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「スチュワードシップ・コードに関する有識者会議」
(令和6年度第3回)議事録
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1.日時:
令和7年2月26日(水曜日)16時00分~18時00分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室
【神作座長】
ただいまより第3回スチュワードシップ・コードに関する有識者会議を開催いたします。皆様御多忙のところ、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の会議は、対面とオンライン会議を併用した開催とさせていただきます。また、本日の会議の模様も、前回同様、ウェブ上でライブ中継をさせていただきます。なお、議事録は通常どおり作成の上、金融庁ホームページにて後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
会議を始める前に、事務局から留意事項がございますので、お願いいたします。
【野崎企業開示課長】
事務局を務めさせていただきます野崎でございます。どうぞよろしくお願いします。本日の会議におきましては、オンライン会議を併用した開催としておりますが、オンラインで御参加の委員におかれましては、御発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。それらを確認の上、座長から指名いただきます。また、御発言される際には、冒頭にお名前をお願いいたします。なお、対面で御参加のメンバーにおかれましては、お名前のプレートを立てていただければ、座長から指名いただきます。また、マイクを使用する際には、配信の音割れ防止のため、マイクの角度は動かさず、オン・オフボタンのみ押していただくよう、よろしくお願いします。
【神作座長】
それでは、早速、議事に移らせていただきます。本日は、事務局より資料の御説明をいただいた後、討議を行いたいと思います。
最初に、事務局の金融庁から資料についての御説明をお願いいたします。
【野崎企業開示課長】
資料に沿って御説明させていただければと思います。本日、3種類の資料をお配りしております。資料1が、これまで御議論いただいてきた実質株主の透明性向上・協働エンゲージメント等に関する改訂案。資料2が、今回新たな試みとして御提案するスリム化・プリンシプル化の観点からの改訂案。資料3が、今回の改訂案をパブコメに付す際に公表する資料でございまして、改訂案の考え方などを記載しているものでございます。
資料1につきましては、既に第2回の会議において具体的な改訂案も御議論いただきましたところ、それも踏まえた案文を記載しております。
まず、1つ目は指針4-2でございまして、現在、指針4-1の脚注で記載があった内容を指針に格上げし、「機関投資家は、投資先企業との間で建設的な対話を行うために、投資先企業からの求めに応じて、自らがどの程度投資先企業の株式を保有しているかについて企業に対して説明すべきであり、投資先企業から求めがあった場合の対応方針についてあらかじめ公表すべきである」という内容を定めております。
実質株主の透明性向上の議論は、様々な観点を含み得るものでございますけれども、今回の改訂はあくまで、機関投資家と投資先企業との間の建設的な会話の促進が目的であるということは、改訂案にも明記しているとおりでございます。
2つ目が指針4-6でございまして、現行の指針4-5で触れられている協働エンゲージメントにつきまして、「機関投資家が投資先企業との間での対話を行うに当たっては、単独でこうした対応を行うほか、他の機関投資家と協働して対話を行うことも重要な選択肢である」という形で記載ぶりを変更した上で、「対話の在り方を検討する際には、投資先企業の持続的成長に資する建設的な対応となるかを念頭に置くべきである」という一文を追加しております。
また、昨年8月にアセットオーナー・プリンシプルが策定されたことを踏まえまして、本コードの目的においてアセットオーナーに対する期待が記されている4パラの3段落目におきまして、アセットオーナーにはスチュワードシップ責任を果たす上での基本的な方針を示した上で、投資先企業の企業価値の向上に寄与することが期待されるとの一文に付されている脚注としまして、アセットオーナー・プリンシプルが策定されている旨の記載を追加しております。
以上が資料1の御説明でございます。
続きまして、資料2でございます。こちらはスリム化・プリンシプル化の観点からの改訂案でございます。
まず、本コードの目的の12パラでございますけれども、一昨年春に策定しましたコーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラムにおきまして、コードの改訂については、形式的な体制整備に資する一方、同時に、細則化によりコンプライ・オア・エクスプレインの本来の趣旨を損ない、コーポレートガバナンス改革の形骸化のおそれも指摘があったということも踏まえまして、各コードの改訂時期については、必ずしも従前の見直しサイクルにとらわれることなく、コーポレートガバナンス改革の実質化という観点から、その進捗状況を踏まえて、適時に検討することが適切であるとされたところでございます。
こうした点も踏まえまして、今般、おおむね3年ごとをめどとして、コードの定期的な見直しを検討するという記載を削除しております。
具体的な原則、指針の中身でございますけれども、こちらは例えば、策定から一定期間経過し実務への浸透が進んだ箇所などを削除、統合、簡略化する見直しを行っております。特に脚注につきましては、約30あるものを4分の1程度減らしております。
また、指針の2-2でございますけれども、こちらは2つに分かれていた記載を統合してコンパクトにするとともに、指針の2-4の運用機関のガバナンス強化・利益相反管理につきましては、機関投資家の体制整備を記載している指針の7-2に統合することとしております。
それから、指針の4-6でございますけれども、ここも記載をアップデートしておりまして、「投資先企業と対話を行う機関投資家は、公表された情報を基に、投資先企業との建設的な『目的を持った対話』を行うことが可能であること、企業の未公表の重要事実の取扱いについて、株主間の平等が図られるべきことを踏まえ、当該対話において未公表の重要事実を受領することについては、基本的に慎重に考えるべき」という記載とし、脚注でフェア・ディスクロージャー・ルールに言及しております。
それから、指針の8-2でございます。議決権行使助言会社に関しましては、運用機関に対し、個々の企業に関する正確な情報に基づく助言を行い、透明性を図るという趣旨を明確にし、その実現に向けて、企業を含む関係者との意思疎通を行うのに十分な人員を備えた拠点を日本に設置することを含め、適切な人的・組織体制を整備すべきという記載にしております。
以上が資料2の御説明でございます。
最後、資料3でございます。この資料3は、今回の改訂案をパブコメに付す際に公表する資料でございまして、改訂案の考え方や経緯を示しているものでございます。
経緯、改訂案の考え方の中では、形式的な対応にとどまることなく、企業と投資家の双方における自律的な意識改革に基づくコーポレートガバナンス改革の実質化が重要であること、とりわけコンプライ・オア・エクスプレインの本来の趣旨の再認識が重要という考え方を繰り返し強調しております。
考え方の2ポツでございます。2ページ目でございますけれども、今回の改訂の具体的契機となりました協働エンゲージメントの促進及び実質株主の透明性向上の論点に加えまして、2の後段から3にかけては、初の試みであるスリム化・プリンシプル化のための見直しについても言及しております。
最後の5ポツでは、昨年のアクション・プログラムにおきましても、議決権行使と対話は点と線の関係にあり、議決権行使という点に至るまでの対話の過程、すなわち線でどのような対話をすることが重要かという意識を持つことですとか、エンゲージメントの成果を意識し検証することが重要であるとの指摘もなされたところでございます。
特に、今回のコードの改訂により、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた投資家と企業の緊張感のある信頼関係に基づいた対話が行われることが重要であり、本コードはコーポレートガバナンス改革において、引き続き重要な役割を担っているということを改めて確認する記載を入れております。
事務局からは以上でございます。
【神作座長】
