「サステナブルファイナンス有識者会議」(第14回)議事録

1.日時: 令和4年9月20日(火曜日)10時00分~12時00分
 

【水口座長】  皆様、おはようございます。それでは、第14回のサステナブルファイナンス有識者会議を開催したいと思います。本日も早朝からお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 
 初めに、毎回の注意事項ですが、発言されない間はミュート設定にしてください。発言されるときにミュートを解除し、発言が終わられましたら再びミュートに戻していただくようお願いいたします。
 
 最初に、メンバーの変更がございましたので、御紹介したいと思います。お顔を見せていただければと思うのですけども、まず全国銀行協会の宮下様です。宮下様、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【宮下メンバー】  宮下です。よろしくお願いいたします。
 
【水口座長】  続きまして、日本損害保険協会の山本様です。山本様、よろしくお願いします。
 
【山本メンバー】  山本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【水口座長】  よろしくお願いします。生命保険協会の竹内様です。
 
【竹内メンバー】  竹内です。どうぞよろしくお願いします。
 
【水口座長】  よろしくお願いいたします。
 
 また、事務局をしていただいております金融庁でも、7月から新事務年度ということでして、サステナブルファイナンス担当の政策立案総括官として、堀本さんが新たに着任されました。一言お願いいたします。
 
【堀本政策立案総括官】  金融庁の堀本です。政策立案総括官として7月からこちらの担当になりました。後ほど事務局より御説明しますが、サステナブルファイナンスについては金融庁として色々と取組みを進めてきましたが、前回の会議を含め、これまでの様々な皆さんの御議論を踏まえて、さらにいろんな課題が見えてきたと思っています。非常に広範なテーマですがこうした課題についてぜひ更にご指摘頂き、実際にこの世の中を動かしていくという観点を含め御議論頂けますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、議事に入りたいと思います。この7月には、本有識者会議として第二次報告書を取りまとめさせていただきました。金融庁は、この7月から新たな事務年度ということでして、この新たな事務年度でどのような取組を進めていくのかということで、今日まとめて御報告をいただき、御議論いただくと考えております。論点は幾つかあるのですが、最初に全部をまとめて御紹介していただいた上で、順に議論をしていくと、こういう形にしたいと思います。
 
 それでは、金融庁から資料に基づきまして御説明をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  事務局の西田です。いつもお世話になります。簡単に御説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
 
 ページが前後しますが、3ページをお開きいただきまして、サステナブルファイナンス有識者会議第二次報告書という資料を掲載させていただいています。これが前回の会議で御承認をいただき公表した概要でございますけれども、大きくは、第一次報告書の枠組みを維持して、企業開示の充実、市場機能の発揮、それから金融機関の投資先支援とリスク管理、また横断的取組ということで施策を整理いただいているところです。
 
 これを踏まえる形で、8月31日に金融庁で行政方針というものを出させていただいており、4ページ以下の関連する部分を簡単に抜粋しておりますので御紹介させていただければと思います。
 
 まず、企業のサステナビリティ開示の充実です。これは企業開示の充実、前の資料の緑のところに当たるわけですけれども、全体として、有識者会議の報告書を踏まえて具体的に今後取組みをしっかり進めていく、そうした内容となっています。
 
 まず、有価証券報告書においてサステナビリティ情報を一体的に提供するための記載欄を新設する。それから、ISSBの議論に積極的に参加して、我が国としての意見集約を国際的にもしっかり発信していくということ。国内でSSBJさんが立ち上がって議論を担っておられるわけですので、国内におけるサステナビリティ開示の具体的な内容を検討するに当たり、SSBJの役割を積極的に果たせるように、その位置づけについて検討を行う、ということを記載させていただいております。
 
 次いで5ページ、青字箇所の市場機能の発揮でございます。2パラ目ですが、第二次報告書の中では、アセットオーナーについて、比較的、割合を割いて記載をいただいたと思います。これを受けまして、行政方針においては、生命保険や年金基金などのアセットオーナーが、投資方式も踏まえた的確なESG要素の考慮を通じて、投資先企業の成長と自らの受託資産の持続的増大の両方を図っていくために、どういう課題があり得るのかということについて幅広い関係者の方で議論をしていくことができないかという記載です。
 
 それから、続きましてESG投資信託を取り扱う資産運用会社、これについても、金商業者向けの監督指針を改正するということを記載させていただいています。
 
 それから3点目、ESG評価機関についてです。前々回の会議でも御議論をいただきまして、7月にESG評価・データ提供機関向けの行動規範の案を策定・公表しておりまして、9月5日までパブリックコメントの期間としておりました。現在多数の方から御意見をいただいたところでありまして、今後これへの意見と対応を取りまとめて、最終化をしまして、国内外の評価機関の方からのこの行動規範に対する賛同状況を2022年度までに公表するということとしています。
 
 次いで6ページ、金融機関の機能発揮というオレンジ、それから横断的な課題として黄土色の部分です。上のオレンジの2つ目の四角を御覧ください。金融機関と企業による2050年カーボンニュートラルに向けた取組の重要性が大きくなっているということで、企業や金融機関による2050年カーボンニュートラルと整合的で科学的な根拠に基づく移行計画の策定、それから着実な実施に資するように検討会を設置して議論を進めていくということです。これは後ほど資料1枚に沿って御説明させていただきます。
 
 それから、インパクト、黄土色の真ん中の箱のところですけれども、こちらについても、下線を引かせていただいておりますけれども、もともとGSG国内諮問委員会と共催しておりましたインパクト投資の勉強会がありましたが、この点をさらに進めることができるのではないかということで、金融庁において新たな検討会を立ち上げて進めていきたいということで考えております。
 
 行政方針全体としては多様な論点がありますけれども、特にこの2つについては、この有識者会議の下に新たな検討会を設置していただいて、金融機関のネットゼロその他に向けた取組、脱炭素に向けた取組の促進、それからインパクトの投資の促進というこの2つをテーマとしてさらに進めていけないかということで記載してございます。
 
 最後のところに、専門人材の育成ということがありまして、横断的な課題のうちでも、特に前回、前々回の御議論で、専門人材の育成をどう図っていくかということについては、かなり多くの委員の方から御意見をいただいたと思います。今回は、報告書を取りまとめていただいて第1回目ということでもありますので、専門人材の育成ということで改めて、粗々ですけれども、どのようなことが考えられるか。スキルマップの形でESG投資に必要な知見を、案として並べさせていただいております。これと、こちらを参照しつつ、どのような施策が可能か、本日御議論いただければと思っております。
 
 以上が報告書を踏まえた、金融庁としての取組の全体像であります。2ページに戻っていただきまして、これを含めて政府全体として、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画にも掲げておりますとおり、GX全体をしっかりと促進・実現するということで様々な施策を今後打っていくことになっていますので御紹介させていただきます。
 
 6月に閣議決定されました「新しい資本主義の実行計画」において、今後10年間に官民協調で150兆円規模のグリーン・トランスフォーメーション(GX)投資を実現するとしておりまして、これを具体化していくために本年7月にGX実行会議が官邸に設置されています。新たな5つの政策イニシアチブを含む、今後10年間のロードマップを策定するということで議論が行われているところです。
 
 現在までに何回か今開催されておりますけれども、主な論点はこの5つです。1つ目がGX経済移行債、仮称ですけれども、これを創設して、先行して資金調達をしてGXに必要な資金に充てていくこと。2つ目は規制・支援一体型の投資促進策。3つ目はGXリーグ、これは前回も御紹介させていただきましたけれども、2050年カーボンニュートラルを目指す企業が集い、その中でカーボンクレジット市場の整備も含めて検討していくというものですけれども、これの本格稼働に向けた対応。それから5つ目で国際展開戦略ということでアジア・ゼロエミッション戦略などを掲げています。
 
特にこの会議との関係では4つ目になりますが新たな金融手法の活用ということで、グリーン・トランジション・イノベーションの金融手法を組み合わせ、世界のESG投資の資金を呼び込んでいくこと、それから企業情報の開示の充実、ESG評価機関の信頼性向上やデータ流通のための基盤整備というものが、6月の報告書にも掲げてありますけれども、これに限らず様々な金融面での対応も議論されていくということでございます。
 
 こうした議論全体の中に、本有識者会議の議論もつながっていくと思っておりますけれども、8ページに、よく委員の方からも御質問いただきます、最近、会議が幾つかありますので、整理をしたほうがいいんじゃないかということで御紹介させていただいております。これは設立順に上から並べておりますけれども、このサステナブルファイナンス有識者会議が一昨年12月になりまして、設置は金融庁ですけれども、サステナブルファイナンス推進のための施策を総合的・横断的に議論していくということです。
 
 同時期に、トランジション・ファイナンスに関する検討会ということで、トランジションの基本指針を去年の5月に策定しました。これは3省庁が入っていまして、今後もトランジションをより進めていくために、企業と金融機関のエンゲージメントがどうあるべきか、ということについて議論を進めていくことになっています。
 
 それからグリーンの分野です。この分野については、グリーンファイナンス検討会といでグリーンボンドガイドラインの改定なども議論されていまして、継続しているところです。何名かこの有識者会議の委員も御参加いただいているところだと理解しています。
 
 その下、GX実行会議というものが先ほど申し上げた会議になりまして、これに連なる形で1つ上のクリーンエネルギー検討合同会合ということで、これは金融に限らず、温暖化対策を成長につなげる成長戦略について議論する。それからGXファイナンス研究会というのが今年の8月に設置されまして、これは、新たな着眼点として、例えばGX実践企業の新たな評価軸というものを立てられないかということで議論がされていると承知しています。
 
 このように幾つかありますけれども、全体を通じて、関係省庁でしっかり連携しながら、GX実行会議の全体状況も踏まえながら、ファイナンスに関する施策を整理しながら進めていきたいと考えてございます。
 
 次いで10ページを御覧いただければと思います。各論になりますけれども、検討会と申し上げたうちの一つです。1つ目、脱炭素等に向けた金融機関の取組に関する検討会ということで、2050年脱炭素に向けた内外の動きが加速する中で、金融機関においては、一方では国際的な議論を踏まえた排出経路の在り方、もう一方では顧客企業とか地域の実情がございまして、これら両方を加味しながら、企業と共同して持続可能性の向上に資する実効的な取組を進めていくことが重要と考えられます。
 
 国際的には2050年脱炭素と整合的で科学的な根拠に基づく移行計画について、ネットゼロのアライアンスなどにおいて大手金融機関等による議論が進んでいると。他方、地域においても、顧客企業との間で、地域全体の戦略とかサプライチェーンの動向を踏まえながら、中堅中小企業を含めて、省エネや脱炭素についてどのように創意工夫を進めていこうかということで試行錯誤の段階にあると考えております。
 
