スチュワードシップ・コードに関する有識者会議
(令和6年度第2回)議事録

  • 1.日時:

    令和6年11月18日(月曜日)14時00分~16時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

【神作座長】 
 ただいまよりスチュワードシップ・コードに関する有識者会議第2回を開催いたします。皆様御多忙のところ、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 
 本日の会議におきましては、対面とオンライン会議を併用した開催とさせていただきます。また、本日の会議の模様も、前回同様、ウェブ上でライブ中継をさせていただきます。なお、議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
 
 会議を始めるに当たりまして、事務局から留意事項がございますので、お願いいたします。

【野崎企業開示課長】  
 事務局を務めさせていただきます野崎と申します。どうぞよろしくお願いします。本日の会議におきましては、オンライン会議を併用した開催としておりますが、オンラインで御参加の委員におかれましては、御発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から指名いただきます。また、御発言される際には、冒頭にお名前をお願いいたします。なお、対面での御参加のメンバーにおかれましては、お名前のプレートを立てていただければ、座長から指名いただきます。また、マイクを使用する際には、配信の音割れ防止のため、マイクの角度は動かさず、オン・オフボタンのみ押していただくよう、よろしくお願いします。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。それでは早速、議事に移らせていただきます。本日は、事務局より資料の説明をした後、シッソンメンバーよりプレゼンをしていただき、討議を行いたいと思います。

 初めに、事務局の金融庁から資料についての説明をお願いいたします。

【野崎企業開示課長】  
 では、事務局説明資料に沿って御説明申し上げます。本日は、実質株主の透明性、それから、協働エンゲージメントについて、具体的なコードの改訂案も含めて御議論いただければと思います。

 まず、2ページ目から4ページ目でございますけれども、前回の会議でいただきました主な御意見を記載しております。今回のテーマである協働エンゲージメント、実質株主の透明性のほか、コーポレートガバナンス改革全般、スチュワードシップ活動の実質化についても様々な御意見をいただいたところでございます。

 6ページ目から、実質株主の透明性の議論でございます。6ページ目には、議論の前提としまして、機関投資家の株主名簿管理における関係者の概要をお示ししております。右側、議決権指図権限や投資権限を有する実質株主が左側の発行会社とどうつながっていくのかを図でお示ししております。

 7ページ目、前回もお示ししました公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループの報告書でございます。米国・欧州の制度を検討した上で、下のほうに記載してございますけれども、欧州諸国の制度は、発行会社に対して実質株主の保有状況を伝達するものであり、企業と株主・投資家の対話を促進するという目的によりかなうものと言えるとした上で、欧州制度を参考にしながら、まずは早急に機関投資家の行動原則として、その保有状況を発行会社から質問された場合にはこれに回答すべきであることを明示すること、またその後、そのような回答を法制度上義務づけることをそれぞれ検討すべきというふうに記載されております。

 8ページ目から10ページ目は、今も言及しました米国、英国、それから欧州の制度について詳細を記載しております。

 12ページ目からが協働エンゲージメントでございます。協働エンゲージメントにつきましては、昨年末の市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォース報告書では、2段落目の末尾に記載してございますけれども、質的・量的なリソースを補い、コストを低減する観点から、協働エンゲージメントの取組を積極的に活用することも有用とされ、昨年5月には、14ページにもございますけれども、協働エンゲージメントを促進する観点を盛り込んだ改正金商法が成立してございます。

 15ページ目から、協働エンゲージメントについての諸外国の動向でございます。まず、英国のFRCのスチュワードシップ・コードと、それから、今日お越しいただいておりますICGNのグローバル・スチュワードシップ原則の内容を記載してございます。なお、英国のFRCにつきましては、ちょうど1週間前の11月11日にこのコードを改訂する案の市中協議がスタートしております。具体的には16ページから18ページ目にその市中協議文書の概要をまとめてございます。

 協働エンゲージメントにつきましては次の17ページでございます。従前は独立の原則10という形で規定されてございましたけれども、改訂案では、原文を17ページにお示ししてございますけれども、原文の上から3行目にあるように、協働エンゲージメントは重要かつ効果的なスチュワードシップの手段となり得るものの、全ての署名機関に毎年協働エンゲージメントを行う機会があるとは限らないという考えの下、原則9のエンゲージメントのところに統合するという案が提案されております。

 最後、21ページ目以降でございますけれども、本日御議論いただきたい事項をまとめてございます。まず、①の実質株主の透明性向上でございます。我が国においては、大量保有報告制度の適用対象となる場合を除き、企業が実質株主を把握するための制度が存在しないところ、企業と機関投資家の信頼関係の醸成を促進するとともに、企業から機関投資家に対話を申し入れることを容易にする観点から、下記の改訂案のように、投資家は、投資先企業からの求めに応じてどの程度株式を保有しているかについて企業に説明することを明示することについてどう考えるかというところでございます。

 また、機関投資家の具体的な対応としまして、3つ目の四角でございますけれども、例えば投資先企業から求めがあった場合の対応方針についてあらかじめ公表しておくことが望ましいと、今の改訂案には記載してございませんけれども、併せてこういった旨も追記することについてどのように考えられるかといった論点をお示ししてございます。

 続きまして22ページ、御議論いただきたい事項②の協働エンゲージメントの促進でございます。こちらは記載のとおり、利点とともに、本日も御議論あろうかと思いますけれども、様々な留意点、課題が指摘されているというところもございます。

 こういったことも踏まえまして、23ページに記載してございますように、協働エンゲージメントについては選択肢として検討すべきという旨を記載しつつ、留意点としましては、投資先企業の持続的成長に資する建設的な対話となるかを念頭に置くべきというような改訂案をお示ししております。このような改訂案について御議論いただければと思います。

 私からの説明は以上でございます。

【神作座長】  
 御説明どうもありがとうございました。続きまして、メンバーからの説明に移らせていただきます。シッソンメンバーより10分程度で御説明をお願いしたいと思います。シッソンメンバーからは資料2を御提出いただいております。なお、説明内容は逐語通訳させていただきます。それでは、シッソンメンバー、どうぞよろしくお願いいたします。

【シッソンメンバー】 
 本日はこの会合におきまして発言の機会をいただき感謝を申し上げます。いわゆる協働エンゲージメントという複雑かつ大変面白いトピックについて、ICGNとその構成メンバーの意見を述べさせていただきます。

 それでは、まず冒頭に、私どもICGNのグローバル・スチュワードシップ原則について言及させていただきます。大変意欲的な目的を掲げた原則となっており、これはいわゆる国際的なグッドプラクティスで各国のスチュワードシップ・コードを検討いただく際の指針となるものです。こちらの原則は、それぞれのアセットオーナーあるいはアセットマネジャーに合わせて適切に柔軟に適用していただけます。そして、ICGNは、高いレベルでのスチュワードシップを、各国の原則あるいは規則を補完する形で適用していくものです。

 原則3でありますけれども、こちらは、エンゲージメント、モニタリングを強化するものであり、リスクを最小化し、事業機会を拡大させ価値を上げていく、長期での企業価値向上に向けてエンゲージメントを図っていくものと定めております。

 恐らく本日の議論に関係するところは、この原則の3.7に該当するかと思います。 投資の検討に当たり、例えば発行体企業と協力をしながら投資の検討を行い、そして前向きな議論を行うというものです。そして、投資家は、いわゆる協働していること、エンゲージメントを行っていること、また、時間軸やあるいは目的についてしっかり開示をする、そして、それを通じて、顧客あるいは各個別の企業に対し受託者責任を遵守し議論を行った上で、最終的な議決行使に当たっては個々で判断するというものであります。

 世界中の投資家、またそのコミュニティーをめぐって、ほかにも様々なルールあるいは規則があります。こちらに一例として挙げているとおり、いろいろな形での協働というものがあり得るわけで、その際には企業側との協働もあれば、また政策立案者との政策に関する協働もあるということです。

 次のスライドです。協働というのは、大変有益なツールであると同時に、またそれに対して検討すべき様々な要素があります。当然ながら、市場参加者が協働でその行為をとるわけで、それに対し規制もありますし、また、実際様々な障害もあり、そしてさらには認識上の障壁というものも存在することになります。それに対しては、場合によっては訴訟のリスクなども考えた上で検討する必要があります。

 そして、様々なアセットオーナー及びアセットマネジャーは、それぞれの観点で協働を有用と考える場面は状況に応じて存在するでしょう。例えばですが、大手運用会社であれば、むしろ一対一で対話を持ったほうが投資判断における効率はとてもよいと考えるでしょう。一方で小規模なアセットマネジャーであれば、なかなか取締役あるいは経営幹部にアクセスできないという問題もあるでしょう。

