「サステナブルファイナンス有識者会議」(第13回)議事録

1.日時:

令和4年6月27日(月曜日)9時30分~12時00分

【水口座長】  皆さん、おはようございます。それでは、サステナブルファイナンス有識者会議(第13回)の会合を始めたいと思います。本日はいつもよりも30分早く、9時半からということでお願いいたしました。御参集いただきまして、ありがとうございます。

 早速、議事に入りたいと思いますが、本日は3つテーマを用意しております。一つは、「ESG評価・データ提供機関等に関する報告書」ということで、専門分科会の北川座長にもお越しをいただいておりまして、後ほど金融庁から御説明いただき、北川先生からコメントをいただきたいと思っております。2つ目が、企業開示の充実ということで、ディスクロージャーワーキング・グループの報告書についての御説明を金融庁様からお願いをしたいと思っております。そして、3つ目が、前回も議論していただきました、この有識者会議としての第2次報告書についての議論をしたいと考えております。2時間半のお時間をいただいておりますが、テーマも多いですので、早速、議事に入っていきたいと思います。

 最初の議事は、ESG評価・データ提供機関についてですが、北川先生にはお忙しい中、前回に引き続きまして御参加いただきまして、ありがとうございました。北川先生は御都合で10時までということと伺っておりますので、できるだけ10時までに北川先生に係るところは議論できますよう、よろしくお願いいたします。
 それでは最初に、ESG評価・データ機関に関する報告書について、まず金融庁から御説明いただき、北川先生にバトンタッチしたいと思います。では、お願いいたします。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  資料1、別途お送りしておりますけれども、こちらを御覧いただければと思います。「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会報告書」というタイトルが付してある文書です。同分科会での報告書の現時点の案ということで、時間の関係もありますので、できるだけ手短にご説明させていただければと思います。

 1ページ目を開いていただきまして、「はじめに」とありますけれども、経緯が簡単に記載されています。ESG評価・データ提供機関については、こちら有識者会議で度々御議論をいただいて、本年2月に、ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会が本有識者会議に設置されています。その後、2月に設置以降計7回にわたり専門分科会においてご議論をいただきました。6月20日に7回目の専門分科会で、本日ご報告しているこちらの報告書についておおむね了承・座長一任ということとなってございます。

 その内容については、3ページ目以降です。3ページが報告書についてということで、議論の経緯とか報告書の位置づけについての記載となっています。有識者会議報告書でも指摘がありましたとおり、サステナブルファイナンスの急速な拡大の中で、企業のESGの取組みに関する評価を行うESG評価・データ提供機関の影響力が非常に大きくなっていること、株式と債券それぞれで利用のされ方が異なるが、いずれも利用が拡大していること、こうした状況を簡単に記載しています。

 他方、4ページ2パラ目、幾つか課題が指摘されているとあります。一つは、評価を行う各社の間で、企業や債券を評価するときの評価基準が異なるので、透明性や公平性の確保が課題となっているのではないか。また、評価対象企業に例えば有償でコンサルティングサービスを提供するということがありますと、利益相反のおそれがあるのではないか。これにどう対応していくか。そして、評価の質を確保するために人材を確保していくことが重要ではないか。最後に、多くの評価機関から評価を受ける形となる企業側の負担に、一定程度配慮する必要があるのではないか。この4点を昨年6月のこの有識者会議の報告書で、指摘をいただいたところです。

 この点、下のところに記述がありますけれども、IOSCOが別途、報告書を昨年にまとめております。概ね同じような論点について、提言として、そして評価機関のほか、企業、投資家に係る提言も含めて報告書をまとめております。分科会においては、昨年6月の有識者会議の課題指摘、それから、IOSCOにおける様々な指摘や提言、これらをベースに議論をいただいたところです。

 4ページの下から内容面に入っていますが、まずは評価についての全般的な整理として、様々な評価の在り方がある中で、特に企業評価について、ある評価機関と別の評価機関とで、評価結果に相関が低いとの指摘もあると。この点については、5ページ目のところですが、ESGの課題は非常に幅が広く、評価結果が各社によって異なることそれ自体は必ずしも問題ではなく、むしろ、評価の基本的な考え方が明らかにされることで、投資家や企業の納得感を高め、市場関係者全体としての取組改善につなげていくことが重要ではないか、そうした議論をいただき、報告書にまとめられているところです。

 6ページ目、報告書の内容のポイントですが、1点目は、市場全体を通じた改善との記載がありますが、7ページ目に絵もありますが、ESG投資に係るバリューチェーン全体を捉えるということで、提言の中心はESG評価・データを提供するESG評価・データ提供機関ですが、これにとどまらず、企業、投資家に対しても提言をまとめて、市場全体での改善を促していくというものとなっています。

 それから、2点目として、原則主義とあります。ESG評価・データ提供に関する市場が発展段階にあって今後も大きく変動が続いていくであろうと。こうしたことを踏まえて、細かく規則を書き切るということではなくて、基本的な考え方や中心となる事項を明らかし、創意工夫に基づきながら適用の具体的な在り方をそれぞれに判断していただく原則主義(プリンシプルベース)ということでとりまとめをしています。

 それから、3点目、ESG評価・データ提供機関に関する提言、すなわち行動規範の部分です。報告書全体としましては、先ほど申し上げたとおり企業、それから、投資家に対する提言を含んでいますけれども、特にESG評価・データ提供機関に関する部分については、金融庁において「ESG評価・データ提供機関に関する行動規範」(コード)としてパブリック・コメントを行い、取りまとめていくということです。

 このコードにつきましては、8ページ目ですが、法令に基づくものではなく、各機関に、行動規範の趣旨に賛同いただけるかを呼びかけまして、賛同いただけるという場合には、規範の原則・指針を実施するか、または実施しない場合にはその理由を説明する、いわゆるコンプライ・オア・エクスプレインということで、実施していく。そしてこの賛同の状況については、具体的にどの機関が賛同いただいているか、金融庁として一覧性のある形で取りまとめて公表するということでございます。

 4点目省略させていただき、9ページ目、5点目ですが、行動規範の対象とするサービスです。ESG評価・データ提供機関については、基本的には、評価の対象が株式や企業を評価するものと、あとは個別に債券が発行される際に債券の資金使途である事業を評価するもの、この2つがあるというふうに認識しています。また、「評価・データ」とありますが、様々なデータから企業や事業について評価を行って、その結果を明らかにする評価サービスと、評価の基となるデータそのものを収集・提供するデータ提供サービスがあると承知しています。今回は、そのいずれの面でも、広く、企業評価だけでなく債券・事業の評価も、評価だけでなくデータの提供も、一体として捉えるという形となっています。

 その際に、サービスの範囲を広く捉えますと、その分、どのようなサービス提供を行う方がこの行動規範の対象となるのか、混乱もないように整理が必要ではないかということで、10ページ目に、AからDという形で考え方が記載されています。

 特にAですけれども、我が国の金融市場に参加し、または当該参加者に直接に、事業の一環として投資判断に資するものとして、企業に関する評価・データを提供するサービス、とありまして、投資判断に資するようなものとして、金融機関や投資家の方に直接的に、事業の一環として、すなわち、反復継続して、ESGに関する評価・データを提供するというような機関が対象ということで、例えばアカデミックに研究をされている傍ら森林とか生態系に関するデータを広く提供するような研究機関もあるわけですが、こうした機関は基本的には行動規範の直接の対象ではないだろうという整理をまとめています。

 次、6つめビジネスモデルとあります。先ほど申し上げた点と重なりますが、債券を評価する場合には、基本的には債券の発行者が評価に関わる費用を負担されるIssuer Pay、発行者負担モデルというビジネスモデルが典型的で、対して、企業を評価する場合には、企業からの依頼に基づかずに評価機関が評価を行って、評価の結果を購入される投資家などが費用負担を行うという購買者負担モデル、Subscriber Payモデルという両方のビジネスモデルがあるのではないかと、そう整理をしたうえで、この行動規範は両方のビジネスモデルを対象にするとしています。IOSCOの報告書では、両方を前提としつつ特に購買者負担のビジネスモデルを中心にしておりましたけれども、本報告書ではより明示的に債券評価・発行者負担のモデルも含め対象にすると。

 また飛ばしまして、8つめ企業開示の充実です。後ほど本日の2つ目のアジェンダとして予定されていますが、ESG評価の前提として、企業における情報開示の充実がやはり重要であろうという御指摘も専門分科会で多くあり、この点がまとまっているところです。

 9つ目、IOSCO報告書との比較とありますが、内容は省略させていただきますが、IOSCOの報告書は議論の基となったものですが、その上で、本報告書は幾つかの点において強調したり、深めたり、または定義をはっきり書いたりとかということで、より内容を深め、実務的にしたということがありますので、国際的にもこの辺りをよく理解していただくよう、幾つかポイントを記載しています。報告書がまとまった段階で、こうした点を国際的にも発表していくということを考えているところです。

 18ページ以降は提言の中身が続きますけれども、第一の提言は品質確保です。品質の確保を重要なものと認識し、必要な基本的な手続を定めるべき、体制整備とか、また、評価を一定期間行った上で、もともと実施しようとしていたところのものと実際のものとが合っていたのか確認し、必要な改善事項があれば改善をする、こうしたPDCAの実践が重要となる、といった提言です。

 それから、20ページ、人材の確保です。特にIOSCOの報告書と比べましてもより強調して記載をしているところとなりますが、金融面での知見と、ESG、環境や社会面での知見、双方が重要で、市場全体でまだまだ人材の不足が指摘されている中で、評価機関としても外部機関なども必要に応じ活用しながら組織全体として専門性を確保していく、併せて人材の育成を図っていくことが重要といった記載となっています。

 21ページ、原則3、独立性の確保・利益相反の管理です。もともと有識者会議の報告書でも、利益相反のおそれということで指摘があったところです。幾つか具体的な場面を想定しつつ、例えば営業と評価の担当者のファイアウォールを構築していくこと、またそれから、企業からのアンケートに基づいて評価を行う場合に、あまりにアンケートの内容などが難しく、別途同社が提供しているコンサルティングサービスを利用しないと内容が分からないといった場合の課題、こうした点についてまとめているものです。

 24ページは透明性の確保で、ESG評価・データ提供機関が自ら開示していただく事項をまとめています。指針の3ポツにありますような、評価等の策定手法やプロセスを開示するということ、そしてESG評価・データの策定に利用した情報源ということで何を基にして評価を行ったのかというインプットデータについて企業に確認することを可能にするという記載。

 そして28ページは原則5守秘義務です。情報公開が重要である一方で、個別に企業等との信頼関係の下で情報を得て評価をするということもありますので、この場合の取扱いの留意点ということをまとめています。

 評価機関に関する提言の最後ですけれども、30ページ、原則6、企業とのコミュニケーション。2ポツのところで、企業がESG評価・データ提供に関して問合せ、問題提起を行うことができる統一的な窓口を設けること。また3のところで、評価を公表される際に企業に対して、そうしたことをできる限りのところでお伝えする。その上で、4のところにあるように、評価の内容または評価の情報源について企業の方から重要又は合理的な問題提起があった場合には、例えばそのインプットとなっています根拠となるデータがどういうものであるかということを企業に確認してもらって、必要があればそれを訂正するというようなことを盛り込んでいます。

 次、投資家への提言ということで、33ページから35ページまでに記述があります。投資家がESG評価をどのように使っているのか、ESG評価の利用方法を明らかにすることが重要ではないかというような指摘がございました。これによって、企業にとっても、ESGに取り組む意義とかを見いだしやすいし、評価機関にとっても、自分の評価がどう利用されているかというのが分かることで、質の改善に向けたインセンティブにつながるのではないか、そういう指摘がありました。

 36ページから38ページのところで企業への提言。企業がESGの取組について、重要な取組だということで行動を行いつつ、自らのESG関連の情報について、リスクと機会双方の観点から分かりやすく提言していくということが求められるという記載です。

 39ページについては、「おわりに」ということで、先ほど冒頭に申し上げましたけれども、金融庁としてESG評価・データ提供機関に関する提言を行動規範として市中協議に付していくこと、それから、この報告書全体について、英訳もした上で国際的にも発信していくというようなことを記述しています。

 北川先生、何か追加がございましたらお願いいたします。

【北川座長】  西田室長、ありがとうございました。北川でございます。

 私のほうからは、西田さんのおっしゃった通りですが、付加的に申し上げますと、基本的にはIOSCOの報告書の精神に敷衍して作成したものであるということを御指摘したいと思います。しかも具体的に丁寧に様々な問題を浮き彫りにしておりまして、今後パブコメを求めてブラッシュアップを図る予定でございます。

