「サステナブルファイナンス有識者会議」(第16回)議事録

1. 日時: 令和5年6月6日(火曜日)10時00分~12時00分
 
【水口座長】  それでは、ただいまより、サステナブルファイナンス有識者会議(第16回)の会合を開催いたします。御多用のところ、御参集いただきまして、ありがとうございます。
 
 初めに、毎回同様の注意事項ですが、今回、大分多くの方に対面で御参加をいただいております。ありがとうございます。何人かの方にはオンラインということで、オンラインで御参加いただいている方は、御発言されない間はミュート設定にしていただきまして、発言される際にミュートを解除し、発言が終わりましたら再びミュートに戻していただければと思います。今回からユーチューブの配信が一般の方々にも公開されることとなりました。これまでも議事録を公開しておりますので実質的には変わりませんが、今、ユーチューブで配信中ということなので、よろしくお願いいたします。誰か見ているんですね。
 
 また、一部メンバーの変更がありましたので、御紹介をいたします。
 
 全国銀行協会の河本様。
 
【河本メンバー】  河本です。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【水口座長】  日本取引所グループの二木様。
 
【二木メンバー】  日本取引所グループの二木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【水口座長】  よろしくお願いいたします。今日、中島長官にもお越しいただいておりますが、最初の御挨拶はいいよということでしたので、最後にまとめのお言葉をいただくことにいたしまして、早速議事に入りたいと思いますが、その前に一言だけ。昨日の夜、NHKの番組で「映像の世紀」というのを皆さん御覧になったでしょうかね。メルケルさんの話が出ておりまして、いろんな御意見はあるのかと思いますけれども、彼女が民主主義というのは歩いてこない、自分でつくるんだ、こういうことを言われていて、偉いなと思って感動して見ておりました。民主主義は放っておくとどんどん形骸化していくので、常につくり直していくことが必要なんだ。民主主義の要諦は熟議ということでして、多数決が民主主義ではないんだということをいろんなところで聞いているんですけども、意見を交わして、その意見の中から新しいものを生んでいくことが必要なんだろう。今はベルリンの壁が崩壊したときとは時代は違いますが、それに匹敵する大きな社会の変革期であり、危機の状況でもあるんだろうと思うわけです。ぜひ皆さんに、今日この会議も有識者会議ですから、ぜひ忌憚のない御意見をいただければと思っております。
 
 司会はまた相変わらず拙い司会なので、皆さん活発に御議論いただければと思うのですけども、今日は資料が3つございます。事前にお配りしていると思いますけれども、この1年間の振り返りの資料が資料1、資料2として小野塚様からの御報告、資料3として当有識者会議の報告書の原案になっております。今日はこのような形で進めたいと思うのですが、最後の30分ぐらいは時間を取りまして、小野塚様から人材育成に関する問題提起をしていただきたいと思っております。資料2を使います。御覧いただきましたように、報告書の最後の部分が人材育成と非常に密接に関わったことが書かれておりますので、今日の議論の最後の30分は、報告書の後半の部分の人材育成と併せて、小野塚様から御提起をいただいて議論をしたいと思います。その前の時間を使いまして、これまでの議論の振り返りと、この議論の振り返りと報告書の原案がちょうど構成を合わせて作っていただいておりますので、報告書の原案も併せて御説明をいただきまして、できれば1時間ぐらい時間を取りまして、一旦報告書の内容について御議論いただきたいと思います。報告書については、今日決まるということではなくて、皆様からいただいた御意見を基に、さらに中身を作り込んで、次回、改めて御提案をする、こういう形にしたいと思います。
 
 それでは、早速ですが、西田さんに資料1と資料3を使いまして、これまでの振り返り、そして、それを踏まえて報告書、どんな感じになっているのか、概要を御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  ありがとうございます。
 
 本有識者会議では、去年の6月に第二次報告書というのをまとめていただきまして、今御覧いただいていますのは、3番目の報告書のドラフトでございます。今回は、水口先生からもお話がありましたが、全体感として、どういうアジェンダが進んでいるかとか足りてないとか、新たにこういうことをやったほうがいいとか、そういうことを御指摘いただければと思っております。会議としては、昨年6月に取りまとめいただいてから、大体四半期に1回ぐらいの感じで開催していこうということで、9月と12月に開催をさせていただいて、3月は空いてしまったんですけれども、今年は3回目になります。
 
 この1年間の間に進められた施策、社会情勢の変化等々をドラフトとして記しております。基本的な考え方、サステナブルファイナンスを推進する趣旨、持続可能な社会を実現することは金融面でも産業面でも大きな基盤整備になっていくといった意義は継続しながらそれぞれ施策が進捗している点、また、まだまだ課題はあって、より深掘ってやっていく必要があるのではないかと、そういう認識で記載をさせていただいておりますが、是非これに限らずご議論いただければと思います。(以下報告書案を説明)
 
 私からは以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。サステナブルファイナンスの分野も広がっているので、報告書も長くなり、御説明もたくさんしていただくということで、ありがとうございました。この間、監督指針の改定ですとか、あるいはデータ評価機関の行動指針ですとか、金融機関へのガイダンスですとか、大変多くのことをしていただきましたし、いろいろインパクトも与えていると思います。投資信託協会もこれに対応して検討するとか、いろんなことが動いている。
 
 一方で、例えばPRIへの署名機関が増えていると書いてありましたが、実際にはPRIの署名機関数は中国に抜かれてしまったということもありまして、本当にうまくいっているものばかりではないことも事実だろうと思います。GFANZからの脱退も増えていることもありますし、やはりもう一度きちんとサステナブルファイナンスを捉え直していく重要な時期ではないかなとも思っております。
 
 それでは、これまでの取組と報告書案、特にこの報告書案は、今あまり明確に御説明ありませんでしたが、どんなことがあったのかということの説明の後に、今後の課題や方向性ということで、私たちとして考える方向性も示していこうという、こういう立てつけになっておりますので、ぜひ皆様から忌憚のない御意見をいただければと思います。ここからは自由討論ですので、御意見のある方は札を立てていただきますか、あるいは画面の方は、手を挙げる機能で手を挙げていただくか、声を出していただくか、自由に発言してくださいということです。それでは、どなたからでも結構ですが、いかがでしょうか。
 
 足達さん、お願いします。
 
【足達メンバー】  ありがとうございます。まず、事務局の皆さんに、1年間の成果、経緯をこういうふうにまとめていただいたことを御礼申し上げたいと思います。その上で3つ、コメントをさせていただきたいと思います。
 
 1つは、本文のワードの10ページ目、3行目のところで、欧州のSFDRのようなことを述べられて、そして、日本でもこういうことをやりましたと書いている。今後の課題や方向性のところで、「第一次報告書ではEUタクソノミーのようなことは投資判断基準が固定化されるリスク等を指摘している」と書いて、その後のパラグラフに、「投資ファンドの組成者自身が自ら内容に踏み込んだ具体的な開示を行う欧米や本邦での規制・監督の流れは合理的だと考えられる」と、書いているんですね。この記述の流れというのが、私はどうも一貫していないように見えました。
 
 つまり、SFDRのようなものは、ある程度、政策が介入をして、商品類型というものに言及している。投資組成者が自由に判断して開示を行っているとは読めないので、あえて言えば、11ページのところで「具体的開示を行う米国や本邦での規制・監督の流れは合理的」と書くべきなのではないかと感じました。ここのところ、事務局の本旨があればお聞かせいただきたいのが1つ目です。
 
 2つ目は、16ページ目のところにトランジションの話が出てまいります。広島サミットで一定の国際的なコンセンサスがトランジション・ファイナンスに関して出来上がったという言及があるんですが、今、海外、特に欧米の議論を聞いておりますと、ジャストトランジション、「公正な移行」という言葉がこのトランジション・ファイナンスとセットで出てくるようになりました。産業構造の転換ということも意味した上でなんですけども、この報告書には一言も「公正な移行」という言葉が残念ながら出てまいりません。まだ日本ではこの言葉自体が普及してないということもありますし、どういう理解をして、この公正な移行というのを捉えるかということが金融機関の間でもぼんやりしておりますので、ぜひ解釈を助けるという意味でも、言及をいただくことがありがたいと思いました。
 
 3番目は、「アジアにおける」というところなんですけれども、実はアジアでもいろんな動きがあります。例えば中国とシンガポールは、グリーンファイナンスの共同作業部会を発足させて、4月に重慶で第1回の会合をやっており、「基準」、「商品」、「炭素市場」という3つの部会をスタートさせています。同じく4月には、BNPパリバが、欧州と中国の共通タクソノミーを基にした初めてのグリーンファイナンスを実行しています。エア・リキードの中国の子会社に対して、水素関連施設整備を使途に、日本円で100億円ぐらいの融資をつけています。
 
 こういう動きがありますので、日本も「アジアとともに」といった抽象的レベルではなく、バイで、どこかの国とグリーンファイナンスの覚書を結んで一緒にやるとか、金融機関がある国でグリーンファイナンスを進めるときに、それを支援するような公的枠組みを作っていただくとか、後ほど出てくる人材育成でも、日本の大学と海外の大学、アジアの大学が組んで一緒に人材育成をやるべきとか、そういうことまで踏まえて提言をまとめていただければ大変ありがたいと思います。長くなりましたが、以上3点です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。いろいろありましたので、もしコメントがあればどうぞ。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  いえ、特段ございません。
 
