「サステナブルファイナンス有識者会議」(第9回):議事録

1.日時:

令和3年9月22日(水曜日)16時00分~18時00分

【水口座長】  皆様、こんにちは。それでは、時間ですので、ただいまよりサステナブルファイナンス有識者会議第9回の会合を開催したいと思います。しばらく御無沙汰をしておりました。皆様、お元気でおられたでしょうか。本日も御多用のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。

 初めに、毎回同様の注意事項ですが、発言をされない間はミュート設定にしてください。発言するときにミュートを解除し、発言が終わられましたら再びミュートに戻していただければと思います。

 議事に入ります前に、メンバーの変更が一部ございましたので、御紹介したいと思います。全国銀行協会の伊藤様、それから、日本損害保険協会の嶋津様、生命保険協会の角様が交代ということで、今回からメンバーに入っていただきました。よろしくお願いをいたします。

 それでは、本日の議事に移りたいと思います。6月に有識者会議として報告書を取りまとめました。その後、金融庁では、7月から新たな事務年度ということで、具体的な取組みを進めていただいているということです。そこで本日は、その後の具体的な取組みの状況について御説明をいただきまして、委員の皆様から御意見をいただくと、こういう回だというふうに考えております。

 最初に金融庁様から御説明をいただき、その後、意見交換という形にしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは最初に、事務局の金融庁から、資料1に基づいて御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  では、金融庁のほうから御説明させていただきます。私、画面の一番左側に映っておりますけれども、金融庁でサステナブルファイナンス推進室がこの7月に出来まして、そこの室長を務めております西田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 また前回第8回の会議から金融庁のほうでも人事異動がございまして、総合政策課長を岡田が担当させていただいておりましたが、異動に伴って、太田原が新しく着任しておりますので、画面の真ん中におりますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【太田原総合政策課長】  太田原です。よろしくお願いします。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  それでは、画面にも共有させていただいております資料、これに基づいて簡単に御説明させていただきます。

 おめくりいただきまして、1ページ目です。サステナブルファイナンス有識者会議のこれまでの議論の経過ということで書かせていただいております。経済と環境の好循環をつくる、また、このために高い技術力や潜在力を持っている日本の企業に対して、国内外の成長資金が円滑に供給されるための金融機関や金融資本市場の環境整備という観点から1回から8回までこの6月まで御議論をいただいたところでございます。

 次、2ページ目を御覧ください。おまとめいただいた報告書ですけれども、その概要を掲げさせていただいています。大きく3点、企業開示、それから、市場機能の発揮、そして、間接金融、金融機関の投融資先支援とリスク管理です。企業開示につきましては、下のところですけれども、コーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえ、気候変動の開示の質と量をTCFDに基づく開示を促して、継続的に進めていく。

 それから、市場機能の発揮としまして、それぞれ論点ありますけれども、機関投資家のエンゲージメントに向けたコミットメントの強化とか、また、個人の投資機会として、ESG関連投信の組成や販売に当たって顧客への丁寧な説明、それから、その後の選定状況を継続的に説明していくこと。また、ESG評価・データ提供機関について、期待される行動規範の在り方等について金融庁において議論を進めていく。また、ESG関連債情報プラットフォームについて、諸外国における取引所の取組み例などを踏まえて、グリーンボンドなどに関する実務上有益な情報が得られる環境整備やESG関連債の適格性を客観的に認証する枠組みの構築を期待という形でまとめていただいています。

 また、間接金融については、一番下にありますけれども、気候変動リスクに係る監督上のガイダンスを策定する。それから、投融資先の気候変動対応を金融機関が進めるという柱になってございます。

 次のページですけれども、こうした有識者会議の御提言に沿って、金融庁のほうで、2か月ちょっとたっておりますけれども、8月末に「金融行政方針」の中で少し具体的に記述させていただいておりますので、御紹介させていただきます。

 先ほどの立てつけに沿いまして、(1)企業情報開示の質と量の向上のところですけれども、TCFD開示にも関連して、金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループにおいて、上場企業におけるサステナビリティに関する取組みの適切な開示の在り方を検討する。それから、IFRS財団の検討について、官民挙げて積極的に参加する。

 また、市場機能の発揮につきましては、グリーン国際金融センターの実現に向けて、国内外の様々な投資家が脱炭素に資する投資判断を容易かつ的確に行える環境を整備するという観点から、広範なステークホルダーと連携しつつ、機関投資家の実務等に基づき、資金使途などの基準の策定を進め、グリーンボンドなどの適格性を客観的に認証する枠組みの構築を目指すというふうにさせていただいています。また、その上で、日本取引所グループ(JPX)と協働し、こうした認証を得たグリーンボンドなどの情報や発行体のESGに関する経営方針・取組方針などを広く集約化・一覧化するプラットフォームの整備を行うというふうにさせていただいています。

 次、4ページ目ですけれども、市場機能の発揮のその他の論点についてです。ESG評価・データ提供機関について、評価手法の透明性や比較可能性、それから、独立性・客観性について、有識者を交えた検討の場で議論を進めていくこと。それから、投資者保護の観点から、ESG関連投資について、資産運用会社・販売会社に対するモニタリングを進めていくこと。また、ソーシャルボンドについて、関係省庁と連携をして、ソーシャルプロジェクトの具体的な例示について文書の策定を検討していくというふうにさせていただいています。

 また、間接金融についても、重複しますので、説明は省略させていただきますけれども、金融機関による顧客企業の支援、それから、シナリオ分析などを活用したリスク管理について、モニタリング上の着眼点を金融庁において明確化するというふうな形でさせていただいています。

 以上が、サステナブルファイナンス有識者会議報告書を踏まえた金融庁としての取組みとして御紹介させていただきました。

 次、やや重複もありますけれども、具体的な項目についてです。5ページ目は、大きな項目の1つ目ですけれども、企業開示の充実についてです。6月25日に金融審議会総会を開かせていただきまして、議論を進めさせていただいているところです。特に、企業経営におけるサステナビリティの重視などの経済社会情勢の変化があります中で、投資家の投資判断に必要な情報を適時に分かりやすく提供して、企業と投資家の間の建設的な対話に資する企業情報の開示の在り方について検討するということで、6ページ目、今月9月2日ですけれども、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」を開催させていただきました。真ん中にありますけれども、資本市場の機能発揮を通じて、企業価値の向上と収益向上の果実を家計にもたらしていくという好循環を実現するために、投資家の判断に必要な情報としてどういうものがあろうかということで、改めて御議論を始めさせていただいている。以上が企業開示についてです。

 その上で、7ページ目をお開きいただきますと、大きな2つ目の塊であります市場機能の発揮について、特に情報プラットフォームの整備や認証枠組みについて幾つか資料を掲載させていただいています。7ページの冒頭のところは、グリーンボンドなんかをはじめとします世界のESG関連債の発行は増加傾向が続いておりますけれども、こうした中で改めて情報プラットフォームの意義について、機関投資家や企業の方などに確認させていただくと、例えば発行情報やクーポン、それから、売買実績などの取引情報があると有益なのではないか。また、情報が様々なところにありますけれども、これを集約化・一覧化していくことが、発行市場であり、それから、潜在的には流通市場も含めて重要なのではないかといった御意見。また、企業の方からは、発行体の側にとってもメリットが享受できるような仕組みであるべきではないかというような御意見がありまして、具体的には下のほうに書かせていただいています。

 続いて、8ページ目です。先ほども簡単に申し上げました、足元の国内での情報プラットフォーム・データベース等もございます。環境省の「グリーンファイナンスポータル」、それから、日本証券業協会の「SDGs債の発行状況」でESG関連債の発行情報の提供を行っていただいているほか、JPXにおかれても、上場会社がESG関連情報を開示する際のポイントということで様々な情報提供を行っていただいているところです。

 9ページ目は、他方で海外の状況でございます。諸外国のプラットフォームなどを見ますと、ESG関連債の発行情報・取引情報のほか、こうした個別債券の情報にかかわらない債券発行に必要な知識とかケーススタディーなども含めて情報提供を行っているものがございます。ロンドンとルクセンブルクの例を掲げさせていただいています。

 こうした点を参考にしながら、御議論いただきたい点として9ページ目の下のところに記載させていただいておりますけれども、ESG関連債・投資関連情報を集約・一元化するプラットフォームについては、投資家・金融機関・発行体・評価機関などの市場参加者に対する情報提供・機能提供として、どのような付加価値を提供していくことが望まれるかというふうにしておりまして、この点について御議論いただければ幸いでございます。

 続いて、10ページ目です。プラットフォームの中身にも関わってくると思いますけれども、主要な2021年に発行されたグリーン・トランジションボンドのうち、金額の多いものをいくつか例として掲げさせていただいています。真ん中にありますとおり、依拠したガイドラインとして※印になっていますけれども、下にありますICMAのグリーンボンド原則、それから、環境省のグリーンボンドガイドライン、CBI、そして、経産省、金融庁、環境省によるトランジション・ファイナンス基本指針等に依拠しつつ、グリーンであるとかトランジションであるとかということについて評価機関から評価を得て発行されることが一般的であるというふうに承知しております。

 そのグリーンとかトランジションについて、補足的に11、12ページ目に簡単に資料を掲げております。11ページ目、グリーンについては、例えばここにあります洋上風力などのように、一般に再生可能エネルギーなど明確な環境改善効果がある事業というふうにされております。

 次いで、12ページ目、駆け足ですけれども、先ほどの発行事例のところにも書きましたけれども、海運について例えばロードマップということで参考に掲げさせていただいていますけれども、一般に、多排出分野など、企業などにおける脱炭素実現に向けた長期的な戦略にのっとった温室効果ガス削減の取組みをいうというふうにされておりまして、下のところに、本年5月に公表したクライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本方針からの抜粋を記載させていただいています。

 13ページ目のところですけれども、こうした実情とか、様々な現状の枠組みなども踏まえつつ、情報プラットフォームと認証枠組みのイメージとして記載させていただいています。真ん中にあるところがプラットフォームのイメージですけれども、1つには、左側の投資関連情報として、投資家・発行体向けのガイドとか、あと、ウェビナーなんかの啓発情報、それから、様々なケーススタディーなど。もう一つは、中央にあります債券の関連の情報で、資金使途の管理についての情報、それから、外部評価の取得状況、発行企業の個々別々の情報、発行後の開示についての情報など、様々な情報の提供を行っていくということが考えられるかと思います。その上で、右にありますけれども、認証結果として、グリーン、トランジション、こういったものに認証が得られているということを掲載することが考えられるかと思います。

