「サステナブルファイナンス有識者会議」(第20回)議事録

日時:令和5年12月21日(木曜日)10時00分~12時00分
 
【水口座長】  皆さん、おはようございます。只今より、サステナブルファイナンス有識者会議(第20回)を開催したいと思います。御多用のところ御参集いただきましてありがとうございます。
 
 本日は、最初に、先日開催されましたCOP28について、御参加された皆様から御感想などをいただく時間を少し取らせていただければと。その後に、まず前回のまとめと追加の御意見をいただき、その後、本日の主要な議題であります市場機能の発揮について議論をしていければと思います。
 
 それでは、最初に、先日ドバイで開催されましたCOP28につきまして、御参加された方が多数おられるのかなと思いますので、ぜひ簡単にですけれども、コメント、御感想などいただければと思います。
 
 まず、高村先生がいらっしゃっていたと思いますが、高村先生、突然ですけれども何かコメントいただいてもよろしいですか。
 
【高村メンバー】  水口先生、どうもありがとうございます。COP28に、ドバイのほうに参加をしておりました。COP28に先駆けてWBCSDの会合が持たれ、当然GFANZの加盟の金融機関の皆様も多く参加されていまして、特に日本企業の経営層の方を含めて、日本から企業の方が、3桁の後半だと思いますけれども、参加されていたと思います。
 
 COP28の合意はもう既に報道がされていると思いますけれども、30年までに再生可能エネルギーの設備容量を、現在の2022年が史上最高の導入量ですけれども、しかしそれを30年時限で3倍にする、あるいはエネルギー効率の改善を、現在年2%のところを30年までに年4%まで引き上げるといった、これはIEA、それから国際再生可能エネルギー機関の30年、50年、ネットゼロの予測に基づくものですけれども、こうした方向性が示されるとともに、こちらの方がメディアでは報道されていましたが、エネルギーシステムにおける脱化石燃料化という方向、化石燃料からの脱却という方向性が示されております。
 
 日本も含めて25年に35年目標を出すことが推奨されていまして、これから恐らく国の中でも新しい削減目標についての議論が始まると思いますけれども、COP28の中でこの合意ができた後に聞かれたもう一つのメッセージは、こうした1.5度目標に向かう方向性を金融がどういうふうに受け止めるのかということは多く声が聞かれました。そういう意味で、国の削減目標、政策の議論にこうした合意をどのように踏まえて金融が行動されるのかが注目されていると思います。
 
 以上です。ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では手塚さん、お願いします。
 
【手塚メンバー】  JFEスチールの手塚です。私、経団連の国際環境戦略ワーキング座長の立場で、8日間ほどCOPの会場に行ってまいりました。COPそのものはだんだんと交渉の場というよりはエキスポに近い状況になって、様々な企業がいろんな新しい技術展示とかパネルとかを出されていて、非常に興味深い場だったなと思います。
 
 ただ交渉のほうの結論は、実はいろいろ報道はされていますけれども、細部にいっぱい神が宿っておりまして、私の観点は、実は経産省の方とも御相談して、ほぼその見方で間違いないということは確認取ったんですけれども、日本の活躍の場が非常に広がるような形の合意になっています。グローバルストックテイクの合意文書の中にパラ28というのがあって、要は世界の脱炭素加速に向けて、グローバルに皆さんこういうことにコントリビュートしてくださいということがコールオンされているんです。その中に書いてある項目というのが(a)から(h)まで項目が8つ並んでいるんですけれども、この中に石炭の話とかは大分注目されて報道とかされているんですけれども、大きなところでは、ゼロあるいはローカーボンエミッションのテクノロジーとしてこういうものを広げていきましょうというところに、もちろん再生可能エネルギーは書いてあるんですが、その後ろにNuclearとありまして、それからCarbon Capture and Utilization and Storage(CCUS)が挙げられています。それから、ハイドロゲン、水素が書いてあるんですけれども、実はゼロカーボンハイドロジェンだけではなくてローカーボンハイドロジェンが入っている。つまり、ここではグリーン水素とかブルー水素だけではなくてブラウンを含めて、とにかく削減に寄与する技術はみんなやりましょうと入っているんです。
 
 それから、後ろのほうに、自動車もゼロエミッションビークルだけではなくてローエミッションビークル、つまりハイブリッドやプラグインハイブリッドも含めて普及をさせていかなければやっぱり間に合わないとされています。それから、パラ29というところには、トランジションフューエルという概念が出ていまして、これが何を意味するかは実は明確に書いてないんですけれども、各国が脱炭素化を進めていくに当たって、エネルギーセキュリティーに寄与する、そういうトランジションフューエルというのが必要だというか、トランジションフューエルがエネルギーセキュリティーを担保しながら脱炭素をすることに貢献するという文書が入っています。
 
 つまり、ややもすると太陽光、風力、それからEVといった明らかにゼロエミッションの技術であると言われているものに限らず、必ずしもゼロカーボンではない様々なローカーボンテクノロジーであるものも全て世界のグローバルな削減に向けて貢献する技術なので、ぜひ皆さんが協力して世界的に広めましょうという文章になっている。これはある意味、日本の技術のショーケースみたいなものなので、ぜひこの分野、日本企業もいろいろ貢献できると思いますし、ファイナンスの世界でも、タクソノミといってえり好みをする話があるんですけれども、えり好みをせずに広い分野で世界的に貢献できる、脱炭素化、あるいは低炭素化に向けて貢献できるものにどんどんファイナンスがついていくということが重要になってくんじゃないのかな、私の解釈はそういうふうに見ています。
 
【水口座長】  ありがとうございました。なかなか普通の新聞報道では出てこない話題をいただきました。
 
【手塚メンバー】  報道でなぜかこういうところが落とされてしまうんですけれども、よく読むとローカーボンとか、ヴァリアスパスウェイ、いろんな様々な道があるから一直線にはいきませんということも書いてあります。各国それでもやりましょうと。
 
【水口座長】  ありがとうございました。ほかに行かれた方。鳥海さん、まずお願いします。
 
【鳥海メンバー】  ありがとうございます。野村グループの鳥海でございます。
 
 私自身が行ったのではないんですが、私のチームメンバーがジャパンパビリオンでパネルをやっておりました。1人はGXリーグで経営促進ワーキンググループの幹事をやっているものですから、テーマとしては、今、手塚さんおっしゃっていただいた日本企業の脱炭素、あるいは低炭素に向けた技術をどう評価するかということで、削減貢献量を測れないかというテーマで、実際の活用事例というものをプレゼンさせていただきました。
 
 あと野村アセットマネジメントからも1人登壇しておりまして、投資、まさにサステナブルファイナンスですけれども、投資家の視点から、削減貢献量というのを今、測る取組をしているんですけれども、そういった形で金融の世界からも、技術的に日本がしていけるところというのをサポートできないかということで、パネルをやらせていただきました。
 
 当初、少しグリーンウォッシング的なところとかの批判が来るんじゃないかですとか、削減貢献量を推していくことについて若干オクワードな面もあったんですけれども、終わってみて参加者に聞いたところ、そこにいらした参加者の方からもかなり質問も出て、好意的に受け取られていたというふうに私も聞いております。共有させていただきました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。では吉高さん、今年も行かれたんですよね。
 
【吉高メンバー】  ありがとうございます。今年は先ほど手塚さんがおっしゃったように、ドバイ万博の跡地を使っていたので、昨年まで過去最高4万人登録だったのが、今回11万人の登録だったというふうに聞いておりまして、おっしゃるとおり今までとは全く違う様相になってきていると感じております。
 
 先ほどジャパンパビリオンの話がありましたけれども、私は後半の週に行ったんですが、ある方が、日本人か?といって外国の方から、ジャパンパビリオンでの日本の技術がすばらしいということで声かけられたと言っていて、かえって、エキスポということでは、日本にとってはアピールにはなっていたのではないかなと思います。技術をアピールしているパビリオンはあまりないので。ただ、途上国のパビリオンでも技術を展示するようになってきたので、日本も今後は負けてはいられないと思った次第です。
 
 12月4日がファイナンスデーということで、日本からも多くの金融機関が入っていたと思うんですが、GFANZでも動きがありまして、例えばUAEの国際金融センターとともにグローバルクライメートファイナンスセンターというのをつくる、それから、ネットゼロのエクスポートクレジットエージェンシーアライアンスという、レース・ツー・ゼロのキャンペーンをパートナーとした民間金融と貿易に関係する協働みたいな動きがあります。やはり貿易に関しては、今後は、金融機関は注視しなくてはいけないと感じました。
 
 それから、Global Capacity Coalition、これもGFANZ、NGFS、ISSBなどが関わっている。多分金融庁のほうで把握されていると思うんですが、やはりこういった動きを民間金融機関とシェアするべきではないかと思っております。
 