 逆に考えると、大手運用会社のほうがいわゆるユニバーサルオーナーであるので、むしろ政策立案者あるいは企業との協力があったほうがいいと考えるかもしれません。それは、例えばブティック型投資運用会社であれば、あまり考慮しないメリットなのかもしれません。こういった形で、いわゆる協働というのはスチュワードシップの在り方あるいは運用の仕方によっていろいろ考えられるわけで、一つではないということであります。よって、その目的に照らしていろいろな形が有効であり得ます。

 世界には様々な協働エンゲージメントの形があり、それについて幾つか主な形を御紹介したいと思います。まず1つ目ですけれども、イギリスのInvestor Forumであります。こちらは、金融危機の後、いわゆるスチュワードシップの改革を行っていこうという目的の下、設立をされているフォーラムであり、その中で特に上場企業とその投資家との間の協働エンゲージメントということについて議論をしております。

 このフォーラムにつきましては、メンバーと共に協働でのエンゲージメントを行うことを通じて、安全な形のエンゲージメントができるようにするというものです。フォーラム自身は、いわゆる信頼されるファシリテーターとしての役割を果たすので、何らの助言活動も行いません。よって、各機関投資家それぞれが持つそもそも株主としての権利あるいは議決権行使というものは、各機関自身で行うというものであります。よって、議決権行使について何らの示唆もありません。そして、関係する企業に対する議決権行使の判断として、同調行為に参加をしないということに各メンバー間で合意をします。

 次のスライドにまとめてあるのは、こういった競争法上の禁止事項あるいは行為といったものにもしっかり配慮しながら進めているわけです。つまり、同じ行為を合意してとるということが認められないということ、また、アメリカ等の規制、そしてインサイダー取引といった問題点について認識をした上でつくられているものです。

 このフォーラムの活動は10年に及んでおり、現在までにイギリスの企業51社の取締役会レベルと対話しております。そして、年を経て、考慮すべき課題についてより幅広く議論できるようになっています。透明性を大変重視しており、実際に行われたエンゲージメントについてどんなトピックについて議論したのか、これをレポートという形で発表しており、その情報はウェブサイトで確認いただけます。

 次のスライドです。もう一つの例として挙げられますのがCA100+です。CA100+は5つの投資家のネットワークから構成されており、グローバルな運営委員会によって運営がなされています。CA100+は、世界中から瞬時に注目を集め、現在では世界最大の気候変動関連投資家のイニシアチブとなっており、その影響力は増しています。CA100+は、もともとは5年間のイニシアチブとして立ち上がりました。しかし、2022年になり、2030年まで継続することが発表されました。そして、2023年、フェーズ2の戦略として2023年から2030年までのものが発表されています。

 アセットオーナーは、投資家サポーターまたは投資家参加者という形で参加をすることができます。アセットマネジャー及び投資家参加者は、CA100+の活動に直接携わっていく必要があります。彼らはリード・カンパニー・インベスターとして活動をすることになります。協働エンゲージメントにおけるリーダー的な役割を果たし、そして、エンゲージメントを前に進めるための推進力となっていき、投資先との活動を行っていくことになります。

 次に、コントリビューティング・カンパニー・インベスターと呼ばれる人たちですが、彼らの役割は、リード・カンパニー・インベスターを積極的にサポートするというものです。または、参加の仕方として、個人的に参加もできます。これは自分たちで自らフォーカスをしている企業と対話し、ほかの署名投資家の入るミーティングに参加せずに活動を行うというものです。フォーカスが置かれるものとしては、CA100+のベンチマーク指標であり、気候変動に関連する指標に関しどのような進捗が見られたのかということを見ていくことになります。

 ここで一つ特記しておくべきことがあります。このCA100+の投資家のメンバーの中には、今年に入りメンバーを離れたところが多くあります。これはなぜかといいますと、環境に関連してアメリカにおいて規制当局又は政治的な観点から様々な検証がなされるという事態に陥ったからです。

 最後の事例ですが、オーストラリア退職年金投資家協会の事例です。ACSIという略称となっており、そのメンバーとしては、オーストラリア及び海外の投資家が含まれています。 ACSIは、メンバーを代表して、メンバーの集合的意見を伝えるために上場企業との対話を行います。それを通じて、投資家の長期的な利益のために、企業及び金融市場に影響を及ぼすことを目的としています。

 ACSIは年間250回以上オーストラリアの企業とミーティングを行い、長期的な利益を高めていくことができるようなエンゲージメントを行っています。ACSIは毎年、ガバナンスに関するガイドラインを発表しています。そして、議決権行使に当たっての助言を行う際にどういったところにフォーカスをしているのかということをその中で説明しています。毎年スチュワードシップ報告書も発表しており、自分たちのエンゲージメント活動の中からどういったことが起きたのかということについて公表しています。

 こちらに掲げていますのは、カンタス航空とのエンゲージメントの事例であり、大変興味深いものです。もちろんこういったエンゲージメントに関しては、様々な市場において同じようなことが行われており、例えばACGAが行ったニューメディアとのエンゲージメントもその一例です。

 こういった形でグローバルにどのような実務が行われているのかということに目を向けることに加え、それが日本においてはどうやればうまくいくのかということを私たちは考えていかなければいけません。そういった意味で、金融商品取引法が改正されたということは歓迎すべきであると考えております。そして、共同保有者に関連した定義に関して改訂が行われたことを歓迎いたします。

 しかし、そういった改善が見られつつも、グローバルな投資家コミュニティーとして集合的にこの活動を行っていくためには、重要提案行為の定義などをまだいま一歩明らかにしていく必要があると考えています。ここで明確にしなければいけない点としては、企業とエンゲージメントをしようとする行為が重要提案行為ではないということを明確にしていかなければいけないと考えていますし、企業におけるガバナンス及びサステナビリティに関連する活動において協働エンゲージメントをしようとすることが重要提案行為ではないことを明らかにしていく必要があると思っています。

 そして、それは共同保有者ではないということをはっきりとさせていく必要があると考えます。つまり、セーフハーバーが必要であるということです。また、よきエンゲージメントは何なのかということを明確にし、そしてエンゲージメントが効果的にできるようにしていかなければいけません。エンゲージメントにおきましては長期の視点が必要です。そして明確な目的が必要です。

 また、こういった活動を行っていくに当たっては、企業側にも努力をしていただかなければいけません。この努力というのは双方向である必要があり、双方向の視点の共有が必要になります。そして、企業側からは自分たちの視点を共有していただきたいですし、それと同時に、企業におかれても、株主がどういったことを考えているのかを傾聴し、そして、それに基づいた意思決定をしていただくことが必要になります。

 また、海外の投資家は、エンゲージメント活動をするときに、IR部署の方だけではなく、取締役会のメンバーなどシニアな方の参加も求めています。また、ガバナンスの改善にフォーカスをしていくということが必要です。そのためには、投資家が適宜に必要な情報にアクセスすることができる状態をつくることが必要であり、その情報をもって議決権を行使できるようにしなければなりません。

 最後に、実質株主の透明性に関してです。私たちは、透明性が大変重要であり、それがあることによってエンゲージメントプロセスを効率化できると考えています。また、マネジメント側が積極的に努力を払ってエンゲージメントをするということについてサポートしていきたいと考えています。

 企業側にもう一つお願いをしたいことは、株主総会によりアクセスしやすく、かつ包摂的なものにしてほしいということです。日本においては、カストディアンを通じて株を保有している実質株主が株主総会に参加をすることができないことが多くあります。企業側がその内部ポリシーにおいて、どの株主が株主総会に参加することができるのかを決める権限があります。すなわち、企業側には裁量権があって、どの株主の質問を受けるのか取捨選択できるということです。

 透明性を高めていく為に、スチュワードシップ・コードにおいて好事例、ベストプラクティスを反映させていくことが一つの方法かもしれません。これを行うに当たり、日本の会社法を改正していくということが必要になってくる可能性があります。実質株主に関する情報提供を要求する項目を入れるイギリスの会社法またはEUのSRDⅡ、それに基づく各国の法令などを見ていただくことにより、それに応じた改正をするということが必要になってくるかもしれません。

 このような機会をいただき、本当にありがとうございました。

【神作座長】  
 シッソンメンバー、御発表どうもありがとうございました。それでは、これより委員の皆様から御意見、御質問をお伺いする討議の時間とさせていただきます。限られた時間ではございますけれども、全ての委員の皆様から御意見を頂戴したいと存じます。時間の制限のため、大変恐縮ではございますけれども、お一人4分程度で御意見を頂戴できればと存じます。なお、前回同様、経過時間をお知らせするため、御発言から4分が経過したタイミングで事務局員よりベルを鳴らしていただきます。

