「サステナブルファイナンス有識者会議」(第15回)議事録

1. 日時: 令和4年12月15日(木曜日)13時00分~15時00分
 
【水口座長】  それでは、ただいまより、サステナブルファイナンス有識者会議(第15回)の会合を開催したいと思います。
 
 この有識者会議としては初めて対面で皆さんに集まっていただきました。記念すべき対面第1回会合でございますが、オンラインで御参加の皆様は、ちょっと残念でしたけれども、ぜひ次回はここに皆さんで集まれるとよいなと思っております。
 
 オンラインの皆様には申し訳ありませんが、発言されない間はミュート設定にしていただきまして、発言時にミュートを解除して御発言いただき、発言が終わりましたらまたミュートに戻していただければと思います。
 
 本日は初めてハイブリッド形式の開催ということで、中島長官にお越しをいただいております。御挨拶をいただければと思います。
 
 では、長官、お願いいたします。
 
【中島金融庁長官】  中島です。本日はお忙しい中、水口座長をはじめメンバーの皆様には御参加いただきましてありがとうございます。
 
 2年前、私が総合政策局長のときにこの会議を立ち上げましたけれども、立ち上げて以降ずっとコロナの影響でオンライン開催でしたので、こうやってメンバーの皆様と直接お会いするのも実は今日が初めてです。また、この会議は非常に活発に議論しているというのはオンライン越しにも感じていましたので、今日は対面で話が伺えるということで、出席をさせて頂きました。
 
 この2年間、本有識者会議では、サステナブルファイナンスをめぐる内外の情勢も踏まえて、大所高所から各論に至るまで本当に様々な御議論をいただいて、これまで2本の報告書を取りまとめていただいております。金融庁では、こうした報告書、あるいはこの会議での議論を踏まえることによって、統一感を持って様々な施策を着実に推進することができると感じております。
 
 今事務年度においても、例えば来年3月期からはいよいよ有価証券報告書にサステナビリティ情報の記載欄が新設をされる、あるいは、今日もありますけれども、ESG評価機関の行動規範の策定、また、ESG投資に係る監督指針の改定、そういったことを金融庁も行っています。さらに現在、検討会で議論が行われていますけれども、今後、トランジションに向けた金融機関と企業との対話のためのガイダンス、あるいはインパクト投資に係る基本的指針、そういったものの策定にも取り組んでいきたいと考えております。
 
 足元、ロシアによるウクライナの侵攻以降、不安定な国際情勢あるいはエネルギー情勢でありますけれども、環境課題あるいは社会課題の解決に向けたサステナブルファイナンスの重要性というのは、むしろ高まっていると感じています。
 
 金融庁としては、こうした中で、国内的にもあるいは国際的にも、主体性を持って意見発信を行って政策を進めていく、こうしたことをやっていきたいと思っています。そのためにもメンバーの皆様には、水口座長の下、引き続き、ぜひ活発な御議論を大いに期待をしております。今日もよろしくお願いします。
 
 私からは以上です。
 
【水口座長】  中島長官、ありがとうございました。
 
 2年前に立ち上げていただいたこのサステナブルファイナンス有識者会議、あのときにできて本当によかったなと思いますね。おかげさまで、サステナブルファイナンス、大変いろいろなところで活発に動き始めましたし、一方で、社会はますますいろいろな課題を取り上げるようになり、生物多様性、そして、この先は経済的不平等といったテーマが次々に出てきます。
 
 有識者会議をはじめ金融庁、それから経産省や環境省、厚労省などいろいろなところが対応を始めていたから、この世界の動きに何とか少しはついていけるのかなと思いますけれども、これからが非常に社会も大きく変わるところですから、ますます皆様のお力をお借りしなければと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 
 さて、本日はまず、今、少し申しましたが、気候変動の会議がCOP27ということでエジプトで行われておりましたが、そのすぐ後、現在はカナダで生物多様性条約に基づくCOP15が開催されております。この生物多様性と金融について御議論をいただくというのが今日の最初のテーマでありまして、その後、後半では、サステナブルファイナンス全般について、金融庁が進めている具体的な取組について御報告をしたいと思います。
 
 最初に、自然資本等に関する情報開示の枠組みを構築しているTNFDのタスクフォースメンバーであられますMS&ADインシュアランスグループの原口様、そして、農林中央金庫の秀島様より、TNFDにおける議論について御紹介をいただきたいと思います。
 
 なお、TNFD事務局との関係で、資料につきましては、投影のみとさせていただきます。お手元の資料も回収ということになっておりますので、よろしくお願いいたします。
 
 本来、ここで原口さんと秀島さんのお話を伺うところでしたが、まだちょっとつながっていないということで、特に秀島様は今、カナダにいらっしゃるということもあって、カナダは夜中でしょうか、ということでちょっと順番を変えさせていただきまして、先に金融当局の取組で、金融当局や中央銀行が集まっておりますNGFSにおける自然資本と生物多様性損失の議論について、金融庁国際室の永山室長から御紹介をいただきたいと思います。
 
 永山室長、よろしくお願いいたします。
 
【永山国際室長】  どうもありがとうございます。国際室の永山と申します。よろしくお願いいたします。
 
 では、お手元の資料、「自然関連金融リスクに係る国際的な議論の状況」という表紙の資料を御覧いただければと思います。1ページ目でございますけれども、自然・生物多様性をめぐる国際的な議論として、まず、G20財務大臣・中央銀行総裁会議における議論を御紹介させていただきます。
 
 G20財務トラックでは、サステナブルファイナンス作業部会というものが設けられておりまして、昨年10月に「G20サステナブルファイナンス・ロードマップ」が公表されております。このロードマップでは、パリ協定や、持続可能な開発目標、SDGsの実施に向けた資金動員を拡大するための国際的な取組について、5つの重点分野と19の行動が提示されております。このロードマップにおいて自然・生物多様性がどのように言及されているか、まず、御紹介させていただきます。
 
 最初、重点分野2、こちらは情報開示に関する項目ですけれども、その中でISSB、国際サステナビリティ基準審議会は、長期的には、自然、生物多様性といった、気候以外のサステナビリティに関連するテーマについても対象を広げるべきとされています。
 
 また、重点分野3、こちらはリスク評価、管理に関する項目ですけれども、この中で国際機関等に対して、短期・中期的には、気候リスクによる潜在的な金融リスク及び金融安定性への影響を調査すべきとしつつ、また、中期的には、自然、生物多様性を含む、他のサステナビリティ関連リスクについても分析範囲を拡大すべきとされています。
 
 このロードマップは昨年10月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議で承認されておりまして、そのときのコミュニケの声明においても、ロードマップの対象範囲について、生物多様性や自然及び社会問題といった追加的課題を含むよう、徐々に拡大することの重要性を認識するとされております。
 
 このロードマップの進捗につきましては、今年10月のG20サステナブルファイナンス報告書の中で報告されておりまして、重点分野2の開示については、この後、御説明があると思いますTNFDの取組などが紹介されておりまして、重点分野3のリスク評価については、幾つかの国際機関などが金融システムにおける生物多様性・自然関連リスクの評価を開始したということが紹介されています。
 
 本日はこの中で、当庁、金融庁も参加しております金融当局のネットワークであるNGFSの取組について御紹介したいと思います。
 
 2ページを御覧ください。NGFSは、気候リスクへの金融監督上の対応を検討する目的で、中央銀行及び金融監督当局の国際的なネットワークとして2017年に設置されております。現在121の金融監督当局と中央銀行が参加しておりまして、日本からは金融庁と日本銀行が参加しております。
 
 NGFSは、これまで気候関連リスクの分析を中心に取り組んできておりますけれども、次に続く分野として、自然や生物多様性に関するリスクにも関心が高まっておりますので、昨年4月から、研究ネットワークであるINSPIREというところと共同の研究グループを立ち上げて、生物多様性の損失と金融システムの関連に関する調査を開始しております。
 
 この共同研究グループの最終報告書が今年3月に公表されておりますので、まず、その概要を御紹介させていただければと思います。なお、この報告書ですけれども、NGFSの正式な発行物ということではなくて、あくまで、外部の研究を含むインフォーマルなペーパーということで位置づけられております。
 
 では、3ページを御覧ください。NGFSとINSPIREの研究では、生物多様性損失の物理的リスクや移行リスクが、実体経済を通じて金融機関や金融システムに影響を与える可能性があるということが示唆されております。
 
 物理的リスクとしましては、例えば蜂などの授粉媒介者の減少に伴う収穫量の減少ですとか、人工授粉コストの増加、害虫による収穫高の減少、森林破壊による気候・水循環システムの崩壊などが挙げられています。また、移行リスクとしましては、政策や規制の変更、訴訟リスク、消費者の選好の変化などが挙げられています。
 
 こうしたリスクが、実体経済、すなわち金融機関から見ると投融資先の企業ということになりますけれども、その企業の資本の毀損ですとか、収益の減少、あるいは例えば原材料価格の高騰ですとか、オペレーションの見直しに伴うコストの増加を通じて、金融機関の信用リスクなどにも影響を及ぼし得るということが示されております。
 
 他方で、こうした波及経路を通じたリスクの計測を評価するためのデータですとか分析手法というものは確立されておりませんで、引き続き、様々な事象に関する波及経路について理解を深めていくほか、こうした分析枠組みやデータギャップに関する課題に対応していく必要性が指摘されております。
 
 続いて4ページを御覧ください。この共同研究を踏まえまして、NGFSは今年3月に公式声明を発表しております。声明では、4ポツにありますように、生物多様性の損失を含む自然関連リスクは、マクロ経済に重大な影響を及ぼす可能性があり、個別の金融機関だけでなく金融安定にとってもリスクの源泉になるという考え方が示されています。
 
 また、6ポツですけれども、生物多様性損失に関する物理的リスクと移行リスクは、気候変動よりも評価が困難であるということも指摘されております。
 
 こうした点を踏まえまして、8ポツですけれども、今後の課題として、自然、マクロ経済及び金融システム間の相互作用を評価するための科学的に根拠のある分析枠組みを構築すること、データギャップを埋めること、自然関連金融リスクの評価のために、この新しい枠組みとデータセットを利用することというのが挙げられております。
 
 続いて5ページ目でございます。こちらは今後の提言として5つ挙げられておりまして、例えばⅢにありますように、インパクトや依存度の評価を行って、シナリオ分析やストレステストの開発を通じて、金融システムが生物多様性の損失にさらされる度合いを評価することですとか、次のⅣポツにありますように、生物多様性に関連する金融リスクと機会について、金融機関のガバナンス、リスク管理、戦略、開示、財務行動に関する監督上の期待に係る選択肢を探ることなどが提言されております。
 
 こうした内容の中には、金融システムが生物多様性損失のリスクにさらされる度合いを評価するための指標やシナリオについて理解を深めるということも含まれております。
 
 こうした提言を踏まえまして、NGFSは、生物多様性や自然関連金融リスクに関する取組をさらに進めるために、今年4月にタスクフォースを新たに設立しております。
 
 6ページを御覧ください。こちらのタスクフォースの作業としましては、自然関連リスクの主要な波及経路や、金融システム上、クリティカルな課題や課題解消に向けたリソースや解決策の特定やストックテイクを行うこと、また、当局の行動をガイドするための自然関連リスクに関する概念枠組みを策定すること、金融監督やシナリオ分析に関するNGFSの作業部会が、自然関連リスクをどのように取り込むべきかについて提言を策定することがタスクとして課されておりまして、来年9月から12月頃に成果物を策定するべく現在検討が進められているところでございます。
 
