「サステナブルファイナンス有識者会議」(第6回):議事録

1.日時:

令和3年4月22日(木曜日)10時00分~12時00分

【水口座長】  皆様、おはようございます。ただいまより「サステナブルファイナンス有識者会議」第6回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。

 初めに、毎回同様の注意事項ですが、御発言されない間は必ずミュート設定にしてください。発言される際にミュートを解除し、御発言が終わりましたら再びミュート設定にしていただくようにお願いいたします。
 
 それでは、議事に移りたいと思います。本日からいよいよ報告書に向けた具体的な議論に入りたいと思います。私、水口ですけれども、最初に1つだけお願いがございます。それは、時代を先取りした議論をしましょうということです。皆様、1年前にこのような有識者会議が行われると予想した方はおられるでしょうか。この1年間で世界は随分変わりました。今、時代の変化は加速していますので、1年後に私たちの報告書が時代遅れとならないように、未来を見越した議論ができればと思っております。

 本日は、最終報告に向けて、論点の確認をしたいと思います。皆様には、事前に資料1としまして事務局説明資料をお送りしていると思います。この資料は、これまでいただいたプレゼンテーションや御意見、御指摘等を踏まえまして、論点整理として事務局でまとめたものです。この資料自体の完成度を高めるということは今回の目的ではありません。この資料の文言や書きぶりをこういうふうに変えてくれとか、そういうことを今日はするわけではありません。

 そうではなくて、この資料に基づいて皆様から御意見をいただき、その意見を基礎として最終の報告書を作っていこうという、こういう趣旨でございます。したがいまして、この資料は、皆様から幅広く意見をいただくための道案内のようなものとお考えいただきまして、報告書の大きな方向性について皆様から御意見をいただきたいと考えております。
 それでは最初に、事務局の金融庁様から資料1について、事前にお送りしているものではあるのですが、ごく簡単に御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【岡田総合政策課長】  金融庁、岡田でございます。極力手短に説明します。

 まず資料2ページで全体の構成です。1ポツが総論、2ポツ以下が各論です。各論につきましては、サステナブルファイナンスを巡る多様な論点があると思いますが、ここでは、企業、市場参加者、金融機関というアクター別にまとめております。最後に5で、その他のさらなる論点ということも設けさせていただいています。

 4ページですが、まず本有識者会議の議論の方向について、長期と短期、両方であること、それから、幅広いESG課題をカバーしつつ、2050年のカーボンニュートラルを最重要のターゲットとするといったことを確認しています。

 5ページは、サステナブルファイナンスの意義・位置づけについて整理し、論点出しをさせていただいております。
 
 7ページですが、横断的な論点として、受託者責任とインパクトについて御紹介した上で、13ページで論点をお示ししております。
 
 14ページですが、各論に入る前の全体像として、サステナブルファイナンスは、経済・産業・社会が望ましい在り方に向けて発展していくことを支えていく金融メカニズムということを確認させていただいた上で、それ以下の各論の各項目の位置づけをお示ししております。

 それから、16ページ目以降が各論のまず開示です。直近、コーポレートガバナンス・コードの改訂案が出たことなどを紹介しつつ、23ページになりますが、第2回会議での主な御指摘と論点を整理させていただいております。

 それから、25ページ以降では、マーケットですが、まず市場の現在の状況を25ページで整理させていただいた上で、それ以降は、様々な国際的なイニシアティブ、アジアではAIGCCなどがあると伺っておりますが、そういったものについて御紹介させていただいて、その重要性とそこに我が国関係者が関与していくことの重要性について、29ページになりますが、そちらで論点をまとめさせていただいております。

 その後は、32ページになりますが、投資家保護の観点から幾つか論点を整理させていただいております。

 33ページ目以降は、第3回に御意見をいただきました証券取引所の役割につきまして、事務局のほうで諸外国の例などを調べまして、それをまとめて御紹介しつつ、35ページに論点を記載しています。

 36ページ目以降は、第3回に御議論いただきましたESG評価機関について、その際の議論についてまとめつつ、38ページに論点としてお示しさせていただいております。

 それから、39ページ目以降も、第3回で御議論いただきましたトランジションファイナンスのテーマについて、40ページの最後のところに論点を提示させていただいております。

 42ページ以降が、アクターでいうと、金融機関についてのテーマ、金融機関のリスク管理についてでありますが、43ページ、こちらでモニタリング上の重要項目、それから、45ページではシナリオ分析の活用等について論点を出させていただいております。

 46ページですが、こちらは、金融機関による投融資先へのエンゲージメントと、それを促すための金融機関としての開示、それから、金融機関自身のリテラシー向上といった点について論点を出させていただいております。

 最後、47ページですが、今御紹介したこと以外に、例えば官民連携の促進とか、サステナブルファイナンスの推進に当たって必要な論点が何かあるかと、そういったことを問いかける論点を出させていただいております。

 駆け足ですが、事務局からは以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。それでは、これから皆様から御意見を伺いたいと思います。御覧いただきましたとおり、大変膨大な資料になっております。報告書の内容を全部網羅的に議論しようというわけです。これを今から12時までの間に終わらせたいということですので、効率的に議論したいと思います。

 そこで、ちょっと画面替えていただいてよろしいでしょうか。画面に今お示ししますが、このようなタイムスケジュールで進めていきたいと思っております。今日は皆さんの意見を聞く日です。大変失礼な言い方で申し訳ないのですが、1回の発言は簡潔にお願いします。長くても1分ぐらいです。申し訳ないのですが、理由を長々と言っていただく必要はありません。報告書にはこれを書いてくれ、こういうことを報告書に書くべきだということをずばっと一言、言っていただければと思います。それを次々に繰り返していくという形で全ての論点を網羅していきたいと考えております。よろしくお願いします。

 ただし、御意見をいただいても、いろいろな御意見があろうかと思いますので、全てそのとおりになるとは限りません。その点をお含みおきください。次回以降、具体的な報告書の素案が出てくると思いますので、具体的な文言の書きぶりや内容については、報告書の素案の段階でさらに議論する、こういう形にしたいと思っております。

 御発言につきましては、直接声を上げるという方法でお願いいたします。討論というのはある種の戦いですので、皆さん頑張ってこの戦いに参加をしていただきたいと思います。

 では、順番ですので、まず総論の中の「基本的視点」、スライドでいいますと6枚目までのところ、ここまでで御意見あればいただきたいと思います。いかがでしょうか。どなたでも構いません。

【足達メンバー】  では、口火を切らせていただいてよろしいでしょうか。6ページ目のところに、日本としても官民連携でサステナブルファイナンスを推進することでよいかという論点が挙げられておりまして、これはもちろんよい、イエスでよいと思います。けれども、そのときに、脱炭素の問題のようなことだけではなくて、やはり経済成長が資源の使用から切り離されたものであるということ、それから、公正で繁栄した社会という、その公正性ですね。移行についていえば、ジャストトランジションというようなこと、そういうニュアンスをぜひ盛り込むことをお願いしたいと思います。この点が、サステナブルファイナンス推進の狙いとして重要だということです。

【水口座長】  分かりました。経済社会を資源から切り離す。そして、公正性ですね。

 次の方どうぞ。

【林(礼)メンバー】  BofAの林です。ありがとうございます。私も今の足達さんの御意見に賛成です。先日の別の有識者会議での麻生大臣のご発言で、すばらしいと思いましたが、若干グリーンあるいはトランジションというところに軸足があったように思いますが、やはりESG、あるいはサステナブルということについては、ソーシャルあるいはサステナブルな社会とはという、より幅広い見地に立ったところをぜひ何らかの形で、報告書に盛り込んでいただければと思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

【井口メンバー】  よろしいでしょうか、井口です。5ページの一番左の上のリスク・リターンの改善のところで、「環境・社会・ガバナンスの要素を投資に考慮をすることで、リスク低減効果が期待」とのみ書かれているのですが、特に株式運用では投資機会の拡大という要素もあるので、特に株式では、機会についても入れていただければと思っております。

 あと、サステナブルファイナンスの位置づけ等については賛同いたします。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。ほかにいかがでしょうか。

【小野塚メンバー】  小野塚です。こちらに、総論のところだと思うのですけれども、「社会全体におけるサステナビリティ課題解決を通じ」というところで、こちらは世界への貢献というところと、あと、日本の経済成長というところのその両方を見据えるという、そういった文脈があるといいのではないかと思いました。

【水口座長】  ありがとうございました。では、渋澤さん、お願いします。

【渋澤メンバー】  サステナブルファイナンスを討議する会なので、ファイナンスに焦点を当てると言うところで、インパクト投資について、日本ではもっとグローバルスケールで高めなければならないと思っています。そのインパクト投資で重要なのがメジャメント(測定)であり、これはインパクト投資だけではなくて、企業会計のほうに普及し始めています。ハーバードビジネススクールのImpact-Weighted Accounts Initiativeの研究(https://www.hbs.edu/impact-weighted-accounts/Pages/default.aspx)をぜひ御覧になっていただきたいです。

 また、第一回のセッションで印象に残ったのは、日本版、日本型では駄目だという水野さんからのご指摘であり、サステナブルは地球的課題なので、日本だけで通じるようなものではなくて、世界に通じるようなレポートにしていただきたいと思います。

 最後に、昨日、ふくおかファイナンシャルグループとの会合で「サステナブルスケール」という子会社の設立についてお伺いしました。この会社の事業趣旨は、基準できちんと地域企業のインパクトをメジャメントして、それを経済的事業成果に結びつけるということ。こうしたことには地方でも取り組んでいます。地方、地域から世界へという視点をぜひお願いします。