 それでは、どなたからでも結構でございます。御発言ございますでしょうか。

 それでは、松下メンバー、御発言ください。

【松下メンバー】  
 投資信託協会の松下でございます。発言の機会をいただき、ありがとうございます。事務局資料の御議論いただきたい事項について御意見を申し上げたいと思います。

 まず、実質株主の透明性向上についてですが、前回会合でも申し上げたように、投資先企業と機関投資家の対話を促進する観点から、透明性の向上を図ることには賛成いたします。ただし、幾つか留意点があるのではないかと考えております。

 今般、コードの改訂案として、機関投資家がその保有状況を発行会社から質問された場合はこれに回答すべきとの方向性が示されております。これが既にエンゲージメントが行われている中で保有状況を回答するという趣旨である場合、保有状況を発行会社に伝えることが必ずしも対話には結びつかないという点について留意が必要です。例えば投資信託という商品では運用方針がそれぞれ異なりますので、同じ運用会社であっても、ある投資信託では株式の保有を継続し、別の投資信託では売却してしまうといった事態が生じます。既に投資先企業とのエンゲージメントを開始している中で運用会社として株式の保有を減らすという状況になった場合には、投資先企業の心証悪化は避けられず、以後のエンゲージメントの継続が困難となるおそれがあります。改訂案では「説明すべき」こととされていますが、こうした点を踏まえ、従前の「説明することが望ましい」との記載を維持することも一案と考えております。

 一方で今般の改訂案が例えば電話やメールといったように問合せ元が投資先企業であることを担保できない中でこれを回答するという趣旨である場合、保有状況が運用戦略に関わる重要な情報であり、受益者以外の第三者にこれを伝えることは情報管理の点や受益者の収益を損なうおそれがあることに鑑みると、慎重な判断が必要ではないかと考えております。この点、欧州では実質株主に関する情報がデータベース化されており、利用する側、開示する側にとって使いやすいインフラが整備されていると聞いております。相手方の真正性の確保や、保有状況を回答するに当たっての効率性の観点でいえば、日本においても同様に実質株主データベースを構築することが最も有効であり、こうしたインフラ面での対応がない限りは、投資先企業から求めがあったとしても、保有状況の説明をちゅうちょしてしまうおそれがあります。

 仮にインフラ面で対の応なくしてコードの改訂のみをもって実質株主の透明性の向上を図る場合には、具体的な照会方法や照会内容について実務の観点も踏まえた上で統一化して、併せてコードに盛り込む必要があると考えています。こうした点が明確でないと、発行会社にとって使いづらく、また、機関投資家にとっても、発行会社ごとに異なる方法・内容による照会に応じることになり、膨大な事務作業が発生することになりかねません。

 次に、協働エンゲージメントの促進についてです。前回会合では、協働エンゲージメントはエンゲージメントの手法の一つとして捉えられるべき旨を申し上げましたが、改訂案ではその趣旨が反映されておりますので、特段異論はございません。資料に記載されておりますが、投資家間での認識を一致させた上で継続的に協働してエンゲージメントを行うことが難しい点を踏まえますと、まずは多数の機関投資家が参加可能な対話の場を設けることが重要と考えています。こうした取組は主に機関投資家側からの働きかけにより行われていると認識しておりますが、発行会社が主体となって対話の場を設けるなど、機関投資家、発行会社双方からのアプローチにより協働エンゲージメントが進むことを期待しております。

 私からは以上でございます。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、オンラインで御参加の田中メンバー、御発言ください。
【田中メンバー】  
 発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。本日、途中退席させていただく関係で早めに発言させていただきます。

 まず、御議論いただきたい事項①の実質株主の透明性向上に関してですが、私は従来、発行会社は実質株主を知る権利があるという英国会社法的な在り方に賛成しておりますので、スチュワードシップ・コードに、機関投資家が発行会社の求めに応じて株式保有状況を開示するという形の原則を設けることに賛成したいと思います。
 それに関連して、本来的には、会社が実質株主について調査し、投資家がそれに答えるという制度を導入するためには、何らかのシステムをつくって、カストディアンないし信託銀行が株式を保有している場合には、実質株主が誰であるかを、システムを通じて開示し、発行会社はそのシステムを通じて実質株主情報にアクセスできるという仕組みをつくることが必要と思います。

 現行法の下でも、信託銀行は、委託者の同意があれば、その株式を誰のために保有しているかを発行会社に伝えることは可能と思いますので、現行法の下でもこういったシステムを構築していくことは不可能ではないと考えております。もっとも、近い将来において、会社法の改正により、実質株主を会社が調査できるという制度ができる可能性が想定されますので、その法改正に合わせてそういったシステムをつくるということでもよいのかもしれませんけれども、法改正を待たずともそういったシステムの構築にぜひ尽力していただきたいと思います。

 先ほども御指摘がありましたように、システム不在のまま、個々の投資家が投資先企業からの求めに応じて株式保有状況を回答するというような原則を課すとしますと、投資先企業からいつそのような問合せが来てもいつでも答えなければならないという体制をとっていないと、原則をコンプライしたことにならないのではないかという疑問が生じまして、原則の解釈しだいでは事務処理上のコストが非常にかかってしまうということが考えられます。そこで、ぜひこういったコードの原則の導入と並行して、システムを通じて実質株主情報が開示されていくような仕組みを、関係者の方々にお知恵を絞って整備していただきたいと考えております。

 それから、2番目の協働エンゲージメントに関してですが、投資家が必要に応じて協働でエンゲージメントするということを検討すべきであるという原則、つまり「べきである」という文言を含む原則を設けることに賛成します。特に小規模な投資家にとっては、個々の投資先企業と単独で対話をすることや、投資先企業に対してあるいは影響力のある提案をすることが難しいこともあるかと思いますので、協働でエンゲージメントすることが効果的なエンゲージメント手段となることも多いと思います。そこで、この指針を盛り込むことをぜひ前向きに御検討いただきたいと思います。

 その上で、指針4-6の改訂案の下に、「註20を削除する」とあります。これについては、前回、私は、今のコードは注がちょっと多過ぎるので整理を検討したほうがいいのではないかと申し上げたことではあるのですけれども、ここでいう註20というのは、2014年2月に公表された日本版スチュワードシップ・コードの策定を踏まえた法的論点に係る考え方の整理というものであります。この法的論点に係る考え方の整理は、どういう場合に株主権を協働で行使することの「合意」がされたと言うべきかという解釈問題を検討しております。

 この点については、公開買付・大量保有報告制度に関する政府令の改正が予定されていると思いますが、そこでの改正は、株主権行使に関する合意があったとしても、重要な経営方針に関する合意でなければ、なお共同保有者には当たらないという形のセーフハーバーを作るということです。そもそもどういう場合に株主権の行使について「合意」をしたと言えるかということについては、政府令の改正後も、なお解釈問題として残るはずです。その点に関してはこの「法的論点に係る考え方の整理」が依然として重要性を持つと考えられます。ですので、2014年2月に公表された整理そのものを残すわけではないとしても、今般の大量保有報告制度の改訂に合わせて、適宜文言を修正した形の法解釈に関する整理をぜひ残していただきたいと考えております。

 私の意見は以上です。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。続きまして、オンラインで御参加の北後メンバー、御発言をどうぞ。

【北後メンバー】  
 ありがとうございます。企業年金連合会の北後でございます。1回目は欠席で大変申し訳ございませんでした。

 まず、実質株主の透明性向上についてでございますが、方向性としては賛成でございます。ただし、幾つかの機関投資家側から不安の声が寄せられておりますので、21ページの改訂案については2点ほどコメントさせていただきます。

 まず1点目ですが、機関投資家は日常的に売買を行っていますので、やはりデイリーベースで正確な数字を説明するというのは難しいですよね。ですので、それを常に説明しなければならないとするとコスト負担になるというような不安が寄せられております。このような不安を解消する観点から、指針4-2の改訂案の末尾を「合理的な範囲で説明すべきである」というように、「合理的な範囲で」という言葉で、投資家の事情に応じて例えば概数での説明あるいはマンスリー、クォータリーベースの説明、運用会社単体の保有株式数の説明でも許容されることを明確化してはいかがでしょうか。そもそもコードはプリンシプルベースですので、自明の事柄かもしれませんが、機関投資家は真面目な方が多いので、不安を解消するという意味でこのような御検討をいただけると幸いです。

 2点目です。保有株式数の説明がアセットオーナーとの守秘義務違反になるケースもあるとの意見も寄せられております。そういうような場合にはエクスプレインでの対応が想定されます。エクスプレインに際して、守秘義務に抵触するような詳細な説明は必要ないという理解でございますが、念のためそのような理解でよいか確認させてください。あるいは、そのような注意書きをお願いできればと思います。