 大企業、それから中堅中小企業の状況全体を踏まえながら、脱炭素に向けた対話をそれぞれに進める金融機関の一助となりますように、サステナブルファイナンスの有識者会議の下に専門の検討会を設置しまして、金融機関が脱炭素に向けた取組を行う際に有用な留意点も含めて、金融機関と企業との対話の活発化に向けた方策について議論をしていきたいと考えております。
 
 具体的な論点としては、①②と書かせていただいておりますけども、①が、主として大手の金融機関、大企業を念頭に置いた表現でございまして、ネットゼロに向けたトランジション、先ほども申し上げたようなアライアンスでの議論を前提知識として持ちつつ、具体的に各産業とどう対話を進めていくか、実効的かつ継続的に脱炭素に向けた取組を金融機関として進めていくことができるのか、協働の取組の在り方について議論をしていく。
 
 それから②が地域ですが、これは大きく状況が異なり、地域的な産業の動向もありますし、個別企業の所属するサプライチェーンの状況によって、企業が直面している状況は多様かと思います。また対応状況も様々で、地域企業と対話をする地域金融機関においても、十把一からげということではなくて、それぞれの企業に応じた対話の在り方を、地域の実情を踏まえて検討していく必要があるかと思います。それについて具体的なステップとしてどういうことがあり得るのか、または官民連携して対話を進めていくということも重要ではないかと思いますけれども、こうしたことについての課題。
 
 これら、①は主として大手金融機関、それから②は地域の取組ということを念頭に議論を進めた上で、③としまして、今後、金融機関が企業との対話を行うに当たって有用な留意点とか、また取組事例も含めて整理していくことができないかと御提案をしております。
 
 続きまして11ページ、もう一つの会議ですけれども、インパクト投資に関する検討会です。有識者会議の中で、インパクトというのは横断的課題に整理されておりますけれども、例えばローンとかエクイティだけではなくて分野横断的に生まれるものだと思いますけれども、投資収益の確保にとどまらず、社会的課題の解決を目指すインパクト投資と、ここではさせていただいておりますけれども、社会的課題の重要性が高まる中で推進の意義が指摘されておりまして、金融庁でも一昨年より、インパクト投資に関する勉強会をGSG国内諮問委員会と共催をしまして、基本的な知見の共有を図ってきたところです。
 
 足下ですけれども、インパクト投資の残高というものが、このGSG国内諮問委員会が策定されたアンケートを見ますと、残高が御覧いただきますように左下で増えておりますけれども、海外と比べますと、まだ規模感という意味では一定程度にとどまっているということ。
 
 それから、右側を見ていただきますと、我が国におけるインパクト投資の状況についてどのように認識されていますかということを機関投資家・金融機関の方を対象としたアンケートで聞くと、世界というか欧米ですけれども、順調に成熟しているという答えが約7割、対して日本ですと、これから成長していく段階であるという答えが約7割ということで、増加の傾向は続いていますけれども、他の先進国と比較すると規模の面でまだ設置余地があるように思われます。また、市場関係者も我が国での成長余地を感じているということで、今後さらに進めていくことが可能じゃないかとしております。
 
 このインパクト投資の拡大を図ることで、それぞれの投資が企図する社会・環境課題の解決に資するとともに、スタートアップを含む新たな事業の創出につなげていくことができないかということで、次のページですけれども、具体的な論点としまして、1つは左側ですけれども、投資収益と社会的効果の関係性、収益だけを狙っていくのか、または社会的効果も併せて実現していくのか、または社会的効果に着目することで投資収益自体を高めていくことができるんじゃないか、それぞれいろんな考え方が今あるのかと思っております。
 
 こうした投資収益と社会的効果の関係を一定整理したり、例えば類型を整理することによって、このような類型の下であれば、自らもそのインパクト投資をやってみることができないかというような金融機関とか投資家の方を呼び込めるかもしれないということ。
 
 それから真ん中にあります②ですけれども、併せて社会的効果と事業・収益の創出を実現し得る代表的な分野や先行事例を整理することで、より具体的にはどの分野でやっていけばいいのかということにイメージを持っていただくことが出来ないか。
 
 それから③、インパクト投資に関わる実務的な指針を整理することで、具体的にある事業のインパクトを実際に測定し、それを投資家に示すのにはどのようなノウハウが必要なのか。これは企業のノウハウ、投資家のノウハウ、両方あり得るかもしれませんけれども、インパクト投資に関わる実務的な指針を一定程度整理することができないか。
 
 また、具体的な事例が出るにしたがって、実際に行われた投資を通じて実務上の知見を蓄積していく。ある事案ではこのような形でやったとかそういう知見を蓄積するような仕組みができれば、それを参考に、よりよい投資の形ができてくるかもしれないということで、③。
 
 その他、さらに検討することが必要なことがあるかということも④ということで、この①から④について御議論いただくということで、インパクト投資を拡大し、各投資が企図する社会課題の解決に貢献するとともに、スタートアップを含む新たな事業の創出につなげていくことができないかということで議論を進めていただくということが考えられるかと思っています。以上が12ページのインパクト投資の考え方。
 
 最後、大きく異なりますけれども、有識者会議として議論をいろいろいただいている各論の一つとして、横断的課題の一つに専門人材の育成がございました。一番上の箱のところが、有識者会議の報告書、7月のものを引用させていただいていますけれども、サステナブルファイナンスの実施のために実務的に必要とされる人材が非常に重要で、このために知見・技能の一覧、スキルマップを見える化することが重要じゃないかと。
 
 また、これを必要に応じて周知しながら、必要な知見・技能に照らして、今後どのような研修とか資格試験などを拡充していくことができるのか、積極的に後押しすることができるのかということについて議論していくことが有用じゃないかということでまとめていただいたところです。
 
 8月末に公表した行政方針の中でも同様の記載を盛り込んでいるところですけれども、今回素案として、15ページになりますけれども、御提案させていただいているところであります。
 
 大きく、ローマ字のⅠ、Ⅱ、Ⅲで分けておりますけれども、まずⅠはサステナビリティについての意義、課題について理解すること。とりわけ①は、ESGの具体的課題に至る前の前提として、サステナビリティというのはどういう意義があるのか、また、いろんな価値観がありますけど、それぞれに理解を示していく重要性、それからサステナビリティと金融についての基本的な役割、サステナビリティファイナンスというのはどういうものかということ。
 
 それから②で、Eについての課題、これは個別にはいろいろ御意見があると思いますけれども、下にもありますけれども、JPXの取組を参考にさせていただきながら、ESGということで、幾つか代表的な区分の仕方を示させていただいております。Eについては気候変動、それからその他で、例えば水資源の管理であるとか、生物多様性というのがある。
 
 Sについては、切り分け方にはいろんなものがあると思いますけれども、要素としては、ここに書いてありますように、人権デューデリの実施であるとか、労働に関することであるとか、あとハラスメントに関すること、ダイバーシティー、人的資本、こういったものが考えられるかと思います。
 
 Gにつきましては、コーポレートガバナンスの拡充など、様々な取組が進められておりますけども、こういう代表的なものを記載させていただいておりますし、特にステークホルダーとの協働であるとか、議決権行使の在り方については、近年特に議論があるところかと思います。
 
 こうしたサステナビリティについての基本的な知識というものをローマ数字のⅠというふうに上に位置づけさせていただいて、その上で2番目としてサステナブルファイナンスの知見と実践ということで、ファイナンスを実践するための知見。これは企業においてファイナンスを受けられる側における知見も含み得ると思いますけれども、ファイナンスについての知見と実践ということで整理をしております。その観点から⑤、サステナブルファイナンスの市場・規制・イニシアチブなど、例えばグリーンとか、トランジション、あとリンクといった幾つかの市場がありますけれども、市場規模、それから基本的な要件、調達、発行の状況はどうなっているのか。
 
 また、金融商品や金融機関などがこれに参加する場合の原則があります。これは規制のようなものもあれば、民間における様々な任意の取組み・イニシアティブもあろうかと思います。最後の部分は例えばリスク管理を中心とした面ではNGFSなんかでもシナリオ分析が出ていまして、規制・監督の要素もあるかと思います。
 
 その上で⑥⑦⑧ということで、具体的なファイナンスの提供サイドに着目しまして、債券、融資、エクイティ。⑦は、金融側を中心としつつですけれども、経営戦略の策定であったりリスク管理、それから目標の設定。それから⑧はディスクロージャーであるとか、企業との対話(エンゲージメント)、ステークホルダーとの対話・協働など、リレーションシップマネジメント全般に掲げております。
 
 さらにこれらをより実効的にしていくために、ローマ数字のⅢでソフトスキルを掲げておりまして、自らの専門領域をそれぞれに深めつつ、幅広い他の領域の動向に意識を向けて情報を収集して、新たな課題の特定や発想につなげるスキルを掲げておりますけれども。特にこのサステナブルファイナンスの分野はESGの様々な分野にも関わりますし、いわゆる文系・理系ということで言っても社会的な知見も科学的な知見も重要じゃないかという御指摘も前回、前々回のところでもあったかと思います。
 
 自らの専門領域を深めつつ、他の領域の動向にも意識を向けて、それらを統合して議論していくソフトスキル。また、国際的な議論も非常に活発ですのでコミュニケーションに参加してリーダーシップを発揮していくスキル。
 
スキルマップの記載、場合によっては唐突感もあるかもしれませんけれども、参考資料の中にアイルランドとかシンガポール、米国の例をつけさせていただいております。具体的には36ページ以降ですけれども、参考となるものを掲げさせていただいております。
 
 シンガポールは、テーマとファンクション、ThematicとFunctionalというふうにこちらで書いていますけれども、気候変動のマネジメント、生物多様性のマネジメントということで、先ほど御説明したうち、Ⅱの上の側に当たるようなところです。それからFunctionalというのが、開示とかデットとか投資とかということですので、真ん中の下側に当たるようなものをまとめていると。
 
 アイルランドは、より細かいものは後ろにありますけれども、基礎的な技術、知識から始めて、例えばサステナブルファイナンスの規制などが含まれますがそこから始めて、実装・応用、ビジネス戦略とか与信管理というものになります。
 
 それから次のページアメリカを御覧いただきますと、ソフトスキルについてレポートをまとめておられまして、例えばテクニカルスキル、ソフトスキル、それからT字型スキルというのがありますけれども、先ほど申し上げたような学際的な知見を協働していくというのがT字型スキルということでまとめられています。
 