 前半は日本の金融機関が多く行き帰ってしまわれたと思うんですけれども、私が行きました後半は自然資本、生物多様性系のイニシアチブが多かったと感じております。例えば、米国がUAEと組んだ農業系のファンドも拡大しておりますし、自然資本やTNFDに対するディスカッションも多かったと思っております。
 
 最後に、若者が日本から来ておりまして、様々な登壇していたと聞いていました。彼らによると、日本、アジアからのユースが少ないと嘆いておりました。こちらでもユースとの対話がありますけれども、日本のユースがCOPのような国際の場にもっと行くようになる支援があると、よいと思っています。
 
 さらに、交渉のほうでもファイナンスについては大きな動きがございました。850億の新たな気候ファイナンスをコミットしていくということ、気候資金、ALTERRAというのが立ち上がりまして、UAE、ブラックロックなどがパートナーとして大きなファンドが立ち上がっていますし、ロスダメも基金ができています。
 
 ブルーゾーンという政府交渉の会議場以外にグリーンゾーンという一般参加ができるエリアがあり、そこにクライメートファイナンスという大きなパビリオンがありまして、イスラム金融が大きく動いているというのが一番感じました。マネーとイノベーションの力が中東ではグリーンエネルギー分野に相当に動いていて、日本のGXも、もっと早めていく必要があると感じました。
 
 以上でございます。ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。それでは池田さん、お願いします。
 
【池田CSFO】  事務局の立場ですが、COPにも行ってきましたので、私の印象を御紹介させていただきます。金融庁はファイナンスデーを中心にCOPの、手塚さんが言うところのエキスポ的なほうに主に参加してきましたけれども、ファイナンスデーを中心に私が受けた印象は、1つは、トランジション、トランジション・ファイナンス、トランジション・プランといった関係のセミナーやワークショップが多かったということです。吉高さんからGFANZの話もありましたけれども、GFANZのイベントも様々ありましたが、トランジション・ファイナンス関連の話がかなりファイナンスサイドで進めていくべきこととして認識されている印象です。
 
 その文脈の中で、日本もジャパンパビリオンでそれに関係したイベントをやっていまして、私も1つでモデレートさせていただきましたが、同時にシンガポールがこのトランジション・ファイナンスについてメッセージを強く出していたなという印象がありまして、その結果として、いろいろ意見はあると思いますが、やはりアジアである種、勃興しつつあるといいますか、推進されているトランジション・ファイナンスの考え方をもっと注目していくべきだといった声も、ヨーロッパの一部関係者からは聞かれました。
 
 そういう意味で、日本もこれまである種旗を振ってきたわけですが、よりこれをイスラム金融のような、吉高さんがおっしゃられたところにどのように繋げるかとか、そういう視野を持って、グローバルに採用される枠組みとしてどのように整理していくかという視点も、日本として必要かと思った次第です。
 
 もう一つは、特に最近カーボンクレジットの、特にボランタリーカーボンマーケットに関するセミナーが、これはファイナンス関係だけではなく、どちらかというとこれまで化石燃料関係の会社が出しているブースやパビリオンでも結構色々と話題になっていた印象であります。私が直接参加したのは、IOSCOがちょうどこのCOPのタイミングでボランタリーカーボンマーケットについての報告書のコンサルテーションを始めたということで、それを扱うワークショップだったんですけれども、やはり参加者の数を見ても関心が高いと思いました。
 
 一方で、ボランタリーカーボンマーケットがどのようにコンプライアンスマーケットと繋がるのか、各国別の仕組みをどのようにグローバルの枠組みに繋げるのかなど、課題は多いという認識は引き続き持たれている感じもしましたけれども、ここをうまく動かしていかないと、なかなか気候対策が進んでいかないという認識の下に、多くの関係者がここにリソースを注いでいる印象を持った次第であります。
 
 私からは以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。では足達さん、お願いします。
 
【足達メンバー】  私自身はCOP28に出席しておりませんけれども、私の属する金融グループからも報告は受けています。1つ議事録に残しておきたいという意味で発言をするのは、今、報道では、「化石燃料からの脱却」という言葉があちこちで使われていることに関してです。原文はTransitioning away from fossil fuels。これをもし「脱却」と訳すなら、日本のトランジション・ファイナンスは「脱却金融」と訳さないといけないことになります。今回の成果文書は、「化石燃料からの移行」が盛り込まれたというふうに訳さなければいけないのではないか。最後のエディティングの交渉に参加した方に伺わなければ分からないニュアンスですが、何か日本の報道と最後の成果文書の中身にずれがあるような気がしてならない。このことを、ちょっと皆さんに問題提起をしたいと思います。どなたか、もし回答をいただける方がおれば有難い。
 
【手塚メンバー】  昨日、大きな会合で、経済産業省の審議官の方がCOPの報告というのを公の場でされましたけれども、その際に使われた翻訳語は移行でした。
 
【足達メンバー】  なるほど。
 
【水口座長】  Transitioning awayを移行と訳す?
 
【手塚メンバー】  移行。化石燃料からの移行という表現をされていて、これでいいんですかと実は質問したんですけれども、環境省と経産省と相談して、これは移行というふうに表現することにしましたと。
 
【水口座長】  なかなか奥の深いお話ですね。ほかにどなたか御発言される方はおられますか。高村先生。
 
【高村メンバー】  申し訳ありません。先ほど発言させていただいたんですけれども、1つは今、足達さんからあった点で、多分それはTransitioning away from fossil fuelsだけでなく、文章全体を読んだときに、科学と整合的に、かつ2050年のネットゼロを達成するということが書いてあるからだと思います。ですから、単に移行するのではなく、最終ポイントも書いているというところを含意して脱却というふうに訳されていると思います。
 
 2つ目は池田さんが仰った点と重複しますが、やはり移行というのが非常に注目されていたというのは御指摘のとおりだと思います。それは同時に、企業が配置の関係でどういう移行計画をつくるのか、あるいは金融機関が移行計画をどう評価するのかということもまた問われている、そういう問題提起をセッション自身がしているところが幾つか見られたかなと思います。
 
 最後は金融庁さんが仰るかと思いましたけれども、ISSBが12月4日のファイナンスデーにデクラレーションサポートを出したことについても公表しておりまして、64の法域の400の機関・団体から支持を、つまりグローバルなベースラインであるスタンダードについての採用、あるいは利用について制約をするという宣言が出ています。金融庁、SSBJもコミットして、欧州もそうですがASEANの規制機関、基準設定機関が多く支持していると思います。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 ほかによろしいでしょうか。このCOPの話だけでも大変いろいろな示唆をいただいたというふうに思います。この議論も何らかの形で今後、反映していければと思います。
 
 それでは、引き続きまして、前回から少しやり方を変えようということで、前回のまとめを事前にお送りをさせていただいて、前回のまとめをして、少し振り返りの時間を持ちたいと思います。
 
 それでは、人材育成につきまして、それと岸上さんからメールをいただきました進め方の部分も含めて、西田さんから説明いただければと思います。よろしくお願いします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  前回、議論の進め方について、前回のまとめを配ったほうがよいという御意見をいただきました。
 
 事務局資料2ページに、前回のテーマである人材育成のまとめを記載しています。主な御意見として、組織全体として必要な知識が備わっていることが重要で、特に経営層にも着目してはどうか、経営層に限らず、職責を意識したプログラムが、様々な団体が連携すること等により提供されることが重要ではないかというお話があったかと思います。
 
 また、後でリテールの話も出てきますけれども、個人に向けた情報発信や理解醸成がバックグラウンドとしてあった方がいいのではないか、大学院などにおけるサステナブルファイナンスのプログラムをより充実させ、アカデミックな分析や研究を蓄積・充実していく仕組みづくりが期待される、といったご意見をいただいたと思っております。
 
【水口座長】  ちょっと人材の育成のところまでで一旦区切りまして。毎回の議論をそのまま言いっ放しにせずに、ある程度次回にフォローアップをするほうがよいのではないかということで、一度フォローアップの時間を少し取る形でこのような進め方をしております。
 
 それと併せて岸上さんから、資料の準備の仕方についてはもう少し、前回のときにいただいた御意見がそういうことでしたので、メールでもいただいておりますけれども、そこも含めて岸上さんから補足のコメントをいただければと思いますが、いかがでしょう。
 
【岸上メンバー】  ありがとうございます。そうしましたら、まずまとめについてなんですけれども、やはり最終的なエッセンスを全員が共通認識であることが重要かなと思いましたので、入れていただいてよかったと個人的に思っております。
 
 その上で1つコメントですけれども、これを見て改めてですが、たしか皆様から、howではなくwhyというところですとか、解のない問いと向き合っていくというところの重要性に関して、複数意見があったかと思いますので、まとめの中に入れてもいいのではないかと思いました。
 
 進行の仕方に関してですけれども、前回、当日に事務局で全て用意いただいた上での議論というよりも、前々の段階で要点を相談いただいて、そこにインプットをして、それから当日の資料づくりというところで貢献できないかという話だったと思いますが、そこに関してもし何か、今回やってみられてどういった御感想ですとか、実際のところの感触などあればよろしくお願いいたします。
 
