「サステナブルファイナンス有識者会議」(第12回)議事録

1.日時:

令和4年6月10日(金曜日)10時00分~12時00分

【水口座長】  それでは、ただいまよりサステナブルファイナンス有識者会議(第12回)の会合を開催したいと思います。皆様、御多忙のところを御参集いただきまして、誠にありがとうございます。また、前回、時間がタイトだったこともありまして、金融庁の皆様に御尽力いただきまして、急遽回数を1回追加させていただきました。皆様にも日程の調整に御協力いただきまして、ありがとうございました。

 さて、毎回の注意事項ですが、御発言されない間はミュート設定にしていただきまして、発言される際にミュートを解除し、発言が終わりましたら、再びミュートに戻していただければと思います。

 それでは早速、議事に入りたいと思います。本日は2つテーマを御用意しています。一つは、ソーシャルボンド指標について。今、パブコメ中と思いますが、この間の進捗を御紹介いただきまして、委員の皆様からも御意見をいただきたいと思っております。もう1点は、1年経ちましたので、この1年間の報告書といいましょうか、有識者会議としてのレポートについて素案をお持ちしましたので、これについて議論したいということであります。

 本日は、ソーシャルボンド検討会議の座長もしていただいております北川先生にお越しいただいております。北川先生、お忙しいところ、どうもありがとうございます。

 それでは早速、北川先生の方から、ソーシャルボンドの指標集について御紹介をいただければと思います。北川先生、よろしくお願いいたします。

【北川座長】  水口先生、ありがとうございます。それでは、私の方から、パブリックコメントに付しております「ソーシャルプロジェクトの社会的な効果に係る指標等の例示文書(案)」につきまして、簡単に御紹介をさせていただきます。

 まず、事の経緯でございますけれども、昨年3月、サステナブルファイナンス有識者会議の下にソーシャルボンド検討会議が設置されました。そこで第1回から第4回までの会合が開かれまして、我が国の特性に即したソーシャルボンドガイドラインの策定に向けて、市場関係者及び有識者の委員の方々と検討を重ねて参ったところでございます。そこで国際的な原則、ICMA等の原則や、環境省のグリーンボンドガイドラインも踏まえまして、パブリックコメントの募集手続を経て、昨年10月、ソーシャルボンドガイドラインを公表することができました。同ガイドラインの公表後には、国内のソーシャルボンド、サステナビリティボンドの発行事例におきまして、同ガイドラインに沿った発行が既に行われております。

 同ガイドラインでは、発行体はソーシャルボンドの資金使途となる適格なソーシャルプロジェクトがもたらす社会的な効果につきまして、適切な指標を用いて開示すべきであるとされております。こうした指標につきましては、国内では開示事例の十分な蓄積がなく、参照できるような資料が乏しいということで課題として認識されておりましたけれども、昨年のソーシャルボンド検討会議の議論の整理におきましては、この具体的な指標例等につきましては、初版のガイドライン策定後、関係府省庁等とも連携の上、引き続き検討を行うということにしておりました。

 これを踏まえまして、昨年の12月、ソーシャルボンド検討会議の下に、ソーシャルプロジェクトのインパクト指標等の検討に関する関係府省庁会議を設置しまして、指標等の具体的例示に向けた議論を進めていただきました。その後、先月にはソーシャルボンド検討会議の第5回を開催いたしまして、ソーシャルボンドガイドラインの付属書4の案としまして、「ソーシャルプロジェクトの社会的な効果に係る指標等の例」の文書案を取りまとめました。現在、6月29日を最終期日といたしましてパブリックコメントに付しておりますところでして、パブリックコメントを踏まえて早期に確定することを目指しております。

 次に、下段を見ていただきたいんですけれども、指標集の内容でございます。既に公表しているガイドラインでは、SDGs、アクションプラン等を踏まえた我が国の社会的課題の例、例えばダイバーシティの推進、女性の活躍推進、高齢社会への対応、感染症対策、防災・減災対策、地方創生・地域活性化等といったものを示しておりますが、1でお示ししていますように、例示文書ではこうした社会的課題に対処する実際の発行事例等を踏まえまして、具体的なソーシャルプロジェクトとその指標等を例示しております。

 具体的なプロジェクト例といたしまして全部で17個用意しております。このうち16個につきましては、外部委託調査をして、内外の発行事例等をベースに指標例等のベースを作成し、それを関係府省庁会議及び検討会議において内容を精査し、日本の社会的課題やそれに対処するプロジェクト例を想定した形に見直したものとなっております。また、文部科学省から障がい者スポーツの推進に係る例の提案もあり、それを加えて全部で17個となっております。16の例でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、既に公表しているソーシャルボンドガイドラインの付属書2で、SDGsアクションプラン等を踏まえ我が国の社会的課題の例を15個程度示しており、それをカバーする形で例を選んで整理したということでございます。

 なお、今回の指標等の例示文書案の策定に当たりましては、網羅的にソーシャルボンドのインパクト指標リストの作成を目指すといったアプローチもあり得たと思いますけれども、まだ検討初期ということで市場が成熟しておらず、国内外でも様々な議論が行われている段階にあり、そうしたアプローチ、つまり、網羅的、画一的なリストを作成することは困難であることと、ソーシャルボンドが目指す社会的な効果、最終的なインパクトに至る過程の考え方等を限定してしまうというおそれもあり、かつ企業の創造性による市場の自律的な発展を妨げる可能性もあることも留意した上で、この初版の例示文書においては、国内の社会的課題に対処する具体的なソーシャルプロジェクトとその指標例を整理して示すという方針を取りました。この辺りのところを留意していただきたいと思います。

 そして、指標等の例示の仕方でございますが、2にお示ししていますように、プロジェクトが最終的な社会的な効果、つまり、インパクトに至る過程を図示した上で、各段階の効果を示す指標等を例示しております。お示ししておりますのは、バリアフリーなどのユニバーサル対応の推進に係るプロジェクト例でございます。日本企業によるソーシャルボンドの発行事例を参考にしております。

 こちらの例では、例えば利用者向けにユニバーサルなサービスを提供するプロジェクトであれば、アウトプットとしては、そうしたサービスの提供・拡充を行うということでございまして、これを評価する指標例としては、ユニバーサル対応の改修が完了した施設・設備の数や件数、また、ユニバーサル対応の証明書の取得などが考えられます。さらに、アウトカムとしては、こうした取組によって障がい者等の利用者についてサービスへのアクセシビリティーの向上がもたらされるということでございまして、これを評価する指標としては、こうした施設・設備の改修等の後、実際の利用につながるということで、その利用者の数や利用者の満足度などが考えられます。そして最後に、インパクトとしましては、こうした取組を通じて、バリアフリーの推進・多様性を尊重するという共生社会の実現につなげていくというようなことが考えられます。このような例示を各社会的課題の例についてお示しをしているということでございます。

 繰り返しになりますが当例示文書がソーシャルボンドの資金使途となるソーシャルプロジェクトをもたらす社会的な効果の開示に当たり、市場関係者等に広く有用なものになると考えております。また、社会的な効果の評価や開示の在り方については、現在、国内外で様々な議論が同時進行でなされております。本例示文書は、こうした議論やICMAソーシャルボンド原則をはじめとする関連文書等の改定、その他社会的課題の変化に応じて今後も引き続き例示の見直し・充実を行っていく所存でございます。

 最後に、これは座長としてというよりも、サステナビリティ関係の種々の官民の研究会に携わった者の感想として、私見、感想を一つ述べさせていただきます。当例示文書におけるスピード感あふれる各省庁間の連携はすばらしいものであり、私は大変感銘を受けました。海外からのサステナビリティに絡まる基準、ルールづくりの対応にえてして我々は右往左往しがちでございますけれども、我が国の国益を考えますと、統一感があり、クイックに対処できる、かつ日本からの優れたアイデアをまとめて発信するような組織といいますか体制が必要であることを今回の省庁間のすばらしい体制をもって痛感した次第であります。そういう意味で、非常に私自身は、この例示文書は大変エポックメーキングなものだったというふうに感じております。

 最後は、蛇足でございましたけれども、私からの報告は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【水口座長】  ありがとうございました。最後の点は重要ですよね。おっしゃるとおり、省庁間の連携、ちゃんとやればできるじゃないかということで、北川先生のおかげもあるのかなと思っておりますけれども、ありがとうございました。

 また、よく整理されているなと思います。アウトプット、アウトカム、インパクトの関係が分かりやすく例示されているなというふうに考えまして、非常に参考になるのではないかと思うところであります。

 それでは、委員の皆様から御質問、御意見等いただければと思います。例によって直接声を上げていただくという方法で構いませんので、御質問、御意見のある方はどなたからでも結構です。早い者勝ちですので、お声を上げていただければと思います。例によって、あまり長くはしゃべらないでください。端的にコメントをいただければと思いますが、いかがでしょうか。どなたからでも結構です。

【林メンバー】  すみません、では、BofAの林です。実は今、私、海外におりまして、音声が悪かったら申し訳ないです。今、北川先生からもお話がありましたICMAの年次総会がありまして、昨日日本のいろいろなガイドラインとかを見てくれている外国人のスタッフとか、日証協さんからロンドンのICMAに出向されている方がいらっしゃるんですけれども、そういう方々にお目にかかったということもあり、そこで言われたことを一言だけお伝えしようと思います。

 ちょうど今、北川先生がおっしゃった各省庁間の連携ということなんですけれども、それは引き続きよろしくということを強くというか言われました。日本ほど真面目にいろいろなことをやっているところはない一方で、いろいろな省庁さんが関わるので、これからも進めていく上で各省庁間の連携が非常に重要であるということをちょうど言われたところでございましたので、ICMAとの連携をさらに進めていく上では、各省庁間の連携ということが非常に重要であると感じましたので、お伝えさせていただきたいと思います。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。お声、大変クリアに聞こえております。今きっと夜ですよね。

【林メンバー】  ええ。おかげさまで、朝の3時でございます。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。どなたでも。

