことも本件問題の大きな根本原因の一つだと考えます。したがいまして、今回のワーキング・グループが、単に損保業界の問題にとどまらず、中長期的な視点から日本企業、日本経済にとって何が重要であるかを見据えた議論であることを強く切望するところです。その上でコメントさせていただきます。
 
 第1に、「企業内代理店のあり方の検討①」、資料1の3ページで指摘されているとおり、確かに専門能力の高い企業内代理店はグループ企業内という企業の業務等に精通できる立場をむしろプラスに活用し、企業の保険リスクマネジメントに貢献できる可能性があるということは理解できます。他方で、専門能力等が高い企業内代理店であったとしても、保険仲介チャネルという立場に起因する問題はどうしても残ります。この点、前回、指摘させていただいたとおりです。また、この点は同じ企業グループ内にある企業本体のリスクマネジャーとは決定的に異なる点であり、ここで改めて強調しておきたいと思います。したがいまして、専門能力が高い企業内代理店が果たし得る保険リスクマネジメント機能を使いこなせる企業側のリスクマネジメント体制・能力の高度化の促進が同時に進展しない限り、やはり企業保険市場の健全な競争環境の実現に向けた問題は根本的には解決しないのではないかと思慮します。
 
 第2に、企業内代理店に関する特定契約比率規制の適用除外、資料1の4から5ページについてですが、この適用除外が潜在的に規制の実効性を弱めてしまう懸念がないかどうかを思慮し、慎重に運用されることを求めます。もちろん制度上は保険会社が代理店に支払う手数料が役務に見合ったものであるかということにはなりますが、保険料の実質的な割引に当たるか否かをどのように判断するかという視点に関しては、やはり最終的には、顧客である企業の立場から見て、企業内代理店が提供する付加価値が適正な対価として見合っているのか否かという点に集約されると考えます。
 
 したがいまして、適用除外の判定に際して、損保会社自身が適正な手数料の設定を行うということはもちろん重要なわけですが、同時に、保険契約を行う契約者企業自身も保険仲介チャネルに対する適正な手数料をモニタリングするということが重要であると考えます。そして、契約者企業自身によるモニタリング能力、モニタリングが実効性を持つためには、企業のリスクマネジメント体制・能力の高度化がやはり前提となりますので、やはりそういったことを強く促進するインセンティブの仕組みを中長期的には実装していくことが、この問題の本質的な解決策になると考えます。
 
 とはいえ、現状、日本企業のリスクマネジメント体制・能力が十分に高いとは言えない可能性がありますので、例えば企業内代理店を通じた保険料の実質的な割引の活用がグループ企業外への資金の流出を軽減できるという点に高い価値を見いだしてしまう企業も存在するかもしれません。こういった場合は、保険会社との力関係によらず、今回の適用除外が規制の実効性を弱めてしまう懸念が残ります。また、企業内代理店と保険会社の力関係によっては、保険会社の営業担当者が企業内代理店からの潜在的なプレッシャーに直面する可能性も想定されます。
 
 したがいまして、適用除外が、制度の建て付け上は保険会社において第一義的に判断されるという点は理解しつつも、やはり企業のリスクマネジメント体制・能力が十分に高くない場合には、顧客である企業の代理人として、当局がその判断基準、指針を明確にすることが求められると考えます。その意味においては、今回適用除外の判定に際して、手数料適正化の要件として、代理店手数料ポイント制度の見直しの着実な進捗という点が明示されるとともに、保険会社へのモニタリングを通じてその実効性を確認するという方向が示された点は評価できるところです。
 
 そうすると、ここで重要な問題・論点として浮上してくるのが、この代理店手数料ポイント制度が業務品質評価の客観性・合理性と連携しているのか否かという点に集約されます。仮に代理店手数料ポイントの計算に当たって、各保険会社が代理店ごとにポイント率を裁量的に変動させることができるならば、企業内代理店と保険会社との力関係によっては、業務品質評価の客観性・合理性ではなく、損保会社の営業政策からの潜在的な影響を受けてしまう可能性も残ります。したがいまして、代理店手数料ポイントに関する各損保会社の評価モデルの妥当性、例えば顧客企業へのリスクコントロールサービスの提供等を通じたサービス品質の向上の実質状況など、必要な評価項目やそのウエートづけについても丁寧な議論とモニタリングが必要ではないかと考えます。この点は、「適用除外の要件をさらに具体化し」という資料1の5ページに示されている技術的作業が極めて重要になると考えます。
 
 さらに、以上のようなモニタリングの視点に加えまして、インセンティブ設計の観点からも、この業務品質の評価の客観性・合理性を議論できるかもしれないという点を述べておきたいと思います。例えば、特定契約に係る手数料率については低い水準に設定するというような施策の検討です。冒頭申し上げましたとおり、専門能力の高い企業内代理店はグループ企業内という企業の業務等に精通できる立場をむしろプラスに活用し、企業の保険リスクマネジメントに貢献できる可能性があるがゆえに、今回、適用除外の論点が設定されたものと理解しています。そうであるならば、特定契約に係る手数料率を低い水準に設定したとしても、グループ内の経営資源に低コストでアクセス可能という企業内代理店の立場に起因する競争優位性によって、一定の収益性は確保できるかもしれません。この点は、企業外の保険仲介チャネルとは大きく異なる点だと思います。
 
 したがいまして、特定契約に係る手数料率が低い水準に設定された場合であったとしても、自らのサービス価値に対して自信がある企業内代理店であれば、特定契約としての取引を求めるインセンティブが引き続き残る一方で、自信がない企業内代理店の場合は、その収益性の低さから特定契約としての取引から自ら撤退していく可能性すらあります。したがいまして、特定契約に係る手数料率の設定のあり方の検討を通じて企業内代理店の業務品質を識別するという、言わば自己選択、セルフセレクションのメカニズムの可能性についても議論する価値はあるかもしれません。
 
 第3に、保険仲立人に対する特定契約比率規制の適用、資料1の6から7ページについてです。本来であれば保険仲立人の活用促進の観点から、できる限り規制緩和の対象にしたいところですが、やはり保険の利用者である企業のリスクマネジメント体制・能力が現状十分でない状況のもとでは、保険仲立人についても、企業内代理店同様、保険仲介者としての立場に起因する問題が残るため、現状、規制の適用対象とせざるを得ないと考えます。また、顧客から手数料を受け取る保険契約について特定契約比率の算定対象から除外という点に関しても、確かに形式上は保険料の実質的割引には該当しないように見えますが、利用者である企業自身の保険購買の全社的な意義についての理解が不十分であるような場合、例えば保険料支払いの実質的な社外流出を避けたいという動機のみが強く存在するような場合には、やはり規制の実効性を低下させるような事象が発生するかもしれません。もちろん保険仲立人が企業のリスクマネジメント全般に関わる請負業務を保険料の多寡にかかわらない適正な対価で受領するということに収益上のインセンティブを持つということが十分に確認されるのであれば、保険仲介者としての立場に起因するこの問題もおおむね解消されると思います。
 
 結局この論点におきましても、企業のリスクマネジメント体制・能力の高度化が促進されることが本質的に重要です。逆に言えば、例えば将来的に特定被保険者のようなプロ契約者が制度化されるような状況が実現した場合には、企業内代理店、ブローカーにかかわらず、そういったプロ契約者による取引に限っては、そもそも特定契約比率規制は全て適用除外にしてもよいのかもしれません。
 
 第4に、報告書に関して、火災保険の赤字構造の改善についてコメントさせていただきます。こちら、今回の御提案では、前回も述べましたが、当局のモニタリングの強化・高度化が盛り込まれているものの、既に損保会社は大企業向けの火災保険の引受け縮小や条件改善を急速に進めているという話もあり、当局の関与によらずとも、基本的には市場の論理によって赤字の改善が進展する可能性があります。したがいまして、監督資源の制約がある中で当局によるモニタリングを行うことについては、社会コストの観点からバランスを持った議論も必要かと思います。そこで、今回の御提案に一定賛成しつつも、今後数年間の経過を見ながら、必要に応じてモニタリングの程度やその要否についても再評価していくというプロセスも必要ではないかと思います。
 
 最後に、報告書案18ページにございます参考純率、標準約款の作成拡大を通じた中小損保の新規参入促進についても若干のコメントをさせていただきます。現在、対象保険種目には賠償責任保険やサイバー保険などの比較的新しい保険種目は含まれていないため、中小規模の既存保険会社にとって新規引受けの参入障壁となっているのではないかという問題意識がこの論点の趣旨にあったかと理解しております。
 