【水口座長】  いいですか。
 
 それでは、井口さん、お願いします。
 
【井口メンバー】  ありがとうございます。足達さんと同様、2021年6月の報告書の内容について、施策として具体化していただき、ありがとうございます。かなりのスピードで進んでいると思い、感謝しております。ただ、その上で何点か、今回の報告書案についてコメントさせていただければと思います。
 
 最初、4ページから5ページの企業報告のところなんですけど、今日いらっしゃる高村先生と一緒にSSBJの委員もさせていただいておりまして、当委員会への御報告になるんですけれど、2週間に1回程度、ほぼ丸一日議論するなど、かなり精力的にやらせていただいています。そして、今後の基準の策定の方向性の検討やISSBへ意見書を出したりしておるということです。
 
今回の報告書案に関しては2つほどありまして、一つ目は、本文に書くことではないかもしれないんですけど、SSBJだけではなくて、民間でもかなり動きがあるということです。例えば、企業サイドでは、サステナビリティにおいても経団連さんが企業の意見をまとめられるということと思いますが、利用者サイドではそういうところがなかったんですけど、日本証券アナリスト協会の中に、サステナビリティ報告研究会が設置され、投資家の意見をまとめ、ISSBに意見書を出すとともに、ISSBからのアウトリーチも受けるといったことをやり始めています。こういった利用者における取組なんかも、報告書の注釈でも書いていただけると非常にありがたいと思います。そして、SSBJの意見書が基礎にあるんですけど、それをもとに、企業さんから、利用者から意見が出るということで日本の意見が厚みを増しているということもあるか、と思います。
 
 2つ目が、一次報告書でも国際基準設定に積極的に参加するということがあったんですが、実際、日本の方々の御尽力、利用者も含めてですが、これもあって、ISSBの基準は公開草案から比べると、かなり実務的になっていると思います。例えば、SASBベースの産業別開示基準は基準化を見送られるとか、そういうことも起きていますので、アウトカムとしてそういうことが実際起こっているんだよということをこの報告書に御記載いただくのも大事と思っております。
 
 5ページのESG債情報プラットフォーム、これはJPX様に感謝ということです。あと、個人に対する投資機会の提供という、10ページのところになります。ESG投資の監督指針、これ、第1回報告書のとき、私もかなり議論させていただいた記憶がありますが、報告書に沿った形で監督指針をつくっていただいたことに感謝いたします。いろんな意見はあると思うんですけど、ESGインテグレーションが一般化して、アクティブファンドでしたら、ほぼみんなESGインテグレーションと言っている中、ファンド名とともに、監督指針にありますように、ESGを主要な要素としているということを入れられたというのは非常に大事なことと思います。第1回報告書のときに水口座長のご指摘もありましたが、ESG投信には個人の嗜好とかもありますので、ESGの主要な要素を満たしているということで、初めてこういったことが満たされるESG投信が出てくるんじゃないかと思っています。
 
 あと、欧州との関係でいいますと、一部マスコミでSFDRがすごく賞賛されている向きがあります。私、この3月にグローバル機関投資家団体ICGNのストックホルム大会に参加してまいりまして、この件について海外投資家とも議論しましたし、あるいはパネルもみたりしたのですが、欧州の投資家は、みんな大混乱に陥っているというような印象でした。また、これほどいろいろ言われる施策も珍しいなと思うぐらい、すごいことになっているなという印象を受けました。これの理由というのは、かなり詳細にルールをつくり込もうとして、そうすると、さらに詳細にルールを設定する必要があるという循環に陥っていて、結局、難しくなりすぎて訳が分からなくなっているというようなことになっているかと思います。この辺は『アナリストジャーナル』に足達さんが明確なレポートを出されているので、また御参照いただければと思います。ですので、報告書に書いてあるように、日本にあるように、しっかりした開示を中心としたルールづくりがいいのではないかと思っております。
 
 あと、10ページの、コスト負担を低く抑えたいと考える個人投資家が購入しやすいパッシブのESG商品について書かれている箇所となりますが、ここ、誤解がないようにする必要があるのかなと思っております。いろいろなパッシブ投資家の方や商品があるとは思いますが、やはり、低廉なコストで運営するというビジネスモデル上、どうしても形式的なエンゲージメントにならざるをえないところがあると思います。このような形式的なアプローチだと、企業は反発されますし、そうすると企業価値向上につながらなくなり、結局ESGを取り巻くインベストメントチェーン自体が回らなくなると思います。また、金融庁のフォローアップ会議でも、スチュワードシップ活動の実質化ということで、企業の個別の事情に基づいてエンゲージメントをするのがいいんだよということをおっしゃっている中、パッシブをあまりに強調し過ぎると整合性が難しくなるのではないかと思います。そういう御意思はないと思うんですが、書きぶりはちょっと注意する必要があるんじゃないかと思っています。私は、アクティブ、パッシブとか含めたESG商品の品揃えが重要という御趣旨だと思いますので、そういうことを書かれたほうがいいのではないかと思いました。
 
 11ページにありますESG評価・データ提供機関に係る行動規範のところですけど、これはインベストメントチェーンを考えたとき、非常に重要な役割を果たすと思っております。弊社の例で恐縮なんですけど、昔は議決権行使助言会社を利益相反で使っているだけだったんですが、最近、気候変動の対話も力を入れているということで、ESGデータ機関を使っていますので、今週の木曜日に公表しますけど、弊社のスチュワードシップ・コードへの対応の原則8のところに、ESGデータ機関と対話をします、そのとき、この行動規範を参考として使いますということを明記するということをやっております。今後、この規範をどう使っていくかは我々も研究しなければならないとは思っていますが、ESGデータ機関を活用している利用者を啓蒙していくということも重要ではと思っています。それはスチュワードシップ・コードを使うか、いろんなやり方があると思うんですが、そういうことが必要だと思っています。
 
 あと、人材のことはまた……。
 
【水口座長】  人材のことはまた後ほど。
 
【井口メンバー】  以上です。ありがとうございます。
 
【水口座長】  人材のことは、また後ほど議論させていただきたいと思います。できるだけ皆さん、コンパクトにお話しいただきまして……。
 
【井口メンバー】  すみません、長くなりまして。
 
【水口座長】  いえいえ、ありがとうございます。
 
【井口メンバー】  私、次回は出席できませんので。
 
【水口座長】  そうですよね。それでは、手が挙がった順番ということで、河本様、渋澤様、林様、長谷川様という順番で行きたいと思います。その先に、鳥海さんと手塚さんという形でいきたいと思います。それじゃ、河本さん、お願いします。
 
【河本メンバー】  全国銀行協会の河本でございます。なるべくコンパクトにということで、まずもってこの報告書案を拝見させていただきまして、私のような途中から入ってきた者にも全体感が、最新の情報、動きまで取り入れていただいて、まとめていただいて、本当にありがとうございます。今後よりブラッシュアップしていければと思っています。レポートの中でも触れていただいているように、制度整備についてはすごく進捗してきている。一方で、具体的な取組の深化、これが大事だということで同感でございます。銀行界としましても、エンゲージメントが本当に大事だろうと考えております。特に、サプライチェーン全体の排出量把握、こういったことも求められてきていることも踏まえると、中堅・中小企業へのエンゲージメント、これをさらに裾野を広げていくことが本当に大事だろうと認識しております。
 
 既に全銀協としては、地域金融機関の営業担当者、あるいはそのお客様に向けたエンゲージメントツールということで、「脱炭素経営に向けたはじめの一歩」という共通のマテリアルを作成しています。これは既に公表済みで、各金融機関で御活用いただいています。これは、引き続き進めてまいります。こういったツールだけではなくて、それぞれ使う人の理解を広げていかないといけないということで、地域金融機関も含めた会員行に対して、これは全銀協CNI Compass Programというものなのですけど、CNIというのはカーボンニュートラルイニシアチブなのです。勉強会をこれまで17回開催してきておりまして、会員行におけるサステナブルファイナンスの知識全般の向上ということで取り組んできております。直近では5月26日ですけども、「自動車分野におけるトランジションロードマップ」というテーマで、経産省さんと日本自動車工業会の方からプレゼンをいただいたということで、今回議論されているようなテーマについても、必要に応じてそういった勉強会にも取り入れていければということでございます。
 
 ということで、銀行界としても、具体的なエンゲージメントを通じて、中小を含めた取引先の取組を促していって、必要なファイナンスを含めてサポートを行うということです。大事なのは、そこで得られた課題とか、なかなか思うように進まないところがあると思うので、そういった課題をまた、こういう制度設計のほうにも、ぜひ意見発信ということで還元させていただいてということで、サステナブルファイナンス全体の推進、あるいは高度化に貢献していきたいと考えておりますので、引き続き連携させていただければと思いますので、よろしくお願いします。
 