【鳥海メンバー】  では、日証協、鳥海でございます。よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【鳥海メンバー】  今回の指標の例が非常に、社会課題から発して、どのような具体的なプロジェクトにしていったらいいのか、そのアウトカムはどうなのかということで、すごく具体的で分かりやすいと非常に思っております。これを作っていただいた方に本当に感謝したいと思います。これはやはり我々日本におけるソーシャルボンドの発行体のレポーティングに非常に役に立つというふうに思います。

 一方で、先ほど先生の御発言の中にもあったんですけれども、国内外でやっぱりこれだけ議論がどんどん進んでいる、あるいは社会的な状況も変わっていくという中で、この具体例が絶対的というか制約的なものにならないようにということで、見直し、この例示内容をどんどん変えていく、アップデートしていくということが重要かなと思っておりますので、そこは引き続きお願いしたいと思っております。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。そうですね。そういう意味では検討会議か府省庁連絡会議が継続するという感覚でよろしいんでしょうかね、北川先生。

【北川座長】  そうですね。まさに我々自身が例えば、言い方はあれですけれども、まさしくICMAの活動に影響を与えるプレゼンを行うぐらいのつもりでやるということですね。つまり、特にSの問題、ソーシャルの問題というのはかなり国ごとに違うし、でも、我々が抱えている問題というのは実はグローバルの中では先進諸国間ではかなりの部分で共通するところがあるわけで、実は大変なインスパイアするものを彼らに、彼らって失礼ですけれども、欧米各国あるいはアジアの各国にも与えるものだと思っていますので、それだけ密度の濃いことをやっているんだということを私は自信を持って示さなければいけないと思います。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。ほかにもし御意見、御質問等あればいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【渋澤メンバー】  渋澤です。

【水口座長】  お願いします。

【渋澤メンバー】  日本が色々と非常に真面目に取り組んでいることは、日本国内でもよく知られていないかもしれませんが、海外で全く知られてないというのは問題だと思います。それは多分、このような報告書が日本語でしか発表されていないからだと思いますので、ぜひ英文にして、金融庁のウェブサイトなり、積極的に海外、世界に情報発信することが大事だと思いますので、どうぞ御検討ください。

【水口座長】  ありがとうございます。何だかすごく英語にしやすい環境が整ったといううわさを聞きましたけれども、西田さん、一言

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  金融庁で国際金融センターの取組みを進めていますけれども、その一環として、政府内の研究所と連携しまして、金融分野の用語をAIに学習してもらい、これを集約する形で、金融に係る翻訳を行うAIツールを実装しています。私ども内部でも使っておるのですけれども、比較的短時間で実務的に読み得る英語になるような実感を持っておりまして、利便性は高いかなと感じています。

 一例として、ESG評価機関の専門分科会を今鋭意議論いただいているところですけれども、会議における資料は国際的な評価機関の方にもみていただいて議論することが望ましいと考えており、できる限り同タイミングで英語も資料としてお出しして会議を進めるように努めています。有識者会議の報告書などの他の文書についても同様に使えるツールは活用しながら英文化は進めていきたいと思っているところです。

【水口座長】  これからAIに助けていただきながら、ちょっとずつ英語の発信も早くできるようになるといいなと思っています。ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

【岸上メンバー】  岸上ですけれども、よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【岸上メンバー】  皆様のここまでの意見にもつながりますが、今回ソーシャルボンドのための指標をご紹介頂きましたが、例えばサステナビリティ・リンク・ローンなど、今回のパブリックコメントを踏まえて、他のラベルボンドやローンにそのフレームワークを活用・連携できるのではないかと思いました。

 あと、1点細かいところですけれども、例8のところが、特に海外連携が強い事例となっていると思います。人権や贈収賄など、やや課題がてんこ盛りな例になっておりますので、少し細分化した方がより他のフレームワーク同様に分かりやすくなるのではないかなと感じました。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。そうですね、例8はちょっとてんこ盛りでしょうか。ありがとうございました。

【足達メンバー】  足達ですが、よろしいでしょうか。

【水口座長】  はい、足達さん、お願いします。

【足達メンバー】  ありがとうございます。本当にこういう形のものがまとまったというのは画期的だと思っております。

 一方で気になる点は、後半の各論のところで、「想定される我が国の社会的課題」というタイトルで全て書いていただいている点です。これはこれでいいのですが、日本の第1号のソーシャルボンドがJICAさんのJICA債だったということを思い出すと、国際協力の観点で「日本の資金が海外の社会的課題の解決に資する」というところも、国内における資金使途と同様に考えていかなければいけないと思います。そこで、ニュアンスだけでも構わないので、国内課題の列挙ばかりでなく、こうした指標をもとに海外にも日本から資金を振り向けていく等の言及があれば、海外でも非常に理解されやすいのではないかと思いますので、一言申し上げます。

【水口座長】  なるほど。ありがとうございます。おっしゃるとおりですね。もともと国外向けのソーシャルボンドはいろいろ例があって、国内課題はどうなんだという議論もあってこういう形にはなっているんだとは思いますが、このまま英訳してしまうと、もしかしたら日本のことだけ考えているみたいに見えてしまうかもしれませんので、その辺少しリマークスはきちんと入れていくとよいかなと思いましたので、よろしくお願いいたします。

 ほかにいかがでしょうか。

【渋澤メンバー】  もう1点、すみません、よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【渋澤メンバー】  先ほどの岸上さんの御意見で思ったんですが、このソーシャルボンドのガイドラインは、銀行の貸付けにも応用できるんでしょうか。とある地方銀行の役員会でESG、SDGsに関連した貸付けについて把握する方針の話があって、各地銀も同じような取り組みがあると思いますが、ウォッシング的な可能性もあるのかもしれません。このようなボンドのフレームワークを貸付けのほうに金融庁の方から銀行へ提示すれば、何がSDGsなのかとか、何がESG、何がサステナブルということのフレームワークがもっとしっかりと出来るかなと思いましたので、御提案というかという問いです。これは貸付けにも応用できますでしょうか。

【水口座長】  ありがとうございます。ソーシャルローンは、あれ、どうなっていたんでしたっけ。よく分かってないんですけれども、ソーシャルローンという概念はありますよね。

【金融庁市場課(西内)】  金融庁市場課の西内でございます。御指摘がありました点につきましては、もちろん参考にしていただくということはできるかと思いますが、基本的にはこちらは、御指摘のあったとおりソーシャルボンドを念頭に置いたものでございます。一方で国際的な原則としては、ソーシャルローンについての原則もあると承知しておりまして、そうしたものも踏まえて今後そうした分野についての検討というのはあり得るかなと考えてはおります。

【水口座長】  ありがとうございます。

【渋澤メンバー】  今、若干縦割りを感じましたので、ぜひ省庁内の関係も構築していただいて、ローンの方にも共有できるようにお願いいたします。

【水口座長】  そうですよね。ボンドとローンで縦割りじゃいけませんよね。グリーンボンドにはグリーンローンがあるので、ソーシャルボンドにもソーシャルローンがあって、両方使えると思いますし、この議論は発展していくと多分インパクトの議論につながっていくので、そういう意味でいうと非常に実は広がりのある議論かなと思います。

【吉高メンバー】  吉高ですけれども、よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【吉高メンバー】  北川先生、今回のこの御報告書、本当にすばらしいと思っておりまして、ありがとうございます。

 私もまず足達さんの意見は大変賛成でございます。また、先ほどの足達さんのお話とも少しつながるのですけれども、この中で女性活躍推進という言葉が何度か出てまいります。もちろん日本政府の女性活躍推進の政策の言葉に呼応してということだと思いますが、例えばJICAが出したジェンダーボンドというのは、あくまでも女性の経済的エンパワメントであり、活躍という漠然としたものではありません。ジェンダーギャップの格差などを有報で開示という話も出ていると思いますが、こういったインパクトと、女性活躍という言葉とどのように捉えていっていいのか。女性活躍推進は国際的には曖昧な言葉のような気がしておりますが、もしそういった議論があったのでしたら、もしよければ教えていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【水口座長】  北川先生、何かコメントございますか。

【北川座長】  いろいろ議論があった中での例示でございまして、吉高さんおっしゃるように、グローバルを見るといろいろな動きがあって、それを取り上げて、何かそういうものはちょっと成熟化して事例化しているものがないという、まだ我々の方では把握できなかったということでありまして、そういったものをアクセプトするとかそういうことではなくて、むしろそういうものを今回で知見を広げて、新たなものを評価していきたいということです。そのように理解していただければと思います。

【吉高メンバー】  どうもありがとうございました。

【水口座長】  ありがとうございます。ジェンダーバランスといったり、ジェンダーエクイティといったり、エンパワメントであったり、日本で女性活躍推進というと日本的な文脈で使われる言葉だと思いますけれども、徐々に国際的な動きと整合性を取っていく必要もあるのかなと思います。視野が広がるということは必要ですよね。ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、一旦この議論はここまでにさせていただきたいと思います。北川先生、大変ありがとうございました。これからも引き続きどうぞよろしくお願いをいたします。

【北川座長】  いえ、こちらこそいろいろ機会をいただきまして、ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

【水口座長】  いろいろお願いばかりしてすみません。ありがとうございます。

 それでは、次の議題に参りたいと思います。次に、前回のこの有識者会議の第11回で、1年間の振り返りの議論をさせていただきましたが、大変時間が短くて、皆さんに一言二言しかいただけなくて、全員の方に御意見いただけなかったかと思っております。1年間の振り返りも含めまして、1年経ちましたので、何らか進捗報告といいましょうか、プログレスレポートのようなものが出来たらよいのではないかというアイデアがございまして、事務局の皆様に御尽力いただきまして、この1年間の進捗と今後の課題についての報告書の素案を御用意いただきました。

 この報告書をどういう名前で呼ぶべきなのか、プログレスレポートなのか、それとも、新たな提言集なのか、どういう名前がよいのか、そして、どういう内容であるべきなのか、どんな構成で書いたらいいのかということも含めて、有識者会議の報告書ということになりますので、皆様から御意見をいただきたいと思いますが、まずは素案をお作りいただいておりますので、この素案について事務局から御説明をお願いします。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  金融庁、西田でございます。簡単にお手元の文書「金融庁サステナブルファイナンス有識者会議報告書(案)」に基づいて、画面共有させていただいて、御説明させていただければと思います。