御説明どうもありがとうございました。それでは、これより、委員の皆様から御意見、御質問をお伺いする討議の時間とさせていただきます。限られた時間ではございますけれども、全ての委員の方々から5分程度で御意見等を頂戴したいと存じます。なお、経過時間をお知らせするため、御発言から5分が経過したタイミングで、事務局より御発言者にメモを入れさせていただきます。
どなたからでも結構でございます。御発言ございますでしょうか。それでは、井口メンバー、お願いいたします。
【井口メンバー】
ありがとうございます。御説明ありがとうございました。変更箇所を中心に御意見申し上げます。
最初、新しい指針4-2の実質株主の透明性向上についてです。機関投資家は、現状、大量保有報告制度の実務がありますので、こういった実務を活用して、この新しい指針4-2に対応可能と考えますので、賛同いたします。
また、今回追加されました対応の方針ですが、保有株数についての説明とか、あるいは具体的な手続について、問合せをされようとしている企業に事前にお伝えするということができますので、この対応の方針を公表することも重要だと思っております。
このような投資家サイドの透明性を高めることが、企業の一段の積極的なスチュワードシップ活動への対応につながるということを希望しております。
同ページの注15は残していただき、ありがとうございます。実質株主の開示により投資家の透明性を高めることは重要と思いますが、本質的には、株式保有の多寡に関わらず、企業と投資家がお互いにとって有益な議論をしようとすることがスチュワードシップ活動のレベルの向上、そして企業価値向上にもつながると思っておりますので、注15は非常に重要と思っております。
続きまして、新しい指針4-6の協働対話についてです。協働対話は、投資家がまとまると大きな力になる一方、個々の投資家の考え方は違うということもありますので、現状は気候変動などのテーマ別対話が一般的には中心になっていると思います。
ただ、将来的には、比較的意見がまとまりやすい資本効率の向上に対する協働対話にも広がる可能性もあると思っておりますので、スチュワードシップ活動の幅を広げるという意味において、コードで単独の対話に加え、協働対話を選択して提示していただくということは重要と考えています。
投資家の運用戦略、対話テーマ、活用可能なリソースなどによって、単独での対話か、協働対話か、有用な対話の形は変化すると考えております。したがって、この2つの対話形態のうちどちらが企業価値向上や受益者のために有効かを考慮し、選択するという指針4-6の考え方に賛同いたします。
また、これに関連して、指針7-3も残していただき、ありがとうございます。グローバル機関投資家団体であるICGN、本日シッソンメンバーもいらっしゃいますが、あるいは、PRIの活動で示されておりますように、投資家間の意見の交換ということを通じて基本的な考えを共有しながら、個別の判断は投資家に委任する間接的な協働対話というのも、企業に対する直接的な対話以上にこれまで日本においてスチュワードシップ活動の実力を高めてきたと思います。今後とも投資家間の対話の重要性は変わるものではないと思いますので、指針7-3も重要と考えております。
簡単ですが、以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、西村メンバー、御発言ください。
【西村メンバー】
ありがとうございます。住友理工の西村でございます。私からは企業経営の観点から少し発言をさせていただきたいと思います。
まず、前提として、スチュワードシップ・コードで企業価値の向上という言葉がいろいろなところに出てまいりますが、ここにつきましては、ぜひとも中長期的な企業価値の向上と、そういう文言にしていただければと思っています。
スチュワードシップ・コードと車の両輪でありますコーポレートガバナンス・コードには、中長期的な企業価値の向上と記載されているところでありまして、このスチュワードシップ・コードでもぜひその方向でお願いしたいと思います。
例えば、具体的には、資料2で言いますと、ページ1の責任ある機関投資家の諸原則、日本版スチュワードシップ・コードについての箇所の4行目にありますがそこに中長期的な企業価値の向上という形で言葉を入れていただければと思っています。ほかにもいろいろございますので、ぜひよろしくお願いいたします。
また、これは以前から申し上げていることですけれども、スチュワードシップ・コードにつきましても、マルチステークホルダー資本主義の理念、これを反映すべきではないかと思っておりまして、ぜひこのコードの原則1に何らかの形で様々なステークホルダーに対する配慮等の言葉を入れていただければと思っております。
全体的な改訂については、私どもも了解をしたいと思っておりまして、例えば、資料1につきまして、原則4の1ページ目の実質保有、これを指針4-2として格上げしていただいたことについては、誠に結構なのではないかと思っておりますし、また、協働エンゲージメントについても、指針4-6で、対話の在り方を検討する際は、投資先企業の持続的成長に資する建設的な対話となるかを念頭に置くべきだというような記載が追記されているところでございますが、これについても大変賛同するところでございます。
ただ、4-6の2行目の「必要に応じて」という言葉でございますが、英国での検討状況も踏まえて、修正以前の記載をしたままのほうがいいのではないかと思っているところであります。イギリスの財務報告評議会では、先年の7月に、この26年に予定をされていますスチュワードシップ・コードの暫定の改訂項目に、協働エンゲージメントは必要に応じて実施をするものであって、毎年実施する必要も、また、スチュワードシップの目的にかなわないものに対しても行う必要はないと明確にされているところでございまして、私どももそう考えるところでございます。
続きまして、資料2でございますが、ページ4の注11の箇所の最後に、本コードの受入れ状況を可視化するために、本コードを受け入れている機関投資家に対しまして、受入れ状況などの公表を行ったウェブサイトのアドレス、これを金融庁に通知し、通知を受けた金融庁は一覧性のある形での公表をする、この旨が記載をされておりますが、これは大変結構なことだと思いますので、ぜひ推進をしていただければと思います。
ただ、そのすぐ上の行に、機関投資家が公表を行ったウェブサイトのアドレスを金融庁へ通知するという記載箇所がありますが、そこは「通知すること」として、そこで切っていただいて、後の「期待する」の記載はなくてもいいのではないかと思っておりまして、ぜひそこについても御検討いただければと思います。
また、16ページの指針8-2の議決権行使助言会社については、十分な人員を備えること、このことが明記されたということは大変良いことだと賛同いたします。
一方で、ページ10ページの注記16で、認識の共有においては、機関投資家と投資先企業との間で意見が一致しない場合において、不一致の理由やお互いの意見の背景について理解を深めていくことも含まれると言えるという注記がありますが、こういう記載は企業と投資家が建設的な対話を行っていく上では大変重要な前提ではないかと思いますので、これは注記として残していただいたほうがいいのではないかと考えているところでございます。
私からは以上です。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。まずは、まとめて御意見を頂戴したいと思います。藤本メンバー、御発言ください。
【藤本メンバー】
日本生命の藤本でございます。発言の機会をいただき、ありがとうございます。
本日、事務局よりスチュワードシップ・コード改訂案について御説明をいただきました。本有識者会議における主要テーマであった実質株主の透明性向上及び協働エンゲージメントの促進について、これまでの議論を踏まえた改訂案をお示しいただいたと理解をしております。
新たにお示しいただいたコードのスリム化・プリンシプル化の観点からの改訂案を含めまして、取りまとめいただいた事務局の皆様に感謝を申し上げます。
今回の改訂案につきまして、投資家としての観点から、総論的とはなりますが、3点述べさせていただければと思います。
1点目、実株主の透明性向上についてでございます。前回申し上げたこととも重なりますけれども、まず、対話や相互の信頼関係の醸成を促進するという観点から、実質株主の透明性を向上させることが重要であると認識しております。
一方で、場合によっては投資家の負担も相応に大きくなる可能性もあり、今般のコードの改訂においては、実務的に可能な範囲で対応する余地を残しておくことが現時点ではより望ましいのではないかと考えております。
今回お示しいただいた改訂案では、まさに具体的な対応方針については、それぞれの投資家に委ねていただいたと理解をしておりまして、趣旨に賛同いたします。