 とりわけ目指したものは、対象となる評価機関・データ提供機関の範囲の明確化、人材育成の重要性、それから最後に、私がこれは個人的に大事だと思っているんですけれども、企業、投資家、評価機関とのコミュニケーションギャップを解消するということでございます。とりわけ私は、先ほど最後に西田さんが言われた、投資家が責任投資報告書等にきちんと自主的に報告されることを期待したいと思います。それでコミュニケーションギャップがある程度解消するだろうと思います。

 それから最後に、これは全く私の個人的な感想でございますけれども、当研究会を通じて、20年ぐらい前のアメリカで起こったエンロン・ワールドコム事件の後、SECが自主的な規制機関と非常に積極的なコミュニケーションを行って、ラウンドテーブルを頻繁に開催したうえで問題となったアナリストレーティングについて討議して、その結果「アナリストレポートの作成指針」が短期間で出来たんですね。これは結局、アナリストレポートの作成、つまり、アナリストレポートによる、セルサイドですけれども、レーティングが偏在していた、あるいはレポート自体の適格用件について整っていなかったということによって個人投資家が被害を受けてしまったということがありました。

 そのようなことが今回の研究会とどうアナロジカルに関係するのかと思いますが、やはり資本市場は、何も起きなければ自制的な制限機構に頼ってきたという歴史もあるのですが、これだけESG情報というのが大きな社会的なインパクト、投資評価にかなりインパクトをもたらすということになると、やはりもうちょっとオーバーサイトした、社会全体での適切なモニタリングシステムを構築するということが必要なんだろうなと思った次第であります。そういう意味では、今回のこと自身はやはりコミュニケーションギャップを解消するという視点からぜひ進めていきたいなと思っています。会議の皆さんの御理解もぜひ得たいと思います。

 私のほうからのコメントは以上でございます。

【水口座長】  ありがとうございました。大変充実した奥の深いレポートと、それから、提言をまとめていただきましたことに感謝を申し上げます。また、今のお話の歴史的な視座のところも大変示唆的なお話で、興味深く拝聴いたしました。ありがとうございました。

 それでは、委員の皆様から御質問、御意見等あればいただきたいと思います。例によって、声を上げていただくという方法でお願いします。すみませんが、北川先生は10時までなので、簡潔にコメントいただければと思いますが、いかがでしょうか。どなたからでも結構です。

【林メンバー】  BofAの林です。おはようございます。よろしいでしょうか。

【水口座長】  お願いします。

【林メンバー】  ありがとうございます。大変すばらしい報告書をありがとうございました。1点、今、深い視座というようなお話もありましたけれども、そういうことでこういう言葉を選んでいるのかなと思ったんですが、背景をお伺いしたいと。24ページ、原則4なんですが、あまりこの手の資料に出てこない言葉でつい目にとまったんですが、3行目、「サービス提供に当たっての哲学を一般に明らかにすべきである」という言葉があって、「哲学」という言葉をあえて選んだ理由がもしあれば。普通ですと「考え方」と多分書くと思うんですけれども、すみません、ちょっと変なところに引っかかってしまいまして、これについて御説明を追加でいただけると幸いです。
 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。北川先生、哲学について一言コメントいただいてもいいですか。

【北川座長】  日本語的には非常に高遠な、学問的なものをイメージするんですけれども、私はもっと平易に「論理的な思考」といった意味で考えています。つまり、レーティングエージェンシーによってレーティングがばらばらなのは全然構わないことで、ただ、その論理をきちんと示していただく、非常にロジカルな体系が出来ているということが重要であることに尽きます。レーティングAとかBとかCだけが独り歩きするということによってシンボリックに動くということは非常に危険なので、そういう意味合いを込めて「哲学」(philosophy)という言葉を使いました。そこら辺ちょっとやや誤解を与える恐れあれば、修文することもパブリックコメントを受けて考えたいと思います。

【林メンバー】  哲学イコール論理的思考というふうにそこまで哲学というものを理解している人ばかりではないので、私も理解がないのですけれども、より分かりやすくしていただいてもよろしいかと思いました。
 以上です。

【北川座長】  ありがとうございます。

【水口座長】  ありがとうございました。よく投資家の方は投資哲学とおっしゃいますよね。

 それでは、井口さん、それから、渋澤さんの順でお願いします。井口さん、どうぞ。

【井口メンバー】  北川先生、事務局の方々、ご説明、ありがとうございました。それで、今回初めて議論するということで幾つか比較的長い意見がありまして、北川先生のおっしゃるコミュニケーションギャップを解消するというのは全く賛同はしているんですが、報告書全般についても意見を申し上げたいので、もしほかの方で北川先生に直接御意見されたいという方いらっしゃれば、そちらの方を優先していただければと思っております。

【水口座長】  ありがとうございます。それでは渋澤さん、いかがですか。もし簡単にコメントいただけるなら、先に渋澤さんにお願いします。

【渋澤メンバー】  では、ごくごく簡単に。ありがとうございます。

 まとめていただいて、どうもありがとうございます。また、説明ありがとうございます。15年ぐらい前からESGの時代の流れで、当初は投資家との対話の中で、「皆さんESGとおっしゃるけど、Gばっかりなんです」というところから始まったという記憶があります。もちろんGがないとEとSができないということがあるので、順番はそれで正しいかと思います。ただ、Gというのは測定しやすいと思います。ROE、社外役員は何割、女性など取締役会のダイバーシティー、この3つぐらいの数値で仕分ができてしまうということがGです。

 次の流れはEになりましたが、本サステナビリティ委員会もそうですし、気候変動から始まっているということも、これも比較的にメジャメントしやすい、データ化しやすいということだと思います。様々な温暖化ガスをCO変換という指数を見れば、Eをやっていますか、やっていませんかと仕分ができます。しかし、Sの評価・データというところがまだ共通言語が出来ていないというイメージを持っています。Sのデータ・評価をどのように考えたらいいのかということを、もし北川先生からコメントいただければお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【北川座長】  私の知っている限りでございますけれども、各社やはり相当蓄積された熟達した分析手法を持たれておりますし、日本ではまだ話題になっていないことですけれども、最近話題になった人的資本についても相当なレベルで分析されているわけですね。

 そういったものというのは、我々から見ると企業サイドでも認識すべき大変な知見なんです。もうちょっと各評価機関にできる限りエッセンスのみで良いので一般向けレポートにより広く開示していただき社会情報化することによって日本社会全体に良い刺激を与えるような気がします。アカデミックの世界におられる方にとっても大変ありがたいと思います。

 それで、渋澤さんおっしゃるように、Sはやっぱり日本は正直言ってちょっと遅れていると思いますので、そういう面でむしろこの研究会のサジェスチョンによってそういうものが広がるというようなことを期待しております。ちょっと答えになっているかどうか分かりませんけれども、以上でございます。

【渋澤メンバー】  ありがとうございます。

【水口座長】  ありがとうございます。知見を共有化していくことでさらに深化していくのかなと思います。

 鳥海さんから手が挙がっていますけれども、もし簡単に。

【鳥海メンバー】  質問ということではなく、ややお願いに近いところかもしれません。

【水口座長】  では、お願いします。

【鳥海メンバー】  ありがとうございます。日証協、鳥海でございます。証券会社として、ESG評価あるいはデータを利用する側である投資家としての立場、あるいは私ども自身というか証券会社自身が評価される側という両面があるんですけれども、双方踏まえてということで一つだけコメントさせていただきます。

 30ページ以降の原則6の企業とのコミュニケーションというところ、分科会でもかなり様々な意見が出たと伺っております。ESG評価・データを開示する前に評価対象とする企業に通知する是非はともかくといたしましても、開示後に企業から問合せがあった場合は適時適切な対処をすべきだということを強く思っております。

 特に評価のプロセスが複雑でかつ各社で異なっているということで、実際に評価結果に対して不満を持っている企業もそれなりに存在すると認識しております。ですから、ここで提言されているとおり、評価機関が対応窓口の設置あるいは対話の手順を明示しておくというところが、企業のESGに対する意識の向上あるいはサステナビリティ経営の推進を後押しすると思っております。したがいまして、提言の後、どのようにフォローして、これを実現に結びつけるかというところが非常に重要なのかなと思っておりますので、少しコメントさせていただきました。
 以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。北川先生、そろそろお時間かと思いますけれども。

【北川座長】  そうですね。最後に、鳥海さんに僕、逆にお願いがあるんだけど、やっぱりヨーロッパだと、ESGアナリストランキングというのを証券会社のセルサイドの方がつくられていまして、そういうことは日経さんがやるべきことなのかもしれないけれども、そういうようなことも一つパワーを示していただきたいなというお願いがございます。ぜひお願いいたします。

【鳥海メンバー】  海外ですと、日本株対象についても既に発表はされております。

【北川座長】  そう、やっていますよね。それを日本の中について、日本の市場の中でもどんどん広めていただければと思いますが。

 すみません、ちょっと私、次がありまして、失礼いたします。

【水口座長】  先生、どうもありがとうございました。引き続き、よろしくお願いいたします。

【北川座長】  了解いたしました。

【水口座長】  ということで、北川先生はここで退出されてしまいましたが、井口さん、大変すみませんでした。御配慮いただきまして、ありがとうございます。

【井口メンバー】  とんでもないです。ありがとうございます。報告書全般についてコメント等をさせていただければと思います。それで、今回、報告書を見るのが初めてということで、ちょっと長くなるかもしれませんが、よろしくお願いします。

 まず、事務局には御説明ありがとうございました。グローバルのIOSCOの考えに沿った形で、原則ベースで、ESG評価・データ機関の品質を向上させるという方向については賛同いたしますし、短期間の間に原則と指針を公表されたというのも大変すばらしいと思っています。賛同した上で、2つの質問と意見をさせていただければと思います。

 一つ目の意見は、鳥海さんもおっしゃったことと近いかもしれませんが、ここで示されているのはソフトローですので、やはり実効性の確保が課題になると思っております。これは今、事務局の御説明を聞いていてよく分かったのですが、当局の方で、原則・指針に沿った取り組みを表明している機関の一覧を公表するなどする。そうすると、対応していない評価機関あるいはデータ機関はレピュテーションリスクを抱えることになるといった形で、規律を保つと理解しました。そのような理解でよろしいでしょうか。もし違っていれば、また後でコメントいただければと思っております。すみません、これは意見なんですけれども、質問も交じってしまいました。

 2つ目の意見は、38ページの投資家への提言のところとなります。以前の委員会でも申し上げましたが、評価機関等と投資家の対話について効果的に促進しないと、投資家に過大な負担を生じさせるだけで、資本市場にとっても何のメリットもないと申し上げましたが、この提言では、受益者の利益に関わる投資判断等に用いるESG評価・データの場合と絞ってらっしゃり、これは、受益者利益の観点から対話の必要が生じますので、提言の方向性には強く賛同いたします。

 その上で、こちらのほうも実効性の確保をどのように図るかということも課題になると思っております。ちなみに、現状、スチュワードシップ・コードの原則8は、機関投資家向けサービス業者に対するものということと定められていますが、この原則がこの論点に関わるかもしれません。しかし、私の知る限り、多くの投資家は、この原則は投資家とは関係がないと認識していて、対応していない投資家は多いと認識しております。

 あと、質問が2つあります。一つが、報告書16ページでビジネスモデル別に分けられていると。これはすごくいい分け方と思って、賛同させていただきます。ただ、気になるのは、購買者負担モデルでは利益相反管理の必要性が低いと記載されるように読み取れるということについてです。ここについてはやや違和感を覚えます。

 ちょうど今日の日経新聞の1面にも、ESGの評価が従業員の評価にも入ってくるということが書かれておりましたが、役員報酬体系の中にもかなりESG項目が入ってきて、客観性担保の観点から、主要な指標項目にESG評価機関の評価が入っている事例が多いです。また、ESGインデックスに入りたいという希望がある企業も多いと認識しています。このような中、勝手評価でESG評価がされていたとしても、評価機関に助言サービスがあり、受けている場合、その評価において発行者負担モデルと同様かそれ以上の大きな利益相反が生じるリスクがあると思います。原則3の考え方にはこの点について記載がありますが、原則と指針には定めがないということで、可能であれば、この辺りについて、ワーキングでどのような議論があったかということについてお教えいただければと思います。