 資料を戻っていただきまして、15ページですけれども、これらの参考に使った資料をいわば統合させていただくような形で、サステナビリティについての基本的な知識をJPXの取組を参考に、Ⅱ知見と実践、これはアイルランド、シンガポールに相当するかと思います、それから最後のⅢ実践を進めるソフトスキルというものは、米国におけるCFA協会の研究などを参考に、これらを統合した形で示させていただいたところです。
 
 今日はこれら全体について御議論いただきつつ、こうしたものの活用方、例えば⑦⑧の部分については、こういう資格試験があるとか。丸幾つの部分については、こういう研修プログラムがあるが、他方で、丸幾つの部分については、今そういうものがないということを示していき、なければ、関係機関の方と連携して、そういう試験や資格を例えば進めていくことが出来ないか議論をしていく、こうしたことも考えられるかと思いますが利用法について議論いただければと思います。
 
 最後、ご議論いただきたい事項を16ページにまとめさせていただきました。第1に有識者会議の報告書を踏まえて、冒頭御説明しましたように、幾つかの施策を進めていくということで考えておりますけれども、特段の留意点があるか。また2つ目ですけれども、検討会の1つ目、移行計画の在り方も含めて、大手金融機関による国際的な議論も踏まえた産業界との対話とか地域における対話を進めていきたいと考えておりますけれども、留意すべき論点があるか。
 
 また、インパクト投資については、勉強会の知見も生かしながら、投資収益との関係性の整理とか、様々な環境整備について議論するにあたり、留意点があると。
 
 また、最後のサステナビリティに関する人材育成について、これは各論になりますけれども、分野横断的に金融実務家を育み、個人投資家も含めて裾野を広げていくために、このマッピングの活用も含めて、どのような施策があるかということについて御議論いただければ幸いかと思ってございます。
 
 また、その他に、こういう点について、より力を入れてやっていくべきだという御意見があれば、併せていただければと思っております。私からは以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。今、包括的に御説明をいただきました。8ページのところ、会議の一覧を見ると、日本にこんなにいろいろ検討会があるんだということで驚いたり、検討会が多過ぎではないかという御意見もあると思いますが、一方で、それだけこの問題が重要になってきた、政府が本気になってきたということかもしれませんし、まだまだ試行錯誤だからこそ検討会がいっぱいあるということかもしれません。
 
 一方で、これらの検討会は、基本的にはGX、脱炭素という分野に絞られておりますが、サステナブルファイナンスのテーマは、もちろん脱炭素だけではなくて、様々な社会課題もあるという中では、インパクトファイナンスや、このスキルマップというのも非常に重要な意味があるのかと考えております。
 
 ここから皆さんの御議論をいただきたいと思います。今16ページでお示しをしました5つの論点があるのですが、1つ目は、金融庁として様々施策をしておりますので、今後、金融庁としてこういう有識者会議の報告書も踏まえて、金融行政方針に書かれたことで、こんな取組をしていきますという全体の御説明をいただきました。それについて御意見はありますかということ。2つ目と3つ目は、今後設置する検討会についての議論、そして4つ目がスキルマトリックスというかスキルマップについての議論、そして最後が、それらも含めて全体としてもっとこういうことをすべきではないか、もっとこんなことがあるのではないかという、こういう議論かと思っております。
 
 そこで、まず2つの検討会について順番に議論をし、次にスキルマップについて議論をした上で、最後に1と5で取り上げられている全体についての議論をしていくというのが進め方としては分かりやすいかと思いますので、最初に金融機関の検討会について御意見をいただこうかと思っておりましたが、メモも入っておりまして、最初に全体観についてもし何かあればということで、井口様、コメントがあるかと思います。井口様、いかがですか。
 
【井口メンバー】  途中で退出するので、早めに発言させていただければと思います。
 
 事務局には御説明いただいてありがとうございます。今、水口先生からお話があった16ページの論点の中では、2つ目の脱炭素とかインパクト投資に関する取組は非常に重要ですので、関係者が集まって議論を進めるのがよいと思っています。私が今日、特に申し上げたかった4点目の専門人材育成についてだけ意見を言わせていただければと思います。
 
 15ページのスキルマップにつきましては、必要性は皆さん理解していると思うのですが、サステナビリティ教育をどう進めればいいかということが不透明な中、今回事務局からスキルマップを示していただいたことは、大変意義のあることと思っています。今後、このようなスキルマップを基にいろんな資格とか、あるいは教育プログラムなどもできてくる方向になるのかと思います。
 
 次に、この有識者会議で重要なことは、こういった動きをどう位置づけ、浸透させていくのかということかと思っています。私は最終的な目標は、資本市場のパスポートとすることではないかと思っています。事務局から御説明がありましたように、現状でも、欧州のESG関連の資格とかいろいろあります。ただ、ほかの投資家にも聞いたことがあるのですが、私も含めて、日本だけではなくて海外も含めて、このような資格が、例えば人事採用の履歴書に掲載されていたとしても、ほとんど注目されていない状況と思っています。
 
 一方、よく御存じのように、日本証券アナリスト協会さんやCFA協会さんのアナリスト資格というのは、運用者として不可欠な資格とされていまして、まさに資本市場のパスポートになっていると思っています。今回の提示されたスキルにつきましても、時間はかかるのかもしれませんが、このようなアナリスト資格のような存在になって初めて投資家の間で浸透することになると思いますし、また、そうすると企業サイドの方も、投資家はそういうふうに考えているのだということで、資格の取得をされたり、あるいは勉強されるということで、企業サイドにも広がっていって、最終的には個人投資家にも広がっていくと思っています。
 
 ですので、様々な視点での教育プログラムなどを阻害するつもりはありませんし、そういうことをすべきではないと思っておりますが、ただ、このようなスキルが資本市場のパスポートになるためには、既存のアナリストやポートフォリオマネジャーの業務との関連性を維持するといった視点が最も重要と考えています。こういった考え方というのは、ISSBがサステナビリティ情報を財務情報と関連づけたこととも重なる考え方だと思っています。
 
 最後に、スキルの内容自体につきましては、事務局から包括的に出していただいていると思いますので、あとはこれに基づいて、諸団体が具体的に形にしていくという段階にあるのではないかと思っております。
 
 長くなりましたが、以上です。ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。井口様は途中で退席されるということなので、先にお話しいただきました。ありがとうございました。
 
【井口メンバー】  ありがとうございました。
 
【水口座長】  それでは、ここからですけれども、きっとこのスキルマップのところに皆さんいっぱい言いたいことがあるかと思いますので、そこにはできるだけ時間を取りたいと思いますが、そこに先に行ってしまうとそれだけで時間が終わってしまいそうなので、最初に、検討会の話について順番に御意見をいただければと思っております。
 
 まず、脱炭素等に向けた金融機関等の取組に関する検討会、この検討会につきまして、留意すべきこととか、こういうことが論点ではないかとか、注意点などがあればいただきたいと思います。ここからは自由討論ですので、お声を上げていただければと思いますが、いかがですか。この最初の検討会について御意見があれば伺います。どなたからでも結構です。
 
 今、手が挙がっているのは、宮下様、お願いします。その次に林様、お願いします。では宮下様、お願いします。
 
【宮下メンバー】  全国銀行協会の宮下です。本日はこのような機会を頂戴してありがとうございます。まず、今、御指示の脱炭素に関連する検討会のところだと認識しておりますので、サステナブルの中でも気候変動、脱炭素のところについてコメントさせていただきたいと思います。
 
 こちらの検討会の中で、大手金融機関は、国際的な議論を踏まえた産業界との対話というところでお示しをいただいていますが、御案内のとおり本邦金融機関からも、GFANZ、あるいはネットゼロ・バンキング・アライアンスなどと幾つかの枠組みに金融機関が参加をしております。トランジションを支援するためのファイナンスに関する考え方などの議論に参加をしておりますので、この辺りは金融庁さん、あるいは関係する諸団体としっかり議論を共有しながらやっていくと心得ております。
 
 また、地域金融機関も、ここの論点に記載のとおり、各地域の団体としっかりとその場その場で貢献していこうということで、意欲的な取組をやっているところでございます。幾つかカテゴリーがあるかとは思っておりますけれども、またそのようなものを共有させていただきながら、銀行界としては、まずこの検討会にしっかり貢献をさせていただきたいと思っております。その上で、幾つか、進め方の中でコメントというか、進め方というか、考え方として、論点を幾つかお話ししたいと思います。
 
 まず、ファイナンスの前提となる事項を整理しながら議論を進めていくことが必要だと思っています。どういうことを言っているかといいますと、2つございまして、1つは、この場だけの議論ではないとは存じておりますけれども、兆円単位で非常な資金動員が必要になってくる、この脱炭素に対しまして、必要だと言われている資金の総額のイメージが、大ざっぱに言ってデットなのかエクイティなのか。あるいは資金使途としても、グリーンなのかトランジションなのか、イノベーティブなものなのか。あるいは、足下でいうと公的と民間の割合のイメージというのはどういうものなのか。この辺りを非常にがちがちに決めてしまうと、なかなか動きにくく、またその後の柔軟性もないのは承知しておりますし、ファイナンスのスタート自体を遅らせたりすることについては、全く本意ではないんですが、関係者の中で大まかなコンセンサスを整えておくことは、ファイナンスの実現性、実効性を高めていく上でも必要ではないかと思っている次第です。
 
 もう一つは、これもファイナンス側の話に結果としてはなるんですけれども、コメントさせていただきたいと思いますが、事業の予見可能性ということであります。事業者、あるいは官民でその予見性についてコンセンサスを形成することがなぜ重要かと申し上げますと、金融機関、ファイナンスする側からしても、支援する事業が成功していくことが、もちろんファイナンスを取り上げる上ではもう大前提でございます。中には脱酸素に向けた取組自体が非常にコストを上げる結果になって、そこの回収について、非常に考えを巡らせておられる事業者様もおられるのは認識をしております。そういった事業者様を支援する仕組みづくりも、政府を挙げてお願いをしたいと思っております。
 
 脱炭素に関連する検討会のところでのコメントは以上です。失礼いたしました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。今、大変的確にコメントいただきました。ありがとうございました。一応この委員会の発言のルールをもう一回確認させていただきますと、できるだけ多くの方に発言いただくということを前提に、発言はマテリアリティーを考えて、重要なことを1個ずつ順番に言うと。そして1回の発言に1つ言って、また次の人に渡して、また自分に回ってくるというふうに、できるだけ活発な議論ができるようにということで、1回の発言を短めにお願いできればと思います。それから、画面オンにしたほうがいいですよね。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  はい。事務局からの御案内が遅れてしまいましたが、皆様、毎回画面をオンにするようにお願いしておりまして、本日もお願いできますと幸いです。
 