 以上です。
 
【水口座長】  よろしくお願いします。ありがとうございます。
 
 では、渋澤様、お願いします。
 
【渋澤メンバー】  ありがとうございます。第三次報告書をまとめていただいた事務局の皆様の御尽力に大変感謝しております。
 
 3点コメントがございます。1つ目がISSBで御案内いただいているとおり、現在、パブリックコメントが9月1日まで実施されています。私の感触ですと、今までは次のテーマはバイオダイバーシティー、エコシステムと思ったんですが、それが一つのバンドルになっています。そしてヒューマンキャピタル「人的資本」と人権が個別に立てられています。私の憶測にしかすぎませんが、恐らくISSBの幹部が今年の3月に来日したときの意見交換では、訪問先から人的資本、人的資本という話が多く、その配慮があるのではないかと思います。そういう意味では、先ほど井口さんもおっしゃいましたが、アウトリーチというか、日本のいろんな団体、各企業がこのパブリックコメントに、人的資本を推しましょうということではありませんが、日本はこういうことを考えているということをパブリックコメントを通じて表明することはとても重要で、ISSBもそれを歓迎していると思います。
 
 2番目がインパクトです。私はインパクトという分野に10年以上取り組んでおりまして、そういう意味ではGPIFがPRIに署名した前からある流れです。私の感触ですと、この1年間、インパクトの世界において、日本の立ち位置、存在感が急増したというモメンタムがあると感じております。やはり大きなきっかけをつくったのは、去年の政府の骨太方針にインパクトという概念がそこで紹介されていることだと思います。金融庁でもインパクト投資の検討会を設けられ、内閣官房で私が関係したところではグローバルヘルス、要は、人類のサステナビリティのために必要な健康医療の文脈の中でインパクト投資を促すことがG7広島サミットの首脳宣言でも承認されております。9月の国連のハイレベルサミットに向けて具体的な取組を、内閣官房とGSG本部の事務局やゲイツ財団などとこれから詰めて参ります。これも、日本発でインパクトという概念を世界に発信している結構重要なことだと思っております。
 
 ESGとインパクトの違いというのは、私のイメージでは、サステナブルファイナンスが上段にあり、その手段がESGかインパクトというイメージを持っています。ESGは、主体性を持っているのは投資家です。投資家が企業に非財務的な価値の情報開示を促し、投資家がESGを判断するという構図だと思います。一方、インパクトの主体性は企業だと思います。もともとインパクトを意図しているスタートアップにお金を流すということがインパクト投資の起源なので、主体性はあくまで企業です。
 
 ESGは投資家目線なのでシングルマテリアリティの話だと思いますが、インパクトは概念的にはダブルマテリアリティ、両方とも目指しましょうということです。それをつなげようとしている動きが、例えばインパクト加重会計という考えがあります。すぐに制度化されるものではないですが、企業価値を考える上でとても大切な取組だと思います。今回、コンソーシアムが立ち上がる際にワーキンググループでも勉強会でもいいと思いますが、インパクト会計の制度化ということだけではなく、インパクトでの企業価値について討議すべきだと思います。主体性という意味ではスタートアップに留まることなく、大企業も重要だと思います。大企業の企業価値の表現にインパクトの概念が広まれば、資金の出し手としてスタートアップに出資する等のエコシステムもできると思います。実は大企業が自社のインパクトの価値って何かということを整理することはかなり大切と思っていて、既にそういう動きがもう出始めています。特に、この1年で。ですから、この動きを後押し、モメンタムをなくさないように、コンソーシアムが立ち上がった際に、ぜひその深化、深掘りをお願いしたいと思います。
 
 3点目ですが、個人投資家についてです。長年、コモンズ投信を通じて一般個人向けの長期投信を促していましたが、大勢の方々の御尽力でつみたてNISAなど制度が改正されました。ただ、最近、気になったことがありました。いまだに、今売れるのは元本保証だけなんですということをおっしゃる地域金融機関がいるようです。個人投資家のESG投資について報告書の9ページでご指摘されていますが、ここに、つみたてNISAという個人の長期投資、要するにサステナブルな生活を促すための制度があることを、ここで入れたことが必要ではないかと思います。本日の最後のテーマである人材のところに、いまだに販売するのは元本保証じゃないと売れないという現場の声が上がってくるということも、課題として注視すべきだと思っております。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。それでは、林さん、長谷川さんの順番ですかね。取りあえず、林さん、お願いします。
 
【林メンバー】  この資料について、第一次、第二次と、必ず最後に「おわりに」とか「フォローアップ」というのが入っていて、この第三次もこれで終わりじゃないと思うので、まだ取りまとめ中だと思うんですが、次につながるところをまとめて書いていただきたいと思います。もう一つ、見た目の問題なんですけれども、「今後の課題や方向性」という場所と「今後の対応や方向性」というふうに使い分けていないんだと思うんですけれども、そういう「課題」なのか「対応」なのか、ちょっとそこが不明確かと思います。
 
 その方向性のところで、こうすべき、こうすべきというのは入っているんですが、主語が入っているものと主語が入ってないものがあって、冒頭のお話しのところで、本当にやっていることと関係者も増えてきて、だんだん希薄化したり、分断という言葉はあまり使いたくないですけれども、いろいろな意図をもって動くことになってくるので、誰のところにアカウンタビリティーがあるのかということをより明確にしたほうがいいと思います。
 
 そのためにも、今までの報告書の中で、最初に簡単な絵みたいのがあって、ここまでやりました、そして次はこれみたいな一枚物があったかと思うんですが、それは「フォローアップ」か「おわりに」と併せて、どこまで進んできて、次、誰がやるんですかと、単に言いっ放しにならないような書きぶりにしていただきたいというふうに思いました。
 
 最後に、アジアGXの形成という図があって、この中で日本の取組はアジアの地域へ発信ということがあって、そのとおりだと思うんですが、発信するだけじゃなくて、先ほどもいろいろな方がおっしゃっていましたけれども、この会議体にどういう形でアジアの方々が入ってくるのかということで、日本を中心に話して単にアジアに発信するだけではなくて、議論の中に最初から具体性をもって取り込んでいくということが発信しっ放しにならないようにということ。
 
 加えて、アジアの人に発信するだけではなくて、アジアの人と一緒に、最近の経験も含めてなんですが、やっぱりグローバルな人たちに理解していただくようなものにしなければならないので、ぜひその視点、日本だけでとどまらない、アジアだけでとどまらない、やっぱりグローバルな人たちをきちっとその意思決定のプロセスだとか議論の中に取り込んでいくような立てつけにしていただくとよろしいのではないかと思いました。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 最初の足達さんがタクソノミーのところでもちょっとおっしゃいましたけれども、主語、政府がどこまですべきで、民間が何をすべきなのか、主語が明確になっていないのは、結局、何は政府がすべきで、どこから先は民間にお任せすべきなのかのそこの切り分けがどうもあんまりまだ私たちの中でもできてないというか、この中でコンセンサスができてないということかもしれません。
 
 インパクト投資検討会でも、座長の柳川先生が同じことをおっしゃっていまして、インパクト投資の推進を政府はどこまでして、それは民間がどこまでやるべきなのか。渋澤さんもその点を御指摘されていましたけれども、そこの辺が実は一番議論しなきゃいけないところなんだろうなと思いながら聞いておりました。それと、グローバルな人にも理解される。
 
 この後、手を挙げた順番で、長谷川さん、鳥海さん、手塚さん、そしてオンラインに行きまして、高村先生、二木さんという順番で参りたいと思います。それでは、長谷川さん、お願いいたします。
 
【長谷川メンバー】  ありがとうございます。手短に2点申し上げます。
 
 まず、12ページのESG評価データ提供機関に係る行動規範のところですけれども、これはもともと、経団連がアンケートなどをして、事業会社の方から評価機関の評価の透明性、客観性がないのではないかという御意見が多数あったというところから議論が始まっていると思います。そのため、今回、こういう形で世界に先駆けて金融庁が行動規範をまとめていただき、実際に日本でサービス提供を行っている多くの機関が自主的に賛同していただきつつあるということで、大変良い進展だと思っております。
 
 今後はぜひ、この報告書に記載があるとおり、諸外国の当局などとも連携しつつ、特に今回、コーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議でまとまったアクションプランにおいても、実効性の向上に非常に焦点を当てていただいておりますので、こちらにつきましても、行動規範ができてESG評価・データ提供機関が署名したら終わりということではなく、いろいろな機関との対話などを通じて実効性の担保ということもぜひ進めていただければと思います。
 
 それから、18ページのインパクト投資に関わるところですが、これは渋澤様から御指摘があったとおり、もともと、以前からあったテーマではございますが、ここ最近、非常に皆様の関心が高まっていることを強く感じております。ただ、まだ定義ですとか、それこそESG投資とどう違うのかとか、測定方法、それからデータ指標などについての理解不足が企業や投資家ともにこのインパクト投資を進める際の障壁になっていると思いますので、今回、金融庁においてインパクト投資の基本指針を策定していただいて、それから、さらに事業評価、データ整備に関する事例ですとかノウハウの共有を促進するコンソーシアムを立ち上げていただくということは、非常によいアイデアだと思っております。
 
 その際、社会課題解決を図るということですので、ヘルスケアですとか、教育ですとか、地域における貧困ですとか、これらのデータはなかなか個別企業ではアクセスができない状況にありますので、ぜひコンソーシアムには、地方公共団体ですとか、これらのデータをもっている他府省庁の代表の方にもぜひ御参加をいただければと思っております。
 
 また、グローバルに見ますと、そういう指標としては、既にIRIS+ですとか渋澤様が御参加いただいているUNDPのSDGインパクトなどもございますので、そういう先行事例とも、ぜひ連携を図っていただければと思っております。
 