【水口座長】  分かりました。じゃあ今の話は後半の議論をするときに、この進め方に関しても、どこにどんな時間がかかったのかということも併せてお話しいただけるということです。
 
 ほかに、まず一旦人材育成の部分について何かコメントとか、御質問とかあればいただきたいと思います。ここはこういうまとめでよろしいでしょうか。林さん、お願いします。
 
【林メンバー】  先ほどちょうど西田さんから、例えば1ポイント目、視点の整備、プログラム等が有効と考えられる、いろんな団体があると思うんですけどというお話があったんですけど、どこどこに期待するとか、民間でやるべきとか、担う組織の明確化をしたほうが次のアクションにつながるかなというふうに、書けないものもあるとは思うんですけど、書ける範囲においては、やっぱり誰が担うのかというところを明確にすべきだというふうに思います。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  人材育成の場合、様々な団体があり、1つの先に限定するのは難しいと思いますけれども、主として想定されるのは、各業界団体のプログラムだと思います。
 
【林メンバー】  「例えば」とか入れるとか。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  そうですね。例えば、日証協や全銀協がこれまで取組まれている内容を、より拡充・深掘りしていき、部署や役職の層に応じたプログラムに深めていくといったことが期待されるといったことかと思います。
 
【林メンバー】  個人に向けた情報発信については、恐らく個人を担当されている証券会社とか、あるいは銀行かも分かりませんけど、あとは当局としてなさることもあるとは思うんですけれども、特にNISAとかいろんなことをこれからやっていく上で、誰が進めていくのかって、多分ここにいらっしゃる方々はイメージあると思うんですけど、ない人もいるという現実もあると思いますので。
 
【水口座長】  長谷川さん、お願いします。
 
【長谷川メンバー】  私も前回オンライン参加だったので、議論を全部追えていないかもしれないのですが、3つ目の「大学及び大学院等のサステナブルファイナンスのプログラム、アカデミックな分析・研究の充実化に向けた働きかけ・支援の仕組みづくりが期待される」というのも、まさに誰がやるのかと疑問に思いました。私自身、教育、人材育成を経団連で担当し、大学と経済界の産学協議会の事務局もしており、そこでリカレント教育や人への投資の一環で、リカレント、リスキリングプログラムのニーズ調査を実施しました。経済界のニーズが高いのはGX、それからサステナブルファイナンスで、既に様々な大学がプログラムを実施しているし、研究も行っていることをアンケート調査で事例収集も含め、把握しました。ただ、各大学がやっています、企業側のニーズも高いですというところまでは分かっても、マッチングが行われないのが一番の課題で、文科省からも、経団連に相談にこられて、文科省がリカレント教育の補助金の予算を取ったので、企業のニーズのある分野のプログラムをぜひ大学にやらせたいと言われるのですが、やはり、個社の企業ニーズはそれぞれ違うので、証券業協会なり全銀協なりの業界団体などが、まとまったニーズを大学側に伝えるなり、何かそういったスキームを動かせないのかと個人的には感じていたので、ここでも主語が誰なのか、といったことを疑問に思いました。
 
【林メンバー】  すみません、ちょっとそれに補足して。金融経済教育推進機構を取り入れたらいいんじゃないですかね。
 
【長谷川メンバー】  なるほど。
 
【水口座長】  誰が何をするのかということですよね。ちょっと余談になりますけれども、大学でこういうプログラムを立ち上げても、やっぱりお客がちゃんと来てくれて、一定の授業料を払っていただきませんと大学としても成り立たないんですけれども、そこのマッチングはなかなか難しいですよね。なので、やっぱり何か仕組みが必要かなという感じが私もいたします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  2点目の主体のところは、まとまったニーズを大学等にもコミュニケーションしていくのは非常に重要な喚起だと思いますが、機構自体は、ESGというよりは金融経済一般を扱うこととしているという理解です。むしろ今回の議論は、例えば、GX、グリーン、脱炭素やトランジションについて、実務的な課題は何か、課題の解決に向けてどのようなアカデミックなサポートが有益なのかどうかということを、対話型で深めていくプロセスや仕組みを考えられないか、そういう御趣旨かと思いますので、その観点から承って検討したいと思います。
 
【水口座長】  ありがとうございます。御趣旨はよく分かります。本当に走りながら考えている状況ですので、追々できるだけ少しずつ、誰が何をするのかということも含めたまとめにしていくようにと思います。
 
 ほか、何かコメントありますか。よろしいでしょうか。
 
 それでは取り急ぎですけれども、先ほどの岸上さんの御意見も含めて、後段の今日の本題でありますけれども、市場機能の発揮のところ、西田さんご説明お願いします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  4ページに、この有識者会議の2つ目の柱であります「市場機能の発揮」を、本日のテーマとして赤枠で囲っています。インパクト投資はもともと黄色に分類していましたが、比較的青のところに馴染むかと思いまして、今回移していますけれども、いずれにしてもマーケットが全体として機能するためのインフラ整備という位置づけです。
 
 5ページは、市場機能の発揮の各取組みについて進捗を記載しています。データ基盤整備として、企業開示データを集約していくことが重要であるが、国際的には、GFANZなどが参画するNZDPUが、COP28でパイロット版を公開しています。それから、金融庁も今年の12月にEDINETのタクソノミを更新しまして、Scope1から3の排出量データをXBRL形式で取得可能に、すなわちマシーンリーダブルな形で提供していくということであります。今後は、データ集約していく民間プラットフォームの拡充、データ品質の向上が重要かと存じます。
 
 機関投資家のサステナビリティに向けた投資の在り方に関しては、資産運用立国の実現に向けてアセットオーナーシップの改革、またPRI in Personにおいても、機関投資家によるPRI署名の方向性を政府からも発信しているなど、性質は様々ですが関連する施策が積み上がっているところかと思います。
 
 個人の投資機会につきましては、まさに今月、「サステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアログ」を設置させていただきました。会議自体は、商品組成の話もありますので、非公表で開催していますが、この有識者会議のメンバーからも岸上委員に参加をいただいています。機関投資家によるサステナビリティ投資は大分進んできていますが、これを個人に提供する場合、プロダクトを通じての投資となりますので、組成の在り方、販売の在り方、伝わりやすい浸透方法といった観点から、マーケット全体で改善すべき点があるかどうか、議論をスタートさせたところです。
 
 4点目、ESG評価機関については、ESGデータを提供する「データ提供機関」と、これを基に企業のESGの取組を評価し、評価結果を提供する「ESG評価機関」があり、これを包含する行動規範を金融庁で策定いたしましたが、先月、2023年11月末時点で21の機関が行動規範に賛同していまして、メジャーな評価機関には相応にご賛同いただいたと思っております。英国やEUでも行動規範または規制をつくる動きが出ていますけれども、日本が先行して対応した形になります。
 
 なお、この行動規範は2回にタイミングを分けていまして、評価は今年の6月、データは来年の6月までの賛同を呼びかけ・とりまとめとしています。現在も含めて継続して賛同を呼びかけているものですが、来年の6月までに、データについても賛同状況を取りまとめていく予定です。また、内容面の検討も併せて、ESG評価が実際どの程度のメソドロジーで行われているかを、企業及び投資家の方に理解をしていただく、十分改善しているかを確認していくことが重要と思っております。なお、15ページには賛同状況の記載がありますが、基本的にはコンプライ・オア・エクスプレインという形で、具体的に何を対応すべきかを一から十まで全て決めるような文章の性質ではなく、それぞれの評価機関が、透明性の確保、利益相反の管理、評価の質の向上等にどのように取り組んでいるかを、自らの実態に応じた幅のある形でよいので工夫して記載する形になっており、各機関によって、非常に具体的に書いている機関もあれば、一般的に記載している機関もあり、こうした内容については賛同状況の取りまとめ状況を見ながら、また精査していく必要があると思っております。
 
 カーボンクレジット市場については、第1回の報告書から論点として記載があったわけですけれども、足元の動きとして、JPXがカーボンクレジットの取引所取引を開始しています。GXリーグにおいても、排出量取引制度の本格稼働を26年度からとしており、排出量取引の制度設計をどのような形で進めていくか、ルールづくりが今まさに議論されているところです。今後、まさに取引が本格化していく分野と思います。22ページに今年の2月に公表されたGX基本方針の記載もご紹介させて頂いています。
 
 最後のインパクト投資は、11月に水口先生や渋澤さんをはじめとする発起人の皆様に、インパクトコンソーシアムの発起会合を開催していただきました。多様な関係者を繋ぐ場、多様性を活かして議論をさらに進めていく場として発起し、今後議論を進めていくものです。
 