 続きまして、協働対話についてです。こちら、私自身が機関投資家対話フォーラム、IICEFの活動に参加しておりますので、その観点から幾つかコメントをさせていただきます。

 まず、前提といたしまして、協働対話で実現できる効果は大きく2つあると考えています。1つはエスカレーションの観点です。個別企業の個別課題に対しまして協働で対話を行うことで、個別に対話を行う場合よりも効果的に投資家の意見を伝えることができます。もう1つは、効率化の観点です。個別の対話をそれぞれが実施するとどうしても効率が悪くなることがありますので、投資家共通の意見を幅広く多くの企業に示すことや、中・小型企業などについては、対話を分担することによって対話の効率化を図ることができます。実際に多くの企業から、協働対話で議論できた事実や内容について「ありがたかった」という言葉をフィードバックでいただいております。

 なお、事務局説明資料22ページでは留意点として幾つかのデメリットが指摘されているのですが、これは私どもの目から見ますと、やや短期のアクティブ運用業者を念頭に置いたもののように感じます。機関投資家協働対話フォーラムは、中長期あるいは超長期の視点で幅広く運用する機関投資家で構成されておりまして、中長期的な投資リターンの拡大という目的が共通していますので、ここに記載されているようなデメリットは感じたことはございません。

 その上でのコメントですが、今、協働対話活動をしているとされるほかの投資家団体の多くは内容が分からないのでちょっとはっきりとは言えないのですが、EやSを協働対話のメインテーマとして取り扱っているように見受けられます。しかし、原点に戻りますと、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの目的は、あくまでも上場会社の企業価値向上であり、特に我が国では資本効率やガバナンスといったより重要な課題がいまだに取り残されておりますので、こういった重要課題こそ機関投資家が協働で効果的・効率的に取り組んでいくべきものと考えております。

 その意味で、指針4-6の改訂案の2文目は、事務局案ですと「投資先企業の持続的成長」となっておりますが、「持続的成長」というと、EやSを連想して結びつけてしまう投資家が多くなりがちですので、「投資先企業の企業価値向上」に修正してはいかがでしょうか。この辺り、企業側の懸念を必要以上に勘案すべきではないと思います。

 また、実効的な協働エンゲージメントを促進するという観点から、英国コードのように協働エンゲージメントに関する開示説明を促す文言を追記してもよいのではないかと思います。IICEFでは、まだ不十分かもしれませんが、ホームページで既に行っております。

 それからあとは細かな点ですが、改訂案では、「必要に応じ、選択肢として検討すべき」となっておりますが、協働エンゲージメントという手法が国際的に確立されているにもかかわらず選択肢として検討しないというのはあまりに無責任ですので、「必要に応じて」という言葉は削除してもいいのではないかと思います。

 また、改訂案では、「単独でこうした対話を行うほか」という文言が入っておりますが実効的な対応が実現できるのであれば、協働エンゲージメントのみを行うという選択肢もあり得ると思います。その意味では、「単独でこうした対話を行うほか」という言葉は削除してもいいのではないでしょうか。一応スリム化という課題もございますし。

 最後に、申し訳ありません、ちょっと長くなっていますね。毎回同じことを申し上げて恐縮なのですけれども、スチュワードシップ・コードの実効性を高めるためには、やっぱりファイヤーパワー、つまり、「声の大きさ」の強化は必須です。銀行や一般事業法人のスチュワードシップ・コード対象化と、特に銀行のアセットオーナー・プリンシプルの対象化を強く求めます。機関投資家全社がスチュワードシップ・コードという錦の御旗を持って挑んでも、もちろんそれでさえ実現されていませんが、東証のたった20%弱しか持っていない機関投資家だけに重責がかかる現在のスチュワードシップ・コードによって、投資家の疲弊や無力感はピークです。例えば、投資家が過去10年に亘り、相当の時間とリソースを割いてエンゲージメントを行い伝えて無視されてきたことが、東証の一言であっという間に企業側が実行に移すのが現実です。今のスチュワードシップ・コードは、企業のコーポレートガバナンス改革を促す有効かつ強力なツールにはなっていないし、なり得ません。

 私からは以上でございます。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、会場で御参加の三瓶メンバー、御発言ください。

【三瓶メンバー】  
 三瓶です。私も論点2つについて申し上げます。

 まず、実質株主の透明性向上について、透明性向上自体に異論はありません。ただ、株式保有状況は、今も御指摘ありましたけれども、複合的な理由で日々変わっています。ですから、いつの時点の状況を運用会社の誰が答えるべきかというような実務的な対応の準備が必要だと思います。例えば四半期末または月末、こういうふうに定期的に集計して、問合せ対応用のデータベースを構築するなど、システム構築や体制整備の準備というのが各運用会社で必要だと思います。

 これまでコードの改訂発表後6か月間以内に新たな部分についてコンプライ・オア・エクスプレインということを公表するようにというのがありましたけれども、そういうリードタイムだけではなくて、こういったシステム構築等の体制構築をするのであれば、そういうことも考慮して、それについてはどういう書きぶりで、コンプライするつもりだけれどもまだ構築中とか、いろいろな書きぶりの幅というか、そういうことを与えてもいいのではないかというふうに思います。このことは21ページの3ポツに書いてある「対応方針についてあらかじめ公表しておくことが望ましい」ということと関連するのではないかなというふうに思います。

 次に、論点2の協働エンゲージメントですが、ここに協働エンゲージメントの促進という「促進」という言葉が入っているのですね。これはちょっと違和感があります。「選択肢としての考慮」ぐらいでいいのではないかなと思っています。まず、今もお話がありましたけれども、英国のコードまたはICGNの原則で協働エンゲージメントをエスカレーションの一手段として捉えているのですね。ですから、例えば英国のコードの2010年版と2020年版を比べると、エスカレーションと協働エンゲージメントの項目がありますが、両方とも2010年はshouldだったのが、2020年にはwhere necessaryになって少し弱められています。ICGNのプリンシプルのほうでも2016年版と2024年版を比べると、やはりエスカレーションはshouldからmight be escalatedに、協働エンゲージメントのほうはshouldからmay considerに緩和されています。

 今日も御説明ありました16ページ、17ページにあるように、英国コードの見直し案でも、安易に協働エンゲージメントに走るのではなくて、エンゲージメントの様々な形態を思慮深く選択することを促していると思います。ですから、日本が後ればせながら、とにかく促進というのはちょっとずれているかなという感じがします。今回の改訂案ですけれども、アンダーラインしてある「選択肢として検討すべきである」というところは、もう検討することが決まってしまっているので、それよりは「選択肢として考慮すべきである」ぐらいでいいのではないかなというふうに思います。

 前回議論で注記が多過ぎるので削除という話があったのですが、協働エンゲージメントを選択する場合の留意事項、または意義あるものにするための留意事項ということを注記するのはあるのではないかというふうに思います。留意事項として挙げられるのは次のようなことです。協働エンゲージメントの参加者間のギブ・アンド・テークのバランスです。ギブしかしないということになると参加したくないですよね。だけど、参加したいのは、テイクばかりしたい人。これでは全然成り立たないので、ここのバランスが大事です。

 そして、協働エンゲージメントで求める成果の目線合わせ、これが非常に重要です。例えば13ページにある重要提案行為の関連では、提案行為の目的ということです。ここの目線合わせがちゃんとできていないと途中で崩れてしまいます。

 また、エンゲージメントは複数回、数年に及ぶことがあります。そういったことを考慮してコミットできる時間軸、投入できるリソース、こういうことも考慮すべきです。そして、進捗が芳しくないときに長引きますけれども、そのときにどういうエスカレーションをするのか。これは13ページの重要提案行為でいうと、提案行為の態様になります。ここでまたズレがあると、うまくいかないです。ですから、こういったことを参加する前に確認するとか、参加条件として考える必要があるだろうということで注記等に書いておくのはあり得るのかなというふうに思います。以上です。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。続きまして、井口メンバー、御発言ください。

【井口メンバー】  
 ありがとうございます。まず、御説明ありがとうございました。私も御議論いただきたい事項に沿って意見を申し上げたく思います。

 最初の実質株主のところですが、建設的な対話を行うため、企業にだけではなくて投資家にも透明性を求めるという趣旨は了解いたしました。ただ、投資家にとって、私も含めてなんですけど、保有株数で対話するのではなく、対話内容を充実させること、そして、そのためには自ら研鑽し、スチュワードシップ活動を通じて企業価値向上に努めるということが、スチュワードシップ活動の本質ではないかと思っております。また、一部先進的な企業では、保有株数で対話先を選ばず、建設的な対話ができる投資家と対話するということを公言していらっしゃる企業もいらっしゃいます。ということで、私も実はこれまで企業から保有株数を聞かれたことがないというような状況になっています。ただ一方で、保有株数で企業を動かそうとする投資家が一部いて、制度的には、全ての投資家に透明性がより求められるという状況も理解しております。