 もう一つは、先ほど御指摘があったとおり、インパクト投資の関連では、内閣府のグローバルヘルス関連でインパクト投資を推進しようという動きや、同じく内閣府で、民間による公益活動の促進という文脈で、NPOやスタートアップ企業による社会課題の解決にこのインパクト投資を活用しようという動きなど、いろいろな動きがありますが、それぞれに、若干、目指しているものが違うという感じもしております。
 
 ですので、このコンソーシアムでは、報告書にも記載があるとおり、インパクト投資がまさに黎明期で、定義や測定方法なども確立していないという状況を踏まえて、報告書の中では、意図の明確性ですとか、効果と収益の好循環とか、革新性とか、いろいろ定義を記載していただいておりますが、あまりそれらには厳密にとらわれずに、また、対象も、コングロマリットである大企業なのか、それとも、それぞれの事業、プロジェクトなのか、業種規模、それから投資主体、アセットクラスなどについても様々どうするのかという合意がまだない中ですので、そこは幅広くコンソーシアムの中では取り扱っていただいて、企業と投資家が好事例などを共有する中で、徐々に標準的な手法、定義が固まっていくというようにするのが良いのではないかと思っております。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では、鳥海様、お願いします。
 
【鳥海メンバー】  ありがとうございます。直接的に報告書に対するコメントということではないことも含めて、3点ほどコメントさせていただきます。
 
 1つは、グリーンウオッシュあるいは監督指針に関連してというところなんですけれども、世界的なESGファンド規制の導入ということで、統計的に言うと、サステナブル投資の残高というのが一時的に数値としては減少してしまうというふうに見えると思いますけれども、これがいわゆる名ばかりESGファンドみたいなものが排除されているということで、残高減少という数字だけをもってESG投資へのニーズが減少しているというようなメッセージにならないように、このメッセージの発信の仕方、特に個人投資家の皆さんに対してのコミュニケーションというところが非常に重要なのかなというふうに思いますので、引き続き、啓蒙活動といいますか、メディアの方も含めて正しい理解を促すようなことをしていく必要があるのかなというふうに1点思っております。
 
 もう一つ、これもESG投資というところですけれども、運用手法のところでアクティブからパッシブ、パッシブファンドの重要性ということがおっしゃられているかと思います。先ほど、つみたてNISAの対象にもというお話もあったかと思いますけれども、あるいは、新NISAにふさわしいESGインデックスの開発というような文言も報告書の中にありましたが、インデックスプロバイダーの役割というのが非常に大きくなってくるのかなというふうに思っています。
 
 同時に、ESGデータの正確性だとかそういったことも含まれておりますけれども、このデータをどのように正確性あるいは信頼に足りるものにしていくかということに加えまして、指数、インデックスのプロバイダーの説明責任みたいなところも強化していくことも重要なのかなというふうに思います。
 
 今後、どのようなESGインデックスが支持をされるのかというのは、どのようなサステナブルな未来、どのような将来を描きたいのかということともつながってくると思うので、インデックスそのものも、機械的にというよりは、もうちょっと投資哲学的なものが必要になってくるのかなというふうに思いますので、そういう意味では、インデックスプロバイダーに対して運用者、投資家としては投資監視をしていくということも必要でしょうし、プロバイダーのほうの説明責任というのもより求められるのではないかなというふうに思っております。
 
 それから、3点目、インパクト投資についてですけれども、この検討会の報告書を取りまとめいただきまして、ありがとうございます。インパクト投資につきましては、データの整備あるいはインパクトの測定を含めて、事業評価、企業評価にどのように織り込むのかというようなところで、証券界としても貢献できる部分があろうかなというふうに思っております。
 
 そのとき、今回、コンソーシアムができるということで、この方針、大変賛同しております。一方で、取り組む社会課題というのが非常に多岐にわたっているというところがございますので、この後、ワーキングとか少し分けていくのかも分かりませんが、一定程度、どういうところを突き詰めていくのかということを絞っていかないと、いろいろ対象も広く、また、それぞれのお立場によってお考えになるところも違うところもあるのかなというふうに感じておりますので、絞った上で事例を積み上げていくというような具体的なものを出していくということがいいのではないかなと思います。
 
 インパクトスタートアップ協会、直近、アニュアルミーティングをやっておりますけれども、そういったインパクトIPOというのも含まれると思いますが、リターンと社会課題の解決というのを両立させながら、しかも、上場後もサステナブルに成長させていくというようなことを考えた上で、事例を増やしていくということが重要なのではないかというふうに思います。
 
 そのためには、後ほどあると思いますけれども、人材の育成というようなところも多分重要になってくるんだろうというふうに思っております。
 
 以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では、手塚さん、お願いします。
 
【手塚メンバー】  どうもありがとうございます。最初に、長谷川さんからも指摘がありましたけれども、評価機関のディシプリンに関する取組というのをこの有識者会議の成果物の一つとして具体的に始められたということ、大変ありがたく思っております。評価を受ける事業会社の立場から、大変これは重要なポイントだと思います。
 
 ぜひこれを日本が世界に先駆けて始めたということをグローバルに展開していただければというのが今回のお願いです。私どもも、当然、投資家等は国際的にグローバル市場から資金調達していますので、こういうディシプリンが世界的に共有されていくということは大変重要なことだなというふうに思っています。
 
 本日申し上げたいのは、実はこのトランジション・ファイナンスとファイナンスド・エミッションの件でございまして、トランジション・ファイナンスは、ともするとグリーンとブラウンに二元論化されがちなグリーンファイナンスの世界に関して、現実的な移行をどうつなぐのかというコンセプト、これは恐らく日本がかなりリードして世界の金融の世界に出していった概念だと思うんです。
 
 日本の場合、政府の中でも経産省さんが結構このトランジションの議論をリードされたということもあって、事業会社のニーズ側からのコンセプトが非常にいっぱい入っていたということで、これが前面に打ち出されたという意味で、ある意味、日本が金融の世界でもリードできた成功例ではないかと思うんです。今回のG7のサミットの合意文書の中にもこれが記載されたというのは非常によかったなと思っています。
 
 その先にあるのが、実はこの現実路線としてお金の流れどうするかという分野にこれから行くんだろうと思うんですけれども、ファイナンスド・エミッションというコンセプトとどうつないでいくかということだと思います。
 
 実はトランジション・ファイナンスというのは基本的に、企業の技術のトランジションロードマップを作っていくプロセスの中から当然必要となるものとして出てきているコンセプトだと思うんです。いついつまでにどういう技術が必要になって、その技術ができたらば、どういう既存のアセットを新しいアセットに入れ替えていくかというような、それを時間軸で2030年、2040年、2050年とつないでいくというものができてきていたんだと思います。
 
 日本政府が今回発表されているGX戦略の中でも、150兆円の投資が必要だということが書かれているんですけれども、どういうふうにそれを間をつないでいくかということまでは明快に書かれてないんですが、明らかなのは、大量に排出している分野ほどお金が必要であるということでございます。
 
 大量に排出している分野ほど、様々な技術を今開発中で、これが2030年、40年に実際に投資されていく形になるんですけれども、それがどういうふうに行われていくかというと、先ほど、政府の役割と民間の役割とありますけれども、政府からいろいろなサポート、補助もいただきながらやるんですが、基本的に投資ですので、民間企業は自らのキャッシュフロー、自らの信用でもってファイナンスをして投資をしていかなければいけない。
 
 であるとすると、初期にかかる投資をどんどん金融機関から借りる場合には、返済のためのキャッシュフロー、投資をいただく場合には、利益としてリターンを出していくという資金の太宗は、既存のアセットから出ていく。つまり、現在のカーボンが中心で行っている鉄であれば、石炭を使った製鉄から出てくる鉄でもってキャッシュを稼ぎながら、そのキャッシュでグリーンな生産プロセスにトランジションしていくという形になります。当然、ファイナンスド・エミッションというのは物すごい勢いで膨らんでいく形になります。150兆円の相当部分がファイナンスド・エミッションを増やす方向にならざるを得ないものになっていくんだろうと思われます。
 
 ですので、2つお願いしたいんですけれども、1つは、現実的にこの技術のトランジションのロードマップのようなものができてきているわけなので、それを前提にして金融のほうのトランジションのロードマップみたいなものは、やろうと思えばできるのではないか。個々の企業のケースはなかなか難しいと思うので、産業別にどういうふうな時期にどういう資金ニーズのピークが来るかとか、その際にそうした産業がどういう事業構成になっているからCO2が出ていくのかというのは、計算しようと思ったら計算できると思うんです。そういう概念を入れていくと、この間のつなぎ方がより見えるようになってくるのかなというのが1点目です。
 
 と同時に、このプロセスというのは、国の置かれている状況とか産業構造とかが持っている固定資産、産業の事業資産の構成によって全然違ってきます。ヨーロッパとアメリカと日本でも違ってくると思いますし、当然、先進国と途上国でも違ってきます。そういう実態の中で、このファイナンスド・エミッションというのは国によって全然違ってくるということも、この15ページにある記載の中に入れていただきたいと思います。いろいろな状況を踏まえながらということまではさらっと書かれてはいるんですけれども、ある程度そういう地域差、国差、産業構造差によってそういうものが変わってくるというようなことも配慮しながらこういうような評価をしていかない、世界一律の基準でもってこれを決めていくということはふさわしくないのではないかということをぜひ考慮いただきたいということでございます。
 