 こうしたイメージにつきまして、下の「ご議論頂きたい点」にありますけれども、情報プラットフォームを通じて、グリーンボンドなどの適格性について情報提供を行い、投資家の容易かつ的確な投資判断や、脱炭素化などに取り組む企業等への資金供給につなげていくためには、どのような点に留意して議論を進めていく必要があるか。また、上記について、脱炭素に向けた企業の取組み(トランジション)を適切に評価すること、技術や市場実務の発展を柔軟に取り込んでいくこと、また、ボトムアップでマーケットや市場参加者からの意見を取り入れて、内外の投資家の方からも信認されるものである、そういった視点が重要と考えられますけれども、これらも含めどのような点が重要かということについて御議論いただければ幸いでございます。

 次、14ページ目ですけれども、有識者報告書の3点目の金融機関の投融資先支援とリスク管理について、こちらも先ほどの説明とやや重複しますけれども、金融機関における投融資先支援と気候変動リスクに関し、まずは預金取扱金融機関・保険会社等に必要な態勢について、金融庁においてモニタリング上の着眼点を明確にするということで考えてございます。大きく2つの柱で、1つ目はリスク管理として、リスク管理に関するガバナンス、それから、気候変動リスク管理プロセスの構築、また、シナリオ分析の活用なんかを通じて、気候変動に強靭性のある金融機関自身のビジネスモデルを確立していく。それから、右側にありますけれども二つ目として、積極的な顧客企業との対話を通じて、企業の気候変動対応を支えていく。また、新たなビジネス機会の創出に貢献していくということを通じて、我が国経済・社会の持続可能性に金融機関として貢献していただくというようなことが考えられるかと思いますけれども、具体的な内容はまたこれから検討していく。

 15ページ目が、最後になりますけれども、これまで御説明した項目について一覧化して掲げさせていただいております。内容については、重複いたしますけれども、開示の充実、市場機能の発揮、それから、間接金融について、また、市場機能の発揮については、プラットフォーム・認証など、それから、ESG評価機関についてさらに議論していくこと、そして、ESG関連投信についてのモニタリングの実施、ソーシャルボンドなど、様々な論点があり、様々な検討主体でそれぞれ着実に今後検討を進めていく、または進めさせていただきたいと思っておりますけれども、一定程度それぞれ集約された段階で、この有識者会議でも御報告をさせていただいて、御議論いただくということが考えられるかと思っております。「ご議論頂きたい点」として、一番最後の下に書かれておりますけれども、有識者会議を踏まえて、企業開示の充実、市場機能の発揮、金融機関の投融資先支援とリスク管理についてそれぞれ今後具体的な検討を進めていくに当たり、特段の留意点はあるかというふうにさせていただいています。

 最後の最後になりますけれども、16ページ目をお開きいただきますと、「ご議論頂きたい点」として資料の中で幾つかありましたことについて改めてまとめさせていただいています。1つ目は、全体像として、先ほども申し上げましたとおり、今後、具体的な検討をそれぞれに進めていくに当たって、現時点において特段の留意点があるかということについて御議論いただければと存じます。

 また、情報プラットフォームについて、市場参加者に対する情報機能提供としてどのような付加価値提供をしていくことが望まれるか。さらに情報プラットフォームを通じて、グリーンボンドの適格性について情報提供を行い、投資家の判断、それから、企業等への資金供給につなげていくためにどのような点に留意していく必要があるか。

 また、具体的には、企業の取組みの適切な評価とか、柔軟な検討とか、それから、市場参加者の意見を取り入れて、内外の投資家からも信認されるものであるといった視座が考えられると思いますけれども、これらも含めてどのような点が重要かということ。

 説明は以上でございます。以下は参考資料でございますので、御説明は省略させていただきます。ちょっと早口になり恐縮ですけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【水口座長】  ありがとうございました。それでは、ここから議論の時間にしたいと思います。今御説明をいただき、今、画面に御議論いただきたい点がまとまっておりますけれども、今の御説明からお分かりいただけたかと思いますが、4つのポイントのうち、下の3つはいずれも情報プラットフォームに関わる議論です。一番上が、それ以外といいましょうか、全体像に関わる論点ですので、ここから先は大きく2つのフェーズに分けて議論したいと思います。

 最初に全体観、この画面では一番上の企業開示の充実、市場機能の発揮、リスク管理、それぞれについて特段の留意点はありますかということについて最初に皆様から御意見をいただき、一段落したところで、次に情報プラットフォームについては改めて議論の時間を取る、このようにしたいと思います。今から18時までということですので、あと1時間40分ほどございますので、じっくり議論ができればなと思います。

 発言のルールは覚えておられるでしょうか。この有識者会議の議論の仕方というのは、次のようなルールであります。発言の際には、お一人1テーマ1分ぐらいでお話をいただければと思います。そして、短く話していただいて、自分が話した後、次の方にバトンタッチをして、また自分の番が回ってくる。そういう形で議論のキャッチボールができるといいなと思っております。また、チャットに書いていただいてもいいんですが、むしろそのまま声を上げていただく。ミュートを外して、「水口ですけど、一言いいですか」というふうにお名前を名のって、自由にコメントしていただくという形で進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、まず全体観なのですが、金融庁からはこういうお題をいただいています。企業開示の充実と市場機能の発揮、金融機関の投融資先支援とリスク管理について、今後具体的な検討を進めていくに当たって特段の留意点はあるかということです。これは言い換えれば、情報プラットフォーム以外のところについて議論してくださいということですので、情報プラットフォーム以外のところで皆様から御意見をいただきたいと思います。

 私がこれを見てぱっと思うのは、そもそも有識者会議は今後どういう役割を果たしていくのかということとも関わるのかなと思います。当面思われているのは、個々それぞれの分野ごとに、例えば企業開示の充実につきましては、金融審議会の中にディスクロージャーワーキング・グループが出来たわけですから、そこで議論していただくということになるでしょうし、金融機関の投融資先支援とリスク管理につきましては、今御説明がありましたように、当面は金融庁として着眼点を検討していく、こういうことだろうと思っております。その中で一定程度議論が進んだところで有識者会議を開いては御報告をいただく、こういうような感じを今のところ想定しているのですけれども、そういうことも含めて御意見をいただければと思います。

 どなたからでも結構です。いかがでしょうか。御意見があれば、声を上げていただければと思いますけれども、いかがでしょう。

【藤井メンバー】  では、藤井からよろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【藤井メンバー】  なかなか第1バッターは難しいと思うので、場のつなぎも含めてですけれども、事務局の御説明ありがとうございます。論点は非常に明確だと思いますけれども、15ページで全体像の網羅性を示していただいていますが、より詳細なスケジュールが必要だと思います。資料の20ページのIFRSのISSBの動きを見ますと、すでにかなり詳細なスケジュールが示されています。7月にEUのロードマップが公表されましたが、そこでも四半期ごとのベンチマーク、メルクマールが明確になっています。15ページの上に3か月ごとの矢印を描いているということもあるのですが、サステナブルファイナンスのテーマについては非常に世界的にスピードが速いので、スピード感と明確なスケジュールを透明性を持って設定しながら進めるということが必要ではないかと思います。

 御説明の中で、各パーツについて議論が一定程度進んだところでこちらの会議で共有して議論したいということを御説明いただきまして、そこも異論はありませんけれども、それがいつ頃行われるのかと。いろいろなものがここでいう4月-6月に集まってしまってもいけないので、スピード感を確保するために、この課題についてどういうタイミングでどういった議論が行われそうかといったことはある程度早めに、委員の皆さんにシェアしていただいて、スケジュールについての想定をしながら前に進めるべきではないかということをコメントとして申し上げたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

【水口座長】  ありがとうございます。おっしゃるとおり、IFRS財団を含めて非常に進みは早いですし、のんびりしていると遅れてしまいますよね。そこはそのとおりだなと思いました。

 ほかにいかがでしょうか。特段誰もないでしょうか?

【林メンバー】  すみません、BofAの林ですが、よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【林メンバー】  今のIFRS財団の話とも関わるのですけれども、今日の新聞にも載っていたが、日本として積極的に関わっていくし、お金も出していますということだと思いますので、ぜひIFRS財団で行われていることについて、日本にもワーキング・グループがあるということですので十分に共有されていると思いますが、ルールづくりにも積極的にコメントを日本からも発信していただきたいと思います。また、TCFDに加えてIFRSということをもし日本で中心的な核として据えていくということであれば、前広に議論を進めていただきたいと思います。今の藤井さんのお話と一緒ですけれども、グローバルな国際金融センターになっていくということであれば、無視できない議論だと思いますので、そこについてより留意をいただければと思っております。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。そういうふうに言われて私もふと思ったんですけれども、私が質問していいんでしょうかね。金融審議会にはディスクロージャーワーキング・グループが出来ましたけれども、金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループとこのIFRSに対する対応というのはどういう関係になっているのかなとちょっと素朴に思ったんですけれども、それは何か連携しているんですか。

【太田原総合政策課長】  すみません、ちゃんと部内で体系的に理屈を整理したわけではないですが、ただ、6月の報告書の段階でもサステナブルファイナンス有識者会議で開示の話については触れていただいております。また、8月31日に公表した金融行政方針でも、サステナブルファイナンスの推進ということで、やはり開示の話と、市場機能の活用の話と、あと、金融機関のリスク管理の話と一体のものとして捉えておりますので、全体としては整合性を持って、かつパッケージとして金融庁の事務方としては考えております。

 一方で、金融審議会は大臣からの諮問に基づいて行動しているという面がありますけれども、サブスタンスの面では適宜、先ほど来あるように、節目の段階では皆様方に進捗状況を共有しながら進められればよいかなというふうには考えております。

【水口座長】  なるほど。私が発言するのはちょっとルール違反かもしれませんけれども、ISOの世界は、ISOの国際基準をつくるときに、国内側に国内諮問委員会的なものが出来て対応の議論をしていると思うんですけれども、このIFRSの議論に例えば日本から参画をするときに、金融審議会がその情報を受けて、こういう意見を言うべきだとか、そういうことをするんですかね。それとも、IFRSの議論に参画するときの裏方というか、日本側の意見の取りまとめ的なものというのは、金融庁さんの判断でされるという、こういう感覚なんですか。