 他方で、グローバル大企業やグローバルな保険会社や大手の国内損保の子会社を除く、いわゆるその他の中小の既存の中小損保は、規模は大きくないが極めて専門性が高い、いわゆるブティック型ではないと思います。そうであるならば、仮に認可申請が容易になったとしても、経営資源の制約上、大企業の「非マスリスク」の引受けに参入する可能性は十分高いとは言えません。その点において、少なくとも短期的な規制改革の実効性には疑問が残ります。その一方で、企業保険市場の活性化に向けた中長的な「制度というインフラに対する投資」という観点からは、御提案の方向性に賛同します。しかしながら、今後ブティック型の中小損保の市場参入や、もっと重要なことですが、そうしたブティック型を使いこなせるだけのリスクマネジメント体制と能力が整備されたプロ契約者の育成、そしてそのインセンティブづけというものも、今回の御提案の趣旨に鑑みると、同時に必要な重要な視点かと思慮します。
 
 以上、企業保険市場の健全な競争環境の実現を通じて、企業自らのリスクマネジメント体制・能力の高度化が促進されることを切に望むわけですが、これにより、日本企業や日本経済の足腰が強化され、グローバルマーケットにおける競争環境がますます激化する中で、日本企業が自律的・持続的に発展していくことが期待されます。その点におきましては、今回の報告書案の12ページ脚注19にある、保険購買をはじめとするリスクファイナンスに関する専門的知識を有するリスクマネジャーを企業内に増やしという一連の記述は、場合によっては今回のメインの範囲ではないのかもしれませんが、メッセージとして本文に記載されるべき重要事項であると考えます。
 
 長くなりましたが、貴重な発言の機会をいただき、ありがとうございました。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、会場におられます大村委員から御発言の希望がございます。よろしくお願いいたします。
 
【大村委員】
 御指名いただきありがとうございます。私からは、まず、企業内代理店のあり方についてコメントをさせていただきたいと思います。まず、適用除外の要件を設けるに際しては、判断主体が誰なのか、また、その判断主体がどのような基準に基づいて判断するのかという2点が問題となりますが、判断主体については、従前、特定契約比率の管理を保険会社が行ってきており、他の第三者的な機関や当局がそれを請け負うことは現実的ではないことから、保険会社が判断主体になることに違和感はございません。
 
 ただし、保険会社が判断主体となるのであれば、前回のワーキングでも申し上げましたが、企業内代理店と保険会社間のパワーバランスは構造的な問題であり、契約者としての顔を企業内代理店が持っている限りは、社員代行や出向の引揚げ、便宜供与の禁止といったもろもろの施策を打ったとしても変わるものではありませんので、恣意性が入る余地がないような客観的な基準を設ける必要があるのではないかと考えております。
 
 その上で、判断基準について具体的にどうすべきかという点に移りますと、今回は、契約ベースではなく、代理店ベースで除外をするということですので、特定契約比率の趣旨に遡って、自立と、実質的な割引等の防止という2点についてきちんと手当てがされていることが必要になるかと思われます。そのため、かかる2点を判断基準の大枠として掲げることについて何ら違和感はございません。
 
 さらに、自立という点については大きく2つの意味があり、1点目は、こちらにも記載がございますが、通常の保険代理店として十分な実務能力を有しているという意味で一定の体制整備の要件を求めていくことになる自立、それから、2点目は、グループからの自立になります。
 
 一点目の体制整備義務に関しては、企業内代理店だからといって上乗せを求める合理性はないのではないかと思っております。今行われている社員代行であったり、出向であったり、便宜供与というものが廃止される前提ではございますが、その上で、通常の代理店と同じような形で体制が整備されているのであれば、この点については特段問題はないものと考えます。
 
 他方で、二点目のグループからの自立をどうやって見ていくのかという点に関しては、ここは従前、特定契約比率規制という形で担保されていたと理解しておりますが、比率ですとグループが大きい等の場合に、外部からの獲得は行っており十分な実務能力がある代理店であっても、今回厳格化が予定されている規制に抵触してしまうという問題があると認識しており、そうであるとすると、比率ではなく絶対額で見ていくということも検討の余地があるのではないかと思っております。
 
 その場合には、おそらく企業内代理店の規模によって異なる基準を設ける必要はあり、例えば、10人規模の代理店であれば、外部から獲得した保険の保険料総額が数億円を超えていること、100人規模の代理店であれば、外部から獲得した保険の保険料総額が数十億円を超えていることを求めるといった形で絶対的な基準を設け、それによってグループからの自立を見ていくということは、方法としてはあり得るのではないかと思っております。
 
 他方で、そのような基準を設けることは難しいということであれば、次善の手段として、先程、中出委員も言及されておりましたが、法人保険を取り扱う場合には、保険仲立人と似たような能力が求められるわけですので、そこで求められる資格を取得している人間が内部にいることをもって、今時点で自立をしていなかったとしても自立する能力はある、潜在的な自立は確保できているとみなすということもあり得るのではないかと思われます。
 
 適用除外要件の中で難しいのは、やはり、実質的な割引等の防止の趣旨に反するかどうかをどうやって判断していくかという点かと思われます。この点については、事務局資料の手数料の適正化の項目で代理店手数料ポイント制度の見直しを着実に進めるということが1点目として挙げられているのですが、かかる記載については少々違和感を覚えております。と申しますのも、有識者会議の報告書、有識者会議の中では、一般代理店における体制整備を推し進めるためには、代理店手数料ポイント制度の業務品質に関する割合を高めるべきだといった文脈で代理店手数料ポイント制度の見直しが語られており、必ずしも手数料自体の適正化の文脈で語られていたものではございません。もちろん手数料の適正化のためには代理店ポイント制度の見直しは必要なのですが、そもそも代理店に支払われる手数料というのは標準手数料に代理店手数料ポイントを掛け合わせて算出されるものでございますが、特別契約比率規制の実質的な割引等の防止という観点からは、標準手数料を適正な水準に設定することこそが求められるのではないかと考えております。
 
 標準手数料に関しては、適用除外要件の充足を主張していくか否かにかかわらず、全ての企業内代理店において現状は改められてしかるべきではないかと考えております。例外的なケースは出てきているものの、現状は、原則、保険料の多寡にかかわらず、プロラタの形で保険料に一定の料率を掛け合わせて算出された額が代理店手数料として支払われていると理解しております。しかしながら、代理店手数料というのは委託している業務に応じたものであるべきであり、保険料の多寡にかかわらず常にプロラタで支払われるというのは、対価性のある手数料の設定としては不適当ではないかと考えております。本来的には、手数料水準がイールドカーブを描くように、保険料が上がるに従って掛け合わせる料率は下がるように設定がなされるべきであり、それは特に、実質的な保険料の割引等が懸念される企業内代理店において徹底されるべきではないかと考えております。
 
 その上で、適用除外を認めるためにどのような要件を設けるべきかということが、上乗せの議論としてなされるべきではないかと思われますが、かかる要件の設定は実務的には非常に難しいものと思われます。事務コストを全ての保険種別ごとに出し、それをベースに設定していくということが方法としては考えられますが、実務上、どこまでできるのか私自身もまだよく分かっていないところでございます。
 
 では、適正な水準の指標となるようなものが全くないかというと、一つ以下のような考えはあり得るのではないかと思っているのが、現在は特定契約の保有が50%までは認められており、今回、適用除外の要件を充足した場合には100%特定契約を扱うという代理店も認められることになるのだとすると、その前提の下で、なお規制強化の方向に持っていくためには、少なくとも特定契約の手数料は通常の手数料の2分の1以下に収めておく必要があり、さもなければ規制強化を目的とした改正が結果として規制緩和になっていたと評価される可能性があるのではないかと思っております。勿論、2分の1というのは上限であって、それよりも下げられるのであれば下げたほうが良いのだと思われますし、また、上記はいろいろな前提や条件を必要とする一方で、一定の事実を矮小化しているため、諸々ご指摘が入りうるかとは思われますが、一つの目線として、少なくとも通常の手数料の2分の1程度に特定契約の手数料を抑えるということは考えられるようには思われ、さらに検討を進めた上で、実費ベースプラスアルファという形に最終的な手数料水準を持っていくことが理想なのではないかと思っております。
 
 こちらについては、実務的なレベルでの議論が今後進められるものと理解しており、その方向性に違和感はございません。ただし、保険会社にとって、代理店に手数料の引き下げを要望していくというのは相当難しいことではございますので、やはり行政のほうでイニシアチブを取っていただかないとうまく機能しないのではないかと懸念しております。
 
 さらに、最終的に実質的な割引等の防止の趣旨に反しない手数料体系・水準とは何かをきちんと詰められればよいのですが、万一詰められなかった場合であったり、また、規制というのは、あまりにも複雑になってしまうと実務の管理コストがかかりますし、かつ潜脱が横行するリスクを抱えることになりますので、過度に複雑な規制になってしまうような場合には、本来であれば特定契約比率の趣旨に応える2つの枠組みが理想的ではあるのですが、もう少し単純化した形での規制を設定するということでも良いのではないかとは思っております。
 