【水口座長】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょう。

【吉高メンバー】  よろしいでしょうか。吉高です。今日気候サミットが開かれて、2030年目標が引き上げられるとすると、ここ、時間軸が2050年カーボンニュートラルですけれども、もう少しスピード感を合わせた形で時間軸を入れていただきたいと思います。

 また、総論ですので、この報告書の位置づけや全体像が読む人に混乱が生じないような形で最初に示されたほうがよいかと思います。例えば14ページの全体の流れを先に説明するとか、非常に総論が分かりにくくなっている気がしますので、整理が必要かと思っております。以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。

【田代メンバー】  田代ですけれども、よろしいでしょうか。渋澤さんのおっしゃっていたことに加え、サイエンスベースというか数字をベースにしないと、グローバルでの比較ができないので、数字が大切だということをどこかに入れていただけると、もう少し明確な形になるかと思います。

【水口座長】  ありがとうございます。

【手塚メンバー】  手塚です。よろしいですか。冒頭のほうで、長期の視点と足元の視点というのが入っていましたけれども、それに関連して、やっぱりこのサステナブルファイナンスというのは、非常に長期のカーボンニュートラルを目指して行われる投資だけではなくて、そこに至る現在の様々なビジネスからそこへつなぐトランジション、そこが埋まっていくことで初めて、経済成長しながらカーボンニュートラルの方向に移行していくということだろうと思いますので、トランジションのプロセスに対して、潤沢、必要かつ十分な資金が回っていくような仕組みにしていくということが大変重要なんじゃないかと思います。

【水口座長】  ありがとうございます。

【藤井メンバー】  藤井です。よろしいでしょうか。5ページの位置づけのところですが、あまり文言を云々するものではないのですけれども、この前段の「個々の金融機関や金融商品のあり方にとどまらず、経済・産業・社会が望ましいあり方に向けて発展していくことを支えていく金融メカニズム」というところは、金融人からするとある意味で金融そのものの本質なので、もう少しサステナブル、持続性とか長期性を強調される位置づけを出したほうが、いいのではないかと思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 私、冒頭で6ページぐらいまでと申し上げましたが、それでは、この先、総論の横断的論点も含めまして、横断的論点、13ページまでございます。実は14ページはこの先の各論の構成を示したものなので、取りあえず13ページまでを含めて御意見いただければと思います。どなたでも構いません。

【井口メンバー】  井口ですが、意見よろしいでしょうか。13ページの論点について意見を言わせていただきます。最初、受託者責任のところですが、私のようなESG投資を長年行ってきたものからすると、ESGを考慮しない投資手法はいかがなものかとは思っております。ただ、現実には様々な投資スタイルの投資家がいるので、最初に書いてある、ESGを考慮しないことは受託者責任に反するまで言ってしまうと、実態からすると厳しいのかなと思います。ただ、受託者責任の中の1つの選択肢にESGの考慮を入れることと、スチュワードシップ・コードなどでESG投資を後押ししていくという形がいいのではないかと思っております。

 あと、インパクト投資の考え方のところですが、インパクト投資というのは今後増えていくとは思っておりますが、ただ、いろんなところのインパクト投資を巡る議論を聞いて違和感がありますのは、インパクト投資を1つの投資プロファイルで議論して位置付けを決めてしまうというところです。実際には、12ページの図にありますように、インパクト投資の中でも非常に多様な形態がありまして、投資リターンとの両立を狙う一番左のところは資本市場の論理に乗ってきて投資が拡大すると思いますが、その右の方のところは、経済的リターンを犠牲にするということなので、資本市場の論理に乗ってこないということになります。こういうところの投資促進には、例えば、政府の支援とか、あるいはブレンディッドファイナンスなどで促進する必要があるということで、インパクト投資は、もう少し丁寧といいますか、類型を分けてその促進策の議論をしていくというやり方がいいのではないかと思っております。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【藤井メンバー】  藤井ですけれども、よろしいでしょうか。今の井口さんの受託者責任のところは全く同意でございまして、「反するのではないか」というのはちょっと強い。第5回でそのような御説明があったのは事実ですけれども、これはちょっと強いと思います。一方で米国でも、考慮することも可能である、許されるというような議論は今進展していると思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【渋澤メンバー】  渋澤です。今の井口さんと藤井さんの御意見、そのとおりと思う反面、ここはもっと金融業界としてスタンスを取ってもいいと思います。ただ受け身という意味の受託者責任ではなくて、自ら、自分たちはこう思います、皆さんはどう思いますかというスタンスですね。「反する」という文言は僕もちょっと強いと思いますが、ただ受け身だけだと何も今までと変わらないので、プロアクティブなワーディングにしていただければと思います。

【水口座長】  ありがとうございます。なるほどと思いました。ほかにいかがでしょうか。

【林(礼)メンバー】  BofAの林です。今の御議論のところで、やはりあまり弱めの表現というのもどうなのかなと思います。アメリカなどはERISA法などで比較的受託者責任とサステナブル投資を分けていたところが、やはり政権も変わったせいか、より踏み込んで、SECも含めて踏み込んだ議論になっているということを考えると、表現はちょっと慎重にしなければいけませんけれども、受託者責任の1つというふうに考えられるとか、やはりこの気候変動とかESG要素を考慮しないということは、海外の様子を見ていてもなかなか難しい状況にもなっていますので、より積極的な表現ということが望ましいのではないかと思います。

 あと、リスク・リターンの水準を害するものとしても考慮すべきかどうかということについては、それぞれの投資家の御判断だと思いますので、よりチャリティー的な要素を強く持つ投資があってもいいのではとは思います。つまり、これは最終的には投資家さんのそれぞれの判断だと考えております。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【岸上メンバー】  岸上です。同じページに関してですけれども、まず受託者責任のところですが、受託者責任の定義するタイムホライズンによって責任の表し方が変わってくるかと思いますので、そこが長期というところがより重視されますと、おのずとサステナブルな視点が入りやすくなるのではないかと思います。

 インパクトの方ですけれども、インパクト投資なのか、それとも、全体的にインパクトを考えていくということかというのでも変わってくるかと思いますが、考慮すべきか、するべきではないかという前提として、インパクトについて考えて測定していくというところに何らかのインセンティブがあると、最終的にインパクトをより重視した形の投資であるかどうかという判断は個々にできるのではないかと思われます。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。
 
【林(尚)メンバー】  全国銀行協会の林です。

【水口座長】  林さん、どうぞ。

【林(尚)メンバー】  銀行界としてこの領域に関して積極的に関与や貢献をしてまいりたいということについてはいささかの揺るぎもありませんが、グリーンな案件であることだけを理由に金利優遇を行うといったような、やはりそういう単純な議論に落ち込むことがないようにお願いできればと思っています。すなわち、事業のリスクと将来期待されるインパクトや実現可能性に応じた適切なプライシングで、その反面、長期の期限の利益を供与するという枠組みがしっかりとつくられていくこと、これが金融機関としてきちんと長期資金を御融資申し上げる最大の根拠になりますので、その点につきまして御配慮をお願いできればと思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。そのとおりですね。

 足達さん、お願いします。

【足達メンバー】  岸上さんの御発言にエコーする形ですが、受託者責任のところは、ユニバーサルオーナーもしくはユニバーサルオーナーシップという考え方をもっと強調していただくということがよろしいのではないかと提案したいと思います。第1回で申し上げた社会全体に対する負の外部性です。ここのところを長期的目線で、きちんと投資家が考えることが大勢になれば、従来からある収益を犠牲にしてはならないという受託者
責任の議論で、貫徹できるという主張です。

 実はこの資料の中でユニバーサルオーナーが出てくるのは1か所しか、冒頭の5ページのところしかないのですが、。もっとほかの議論のところに登場してもいいのではないかなということを御提案申し上げたいと思います。

【水口座長】  ありがとうございました。ほかにいかがですか。

【渋澤メンバー】  渋澤です。インパクト投資の区分の考え方というのは、井口さんの御指摘のとおりだと私も思います。一方、その区分の一番左側の経済的なリターンに近いところであっても、前例がないという理由で進んでいない実態があります。経済的リターンをアピールするためのインパクトではなくて、インパクトを与えることが意図で、そのインパクトの持続性のために経済的リターンを求めるという考え方がインパクト投資の本質だと思います。そして、ここが大事なポイントですが、この新しい思考の投資には新しい若手の人材をこの国は育てる必要があると思います。やりたいという若手たちは結構います。ただ、なかなかそこにはお金が行っていないというのが現状なので、この問題意識をぜひ取り上げていただきたいなと思います。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 インパクトに関して私のほうから一言だけ。環境省のほうでESG金融ハイレベルパネルという会合を持っておりまして、年2回ほど開催しているのですが、昨年10月に開催されました第3回会合で、パネルに参加されている金融業界のトップの皆様で合意して、金融業界全体としてインパクトファイナンスを推進するという宣言を出しておりますので、この辺も少し平仄を合わせて入れていただければなと思っております。これは座長としてではなくて、個人の意見として1点追加いたしました。

 ほかに何かあればいただきたいと思います。

【吉高メンバー】  御質問よろしいでしょうか。吉高です。今の論点では、受託者責任とインパクトの考え方が入っていますが、これはどちらかというと各論で、先ほどの渋澤さんがおっしゃった測定やモニタリングなどが横断的な論点かと思ったのですが、そういったことについては、ここではどう捉えたらよろしいでしょうか。

【水口座長】  すみません、ここに、資料に上がっている論点以外のことでも、横断的なこと、総論的なことは全てここで言っていただいて構いません。この論点に縛られずに、先ほどのメジャメント、モニタリングもそのとおりだと思います。それも入れていただきたいと思いますし、もっとあれば御発言ください。