 私からは以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。この技術のロードマップが金融のロードマップにつながるようにという御指摘。それが国全体のCO2削減のロードマップとどう結びついているのかというところがきちんとつながれば、ファイナンスド・エミッションの議論は、何年にはここまで減るということが説得力が出てくるんだと思いますけれども、そこのCO2削減のロードマップと技術のロードマップのつなぎというのはなかなか難しいんだろうと思いました。ありがとうございます。
 
 それでは、高村先生、二木さん、小野塚さん、岸上さん、吉高さんという順番で行きたいと思います。高村先生、お待たせいたしました。すいません。
 
【高村メンバー】  ありがとうございます。まず、こちらの報告書について、この間、サステナブルファイナンスをめぐって本当に様々な課題、論点がある中で、これまでの進捗と課題というのをうまくまとめていただいていると思います。
 
 特にサステナブルファイナンスをめぐっては、様々な場所で議論する場、これは金融庁さん以外の関係省庁も含めてあると思いますけれども、この有識者会議で、それぞれの議論の場があって、全体感をもってこのサステナブルファイナンスの到達点と課題が何かということを確認していくという意味で、非常に重要だというふうに思います。
 
 先ほど、林さんだったと思うんですけれども、次の一手といいましょうか、次の重点課題が何かというのを明確にもっと打ち出したらどうかというふうに御指摘があったかと思います。その観点で幾つか私の意見として申し上げたいと思うんですけれども、とはいえ、報告書のトーンとそんなに大きく変わっていません。
 
 しかし、1つ重要なのは、この会議も含めて、企業のサステナビリティ情報開示をさらに進めていく取組として、どういう対応に重点を置いて、どういうスケジュールで進めていくかという点は、この会議でも今後改めて議論したらどうかなと思っているところです。先ほど井口さんがSSBJの話もしていただきましたけれども、恐らくここの委員の皆様の御同僚の皆様も含めて、かなりインテンシブな議論をしています。
 
 しかし、同時に、今日の報告書案にもありますように、さらに、気候変動だけでなく、人的資本ですとか生物多様性、あるいは保証の問題、様々な課題があり、こういった課題について、どういうふうに議論を国として、全体として、していく必要があるのかということは、この会議でも一度議論をする必要があるのではないか、今後の課題ではないかと思っています。
 
 2つ目ですけれども、当然、先ほど国と民間の役割の点についても御指摘が何人かからございました。主たる担い手が仮に民間だとしても、この局面で国の制度整備の重要性、これは報告書でも繰り返し書かれているところだと思いますけれども、国の制度の整備の重要性というのが、サステナブルファイナンスの段階を上げていく上で非常に重要だというふうに思っております。
 
 報告書の中でも、気候変動の関係で排出量データについての御指摘がありました。さらに、自然資本ですとかあるいはサーキュラーエコノミーになってきますと、さらに幅広い情報をどういうふうに企業、作成者のほう、開示をする側の負担を軽減しながら、利用者が使いやすい形で情報基盤をつくっていくかというのは非常に重要な課題で、これは間違いなく、金融庁さんだけでなく環境省さんですとか経産省さん含めて、省庁間の連携が必要なところだというふうに思います。
 
 その意味で、今、情報基盤の整備というのは、国の制度整備にとって重要な課題として報告書案で指摘もされていますし、ぜひ今後の課題として集中的に議論ができるといいんじゃないかと思います。
 
 もう一つ、国の制度整備の点でぜひ御検討いただきたいのは、脱炭素の検討会の中では、報告書の中では言及していただいていると思うんですが、いわゆるネットゼロに向けた金融機関のアライアンスの中で、一部脱退の動きについても御指摘がありました。他方で、大きな基調は変わらないと、さらに進んでいくだろうという点についても、そのとおりだと思っていますが、脱退の背景の一つとして指摘されているのが、競争法上の懸念であるというふうに理解をしております。
 
 公正取引委員会が基本的な指針をお出しになったのは理解しているんですけれども、競争法上の懸念にしっかり応えるというのは、政府の関係省庁と連携をした制度整備を改めてしていく分野ではないかというふうに思っております。これはぜひ御検討いただきたいと思います。
 
 3番目ですけれども、トランジションについて議論がございました。これが非常に重要だと思いますのは、開示の文脈でも、御存じのとおり、移行計画について開示をし、当然、それを基づいて、金融機関が企業の情報に基づいて評価をしていくというそうした意味でも、このトランジションあるいは移行計画についてどのように作成をし、説明をしていくか。先ほど公正な移行について足達さんからもありましたけれども、どういうふうなポイントに重点を置いて開示をし、説明していくかというのは重要だと思っています。
 
 基本的な考え方は随分整理をされてきたと思いますけれども、一歩進めるのは、具体的な開示の事例、あるいは、金融機関がこうした移行計画をどういうポイントでどのように評価をしているかということをもう少し実例に基づいて議論をしていくということが重要ではないかなというふうに思っております。
 
 先ほど御紹介がありましたように、G7の広島サミットで、大枠の先進国間の枠組みについては既に合意がされていると思っていまして、一歩それを進める検討が必要ではないかということです。
 
 いずれにしても、今3つほど申し上げましたけれども、この有識者会議、先ほど冒頭に申し上げましたように、全体の課題を俯瞰して捉えていく、総括をし、次の課題設定をしていくという非常に重要な会議だと思っていまして、ぜひ引き続き、この場でこうした議論ができることを楽しみにしております。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。すいません。人材育成についての議論も少ししたいので、皆様、よろしくお願いいたします。それでは、高木さん、小野塚さん、岸上さん、吉高さんという順番で行きたいと思います。二木様、お願いいたします。
 
【二木メンバー】  報告書全体感で言うと、おおむね必要な要素は網羅されている、よくまとまっているのではないかなと思っています。
 
 中でも市場機能の発揮の項目に関しては、当社JPXのグループ、役割に対しても相当な期待感を寄せていただいていて、今後のモチベーションにもなりますし、大変光栄に感じております。当社としても、できる限り皆さんのお役に立てるように、引き続き頑張っていきたいとは思っています。
 
 ただ、一方で、現在のプラットフォームも、証券会社の皆さんの全面的な協力の下で初めて成立するということでございますし、今後、さらに提供すべき情報の範囲が広がってくるということであれば、金融庁をはじめ、より多くの方々のお力添えがないとこれはできないということになります。先ほど林さんから誰がやるのかという主語を明確にという話がありましたが、これはJPXだけがやる話ではないということを改めて申し上げておきたいと思います。
 
 また、私どもでもシステムの改修だとかメンテナンス、さらに、情報の正確性を担保するとか、結構なコストも必要になってきております。当社も、上場企業でありますので、一定の収益を上げるということを要請されているわけでありますので、現在無償で提供できているものも、今後の拡張の程度によっては、この仕組みを継続して維持していくというためには、一定の対価を頂戴するようなこともあるいは想定していかなければいけないのかなと思っています。
 
 さらに、当社はこういう特に有償で業務を行うことについては、その都度、金融庁からの認可をいただくということが求められておりますが、非常に重要な事業だと思いますので、対価を頂くということになったとしても、金融庁の中でも局は違うと思いますが、御認可のほどよろしく御配慮いただければと思っています。
 
 あと、若干細かいのですが、必要に応じて海外と情報連携というふうにありますが、最終的な投資家に御利用いただくという目的を達成する上で、手段としてはそういうことも考えられるかもしれませんが、ややもすると、それ自体が目的になってしまうということもありがちなので、その辺はよくよく注意をしていきたいと考えております。
 
 その他、報告書の言い回し等については若干の違和感があるところもございますので、細かな点についてはさらに調整をさせていただきたいと考えてございます。
 
 以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では、小野塚様、お願いします。
 
【小野塚メンバー】  ありがとうございます。おまとめいただき、ありがとうございます。
 
 私の意見は林さんと高村先生と似通ったものになりますけれども、まず、1つは、この3回目の報告書をまとめるということで、我々の存在意義というものがよりクリアになってきているというふうに感じています。1つは、我々がこういった場で議論したこと、そして、広くサステナブルファイナンスに関わることが、ある意味ワンストップショップで報告書としてまとまっている、この要にいるというのがこの会議体の存在意義ではないかと思います。そういった意味でも報告書は大変読者にとってもすごく分かりやすく、意義のあるものであると思います。
 
 2つ目は、それを踏まえて、先ほどおっしゃられた方がいると思いますけれども、今、サステナブルファイナンスという全体感、これはグローバルも含めてですが、その中で日本がどれぐらい進捗してきていて、どこが足りないのかというような俯瞰的なマップを作ってみてはいかがかなという、そういった御提案です。
 
 3つ目は、来年、事務年度に向けて、ぜひこの議論を続けていただきたいと思いますし、あと、我々がこれまではサステナブルファイナンスの推進という側で、ある程度、啓発という色が強かったと思いますけれども、ある程度進捗してきた中で、振り返りというようなことに関して、この会議体がどんな役割を果たすのかについても、ぜひ議論できたらと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。それでは、岸上さん、お願いします。
 
【岸上メンバー】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 
 事務局資料のほうでは、サステナブルファイナンスを取り巻く動向で、1ページ目にGX実現にむけた基本方針が記載されており、サステナブルファイナンス、イコール、GXという印象を与えかねないと思いましたが、報告書のほうでは、SDGs及びパリ協定から始まりより包括的にまとめていただいてので、よかったと思いました。
 