生命保険協会としましては、投資先企業と投資家の建設的な対話の促進というコードの趣旨を踏まえながら、それぞれの会社において回答する方法や保有株式数の基準時点などについて、現状の実務において対応できるような形で方針を検討し、投資先企業のニーズにお応えしていきたいと考えております。
また、足元では、実質株主を企業が把握しやすくする法制度の構築に向けて、法制審議会で会社法改正の議論がこれから始まっていくところであると認識をしております。システム等のインフラ整備を含めまして、今後も国内市場の健全な発展に向けた議論が行われることを期待しております。
2点目、協働エンゲージメントの促進についてでございます。こちらも前回、前々回でも述べさせていただきましたが、協働エンゲージメントは、参加するそれぞれの投資家の考え方やスタンス、対話テーマ等を踏まえて活用することで、有益な対話の手段になり得ると考えております。
今回お示しいただきました改訂案のとおり、コードを受け入れる投資家にとって協働エンゲージメントは、投資先企業との建設的な目的を持った対話のためのまさしく1つの重要な選択肢と理解しており、趣旨に賛同いたします。
生命保険協会におきましても、2017年度から協働エンゲージメントに取り組み、世の中の動向を踏まえ、要望するテーマや対話先数を徐々に拡大してまいりましたが、引き続き、株式市場の活性化と持続可能な社会の実現に向けて、PDCAを継続しながら取組を高度化していきたいと考えております。
3点目、スリム化・プリンシプル化についてでございますが、機関投資家がコードを受け入れるに当たり、それぞれの指針等の内容を補足すべく脚注に記載されていた内容がまさに実務に浸透してきたことの表れであると理解しており、その趣旨に賛同いたします。
最後になりますけれども、生命保険協会としましては、今後も対話の実質化・高度化に努め、投資先企業との信頼関係を維持しつつ、企業の持続的な成長に向けた取組を後押ししていきたいと考えております。
以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、高山メンバー、御発言ください。
【高山メンバー】
委員の高山です。発言の機会をいただきまして、どうもありがとうございます。私からは資料1の実質株主の透明性向上についてコメントいたします。
指針4-2の内容に対して賛同いたします。投資家と企業の間の建設的な対話において、投資家がその保有株数の状況について企業に開示するということが非常に重要である、それが必要であるということを明確に示してあって、大変適切な内容だと思います。
一方で、投資家に対しては、その方法についてはある程度裁量、それぞれの考えに基づいて開示するという自由度も残しているので、投資家のほうにおいては対応しやすいのではないかと思います。
恐らく1年ぐらいは試行錯誤の時期というのは続くと思うのですが、ここにあるように、対応方針についてあらかじめ公表すべきであると書いてあるので、投資家相互において、ほかの投資家がどのように開示しているかということも把握できますし、そういう状況を見ながら、恐らく1年ぐらいのうちにベストプラクティスのようなものが自然と出来上がっていくのではないかと思います。
それから、この株式の保有状況を開示するという上では、日本の機関投資家ももちろんですけれども、海外の機関投資家に開示してもらうということが非常に重要になると思います。御存じのように、日本企業全体の保有の状況を見ますと、国内の機関投資家の保有額よりも海外の機関投資家が保有している額のほうがかなり多くなっているという状況です。ですので、海外の機関投資家にどの程度保有株数を開示してもらうかというのは、日本企業において投資家との対話を促進する上で非常に重要になると思います。
幸いなことに、多くの海外の投資家がこのスチュワードシップ・コードに既に署名しておりますので、彼らがこのコードの内容を尊重してくれることを期待します。
その際に、海外の投資家は、日本語ではなく英文を見て判断すると思うのですけれども、この指針4-2の英文のところで、投資先企業の株式をどの程度保有しているかというところの表現が「explain the status of the shares」となっており、「status」というのはかなり抽象的な意味にも取れます。そのため、持っているのか持っていないか説明するだけでも「status」になります。もう少し具体的に要求するのであれば、「the status and the number」とか「status of shares including the number of shares」といったような言い方もあるかもしれません。ここの英語の表記のところは事務局の御判断にお任せします。
また、コードの内容については海外の機関投資家に説明する機会もこれから多くあると思いますので、そのときには、コードの趣旨としては保有株数の開示を求めているというところを明らかにしていただければと思います。
私からは以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、松岡メンバー、御発言ください。
【松岡メンバー】
松岡です。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。私からは主に企業目線からお話をいたします。
まず、総論でございますけれども、実質株主の透明化、それから協働エンゲージメントについての改訂案について賛同いたします。また、スリム化の方向性についても異論ございません。その上で2つコメントをいたします。
まず、議決権行使助言会社についてです。原則8の議決権行使助言会社の対応について、これまで、十分かつ適切な人的・組織的体制の例示として「日本に拠点を設置すること」となっていたところ、今回の見直しによって、議決権行使助言会社が「企業を含む関係者と意思疎通を行うのに十分な人員を備えた拠点を日本に設置すること」を明確に求めることになり、この改訂案について、企業として大いに賛同いたします。
助言会社については、対話の質に対する不安や、そもそも対話が行えず評価の偏りが懸念されるといった声が多くの企業から寄せられているところでございます。金融庁や東証におかれましては、コードに署名している助言会社が今回記載された内容を実施しているかのモニタリングを行っていただくなど、運用面での御対応も徹底いただきたいと考えます。
また、指針8-2において助言会社に対して求めている透明性の確保について、何の透明性を指すかというのが文章として分かりにくいので、助言会社の運営、例えばガバナンス、あるいは助言基準の透明性の確保のことであること等、明確にするように書き込んではいかがかと思います。
次に、実質株主の透明化についてです。今回の改訂案によって、機関投資家が投資先企業からの求めに応じて株式保有状況を回答することが書き込まれたことは、一定の進歩であると理解をしております。今後、さらなる透明化に向けた取組に期待したいと考えております。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、松下メンバー、御発言ください。
【松下メンバー】
投資信託協会の松下でございます。
まずは、コードの改訂案を取りまとめていただいた事務局の皆様に感謝申し上げたいと思います。投資家側と発行会社側のそれぞれ異なる立場から様々な意見が出てきた中で、取りまとめに当たっては御苦労があったかと思います。ありがとうございました。
今般のコード改訂では、実質株主の透明性向上と協働エンゲージメントの促進の2つが大きなテーマであったと認識しておりますが、改訂案の方向性については、いずれも賛同しております。
特に実質株主の透明性向上につきましては、ともすれば、今回の改訂により対話以外の目的で保有状況の照会が行われるおそれがありましたが、改訂案では、投資先企業との間で建設的に対話を行うためと記載いただいたほか、資料3で、企業と投資家との建設的な対応がさらに深度ある実効的なものとなっていくことが期待されると記載していただくことで、改めて改訂の目的を明示いただいたことは非常に重要であると考えております。
また、機関投資家は最終投資家の投資収益の拡大を目的としている中、今般の改訂により投資先企業以外に保有状況を伝えてしまうリスクや、スチュワードシップ活動に伴う業務負荷の上昇など、投資収益に負の影響を与えることを懸念しておりました。
改訂案ではこうした点を御配慮いただき、敢えて具体的な照会の方法や内容等に言及せず、機関投資家側に一定の裁量を認めていただいたものと認識しておりますが、可能であれば、この点を明確にする趣旨から、「実務上可能な範囲で」という文言を加えることについて御検討をお願いできないかと思います。