 もう一つの質問は、指針6の3ですが、ESG評価・データの妥当性、正確を期するために、発行企業の状況をしっかり把握するということは重要ですし、企業からの問合せにも対応するということは重要だと思います。ESGデータについては問題ないと思っているのですが、評価の事前通知については、評価の中立性の観点で慎重に運用される必要があるのではないかと思います。この点は、指針の考え方にも懸念として記載されていると認識しています。

 この課題というのは、ガバナンス分野では、議決権行使助言会社の助言内容の企業への事前通知と通じるところがあると思っています。私の知る限り、例えば米国のSECが助言会社の助言内容の事前通知に対する方針を出しましたが、これに対してグローバル投資家の反発は相当強かったと記憶します。このようなことについてもワーキングでは話し合われているかもしれませんが、通知することは重要と思っておりますが、企業からの意見に妥当性がないときは考慮しないとか、あるいは通知して反応がないときはそのまま発行してよいといった考え方も必要ではないかと思っています。この辺りでのワーキング等でのお考えについてもお教えいただければと思っております。

 すみません、長くなりましたが、以上です。

【水口座長】  大変重要な御指摘をありがとうございました。特に後半2つの御質問は、なるほどと思いました。西田さん、お願いします。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  全体的に意見の部分を含めて3つ御質問をいただいたかなと思います。

 まず1点目は、コードの実効性の確保についてです。レピュテーションリスクという言葉かどうかはありますけれども、市場参加者全体に、この行動規範に賛同し、これに基づいて業務提供行っている質の改善に取り組んでいただいているか、取り組んでいる評価機関はここだということを分かるようにする、ということ取組の方針をそれぞれの評価機関が明らかにしていただくことにもつながってくると思いますので、基本的な考え方はおっしゃるとおり市場の規律を通じて実効性の確保を図っていくということと理解しています。

 2点目は、ビジネスモデルの記載をするところで、購買者負担モデルは発行者負担モデルと比べて利益相反のおそれが相対的に薄いと読み取り得るとのご指摘でした。ご指摘の部分の報告書の記載の趣旨は、発行者負担モデルの場合には、評価を受ける企業から費用を頂いているため、どうしても仕組みとしてよい評価をつけるという働きが出かねない可能性があるので、これは留意が必要というもので、購買者負担モデルの場合に利益相反があまりないといった趣旨ではなかったのですが、記載の仕方がミスリーディングではないか座長ともご相談して確認させていただきたいと思います。実際に、21ページ、独立性・利益相反の管理という提言のところでは、ESG評価・データ提供機関全体として利益相反の観点から対応すべきことをまとめてあり、この中では企業評価、購買者負担モデルの内容も含めて記載しつつ、それぞれのビジネスモデルに応じた利益相反の在り方に応じて対応していくことが重要だと、そうした趣旨の記載となっています。

 それから、3点目のご質問ですが、30ページの企業とのコミュニケーションの提言についてです。30ページ目の3のところで、ESG評価・データを開示するに際しては、可能な限り速やかに評価・データの重要な情報源について企業に通知する。それから、4のところで、ESG評価・データ提供の対象となる企業から、ESG評価・データの情報源について重要又は合理的な問題提起があった場合には、少なくともその正確性を確認し、これに誤りがあれば、適切に修正等の対応をしていただく、こうした記載となっています。

 この点、専門分科会でも相応に議論になったという理解です。まずは、事前に通知すべきなのか否かという点、それから、通知するに際して、評価を行いますということを通知するのか、評価の結果、あなたはA評価です、B評価ですというよう評価結果まで通知すべきなのか否か。また企業から意見をいただく場合に、どのようなことに対応する必要があるのか、ここでは「重要または合理的な問題提起があった場合には」との記載をして一定の限定をかけているわけですけれども、これでよいか、こうした点について相応に議論がございました。

 評価機関の方からは、企業から適切な問題提起があった場合には当然応えていきたいけれども、一方で、例えば事実関係含めて多数質問が相次ぐということが続く場合には、場合によっては実質的になかなか評価を公表することが難しくなるのではないか、というご懸念もございました。他方で、評価を受ける企業の方からすると、事実関係であっても重要な指摘は直すべきところはきちんと直させてほしいというような御意見もありました。

 バランスを取るべく専門分科会として議論をいただいて、この報告書では、記載のありますとおり、ESG評価・データ提供を開示するに際しては、可能な限り速やかに情報源等について通知して、これについて合理的または重要な問題提起があった場合には、少なくともデータの正確性などを確認することを許容し、誤りがあれば訂正する、こういうこと重要ではないか、というふうになったということでありました。

【水口座長】  ありがとうございました。井口さん、いかがでしょうか。よろしいですか。

【井口メンバー】  西田室長、どうも丁寧なご解説ありがとうございました。よく分かりました。特に最後の点については、この原則が英語に直されて出されるときに誤解されないように、今まさに御説明された内容を説明する、あるいは説明を補足するということが非常に重要ではないかと思っております。ありがとうございました。

【水口座長】  ありがとうございました。ほかにもし御意見、御質問等あればいただきますが、よろしいでしょうか。この議論はこの後、コンサルテーションに回り、それを経て、報告書は報告書で確定し、コンサルテーションの上で行動規範として公表されると、こういうことですよね。ですので、もちろん有識者会議の皆さんもコンサルテーションのほうに御意見をいただいても構いませんということだと思います。

 よろしいでしょうか。

 それでは、先を急ぐようですが、もう1点大きな論点がありますので、次に、ディスクロージャーワーキング・グループの報告書が公表されておりますので、こちらについて金融庁様から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】  ありがとうございます。金融庁の企業開示課長の廣川と申します。金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループの担当をしております。よろしくお願いいたします。

 それでは、本日の資料としては2つ、「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告の概要」という1枚の紙と金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループの報告本体がありますので、それを用いて説明をさせていただきます。

 まず、概要のほうから。金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループですけれども、昨年の9月から9回にわたりまして、サステナビリティの話以外も含めて様々な議論を行ってまいりまして、先般6月13日に報告を取りまとめ、公表をしたところでございます。

 背景としましては、昨今の経済社会情勢の変化を踏まえ、非財務情報公開の充実と開示の効率化等について審議してきたところでございます。特に最近、投資家からの関心が非常に高いのは、非財務情報。企業の将来を占う上で重要になってくる非財務情報の開示を充実していくべきだという御意見を強くいただいております。昨今の文脈では、特に企業経営あるいは投資家の投資判断においてサステナビリティの重要性が急速に高まってきているという認識がございまして、そうした中で開示の充実のために御議論いただいてきたということでございます。

 今日はディスクロージャーワーキング・グループ報告の中で、本有識者会議とも関係の深い、サステナビリティに関係するところを中心に説明させていただきます。まず概要を説明申し上げた後に報告本体を御説明してまいりたいと思います。

 今回は、法定の開示書類であります有価証券報告書にサステナビリティについて記載する欄を新設するということを取りまとめてございます。具体的に何を書くかということでいきますと、ガバナンス、リスク管理、それから、戦略、指標・目標という、サステナビリティを通常記載するときの4つの構成要素のうちのガバナンス、リスク管理については全ての企業に開示していただき、戦略と指標・目標については、各企業が重要性を判断して開示をするということ。サステナビリティが何かという、重要性、マテリアリティの特定というのは非常に大事な話になってくるわけですけれども、そちらについては、各企業がきちんと重要性を判断していただいた上で記載をしていただくということを基本としております。

 次に、人的資本については、先ほども北川先生からもお話がありましたけれども、最近非常に関心が高まっております。それに関しては、人材育成方針とか社内環境整備方針、職場環境をどう整備していくかということと御理解いただければと思いますけれども、こういったところを記載項目として追加をしているということでございます。

 また、関連するものとして、多様性、ダイバーシティーについては、男女間賃金格差、女性管理職比率、男性育児休業取得率を記載項目に追加するというようになってございます。

 もう少し詳しく報告に沿って補足をさせていただきたいと思います。それでは、もう一つの報告のほうのスライドを投影させていただきます。まず1ページですけれども、「はじめに」のところで、何のために企業情報の開示、特に法定の開示書類があるのかということの確認をさせていただいております。基本的には、投資家の投資判断の基礎となる情報の提供をする。それによって資本市場において効率的な資源配分が実現される。こういう姿を目指していこうと。そのための基本的インフラでありますということを確認しているということと、「また」のところですけれども、中長期的な企業価値にとって重要な課題を開示することを通じて、企業がそれらの課題について必要な検討・取組を行っていくことを期待するものということ、一方で投資家については、開示された企業の取組を深く理解していただいて、建設的な対話を通じて企業価値の向上を促すということが期待されるということを開示の趣旨・狙いとして確認しております。

 サステナビリティの開示につきましては、4ページの中ほどです。先ほど、有価証券報告書における記載欄新設の話を申し上げました。それ以外にも、ここに投影されていますローマ数字2とローマ数字3と書いてございますけれども、取組を並行して進めていくことが大事な話として、まずローマ数字2のところですけれども、日本においてサステナビリティ開示に関する情報集約とか分析をし、国際的にしっかりと意見発信をしていく。さらに国内において具体的に開示内容をどうしていくのか、その詳細についての検討を行っていくための体制の整備を進めていくということが大事であるということでございます。

 皆さん御存じかとは思いますけれども、7月1日にサステナビリティ基準委員会、SSBJですけれども、正式に設立をされます。こちらが中心となって、このローマ数字2に書かれているような活動をしっかりとやっていくことが大事。これはこの報告の中でも確認をしているところでございます。

 それから、3つ目ですけれども、サステナビリティの開示は、これまでは、統合報告書とかサステナビリティレポートといった任意開示書類の中で各企業さんが大変創意工夫をされた上で充実した開示をやっていらっしゃるということであったかと思います。これはこれで引き続き大事なツールということで、その質と量の充実が進むように促していくということも大事ということであります。この3本の柱で取組を進めていくべきであるという考え方をまとめてございます。

 それでは、サステナビリティの法定開示について、6ページの下のほう、記載欄に何を書くかということですけれども、基本的にTCFDのフレームワークで使われていて、ISSBの基準でも引き継がれることになる4つの構成要素である、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標に基づく開示を行っていただくということでございます。

 ガバナンス。サステナビリティのリスクと機会を企業内でどういうふうに取り組んでいくのか、また、それをどう監督をしていくのか、あるいは経営者がどういうふうに関与していくのかについては全ての企業に開示していただく。また、リスク管理。サステナビリティのリスクに対して、企業内でそれをどういうふうに識別、認識、評価し、管理をしていくのか、そういったことについて書いていただくということは全ての企業にやっていただきましょうということでございます。

 その次、戦略ですけれども、特にシナリオ分析、これをしっかりやろうとすると大変難しい作業になるかと思いますけれども、サステナビリティのリスクと機会をきちんと企業で評価していただき、それを記述していただくということになります。それから、指標・目標。どのような指標を企業内で設定をして、あるいは目標として設定をして取り組み、進捗を管理していくのか。戦略、指標・目標については、企業が重要性を判断して開示するということでございます。

 このうち気候変動については、企業が業態や経営環境等を踏まえて気候変動対応が重要であると判断する場合には、先ほどの記載欄の中で開示をしていただくということですが、グリーンハウスガスの排出量に関しましては、Scope1、2については企業が積極的に開示することが期待されるということです。特に我が国では地球温暖化対策の推進に関する法律がございまして、それに基づいて既に公表をされていらっしゃる事業所さんはたくさんあるかと思いますので、今後重要性を持つ可能性が高くなるということも踏まえまして、開示を検討することが期待されるというふうに書いているところでございます。

 次の人的資本に関しましては、14ページから15ページにかけて記載がございます。人的資本については、人材育成方針、社内環境整備方針を記載項目とすると申し上げました。加えまして、その方針と整合的で測定可能な指標、例えばインプットとかアウトカムとかを設定していただく。そして、目標及び進捗状況についても記載をしていただくというようなことでございます。