 前回4月、第11回の有識者会議でサステナブルファイナンスに係る全体像について議論をいただきました。その際、事務局から進捗と課題、行程表をお示ししていたところです。今回はこうした議論・資料を提言書の形でまとめております。

 基本的な構成ですが、目次については、基本的に昨年6月の本有識者会議で取りまとめていただいた報告書の骨子に合わせております。具体的には、取組の全体像について述べた上で、企業開示の充実、市場機能の発揮、それから、金融機関の機能発揮、そして、横断的課題ということです。

 もう1枚おめくりいただきますと、全体の構成ですが真ん中のところ、昨年6月に報告書をとりまとめいただいて以降の非常に大きな進展がいろいろあったと思います。個々については様々あろうかと思いますけれども、例えば先ほど事務局から御説明させていただいたソーシャルボンドのこともありますし、開示も大きな動きがあったかと存じますし、トランジション等々も動きがあったかと思います。また、ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー環境をどう考えていくかなど世界的な議論もあると承知しています。

 こうした状況変化について記述させていただいた上で、もともと想定していた、有識者会議として取り組むべきだとしていた課題と、それに対しどこまでこの1年間で進捗があったのか、また、その上で、新たな課題としてさらにどういうことに新たに取り組んでいくべきか、または深掘りしていくべきか、こうした、この1年間の取組の進捗、新たな課題、大まかな対応の方向性の案を記載させていただいています。

 5ページ目ですけれども、まず全体像についてということで記載をさせていただいております。こちらに絵が置いてありますけれども、前回第11回に御議論いただいたときの資料を、現時点ではこのまま貼り付けさせていただいております。イメージとしましては、本日の御議論、それから、今後の課題ということにより重点を置いて更新をさせていただいて、次回の会議の際に工程表も併せてお示しして、併せて議論をいただくということを考えております。

 次に各論ですが、8ページまで飛んでいただきまして、1点目、企業開示の充実です。こちらはちょっと恐縮ですけれども、ディスクロージャーワーキングでまだ議論が続いておりますので、現時点ではペンディングということで簡単な記載にとどめさせていただいております。IFRS財団において検討がスタートしているということ、日本でも、SSBJが早々に立ち上がる予定として現在準備が進んでいますが、こうした議論と、金融審議会ディスクロージャーワーキングでの取りまとめに向けてまさに今議論が進められていること、その他簡単に記載がありますが、次回、ディスクロージャーワーキングとこの報告書、それぞれ併せて御議論いただければと思っているところです。

9ページ目は、機関投資家について記載をさせていただきました。前回PRIの木村さんからプレゼンテーションをいただいて御議論いただいたところです。資金の出し手である機関投資家において、中長期的な視点を持って資金を提供して、サステナビリティへの対応を進める企業を支援すること、それから、企業の経営に対する規律づけを促すことが期待されるということで、これは昨年の有識者会議の問題意識をまとめています。

 その上で、エンゲージメントに向けたコミットメント強化とか、国際的なイニシアティブの参加ということを課題として掲げておったわけですけれども、足元、昨年から比べると大分加盟は増えてきたのかなと。他方で、ESGの課題の考慮を含む投資に関する戦略策定等について、アセットオーナーといっても様々な方がいらっしゃいますので、その実情に応じてではあるものの、課題があるのではないかというご指摘を前回もいただいたかと思います。

 こうした観点から、機関投資家、とりわけアセットオーナーにおいて、運用資産の持続可能性を高めて、最終的な受益者の便益を長期的に拡大する、こういう観点からさらにどのような取組が可能であるかということについて知見を深めていくことが重要ではないか、他方で、機関投資家・アセットオーナーには非常に様々な方がいらっしゃいますので、広く議論に巻き込んでいくような形で、現状どのような課題があるか、どういうことが取り得るかという点について、議論と認識共有から始めていくことが考えられるのではないか、という記載となっています。

 次、11ページ、個人に対する投資機会の提供ですが、こちらについては、前回事務局より御説明をさせていただいて、ESG投信に関する金融庁の期待を含めてご議論いただいたところです。その内容を簡単に、ESG投信についての実態調査を行ったこと、組織体制の構築や運用プロセスの高度化、顧客への説明などにまだまだ課題があるだろうこと等を記述しています。

 このため、このページの最後のところですけれども、さらなる対応として、金融庁として、投資家保護を図るとともに健全な市場を発展するという観点から、資産運用会社との対話を継続するとともに、監督指針を2022年度末に改正などの所要の措置を講じることで確実な取組をさらに進めていく、こういうことが重要なのではないかと記載させていただいています。

 次、市場機能の発揮に関する3つ目の課題として、ESG評価・データ提供機関について。6月の報告書では、行動規範等について議論を進めるべきだと提言をいただいているところでありまして、本年の2月にこの有識者会議の下にESG評価・データ提供機関に関する専門分科会を設置いたしまして、北川先生を座長として現在議論をいただいているところで、こちらも次回この会議に御報告をさせていただければと思っております。

 次、14ページ目です。市場機能の発揮についての4つ目の議題であります。こちらは、市場全体が有効に機能するためのインフラ整備ということで、ESGの投資情報の見える化、それから、データの集約、そして、ESG関連債の適格性を客観的に認証する枠組み、これが課題であるということでまとめていただいたところだと思います。JPXさんにおいて昨年の10月に検討会議を立ち上げていただいて、金融庁としても一緒に取り組んできたわけですけれども、今年の1月に検討会の中間報告書をまとめていただいたところです。この中で、情報プラットフォーム、まずはESG債券から始めて、将来的にはそれ以外のものも含めて、また、集約する情報についても、経済的な情報だけではなくて、発行体のESG戦略、また、外部評価はどういうものを受けているのか、また、発行インパクトなんかが測られた場合にはその旨を情報プラットフォームで集約して見える化することとされています。今、JPXさんにおいて立ち上げに向けてシステム要件などを詰めておられる状況と承知しております。

 また、ESG適格性の確保に向けた認証については、グリーン、トランジション、望ましい具体的な基準の共有が重要であることを指摘いただいた上で、足元の実態は世界を含めて基準の策定等はまだ途上にあり、まずは、発行体、評価機関がどのようにESG適格性を判断したか、この具体的な理由をプラットフォームで明らかにすることで、比較可能性と透明性の向上を図りながら、併せて認証の枠組みについても検討していくということで中間報告としてまとめていただいています。

 また、この中では、特に企業のデータについて非常に重要性が高まっているとことを指摘していただいた上で、これを集約する取組を今後、第2のステップとして検討を進められるということでまとめていただいております。

 次、市場機能の5点目になりますけれども、ソーシャルボンドのところです。こちらは先ほど御議論をまさにいただいたところですが、事業の中身についてソーシャルの観点からまとめたものでありますので、先ほどのローンについても御指摘も踏まえて検討していきたいと思っています。

 次に、18ページに飛んでいただきまして、金融機関についての役割です。有識者会議の報告書では、わが国では諸外国と比べても重要な役割が金融機関に期待されるのではないかということで、金融庁としてガイダンスを策定することとしていただいているところです。この観点については特にこの1年の間に、いろいろな動きがあったかと理解しておりまして、幾つか記載をさせていただいています。

 まず18ページの後半のところですけれども、ネットゼロのアライアンスが非常に活性化したということがあろうかと思います。特にCOP26の前後において、銀行、保険、アセットオーナーなどの連合が、必ずしも間接金融に限りませんけれども、非常に加盟数が増え、また、これらを取りまとめるGFANZ、Glasgow Alliance For Net Zeroが活性化し、わが国からも参加の金融機関の方が増え、3メガバンクや大手生保さんなど20社前後の方が参加されているというふうに思っています。この中で、参加金融機関は、加入の後18か月または36か月以内に2050年のカーボンニュートラルを実現していくための2030年の中間目標を目標設定するというふうにされており、前回3メガさんから御説明をいただいたところですけれども、注18にありますとおり、我が国でも一部の金融機関において、このコミットメントに基づきながら中間目標を設定・公表する動きが出てきているところです。

 また、公的部門における国際的な議論としても、G20のサステナブル・ファイナンス・ロードマップで2023年までにトランジションファイナンスのハイレベルプリンシプルを国際的にもまとめていくということで議論が進んでいます。また、IPSF、こちらは金融庁も共同議長で入っているわけですけれども、こちらにおいてもトランジションファイナンスに関する作業部会で鋭意、議論を進めているところと承知しています。

 翻って国内でも、産業別にどう排出削減を図っていくかが課題になっているということで、この1年で、昨年6月の本会議報告書でも記載をいただいたロードマップについては、新たに7分野で策定され、船舶も含めて8分野で揃ってきたということで、これに基づく資金調達の事例が見られているところです。

 また、カーボンクレジット市場の在り方も含めて、今後どのように産業界全体として脱炭素を進めていくかという観点からことで、経産省からGXリーグ基本構想が公表されているところです。これは当然政府としての計画等にも位置付けられているものですが、2023年の本格稼働に向けて現在、議論の段階ということです。この3月まで賛同企業の募集を行っておりましたが、400社超に賛同いただいたところです。具体的な要件等は今後定められていくものですが、基本構想においては、GXリーグ参加企業は2030年の中間目標を設定・公表し、サプライチェーンや消費者等を含めて様々にアプローチを図っていくものとされています。

 また、地域の課題です。国際的な企業によるサプライチェーンへの働きかけ等もございますし、また、先ほどもありましたように取引等で中核となる企業が脱炭素に向けた動きを加速させていくということ、またそれぞれの地域の顧客の声に応える形で脱炭素に向けた取組を進める、こうした課題がでつつあるとの指摘がありますが、一方で実際には、まだまだ具体的にどのようなところから取組みを進めることがよいか、地域の企業・金融機関にとって分かりにくいとの指摘も多いと思います。