 少し具体的なコメントですが、報告書のほうで4ページ目に保証業務について書かれているかと思います。倫理や独立性に関する基準を開発するということで書いてあると思います。これまで、サステナビリティ関係の保証の担当者がいわゆる企業会計の保証業務と異なっていたと思いますが、より企業会計の保証業務と一貫性を持つ中で、従来型の保証業務だけでもかなり負荷のある業務の中で、1人の人間にスーパーマンを期待するような規制にならないよう、人材のところにも関連してくると思いますが、違うスキルを持ったチームワークでもって実現していくことにも少し考慮したほうがよいと思いました。
 
 排出量に関して、報告書6ページ、また事務局資料のほうでも全ての業種におけるサプライチェーンを通じたCO2排出の測定支援ということが記載されていたと思います。CO2排出量の測定以前に、複雑なサプライチェーンを把握するということ自体に課題を感じている企業が多くいらっしゃるかと思います。それは排出量だけではなく、例えば人権への配慮など、ほかの課題にも通用するかと思いますので、サプライチェーンの特定というところからの支援もあるとよいのでは、と思いました。
 
 8ページ目に、企業年金の1割がスチュワードシップ・コード受け入れ、8割が受け入れる予定がないということで、それを改善するために研修など情報共有の評価と書かれていました。考え方を理解する以前に、スチュワードシップを実践するような人的リソースや体制がないという課題もあるかと思いますので、その部分からどのように変えていくかというところへも言及をいただければと思います。
 
 また13 ページですが、Jクレジット、GXカーボンクレジットなどが国際的な基準との整合性も今後議論されていくということですが、JクレジットやGXリーグでのカーボンクレジットが他国の基準よりも弱いということがあれば、日本のそもそものトランジション・ファイナンスの信憑性が下がってしまうかと思いますので、ぜひ、国際的な基準づくりとの整合性というところは、ここに書かれているとおり賛同いたします。
 
 最後に、19 ページのところで、先ほどから議論されているインパクト投資に関連したコメントです。インパクト投資と関連してサステナブル投資、ESG投資の整理がされていると思いますが、その中で、ESG投資という用語を使ったりサステナブルファイナンスという用語を使ったりしています。一方で、国際的にはESG投資ではなくサステナブル投資という中で幾つかに分類して定義しているかと思いますので、少しそこは改めて用語と定義を整理して、最終的な報告書としてまとめてもよいのではないかと思いました。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。サステナブルファイナンス、ESG投資、整理が必要かもしれません。では、吉高さん、お願いします。
 
【吉高メンバー】  どうもありがとうございます。
 
 まず、私も林さんの意見に大変同意しております。具体的な成果と次にやるべきことをきちっと明確にしていただきたいと思っております。
 
 その点で、私は今いろいろな金融機関でサステナブルファイナンスの研修なんかをしていますと、2ページにあるようなイニシアチブからの脱退ニュースですとか、フロリダ州での反ESGの動きですとか、バックファイアが起こっているということに不安がっている金融機関や担当者もいます。表現に「いくものと考えられる」とか「重要と考えられる」というと受身に感じられ、日本の立ち位置として、また、この会議としてどうあるべきなのかというのは、はっきりとメッセージ性が出るような形でしていただくほうがよいと思います。私はこの報告書を教科書として研修していきたいと思うので、その辺の書きぶりかもしれないんですけれども、不安を取り除くような形で書いていただけたらと思っております。
 
 それから、先ほど岸上さんがおっしゃったカーボンクレジットのところなんですけれども、市場の需給拡大も大事ですし、それから、市場の健全性の確保も重要なんですけれども、最も私が気にしているのは投資家のリスクのことでございまして、過去にもカーボンクレジットの詐欺事件も起こりましたから、市場の環境整備の中には、投資家保護の観点でのリスクを確実に減らすよう明確に書いていただきたいと思っております。
 
 もう一つお願いは、脱炭素等に向けた金融機関等の取組みに関する検討会の報告書をもっとリファーをしていただければと思います。例えば、脚注でもいいので書いていただきますと、同検討会がいきなり出ていますが、先ほど議論になったファイナンスド・エミッションのこととか、この検討会で整理していくことだと思いますので、今回の成果としても入れていただきたいと思います。
 
 関連して、地域の金融に関してですが、昨日も東北のほうに行っておりまして言われましたが企業の競争力の向上のところが具体的に実感ができないというのが中小企業や地域の金融機関にあるということだと思うんです。ですので、もちろんデータも重要ですし、それから、支援というのも重要なんですが、まずは、地域金融機関や中小企業にとって何によって競争力が高まるのかということを金融機関がちゃんと理解していなくてはなりません。先ほどのサプライチェーンのこともそうですけれども、そこを整理するということが重要なのだと思いますので、少し強調していただくほうがよろしいかと思っております。
 
 ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。表現が受身であると、スタンスをきちんと示せということで、おっしゃるとおりかと思いました。ありがとうございます。
 
 藤井さんは一旦手を挙げられて下ろされたという。
 
【藤井メンバー】  人材育成関連だったので。
 
【水口座長】  分かりました。それでは、ここで、ちょっと長くなりましたけれども、報告書の議論は一旦ここまでにして、受け止めていただいて、コメントいただくと長くなってしまうので、小野塚さんに御用意いただきましたので、お待たせして申し訳ありませんでした。小野塚様からお話をいただいて、あと、今、幾つか議論が出ましたので、人材育成について議論していただければと思います。
 
 では、小野塚さん、お願いいたします。
 
【小野塚メンバー】  ありがとうございます。私のほうから簡単に10 分以内でプレゼンテーションして、皆様の御意見をいただきたいと思います。今日の内容は、「サステナブルファイナンス推進に向けた人材の育成と活用」ということで、私は今、一般社団法人科学と金融による未来創造イニシアティブの代表理事をしていますが、この団体の議論では、本会議の内容も踏まえて進めておりますので、触れさせていただければと思います。
 
 まず、当団体の御紹介ですけれども、発足は去年の2020年の5月になりますが、実際には、こちらの法人化以前に、有識者会議の渋澤さんですとか足達さんにも御協力いただきながら、金融界と科学の世界のいわゆるアカデミアの先生方とか研究所の方を踏まえた勉強会というのをしばらくやっておりました。
 
 なぜそれをそもそもやろうかと思った背景についてご説明します。有識者会議が2020年の12月に発足され、そこから金融側でのサステナブルファイナンスという話がどんどん進んでいったわけですけれども、当時、私は自分のさらなる学び、いわゆるリスキリングの最中で、東京理科大の技術経営修士という学びをしておりました。
 
 そこで気づきましたのは、日本にはサステナブルファイナンスに向かっていく政府も含めた機運というのがあり、一方、アカデミアにある科学に対する知見ですとか、それを技術に変える、そういった力があるのに、その2つの距離が結構遠いのではないかというこということです。
 
 ですので、まずは、そういったことが本当に実際あるのかということを検証するためにも勉強会を始めまして、そこで話したようなことをもう少し広く啓発するというとで、この団体を去年の5月に立てました。
 
 名前はその名のとおり、科学と金融による未来を創造していくという団体なんですけれども、理事には私のほかに、科学、それからアカデミア側ということで、元理研の方と現教授の方、それから、いわゆる大きなアセットオーナーということで、かんぽ生命で運用に関わられている方々が当初から理事、そして今、シニアアドバイザーという形で関わっていただいております。インパクト投資、これも重要な分野ですので、SIIFの安間さんと、それから、実際に実務者ということで、インパクトファンドをされている渡邊さんが関わられております。
 
 去年のところで一旦、この啓発という活動をしてみようということで、カンファレンスをしたというのがこの右下の絵になりますけれども、実際にこういった啓発の機会を持ったところ、かなり金融機関、事業会社、スタートアップ、政府の方々に御興味を持っていただき、来ていただいたということがございます。
 
 こちらが先ほど申し上げた課題というところですけれども、この辺りを今日の人材のテーマと絡めて少しお話できないかなと思っています。その課題というのが、持続可能な社会に向けて、さらなる科学の発展、そして、その成果の実装というものを金融を踏まえて早く多数実現する必要があるけれども、その資金の好循環というのが十分じゃないんじゃないかというのが私どもの課題感です。
 
 その仮説として、科学と金融の距離が遠いのではないか。そこには、それを解決するための出会いの場ですとか、共通言語の創出、そして、関わる人材の育成というのが必要であろうということになっております。
 
 ですので、当団体のミッションとしては、①場づくりといった先ほどお話ししたようなカンファレンス、それに加えて、②人づくりと、この2つの世界をつなぎ、そして、サステナブルファイナンスを活用して科学を技術にして実装していく人たちを拡大していかなきゃいけないし、活用していかなきゃいけない。ゆくゆくは、団体としては、③未来の投資という形でファンドなんかもやっていけたらと思っています。
 
 我々としては、何か自分たちが表立って教育プログラムを作るということではなくて、国内外の関係者を巻き込んで、経済活動、社会活動の創出シームレスにやるということで、社会のアップデートに貢献したいということですから、こちらにあるような関係者の方々と協働させていただいています。
 
 1つ御紹介ですけれども、今年もそういった場づくりという意味では、カンファレンスを7月21日に企画しておりまして、こちらに対しても、政府の金融庁様をはじめ、経産省、環境省、それから内閣府様に御後援いただいて、冒頭の基調講演は高田課長のほうからいただくということになっておりますので、資料の巻末に当日のプログラムなどを記載しています。御覧なっていただけたらと思っております。
 