 具体的には、これも弊害がいろいろあるのは認識しているのですが、契約ベースで適用除外要件を設ける形であったり、先ほど外部から調達した保険契約にかかる保険料総額に絶対基準を設けるという案を出しましたが、それを自立の要件としてではなく、①、②を合わせた全体の要件として設けることで、非常にシンプルな規制とすることもあり得るのではないかと思っております。そのため、現在の方向性について違和感はないものの、必ずしも現在の枠組みにこだわる必要はなく、もろもろ検討した結果、やはり難しいということであれば、枠組み自体を変えることも検討の余地があるのではないかと考えております。以上が企業内代理店に関するコメントになります。
 
 次に、ワーキング・グループの報告書に移らせていただきます。まず、事務局の皆様、短期間の間にこのような形にまとめていただき、誠にありがとうございました。基本的に、全体を通して丁寧に各委員のコメントを拾っていただいていると認識しておりますが、特に気になった点、または念押しをさせていただきたい点を中心に、何点かコメントをさせていただきます。
 
 まず、顧客本位の業務運営のところですが、ここは大規模乗合代理店に対して上乗せの規制をかけること、また、その内容については基本的には違和感はございません。ただ今回、かなり限定した形での法律の規制にはなりますので、それ以外の代理店についても監督指針等でグラデーションをかける形で、規模に応じた体制整備を求めていくことに加え、必要に応じて当局が機動的にモニタリングを行うことは大前提だと思っており、その点は、できれば明記いただいたほうが良いのかなと思われますし、明記しない場合であっても是非徹底いただきたいと考えております。
 
 次に、兼業代理店における利益相反管理体制の整備については、私自身はもともと法律レベルで規制をかける形がよいのではないかと思っておりました。と申しますのも、国際的に見て、保険代理店が保険金請求事業を兼業することが認められている例というのは、多くないと認識しておりまして、そういった中で、顧客の利便性も踏まえて兼業を認めるのであれば、それが包含するリスクについては、法令レベルできちんと手当てをしていることが求められるのではないかと思われたためです。
 
 しかしながら、この機会に顧客本位の業務運営に関する原則を広めて、そこを徹底いただくということも手法としてはあり得るのかなと思われますので、現在の方向性に異存はないのですが、かかる方法、施策をとられるのであれば、できる限り原則が採択されるように尽力いただきたいなと思っております。例えば、現状、原則の中には、必ずしも損保代理店にはなじまないものも含まれており、それゆえに採択が進まないといった側面もあるやに聞いておりますので、場合によっては損保版の顧客本位の原則をつくることを含め、原則を広めるための仕組みづくりを検討いただけるとよいのではないかと思っております。
 
 次に、比較推奨販売の確保についてのコメントになります。こちらについては、改正金サ法を踏まえていわゆるハ方式、代理店都合による絞り込みが認められなくなったことは大きな一歩であり、非常に重要な改正の一つであると考えております。今後重要になってくるのは、ハ方式が実質的に残置していると解されることがないような状況をいかにつくっていくかということでございまして、その点からは、前回も申し上げたことではございますが、監督指針及びパブコメできちんと明確化を図っていただきたいと思っております。
 
 そのため、現在、便宜供与のところ、P26ページのところの1行目に、今後、監督指針等において、可能な限り明確化が図られる必要があるという表現がございますが、ここはぜひ、比較推奨販売にも入れていただきたいなと思っております。私自身は、顧客の最善の利益を踏まえた販売というのは、初期段階で顧客の意向が顕在化していなかったとしても、それを顕在化させるための提案等をきちんと行うこと、次に、それでも顧客の意向が顕在化せずに代理店側で絞り込みを行うときは、その絞り込み理由は顧客の最善の利益に資するものであること、最後に顧客の最善の利益は主観的なものではなくて客観的なものであって、一定程度、事実に基づく証明が可能なものであることの3点は非常に重要だと思っております。具体的な点は、今後議論が進んでいくかと思われますが、何がよくて何が駄目なのかということは明確に示していただきたいなと思っております。
 
 また、比較推奨販売に関して、注11にコメントさせていただきたいのですが、今回直近の事例としては、比較推奨販売が手数料の多寡ではなく、より直接的な便宜供与や、広告費等の上乗せによってゆがめられていたものが見受けられたと理解しております。それゆえに今回のワーキングにおいては、手数料の開示というところにあまり議論が及ばなかったのではないかと思われますが、今回、便宜供与は駄目だということが示され、それに対するモニタリングが徹底されるようになった場合、先祖返りではないですが、また手数料の多寡によって比較推奨販売がゆがめられる可能性というのは相当程度あるのではないかと懸念しております。
 
 そのため、手数料の開示については、今回のワーキングでは先送りとするとしても、今後もきちんと手数料と比較推奨販売の関係を注視していただき、必要に応じて、あらためて開示の要否を検討する必要があるのではないかと思っております。
 
 それから、健全な競争環境の実現の便宜供与の禁止の項目に移ります。保険会社からの過度な便宜供与が禁止されることは、今回のその他の規制の大前提になっていると思われますので、保険会社においては真摯に受け止めていただき、着実に禁止を徹底いただくとともに、当局もそれが確保されるようにモニタリングを徹底いただきたいと思っております。
 
 そして、代理店においては、従前受けてきた便宜供与が決して当然だとは思わず、それは例外的な対応であり不適切なものだったということをきちんと認識いただきたいなと思っております。
 
 兼業代理店においては、別途本業があり、そこに注力しているがゆえに、保険販売に関する体制整備等がお粗末になる事例が多いのではないかと推察しておりますが、兼業であっても専業であっても同じく保険代理店であり、金融機関であるという自覚を持っていただきたいなと思っております。そして、そこで取り扱う保険の公共性を踏まえると、きちんと自らが体制整備をするのは大前提であって、それができないのに保険を取り扱うということは認められるべきではないと考えております。
 
 その上で、健全な競争環境という観点からは中出委員からも先ほどコメントがございましたが、私自身も商品の差別化が進むことが非常に重要だと考えております。商品の差別化が進んでいない、似たような商品が並んでいることが、代理店側が自らの義務を履行しないことの理由にはならないと思っておりますが、他方で似通っているからこそ、便宜供与がなされやすい、また、似通っているからこそ比較推奨を徹底しにくいといった側面はあるかと思われますので、今まで便宜供与に投資してきた人材やモノやカネが余剰の形で各社に発生するのであれば、それらを活用する形で保険商品の開発に注力いただきたいと考えております。
 
 以上です。すみません、長くなりました。
 
【洲崎座長】
 ありがとうございました。
 
 それでは続きまして、オンラインで片山委員から御発言希望がございます。
 
【片山委員】
 片山です。御発言の機会いただきましてありがとうございます。私からは企業内代理店のあり方について2点と、報告書について1点意見を申し上げさせていただきたいと思います。
 
 まず、企業内代理店についてですが、特定契約比率の経過措置の規制の見直しの準備期間ですが、前回もお話しさせていただきましたが大手4社の委託先だけでも約1万社あり、改めて、こうした代理店で働く労働者の雇用に配慮する必要があると考えており、移行のための準備期間ですが、少なくとも3年を下回らないことが必要だと思いますのでよろしくお願いしたいと思います。
 
 次に、特定契約比率規制の適用除外要件の該当性について、保険会社が判断するという点についてです。保険会社が判断するとなると、代理店から保険会社に圧力がかかる懸念があることや、保険会社間での不適切な競争を引き起しかねないと思われるということがあり、除外要件の判断は、中立的な第三者が判断することが望ましいと考えます。また、除外要件については、判断にばらつきが生じないよう、明確な要件が設けられるべきとも考えますのでよろしくお願いします。
 
 次に報告書についてですが、報告書の12ページ、これは、ほかの委員からも御指摘がありましたが、保険仲立人の媒介手数料の受領方法についてです。手数料の受領先及び金額は保険仲立人、保険会社、顧客の三者で調整するとの記載がありますが、顧客に必要以上の支出を強いることがないよう、手数料の支払いについてはルールを策定する必要があると考えますので、よろしくお願いしたいと思います。
 
 私からは以上です。ありがとうございます。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは続きまして、会場の上杉委員、お願いいたします。
 
【上杉委員】
 発言の機会をありがとうございます。上杉です。まず、企業内代理店のあり方についての検討で1点ございます。5ページ目のところですが、一定の体制整備の要件のところで示していただいた点につきまして、保険会社において判断されるということで、これが恣意的に判断されることのないようにと考えているのですが、実務能力を確認できる要件について保険募集人の各種資格の保有状況等が示されておりますが、これは、現状の資格要件であるとかなり取得しやすい資格試験と聞いておりますので、適正性を図ることが難しいのではないかなと思いますので、新たな制度の導入ということも視野に入れて検討していただければと思います。
 