 私からの内容上の説明は以上ですが、この資料については、早めに御提示することが重要だということで、今回は会議の8日前に暫定版を配らせていただいたところです。イメージとしては、資料5ページのものだけ先に送付する御趣旨かとは思いましたが、率直に申し上げますと、7ページ以降の資料を作成しつつ行きつ戻りつしてスケジュールを検討する必要があった部分があり、5ページのものを一月前に送るというのは試みましたが厳しいところがございました。ただ、この5ページに相当するものをもう少し早くお配りして、アジェンダの漏れや、議論すべき内容の論点提起をいただくことがこれまでの趣旨かと思いますので、それにつながるような形で更に少し早く送らせていただくとか、または、例えば会議の最後に、次回のテーマの進捗状況を簡単に御説明して、その上で補記すべきテーマや深掘りしたいテーマを事前にいただくといった方法もあるかと思います。
 
【水口座長】  ありがとうございました。なかなか有識者会議の役割として、進捗状況のモニタリング的な部分と、その先の施策といいましょうか、進め方についての議論というのがあって、進捗状況のモニタリングをしていくという趣旨、観点からすると、こういう資料をつくって、ということになる。すると、この資料が3週間、4週間前に出てくるのはなかなか難しいですよねというのはそのとおりだと思います。一方で、だからおっしゃるように、特にこの日に議論すべき論点は何かということは早めに出していただければ、いろいろな議論が準備できるのでは、ということかなと思いました。
 
 すごく議論しなきゃいけない回もあれば、比較的モニタリング中心の回もあるのかもしれませんし、その辺を考えながら、今後進めていければと思いますが、岸上さん、そんな感じでいかがですか。
 
【岸上メンバー】  はい。
 
【水口座長】  それでは、今御説明いただきました内容について、少し順番に御意見も確認をしていきたいと思うんですけれども、資料では2.1から順番に2.2、2.3となっておりまして、ばらばらといただくよりは少し順番に見ていければと思っておりますけれども、まず2.1から2.3のところでしょうかね。ページでいくとデータの基盤整備、機関投資家、そして個人の投資機会のところ、この辺りでもし御意見や御質問があればいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。小野塚さん、お願いします。
 
【小野塚メンバー】  まとめていただいてありがとうございました。私は全体的な質問がありまして、取組状況の評価をするに当たって、何を軸に私たちは評価するべきなのかなというのは、これまで話されたでしょうか。そこのところを教えていただきたくて。というのは、危険かなと思うのは、啓発という意味で、例えばそういった評価機関に対する賛同が多かったという、その機関数をKPIにするのも1つだと思うんですけれども、そこから何をしたことでこの活動が進捗しているとか、効果があったというふうに評価するべきなのかという、軸を少し明確にすることというのは有益なのかなと思ったんですが、これまでそういった議論はしてきましたでしょうか。確認です。
 
【水口座長】  進捗状況を評価する軸というか考え方ですか。
 
【小野塚メンバー】  そうですね。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  評価機関については、評価機関の専門分科会で議論をし、一昨事務年度にこの有識者会議でも議論し設置し報告をもらったものですが、その際、評価機関は特にグローバルなサービス提供を行うものでもありますので、グローバルな機関に賛同してもらうことが重要だと、そういった意味では数も重要ではありますが、ただ行動規範への賛同はプロセスの一環に過ぎず、賛同の結果としてサービス提供の状況がよくなる、透明性がより高まる、企業とのコミュニケーションが改善しているかという点をウォッチしていく必要があるというお話だったかと思います。
 
 このため、こうした状況を単一のKPIで評価していくことはなかなか難しいかもしれませんが、状況を継続的にフォローしていくことが必要であると思います。
 
 先程申し上げました点は、現状はまだ賛同が整ったばかりという状況ですので、内容についてはサービス提供の状況も含めてもう少しお時間をいただいて状況をみていく必要があるのではないかという趣旨を申し上げました。
 
【小野塚メンバー】  ありがとうございます。状況は理解しました。であれば、せっかくなので例えば5ページ目のそれぞれの項目について、プロセスKPIと、最終的に求めることに対するモニタリングの視点みたいなものを一覧表にすることを目指して議論するというのは、皆さんの時間の使い方としていいかなと。それに基づいた上で、例えば評価機関の話であれば、数も1つプロセスKPIとしてあって、それが世界の機関がある程度網羅されたということで1つチェックマークがついた上で、今後数年、事務年度かけてモニタリングしていくというのが次のToDoになっていくという形で、我々有識者会議としては、トピックの網羅性ということに加えて、それぞれの活動状況の内容と進捗と効果みたいなものを図っていくということ。自分たちの活動を振り返る上でもいいのかなと思いましたので、そういった観点からのコメントです。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 私からちょっとだけコメントしますと、御指摘のようにプロセスが進んでいるかどうかを分かるようにする何かKPIがあったほうがいい。そういう項目ってあると思うんですね。一方で、いろいろな論点がありまして、何をしたら進捗したことになるのかということ自体が論点であるという部分もあると思いますので、全てがKPIで構成されるということではないだろうなと。じゃあどういう視点で私たちは最終的にモニタリングすべきなのかという基本的な見方は、社会がサステナブルな社会に向かっているのか、サステナブルファイナンスというものがきちんと根づいて、サステナブルな社会につながる仕組みづくりになっているのか、そういうことなんだろうと思っています。
 
 それが例えば機関投資家であれば、例えばPRIに署名する数が増えればそれでいいのかとか、いろんな議論があろうかと思いますし、データの話もNZDPUができて、じゃあよかったねという話なのか、うまく機能しているというところを見るべきなのか、いろんな見方があろうかと思います。そこも含めて有識者会議で、個別に御指摘をいただくということだと思います。
 
【小野塚メンバー】  ありがとうございます。コメントだけ。それを見極めるためにも、何か一覧表で、どこが空欄になるべきで、どこが埋まるべきなのかというのを見ることが重要かなと思います。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、岸上さん、河本さんの順番でお願いしたいと思います。
 
【岸上メンバー】  ありがとうございます。個人の投資機会の部分までということでしたが、ちょっと関連しているのでインパクトのところと併せてコメントさせていただければと思います。例えば資料の11ページを参照しながら聞いていただければと思いますが、現状、まだそれほどがちがちの定義が日本ではあるわけではないと思いますが、ESG投信の対象が割と絞られているかと思います。一方、ほかの国の例ですと、いろんなグラデーションがあるような形での振り分けがされているかと思います。同様にインパクトのところで、インパクトの基本指針を今まさにパブコメが終わって、策定に向けて検討しているところだと思いますが、こちらのほうも割と厳選されたインパクトファンドのための基本指針の内容になっているかと思いますが、ちょっと気になりましたのが、インパクトのコンソーシアムでは、もっと広がりのあるような関係者ですし、その枠にとどまらないインパクトというところを議論されるのではないかとメンバーを見ながら思ったんですけれども、その辺の整合性が、この基本指針とインパクトのコンソーシアムのところとがあるのかなという点が気になりました。
 
 なぜこの2つを申し上げるかといいますと、恐らくグリーンウォッシングをいろんな意味で避けるために、厳選した定義ですとか投信の指針をつくっていくというところの重要性はある一方で、前回少し議論なりましたIFSIのような、より広い形でサステナビリティに金融システム全体が貢献していくようなところをどう評価していくかというところも一緒に見ていかなければ、ニッチな商品を後押しするだけの仕組みになってしまうためです。特にこの有識者会議では、システム全体を考慮していくというところがあるかと思いましたので、コメントとさせていただきます。
 
【水口座長】  今のコメントは、個人投資家向け投資商品という観点でいくと、投資商品のESG投信の定義があまりにも厳し過ぎると、かえって投資家の選択肢を狭めるのではないかという、こういう話なのかなと思って伺いました。一方で、インパクト投資に関する基本指針とコンソーシアムの話がありました。コンソーシアムと基本指針は必ずしもリンクしてなくて、コンソーシアムの名称は「インパクト」コンソーシアムなんですけど、基本指針は「インパクト投資」の基本的指針でありましてちょっと違うんですが、その議論はまた後半でもさせていただければと思います。
 
 一方で、前段の個人投資商品の定義の話というのは、これは私からのコメントなんですけれども、よく金融機関の方から、ヨーロッパではSFDRの影響で、簡単にサステナブルファイナンスと名のれなくなった。サステナブルファイナンスと言うのは、むしろちょっとリスクがあるので違う呼び方を考えるみたいな話をよく聞くんですけれども、この辺、定義を厳しくすることのメリット・デメリットがあるのかなというのは私も思いました。
 
 そこは我が国としてはどういう理解なのかなというのはいま一つ私もよく分かってないんですけれども、どんなものなんですか。それは厳しくしないほうがいい、という感じですか。
 
【岸上メンバー】  というよりも、システム全体のところも考えていく必要があるのではないかと思いまして、ESG投信の定義づけだけではなく、一般の例えば個人投資家向けの全商品における透明性の高さ、長期視点での運用の仕方、そういったところもシステム全体として見ていくことの重要性も、インパクトにおいてもですけれども、忘れないようにしたほうがいいのではないかなと思いました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 ちょっとその話をいただいた上で、河本さん、そして小野塚さんという順番でいきたいと思います。お願いします。
 