次に、協働エンゲージメント促進の点ですが、前回提示いただいた案では「選択肢として検討すべきである」とされていたところ、今回、「重要な選択肢である」との表現に改めておられます。これは英国のコードなどと平仄を合わせたものであると認識しておりますが、改訂の趣旨が、単独か共同かを問わず、より適切・効果的なものを選択すべきということであれば、例えば、「単独でのエンゲージメントが有効に機能している場合において、協働エンゲージメントの実施を求めるものではない」などの脚注を加えたほうがその意図が明確になるのではないかと思いました。
いずれにしましても、投資信託協会としては、今般の改訂を契機に、引き続き、企業と投資家の間の建設的な対話の下、企業価値の向上に貢献してまいりたいと考えております。
私からは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、オンラインで御参加くださっておられますシッソンメンバー、御発言ください。
【シッソンメンバー】
本日は、御発言の機会をいただき、ありがとうございます。日本版スチュワードシップ・コードに関する非常に重要で歓迎すべき改訂案について、ICGNと私どものメンバーの視点を共有できることを大変うれしく思います。
1995年に設立され、90兆ドル強の運用資産を保有する投資家が率いるICGNは、コーポレートガバナンスと投資家スチュワードシップをグローバルに推進しています。
日本版スチュワードシップ・コードは、コーポレートガバナンスを強化し、持続可能な経済成長を促進するための日本の努力の重要な要素であり、今回の見直しの結果、これをさらに強化することは、将来を見据え、この進歩が続くことを期待する我々の立場から歓迎します。
実質株主の透明性向上と投資家と企業の間の建設的な対話に貢献する方法として、署名機関による協働エンゲージメントを促進するという改訂案の目的は、いずれも大いに歓迎されるものです。
改訂案について、次のように提案と意見を述べたいと思います。資料1の指針4―2について、我々はこの改正の目的を支持します。しかし、英語で書かれた文言は解釈が難しいかもしれないと考えています。
自らがどの程度投資先企業の株式を保有しているかについて説明すべきという表現が明確でない可能性がありますので、改訂の目的を具体的に明記することを提案します。保有状況とは、例えば、保有株式数、議決権比率、様々な異なる方針に基づいて議決権を行使する可能性がある、顧客口座で保有されている株式数など、様々な要素を含みますので、それを明記することを提案します。
同様に、投資先企業から求めがあった場合の対応方針についてあらかじめ公表すべきであるという表現も、企業からの全ての問い合わせではなく、どの程度株式を保有しているのかの詳細を確認するための求めに関するものであることを明確にするよう提案します。対話の過程では、投資家と投資先企業との間で多くの面談や情報提供の要請が行われるため、この点は重要です。
資料1の指針4―6について、提案された改訂案はうまく機能すると思います。様々なエンゲージメント方法を使用できる実務的な柔軟性を維持することは、コードを様々なスチュワードシップ・アプローチに対応できる柔軟性を持たせるために重要であり、同時に、高い水準を促進するものでもあると考えます。
しかし、この一歩は有益ではありますが、日本政府の様々な部門が協力し、実効的な協働エンゲージメントを促進するためのセーフハーバーとなる環境を整えることが重要であることを指摘したいと思います。
昨年の金融商品取引法改正で、共同保有者の定義が明確化されたことは非常に有益です。しかし、アセットマネジャーの懸念に完全に対応するためには、内閣府令等の改正によって重要提案行為の定義も明確にする必要があります。
改めまして、ICGNが日本版スチュワードシップ・コードのさらなる発展に引き続き貢献できることを感謝申し上げます。
【神作座長】
シッソンメンバー、どうもありがとうございました。それでは、続きまして、会場に戻りまして、三瓶メンバー、御発言ください。
【三瓶メンバー】
三瓶です。御指名いただきありがとうございます。私は、資料1、資料3については、内容について賛同いたします。
資料2について1点だけ、指針8-2について、改訂文案は、ちょっとほかの文章と違い異質だと感じています。2行目の改訂文案、「企業を含む関係者と意思疎通を行うのに十分な人員を備えた」という部分は削除すべきと思います。理由の1つ目は、改訂文案の「企業を含む関係者と意思疎通を行う」の部分は、既に指針8-3に「助言の対象となる企業から求められた場合に」から始まる段落に同様な内容の記載があって重複しています。
理由の2つ目、改訂文案の「十分な人員を備えた」という部分は、指針8-2のもともとの文に既に「十分かつ適切な人的・組織的体制」とあって、改訂文案で「適切な人的・組織的体制」というのはまだ残しています。なので、ここは重複感があってスリム化になっていないと思います。
理由の3つ目、改訂文案の「十分な人員を備えた拠点を日本に」という限定的な表現のところは、スチュワードシップ・コードの原則主義に沿わないのではないかと考えます。スチュワードシップ・コードは原則に賛同しているから受入れを表明するものです。そして、原則に賛同しているものの、趣旨を果たす具体的行動は指針どおりではない場合に、指針が示すやり方ではないが、どのように原則の趣旨を果たすのかというのをエクスプレインして明らかにすべしということだと思います。したがって、細か過ぎる、限定的過ぎる指針というのは、スチュワードシップ・コードにふさわしくないと考え、プリンシプル化になっていないと思います。
また、議決権行使助言会社は、競争原理に基づく民間企業であって、営利企業です。その顧客は機関投資家であって、機関投資家がサービス対価を払っています。「十分な人員を備えた拠点を日本に」ということを求めるかどうかは、顧客である機関投資家の判断であり、また、幾つかの機関投資家がそれを求めたとしても、それをするかしないかの判断は助言会社のものです。ましてや昨今のオンライン会議やAI活用など、人員を地理的に固定する必要は時代錯誤と言えると思います。むしろ原則8にある通り、議決権行使助言会社が「インベストメント・チェーン全体の機能向上に資する」ためには、議決権行使助言会社の顧客である機関投資家の関与が重要だと考えます。機関投資家には、助言会社の助言に従うだけではなくて、ほかの機関投資家だと、例えば助言会社の集計データをグローバル比較や、または議決権行使方針を変更する際に、その影響試算をするということに使っている投資家もいます。そういったフィードバックを助言会社にしています。
指針7-3、2行目のところに「機関投資家が」というところがありますけれども、その後に、「他の投資家やインベストメント・チェーンにおいて重要な役割を果たすアセットオーナー、議決権行使助言会社、年金運用コンサルタント等との意見交換を行うこと」と改訂するほうが、より建設的、効果的であると思います。議決権行使助言会社についての発言をしましたけれども、私はこうした助言会社とは一切利害関係はありませんので、念のため言っておきます。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、北後メンバー、御発言ください。
【北後メンバー】
ありがとうございます。企業年金連合会の北後でございます。
企業年金連合会は超長期のアセットオーナーでございまして、厚生年金を運用しております。また、協働対話に関しましても、2018年から実務をやっております。ですので、その点についてもちょっと後で触れたいと思います。
まずは実質株主の透明性向上についてでございますが、前回、指針4-2の改訂案の末尾を合理的な範囲で説明すべきであるというように、「合理的な範囲で」という言葉を追加して、投資家の事情に応じて概数の説明はマンスリーベース、あるいはクオータリーベースの説明、ないしは運用会社単体の保有株式数の説明でも許容されることを明確化するということを御提案いたしましたが、今回のいただいた改訂案でもこの点が特に反映されていませんけれども、これは、コードはそもそもがプリンシプルベースであって、それは自明の事柄なので追記しなかったという、そういった理解でよろしいでしょうか。ちょっと念のため確認させてください。後ほど教えていただければ結構です。
私の発言は全てアセットオーナー目線でございますので申し上げますが、付言いたしますと、現状のこの4-2の書きぶりですと、株式保有状況の開示は、主に投資先企業からのニーズのはずですけれども、これは機関投資家のためですよというトーンになっていることにちょっと違和感があります。ですので、それを和らげるためにも、「合理的な範囲で」という言葉の追加を再考いただけると幸いと思っております。