 次に、多様性の観点で、先ほど申し上げました女性管理職比率、それから、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差についてですけれども、これは有価証券報告書の中に「従業員の状況」という欄がございますので、その開示項目とするということです。その上で、積極的な開示を期待しつつも、企業負担等の観点からということで、他の法律の定義枠組みに従ったものにすることに留意すべきであると書いてございます。これは具体的には女性活躍推進法、それから、育児・介護休業法というのがございます。特に男女間賃金格差については、現在厚労省さんのほうで女性活躍推進法の枠組みの中で情報の公表について検討をされている最中であるかと存じ上げております。こういったことも踏まえながら、そちらにおいて公表を行っている企業が有価証券報告書においても開示をすることとすべきであるとしてございます。また、こういった指標を開示するに当たっては、指標に関する説明も追記できるようにすることが考えられるということでございます。

 今後の課題ということで、具体的に国内で開示の詳細を考えていくに当たって、今後SSBJの活動が大変重要になってくると考えてございます。SSBJを有価証券報告書の枠組みの中でどのように位置づけていくことが考えられるのかというのが今後の論点ということで、SSBJの役割の明確化ということを掲げさせていただいております。したがって、ディスクロージャーワーキング・グループは今回の6月の報告で終わりということではございませんで、今後の取組としては、SSBJについて、改めてその取扱いを議論する必要があると。特に法令上の枠組みにおいてどのように位置づけるかが論点だということでございます。

 その上で、7ページの一番下、SSBJにおいて、ISSBが策定する基準を踏まえて、国内における具体的な開示内容を検討すべきだということを書いてございます。補足をいたしますと、ISSBが国際的な基準を策定する。それも踏まえながら国内のサステナビリティの具体的な開示内容を検討すべきであるとしております。

 その上で、ディスクロージャーワーキング・グループにおいて、具体的な開示内容を有価証券報告書の記載欄へ追加する検討を行うことが考えられるということでありまして、ここも今後の課題ということで記しているところでございます。

 あと、最後にもう一つだけ御説明させていただきますと、16ページ。サステナビリティ情報の開示をするに当たって、今、国際的にも非常に関心を持って見られているところとしては、サステナビリティ情報の信頼性の確保をどのように図っていくのかということでございます。具体的には、企業が開示を行うサステナビリティ情報について、第三者が保証、アシュアランスを提供していくということです。既に統合報告書とかサステナビリティレポートで開示をされている企業の相当数について、例えばGHGの排出量に保証を取得されているようなケースを目にしております。

 国際的にもサステナビリティの情報に関する保証をどうしていくのかというのは議論の対象になってございます。具体的には、今、グローバルに監査基準をつくっている国際監査・保証基準審議会、IAASBですけれども、こちらにおいても今後サステナビリティ情報に関する保証業務の基準について議論が行われることになってございます。先ほど申し上げましたように、開示情報の基準についても、ISSBはまだ検討中でございます。その上でIAASBのほうの保証の基準についてもこれからということですので、そういった国際的な動向も踏まえながら、中期的に重要な課題として検討を進めていく必要があるとしているところでございます。

 以上、私からの説明でございました。ありがとうございました。

【水口座長】  大変ありがとうございました。とうとう有価証券報告書にサステナビリティに関する記載の欄が出来るということで、隔世の感があるなという感じがいたします。

 このディスクロージャーワーキング・グループの報告は報告としてこれは確定しているということで、もちろんディスクロージャーワーキング・グループ自体はこの後も継続されるわけですけれども、一方でこの記載欄が設けられるに当たっては、具体的には内閣府令の改正が行われるという、そう理解してよろしいんでしょうか。

【廣川企業開示課長】  廣川でございます。大事なところを説明しそびれまして、失礼いたしました。おっしゃるとおりでございます。有価証券報告書の中に記載欄を追加するためには、今、先生からおっしゃっていただいた、企業内容等の開示に関する内閣府令、いわゆる開示府令と呼ばれるものを改正する必要がございます。私どもとしては、3月期の決算の会社さんが多いですので、早ければ来年3月期の適用も見据えつつ、本年中を目途に、今申し上げました開示府令の改正を行っていくことを考えてございます。

 当然、パブリック・コメントの手続がございますので、頑張って秋のタイミングでは府令案がお示しできるようにと思ってございます。ありがとうございます。

【水口座長】  ありがとうございます。また、有識者会議のメンバーの中にもこちらのワーキング・グループにも関わられている方もおられて、皆様の御尽力にも感謝をしたいと思います。

 それでは、せっかく廣川さんが来られていますので、もし御質問等あればいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。どなたからでも結構です。鳥海さん、お願いします。

【鳥海メンバー】  度々恐れ入ります。日証協、鳥海でございます。

 1つ御教示いただきたいと思います。9ページのところです。将来の有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示というところで、課題として将来情報の記述と虚偽記載責任ということが挙げられて、企業内容等開示ガイドラインなどにおいてさらなる明確化を図ることを検討すべきとなっております。有価証券報告書の虚偽記載責任につきましては、株式や債券引受人という立ち位置での証券会社の目論見書の虚偽記載責任にも関係する内容かと思っております。また、ここの9ページの2のところ、任意開示書類の参照というところで、サステナビリティ情報の記載欄への記載に関してということで、任意開示書類の参照が検討されていると。このとき参照先の任意開示書類に虚偽記載があっても、金商法上の罰則、課徴金は課されないとの考え方が記載されております。

 こちらは非常に重要な論点だと思っておりまして、制度の明確な整理が必要だと思うのですけれども、今後、時間軸ですとかどのように論点整理をされていくか、制度が整理されるかというようなところ、見通しがもしありましたら御教示いただきたいと思います。お願いいたします。

【廣川企業開示課長】  鳥海さん、御質問ありがとうございます。先ほど説明を飛ばしてしまったところだったんですけれども、まず、1点目の将来情報の記述と虚偽記載の責任について、私ども、基本的には、できるだけ充実した記載を企業の方にやっていただきたいと考えています。サステナビリティの開示については、事柄の性質上、特にリスクと機会に関するシナリオ分析などにおいてはどうしても将来情報を記載させざるを得ないということがあります。これまでも、サステナビリティと違う文脈ではあるんですけれども、例えば事業等のリスクを有価証券報告書の中で記述するに当たって、確定している過去の情報ではない将来情報については、書くと将来、書いたことと違うことが起きてしまう可能性があり、特に虚偽記載について刑事罰の適用対象となっているので、有価証券報告書で書きづらいという声が、企業の方々から聞かれてきたところでございます。

 私どもとしては、そんなに心配しないで書いてくださいという思いは非常に強くあるんですけれども、幾ら金融庁が言っても、必ずしも額面どおりに受け止めていただけないことも多かったという気がしております。これまで、事業等のリスクの文脈で内閣府令を改正した際のパブリック・コメントの回答の中で、「一般に合理的と考えられる範囲で具体的な説明がされていた場合には、提出後に事情変更したことをもって虚偽記載の責任が問われるものではないと考えられる」という役所のスタンスをある程度お示ししてきたつもりではございます。

 ただ、今回は事業等のリスクを超えてサステナビリティ情報あるいは非財務情報の記述全般に関わってくる話として、これはパブコメ回答だけではなかなか伝わりきらないところがあると思いますので、企業内容等の開示ガイドラインを改正することを念頭に、さらなる明確化を役所としてやっていきたいと。タイミングとしては、先ほど申し上げました開示府令の改正のタイミングに合わせて作業ができればと思ってございます。

 任意開示書類の参照のところは、統合報告書ですとかサステナビリティレポートですとか、そういったところで相当充実した開示を既にされていらっしゃる会社さんがあって、ただ、それを全部有価証券報告書に書き切るのかというところが論点になって、いろいろな御意見があったところです。基本的には、投資家の投資判断にとって重要となるコアのところは有価証券報告書に記載をしていただきつつも、それを補足するような詳細は統合報告書等に書かれているということがあるだろうということを念頭に置いて、有価証券報告書からそういった統合報告書等の任意開示書類を参照する形として、全体として投資家さんにとって有用な情報が提供されるという姿を念頭に置いていくべきだろうということで、このような参照をある程度視野に入れた考え方をここで示しています。

 ただ、その際に、任意開示書類に間違えがあった場合には責任を問われるんじゃないかということになると、今度は、せっかくこれまで工夫をしてきた任意開示書類のほうが萎縮してしまうというおそれもあるかもしれませんので、そこについても、基本的な考え方としては、単に任意開示書類の虚偽記載のみをもって金融商品取引法の罰則や課徴金が課されることにはならないということをお示ししているということでございます。

 基本的にはそういうことで御理解いただければ、普通の企業さんが真面目に取り組んでいらっしゃる分には何ら心配は要らないというふうに考えているんですけれども、あえて申し上げると任意開示書類についての悪用といいますか、意図的に悪いような使い方をしている場合は、全て無罪放免というわけにはいかないかもしれませんということを小さな留意としてつけているつもりでございます。

 例えば、明らかに重要な虚偽記載が任意開示書類にあるということを知りながら、ここをまさに見てくださいというふうにして参照をする。そこまでやってしまうと、さすがに有価証券報告書自体に重要な虚偽記載に当たり得るような場合がある。極めてレアで、真面目にやっていらっしゃる企業さんについては基本的に考えにくいと思うんですけれども、そういった場合を除けば罰則等が課されることにはらないということで、私どもとしては考え方をお示ししているところでございます。

 取りあえず、以上でございます。

【鳥海メンバー】  承知いたしました。ありがとうございます。

【水口座長】  ありがとうございます。こうやってお話を伺うと極めて常識的な御対応で、そのとおりだなと思っております。

 ほかに何か御質問等ございますでしょうか。

【岸上メンバー】  岸上ですけれども、よろしいでしょうか。

【水口座長】  岸上さん、吉高さんの順番でお願いします。岸上さんからお願いします。

【岸上メンバー】  ありがとうございます。廣川様、いろいろと御紹介いただきましてありがとうございます。

 報告書の中で、サステナブルファイナンスに明示的に関係するところから御紹介いただいたと思いますが、あえてそこで紹介いただいてないところに関して、サステナブルファイナンスの視点から2つほどコメントと質問をさせていただければと思います。

 1点目はコメントですが、これまでの日本の市場の傾向としまして、細則主義に基づいて開示をするということで、なかなか不透明な経営環境がある中での開示がしにくいという習慣があるとまとめられていますが、私もそのように感じております。他方、紛争や気候変動など不透明な経営環境が増えていく中、柔軟な開示の必要性も高まり、以前からの不確かな情報の発信への抵抗とのバランスをとるのは、なかなか課題になるのではないかと思いました。

 2点目ですが、重要情報の開示タイミングについてですが、こちらが一般的に引け後での開示になっているところをもう少しタイムリーにという議論ですけれども、市場の取引という観点からしては、そういった議論がされることは理解できます。他方、サステナブルファイナンスの視点から見て、このタイミングを早めることが最善案なのか、ご意見をお伺いしたいです。市場が最も活発な時間帯での開示を促すことでその情報により短期的な取引を促すことにならないのか、引け後のタイミングの方がよいのか。一方で、日本の引け後であったとしてもヨーロッパの市場が始まるタイミングになるかと思いますので、それもまた、ベストなタイミングではない可能性があることは理解できます。なかなかどのタイミングも難しいとは思いますが、廣川様含め、この有識者会議のほかのメンバーの方からも、サステナブルファイナンスの視点からタイミングについてもし御意見があれば、伺いたいと思いました。

 以上です。ありがとうございます。

【廣川企業開示課長】  ありがとうございます。2点目はなかなか難しい論点だと思います。

 1点目につきまして、若干感想めいていますけれども、不透明の中でもどうやって将来の情報を書いていただくかというところを、よいプラクティスをできるだけ御紹介しながら促していくということも大事と思ってございまして、既に積極的に開示を始めていらっしゃるような会社さんもございます。有価証券報告書の中で気候変動に対してシナリオ分析をされて、しかも、影響額を数字で開示されているような会社さんもあったりします。そういった開示を私ども開示の好事例集、ベストプラクティス集というのを作って御紹介をしており、役所としても応援していますというメッセージ、これからもますます事例が積み重なっていくと思いますので、そこにチャレンジしているいい開示例というのを後押しできればと思ってございます。

 それから、重要情報の開示タイミングについては、おっしゃるとおりサステナビリティに限った話ではございませんで、例えば、取締役会で重要な決議が午前中にあったというときに、基本的には情報管理をしっかりしていただくんですけれども、企業の中で重要な情報がたまっている期間が長ければ長いほど、インサイダー取引等の不正取引を引き起こしてしまうリスクをより高めることになりますので、物事が決まったりとか重要なことが起きたら、できるだけ速やかに開示していただくのが基本だということと、あとは、岸上さんが今おっしゃられたように、引け後のタイミングで開示をした場合には、例えば、海外に重複上場していたときに、国内の投資家さんというよりは、海外の投資家さんのマーケットで最初にその情報が消化されてしまうということがどうなのかというような問題意識があったところではあります。