 検討が先行しております気候変動と比較しましても、生物多様性・自然関連リスクというのは非常に様々な事象がございまして、気候変動のような大気中の温室効果ガスの濃度や排出量など、単一の指標に還元することができないという特徴がございます。
 
 また、それぞれの事象に応じた地域の特性、ロケーションファクターというのが重要ということで、気候変動の場合のような何度シナリオといった、グローバルに共通のシナリオに基づいて分析するといったことも困難であるという特徴がございます。
 
 ですので、生物多様性、自然資源については、そのリスクや機会の評価の分析がより一層難しいテーマというふうに考えられますけれども、具体的な事例から得られる教訓なども踏まえてさらに研究を進め、金融機関のリスク管理や監督上の対応にどのように結びつけられるのかということについて、国際的にも引き続き検討が進められることになっております。
 
 私からは以上です。ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 NGFSの議論を中心にお話をいただきました。新しいタスクフォースもできているということで、こちらの進捗も期待したいところでありますが、今ちょうど原口様と秀島様が接続できましたということですので、お二人には来ていただいて突然で恐縮ですけれども、御報告をお願いできればと思います。
 
 原口様と秀島様より、TNFDの議論の進捗について御紹介いただければと思います。よろしくお願いいたします。原口さん、大丈夫でしょうか。
 
【原口様】  お世話になります。MS&ADの原口でございます。
 
 秀島さんのほうも。
 
【秀島様】  農林中央金庫の秀島でございます。私も接続できております。
 
【水口座長】  よろしくお願いします。
 
【原口様】  では、早速、11月にリリースしましたTNFDのベータのバージョン0.3の概要について御説明を差し上げます。
 
 次のスライドをお願いします。TNFDのタスクフォースは、昨年10月から活動を開始しまして1年が少し過ぎたところで、その進捗についてお話しいたします。
 
 次、お願いします。今、秀島さんにも一緒に出ていただいておりますが、11月に、従来34人であったタスクフォースメンバーが40人に拡大しました。1者撤退して7者が増えたところでございますが、日本からは農林中央金庫の秀島さんに新たに加わっていただいて、日本から2名という体制になっております。
 
 TNFDについては、今もお話があったように、マーケット主導型で設立されたものではありますが、既にG7やG20においてもその意義づけというものが明確に支持されております。
 
 次、お願いします。TNFDのこの活動について賛同する企業、組織体、日本からは金融庁さん、環境省さんにも参加いただいておりますが、TNFDフォーラムというもののメンバーが今はもう、ここは750になっておりますが、800組織、世界で増えておりまして、日本は、UKに次いでそのメンバー数が多い国に数えられております。
 
 また、TNFDは、マーケットのメンバーが構成要員ですので、専門的な知見であったりですとかそういったところを支援するということで、ナレッジパートナーというのが今18組織ありまして、関連するISSBであるとか、NGFSもそうですけれども、あと、CDP、GRIとか、SBTN、それからWBCSDというところがナレッジパートナーで、先月、新たに東京大学のグローバル・コモンズ・センターがナレッジパートナーに選定されました。
 
 また、このTNFDのベータ・バージョンの実践に当たって、各地域ごとの事情を踏まえたコンサルテーションを行うコンサルテーショングループというのが現在、世界で9つ立ち上がっておりまして、日本においてはMS&AD、それから農林中央金庫、経団連自然保護協議会がコンヴィーナとして活動を進めております。
 
 また、自然に関連する問題は、先ほどもお話があったとおりロケーションベースですので、多様なデータやツールというものが必要になってきますので、自然に関連するデータを提供するデータプロバイダーをTNFDが主導的に集めて、マーケットが必要とするデータやツールを開発してもらうためのデータカタリストイニシアチブという活動を進めております。日本においては、国立環境研究所、東北大学ほか企業などが参画しております。
 
 次のスライドをお願いします。TNFDのアプローチですけれども、今まさにCOP15で議論になっているような開示の義務化をするのかとか、任意でやるのか、それから、シングル・マテリアリティなのか、ダブル・マテリアリティなのかということが、これがジュリスディクションによっていろいろ異なると、それをどのようなものについても適用可能なような柔軟性を持たせるということです。そういった進め方をしております。
 
 また、まだベータ版という状況で、来年、23年9月に正式のバージョン1というものを出しますけれども、そこまでもオープンイノベーションでマーケットと対話しながらつくり上げていくということで、段階的な開示に向けた準備を、野心を上げていくということを目指しています。
 
 次、お願いします。今回のベータの0.3の概要です。
 
 次、お願いします。これですね。来年9月に向けた、今、階段のここの白い丸のところにいるわけでございます。今度の来年3月にベータの第4版というものでベータ版の最終版を出しまして、23年6月1日で全てのパイロットテストや、こういったベータ版に対するフィードバックを締め切って、9月に向けて完成していく、完成作業を進めていくという流れになっております。
 
 次、お願いします。TNFDのフレームワークの構成要素でございますが、1番がまず、開示提言の案というものですね。それを進めるためのハウツーガイダンスというものがございまして、これはLEAPアプローチと呼ばれているものでございます。それ以外に、自然の課題というものの共通認識を形成するための用語の定義であったりとか、それ以外のガイダンスというものがこの周辺に存在するという構成になっております。
 
 次、お願いいたします。今回のアップデートで、ちょっと今、ここに細かくいろいろ書いてあって読みにくいのですが、1番は、この左にあるとおり、開示のレコメンデーション、項目を増やしました。これについてこれから御説明します。
 
 次、お願いします。
 
 その次もお願いします。TNFDは開示提言の開発に当たって、ビジネスやファイナンスセクターが、気候とまた違う開示の枠組みをつくることはしないようにということで、基本的にはTCFDの4つの柱をできるだけ踏襲するという形で当初から開催を進めてきております。
 
 この青いところが、TCFDのレコメンデーションの中でそのまま基本的にはTNFDに移行できるような部分。それから、オレンジのところが、やっぱり自然の課題に対してちょっと改造が必要であるという部分。そして、右にありますTNFDのベータの0.2で出しましたところでは、緑色の部分、これは自然特有の課題、特にロケーションベースのアプローチについて追加したものがこの緑色の部分でございます。
 
 そして今回、バージョン0.3では、新たに3つの追加の開示項目を加えました。内容としては、トレーサビリティ、特にビジネスの上流からの原材料資源等のインプットに関する記述、それからステークホルダーエンゲージメントに関して、そして気候の戦略と自然の戦略の整合性についてというところでございます。
 
 また、オレンジ色の、これはペンディングになっておりました部分でございますが、TCFDで言うところのスコープ1、2、3と、どの範囲について評価、管理し、開示するかというところについては、事業そのもののロケーションと、その上流、下流という概念を提示いたしました。
 
 今の追加、改変になったところについて、特にここに文章で表しております。まず、直接の事業場所、そしてその上流、下流というスコープの概念、それから、特に上流から投入される原材料資源等のトレーサビリティに関するところ、そして、この自然の問題に向き合っていくに当たっては、その場所場所における、そこで生活する人々、先住民であり、地域住民の権利保有者としての権利を尊重して、ステークホルダーエンゲージメントを進めていく必要があるということですね。
 
 そして、当初から想定しているとおり、クライメイト・ネイチャー・ネクサスという観点から、気候に関する戦略と自然に関する戦略の整合性について記述するということになっております。
 
 次、お願いします。これは先ほど申し上げたとおり、開示義務なのか、任意なのかとか、それからシングル・マテリアルなのか、ダブル・マテリアルなのかといったような、ジュリスディクションによって異なる状況を反映できるようにということで、今、増強した開示のレコメンデーションについても、コア、必須となるものと、それからエンハンストといって増強する部分というふうに分類するということを今度のバージョン0.4で出していく予定になっております。この考え方は、ISSBのグローバル・ベースラインと考え方を同じにしているものと言えると思います。
 
 次、お願いします。金融セクターについては、最初からセクターベースガイダンスが必要だというマーケットの声を受けまして、次のバージョン0.4を待たずに、金融セクター向けには先行してガイダンスというものをどんどん開発を進めているということでございます。今回は、金融セクター向けには、最後の開示指標のところまで例示を進めております。
 
 次、お願いします。この開示を進めるに当たってのLEAPアプローチ、ハウツーガイダンスというものも今回改訂いたしました。幾つかの点が追加になっておりますが、特に今お話ししたような、権利保有者とのステークホルダーエンゲージメントであったりというところが今回強調されております。
 
 次、お願いします。自然関連の影響について、TCFD、これはカーボンとかGHGの場合ですと、減らしたものと増やしたもので相殺してそのインパクトを評価することができるわけですけれども、自然の場合には、そこを一緒にしてしまうとグリーンウオッシュにつながりかねないということで、ネガティブインパクトとポジティブインパクトを分けて診断するようにということを今回強調しております。
 
 次、お願いします。そして、今回のバージョン0.3では、依存と影響の評価をビジネスにとってのリスクやオポチュニティーに転換するという、そこの考え方というのが示されております。一般的なリスクアセスメント、ERMのリスクアセスメントの考え方に沿ったものでございますが、ちょっと分かりにくいので、次のスライドをお願いします。
 
 これはケーススタディとして示しているものですが、例えばサケの養殖事業の場合に、横軸が影響の大きさ、縦軸が発生の可能性として、これは5段階評価ですけれども、いろいろなリスクや機会といったものがどこにプロットされるかという形で、自然に関する依存と影響といったもので診断したものの結果を、こういった形でビジネスにとってのリスクや機会というものに転換するというやり方を示しております。
 
 次、お願いします。最後になりますが、先ほど申し上げたように、金融向けのセクターガイダンスでは、こうした社内的なERMでの評価に使う指標と同時に、最終的に投資家に向けて開示するために、業界横断的な指標としてこのようなものがあるのではないですかということを今回は例示をいたしました。
 
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【秀島様】  すみません、秀島ですけれども私から少しだけ補足させていただいてもよろしいでしょうか。
 
【水口座長】  お願いします。
 
【秀島様】  それでは、資料の8ページ目のところに行っていただければと思います。今、原口さんからお話があったとおり、私は11月にTNFDのメンバーになったばかりで、今まさに勉強中のところではあるんですが、今回、このモントリオールのほうに来ましていろいろな人と話をしている中で、こういうことなのかなというのが分かってきたところがありまして、まず8ページ目のところで全体の枠組みが示されているんですけれども、その一番真ん中の濃いところの一番下のコンセプトと定義というのは、用語の定義ということになるわけですが、その上の2つの、開示の提言と、リスクと機会の評価アプローチというのが2つに分かれていまして、リスクと機会の評価アプローチ(LEAP)というのが示されているのですが、これは、それぞれの企業の中で自分の状況を判断するために計測してみる、評価してみるというものでありまして、この結果は必ずしも開示するわけではないということだということを私は最近理解することができました。
 