【池田CSFO】  その点については、IFRS対応方針協議会というものが別にありまして、経団連、公認会計士協会、日本取引所グループ/東京証券取引所、日本証券アナリスト協会、ASBJ、経産省や法務省が参加団体となり、FASFと金融庁が事務局を務めております。そこでIFRSの議論を巡る国内の関係者の意見のすり合わせは行われているということでして、金融審議会は基本的には金融庁に対して政策提言をいただくものですので、それとはまた別の枠組みで調整がされているということだとご理解いただければと思います。

【水口座長】  ありがとうございました。皆さんは大丈夫ですか。聞こえていましたか。ありがとうございました。

 すみません、私がしゃべって申し訳ありませんでした。ほかに皆様から御意見いただければと思います。

【高村メンバー】  すみません、高村でございますが、よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【高村メンバー】  ありがとうございます。全体といいましょうか、3つの開示、市場形成、金融機関取組促進と全体の検討、それぞれの検討がこれから進んでいくということだと思うんですけれども、やはりこれまでのメンバーからも御発言あったように、全体をどういうふうにうまく進むように進行させるかで、あるいは取組の中で、あるいは省庁間で様々取り組まれているんですけれども、ちょうど見ながら、ポテンヒットじゃないですけれども、見合ってしまうような課題として残っているものがないかなと、やはりこの有識者会議をうまく使っていただいて、定期的に状況をフォローしていただくということが必要なように思っております。これは先ほど事務局からポジティブなリアクションをいただいたというふうに理解をしておりますけれども、ぜひそういう情報の総合化なり、あるいは全体観を持って必要な対応をしていく場として使っていただきたいと思います。

 そういう観点からぜひ議論の中に盛り込んでいただいたほうがいいのではないかという点が2つございます。1つは、気候変動に対して社会がしっかり移行していく、しかも公正に移行していくという観点からすると、1つやはり重要だと思っていますのは、地域金融の役割ではないかと思います。そういう意味では、もちろん入っていないとは申しませんけれども、やはり地域金融、それから、地域と地域金融についてどういうふうに対応策あるいは支援策、促進策を考えていくかという点は1つ重要な論点ではないかと思います。

 2つ目は、これは金融機関の皆さんいらっしゃる中であれですけれども、金融機関にとってこうしたサステナビリティに関わる投融資を行っていくために必要な基盤として政策側がつくっていく必要があるものがないのかということです。例えば人材育成といったようなものは、業界ごとにそれぞれやっていらっしゃると理解をしておりますけれども、1つの例でありますけれども、そうした全体的に取組を底上げしていくために必要な支援についてもやはり議論をしていってはどうかなと思っている論点です。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。まず全体観を持って全体をうまく調整するというか、そういう役割は非常に必要だというので、そのとおりだろうなと思いました。定期的に開催というのはそうかなと思います。あまり間を空け過ぎないようにしないといけませんね。それから、なるほど、具体的な御指摘を2ついただきました。ありがとうございます。

 何かコメントありますか。いいですか。受け止めたという感じですか。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  1点目のところ、おっしゃるとおりだと思います。地域金融の役割ということですけれども、こちらの資料のほうにも一番最後のページに書かせていただいているんですけれども、やはり企業の方々が今後、脱炭素に向けて取組を進めていくときに、特に日本では、間接金融の役割・シェアも大きい中で、企業情報とか企業の戦略について普段からよく議論をしている金融機関の役割は大きいのかなと思います。その上で、地域における様々な今後の動きなどを考えますと、やはり地域金融機関の役割も大きいと思っていますので、こうした金融機関とも丁寧に議論しながら、具体的にでは地域でどういう取組みを進めていくことができるのかということについて、議論をしていことが重要と思っています。
 
【太田原総合政策課長】  今、とても有用な御指摘をいただいたと思っています。全体観を持ってということはそのとおりだと思っています。ポテンヒットにならないようにということも大事な視点だと思います。そのために今回、第1の議題として、全体的な御議論をいただきたいという意味も込めております。

 さらに、恐らく高村委員のコメントの中にもニュアンスとして入っているのであろうと思いますが、確認的に申し上げると、全体が整合性を持ってということ、あるいは重複感をなるべく排除して屋上屋を重ねないようにというような配慮も必要なんだろうとは考えております。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【伊藤メンバー】  すみません、三井住友銀行の伊藤でございますが、よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いいたします。

【伊藤メンバー】  今回から全銀協の会長行として参加させていただきますので、よろしくお願いします。

 まず先ほど高村メンバーからもイシューレイズをしていただいたと思いますが、金融機関の投融資先支援とリスク管理に係るガイダンスに関して、銀行業界として、我々、間接金融として、お客さまの脱炭素ということを後押しするという使命を持っているとまずもって認識しております。そういった中で、全銀協として、やはり気候変動に対する対応につきましては、説明会や勉強会、それから、先進的な事例を地銀や他業界の人たちともシェアしながら、銀行業界としての対応の底上げをまずもって図っていきたいと思っていますし、実際、今も取り組んでいるところでございます。

 その上で、やはり金融機関として、特に間接金融の担い手として御留意ぜひいただきたいのは、やはり我々、お客さまのいわゆる通常ベースの、既存の事業の活動を、運転資金や設備資金というものを当然支えながら、一方で、脱炭素への移行も後押しするという、言わば二正面での対応が求められている中、ガイダンスが出て、アカウンタビリティーが確保されるというのは非常に好ましい一方で、やはり何らか一律の対応や、非常に制約がかかるようなガイダンスになる、例えば極端な話でいいますと、グリーン以外の事業に対する投融資をすぐに抑える、そういうことにはならないと思いますが、お客さまもいろいろな時間軸で対応される中、ある程度柔軟に、そうはいいながらも、国際的なアカウンタビリティーを確保しながら取り組んでいけるような枠組みを一緒にぜひつくっていきたいと思いますので、連携をよろしくお願いします。

 そういった意味で、人材も非常に金融機関としても大切ですし、やはり今、経産省さんで分野別ロードマップということで、タクソノミーと同様の効果を持つと期待されて整理されたものが仕上がっていくとは思いますけれども、こうした国際的にも受け入れられるような形でのファイナンスの枠組みが非常に必要であると考えておりますし、こういったものをつくり上げていきたいと考えております。

 長くなりましたが、私からは以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

【手塚メンバー】  JFEの手塚ですけれども、よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【手塚メンバー】  ありがとうございます。TCFDコンソーシアムの情報開示ワーキングの座長をやっている関係で、企業開示の充実というところでちょっとコメントをさせていただきたいと思います。

 IFRS財団等で国際的なルールメイキングが今進んでいて、先ほど期間的なかなり詳細なスケジュールみたいなものも出ていたと思うんですけれども、ぜひそこで日本として考慮していただきたい点があります。TCFDコンソーシアムの中で情報開示側も情報活用側も価値観を共有しているんですけれども、いわゆる基準が出来た後、それを義務化するという議論が特に欧州で非常に今活発になってきています。この義務化をどういうものに対して義務化をしていくかという点です。

 つまり、物すごく細かな開示内容の項目について、定型的なルールでもってそれを全部義務化するとなると、コンサルタント的な発想からすると、横並びで比較しやすくなるという使いやすさは出てくると思うんですけれども、一方で、あまり細目にわたって義務化するのになじまないような項目がTCFD開示はいっぱいあるんですね。それはシナリオ分析であったり、リスクと機会の開示といったフォワードルッキング的な内容をどこまで充実して開示するかという点です。しかも横並びで開示するかということに関しては、企業は非常にそこは悩むところであります。

 なおかつ、特に気候変動関連のシナリオというのは将来に関する不確実性が非常に高い。技術についてもイノベーション、革新技術、こういったものも開発途上にあって、できるかどうかも分からないという、そういうチャレンジをやっている。あるいは、市場に関しても、政府がいろいろ政策的に後押ししているんですけれども、これも政策が変われば、後押しの強度も変わってくる。それによって将来のシナリオも当然変わってくるという、不断の見直しみたいなものが入ってくる類いのものでして、これで開示項目を極めて厳密に項目化して義務化してくるという話になると、法的なリスクみたいなものも発生してくるということで恐らく必要最低限の最大公約数的なものしか開示できなくなってくる。

 一方で、それをやられると、情報活用ワーキング・グループの方々に言わせると、要するに、その企業の本当の意味での将来の取組がよく分からなくなってきて、エンゲージメントを通じての議論が活発にならなくなるという弊害のほうが大きくなるんじゃないかという話があります。

 なので、私のサジェスチョンは、TCFD開示あるいはIFRS財団がつくられる基準を将来的に義務化していくにしても、過去の実績データとか、あるいはガバナンスの体制であるとか、こういうものはいわゆる基本的な規定演技の世界できちんと項目的に義務化していくということは可能ですけれども、一方で、将来を語る部分に関しては、いわゆる体操競技とかでいう自由演技の世界として、こういうものをこういうスコープで開示しなさいというところまでは決まっていたとしても、中に何がどう展開されるか、あるいは将来の1.5度シナリオとかをどういうシナリオに準拠してそれを展開するかというようなことは各企業の自由に任せるというほうが、恐らく開示の価値、内容の充実という意味で価値をより多く含んだ開示が行われてくるんじゃないかと思います。

 つまり、規定演技と自由演技に分けて、それぞれの義務をかける対象を少し変えていくといったようなアプローチをぜひやっていただくように、日本から発信していただければと思います。IFRS財団の中でどういう議論が行われているか細目は私は把握はしていないんですけれども、ぜひそういうようなアプローチを日本から推奨していただいたらよろしいんじゃないかなと思ってコメントさせていただきました。どうもありがとうございます。

【水口座長】  ありがとうございました。TCFDがIFRSに反映するときに、IFRSの基準、ISSBですね、IFRSの下のISSBの基準がTCFDをどういうふうに取り込むのかという部分と、それから、ISSBで基準が出来たとして、それを今度は国内の規制というか制度に組み込んでいくときに、どういう制度化の仕方があるのかという議論なのかなと思いますし、そこでは、誰がどういうふうに関わっていくのかということも問題なんだろうなと思いますが、なかなか不確実性の高い部分ではありますよね。ありがとうございました。

 ほかに何かコメントされたい方ありますか。

【岸上メンバー】  岸上ですけれども、よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【岸上メンバー】  開示の充実に関連して2点ほど申し上げます。1点目としましては、ディスクロージャーワーキング・グループが設置されたかと思います。当有識者会議の前半におきまして、評価会社やデータの第三者機関に関する課題が活発に議論されたかと思います。評価に携わる第三者がこうしたディスクロージャーに本当に必要なものが何かという議論にリアルタイムに参加していたほうが、アウトプットとして変化しやすいかと思います。既に委員のほうは決定されていらっしゃるかと思いますので、せめてオブザーバーなどで定期的に関わりがあるとより良いのではと思いました。