こういった考え方を踏まえまして、保有の開示には賛同いたしますが、現状の指針4-1の註15の最初の「株式保有の多寡にかかわらず、機関投資家と投資家先企業との間で建設的な対話が行われるべきである」は重要なところですので、4-2に入れるか、あるいは注釈に入れ、残すべきではないかと思っております。

 あと、3つ目の四角にあります、対応方針の開示の有無に関するところですが、先ほど、三瓶さんも少しおっしゃっていましたが、私も集計頻度や、どういう保有株数の集計をしているかとか、そういうことを補足できるという意味で、意味のある開示になるのではないかと考えております。

 2つ目の論点の協働エンゲージメントです。まず、前回プレゼンさせていただきましたが、留意点もくみ取っていただいてありがとうございます。指針4-6の記載には賛同します。その上で、2点申し上げたく思います。

 1点目は、前回プレゼンさせていただきましたように、個別に企業に直接的に働きかける協働対話と、本日いらっしゃるICGNや、あるいはPRIのように、投資家の行動に働きかけて、基本的な考えを共有しながら、個別の判断を投資家に委任するという、間接的な協働対話という2つがある認識しております。今回の御提案にありますところで、個別企業への協働対話について明確にされているところはいいと思うのですが、ただ、現在の指針7-3を削除してしまうと、これまで日本のスチュワードシップ活動のレベルアップ向上に大きく寄与してきました間接的な協働対話がコードから全く抜け落ちてしまうのではないかということは懸念しております。ですので、改訂版の指針4-6に集約する形でもよいと思いますが、指針7-3の内容、あるいは間接的な協働対話の記載については、何らかの形で残すべきではないかと思っております。

 2点目は註20の削除についてです。これは田中先生もおっしゃっておりましたが、13ページで御説明いただきましたように、重要提案行為とか共同保有については明確化していただきましたが、投資家としてはこのルールに従うという責務は残ると思います。最後のページの一番下にあるICGNの協働エンゲージメントの規定でも、act in concertについてリマインドされていると理解しておりますが、現状の指針の4-6に、注意喚起の意味で、重要提案行為や共同保有について追記したほうがよいのではないかと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。続きまして松岡メンバー、御発言ください。

【松岡メンバー】  
 松岡です。発言の機会をいただきましてありがとうございます。

 実質株主の透明化を目指すスチュワードシップ・コードの改訂案については、会社と株主の対話の促進という観点とともに、市場における株式保有の透明性、また、情報の対称性に基づいた健全な在り方が重要だと考えます。昨今、アクティビストやヘッジファンドなどの投資家の動きも活発化しております。昨年8月には経産省から企業買収における行動指針も公表され、海外投資家のM&Aによる日本企業の投資意欲がますます高まる中で、そういった一部の投資家だけではなく、対象となる企業はもちろん、既存の株主やその他の投資家にとっても、株主保有と関連するプロセスが透明性の高い形で進行するというのが健全な資本市場の在り方に資すると考えております。

 理想的には、企業が実質株主を把握して、自社の成長戦略を吟味し、投資家からの買収を含む提案があった場合にも、タイムリーかつ効果的なエンゲージメントを準備し、実施できるようにするべきです。既存株主も企業買収等の局面において、提案する側がどのような投資家であるかを把握した上で、提案者側と会社側の双方の提案や意見を誠実に検討し、対話できる環境をつくるということが、企業だけではなく、提案者、そして資本市場全体にとっても有益であり、かつ健全であると考えております。

 そうした意味では、改訂案のように、機関投資家が投資先企業からの求めに応じて株式保有を回答するのは当然として、機関投資家には自ら定期的に株式保有状況を開示することが期待される旨も盛り込むことを要望いたします。米国では既に実施されており、日本でも検討可能であると考えます。

 また、発行会社としては、機関投資家に株式の保有状況を直接確認したい場合もあれば、株主人名簿に記載された名義株主に指図権者を確認したい場合もございます。そこで、企業が実質株主の情報を実効的かつ効率的に把握できるよう、システム面の対応も含めて実務上の負担を最小限に抑える対応策を関係者間で御検討いただきたくお願いする次第です。

 次に、協働エンゲージメントに係るコードの改訂案についてですが、「投資先企業の持続的成長に資する」の部分に、私どもとしては「持続的かつ中長期的な成長」など、「中長期的」という言葉を盛り込むべきと考えております。協働エンゲージメントを実施する機関投資家の間で想定している成長の時間軸が異なるケースもあり得ると考えるからです。先ほどの例で申し上げるならば、アクティビストや一部のヘッジファンドの利益志向は比較的短期である傾向が見られる一方で、中長期的な企業の成長を志向する投資家もいらっしゃいます。ここは本コードの趣旨に鑑み、あくまでも中長期的な成長にこだわるべきであると考えております。

 また、金融庁におかれましては、コード改訂の趣旨が徹底されるように、協働エンゲージメントが効果的なケースについて、ベストプラクティスや方法論の共有をぜひ行っていただければと思います。

 さらに、アセットマネジャー間で十分に合意が取れていないと思われる、踏み込んだ協働エンゲージメントが行われる懸念を払拭するために、企業からの通報の窓口を設けるなど、金融庁としても正しく運用されているかのフォローアップをぜひ行っていただければと思います。

 よろしくお願いいたします。以上です。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きましてオンラインで御参加の高山メンバー、御発言ください。

【高山メンバー】 
 御発言の機会をいただき、どうもありがとうございます。私からは、実質株主の透明性向上について意見を述べたいと思います。

 まず、スチュワードシップ・コードにおいて、機関投資家がその保有状況を発行会社から質問された場合には、これに回答すべきであることを明示すべきであるという案に賛同します。投資家の保有状況は、投資家と企業が対話を行う際に、企業にとって重要かつ不可欠な情報であるからです。このような対応により、対話の質がさらに向上することが期待できます。

 それから、次に、機関投資家は、投資先企業から求めがあった場合の対応方法について、あらかじめ公表しておくことが望ましい旨をコードに追記するという案にも賛同します。投資家がどの程度コードを遵守しているかについては、外部から判断するのが難しい状況にあります。しかし、投資家が対応方法を公表することによって、実態についてある程度把握できると考えます。また、企業においてもこのような情報は、投資家と対話する際に大変参考になります。ただし、具体的な対応方法については、現段階においては各投資家の判断に任せることが望ましいと考えます。これにより、投資家においても、適切な範囲で対応することが可能になると考えます。

 私からは以上です。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。続きまして、藤本メンバー、御発言ください。

【藤本メンバー】  
 日本生命の藤本でございます。御発言の機会をいただき、ありがとうございます。御議論いただきたい事項2点につきまして、これまでにお伺いしました御意見と重なる点もございますけれども、生命保険会社という中長期的な投資家としての観点から述べさせていただきます。

 1点目、実質株主の透明性の向上についてです。前回も述べましたが、対話に当たっては、企業との信頼関係を維持しつつ、持続的成長に向けた取組を後押しすることが重要だと考えております。したがって、投資家が保有する株数を企業からの要望に応じてお伝えすることは、信頼関係の維持という観点から重要と理解をしております。

 一方で、こうした場合には、投資家はそれぞれ各企業からの要望に一件一件対応していく必要が生じると想定されます。具体的には、問合せが業務繁忙期に集中する可能性や、相手方が本当にその企業の担当者なのか確認が必要だといったような課題があるほか、いつ時点の株数をどのような形でいつまでに回答するかなど、様々な形での要望が想定されますので、場合によっては投資家の負担も相応に大きくなる可能性があるというふうに認識しております。

 こうした実務面の論点がある中で、企業から求めがあった場合の対応方針を現時点で定めることは難しく、企業と投資家の建設的な対話のため、信頼関係の醸成を促進するという制度趣旨を踏まえると、実務的に可能な範囲で対応するという余地を残しておくことがより望ましいのではないかと考えております。

 2点目、協働エンゲージメントの促進についてでございます。対話の実質化・高度化に当たっては、各投資家が自らの方針やスタンス、リソース、対話テーマなどを踏まえつつ、創意工夫を凝らして多様な取組を可能とするようにしておく必要があります。今回の協働エンゲージメントに関する改訂案は、「必要に応じ選択肢として検討」といった文言が入っており、投資家の選択肢を狭めるものではないと認識をしております。なお、前回述べました生命保険協会の協働エンゲージメントについてですが、前年度は約150社の企業に対して実施しております。参加各社の連名でペーパーをあらかじめ送付した上で、各社で分担して対話に取り組んでおりまして、個々の負担を軽減しつつ、全体として多くの企業にアプローチできるという点にメリットを感じております。