 それから、その上の開示提言のところが、まさに外に向けて何を開示していくかというところではあるんですけれども、ここに関して企業の皆さんは非常に関心がありまして、何を最終的に開示するのかなということですが、11ページ目を御覧いただきますと、左側が、これは先ほど原口さんから御説明があったように、TCFDの開示の枠組みなんですが、その左側のTCFDの右端の列のメトリクス・アンド・ターゲッツに書いてあるところが、ちょっと小さくて見えにくくて恐縮ですが、2つ目のb)となっているところが、ここがスコープ1、2、3の温室効果ガスの排出量ということになっているんですけれども、それに相当するものが、TNFD、右側のオレンジの四角になっているところが、ここ、文字が薄くなっていて何もほとんど書いていない状態になっていまして、実は、TNFDのここまでの提言の中では、ここの部分がまだ示されていないという状況でありまして、ここの部分は次回の0.4ですね、3月に公表予定のものにそこを入れていくことになっているようでありまして、ある意味では大きな論点となり得る、気候変動で言うところの温室効果ガスに相当するものは書かれていないと。ある意味では今回、まさにモントリオールで開催されていますCOP15の結果を踏まえて、ここのところを埋めていくと、そういうことになっているということであります。
 
 すみません、以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
【原口様】  すみません、今のスコープ1、2、3に代わる、この薄消しになっているところは、次のスライドですね。今回、0.3で、この右側のオレンジのところですけれども、直接と上流、下流という概念で定義をしました。
 
【水口座長】  ありがとうございます。スコープ1、2、3に代わって、上流、下流という言い方になっているということですね。
 
【秀島様】  いや、そうなんですけど、その上流と下流の何を開示するのかというところは、意図的に出していないというふうに、TNFDの議長さんが説明しておられました。
 
【原口様】  そこのガイダンスは、次のバージョンで出します。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 このようにTNFD、大変壮大なプロジェクトで、大変多くの方が関わる、大きな動きだということがよく分かるわけですが、ここで14時ぐらいまでを目途に皆さんから質疑応答という時間を取りたいと思うのですけれども、御質問とか、あるいは御要望とか、どんなことでも結構ですけれども。
 
 では、藤井さん、お願いします。
 
【藤井メンバー】  藤井と申します。原口さん、秀島さん、ありがとうございます。
 
 御質問ですけれども、まず、TNFDおよびTCFDは、最終的にはISSBに統合していく方向だと聞いている、ないし理解しているのですが、その認識で正しいかということと、その場合に、先ほどTNFDのご説明の中でTNFDではダブル・マテリアリティが議論されているとお聞きしましたけれども、私の理解が正しければ、ISSBは今のところシングル・マテリアリティを志向しているということで、これは(TNFDとISSBが)泣き別れになる可能性があるのか、あるいは、その辺りの議論は別途されているのかということについて御質問させていただけますでしょうか。よろしくお願いします。
 
【水口座長】  原口さん、いかがでしょうか。
 
【原口様】  じゃ、まず私のほうから。今の御質問は、非常にいろいろなところで誤解を生みやすい側面で、ちょっとそこについて明確にお話ししたいと思います。
 
 TNFDは、自然関連のリスクや機会について、企業が自らリスク評価、管理し、投資家に開示していくためのガイダンスをつくっていると。自分たちは、その基準をつくっている団体ではないという認識です。
 
 この対象になる企業というのは、いわゆるグローバル企業であるとか上場企業だけを想定しているわけではなくて、自然の関連のサプライチェーン、バリューチェーンというのは、御認識のとおり、本当に上流の農家さんであるとか、小規模事業者も含めた対応をしていかないと解決できないという認識ですので、先ほど申し上げたコアとエンハンストの整理についても、バージョン0.4では、いわゆるグローバル企業についてこういう線引きをするというだけではなくて、中小企業の場合もどうであろうかということを今、検討しております。
 
 ですので、ISSBに統合していくというよりは、昨日、ISSBがプレスを出していると思いますけれども、ISSBは、グローバル・ベースラインの上に気候や自然や社会的側面をどういうふうに入れていくかというところで、TNFDをある意味参照するようなアクションにしていきますということを宣言されているわけですけれども、TNFDとしては、ISSBのグローバル・ベースラインを採用しない国や地域、もしくはターゲットにならないような企業であっても使えるようなフレームワークをつくるということですので、TNFD自体は、シングルとかダブルとかいうことのスタンスはどちらも取りません、あらゆるマテリアリティに対して適応できるものをつくるという考え方に立っております。
 
【水口座長】  ISSBとTNFDは、ある意味、円が重なる部分と重ならない部分があるということで、最終的にISSBはISSBの判断で決めるのでしょうから、TNFDを参照しながらISSBはつくっていくのかなとは思いますけれども、逆に、ISSBの守備範囲外のところもTNFDは入ってくると、こういうことなんですね。
 
 秀島さん、何か補足とかありますか。
 
【秀島様】  ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりだと思いますし、あと、そのタイミングの問題としまして、ISSBは、まさに昨日の時点でプレスリリースを公表したわけなんですけれども、実はたまたま同じモントリオールでISSBも理事会を開いているんですが、そこでその次の議題として上がっていますのが、今後の作業計画というのが議題にのっていまして、その中でこの自然関連資本のところに手を広げるかどうかということを議論することになっていまして、それをいろいろな手続を踏まえますと、来年中はまだしばらく、取りかかるための準備の議論をするというふうに伺っています。
 
 ということでありますので、TNFDは一応、来年9月を目指して公表しますので、そこで一応一通り固まったものが出ると。その上でISSBが、それも見ながら検討を開始していくと、そういう時間的な流れになるのかなと思いますので、そういうタイミングを踏みながら、先ほど座長からお話があったような形になっていくんだろうなと思っております。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 ほかに。では、井口さん、お願いします。
 
【井口メンバー】  永山様、原口様、御説明ありがとうございました。
 
 すみません、どうしても資本市場にいる人間なので、今から御質問する方向にいってしまうのですが、永山様にお聞きしたかったのは、気候変動ですと、融資先あるいは投資先を含めて金融機関が大きな影響を受けるというのは理解できるんですけど、生物多様性、私、不案内のところもあるのですが、こちらのほうも金融機関が影響を受けるので、こういうプロジェクトがあるのでしょうかというのが永山様の方への御質問です。
 
 あと、原口様等にも質問がありまして、これも今の質問と似ているところはあるのですが、強制開示になってくると、重要性、マテリアリティということが重要になってきて、まさにシングル、ダブルの議論があると思うんですけど、欧州は別にして、基本的には資本市場では、ISSBも含めて、シングル・マテリアリティの方向というのが、今、潮流になっています。その中で、気候変動のように大きな影響を与え得るものなのか、すみません、基本的な質問で。実際、参加されている企業を拝見すると、医薬あるいは消費財とか、気候変動以上に業種が偏っているので、このあたりの御見解を教えていただければと思っております。以上です。
 
【水口座長】  まず、永山さん、いかがですか。
 
【永山国際室長】  ありがとうございます。御指摘のとおり、生物多様性自体が与える影響というのは当然、金融機関に限らず、あらゆる事業者に及ぶものでありまして、まさにTNFDで御議論されているのは、その各企業におけるリスクや機会をどう伝えていくかというお話だと思います。
 
 今、私から御説明申し上げたNGFSにつきましては、これはまさに金融当局の関心事項として、そういったいろいろな事業体に投融資をしている金融機関のリスクをどう捉えていくか、さらに総体としての金融システムの安定性を当局としてどう把握していくべきかという問題意識に基づいているので、直接の対象が金融機関になっているということでございます。
 
【井口メンバー】  ありがとうございます。金融機関でも大きな影響を受けるところがあるので、リスク対象にしていらっしゃるのか、それともあまり大きくないかもしれないですけど、ERMの中の一つとして見ていらっしゃるということでしょうか。
 
【永山国際室長】  そうですね。その辺りのリスクが本当に大きいのか小さいのかというところがまだ計測し切れない中で、ただ、大きな影響があり得るのではないかという可能性を視野に、そういうリスクをきちんと把握できるような枠組みを検討していかなければいけないのではないかという問題意識かと思います。
 
【井口メンバー】  了解しました。ありがとうございます。
 
【水口座長】  秀島様か原口様、今の後段の、例えば業種によっても大分影響は違いますよねという話もありましたが、いかがですか。
 
【原口様】  ありがとうございます。TCFDでもその重要業種というのを提示していると思いますけれども、TNFDでもプライオリティー・セクターという形で、TNFDがバージョン0.4に向けて、先ほどの金融セクターと同じように、事業セクターごとの個別ガイダンスというのをできるだけつくっていく予定になっております。
 
 そのときに、御質問にありましたとおり、こういったセクターのほうがまず重要ではないかということは既に提示をしておりまして、御指摘のとおり、食品とか、アパレルとか、割と分かりやすいところもタスクフォースメンバーの中に入っておりますが、マイニングですとか、あとは森林系とか、あとは水産養殖、水産養殖は割と直接ですね。そういった上流のほうの資源開発とか、それから今後は、下流のほうのインフラとか不動産系のところも今回も新しくメンバーに入ったところでございます。
 
 また、農林中金さんに秀島さんが選定された一つの理由としては、今回のタスクフォースメンバー拡充の要件として、ソブリンに対するエクスポージャーのある、そこに強みのある金融機関を募集しますということで選定されていますので、自然関連リスクというものが特定の事業セクターだけにとどまるようなものではなくて、国、地域ごとにはなりますが、そこのリスクについての認識というものが今、出てきているという状態、状況かなと思っています。
 
【水口座長】  ちょうどあれですよね、金融機関向けのガイダンスができているということは、金融機関は、そういう意味でいうとプライオリティー・セクターだと、こういう理解なんですか。
 
【原口様】  ありがとうございます。そうです、そのとおりで、当初からここに入っている、特にヨーロッパ系のところが多い、意見が強いですけれども、彼らの危機意識というのは物すごく大きなところがあります。
 
 彼らが持っているアセットのエクスポージャーにおける、この自然関連リスクにおける下振れリスクについての危機意識とともに、彼らとしては、そこを改善していくことによって新たなオポチュニティーが生まれるということで、典型的な例としては、リジェネラティブ・アグリカルチャーと言われるようなものへの投資というのを既に彼らは始めているということで、EFRAGのダブル・マテリアリティ開示とも併せて、特に欧州系の金融機関というのは、これはもうクライメイトと同じぐらいの重みで考え始めているという認識でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 ちょっとお手が挙がっていますので、一旦フロアのほうに振りたいと思うんですけれども、林様、手塚様と順番にお話をいただいて、まとめてお三方にお返事をいただこうかと思います。恐縮ですが、少し短めにお願いいたします。
 
【林メンバー】  大丈夫です。まず、TNFDの件なんですけれども、2023年9月にレコメンデーションとありますが、その後のいつまでにというタイムラインはまだ未定ということでよろしいでしょうか。これが1点目。
 
 それからあと、先ほどのNGFSのほうについてですけれども、2ページ目でオケージョナル・ペーパーの位置づけとあって、なぜ、正式な文書にしなかったのかというのは何か意味が、意図があったのかという、すみません、そこについてお伺いできればと思いました。
 
 以上です。ちなみに、TNFDは我々もメンバーで、米系ですけど、一生懸命やっているように感じております。
 
【水口座長】  お疲れさまです。ありがとうございます。
 
 手塚様、ちょっと一緒に御質問をいただいてもよろしいでしょうか。
 
【手塚メンバー】  すみません、いつものことなんですけれども、開示する側の事業会社の参加は私一人なので、その立場で多少違和感を含めてお話ししたいと思います。これは恐らく、TCFDのある意味コピーでこういうものをつくろうという、金融側のイニシアチブで出てきているような話だと思うんですけれども、TCFDの気候変動側の話というのは、過去、もう20年以上、その背景にある因果関係であるとか、定量的なデータであるとか、あるいは何がコントロールできることなのかという知見の蓄積があった上でTCFDに到達しているんだろうと思うんですね。
 