 こうした指摘も踏まえつつ、金融庁では本年の4月に、ガイダンス案を公表させていただいたところです。前回会議でもご議論いただいたところですが、大きく2点、リスクと機会の認識ということで、金融機関のリスク管理、それから、顧客支援についての体制整備を図ることということ、それから、顧客支援の具体的な在り方として、地域の関係者とも連携しながら様々な工夫をしてくべきではないかということをまとめさせていただいているところです。ガイダンスを出したということでとどまらずに、これを基にしながら具体的にさらなる取組みを進めていく必要があると認識しています。

 例えば、まず大手金融機関に係る対応ですが、シナリオ分析について、現在、パイロットエクササイズをやっておりますけれども、これを踏まえながら、さらに継続的に改善を進めていくために金融庁と金融機関の間で対応を進めていく。また、国際的にも様々なシナリオ分析についての議論とか実践が進みつつありますので、これにも積極的に参加をしていく。

 また、21ページですが、ネットゼロに加入する金融機関を中心に中間目標の設定が進みつつありますので、こうした検討を進める金融機関の助けともなるように、例えば排出削減についての目線をもう少し出せないかなど、関係省庁とも連携しながら更なる方策を検討していくこと。

 また、地域金融機関等ついては、地域でどのような影響があり得るか、リスク・機会両面で認識して洗い出して、能動的に課題を把握し、対応していくことが重要ですが、一方で、各地域での対応はまだ取組の途上であるということを踏まえて、このガイダンスに記載もある対応事例や、中小企業庁や環境省なども連携して、地域金融機関・中小企業の方が取り組みやすい課題、具体的にどういうことから始めていけばよいのか、また、支援策としてどのようなものがあるかといった点について、浸透を図っていく。

 最後のページですが、フォローアップです。金融機関による対応を含めて、気候変動を中心に変化の著しいところですので、課題や対応策について有識者や実務担当者を交えて、本会議としても継続的にフォローしていくことが重要、との記載をさせていただきましたが、この点も含めて本日御議論いただければ幸いです。

 横断的課題については、受託者責任、これは、先ほどのアセットオーナーに関わるところだと思います。タクソノミーとトランジションにつきましても、先ほどご説明させていただいたものですが、24ページのインパクトについては、SIIFさんと金融庁で勉強会を進めており、この1年の間に「第一フェーズの到達点と今後の課題」をとりまとめいただきました。こちら、インパクト投資に関する基本的な内容について認識共有は図られたということで、次のフェーズとして、投資・融資などの資産種別に応じて投資手法をどう深化させていくかという具体論に進んでいくということです。

 また、特に脱炭素については、エネルギー転換など様々な技術開発が必要と思われ、クライメートテック企業と言われる、創業期の企業の役割も大きいのではないか、こうした観点から、例えば、投資リターンに止まらない環境インパクトとして、ある技術を導入した結果どのような改善効果が図られたのか、温室効果ガスがどれぐらい減ったかを見える化することが出来れば、こうした企業が投資を呼び込み開発等を進めていくことにもつながっていくのではないか、こういう観点から環境省等と連携をして議論を進めていく、そういう趣旨を記載させて頂いています。

 最後になりますけれども、5の専門知見を有する人材ということです。これは前回の議論の際にもいくつか御指摘をいただいたところです。これまでもJPXさんのKnowledge Hubなどがございますが、これらを更に一歩進めて、サステナブルファイナンスの実施のために実務に必要とされる知見・技能、スキルマップを見える化していくとか、様々、サステナビリティに関する資格試験とか研修も、今、民間の各団体で検討するという動きもあると承知をしておりますので、こうしたことを何らかの形で後押ししていくことが重要ではないか、そうした指摘を記載させていただいています。

 最後に、多様なステークホルダーとの対話です。例えば若い方で環境認識などについて非常に熱心に取り組まれている方、増えていらっしゃると認識しておりますけれども、こうした多様なステークホルダーの方と対話をするという場面も非常に重要ではないかという趣旨で記載をさせていただいています。

 それから、先ほど渋澤メンバーからも御指摘がありましたけれども、まだ明示的には書いておりませんけれども、英語も含めて海外の関係者の方にも浸透をし、こちらの報告書も当然英語でも準備させていただくわけですが、こうした点も重要と考えています。

 以上、すみません、ちょっと長くなりましたけれども、ドラフトについて御説明させていただきました。

【水口座長】ありがとうございました。本日は12時までのお時間をいただいておりますので、今日はあと1時間ぐらいたっぷり議論できるということであります。先ほども申しましたように、報告書の構成、それから、内容、さらには報告書の名称というんでしょうか、名称は内容と関わるんだと思いますけれども、どういうスタンスでこの報告書を作っていくのがよいのかということについて皆様から今日御意見いただき、それを踏まえてさらにドラフトをして、次回の委員会では確定させたいというか、次回の委員会で原案について御意見をいただいて、そこで座長に御一任いただいて6月ぐらいには出すと、こういうスケジュールで行きたいと考えております。

 ということで皆様から御意見いただきたいと思っているんですが、最初に私の方から、いつも司会だけしていて自分の意見を言う場面がありませんので、今回1つだけ、座長ではなく一委員としてのコメントをさせてください。

 ちょうど今、最後の方でインパクトの話がありましたが、PRIと幾つかの組織が共同して、「インパクトに関する法的枠組み」という文書を昨年出しました。このインパクトの法的枠組みという文書の中で、IFSI(Investment for Sustainable Impact)というんですけれども、いわゆるインパクト投資に限らない、インパクトを重視した金融行動が受託者責任上どうなのかという議論を展開しておりました。アセットオーナーでも、IFSIにも二通りあって、現行許容されているものもあるのだと、こういう議論がいろいろされているんですけれども、その議論の中でやはりアセットオーナーがインパクト投資といいましょうか、インパクトを重視した金融に進んでいくことは必要なんだという議論なんだと思うんですね。

 そういうふうに考えながら先ほどの御説明を伺っていると、やはり市場機能の発揮のところでアセットオーナーへの後押しが必要で、もうちょっと具体的な施策があってもいいのかなと思っております。アセットオーナーにはいろいろなタイプがあって、保険もあれば、年金もある。年金の中でも企業年金もあれば、公的年金もあります。企業年金や保険は民間の会社さんですので、民間がそれぞれ判断する部分があるんだと思いますけれども、公的年金の部分は、これは法律に基づいて公的に行うもので、法律の趣旨もあるわけですけれども、国民経済全体の健全な発展ということが基本的な趣旨になってくるんだとすると、インパクトとかサステナブルというものがその基本的な趣旨と整合するんだということがだんだん明らかになってきたわけですので、少し政策的に公的年金の部分については進めていくということがあってもよいのかなと。そこが呼び水になって民間のアセットオーナーさんが動くということがあってもよいのかなということはちょっと思っています。法的な議論で難しいので軽々には言えないところですけれども、そんなことを一委員としてちょっと思いました。

 それでは、皆様からのコメントをいただきたいと思います。どなたからでも結構です。どうしましょうね、構成、内容、名称といろいろあるんですけれども、あんまりそんな整理せずに、ざっと皆様から御意見をいただければと思っていますけれども、いかがでしょうか。どこからでも結構ですし、どなたからでも結構です。御感想も含めて。

 では、足達さん、鳥海さんの順番で行きましょうか。

【足達メンバー】恐れ入ります。時間がなくなってしまわないうちにと思って、厚かましくてすみません。

 進捗レポートという形で、足元で取り組んだことが、こうして纏められることには意義があり、拝見してみると、それぞれに進捗があったと実感できました。こうしたレポートの作成を歓迎いたします。そのうえで、私からは、世の中がどんどんと動いていますので、去年6月の報告書には出ていないが、今回、言及すべきではないかという3点を申し上げたいと思います。

 一つは、今、座長が公的年金の話をおっしゃいましたけれども、いわゆる政府の資金と民間の資金を融合させていく、呼び水として民間資金を誘導していくブレンデットファイナンスにも触れてはどうかいう点です。この有識者会議では、ここへの関心はこれまで薄かったと思います。しかし、5月に、株式会社脱炭素化支援機構という大きな組織を作る法律改正もなされました。日本でも、ブレンデットファイナンスを脱炭素もしくは経済移行のために考えていくタイミングであろうと思います。ブレンデットファイナンスについての言及を入れ込むことを提案したいと思います。

 ニつ目はカーボンクレジットです。先ほどGXリーグのお話が出てまいりました。その中でも日本的なカーボンクレジットの議論が進んでいくと思います。他方、アジアに目を転じますと、シンガポールでは、クライメートインパクトXというカーボンクレジットの取引所構想がどんどん進んでおり、プラットフォームも開設されました。日本のトランジションにとっても、このクレジット問題というのは非常に大きな鍵を握るところであると考えます。サステナブルファイナンスの傘のした、枠組みの中でこのカーボンクレジットを取り上げてはどうかというのが2つ目の提案です。

 最後3番目は、来年G7の議長国は日本が務めることになるわけです。先月、5月20日にドイツのペータースベルクで財務大臣・中央銀行総裁会合がありました。このコミュニケを拝見しますと、ファイナンシャルマーケットポリシー・アンド・サステナビリティというチャプターが設けられておりまして、パラの22から27にサステナブルファイナンスに関する大変充実した内容が書き込まれております。

 具体的には、例えばG7はG20サステナブルファイナンスワーキング・グループのロードマップを支持するということが明言されています。FSBのロードマップについてもこれを支持すると書かれております。

 したがって、この有識者会議のレポートを今のタイミングで出すのであれば、来年のG7で日本が議長国を担うということを見据えて、「このモメンタムを継承する」、あるいは「継承したい」というニュアンスをはっきりと打ち出すということが良いのではないかと思います。このレポートが英語になって、内容が海外に伝播していく際にも、大変重要な点なのかなと思っております。私からは以上です。

【水口座長】  いえいえ、ありがとうございます。なるほど、メッセージ性は大事ですよね。おっしゃるように、このモメンタムを日本としても推進するんだというそのメッセージをきちんと出すというのは重要なのかなと思いました。

 次々にお手が挙がっていますので、最初に声を上げていただいた鳥海さん、それから、手を挙げた順番で事務局の方がちゃんとメモしていただいていますので、小野塚さん、井口さん、藤井さん、渋澤さん、手塚さん、こういう順番で参りたいと思います。まず鳥海さん、お願いします。