 2点目ですけれども、コーポレートガバナンス・コードの改訂なども伴いまして、TCFDまたは同等の開示の質と量を促すという形になっていると思います。冊子として気候変動関連情報を投資家等が参照する開示媒体が増えるということではなく、本当に質が伴うかどうかというところが少し気になっております。

 恐らくそこにこのディスクロージャーワーキング・グループの役割も出てくるのかと思います。先ほど手塚様は、全体的な開示内容に関する細かい規定は懸念されるとおっしゃられました。柔軟性が必要な部分もあると思われますが、その大前提として、現状の把握としての、つまりはGHG排出Scope1、2、3の基準年や開示カバレッジなどに対する明確な枠組みがなければ、その後のシナリオや戦略が全て曖昧になってくるかと思います。ですので、ぜひそこのところに関しましては、具体的な内容を速やかにディスクロージャーワーキング・グループ等で語られることを期待したいと思います。

 以上2点でございます。

【水口座長】  ディスクロージャーワーキング・グループには、評価機関側の人というのは入っているんですか。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  いらっしゃらないと認識しています。ですので、今いただいた御意見も、事務方のほうでどういうことが考えられるかということ議論したいと思います。
 
【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【吉高メンバー】  吉高ですけれども、よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【吉高メンバー】  (3)の金融機関の投融資先支援と気候変動リスク管理に関して、金融庁のほうでガイダンスを策定し、また、モニタリングをされていくと理解したのですが、地銀とお話しいたしますと、融資先のクレジット審査における適正評価について、サステナビリティをどのように反映すべきか非常に悩んでいらっしゃると聞きます。金融庁での、この点の検討について関心が高いところでございます。

 一方、岸上様がおっしゃったように、情報開示が十分されていないと、評価指標も成り立たたず、双方が関係してくると思っております。(1)の企業の情報開示と(3)に関してある程度関連付けていく必要もあろうかとは思っていますが、その点についてのお考えを教えていただければと思っております。それが1点目でございます。

 あと、2点目は、地銀から評価手法に関して何を参考にすればよいかと聞かれたとき、環境省の「ESG地域金融実践ガイド2.0」を参考にされてはと申し上げますが、このガイドと、今後の金融庁のガイダンスとの関係はどうなるのか御質問です。よろしくお願いいたします。

【水口座長】  ありがとうございます。お願いします。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  いずれもありがとうございました。14ページのところにガイダンスについて検討していく項目として、大きくリスク管理と対話・エンゲージメントということで、右側のほうは金融機関が企業の方の脱炭素をどういうふうに支援していくかというような内容ですが、環境省の実践ガイダンスは、このどのような事業者支援が、金融機関の本業支援の一環としてどのようなアプローチが取れるのか、また、実際に過去の事例などで、個別の金融機関の名前も挙げながら、地方銀行がどういう脱炭素に資する企業との開発・取組みなどを一緒に進めたか、更にこうした取組みと本業の事業性改善との関係などについて、事例も含めて掲載されているものと承知しています。

 ガイダンスの中身についてはこれからですけれども、こうした実践ガイドも含めてどういう既存の取組みが活用できるか、またはリンクし得るかということも今後議論していきたいと思います。

 その上で、ガイダンスにつきましては、リスク管理もございます。現在、パイロットプロジェクトということでシナリオ分析をやらせていただきますけれども、こういうパイロットプロジェクトも活用しながら、どういう示唆があるか含めて検討していきたいと思っております。

 融資審査そのものについては、検査マニュアルを廃止し金融機関の判断に任せるということで進めてきていますので、まずリスク管理の全体のプロセスとか在り方についてどういうことがなし得るかという点についてガイダンスでは議論していくのかなと思っております。いずれにしても監督ガイダンスはまずは金融庁の方で検討する必要がありますので、ご指摘も踏まえて検討しまた御議論させていただければと思っております。
 
【吉高メンバー】  どうもありがとうございました。

【水口座長】  ありがとうございます。環境省のほうのESG地域金融タスクフォースといいまして、そちらにも私も関わっているといいましょうか、大きなESG金融ハイレベルパネルのところで関わっております。ぜひESG地域金融というコンセプトが、地銀、地域金融機関に浸透していくような後押しがあるといいなとは思っております。よろしくお願いいたします。

 ほかに何かございますか。それでは、一旦この話をここまでに致しまして、次に情報プラットフォームに関わる議論に入っていきたいと思います。この情報プラットフォームに関しましては、JPXさんが連携して取り組まれるということですので、まずJPXの小沼様からコメントをいただければと思いますが、小沼様、いかがでしょうか。

【小沼メンバー】  水口先生、ありがとうございます。JPXグループ、小沼でございます。先般の有識者会議の報告を受けて、どんどんと情報プラットフォームの現実的なつくり込みを進めていくという方向だと思いますので、これから先、いろいろと実務の話も出てくるだろうということで、取りあえず検討の場を私どもJPXのほうで少し設けさせていただいて、産業界とか投資家、金融機関あるいは評価機関等のいわゆる実務をやっていらっしゃる方々にお知恵をいただきながら詰めていくという作業をやりたいというふうに考えている次第でございます。

 もちろん債券市場につきましては、現在、証券取引所に上場されているものは一部であって、むしろ多くが非上場のものでございますけれども、国全体として情報プラットフォームをつくっていくという観点での検討の場を取りあえず持たせていただいて、その議論を踏まえて、どういう形で誰がどんな役割をして進めていくかと、そういったことも整理していければと考えている次第でございます。

 本日この有識者会議のほうでは、この後皆様から有意義なお話をたくさんいただけると思いますので、そういった御意見、お知恵などをまたこの実務のほうの検討会にも反映させていただき、その実務のほうでフィードバックを受けたことをまたこちらのほうにもフィードバックさせていただく。連携を取らせていただきながら進めていければなというふうに考えている次第でございます。

 取り急ぎ、私からのコメントは以上でございます。よろしくお願いいたします。

【水口座長】  ありがとうございました。JPXのほうに検討の場、つまりは、検討会を設けて議論をしていこうと、こういう形になっております。そこで、先ほど御議論いただきたい点として3つ挙げられていました。1つは、プラットフォームが出来るとして、どういう形を望みますかと。情報機能の提供として、どういう付加価値がプラットフォームにあるとよいですかというのが1つ目の質問。それから、2つ目の御質問は、特にグリーンボンド等の適格性について進めていくときにどういう点に留意をすべきなのかと、こういう御質問。そして、3つ目が、トランジションを適切に評価すること等、これは市場参加者等からの意見を取り入れて信認されることが大事だということで、そういうことも含めてこの議論においてどのような点が重要ですかと聞かれているわけですが、全体として情報プラットフォームについて議論していくときに、何に注意をしてどういうことを議論していくのがよいのか、そして、どんな機能を期待しますか、情報プラットフォームはどういうものであるべきなのか、こういう御質問なのかなと思っております。

 それでは、皆様からまた自由に御意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【井口メンバー】  すみません、井口です。よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【井口メンバー】  ありがとうございます。前半は、静かにしていましたが、こちらのほうは意見がありますので、発言させていただければと思います。
 小沼さん、いつもありがとうございます。また、御説明ありがとうございました。ESG関連債のディスクロージャーですけれども、株の世界では、どこにデータがあるか、というのが分かる状況になっていますが、債券、特にESG関連債は、企業さんのホームページに行って一個一個探す必要があります。ESG格付レポートなどを1つにまとめていらっしゃる会社さんもあるのですが、そうでない会社さんもいらっしゃって、場合によってはどこにあるかも分からないというようなことにもなります。そういう意味では、このようなプラットフォームが充実してくると、ワンストップショッピングで、投資家の利便性というのはすごく向上するのではないかと思います。

 では、どんな情報をアップロードするのかということですが、投資家としての希望となりますが、まずは、社債に関する基本的な情報、例えば、利回りや財務格付等、そのほか、セカンドオピニオン、ESG格付がある場合にはそのレポート、その後のフォローアップレポート、資金使途が決まっているグリーンボンドとかソーシャルボンドのような場合は、資金調達の管理状況等と思っています。また、御存じのようにICMAのESG債に関わる原則が改訂されて、ガイダンスも出来たりしていますが、その中では、プロジェクトだけではなく、事業体としての取組みやインパクトに関するレポートの重要性ということも強調されておりますので、このような情報が、今、述べましたレポートに入っていればいいのですが、入っていない場合は、一箇所にアップロードされることは投資家にとって有用と考えています。

 将来的には、グリーンボンドのインパクトなどのようにCO排出量で共通化できる場合、海外のプラットフォームでは行われていると認識していますが、インパクトをデータベース化して、それを取り込み、
ポートフォリオのインパクト計測ができるとか、かなり先のことになるかもしれないですが、このようなこともできるようになれば、非常に投資家の利便性が高まると思います。

 課題は、このプラットフォームにどれだけのESG債を呼び込めるのかということが一番の課題と思っています。あまり少なかったら多分投資家はそこを見に行かないということになりますし、そうすると、企業さんはインセンティブが下がって結局そこに登録しないということにもなってしまいますので、これは鶏か卵か論争になってしまうんですけれども、その辺りの施策というのはJPXさんあるいは小沼様の中でも考えていらっしゃるかもしれませんが、この辺りの施策というのは非常に重要になってくるのかなと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

【水口座長】  ありがとうございます。小沼さんは何かコメントありますか。

【小沼メンバー】  ありがとうございます。大変参考になります。やっぱりある程度の位置づけというかボリュームも含めたスタートがないと、さらに加速度的に使われるようにならないというようなことが1つのスタートのポイントかなというふうに思います。井口さん、いつも大変お世話になっておりますけれども、引き続きこの辺も御教授いただければと思っております。ありがとうございます。

【井口メンバー】  よろしくお願いします。

【田代メンバー】  大和証券の田代ですけれども、よろしいでしょうか。

【林メンバー】  田代さん、先どうぞ。

【田代メンバー】  すみません。私も前半、大幅に遅刻して参りまして申し訳ございませんでした。今のプラットフォームについてなんですけれども、私の考え違いだったら申し訳ないんですけれども、上場企業で債券が発行できる会社は格付的にも結構限られていて、一方では中小の会社とかは、ESG評価機関のアンケートにとても答えられないよとか、そんな人は割けないとか、時間が取れないという事情もあると思うので、せっかくプラットフォームをつくるのであれば、評価機関の方にも御意見を伺うと、さっき小沼さんおっしゃっていたと思うんですけれども、評価機関がみんなそこを見に行けば、中小企業とかが一々回答しなくて済むように、それこそワンストップにできると非常にいいと思います。