【吉高メンバー】  ありがとうございます。測定、モニタリングは、横断的論点ということでは、間接・直接金融関わりますので、入れていただきたいと思います。

【水口座長】  ありがとうございました。ほかの方もどうぞ、この資料の論点に縛られずに幅広な論点を上げていただいて構いません。いかがでしょうか。

 取りあえず一旦よろしいでしょうか。それでは、一旦次に参りまして、14ページなのですけれども、この14ページの図は、先ほど御説明もありましたように、各論の部分を基本的にはプレーヤー別にお示しをするということで、企業と、それから、金融資本市場のプレーヤー、そして、いわゆる間接金融の金融機関、こういうふうに分けてこの後各論を整理していこうと、このような趣旨で作っているのですけれども、こんな各論の整理の仕方でよろしいでしょうかということを最後に皆様から御意見をいただければと思うのですが、この構成についていかがでしょうか。

【林(礼)メンバー】  BofAの林です。再びで、先ほど申し上げたことにもつながるのですが、これを拝見しますと、気候変動のところにより軸足があるということですが、先ほど足達さんや私からのコメントにもありましたように、サステナブルな社会というのが脱炭素だけではないというところをどこかに少し入れていただけるといいのではないかなと思っております。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。

【田代メンバー】  田代です。この中にはプレーヤーとしての記述はあると思いますが、金融機関の機能、例えば価格発見機能や流動性などの視点も必要だと思います。この表の中にはその様な観点での言葉がないので、どこかに入れていただければと思いました。

【水口座長】  なるほど。ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。基本的に各論の整理をプレーヤー別にしているので、なかなか機能的な整理がなされていないのですけれども、そこはまた考えて入れていければと思います。

【藤井メンバー】  藤井です。今の論点というのは、恐らく右側の金融資本市場のところをプレーヤーで整理していて、商品や市場インフラを取引所に収れんさせているので表現しにくいのだと思います。いわゆるOTC、店頭取引は取引所の外にありますし、商品や市場という切り口があると、価格発見とか流動性という議論に通じやすいと思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。

【手塚メンバー】  手塚ですけれども、よろしいですか。この絵そのものには特に異論はないのですけれども、これ、先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、これがサステナブルな社会の実現に向けてこういう資金の流れで支えていくという発想であるとすると、実はこの矢印が下から上に向かって流れていって企業のところに行くんですけれども、この企業がそれに基づいて活動を行って、最後、一番上のほうにサステナブルな社会が実現するというのが加わっていたほうが分かりやすいのかなと。つまり、お金の行き先というのは、企業が終着点ではなくて、社会が終着点なのだろうと思うのです。

【水口座長】  ありがとうございます。そのとおりですよね。これ、社会がここにないといけませんよね。ありがとうございます。

【吉高メンバー】  吉高です。私も今の手塚さんの御意見に賛成です。各論か、サステナブルファイナンスの金融の在り方に持ってくるかで、この報告書の位置づけが変わるのではないかと思っています。金融資本市場の話が中心で本報告書が公開されたとき、見る方々によって、サステナブルファイナンスの位置づけに関してメッセージが伝わりにくいと感じました。ありがとうございます。

【水口座長】  なるほど。金融資本市場の話じゃなくて、サステナブル社会の話から始めようということですかね。ありがとうございました。

 はい、今どなたか。

【林(礼)メンバー】 林です。本当に今の皆さんのお話に大賛成です。社会というものがあって、金融資本市場の投資家の中に、当然のことながら、金融機関だけじゃなくて、その先にやはり個人の投資家というか個人の皆さんも入ってくるので、社会とか個人とかやはり社会に根づいたものにしないと、何か金融機関だけで議論しているような雰囲気になってしまうので、幅広く御理解を促すという意味では、個人の要素も入れていただいたらいいのではないかと思います。

【水口座長】  おっしゃるとおりですね。個人のお金が集まって、それが社会に行って、個人に返ってくるということですよね。人々のためということだと思います。ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

【田代メンバー】  田代です。開示の充実はもちろんそうですが、その後ろに例えばIFRSなど国際的な動きも踏まえ、日本だけではなくてグローバルでやっていく、その点を表すものがあるといいなと思いました。

【水口座長】  国際的な潮流というのを踏まえる必要がありますよね。ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

【小野塚メンバー】  小野塚です。2点ございます。よろしいですか。1つは、官民というお話がありましたので、どこかにやはり政府あるいは公的な立場のプレーヤーが入ったほうがいいのではないかという点と、もう一つは、これ、細かい点ですが、ドルと円とユーロしかないのは、恐らくちょっとリミティングな感じがします。細かい点ですが。

【水口座長】  ありがとうございます。最後は図の描き方ですね。また、政府というプレーヤーが入っていませんよね。

 ありがとうございました。

【井口メンバー】  井口です。よろしいですか。この図は、資金の流れを表してらっしゃるということで、これは1つの考え方だと思いますが、そのほかに、アクションで考える必要があるのではないか、と思います。そうすると、矢印が下から上へ行くだけじゃなくて、例えば企業の開示が投資家のESG関連商品のSFDRのような開示につながるとか、あるいはESG評価機関やデータベンダーが企業と投資家の間に入ってくるとか、アクションで考えると別の流れも入ってくると思っています。たしかEUとかでやっているのはアクションのフローチャートみたいな形だったと思いますので、そういうふうな考え方もあるのかなと思いました。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。一方通行じゃなくて、相互作用という感じですかね。そのとおりですよね。ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょう。

【岸上メンバー】  岸上です。先ほど吉高さんがおっしゃっていた図式のところにも関連しますが、5ページと今表示頂いている14ページの「サステナブルファイナンスの位置づけ」に関しましても、この2行ある中の「サステナブルな社会を支える」が先に来ると、位置づけがより見やすくなるのではないかなと思います。また、開示の充実に関しましては、開示のための開示にならないように、活動・実績を表すための開示の充実や、促すための開示の充実という位置づけになると、より実態を促せるのではないかと思います。以上です。

【水口座長】  おっしゃるとおりですね。金融のことだけ考えると開示だけになっちゃいますけれども、その前提に活動があるということですね。ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。一旦よろしいでしょうか。先が長いので、この議論は一旦ここで。また何かあれば戻っていただくことにしまして。

 それでは、各論の議論に入っていきたいと思います。各論の2です。各論のまず2、企業の箇所について御意見をいただきたいと思います。ここの部分、開示につきましては、第2回の会合でも大分御意見をいただきましたので、このパートは10分ほどという短い割合になっておりますけれども、これを書くべきということを言っていただければと思います。コーポレートガバナンス・コードの改訂はもう公表されておりますが、そこも踏まえて、さらにこの報告書で言っておくべきことなど御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。また、開示以外の論点でも構いません。企業というプレーヤーに関して報告書で言及すべきことがあれば言っていただければと思います。ここに挙げられた論点以外でも構いません。企業に関して何でもお願いします。どうぞ。

【井口メンバー】  井口です。よろしいでしょうか。サステナビリティの開示の在り方については報告させていただきましたので、ここではもう時間の関係で繰り返しません。

 論点にある、国際的な議論への関わり方というところです。19ページ辺りになると思いますが、私、IFRSの諮問会議の委員をやっていて、議論させていただいたりしているので特に強く印象を持っていますが、IFRS財団が出来た方向性ですね。投資家の判断に重要な情報にフォーカスするということで、これはEUの考え方、ダブルレポーティングとは全く反対というか、違う考え方がグローバルの団体であるIFRSで採用されたということになっていると思います。ですから、必ずしもEUイコール、グローバルではないと思っております。

 渋澤さんおっしゃったように、私もグローバルな基準、一旦出来たらそこに従う、あるいは最大限尊重するって、これはもう絶対重要だと思っているのですが、それが出来るまでにこういうふうに積極的に国際的な議論に関与していくということは改めて重要ということは感じました。以上でございます。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【長谷川メンバー】  経団連の長谷川です。よろしいでしょうか。今の井口さんの御意見には全く賛成でございます。経団連もIFRS財団におけるサステナビリティ基準策定の動きにタスクフォースを作って対応しておりますけれども、これは日本企業の関心も非常に高く、オールジャパンとしての意見発信を行っていくことが重要だと思っております。EU、イコール、グローバルではないという視点も重要だと思っております。

 それから、同じく23ページの気候変動関連開示について、コーポレートガバナンス・コードの改訂案も22ページに載せていただいておりますけれども、今回、コーポレートガバナンス・コードの改訂で、改訂コードにTCFD開示が位置づけられる方向になったということは、日本企業においてTCFD開示を、自主性や柔軟性を維持した形でより一層進めるという方向性になるので、歓迎しております。このTCFDに基づく開示を中心に企業が気候変動関連開示を進めていくべきであり、自主性、柔軟性を生かしつつ、投資家に有用な情報開示を引き出す方向で促進していくべきだということは記載いただければと思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【渋澤メンバー】  渋澤です。よろしいですか。先ほどお話ししたImpact-Weighted Accounts Initiative、ハーバードビジネススクールの研究ですけれども、これは座長から促していただいた未来志向の取組みです。今では現実味がないかもしれませんが、企業会計制度に環境インパクト、社会的インパクトを反映する日が訪れるかもしれないと。そのための研究であり、現在アメリカとは20社ぐらいハーバードと合意書を交わしていろいろな研究を始めています。日本では先日、エーザイが日本企業における第1号として、ハーバードと合意書を交わして、企業データを提供し、研究成果が返ってきています。ですから、これからIWAIジャパンを立ち上げたいという意向がありますので、ぜひこれは多くの企業に参加していただきたいと思います。これは研究なので、いろいろなデータが欲しいということが明らかです。このような側面で日本からの考え方を世界基準にインプットすることを、今から始めることはすごく大事だと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