 ただ、サステナビリティ情報に関しましても、何か大きな変動があったときには、時に重要情報ということでタイムリーディスクロージャーしなければいけないものは確かに出てくると思います。ディスクロージャーワーキング・グループで議論していたときの文脈は少し違う文脈だったかなと思いますが、重要な御指摘ですので、ディスクロージャーワーキング・グループに参加いただいていた委員の方々もこの有識者会議に入っていただいていらっしゃることもありますので、もし御意見等あれば頂戴できれば幸いでございます。なお、ディスクロージャーワーキング・グループではお世話になりました。ありがとうございます。

【水口座長】  井口さんと高村先生ですかね。何かコメントありますか。今のタイミングについてですが。特段、少し考えていただいて。井口さん、どうぞお願いします。

【井口メンバー】  あとで、コメントさせていただきます。

【水口座長】  それでは、お手が挙がっていますので、吉高さん、林さん、長谷川さんの順でコメントいただいて、まとめてお答えいただこうかと思いますので、よろしくお願いします。では、吉高さん、お願いします。

【吉高メンバー】  ありがとうございます。私のほうからは簡単に、御質問させていただきたいと思います。

 (金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ)報告書について人的資本のところが非常に丁寧な方針になりましたこと、とても感動しております。ありがとうございます。ところで、1点、12ページの一番最後のパラグラフで、「我が国においては、相当程度多いGHGを排出する企業は、 地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき、Scope 1 ・ Scope 2 の GHG 排出量 の公表が求められている」というこの文章ですけれども、この法律は義務化されている企業とそうでない企業が明確に規定されていたかと思いますが、このような表現になったのか何か背景はございますか。特に脚注に、法律は国内事業所の GHG 排出を対象としていると書いてあるが、今回の改正で、確かに、企業ごとではなくて、事業所ごと、工場ごと変わったので、それをなぜ特出ししているのかなと思いつつも、本法律は報告義務であり、ディスクローズすることとどう整理してこのような文言になっているのかを教えていただければと思います。ありがとうございます。

【水口座長】  では、林さん、お願いします。

【林メンバー】  ありがとうございます。私は感想的なところ2点、簡単にですけれども、14ページのところの注釈32番なんですが、この人権のところで、今回は男女とかということについてすごくきっちり書いていただいたんですが、国際化を図っている我が国においては、恐らく、外国人の人権とか、あるいは、そもそも国籍のない方々に人権とかという話があって、今後考えていく必要があると指摘があったというふうに、指摘にとどまっているんですけれども、もし可能であれば、もう少し「今後考えていく必要がある」というような感じで止めていただいてもいいかなというふうにちょっと思いました。これは感想ですので、また御議論ください。

 それから、あともう一つ、15ページのサステナビリティ基準委員会の役割の明確化というふうに書いてあるんですけれども、役割もそうなんですけれども、これほかの会議体でも同様なんですが、海外でつくったルールを訳すだけじゃなくて、それに加えて、注釈でとどまるのか、あるいは、そもそも1からつくり直すのかというところは、いつも悩ましいなというふうに思っていて、個人的には、できるだけ日本流というのはなしで、日本に特性のあるどうしてもというところだけ補足するような形で議論を、SSBJさんが決まった上で、進めていく上で御検討いただければというふうに思っております。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。では、長谷川様、お願いします。

【長谷川メンバー】  ありがとうございます。今回、経団連も金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループには議論に参加させていただいておりました。有価証券報告書に記載欄を設けて、企業にとって重要と考えられるサステナビリティ項目に関する情報を開示するという方向性が示され、投資家との対話の基盤である有価証券報告書において、一覧性のある形でサステナビリティ情報が開示されるということは、サステナブルファイナンスも非常に促進されるのではないかと期待しています。

 金融庁にはぜひ、企業の円滑な開示のためにも、必要なガイドラインの整備や、ベストプラクティスの収集などをお願いしたいと思っております。

 また、私、経団連でダイバーシティー推進、女性活躍推進も担当しておりますので、今回、多様性に関する項目のところで、男女賃金格差等につきまして、女性活躍推進法の枠組みに沿った形で開示されるようになったということも、ダイバーシティー、女性活躍推進がさらに推進されるのではないかと期待をしております。

 今後、サステナビリティ開示の具体的な基準については、ISSBで議論されていくと理解しております。ISSBの開発する基準は、特定の法域のみではなく、国際的に広く使われるグローバルベースラインとなるためにも、日本からも積極的な意見発信が必要だと考えております。経団連でも、ISSBが公表している全般的要求事項と気候関連開示基準の公開草案に対して意見発信を行っていく予定でございます。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。

 では、ここまでのところで、コメント的なものもありましたけれども、もし御質問に関して御回答があればと思いますが、よろしくお願いします。

【廣川企業開示課長】  ありがとうございます。

 最初に、吉高さんからいただいた12ページのところ、ちょっと分かりにくい記述になってしまっていて、大変恐縮です。今回は、有価証券報告書の中でGHG排出量の記載、義務づけまではしておりませんが、議論の過程の中では、脚注24にあるように、諸外国の規制案も出つつあり、ISSBの基準案も出ているという国際的な流れを踏まえると、GHG排出量についても開示を義務づけるべきという御意見も複数ございました。

 いろいろ議論した結果として、最終的には義務づけまでは至らなかったわけですけれども、こうした声が強かった中で、できるだけ前向き、積極的な開示をこの報告の中でも促していくということで、各企業の業態とか経営環境を踏まえた重要性の判断を前提としつつ、特にScope1・2については積極的に開示をすることが期待される。

 さらに、もうちょっと言えばということで、なお書きをつけているということであります。温対法のほうのは、今お話もいただきましたように、国内事業所が対象なんですが、企業の中での一事業所であったとしても、GHG排出量を計測して公表しているわけですので、既に企業内でそういったことをやる仕組みはある。であれば、投資家の投資判断や企業価値との関係で、グループ全体としてもGHG排出量が重要性を持つ可能性というのは高くなってくるという一種の蓋然性ですね、そういったことが言えるのではないかということで、企業がその重要性を適切に評価をした上でGHG排出量の開示を検討することが期待される。ですので、有価証券報告書で開示を検討することが期待されているのは、何も温対法の公表対象の事業所の部分だけということではないということでございます。

 それから、人権について、1点だけ補足を申し上げますと、ISSBは、気候変動の基準だけではなくて、今年の年末には恐らく、アジェンダコンサルテーションということで、ほかの分野の基準づくりについても広くグローバルに意見を集めて、今後どの分野の基準をつくるかということを議論していくことになると思います。国際的には、今まさにおっしゃっていただいた人権とか、あと、ほかの分野で言うと生物多様性といったアジェンダを聞きますので、そうした中でどういう取り上げられ方をしていくのかが今後の我が国におけるこのサステナビリティの分野の開示の在り方にも大きく影響をしてくるかと思います。

 その観点から、長谷川さんからも御意見いただきましたけれども、ISSBがグローバルベースラインとなる基準をつくっていくと言っていますので、まさに日本から国際的にしっかりとした意見発信をしていって、ISSBの基準にできるだけ日本の考え方を反映していき、そのグローバルベースラインをうまく活用しながら、どういうふうに日本で開示をしていくかということを考える。私どもとしても、常にグローバルなことを意識しながらやっていくということが大事であると考えてございます。

 ありがとうございました。

【水口座長】  ありがとうございました。

 ディスクロージャーワーキング・グループの報告書はこれで確定しているわけですので、ここから直るということはないと思うんですけれども、おっしゃっていただいたように、今後もこのワーキング・グループは議論を継続されますし、開示内容については、SSBJの議論もあるということですので、林さんからありました国際基準と国内基準の議論は、国際会計基準と国内基準の関係と同じでありまして、SSBJのほうでもどういう対応をするか検討されていくのかなと思います。

【井口メンバー】  廣川課長がおっしゃったことの繰り返しになるかもしれませんが、私の理解では、審議会の議論の全体の中では、サステナビリティ情報は重要である。ただ、四半期開示の議論にも出てきましたが、短期の視点も大事である。短期というのは、短期的な取引を促進するという意味ではなくて、サステナビリティの取組の進捗等を確認したいという意味で短期の情報も大事であるということでした。ですので、長期も大事だし、長期の見方に資する短期の情報も重要というふうに議論されたと理解しています。

 一方、ここにある適時開示は、日経新聞さんでも取り上げられておりましたが、実態を見ると、日本企業は海外企業と比べて有効に活用していない。そこが課題になったというふうに思っています。ですから、先ほど申し上げた観点で、重要な情報、つまり、投資家の長期的な判断に資するような情報、そういうのについては適時的に開示するということですので、岸上さんが御懸念の部分もあるかもしれませんが、ここで言っているのは、短期的な取引を促進するために入れられたものではないと理解しています。

 以上でございます。

【水口座長】  ありがとうございます。短期的な取引を促すんじゃなくて、適時開示ということですよね。

【井口メンバー】  はい。ありがとうございます。

【水口座長】  ありがとうございます。長谷川様から、今お手が挙がっていると思ってよろしいでしょうか。

【長谷川メンバー】  すみません。下げるのを忘れていただけです。

【水口座長】  ありがとうございます。

 ほかにもしコメントあればいただきますが。よろしいでしょうか。ちょうど時間もよいところですので。それでは、ディスクロージャーワーキング・グループの報告の議論はここまでにさせていただきまして。廣川様、どうもありがとうございました。

【廣川企業開示課長】  ありがとうございました。

【水口座長】  続きまして、今日の3つ目のテーマですけれども、本有識者会議としての報告書について、前回の皆様からの御意見を踏まえて、事務局のほうで修正案を作成していただきましたので、こちらについて御報告をいただいて、皆様から御意見をいただきたいと思います。

 それでは、西田さん、よろしくお願いします。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  資料の3つ目につきまして、簡単に説明させていただきたいと思います。

 前回にご議論いただいたものの反映でありますので、変更点のみに絞ってご説明させていただければと思います。

 まず、タイトルですが、前回の御議論を踏まえまして、より新しい社会を切り開いていくための報告書であるとの位置づけをはっきり記述させていただきました、それから、進捗も含めてまとめつつ、今後の課題と施策の方向性を示しているものだということで、第2次の報告書というタイトルとさせていただいています。

 「はじめに」とある1ページ目ですが、最後のところですけれども、サステナブルファイナンスの推進が地球的な課題であるということ、それから、G7の議長国を来年務めるということもありますので、積極的に発信していくことが必要だということを記載させていただいています。

 次の2ページ目から3ページ目のところ、図1、2という図表がございます。こちらは前回の議論を踏まえて、個別の項目について幾つか書き足したりとかということをさせていただきました。また、こうした形のようなものをウェブサイトで出して出来るだけ随時に更新していくことが必要なのではないかとの御指摘を前回いただいたかと思います。ウェブに合うような形で出させていただいて、随時アジェンダの進捗次第で適時更新をさせていただくことが考えられるかと思っています。英文での発表が重要との指摘もありましたので、同様に随時発信は工夫していきたいと思います。

 4ページ目のところは、大きく幾つか組み替えをして様々な経過や状況変化をここでまとめて記載する形とさせていただきました。内容面としては、5ページ目から6ページ目のところに、カーボンクレジット市場についてよりしっかりと記述いたしました。

 また、ブレンデッドファイナンスが重要ではないかとのご指摘もいただいたかと思います。国際開発金融などを例示としながら、民間資金の導入を促す1つの手段として、公的な主体と民間の主体がそれぞれに資金を出し合うブレンデッドな手法の重要性を記述しています。

 それから、政府として、今後10年間で150兆円の投資を実現するため、仮称ですがGX経済移行債その他様々な方策を検討していく旨が骨太の方針等でも記載されておりますが、この辺りもご紹介させていただいているところです。

 それから、社会的な課題について、前回TNFDについて記載がありましたが、これに加えて、ブルー経済に係る国連のイニシアチブや、人権についての様々な動きというのを追加させていただいているところです。

 8ページ目では、前回御指摘いただきました、新しい資本主義に向けた取組みの重要性、これとサステナブルファイナンスの推進というものが軌を一にするものであるということを記述した上で、9ページ目の末尾になりますけれども、社会的課題が広く認識されて、新しい持続可能な社会の形成に資するように、報告書の表題もまとめさせていただいたことを記述しています。