【水口座長】  不都合がなければ、皆様、画面をオンにして御参加いただければ幸いです。
 
 それでは、たくさん手が挙がっておりますので、林様、手塚様、そして生保協会の竹内様という順番で行きたいと思います。まず林様、お願いします。
 
【林メンバー】  よろしくお願いいたします。脱炭素に向けた検討会ということで、なさろうとしている内容については、今、本当に大事なテーマなので、この検討会を設けることについては違和感はないんですけれども、さっき水口先生もおっしゃったように、8ページに戻っていただくと、検討会が実はたくさんあって、よくも悪くも、ほとんどの委員会に参加している身としては、例えば10ページに戻っていただいて、金融機関と企業との対話の活発化に向けた方策というのは、まさにエンゲージメントのことではないかと読んだのですけれども、エンゲージメントに関する議論をトランジション・ファイナンス環境整備検討会でも行うということになっていて、そこと多分GXファイナンス研究会というのも微妙に重なる部分もあるということで、検討会をつくらないでいいですと言うつもりはないんですけれども、既存の検討会との合同開催だったりとか、工夫を考えないと、いろんなところでやや同じテーマを違う角度から議論しているという印象がありますのでそれは御確認をいただければと思っております。
 
 最後にあともう一点、この10ページの①のところですけれども、動向とか状況のアップデートだけでなくて、この委員会からの発信ということも、検討会からの発信ということも付け加えていただければと思っています。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。確かに多いですね。それでは、竹内様、藤井様、吉高様という順番で行きたいと思います。竹内様、お願いします。
 
【竹内メンバー】  生命保険協会の竹内でございます。御発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。この検討会に関しまして幾つか申し上げます。
 
 生命保険会社も幾つかの会社がネットゼロをコミットしておりまして、1点、留意点としまして、トランジション・ファイナンスに積極的に取り組むことによりまして、一時的に自社のポートフォリオのGHGの排出量が増加し得るといったようなことも認識する必要があると思っております。多排出業種のトランジションは、とりわけ長期的な視野に立って取り組むべきであると思っておりまして、それぞれの業種でネットゼロに向けたロードマップが示されて、企業と金融機関が協働して取り組むということはとても大事だと我々も考えております。
 
 生命保険協会としましても、今般の検討会におきまして、しっかりと役割を発揮していきたいと思っておりますし、金融機関と企業との対話の活発化に向けた議論が進展することを心から期待しております。
 
 それと、各種の会議が多々あるというお話に関しまして、私どもとしましても、機関投資家としまして、参照すべき基準、手法等が今後、多々立つといったようなことをいささか懸念しておりまして、極力政府一体で議論が進められることを期待しております。
 
 最後になりますけれども、国際社会への発信、この点も留意していきたいと思っております。生命保険会社としましても、GFANZ等の国際的なイニシアチブにも参加をさせていただいております。各イニシアチブが、各国の地域特性等を踏まえたルールメイキングをする観点からも、官民で日本からの発言力を強化していくことはとても重要だと考えております。そういった点も含め、本邦での取組が国際的に理解されることを期待していきたいと考えております。以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。手塚様、私が順番間違えてしまいました。手塚様、お願いいたします。手塚様の後、藤井様ということでお願いしたいと思います。
 
【手塚メンバー】  どうもありがとうございました。先ほど林さんからもありましたけど、私もGXファイナンス研究会ともダブルで参加していまして、かなり似たような議論が同時並行でいろいろ進んでいるという印象を持っていますので、全体を統合して整理していく必要が究極的には出てくるだろうと思っています。
 
 その上で、今日1回目の発言ということで、この脱炭素に向けた金融機関の取組に関する検討会で、ぜひカバーしていただきたい点が、このサステナブルなトランジションとは何かという議論です。最終的に到達する脱炭素の世界というのはみんな見えているとしても、そこに行き着く道筋、これがどうやったらサステナブルになるのかということは、あまりまだ議論が成熟していないのではないかと思っています。
 
 私はGXファイナンス研究会でも先日申し上げたんですけども、これは非常に大きなトンネルを掘って出口に向けて開けていかなければいけないんですけども、出口のほうから掘っているテーマ、例えば電気自動車であったり再エネであったり、こういうものは非常に針のような穴から出口から掘ってきているトンネルになると思います。
 
 ただ、全ての技術や全ての分野が、そうやって出口のほうから掘れるわけではなくて、私どものような素材産業、ものづくり、資源供給、エネルギー供給、こういった分野は入り口のほうからトンネルを非常に大きな穴で掘り始めている状況です。ただ、スピードは非常にゆっくりです。一挙に変えられるような技術も解決策も持ち合わせていない中で、一歩一歩前に進めるための技術開発をやりながらトンネルを掘っていっている。
 
 したがって、出口のほうから針のように掘ってくる人たちのスピードは早いかもしれませんけども、入り口のほうから掘っているスピードは非常に遅いということを前提に、どうやったら早過ぎもせず遅過ぎもしないトランジションがあり得るのかということの議論をきちっとしていかないといけないと思います。特に、現実の世界が今まだ85%化石燃料で全ての経済が回っているというリアリティーの中で、早過ぎるトランジションの絵を描いてしまうと、いろんなところで支障を来すリスクが出てくるだろうと思っています。
 
 現実に今ヨーロッパで、ウクライナ危機の関係で、恐ろしいエネルギーインフレが起きていますけども、これもある種、そういう早過ぎるトランジションが起こすであろう弊害の一端が見えているのではないかと私は認識しています。特に、このGFANZであるとか、NZBAのように、化石資源に関する資金供給をどういうふうに抑えるのかという議論が特に欧米中心でなされていますけども、実はこのイニシアチブの裏に、エネルギーを必要十分な量、社会に供給するという供給責任、あるいはエネルギー安全保障というファクターがほとんど入っていなくて、この議論がされている。
 
 そうすると個別の大手の金融機関さんなり政府金融なりが、脱化石燃料というのをあまりにも個別に急いで進めた結果、その合成の誤謬として、恐ろしい供給不足が数年後から起きてくるということが起きても全くおかしくないようなリスクがあるのではないかと私は思っております。
 
 したがいまして、そういう技術の進展、あるいは社会の変革の進展のスピードと理想との間をどうやってつないでいくのかがサステナブルなトランジションなのかと思うわけです。こういう議論をきちんとこの検討会の中でぜひ進めていただきたいと思います。そうしないと、かえって社会が混乱し、我々のように、ゆっくりと、しかし着実に対策を進めていきたいという事業者にとっても、そのスピードを、前に進む前進の力をそがれてしまう懸念がある。つまり世界が大きな不況に陥りますと、当然のことながらそういう前に進む力が失われますので、そういう合成の誤謬のようなリスクが出てくるのではないかということを懸念しておりますので、ぜひそういう検討も併せてやっていただければと思います。私から以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。では藤井様、吉高様の順番で行きたいと思います。藤井様、お願いします。
 
【藤井メンバー】  ありがとうございます。また事務局の皆さんには、資料を準備いただきありがとうございます。頭の整理になりまして、論点も明確になりました。
 
 この検討会につきましてはBoxの中に、脱炭素に向けた企業との対話を進める、金融機関等の一助になるという記載がございますので、言わば金融機関の側でどういう対話を進めていくかというための検討会だと理解しています。その前提でこれを実務的かつ実効的に進めていく必要があると思います。網羅的な要素も必要な一方で、実際に取引先を動かしていくためには何が有効か、そのために金融機関がどのように働きかけるのが有効かといったことを、実務的に優先順位をつけていくということが必要かと思います。
 
 様々な金融機関がエンゲージメントの取組を進めておりますけれども、エンゲージメントを受ける取引先の立場に立ってみて、例えばある会社が銀行・保険会社を含めて30の金融機関と取引があった場合に、30社と個別にそれぞれ1時間ずつ、エンゲージメントをやるのかといったような悩みも出てくるかと思います。例えば業態別に、融資先としての銀行については協働エンゲージメントをして、別途投資家に対して協働エンゲージメントするとか、あるいはメインバンクを経由してやるとか、タイムクリティカルな状況の中で、最も有効かつ効果的なところから進めていくという視点も重要だと思いますので、この辺りは検討会でも議論をしていきたいと思っております。私から以上でございます。ありがとうございます。
 
【水口座長】  吉高様、お待たせしました。よろしくお願いします。
 
【吉高メンバー】  ありがとうございます。私も今の藤井委員の御意見に賛成でございまして、金融機関のプラクティカルな部分をするということで1つ申し上げたいことがございます。御存じのとおりGXリーグの中で排出量取引の検討が行われていると思うのですけれども、基本的には今、J-クレジットやJCMを対象としておりますが、ボランタリークレジットの話も出ています。今のところ、金融機関によるクレジットの売買、媒介、代理等に関しましては、金商法等では一応位置づけをされてはいるものの、きちっとこれらのクレジットについてどのように参入できるかというのは多分、検討していかなくてはいけないことではないかと思っております。
 
 つまり、ルールづくりとして、GXリーグとの進捗も相まって、金融機関が法制度上、取り扱えるのかということを検討事項にも入れていただきたいと思います。
 
 また、米国では、VPPAをデリバティブ(金融派生商品)として扱うか、また、会計上の扱いをどうするかといった話も出ておりますので、今後、具体的にそういう商品が出てきたときに、金融機関がどういうふうに扱っていくかというのを、まさにこの検討会でも考えていただければとは思っております。1つずつということなので以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。なるほど、この検討会は金融機関の側から、特にメガバンクとそれから地銀をはじめとする地域金融機関の立場から、この議論をしようということで、ほかの検討会と位置づけは確かに違うのですけども、おっしゃるように、いろいろなところと密接に関わるんですね。様々な検討会と結びついているということも分かりました。ここまででもし何か事務局からコメントがあればいただけますか。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  最後の金商法についても、幾つか金融機関の方からも御質問とかをいただいていますので、しっかり検討していかなければいけない、検討していきたいと思っています。
 
 会議については、我々政府の中でもよく、当然のことですが、連携しているところですけれども、どういう違いがあるのか内容を進めていくか、走りながら検討しているところですけれども、できるだけ分かりやすく全体像と関係性をお伝えしていくことは重要かと思いますので、そこはよく気をつけたいと思います。
 