【水口座長】  ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。

 ほかにいかがでしょうか。

【田代メンバー】  田代です。

【林(尚)メンバー】  全国銀行協会の林です。よろしいでしょうか。

【水口座長】  それでは、林さん、そして、田代さんという順番でお願いします。

【林(尚)メンバー】  恐れ入ります。銀行あるいは金融グループの立場で申し上げますと、お客様の開示の充実がなされませんと、私ども自身の貸出資産における例えば炭素排出量の計測等は困難であると、このようにお客様と金融機関の開示は、深くつながっていると考えております。よって、様々な開示基準が存在しておりますけれども、整合的な枠組みの構築にあたっては、ぜひ開示基準の主体、設定主体の連携を図っていただきたいと思っています。そういう意味においても、IFRSが開示の枠組み制度の検討を始めることについては大変よいことであると理解しております。我が国の様々なボイス、声を、IFRSの議論に反映いただくべく働きかけを進めてまいることが重要だと考えてございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。では、田代様、お願いします。

【田代メンバー】  市場参加者の項目には取組みとして人材育成というテーマがありますが、企業の項目においては、開示の充実1本となっているので、企業のほうにも何らかの形で、開示の充実だけではなく、人材育成といった側面を入れていただければと思います。

【水口座長】  ありがとうございます。重要な御指摘です。そのとおりです。

 ほかにいかがでしょうか。

【小野塚メンバー】  今の論点に絡めて、小野塚です。田代さんの論点なんですけれども、私も実は人材という意味では、CFOというお立場の方に期待をしております。開示というのは一方通行のディスクロージャーですけれども、CFOを核とした企業と投資家の間の対話の充実ということで、よりCFO的な立場の方の統合思考を進めるということを1つ盛り込んでいただけたらと思います。

【水口座長】  ありがとうございました。

【手塚メンバー】  手塚です。よろしいですか。この人材の話も、私も追加なのですけれども、基本的に、最初、水口先生がおっしゃったように、何年も先まで有効な提言にしたいということであると、今この議論は、ほとんど、経団連も私の会社もそうですけれども、大企業の話なのですね。国際的に活動している大企業の話が中心なのですけれども、実際には中堅規模からさらに中小企業までカバーしていく世界になっていくのであれば、やっぱりそういう分野の企業がこの話についてきて、圧倒的に数が多いそういう企業群が加わってくるような体制、つまり、そういうキャパビルのようなことも政策的に支援していく必要がきっとあるだろうなと思います。

 また、国際的な枠組みの議論に、これも日本だと経団連等が、あるいは業界団体を通じて入ったりしていますけれども、ここもなかなか中小の企業がどう参画していくかという窓口みたいなものがあまりない。なので、これ、次のラウンドに行くと、やはり商工会議所のようなところも含めて裾野を広げていくというようなことをやっぱり提言の中に入れていく必要があるのではないかと思います。

 最後に、対話を深めるための開示という議論になりますと、前々回の会議にて、定型的なもので横串比較できるものと、いわゆるエンゲージメントに資するものというのが、なかなか二律背反的なところがあるという議論があったと思うのですけれども、どっちかにしてしまうと、メリット、デメリットがそれぞれあるので、一方のメリットがなくなってしまうという弱点があると思う。そういう意味で、必要最低限の共通項みたいなものをブラッシュアップしていくという項目と、それから、自由プレーヤー、自由演技の部分でどういうふうに企業の活動を投資家なり金融機関なりに理解いただくかという部分をうまく峻別していくというようなことの方向性を出しておいたほうがよろしいのではないかと思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

【藤井メンバー】  藤井です。すみません。昨夜もIASBとの議論に参加したのですけれども、会計制度の基準作りの議論のスピードが非常に加速している印象です。冒頭座長からお話があった、1年後に時代遅れにならないようにという意味でいいますと、この分野がそのリスクが高い分野だと思っていまして、より踏み込んだといいますか、リーダーシップが示せるような記載ぶりをお願いしたいと思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。吉高さん。

【吉高メンバー】  吉高です。よろしいですか。ありがとうございます。先ほど手塚さんがおっしゃったこと、私も同意です。最近地方金融の方とお話ししますと、お客様である中小企業が意識が低く、評価ができないとおっしゃっていました。地方金融にとって、中小企業に対する情報開示に関してのインフラづくりって重要だと思っているので、ぜひお願いしたいと思います。

 あと、1年後を見据えてということで座長に言っていただいたので、やはり資源系の話も入れていただきたいです。今年TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)も始まるということで、その分野に関しての開示というのも少し示唆するような内容にしていただければと思っております。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【岸上メンバー】  岸上です。必ずイコールで比較できないものだと思いますが、16ページに挙げられているCDPなどの評価の比較的高いという結果と、25ページに表されている例えばグリーンボンドの発行額などを比較しますと、なぜこれだけCDP等での評価が高いにもかかわらずこういった資金の流れに限りがあるか。このデータを一つの参考にすると、やはりリスク面を重視してきたこれまでの流れと、ビジネス機会のほうに関する開示がなかなかまだ進んでいないという表れの1つではないかなと考えられますので、開示を促す中でビジネス機会の部分をより意識する必要があるのではないかなと思われます。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 一旦、では、企業プレーヤーのところをここまでにさせていただいて、また戻ってきても構わないということで、各論の3ということになりますが、市場参加者の箇所について御意見をいただきたいと思います。第3回の会合でESG評価機関につきましては大分やり取りがあったかと思いますが、それ以外にも市場参加者に関しては非常に多くの論点があろうかと思います。30分取っておりますけれども、どなたからでもお願いいたします。

【井口メンバー】  井口からよろしいでしょうか。どちらかというと私はここで皆さんから御指摘を受けるほうかもしれませんが、最初に意見を言わせていただければと思います。少し1分を超えるかもしれませんが、よろしくお願いします。

 論点でいうと、32ページのところからになりますが、大口の年金基金さんとかには機関投資家がしっかり説明しているということで、ここで特に対象になるのは、私の認識では個人投資家にいかに分かりやすく説明するということと思っています。以前も申し上げましたが、インパクト投資、dark greenのところに入ってくると思いますが、こういう投資については、リターン・リスクに加えて、もう一つの軸である社会的なリターンがある、ということで、当然、社会的なリターンの進捗等について説明する必要があると思っています。

 ただ、light green以降になってくると、ESG投資というのは、ESG要因を配慮しながら、リスクの最小化、リターンの最大化を目指すということで、アクティブ運用に近い運用になっていますので、運用商品をどう分かりやすく開示するかという運用商品の開示のそもそも論の議論になり、プロセスをいかにわかりやすく開示するのかというところの議論になると思っています。

 もう一つの論点ですが、資料に掲載されているEUのSFDRでは20以上の指標の開示が求められるということがあります。私も見ていますが、このような開示が、どれほど個人投資家の方にとって意味があるのか、と思っております。

 また、このような開示をやるとしても、2つほど大きな障害というかチャレンジがあると思っています。1つは、EUのSFDRというのは、企業に対する非財務情報の開示促進という、先ほど林様もおっしゃっていましたが、そういうふうなところと一体に行われて、そして、その企業情報を投資家が活用し、開示するという仕組みと理解していますので、企業のESG情報の開示をどう推進するのかという課題があると思います。

 2つ目が、実際もう現実に起こっていることですが、投資家が使う企業のESG情報のデータとかには開示がないとか、欠損など出てきますので、そこはESGデータベンダーの推計とかに頼ることになります。そこの情報の正確性をどう担保するかというところが出てくると思います。後者のESGデータベンダーの監督の部分は前も議論になりましたが、そういうところも課題になると思っています。以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。このSFDRの議論というのは、金融商品の開示の議論と、それから、金融機関そのものの開示、金融機関がコミットメントをするとか、どこまでやるかという方針を書くという、両面あるんだろうなと思っていまして、その両面それぞれ、金融機関の姿勢を示すということと、商品の開示を進めるということについてどう考えるのかということを皆さんに問いたいと思いますが、いかがでしょう。

【足達メンバー】  今のところとの関連で、SFDRの話にもつながるということで申し上げたいと思います。40ページに、「欧州をはじめ、各国でタクソノミーを策定する動きがあるが、民間投資を促す方法として、どう考えるか。」という1文が論点として入っています。私は日本もタクソノミーを作ったほうがよい、そして、それを海外のものとハーモナイズしていくほうがよいという論者です。結局、タクソノミーなしに、あるいはタクソノミー的なものなしに、ある金融商品がグリーンに資するかとか、Aという金融商品とBという金融商品とを比べてどうなのかと論じることは非常に困難であると感じます。あるいは、コストがかかって金融商品自体の魅力度を減じさせてしまうと思うのであります。

 その前提で、前の39ページの「「グリーン」か否かの二元論では、企業の着実な低炭素移行の取組みが評価されない恐れがある。」という言葉について、どうも最近の政府の文書にはこの言葉があちこちに同じ言い方で登場するのでありますけれども、サステナブルファイナンスを推進しようとする立場からはやや違和感があります。

 あえてこのニュアンスを残すのであれば、私は、グリーンか否かの二元論「だけでは」企業の着実な低炭素移行の取組みが評価されない恐れがあるとすべきだと思います。「日本はものづくりの国なんだ。そんなゼロイチで判断されては困る。我々は製造業中心の、簡単には脱炭素が難しい国であるから、これからも炭素は出し続けるけれども、トランジションが大事だと考える」という論理なら海外と対等に渡り合える、あるいは会話が成立すると思います。このサステナブルファイナンスの有識者会議の報告書から以降は、グリーンか否かの二元論「だけでは」というふうに改めて、説得力ある考え方で進んでいっていただくのはどうかと問題提起させていただきたいと思います。