それから、ちょっと細かい点になりますが、脚注19でございますけれども、アセットオーナー、アセットマネジャーの違いもあると思うのですけれども、アセットマネジャーの戦略の違いによることもあるんだよということを、脚注に書き加えても、一層分かりやすいんじゃないかと思いました。
続きまして、協働エンゲージメントについてですが、こちらの改訂案について、ほぼほぼ賛成でございます。ありがとうございます。
他方、冒頭に申し上げましたけれども、我々アセットオーナーとして協働対話フォーラムというところに参加して、2018年から協働対話にチャレンジしております。いろんな抵抗もございました、当時は。ですので、資料3の問2-2の関係で、私自身、機関投資家協働対話フォーラムというところの活動での経験を通して、協働エンゲージメント行うに当たって留意すべき点について、ちょっとお時間をいただいてコメントさせていただければと思います。
まず、1点目でございますが、協働エンゲージメントは形式的なものになりやすいという御指摘を受けることがありました。これは一体どの協働エンゲージメント主体を指してそうおっしゃられたのかはちょっと分からないですが、少なくとも私が参加している機関投資家協働対話フォーラムにおいて、形式的なエンゲージメントがなされているという批判は当たらないと感じております。
機関投資家協働対話フォーラムでは、政策保有株式、資本コストなど、企業の成長性、収益性において極めて重要なアジェンダを設定し、それらについてどう考えるべきか、参加する機関投資家、現在7社メンバーおりますけれども、その間で議論を重ね、その内容を企業に伝達するとともに、企業の考え方を質問するというような取組を行っています。これによって、我々は、企業の内部で議論が生じて話を考え始めることを期待しているところでございます。
その意味において、例えばですが、企業価値向上と関連しないテーマを表層的に取り扱うということはありませんし、自社の議決権行使基準に照らして必要な情報だけを取りにいくというような形式的なエンゲージメントとは一線を画すものと言えると思います。裏を返しますと、協働エンゲージメントの実施に当たりましては、そうした形式的なエンゲージメントにならないよう、企業の成長性、収益性において極めて重要なアジェンダを設定し、メンバー内で話し合った上で企業に働きかけていくということが重要であると考えております。
ちょっとここから先は蛇足にはなるのですが、形式的になってしまうということがあるとすれば、それは投資家というかスチュワードシップ・コードの範疇というよりは、企業側の「株主が存在しているという事実」に対する考えの大きな変化にすがらざるを得ないというのが現状ではないかと思います。つまり、コーポレートガバナンス・コードの一層の充実、あるいは縛り、そして経営陣の考え方の思い切った転換が求められる場面であり、スチュワードシップ・コードで求められておりますが、株主のできる範囲を超えた世界ではないかと感じております。
それから、2点目ですが、後で述べるフリーライドの問題にも関連いたしますけれども、参加する機関投資家の間で、アジェンダについてしっかりと議論を重ね、その上で共通見解を示すということに協働エンゲージメントの意義があると考えております。投資家のスタンスなどがばらばらですと、なかなか投資の共通見解が難しいと思うのですが、機関投資家協働対話フォーラムに参加する機関投資家は、いずれも長期投資を、我々は超長期と呼んでおりますけれども、前提にしておりますので、方向性が大きく異なることはございません。こうして示されたメンバーたちの共通見解は、企業にとって長期投資家全体の意見を知る上で大変有意義だと思っております。
エンゲージメントといいますと、対面での会議のみがエンゲージメントと思われがちではございますが、こうした共通見解をまとめたレターを多くの企業に送付するだけでも十分な効果が得られると考えております。そういったレターに返信の形で、ではエンゲージメントしましょうと企業のほうからおっしゃっていただくことも増えてきております。
最後ですが、フリーライドを許さないということでございますけれども、前回御意見ありましたが、特にパッシブ投資のための協働エンゲージメントの実施に当たりまして、フリーライドを許容しないということはとても重要なポイントです。コストは非常にかかることでございますから。協働エンゲージメントを実効的に実施しようとするためには常設の事務局が必要となりますし、それから、機関投資家間で議論を重ねる必要がありますので、どうしてもコストがかさみます。我々の場合は、そのコストを機関投資家側で均等に負担することで、なおかつ自分たちが参加して、どうやってそのお金が使われているかということも認識してやっておりますので、フリーライドは許さないという仕組みづくりをそういう形でやっております。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
1点、御質問があったかと思います。指針の4-2につきまして、事務局から、もし今の時点で御回答ございましたらお願いします。
【野崎企業開示課長】
ありがとうございます。指針4-2につきまして、実質株主につきまして求められた場合には応えるべきということで、合理的な範囲かどうかという御趣旨でございますけれども、当然プリンシプルベースでございますので、合理的な範囲で応えていただくことが前提になっているということでございます。
【神作座長】
ありがとうございました。それでは、続きまして、上田メンバー、お願いいたします。
【上田メンバー】
御説明ありがとうございます。以下、資料に沿ってコメントさせてください。
まず、資料1と意見書についてです。方向性については賛同いたします。その上で、2点コメントさせてください。
まず、指針4-2について、先ほどからいろいろな委員の皆様から出ているところでございますが、投資家側の株式保有情報というのは、企業から見ると対話の成果の検証にもなるわけです。つまり、売られてしまったという場合にはどうもあまりうまくいかなかったのではないか、買い増してもらった場合には対話の成果であろうという検証にもなりますので、これは決してネガティブなものだけではなくて、そういうポジティブな目的もあるかと思います。なかなか企業サイドからはおっしゃりづらいのではないかと推量するのですけれども、機関投資家との信頼関係の構築であるとか、あるいは対話については、企業側の負担も相当大きくなっているのではないかと思います。そうした中で、全ての投資家、全ての機関株主と同じ粒度、濃度での対話というのは恐らく実務的に難しいと思います。そういう意味で、やはりどこに注力するか、どこを長期的なパートナーとして対話するかということを会社側が判定して、良い関係を築くためにも、こういう情報というのはいろいろな利用の仕方があるのかと思います。
ただ他方では、投資家サイドは毎日トレーディングしていますので、日々の保有状況の開示と いうのは、そこまで必要なのかという疑問があるわけです。とりわけ投資信託の場合には個々のファンドがたくさんあるということもあって、カストディへの負担というのは大きいのではないかと思っています。したがって、今回御提案いただいているように、対話に必要なスケジュールや開示方法、例えば月毎なのかとか、そういうことの方針が示されていると、これは企業にとっても予見可能性はありますし、投資家にとっても事務を回しやすくなるということでよろしいのではないかと思います。ただこれはイメージなのですが、6か月だとちょっと長いのではないかなと。つまり、例えば3月末と9月末の保有状況だけだとちょっと長いのではないかなと思いまして、この辺りは様々な対話とか実態、先ほど別の委員からも今後実務が発展するのではないかと、ベストプラクティスというお話ありましたけど、そこに期待します。
続いて、脚注4でございます。これは議論に参加させていただいた関係もあって、コメントさせてください。スチュワードシップ・コードの前提となるアセットオーナー・プリンシプルについての言及でございます。とりわけそこで明記されたフィデューシャリー・デュティーについて書かれているということは大変重要であると思います。その議論の中で、アセットオーナーというのはインベストメント・チェーンの要であって、機能も役割も責務も大変重要だということで、そして、その役割を明確化しようということで、スチュワードシップ責任とフィデューシャリー・デュティーということをしっかり議論した成果でございます。これに言及していることは本当にすばらしいと思いました。