 また現在、株主還元、財務情報と非財務情報の統合的な開示、そして、気候変動の情報開示充実をテーマにしておりますが、これらの対話テーマは、参加する生命保険会社各社の投資哲学や投資期間が比較的近く、認識の相違も起きにくいことから、継続的な取組が可能となっております。成果としては、株主還元や統合的な開示のテーマについては、それぞれ対話先企業の約3割の企業が翌年度には要望事項に対応、気候変動の情報開示充実のテーマも約9割超の企業が要望事項に対応していただいておりまして、また、未対応先も、全社が改善に前向きであるということを対話の中で確認をしております。

 このように、協働エンゲージメントは投資家の考え方やスタンス、対話テーマ等を踏まえて活用することで、有益な対話の手段となり得ると考えております。生命保険協会としましては、今後も対話のテーマも含めまして実質化・高度化に努め、投資先企業との信頼関係を維持しつつ、企業の持続的成長に向けた取組を後押ししていきたいと考えております。

 以上でございます。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。続きまして、西村メンバー、御発言をお願いいたします。

【西村メンバー】 
 ありがとうございます。住友理工の西村でございます。私からは、企業経営の立場から発言をさせていただきたいと思います。

 まず、前回も申し上げましたが、前提としてマルチステークホルダー経営を推進していくという観点からは、スチュワードシップ・コードにも株主以外の多様なステークホルダーに対する配慮、こういうことの旨を追記することが有効ではないかなと考えております。さらにコーポレートガバナンス改革の趣旨を達成するためには、投資家がスチュワードシップ・コードを遵守することが不可欠であると考えておりますが、その観点からも投資家の遵守状況を定期的にモニタリングする仕組み、これも必要なのではないかなと考えております。

 さて、今日の議論でございますけれども、まず実質株主の透明性確保に関してでございますが、実質株主の調査に関しましては、海外投資家を必ず制度対象にする設計が重要だと考えております。日本取引所グループが発表いたしました株式分布状況調査によりますと、外国法人等の保有比率が31.8%と、比較可能な1970年度以降では過去最高でございます。また、株式保有金額は、320兆4,750億円と、前年度から約4割増えている状況でございます。かかる状況下では、やはり外国市場での有価証券の決済及び保管管理を行います、いわゆるグローバルカストディアンや海外投資家を必ずカバーしなければ、企業にとっての実質株主を把握することが進まないと懸念をするところでございます。そのためには、原則主義のスチュワードシップ・コードではなくて、その方向に進んでいると思いますけれども、法制度上の整備により実質株主を調査する法的権限を、信託銀行や常任代理人と言われているような銀行、証券会社にも与えるとともに、グローバルカストディアンや海外投資家に回答義務を付与することで、確実に実質株主の透明性確保が進む制度の構築をお願いしたいと思います。

 次に協働エンゲージメントでございますが、現状の投資家のリソースの不足を補うという観点からも有用な取組として、協働エンゲージメントの活用が取り上げられているところでございます。私どもとして、協働エンゲージメントは複数の投資家が1つの企業に対して対話を行う、もしくは複数の投資家の代表者が企業と対話を行っていくということになろうと思いますが、いずれの場合にしましても企業に過度なプレッシャーを与える懸念があろうかと思います。金融庁には相談窓口等を設けていただきまして、高圧的な対話を行う投資家に対する対応を行うという体制整備をできればお願いしたいと思います。

 また、実質株主の透明性確保とは若干異なる論点でございますが、いわゆる日本版ウルフパックと言われているような問題に対する対応も非常に重要であろうかと考えております。過去の判例を見ますと、アクティビストなどが複数の投資家と示し合わせて密かに企業の株を買い集める際に、大量保有報告制度の報告遅延、あるいは共同保有者の報告を行わないといったような問題がございました。この点、ドイツなどを参考にして、違反した投資家の議決権を停止するなど、現状の規制を強化して、実際にエンフォースメントが働く、こういう体制にしていただくよう検討をお願いしたいと思います。

 また今後、大量保有報告制度を悪質に違反した投資家を、金融庁においてリスト化し、日本企業に投資をしようとする海外投資家が、いわゆるグローバルカストディアンを活用する際に、例えば反社のチェックとか、マネロンのチェックを行っていると思いますが、そういうタイミングで大量保有報告制度違反の投資家リストも検索できる、そういう業務フローを追加していくようなことも必要ではないかと存じております。金融庁がガイドラインなどを作成して、旗振り役として御対応いただければ大変ありがたいと思っておるところでございます。

 私からは以上です。ありがとうございました。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、上田メンバー、御発言ください。

【上田メンバー】  
 御指名ありがとうございます。また、御説明もありがとうございます。私も、御議論いただきたい事項に沿ってコメントさせていただきます。

 まず、実質株主の透明性向上についてです。御提案されている内容について、ここの文言については賛同いたします。ただし以前この問題について議論した際に、投資家サイドから、そして本日もほかの投資家からありましたけれども、日々の取引まで把握することは負担が大きいという御意見があったかと思います。したがって、ここは実効性を確保するため、一方で、投資家側の負担を一定程度理解しつつ、そして企業との対話を促進することが重要です。企業から過度な、昨日の数字を求めるという事態がないように、事前に情報提供の頻度、例えば毎月末とかであるとか、方法について、企業から直接、企業が何百投資家へも問合せをするかというと、恐らく代理人を使ってくるという可能性もありますので、その辺りの方法について方針を定めたりして、これを事前に公表しておくことでコミュニケーションがより円滑にできるのではないかと思います。

 今の代理人の活用、先ほど御懸念も投資家からあったようですけれども、海外ではこういう実務もあるということですので、実務として回ればそれほど負担はないのかなと思います。こういった内容については補助原則で、内容がどんどん増えていくのは懸念ではありますが、こういう方針をつくっておくとか、そういう形というのもあり得るかと思います。

 また現在、会社法改正が始まっているとのことです。今回のスチュワードシップ・コード改正というのは、法改正に向けたプロセス内での先行する取組というふうに理解しています。とはいえ、コードでの対応というのは現状の対話ベース、できるベースでの取組を促すということかと思っております。ただ、コードだと情報提供についてエンフォースメントが弱いのではというような気もいたしますし、またイギリスの会社法の仕組みでは、必ずしも海外ファンド等を中心に捕捉できない場合もあるというふうな話も聞きます。その意味で、欧州のユーロクリアを使う方法とか、あるいは大量保有の報告書ですかね、金融庁からの報告書にはやらないと書いてありますが、アメリカのそういう開示ベースというのもあるかと思います。システムとかデータベースをどうするかという視点も含めて、いずれは法改正を通じて網羅的に取れるようにするのか、そのプロセスの中でコミュニケーションベース、対話ベースでやるという位置づけは明記しておくといったことがあるのかと思います。

 たしかに、ソフトローであるというのはエンフォースメントが弱いかもしれません。しかし、投資家側が企業に強くいろいろ開示を求めているのに、逆に投資家に求めたら、自分たちの情報は出せませんということであれば、そういう評判ということはスチュワードシップマーケットの中で評価ができてくるという、これは1つの規律だと思っております。こういう意味では、コードだからこその効果もあるかと思います。

 関連して、これとは離れますが、大量保有のところ、エンフォースメント、モニタリングがちょっと弱いかなと思います。この会議の論点ではありませんけれども、少し今後、御検討いただくと全体がよくなると思います。

 次に、協働エンゲージメントについてです。基本的に協働エンゲージメントは個別のエンゲージメントを補完する手法であると思います。特に個別の対話では成果が達成できない場合に、選択的に活用できるということです。具体的には、市場全体への影響が大きなテーマ、社会的インパクトのある事案について、必ずしも例えば具体的な提案を行う場合と具体的な提案を行わない場合もあろうかと思いますが、そういう選択的なものであるということだと思います。要求水準も個別ではなくて、標準的な内容での要求といったところに収斂するのではないかと思います。スチュワードシップ・コードに協働エンゲージメントが入った当時から、act in concertの問題というのは、特に英国の投資家等からよく声が出ておりました。そのため、現状、ハードロー、金商法のほうでその手当ても進んでいるということですので、今後はいかに協働エンゲージメントを実効的にするかということを、これはコードの世界で議論していくという段階かと思っています。