 13ページは、企業開示の充実です。先ほど議題の2つ目のところでご議論いただいたディスクロージャーワーキング・グループの報告書などについてまとめています。

 15ページ目、アセットオーナーと記載のあるところですが、幾つか御指摘いただきましたので修正してございます。1点目は、スチュワードシップ・コードが軸になるものであろうという点をはっきりと記載したこと、それから、個人の役割や個人の認識をより高めていただくことが重要なのではないかというような御指摘もありましたので、その辺りも記載をさせていただきました。

 それから、19ページでございます。ESG評価・データ提供機関ということで、こちらは先ほどの今日の議題の1つ目として議論をいただいたところでして、新たに記載をまとめさせていただきました。

 ソーシャルボンドについては、24ページになりますが、最後のパラグラフ2つ目ですが、ソーシャルな課題について、日本社会について一旦はまとめたものですが、これを国際的に発信していくことが望ましい旨、それから、必ずしもボンドということでなくても、事業についてまとめた文書となりますので、融資も含めて参考になるだろう、例えば、地域の金融機関におけるSDGs融資などにも参照していただけるかもしれないので、こうした点を念頭に浸透を図っていく旨を記述いたしました。

 それから、26ページ目以降が金融機関の機能発揮についてですが、幾つか指摘をいただいたかと思います。1点目は、金融機関の機能発揮については、金融機関自身が将来的なリスクをどう管理するか、それと併せて事業者への支援と昨年6月の報告書でも両方で書いているわけですけれども、ややリスク管理の記載が薄くなっていたとの御指摘をいただいたかと思います。物理リスクも含めて少しバランスを取ったような形で記載をさせていただきました。

 次に横断的課題ということで、29ページ以降を御覧いただければと思います。2は、先ほどもありましたが、カーボンクレジットについて記載させていただきました。また、3のインパクトについて、その重要性をはっきり書かせていただく、また、4技術開発とスタートアップについて記載していましたが、地域における中小企業の役割も重要であるという点をより強調して書いてはどうかということ御意見をいただき、地域の中小企業の重要性、政府としての支援策の浸透などを明記させていただきました。

 それから、5データの収集ですが、33ページの冒頭の2パラ目と3パラ目のパラグラフになりますけれども、降水量とか温度といった細かい、粒度の高いデータというのが今後より具体的に、例えば、企業が様々なリスク管理であるとか地域における対応を進めていく、またこうした点で金融機関が企業を支援するというために、精度の高いデータが重要になるのではないかということで、文科省、環境省等と連携し、金融機関や投資家を含む実務家にとって有用な気候変動のデータを特定し、活用方法や留意点と併せてまとめていくということを現在検討中でございまして、こうした検討の方向性を、現在書き得る範囲のところで記載させていただきました。

 6が専門知見や多様なステークホルダーとの対話についてもかなり御指摘いただいたかと思います。大学生などに限らず、いわゆるリカレント教育を含めた施策の見通しが重要ではないかということ。また、大学において社会課題の解決に向けた講義というものは既に進んでいますので、こういうものとの連携。

 それから最後になりますが、35ページ、フォローアップと対外発信ということで、一番最後の3つ目のパラグラフを御覧いただければと思いますけれども、当有識者会議としてフォローしている施策の全体像や実施状況について、サステナブルファイナンスを取り巻く環境が著しいことも踏まえて、随時更新をしていく。こうした全体像は金融庁ウェブサイトなどで随時更新をしていく。また、それから、関係省庁と連携をしまして、政府のサステナブルファイナンス政策の全体ロードマップというものを適時に更新して、これも一体的に発信していく。また、G7の議長国を来年、日本として務めますけれども、こうしたことも勘案しながら、国際的な議論に積極的に貢献するように、積極的に打ち出していくという趣旨を書かせていただいております。

 また関連して、すいません前後してしまって恐縮ですが、1ページ目、会議の位置づけについて、昨年6月の有識者会議報告書公表以後も、当会議として随時検討を重ねてきたこと、今後も様々な関連する施策をフォローアップし全体状況を取りまとめていくこと、このような点を記載させていただいているところです。以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。

 前回の議論の中で、昨年の6月で有識者会議が終わったというふうに思っている人もいるのではないかという御指摘がありました。「はじめに」のところに「今後も会議を継続し」というふうに書いていただき、さらに、関係省庁での連携した対応などということで、省庁間の連携ということについても書いていただきました。ありがとうございました。

 また、補足として、報告書のタイトルなんですけれども、実は私、一番最初は、プログレスレポートということで申し上げていたかと思うんですが、いろいろ聞いてみますと、実は最近、プログレスレポートなるものはあちこちで出ているということもあって、今回、そういうものと少し見分けがつくように、第2次報告書という形で名前をつけていただきました。

 それから、2ページ、3ページのところの図なんですけれども、これも私からお願いしたところなんですが、特に3ページの図2を見ていただきますと、ちょうどこの6月を中心にここまでの進捗と7月以降の課題ということで、この報告書全体が進捗の報告と今後することの方向感を示したものということですので、一まとめにしてみるとこういう図になるのかなという、これがまとめの図としていいのかなと思いまして、あえてこの場所に入れていただくということをいたしました。

 また、先ほども御説明がありましたように、最後のところで、この報告書を年に1回作るだけではなくて、随時更新するという必要があるのではないかという御指摘を前回いただきましたが、その点について、一番最後のページ、35ページのところに、金融庁ウェブサイト等でというふうに書いていただきましたので、これは今後できていくのかなと期待しているところであります。

 それでは、すでに大分皆様からの御意見を反映して書き込んでいただいていると思いますけれども、その上でさらに御意見等あれば、いただきたいと思っております。声を上げていただくという方向でよいのですけれども、早速、伊藤様からお手が挙がっているようですので、伊藤様、お願いいたします。

【伊藤メンバー】  ありがとうございます。全銀協、三井住友銀行の伊藤です。前回発言しなかったものですから、今回、まとめて御発言させていただきます。

 はじめに、第2次報告書案の取りまとめ、事務局の皆さま、ありがとうございました。銀行界といたしましても、非常によくまとめていただいておりますし、また、今後も適時フォローしていただけるということですので、内容について賛同させていただければと思っています。その上で、今後フォローいただくに当たっての視点として、私どもとして考えております重要な視点を2点ほど申し上げさせていただきます。

 1点目は、日本が今後アジアをこういった分野でリードしていくという視点を忘れてはならないと考えております。当然、今後COP26からCOP27に向けて、さらにこういったグローバルなルールメーキングの動きが官民双方で複雑かつ同時並行的に進んでいくと考えています。このような中、先日、シンガポールで立ち上げられたGFANZ/APACネットワークに参加してまいりましたが、その際に感じましたのが、アジアの中においては、気候変動問題を含めて、邦銀、特に大手行の取組みが非常に進んでいるということですとか、あるいは、アジア各国においても経済的にも技術的にも、日本政府や日経企業に対してまだまだ支援を期待いただいているという場面も多く、アジアのトランジション実現に向けて、日本に対する大きな期待を感じた次第です。

 そういったことも踏まえ、ぜひ今後も官民一体となって、アジアにおけるリーダーシップを果たしていくという視点で、フォローアップを考えていく必要があるのではないかというふうに思っています。

 2点目は、先ほどの議題と関係性が高いものですが、大事な視点が開示であると思っています。我が国のグリーントランスフォーメーションが進んでいく中で、特に我が国は、御存じのとおり、グリーン、ブラウンの二元論ではなく、トランジションが重要だと位置づけてきたわけですから、このトランジションの戦略や目標、パスウェイをしっかりと投資家や私ども金融機関に示していただくということが大変重要だと考えておりますし、また、そういうことを通じて世界からも資金を呼び込んでいく必要もあると思っております。こうした日本のグリーントランスフォーメーション戦略全体の基礎となるものが開示だと思っていますので、特に開示の充実については引き続きフォローアップしていただきたくお願い申しあげます。

 私からは以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。フォローアップをきちんとしてくださいということと、アジアとの連携について、もし可能なら少し書いていただいてもいいのではないかなと思いました。

 すいません。ここから先なんですけれども、今日、この報告書を固めたいと思いますので、皆様からのコメントで、ここを修文してほしいということがあれば、これを修文してくださいというふうに言っていただければと思いますし、特段修文の必要がなければ、一応これはこれでよいですよということでコメントいただければと思います。簡潔にお願いできればと思います。

 では、小沼様、林様、足達様、藤井様、角様という順番で、お手が挙がった順番で行いきたいと思います。小沼様からお願いします。

【小沼メンバー】  ありがとうございます。修文については特にございません。ここまでまとめていただいてありがとうございました。

 補足ということで、3ページにまとめていただいた全体の進捗の中の市場機能の発揮の4つ目ですかね。情報プラットフォームの件でございますけれども、こちらの件は、これまで、水口座長も含めてこの会合に参加されていらっしゃる何名かの方にも大変な御協力をいただいてここまで議論を進めてまいりまして、この3ページでは、7月の立ち上げということで記載していただいておりますけれども、今、最終的なシステムのテスト等取り組んでおりまして、目標は7月の3連休が明けた19日の火曜日にスタートしたいということで、関係者と作業を進めておるところでございます。その段階でJPXのホームページのトップにバナーが貼られまして、プラットフォームへ誘導する形になると思います。本当にありがとうございました。

 これまで、これからの実務も含めて、証券界全般に御協力いただいて進めておりますけれども、何はともあれ、認知をいただくプラットフォームとして皆さんに使っていただきたいと、関係者には、一手間かかるところを入力いただきますので、みんなで使っていただくということでお願いしたいと思っております。引き続き、皆様からも御支援賜ればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【水口座長】  ありがとうございます。

 それでは、林様、お願いします。

【林メンバー】  ありがとうございます。内容については、特に修文ということではないんですが、3ページの取りまとめの表、私はこの表はいつもいいなと思っているんですが、御案内のとおり、サステナブルファイナンスはこのレポートの中以外でも本当にいろいろなことがいっぱい起きていて、例えば、今回ですとソーシャルボンドの話が入っているんですが、一方で、例えば、近々、グリーンボンドの新しい原則をまた環境省さんのほうが発表されたりとかいろいろなことが起きていて、でも、それを入れ始めると切りがないので、必ず全部を入れる必要はないんですが、どこかでこの表だけにとどまるものではないということを注釈に入れておいていただくと、誤解を、例えば、もうグリーンボンドは関係ないと思われてもいけないですし、例えば、全銀協さんでこんなことをやっているとか、経団連さんでこんなことをやっているとか、日証協でこんなことやっている、いっぱいやっていることがあるので、どうぞ、ほかにもありますということをどこかで一言、どう書くかはお任せしますけれども、表だけを見る人も必ずいるので、表の脚注か何かにその旨を少し加えていただくとよろしいかと思いました。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。グリーンボンドガイドラインのことが抜けていますね。気がつきませんでした。環境省の方もオブザーバーでおられるのですが、すいませんでした。私も、見ているのに。失礼いたしました。そこは直したいと思いますが、おっしゃるように、これだけではありませんということですよね。

 それでは、足達様、お願いします。

【足達メンバー】  これまでの意見を丁寧に反映いただきまして、ありがとうございました。

 私からは、今の林メンバーからの御提案に便乗させていただくことから発言します。3ページ目の図は画期的だと思います。そこで、脚注扱いで結構ですので、将来に向けたサステナブルファイナンスのロードマップを展望していく、あるいは見据えていくというニュアンスも書き加えていただくことを提案したいと思います。将来のところを時系列的に区切っていけば、ロードマップにすることはそれほど大変ではないとも思います。

 もう一点は、31ページのインパクトについてです。記載の金融庁さんとGSG国内諮問委員会との勉強会には、私も参加をさせいただいておりますし、水口座長にもリードをいただいております。第1フェーズが終わりましたが、今の日本国内の状況を見ますと、経団連さんが新たな報告書を出されたり、骨太の方針にもインパクトというキーワードが新たに入ったりというようなことで、機運としては非常に盛り上がりを見せている。皆さん、インパクトという概念なり、インパクト金融、インパクト投資が持つ意味というのを深く理解され始めているのではないかなと思っています。