 今日のテーマである人づくりなんですけれども、我々としては3つの柱で動いていこうと方針を掲げております。ここがまさに、去年発表された2回目の報告書の中でも言及のある人材スキルマップに関連するところになります。
 
 1つ目は、そういった人材を育成していくために、教育プログラムがもっとあってもいいんじゃないかとか、それを推進する仕組みがあってもいいんじゃないかというのが今年の報告書に入るというふうに見ましたけれども、我々がやろうと思っていたところがたまたま重なったというところになります。具体的な取り組みとしては、①グローバルに存在するサステナブルファイナンスとサステナブル経営に関するアカデミックプログラム、これは大学とか大学院のコースであったり、エグゼクティブのコースであったり、資格試験が含まれます。それらを当団体のウェブサイトにて紹介しております。我々としては、一般社団法人ですし、特にどこの学校のこのプログラムはいいよという推奨をするというよりは、中立的立場に立って一覧を見せるということだけでも意味があるんじゃないかということでこのようなアプローチをとっております。この後、実例を御紹介します。
 
 2つ目の柱は、それに伴う②体験談ですね。実際にそういったプログラムを経験してみて、サステナブルファイナンスの促進であるとか、あるいは、企業側にいるんだけれども、サステナブルファイナンスを学んだことで何か貢献ができたという実例について、生の声を紹介していくというブログがあります。
 
 そして、3つ目が、我々はそもそも、科学と金融の間で資金循環が足りてないという課題感から出発していますので、こういったサステナブルファイナンス推進に向けて研さんを積む方々、あるいは、研究に取り組む方たちを応援する目的で、我々の活動費の中から③研究補助費という奨学金のようなものを御提供しようということも併せて考えています。
 
 こちらが実際のウェブサイトになりまして、少しお見せしたいんですけれども、こちらが実際のページになりますが、Sustainable Finance Human Capitalということで冠をうたっております。ウェブ上では①情報ライブラリー、そして、③スポンサーシッププログラム、②ブログという形になっているんです。今日のお話は①情報ライブラリーについて、
ここを少し御紹介したいと思います。リンクをクリックすると別のページにとんで、こちらに実際に金融庁が作ってくださった人材育成のためのスキルマップというものを掲げました。これは大変よくまとまっていいものだというふうに思いましたので、こちらにある9つの視点を、実際にある世界のプログラムに当てはめ、右側のほうに、どのプログラムがどんなところに訴求しているのかという一覧表を作ってみました。
 
 これは我々知見に基づいたある程度主観の入ったものですが、提供されている情報を読み込んできていますので、正確性という意味ではこれからということになります。ただ意義深いのは、一旦世界を見ると、130ぐらいのプログラムが大学ですとか検定機関が既に展開されているという点です。日本のプログラムももちろんございますので、それを活用することにより人材育成のすそ野が広がるということで、でここにプログラムのショーケースしている訳です。
 
 ここから読み取れることは、サステナブルファイナンスの側での学びももちろんたくさん提供されていますし、それを進めていく、先ほどもお話にあった価値創造のほう、企業の価値創造にサステナビリティがどう貢献するかというのをマネジメント層が考えていくためのプログラムみたいなものも多数あって、この2つの学びが接続することで、これがより一体となって前に進むのであろうというふうに思っております。
 
 以上、私のほうから紹介になります。
 
【水口座長】  早速、藤井さんからお手が挙がっていますので、藤井さん、コメントいただいてもいいでしょうか。
 
【藤井メンバー】  小野塚さん、ありがとうございます。小野塚さんのプレゼンというよりは、人材育成の件ということでよろしいですか。
 
【水口座長】  はい、結構です。
 
【藤井メンバー】  報告書をまとめる上でというコメントになりますけれども、現在、この報告書の人材育成の部分についての作りは、まず、スキルマップを議論しました。これをゴールとした上で、それを補強するためにアンケートを行って、その結果を補強材料として何をしていくべきかという論理構成で、ある意味でスタンダードな作りなのですが、残念ながらといいますか、アンケートの結果がややまちまちであるので、補強材料としてはちょっと弱いというのが今の状況になっていると思います。
 
 例えばで申し上げますと、31ページに不足する分野というところがございますけれども、アンケートの結果として、不足しているかどうか把握していないという回答が37%いる。そもそも、不足しているかしていないかという議論の前段階にあるということが出ています。
 
 次に、その次の32ページで、どこでどのように人材不足を補いますかというところで言いますと、報告書ドラフトでは中途採用について言及があるんですが、アンケート結果は、中途採用はずっと下になっていまして、必ずしも中途採用に期待していないという結果になっております。では、仮に中途採用とする場合に望ましいのはどこかというアンケートの回答はページの右側ですけれども、上位に上がってくるのは、同業他社で経験を持った人という答えになっています。
 
 さらに、33ページのところを見ますと、育成方法というところに、社内研修あるいは業界団体の研修がトップに上がっていって、報告書にある資格取得は実は低いという結果になっています。
 
 このようにアンケート結果と今の報告書のドラフトの記載のトーンが若干ミスマッチになっていまして、報告書をまとめるという点で言いますと、アンケートを材料にするのであれば、まずは丁寧に書き分ける必要があると思います。
 
さらにそれ以前に、このアンケートの結果を深読みすると何が見えてくるかも考える必要があると思います。
 
 そもそもスキルマップの中のまとめというのは、知見と実践とソフトスキル、これが3点セットになっています。ソフトスキルというのは、ある意味で組織汎用的なものですので、これを除くと、知見と実践。そうすると、アンケートの結果は、確かに知見と実践を、この問題の緊急性からして即戦力で欲しい、という結果になっていることが見えてきます。それが社内研修であったり、あるいは、他社であれば、同業他社で経験を持っている人が欲しい、というのがアンケートから読み取れる回答結果だと思います。
 
 一方で、サステナブルファイナンスあるいはESGの重要性からすると、長期的な資格取得であるとか、大学とのコラボといったことも確かに重要でして、この人材育成については、金融機関が迫られている即効力としての知見と実践という課題と、社会としてサステナブルファイナンス等継続教育のかたちでサポートしていかないといけない長期的な課題という両方を同時に進めないといけない、ということを明確に記載したほうがいいと思います。
 
 それによって、大学での連携、資格取得といったときに、金融機関の人間が、いや、それはそれでいいことだけど、足元は即戦力が必要なので同業他社、となってしまっては、報告書の目的と、現場の対応が異なるという結果を生みますので、知見と実践の組合せという即効性・即戦力の部分と、長期的な教育、啓蒙といった、2つの大きな課題を明確にした上で、これに対してはこれですという作りにされたほうが報告書としては恐らく読みやすいと思いますし、より刺さるといいますか、趣旨が分かりやすくなるというふうに思いましたのでコメントしました。
 
【水口座長】  ありがとうございます。アプリオリな結論に飛びつくんじゃなくて、きちんとアンケートの結果を尊重しなさい、その上で分析をせよということかと思いました。ありがとうございました。
 
 では、手塚さん、お願いします。
 
【手塚メンバー】  ありがとうございます。実務の立場でお話しさせていただきます。
 
 私自身は、話がどうしても気候変動に集中してしまうので、特定のケースということでお聞きいただきたいと思うんですけれども。私自身、TCFDコンソーシアム設立から関わっておりまして、企画委員会のメンバー、それから情報開示ワーキング・グループの座長というのをやっているんですけれども、あのTCFDコンソーシアムというのは面白い場でして、実務者の集まりなんです。しかも、金融機関と事業会社が集まって、悩んでいろいろなことをどうやってやったらいいかということをこの3年間やってきている場です。
 
 その中で、今、何が大きな課題になっているかというと、コーポレートガバナンス・コードの改訂によって、物すごい数の企業がTCFD開示をせねばならないという状況になっている中で、どうして手をつけていいか分からない。
 
 TCFDコンソーシアムは毎年、グリーン投資ガイダンスというのを改訂して、バージョン3.0というのが出来ていますけれども、要は、ムービーングターゲットであるTCFDでどうすべきかということのマニュアルまでは作っています。ただ、マニュアルを読んでもやっぱり分からないというのが実態だと思うので、そういう企業の声がいっぱい上がってきている中で、先行してやっている企業が集まっているのがTCFDコンソーシアムであったがゆえに、皆さんここに入ってきていろいろなことを聞いてくるんですけれども、どうやってその人材を育成するか、あるいは、TCFDにそった報告書を書ける人間をつくるかというのは物すごく大きなテーマになっています。
 
 今、TCFDコンソーシアムの中で何をやろうとしているかというと、この1年ぐらい議論していますのは、点ではなくて面で人材を育てていかなきゃいけないんでしょうということです。先ず喫緊の課題は、来年度からTCFD合意して開示をしなきゃいけない人のために、初年度開示企業の人材育成のプログラム。これは本当にマニュアルに近い、どうやってマニュアルを読んで、どうやって手をつけていいかというところからやりましょうというのを、要は、初級編というのをやる。
 
 ただし、これだけやっていると、実はそういう人材だけが企業の中にいても孤立します。経営とくっついてない限り、TCFDは基本的に経営戦略と開示を結びつけたコンセプトなので、前に行きませんねと。今度、経営企画とか財務企画みたいな人、こういう人たちに同じことが分かる人をつくらなきゃいけないということで、サステナビリティ経営人材育成プログラムというのも作らねばならないだろうと。
 