 ところが、この生物多様性の話って、何か気候変動と同様にいろいろわけの分からないリスクがありそうだから、TNFDをつくりましょうというところからスタートしていて、トンネルを逆から掘っているような印象を持ちます。
 
 我々の事業会社の立場からすると、先ほど、ブラックボックスになっている目標と指標の部分がまだこれからというふうにおっしゃっているところですが、ここが実は一番分からないというか難しいところです。なぜかというと、因果関係が必ずしも確立していないような項目がいっぱいあって、本当にそのリスクが起きるのは何が原因で起きるのか、どういう規模のことが起きるとどういう影響が起きるのか、さらに定量的に示せるのかどうかというところもないとアクションに繋がらないし、さらに、それが原因部分をコントロールできるのか、制御可能なのかどうかということもよく分かっていないという中で、食品さんとか漁業・農業系のように、ある意味、因果関係がある程度分かっているセクターはいいと思うんですけれども、全然そういうことに関わらない企業も含めて、果たして、このTNFDという大きなアンブレラの枠組みの中にフィットするのかということが気になります。
 
 ほとんどこれ、全部、それぞれの領域で自由演技の世界にとどまっていますが、TCFDは規定演技の世界ですね。自由演技の世界でこういう枠組みをつくられて、機械系、エネルギー系、鉄鋼、素材セクターといったところが本当にフィットしてくるのかというのはとても私は想像しにくいなと思いまして、今後これをどういうふうに個別のセクターに落とし込んでいくのかというところなんかの見通しがあったら、コメントをいただければと思います。
 
【水口座長】  では、ちょっとここまででお三方にお返事をいただいて、次、足達さんに行きたいと思いますけれども、まず、林様からは御質問を2ついただいていますが、タイムラインの話と、あと、永山さんのほうのオケージョナル・ペーパーの話、いかがでしょうか。まず、永山さんから、そこの点のお話をいただいて、あと、まとめてお答えいただきましょう。
 
【永山国際室長】  御質問のNGFSのリサーチペーパーのほうですけれども、そちらにつきましては、NGFSの全てのメンバーが参加して、レビューして、オーソライズしたというものではございませんで、一部のメンバーが外部のリサーチ研究センターと協力して作成したものということで、プロセス的にも全体の合意を得ていないということで、このような形になっていると理解しております。
 
【水口座長】  それでは、原口様と秀島様に、タイムラインの話と、あと、手塚様から、TNFDはガイダンスなんですというお話もありましたけれども、その辺の見通しなどもお話ししていただければと思いますが、いかがでしょうか。
 
【原口様】  じゃ、タイムラインのほうから私から。タイムラインについては、もう事務的な話ですけれども、御説明したとおり、TNFDが来年9月以降、各国政府に何か規制をこうしなさいとか、こうしてくださいという立場ではなくて、9月以降のタイムラインというのは、まさに各国の規制当局のお考えに従って進んでいくと。どのようにTNFDを活用するかということについては、各国の考え方にのっとるというものでございます。
 
 2つ目の御質問は、まさにいろいろな事業セクターによって、この自然関連のリスク、機会というものの捉え方というのは濃淡があるのは、クライメイトに比べるとさらに濃淡があると考えてよろしいかなと思います。
 
 直接的に自然資源を利用するようなセクターというのは、自分事にもなっているわけでございますが、例えば機械系とか自動車といったところで、自然との接点は何ですかといったときに、自動車でいえばタイヤのゴムであるとか、あとは機械系、全てにおいてですけれども、今の半導体市況の逼迫とか、半導体生産、台湾のTSMCでは、水不足によって生産に対して影響が出るような状況、これはクライメイトとまさに直接関わるところですけれども、こういった産業の米である半導体の調達に関して、この自然関連リスクが顕在化しつつあるという認識に立つと、必ずしも機械系が全く自然との接点がないということではないのかなと思いますので、ここがまさに自由演技として、どこまで自分たちの本業と自然との接点について想像を膨らませられるかというところで、そこが慣れない課題ですので、なかなか皆さん、難しさを感じられているところかと思いますが、今後、いろいろなセクターでパイロットテストによって、いろいろなアプローチ、こういうふうにやってみましたという事例が出てくることで、いろいろなセクターでの動きが加速するのではないかと思います。
 
 秀島さん、いかがでしょうか。
 
【秀島様】  理解が進まない中で仕事を進めてしまっているんじゃないか、作業を進めてしまっているんじゃないかというのはおっしゃるとおりだと思うんですけれども、今回まさにモントリオールでの議論を聞いていますと、生物多様性の問題は気候変動以上に実は余裕がないんじゃないかという問題意識もあるみたいでありまして、理解ができてからやり始めるのでは間に合わないので、取りあえず走りながら考えるというような、そういう議論になっているように印象としては持ちます。
 
 以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 では、足達さん、お願いします。
 
【足達メンバー】  ありがとうございます。手短に、私はコメントとして申し上げたいと思います。
 
 先ほど因果関係の話が出ましたけれども、この議論は海外では既にかなり熟度がある状況で、ただ、それがなかなか日本に入ってきていなかったということだと思います。
 
 弊社では、ある信託銀行さんと、日本生態系協会さんと連携し、2008年に「生態系と生物多様性の経済学」(TEEB)というレポート(中間報告)を翻訳しております。海外では、どの業種にどういうリスクがあるということに関する、ある程度のリスティングはできていると思います。UNEP FIなんかも、かなりこれをやってきました。そういうところをぜひ日本国内にも、この機に紹介してもらうということが大事だろうと思います。
 
 それから2つ目は、2010年に、あるアセマネさんと私どもで生物多様性企業応援ファンドという投資信託を立ち上げました。既にファンドは償還になっていますけれども、このファンドに関して企業調査をやったときの私の印象は、ポジティブな、生物多様性を守るための技術とかそういうものは、日本企業の中にたくさん材料があると思いました。
 
 生物多様性なり自然の世界というのは、先ほどリジェネラティブというキーワードも出ましたけど、自然資本を再生して増やしていくんですね。気候変動の話でポジティブインパクトというのは、せいぜい地下にためるとか、吸収するとかいうぐらいなんです。そういう意味で、ポジティブインパクトの観点で物が語りやすいのは、私は、気候変動よりもこちらの領域なのではないかと思っています。例えば、先ほどサケの養殖の話がありました。ある日本の商社が出資をしているノルウェーのサケ養殖企業の生け簀では、サケの顔認証を導入しています。個体ごとに逃げていないかとか、病気になっていないかみたいなことを全部管理しています。
 
 またいつものようにタクソノミーの話になり恐縮ですが、生物多様性保全に役立つ日本の技術のタクソノミーみたいなものを早くつくって、それを世界に打ち出していくというのは大変有効なのではないかと思います。
 
 あと、この生物多様性や自然の領域は、気候の領域に比べて、問題化するのはまだ先ではないかという話がありました。ただ、世界のNPOとかNGOの数や会員数から見ると、気候変動を問題にしている数よりも、生物、動物、自然の保護を支持しているNPO、NGO、支持者の数のほうが圧倒的に多いという事実を忘れてはいけないと思います。12月9日に米国が中国の漁業者を、グローバル・マグニツキー人権問責法で制裁をかけました。背景には違法なフカヒレ漁、サメの捕獲の問題が指摘されており、米国内の自然保護団体からの支持もあったと聞いています。日本では日本野鳥の会さんのような大変大きな団体が有名ではありますが、世界では、必ずしも穏健な団体だけではないのだということも頭の片隅に入れておく必要があるのだろうと思います。ありがとうございました。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 環境保護運動の歴史から、発展から考えれば当然そうなりますよねということでしょうかね。それと、生物多様性にとってのポジティブな影響というのはいろいろあります。今の話とネイチャーポジティブという概念はどうなっているんだろうとか、いろいろちょっと思いましたけれども、それはそれとして。
 
 それでは、ちょっとまだ御意見もあろうかと思いますが、後半の議論もありますので、一旦、このTNFDとNGFSの議論はここまでにさせていただきまして、後段の議論に入ってまいりたいと思います。後段では、金融庁のここまでのお取組について御説明をいただき、意見交換をしたいと思います。
 
 それでは、まず、事前にお送りしておりますけれども、簡単に資料の御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  それでは、失礼いたします。「最近のサステナブルファイナンスにかかる取り組みについて」というパワーポイントがお手元にあると思いますけれども、これに従って、簡単に御説明をさせていただければと思います。水口先生からお話がありましたとおり、足元での進捗ということで、やや種々の案件がそれぞれ記載される形になっておりますけれども、御容赦いただければと思います。
 
 1点目は、1枚お開きいただきまして、絵が入っている資料ですけれども、ESG評価・データ提供機関に係る行動規範ということで、本会議でも何度か御説明させていただいたものでありますけれども、7月に、ESG評価・データ提供機関に対する公平性、透明性、企業とのコミュニケーションなどを確保するということを目的としてパブリックコメントに付させていただきました。9月上旬までパブリックコメントで意見を募集させていただきまして、200程度の御意見をいただいたところです。
 
 意見の概要については、次以降のページで簡単に御紹介をさせていただきますけれども、大きく骨子については、これでぜひやっていけばいいじゃないかということでいただいたかなと思っております。
 
 その上で、幾つか、技術的に修正すべき点や問題提起をいただきました。これらを反映させていただきまして、先だって11月ですけれども、有識者会議の下に設置をさせていただいておりますESG評価・データ提供機関に係る専門分科会で、北川先生に座長をやっていただいておりますけれども、議論をいただき最終化したところでありますので、パブリックコメントの御意見と対応を御紹介させていただければと思います。
 
 1枚おめくりいただきまして、右下で3ページのところです。209件の意見を9月5日までにいただいたところです。まず、「全般」とありますけれども、総論として、この行動規範が、柔軟性やイノベーションの機会を担保しつつ、投資家の信頼性確保に資するものであるということで、歓迎するということ。
 
 それから、海外当局との連携というのが、国際的なESG評価・データ提供の在り方を踏まえると重要であるので、各国との協調、それからIOSCOなどへの働きかけを金融庁としてぜひ積極的にやっていくべきだという御意見をいただきました。
 
 それから、今後のこの行動規範についての見直しですとか、浸透の仕方ですけれども、行動規範の有効性について定期的に見直すべきではないかということで、1回つくって終わりということではなくて、継続的に議論をしていくべきではないかという意見もかなり多くいただいたかなと思います。
 
 この点につきましては、真ん中の「はじめに」の回答のところにございますけれども、継続的に状況を把握しながら、3年後をめどに、この規範の改定であるとか、その他、他の対応の要否も含めて検討していくということを記載させていただいているところです。
 
 また、関連しまして、2ポツの真ん中のところですけれども、今後のタイムラインを示してほしい、具体的にどういうふうになるのかという御質問もいただいたところです。
 
 こちらも専門分科会で御議論をいただきまして、本日、こちらで御報告をさせていただいた後に、この行動規範は最終版を公表させていただきたいと思っているんですけれども、その公表後半年後、来年6月頃をめどに、各ESG評価・データ提供機関が、それぞれ、この行動規範に賛同をいただいているかどうかという状況を金融庁において取りまとめまして、その一覧をまとめた形で公表させていただきたいと思っております。
 