 「勉強会でまだ続けるのですか?」というような御意見もあるように聞いております。フェーズ2については、本文に「認知向上を図ること」「インパクト投資に呼び込むよう、投資手法を進化させていくこと」と書いておられますが、例えば、「インパクト計測手法の検討を行う」等、ここをもう少し具体的に書き込めないかなと思います。皆さんがもやもやしておられること、悩んでおられることに焦点を当てて一歩前に進めていく。勉強会から一歩進んで、検討会というぐらいになっていくとよいと思っておりまして、「インパクト計測手法に関する検討」というような言葉をどこかに盛り込んでいただければありがたいというのが私からの提案です。

 以上です。ありがとうございました。

【水口座長】  ありがとうございます。「インパクト計測手法の検討」といった文言を少し入れていければと思います。「インパクト志向金融宣言」といった宣言も出ておりまして、民間でも非常に動いているということであります。

 それでは、藤井さん、お願いいたします。

【藤井メンバー】  水口座長、ありがとうございます。また、短時間でここまで仕上げていただいた事務局の方々、本当にありがとうございます。私からは、コメント2点と、質問が1点です。

 1つ目のコメントは、足達様、林様のコメントとも一致するんですけれども、本件、非常に網羅的である一方で、かなり広範な内容になっています。第1次報告書では「ショーケース」という表現を使いましたが、さらに「てんこ盛り」になってきていて、普通の読み手の方からすると頭が混乱するようなところがあると思いますので、ロードマップやその中の優先順位とかタイムラインといったことについて御検討いただければというのが1点目です。

 2つ目は、より具体的なんですけれども、横断的課題の29ページから30ページのトランジションのところです。トランジションについての記載は、JPXさんの中間報告書を29ページから30ページにまとめた上で、30ページの「特にトランジッションについては」以下が有識者会議としての認識という流れになっていると思いますが、この記載の趣旨は理解した上で、かつ、ここに至る経緯もよく分かっているんですが、1年目の第一次報告書のときにも議論したとおり、いわゆる定性的な開示要素といったものについては、「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」の中ですでに相当程度示されています。今のこの30ページだけ見ると、スクラッチでトランジションについての取組をするような語感に読めるので、クライメート・トランジション・ファイナンスの基本指針で定性的な部分は示されているという流れが分かるような形で御記載をいただいたらいいんじゃないかと思います。

 最後に、35ページですけれども、主語がよく分からないので確認のご質問です。2つ目のパラで、「サステナブルファイナンス有識者会議については・・・実施状況・全体像について、継続的にフォローアップを行い、随時更新・発信を行っていく」という記載がある一方で、その3つパラグラフ下で、「また、フォローを行っている施策の全体像や実施状況については・・・随時更新していくことが望ましい」というふうになっています。上では更新・発信を「行っていく」としている一方で、下では「望ましい」としていて、記載の齟齬があるように思ったのですが、ここの記載内容に至った経緯を教えていただけますでしょうか。

 私のほうからは以上です。ありがとうございました。

【水口座長】  それでは、今の点は後でお答えいただくことにしまして、角様、お願いします。

【角メンバー】  ありがとうございます。生命保険協会といたしましても少しコメントをさせていただきます。特に修文をお願いするようなところはございません。

 私どもにとりましても、サステナブルファイナンスに関する課題等を把握して次の行動につなげられるものとして、大変有意義に受け止めております。取りまとめいただきました座長及び事務局の皆様の多大な御尽力に感謝申し上げます。

 その上で、生命保険業界の進捗状況、及び、この報告書の記載で期待する点につきましてコメントをさせていただきます。

 まず、生命保険業界における進捗でございますけれども、既に多くの生命保険会社がスチュワードシップ・コードの受入れ、PRIへの署名を行っており、これらの枠組みを通じまして責任投資の実効性向上に取り組んでいるところでございます。例えば、昨年は、全ての運用資産を対象にESGインテグレーションを開始する動きが見られたというようなことがございます。また、大手生保4社がネットゼロ・アセットオーナー・アライアンスへ加盟するなど、脱炭素にかかる国際的な取組にも積極的に参画して、中間目標の設定や達成に向けた行動につなげているところでございます。

 それから、本報告書の記載の中で期待するところ、2つ特にございまして、1つがトランジションファイナンスですけれども、機関投資家といたしまして積極的に取り組む必要があると認識しているところであります。この点、業種別ロードマップは世界をリードする取組であり、かつ、投資家にとっても参考になるということで、積極的に活用していく必要があると考えております。

 一方で、トランジションファイナンスは多排出業種への投融資となりまして、通常、実行に伴い、自社の運用資産ポートフォリオのGHG排出量が増加するということになりますので、投融資先が着実にGHGを減らしていくことがファイナンスの前提となります。この点、今後、定量的なパスウエイの策定などより具体化が進めば、投資家にとって安心して取り組めるものと期待をしております。

 もう一つが気候変動スタートアップ等への投資でございますけれども、この論点はインパクト投資とも関連して、脱炭素社会の実現に向けて大変重要な取組と認識しております。報告書にも記載がございますように、収益化まで多くの期間を要する点は課題でございますので、実際の取組は各社の判断となるものの、環境省や金融庁などが投資促進に向けた環境整備に取り組んでいただくことが投資家を後押しすることにつながるので、大変期待しているところでございます。

 以上です。

【水口座長】  ありがとうございます。

 この後、岸上様、小野塚様、手塚様、渋澤様、吉高様と並んでおりまして、その順番で行きたいと思うんですが、だいぶ長くなりましたので、ここで一旦、西田さんから、先ほどの藤井さんの御質問も含めて、もしコメントがあればいただきたいと思いますが。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  全体像とかロードマップとかということをよく示していくことが必要じゃないかと。また、網羅性も、グリーンボンドはすいません盛り込ませていただきますが、それ以外にも様々施策があるので、分かるように記載をしたほうがいいんじゃないかという御指摘をいただいたと思いますので、反映させていただきたいと思います。

 藤井さんからいただいた広報・周知の話ですが、確かに記載が揺れている部分がありまして、1ページのところで、有識者会議として今後外に発信していくということをまず書いてあり、それから、35ページのところで、有識者会議として発信を行っていくと記載があって、その後のご指摘のいただいたところで、金融庁ウェブサイトで発信していくことが考えられるという記載になっています。

 実態としましては、例えば、有識者会議としてこちらの報告書を出していただくということそのものが非常に重要な浸透策だとも思われますし、金融庁としても、有識者会議の報告書を掲げていくということじゃなくて、いろいろな場面で工夫をして発信していくわけですので、主体は双方それぞれかと理解しておりますが、わかりづらいことのないよう、具体的な記載は水口先生ともご相談して明確化したいなと思います。

【水口座長】  ありがとうございます。そこは私のほうでもまた改めて見ていきたいと思います。

 では、岸上様、小野塚様、手塚様、渋澤様、吉高様、井口様という順番で行きたいと思います。岸上様、お願いします。

【岸上メンバー】  ありがとうございます。初めに、皆様もおっしゃっていらっしゃいますが、前回の多様な意見を反映した形で報告書を更新いただきまして、本当にありがとうございます。

 その上でまず1つ、そもそもの質問ですが、もしこのように感じているのが私だけであれば無視していただいて結構です。題名を持続可能な新しい社会を切り開いていく、としていますが、ここはちょっと真に受け過ぎなのかもしれませんが、果たしてこの有識者会議としてこの新しい社会を約束できるのかと思いまして、決意を新たに社会を変えていくというところは理解できますが、本当に新しい社会を提供できるのかということで、皆様の御意見を伺えたらと思いました。

 もう少し具体的なところですが、10ページのところで、アセットマネジャーがアセットオーナーのESG方針に基づいて行動を取るということが書いてあります。理想としてはそうだと思いますが、前回のPRIの議論でもありましたとおり、まだまだアセットオーナーとしてそういった体制が整っていないところも多い中、果たしてアセットマネジャーがアセットオーナーを待つような形でよいのかどうかと思いました。ですので、その後の(3)の市場機能の発揮のところで、アセットオーナーのそもそもの役割というところがあるかと思いますので、そもそものアセットオーナーの役割に沿った形で、能動的にアセットマネジャーも行動が取れるような形での報告書の書きぶりがあるとよいのではないかと感じました。

 また、29ページのところで、タクソノミーとトランスミッションの整理をしているところですが、先ほど、概要の部分に関する林委員のコメントにもつながりますが、グリーンウオッシュの整備のところで環境省のグリーンファイナンス検討会の内容も関連してくるのではないかと思いましたので、ここで加えていただくのもよいのではないかと感じました。

 そして、34ページのところで、人的資本の人材の採用のところですが、金融機関における科学的な知見の重要性と記載があると思いますが、昨今の紛争やAIの活用といった社会情勢や傾向がある中、理科系の知見だけではなく、人文科学の知見も必要になってくると思いますので、その点も御検討いただければと思います。

 以上となります。

【水口座長】  ありがとうございました。それでは、修文ですかね。少し検討させていただければと思います。
 では、小野塚様、お願いします。

【小野塚メンバー】  小野塚です。まとめていただきありがとうございます。幾つかリアクションも含めてお話しさせていただきます。

 1つ目は、先ほど足達さんからありましたインパクト投資の部分については、1つ、計測指標についての検討会というところがありましたけれども、そこにもとどまらず、インパクト投資の実質化を図るというような文脈を入れていただけるとよいと思いました。よりこの市場を創造していくということが重要なのではないかと思っております。

 2つ目、先ほどの岸上さんのお話ですけれども、私としては、アセットマネジャーの側の積極的な取組というのはもちろん期待するんですが、一方で、アセットオーナーのこのESGあたりの知見の増強というのはまだまだできる部分ですので、ページ数で言いますと11ページの一番最初のところに、アセットオーナーの便益の向上に貢献していくことが求められるといったところ辺りに、ぜひ、アセットオーナーのESG、サステナビリティ等の知見の増強に期待するというような一言を入れていただけるといいのではないかと思いました。

 それから、最後のところで、個人投資家、それから研修等の話が出てきますけれども、できましたら、この辺りのどこかに、「官民含めて」というところがあるんですが、「業界団体等」というお言葉を入れていただけますと、よりそれに関わる団体のほうからのこういった議論へのインプット、シェアリングがしやすいかなと思います。

 よろしくお願いいたします。

【水口座長】  ありがとうございました。

 それでは、手塚様、お願いします。

【手塚メンバー】  前回、細かくいろいろ御指摘申し上げたことを全部丁寧に御採用いただきまして、ありがとうございます。この文章について、特に私から修文のお願いとかはないです。

 先ほど全銀協さんからお話がありましたけれども、これは前回も私は申し上げましたけれども、このトランジションに関する日本の取組というのは、世界的に見ても非常に進んでいる分野だと思います。実際にこういうことをやっているということを私がいる鉄鋼産業のセクターの中で紹介したら、こういうアプローチこそ自分たちは待ち望んでいたというような声が様々な国の同業他社からも聞こえてきました。ということで、恐らくアジアの新興国のように、産業が今著しく伸びていて、投資が活発に行われている地域・国の人たちにとっては、まさにこういう考え方そのものが非常に有益なんだろうと思うんです。

 したがいまして、G7は来年、日本が議長国になりますけれども、G7の場も含めて、G20、あるいはアジアの様々な産業の協力関係を進めるイニシアチブ等ございますので、そういう場で、実際に日本のサステナブルファイナンスの取組の全体像とその仕組み、あるいはツールとかいったものをぜひ積極的にご紹介いただいて、この提案書の活用をお願いできればと思います。

 私からは以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。

 それでは、渋澤様、お願いします。

【渋澤メンバー】  ありがとうございます。本当に、皆さんと同じように、前回のいろいろな意見をまとめていただきまして、本当に御尽力感謝いたします。

 先ほど岸上さんの問題意識ですが、私はタイトルを結構気に入っています。ただ、そこまでコミットできないというのであれば、副題の最後に「を目指す」みたいな表現を入れていただければ良いかと思います。サステナブルファイナンスをやっていることには、それなりの意気込みが必要だと個人的な見解で思っています。

 2点ございますが、1つはインパクト投資関係で、足達さん、小野塚さんからもコメントいただきました。私も、足達さんがおっしゃっていたインパクト係数、メジャーメントというのはとても大事なことであると思っています。前回お話ししたかもしれませんが、内閣府ではグローバルヘルス戦略タスクフォースからも今月に報告書が出ています。そのフォローアップとしては、グローバルヘルスにおけるインパクトのメジャーメントを研究する意向が示されていますので、こちらの報告書の35ページで、関係省庁との連携ということが掲載されていますので、是非とも連携を意識していただきたいと思っています。