ということを踏まえると、アセットオーナー・プリンシプルもスチュワードシップ・コードも、いずれもインベストメント・チェーンをめぐる政府の取組の重要な一部分、資産運用立国の取組を構成するものだと理解しております。両方のコードとプリンシプルは密接に関係していますし、実際のところアセットオーナーにおいては、プリンシプルを踏まえた取組も進んでいると伺っています。意見書というのは、コード改訂の前提となる環境の変化とか改革についても言及できる内容かと思っていますので、アセットオーナー・プリンシプルについて意見書のほうでも少し言及いただくと、より全体感のある話になるのかと思いました。
続いて、資料2についてです。ここは基本的には賛成をしております。ただ、2点だけコメントをさせてください。
まず、1つ目指針の8-3でございます。ここは「必要に応じ」と書いてあるかと思います。果たして「必要に応じ」というものを載せる必要があるのかと。基本的にコンプライ・オア・エクスプレインでございますので、基本的には対話に基づくとしてもいいのではないでしょうか。というのは、「必要に応じ」の範囲は相当理解に幅があるようで、助言会社間においても違うようですし、企業と助言会社の間でも大きく違うと理解しています。これはコンプライ・オア・エクスプレインの中で、「必要に応じ」ということを言及していただくということでも問題がないのではないかなと感じたところです。
続いて、削除予定の脚注18に関してですが、これはコードの最初のときに、イギリスのコードからの議論でもあったかと思うのですが、エンゲージメントや対話のエスカレーションの意図があったのではないかと思います。つまり、意見交換という軽めのものから始まって、具体的な目的を持った対話とかエンゲージメントに進化して、場合によっては株主総会において議決権行使以外の権利行使とか協働エンゲージメントという手段も含めてというニュアンスがあったかと思います。削除するということですが、実務上そういう動きが定着して認知しているということでは削除しても良いとは思うものの、そういうエスカレーションの要素を対話には含んでいるというニュアンスをもし、あまり理解いただいてないのであれば、ここはそういうニュアンスをちょっと残していただくといいのかなと思った次第です。ただこれらの点は 、事務局にご判断をお任せしたいと思います。
以上を踏まえて、幾つか全体的なところでコメントさせてください。まず、最初の実質株主の透明性のところです。これはあくまで最終的には現在、法制審議会で議論されている会社法改正によるべきところ、先行してスチュワードシップ・コードから実務への影響や効果を確保するものだと思います。もし可能であれば、会社法改正においてもここでの議論を踏まえて、中長期の企業価値という観点、対話の実効性を高めるという点、そして、投資家、特に実質的な株主と企業との権利・義務・責務がバランスされるような議論がされることを望みます。
関連して、株主提についてです。スチュワードシップ・コードが定着するのは大変望ましいことではあるものの、東京証券取引所の売買単位が小さくなっているなかで、中長期の株主共同の利益とは趣旨が異なるようにも見える株主提案も増えているように感じています。その結果、スチュワードシップ・コードを受け入れている機関投資家において、それぞれの議案を個別に精査しているため、相当負担が大きいのではないかと思います。ということで、スチュワードシップ・コードに関しては、企業価値の全体最適と個別最適という観点もあると思いますので、今後、株主提案の在り方、ここはしっかりと実効性という観点から御議論いただきたいと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、オンラインで御参加の田中メンバー、御発言ください。
【田中メンバー】
まず、今回改訂作業に当たられた事務局の方々に、謝意を表したいと思います。主な改訂事項である、実質株主の開示に関する部分と協働エンゲージメントに関する部分、いずれも賛成でございます。
まず、保有状況の開示に関してですが、建設的な対話を望んでいる投資家としては、自らがどの程度投資先企業の株式を保有しているかについて、企業に対して説明するということ自体は決して反対ではないはずです。ですから、こういう原則ができることは良いことであると思います。
その上で、機関投資家が、企業から非常にアドホックに保有状況の説明を求められて、無用の負担がかかるようなことのないように、ぜひ関係者に知恵を絞っていただいて、なるべくシステマチックに情報が提供されるような仕組みができればいいかと考えております。理想的には、特に、株主総会の基準日時点の実質株主については、証券保管振替機構等を通じ、企業が直接に、ある名義株主が、どの実質株主のために何株株式を保有しているかという情報を取得できるような仕組みが構築されることが理想的であると考えます。こうした制度を実現するためには、会社が実質株主を知る権利を明確にするために会社法の改正も要するかもしれませんが、そういった制度ができることを希望しています。
その上で、先ほどの議論で気にかかった点として、英訳が“status”というような言葉になっていて意味が取りにくいということがあるようですが、日本語の文章に忠実に訳していただくのが良いかと思います。少し気になっているのは、日本語の文章は、あくまで、機関投資家が自らどの程度投資先企業の株式を保有しているかを説明するということであって、それ以外の事項の説明を求めていないということです。特に、どんな目的で保有しているかとか、誰のために保有しているかとういようなことについて説明を求めているわけではなくて、あくまで、実質株主として持っている株式がどれくらうであるかということを説明するということであり、そういうものとして今回のスチュワードシップ・コード改訂の合意もできていると思います。それ以外の色んな事項の開示を求められるということになると議論の前提が変わってしまうと思うので、あくまでもこの原則で説明が求められるのは、指針4-2に書かれていることだけなのだということを、英訳でもはっきりさせるのが良いのではないかと思っております。
それから協働エンゲージメントに関しても、従来の指針の表現である協働エンゲージメントが「有益な場合もあり得る」というものから、「重要な選択肢である」というものになったというのは、心もち協働エンゲージメントの重要性をより強調した形になっていると私は理解しております。機関投資家であっても企業と対話をする際には、フリーライドの可能性があるものですから、十分に対話をするインセンティブが生まれないということが昔から問題になっているところです。そこで、考え方が一致する機関投資家が、協働で企業と対話することは、機関投資家の間のフリーライド問題の解消に役立つということで、協働エンゲージメントの重要性が強調されてきたと思います。もちろん協働エンゲージメントは不必要に行う必要はないわけでありまして、あくまで機関投資家が、それが必要ないし有益であると判断したときに行うものです。そういう意味で、重要な、「選択肢」ということでありますので、今回の原則も、そういう趣旨ははっきり出ていると思いますので、こういった形で実現していくことがいいと思います。
それから、現在の脚注20にある共同保有者の範囲の明確化については、今般の金商法改正によって、共同保有者周りの規則改正が行われても、この脚注20で行っている共同保有者の解釈の重要性は残ると思っておりますので、ぜひこの部分についても引き続き周知を図っていただきたい。また、法解釈に関しては、例えば重要提案行為の解釈など、法解釈がエンゲージメントのしやすさに非常に影響を与えるところがありますので、金融庁の関係者におかれましては、合理的な解釈の明確化を図っていただいて、建設的な対話に資するようにしていただきたいと存じます。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、会場に戻りまして、翁メンバー、御発言ください。
【翁メンバー】
ありがとうございます。改訂案については賛同いたします。
まず、実質株主の透明性向上は大変重要なテーマであり、多くの委員がおっしゃいましたけれども、把握自体が目的化するのではなく、あくまでもコードの趣旨に基づき、建設的な対話を通じた持続的な企業価値の向上、これに向けて運営されていくことを期待したいと申し上げたいと思います。
資料2について少し申し上げたいと思うのですが、8ページに指針2-2がございますが、スリム化はされているわけでございますけれども、やっぱり運用機関の利益相反について、しっかりと明確かつ具体的な方針を開示して、これを回避していくことは大変重要であると思っております。資産運用立国でもそういったことが大きな指針となっているわけでございますので、スリム化してもいささかもこの重要性は変わらないと、そのようなことが明確にメッセージとして伝わると良いなと思っております。