【鳥海メンバー】  ありがとうございます。まずは今回これだけ網羅的・体系的な報告書という形でドラフティングしていただいた事務局の皆様に感謝申し上げたいと思います。

 その上で、今、足達さんからも御指摘あったとおり、これだけ世界でいろいろな動きが速くなっていて、いろいろな項目が挙がってくると、昨年挙げた項目よりも追加的にこういうポイントも入れた方がいいんじゃないかというのが出てきている中で、一つこれは私からの提案なんですけれども、この今回のような書き方、ある程度記述を続けていくということだけではなくて、例えば項目を整理して箇条書とか表のような形でポイントを書いて、そのアップデートとかがもうちょっと機動的にできるようにして、1年に1回、議論の結果こうなりましたということだけではなくて、もうちょっと機動的なアップデートができて公表していける、あるいは新たに発生した課題であれば追記して、これが継続している課題であるとか、これが新しい課題であるとかというふうにした方が非常にタイムリーに出す、アピールしていくということもできますし、あるいは軽重を少し修正するとか、あるいは事務負担とか考えても、少しやりやすいのかなというふうに思ったりいたしました。感想めいて恐縮です。

【水口座長】  ありがとうございます。箇条書にして分かりやすくということと、機動的にというのは、別に1年に待たなくても、変わった都度ということですか。

【鳥海メンバー】  そうですね。全部書き直すと、結構それは労力的にも大変だと思うんですけれども、そのポイントについて、ここは今回こういうふうにプログレスがあったというようにしていった方が、より課題に対応した形でインパクトを出せるんじゃないかなと思いました。

【水口座長】  ありがとうございます。1年に1冊報告書を出すというのはちょっと古いタイプの考え方かもしれませんね。反省します。

 それでは、小野塚さん、お願いします。

【小野塚メンバー】  ありがとうございます。小野塚です。すみません、音声だけで失礼いたします。

 何点かあるんですけれども、まず全体感というところで一つ、これは大きなテーマとして今回必ずしも盛り込むというポイントではないんですけれども、やはりサステナブルファイナンスというのは、地域性が高いということもあると思います。前段のソーシャルボンドのところで北川先生がお話しくださったように、社会の課題というのは、欧米、アジア、日本それぞれ違う中で、やはり日本がどういう世界を描いていくんだという議論を冒頭で入れ込む、今回でなくてもそのタイミングがどこかにあっていいのかなというふうに期待をしてます。また、これはテーマでもあります省庁間の話とか、政府の見据えている先とか、そういったところもやはりあることで、日本としてのサステナブルファイナンスの有識者会議として、日本としてどういう方向に力を入れていくんだという、グローバルな課題を踏まえたコンテクストを入れ込んだほうがいいんじゃないかなと思います。将来的に議論も含めてお願いできればと思いました。

 2つ目以降はもう少し細かなお話でして、10ページ目に、水口先生もお話になったアセットオーナーの話が出てくるかと思うんですけれども、こちらに関しては、従来どおり、年金基金、それから、生保というところもアセットオーナーとして中核にあると思うんですが、インパクト投資の話をすると、公的な機関がお金を出していたりとか、あるいは企業自体がアセットオーナーでCVCのような形でお金を出しているということがあります。ぜひ企業という側面を含めていただくと、恐らくこのサステナブルファイナンス、インパクト、アセットオーナーの文脈に企業の方が少しアンテナが立つような形になるかなと思いました。

 それから、個人に対する投資の機会の提供というところと、あと、横断的課題というところですが、最初の方でインベストメントチェーンのお話が出てきていますが、やはりアセットオーナーの先には最終受益者としての個人がありますので、インベストメントチェーンのアンカーの存在としての個人というところを少し書き加えていただきながら、例えば最初の方に出てくる図2のところにも、アセットオーナー、投資家というところに、もしかすると個人というようなアイコンが入るといいのかなと思いました。

 最後のところで、サステナブルファイナンスの研修等というところですけれども、この辺りもやはり金融リテラシーというところと絡めて、個人がサステナブルファイナンスへの期待を年金基金とか、あるいは投資信託を選ぶ際に反映できるように、金融リテラシーの中にこういったものを入れていくということも一つ視点かなと思いました。

 最後のポイントとして、私のほうからは、横断的課題のところのインパクトと、それから、専門人材に絡むというところで、一つ個人的な御報告も含めてお話を差し上げたいんですが、私、今年の6月末をもちまして現職を退任いたしまして、より大きな形でサステナブルファイナンスに関われるようにということで独立を予定しております。

 その中で業界における活動というのを深めていきたいということで、一つは、北川先生と御一緒させていただいていますジャパン・スチュワードシップ・イニシアティブというインベストメントチェーンに係る活動、もう一つは、実は最近新しく立ち上げました社団法人科学と金融による未来創造イニシアティブという団体の代表理事に就くことになりました。こちらでの肩書でこの会議では継続させていただきたくお願い申し上げます。ここで御報告する趣旨としましては、実はこの有識者会議を受けて、やはり金融と、それから、科学、いわゆるイノベーションとかそういったことを起点にした社会実装というのが、例えば先ほどお話に挙がったクライメートテックのような分野で重要であるとの認識を強く持ったことがきっかけとなったためです。一方で、科学やアカデミアと金融では、やはりお互いがお互いの言葉を話さないという、距離感が相当あるなという課題感もあり、こちらにもいらっしゃる渋澤さんと、足達さんにも御協力いただきながら、勉強会なんかを通じてこの2つの世界をくっつけようということを過去1年ほどしてまいりました。

 それをこのたびより活動を加速化させるということで法人化いたしました。団体のミッションとして、科学と金融分野における資金循環を目指して、まずは二つの世界の距離を縮める、場づくりを挙げています。ですので、クライメートテックの部分では、科学あるいはテクノロジー分野と金融の在り方、資金循環というような言葉をいれてはどうかと思いました。また、当団体では場づくりに加えて人づくりも挙げております。それを踏まえて26~27ページの専門人材のところに関しては、大学等での金融関係講座とありますが、金融の分野に詳しい人に加えて科学の分野に詳しい人をコラボレーションして両方で活用できるような、トレーニングの発想等も含めて御検討いただければと思いました。なかなか1人の方が両方の分野に特化する、専門性を高めるというのは難しいという前提に立って、2つの世界が距離を縮めて融合し、サステナブルファイナンスを促進するといいなと思っております。当団体も実質的な人材育成に関して貢献できればと思います。

 多少長くなりましたが、ありがとうございます。

【水口座長】  ありがとうございました。個人のサステナビリティ選好って大事ですよね。それと、どういう日本を目指すのかという一番最初の話については、有識者会議として一度議論してもよいのかなと思いました。

 それでは、順番に参りたいと思います。井口さん、藤井さん、渋沢さん、手塚さん、それから、林さんというふうに行きたいと思います。井口さん、お願いします。

【井口メンバー】  井口です。よろしくお願いします。先ほどしゃべりませんでしたが、北川先生、どうもありがとうございました。

 最初、この報告書のタイトルは、先生もおっしゃっていましたが、フォローアップといった形でいいんじゃないかと思っております。そして、フォローアップしているうちに最初の報告書で足りない事項があれば、足していくという形で進めていくのがいいのではないかと思っております。

 そして、次に、今御説明いただいたこの報告書、レポートについてのコメントです。前回も申し上げましたが、第1回目の報告書の取組を展開していただき、大変感謝しております。

 3点ほどコメントがありまして、最初、9ページですが、上から2段落目辺りで運用全般の在り方を論じていらっしゃると思うのですが、最初にエンゲージメントと書いていらっしゃいます。ここは運用の全般をやっていらっしゃるので、エンゲージメントという言葉は不要なのかなというふうに思いました。もしかしたら、誤解あるかもしれませんが、そういうふうに思いました。

 あと、最初の報告書では、「スチュワードシップ・コードの受入れに加えてPRIの署名、TCFDでの開示」となっているんですが、今回はPRIにかなり全面的に頼り過ぎているというか、全面的出過ぎているんじゃないかなと思います。その下のネットゼロアライアンスのようなテクニカルな炭素排出量の計測を話し合う団体などはいいと思うんですけれども、運用方針の根幹に関わるESGの取組を民間の1団体に依拠し過ぎるということはあまりよくないのではないかと思います。もちろんそういうところと対話するというのはいいこととは思うんですが、依拠しすぎるのはよくないのではないかと思っています。

 先ほど北川先生のソーシャルボンド指標の中での御説明にもありましたように、国際的な動向を見つつ、日本独自の施策が必要で、そういったことに対するプログレスレポートを策定していくことが重要でないかと思っています。PRIの活動は個人的にはすごくリスペクトをしておりまして、国際的な動向を知るということで、PRIの加盟自体を否定しているというわけではありませんが、特に、これは日本国のレポート、政府のレポートですので、まず順番としては、一義的には政府の所管であるスチュワードシップ・コード、この中には前回の改訂でESG要素が含まれていますが、これへの署名を促進する、これはアセットオーナーさんの署名を促進するということも含みますが、次に、これに準拠しているかどうかをしっかり見極めるという仕組みをつくっていく、これは英国ではティアリングシステムなどを導入していますが、そういったことですね。それで、必要であればコード自体を高度化するといったことが、この報告書内の中では求められるのではないかと思っています。

 あとは、細かい点なんですが、10ページの下から2段落目に連絡会議のようなことを書いていらっしゃるんですが、今まではこういう機能を担うのはスチュワードシップ・コードの策定の会議というふうに思っておりましたが、何か、もし教えていただけることがありましたら、教えていただければと思っています。

 最後、3点目です。こちらも短いんですが、14ページ辺りに記載のあるデータは、前回も申し上げましたが、非常に重要で、ポートフォリオの炭素排出量を見て、それに応じてシナリオ分析をして、機関投資家や金融機関が対応していくということになると思うんですけれども、現状この数値というのはほとんどESGデータ機関の推計値ということになっていて、推計値が変わるとかあるいは実績値になってしまうと変わってしまうということが起こっていると思うので、こういうJPXさんのお取組、データベースを少なくとも上場企業において作るというのは非常に重要ではないかと思っております。