 いずれしましても、それも踏まえつつ、この新たな検討会で国際的な金融機関と地域の金融機関が対応を進めていくに当たっての実務的な点を議論していくことには意義がありますので、内容面の議論はしっかりやっていきたいかと思います。よろしくお願いします。
 
【水口座長】  ありがとうございます。どうしても検討会がたくさんあって、どうしてもこのキーパーソンに入ってもらわなきゃと思うと、いろんな人が同じところに出る可能性はあるのですが、しばらくお付き合いいただくということかと思います。
 
 それでは、先を急ぐようですが、もう一つインパクト投資に関する検討会の設置を検討しておりますので、こちらについても、こういうところに気をつけてほしいとか、こういうことをきちんと議論してほしいとか、インパクト投資に関する検討会についての御意見等があればいただきたいと思いますが、いかがですか。どなたからでも。では長谷川様、それから小野塚様、そして鳥海様という順番で行きたいと思います。長谷川様、お願いします。
 
【長谷川メンバー】  ありがとうございます。経団連では、企業と投資家から構成するワーキンググループで、6月にインパクト指標の活用に関する提言を出しております。その中で、企業の成長に資するポジティブな企業と投資家との対話を実現するためには、従来のESG投資のKPIを一歩進めたインパクト指標が必要であって、それによって企業のパーパスや長期経営目標達成に向けた機会創出、それに資するビジネスモデルを一貫性を持って示すことができ、イノベーションへの投資の加速が期待されると述べております。
 
 他方、現状ですけれども、インパクト投資の投資先というのは、どうしても今、パーパスで掲げる事業のインパクトを示しやすいスタートアップなどの未上場企業が中心で、上場企業への広がりはまだ限定的です。上場企業でもインパクト指標を活用する試みも始まってはいますが、事業が多角化しており、それら全てにポジティブとネガティブの両面のインパクトがあるなど、非常に評価が難しい課題があると指摘されており、まだ一部にとどまっています。日本でインパクト投資が本格的に普及するためには、上場企業におけるインパクト指標の活用が必要ではないかと考えております。
 
 特に素材や部品などを供給しているBtoBの企業では、社会へのインパクトが示されるまでの時間軸が長くなるという課題や、個別の事業のインパクトが示しにくいといったことが指摘されております。ただ、これらの企業においてもポジティブなインパクトを創出しているという社会への貢献度を何とか測定評価する仕組みができないかということや、企業側はパーパスを起点としながら、すぐに定量的にというのが難しければ、定性的なナレーティブなものでもいいので、価値創造ストーリーをきちんと示す必要があるということを議論しております。
 
 逆に、投資家側は短期のKPIに注目する傾向がありますが、そうした企業側の説明も丁寧に聞いていただければと考えております。経団連は、この対話のワーキンググループは今年度も継続する予定でございますので、こちらのインパクトの検討会とも連携をしていければと思います。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。それでは小野塚様、お願いします。
 
【小野塚メンバー】  ありがとうございます。インパクト投資の検討会と金融行政方針の両方に絡む論点ということで御意見させていただきます。
 
 私は今、「インパクト志向金融宣言」という団体においても、水口先生ほか御一緒させていただいておりますけれども、その中でも、アセットオーナーのワーキンググループの座長をさせていただいております。そこでも出てきたお話ですけれども、アセットオーナーをいかにこの分野に啓発していくかというのは、一つ大きなポイントになるかと思います。
 
 こちらをESG投資の発展の経緯と少し重ね合わせますと、ESGの場合には、GPIFという大きなアセットオーナーがリーダー的存在としていらっしゃったということもあり、ある程度横に広がったという背景がありますが、現段階でそういった大きなアセットオーナーがリードしているというような状況が日本では見られないので、この辺りの取扱いが重要になってくるということ。
 
 それから、インベストメントチェーン全体の高度化ということで、アセットオーナーとの対話を金融庁様からされるということですけれども、このESG投資展開のときの学びを踏まえると、それぞれのアセットオーナーの団体の中で、どういった特徴ですとか、その哲学に合わせてESG、あるいはこの場合ですとインパクトというものを入れ込んで投資をしていくか、この辺りの整理を拡充させるというのが恐らく今回インパクト投資でできる、ある意味ESG投資からの学びではないかと思いますので、この辺りをぜひ検討会のポイントとしていただけましたら幸いです。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。鳥海様、宮下様、竹内様の順番でいきたいと思いますが、鳥海様、お願いします。
 
【鳥海メンバー】  日本証券業協会、鳥海でございます。2点申し上げます。
 
 1点目はいささかプリミティブなお話ですけれども、インパクト投資といっても、市場関係者の中でも実は明確な定義が何なのかということと、ESG投資との違いですとかを説明できる方が現状で実は少ないんじゃないかと感じたりしております。ですので、今までにインパクト投資に関する勉強会を開催されてきたと思うんですが、こちらでの検討内容などを踏まえて、概念ですとか、定義ですとか、一度金融庁さんで整理いただいて発信いただけたらよいのではないかと思っております。これが1点目です。
 
 2点目です。インパクト投資の課題として、企業側にその事業の社会的インパクトを測定するノウハウがないということで、開示が不十分になる。仮に長期的に価値創造につながるような要素があったとしても投資家になかなか伝わっていない。あるいは発行体が開示する非財務情報と、投資家が求める情報に乖離があるのではないかと思っております。
 
 私どもというか野村証券でも、経済的なリターンと社会的リターンの両立が実現できそうな分野ですとか、米国のソーシャルIPO企業、スタートアップ企業などを分析して、定量的な分析をしたりしているんですけれども、情報開示が整備されていなくて、非常に試行錯誤しているところでございます。
 
 ただ一方で、目下企業はいろいろな開示情報の整備に取り組む必要があるということで、この検討会で投資や開示を進める実務的な知見を議論するというときにおいては、企業の開示負担と、それから投資家が求めるものとのバランスを考慮していただく必要があると思っております。また、そうしたインパクトの評価に当たっては、既にありますグローバルな評価手法と齟齬がないようにということも留意いただければと思っております。以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。それでは宮下様、お願いします。
 
【宮下メンバー】  宮下です。ありがとうございます。手短に申し上げます。2点申し上げます。
 
 1つ目は、資料12ページ目にもありますとおり、経済的リターンと社会的リターン、この関係性、これに加えて、そのリスクを含めて総合的に判断していく枠組み、これは本当に開示も含めて重要な要素だと思っております。そういうことを整理しながら、インパクト投資の市場が大きく発展できるように育成していければいいと思っております。これが1点目です。
 
 それから2つ目は、先ほど鳥海様からもありましたけれども、インパクト投資の定義であるとか、インパクトパスの考え方など、整理すべき論点は非常に多いと思っています。一方、事業者の方々以外にも、あるいはプロの投資家の方以外にも、富裕層の方、あるいはそうではない個人の方々も含めて、社会的インパクトに対する関心は高まっていると感じております。そう意味ではインパクトの見える化、どのようなセクターの取組が先行事例なのかというところも論点に挙げていただいておりますが、このようなものを整理しながら、将来的にはガイドラインのようなものがあると、インパクト投資の普及を後押しするのではないかと思っております。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では竹内様、お願いします。
 
【竹内メンバー】  生命保険協会の竹内です。ありがとうございます。
 
 インパクト投資に関しましては、脱炭素社会の実現に向けた重要な取組の一つだと認識していますけれども、ここまでもお話がありましたように、環境とか社会的な効果を計測する手法とか指標が確立されていないこともありますので、企業の情報開示が投資判断に十分ではない点などが課題だと認識しています。
 
 その点におきまして、今年の7月に公表されています「ソーシャルプロジェクトの社会的な効果に係る指標等の例」があったと思いますけれども、ああいったものはインパクトに至る過程や社会的な効果を示すために用いられる指標等が具体的に例示されておりまして、投資家としましても、とても有用なものだろうという認識であります。
 
 今般の検討会におきましても、環境面も含めた具体的なインパクトの計測手法や、インパクトの創出とリターンの好循環を実現する具体例などが示されて、企業様の開示が充実し、ひいては投資家によるインパクト投資の好循環が創出されていくことを期待しています。
 
 それと、インパクト投資に当たっては企業の開示情報を個別に確認するという手続になっておりますが、例えば、JPXに設立されたESG債の発行事例等に関する情報プラットフォームがありますけれども、これが今後拡充されていく中で、機関投資家の利便性の向上や、投資促進に向けた企業のインパクトに関する情報の集約についても、併せて検討いただければいいのではないかと考えております。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では岸上様、吉高様の順番で行きたいと思います。岸上様、お願いします。
 
【岸上メンバー】  岸上です。よろしくお願いいたします。先ほどグリーンファイナンスに関して関連検討会が多いという話があったと思いますが、インパクト投資に関しましても、各省庁の検討会や委員会の中で、主題でないとしても副題として入っていることもあるかと思います。各省庁が重きを置くテーマによっても、どのようなインパクト投資を重視しているかが変わって来るかと思います。
 
 例えば、先ほど長谷川委員がおっしゃられたような上場企業におけるインパクトをより可視化して、そこへの資金導入を促すという部分と、一方で、社会性が非常に高く、長期的に上場企業や一般国民にも大きく影響を及ぼす可能性がありつつも、現状では収益性が低い重要課題もあると思います。これら全て一言でインパクト投資として語られることによって余計に混乱が生じて、それぞれへの資金導入が難しくなる可能性もあると感じております。
 
 これを踏まえて、新たに金融庁でインパクト投資の検討会を立ち上げられるのであれば、勉強会フェーズの際に紹介していた様々なインパクト投資手法の類型化の図式を改めて紹介・活用して頂きたいと思います。色々なインパクト投資のいろんな手法がある中で、それぞれの検討会が、またはその実践においてどこに重きを置いているかということを整理した上で議論ができると、より実践しやすくなるのではないかと感じました。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では吉高様、お願いします。
 
【吉高メンバー】  最初に金融庁から、このインパクト評価は横断的だと位置づけられていたと思うのですけれども、先ほどの経団連の長谷川さんもおっしゃったように、決してスタートアップだけではないですし、既存の上場、既存の非上場企業など、たとえ中小企業であっても対象としてとらえ、インパクトをいろいろな面で横断的にとらえる必要があると思っています。何ゆえこれがインパクト投資検討会なのか、インパクト投融資検討会ではないのかと、私自身は思っております。例えば、サステナビリティ・リンク・ローンでもインパクトを見ていかなくてはいけないわけですし、そういった面では、インパクト投資の概念・範囲をお聞きしたいというのがございました。そうしますと、先ほどの岸上さんがおっしゃったような、他の検討会との関係で整理されているのかとは思うのですけど、それについての御回答をいただきたいと思います。
 