 あと、その前の業務品質についての判断について。こちらの業務品質というのは、第三者評価を受けることだけでなく、自社での業務品質の評価も入ってくると思うのですが、そうしますと、この第三者評価を受けたときと、そうでない業務品質で出したときの基準に差を付けたりすることなどは想定されるのでしょうか。これは、すいません、現場を知らない者としての発言になりますが、評価基準としての項目が既に業界の中で定着しているのであれば、そこでチェックすればいいと思うのですけれども、これから第三者評価制度が運用開始される状況のなかで、外部の第三者評価制度を絶対受けに行ったほうがポイントが高くなるのか、それとも受けずとも同じになるのかというところは、どういったところを想定しているのかなというところが気になりました。
 
 報告書の点については2点ほどです。まず、1点が比較推奨の部分についてなんですけれども、比較推奨販売のところで7ページ目の31行目、32行目のところを拝見しますと、まず、顧客の意向に沿って絞り込む、それで絞り込みに当たってはという形で書かれているのですが、消費者を想定しますと、意向は全くないわけではないのですが、意向が明確になっていないことも想定されます。今回の報告書では、はじめからはっきりとした意向を持っている人を想定しているように思われますが、そうではない、意向が明確でないような場合については、その意向をどのようにして酌み取ったのかというようなところもきちんと、代理店側としては、こういう形で情報収集して、判定しましたというところの記録を求めるような形が今後できるといいと思いました。
 
 あと、自主規制機関のところの関係で今回、自主規制機関を一気につくるということになると難しいと思うのですが、第三者評価制度がこれからできるといったところで、生保業界の第三者評価制度についてと今回の損保の制度の大きな違いとしては、消費者からの不適切な通報窓口をあえてつくったところに私はあると思いました。そうすると消費者から窓口をつくって情報を寄せるところで、まずは必ずフィードバックできるようなことが仕組みとしてできるといいかなと思いました。
 
 なぜなら、消費者が通報をする場合、こうした行為が問題だから正してくれというよりかは、今、自分がすごく困っている、だからそれを解決してくれという思いで情報提供すると思います。しかし、そこに対して何のレスポンスもない場合、結局、あそこに言ってもしようがないと感じる消費者が出てしまい、結果的に窓口があっても活用してもらえなくなってしまうのでは惜しい気がします。
 
 なお、情報の共有関係の点で考えますと、現状でも金融庁でも相談窓口みたいな形でありますが、情報が、少し点在化してしまっているのではないかなと思います。なので、例えば、国民生活センターや地方自治体の相談窓口がPIO-NETでつながっているみたいな形で、情報共有をしていくことを検討していただきたいです。そして、情報の集約をするには、将来的には自主規制機関として権限がある方が、集約された情報を生かすことができると個人的には考えておりますので、そういった方面でも自主規制機関として将来的にできるように検討していただけるとありがたいと思いました。
 
 以上です。ありがとうございます。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。第三者評価機関での業務品質に関する判断というものをどういうふうに出すのかということについて、御質問があったかと思います。
 
【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
 日本損害保険協会では今、第三者評価制度の具体的な仕組みを検討中ということです。この中では、一定の業務品質の評価基準のようなものも作られていくという話も聞いております。現在、損保各社ごとに業務品質評価というのは統一されたものではないということではありますが、第三者評価の枠組みの下で一定の基準が作られるということであれば、各社も、それも参考にしながら自社の評価基準みたいなものを改めて見直していく、そういったことも期待されるのではないかと考えております。
 
【洲崎座長】
 よろしゅうございますか。どうもありがとうございました。
 
 それでは続きまして、会場におられます小畑委員、お願いいたします。
 
【小畑委員】
 ありがとうございます。まずは今回、資料1、2で、事務局でお取りまとめいただいた報告書の方向について、基本的に賛成するところでございます。この方向でぜひ取りまとめていただければと考えております。事務方の皆様の御尽力に感謝申し上げます。
 
 その上で、今後さらに詰めていくべきところ、あるいは若干の修文したほうが良いと思われるところについて少し申し上げたいと思います。まず、資料1の4ページの企業内代理店のあり方の検討の箇所でございますが、特定契約比率規制の適用除外の枠組みを設けていただくとともに、計算方法の簡素化にも御配慮いただいていることについては非常に評価しておるところでございます。もっとも、特定契約比率規制の適用除外の中で、先ほど来、御意見いろいろ出ておりますが、保険会社において一義的には判断する仕組みについては、各保険会社で判断にばらつきが生じると、代理店側としても非常に困惑することとなります。判断がばらつかないように金融庁で今後、規定の基準の明確化、並びに基準として設定した上で、さらにガイドライン等で明確化を図るようなことをしていただきたいと思っております。また、その上で各社がどう判断したかついては、適切なモニタリングをしていただきたいと思います。
 
 また、この適用除外基準の設定に当たって、保険代理店としての十分な実務能力を有しているかどうかについては、例えば、先ほども御意見ありましたが外部取引の手数料収入額が非常に大きいことや、現行基準においても大規模乗合代理店に当てはまるような多額の外部取引を行っているということであれば、十分能力は現時点でもあるのではないかとは考えられます。そのようなメルクマールも御勘案いただく余地はあるのではないかなと思っております。
 
 それから、同じく4ページで保険仲立人への特定契約比率の適用のところで、顧客のみから手数料を受領する場合には保険料の割引等に該当するおそれはないということで、それは確かにそのとおりですが、ここで算定対象から除外すると同じグループ内で例えば代理店と保険仲立人があった場合、代理店側には規制がかかっていて、保険仲立人には規律がその分だけ緩いということになりますと、競争条件に差が出てしまい、問題が生じるおそれがあると考えております。もう少し慎重に御検討いただければありがたいと考えております。
 
 次に、資料2の報告書(案)でございます。こちらにつきましては、まず5ページ目に特定大規模乗合保険募集人を設定していくという方向性が記載されております。全くそのとおりだと考えておりますが、その要件設定について、同じページの12行目から15行目辺りに書いております。手数料収入額を定量的基準として用いることが適切であるという方向は全く賛同するところですけれども、あまりこれを絞り込み過ぎると、これまでに幾つか問題を起こしたような乗合保険募集人が外れてしまうようなことにはなるため、そうならないよう適切な基準の設定をお願いできればと考えております。
 
 それから次に、12ページの保険仲立人の活用促進の箇所の11行目から13行目辺りのところで、注の19というのが下に引っ張られておりまして、ここで企業のリスクマネジメント体制及び能力を向上させていくことが保険仲立人の活用にもつながると書いております。まさに先ほども委員の方から御指摘ありましたが、この企業側・契約者側のリスクマネジメント体制能力の向上が保険の取扱いにおける健全化にも非常に重要なファクターとなることは間違いございません。注というよりは、むしろ本文に入れ込んでいただいてもいいのかなと思います。
 
 それから同じ12ページの15行目以下の16行目の①、媒介手数料の受領方法の見直しのところですが、これはこのワーキングで決めることではないかもしれませんが、受領方法がこのように多様化いたしますと、支払う契約者側としては手数料として支払う場合には消費税が乗っかって、保険料として支払う場合には消費税が乗っからないというのも何か妙な話だとも思います。この辺の消費税の取扱いについて統一的な取扱いを明確化していただけるとありがたいと思っております。
 
 私からは以上でございます。ありがとうございます。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは続きまして、会場におられます神作委員、お願いいたします。
 
【神作委員】
 御指名ありがとうございます。神作でございます。企業内代理店について、私、前回欠席をしてしまいましたので感想を申し上げさせていただきます。特定契約比率規制の経過措置の撤廃と例外措置という方向性ですが、企業内代理店は非常に多種多様で例外を認めるべき代理店も存在しているという結果が、実態調査をしていただいたおかげで判明したわけですが、実態調査に照らせば、例外措置も設けるという方向性は適切だと思います。
 
 また、例外措置が認められる2つの要件につきましても、そもそも特定契約比率規制の趣旨に照らして、その目的にのっとったものであり、基本的な方向には賛成いたします。しかし多くの委員の方が指摘されましたように、この2番目の手数料の適正化については、特に損保会社が代理店の手数料の適正化について評価するとされている点については、若干問題があるようにも思います。
 
 本来、保険代理店の業務品質を最終的に評価すべきは最善の利益を考慮されるべきものとされている顧客であり、抽象的にいえば市場ではないかと思われます。しかし企業内代理店の場合には顧客と代理店との間に非常に密接な利害関係があるため、顧客である当該の企業に評価を委ねることはできず、代理店と委託関係にある損保会社が評価するほかないということなのではないかと理解いたしました。
 