 以上です。ありがとうございました。

【水口座長】  ありがとうございました。PRIへの署名を進めることがいけないということではないと思うんですが、スチュワードシップ・コードが落ちているというのは、御指摘のとおりなのかなと思いました。ありがとうございます。

 それでは、藤井さん、お願いします。

【藤井メンバー】   水口座長、ありがとうございます。それから事務局の皆さんには、極めてリードタイムが短い中で大変な作業をありがとうございました。

 コメントといたしまして、ややハイレベルなものにとどめたいと思います。ローレベルなコメントは結構細かいものがあるんですけれども、それは事務局さんとまたバイラテでメールを差し上げます。

 ハイレベルなものということで、一つは冒頭に座長からいただきました、構成についてです。この報告書の構成は、基本的に昨年6月の報告書の構成を踏襲しています。それ自体は否定はしませんが、この分野は非常に動きが速いので、まず最初のところで、なぜ前回の報告書の構成を踏襲したのか、それで過不足がないのか、あるいは新たなものを足すのか足さないのかという評価が必要だと思います。そうしないと、仮に来年以降アップデートが行われるというときに未来永劫この構成が踏襲されてしまうリスクがあるように感じております。その点で言いますと、金融機関の投融資支援や枠組みの議論のところにとりわけ大きな動きが見えていて、幾つか事例が挙がっているわけですけれども、そういったものの中で新たに構成に加えるべきものがあるのかないのかと、なかったという判断なのかというのは明確にした方がいいと思います。

 それに関連して、以下2点申し上げます。一つは足達さんからも御意見いただきました、カーボンプライシングあるいはカーボンクレジットのところであります。海外におきましては、EUのETS取引の対象拡大や国境炭素調整の議論が進んでいるとか、あるいはGXリーグでも、9月以降国内実証取引を開始するということが上がってきています。企業さんあるいは金融機関の関心も非常に高いところですので、この点については何らか記載をいただきたいと思います。それが1点です。

 もう1点は、全体の記述の中でリスク管理の記述が薄いのかなというふうに思っています。18ページのところの金融機関のところでリスク管理について若干の記載がありますし、先ほどの西田さんの御説明の中では、かなりリスク管理について言及しておられると思いましたが、また、本会議の中でサステナブルファイナンスを支援するという方向性は了解した上で、IPCCのAR6報告書でも今後の物理的リスクの言及がかなりされていることや、先々週公表されたBOEの気候変動シナリオ分析結果報告書でもリスクのところをかなり深掘りしていること等を踏まえますと気候変動のリスク認識が高まっているということについて相応に反映した方がいいというふうに思っています。

 ローレベルのコメントにつきましては、事務局さんに個別にメールを差し上げますので、私のほうからは以上でございます。ありがとうございました。

【水口座長】  御配慮ありがとうございます。また、構成のところは確かに重要ですよね。おっしゃるとおりだと思います。

 それでは、渋澤さん、お願いします。

【渋澤メンバー】  ありがとうございます。この報告書をまとめていただいて事務局の皆さん、本当にありがとうございます。感謝いたします。

 私からは、名称あるいは最初のメッセージで大切だなと思っていることがあります。それは、私が過去半年間新しい資本主義実現会議に参加させていただいた、その関係であります。委員の誰一人も新しい資本主義という言葉も使っていただけなかったし、報告書にも入ってなかったので、やっぱり新しい資本主義というのはあまり伝わってないなというのは率直な反応です。報道を見ると、目新しいものがないという批判もあります。今まで政府が取り組んでいたことが結構かなり網羅されていますので、それがピンボケなっているということもあるかと思うんですけれども、新しい資本主義を実現させるためには当然ながら新しいお金の流れをつくる必要があります。それはもちろんサステナブルファイナンスにつながると私は理解しております。

 分配政策なのか、成長政策なのか分からないといわれますが、大事なことはもちろん成長と分配の好循環です。まさにそれがサステナブルファイナンスだと思っております。

 初めて政府の総合的な経済政策の討議に参加させていただいて気づいたことがあります。新聞報道だけだとやっぱり細部に書いてあることが取り上げられなく、細部に何が入ったかということが、まさに新しいところだと私は理解しました。

 岸田総理が先ほどの成長と分配の好循環に加え、なぜそもそも新しい資本主義が必要かということについて、『文藝春秋』の寄稿とかロンドンの演説で、外部不経済に取り組むということをはっきりとおっしゃっています。これがコメンタリーとか報道にはクローズアップされていませんが、とても大事なことだと思うんです。

 要は、新しい資本主義は何かというと、取り残さない、包摂性がある、インクルーシブな資本主義だと思うんです。それは新しくないです。けれども、今の新しい時代にはとても大切なことだと私は思っていまして、このメッセージを今度8月末にアフリカ開発会議のTICAD、来年G7などで日本から世界に発信することがすごく大事だと思っています。

 先ほど報告書のご説明でISSBのことが紹介されましたが、御存じだと思いますが、拠点がフランクフルト、ヨーロッパで決まっていて、アメリカの拠点がアメリカ合衆国でなく、カナダ、モントリオールになりました。一方で、アジア拠点をどこかに置くかということについて非常に熾烈な戦いが行われていると察します。当然日本は手挙げています。そして、中国も色々と働きかけているみたいです。そう考えたときに、やはりサステナブルのファイナンスの要である、非財務的な情報開示のアジアのセンターは日本なんだということを示すこともすごく大事なんじゃないのかなと思っております。

 ですから、外部不経済、取り残さないという意味のインクルーシブな資本主義のために必要なサステナブルファイナンスというような、本報告書の名称や導入は議長お任せいたしますが、ただのフォローアップという位置付けより、新しい時代のために必要なファイナンシングだということのメッセージ性を明確に冒頭に入れていただければなと思っております。

 新しい資本主義の中でメディアが注目していただいているところは、資産所得倍増であって、本当にすごく大事なことだと思います。資産所得倍増するためには、全国民が参加しなければあり得ないと思います。そういう意味では、誰でも使いやすい制度である積立NISAの拡充を実現会議で提案しました。

 けれども、やはり全国民といったときに、自分はお金を殖やすことは考えていない人たちも結構いると思います。しかし、その反面、自分の子供たち、孫たちがきちんと豊かな生活を送れるように、まさにサステナブルの精神に賛同していただける方も結構いらっしゃると思います。そういう意味では、サステナブルというキーワードによって、今まで資本市場に参画しなかった、ファイナンシングのスキームの中に入らなかった方々が入るような道筋を描くことが大切なんじゃないかと思っています。

 資産所得倍増のプランは年内にまとめるということになりますので、その中にサステナブルというファイナンスの側面を入れることは可能であり、ぜひ入れていただきたいと思っております。

 先ほど小野塚さんがおっしゃったとおりだと思っていまして、よくアセットオーナーと言いますけれども、最終的なアセットオーナーは個人だと思います。個人はユニバーサルアセットオーナーにはなり得ませんが、ユニバーサル、どこでもいるアセットオーナーであります。その最終的なアセットオーナーである個人をサステナブルファイナンスの世界の中にきちんと取り組むことがすごく大事だと思います。それが先ほどにお話があったように、法的根拠とか、受託者責任にもつながるかなと思いますので、個人は極めて大事な存在です。

 また、新しい資本主義の細部の事項で、プロダクトガバナンスという概念も明記されています。ちゃんとした金融商品を個人に届けましょうということですが、サステナブルファイナンスのいわゆるガイドラインみたいなものでウォッシングではないことを入れ込むのが資産倍増プランで必要だと思っております。

 ちょっと話が長くなってしまったので最後の一言ですが、今回の新しい資本主義の実現会議の実行計画、つまり、政府の総合的な経済政策の中で、ある言葉が初めて現れたと思っています。これにもメディアは注目しませんでしたが、「インパクト」です。「インパクト」という言葉が何か所かのところで明記されています。

 実現会議の討議が始まった当初、大企業を代表する委員から、新しい資本主義では新しい企業価値の定義が必要という話をされました。要は、自分たちがやっていることが常に時価総額あるいは財務的な価値でしか評価されていないということにちょっと思うところがあるようです。であれば、非財務的な価値の可視化を高める意識が大事ではないでしょうかとファローの発言で、インパクト会計についても検討事項として御紹介しました。

 結果的に、提言書の中ではインパクト投資を推進するという項目が設けられ、その中で先ほど御発表がありましたソーシャルボンドのことも明記されていますし、官民などでインパクトファンドなどを推進するという内容も明記されました。当初の新しい資本主義は、先ほど足達さんが本委員会でも示されたように、かなりドメスティック、国内向けの目線で描いてありました。ただ、成長と分配の好循環がグローバルでなければ、それはサステナブルではないと最初から主張させていただき、最後の最後になって、グローバルヘルス(国際保健)も個別事項として組み込まれ、ただ、いいことしていますよねということではなくて、きちんとインパクトを測定するということも文言として入っています。

 ですから、そのような政府の意思がインパクトということに関して、非財務的な価値、そして、サステナブルということを新しい資本主義の文脈の中で描いてありますので、ぜひ、これは議長に委任しますけれども、名称とか冒頭の導入のところに、いかに新しい時代のために必要なファイナンシングであるということをはっきりとを示していただければなと思います。すみません、長くなりました。

【水口座長】  ありがとうございます。3ページのところに新しい資本主義についてはちょっと出ていますけれども、資本主義の中核が資本市場だとすると、サステナブルファイナンスというのはやっぱり新しい資本主義の中核なんだろうと思いますし、まさに外部性ってインパクトという話だと思いますので、そこはきちんと書いていければと思います。

 それでは、手塚さん、お待たせしました。手塚さん、お願いいたします。

【手塚メンバー】  ありがとうございます。大変網羅的なアップデートをいろいろしていただいた資料で私自身も大変勉強になりました。どうもありがとうございます。その上で何点かコメントさせてください。