 そのためには一つ、やはり英語で作るというのが結構ポイントになるのかなと思うのと、あとは、このプラットフォームは、会社がインプットするのか、それとも、JPXさんが誰かに頼んで開示情報をインプットしていくのか。情報の正確性の担保というのもある程度必要だと思います。ベストは、井口さんもちょっとおっしゃっていたんですけれども、企業も評価機関も全ての人がそこに企業情報を取りに行けるようなプラットフォームになると非常に、ほかの海外の会社とかにも比べて日本の会社に、このプラットフォーム、信頼があるから、じゃ、お金入れようと思えるように、それは債券市場だけではなくて、株式市場にも来るようなものになると、すごく競争力がつくんじゃないかなと思います。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。今、林さんも発言されようとしていましたよね。

【林メンバー】  よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【林メンバー】  これはもともとの会議のときから私の中でずっと、もやっとしているんですけれども、ルクセンブルクの証券取引所やロンドン証券取引所のホームページなども見て、確かに非常に情報が充実していて、ルクセンブルクはグリーンエクスチェンジですかね、今日の資料にも入っていましたけれども、セカンドパーティーオピニオンも入っているし、いろいろな目論見書も入っているし、本当にワンストップで結構完成形であると思いながら見ていますが、それを日本でどこまで本気でやるのかというところを考えなければいけないと思っています。

 もちろん国内債は基本的には非上場であるという中で一部、プロボンドというのはありますけれども、正直そんなに普及したわけでもない中で、上場しない債券を前提に、日本として情報開示が必要だということで、JPXさんのプラットフォームを借りてやるんだということなのかなと思っているんですが、日本の投資家は基本的には別に上場債である必要は全くないので、非上場のものだけれども情報はあったほうがいいということを前提につくっていくのかどうかというところは一回整理しなければいけないというふうに思います。

 載せる情報は、さっき井口さんがおっしゃったような情報あるいは海外で取り扱っているような情報ということは本当に大事で、セカンドパーティーオピニオンはホームページには載っていないからこっちで見るとか、あっちで見るとかという状況になっています。一方で、ある程度既に証券業協会でやっていること、環境省でやっていること、ICMAでやっていることっていろいろなところに情報が分散しているので、それを有機的にワンストップにできるというのが理想形かなとは思っています。これは、債券に関してということですね。

 一方で、海外の投資家にもしそれを見てもらうとなると、一応、国内債はレギュレーションSではないので、英語のしっかりした開示がない限り、海外の投資家にはローンチしたときには積極的には営業できないというのが確かコンプライアンス的には正しい判断なので、英語にするのはどのタイミングなのとか、いっぱい詰めることがあると思いますので、慎重に、今日ここで結論が出るものではないとは思いますけれども、きっちりと議論していかなくてはいけないのではないかというふうに、かつJPXさんの今の体制だけで全部できるのかなというのも正直、多分いろいろ考えられるところはあると思いますので、これは本当にいろいろなところで協力してこのプラットフォームをつくっていくということを御議論いただいたらいいんじゃないかなと思います。

 すみません、1分以上しゃべりました。ありがとうございます。

【水口座長】  ありがとうございます。もちろんここで結論を出すわけではなくて、ここでいろいろな御意見をいただいて、それを議論に反映するということだと思いますので、どんどん御意見いただければと思います。

 ほかにいかがでしょうか。

【長谷川メンバー】  経団連の長谷川ですけれども、発言よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【長谷川メンバー】  ありがとうございます。まずこのプラットフォームに関しましては、ESG関連債・投資関連情報のワンストップ情報サービスということで大変期待しております。これを見て世界のESGの投資資金が、日本のグリーンやトランジションボンドに流れる仕組みになれば非常にいいと思っております。

 その上で、少し具体的なことで、認証基準の作成に当たりましては、新しい基準を一からつくるということではなく、例えば、既にあるグリーンボンドやトランジション・ファイナンスに関連するICMAの原則・ハンドブックと、これに準拠した国内における政府の基準等を整理する方向で検討していただければと考えております。

 それから、グリーンボンドの適格性について情報提供を行うことは望ましいと思いますが、グリーンボンド等の認証基準の在り方については、技術中立性に配慮して、技術の進歩や産業の置かれた状況を十分踏まえて、機動的な見直しを進めることもお願いしたいと思っております。

 それから、トランジション・ファイナンスにつきましては、皆様も御存じのとおり、現在、経産省を中心に、基本指針に基づいた業種別ロードマップが検討され、主要産業における技術や市場の将来見通しなどに基づくトランジションの経路(パス)について議論されております。経団連もオブザーバー参加させていただいております。トランジション・ファイナンスに関する基本方針の内容や、このロードマップの検討会で得られた知見を、ぜひ日本の統一的な見解として、情報プラットフォームを通じて世界にも発信していただいて、内外のESG投資家などの理解につなげていただければと思います。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

【嶋津メンバー】  座長、よろしいでしょうか。損保協会の嶋津です。

【水口座長】  お願いします。

【嶋津メンバー】  損保協会の嶋津です。今回から、よろしくお願いします。

 発行体側からすると、資金使途の記載水準、すなわちどれぐらいの詳細さで書くのかという、いわゆる掲載責任が非常に気になる一方、投資家側としては、例えば、投資対象プロジェクトの実現によるCO削減効果は、どの程度なのか、という点に関心があります。また、必ずしも当該プロジェクトが必要とする全体の資金量と、ボンド発行による調達金額はイコールではないと思いますので、バランスの取れた記載にする必要があるのではないかと思います。さらに、CO削減量が、当初想定していた水準に達しないなど、何らかの事情で状況に変化があった場合のプラットフォーム上の情報内容のリバイスの仕方・タイミングも課題となります。しっかり整理をしながら、つくり上げていければいいなと思っております。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。この論点はいろいろ御意見がありそうで。

 ほかにいかがでしょうか。

【角メンバー】  生命保険協会の角でございます。

【水口座長】  お願いします。

【角メンバー】  よろしいでしょうか。これまで井口さんや嶋津さんから御意見ありましたのと基本的に同じような話にはなるのですが、生命保険業界としても、こういった情報プラットフォームの一元化というのはとても望ましく、投資家の立場として大変有益なものということで期待をしています。

 それで、今幾つかの論点がございまして、特に今後セカンダリー等がどうなるかという議論もあると思いますが、債券の償還までの間に、特に適格性の認証につきまして、発行当初だけではなくて、その後どのように認証が得られるのか、推移していくのかというような観点も投資家にとっては重要だと考えておりますので、その辺りも論点になるのではないかと思っています。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。一旦認証したらずっと続くわけじゃないという感じですかね。

【角メンバー】  そうですね。

【水口座長】  そうですね。ほかにいかがでしょうか。どなたでも。

【足達メンバー】  足達ですが、よろしゅうございますか。

【水口座長】  お願いします。

【足達メンバー】  ありがとうございます。このプラットフォームと、それから、適格性の問題ですけれども、これをセットで議論するのか、分けて議論するのかというところは、JPXさんでワーキングを始められるときも1つの大きな論点だと思います。

 適格性のところでは、先般の報告書では認証という言葉を使いました。この認証という言葉は、例えばICMAのガイダンスによれば、正確にセカンドパーティーオピニオンとは分けて書いてあるわけですね。あるいは、この9月にISO14030というグリーン負債性商品の国際規格がタクソノミーのところを除いて発行にこぎ着けましたけれども、ここでも、ベリフィケーションという詳細な手順が1つの国際規格として定められたわけです。

 ですから、単純にSPO(セカンドパーティーオピニオン)をつけているということイコール認証という定義では、私は世界的には通用しないと思っておりますので、この辺りをどこまで適格性の判断をするのか、認証とはどういうこととして定義するのかということの議論があった上で、それをプラットフォームの中でどう生かしていくかというところに連結をさせていく、こういう考え方がよろしいのではないかなと思います。1つの御提案でございます。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。なかなか認証は難しいだろうなと私は直感的に思いますけれども、適格であるってね……。

【林メンバー】  林ですが、よろしいでしょうか。

【水口座長】  はい、どうぞ。

【林メンバー】  オピニオンの中にも、信用格付も同様ですけれども、オピニオンプロバイダーの目線もそれぞれ違いますし、それから、例えばグッドとかエクセレントとかいま一つとかといって認証の中にもいろいろなものがあるんですね。その適格性の判断って、例えばどこか1つの団体がこれはいいですとか、これは悪いですとかって多分不可能じゃないかと思います。海外でもそういうものは、もちろんCBIとかいろいろな団体があるんですけれども、正解は今のところなくて、最後は、投資家の自己責任で判断するものだと私は思っています。

 できるだけプラットフォームにちゃんとオピニオンが載っていって、どこのオピニオンで、そして、どういうオピニオンだったというところが明確に分かればよくて、それを全部判断というのはほかの証券取引所でも今やっていないと思いますので、どこまでを適格性の判断とするか。最終的には投資家の判断ではないかとは思いますが、投資家が判断するのに十分な情報を可能な限り提供するというほうが現実的な議論ではないかと私は考えています。

 ただ、本当に最近、グリーンウオッシュとか、そういったものについての目線が厳しくなっていますので、そこをどこまで意識したものにするかというところは本当に議論は尽きないし、ICMAでも議論がされていますが、黒・白ということにはなかなかならないように感じております。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。藤井さんが今、手を挙げられていましたか。

【藤井メンバー】  ありがとうございます。足達様の御意見にもあったように、認証の話とプラットフォームの話は分けたほうがいいかなといった印象を持ちました。プラットフォームの中で、多くの方がワンストップショッピング的な御意見をおっしゃっていて、私もそこは同感なんですが、ワンストップといったときに、プラットフォームを見るステークホルダーというのは多彩であって、国内投資家だったり、海外投資家だったり、発行体であったり、あるいは企業が同じ競争相手を見るケースとか、投資家にも個人から機関投資家まであるので、それらの方が共通プラットフォームに期待するものというのは相当程度幅があると思います。