 しかし、損保会社と代理店との間にも力関係や、あるいは逆に共通の利害関係など様々な関係があるほか、競争上も、様々な誘因や圧力が生じ得ると推察され、損保会社が客観的かつ適正な評価を行うことは容易ではなく、ややもすると緩やかな判断に傾く可能性があるのではないかと懸念いたします。アイデアがなくて恐縮なのですが、具体的な要件の設定に当たっては、さらなる検討と、それから運用に当たっては実務上の工夫をお願いしたいと思います。
 
 また、保険仲立人について特定契約比率規制の対象にすることについては、これは私も十分に理解はしておらず推測の域を出ないのですが、企業内仲立人と企業内代理店というのは、ほとんど同じようなことをすることになるのではないかと推察いたします。もしそうだとすると、同等の機能を果たすものには同等の規制を適用すべきだという考え方から、企業内仲立人についても特定比率規制の適用対象にすることに賛成いたします。
 
 もっとも、これも多くの委員の方から御指摘があった点だと思いますが、顧客から手数料を受け取る場合には保険料の割引等に該当するおそれがないという理由で、特定契約比率の算定対象から除外することには合理性が乏しいように思われます。と申しますのは、先ほど来、申し上げているように企業内仲立人と顧客企業との間には企業内代理店の場合と同様、人的または資本的な強固な利害関係があり、その間で支払われる手数料の設定は独立当事者間の取引の場合とは異なって操作可能性が極めて高いと思われるからです。
 
 次に、報告書(案)について何点か感想を申し上げさせていただきます。全体的には、本ワーキング・グループの多数の意見を集約していただいており、私もその方向性には異存ございません。「Ⅱ.1.大規模乗合代理店に対する体制整備の強化等」についてでございますが、このような見直しが行われている経緯であります、一部の保険代理店が保険金を不正に請求し、受領したり、あるいは保険募集に当たって重要事項の説明を行っていないなどの違法、または不適切な行為があったということは事実であり、独立した金融事業者である保険代理店自身のコンプライアンス体制や内部統制体制の整備と、その実効性の検証確保というのが必要であり、報告書はまさにそのことを指摘されており、賛成いたします。
 
 ただ1点、報告書で提言されているこのような要請というのは、一定以上の規模がある独立した金融事業者である保険代理店には当然要求されてもおかしくないような内容であって、先ほど小畑委員からも御発言ありましたが、大規模乗合代理店の範囲があまり狭くなることがないような設定をしていただければありがたいと思います。
 
 また、報告書(案)6ページにおいて、顧客本位の業務運営に関する原則について触れていただき、特に保険金関連事業を兼業する保険代理店については、この考え方、特に利益相反の考え方に従って自主的な取組を促すことについて記載していただいた点は大変ありがたいと思います。保険金関連事業を兼業する場合には、外形的にも典型的に利益相反が認められますので、その点について十分にコントロールしていただくことが重要であると思います。
 
 ただし、ちょっと懸念しましたのは、この文書が反対解釈されて、それ以外の保険代理店は、特に顧客本位の業務運営の原則にサインアップしなくてもよいという読まれ方をすることです。できれば、全金融事業者が顧客本位の業務運営の原則に従うことが望ましいと思いますので、そのようなニュアンスを出していただくように記載していただければと思いました。
 
 それから次に、乗合代理店の比較推奨についてでございますが、これについても基本的に賛成でございます。ただ、先ほど上杉委員からも御発言があったと思いますが、顧客の意向に沿ったというのはもちろん大前提ではあると思うのですが、保険商品の選別推奨については顧客の客観的な状況等に照らして、顧客の最善の利益にかなうことが求められているのではないかと思います。そして実務で実効性確保のための体制を整備するに当たっても、なぜ、この商品を選別し、推奨することが顧客の最善の利益にかなうのかということをきちんとその理由を文書の形にして記録し、保存することが望ましいと思います。また、そのような記録の真正性を確保するために顧客にも推奨の理由のエッセンスを書面や電子データで伝えるような、そういった方向での体制整備というのが、これは一例にすぎませんが、定着していくといいかなと思いました。
 
 次に、比較推奨販売に関し、報告書(案)は、乗合代理店と保険会社との関係を示すような情報を顧客に対し、提供することということを示唆していただいており、そこに注の11が付されていて、手数料開示について引き続き検討課題とすべきであると記載いただいております。手数料の開示を求める意見は、本ワーキング・グループでは少数の意見だったと認識しておりますが、手数料開示というのが重要であり、将来的には検討の課題、対象になると書いていただいた点については感謝申し上げます。
 
 なお、保険仲立人が受け取る報酬については、報告書(案)にあるように顧客に対しては、保険仲立人が、誰から受け取るかとか、その額について説明すべきだと思われますが、保険会社との関係でも、保険会社と保険仲立人との間で透明で合理的な商取引が形成されていくためには、手数料関係について明らかになっていることが望ましいのではないかと考えております。
 
 最後に、特別利益の提供禁止について申し上げます。保険会社または保険募集人等が保険募集等に関し、保険料の割引、割戻し、その他の特別な利益の提供を保険契約者等に行うことは禁止されており、特別利益の意義の拡大、それから受け手の範囲の拡大の方向性については、特に受け手をグループ企業に拡大することによって今般の不祥事の解決に一部資することがあるというのは確かであり、賛成いたします。
 
 もっとも、この特別利益の禁止というのは、禁止規定でございますので、他方で公正な条件の取引であるなど合理的な商慣行と考えることができるような、そういった取引まで禁圧することにならないよう、過剰規制とならないよう留意していただきたいと思います。
 
 他方、もし、このような形で特別利益の禁止に該当する行為が制限的になると、グレーゾーンが生じてくるという問題意識を持っています。すなわち、禁止されるべき特別利益の提供には該当しないけれども、不適切あるいは不透明な便益の供与がなされており、その場合には、それをコントロールするための適切なツールが必要となるように思われます。健全で透明性の高い、しかし商業上、合理的な取組みまで制約されることがないような、特別利益の提供禁止以外の規制や監督の枠組みが、将来的な課題にはなると思います。手数料の開示、あるいは顧客の最善の利益にそぐわないような行動を代理店が取るような誘因になり得る、こういった経済的利益の供与については開示をし、透明性を確保することが、特別利益の提供禁止の実効性を高めるとともに、開示によって、未然に怪しいと申しますか、不健全な行為を抑制するという効果もあるのではないかと考えております。
 
 私からは以上です。どうもありがとうございました。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは続きまして、オンラインで小林委員から御発言の希望がございます。
 
【小林委員】
 小林です。私から、まず、企業内代理店のあり方についてですが、特定契約比率規制の経過措置の撤廃については賛同しますが、一方で、専門能力の高い保険代理店が存在することを考えると、適用除外を認めることは妥当と考えます。適用除外の判断を保険会社に委ねるのであれば、客観性を担保するためにも、今後の具体的な要件の確定に当たっては定性的な要件のみならず、ある程度、定量的な要件も明示していく必要があると思われます。
 
 他方で、保険仲立人への特定契約比率規制の適用は、私は不要と考えます。特定契約比率規制の適用を行わないと、従来の業務で企業内代理店から保険仲立人への潜脱の可能性があるということですが、前回の議論でも申し上げましたとおり、まずは代理店と保険仲立人の業務と役割が明確にされるべきであり、その上で独立して顧客と保険会社の間に立って付与する保険について専門的な仲介を行う保険仲立人に対しては、より自立した高いレベルの専門性を資格要件とすることで潜脱を防止することが本来、本質的に議論すべき点だと思います。
 
 もし今回、特定契約比率規制の適用を保険仲立人にも引き続き適用するということであれば、保険仲立人の専門性の高度化が確認できた時点で、この規制については再検討するということも考えてよいのではないでしょうか。
 
 報告書(案)については、これまで本当に皆様から様々な意見が出た中、それをうまく反映していただき、分かりやすくおまとめいただきありがとうございます。内容について3点コメントさせていただきます。
 
 既に他の委員からも指摘のあったところですが、まず、6ページの13行から14行の(2)保険金関連事業を兼業する特定大規模乗合保険募集人等への対応の最後の段落に、「その規模、特性に応じた自主的な取組を促すことにより、顧客本位の業務運営を求めていくべきである」と書いてあるのですが、これはちょっと漠然としております。具体的にどのような取組を想定しているのか分からないのですが、これは、その後の損害保険分野における自主規制のあり方の整理における最後の段落に記載されている内容と理解してよろしいでしょう。
 