 まず第1に、19ページとか23ページとかにトランジションファイナンスに関する記述があったと思うんですけれども、前回もここで御報告申し上げましたけれども、私どもJFEスチールは、産業界セクターでは最初のトランジションボンドの発行を発表いたしまして、実は昨日発行が終わっています。経産省のトランジションボンドに関するモデルプロジェクトだということもあって、大変御好評いただきまして、当初予定の300億円の調達ができておりますので、実感としてトランジションファイナンスの意味合いというのを感じているところです。

 それと関係してなんですけれども、実は先週私、世界鉄鋼連盟という世界の鉄鋼企業の集まりの団体があるんですが、これの環境委員会がヨーロッパのブリュッセルで開催されまして、そこの場に参加して、私どもの鉄鋼業として最初のトランジションボンドの発行のケースについて、日本のクライメートトランジションファイナンスのガイドラインというものがどのように立てつけられていて、その中で鉄鋼のロードマップというセクターロードマップがどのように作られていて、それにのっとってまさにこういうトランジションファイナンスが行われ始めているというケースを御説明したんです。

 そしたら、非常に受けました。要するに、ともすると理想主義的なEUタクソノミーみたいな世界に対比して、日本のこのトランジションファイナンスの考え方というのは、特にhard-to-abateな産業分野、つまり、一足飛びにはグリーンには行けないんだけれども、いろいろな手を組み合わせて漸次そういう方向に持っていくと。その道筋を描きながら、その道筋をたどるのに必要なファイナンシングが行われていくということをいかに担保するかということをよく政府と産業界が議論してつくられていますねと、こういうような反応した。主に来ていた韓国とかアルゼンチンとかインドの鉄鋼会社の人たちが、大変勉強になったので、ぜひこのコンセプトを自分たちでも勉強して、自分たちの国それぞれに戻って、国ともそういう話をしたいというような反応だったんです。つまり、資金の需要家側、特に大量排出産業である重化学工業側の立場から見たら、このアプローチというのは大変有益だという意見がいっぱい出ていました。

 したがいまして、先ほどもどなたかおっしゃっていましたけれども、日本の場合は、こういう日本から独自の考え方で、特にこういう産業集積が大きい国の中でフィットする形のサステナブルファイナンスの一つの考え方が提唱されているわけなので、これをぜひ英語にして国際展開をしていただけると、裾野が広がると同時に日本の評価が上がるのではないかというふうに実感した次第でございます。自信を持ってケーススタディでやってみたら受けたという実績がありますので、ぜひやっていただければよろしいんじゃないかと思います。

 2点目は、最後の方に今後の課題として人材の問題が出ています。これは私もこの会でも申し上げていまして、要するに、報告する企業の立場からすると、読み手の側の金融セクターの中にもきちんとそれを理解いただいて評価いただけるような人材がそろわないとやっぱり話がかみ合わなくなってくるということを申し上げたところです。

 これは実は情報の出し手の側も受け手の側も同じ状況でございまして、東証のプライム市場でTCFD開示が要件になってきたということもあって、今、私もメンバーになっておりますTCFDコンソーシアムでは、800社以上の企業がTCFDコンソーシアムに加盟いただいております。従来、そこで開示側サイドのガイドラインというかガイダンス、それから、セクター別の補足的なガイダンスというようなものもつくってきたわけなんですけれども、これだけ参加企業が増えてくると多分それだけでは足りなくなってくると思っています。したがって、今、TCFDコンソーシアムの今後の展開という議論を始めている中で、いかに先行企業の知見とか事例とかを含めて裾野を広げていくか、開示をする側の企業の中にそれが自らできるような人材をいかに育て増やしていくことができるかと、そういうことに貢献できないかというような議論を始めております。

 まさにこの報告書の一番最後の方にあります、金融機関側の中で人材を育成し、場合によっては検定試験のようなものも含めてやっていくかというようなことが書かれていますけれども、これは出し手の側と受け手の側両輪でもってそれが広がっていくという必要があろうかと思いますので、ぜひこのTCFDコンソーシアムの中にも、人材がたくさんいますので、どうやってブリッジをかけていくかというようなことを含めて御検討いただければと思います。

 私からは以上です。

【水口座長】  林さん、小沼さん、岸上さん、吉高さん、長谷川さんという順番で行きたいと思います。時間が押してきてしまいました。御配慮いただければと思います。では、林さん、お願いいたします。

【林メンバー】  ありがとうございます。手短に申し上げます。もう皆さんいろいろ様々な点については言及されているので、私は、今回のレポートについて改めて期待することを申し上げたいと思います。

 いろいろな省庁で、先ほども各省庁間の連携というお話をしましたけれども、いろいろなところで同時多発的に起きているので、我々の社内もそうですし、それから、国内の市場参加者もそうですし、あるいは海外の市場参加者にとっても、このレポートというのが、日本で今サステナブルファイナンスで何が起きているかという羅針盤みたいなものじゃないかと私は勝手に位置づけているので、物すごく詳細に書くというのもあるかと思うんですけれども、やっぱり全体像が見えるようなもの、それと、1年に1回かどうかは分かりませんけれども、かつすぐにアップデートというのも多分難しいと思うので、ある程度、年2回なのか何か分かりませんけれども、ポイントだけアップデートできるような書式みたいなものは、図でも表でもいいんですけれども、あったらいいかなと。本当に内外の関係者が今どこにいるのかということが分かるようなそんなものになったらすばらしいのではないかと思っております。皆さんおっしゃいましたけれども、やはり多くの関係者が、今どこに向かっているのかというのが一覧で分かるようなものにしていただけると、このサステナブルファイナンスという日本にとって非常に重要なものが進みやすくなるんじゃないかと思っております。

 名称については、センスがないので分かりませんけれども、継続的に出すんだというニュアンスが伝わるようなものにしていただければいいと思います。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。そういえば、EUにはサステナブルファイナンスのホームページがあって、そこからいろいろなところに飛んでいますよね。ああいうのもいいかな。

 それでは、小沼さん、お願いします。

【小沼メンバー】  ありがとうございます。私からは1点、個人の部分について申し上げます。個人というよりはむしろ国民全体へのメッセージになりますが、やっぱりサステナビリティのことが分かりやすく伝わるというのがある程度前提になると思う中で、特に最近大学生、高校生といった若い人たちの教育の現場でもいろいろな変化あるいは社会の要請があって、金融経済教育的なことをもっとしっかりやっていこうという動きになっていると思います。

 その中で、主眼が資産形成ということだと思いますけれども、サステナビリティという観点でいうと、資本市場を通じた社会参画、社会課題解決に向けて頑張っている会社を一国民として応援するのだというような、そういった気持ちに皆さんがなっていただく、そういったうまい情報提供の仕方ができればいいと思いますし、あるいは場合によっては職域での教育みたいなものも効果があるのかもしれません。会社の中で従業員の皆様がこういうセンスを高めていくというような仕組みも出来るといいなと思っています。

 そのようなことをこのレポートを読みながら考え、何かいいことがあれば、いいやり方があればと思っておりますので、引き続き、皆様、御支援も含めていただければなというふうに思います。ありがとうございます。

【水口座長】  重要な御指摘ありがとうございます。金融教育の主眼は、資産形成だけじゃなくて、金融を通じて将来の社会のサステナビリティに関わるんですよということをきちんと資金の出し手の方に伝えないといけませんね。そう思います。

 それでは、岸上さん、お願いいたします。

【岸上メンバー】  岸上です。よろしくお願いいたします。

 最初に全体像のところですけれども、この有識者会議が昨年の6月の報告時点で終わっていると認識されていらっしゃる方も一定数いらっしゃるのが現状かと思いますので、今回の報告書が出されるタイミングで、この有識者会議の存在と役割を改めて冒頭に説明と発信を意識することが重要ではないかと思います。

 もう少し細かい点に移りますと、2ページ目のところで、TNFDをはじめとしてその他の課題にも目を向けるべきというような言及があるかと思います。TNFDに関しましては、気候変動に引き続き環境面の強い視点になるかと思います。一方、例えばビジネスと人権の指導原則は昨年で策定から10周年を迎えましたが、今後10年の優先事項の一つとして、金融機関、投資機関、取引所を中心とした金融市場のプレーヤーの人権への取組が挙げられておりまして、それに基づいてここまでの10年の進捗なども報告されております。欧州の金融機関に対する規制に基づく開示なども考慮しますと、Sの視点での取組も金融庁としても必要性を発していくことが必要になってくるのではないかと思われます。

 また、皆様も言及されていた箇所ですが、9ページ目のアセットオーナーのところに関してです。現状の文書を読んでおりますと、企業の持続的な成長を促すという役割が強調されていると思いますが、そもそものアセットオーナーの役割としては、決してそれが最終目的ではなく、加入者や受給者の将来資産の運用、そしてその加入者が生活する将来的な社会環境が持続的に存在するために行動を取ることか思います。なので、その役割の延長線上に、運用上で持続的な経済、企業の成長も促すという背景が必要ではないかと思います。また、現状では企業にフォーカスしていますが、アセットオーナーの役割としてはこれは全アセットクラスにおいてということになるのではないかと思いましたので、追加でコメントいたします。

 あと、2点、掲載箇所を変えた方が良いと思われるところに関してコメントします。

 19ページで分野別ロードマップへの言及が金融機関のセクションの中に入っているかと思いますけれども、少し唐突感を正直感じました。こちらの産業界の取り組みは、金融だけではなく、投資においても関連してくるかと思いますので、別の形でどうやって産業の取組がサステナブルファイナンス全体として関係してくるのかを整理した方が伝わるのではないかと思います。

 同様に21ページですけれども、こちらもファイナンスのセクションの中で、世の中の動向などへのフォローアップをしていく重要性が掲げられていますが、どちらかと言いますと、全体的に投資の部分も含めまして様々な状況のフォローアップが必要だと思いますので、この内容は最初か最後のところに持ってくるほうが意義があるのではないかなと思います。

 その他の細かい点は、事務局の方に直接お送りさせていただければと思います。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。確かにこの報告書自体がフォローアップだということと、おっしゃるように有識者会議自体の位置づけというところですかね。そのとおりだと思いました。