 現行コードに「有益である」という評価が入っているのでここはどうかと思ったところですが、申し上げたように、投資家が選択肢として協働エンゲージメントの手法を選択できるということをより広く背中を押してあげるという仕組みでよいのかと思います。ただ、今の御提案いただいている改訂案が、選択肢として検討すべきであるということで、検討しなければならないという感じで、ここは恐らく英語のニュアンスだとmay considerというのですかね、考慮することがいいですよ、必要に応じて考慮できますよ、選択できますよというニュアンスを、より丁寧に日本語として書かれているのかと思いました。英語のほうをちょっと見たのですが、should consider as an optionsはちょっと強いな、considerしなければならないというようなニュアンスかなとも思いました。選択肢として考慮するということができる、考慮していいですよということであろうと思ったので、ここの趣旨はすごく分かりますが、誤解のないよう、例えば、注を書くとか、あるいは言葉、本文自体を触るとか御修正されてもいいのかなとも思いました。ちょっと強いなというふうに感じたという次第でございます。

 いずれにしても方向性については賛同しておりますので、あとは表現のところで誤解がないように、ご検討いただければと思いました。

 以上でございます。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。

 まだ御発言いただいていないメンバーの方で、御発言いただける方いらっしゃいますでしょうか。それでは、佃メンバー、お願いいたします。

【佃メンバー】  
 それでは、私のほうから、まず1つ目の実質株主の透明性向上に関して、足元、いろんな事業会社とお話をしていても、機関投資家サイドでショートターミズムが跋扈しているなという印象もある中で、実質株主の透明性の向上は、非常に大事な論点になるでしょうから、基本的には改訂案に賛成でございます。そうした中で、ここに機関投資家は企業に対して説明すべきという文言があるのですけれども、基本的にはこれでいいのかなと思います。

 あわせて、ほかのメンバーの皆さん御指摘されたように、システム面、データベース面での対応も必要になってくると思います。

 加えて、西村メンバー、それから上田メンバーからもありましたけれども、大量保有報告制度に対する違反状況ですね、ここに関してモニタリング及びサンクションをしっかりやっていくことが、今回のコード改訂をさらに実効的なものにするのではないかなと考えております。これがまず1つ目の話です。

 それから、2つ目の協働エンゲージメントに関しましては、こちらに関しても基本的には改訂案でよいものと考えております。先ほど改訂の文言の中で、投資先企業の持続的成長に資する建設的な対話で、何人かのメンバーの方から、企業価値の向上に変えるべきではないかとか、あるいは中長期的なとの文言を入れるべきじゃないかとあったのですけれども、コーポレートガバナンス・コードの表紙に、「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために」という題があって、私はこのフレーズが刷り込まれているので、持続的成長に資すると読んだときに、中長期的なという概念だとか、企業価値の向上という概念も包摂しているように勝手に思っちゃっているのですけれども、ひょっとするとここの文言はどこに主軸を置くのかについて検討されるといいのではないかなと思いました。私自身は先ほどの企業価値の向上が入っており、中長期的なということも当然の前提かなというふうに理解しているのですが、そこは皆さんどう捉えるかという課題があるかと思います。

 あともう一つは、株主と事業会社の関係性を考えると、どうしても対等の関係というよりかは、やはり議決権行使をする側、それから、される側という関係がある中で、今回、先ほど他のメンバーからもありましたけれども、その副作用もあるかもしれません。それは協働エンゲージメントすることで、よりプレッシャーを感じるという局面ですね。当然、ポジティブなプレッシャーを感じてほしいというのが趣旨だと思うものの、一方で先ほどもございましたけれども、金融庁での窓口設置など、きっちりとセーフティーネット的なものを用意しておくことも必要になるかなと思います。

 私からは以上です。

【神作座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、翁メンバー、御発言をお願いいたします。

【翁メンバー】 
 御説明ありがとうございました。

 実質株主の透明性向上につきましては、私も改訂案に賛成でございます。対話の促進という視点とともに、透明性を高めて市場機能を発揮していくという意味でも大変重要だと思っております。また昨今、本当に海外投資家も含めていろいろな動きもございますので、企業の経営者にとっても、こういった透明性が向上するということは、企業経営にとっても、経営戦略を考える上でもメリットがあるというふうに思っております。

 同時に、今まで多くの委員がおっしゃっておりましたけれども、機関投資家にとっては、どういうやり方が合理的で負担にならないのかということをぜひ御検討いただきたいと思っておりますし、同時に今、6ページで御説明にあったような構造になっている中で、どうやってシステム構築を図っていくかということをしっかり並行的に御検討いただきたいというふうに思っております。

 また、2番目の協働エンゲージメントにつきましても、改訂案に賛成しております。よく整理されたプロコンが書いてあると思っておりまして、やはりリソース不足とかそういった意味では確かにそうでありますし、また今、多くの投資家がまだスチュワードシップ・コードへのコミットをしていない状況にある中で、少しでもこういったところのコミットを促すという面もあると思いますし、中長期的な価値の向上に効果的に機能するのであれば、これは非常にメリットがあると思っております。

 一方で、形式的になってしまうという懸念とか、また大変重要なことは、やっぱり投資家や市場というのは多様性があることが非常に重要だと思っておりまして、投資目的とか投資期間、いろいろ違う投資家が様々な対話とか様々な評価をすることでマーケットというのは意味があるというふうに思っておりますので、そういう意味でも選択肢としてというふうに書いてあることが非常に重要だと私は思っておりまして、こういう方向であり、かつ企業の持続的成長に資するという、そういう文言が入っているということについて賛同いたします。

 以上でございます。

【神作座長】 
 どうもありがとうございました。続いて、武井メンバー、御発言ください。

【武井メンバー】 
 ありがとうございます。1つ目の実質株主の向上の点なのですが、4-2の改訂案は、原案の「説明すべきである」という文言に賛成でして、望ましいとか、そういうふうに文言を付けて後退させることはすべきでないと思います。

 また、投資先企業から求めがあった場合の対応方針についての公表、これも書くべきだと思います。先ほど上田さんも少しおっしゃっていましたけれども、全般的にまさに企業側にはいろいろな形で透明性が求められ、いろんな情報を出しているわけですけれども、投資家さん側におかれては、こうした透明性の話になったときに、取りようによってはやはりちょっと後ろ向きな発言がいろいろ出てくるのは、少し正直気になります。

 例えば、売るつもりがあるから株数を出せませんとか、守秘義務があるから出せませんとか、あと同意が取れていないから出せませんとか。そういうことを言い出したら情報はもう出てこないですよね。いくらでもそうした理由がまさに乱造組成されてしまうので。そういう理由でこの文言を直しましょうとなると、なおのこと文言を直すべきでないと思います。逆にこのソフトローの世界の中ではこういうふうにはっきりと書いておかないと、いろんな理由をつけて結局情報が出てこないのではないかなと逆に強く思いました。あと、システムは構築していくべきだと思いますけれども、システムが仮に整備できたとしても、いろんな理由で出せません、このシステムは使えませんということを言う人も出てくるのではないかなとも懸念しました。

 ですので、これはあくまでスチュワードシップ・コードというソフトローであって、コンプライ・オア・エクスプレイン・ベースであって、そういうレベルで書いているのに、ここまでこういうのができませんと言われると、逆にここのソフトローの世界で、きちんと「説明すべきである」というふうに書いておかないと、きちんと回らないのだと思いました。

 あと「合理的範囲」という修正も私は反対です。原案も「どの程度」というふわっとした書き方しかしてないので、どのぐらい言うのかは、実際、最後は実務に落ちていく話なわけで、できることとできないことがある中で、できないと言っていることも本当にできないのかを問うて、みんなでやっていきましょうというのがソフトローであるスチュワードシップ・コードにサインアップしていくという行為のはずです。いろんな言い訳があるからこの文言を後退させましょうとなるのは、まさにいろんな形で情報が出なくなる懸念がありますので、今の原案の文言から後退させることなく進めていくべきだと思います。

 あと冒頭の「保有株数の多寡にかかわらず対話すべき」という箇所も、これも今の投資家さんの「できれば情報は出したくない」というお気持ちがあるのであれば、ここも原案通り削るべきだと思います。「教える以上、絶対会え」とか、そんなふうに言ってくるかたがいるのではないかとすら思うのでこの一文も原案どおり削るべきだと思います。

 考え方としてはみんなでこれをやっていきましょうというときに、原案のシンプルな表現が一番分かりやすいので、原案でやっていくべきだと思います。そういう意味で、金融庁さんの原案で私はいいと思います。

 あと協働エンゲージメントのほうにつきましては、既に論点も出ていますし、これもソフトローの文言にどう書くかは大体論点も出尽くしていますから、どう書くかは事務局にお任せと思っています。さきほど三瓶さんのほうからもありました、いろんな協働エンゲージメントが効く場合、効かない場合、あと留意点など、いろんな形の実務面があるので、そういった点をどうまとめるかという話だと思います。機関投資家間での意思は三瓶さんがおっしゃいましたし、あと企業から見たときの見え方の論点は松岡さんとか佃さんがおっしゃった論点があると思うので、そういった点をどういう形で、スチュワードシップ・コードの外でどう示すのかということかなと思います。