【水口座長】  ありがとうございます。

【林(尚)メンバー】  全国銀行協会の林です。今、足達様から御指摘いただいたことが非常に重要だと思っています。トランジションの考え方が大変重要でありまして、別途、「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針案」のパブコメも先週、取りまとめられましたが、もう既に様々な企業が、今後のラベル取得といったことにかかわらず、既にトランジションの取組みをスタートされておりまして、金融機関としてはそれらの活動をしっかりとファイナンス面から後押しさせていただくことが大切だと思っています。

 よって、ラベルの取得に先行して、あるいはその取得を必ずしも想定していない個別企業の取組みに関しても、ネガティブな影響を与えないようにトランジションの活動をしっかりと後押ししていくという金融機関の取組みについては、後押しをいただけるようなそういったメッセージを明示いただけますと大変よろしいのではないかと思っています。

 そのためには、私どもも含めてなんですけれども、事業会社の取組みをよくよく理解する必要があると思っています。脱炭素化に向けてステップを積み上げていくことの技術的な裏づけや個別具体的なアクションに対する理解、これらを真剣に深めていく必要があると思っています。このような事柄を、今後トランジションファイナンスの領域をしっかりと包括的に打ち立てていくために御配慮いただくべきポイントとして理解しております。以上でございます。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【長谷川メンバー】  経団連の長谷川です。よろしいでしょうか。今の御意見に関連するのですが、まさにトランジションファイナンスについては、ここにも書いてありますが、グリーンウォッシュとの批判を受けないようにするためにも、現場をよく知る各業界の御意見をしっかり聞きながら、信頼性・透明性を確保するための実効性のある分野別のロードマップを作成していくことが重要だと思います。

 また、ここは先ほど足達様からも、二元論だけではないという御意見がございましたが、まさにカナダとかマレーシア、シンガポールなどでは、EUタクソノミーのような二元論の発想でもないトランジション志向のタクソノミーというものを検討されているということもありますので、日本もこうした国々と連携してトランジションファイナンスに関する基本的な考え方について国際的な理解を醸成していくということに貢献すべきと思います。

【水口座長】  ありがとうございます。

【藤井メンバー】  藤井です。SFDRのところにちょっと議論を戻したいのですけれども、SFDRについては、EUアクションプランの2つ目のサステナブルな金融商品に関する基準とラベリングの制定ということを反映して、金融商品についての議論として出てきているものと理解をしています。

 この32ページの論点で、ESGの冠をつける場合の留意点という記載がございますけれども、既にいろいろな金融機関が、例えばESG投信というようなものの名前をつけるときに、ウォッシングにならないための基準がないということに悩んで、結果的にSFDRを読みに行っているということが既に起こっております。本編の議論の中で、グリーンボンド、ソーシャルボンドについての議論、つまり、債券の基準についての議論は進められていますが、それに比べると投信等の論点がちょっと弱い状況になっていると思いますので、それは御考慮いただきたいと思います。以上です。

【水口座長】  そうですよね。ほかにいかがでしょうか。

【小沼メンバー】  よろしいでしょうか。東京証券取引所の小沼でございます。こちらのセクションに証券取引所のことを取り扱っていただいているところもございますので、一言コメントをさせていただければなと思います。

 35ページにある情報発信と、それから、人材育成、能力向上の点でございますが、まず後者の人材育成、能力向上のほうは、まさに先ほど田代様などからもお話があった人材育成、これは市場参加者だけではなくて、上場会社も含めて幅広く向上を目指して取り組んでいくべきだと思っておりますし、これについて証券取引所も1つの中心的な機能として携わっていければと思っております。そのためにも、今回御参加されている皆様のような御知見のある方々のお力添えもいただきながらやっていきたいと思っております。

 それから、第1点目の情報発信でございますけれども、これもロンドン、ルクセンブルク等の取引所のほうで、ここでラベリングという機能を果たされているというようなこともあります。日本においても、こういった機能がオールジャパンとして強化されていくことが重要だろうと思っております。金融商品、いろいろあると思います。エクイティなどは証券取引所の上場が一般的であります。一方、我が国の債券市場につきましては、もちろん上場している債券もございますが、上場はしていない公募の債券もたくさんあると。そういったものを全体的にスコープに入れて、信頼性のあるラベリングの仕組みをつくって、それをきちんと発信をしていくというような動きになればいいのではないかと考えている次第でございます。
もちろん、我々取引所の関係者もこういったインフラづくりの中心的な存在として取り組んでいきたいということはございますけれども、いろいろな発行の形態もございますので、この辺も広く皆様のお知恵とか御協力をいただきながら、全体像として何かいいものができればと考えている次第です。以上でございます。

【水口座長】  ありがとうございます。どうぞ。

【吉高メンバー】  吉高です。投資家保護の観点で、先ほど藤井様もおっしゃっていたESG投信とかSDGs投信のウォッシングは私も気になってはいます。それから、以前、エコボンドという排出権つきのボンドがありました。また、個人投資家向けにはカーボンクレジットで詐欺事件なども起こったことがございます。

 今年のCOP26ではパリ協定第6条、つまり排出権を含む市場メカニズムに対する実施指針等が合意される予定で、今、政府でもカーボンプライシングの中ではカーボンクレジットの話も進んでおります。今後、そのカーボンクレジット、J-クレジットのような商品が投資家間や市場の中でどのように使用されるかについては、課題として入れていただきたいと思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。お願いします。

【林(礼)メンバー】  皆さんおっしゃられていることに何の違和感もないのですけれども、2点だけ、ちょっとマイナーなポイントですが、25ページのESG関連債トレンドということで、2019年のデータがあって、これを見るとグリーンボンドが圧倒的に見えるのですが、2020年になりますと、グリーンボンドは全体の半分ぐらいになっています。

 なので、古くならないということを、今日、冒頭、座長がおっしゃられましたので、最初の情報も、もしこのグラフをお使いになるのであれば、更新されたほうが違和感はないのかなと思います。日本は2020年のデータが入っていますので、グローバルも2020年のデータにしたほうが、もし報告書の中に入れるのであれば、最新の情報をお使いになったほうがよろしいのではないかと思います。

 それと、皆様がお触れにならなかった29ページの国際的なイニシアティブの参加ということで、国際的なイニシアティブとの協力は本当に重要だと思っているので、この参加へのハードルというところ、これは個々の企業でどうしてもカバーできないものが仮にあるとすれば、それがどこの団体なのか、ちょっと私は分かりませんけれども、日本である程度こういった参加へのサポートをするような団体というものを検討されてもいいのかなと考えております。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。

【藤井メンバー】  藤井です。今の林様の国際イニシアティブの参加についての状況ということでコメントさせていただきます。先ほど出た企業側の開示と「鶏と卵」のところがございまして、最近のイニシアティブではファイナンスト・エミッション(financed emission)、すなわち投融資先のエミッション状況というのが参加の報告要件になっています。これは企業側がスコープ1、2、3を開示していないと報告できない。そうすると、参加はしたけれども、数字が報告できないということになるので、参加に踏み切れないという意見を幾つか聞いております。コメントとして申し上げます。

【水口座長】  ありがとうございます。

 私のほうから少し確認の質問をしたいのですが、例えば35ページには「グリーンボンド等の信頼性を一層確保する」と書いてあって、「等」の中に何が入っているのかということで、藤井様から債券についてはこういう基準があるけれども、投信とかエクイティとか、そういうところはあまりないですよねという話があり、32ページのところで、ESG、SDGsなどの冠をつける場合の留意点という御質問があり、藤井様からちょっと御意見いただいたかと思うのですが、このESG債とかSDGs債とかじゃなくて、投信とか金融商品全般に関して、インフラもオルタナを含めて、ESGと言うときに何かあったほうがよいですか、基準。それとも、これは市場に任せればよい、市場が判断すべきものと思われておりますか。

 この辺、個人投資家の保護ということもあるでしょうし、皆様どう思われているのか、今すぐじゃなくても、5年後、10年後にどういう金融市場になっているべきなのか。もしお考えがあればいただきたいのですが。

【藤井メンバー】  藤井にいただいた御質問だと思います。市場の基準にはレベルがいくつか考えられて、明確な基準を制定する、というのと、市場に任せるけれども市場関係者が基準を検討する際の論点整理を提示する、という形、あとは何も示さずに市場関係者に任せる、という大きく3つだと思います。ですので、規制に関連しましては、規制化するものと、いわゆるスーパーバイザリー・エクスペクテーションという形で、検討する際にはこういう論点があるということを示した上でプレーヤーに任せるということと、最後は市場に全く任せるという3つの手法だと思いますので、このどれを取るかということと、そのスピード感だと思います。

 債券については、そこが先行している一方で、債券以外が、ちょっとそれとのスピード感からすると立ち後れているという感想ですので、先ほどの3つの手法でどれがいいかについての個人の意見は控えますが、その3つの中でどれを選ぶかということではないかと思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。金融商品の性質と時間軸に応じて、全体の枠組みを何かつくっていくという、そういう方向性なのかなと思いました。

 ほかに何かコメントありますか。

【井口メンバー】  井口ですが、先ほども申し上げましたが、明らかにインパクト投資というのは投資のリスク・リターンが違うということなので、それはしっかり明記する必要があると思っています。あと、ESG投資、これは私、運用者のほうなので甘いと言われるかもしれませんが、ESGの要因に配慮しつつ、リスクの最小化とリターンの最大化を目指すということではありますので、受益者の観点とか、あるいは投資家保護の観点から見ますと、そんなに通常のアクティブ運用から大きく離れていないということだと理解しています。