 それでは、吉高さん、お願いいたします。

【吉高メンバー】  どうもありがとうございます。既に皆さんいろいろおっしゃっていただいているとおりだと思いますし、私もよく、「サステナブルファイナンス有識者会議がまだ続いているの?」と言われることがあるので、ぜひ最初にこの報告書の位置づけとともに入れていただきたいと思っておりました。

 細かいことになってしまいますが、ESG関連情報のデータの集約についてです。図2のポンチ絵にありますが、アセットオーナーや大手企業等を中心とした情報の集約のように見えます。地域金融や自治体の方々とお話しすると、ESGの最新情報はどこに行けばとれるのかとよく聞かれます。情報の集約というのは、アセットオーナーや企業だけではなく、先ほど少し水口先生もおっしゃいましたけれども、広い範囲で利用できここに行けば必ず最新があるという情報プラットフォームとなるような、ポンチ絵にしていただきたいとは思っております。

 また、今回の議論は気候変動が中心になりましたけれども、格差、ダイバーシティ、貧困という言葉が出てまいります。しかし、ダイバーシティにおいて、特にジェンダーギャップというのが我が国では大きな問題であろうということでは、男女賃金格差の是正という言葉しかでてきません。気候変動以外の社会課題のそれぞれの言葉に関しましては、もう少しきちんと整理して載せることが今後に向けて必要であると思いました。

 それに加えまして、TNFDに関してメンションしていただいたことは重要だと思いますが、今年のCOP27の傾向を考えますと、先ほど藤井さんもおっしゃいましたけれども、物理的リスクとか適応ファイナンスなどが話題になると思われます。また、海洋プラスチックという言葉しかありませんが、先般、UNEPのFIが海洋関連分野の持続可能な資金調達に関する報告書を出していまして、海洋国家日本としては、海洋資源に関する資金調達に関して打ち出すこともあるかと思います。もちろん、これらのことに触れるのが、今の段階で出したほうがよいか、それとも、次回なのかというのは判断がありますが、私は先に出した方が日本の独自の気候ファイナンス戦略として強みになるのでとは思っています。

 次に、カーボンクレジットについてです。私も足達さん、藤井さんに同意ですが、ただ、COのインパクトとして測れるところは今後資産の評価として進んでいくと思いますが、将来的に商品が出来た際にもあるCO削減というのは、日本の企業にとって非常に重要だと思っていて、ここはカーボンクレジットの世界で測れないところです。ですので、25ページですが、環境インパクトの計測に関しましては、この報告書では、テックのスタートアップ企業向けに書かれているように見えますが、日本企業全体にも関わることですし、既存の中小企業もこのようなテクノロジー開発もしていくと思いますので、価値の評価軸の適用対象をもう少しこれを広くとって示していただきたいと思います。特に、このような評価軸は地域金融、中小企業のファイナンスにとっても有益だと思っております。

 最後に、フォローアップについてですが、先般実施されました脱炭素先行エリアの選定にも関わりまして、金融の役割が重視されています。これらの先行エリアを構築する際、環境省の地域の環境局や経済産業省の地方局も支援しているようですが、地域金融の役割の重要性が言われているにもかかわらず、地域の財務局はほとんど関わっていらっしゃらない。先ほどご説明のあった脱炭素支援機構のファンドの話も周知されているのでしょうか。私自身もいろいろな信金など地域金融のお取組を聞きますと、とても積極的に進めているところもあります。もっと地域の財務局などが地域金融の脱炭素行動についてフォローしていけるような体制にすると、地域金融のサステナビリティが高まるのではないかと思います。

 フォローアップにおいては、例えば、地域金融に関する分科会をつくって、地域金融のサステナブルファイナンスのあるべき姿を検討しそこでベストプラクティスを共有していくとか、この報告書に反映していく、などを入れていただけると大変よいのかなと思っています。ありがとうございます。

【水口座長】  ありがとうございます。それでは長谷川さん、お願いします。

【長谷川メンバー】  ありがとうございました。報告書の取りまとめ、どうもありがとうございます。この報告書でも書いていただいているとおり、サステナブルファイナンスにおいてはインパクト指標を活用する取組みが非常に重要であって、また、その課題もこの報告書に整理されているとおりだと思っております。

 経団連は来週、インパクト指標を活用した企業と投資家の建設的な対話に関する報告書を公表する予定です。その問題意識としては、企業のパーパスや長期目標、戦略に関する投資家との対話において、これまでのESGのKPIのみでは企業の中長期的なビジネスモデル、サステナビリティに関する市場機会もしくはリスクに関する対話が十分行われてこなかったということを指摘しております。今までのESG投資のKPIを一歩進めた形でのインパクト指標、特にSの分野、例えばヘルスケアやレジリエンスなどで活用することで、そうした企業が期待している、または投資家も期待しているような中長期的なビジネスモデルを核とする対話エンゲージメントが行われるようになるということをまとめております。そういった視点も入れていただけるといいのかなと思いました。

 加えて、横断的課題の専門人材の育成について、これはまさに経団連のいろいろな委員会の場でも指摘されているところでございます。グリーン人材やサステナビリティ人材などいろいろな言われ方をしておりますけれども、これはいわゆる大学生向けの教育だけではなく、今いる社員に対するいわゆるリカレント教育に対するニーズも非常に高く、経団連のトップと国公立・私立大学のトップで構成している産学協議会というところでアンケート調査を行って、そこで企業側のGXやサステナブルファイナンスに関するニーズを調べ、それに対して大学が今どのような講座などを提供しているかということを簡易的に調べたのですが、その結果、大学にも実はもう既にいろいろな講座があるということが分かりました。企業の方は、もうこんなにあるんだということに驚いていらっしゃいました。

 そこで課題として思ったのが、そういったことに関して、ワンストップのマッチング機能のようなところがやはり欠けていると思いました。JPX様にお願いするのかどうか分かりませんけれども、こういった今後のサステナブルファイナンスやサステナビリティに関するリカレント教育のニーズはますます高まると思いますので、大学などの教育機関と企業のニーズをマッチングする場も必要ではないかというふうに考えております。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。一通りいただいたらもう時間がだんだん迫ってきましたけれども、まだお手を挙げていただいていない委員の方もおられますけれども、もし何か御意見があればいただきます。無理に指すことはしませんけれども、よろしいでしょうか。

 あるいは、すみません、一巡しかしていないので、もう一言言いたいという方がおられればいただきますが。

 では、一旦ここで、西田さん、どうですか。今の話を聞いてのコメントなど、感想があれば頂ければと思います。突然振ってすみません。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  冒頭水口先生からお話ありましたとおり、次回は6月27日ですので、2週間ちょっとお時間がありまして、今回議論いただいたことをできるだけ最大限踏まえて文章を修正させていただければと存じます。今日かなり幅広く御意見いただきましたので、全体構成もそうですし、大きく欠けている部分とか足りない点を含めて、できるだけ反映させていただければと思います。

 1点、全体像を、アジャイル型といいますか、更新がしやすいような形で出していく、1年に1回ということじゃなくて順次差し替えができるようにというようなお話があったか思います。報告書を頻繁にというよりは、項目を一つ一つ入れ替えられるように表等を立て付けていくことが考えられると思いますが、全体的なピクチャーを併せて次回御議論いただけるよう準備をしたいと思います。

【水口座長】  アジャイル型というのはそのとおりで、よく縦割りといいますけれども、縦に省庁が並んでいますと、一方で横に課題があります。ソーシャルボードのように横に連携していただいたものがありますが、たとえばボンドはボンドというように、課題ごとにホームページがあったら、その課題ごとにここまで進んだということが各省庁横断で見えて、だんだん日本の組織も横串が刺されるようになっていいなと今ふと思いました。

【高田総合政策課長】  ありがとうございます。金融庁総合政策課長の高田でございます。本日も大変貴重な御意見をいただきありがとうございます。よく検討させていただきたいと思います。

 まさに今、水口先生からもお話がありましたし、また、本日冒頭のソーシャルボンドの会議の件を含めて、やはり省庁連携が非常に大事であると。また、ある別の会議である方から言われたんですが、例えばEUであればサステナブルファイナンスアクションプランという複数年の計画があってその全体像がはっきりと示されていますが、日本ですと、各省ごとにやっているというところもあって、なかなか全体像が見えてこないと。確かに私どもも実際自分たちでやっていてもそういった問題意識は感じております。

 関係省庁でよく連携はしておりますし、また、この会議にも環境省や経済産業省にもオブザーバー参加をいただいてはいるわけですが、ただ、やはり今水口先生がおっしゃったように、もう少し省庁横断的に、今、日本全体として何をやっているのかということが一覧的に分かるようなものを何かつくって、そうすることによって、例えばEUがそうしているように国際的な発信力も高めていけると。そういうふうな問題意識もあろうかと思いますので、今後そういったものにどうやって近づいていけるか、よく検討していきたいと考えております。

【水口座長】  ありがとうございます。そういう方向を見ながら、報告書は報告書としてやっぱり区切りですので一つ作るということで、二段構えで議論していければよいのかなと思っております。

 と言っているうちにそろそろ時間になって参りましたが、最後にこれだけはという方がおられれば伺いますが、よろしいでしょうか。まだいろいろ言いたいことはきっとたくさんあろうかと思いますが、事務局の皆様は懐が深いので、いくらでも言っていただければと思いますので、メールなどをお送りいただければ幸いであります。

 それでは、本日も大変活発な御議論いただきまして、ありがとうございました。次回は今回いただいた御意見を踏まえまして、修正版をお見せして、さらに議論していただきたいと思います。また、次回は、ディスクロージャーワーキング・グループでの議論、それから、ESG評価・データ提供機関のワーキング・グループの検討状況についても御報告をいただいて、さらに議論をしていただきたいと思います。引き続きよろしくお願いをいたします。

 それでは最後に、事務局のほうから連絡ということで何かございましたらお願いいたします。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  先ほど申し上げましたように、次回は27日を予定しておりますので、リンクなどの事務連絡はできるだけ速やかに送らせていただきます。よろしくお願いいたします。

【水口座長】  それでは、本日は以上で終了したいと思います。皆様、御協力いただきまして、誠にありがとうございました。お疲れさまでした。

 ―― 了 ――

  

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総合政策局総合政策課

(内線3515、2770、2893、5404)

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