【河本メンバー】  ありがとうございます。全国銀行協会の河本です。データ整備のところは、いろいろなものの信頼性とか質というところに関わってきますので、非常に重要な取組だというふうに理解していて、御紹介いただいたようなグローバルな整備の取組、あるいは国内においても東証でプラットフォームをつくられたりということで、大きなところの整備も進んでいる一方で、やっぱり出どころは中小企業も含めてということなので、そこも含めた整備というのも重要だということで、その観点からの御紹介と、一部お願いみたいなことなんですけれども、以前申し上げたように、中小企業においてもいろいろなサプライチェーンの親企業から、これ出せあれ出せといろんな形で来ていて困っているという話もあるので、標準化という動きを我々も取り組んでいるということで、サステナビリティデータ評価・標準化機構というちょっと長い名前なんですけど、こういう機構を今年の8月に設立しました。これは銀行が数十行加盟していて、金融庁にも賛助会員になっていただいているということで、今、標準的にはこういう項目が共通でやっぱり必要だよね、こういう形でという標準化の議論をしていて、このガイドラインを来年の1月に出そうとしています。
 
 それを出した上では、やはり中小企業にもぜひいろいろ広げていきたいということなので、広げていくに当たっては、いろんな諸団体ですとかにもアプローチしていく必要がありますので、官民の連携と、あとできれば省庁間の連携もぜひお願いしたいところということです。
 
 これを取り組む意義として、データの質が高まるというのはもちろん、中小企業においてデータを出すことの意味に対する意識が高まって、こういう世の中の取組があるからこういうデータを出さなきゃいけない、そうすると、まずこれを出す。それも効率化されるということなんですけれども。その次のステップとしては、その数字を改善するにはということで、そこで改善の取組、こういう設備更新に当たっては、こういうものを中小企業なりにもやっていこうというところで、ファイナンスの話も出てくるかもしれないということで、全国の我々の営業員のそういう相談に乗っていくという意味でのいろいろな裾野も広がっていくし、改善も広がっていくだろうということで、大きな第一歩、二歩になる取組だなと思っているので。
 
 先ほど御紹介した前回の人材育成という観点でも、そういう実践もやりながら、知識も両面で高めていくというところにも大きな基盤になると思っているので、非常に大事な取組だと思っています。ぜひ皆様の御理解とぜひサポートをお願いできればということでございます。
 
 以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。おっしゃるように、中小企業のデータの整備は非常に重要だと思います。
 
 それでは、小野塚さん、そして渋澤さんの順番で行きたいと思います。小野塚さん、お願いします。
 
【小野塚メンバー】  ありがとうございます。先ほどの個人の投資機会のところなんですけれども、ファンドのカテゴリーをつくって、それに見合ったものを設定していくというのは確保できることだと思うんですが、そもそも、この新NISAが始まることによって、体感として、より多くの方が投信とか投資すること、資産形成に目が向いているというのがあります。私もいろいろな業界に足を突っ込んでいることもあって、いろいろな世代とか業種の方から、今後自分の資産形成を考えていきたいんだけれども、投資信託って何ですかとか、どこに口座をつくったらいいですかみたいな、そういうポジティブな流れがあると思うんですね。
 
 なので、これは、サステナブルファイナンスを一般的に後押しするすごくいい機運だと思っていまして、そうすると、ファンドのカテゴリーをつくってそのファンドを設定してというのは1つの流れとしても、資産運用とサステナブルファイナンスとかESGインテグレーションみたいなもう少し大きなテーマから、啓発とか協働というのをやっていくことを後押ししてはいかがかなと思います。
 
 先ほどの状況把握とか、効果のモニタリングというところですと、この辺りは投信協会と親和性の高い分野じゃないかと思います。あるいは、投資顧問協会とか。この会議ではメンバーとなっていないようなので、1つのToDoとして、そういった資産運用の協会とフォローアップをして、ESG投資といういわゆるニッチではないんですが、カテゴリファンドと、それと並行して投資をすること、サステナブルのアングルを踏まえた投資というのはどういうことを各者やっていて、それも全体的に後押しをするんだというコンセプト、あるいは、もう少し言うと、スチュワードシップみたいなことにも啓発をする、こういったところを後押しするという流れをつくっていただいたらいかがかなと思います。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 それでは、渋澤さん、林さん、鳥海さんの順番で行きたいと思います。渋澤さん、お願いします。
 
【渋澤メンバー】  ありがとうございます。先ほど小野塚さんがおっしゃったように、サステナブルファイナンスを、個人投資家が入ることによりサステナブルファイナンスを後押しするということは、そのとおりだと思います。一方、その逆の方面で、サステナブルファイナンスによって新たな個人投資家を貯蓄から投資に促す流れもできると思います。投資は自分のためとしか思っていなかったけれども、サステナブルファイナンスを通じては環境のため、あるいは未来の世代のためという意味が広がる可能性は十分あり得ると私は思います。
 
 ただ、その中で、この有識者会議で共通認識している課題として、安易にサステナブルファイナンス、ESG投資を個人に訴えると、安易思惑で商品が色々と出してしまい、先ほどウォッシングという表現も岸上さんからありましたが、そういうものが増えてしまう可能性があります。ただ基準をぎちぎちと細かく設置すると、それはまた窮屈になってくるという側面もあるので、非常に難しいところです。
 
 私の15年以上個人投資家向けに投資信託を御提供する経験上、個人の方々はサステナブルというテーマにすごく関心あります。それは商品設計というところもあるでしょうが、投資先企業の方々が意識を持って、自分たちのサステナビリティについて一個人投資家に向けてもきちんと対応していただくという姿勢が大事だと思います。
 
 ただ、全ての投資先企業がそのような対応をしていただけるということはないです。一方、多くの企業がそれをやっていただいて、1回そのような接点を投資先企業が体験しますと、リピーターとなって継続していただいています。
 
 そういう意味では企業側の姿勢がすごく大事だと思っています。ただ、先日、サステナ関係の方々との会合での意見交換で、なるほどと思ったことがあります。サステナビリティ部署がいろいろなこの取組を、ステークホルダーの一部である投資家にそれを訴えようとすると、そうするとIR部門が、いやいや、そんな勝手なことしないでくれみたいなという社内の壁の存在です。
 
 ですから、サステナブルファイナンスを広めるという意味では商品設計や金融側の取り組みはもちろんありますが、企業側の意識改革もすごく大事だと思い、そのような表現を提案すべきではないかと思っています。
 
 もう一点は、やはり今年は、PBRというところに焦点が当てられたということはすごく大きな動きだったと思います。一般個人の方々向けにも、PBRがなぜ大事かということのきちんと説明する、要はBというのは見えている、可視化できている財務的な価値であり、PBRが1.0以上というのは将来への成長の期待である。一方でPBRが1.0を割れているということは、財務的な価値と比べて非財務的な価値がマイナスである、つまり、この会社のサステナビリティが問われているというメッセージが資本市場から企業に送られているということです。
 
 ですから、これから設置される金融経済教育推進機構を通じてPBRと見えない価値、非財務的な価値とサステナビリティとの関係性をきちんと整理して、一個人でも分かるような表現に工夫すべきだと思います。もしかすると金融庁のウェブサイトで、そのような内容を上げていただくことが必要でないかと思いましたので、御提案させていただきます。 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。PBR問題。ありがとうございます。
 
 それでは、林さん、鳥海さんの順番で。林さん、お願いします。
 
【林メンバー】  本質的な話ではなくて大変恐縮なんですけども、今、渋澤さんが一個人でも分かるように金融庁さんがとおっしゃったことにも重なるかどうかちょっと分からないんですが。
 
 この10ページ以降に欧州の例、アメリカの例、英国の例が書いてあって、結構詳しく各国あって、日本だけはESGを投資対象にと、ESGが所与のものとして書いてあって、ESGってそもそも何だっけと最近私が悩んでいるから余計に気になるんですが、例えば、この数ページの資料でも、サステナブル投信と言ってみたり、ESG投信と言ってみたり、タイトルがどんどん変わっていて、そこに違いがあるのかどうかも、あるのかもしれないんですけれども、もしかしたら使い分ける理屈があったかどうかも分からないので、それはぜひ資料を作っていただいた金融庁さんにもお伺いしたいんですが。
 
 やっぱり分かりにくさというものが、この投資を進めにくくし、ESGという言葉は使わないというふうに、ESGと書いてあるイベントに出ることすら最近嫌がられているぐらいになってしまっている。サステナビリティという言葉はいいんですよ。そこに何の意味があるのか私は分かりませんけれども、それぐらい政治的なテーマにアメリカではなっている。
 