 ただ、藤井様の御説明でいうと、それをただ何もしなくていいのかという、そういうことではなくて、ESG投資のプロセスをしっかり開示して、それで最終受益者の方はそれを見て判断していただくという、そういうふうなやり方がいいと思っています。

 現状のSFDRは、私から見るとあまりにがんじがらめで、あとデータをどう取ってくるのかとか、大きな課題があって、将来を考えても、すぐ全面的に入れるような状況じゃないと思っております。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。どうぞ。

【手塚メンバー】  先ほど林様から案内のあった国際的なイニシアティブに参画していくという話ですけども、これって少しシステマティックにそういう体制を整えていくことを提言したほうがよろしいのでないかという気がいたします。

 例えばですが、これ、我々のような産業界にとっては、ISOとか、そういう国際標準を、例えば日本の中で行われている様々な活動を国際的な標準に合致させる、あるいは日本の制度を国際標準化していくというようなことを目指して、いろんな産業団体の中に国際ISOに対応するための委員会が設けられていて、しかも、それを経済産業省の基準認証化の中で国際標準を扱っている部局がサポートする。そういう体制がシステマティックに存在しているのです。

 日本の様々な工業規格やルールを世界的に通用するようなものにする。あるいは海外で別な規格が出てくるときに、それと日本のものを合致させるような形で、齟齬がないようなものにするための調整を図るということを、一企業がやっているわけではなくて、業界団体に企業のメンバーが集まって、合議をした上で、集団でもってそういう活動をするということをやっています。

 なので、この分野も恐らくそういう形で意見集約をし、それを国際社会に展開し、向こうから出てきているいろいろな提案を日本の中でもう一度回覧して、確認してというようなプロセスがある程度システマティックにできるような体制をつくっていかないと、いろんなものがこれからも改訂されたり、新しい基準が出てきたりということがあるのではないかと思いますので、何かそういうものを提言の中に入れられて、日本の中に国としてそういう体制を整えていくということを提唱されたらいいかなと思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。

【小野塚メンバー】  先ほどの32ページに戻りまして、井口さんがおっしゃっていたことに賛同するのですけれども、SFDRはかなりやはりリジットなルールだと思っていますので、そのあたりをいかにもう少し日本流にプラクティカルにできるかということをぜひ考えたいというところと、あと、やはり先ほど吉高さんのお話もありましたけども、投資家保護という意味では、ある一定の基準の枠組みをつくって、それでお墨つきをもらったものを個人投資家等に販売するという、特に投資信託とかといったところでは重要じゃないかなと思います。

 これは逆に言うと、個人投資家の資産を、例えばインパクト投資のような、寄附からちょっと一歩投資のほうに進んだような投資商品に傾けるという後押しになるような、保護とそれから促進の両方をにらんだ枠組み、あるいはラベリングが必要ではないかと思います。

【水口座長】  ありがとうございます。

【岸上メンバー】  岸上ですけれども、具体的な人材育成への言及が33ページで証券取引所の中でカバーされていらっしゃるかと思いますが、今、小野塚さんのほうでもおっしゃっていただいた32ページにおける販売員の方々の人材育成、現場にいらっしゃる方々がより充実した目論見書等を、きちんと受益者ですとか、そのファンドを購入される方が理解できるように説明できるような人材育成も必要ではないかと思います。

 また、将来を見据えてということで、恐らくまだまだDBスキームが多いと思いますが、よりDCに行く中で受給者が選定していくことが必要になってくるかと思いますので、DCに向けて、より充実した開示の仕方というのを設定していくというのも大事ではないかと思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。大丈夫でしょうか。

 私から一言コメントすると、個人投資家保護というときに、もちろんリスク、リターンという意味での伝統的な投資家保護というのがございますが、自分のお金をこういうふうに使いたいという、サステナビリティに関するプリファレンシーズ(選好)がもしあるとするならば、そこも守られることが投資家保護だろうと思っていまして、そういうことも金融機関の開示には関わるのかなと思っております。

 ほかに。どうぞ。

【田代メンバー】  今のお話の流れで、個人投資家保護と共に、政府のほうも1,900兆円の個人の金融資産をどうやって資産形成に回すかというテーマが重視されていると思いますので、それを何かセットにして表現できると、市場参加者を増やすという意味でも有意義なのではないかと思います。

【水口座長】  ありがとうございます。報告書の書きぶりのほうはまた次回以降に出てきますけども、またチェックをしていただければと思います。

 ほかにいかがでしょうか。

【半田メンバー】  損害保険協会の半田でございます。よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【半田メンバー】  各論的で恐縮です。38ページのESG評価機関についてでございますけれども、金融当局によりますESG評価機関への監督規制も含めまして、ESG評価機関のガバナンスや中立性を担保するルールの整備が望まれるのではないかと考えております。以上でございます。

【水口座長】  ありがとうございました。ほかにすぐに出てこなければ、先を急ぐようですが、もう一つ大きな論点がございますので、各論の4、金融機関の分野に入っていきたいと思います。

 こちらも大きな論点で、第4回ですかね。第4回会合でも御議論いただきましたけども、そこで触れられなかった点や、まだ不足している点などあろうかと思いますので、そういった点を中心に、言わば間接金融側の金融機関におけるリスク管理や、そういういろんな論点について御意見をいただければと思います。ここに挙げられている論点でもいいですし、入っていないなと思われる論点も提起していただいて構いません。いかがでしょうか。

【中村メンバー】  生命保険協会の中村でございます。この中で2つ目のリスクのシナリオ分析について少しコメントさせていただければと思っています。

 ここは現状と、ここにいただいている論点についてのコメントということになりますけど、まず、機会とリスクを把握する方法として、このシナリオ分析というのは極めて重要だと我々も認識しておりますが、現状、試行錯誤しつつ、ノウハウを積み上げて、高度化を進めているということではないかと思います。

 特に定量的なリスク分析、これは正確性とか比較可能性になかなか課題があるというのが現状でして、先行企業でも内部モデルという位置づけになっていまして、なかなか結果の数値を公開している企業までは多くないというのが現状だと思います。

 ここにありますように、シナリオ分析について官民連携の枠組みで進めていくというのはどうかという論点につきましては、非常に有意義だと思いますし、ぜひこれ進めていきたいと我々としては思っています。共通のシナリオの設定や金融システム全体の影響の把握というのは極めて重要だと思いますので、ぜひこの方向でお進めいただければというふうに要望します。以上でございます。

【水口座長】  ありがとうございます。御支持をいただいたということで。

 ほかにいかがでしょうか。お願いします。

【藤井メンバー】  今のお話につきましては、4回の時にお話ししましたけれども、リスク管理については、現状データがない、モデルがない、不確実性も高いという中で、いわゆる定量的にモデルで分析することができない中では、シナリオ分析が主流になるということだと思いますので、記載いただいた方向性だと思います。

 一方で、これから数年たって、データ、モデルの問題が解決してくると、この段階では定量的な部分がより重視されるようになるだろうというふうには認識しておく必要があると思います。

 それから、このページ、及び43ページの監督のところにも関連するのですが、現状のここでのまとめについていいますと、若干リスク管理に傾斜しているような気がしておりまして、機会を捉えたリスクを認識した上で、戦略にどのようにつなげていくかというところが金融機関に期待される部分だと思いますので、そこの戦略とか機会を捉えるためにどう動いているかという論点を若干強めていただいたらよいと思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【吉高メンバー】  藤井様のおっしゃったところに私も呼応する形ですが、3の項目のトランジションファイナンスのローン、人材育成は金融機関にとって必要なことであるのはよいのですが、それ以外、4.ではリスク管理のことばかりに内容が偏ってしまうと、先ほど申し上げたように、地方銀行は悩んで苦労されているので、メッセージ的にネガティブに捉えてしまうのではと懸念いたします。

 特に、まず、シナリオ分析が主流という形になりますと、ほぼ対応できていない金融機関も多い状況では戸惑いがあるのではないかと思います。ガバナンスをまず整えることも重要です。この3の項目の中で、金融機関、つまり間接金融でしなくてはいけないことを整理するなど、必要なことであれば再度記載してもよいと思います。もちろん環境省のESG地域金融のガイダンスや他省でも出されていますが、金融庁がそれについてどう考えるかということを示すためにも、もう少し丁寧に作っていく必要があろうかとは思っております。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。おっしゃるとおりで、プレーヤー別に整理した関係で、一方に入って、こちらは入らないということになっていましたが、必要なことは2回書いてもよいということで、そのとおりだと思います。

 それと、今言及していただきましたが、第4回の環境省のほうのESG金融ハイレベルパネルにおきまして、ESG地域金融というビジョンを示しました。これには赤澤副大臣も御出席いただきまして、大変力強い御支援のお言葉もいただきましたので、ぜひこれを入れていきたいと思っております。

 特に、リスク管理だけではなくて、むしろ金融機関が融資先を支援しながら、融資先の事業転換を図っていくとか、ビジネスチャンスをつかんでいくとか、いわばリレバンのその先にある、地域を全体として活性化していく地域金融機関の役割、こういうこともきちんと推進していくべきだなと思っております。

 問題は、地域金融機関にただ任せておけば進むのかということです。口でやれというだけじゃなくて、どうやったら地域金融機関が本当に地域を活性化させながら、事業転換を進めながら、いわばESGを進めていけるのかという、そこの部分が、人材育成なのか、何らかのサポートなのか、そこが重要なんだなと思っております。何かいい方法論があれば、ぜひ教えていただきたいのですが、皆様いかがでしょうか。お願いします。