 と申しますのは、最初のほうの検討会でももう一つ言おうと思ったことが、地域の関係でございまして、ロケーションによってもインパクトが違いまして、例えば東北では熱に対する技術があれば、そちらのほうが、インパクトが大きかったり、インパクトをどう捉えるかというのは脱炭素だけでも様々でございますので、横断的にこのインパクト投資検討会でどういうふうに進められるかという点につきましては、ぜひ根本的なところをお伺いできればと思います。ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。インパクトファイナンスですかね。インパクトファイナンスという言葉でもよいのかと今思いました。最初に御指摘いただいたインパクト投資とかインパクトファイナンスの定義についても、国際的にGIINという団体が定義はしていて、比較的定義は確立していると言われていながら、なかなか議論が拡散するのは、定義が非常に大くくりで、環境から社会までインパクトの内容が幅広い。それから、投資主体の範囲が非常に幅広い。そして投資先もベンチャーとかスタートアップから上場企業まで非常に幅広いという中で、言わばインパクトファイナンスという定義をするだけでは、具体的なイメージが人によって非常に大きく違ってくる。その辺を少し精緻な議論をしなければいけない段階に来たのかと思います。
 
 特にこのインパクトをどう捉えるのかというのは非常に難しい問題でして、経団連の報告書はよくできていると思いますし、面白いと思っているんですけども、おっしゃるように、例えばBtoBにおけるインパクトというのは、あることは事実で、非常にインパクトは大きいはずです。どんな素材を使っているかとか。ところが、それを評価して、指標化していくというのは非常に難しい。
 
 観念的にはできることが、実務的になかなか落ちてこない部分というのはあると思っておりまして、この辺は議論すべき課題だろうと思っております。皆様のお力添えもいただければと思いますが、ここまででもし何か事務局でコメントがあればと思うのですが。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 ありがとうございます。インパクト投資について、おっしゃるとおりだと思っております。こちらの11ページの資料の中でも、投資家、金融機関、企業、学識経験者の方から構成される「インパクト投資に関する検討会」とありますけれども、メンバーの中にはエクイティだけではなくてデットに関する専門の方も入っていただいて御議論していただくということを考えています。
 
 今回の立ち上げの段階では、インパクト投資に関する勉強会ということで、インパクト投資という言葉を一旦は使わせていただきましたが、12ページにありますように、また今日も御議論いただきましたように、概念そのものが人によってかなり幅があるという点が、まさに課題だと思います。
 
 概念整理とか類型にどのようなものがあるかということを整理していきたいですし、その際にデットとかエクイティかというその手法もそうですし、どのような企業さんを上場・非上場とか、既に上場されている企業でもこの事業分野についてどう着目するとかということですね。いろんなやり方があろうかと思いますけれども、その辺りをよく研究して、類型とかをまとめられるようにしていきたいと思いますし、その際には勉強会の今までの成果をよく生かしながら、ということもおっしゃるとおりかと思いました。ぜひよろしくお願いいたします。
 
【水口座長】  ありがとうございます。たしかにインパクト投資に関する勉強会ですよね、あちらは。あちらはインパクト投資という言葉を使っていたんですけども、その先「インパクト志向金融宣言」は、「インパクト志向金融」になっていまして、ちょっと広がっていると思っています。
 
 それでは、先を急ぐようですが、この専門人材についての議論に入っていきたいと思うのですけども、高村先生は戻っておられますか。いないですね。では、高村先生からは御意見をメールというか、文書でいただいているんですが、もしかしたら戻ってこられるかもしれませんので、少しお待ちしつつ、ほかの皆様から御意見いただければと思います。専門人材の育成の部分につきまして、こういうことに気をつけてほしいとか、こうしてほしいとか、留意点、あるいは御意見などをいただければと思います。いかがですか。
 
 林様からお願いします。
 
【林メンバー】  このスキルマップについて、こういう人材が必要だと改めて本当によくまとめていただいたと思ったものの、資料の脚注にもありますが、これは事前にも申し上げたのですけれども、これを全部1人でやるのはよほどの方でないと無理と思っていて、これを全部、かなりの高レベルにおいて求めるようなことをすると、人材がむしろ育たないのではないかと思っています。
 
 非常に基本的なところについては、既に証券業協会さんの資格の試験ですとか、PRIでも、有料ですけど、教科書など、既にこういったものがあるので、すごく基本的な試験は必須的なもので入れるということがあったとして、さらに、それぞれの組織において全体をカバーできるような人材のプランを金融機関に持ってもらうということが現実的ではないかと思っています。
 
 例えば実践を進めるソフトスキルといっても、営業向きの人もいればそうでない人もいると思うので、より深く環境について詳しい専門家がいるとか、ポートフォリオではないかと思っていますので、個々人に全て求めるというよりは、例えば、デューデリジェンスのチームはこれをやって頂くとか、そういった分担の全体像を金融機関が描けるような形で、考えていくことが必要と、雑駁ですけれどもそんなふうに感じております。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。個人に必要なスキルマップという意味と、金融機関全体として必要なスキルマトリックスという両方があるということですよね。ありがとうございます。
 
 小沼様、お願いします。
 
【小沼メンバー】  ありがとうございます。今回のこの15ページのような全体像が示されたということは、すごく大きな意味合いがあると思います。サステナビリティファイナンス全体、一般的にはぼやっとしたイメージだと思いますが、特に大学生とか、若い人がこういうことに関心を持ったときに、全体像としてこういう素養がフレームワークとしてはある。それを入り口で分かった上で、自分はこの中でどこを深掘りするような分野に進んだらいいのかとか、そういうことを考えていただく機会になるといいだろうと思います。
 
 弊社にも、最近、中高生あるいは大学生向けの色々な教育コンテンツとか事業の御要望が来ているので、この辺が固まったところでぜひ活用させていただければと思っております。以上でございます。ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では鳥海様、お願いします。
 
【鳥海メンバー】  ありがとうございます。林さんと少し重なりますけれども、日証協では、外務員試験の範囲に既にサステナブルファイナンスの拡大というところが入っています。あるいは海外を見ましても、CFA協会でもう既にサーティフィケートをお持ちだと思いますので、そうしたところとの整合性も考えていただきたいというのが1点。
 
 それから、すごく分かりやすいスキルマップを示していただいているんですけれども、特にその規制ですとかイニシアチブといったところは、アップデートをしていくことが非常に重要だと思いますので、その体制についても担保していただけたらと思っております。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では宮下様、小野塚様の順番で行きたいと思いますが、宮下様、よろしくお願いします。
 
【宮下メンバー】  ありがとうございます。15ページのスキルマップを拝見しております。皆様おっしゃるとおり、非常に網羅的にきちっと整理をいただいたと思います。そういう意味では、専門知識を持った人材の育成に、金融庁さんがこういうふうに踏み出していただくことについては大変ありがたいと思います。
 
 一方、これもお話が少し出ていましたが、立場によりまして必要なスキルが相当異なってくるだろうということで、具体的に私どもの個別の金融機関の担当者をイメージしても、この全てをしっかりやりなさいというのは、結構大変だという感じがいたしますので、これからこのスキルマップをベースに、対象者ごとにどのようなことを求めていくのかというところを整理していくことが、逆にこれらのスキルの浸透につながると思いますので、その辺りに我々銀行協会としてもしっかり貢献してまいりたいと思います。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では小野塚様、藤井様の順番で行きたいと思います。小野塚様、お願いします。
 
【小野塚メンバー】  ありがとうございます。まず1点目ですけども、まずこのマトリクスをおまとめいただいたということが物すごく意義が高いと思いますので、ぜひこれを深めていっていただきたいと思います。先ほどインパクト投資のところで私も見落としていたんですけども、このタイトルを、サステナブルファイナンス促進に係る人材というふうに、大きくサステナブルファイナンスというのをうたったほうがいいかと思います。冒頭の御説明の中でも、ESG人材とかESG投資に係る人材という御説明もあったので、ここはあくまでもサステナブルファイナンスだというところを強調されるといいかと思います。
 
 それから、これまでの御意見のところも、恐らく資料の下には組織として担保するものであるというふうにあるので、それを掲げるということとして賛同しておりますが、私としては個別のアングルとそれから組織のアングルを少し明確にしたほうがいいと思っていまして。まず一つ個別のアングルとしてはこういったものがあるというのはすごくいいと思いますので、JPXさんほか活用できるんだと思います。組織のアングルとして、もし明確化するようであれば、その経営者がこういったことを後押しするんだということを一番上に掲げていただくと、会社全体としてやるんだということが分かります。
 
 それと並行してもう一つお願いしたいのが、これは先週、資産運用高度化室の安達さんとも外部のセミナーで対談をして出てきたポイントですけれども、運用会社も含めて、専門人材を育成するための支援が組織として必要じゃないかということです。端的に言うと、3年ごとのローテーションが、こういった専門人材も対象になるというのが、なかなか対象になっている人も落ち着いて取り組めず、専門家としてのキャリアが深められないというのもありますので、それは組織として深めていくという資産運用会社の経営の在り方というポイントとともに、どこかに入れていただけるといいと思います。
 
 あと個別のポイントとして、ジェネラルなところに、トピック横断的にと書いていただいてはいるんですが、ぜひ言葉として、サイエンスですとか、科学技術ですとか、あるいはスタートアップのようなものを入れていただけたらと思います。これは新しい資本主義の推進とも絡むところですので、入れていただくと相当皆さんのアンテナも立つんじゃないかと思います。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では藤井様、お願いします。
 
【藤井メンバー】  ありがとうございます。議論をお聞きしていて、留意点ということで申し上げます。皆さんの御意見は全く同意していますし、この整理をしていただいた事務局の皆さんは大きな貢献だと思うんですが、注の下から2行目にあるように、「1個人で全て獲得するのは容易ではなく、組織やチーム全体として必要なスキルを獲得」というのは言い換えると、このスキルマップ案は組織としてこういうパーツを準備すべきということを示していることになっていると思います。
 
 すなわち表の中の各パーツ、例えばリスク管理であるとか、サービス提供といった個別項目の人材育成の話は記載がないんです。ある意味問題が元に戻ってきていて、言い換えると経営の視点、リスクの視点、フロントの視点でこういうものが必要だという専門人財の包括的なリストにはなっているんですが、それをどう育成するかという点については、実は話が出発点に戻っています。
 
 かくいう私も今現在答えを持っているわけではないのですが、例えば、既存のアナリスト試験とか外務員試験を活用するとか、何らか各パーツについてどのような進め方があり得るのかという整理が要ると思いました。ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。手塚様、お願いします。
 