 特に、後でも出てきますけれども、ESG評価・データの双方を対象にしているということで、評価を提供するサービスだけではなくて、その評価の前提となるESGのデータを提供する機関も対象にするということで御提案をさせていただきました。特にデータについては、評価と比べてもサービスの提供の数が非常に多いということ、それから、その種別も多様であって、なかなか体制整備にも時間がかかるという御意見もいただいたところですので、ESG評価・データは双方を対象にするということは維持しつつ、データ提供に関わる部分については、さらに1年後、すなわち、2024年6月に、賛同をいただいているかどうかという状況を金融庁において取りまとめて公表するということで、データの部分だけ少し時間をかけて取り組んでいきますということにさせていただいたところです。
 
 それから、次のページ、各論ですけれども、右下4ページ目のところです。原則1から原則6までということで、品質の確保、人材の育成、独立性の確保、透明性の確保、それから守秘義務や企業とのコミュニケーションということでありましたけれども、多くいただいた御意見としまして、原則1のところですけれども、ESG評価というのは企業開示の質が前提となる、または依存するということで、企業開示の充実を、別途もちろん議論しているところではありますが、やはり進めていくことがESG評価・データ提供のクオリティーの確保にもつながっていくので、ぜひ進めていくべきだという御意見をいただきました。
 
 また、原則6、企業とのコミュニケーションというところで、これは特に評価機関の方からですけれども、原則6の中で、ESG評価を公表する前に、ESG評価機関が企業に対して、事実関係が間違っていないかどうかを確認する機会といいますか、チャンスを与えてほしいということを記載させていただいておりました。
 
 この点については、企業の方や投資家の方から、非常に重要な点であるという御意見がありました。一方で、評価機関の方から、こちらにもありますとおり、評価自体を企業が確認し、または修正できるという印象を与え過ぎていないかという御意見をいただきました。
 
 企業と投資家、それから、評価機関との間のコミュニケーションというのは非常に重要であって、これを促進していくことはしかるべきであるけれども、あくまで、企業からのコメントといいますのは事実関係について行われるものであることを確認すべきではないかという御意見も幾つかいただきましたので、この点を本文の中でも記載をさせていただくとともに、原則6の一番最後のところですけれども、ESG評価であるとかデータなどの最終的な商品は、あくまで、評価機関が自らの責任によって発行するものであるということを本文の中に記載をさせていただいております。
 
 それから、5ページ目ですけれども、参考としまして、この行動規範の中には投資家の方への提言、それから企業の方への提言というものも併せて記載をさせていただいているところです。
 
 全般としましては、投資家、企業の方それぞれに、ESG評価を利用する場面においてどのような利用をしているのかということを開示してほしいという内容、それから、企業、投資家双方において、ESG評価を利用する際に、又は評価を受ける際に、おかしいとか疑問がある点があれば、評価機関にぜひそれを伝えていただいて、双方の改善を図っていただきたいという内容を記載しているところですけれども、この点に関しては是非勘案されるべきというご意見だったと思います。
 
 以上が1点目でございまして、次、2ページめくっていただきまして、7ページです。また大きくテーマが変わりまして恐縮ですけれども、「カーボン・クレジットの取り扱いについて」です。
 
 後の資料にありますけれども、政府としてもGX実行会議において、いわゆるGX移行債ですとか、GXリーグを通じたカーボン・クレジットの取扱いについて今後検討していくということを明らかにしているわけですが、実態として、カーボン・クレジット取引をされる場合には、間に立って取引の仲介などをされる金融機関の役割も大きいということが指摘されているところだと思います。
 
 それぞれの金融機関の方からも、こういう種別のカーボン・クレジットを取り扱いたいということで、金融庁のほうに御意見であるとか御照会をいただくことが多々あるわけなんですけれども、取り扱う際には、金融機関が服している業務範囲規制との関係で問題がないかという御質問をいただくことがございます。特に、こちらにもありますが、2008年に関係法令を改正した際に、このカーボン・クレジットの取扱いについては、金融機関の業務範囲規制の規定上、「算定割当量その他これに類似するもの」である場合には、これを取り扱うことができるとされておりまして、この改正の際にパブリックコメントをいただきまして、その際の金融庁としての回答の中で、審査・承認手続の厳格性、帰属の明確性の観点などから個別具体的に金融機関が取り扱うことができるかを判断する必要があるということを回答させていただいたところであります。
 
 他方、2008年からかなり時間もたちまして、ボランタリークレジットというのが非常に増えてきていると、また、それから創意工夫、ボランタリークレジットを含む様々な種別が日本の国内でも国外でも出てきているということで、これらを広く取り扱うことができることを確認すべきではないかという御意見を前回の有識者会議でもいただいたと思います。
 
 この点を踏まえて、金融庁としてのQ&Aということで、下の青のところでくくらせていただいています。内容についてはやや法技術的なところもありますが、「その他これに類似するもの」に当たるかどうかというのが判定のポイントになりますけれども、審査・手続の厳格性や帰属の明確性の観点から、個別具体的に判断される必要がありますという点で、これまでとの法律的な安定性を確保する観点からも残しつつ、実際には、この「例えば」というところですが、以下のいずれかの機関がボランタリークレジット発行の基礎となるGHG排出量などの妥当性審査に基づく業務の検証を行っている場合には、「その他これに類似するもの」に該当し、取扱い可能と考えられますということで、ISO14065というカーボン・クレジットに関する国際的な基準ですけれども、これに基づき認定された機関など、認証を取得している機関については、取り扱って差し支えない旨を公表させていただくということを考えてございます。
 
 書き方は法技術的なところもありますけれども、基本的には、私どもの認識では、こういったQ&Aを出させていただくことで現在、金融機関、または投資家の方が関心を持っておられるボランタリークレジットについては、基本的には取り扱っていただくことが可能になるということを明確化させていただいたという趣旨でございます。
 
 最後の論点ですが、また2ページおめくりいただきまして、こちらは御報告でありますけれども、資産所得倍増プランが、11月28日に新しい資本主義実現会議で決定をされております。ESGの関係、サステナブルファイナンスの関係でもつながる部分がありますので、御紹介をさせていただきます。
 
 このプランの中では、基本的な考え方というところで抜粋をさせていただきますけれども、「新しい資本主義」というものを実現していくに当たって、勤労所得に加えて金融資産所得も増やしていくことが重要である。それから、中間層がリターンの大きい資産に投資しやすい環境を整備すれば、家計の金融資産の所得が拡大する。また、家計の資金が企業の成長資金の原資となることで、企業価値が拡大すれば、家計の金融資産所得はさらに拡大し、「成長と資産所得の好循環」が実現する。このためにも、幅広く資産形成に国民の方が参加できる仕組みを整備し、中間層の資産所得を大きく拡大することが重要ではないか。こうした問題意識の下で、目標としまして、5年間で、NISAの総口座数、それからNISAの買い付け額の倍増を図っていく。その後、さらに、これらの目標の達成を通じて、長期的な目標として資産運用収入そのものの倍増も見据えていくということを掲げて、具体的な方策として7本の柱ということで、次の10ページ目にありますけれども、施策が掲げられているところです。
 
 第一の柱としまして、NISAの抜本的拡充や恒久化。それから、iDeCo制度の改革。消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスを提供するためのアドバイザーの認定の仕組みの創設。企業による雇用者に対する資産形成の強化。また、中立的な組織としての金融経済教育推進機構、これは仮称でありますけれども、これを設置して、金融経済教育の充実を図っていく。また、世界に開かれた国際金融センターの実現。顧客本位の業務運営の確保ということです。
 
 11ページ、特にサステナブルファイナンスとの関係のところを抜粋させていただいております。特に(2)のところですけれども、ESG債市場などの活性化ということで、基本的な意義について述べた上で、ESG債発行額を順調に伸ばすために、グリーンボンドとかトランジションボンドの信頼性を高めていくことが重要であるとしまして、環境省の現行のガイドラインの拡充でありますとか、JPXさんと連携した企業データプラットフォームの構築であるとか、トランジション・ファイナンスの推進に向けた環境整備、これは政府側のことでありますけれども、分野別の技術ロードマップを充実していくと、また、金融庁としての開示規制のさらなる充実を検討であるとか、こうしたことについて述べられているところであります。
 
 最後の10ポツ、11ページの一番下のところでありますけれども、前々回の会議でも御議論をいただいたと思いますが、顧客本位の業務運営の確保の一環としまして、企業年金を含むアセットオーナーにつきまして、受益者などの便益を最大化する観点から、アセットの性格や規模を踏まえた適切な運用リターンの実現を図っていく必要がある、としまして、関係省庁が連携して幅広い関係者との継続的対話の体制を整備して、今後、そのベストプラクティスの共有・普及を図るなど、運用の改善に向けた対応を進めるとされているところです。
 
 これは、関係省庁が連携した対話の体制ということについては、具体策は、また今後、金融庁を中心に関係省庁と連携しながら検討していきたいと思っておりますけれども、御紹介をさせていただくところです。
 
 最後、その次のページ、タイトルだけで恐縮ですけれども、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの報告書案についてということで、本日、この会議が午前中に開催されておりまして、そこで、この6月にディスクロージャーワーキングの報告書が出たわけですが、幾つか進捗の報告を事務局からさせていただきましたので、御紹介させていただいております。
 
 あとは参考資料になりますけれども、例えば16ページに、GXファイナンス研究会ということで、こちらの会議ともやや重なりがあるところでありますけれども、金融庁と経産省と環境省の3省庁が合同で、GXに向けてファイナンスの課題というものを包括的に議論するということをさせていただいておりまして、17ページがその概要になりますが、グリーン・ファイナンスの拡大であるとか、トランジション・ファイナンスの拡大など、多角的にGXに資するファイナンスの在り方ということで幾つかの施策を記載させていただいているところです。
 
 それから18ページ、その中でもファイナンスド・エミッションについてということで特に取り上げておりまして、トランジション・ファイナンスを行う際に、排出削減のために必要な投融資を金融機関が行う場合に、ファイナンスド・エミッションという形で金融機関としてのスコープ3に入ってくるわけですけれども、これが一時的に増加してしまうのではないかという課題が指摘をされておりますので、関係省庁を中心にワーキング・グループを、民間の金融機関の方にも入っていただいて議論をするということを発表させていただいておりますので、この点も御紹介させていただければと思います。
 
 19ページ、前々回の会議で決議をいただきまして、2つの分科会をこの会議の下に設置をいただいて議論をしているところです。1つは、脱炭素に向けた金融機関の取組に関する検討会ということで、直近では11月30日に開催させていただきまして、移行計画の具体的な在り方についてどういう論点があるかということで議論をいただいているわけですけれども、GFANZとPCAFに来ていただいてプレゼンをしていただきました。
 
 それから、インパクト投資に関する検討会、もう一つのところですけれども、こちらも3回程度議論をいただいておりまして、SIIFさんから御説明をいただいたり、それからインパクトを創出されているような創業企業、それからベンチャーファンドなどの方も含めてプレゼンテーションをいただいて、今後も議論を進めていきたいと思います。
 
 私からは以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 私、ちょっと気がせいていたものですから、原口様と秀島様にお礼を申し上げるのを失念していました。大変失礼いたしました。今回、ゲストとして、わざわざお時間を割いてお越しいただいておりまして、議論に参加していただきましてありがとうございました。申し訳ありません。大変失礼いたしました。永山様は帰られちゃったんですけど、永山様にもお礼を申し上げたいと思います。
 