 スチュワードシップ・コードは短くするということだったので、文章の量を増やすのは本末転倒かもしれませんので、留意点をどういう形で金融庁がまとめるかという中でやるのが大事で、それを踏まえてコード自体の文言をどう書くのかは、お任せかなと思います。

 以上です。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、大場メンバー、お願いいたします。

【大場メンバー】 
 私からは3点申し上げます。1つは、前提として、基本的に御提示いただいた原案に賛成したいと思うのですが、その趣旨は、インベストメントチェーンの中で好循環をつくっていくっていうことがそもそもこの議論の前提でございますので、そういう観点はやっぱり忘れてはいけないということではないかと思います。こういうテーマを設定して議論すると、どんどんスペシフィックに入っていきますが、もともとはこの日本の社会の中で、お金を有効に活用して、好循環のインベストメント社会をつくっていくのだと、こういうことが前提になっていますので、そこをやっぱり忘れないようにしないといけないと思います。

 2つ目は、これは皆さんから出た意見なのですが、実質株主については、最終的には法的整備が必要になってくるのではないかと思います。結局、実務的な問題もあるのですが、コストを誰が負担するのかという問題も生じてくると思います。負担するのは発行会社なのか投資家なのかと、実務的にそういう問題が出てくると思います。

 それから、もう一つ協働エンゲージメントについて実務的な問題を言いますと、私、ロンドンでもヒアリングしたのですが、協働エンゲージメントの趣旨は皆さん賛同するのですが、ロンドンでの意見を踏まえましても経営資源は誰が負担するのかという議論になってきます。つまり、主幹事としてやっていくところに負担がかかり、結果として、フリーライダーがいっぱい出てくるという問題です。この人たちにとっては便利ということだと思います。こういった問題が実務的に起きる可能性があるということではないかと思います。原案に反対しているわけではありません。

 それから、皆さんから出なかった意見としては、日本でこの議論をやると難しくなるなと感じるのはどういうことかなと考えてみますと、日本の投資家の投資対象があまりにも広いことにあるように感じます。多分TOPIXを前提に投資をしているということがあると思うのですが、2,200銘柄、海外でこういう数の投資対象になっている事例というのはあまり聞かない。一部はあるのですけど、もう少し投資対象が絞り込まれている。範囲がすごく限定されているので、お互いに深い理解の下に対話ができるということだと思うのですが、日本は少し投資対象が広過ぎるので、皆さんからちょっと御指摘なかったのだけれども、今後考えていかなければいけない重要な視点かなというふうに思います。

 以上です。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。一通り、本日御参加いただいておりますメンバーの方から御発言をいただきました。ありがとうございます。

 そこで次に、オブザーバーの方々で、もし御意見がございましたら、時間の許す範囲内で御発言いただきたいと思います。オブザーバーの方で発言の御希望はございますでしょうか。信託協会の方、どうぞ御発言ください。

【信託協会】  
 信託協会でございます。

 信託協会といたしましては、運用会社の一面もございますので、その観点で、実質株主透明化についてのコメントを1つ。皆さんおっしゃったことと類似するのですけれども、機関投資家の立場としましては、多数の企業から任意のタイミングで都度対応してくれというふうに求められましても、必ず応じられるとはなかなか言い難い、コスト面でも人員面でも言い難いということだと思います。そういう意味では、機関投資家毎に色々な設定が出てくるのだろうと思っております。本日議論を伺っておりましても、企業の求めているレベル、水準というのは非常に高いものを感じておりますし、一方で我々が機関投資家の立場で出せるレベルとして想定していたものも若干ずれているように、私も拝見させていただきました。

 そういう意味では、ソフトロー下の現状においては、ある種実務的に対応可能な範囲ということが認められるべきではないかというふうに思います。例えばですけれども、機関投資家側は建設な対話のために株式数を回答する、といったことは考えていると思うのですけれども、調査目的みたいなことでたくさんの照会を受けるというのはなかなかつらいものがあると思っておりますので、そういった内容を対応指針に書くというようなことも1つ考えられます。

 また、もう一つ、資産管理銀行としての立場もございますので、その観点でも1つ申し上げられればと思います。私ども資産管理銀行は信託財産管理を担うということで、議決権指図権限とか投資権限を有しておりません。したがって、スチュワードシップ・コードにおける直接の名宛人ではないと理解しておりますけれども、私どもとしましては、ハードロー化の議論も並行して行われておりますので、そちらの中で名義株主としてインフラ整備含めて枠組みづくりに貢献していきたいと考えております。

 また、今からでもシステム整備を、というようなご意見もあるかもしれませが、一方で我々、今時点で発行会社単位での処理は行っておりません。したがいまして、私どもが今から何かするということになりますと、システム整備、コスト負担費などを相当かけないとできないと考えております。したがいまして、ハードロー下の中で、外国人投資家の方々をどうするのか、こういったことも含めて全体として整理ができた中で、我々はシステム化を考えていかなければならないのではないかと考えております。

 私からの発言は以上でございます。

【神作座長】  
 どうもありがとうございました。ほかにオブザーバーの方で、御発言希望される方いらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。

 まだ若干の時間が残っておりますので、本日扱われたその他の論点につきましても、何か御意見がございましたら御発言いただくとともに、あるいはほかのメンバーの御発言を聞かれて、追加の御意見、御発言がございましたらどうぞおっしゃってください。

 それでは、シッソンメンバー、御発言ください。

【シッソンメンバー】 
 私のほうから、先ほど申し上げましたことで、もう一度強調させていただきたいことがあります。協働エンゲージメントに関しまして、どのような言葉を使うにしましても、セーフハーバーということの問題が解決されなければ、適切な参加を得ることはできないと思います。海外の投資家というのは、act in concertということに関しまして大変センシティブに対応いたしますので、安全な形でやっていくことができるような状況をつくり出していくということが大変重要になります。

 実質株主に関しましても、何らかのシステムをつくることによって、誰が議決権を持っているのかということを知ることができるような仕組みづくりが必要であると思います。といいますのも、アセットマネジャーの中には、運用している資産の中で、クライアントが独自に議決権を行使するという場合も入っていることがあるからです。ですので、二重に複雑になるということもありますので、そういった仕組みづくりをしていくということが重要になってくると考えられます。

【神作座長】 
 シッソンメンバー、どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。追加の御発言ございましたら。それでは、上田メンバー、どうぞ。

【上田メンバー】 
 ありがとうございます。お時間があるということで、本日の資料に追加いただいたところについて、1点コメントをさせてください。

 最近、イギリスのスチュワードシップ・コードのコンサルテーションが開始されて、こんなに早くまとめていただいて、大変ありがとうございます。ここで、1つ少し注意しなければいけないなという点があります。18ページに報告の負担軽減について書かれているかと思います。これももっともな内容なのですが、ただこれ、日本で無邪気に聞くと間違った理解をするといけないなということで、そこだけ今後、注意いただきたいと思います。

 イギリスでは運用機関サイドも、まず100ページレベルの大量の報告書を出して準備して、FRC当局とのやりとりを密にしていたりということで、運用機関サイドも当局サイドも相当なモニタリングであったり対応に負担がかかっているといった状況です。そのため、もう少し実質的なところに力をかけるようにしてもいいのではないか、コンプライアンスコストとして負担が大きくなり過ぎているのではないかというような理解があるのではないかと思っているわけです。これに対して日本の場合は、今、各運用会社において独自の努力でいろいろな報告をされておられます。ただ、これは例えばもともとの方針については当初公表したままで、コードが改訂されない限りはそのままの場合が多いでしょうし、スチュワードシップ活動の報告についても、各アセットマネジャーさん、アセットオーナーさんの開示に任せているということで、この評価もされていないということでもあります。何となく負担が大きいから軽減してあげようと、スチュワードシップ・コードが複雑化しているので軽減しようという、こういう内容ではなくて、実効性を上げるために必要なところに力をかけるという背景であるといったところは、少しコメントをさせていただければと思ってお時間頂戴いたしました。ありがとうございました。

【神作座長】  
 上田メンバー、貴重なコメントありがとうございました。ほかに御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、定刻よりもちょっと早いのですけれども、本日、既にたくさんの御議論をいただき、ありがとうございました。事務局のほうで整理をしていただき、また御議論いただきたいと思います。

 最後に、事務局から御連絡等がございましたらお願いいたします。

【野崎企業開示課長】  
 次回の有識者会議の日程でございますけれども、皆様の御都合を踏まえた上で改めて決定させていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと思います。

 事務局からは以上でございます。ありがとうございます。

【神作座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。お忙しいところ御参加いただき、誠にありがとうございました。
 

―― 了 ――

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企画市場局企業開示課(内線:3849、3659)

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