 それから2点目です。12ページの22行から23行の媒介手数料の受領方法の見直しで、これも他の委員が既に何度か御指摘されていることですが、「手数料の受領先及び金額については保険仲立人、保険会社、顧客の三者で調整した上で決定することが考えられる」と書かれているのですが、現状の慣行では3者が同時に調整を行う場面は考えられませんので誤解を与える表現と思います。この部分については前提をより明確にするか、あるいは表現を工夫していただきたいと思います。
 
 そして最後の点です。審議のまとめである「おわりに」に保険仲立人について全く触れられておりません。保険仲立人の活用が今回の制度見直しの重要な要件なのであれば、その点に触れたほうがよいと思いました。また、新たな制度を適切に運営されるためには、顧客である企業のリスクマネジメント能力の向上が前提であるということも、触れていただいたほうがよいのではないかと思います。
 
 以上です。
 
【洲崎座長】
 ありがとうございました。小林委員からの御質問に回答いただけますでしょうか。
 
【赤井企画市場局調査室長兼保険企画室長】
 小林委員から御指摘いただいた6ページの顧客本位の業務運営の原則の理念を踏まえた取組ですが、特定大規模乗合保険募集人のうち、兼業代理店に関しては少し上、5・6行目辺りに顧客の利益を害するおそれのある取引の特定や管理方針の作成・公表等を求めていくわけですが、特定大規模乗合保険募集人に該当しないような保険代理店であっても、その規模・特性に応じてこういった取組の一部を実施していただくことはあるかと思っておりますので、そういうことを念頭に置いて書かせていただいた次第です。
 
【洲崎座長】
 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 
【小林委員】
 ありがとうございました。
 
【洲崎座長】
 それでは続きまして、オンラインで山下委員から御発言の希望がございます。
 
 山下委員、よろしくお願いいたします。
 
【山下委員】
 山下でございます。御指名いただきありがとうございます。私からは、まず、企業内代理店のあり方について、事務局資料1の5ページ目に示されました特定契約比率規制の適用除外の基準は、その枠組み自体に特に異論はございません。
 
 もっとも、既に多々指摘されたところではありますが、保険会社が適用除外の判断を厳しく行うことは営業上の考慮から難しいかもしれません。そのため、特定契約比率規制の適用除外の判断基準は、なるべく客観的なものであるほうが望ましいと思いますし、特定契約比率規制の趣旨から見て、真に問題のない代理店について適用除外するという判断基準であるべきものと考えております。以上の点について、このワーキング・グループが終わった後に行われるであろう基準の具体化において十分に考慮していただきたいと考えております。
 
 特定契約比率規制の適用除外と関連いたしまして、先ほどの大村委員の話を聞いていて、ああ、そうかと思った部分が一つございました。大村委員から代理店としての自立というのは2点あるという御指摘がありました。つまり、保険代理店としての実務能力の観点の自立という点と、グループからの自立という点と2つあるということです。
 
 もともと、特定契約比率規制というのは、保険業法第295条の自己契約の禁止を拡張する形でこの特定契約比率規制が置かれております。自己契約の禁止の趣旨は、まさに保険代理店の自立の阻害というのと特別利益の提供の禁止の潜脱ということの2点に対応するものと言われてまいりました。
 
 そのうち保険代理店の自立というのは、もともと自己契約を対象とする規制だというのであれば、保険代理店としての実務能力の確保とか、事業としての永続性や安定性を念頭に置いていたものと思われます。そうしますと、今回の問題である企業内代理店の立場が不明確である、あるいは企業内代理店がグループ内契約を取り扱えることから保険会社に対して大きな影響力を持ち得るというようなことに起因する弊害に、そもそもうまく対応できる規制枠組みではなかったのかもしれません。
 
 そのため、特定契約比率規制や特定契約比率規制の適用除外の要件を適切に定めることで、一定の対応はできるとは思いますけれども、しかし、それだけで十分かどうかは定かではないため、企業内代理店がグループから自立していないことから生ずる弊害については、これまで議論してきたことと併せて、そのこと自体について監督指針等で一定の対応方針を示すことも考慮に値するのかもしれないと思いました。
 
 もし、そのようなことをするのであれば、企業内仲立人もグループからの自立という点では問題は生ずることは否めませんので、企業内代理店のみならず企業内仲立人も対象として一定の対応方針を示すことになるかと思います。
 
 次に報告書についてです。報告書については今までの議論を適切にまとめていただいており、おおむね賛成でございます。その上で、何点かコメントを申し上げます。
 
 まず、1点目として特定大規模乗合保険募集人の基準について、つまり5ページですが、規制対象の基準として手数料収入額基準が示されており、私はそれに賛成でございます。他方で、報告書の5ページの注の6で、保険料収入額基準についても言及がございます。もともと、この話は営業上の配慮が働きやすい代理店について、規制監督の強化が必要であるというようなことから出発して、特定大規模乗合保険募集人をという概念を定めて体制整備義務の強化をするような話になったと認識しております。
 
 そうした観点から申し上げますと、確かに保険料収入額基準というのもあり得る話かとは思います。しかし、営業上の配慮と体制整備義務を課す範囲とは緩やかに関連させる必要はあると思いますが、直結させる必要はなく、営業上の配慮のみを考えて範囲を画する必要はないのではないかと思いました。
 
 すなわち、出発点は、営業上の配慮が働きやすい代理店について規制強化をするということなのですが、しかし体制整備義務という形で定型的に一定の措置を講ずる、体制を整備するという義務は、その対象となる代理店の業務内容が一定水準を超えて大規模であるとか、複雑であるということから必要になるものと考えられます。そして、業務の大規模複雑性を示す基準としては、恐らく手数料収入額基準のほうがベターではないかと思います。
 
 また、手数料収入額は営業上の配慮の多寡とも一定の相関は認められると思います。逆に企業内代理店の実情などから明らかになった部分もあると思うのですが、保険料収入額が大きいから必ずしも代理店の業務内容が大規模であるとか、複雑であるとは限らない場合もあると思います。したがって保険料収入額基準よりは手数料収入額基準のほうがいいのではないかと思っております。
 
 他方で、手数料収入額基準で、それほど大きいとは言えなくても保険料収入額が大きいとか、保険会社の営業所単位で見たときの代理店の重要性など、様々な要因で保険会社において営業上の配慮が働きやすいという、そういう代理店はいろいろ存在すると思います。そのため、特定大規模乗合保険募集人の体制整備義務の強化とは別に、それぞれのリスクに応じたモニタリングを機動的に実施することが必要なのではないかと考えております。
 
 2点目は、保険金関連事業兼業に起因する利益相反管理の話で、6ページの10行目から14行目です。特定大規模乗合保険募集以外の場合についてですが、ここも顧客本位の業務運営に関する原則の周知徹底というのは、従前の議論を踏まえたものということで賛成です。ただ、この顧客本位の業務運営に関する原則は一部、金サ法第2条第1項の顧客利益勘案義務という形で一部ハードロー化されたわけです。そのため、FD原則と併せて、金サ法第2条第1項の顧客利益勘案義務も踏まえるべきだという点をここに加筆しておくとよいのではないかと思います。
 
 これによって、特定大規模乗合保険募集人でなくても、金融事業者である以上は、不当なインセンティブによる弊害防止の対応が法令上の根拠に基づいて必要になることを確認することができるのではないかと考えております。
 
 3点目については、比較推奨販売において顧客に対してどういう情報開示するかという話が8ページの7行目から8行目に書かれております。乗合代理店と保険会社との関係を示すような情報というところに注の11がついており、そこで手数料開示の問題が取り扱われております。
 
 これも既に指摘があったところではございますが、今回、比較推奨販売の方法を厳格化するなど様々な措置をとることが提言として含まれておりますし、また、もともとの出発の保険金不正請求事案では、手数料の多寡ではなくて便宜供与等の手数料以前のところでの配慮や影響で不適切な比較推奨販売が行われたということでしたので、当面は今回の提案の効果や、手数料の違いが比較推奨販売にどう影響するのかということを見極めながら、手数料開示の問題は引き続き検討するということで差し当たりは良いのではないかと考えております。
 
 最後4点目になりますが、保険仲立人が顧客から媒介手数料を受け取れるようにするという提案が12ページ21行目から23行目にございます。これも既に出た話ですが、3者間調整の話は、少なくとも解禁当初は、今まで実例がないことですので、保険会社と顧客との間で手数料をどう割り当てるか、あるいは分担するのがよいのかについては、3者で調整しながら適切な実務を構築していくことが望ましいと考えております。
 
 ただ、現状の制度の下で3者調整というのは担保されるわけではないと思っております。すなわち3者で調整しなければならないことを要求する法制度は、監督指針も含めてもございませんので、今のままだと保険仲立人と保険会社、保険仲立人と顧客という2者間の交渉で、それぞれ決まってしまうことになりそうです。
 