 この金融のサステナブル有識者会議の議論は、TNFDとも関わりが今後、出てこようかと思いますので、もしよろしければ引き続きお付き合いいただければと思います。
 
 西田様、ありがとうございました。今、御説明いただきまして、こちらの金融庁の取組のほうも大変いろいろな面で進んでいるということですが、お手元資料の13ページ、4の次のところに、「ご議論いただきたい点」ということで3つまとめてあります。
 
 内容がそれぞれ異なりますので、順番に議論をしていきたいと思いますけれども、まず最初に、まとめていただきました行動規範につきまして、今日の夕方には発表ということだそうですし、まず、北川先生をはじめ分科会の皆様に鋭意検討をいただきまして、ここまでまとまったことにお礼を申し上げたいと思います。十分議論を尽くしていただいたと思います。大変よいものができて、ここが始まる前に足達さんと少し話したんですけれども、こういう行動規範、コード・オブ・コンダクトが日本から発信されるというのは、日本が一番にこういうものを発信するというのは初めてのことではないかということで、徐々に日本もリーダーシップを取れる立場になってきたのかなという意味では大変よかったと思いますし、皆様の御尽力にも感謝をしたいと思うところであります。
 
 そういうことも踏まえて、今後の賛同状況等も踏まえながら、3年後を目途に改定等について検討をしていく、こういうことではあるのですけれども、この間、金融庁としてこういうことに気をつけてほしいとか、あるいは、この行動規範について、またこういうふうに思ったとか、どんなことでも結構です。行動規範につきまして、あるいはその運用につきまして、御意見あるいは御質問等があればいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 
 では、宮下さん、お願いします。
 
【宮下メンバー】  ありがとうございます。御発言の機会をいただきまして、恐れ入ります。
 
 我々金融機関、銀行は、実際、この被評価者としてこれに関わるだけではなく、データを活用したり、あるいはお客様のその評価がどういうことかなというのも業務の中で使っていくということで、いろいろ多面的に活用していくべきところは、今回、室長のほうから御説明もありましたが、評価の透明性だとか公平性などを高めるために金融庁さんが行動規範を定めていただいたこと、これ、前向きに、本当にありがたいと思っております。
 
 そういう意味では、今回定められたことで、世の中から一定の、この辺の期待値を目指していこうということがイメージできてきたのかなと思うんですけれども、日頃、我々、既に評価機関の方々と接触をしてやっていく中でいうと、重要なのはやっぱり、被評価、評価される側の企業と、この評価・データ提供機関様が対話をうまく重ねていくことが重要なのかなと本当に思います。
 
 特に、コミュニケーションの中で確認だとか訂正だとか、こういう文脈を超えて広く意見交換をしながらやっていくことで、お互いの業務の高度化にもまさにつながっている実感もありますので、この3年間の間に金融庁さんにおかれましては、そういう意味では広い意味でいろいろな対話が促進できるような場とか、何かそういう機会というのは、我々も知恵を絞って、銀行界としても知恵を絞っていきたいなと思いますが、そういう機会を設けていただくことは非常に有益なことではないかなと思いますので、以上、意見でございます。ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございます。対話を促進する場づくりが必要ということですかね。
 
 それでは、お手が挙がっておりますので、長谷川様、藤井様、井口様、手塚様という順番で行きたいと思いますが、長谷川様、お願いします。
 
【長谷川メンバー】  ただいまの意見とちょっと類似しているところはあるのですが、実は先月、投資家との対話の在り方というテーマで、イギリスに経団連金融・資本市場委員会でミッションを派遣いたしました。そのときにイギリスのFCAの代表と意見交換をした際に、ESG評価・データ提供機関の行動規範を日本の金融庁がつくっているが、それをどう考えるのかという質問を受けまして、この取組が既に国際的に注目されていると大変心強く思いました。
 
 その関係でということではないですが、スライドの3ページにも書いていただいているとおり、「関係当局と連携し積極的にIOSCO等の議論に参画」するということが重要であって、こうした行動規範も、各国の政策当局と議論をしていただいて、国際的に整合性のあるもの、さらには国際的な議論にインパクトを与えられるものにしていただければと思います。
 
 それから、やはり、この報告書に書いてございますとおり、ESG評価・データ提供機関が、投資家による企業に対する評価に与える影響というのは大変大きくなっていると思いますので、この「原則6(企業とのコミュニケーション)」というところがやはり非常に大切だと思っております。
 
 本文の33ページのところにも、「評価先が多数に及ぶことも多く、現実の問題として、ESG評価・データ提供機関における企業とのコミュニケーションの負荷が対応範囲を超えているといった指摘も存在する」と書いてございまして、それは現実、そうだとは思うのですが、やはり今回のイギリスでも、この問題につきましては、評価機関が企業の対話の要請に応じてくれないといった課題はよくあるというお話も聞きましたので、グローバルに共通の課題なのかなと思ったところでございます。 ですので、今後のESG評価・データ提供機関の人材リソースの拡充ですとか、専門人材の育成といったことも含めまして、改善して取り組んでいただきたいということと、やはりサステナブルファイナンスを推進するためにも、企業との対話を積極的に行っていただくよう、金融庁にもいろいろな環境整備ですとか側面的な支援をお願いしたいと思います。
 
 その関連で、ロンドン証券取引所からも、やはりイギリスでも評価機関、投資家と企業の対話のいろいろな問題というのはあって、それを改善すべく、証券取引所がデータベースをつくったり、コンサル的なことをやったりということをいろいろやっていらっしゃるとおっしゃっておりました。日本の東京証券取引所でも既にやっていらっしゃると思いますが、そういった対話促進の活動とか証券取引所間の連携活動も充実させていただければと思います。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、藤井様、お願いします。
 
【藤井メンバー】  何か当たり前のことを申し上げるようで申し訳ないのですけれども、まずそもそもこの行動規範については、非常に前向きな取組だと思っておりまして、この成果については、非常に高く評価したいと思います。
 
 一方で、仮に3年後の見直しと考えたときに、いわゆるPDCAだと思っておりまして、今回、プランが完了して、これが公表されますと、それをドゥーということだと思います。次はチェックということで、この行動規範が、どのように企業と評価機関の対話に影響を与えたかといったことをチェックすることが必要だと思います。
 
 先ほど宮下さんから、企業との対話のコミュニケーションの場をアレンジするといったコメントもいただきましたし、それはまた民間のほうでもやっていくのだとも思いますけれども、例えば評価機関さんのほうに、この行動規範によってどういったことが変わりましたかというアンケートを取るとか、逆に企業さんのほうに、どういったところが変わりましたかといったアンケートを取るとか、ここで期待された効果がどのように実現したか、あるいは実現しなかったかと。仮に3年後に見直しをするのであれば、その時点でこうしたレビューをやることが必要になるので、それを、この3年の間でも地道に積み上げるということをぜひお願いしたいなと思っております。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。おっしゃるとおりですね、評価しなければ。
 
 それでは、井口さん、お願いします。
 
【井口メンバー】  ありがとうございます。皆さんおっしゃっているように、内容も重要なポイントが入っていまして、日本発ということで、すばらしい試みであり、感謝を申し上げたいと思います。
 
 まず、パブリックコメントを受けての修正の中で、原則6の企業との対話のところで、事実誤認などに絞られたというのは重要なポイントで、ESG評価機関だけではなくて、議決権行使助言会社のところでも、どこまで企業との対話の影響を受けるかというので、海外投資家を含めてすごくセンシティブなところですので、ここにとどめ置いたというのは非常に重要なポイントと、私も前回の会議で言わせていただいておりますが、ここは非常に重要だと思います。
 
 先ほど申し上げましたように、この行動規範というのはすばらしいものだと思っているのですが、今、藤井様がおっしゃったように、これをどう定着させていくのかというところが一つ問題になってくるかなと思っています。プリンシプルベースでは、スチュワードシップ・コードやガバナンス・コードというのはそれぞれ牽制先がいて、我々のような運用会社では、アセットオーナーや、金融庁さんもいらっしゃるわけですし、コーポレートガバナンス・コードは、投資家が牽制するという形でうまく回っているのですが、これと同じように、どう定着させていくかというところが一つ大きな課題になってくると思っております。この意味では、将来的にはコンプライ・アンド・エクスプレインでもいいのではないか、定着具合を見てですが、と思っております。
 
 あと、3年後でいうと2025年ですので、すごいスピードで世の中は変わっていますので、すごく世の中は変わっていると思っています。来年、ISSBの基準が出てきて、サステナビリティ情報の保証の基準もIAASBから2024年ぐらいに出てくるという話ですので、今、任意でやっている世界というのが全てハードロー化の中でやっているような世の中に変化することを想定すると、これも定着次第だとは思うのですが、サステナビリティ情報の保証がハードロー化される中で、一定程度、ハードローに移していくという考えもあるのではないかと思っております。
 
 その中で、例えばこの議論の中でも拝読すると、ESG評価とデータを分けるのかどうかという議論があって、ここでは一緒にされるということだったのですが、ESG評価の中でも企業さんを格付するほかに、ESG債の保証があると思うのですが、こういう保証は、サステナビリティ情報の保証がハードロー化されていく中で、今までどおりプリンシプルベースでいいのかとかという議論もあると思います。また、利益相反管理で、ESGデータを提供しているところがESG評価をしていいのかとか、いろいろな問題が出てくると思います。これは財務諸表監査でも全く同じようなところがあって、公認会計士法でそこは厳しく律しているということだと思うのですが、そういった同じ問題が出てくるので、内容自体はすばらしいと思いますが、これをプリンシプルベースで続けるのか、ハードローに置き換えていくのかという問題が今後出てくるのではないかと思っております。
 
 以上です。
 
【水口座長】  今後の課題、まだまだあるということですね。ありがとうございました。
 それでは、手塚様、お願いします。
 
【手塚メンバー】  この会合で私、大分前の初期の頃の回でこのESG評価機関のイシューについて指摘させていただいて、利益相反の問題とか、評価基準が曖昧であるという話が全部、想像以上に織り込まれているので、敬意を表したいと思いますし、感謝を申し上げます。
 
 あえてこれに何か観点を付け加えるとすると、実は、いろいろなところに書いてあるので、それを集約するだけなのかもしれないんですけれども、この評価機関の評価体制の品質をどう管理するかということは、透明性の確保あるいは品質の確保という意味でも重要かなと言いますのは、我々、今、いろいろな先生方がお話しされているように、フィードバック、あるいはコミュニケーションの中で、やはり事実誤認をしているケースが実際に起きています。逆に言うと、どうも誤認されたまま最終的な評価の数字が出ているというようなことがあるというケースを経験していますので、そうすると、組織全体で最終的な評価結果を出すに当たって、どのようなエラーチェックをかけているのか、どのような体制でその品質を維持しているのかということも含めてしっかりやっていただくと、やっぱりこれは魂が入ってくるんじゃないのかなと、そういう印象を持ちました。どうもありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。何かだんだん監査法人の品質管理の話に近くなってきましたね。会計士にとっては大変だなと。
 