 特にグローバルヘルスという分野は、先ほどから注目されている人的資本のど真ん中だと思います。日本国内のみならずグローバルで人的資本、人への投資を高めるということはとても大切なことだと思いますし、長年の日本の外交戦略でもありますので、とても大切な分野だと思っています。かつ、冒頭で私が御質問したときに、北川先生から、Sのところで日本が遅れているご指摘がありましたが、いろいろな動きがある中、基準が定まってないということを考えますと、このS、特に人的資本というところは、日本がもっと真剣に関与すべき分野だと思っています。

 長年、ガバナンスの流れの中で、我々日本企業というのは、株主の金銭的な利益だけじゃなくて、従業員のことも考えてというような声が戻ってきたと思います。と考えると、どのように従業員を含めて、サプライチェーンの人権も含めて、日本企業がしっかりと意識していて、企業価値につなげていくということを日本企業、日本からの立場から世界にルールメークというのはちょっとおこがましいかもしれませんけれども、ルールメークの席に座って参画するということはすごく大変なことなんじゃないかと思いますので、インパクト係数、人的資本、ここらの分野はすごく大事だと思っています。

 ただし、小野塚さんがおっしゃったように、私も係数を測定するということだけではなくて、インパクト投資のエコシステムをつくるということが日本ではすごく大切だと思っています。2014年から日本におけるこのインパクト投資についてGSGで議論していますが、もうそろそろ10年です。インパクト投資のエコシステムが我が国でできているかというと、かなり遅れを取っているということが現実だと思います。

 と考えますと、ここまで、いろいろなところでインパクト投資に官民連携でやりましょうということが注目されているということを考えますと、きちんとKPIを設けた官民連携が大事だと思います。KPIというのは、例えば、単純に言えば残高だと思いますけれども、新しいインパクファンドがどれぐらいこの日本で立ち上がったのかとか、どれくらいの人材が育成されたのか、等のきちんとしたKPIを設けることが大切だと思っております。

 2点目ですが、これも小野塚さんもちょっとおっしゃったところに重なりますが、「アセットオーナー」という言葉がよく使われていますが、最近、気になっていることがあります。ウクライナ情勢、ポストコロナ等で物価が高騰していて、株式市場は軟調になったので、ESGなんて言っている場合じゃないよという論調が結構増えています。

 その論調とは、アセットマネジャーはアセットオーナーを応えなきゃいけないという受託責任を持っているという基本的な考えです。アセットオーナーとは年金基金あるいは生命保険という機関投資家について指すことが普通だと思います。ただ、前回もお話ししたと思いますが、最終的なアセットオーナーというのは我々個人だと思っています。と考えたときに、個人の意識がESGの、もちろん利益は大切であるが、EとSに対してどれくらいの意識があるのか。あるいは、そもそもそういうことを考えてなかったのであれば、情報提供するとかいろいろなことが言えると思います。

 今回の報告書で個人について触れていただいていますけれども、既にESG投資をやりますといったときを前提にの情報提供だと思います。それすごく大事だと思います。ただ、その前の段階で、ESGへの意識、考えてみることを促すことが必要なんじゃないかと思います。

 日本国民全体ということはかなり大きな主体になりますが、例えば、企業の従業員から始めることが考えられると思います。従業員は企業の年金に拠出していますし、従業員からの意識から広めていくということ。このように最終的なアセットオーナーの意識改革というところがすごく大事なんじゃないのかなと思っております。

 以上です。ありがとうございました。

【水口座長】  ありがとうございます。

 それでは、吉高様、お願いします。

【吉高メンバー】  ありがとうございます。皆さんおっしゃるとおり、本当に細かいところまで全て網羅していただき、ありがとうございます。特に図がとても変わって、分かりやすくなったことは、大変評価しております。ありがとうございます。

 修文ということではないのですが、8ページの上から3パラ目の「また」から始まる文章ですが、この文章全体、「コロナ」という文字が1つもなくて、まだ現在コロナは完全に終息したわけではないので、コロナのことについて一応入れておいたほうがいいのかなということと、その次に、ウクライナ問題で、エネルギーだけではなくて食料の価格も上がったわけですし、(エネルギーだけに偏っているようにも見え)文章にややばらつきがある気がいたします。

 例えば、ウクライナへのロシア侵攻ではサイバーセキュリティーの問題も非常に大きく出てまいりましたし、足元の問題と新たな問題ということでは、可能であれば少し整理をして書いていただくと大変ありがたいかなとは思います。ただ、全体的に影響のあるものではないので、そこはお任せしたいと思います。

 それ以外は、修文はございません。1つコメントは、今回、関係省庁との緊密な連携というのをフォローアップで入れていただきまして、ありがとうございます。ただし、私自身もずっと環境金融に関わってきていますが、この連携が見えにくいのです。(どの省庁の委員会でもお互いに)オブザーバーで入っているということですが見えにくい。できましたら、連携の見える化を今後考えていただきたいと思っております。

 以前、それこそ京都議定書のときには、省庁の連携協議会というのができて進めていっていただいたので、できましたら、これのフォローアップとして(そのような連携協議会などを)考えていただくのもよいかと思い、とにかく見える化をしていただきたいです。

 いずれにしましても、本当にお疲れさまでございました。どうもありがとうございました。

【水口座長】  ありがとうございました。

 それでは、井口さん、お願いします。

【井口メンバー】  ありがとうございます。皆様同様、報告書をまとめていただいてありがとうございます。

 私のほうは修文とかをお願いするものではないんですが、今まで発言しておりません箇所で1点だけコメントさせていただければと思っています。

 それは報告書の33のページの6の人材育成のところです。私のような古い人間の記憶で言いますと、30年前の1980年代ぐらいというのは、企業分析とかポートフォリオ分析といった知識というのは、運用者の中でも十分ではなかったんですけれども、日本証券アナリスト協会様や、あるいはCFA協会様の御尽力、具体的には、資格取得を通じ、こういった知識は今やもう日本の運用者の中でも必須の知識になっていて、したがって、海外の運用者とも引けを取らない状況になっていると思っています。

 一方、現状、サステナブルファイナンスをやるに当たっての必要となる知識のコンセンサスというのもないですし、あと、海外のESG資格試験というのもありますが、その内容がどれほど運用にとって有用であるかというのも不明な中、大手機関投資家への就職にとって有利になるかというと、そういうことでもないですし、海外の状況を聞きましても、グローバルの投資家もあまり重視してないということと聞いています。

 サステナブルファイナンスというのが急激に進化している分野で、グローバルでも確立したスキルというのはないというのは認識しているんですが、報告書に指摘されているように、まずは、必要とされるスキルマップの見える化とかそういう作業を進めていって、どうやって知識レベルを高めていくかというのは非常に重要と考えております。

 どうもありがとうございました。以上です。

【水口座長】  ありがとうございました。

 それぞれの皆様から大変重要な御指摘をたくさんいただき、ありがとうございます。

 まず、報告書の題名で、岸上さんから問題提起いただきました。渋澤さんはこれを気に入っていると言っていただきました。有識者会議として新しい社会を切り開くことをコミットしているというよりは、「新しい社会を切り拓く金融システム」というのがこのタイトルですから、金融システムの在り方を通じて新しい社会をつくっていくような、そういう金融システムを目指しているという意味では、特段問題ないのかなと私は思っておりますが、後ほど、また岸上さんと御相談をしたいかなと思っています。

 それと、渋澤さんがおっしゃられたとおりで、個人のサステナビリティの選好の部分は大きな課題の1つだと思うんですけれども、今回の報告書に突然入れるというわけにいかないかもしれませんが、長期的な課題としては認識し、恐らく今の井口さんの話ともちょっと関わるんですけれども、サステナビリティとかESGに関する知見が世の中に幅広く共有されていくと、恐らく選好が高まっていくのかなというふうには理解しております。

 それと、多くの方からインパクトのところについてはたくさん御指摘いただいておりますので、インパクトの部分はもうちょっと、いただいた御指摘を踏まえて、できれば修文ができたらよいのかなと思っております。

 それと、特に関係省庁の話は重要だなと思っておりまして、この検討会でも環境省、経産省にオブザーバーに入っていただいておりまして、ありがたいと思っております。従来、この3省庁はうまく連携できてきたかなと思っているんですが、人権の問題とか男女の賃金格差の問題とかが入ってくると、これはいよいよ内閣府、そして厚労省もちょうど軌を一にして動き始めておりますし、連携する相手が増えてきた。確かに、サステナブルファイナンスの連携協議会的なものがあってもよいかもしれないなとふと思いました。これも報告書に書き込むのは急過ぎるのですけれども、今後の課題としてあるのではないかなというふうに考えた次第です。

 ここまでのところで、高田さんと西田さん、どちらからでもいいんですけれども、どうしましょう。では西田さんからお願いします。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  個人の意識を高めていくことが重要ではないかというご指摘は、前回もいただいたかと思います。アセットオーナーのところ、それから、一番最後の個人への教育機会の提供のところで、それぞれ少しずつ記載があったのですけれども、やや読み取りづらいかというところもあるように思いますので、表現の工夫をご相談させていただきます。

 インパクトについては、計測手法の検討など具体的な目標もある程度分かるようにということ、その際、実質的な内容がきちっと伴っていくように検討すべき、目指すべきという趣旨が分かるようにというお話だったと思いますので、反映していければと思います。

 あと、アジアへのトランジションの広がりを積極的に図っていく役割もあるのではないかということでありましたので、こちらも検討させていただきます。

【高田総合政策課長】  総合政策課長の高田でございます。ここまで、水口座長及び委員の皆様には、大変精力的な議論をいただきまして誠にありがとうございました。本日いただいた御意見も含めまして、報告書につきましては、水口座長と御相談いたしまして、できるだけ皆様の御意見を盛り込む形で取りまとめていきたいと考えております。

 どうしても役所の人事サイクルで、7月から翌年の7月という事務年度で機械的に区切ってしまって申し訳ないのですけれども、今事務年度のサステナブルファイナンスの有識者会議の御議論については、この第2次報告書で1つの通過点を迎えました。報告書の中でも様々な課題の御指摘をいただいておりますので、それは当然ながら、来事務年度以降も継続的に検討してまいりたいと考えておりますし、また、この有識者会議も適宜開催をさせていただければと考えております。

 そうした中で、先ほど来お話のあります省庁間の連携と、さらにそれをよりよく見えるようにしていく、こうしたことにもさらに取り組んでまいりたいと考えております。省庁において、この夏、人事異動があり、金融庁におきましても、先週、幹部につきましては交代が一部あったわけですけれども、幸いにと申しますか、少なくとも、総合政策課長の私とサステナブルファイナンス室長の西田は7月以降も継続して担当させていただく予定でございますので、引き続き、皆様には御指導いただければと思います。この場を借りて御礼を申し上げさせていただきます。

【水口座長】  ありがとうございました。今日一番いいニュースですよね。

 皆様、御協力いただきましてありがとうございました。こうして報告書をまとめてみると、この1年、随分いろいろなことが起きたなというふうに思いますし、随分進んだというふうに感じております。一方で、課題もどんどん増えてくる一方ですので、まだまだすることは多いというふうにも感じている次第です。有識者会議の方も、今後も続くということをはっきり書いていただきましたので、今後も続くという前提で、今回の報告書に関しましては、大きな修文はないという御意見をいただきましたので、この後は、座長と事務局のほうに一任をしていただきまして、進めさせていただければと思います。

 よろしいでしょうか。座長一任ということで報告書をまとめさせていただきまして、もしかしたら個別に御発言の意味などを御確認させていただくことがあるかもしれませんけれども、その節は御協力いただくということでお任せいただければ幸いでありますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【水口座長】  ありがとうございます。それでは、そのような形で進めさせていただくということにいたしまして、本日予定した議題は以上ということになります。

 それでは、こちら内容を精査いたしまして、準備が整いましたら、日本語、そして英語もできるだけ早く公開をしていくということでさせていただきたいと思います。

 前回の報告書公表からこの1年の間に、5回開催をさせていただきました。皆様の御協力に感謝をいたします。

 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了したいと思います。御協力いただきましてありがとうございました。お疲れさまでした。

 ―― 了 ――

  

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総合政策局総合政策課

(内線3515、2918、2770、2893、5404)

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