【手塚メンバー】  これは非常によくまとまっていて、全部これを満たせるような人材が全てそろってくるといいだろうと思いますが、今出ている議論にも関わるかもしれませんけれども、私はTCFDコンソーシアムの情報開示ワーキンググループというところの座長も引き受けているんですが、TCFDは、御案内のとおり、気候変動の、しかも情報開示という、このサステナブルファイナンスでいうごく一部を担っている動きだと思うんですけども、この中でも、東証プライムの要件が入ってきたために、急激にTCFDコンソーシアムのメンバーが今増えてきていて、これから新規の開示を始めようとか、検討を始めようという企業が増えているんですね。
 
 なので、このコンソーシアムの初期の頃から入っている、先行して行っている事業会社、あるいはそういうところがまとめてきているガイドラインのような知見をいかに広めるかということがテーマになってきています。
 
 その中で今議論しているのは、3段階で人材を育てていく必要はあるだろうということです。まずは実際に手を動かして、それをTCFD開示あるいはシナリオ分析であるとか、幾つかの論点をまとめていく、そういう実務レベル、ここでいうと専門人材にあたると思うんですけど、こういう人材を育てるための、まず初期的な教育プログラムを提供する必要があるだろうと。
 
 次に、そうした論点全体を統合して、会社の行くべき姿、あるいは戦略、あるいは価値創造にどうつなげていくかということを考えるミドルからアッパーマネジメントの専門人材、こういうものも並行して育てる必要があるんだけども、この人たちは、より広い視点でもってTCFDを捉えていく必要があるということです。
 
 さらにそれだけでは多分駄目で、最後、これを経営の戦略そのものにして、これを外部とのコミュニケーションあるいは投資家や顧客とのコミュニケーションに使っていく経営者を育てる必要もあるだろうということで、今、そのTCFDコンソーシアムの中でオンゴーイングで行われている議論は、一番実務に携わる、手を動かす人をどうやって育てるのかという教育プログラム、それからミドルマネジメントをどうやって育てるかという、これはどちらかというとMBAのプログラムに近いようなイメージですけども、そういうもの。さらにその上にエグゼクティブプログラムのようなものもつくって、それを全部同時に進めていって、つくる人と考える人と使う人を全部用意しないといけないだろうという話がなされています。
 
 したがいまして、それをサステナブルファイナンスとしますと、さらに分野が膨大に広がるので大変だと思うんですけども、ぜひそういう段階ごとに必要な人材とその育成プログラムをそれぞれ並行して、同時並行で進めていただくのがよろしいのではないかと思います。私から以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。小野塚様の御指摘とも通じるもので、非常にきれいに整理をしていただけたかと思っております。
 
 それでは山本様、そして岸上様の順番で行きたいと思います。山本様、お願いします。
 
【山本メンバー】  損保協会の山本でございます。スキルマップの議論の論脈において、我々側、金融機関のスキルを高めることは非常に大事だと思います。一方、受け手側の企業の皆様のスキルも高めていかないと、エンゲージメントを進める上で一方的になり、話がかみ合わないということもあると思います。我々自身のスキルがなかなか高まらない中でまだ早いかもしれませんが、企業側のスキルをどう高めていくかというところも課題の一つとしてこれから出てくるような気がします。
 
 そういう意味では、先ほどお話がありました脱炭素の取組と金融機関の取組などの検討会の中でも場合によっては我々のスキル、プラス企業側のスキルをどう高めるかというところも一つテーマとして入れ込んで、国内全体でこのスキルを高めて取り組むことが非常に重要かと思っております。
 
 損保協会では、企業の皆様方からリスク管理という観点で御相談を受けることが非常に多くございます。最近は脱炭素に向けたリスク管理を企業としてやらないと、リスクが非常に高いという声もいただいております。そういった観点から、協会としても取り組める要素があるのかと考えておりますので、引き続きよろしくお願いします。
 
【水口座長】  ありがとうございます。それでは岸上様、林様の順番で行きたいと思います。岸上様、お願いします。
 
【岸上メンバー】  ありがとうございます。皆様の御意見にいろいろと賛同するところが色々とありますが、追加点として1点あります。個別テーマの中で現状、AIと倫理を掲げていただいておりまして、非常に重要だと思います。先ほど小野塚さんが必要なスキルとしてサイエンスと科学を明記していただきたいとおっしゃっていたと思います。これと対になると思いますが、個別テーマで例えば環境、気候変動のところに資金を導入する際、それがどういう形で人権に影響を及ぼしてくるかなど、包括的に見ていく必要があると思います。矛盾を抱えた時の哲学的な部分や人類学的な視点といった、文系的な視点も全体を見る上では非常に重要かと思いますので、科学といった技術的なスキルと併せて必要ではないかと思います。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では林様、お願いします。
 
【林メンバー】  もう一度資料を読んでいて、よくできている資料だと思ったんですけど、15ページの基礎から応用と一番右に矢印が入っているのは、多分皆様がおっしゃられていた3段階の人材ですとか、基礎と応用という言葉に置き換えられているのかと思いました。
 
 あと14ページのところに、もう既に書いてあって、今までの議論で出ていなかったので、一応言及させていただきますと、今後いろんな製品を使う個人とか、国民への浸透という話があって、さすがに15ページの内容を国民に求めるということはないと思うんですけれども、国民への浸透ということについても併せて議論していくことが必要だと思います。学生の段階でこういうことを勉強して、そして金融に入っていこうという方たちも含めて、消費者としての考え方、それから個人投資家としての考え方ということも金融教育の重要性としてとても大事な要素だと思うので、その視点もどこかに入れられたらいいかと改めて思いましたので、念のため申し添えます。ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では吉高様、お願いします。
 
【吉高メンバー】  ありがとうございます。私も岸上委員と林委員と同じ考え方です。このマップはすごくよくできていて、全体的に網羅はされていると思っています。ただ、最初のⅠの部分のESGに分けてしまうところにミスリーディングが生じるのではないかとは思っています。ESGという言葉も、もともとはPRIから出ているところでして、サステナブルというのは、今、岸上委員がおっしゃったように、例えば気候変動とボード・ダイバーシティーの関係とかでも、経産省が策定した人権デューデリジェンスガイドラインに対して、パブリックコメントが700ぐらい集まり、その中には女性に関することが書かれてない、WEPsのことも加えるべきという意見もあったりします。分けて考えてしまうことに私はリスクがあると思っているので、サステナブルの基礎は基礎でいいですが、それと金融がどう関わるかということを最初にきちっと入れて、各論の話はあまりESGで分けないほうがよいかと思いました。
 
 その上で、いろんな段階の方々がいろんな段階の考え方で、どう自分たちの金融の、特にガバナンスとありますので、それは金融のガバナンスも入っているわけなので、そういうふうに考えていただいてもよろしいのかと思いました。ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。そうですね。サステナビリティ全体の、岸上様
がおっしゃるような哲学的な部分というのは非常に重要かと思いました。
 
 ここで、高村先生はいらっしゃっていますか。いらっしゃらないですよね。高村先生からメモをいただいていますので、私の方で代読をさせていただきます。
 
(高村メンバー意見)  本日の会議に遅れて入室をするため、あらかじめ意見を提出します。その他人材育成について、サステナブルファイナンスをいかに適正に促進・加速できるかが、重要性を増す社会課題への効果的対応を可能にし、新たな産業・社会構造への転換を促し、持続可能な社会の実現に不可欠である。
 
事務局資料に記載されているように、なお検討すべき多くの施策・課題があるが、サステナブルファイナンス推進にあたって、その水準を高め、加速していくために、それに関わる体系的な知識をもって、動きの速い国内外の状況・情報を入手できるスキルを身につける人材の育成が不可欠になっている。
 
 トランジション・ファイナンスを例にとっても、将来実装される技術とそのリスクを評価する工学系の人材なども必要となる。実際、金融機関においてこうした人材を採用する例を最近しばしば耳にする。このように、これまで想定されてこなかった分野の人材の育成も必要となる。大学など教育・研究機関がこうした人材育成に果たす役割も大きい。
 
そうした観点から、事務局資料のスキルマップは、どのような分野の知識・スキルが必要とされるかの目安となるもので、こうしたスキルマップは、人材の育成・開発にあたる諸機関にとっても有用である。これを基にさらに検討を進め、随時更新していくべきである。(高村メンバー意見ここまで)
 
とのことでした。ということで、基本的に御支持いただいているということですよね。ですが、大学の役割も重要ということで、私も何かしなければと思います。
 
 ここまでで、事務局から何かコメントはありますか。よろしいですか。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  ありがとうございます。ESGの統合の辺りは、策定していく過程でも悩ましく感じておりました。これで十分表現できているかなと思いながら作成しつつも、ただ一定程度区分けをしないと、なかなか表記がしづらいというところがあり悩ましく感じたところです。
 
 また、例えば⑦のところで経営戦略の策定と書いてありますけど、これがどのレベルかということはありまして、ドラフトするということでもあれば実務的なものかもしれませんが、経営戦略をまさに実施していく経営を進めるという意味ではハイレベルということでありまして、基礎と応用と右側に書いてはありますけれども、レベル感とか組織全体でどう実施していくかの観点も含めていくということかと思いますので、引き続き御意見いただければ幸いでございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。それでは最後に、今、検討会2つとスキルマップについて御意見をいただきました。それ以外の、例えば企業開示の充実ですとか、市場機能の発揮等々、金融庁としてこれからしていこうとされる課題、さらにはここにないけれども、もっとこういうことをすべきではないか、など、今後力を入れて検討すべき課題など、全体的に御意見があればいただきたいと思います。いかがですか。
 
 林様、お願いします。
 
【林メンバー】  全体的なというよりはポイントを絞った話で恐縮ですけれども、5ページで、市場機能の発揮ということで今、先生におっしゃっていただいたんですけれども、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針の改正ということが書いてございまして、今年コーポレートガバナンス・コードの改定がございましたけれども、スチュワードシップ・コードについてどんな方針なのかというのを1点確認したかったのでお伺いまででございます。
 