 他方で、今回、保険仲立人が一定の開示義務を負うことも提言されております。そのため、顧客の側が十分な知見や交渉能力を持っていれば、保険仲立人が保険会社からの手数料を受け取ることを顧客は知ることができ、その額を踏まえつつ、自分が払う手数料について交渉して適正な額で妥結する、あるいは必要であれば保険会社も顧客の側からの働きかけで交渉に巻き込んで適正な額を探るようなことが理想的には考えられます。しかし、現状を見れば顧客が保険やリスクマネジメントについて、どれほど十分な知見や判断能力を有するか、怪しい部分がございますので、3者で調整することを制度上、担保するような仕組みを導入するか、少なくとも当局の指導で3者調整を促すか、そういったことが必要なのではないかと思いました。
 
 私から以上でございます。ありがとうございました。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、会場におられます滝沢委員、お願いいたします。
 
【滝沢委員】
 御指名ありがとうございます。まず、少しかぶる点もありますが、事務局御説明資料について3点ございます。
 
 1点目として、企業内仲立人が顧客から手数料を受け取るケースは特定契約比率の算定対象から除外するところですが、確かに保険料の割引には当たらないと言えるのかもしれませんが、手数料20がグループ内の収益として還流する構造は企業内代理店と何ら変わらないので、この立てつけを適用除外対象とすると、ほかのプレーヤーに対して必ずしも公正な競争であると言えないのではないかと思っております。そのため、このケースは参入対象から除外するという理由については、個人的にはあまり納得感がないというのが正直なところでございます。
 
 特定契約比率規制の適用除外要件について、そもそもこの規制の実効性は、保険会社による代理店に対する適切な管理、指導が行われることが大前提ということには全く異論はないのですが、その前提が崩れているために起きているのが現在の惨状かなと思いますと、適用除外要件を満たすかという判断を保険会社に委ねるところは、私、前回に引き続き懐疑的でございます。
 
 フロント営業に対して適用除外対象として認めてほしいという強い要望が殺到することになるのではないかと思いますので、もし保険会社に判断を委ねるのであれば、皆さん、おっしゃっていただいているように誰がどう判断しても同じ結果になる、業界共通の判断基準を猶予期間中に整えることが重要であろうと考えております。
 
 特に手数料の適正性というのは、例えば当該契約の手数料上限を低い水準に抑えるといったような水準感をお示しすることも1案であろうと思いますし、その適正性も市場の変化に応じて変わっていく可能性があるかと思いますと、一旦適用除外となった後にも定期的に見直す仕組みといったような具体の運用面も検討する必要があるのではないかと思っております。
 
 また、適用除外と認定された場合の取扱いについて、実質的に100%除外、すなわち全ての契約をグループ企業契約とすることも可能となる点が、本当にそこまでの緩和が必要なのだろうかというところは少し疑問に思っております。現時点では旧規制の要件は満たしていらっしゃる代理店に、体制が整備され手数料が適正であれば、グループ外契約の取扱いは実質上、必要ないとするところは本来、目指しているところに逆行する可能性があるかなと思いますので、例えば適用除外となっても、現行の比率規制レベルの維持は引き続き求めるような、一定のバーは設ける等の工夫が要るのではないかなと思っています。
 
 続いて、報告書に移らせていただきます。大規模乗合代理店に対する体制整備業務についてです。先般からの議論にありましたように、当局リソースの現実的なキャパ上限ですとか効率性を鑑みると、特定大規模乗合保険募集人というところに絞って規制を上乗せする、この方向性はやむを得ないと思いますところ、今回の4ページの脚注ですとか5ページの20行目から22行目のところに、当局による機動的なリスクベースのモニタリング対象というのは必ずしもそこに限定されず、特定大規模に当たらずともモニタリング対象となるということが示されたのは、実効性の確保という意味で非常に意義があるのではないかと思っております。
 
 また、6ページの具体的な体制整備として求められる条件として、法令等遵守責任者の設置、資格保有者を求めるといったところ、この点も実効性の確保という意味で大きいと思いますが、一方で、この責任者のレポートラインが、営業業績が優先される評価指標となるような営業所の長となりますと、どうしても牽制機能が薄れると思われますので、脚注の8に記載いただいているような営業部門からの独立性の維持ですとか、兼任とせず職掌は明確に分けるといった工夫も規模に応じて求めるといったことも検討できると、さらに実効性が高まってよいのではないかなと思いました。
 
 次に、適切な比較推奨販売の確保についてです。便宜供与その他の手厚さにより営業所で推進する商品を事実上、一つに絞り込むテリトリー制のような販売手法が今回、顧客利益保護の観点から排除されるというのは大変望ましいと思っております。一方で、このような商慣習が横行した背景には、どの会社の商品でもスペックに大差がない、差別化要素がないために、どれを勧めても顧客の不利益にはつながらないという意識も少なからずあったのではないかと思います。
 
 真に顧客本位の業務運営、健全な意味のある比較推奨販売が業界に浸透するには、比較する価値のある顧客ニーズに合った多様な商品の開発や顧客サービス面での差別化、これが必要不可欠と思っております。大変失礼な物言いで恐縮なのですが、今後は販売チャネルに対する営業力による勝負ではなくて、その先の消費者にいかに価値ある商品、サービスを届けるかという、健全な競争に損保会社様には軸足を移していただけたらよろしいのではないかと思っております。
 
 保険仲立人については、総合的なリスクマネジメントサービスを広く海外からのソリューションも併せて提供できる存在ですので、諸事情から閉鎖的であった企業向け保険市場に参入する障壁を下げる、これは顧客である企業のリスクマネジメント意識の向上とともに日本企業の発展に必要不可欠なことと考えますため、今回示された4つの対応の方向性には同意しております。先ほどの特定契約比率規制の対象除外区分のみ、引き続き検討が必要なのではないかと思っております。
 
 火災保険の赤字構造の改善についてですが、少し立ち位置が不明瞭な企業内代理店の存在ですとか、そもそも企業向け保険の引受けが大手4社の寡占状態であって、シェアの維持、向上が至上命題であったことが保険料調整につながる土壌でもあり、ともすれば赤字覚悟で不適切な保険料を示し続けるループにもつながっていたと思っております。そのため今般、当局によって商品開発管理体制のモニタリングの高度化を目指す方向性、これが明確に示されたことは、損害保険会社の持続可能性を維持する意味でも非常に意義があると思っております。
 
 また、前回も発言させていただいたのですが、火災保険参考純率をより時宜、トレンドに合ったものとする、将来予測を組入れたモデルとするとの御対応の検討は、個人的にぜひとも加速していただきたい取組だと思っております。
 
 最後になりますけれども、健全な競争環境の整備に向けては、大手社の寡占状態からより多くのプレーヤー、ソリューションが市場にある状態へシフトしていくことが重要であって、その意味でこのたび参考純率ですとか、標準約款の対象となる保険種目の拡大、これが検討の素地に乗ったことは、実行までの道のりはそれなりに厳しいかなと思う面もございますが、今後の損保業界の健全な競争につながる大きな一歩になると考えております。
 
 保険分野におけるデータ蓄積は差別化の源泉ともなりますことから、全てのデータを業界の共通財産とすることは難しい側面も当然あるかなと思いますが、損保業界そのものの発展、また、対グローバルという意味での競争力を保つためには、商品開発だけではなくて例えば損害調査とか支払い査定とか、いろいろな領域でより一層、業界としてのデータ基盤整備、そして個社の差別化努力としてのデータ活用、こういったところが促進されるとよいと思っております。
 
 以上になります。ありがとうございました。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、会場におられます嶋寺委員、お願いいたします。
 
【嶋寺委員】
 ありがとうございます。ポイントを3点に絞ってお話をしたいと思います。
 
 まず、報告書7ページの比較推奨販売ですが、ここでは従来のハ方式をなくすことが示されているわけですが、今回の案について、抽象的に聞いて、顧客が「違いが分からないのでお任せします」と言えば、代理店の都合で推奨する保険会社を選んでも構わないという受け止めが一部にあるようです。
 
 決してそうではなく、今後は顧客が重視する項目を個別に聞き取っていくことが求められますし、顧客自身で選択する機会が確保されるよう、複数の保険会社を案内していくことで、便宜供与や保険会社との特別なつながりといった代理店側の事情で推奨先を決めていた、これまでの実務からの決別が図られると思います。都合のよい読み方がされないように、監督指針で明確にしていただきたいと思います。
 
 この比較推奨販売の問題は、顧客の最善の利益を勘案する義務を実現する上で極めて重要な位置づけとなりますが、これが現場で形骸化して運用されることになれば、そのときは脚注の11にもあるように、募集手数料の開示という強い規制を検討しなければならない事態にもなると思いますので、今後、当局におかれては、現場での比較推奨販売の実情について適切にモニタリングを実施していただく必要があると思います。
 