 そうした中で、我が国として、別にアメリカを、アメリカは全然教師にならないと思いますけれども、そのぐらいヨーロッパではSFDR8条、9条、先ほどの議論であんまりぎゅうぎゅうにするとマーケットで育たないと思う反面、グローバルにはそういう厳格化するトレンドがある中で、我が国の立ち位置というのを1回、サステナブル投信と呼ぶのか、ESG投資と呼ぶのかですらこの資料の中でコンセンサスができてないのではということがよく分かったなと今日は思ったんですけれども、1回議論してもいいかなと思いました。
 
【水口座長】  ありがとうございます。アメリカではESGと言いにくい。
 
【林メンバー】  言いにくいというか、もう言えないんです。
 
【水口座長】  言えない。ヨーロッパではサステナブルファイナンスの定義が厳しい。いろいろ難しい問題があるんですね。
 
 では、鳥海さん、二木さんの順番で行きたいと思います。鳥海さん、お願いします。
 
【鳥海メンバー】  こちらの個人の投資機会というところでディスカスされているのは、大体供給側といいますか商品のお話が多いんですけれども、需要側というか、投資家がどういう状況であって、どういう投資家に対してどういうものをお届けする、あるいはどういう教育金融教育なりをお届けするということを、もう少しターゲティングをはっきりしたほうがいいのかなというふうに思います。
 
 そのときに、じゃあ具体的な根拠があるのかというところが、今、あまりない。例えば意識調査ですと、アンケート調査もまだ足りてないのかなというふうには思っています。日本証券業協会で行っている投資家向けのアンケートですと、まだ7割ぐらいの方がいわゆるESG投資というかサステナブルというのか分かりませんけれども、興味がない無関心層というのがまだ7割に達している。一方で、金融リテラシーの高い人はSDG債とかそういう単語というのは認識している。ただ、その人たちが必ずしも投資しているわけではないというこの状況において、どの層にリーチすべきかということは考えたほうがいいかなと思います。
 
 神戸大学の家森先生が海外のアンケートのこととかを御紹介されていますけれども、例えばスウェーデンの調査だと、グリーンにすごく興味のある人たちはグリーンな商品には投資していない。何ならばグリーンなものに投資してないということだけではなく、そういうコンシャスな方々はそもそも金融取引をしていないという状況、というお話もあります。そういったグリーンコンシャスな方、サステナブルコンシャスな方がそもそも金融取引、リスク資産を持つということに、そこを動かすのか、あるいは、既に投資をしている方々をグリーンコンシャスにするのかとか、そういったこともエビデンスを取りながら対応していかないと、いい商品、いいラベルを貼った商品をつくりましたといっても、お金は回らないのではないかなというふうに思っております。
 
 我々日証協としても、そういったエビデンスを取り、教育をしていくというところは責任あると思っていますので、そこは取り組んでいきたいというふうに思っています。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 私から一言だけコメントすると、おっしゃるように、個人の投資家がESG投信を買いたいと思うかどうか、これはsustainable preferencesと言いまして、今、学術界でもsustainable preferencesが何に依存するのかという研究は少しずつ始まりつつあります。私たちもやっているんですけれども。
 
 リテラシーが高い人ほど選ぶのかという問題と、いわゆる心理的態度と言いまして、さっきのお金に対する心理態度というのは、心理学ではすでに多くの蓄積があるみたいなんですけれども、お金とは汚いものだと思うとか、お金とは成功の証と思うとか、お金はとても必要なものだと思うとか、そういう心理的態度がある。同じように、環境とか社会に対する心理的態度というのも人によって違うようでして、その心理的態度とそれからリテラシーの高さがどう相関するのか、そして、それぞれがsustainable preferencesとどう相関するのかというのは、今ちょうど研究をしているところです。また御紹介できればと思っております。
 
 それでは、二木さん、お願いします。
 
【二木メンバー】  ありがとうございます。データを提供する側から、先ほどの小野塚さん、KPIというところに少しコメントさせていただきますが、絶対的にこういうことをやればサステナブルファイナンスの効用が高まるんだというところは、これは確認しようがないと思うんですよね。
 
 我々、19ページに、先ほど触れていただいたようなESG債のプラットフォーム、これは去年の7月から開設していますが、これは常時、ありがたいことに、毎日300から400ぐらいのページビューをいただいているんですけれども、この手の資料としてはそれなりに使っていただいているという評価はできると思うんですが、定量的にできるのはそこまでで、さらに、その使っていただいている方がこのツールによってどういう効果を得られているのかというのは、定量的に分析するというのは非常に難しくて、あくまでも、いろいろな聞き取り、ヒアリングなんかをする中で、定性的に捉まえて、このツールをもう少し改善していくべきなのか、このままでよいのかということをやっていくのが通常なんだろうなというふうに思うので。
 
 データ提供というか観点からいうと、絶対的に正しいものはなくて、試行錯誤で今やっている状況なので、こういうKPIを設定すればいいということだけではなかなか終わらないのかなというふうに思います。もちろん、設定できるものもあるというふうには思いますけれども、そこは皆さんでいろいろ議論したほうがよろしいかなと思います。
 
【水口座長】  ありがとうございます。まさにインパクトやアウトカムをどう測定するのかというと同じですよね。御指摘のとおりかと思います。
 
 小野塚さん、お願いします。
 
【小野塚メンバー】  いいですか。リアクションだけ。
 
【水口座長】  どうぞ。
 
【小野塚メンバー】  その辺りの心というのはもう十分理解した上で、あえてこのハイレベル会議なので申し上げたというのが背景です。私たちすごく今クリティカルなポイントに日本としても、サステナビリティとしても直面している中で、こういった重要な会議が政府主導で行われているときに、先ほどのCOPでの動き、日本の動きに関して、あるいは、これからのビジネスチャンスに対して、すごくいい機運が高まっているというのもある一方、日本はもっとできるんじゃないかということも言われたというのは聞きました。
 
 なので、さっき言うのはどうかなと思ったので控えていましたけれども、そうすると、我々が、自分たちがどこを目指して何を指針としてやっていくのかということをある程度示すということのリーダーシップが、関わる業界の皆さんとか、果ては世論というところにいい影響を与えていくと思います。そういう意味で発言させていただきました。
 
 完全なものをできることをすることが目的ではなくて、やろうとすることとか、目指す方向性を示してトラックしていくことで世の中動かしていけるチャンスがこの会議体にはあるという期待を込めて発言しましたので、解釈を違わないようにということでリアクションでした。ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。それでは、吉高さん、お願いします。
 
【吉高メンバー】  先ほど林さんのおっしゃっていた言葉についてですけれども、脱炭素についても、ネットゼロとかカーボンニュートラルとかいろいろあって、学生が環境省に質問したら全部同じ意味で、文脈によって使い方が違うと回答していました。新聞でも分かりやすいように使うとか、その場その場で違い、統一が難しいのでは思っております。
 
 個人投資家向けということでは、供給側と購買側の話がありましたが、1点御質問なんですけれども、先日PRIが署名機関に対するリポーティングとアセスメントを来年度はボランタリーにするというニュースがございました。PRI署名機関がリポーティングに対してボランタリーになりますと、アセットマネジャーとアセットオーナーのESGに関する開示は、各国での規制や政策によってきてしまうのではないかなと思います。
 
 実際にアセットオーナー、アセットマネジャーなどの情報開示というものが、EUの場合、SFDR、これは金融機関の情報開示のためにあるかと思いますが、日本はこれについてどのようにしていくべきなのかと思います。
 
 供給側として、投信を設定する方々自身のサステナビリティが評価されてない上に、投信だけのカテゴリーがつくられても、あまり意味のないことなのかなと思い、日本の政策として今後どう考えるべきかと思いました。それについてお聞かせ願いたいと思いましたというのが1点でございます。
 
 それから、購買側ですが、いろいろなクラスがあり、欧米と比べるのとは違い、日本の場合は、欧米と違うマインドセットがあるとおもいます。私は今、東大と慶応で教えていますけれども、18歳で資産運用し始めているものもいます。
 
 個人投資家と1まとめに考えるのではなく、それぞれの需要に対し、例えば、ウェルスマネジメントならば、投資銀行のウェルスマネジメントに、日本の需要がどういう志向であるかを把握し、それをどう変えていかなくてはいけないのか、新NISAを買おうとしている方たちのマインドをどう変えるのか、そういった分析をした上で政策を考えるべきではないかと思っております。
 
 取りあえず、個人投資家についての考えを述べさせていただきました。ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 前段のお話で、PRIは、従来、署名機関に対してのレポーティングは義務だったと思うんですけれども。
 
【足達メンバー】  アメリカの状況の影響で、というところもあるのかと。
 
【水口座長】  アメリカの影響でボランタリーになったんですね。それはすごい。
 
【吉高メンバー】  多分そういうことなのかなとは思いますけれども。どろどろしています。
 
【水口座長】  それは大変大きな問題ですが。
 
【吉高メンバー】  確認はしていないと思います。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  まだどういった内容か精査できていないのですけれども、1週間程前に発表があったかと思いますので、確認してみたいと思っています。
 