 全体については、本当によくまとめていただいてありがとうございました。以上です。
 
【水口座長】  スチュワードシップ・コードの改定はどんな状況なのか、少し御説明いただくことは可能ですか。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  本日直接の担当がおらず当方の理解しているところとなりますが、これまでガバナンス・コードであるとか、スチュワードシップ・コードであるとか、市場における投資家、企業の機能発揮・ガバナンスの向上のためにいろんな取組みをやってきて両コードは重ねて改定も行われているという理解です。特に本会議との関係では、例えばサステナビリティの考慮という点も盛り込まれたところであります。先月公表した行政方針の中では、その辺りをどう実効的にしていくかということについて、次のステップを考えていきたいという趣旨を記載させていただいています。3年のめどの年に当たるので、今年どうするんですかという御質問はいただくんですけれども、現時点では、改定するかどうかも含めて、より、これまでに盛り込まれた内容を実効的にするためにどういうことがなし得るのか検討している状況です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では藤井様、お願いします。
 
【藤井メンバー】  ありがとうございます。ハイレベルな方向性の話ではなくて、やや細かいお願いですけれども、せっかくの機会なので申し上げます。今日の資料にもあります、8月に結果公表されましたシナリオ分析ですけれども、これの基になっているモデルとかデータセットについて、公表ないし少なくとも希望があった場合の共有を御検討いただけないかと思っています。
 
 今回のベースとなっているモデルやデータは、NGFSのモデルですので、NGFSのウェブサイト等でデータも含めて取得可能ですけども、産業間の波及効果については、日銀さんがベクトル自己回帰モデルによって業種別のGDPや産業別株価指数を推計したとなっていまして、その内容は公表されていないと理解をしています。
 
 今回のシナリオ分析に参加したのは、銀行でいうと3メガバンクですので、全銀行の貸出し総額に占める比率が約30%で、イギリスにおける70%や、フランスは資産ベースですけれども85%等、他国に比べて低い数値になっています。
 
 そういう状況を踏まえると、今後メガバンク以外の銀行にも、こういったシナリオ分析の実施を期待したい一方で、こういった産業連関表をベースとしたようなモデルの開発を個々の銀行に行わせるのは各行にとってなかなかハードルが高いと思います。
 
 気候変動について、そもそもデータの制約を指摘している一方で、当局自身は持っているデータの共有に積極的でないと取られてしまうと、銀行側は逆にそこは当局やメガバンクに任せておけばいいというような受け身の姿勢になるおそれがあると思います。
 
 金融機関における高度化を進めて極力後押ししていくという意味で、当局においても持てるものはできるだけ出していくということも含めて、御検討いただければありがたいと思っております。以上です。ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。一問一答になって恐縮ですが、この点、シナリオ分析について。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  27ページをお開きいただければと思いますが、先月になりますけれども、金融庁と日本銀行で、3メガバンク及び大手3損保を対象としまして、シナリオ分析のパイロットプロジェクトということでさせていただいており、その結果を公表させていただいております。
 
 今、藤井さんからお話しいただいた点ですが、この概要にもあるとおり、移行リスクと物理リスクが信用コストに与える影響ですとか、保険の場合でありますと保険金額の支払いに与える影響などについて、どのような将来のシナリオに基づいて保険金額とか信用コストが出るのか出ないのかということを試算するわけですけれども、この試算のシナリオについては、今回は金融庁・日本銀行において、NGFSシナリオをベースとした枠組みというのを簡単に概略設定させていただいて、各金融機関の方と議論しながら分析作業を行ったということです。
 
 このNGFSのシナリオというのは、英語でもウェブなどである程度は出ている、公表されているんですけれども、ディテールの部分で、具体的にどういう指標・変数がどう取り扱われているか、もう少し情報が出せないかという御意見は承知しております。
 
 今回は第1回目のパイロットプロジェクトで、データの使い方、それから推計手法も含めていくつか試行的に使いながら実施したと承知しているんですけれども、次以降どのようなことができるのかということについては、ここにも書いてありますように継続的な論点かと思います。
 
 またデータ一般については、海外でも、シナリオやシナリオの結果としての影響データも含めて、国際的にもデータの整備についてということ検討が進められておりますので、こうした議論も活用できないかということもあろうかと思います。
 
【藤井メンバー】  ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。私がここで余談を言ってはいけないんですけど、ウクライナのこともあって、そもそもシナリオの前提となる国際環境が大きく変わっている中で、従来型のシナリオだけで本当によいのかというのは、実は考える必要があるだろうとは思っております。難しいですよね。難しいんですけど、本来シナリオ分析の最も重要なところはそこだと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 
 ほかに御意見とかコメントがあればいただきたいと思いますが、いかがですか。長谷川様、お願いします。
 
【長谷川メンバー】  御参考までの共有です。資料の4ページで国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)におけるサステナビリティ開示基準の策定に対しては、官民を挙げて国際的に意見発信を行うと言っていただいておりますが、経団連のタスクフォースでは、ISSBの公開素案に対して7月末に意見を出しまして、8月末には、この提出した意見に関して、経団連の会員と、ISSBのスー・ロイド副議長、小森理事との間でも対話のアウトリーチの機会を設けるなどしております。さらに10月にも会合を予定しておりまして、官民を挙げて意見発信をしていきたいと思っております。
 
【水口座長】  よろしくお願いいたします。重要なことですよね。ありがとうございます。
 
 ほかにいかがですか。岸上様、お願いします。
 
【岸上メンバー】  大枠についての意見ですが、資料2ページに、今後10年間で官民協調で150兆円規模のグリーン・トランスフォーメーションを実現すると記載されています。こちらを軸として、特にグリーンファイナンスやトランジション・ファイナンスへの取り組みに、サステナブルファイナンスとしても関わっていくのだと思いますが、この額だけを聞いては、一国民として、この流れや投入される資金のメリットが分かりづらいかと思います。
 
 本日はあまり個人投資家向けの具体的な議論はしていないと思いますが、個別の個人投資家向けの商品に関する議論に入る前段として、この辺りの整理が出来ると良いと思いました。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。個人投資家向けの議論というのはあまりしていないですね。承りましたということで、ありがとうございました。
 
 ほかにいかがでしょう。段々出尽くした感じでしょうか。よろしいですか。
 
 種々御議論いただきまして、ありがとうございました。ちょうど時間も迫ってまいりましたが、ここまで、一通り両検討会と専門人材の育成、そして全体について御議論いただいてまいりました。もしこの辺でコメントをいただければと思いますが、いかがですか。
 
【高田総合政策課長】  ありがとうございます。総合政策課長の高田でございます。
 
 本日も、この新事務年度が始まって最初の有識者会議でありましたけども、大変有意義なコメントをいただきまして、誠にありがとうございます。その中で、何人かの方々から検討会が多過ぎるという耳に痛い御指摘をいただきました。確かにそういう部分が正直否定はできなくて、ただその期に及んでもまた新たに検討会をつくろうとしているので、若干罪悪感を感じてはおります。
 
 開き直るわけではないんですが、他方で、この分野はすごく今、進展が速く、様々なイニシアチブなども世界的に出てきています。例えばGFANZがありますけれども、それ以前にも、RE100だとか、CA100+だとか、民間でも世界的に色々なアクターが色々なイニシアチブを立ち上げて、それぞれが重なり合って発展してきたという状況があると思います。
 
 水口先生からもお話がありましたように、ある意味では、この分野があらゆる業種の様々な立場のアクターに関わりがあるがゆえに、また政府の中でも各省庁が、それぞれの行政に関係があるということで、一見同じようなテーマに見えるかもしれませんけれども、それぞれの重点の置き方が異なる形で様々な議論を進めているという状況にあるということのあらわれかとも思います。
 
 先生方におかれましては、各省庁の様々な検討会に引っ張りだこということで大変申し訳なく思いますが、そういった状況にあるということも御理解をいただきつつ、ただ我々としても当然ながら、関係省庁でもそこはよく連携をしておりますし、もちろんこの会議にも経産省や環境省の方々に傍聴いただいておりますので、そこはよく整理をして、できるだけ効率的な形で、かつ全体として、政府全体としてしっかりと結果を出していけるように取り組んでいきたいと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。
 
【水口座長】  ありがとうございました。堀本さん、一言。
 
【堀本政策立案総括官】  堀本です。どうも本日は多岐にわたる活発な議論をありがとうございました。先ほど高田が申したように、そもそもこのテーマはかなり分野が多岐にわたりまして、したがって関係者が多岐にわたって、論点も多岐にわたっていますし、先ほどお話しした専門人材一つにとっても、いろんな層のいろんなケースを想定するような議論になってしまいますので、そういう形では議論が若干重複したり、関係者の中で重複したり、あるいは逆に発散してしまったりというようなことに往々にしてなりがちなテーマなので、事務局としては、なかなか難しい部分があるんですけども。
 
 役人をやっていると、とにかく会議の付加価値というのが忘れがちになりますが、できるだけこの会議において、このサステナブルファイナンスという全体像の中で、どういう付加価値が実際につけられるかということを、論点をもう少し整理しながら、一方で大きな俯瞰は必要ですけれども、その中でまずは何を議論していこうという形で、この会議自身の形を整理して、きちんと進めていけるように努力したいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 
【水口座長】  ありがとうございました。本日も活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。いろいろな会議がたくさんあるということで、それだけ今この分野が大きく変わろうとしている転換点だろうと思います。個別具体的な施策の議論をし始めると、そこが非常に重要なのですが、個別具体的な施策を議論すると、いろいろ難しいものにぶつかったり、どうしていいか分からないということがあったり、時には、ある程度その方向感の違う議論もあるのかもしれません。
 
 しかし、大きな意味での方向性を見失わないようにと思っておりまして、最初に手塚様からおっしゃっていただきましたけど、大きな終着点は皆見えていて、そこに至る道筋がサステナブルかどうかという御指摘をいただきましたが、大きな方向感を見失わないように、どこに行こうとしているのかを忘れないようにと考えております。
 
 また、この有識者会議に御参加の皆様は、今いろいろありましたように、ほかの会議でも重要な役割を担っておられますので、ぜひ全体がうまくいきますように、いろんなところでお力をお貸しいただければと思っております。
 
 それでは、本日いただいた御議論も踏まえまして、事務局において関係団体とも連携しながら対応を進めていければと思ってございます。今後ですけれども、具体的な取組や検討会につきまして、皆様に御報告できる状況になった段階で、随時、有識者会議も開催をしていきたいと思います。本日も貴重な御議論、建設的な御意見をたくさんいただきました。ありがとうございました。
 
 最後に事務局から御連絡等がありましたらいただきたいと思いますが、いかがですか。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  次回の会議は開催未定でございますが、できるだけ早く日程調整をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 
【水口座長】  早めに日程調整してくれればということをいろんな人から言われていますので、よろしくお願いいたします。
 
 それでは、本日は以上にしたいと思います。本日も御協力いただきまして、ありがとうございました。お疲れさまでした。

 ―― 了 ――

  

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