それから、11ページ目ですが、指針4-6でフェア・ディスクロージャー・ルールが脚注に入っているという状況ですけれども、これからやはり対話が増えるにつれて社外取締役が投資家と接点を持って対話をしていく機会が増えると思います。それは大変重要なことではあると思うのですけれども、フェア・ディスクロージャー・ルールのことを双方がよく理解してこういった対話に臨むということが大変重要だと思っておりまして、もちろんまずはそういった企業のほうも、対話する側として非常に重要だと思っているんですけれども、同時にこういった未公表の重要事実を受領することには基本的に慎重に考えると。これ非常に難しいとは思うのですけれども、しっかりとやっていく必要があると考えております。
最後に全体的なコメントなのですけれども、サステナビリティという言葉が入っていて、やっぱりスチュワードシップ責任を果たしていくためには、サステナビリティをしっかり考えながら、今後も機関投資家が企業と対話していくということがとても大事だと思っておりまして、環境だけでなく人への投資というのも日本企業にとっては非常に重要であり、生産性を上げるためにも非常に重要だと思っております。持続的な賃金上昇というのは日本経済にとって非常に大きな課題であり、特にいわゆる生活賃金、リビングウェッジを上回る最低賃金の水準引上げを目指す必要があると考えております。国際的にも去年の秋にTISFDが発足しまして、開示を充実させて、金融面からこういった低賃金の方に注目して賃金をしっかり引き上げていくというフレームワークがこれから議論されていく状況になっており、アメリカの動きは気になるところなのですけれども、CalPERSのCEOも運営委員会に入っている状況でありますので、こういった動きについてはしっかりと見ていく必要があると思っています。
日本企業の多くが非正規社員を多く抱えているというような状況だと思っております。日本の機関投資家としても、スチュワードシップ責任を果たすには、こういった国際的な動きとか、日本社会全体のサステナビリティとか、そういったことも考えてしっかりと企業に対してスチュワードシップ責任を果たしていただくことが大事になっていると思いますし、こういった取組を期待したいと思っております。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、佃メンバー、御発言をお願いいたします。
【佃メンバー】
どうもありがとうございます。私からは、この改訂の具体的な内容に関して1点コメントさせていただいて、その上でコメントをもう一つさせていただきたいと思います。
具体的には議決権行使助言会社のところの指針の8-3ですけれども、前段について、議決権行使助言会社は必要に応じて助言を行うべきであって、必要と認めなかったら、自ら企業と積極的に意見交換しないでよいという話なので、それはそうなのでしょうということです。むしろ後段のところが大事で、「助言の対象となる企業から求められた場合に」、当該企業に対して「前提となる情報に齟齬がないか等を確認する機会を与え」、この後、確認する機会を与えることも助言の前提となる情報の正確性や透明性の確保に資すると考えるという文章になっているのですね。でもそれもそうでしょうという話ですね。これ、指針になっているのでしょうかという話です。
企業から議決権行使会社に対する批判が相変わらずあると認識するのであれば、企業から求められた場合に、当然ながら当該企業に対して前提となる情報に齟齬がないか等を確認する「機会を与えるべき」であると記載するべきではないかと考えます。その機会を与えたくない場合は、コードはプリンシプルベースですからエクスプレインしていただいたら良いわけで、企業価値の向上、そして議決権行使の実質化が非常に大事な中で、この指針8-3では、しっかりと「機会を与えるべきである」と記載すべきではないかと考えた次第です。ぜひ御検討いただければ幸いです。
その上で、その他の部分に関しては、事務局からの御提案に賛成させていただきたいと思います。当然ながら、関係各方面とのいろんな調整の上でこのような事務局案になったものと理解しておりますので、今回の修正部分全般につきまして、先ほどのところ以外は特段の異論はございません。神作座長、そして、事務局の皆様の御尽力に感謝申し上げます。
その上で、もう1点だけコメントさせていただきたいと思います。それはコーポレートガバナンス改革によって、ガバナンス先進企業では取締役の過半数、さらにはTOPIX100の中には独立社外取締役が7割、8割を占める企業が結構な勢いで増えています。いわゆる取締役会のモニタリングボード化が進行中ですけれども、やはりこの中で、機関投資家と企業との間の対話の在り方を見直す必要性を感じています。
第1回の会議で対話の実態に関する説明をGPIFさんにしていただきましたけれども、投資家と独立社外取締役との対話が2%にも満たないという実態が明らかになりました。独立社外取締役会との面談を要請しても企業が応じてくれないという機関投資家の声も聞きます。今回の改訂では実質株主の透明性向上、協働エンゲージメント、コードのスリム化が主要な論点で、これは現時点で重要かつ必要な改訂と認識しておりますけれども、今後を展望すると、対話の実質化、なかんずく取締役会がモニタリングボード化する中で、対話の実質化をいかに図るか、これが課題だと考えます。この点につきましては、今後開催されるであろうフォローアップ会議においても、論点の1つとしてぜひとも取り上げていただければ幸いです。
以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございます。武井メンバー、もし御発言ございましたら、ぜひよろしくお願いします。
【武井メンバー】
お疲れさまです。この改訂でいいと思っていますが、一点さきほど西村さんのおっしゃった中長期的な企業価値向上の点は、読み返すと確かに「中長期的」とついている箇所とついていない箇所があって、前の指針4-2、今の指針4-3ではついていてほかの箇所についていないとか。すべて中長期的企業価値の向上という意味だと思うので、そこは明確化できるようにしていただいたほうがいいかなと思いました。
今回の改訂を踏まえて、今回約10周年になるわけですけれども、10年前にダブルコードが行われたときの日本経済の置かれている状況、なぜこのコードの政策がなされたのかという根本的な目的論は、今でも重要性が変わってないというか、より重要性が高まっています。もう1回10年前を思い返してきちんと元に戻ってそれをさらにアップデートして、なぜこの政策が重要でやっているのかということの周知と、あとさらにフォローアップ、これは今後ともいろんな方策でなされるかと思いますけれども、いろんな形で資産運用立国とかアセットオーナー・プリンシプルとかとかいろいろある中でやっていただきたいと思います。
スチュワードシップ・コードには本当に重要なことが相当書かれていて、10年たつと皆さん、元の原文をいちいち読み返さなくなる面があるのですけれども、今回スリム化が行われたことというのも、そういうエッセンスをより伝えやすくするためにスリム化したわけで、10年前の基本を振り返るという、そういう趣旨もあったことだと思うのです。その点で今やっていることがいかに大事なのか。株主、企業、投資家の方がそれぞれの役割を果たすということをいかに連鎖させるのが重要かということを再確認することが大事で、10年たったところでもう1回原点にたち戻る。政府の成果物も10年たつとなかなかネットに出てなかったりするのですけれども、改めて周知してもいいぐらい、ちょっと元に戻って考える。現場で起きている形式的な対応、そのようなものもいろんな趣旨に戻る形でやるのが本来のプリンシプルベースですし、そのためにやっているわけですから、10年たつといろんな形式的なことが起きるわけですが、趣旨にたち戻る。そうした点をもう1回この改訂を機会に発信していただくということもぜひともやっていただければと思っております。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
本日御参加の皆様から、御発言、御意見をいただきました。おおむね原案に御賛同いただいたかと思いますけれども、何点か御修正の具体的な提案等があったかと思います。もし事務局のほうで、現時点でお答えできる部分がありましたら、例えば、最初の西村メンバーからの御発言にもございましたし、松岡メンバー、それから、松下メンバー、三瓶メンバー、北後メンバー、佃メンバーから、具体的な変更あるいは修正の御提案が何点かあったかと思います。今、大きなところで事務局のほうから回答できる部分、あるいはこの後検討するという部分がございましたらお願いできますでしょうか。