 そこに共通したプラットフォームを提供するのであれば、ある程度ポータルのような概念になるのかなと思います。ルクセンブルクのサイトはかなりそうなっていますけれども、発行体の内容が見たければ、目論見書をクリックするとそこに行く、あるいは、個人の方でESG格付が見たいとなったら、そこをクリックすると格付が見られるといったようなポータルの発想が必要ではないかと思います。特に、期待される情報の範囲、スコープがどんどん変化や拡大していくので、全てを、このケースでいえばJPXさんがコントロールして、クオリティーないしスタンダードを定めて選びにいくというのは、非常にワークロードも大変ですし、アカウンタビリティー、責任といったものも、そこまでしょい込むのかという部分があると思います。

 ですので、プラットフォームについて、一覧性、ワンストップ、全てのステークホルダーの方が使うことを重視するのであれば、そこはポータルの発想だと思います。そもそもそうではなくて、プラットフォームの中では、例えば適格性とか認証がされているかとか、そういったことに限定して使うためのものなのであれば、違うアプローチだと思います。

 私のほうからは以上です。ありがとうございます。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【岸上メンバー】  岸上です。

【水口座長】  お願いします。

【岸上メンバー】  今の藤井さんの御意見に少し被りますが、JPXにとって相当の御負担にならないかということが気になっております。例えば純粋にESG債などの理解を広めるためのプロモーションとしての役割、認証や第三者評価を判断するために必要な情報収集の一元化、投資家の投資判断に必要な情報、または発行体の債券発行を促すための情報、それぞれにおいて必要になってくる情報が異なると思いますので、全てをやろうとして全て中途半端にならないために、例えば今回一番注目しているように感じております、ESG債に関する投資家の判断に必要な情報のワンストップショップというところから始めるというような、少し具体的に落とし込んでいく必要がある様に感じました。

 またあとは、本日の資料の中で「内外にとっての信認を得るため」とありますが、ほかの皆様もおっしゃっていたかと思いますが、内外となった場合はどうしても英語が必要になってくるかと思いますので、そこも2倍の労力になってくるかと思いますので、そこもタイムラインとともにどこを優先するのか検討する必要があるのでは思いました。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。だんだん情報プラットフォームのイメージが分かってきたような、分かってないような、難しいところですよね。プラットフォームに乗せる情報の多くは、企業さんが自分で上げるというイメージなのかなと思いつつ、全く自由に上げたのではプラットフォームになりませんから、枠組みをつくってもらうということ。それと、最初のほうに田代さんがおっしゃいましたけれども、英語にするというのは誰が英語にするんだという話もありますし、そういうプロセスの問題と、もうちょっと別の適格性とか、この辺の話は確かにちょっと性質が違うのかなという感じもいたしました。

 ほかにいかがでしょうか。

【手塚メンバー】  手塚ですけれども、よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【手塚メンバー】  グリーンとトランジション、それぞれの適格性をどう扱うかということでちょっとコメントしたいと思います。結論的に言うと、やっぱり不断の見直しというか、アップデートをしていかないといけないんだろうなと思います。この分野というのは必ずしも全ての技術とか全てのビジネスが確立されて、白か黒かというふうに成立しているわけでは必ずしもないと思っています。

 ちなみに、私自身は鉄鋼産業にいますので、経産省が今作成されている鉄鋼のトランジションのロードマップの作成委員会の委員もさせていただいておりまして、議論させていただいているんですけれども、御案内のとおり、鉄鋼は非常にhard-to-abate産業の典型で、グリーンに至るには非常に長い道を通っていかなければいけないとされています。究極の姿に至る技術というのは、今後10年、20年かけて技術開発を行って、それを実用化し、実装するという、ホップ・ステップ・ジャンプのプロセスが必要になってくる。一方、その間何もしないわけにいかないわけなので、脱炭素ではなくても低炭素の技術というのを、つまり今より優れたものをより短期の課題として実用化し、即、実装していくということも組み合わせていくという形になっています。

 それを全部つないだ上で最終的にグリーン、カーボンニュートラルというシナリオになるわけですけれども、この道は一本道じゃないんですね。いろいろな外的要因、例えばいつ水素が大量に安価に手に入るかとか、いつ脱炭素の電源が安く手に入るかとか、こういうものによって取るべき道の優先度が変わってくる。つまり、複線的なアプローチが必要になってくるんです。

 そうすると、全体のパッケージを示すことはできるんですけれども、個別の企業がどの道に賭けていくかということはそれぞれの事業戦略なり何なりに関わってくるということで、そういう全体を理解していただいた上で、このトランジションのシナリオに乗っかっているトランジションボンドであったり、トランジション金融であったりというものにアプローチしていくことになります。しかもそれは非常に長期にアプローチしていくということが必要になってくるということで、要は、今からきれいにいついつまでにこういう技術が出来て、それを実装してというようなシナリオにはなっていないということです。

 鉄のことを今申し上げましたけれども、御案内のとおり、水素なんかも様々な流派がありまして、どのアプローチで行くのが一番いいか、あるいは経済的に成立するのかということはまだ競争が行われている段階ですから、こういう複線的なアプローチを全部組み合わせた中で、それでも潤沢な必要十分な資金がそれぞれに挑戦している企業に来るようなファイナンスの仕組みが必要になってくるということだと思います。

 一方で、先ほどの資料にありました、明らかに環境効果が期待できるグリーン技術というのは、ある意味確立された基準があるかのように見えるんですけれども、必ずしもそうとは言い切れない面もあるんじゃないかと思っています。太陽光とか風力も、本当に大量に導入し始めると、地球環境以外の別な環境問題が最近少し出ていますけれども、森林伐採であったり、土砂崩れというような問題が出てくるケースもあったり、あるいは風力も、日本ではまだそういう話は出ていないようですけれども、欧州の洋上風力とかは、渡り鳥が大量にバードストライクで死んでしまうというような問題が出ている。つまり、大量導入した際のサステナビリティについては、別な意味で疑念が出てくるテーマもあります。

 そういう意味で、決め打ちでグリーンの適格性というのを白黒ぱっと決められる、必ずしもそういうものでもなく、例えば地域特性を考慮する必要性があり、広いアリゾナの砂漠に太陽光をつけるのと、山間部の多い日本につける場合では、太陽光でもサステナビリティに関する基準は違ってきてしかるべきだろうと思いますし、こういう地域特性あるいは特定の技術を問答無用で排除するといったような論理でやっていくと、後で、これ本当にESG適格なんだっけという議論になりかねないものもあろうかと思います。なので、様々な知見とか様々な技術の成熟度によって適格性の判断についても不断の見直しをしていくというプロセスを、このプラットフォームの中のどこかに入れていかないといけないんじゃないのかなと思う次第です。

 どうもありがとうございました。

【水口座長】  ありがとうございました。適格性とは何かという議論ですよね。何をもって適格と考えるのかという。適格性というものを個々の技術に関してこれは適格である、適格でないという議論をするのかどうかというのは1つの判断かなということは思いました。

 おっしゃるように、将来の不確実性が高くて、いろいろなパスがある中で、どこにどう資金を流していくのかというのを、本来それをするのは市場のメカニズムということであったのだろうと思いますから、それは投資家の判断、投資家が将来をきちんと予測して判断するということなのかなと思う一方で、それは市場にただ任せると、必ずしも情報が完全でないので、プラットフォームと、こういう議論になるわけで、ぐるぐる回っているわけですけれども、情報をきちんと出して、投資家の人材育成をきちんとして、リテラシーが本当に高まったら市場に任せられるんでしょうかね。市場に任せられないのに、誰かが適格性を判断できるのかどうかというのもまた難しい論点だろうなと思いつつ、奥の深い議論だなと思いながら聞いておりましたが、何かコメントありますかね。いかがでしょうか。

【小沼メンバー】  JPXの小沼ですが、よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【小沼メンバー】  ありがとうございます。いろいろな方からいろいろな意見をいただきまして、これからの実務家の検討会にも非常に参考になるだろうなと思っています。金融庁の皆様とも協力しながら検討会のほうも進めて、また議論の内容はフィードバックというふうに思っておりますが、お聞きしながら少しずつまた私自身もイメージが出来てきましたけれども、やっぱり発行体、発行会社やアンダーライター、あるいは評価機関の皆様が、このプラットフォームに情報を乗っけることにメリットなりインセンティブを感じ、また、投資家にとってもこれの利便性が高いというような方向にいかに持っていくかというのが重要なんだろうなと。そういう面で、関係者全員が参加することに意味を感じ、かつ付加価値を認めていくというようなものをどうつくり込めるか。

 それからまた、信頼性の話もありまして、そのとおりだと思いますし、また、その信頼性が付加価値につながるというところと、そのハードルがどれぐらいかというようなことだと思いますけれども、やっぱりある程度の参加者が利用するものになっていかないと、注目もいただけなくて、利用価値も下がってしまうというようなところもありますので、その辺のバランスもあるんだろうなと思いながらお話をお聞きしました。

 あと、英語の話なんですが、これはエクイティのほうでもいつもIRで、特に債券などを発行するような規模の大企業の皆様、日本の場合は必ずついて回る話で、この辺も大きな課題ではありますけれども、海外の投資家からもある程度の認知をいただいて、国際的な信認を得るというのを1つの要素にしながらやっていける部分、この落としどころをどう考えていくか、この辺も含めて今後議論させていただければと思った次第でございます。いろいろとお話ありがとうございました。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

【井口メンバー】  すみません、もう一回発言させてもらってよろしいでしょうか。井口です。今までの皆さんのお話をお伺いしていまして、私も藤井さんがおっしゃったように、ポータルで十分と思っています。また、長谷川メンバーがおっしゃったように、現状の企業さんが発行していらっしゃるものを1つにまとめていただくだけでも、投資家にとってすごく意味があることと思います。

 あと、林メンバーがおっしゃったところですが、ESG債を上場される会社がどれくらいかというところがポイントになると思いますが、日本の場合は、御存じのように債券は相対取引ですので、ESG債が非上場の会社もポータルに取り込んでやっていただくとありがたいとは思っております。このほうがデータベースとしては充実するということになりますので。

 あと、英語化という話、理想的にはそこまで行けばよいのですが、小沼さんもおっしゃったように、エクイティの世界では30%が海外の投資家が保有しているということもあるので、英語化の話に行くのですけれども、私の理解が間違っているかもしれないですが、ESG債を考えますと、国内機関投資家だけでも、すぐに蒸発してしまうという状況ですので、難易度の高い英語化から入るのではなく、株式非上場の会社でESG債を発行していらっしゃることも考えると、まずは日本語だけでどこまで情報を共有化できるかというところから始めていただけるというだけでも投資家にとってありたがいと思っております。