 小野塚様、お願いします。
 
【小野塚メンバー】  ありがとうございます。質問なんですけれども、この行動規範はどの程度、投資家の賛同を見込んでいるのでしょうか。これは投資家も賛同するというようなものなのでしょうか 。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  3部構成になっていまして、評価機関の方への提言というか行動規範の部分と、企業の方への提言の部分と、投資家の方への提言の部分ということで、賛同を取りまとめて発表するのは、その評価機関に対しての部分ということであります。
 
 評価機関の方とはかなりいろいろなところと個別に議論させていただいているわけですけれども、ある程度賛同に向けて議論をいただいているのかなという感触はいただいております。投資家の方からは、個別に賛同しなくちゃいけないということではないと。
 
【小野塚メンバー】  ないということですね。分かりました。
 
 そうであれば、3部構成というのは理解していまして、特にこの投資家のところがいいなというところだったんですけれども、であれば、やはり来年以降のスチュワードシップ・コードの側で、今、原則7とか8のところで、7はESGに関するサステナビリティ情報の取扱い、8に関しては議決権行使等のサービス会社ということで、周りの周辺のトピックが入っているんですが、これに関してどう対応しているかをきちっと説明すべきであるというのを向こう側に入れると、ちょうどパズルが組み合わされるような感じになるかなと思いましたので。
 
【水口座長】  そうですね。投資家側が、評価機関がこれを採用していることをどう評価するのかということは大事ですよね。
 
【小野塚メンバー】  評価するかということをちゃんと、逆側から担保するという。
 
【水口座長】  はい、おっしゃるとおりですね。ありがとうございました。
 
 ほかにいかがでしょうか。
 
 すみません、私、言い忘れましたけれども、画面というか、ウェブの方は手を挙げるボタンを使ってくださいね。大丈夫でしょうか。よろしいでしょうか。
 
 それでは、一旦この議論をここまでにさせていただきまして、次に、全くテーマは変わりますが、クレジットの話ですね、カーボン・クレジットの取扱いについて、なかなか技術的なことではありますけれども、もし御意見等ございましたら伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
 
 宮下さん、お願いします。
 
【宮下メンバー】  すみません、これも御発言させていただきます。
 
 これも最初、お礼から入るんですけれども、今回、QAで、金融機関が取り扱える範囲について本当に明確にしていただいたと思います。やるに当たって、個別に御判断というのはもちろん承知しておりますが、間口を広げていただいた上で示していただいたと、そう思います。
 
 私どもは特に、これからいろいろな事業者様、考えておられると思うんですけれども、やっぱり、本邦の中だけではなくて、関連の強いアジアとのビジネスの中で、ダイナミックにカーボン・クレジットをどこかで確保して、本邦に例えば持ってくる、そういうことも本当に考えていかないと、国全体で最後、脱炭素のいろいろな目標をクリアしていくには必要なアクションになるのではないかということで、そういう意味では海外でのボランタリークレジットも、間口としては、これも入ってくると認識をしています。
 
 銀行界としては、それはもちろん事業者としてしっかりお客様をサポートしながらやっていくのですが、今後、そういうことが出てきた場合には、ぜひ御庁にしっかり我々も御相談しながらやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
 以上、お礼とコメントでございました。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、小沼様、藤井様、足達様の順番で行きたいと思います。小沼様、どうぞお願いいたします。
 
【小沼メンバー】  ありがとうございます。オンラインで恐縮です。
 
 市場の価格発見機能というものを確保、維持していくためには、やはりいろいろな業態の方が御参加いただけるというのは大変重要なことと思います。今回、こういった意味でQAでより明確に金融機関様とのお取扱いとして指針が示されて、J-クレジットと、それからJCMについて示されてきたということは大変意義があるし、まさに今、時宜を得たものだと思います。
 
 今後いろいろと動きがあると予定されているGXリーグの削減枠につきましても、こういった議論、枠組みの中で確立したステータスがつけられていくようなことになるとありがたいなと思っております。よろしくお願いします。
 
 それから今、御指摘もありました海外ボランタリークレジットでございますけれども、まさに今、グローバルには、欧米、そしてアジアの幾つかの主要国でこういったクレジットがどんどん動き出しているところでございます。日本は、実業界の皆様も含めて、いろいろなニーズが大きいということだと思いますので、ここは指針に示されている、審査・承認手続の厳格性と需要とを上手にバランスを取りながら、できるだけ機動的に海外ボランタリーも取り扱っていただけるようになるといいなと思っております。
 
 以上でございます。よろしくお願いします。
 
【水口座長】  ありがとうございます。GXリーグの補足があるかもしれませんが、最後にまとめてお答えいただくことにしまして、藤井様、お願いします。
 
【藤井メンバー】  なかなか難しいお願いとは理解しながら、若干のオブザベーションということでコメントさせていただきます。
 
 まず、今回の業法上の取扱いの明確化につきましては、足元で整理しないといけないポイントということなので、早急に御対応もいただきましてありがとうございます。その方向でよろしいと思います。
 
 一方で、ボランタリークレジットですけれども、今、小沼さんからも御指摘のありましたGX-ETSの議論がかなり明確になってきていると思いますが、制度の対象が化石燃料輸入事業者に限定されているとか、クレジットは、自ら立てた目標と実績の差になっていると。さらには算出方法が、GHGプロトコルとは異なる、日本独自のものとなっています。算出方法についていうと、全部対応すると、企業は、温対法と省エネ法とGHGプロトコルと、あと、GXリーグ用の算出を行う必要が生じます。これらの算出方法は、バウンダリ等がそれぞれ微妙に異なるので、3つ、4つ別々に算出しないといけないことになります。
 
 あと、24ページにも資料がございますけれども、J-クレジット、JCM、京都メカニズム、Jブルー、あと、それにGXが加わって国内で少なくとも5つの制度が並び立つことになります。カーボン・クレジットの取扱いを今後拡大していかないといけない、これは先ほどの宮下さんのコメントのとおりだと思いますけれども、そのためには、標準化とか共通化と、それも極力グローバルなやり方に整合的なものにしていかないと、企業のほうは、その算出方法、各法律制度ベースのものでの算出でもかなり四苦八苦している状況にあるということだと理解しています。
 
 創意工夫というのは、様々な人たちとかが入ってきて、そこから出てくるものなので、極力、様々な人が入るためには、制度面において標準化、共通化が要ると思います。
 
 11月のCOP27でカーボン・クレジットの問題にかなり焦点が当たったということで、IOSCO、証券監督者国際機構が、コンプライアンスマーケットの市中協議文書とボランタリーマーケットのディスカッションペーパーを公表しました。今、グローバルな業界は、これに対するコメントをつくるのに躍起になって、クリスマスを返上して意見のやり取りをしています。このようにかなり議論が盛り上がっているところですので、いろいろな法律に基づいているといったような事情があることは重々理解をいたしますけれども、極力、グローバルな動きと整合的かつ標準的な制度にしていくことで、結果的に参加できる人と、参加できる人の持ち寄る工夫が増えてくると思います。
 
 逆にそうしないと、例えばいくつものボランタリークレジットの中で、お客様にどれが一番いいですかといった提案を考える際に、なかなか地域金融機関では体制もなくて、大手のメガバンクと大手のコンサルの方々の、かつその中でも、スーパー職人のような専門家の方が手作りでプロポーザルをつくるような形になってしまうのではないかと懸念します。それでは広がりが欠けることになってしまいますので、時間はかかると思いますけれども、極力、そういったことを期待したいと考えております。
 
 以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 では、足達さん、お願いします。
 
【足達メンバー】  ありがとうございます。コメントと提案です。中国で今、個人のカーボンアカウントというのが隆盛しています。どれだけ環境にいいことをしたかをポイントに換算して貯めていくという仕組みです。足元では、中国だからできるという側面はあるものの、やはり最終的には、日本でもそういう世界に入っていくのだろうと思います。
 
 そのときに、今、日本でもスタートアップさんが事業化されようとしていますけれども、勝手気ままに手法が出来て乱立しては、グリーンウオッシュの極みになることを懸念します。ここは国民の金融資産を預かっている金融機関が、きちんと、あるルールや仕組みの中で個人のカーボンアカウントというのを管理していくことが理想ではないかと個人的には思っています。すぐに現実になる話ではないとも思いますが、ぜひ金融庁さんにおかれても、研究を進めていただければという提案です。ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 今日御欠席ですが、吉高委員から御意見をいただいていますので、代読をさせていただきます。
 
 カーボン・クレジットについて地方の金融機関の方とお話をさせていただいていると、どれがオフセットしてよいクレジットなのかをはじめ、クレジットごとの属性、性質、特徴などについて、必ずしも理解が得られていないように感じています。今後、法的解釈の明確化により、金融機関が様々なカーボン・クレジットを取り扱う機会が増加していく中で、カーボン・クレジットに関する知識を金融機関にも普及し、理解を促進していくことが重要と考えます、とのことでした。
 
 ここまでいろいろ御意見をいただいてきました。今回のこの明確化はよしとしても、この先のこと、いろいろありますねという御意見だったかなと思いますけれども、まとめてもし西田さん、コメントがあればいただきたいと思います。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  藤井さんからいただいた御指摘は非常に重たいことで、なかなか至らない点があるかもしれませんけれども、ぜひ研究していきたいと思いますし、よく関係省庁間でも議論をしているわけですが、やはり温対法の定義とGHGプロトコルと、あと、GXリーグは今後ですけれども、これらをどう連関し得るのか、一方で、温対法につきましては、かなり企業さんにも中堅企業も含めて定着しているところもありますので、これまでのプラクティスを活かしながらも、大きく国際的なものとずれないようにということ。それから、違いがどうしてもある場合に、それを分かりやすく理解していただくことについては、よく連携して浸透させていかなければいけないというところでと思いますので、今日の御指摘を踏まえて、議論していきたいと思っております。
 
 今日の足達さんの御意見も同様に、個人の方々にとってのカーボンの見える化についてのご指摘でもあると思いますので、研究していきたいと思います。
 
 あと、GXリーグについてのクレジットについて取り扱えるのかという御質問を別途いただいたこともあったんですけれども、これはまだ検討中ということで、具体的な在り方は今後検討だと理解しておりますが、今回の解釈明確化は基本的には幅広いものが取り扱えるような形で法的整理をしたということでありますので、実際には今後の制度設計ではありますが趣旨としては幅広いものが提供できるように明確化するものであるという点を補足させて頂ければと存じます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 それでは、先を急ぐようですが、最後の議論ということで、「ご議論いただきたい点」の3点目ですけれども、資産所得倍増の観点も踏まえ、ESG債市場の発展やESG商品の裾野拡大について考えていくべきことはあるかということで、資産所得倍増プランの御説明もありましたし、参考資料の中で、有識者会議の下に設置した2つの検討会の進捗などについても御報告をいただいております。これらについても御意見をいただきたいと思います。
 
 最初に私から一言。私、いつも司会だけしていて自分の意見を言う機会があまりないので、一言だけ、こういうお願いがというのがありまして、資産所得倍増プランの中の第七の柱のところで、顧客本位の業務運営の確保、これは大変重要なことで、アセットオーナーも含めて受託者責任ということを明確化していくことは重要だなと思っております。
 
 ただ、過去の歴史を振り返ると、えてして、受託者責任というものをすごく狭く解釈することによって、短期主義的な利益だけを重視しなければならないのだという誤解を生みがちですので、そうではなくて、中・長期的な観点から、経済全体の裾野を拡大していくとか底上げをしていくことによって国民全体の資産を上げていくんだと、そういうことをきちんと、このアセットオーナーの人にも理解をしていただくようなことが必要なのかなと思っておりまして、その点をぜひ言いたいなと思って今日参りました。
 