【野崎企業開示課長】
ありがとうございます。本日、多数の御指摘をいただきまして、誠にありがとうございます。実際の文言については後ほど調整の上、また改めてということかなと思います。現時点で御指摘いただいた点についてコメントさせていただければと思います。
まず、西村委員からいただきました中長期的な企業価値の向上、先ほど武井委員からも御指摘ありましたけれども、出ている箇所と出ていない箇所があるということでございます。これは全体的に、まさに中長期的な企業価値の向上と、中長期的なキャッシュフローのところも至るところにそういった文言は出ておりますので、そういう趣旨は貫徹されているかなというふうに理解してございますけれども、また何か追加で見直せるところがあればと思いますので、検討させていただければと思います。
それから、指針4-6の「必要に応じ」のところを残してはどうかという御指摘いただきましたけれども、重要な選択肢であると表現を改めたことによりまして、選択肢のどちらを必要に応じて取るかというところは、それは機関投資家の判断に委ねられているというところかと思ってございますので、松下委員のほうからも、単独でのエンゲージメントのほうが有効な場合はその旨を明記してほしいという御指摘もございましたけれども、重要な選択肢ということで、どちらかを取るかというところは機関投資家に委ねられているのかなと。本日、複数の委員の先生方からも御議論ありましたけど、そのように理解できればと考えてございます。
それから、松岡委員からいただきました、議決権行使の助言会社の透明性のところについては、ちょっと文言が分かりにくいという御指摘もございましたので、どのような表現が適切かについては検討させていただければと思います。
それから、松下委員、それから北後委員からございましたように、実質株主の対応については、当然我々実務対応可能な範囲でと考えてございますし、あと対応方針のほうも、機関投資家が自ら考えて公表するということになってございますので、そういった意味でも現実的な対応がなされていくのかなというふうに期待してございます。
三瓶委員からございました議決権投資助言会社の8-2と8-3のところの書きぶりでございます。これは三瓶委員と佃委員からもございましたけれども、ちょっと全体的なバランスを見ながら、また調整の上、御相談させていただければと考えています。
おおむねいただいた御指摘について、漏れている部分があったら恐縮でございます。私から以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。中長期的な部分については、私からも一言だけ申し上げたいと思いますけれども、前文のところ、冒頭の『「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫について』において、日本版スチュワードシップ・コードがあくまで機関投資家向けのコードであるということから、1段目の最後に、「顧客・受益者」の中長期的な投資リターンの拡大がスチュワードシップ・コードの最終目的なのだということで、ここでは中長期的な投資リターンの拡大という言葉で、すなわち企業価値の向上がきちんと 中長期的な投資リターンに跳ね返ってくるというところが重視されているものだと理解しております。
ここで、オブザーバーの方々でもし御意見がございましたら、時間の許す範囲で御発言をお願いしたいと存じます。オンラインで御参加の全銀協の長田委員会室長、御発言ください。
【全国銀行協会】
三井住友銀行の長田でございます。全国銀行協会を代表して発言したいと思います。機会を与えていただきましてありがとうございます。
今回の改訂のメインテーマであります実質株主の透明性向上や協働エンゲージメントは、投資先企業と機関投資家による建設的な対話を促す観点から、我々銀行界としても非常に重要なものであると認識しております。本日提示されましたコードの改訂案は、そういった観点を踏まえつつ、これまでの有識者会議で議論されました内容も取り入れられていると認識しておりまして、全銀協としても、この改訂案に賛同いたしたいと思います。
続けて、実質株主の透明性向上に関して1点申し上げます。今回議論されましたソフトローとしてのスチュワードシップ・コードの改訂に加えまして、ハードローとして、会社法改正に向けた議論が今後、法制審議会の部会にて始まると認識しております。我々銀行界としましては、グローバルカストディアンの常任代理人、いわゆるサブカストディアンの立場で企業と投資家の関係をつなぐ役割を担っております。実質株主の透明性向上の観点からは、実務がフィージビリティのある形で円滑に運用されることが重要でありますので、全銀協としても、こうした実務フローの構築において貢献してまいりたいと考えております。
私からは以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
また、信託協会の藤井業務委員長から御発言の希望をいただいております。藤井さん、どうぞ御発言ください。
【信託協会】
信託協会、藤井でございます。
まず、私のほうからは、実質株主の透明性向上に関しましてコメントさせていただければと思います。私ども信託業界は、機関投資家という立場がございますが、資産管理信託銀行としての立場、また、株主名簿管理人としての立場、3つの立場がございまして、こうした立場から第1回、第2回の会議におきまして、実務も踏まえて御検討いただきたいといった趣旨のコメントをさせていただいております。本日いただきました改訂案、ソフトロー下での対応指針につきまして、適切な指針をお示しいただいたと考えておりまして、改訂案に異論等はございません。
また、先日開催された法制審議会におきましては、今後ハードロー化の議論が行われるというふうに認識しておりまして、信託協会としましては、引き続き実質株主の透明性向上に向けた検討に貢献をしていきたいと考えております。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。ほかにオブザーバーの方で、御発言を御希望の方はいらっしゃいますでしょうか。
それでは、先ほど野崎課長から、さらに文言の修正で検討するということをおっしゃっていただきましたけれども、本日いただいた御指摘、御意見を踏まえて修正をし、メール等にて調整をさせていただいた上で、後日パブリックコメントに付させていただきたいと思いますけれども、そのような方向でよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【神作座長】
どうもありがとうございます。また、皆様に御確認いただいた平仄などの最終的な精査につきましては、念のため私に御一任をいただければ幸いと存じます。よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。
それでは、今後のパブリックコメント等の手順等について、事務局から説明をお願いいたします。
【野崎企業開示課長】
ありがとうございます。修正につきまして、今後、合意が得られましたら、コードの改訂案は金融庁におきまして、おおむね1か月間程度のパブリックコメントに付しまして、広く関係者の皆様の御意見を求めることとしたいと思います。また、英語版につきましても同様にパブリックコメントに付したいと考えております。
昨年10月から会議開始以降、スチュワードシップ・コードの改訂に向けて、メンバーの皆様からはこれまで様々な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。本日も皆様から、主要テーマでございます協働エンゲージメントの促進、実質株主透明性向上のほか、議決権行使助言会社の在り方、あとスチュワードシップ・コードの遵守状況についての金融庁の役割といった様々な御意見、御指摘をいただいたと認識してございます。事務局といたしましても、いただいた御指摘も踏まえつつ、また、武井先生からも、10年前の趣旨にしっかり立ち返るようにという御指摘もございましたので、そういった初心を忘れることなく、引き続きコーポレートガバナンス改革を推進していきたいと考えてございます。
事務局からは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。英訳につきましても、シッソンメンバー、高山メンバー、田中メンバー等から貴重な御意見いただいておりますので、英訳のほうも併せて再検討をお願いいたします。
それでは、本日はこれをもちまして会議を終了させていただきます。お忙しいところ大変ありがとうございました。
―― 了 ――
(参考)開催実績
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