 その点にも関連しますが、今度は15ページですが、契約者や代理店に対する便宜供与の禁止が示されており、そこでは過度の便宜供与という言葉が使われています。これも一部耳にする話では、言葉尻を捉えて、過度でなければ便宜供与は許されるという受け止めがされている懸念がございます。
 
 ここでは、契約締結の判断に影響がないような通常の取引まで制限されないという趣旨だと思いますので、代理店の側から取引上の関係性を利用して保険会社に便宜供与を求めたり、保険会社がその要請を受け入れたりすることは、金額に関わらず原則として認められないという考え方を監督指針で明確に示していただいたほうがよいと思います。
 
 本来、保険会社は便宜供与の度合いではなく、商品やサービスで選ばれる必要がありますが、これまで商品の差別化が十分図られていなかったことが不適切な競争環境の背景にあると思いますので、今後は顧客ニーズに応じた多様な商品の開発に軸足を置いていく必要があると考えております。
 
 それに関連しますが、18ページでは企業向け商品の取扱いが大手損保会社に集中していたことの問題も指摘されており、業務品質の確保は当然ですが、中小規模の会社も含めて取扱いを拡大していくことは、公正な競争を促すだけではなく、企業保険マーケットの拡大の観点から望ましい方向性ではないかと考えております。
 
 長くなりましたが、特定契約比率規制の件についても一部コメントをさせていただきたいと思います。まず、特定者の範囲ですが、前回のワーキング・グループでのやり取りでは、持分法適用会社は含まれないという説明もあったように記憶しておりますが、同一の経済主体として捉えられるという意味では、持分法適用会社も含めるという考え方もあるように思いました。
 
 次に、最も重要な点としては、前回のワーキング・グループでも発言させていただきましたが、役務に見合った手数料という点について、監督指針で基準を示していただかないと実務的にワークしないことを非常に懸念しております。この資料の5ページにも記載がありますとおり、役務に見合った形で手数料が適正化されることが適用除外を認める大前提となりますし、それが十分でないまま適用除外を広く認めることになれば、それは現在の規制を後退させることになると思います。
 
 今回の案では、新たに第三者評価制度を活用しながら手数料の適正化を図るという考え方が示されていますが、当局が基準を示していただかないと各社の現場で適切に運用できる仕組みにはなっていかないと思いますので、監督指針で基準を示していただくことの必要性を改めて強調しておきたいと思います。
 
 今回、有識者会議から続いてワーキング・グループの議論に参加させていただきましたが、議論の本質は、顧客の利益をないがしろにして裏で行われる便宜供与によって保険会社が決められていた従来の営業手法からの決別ということであると思います。保険の中身や業務品質によって選ばれる適切な競争環境をつくる意味でも、今回の議論を契機に、保険会社と代理店が対立するのではなく、相互の対話を通じて一緒になって業務品質の向上に取り組むことで、顧客の信頼回復とともに重要な社会インフラとしての損害保険の発展につながっていくことを期待したいと思います。
 
 私からのコメントは以上でございます。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。
 
 ようやく1周目が終わりまして、予定時間を既に20分を超過しておりますが、オブザーバーの方からの御意見もやはり伺っておいたほうがいいかなと思いますので、オブザーバーの方々から御意見、御発言の希望がございましたらお願いいたします。日本自動車販売協会連合会様から御発言希望がございます。
 
【日本自動車販売協会連合会】
 本日は発言の機会をいただきまして、ありがとうございました。御説明いただきました報告書につきまして、3点発言をさせていただきます。
 
 今回の制度改正で代理店に対する規制がかなり強化され、追加的に多くの義務が課されることとなります。しかしながら今回の制度改革によりまして、代理店の現場に特にコスト面で大きな負荷がかかり過ぎますと、そうしたコストは回り回って最終的には顧客に転嫁される可能性が高いと思われます。したがいまして具体的な制度運用に当たりましては、そうしたリスクも勘案しつつ取り組むことが必要ではないでしょうか。こうした基本的な考え方は、報告書のどこかに一言記述すべきではないかと考えております。
 
 2点目が、比較推奨販売の確保についてでございます。前回第4回のワーキング・グループの資料においては適切な比較推奨販売を確保する観点から、比較推奨販売を行う場合には、中小規模の乗合代理店における保険募集の実務や募集形態などを踏まえつつ対応していくといったことが記述されておりました。比較推奨販売の適正化は全代理店の実務に大きな影響があるが、特に大きな影響が出るのは中小の代理店であることから、中小規模の乗合代理店の実務などを踏まえて対応する旨の記述は、ぜひ最終報告書にも明記すべきだと考えております。
 
 また、前回申し述べましたとおり、特に中小規模の代理店に負荷がかかり過ぎますと乗合を減らすことなどによりまして、かえって顧客の選択肢が狭くなるリスクがございます。顧客本位という観点からは考慮すべき重要なポイントであり、こうした指摘があった旨を報告書に記載していただくべきものと考えております。
 
 それから最後でございますが、おわりの部分で記載のとおり、便宜供与を確実に防止し、その上で今まで便宜供与に充てていたリソースが顧客本位の商品開発、サービスの開発、提供のために充てられ、損害保険市場全体の健全な発展に向かうようリソースの配分を徹底的に見直すべきである。この記述は非常に重要な指摘だと思っております。前回も発言させていただきましたが、実質的な商品の差別化や競争がないことが今回の問題の根底にあるものと考えております。今後、過剰な便宜供与、その他の見直しで生まれたリソースがしっかりと商品開発や保険料の抑制など顧客本位の使い方になるよう、当局にモニタリングしていただければと思います。
 
 当方からは以上でございます。ありがとうございます。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。
 
 続きまして、日本損害保険代理業協会様より御発言希望がございます。
 
【日本損害保険代理業協会】
 ありがとうございます。日本損害保険代理業協会の金澤でございます。1点だけ申し上げたいと思います。報告書の6ページのところの一番下の注意書きの8、先ほど滝沢委員が触れられたところですけれども、管理の法令等遵守責任者、統括責任者等のところでございます。
 
 先ほどの委員のお話はごもっともでして、趣旨のところは非常に理解できるところであります。一方で、実際の代理店としては、代理店全体としては大規模であっても拠点単位で見ると、例えばそこに所属する人数が二、三名といったようなケースも少なくはありません。そういった拠点でも保険募集の業務に従事することのない管理業務責任者を1人ずつ全て置くことになりますと、かなり大きな負荷が代理店にはかかってしまいますので、実際の運用に当たっては現実的な御判断をお願いしたいと思っております。
 
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。
 
 それでは、最後に日本保険仲立人協会様より御発言希望がございます。
 
【日本保険仲立人協会】
 ありがとうございます。保険仲立人協会の平賀でございます。2点ばかり、報告書に関してリクエストがございます。
 
 最初が、11ページの26行目から28行目に、「このため、今後、各損害保険会社」というくだりがありますが、「このため」というのは前の文章を恐らく受けていると思いますが、私どもの認識では、保険仲立人が独占禁止法に違反していた事実はありませんので、文章の見直しをしていただきたいと思います。もちろん保険仲立人としましても、今後も未然防止のための管理体制の更なる強化に取り組んで参りますが、過去の経緯も踏まえてということでありましたら、記述につきまして御検討いただければと思います。
 
 それから2点目でございますが、12ページの21行目から23行目につきまして、複数の委員の方からも御指摘、御意見が出ていますが、「その際、手数料の受領先及び金額については」のくだりです。あとの2段落後に「具体的に」ということで、保険仲立人の手数料の受領については大きく3つ方法があると書かれていますが、それを全て総称して言っているのか、あるいは、双方取りに焦点を当てて、3者で調整した上で決定することが記載されているのか、主語が手数料の受領先及び金額ということでありましたら、これは双方取りに関しての説明であると考えられます。どの方法に因るものなのか明記していただくように御検討いただきたいと思います。
 
 それから最後にもう1点だけ、これは小林委員が御指摘、御助言いただきましたけれども、ぜひともこの報告書の「おわりに」のところで保険仲立人の活用につきまして、今回の主要テーマの一つでもありますので、一文載せていただくということで御検討いただければ幸いでございます。
 
 以上でございます。
 
【洲崎座長】
 どうもありがとうございました。以上で発言希望があった方からの発言をいただくことができました。ほぼ30分超過ということになってしまいまして申し訳ございません。ただ、ワーキング・グループ会合はあと1回しか予定されておりませんので、そういう意味では真摯な議論を委員の皆様方にしていただけたのではないかと思います。
 
 本日、頂きました御説明、御意見等を踏まえまして、事務局において報告書(案)の内容につきまして検討させていただき、次回取りまとめに向けた御議論をお願いするということを考えております。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 
 それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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