 さらに、その人たちが言っていることをちゃんと理解して取締役会で判断する経営人材も必要でしょうということで、経営層向けのプログラムという3段階のプログラムをTCFDコンソーシアムの中で、つまり、これはニーズから来ている話なんですけれども、何か設計していかなきゃいけないんじゃないのかという議論になって、少なくとも初年度開示プログラムに関しては、一部、今、試行的に始めているという状況で、2番目の経営人材とか経営層向けというのは、だんだんニーズのクオリティーが高くなってきますので、どうやったらいいんだろうということを伊藤先生なんかとも一緒に議論しているという状況にあります。
 
 なので、紹介いただいたアンケートでも個別人材のような話なんですけれども、人材群をどうやってつくるかという話が重要なんじゃないのかなと思います。今申し上げたように、1企業の中に1人だけとか2人だけそれが分かっている人材がいても機能しない。多分、同業他社から分かっている人が欲しいというのは、金融というものが分かっていることが大前提で、それから、活動できる人が必要だからそういうことをおっしゃっている企業が多いんじゃないのかなと思うんですけれども。逆に言うと、企業の中にそれが分かっている経営層も必要だということだろうと思います。
 
 と同時に、もう一つ申し上げることがあるとすると、ラウンドテーブルというのをTCFDコンソーシアムでやっているんです。これは何かというと、開示側と評価側の金融機関と事業会社のメンバーが集まって疑似エンゲージメントみたいなことをやっています。個別の企業のエンゲージメントをやる前に、どういうことを開示するのがいいんでしょうか、何を見られているんですか、企業側は何を開示するのが難しいんですかということを、ある意味、個別の事象を抜きにして議論をして、それぞれ4社ずつぐらい集まって10人ぐらいで議論をするというような場をやって、これは非常に好評なんです。
 
 なぜかというと、これは実際に開示をする前の段階の練習になって、模擬試験みたいな世界です。採点する側も答案を書く側もそれぞれ、どこまでやったらいいかという相場感みたいなことを非常によく理解できた上で持ち帰って、じゃあ、どこまでやりましょうかということが議論できるようになる。
 
 これも最初のうちはテスト的にやっていたんですけれども、毎年、ここに参加したいという企業が募集人数以上に集まっていて、繰り返しやられているということになっていますので、ぜひこういうものも、プログラムとしてこのサステナブルファイナンスの世界でもやっていただけるといいのかなという気がいたします。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。個別人材じゃなくて人材層が必要だ、人材群が必要だということですね。TCFDだけじゃなくてサステナブルファイナンス全体がそうなのかなと思いました。
 
 さて、時間にはなっているんですが、お手が挙がっていますので、井口様、岸上さん、吉高さんにはお話をいただいて終了と思っていますが、それで大丈夫ですかね。ほかに俺は絶対言いたいぞという方がいれば、今手を挙げてください。では、井口さん、岸上さん、吉高さんの順番で行きたいと思います。
 
【井口メンバー】  すいません。簡単に、と言いつつ、1つだけ、手塚さんがさっきおっしゃったポイントに、私も利用者としてコメントしたいんですが、まさにおっしゃったように、将来の技術の姿を示していただける企業さんは多いんですけれども、本当に知りたいのは、そこから金融につなげて、どれぐらいお金が必要になって、将来どんなバランスシートになっているのかということとなります。個別企業ではあまりこのような開示はないので、確かに、そういうガイダンスがあれば、安心してみんな投資できるようなると思うので、そういったガイダンスは非常に重要かなと思っております。
 
 あと、サステナブル人材の教育のところなんですけれども、各主体によって異なるとは思いますが、例えば、JICPAさんもすごくいいプログラムを作っていらっしゃると思います。ということで、主体によって違うとは思うんですけれども、利用者の観点で考えますと、先ほど藤井さんからお話がありましたように、基礎的なところというのが非常に重要と思っていますが、現状、どちらかというと教育プログラムは知見と実践に偏っているところがあると思っています。
 
 これには原因があって、そういう基礎的なところを教える土台になるものがなかったということがあると思います。しかし、ISSBの基準が出てきたということで、例えば、今まで利用者が、財務諸表を見て理解して、それで財務分析していくということのサステナビリティ版で、ISSBとかSSBJの基準に基づいた開示を見て、それを理解して投資判断につなげるということもできるようになってくると思います。そういう意味では、比較的、基礎的な教育というのもやりやすくなってきているかなと思いますので、こういった取組というのも今後必要なってくるのかなと思っています。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では、岸上さん、お願いします。
 
【岸上メンバー】  事務局資料の31ページで、先ほども言及があったと思いますが、人材が不足しているか把握していないと回答した機関がESG課題、知見、実践においても4割近くという中で、特定の課題や知見に意見が言えている組織と、そもそもそこが必要かどうか分かっていない組織というところでレベル感があるかと思います。把握できてない機関がそもそもどうして取り組むことが大事なのかというところを共有できるような機会も必要なのではないかと思いました。そこに関する言及も報告書の中にもあったほうがよいのではないかと思いました。
 
 もう一つ、知見、実践のほうですが、確かに、総数で言いますとインパクトファイナンス等が出ていると思いますが、最も不足していると回答した機関が最も多い項目として、海外のサステナブルファイナンスに関わる規制や政策の動向というのがあるかと思います。こちらに関しましては、恐らく皆さんそれぞれで大変な思いをして海外の動向を追っていらっしゃるかと思いますので、例えば、金融庁が各シンクタンクの方々と協力してなど、より一括して発信するなど、具体的なアクションとして行いやすいのではないかなと思いましたので、御検討いただければと思います。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では、吉高さん、お願いします。
 
【吉高メンバー】  簡単になんですけれども、事務局資料で最後のほうに資格試験のリストがたくさんございまして、多分、今、一番早くできる人材づくりが資格だと思って、みずほさんも当グループでもやっています。
 
 今のリストの中で、なかなかどれがよいと金融庁でお勧めはできないと思うんですが、例えば、年何回受けられるとか、随時受けられるかによって使い勝手が違ってきます。もう少しどういったタイプの人はどういう資格が向いているぐらいの整理がないと、このリストをだされても何をやっていいかちょっと分からない。もう少し分かりやすくしていただけると大変いいと思います。ありがとうございます。
 
【水口座長】  もうちょっと親切に。ありがとうございます。
 
 それでは、そろそろ時間となりました。この次ある方もあると思いますが。最後に、では、中島さん、コメントいただければと思います。
 
【中島金融庁長官】  本当に3年前から、僕は立ち上げのときから関わってきて、ここまでよく続いたし、ますますテーマが広がっているなというふうに思っています。特に今年は、日本はG7の議長国ということもあって、このサステナブルファイナンスも、今までどちらかというと、ヨーロッパのまさに海外はどうなっているんだみたいなのを追っていたのを、むしろ日本から何が発信できるんだということで、具体的には、ISSBの開示基準なんかも日本が1番にサポートしているんだと宣言した上で、この次は人的資本、これは岸田政権が一番取り組んでいますので、このサステナビリティの上でも人的資本が大事だということをかなり言って入れてもらった。
 
 それから、日本のまさに今の産業界の状況を踏まえて、トランジション・ファイナンスが大事なんだということも、これも広島のサミットの中にも入れることができたというのは、それなりに成果も上がっているし、我々としては、その背景としては、こういう場での議論でいろいろな状況が分かっていたので、自信を持って推すことができたんじゃないかなと思っています。
 
 今日聞いていて、難しいのは政府の役割というところ。本当に我々もどうしたらいいのかというのは常に悩んでいるところで、ややもすると、金融庁がやると規制して監督したくなってしまうんです。そういうところでも必ずしもないんじゃないか。むしろ民間の動きにリアルタイムでどう応えて、我々はその環境整備、ある意味、標準化が必要なところは標準化をするし、むしろ促進すべきところ、こういうところは大事なんだよみたいな意見発信をしていくというのが今求められているのかなということで、まだこの三次報告書の議論はこれからも続くと思いますので、いろいろ御意見いただければと思います。どうもありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 一言だけ最後に。というわけで、御協力いただきましてありがとうございました。なかなか、議論すべきことが多く、時間が足りなく、あまり皆さんに十分に御発言いただけなくて申し訳なかったのですが、今日の意見で言い足りなかったこと、特に報告書をこうすべきということについて何かございましたら、この後、メールで御連絡をいただければと思います。
 
 私が今日感じたことは、これだけ多くの方がいて2時間での会議というのは短過ぎるし、年に4回も少な過ぎる。一度やっぱり合宿でもして、徹底的に討論してもらわないことにはしようがないのかなということを今つくづく感じましたので、ぜひ合宿企画をしたいと思いますので、御協力いただければと思います。
 
 最後、事務連絡を。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  次回、6月22日の10時になります。報告書は修正して事前にお配りしたいと思いますので、時間が足りず御発言ができなかった等の場合には、ぜひ御連絡をいただければと思います。ありがとうございます。
 
【水口座長】  では、本日はこれにて終了したいと思います。お疲れさまでした。ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 
お問い合わせ先

総合政策課サステナブルファイナンス推進室

03-3506-6000(代表)(内線 2918、2893、2770)

サイトマップ

ページの先頭に戻る