【水口座長】  岸上さん、お願いします。
 
【岸上メンバー】  ありがとうございます。小野塚さんがおっしゃっていたKPIとはまた別ですけれども、様々の規範も含めたこの施策が、意図しないネガティブインパクトがないかどうかというのも、モニタリングする価値の1つかと思っておりまして。決して今それが出ているということではないですが、ちょっと具体的に、例えば、ESG評価データの行動規範のところで、そもそも全体的な傾向として、国内のESG評価やデータ提供機関というのが減っている状況だったかと思います。この規範とは関係なく。
 
 そうした状況の中で今見ている中で、例えば、セカンドオピニオンを別として、そういった日本のESG評価データ機関で表明されている方というのが全体としては少ないのではないかなと思います。もちろん、グローバルに適用できるものとしては大変すばらしいと思いますが、こういった規範を作成することが、余計にそういった国内の機関を減らすきっかけになってしまわないかどうか、または、逆に言うと、そういった国内機関も醸成していきたいという方向性があるかどうか。
 
 これは一例ですけれども、各指針や規範によってどういった影響があるかというのも確認していくことも、この会だと重要かなと思いました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。これはネガティブインパクト全体をきちんと見ていきましょうということですね。
 
【岸上メンバー】  そうです。はい。
 
【水口座長】  その例として今挙げていただいたんだと思いますけれども、時間もだんだん進んでまいりましたので少し前に進むことにしまして、今御指摘いただいたESG評価データ機関の部分でもし何か、これは今こういう状況ですという情報提供をいただいただけですので、あまり何もないかもしれませんけれども、もしコメントがあれば。よろしいでしょうか。今、岸上さんからいただいたような、国内の機関を増やしていくつもりがあるのかどうかというのもなかなか、考えていかなければと思いますけれども。施策的に増やしていくというものでもないんですよね、きっと。どうなんでしょうね。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  規範策定から賛同に当たって我々がコミュニケーションさせていただいた感触としましては、両方あられまして、ルールができることで対応しなければならない、そういう意味で対応事項が増えるという面と、金融庁の規範やUKの規範に賛同することにより、一定の品質が確保されていることを他の方に理解していただく・していただきやすくなる、その意味ではサービスが提供しやすくなるという面、両面あるという御意見があったように思います。
 
【水口座長】  規範をはっきりすることによって、仕事がしやすくなることもあるんですかね。
 
 ほかに何かありますか。また戻っていただいても構わないということで、次に、2.4のカーボンクレジット市場の部分についてコメント、御意見、御質問などいただければと思いますが、いかがでしょうか。二木さん、お願いします。
 
【二木メンバー】  まず、事実関係を最初に申し上げたいんですが、カーボンクレジット市場、当社は10月11日に開設しまして、ほぼ毎日、継続的に値段がついているという状況にありまして、先週末までに累積で7万トンぐらいの売買が成立しているということでございます。さらに、市場参加者も今243者おりまして、10月に開設してから比べると3割増しになっておりますので、たくさん御参加いただいているので、それから、去年やっていた試験的な市場に比べれば、売買はかなりできるのではないかなというような評価を今しているということでございます。
 
 ただ、ここにとどまっていてよいのかということもやっぱりあると思いまして、現在、J-クレジットの現物売買ということでありますけれども、今後は、先ほど御紹介ありましたようなGX-ETSのいわゆる超過削減枠、これについても積極的に売買の対象にしていかないと、国が期待しているところは達成しにくいのかなというふうに思っています。
 
 それに加えて、このGX-ETS制度の中では、どうやら年度末に各企業がその年の排出状況を国に報告するという仕組みになっておりますので、期限を定めて行われるいわゆる先物取引との親和性が非常に高いというふうに考えておりますので、24ページの資料の中でもデリバティブ取引の導入ということを書いていただいておりますが、価格の予見性が高いというふうに言われています先物取引、これを入れていくというのが日本のカーボンプライシングを進展させていく上では不可欠ではないかなと。先物取引、非常にネガティブな印象が持たれがちでございますけれども、ここは必須ではないかなと。
 
 欧州でも積極的に行われるように、日本でもそうなればありがたいなというふうに思っています。若干、タイムスパンとしてこれでよいのかという思いは個人的にはあるかなと思います。
 
 以上でございます。
 
【水口座長】  私は素人だからよく分かっていないのですが、先ほどの話は、二木さんのところでこれを、先物取引をされようというお話だと思っていいんですね。
 
【二木メンバー】  そうですね。JPXグループの中にある取引所の1つで、そういう先物も扱わせていただければなと思います。
 
【水口座長】  よろしくお願いします。では、足達さん、お願いします。
 
【足達メンバー】  ありがとうございます。ISOのTC322、サステナブルファイナンスの関係で情報共有をさせていただきます。10月30日に「カーボン市場におけるフィンテック」というアドホックグループの発足が承認されました。これは将来の規格づくりに進んでいくと思います。
 
 日本からはまだエキスパートの選出ができておりません。可能であれば、ぜひ皆さんにお願いしたいと、国内委員長の立場で、お呼びかけもさせていただきたいと思います。次の総会は、来年4月にキプロスで行われますので、そこで多分進展があるのだろうというふうに思います。
 
 ISOの関係では、ちょっと炭素市場、カーボンマーケットから離れますが、11月7日に、日本からDisaster risk financeの国際標準の提案が上がっております。ただ、TC322(サステナブルファイナンス)に提案が上げられるのではなくて、サステナブルシティ・アンド・コミュニティーというまちづくりのTCのほうにこれが上げられました。この有識者会議ではまだ適応ファイナンスの話をほとんどしてないわけなんですけれども、Disaster risk financeは、「適応」につながってくる重要なトピックスかなというふうに思いますので、関連で御紹介をさせていただきました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。では、長谷川さん、お願いします。
 
【長谷川メンバー】  私も情報提供ですが、11月に経団連の金融・資本市場委員会のミッションでシンガポールを訪問し、シンガポール証券取引所を訪問しました。シンガポール証券取引所は、テマセク、DBSやスタンダード・チャータード銀行などの金融機関と協力して、カーボンクレジット取引所CIXや、CRXと呼ばれるカーボンクレジットのプラットフォームを運営しています。
 
 カーボンクレジット市場は今後も非常に成長すると思っており、注力しているが、ガバナンスやインフラ整備には非常に手間暇がかかるし、時間もかかるので、今自分たちがやっているように金融機関や取引所が一丸となって、取組が断片的ではなく、つながりを持ってエコシステムをつくるような形でやっていくのが重要だというコメントがございました。
 
 また、SGXは今、ASEAN取引所とも連携して、アジア全体でのエコシステムをつくりたい、ぜひ日本取引所とも連携していきたいということもおっしゃっていたので共有します。
 
【水口座長】  ありがとうございます。アジア全体と連携するって大事なんですね。ありがとうございました。
 
 ほかにいかがですか。吉高さん、お願いします。
 
【吉高メンバー】  このカーボンクレジットはパリ協定6条に資するものなんですけれども、今回、大きな進展はなかったので、国際的に何か統一的なものが大きくまた動いているということではないと思うんですが、一方で、COPで多くこのカーボンクレジットに対する議論はされていましたというのは、皆さん御案内のとおりです。
 
 実際に海外でボランタリーカーボンクレジットの話が多いです。実際にこのボランタリーカーボンクレジットに関しては、あるレポートによると20%以下しか適格性がない、つまり、質があまり高くないというふうに言われていまして、VCMIのほうでもコアカーボン原則というのをつくっていかに質の高いカーボンクレジットにしていくかが言われていることと、あと、SBTiのほうが短期では使えませんので、SBTi認証を取ろうと思うとカーボンクレジットは使えないということになりますので、そこら辺が今せめぎ合いになっているというふうには、VCMIのところとなっているというのは聞いております。
 
 あとは、先ほどの取引所さんから、たしかマーケットメーカーの制度をつくられたというような話も聞いたので、後でちょっとお聞きしたいんですが、供給のほうがどうしても少ないので、日本の場合どうしても、SBTiとかそれに使えないと企業さんとしても困ると思うので、供給側として、例えば、今、経産省で話されている民間JCMみたいな、そういったものというのは金融機関がどういうふうに取り扱っていけばいいのかというのも、私自身が問題意識を持っておりますところからお話しさせていただきました。
 
 ぜひ取引所さんのほうで、マーケットメーカーのお話が聞きたいと思いますが、いかがでしょうか。
 
【水口座長】  二木さん、いかがでしょうか。
 
【二木メンバー】  マーケットメーカーというのは、今回のこの取引だけ特別ということではなくて、基本的に流動性があまり高くないような商品や銘柄に対しては、仕組みとして入れるというのはまま普通のことかと思います。今回、前回よりも取引が若干増えてきているというのは、その影響も多少あるんだろうというふうに思います。
 