【足達メンバー】  例えば、グリーンアセットというような概念が出てきますよということをきちんと地域金融機関の皆さんにも理解をいただくことが有効かと思います。例えば森林です。今まで森林は融資対象にならないと考えられていた。しかし、炭素の固定化、シンクの考え方が一挙に広がったり、個別に企業がRE100の実現のために固定源を獲得するということになれば、状況は大きく変わります。

 そうした新しいグリーンアセットというものが生まれてくるという認識を作ることが大事だと思います。機会ということで言えば、今までアセットとしてなかなか位置づけられなかったものが、この脱炭素の動きの中で、あるいはサステナブルファイナンスの中で、位置づけられるようになるニュアンスを出してくことがよいと思います。以上でございます。

【水口座長】  ほかにいかがでしょうか。

【岸上メンバー】  岸上ですけれども、例えばですが、グローバルで言いますと、CFAの資格の中に徐々に年々ESGに関連したケーススタディーが増えておりまして、アナリストの分析の判断材料の1つとしてどのように考えていくかという思考を促進していると思いますが、人材育成の一環として、例えば与信判断の仕方の中でどのように気候変動を捉えるかですとか、直接投資のほうで言いますと、アナリスト分析の中でどのように捉えるかですとか、選択肢を通常の分析ツールの中に内在していくということが、よりESGへのリテラシーを上げるという意味では活用できるのではないかと思います。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。事業性評価の中に組み込んでいくというのはそうですね。ふと今の話を聞きながら、銀行員の資格の中に入るのかとか、ちょっと思いましたけども、ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

【林(礼)メンバー】  水口先生、BofAの林です。今の話の人材育成のところなのですが、銀行の資格ということですけれども、たしか私の記憶が正しければ、証券業協会では今後、外務員試験の科目の中にESGを入れると伺っておりますので、金融機関の職員の皆様のトレーニングの一環に組み込んでいくというのはすごく意味があるのではないかなと考えています。以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。財務と税務のほかにESGということですかね。

 ほかにいかがでしょうか。ぱっと出てこなければ、ポジティブなほうに議論を進めていたところなのですけども、そうはいいましても、43ページにこういう質問がありまして、皆様から何かコメントがあればと思うんですが、金融機関における取組を金融庁がモニタリングする際にどの辺が重要と考えるか。金融庁のモニタリングというところに皆様、何か御意見ありますでしょうか。金融庁が主催している会議で言いにくいかもしれませんけど、そこを忖度なしに言うとしたら、どんなことをおっしゃいますか。

 それと、気候変動だけでいいのかという問題があるので、ESG全体なのかもしれませんけど、いかがでしょうか。

【林(礼)メンバー】  BofAの林です。

 検査をしていただくときに、いろんな御質問事項が来て、弊社の場合、それなりに心の準備をして答えられるようになってきているような気がするのですが、先ほどの議論の中でも、やはり地域金融機関の方ですとか、まだまだこれからという方々にとっては結構大変だろうなとも思います。あんまり手助けするという話ではないのですけれども、例えば、こういうモデルケースでこういう回答といったような、答えるために組織がサステナブルじゃなくなってしまわないように、少し手引書的なものも既にあるのかもしれませんけれども、回答しやすいような形での御質問の作り方ですとか、投げかけ方みたいなものがもし工夫できるのであれば、お互いにとってストレスが若干減るかなと思っております。以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。今のことに限らず、ほかに金融機関に関して全般的に御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。お願いします。

【半田メンバー】  損害保険協会の半田でございます。今のモニタリングというところについてなんでございますけれども、モニタリングというと、先ほどから議論があります既に定量化に向けての手法が確立をされているかのようなイメージを持たれる方も多いかと思うのですが、正直申し上げますと、まだ民間としてもここは御当局とコミュニケーションをしっかり取っていきたいという段階かなと理解をしております。

 シナリオ分析についても、やはり御当局と金融機関と対話をしながら、シナリオあるいは前提条件となりますところを可能な限り統一化をしていくというような努力が必要なのではないかと考えております。以上でございます。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【藤井メンバー】  藤井ですけれども、半田様の御発言に全く同意でございます。金融機関の皆さんとお話をすると、経営者の方々は投資家にさらされているということで、認識が非常に高まっております。

 また、ボードの方々も、コーポレートガバナンス・コードの改訂があるので、今、急速に認識が高まっている中で、これをどうやって現場に落としていくかというところが皆さんお悩みだと思っています。

 そういう意味では、監督当局と金融機関の対話を通じる中で、例えばこういう工夫をしているところがありますよとか、そういったような対話を深めていく。モニタリングのツールというよりは対話を深めていくことが、考えられると思っております。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。

 ほかに、いかがでしょうか。一旦、よろしいでしょうか。

 それでは、最後の論点ということで、各論のほうにさらなる論点とあります。スライドは1枚しかないのですけれども、これはさらなる論点なのでスライドは1枚しか作っていないということでして、ここに書いていないこと、今日、議論されなかったことで、どんなことでも言ってくださいということです。

 1つだけ、サステナブル社会に向けて、資金フローをどんどん分厚くしていくためにどうしたらいいかという論点が書かれておりますが、それも含めて、あらゆることについて御議論くださいということなのですが、いかがでしょうか。

【藤井メンバー】  すみません、藤井です。

【水口座長】  はい、お願いします。

【藤井メンバー】  プレーヤーごとで整理しているので間に落ちているのかもしれないのですが、今後出てくる議論として、やはりカーボンマーケットがあると思います。排出権取引市場と狭く言っていいのか分かりませんけれども、中国で既に始まっておりますし、EUも行われていて、アメリカも民間主導で動きがありますので、将来の論点として必ず出てくるとは思っております。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。日本でもカーボンマーケットをつくっていくべき、一言で言うとそういう感じなのでしょうか。あるいは、そこまでは言わず、検討対象ということでしょうか。

【藤井メンバー】  恐らくカーボンマーケットと炭素税の話がリンクして、さらに国境炭素税の動きにもなってくると思いますので、ある程度避けられないトピックではないかとは思います。

【水口座長】  ありがとうございます。それは、重要な論点として検討していくということですかね。

 ほかに、いかがでしょうか。あるいは、今の点に関してでも。

【田代メンバー】  田代ですけれども、よろしいでしょうか。

【水口座長】  はい、お願いします。

【田代メンバー】  今回の議論の中で、発行体は開示という側面から、ある意味、投資家目線で議論されていると思うのですが、発行体自身が、どうすればもっと発行しやすいと考えているか、という視点が入っていないと思います。もちろん証券会社の立場としては、先ほどお話した価格発見や流動性の観点など、いろいろな議論があると思いますが、発行体の意見を改めてこのような会議でヒアリング調査する、といったことができればいいなと思いました。

【水口座長】  なるほど。ありがとうございます。発行体が発行しやすくなるような。

【田代メンバー】  例えば、グリーンボンドだと補助金が出るから発行しやすいとか、いろいろなサポートがあれば発行が促進されるといった、ある意味シンプルな議論もあると思いますが、それ以外にも要因があるのかなと思い、発言させていただきました。

【水口座長】  ありがとうございます。そうですよね。補助金はいつまでも続きませんから、市場の中で消化されないといけないので。

 ほかに、いかがでしょうか。

【小野塚メンバー】  小野塚です。よろしいですか。

【水口座長】  はい。

【小野塚メンバー】  2つほどございます。

 1つは、私、以前のプレゼンテーションの中でも申し上げたポイントですが、開示のところに絡めて、今々ということではなくて将来に向けた視点ということで、例えばデジタル化、いわゆる開示の横比較等を含めて、デジタルプラットフォーム的なものが考えられないのかという点については、ぜひ、今日、今々ではなくてもいいですが、議論の対象としていただけたらと思います。

 2点目は、せっかくサステナブルファイナンス、資金の流れを変えるというお話ですので、日本の資産、国民の金融資産であるとか、あるいは年金資産が、こういった中により加速度的に向いていくようなインセンティブづくりというものについてどう考えるのか。例えば、税務、いわゆるタックスメリット的な視点ですとか、あるいは長期的な、特にインパクト投資のようなものですと、もしかすると5年、10年ではなくて何十年というタームでやっていくということを考えると、世代を超えた投資の考え方に対するインセンティブづけのようなものとか、インセンティブサイドの議論を、時間をかけてしていただけたらと思います。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。

【足達メンバー】  ありがとうございます。

 ちょっと観点が変わってしまうこと、駄目もとで発言するような形になることをお許しください。ただ、一連の今の報告書材料を見ますと、政策金融的な視点は全く入っていないわけです。欧州の動きを見ていくと、例えばトランジションファンドのように、これから脱炭素の中で衰退する産業にどういうふうに手を打っていくのかというような公的金融の視点が位置づけられている。

 日本でも、先ほど中小企業の皆さんのお話が出ましたけれども、地方の公共交通機関の皆さんとのディスカッションをしていると、田舎を走っているバス、あるいは離島を結んでいる渡し舟やフェリーをどうやって今後、脱炭素にするのかという悩みは非常に大きい。ここでは、公正な移行という意味での公的な資金の流れと、民間の資金、ノウハウをブレンデッドしていく視点が必ず必要だと思います。公的資金を元に、各地方の公共交通機関からバスや鉄道車両なんかを買い取って、それをリースという形で事業者に使ってもらう。買い取った側できちんと化石燃料から脱炭素へ動力転換を図っていく。こういうシナリオも、私は可能だと思います。

 今、2兆円ファンドが注目を集めていますが、イノベーションに焦点が当たっている。もちろん、それも必要ですけれども、公正な移行、人々を取り残さない脱炭素社会への移行、衰退産業の人たちをそのままにしておかない移行という視点から、政策金融のニュアンスも、この報告書の中のどこかには位置づけておくことが重要だと思います。