 それでは、最後の箇所については、皆様から御意見をいただきたいのですけれども、まず、小沼様からお手が挙がっておりますので、小沼様、よろしくお願いします。
 
【小沼メンバー】  ありがとうございます。まずは、資産所得倍増に向けた大きな動き、金融庁様の大変な御尽力に改めて感謝をしたいと思いますし、NISA等、今後動いていくと思いますけれども、投資家の皆様にはやはりサステナビリティの選好があると思いますので、こういった流れの中でうまく取り扱っていただくようになるといいなと思っております。
 
 申し上げたかった一つのポイントは、今まさに出たアセットオーナーの部分でございますけれども、やっぱり、この問題を考える上では、母体企業がいかに前向きに取り組んでいただくかというのが重要な問題で、だからゆえにガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードを両方でうたって進めているということだと思います。
 
 母体企業様が、従業員との関係で従業員の資産形成をしっかりやるという流れの中で、サステナビリティへの理解と、それの共感あるいは支持というのをやっぱり印象づけて理解を進めていく。母体企業様自身も、サステナビリティに向かっては、いろいろな事業の本業での取組がされていると思いますので、そういった考え方を、従業員の皆様の志向、お考えの中でも推進して、企業年金の皆様と、それから従業員の方のエンゲージメントなども進めていけるような、そういう体制づくりをぜひバックアップしていただければと。そういった方向を取引所のほうもしっかり進めていきたいなと思っております。
 
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、林様、お願いします。
 
【林メンバー】  最後の13ページ、資産所得倍増の観点も踏まえ、ESG債市場の発展やESG商品の裾野拡大についてということで、この柱の中にもESGという言葉が入っていて、幾つかのポイントがあると思っていて、今、どうしてもESG債ということで債券が中心になっているんですが、恐らくエクイティですとか、ほかの商品も出てくると思いますので、それについても目配りを今後進めていく必要があるだろうということと、それに伴って、これもずっと議論されてきた話ですが、一方で、グリーンウオッシュをどうやって防ぐかということだと考えています。
 
 あと、今日ここで申し上げるべきかどうかもちょっと悩んだんですけれども、GX移行債というのも、特に個人に対してどういうふうに訴えかけていくのかというのも多分、大きなテーマになってくると思うので、ここで触れさせていただきたいと思います。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 では、手塚様、岸上様の順番で行きたいと思いますが、手塚様、お願いします。
 
【手塚メンバー】  ESG商品の裾野拡大というところなんですけれども、以前もこの会議で私も申し上げましたが、今年6月に私ども、300億円のトランジションボンドを成功裏に出させていただきました。なので、供給側も需要側もこのテーマに関しては非常に大きな期待があるということも承知しておりますし、それを実際に経験しているんですけれども、実態として、やはりこのトランジションボンドのケースでも、3年から5年債ぐらいのところに期待というか需要が集中してくるんですね。
 
 私どものカーボンニュートラルに向けての投資あるいは事業は、2030年、さらに2050年に向けての活動をやっていますので、非常に長期の取組をやっている中で、もう少し長期の債券がある程度有利に出せるような状況になってきていただくように、政策的なサポートみたいなものがいただけないのかなと思います。やっぱり短期的に借り換えていくというアプローチが、実際に技術開発に5年かかって、実装するのにさらに5年かかって、回収するのにさらに5年先というものとフィットするのかと、こういう問題意識はございます。
 
 なので、実際に製造産業、特にHard-to-Abate産業の中にはそういう需要がすごくあるということを御認識いただけるといいかなと思います。と同時に、そうしますと当然、今度はエクイティも次には出てくるんでしょうということになります。2050年カーボンニュートラルというのを実行に移そうとしますと、私どものような鉄鋼会社にしてみると、生産設備の大宗を入れ替えるというくらい巨大な投資を行っていかなければいけない状況にあります。しかもさらに、そこにイノベーションが加わってきますので、リスクファクターが非常に高くなる。そうすると、やっぱりエクイティという概念は出てくるんだろうなと思う次第です。
 
 ただし、それをこれからやっていくに当たって、グローバルオファーリングで、国内、海外を含めて資本を集めてくるということを考えたときに、国内のこのエクイティファイナンスのお客さんというか投資家というのは、8割方、富裕層の個人というところが中心になってきて、なかなか機関投資家さんが動いてくれていないというのが実態ではないかと感じています。
 
 この辺を投資信託であるとか、年金であるとか、いろいろ裾野を広げて、エクイティのほうにも大規模な国内の資金が集まってくるような、つまり増資がしやすいような環境をつくっていっていただけないのかなということです。これは経産省さんのGXファイナンスの検討会でも、そこに公的資金をどう組み合わせるかという議論はされているということは、私も委員なので承知していますけれども、そういう問題意識があります。
 
 さらに、グローバルオファーリングをする際には、やっぱり引き受けていただく証券会社さんの審査の内容とかが国内外で違っていたり、あるいは開示資料の英文、和文で要件が違っていたりと、手間がすごくかかるという実態もあります。
 
 なので、これをある程度大規模に事業会社がやっていこうとしますと、多少、今よりもストリームラインにしていただくということも、今から準備していただければ、ちょうど我々が2030年、40年に巨大な資金調達をしようとしたときに、そういう準備ができているといいなと考えている次第でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 では、岸上様、井口様の順番で行きたいと思います。岸上様、お願いします。
 
【岸上メンバー】  ありがとうございます。第三の柱のところについてのコメントですけれども、専門家としてというよりも、消費者の視点として追加の意見ですが、先ほど水口先生のほうからアセットオーナーの視点での御指摘にも関係しますが、中立的で信頼できるアドバイザーの認定を作成するということに個人的にも賛同いたします。
 
 一方で、中立的なアドバイザーが長期視点でアドバイスができるか、ESGに特化した商品でないとしても長期的な視点でそのファンドをどのように見比べることができるか、そういった目線をアドバイザー自体が持てるかどうかというところで、ぜひ研修の中に検討をいただければと思います。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 では、井口様、小野塚さん。
 
【井口メンバー】  時間の関係があるので、簡潔に言います。手塚さんから投資家ということをおっしゃられたので、一応レスポンスをしないとまずいなと思いまして。
 
 おっしゃるように、直接、投資される個人投資家もいらっしゃいますが、我々のような機関投資家にお金を預けていただける個人投資家もいらっしゃるので、そういうことを考えると、まさに今、金融庁さんでもやられているような投資家の開示ですね、ESG開示が重要になってくるとまず思います。
 
 ただ、投資家の開示というのは、運用プロセスの開示と、もう一つ、その結果としてどういう企業さんに投資しているかということを、1つの企業さんだけじゃなくて、ポートフォリオでどういう状況になっているかをお示しする必要があるということがありますので、結局、企業さんの開示を今後も充実させていただくことが必要です。手塚さんの会社はしっかりやっていただいているので、そういうことをもっと広げていただいて、いろいろな会社でしっかり開示をやっていただくことが非常に大事になってくるということと思っています。
 
 あと、投資はする場合に、将来の姿をしっかり、今後、ISSBのS2基準とかがありますけど、そういうのを通じて出していただくのは非常に大事になってくると思います。そうすると、我々投資家も、お客様にアカウンタビリティーが出てきますので、より投資しやすくなってくると思います。
 
 以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 では、小野塚様、お願いします。
 
【小野塚メンバー】  ありがとうございます。簡単にですけれども、今、この政策の7本の柱とかを見ていると、やはり一般の方も、ESG、サステナブルファイナンスに関して知識を上げていくと、本当に日本株に投資してくれるのかなというのが逆に不安になるところです。ですので、すごく本質的かつ厳しいことだとは思うんですけれども、我々、やっぱり、スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードで始めた、日本の企業を強くして、日本を魅力的な市場にする、そして、そこで働いている人が稼げる、すなわち資産が増えていくという、こっちのほうの議論も併せてしていかないと本質的な意味での資産所得倍増は難しいのかなと思います。今後も、水口先生のおっしゃっていたアセットオーナーを起点としたスチュワードシップ、あるいは機関投資家のスキルアップですとか、効果の測定、この辺りも同時に進めていくことが必要だと思います。人的資本の話も、後段の参考には出てきていますが、金融機関における人材のスキルアップ、特に今後、サステナブルファイナンスであれば、やはり企業に対してもうちょっと違う視点で、イノベーションを理解できるような、科学的な技術とかそういったことに関してもう少し深い理解ができるようなスキルアップをする、こんなところも入れ込んでいく必要があるんじゃないかと思います。
 
 少し厳しい意見でありますけれども、本質的なところということで、よろしくお願いいたします。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 
 ちょうど時間ということにはなってまいりました。最後、大変多彩な御議論をいただきました。私、手塚さんがおっしゃった、2030年、2040年に、いざ調達が必要になったときのために今から準備をしておくべきだという、それは小野塚さんが最後おっしゃったことと多分重なっていて、日本の企業が強くなっていくために、金融市場がどれだけ準備が整うのかと、そういうことなのかなと思いました。そう考えると、有識者会議というのはなかなか意味のあるもので、こういうことを事前に準備をしておくという思想が必要なんだなということをつくづくと感じました。
 
 大体予定したことは以上ですけれども、中島様、最後に何かコメントがあれば。
 
【中島金融庁長官】  コロナが落ち着いて、私のところにも最近、海外の人や金融関係の人もたくさん来て、サステナブルファイナンスへの話題が多い中で、今日あった評価機関についても聞かれることが多く、IOSCOが報告書をつくって、みんな、どういうふうにこれをさばくんだろうというところで、日本が先陣を切って、プリンシプルベースでやったというのが、これがうまくいくのかどうか。
 
 我々もこれ、ほかのもそうなんですけれども、プリンシプルベースとルールベースを常に組み合わせながら、どれがいいのかと考えながら、いろいろなことをやっていますので、これも我々なりのノウハウを使って、次は賛同する機関をどれだけ増やせるかというのが目的というか大事なことだと思っているので、ぜひ皆さんにもPRしてもらって、関係機関で賛同しないとか言っているところには、「いや、あれを賛同しないと日本ではビジネスができないよ」ぐらいになりますので、ぜひ。まず、そうやって、我々としては相手先と関係をつくって議論をして、向こうのレベルを上げていくというのが次の段階かなと思っています。
 
 そのほかも、今日もですがこの会議に出るたびに、何かどんどんやるべきことが増えると感じました。一番心配なのは、金融庁の人材の専門性が間に合っているのかどうかというのは、今日も聞きながら思っていまして、次の報告書がまた楽しみだなと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 それでは、司会を、最後は西田様にお返ししたいと思います。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  ありがとうございました。
 
 次回の有識者会議の日程は決まっておりませんので、決まり次第、事務局より御連絡をさせていただければと思います。
 
 本日、御報告させていただいたESG評価・データ提供機関に係る行動規範については、夕方の時間に公表させていただきたいと思います。
 
 引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【水口座長】  それでは、本日はここまでにしたいと思います。
 
 原口様、秀島様には大変ありがとうございました。それから、オンラインで御参加いただいた皆様もありがとうございました。会場の皆様、お疲れさまでした。
 
 それでは、今日はこれで閉会したいと思います。ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 
お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室(内線 3515、2918、2770)

サイトマップ

ページの先頭に戻る