 あと、すみません、ほかの論点のところで少しだけコメントさせていただきたいんですが、3つ目の論点で、ESG債にどのような意味があるのか、というところですが、座長もどこかの書物でおっしゃっていましたけれども、シニア債とESG債の違いはインパクトがあるか否かということであり、そういうことがあって、今、投資家からもすごく人気であっという間に蒸発してしまうような状況だと思います。逆に言うと、それだけ人気があるので、それがうそだと分かると、投資家として損失を被るリスクがあるので、インパクトを含めて情報開示をしっかりやっていただくことが重要と思います。

 最後、もう1点、トランジション・ファイナンスのところですけれども、既にトランジション・ファイナンスの基本指針を出されており、良い指針と思っております。1点だけ、独立したレビューというのが、推奨事項となっているのですけれども、私は基本事項にすべきだったのではないかとは思っていますが、全般的に見ればいい指針なので、これに従ってやっていただければと思っています。ここでは、将来のパスをどうするかというところが一番重要なところになりますが、この部分で外部の第三者の評価は重要になってくると思います。最終的な責任は投資家にあるとは思っていますが。

 1つだけ気になったのが、既に発行していらっしゃるところがあって、これは指針に反していることでは全くないんですけれども、グリーンボンドを発行していらっしゃるところで、そこが次、同じようなプロジェクトでトランジションボンドを出されたということがありました。新しいトランジションの枠組みが出来たからそれで出したということもあるかもしれませんが、今後そういうことが起こったときに、何でトランジションボンドになったかということの説明とかそういうことはしていただけるとありがたいと思っております。

 以上でございます。

【水口座長】  ありがとうございました。前はグリーンボンドだったのに、今度はトランジションボンドになったということですかね。

【井口メンバー】  そうですね。私の勘違いのところもあるかもしれませんけれども、ほぼプロジェクトも同じような感じで、ところが、今回トランジションボンドとなっています。指針でも御存じのように、丸の重なったところがありますので、指針には反しているということはないのですが、ただ、投資家からすると、今まではグリーンボンドでしたので、そもそもの考え方ということを考えるとどうなんだろうというところがややクエスションマークがついています。細かいところかもしれませんが、よろしくお願いします。

【水口座長】  ありがとうございます。確かに重なりがあるわけですから、おかしくはないのかもしれませんけれども、キャッチーな名前をつけるというのもあるのかなと思ったりもしました。ありがとうございました。

 それと、今のお話を聞きながら素朴に思ったのが、やっぱりグリーンボンドのインパクトで測るというのがいいではないかという御意見をいただいて、ああ、そうだなと思いました。一方でインパクトがきちんと分かるのであれば、先ほどの適格性の議論というのはあんまり苦労しない部分もあるのかなという気もしまして、手塚さんのおっしゃるように、いろいろなパスがあって、不確実性がいっぱいあって、この世界で果たしてインパクトというのがどのぐらい測定できるのかという、これ、インパクトの議論とも関わってくるかなと思いながら聞いておりました。ありがとうございます。

 ほかに何かコメントございますか。

【吉高メンバー】  吉高ですけれども、よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【吉高メンバー】  すみません、ちょっと考えがまとまっていないので、もしかしてちゃんと1分で話せるかどうか分からないんですけれども……。

【水口座長】  いえいえ、お気になさらず。

【吉高メンバー】  井口さんがおっしゃったように、環境省にグリーンボンドのポータルサイトがあり、日本証券業協会がまとめているSDGs債についての情報もあるので、それらを統合し、不足している投資家の欲しい情報はJPXでカバーし、全体を整理していただくのがまず第一歩かなと思っております。そこで、岸上さんにお伺いしたいと思いますが、評価機関の情報がこのプラットフォームに関わってくるとすると、適格性について、評価機関の質というかレベル感とグリーンボンドの質に影響してくると思っています。
 
  国連で排出権組成手続きにおいて、その適格性を国連がお墨つきをあげた指定認証機関が認証します。また、適格性や質を判断する方法論もあり、それに基づいて発行するプロセスが明確にありました。現在、グリーンボンドは、このような認証は、マーケットに任せている状況ですから、排出権を1トン幾らで動かす世界の厳密な適格性や認証の話とは違うとは思っています。
日本のグリーンボンド市場の整備が優先であるとすると、そこの整理をしていただきたいと思っています。

 つまり、評価機関について、適格性と評価機関の質について整理が必要に思います。

 井口さんが指摘された、グリーンボンドからトランジションボンドへの変更についてですが、元々、発行体の属する業界のグリーン化を進めたいという投資家などのグループが、こんなグリーンボンドがあったらよいという起点で始まっていたかと思います。その後、トランジションを起こすことを明確にして継続して発行することについて、発行体が説明すべきことなのか、それとも、評価機関が説明するのか、その状況をこのプラットフォームで示すのかは、つまり、JPXさんが説明するかというのは整理がいるのではと思います。実際、トランジションボンドについては、評価機関によって、セカンドパーティーオピニオンを出すことを引き受けるか引き受けないかの判断も異なります。グリーンとは言えないと引き受けなかったからやれないと言った評価機関もありますし、グリーンはトランジションを含むのだからと引き受けるところもあります。ぜひ岸上さんにこのあたりお聞きしたいと思っております。よろしくお願いします。

【岸上メンバー】  御指名いただき、ありがとうございます。現在、様々な評価機関がセカンドパーティーオピニオン等を出されていらっしゃると思うので、特に初めてESG債とかグリーンボンドを購入される方にとっては、どこが評価を行う資格を持っているか、なかなか判断しづらい状況にあると思います。一方、先ほど林さんがおっしゃられていたように、評価を1つの機関にまとめるというのは現実的ではないと思いますので、そうした中で、どういった視点で適格性を判断したのか、セカンドパーティーとしてのオピニオンを出したかという情報を一か所に収集することは意義があるのではないかなと思います。個社ごとで情報を見た場合、なかなか比較もできないので、そのまま鵜呑みにすると言いますか、客観的な判断材料がないと思いますが、1か所に集められることによって、それぞれの発行されたものの判断背景が整理されて、投資家も選びやすくなるのではないかと思います。

 また、英語にするという点で、直接投資を呼び込むメリットもあるとは思いますが、日本の債券市場におけるESGやグリーンボンドの取組をより国際的に理解していただくというところもあるかと思います。そこに関しましては、全ての発行された内容ではなく、ケーススタディーという形でも活用できるのではないかなと思います。その際は、単に英語にするというよりも、日本のコンテクストの中でその適格性がどういった意味をなすというところの説明が非常に重要になってくるかと思います。それがないと、ほかの人の視点または国の視点からすると適格ではないというところに意見が出てくると思いますし、逆にそのプロセスを経て、日本国内における適格性の精度が上がってくるのではないかなと思います。

 吉高さんの御質問にうまく答えられているか分からないですけれども、以上です。

【水口座長】  適格性は説明が大事だと。ある種のナラティブだということなんでしょうかね。足達さんが最初のほうに、セカンドパーティーオピニオンとベリフィケーションはやっぱり違うんですよということをおっしゃっていて、ああ、そうだなと思った次第ですが、適格性がベリファイされるという世界になったときの、じゃ、セカンドパーティーオピニオンというのは一体どういう意味を持つんだろうかみたいなことも思いました。なかなか適格性と評価機関の関係って難しいですよね。評価機関がベリファイする機関になって、みんなが同じ基準で判断できるようになればいいのかもしれませんけれども、そうはならないんですよね、きっと。誰に聞いているわけでもないんですが、そんなことをちょっと思いましたということです。

 ほかに、あるいはこれについてでも、何かコメントありましたらいただければと思います。だんだん意見も出尽くしてきたところでしょうか。18時までの時間を取っておりますが、もちろん無理に延ばす必要はないと思いますので……。

【林メンバー】  1点、すみません、林ですけれども、いいでしょうか。

【水口座長】  どうぞ。

【林メンバー】  トランジション・ファイナンス環境整備検討会に入っていたので、トランジション・ファイナンスのことについてコメントします。さっき水口先生もおっしゃっていただいたように、2つ、日本の考え方においてはトランジションとグリーンが重なっている部分があるということだったと思うんですけれども、本当を言うと、別に日本の議論が間違っていると言うつもりは全くないですが、一応ICMAのトランジション・ファイナンスの概念というのは、あくまでもコンセプトであって、グリーンもソーシャルもサステナブルボンドも全部ひっくるめてトランジション・ファイナンスの中に入っているので、過去グリーンボンドとおっしゃっていた人が、同じ資金使途なんだけれども、要は、時間をかけてトランジションしていくためにこのグリーンボンドを出すんですというのをグリーンボンドと呼んでもいいし、トランジションボンドと呼んでもいいということになります。

 例えばもし外債で出されるのであれば、グリーンボンドと呼んで、ただし、セカンドパーティーオピニオンを見ると、グリーンボンドプリンシプルにも沿っているし、クライメート・トランジション・ファイナンスハンドブックの考え方にも沿っていますという、そういう書き方なんですね。なので、日本においてはトランジションボンドという呼び方のほうが定着しつつあるんですけれども、そこに本当はあまり齟齬がないということは改めて、一応両方に関わっていた者としては申し上げておきたいと思います。

 トランジション・ファイナンスの適格性、トランジションボンドの適格性も同様に、グリーンとかソーシャルと同じように、取りあえずはセカンドパーティーオピニオンは寄って立つところで、さらにベリフィケーションまで行けばいいんですけれども、海外においても、結局ベリフィケーションって意外と浸透していなくて、さっき岸上さんがおっしゃったように、いろいろなものが並んでくると、だんだん投資家の目も肥えてきて、この発行体のこの説明ってちょっと曖昧だとなってくるものだと思います。我々引受業者も「この説明では不十分です」ということを御発行体にも申し上げていますので、これはある程度、時がたってくると、別にそれを待っているというつもりはないんですけれども、情報が増えれば増えるほどお互いの精度も上がってくるかなというふうには思っています。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。大分解説をしていただいて少し分かってきた気がします。ありがとうございます。

【手塚メンバー】  手塚ですけれども、コメントいいですか。

【水口座長】  お願いします。

【手塚メンバー】  これも資金需要を持っている事業会社の立場でトランジションとグリーンの話、ブリッジを架けてお話をすると、まさに経産省のトランジション・ファイナンスのためのロードマップづくりの中でも議論されていますけれども、素材であるとか、化学であるとか、鉄鋼であるとか、こういうhard-to-abete産業は、実際にピュアグリーンな技術というのは10年後とか20年後に出てきて、それが実装されていくということなんだろうと思います。今は基礎的な技術開発の段階からスタートしていると。