【水口座長】  ありがとうございます。

 ちょっと私から一言申し上げると、おっしゃるとおりで、経営体力のない主体、経営体力の非常に弱い主体の脱炭素をいかに進めていくのかというのも、実は大きな問題の一つで、市場原理だけで片づけられない、市場原理だけに任せておけない部分については、おっしゃるような政策的な手法とか、欧州は確かに欧州としてのファンドをつくって、そういうことをされるわけですから、同じように政策的なファンドをつくって、それと民間とをブレンドしていく、こういう発想があってもよいかと思いました。

 それと、1つ前の小野塚さんの御指摘もなかなか興味深く、税制は非常に大きな手法の一つですし、長期のESG投資を長期に持つときの税制の優遇は、なるほど相続とかいうこともあるのかしらと、ふと思いました。なかなか難しい論点だと思いますけれども、重要な論点だと思いました。ありがとうございます。

 ほかに、いかがでしょうか。

【長谷川メンバー】  経団連の長谷川です。

 また違った観点になってしまいますが、経団連で、今、休眠預金を活用して社会貢献活動に取り組むNGOの事業を支援するJANPIAという財団の支援をしております。そこで、インパクト投資にも関わると思いますが、社会的インパクト評価の手法が確立されていないというところが、皆、非常に悩んでいるところであります。ここで、官民連携の促進でサステナブルな社会実現に向けた資金フローを実現するとなっているのですが、官民だけではなくて、内外のアカデミア、つまり大学や研究機関、またNGOと連携して、どういった事業が、どういった社会的インパクト、アウトカムにつながるのかといったような実証分析や、ビッグデータなどを集めていくことも非常に重要ではないかと思っています。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。

 では、井口さんでしょうか。

【井口メンバー】  ちょっと細かいところかもしれないですけれども、ESG情報は、すごく今、注目されて、重要になってきていると思いますが、今、世界の投資家の中で、この非財務情報の保証をしっかりやって欲しいという動きも出ています。また、保証の仕方も何も決まっていないということがあると思うのですが、大きな流れになってきていると思います。例えば、IFRS財団のコンサルテーションペーパーやEUのペーパーでも出てきているということなので、それをやるとか、やらないとかではなくて、先ほど国際的な議論という項目があったと思いますが、既にもう関与されていると思うのですが、日本としてちゃんと意見発信していくということは書いておいたほうがいいかと思いました。

 以上でございます。

【水口座長】  ありがとうございます。

【吉高メンバー】  よろしいでしょうか。吉高です。

【水口座長】  お願いします。

【吉高メンバー】  グリーン国際金融センターの構想の御説明がございましたけれども、世界的にグリーンイノベーションなどの技術に対する投資の担い手として、プライベートエクイティの存在は非常に大きいと考えております。環境ビジネスのスタートアップにおいて、ユニコーン型というよりは、コーポレートベンチャーキャピタルとのコラボで、ESGのストーリー性をもって進めているところもあります。ぜひこの構想の中で、グリーンベンチャーの育成といった観点についても考えていただければと思います。
あと1点、国際的観点から、他のサステナブルファイナンスを進めようとする市場と競争するというのもあるのでしょうが、連携するという形もあると思います。アジアの市場では、欧米とタッグを組み始めているところもあります。日本はそこへ対立軸だけではなく、連携をしていくことも検討してほしいと思います。

 最後に、3点目は、啓蒙啓発です。人材と啓蒙啓発が最も重要です。例えば、カーボンニュートラルに向けての具体的なパイロット事業を金融市場の視点からつくり、見せていくということも有用なのではないかと思っております。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。

 ほかに、いかがでしょうか。

【渋澤メンバー】  渋澤です。よろしいですか。

【水口座長】  はい、お願いします。

【渋澤メンバー】  論点のところで資金フローという言葉を使われていますけれども、世代を超えるサステナブルと考えたときに、この資金フローを既存の財源からつくると、既存の考え方、場合によってはしがらみみたいなものがあると思います。どうしても今までの判断基準の論点で考えてしまう。これから必要なのは、次の世代のために資金ストックをつくることだと思います。長年、NPOなどソーシャルセクターの関係で提言していたのは、アメリカにある5%ペイアウトルールを日本で活用すべきという視点です。

 御存じの方、多いかと思いますが、アメリカの税制度では5%のペイアウト、つまり毎年、基金から5%を社会的事業にペイアウト(拠出)すると、非課税対象になる非営利組織として認められます。この考え方をサステナブルファイナンスに採り入れ、新たな基金をつくって、毎年、官民連携でその基金に資金を拠出して積み立てることと同時に、5%を毎年、サステナビリティを促す社会的活動にペイアウトする。5%ペイアウトの金額は、経済的リターンを求めない、しかし、毎年残っている95%の残高で長期的に5%以上のリターンが実現できるのであれば、その基金は使い切りではなくて、永続します。この制度はアメリカ経済社会でお金の流れのダイナミズムをつくっています。このような基金からベンチャーキャピタルなどいろいろなイノベーション創出にお金が流れています。

 このような制度を日本でも実施すべきだとずっと思っています。例えば先ほど言及のあった休眠預金をそこに一部積み立てていく。あるいは去年末から立ち上がっている、大学研究基金の構想もこのような形できちんと設計したほうがいいと思い、内閣府や文部科学省に提案していますが、やはり既存の枠の中でつくりたがる傾向がある。そうすると、なかなかピュアな資金フローができないような気がします。ですから、新たな今後の論点ということを考えた場合、いかにサステナブルにもコミットした資金ストックをつくれるか。これは、本当に議論だけではなくて実践すべきではないかと思います。

【水口座長】  サステナブルにコミットした資金ストックをつくる、いいお言葉ですね。休眠預金もそうですよね。おっしゃるとおりだと思います。

 ほかに、いかがでしょうか。

【林(礼)メンバー】  BofAの林です。

 サステナブルファイナンス有識者会議でこういう議論はすばらしいと思っていて、ある程度まとめたものが出るのでしょうけれども、これはスタートにすぎないと思うので、これをどう実装して、そして、その効果だとか、欠けているところをどういうふうに埋めていくかという継続的なフォローアップがすごく重要で、それをどこの団体が担うのか分かりませんけれども、提言が出しっ放しにならないように、to be continuedのところをちゃんと引き継げるような形で締めくくっていただけるといいのではないかと思います。

【水口座長】  ありがとうございます。おっしゃるとおりで、to be continuedにするための仕組みをちゃんと併せて用意しなければいけませんよね。EUの場合にはTEGのようなグループ、その先のグループはずっと継続をしているわけですが、日本でもPDCAをちゃんと回していくための、もちろん金融庁さんが中心なのかもしれませんが、それだけではない仕組みが必要でしょうし、先ほど長谷川様からも、官民だけではなくてNGOやアカデミアもちゃんと入れということで、アカデミアの端くれとしておっしゃるとおりだと思いました。ありがとうございます。

 ほかに、いかがでしょうか。

【吉高メンバー】  1点、よろしいでしょうか。今回、マイクロファイナンスという言葉は入っていましたが、クラウドファンディングという言葉についてはどこかに入っていたでしょうか。確認です。

【水口座長】  クラウドファンディングは、今のところ入っていませんが、入れたほうがいいという意味ですか。

【吉高メンバー】  そうですね。クラウドファンディングは、株式型、不動産型など多様にありますから、将来的にはサステナブルファイナンスとして入れていただいてもいいのかなという気がします。

【水口座長】  as usualで任せておくだけではなくて、推進する何か手法とかありますか。

【吉高メンバー】  手法ということでは、今、すぐには思いつきませんが、必要かと思っております。

【水口座長】  必要ですよね。ありがとうございます。

【吉高メンバー】  クラウドファンディングに、グリーンなどの色分けは今のところありませんので。

【水口座長】  なるほど。ありがとうございました。

 ほかに、いかがでしょうか。

【岸上メンバー】  岸上です。

【水口座長】  はい、お願いします。

【岸上メンバー】  先ほどの渋澤さんの御意見で、次の世代に渡す資金ストックを増やすということで、今回の提案内容に関しましても、次の世代の資金に対する考え方にフィットするというのも重要かと思いました。その中で、最終的なレポートを書く前に、例えば委員の皆様が関わっていらっしゃるアカデミックな機関の学生とかからのフィードバックなどを少し考慮した形で、最終的にまとめていくということも一つの案として提案いたします。

 以上です。

【水口座長】  なるほど。それは検討課題でしょうか。ありがとうございます。

 ほかに、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 皆さん、大変御協力いただきまして、ありがとうございました。実は、今日、この議論を始める前に、全部は終わらないのではないかと危惧をしていました。そのため、冒頭、大変失礼な言い方をいたしましたが、皆様の御協力によって、恐らく時間ぴったりぐらいで幅広な御意見をいただくことができました。しかし、まだまだ言い足りないこととか、あるいは後で思いついたこととかあるかもしれません。そういう場合には、事務局に書面で御提出をいただければ、各メンバーの方に共有させていただきたいと思います。

 本日も、大変貴重な御指摘、そして建設的な御意見、御議論をいただきまして、ありがとうございました。

 それでは、最後に事務局のほうから御連絡等をお願いいたします。

【岡田総合政策課長】  本日は、ありがとうございました。

 次回の日程につきましては、また追って事務局から御連絡差し上げます。

【水口座長】  この後、報告書の形にだんだん仕上げていくプロセスになります。もう一息、皆様の御協力をいただきたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。

 それでは、本日はこれで終了いたしたいと思います。ありがとうございました。
 

 ―― 了 ――
 

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総合政策局総合政策課

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