 問題は、そのタイミングで潤沢な投資資金を調達できないと、つまり、10年後、20年後に既存の製造設備を総取り換えするのに近いぐらいの体力を持っていないとできないんですね、これが。その間、hard-to-abeteですから、当然CO大量排出産業として何もしないでやっていくということで果たして潤沢な資金を蓄えることができるんだろうかという問題があるわけです。なので、今は脱炭素ではないけれども、低炭素で、今より優れて、国際的にも競争力があるような技術に投資を行って今の体力をより大きくしておく傍ら、グリーンの技術開発は同時並行で自己資金を使って進めていく、あるいは政府の2兆円基金を使って進めていく。

 つまり、最終的にピュアグリーンに至るための途中経過をつなぐためには、トランジションで何で食べていって、何で将来の投資、巨大な投資を賄うための財務体力あるいは経営資源を拡大していくかという、そこをつなぐための資金がトランジション・ファイナンスだと。そこでどういう技術か。これはピュアグリーンじゃないので、物によっては、よく言われるアンモニア混焼石炭火力はどっちなんだとかこういう議論が出てきて、人によって、これはトランジションであるとかないとかいう話はあると思いますが、これはまさに経産省の委員会の中で、これを適格とみなすかどうかという議論は行われているというふうに認識しております。

 ただし、それだけをやっている企業じゃなくて、その先をどうつないでいって、最終的にどういうカーボンニュートラルに至るかという道筋を示している企業がそういう技術を使って間をつないだビジネスをやっていくということが適格であるという定義をしていくと、こういう話じゃないかなというふうに私は理解をしております。そうでないと、実際に事業が回らなくなってくる。そういう意味で、別な意味のリスクが出てきてしまうんですね。なので、定義は、ここにいる皆様の定義とは若干違うのかもしれませんけれども、需要側はそういう頭の思考回路でもって位置づけているというふうに御理解いただければと思います。

【水口座長】  適格という概念は、だから、トランジションの戦略全体を見て判断してほしいという話ですか?

【手塚メンバー】  やっぱり長期にわたる筋書がある中で、間をどういうふうにつないでいくベストアベイラブルテクノロジーあるいは世界で最も進んでいる低炭素技術みたいなものに投資していくのはトランジションとして適格であると、そういう定義になるんじゃないかと思います。

【水口座長】  全体像を見てくれということですかね。ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【足達メンバー】  足達ですが、よろしゅうございますか。

【水口座長】  お願いします。

【足達メンバー】  ありがとうございます。もうボンドとプラットフォームの議論からトランジション・ファイナンスの全体像の議論に移っているようなので、私も後者の論点で、今の手塚メンバーのお話にエコーする形で発言をお許しいただければと思います。

 吉高メンバーの組織の多大なる御尽力で英語版が出来上がりました。そこで私から、この報告書を中国とイギリスの金融関係者に報告する機会がございました。共に大変、関心高く反応してくれました。特にトランジション・ファイナンスを重視するという日本の書き方に対して、イギリスの人は、「これ、どういうことだ、あるいはどんな動きがあるのか教えてくれ」ということになりました。今も手塚メンバーがおっしゃってくださったロードマップを日本では作る、鉄鋼の素案はもう出来たというようなこともお伝えしました。鉄鋼業界は、ファーストペンギンになられたわけで、大変な勇気と御努力の要るところで敬意を表するところですけれども、そういうお話を申し上げました。

 ここからは、単純な反応を皆さんと共有するまでの話なんですけれども、そのときの反応は、パスウェイと彼らはよく言いますが、「カーボンニュートラルに至るまでの道筋というのが本当にここに現れてくるのかね」というものでした。「それがなければ、トランジションとはなかなか言えないのだけど」という反応がございました。
これに対しては、「今はまだそういうロードマップにはなっていないけれども、まだ最終版でなくて、これから議論が尽くされていく。多分単なる技術マップだけではなく、どこでどういう排出量になるのかということは出てくるんじゃないか」と想像でお話を申し上げました。ロードマップの想定排出量の記載は、期待するところですし、海外の人たちも、それで納得するのだろうと思います。

 それから、もう一つ反応があったのは、冒頭に高村メンバーから御発言がありましたが、ジャストトランジション、「公正な移行という話は日本では出てないのか」という質問がありました。これは、確かに日本では議論としてなかなか出ていないのが正直なところだと思います。ただ、日本の歴史を振り返ると、昭和30年に石炭鉱業構造調整臨時措置法というのが出来て、約40年以上かけて、国内の石炭産業をトランジションさせたという実績があるわけで。日本の脱炭素に至るプロセスの議論では、そういう産業構造調整というような発想は出ていないわけなんですけれども、彼らからは、「それが必要なんじゃないか」とのサジェスションがありました。こうした情報を共有させていただきたいと思います。

 以上でございます。

【水口座長】  ありがとうございました。ここで、経産省の梶川様から御発言の希望をいただいていますので、梶川様、お願いします。

【経済産業省】  すみません、経済産業省の梶川です。少しトランジション・ファイナンスについて御議論があったので、今、我々が分野別のロードマップをつくっているところの、今の作業状況という言い方がいいか分からないんですけれども、少しそれを御説明させていただきたいと思います。

 まず基本指針というものは、先ほど林様からも御説明ありましたけれども、ICMAのハンドブックを踏まえて、環境省と金融庁と経産省でつくったということになっております。その指針は基本的に総則的な考え方を示したものなので、それぞれの産業分野ごとに何をもってトランジションというのかというところの参考資料のようなものが必要だよねという議論があったので、それは発行体、事業会社が見るもの、あとは、評価機関、また、金融機関が見るものとして分野別のロードマップをつくろうということで、それぞれ業種の所管官庁でつくるという整理にしております。いわゆる業界団体がつくるというよりは、国がしっかりそれを規定しましょうという考え方にしております。

 その中で、先ほど手塚さんがかなり御説明いただいたので、中身としては、鉄は今作っているんですけれども、大事なのは、科学的な根拠のあるパスウェーをどういうふうに作っていくかというのが大変重要だなと思っています。そこについては、国際的なシナリオ、IEAとかIPCCとか色々なシナリオがございますので、まずそれをしっかりと踏まえるという話。あとは、それぞれ各地域によってエネルギー政策が変わる部分はありますので、そこは例えば今回、エネルギーミックスが変わったものであれば、そういうものを踏まえたりとか、あとは、2兆円の基金のほうでは、2050年までの研究開発の計画と社会実装計画を、工程表を作っています。これもかなり色々な意味で不透明な部分があるんですけれども、そこを作っていますので、この辺の様々な国際的なもの、国内で議論しているもの、それを踏まえて1つパスウェーを作っていこうということになっています。

 色々ななトランジションの技術的なオプションもございますので、そういうものをしっかり並べるということと、今、足達様がおっしゃった、具体的な排出の経路みたいなところもある程度見える化する必要はあるんじゃないかという議論がございまして、これ、委員会の中でも、これをどこまで出すかというのはまだ決めきれてないです。いずれにせよ2050年のゼロというものを基本的に置いて、それに向けて下げていくというところで、大体の経路は分かるような形にするんですけれども、具体的にCOの1年当たりどれぐらいまで出すのかとか、その辺は正直言うと、まだいろいろなものが決まっていない中でこのロードマップだけでは出しにくいところがあるので、その辺りはちょっと議論をしなければいけないなということで考えているところです。

 いずれにせよ、適格性とか、国際的にしっかりと理解いただいて、それで、金融機関の方々が、こういったロードマップを活用してやることによって、ある意味、ウオッシングの批判を避けるような形でできることが大事かなと思っていますので、そういう形で今つくる作業をしているということでございます。

 あとは、ずっと作って終わり、一回作って終わりというよりは、それこそエネルギーミックスが変わる場面とか、ある程度技術の進展もありますので、これはしっかりとロードマップを見直すということをビルトインして、それで信頼性を確保していくということも考えておりますので、この辺りぜひ、今このような作業をしていますので、皆様から色々な御意見をいただいた上で、具体的にまた、今、鉄はまだ出来てはないんですね。これ多分10月になると思いますけれども、そこでつくった後に、化学とか電力とか、かなりエネルギー多排出の分野の議論を進めていきますので、いろいろな御意見をいただけるとありがたいなと思っているところでございます。

 取りあえず、すみません、私からは以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。パスウェーが大事だということで、トランジションの議論と適格性の議論と大分重なってくるんだなということもよく分かりますし、JPXの議論も大変そうだなと思いつつ、ありがとうございました。

 ほかにもし言い残したことがあれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

 そろそろ出尽くしてきたと思ってよろしいのでしょうか。

 それでは、もし特段御意見がなければ、そろそろ収束に向かっていきたいと思います。活発な御議論をいただきまして、ありがとうございます。ぜひJPXの検討会のほうでは、本日の議論も参考にしていただいて、さらに検討していただければと思います。

 また、今後、途中でも御意見いただきましたけれども、この有識者会議のほうも、適宜ということできちんと開催をしながら、皆様と情報共有していくということをしていきたいと思っております。

 また、これは私からの個人的な希望なんですけれども、有識者会議は有識者の集まりですから、こちらから「開きますから、どうぞ」というときに集まるのはもちろんですけれども、今、このときに有識者会議をしなくてどうするというようなことがもし起こったら、ぜひ私に御連絡をいただいて、「今、開け」と皆様から言っていただければ、私から金融庁の皆様と御相談をして、はいはいということで動こうと思いますので、ぜひ有識者会議、受け身ではなくて、皆さんからも御意見をいただいて、金融庁とかJPXさんとかいろいろなところと協力をしながら進めていければなというふうに思っているところです。

 というわけで、本日も大変貴重な御指摘、建設的な御議論をいただきまして、ありがとうございました。

 最後に、事務局のほうから御連絡事項がありましたら、お願いしたいと思います。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  最後にも座長からお話ありましたけれども、定期的なタイミングで一定の期間で開いていくということで、次の会議については決まり次第また御連絡させていただきたいと思いますので、ぜひどうぞ引き続きよろしくお願いします。

【水口座長】  それでは、本日は以上にしたいと思います。皆様、御協力いただきまして、ありがとうございました。これにて終了したいと思います。お疲れさまでした。
 
―― 了 ――

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(内線3515、2770、2893、5404)

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