【水口座長】  ありがとうございました。ほかに。手塚さん。
 
【手塚メンバー】  ちょっと発言しようかどうか迷ったんですけれども。この場で言う話かどうかもよく分からないんですが、コメントだけさせていただきます。
 
 このGXリーグ、私どもも参加しておりまして、まさに議論、実際こういうものをどういうふうに設計していくのかという議論にも加わってくるような状況にはなっているんですけれども、一旦このカーボンクレジット市場ができて大きく動き始めると、取引を大きくしたいという誘因がすごく大きくなるんですが、今、実際にはまだ、実排出量が目標よりも少なくできたので、自主的に超過削減枠というのが出てきましたと言って、マーケットに投入されてくるクレジットが足りない状況であることは間違いないですけれども、これは実際に出てきたときに、大きな問題は需要側なんですよね。
 
 今は個々の企業で、SBTiの話も出ていましたけれども、立てた目標を達成するために自社でできない分はクレジットで自主的にオフセットしますという形で使われている、ある意味、皆さん害のない範囲でやられているんですけれども、大きなマーケットにしていくというのは恐らく、EUでやっているようにキャップ・アンド・トレード型、つまり、企業に強制的なキャップがかかっていて、それを達成できなかった人は買いなさいと、ペナルティーとして買いなさいという仕組みが必要であって、ターゲットになるのは基本的に私ども鉄鋼のようなHard-to-Abate産業、つまり、大量排出者がキャップがかかると恐らく莫大な排出権取引事業が発生する。
 
 これをおいしいと思うか思わないかという話なんですけれども、何で大量排出者が目標達成できずに買わなきゃいけない状況にヨーロッパなんかもなったりするというのは、基本的に削減のための限界削減費用が非常に高い、つまり、自分のお金を使って削減をしようと思うと物すごいコストがかかるので、クレジットを買ってきてオフセットしますということで、キャップを満たすという仕組みになるわけです。こういうことでいいんですかということを、皆さんもよく考えていただきたいと思います。
 
 なぜならば、一番大量に排出している人がクレジットでもってオフセットして、はい、これできれいになりましたということを言い始めると、実は、日本の国内にあるそういう大量排出設備が更新されていかないことにつながります。代替手段は何かというと、設備投資をして、新しい低炭素技術に置き換えるか、安いクレジットを買うかということになりますが、そういう排出権需要を本当にGX―ETSが誘発していいのかというのは、頃合いの問題だと思いますし、程度の問題だと思いますけれども、よく考えていただかないと、大量排出に対し厳しい目標を課すことによって需要を誘発して、排出権マーケットが大きくなってよかったねということになりかねない。だけれども、日本の国内のHard-to-Abate産業の設備更新が行われないでずっとそのまま行くというのは、日本の政策的には望ましいことではないんだろうなと思います。
 
 なので、今、GX移行債でいろいろな設備投資を支援いただく、あるいは、研究開発を御支援いただくということもやっているんですけれども、それは実は、安価なクレジットがあるというのはあんまりいいことにならないんですね。経営的に邪魔になってくる可能性がある。安いクレジットが手に入ってしまうというある種逃げ道を用意されるというような形になります。
 
 なので、これはGXリーグの中でも議論しなきゃいけないし、経産省さんとも議論していかなきゃいけない問題ではあるんですけれども、一応、この場で金融の皆さんとも共有させていただきたい。非常に大きなテーマなので、ちょっとお話しさせていただきました。
 
【水口座長】  非常に難しい論点で、おっしゃるとおりの予測になりますよね。おっしゃるように、順番の問題というのもありますから、キャップ・アンド・トレードが入るのが後ろ倒しになっていて、前で進めてくださいということもあるんだと思いますし、キャップのはめ方にもよるんだと思いますので、最後は2050年、ゼロというところまでキャップをはめているならば、理論的には多分どこかでなくなるかもしれませんが。
 
 ちょっと私も難しくてよく分からないのですが、どなたかコメントいただけますか。二木さん。
 
【二木メンバー】  常にそこは問題になる部分だと思っていまして、ただ、そうはいっても、カーボンクレジット市場ばかりに負わせるというか、効果を期待するということ自体が、そこは違うんだろうというふうに思いますし、仮にそうだとしても、今、安いクレジット価格とおっしゃいましたが、大量にそういう対応しなければいけないという状況になれば、そこはクレジットの価格もどんどん上がってくるというのが、真っ当な市場機能であるわけなので、きっとそれなりに裁定が働くだろうと、私たち金融関係者としては信じています。
 
 ということなんですが、ただ、おっしゃるような懸念はなくならないでしょう。要は、市場機能というツールをいかに賢く使っていけるかということにつきるのではないかと思います。
 
【水口座長】  ありがとうございます。心に留めて議論したいと思います。そのとおりですね。
 
 それでは、時間も押しておりますので、最後の論点です。インパクト投資についてコメントいただきたいと思います。
 
 最初に岸上さんから御指摘いただいた基本的指針の話とインパクトコンソーシアムなんですけれども、インパクトコンソーシアムは、投資家だけではなくて企業、それから自治体、NPOなども含めて、インパクトの追求を推進していくという大きな枠組みとしてできていると思っておりまして、必ずしもインパクト投資の基本指針と直接リンクしているものではないというふうに理解しています。
 
 一方、このインパクト投資の基本指針が言わば厳し過ぎるのではないのか、一般的なインパクト投資の定義より狭いのでないかという御指摘はそのとおりだと思っています。これは今パブコメが終わったところですので、この後、来年の2月20日ですかね、インパク投資に関する検討会を開催いたしまして、そこでパブコメをどう反映するかということも検討した上で最終化をするというプロセスになっています。ただ、どういう形で最終化されるかはまだ全くの未定なので、今日いただいた御意見も踏まえて議論されるのかなと思っています。
 
【足達メンバー】  多分、コンソーシアムも水口先生がリードしていただくことになるという想像の上で、注文をつけるのは恐縮なんですけれども、私は持論としてインパクト投資を推し進めるべきだというふうに思いつつ、幾つかの類型のようなものに分けて、そして、1つ1つを丁寧に議論していくことが必要なんだろうと思っております。
 
 私の私案では、類型の1つ目で言えば、行政目的を補完するようなインパクト投資というのがあり、2つ目には、スタートアップ向けのようなリスクマネーを招聘するためのインパクト投資というものがあり、3番目には、金融商品づくりを活性化させるものや、既にある金融商品の質を上げるようなものがある。例えば、ESG投資でインパクトがどれだけ生まれたかというような計測を付加することによって、金融商品の質が上がるようなパターンですね。
 
 コンソーシアムでは、この類型自体の妥当性をまず議論していただければいいと思うんです。その類型が定ったならば、「順番にやっていきます、他を排除するものではありません」と言いつつ、きちんとフォーカスを定めた議論、そして、結論出しみたいなことをしていただいてはどうかというのが提案です。
 
 あわせて、現状の取組状況の評価ということで、もう一点。インパクト投資を進めていくのに、他方で行政の皆さんがやっておられる公的サービスというのがあるわけです。そこで、国民の福祉の水準というのがインパクト創出の起点になるはずです。いわば、世の中の現状ですよね。例えば、シングルマザーの方の現状はどうなっているのかとか、医療の世界で言えば、寝たきり老人の皆さんの状況がどうなっているかなどです。地域地域で違うというようなことがはっきりまず浮かび上がってきて、ここにお金をこういうふうに入れることによってインパクトが生まれるんだと語れるようになるわけです。その前提になる行政サイドからの社会の状況に関するデータ開示をコンソーシアムでもぜひ後押しをしていただきたいということも併せてお願いしておきます。内閣府さんが主導されてサステナビリティ開示に関する関係府省会議が設置されたのですが、3月に1回開催されただけというのは残念です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。コンソーシアムを代表する立場ではまだないんだと思うんですけれども、おっしゃるとおりで、地域のどこにどんな問題があるのか、各地域の自治体とか、地域の方々とインパクト投資をされる方、インパクトスタートアップの方々を結びつける。そのためのデータを整備していくというのは、コンソーシアムの非常に大きな役割だろうというふうに思っていますし、そういう分科会が多分出来ると思っています。
 
 それから、前段の御指摘もそのとおりだと思っておりまして、インパクト投資というものには非常に幅があって、いわゆる「意思あるお金」を重視されて、市場利回りを下回ってもいいというタイプのインパクト投資から、市場競争力のある高い利回りを求めるインパク投資まであって、インパクト投資のグラデーションは広いです。
 
 その中で、金融庁として基本的指針として定めるインパクト投資は、それはリターンを犠牲にしてもいいとは言えませんので、金融庁としてはこういう基本的指針をつくっておりますということなんですけれども、それがあたかもインパクト投資全てがこうですと言っているように見えるのはよくないと思いますので、その辺のタイプをきちんと示しながら、しかし、金融庁として進めるものはこれなんだということは明確にしていく必要があるのかなと、こんなふうにも思いました。
 
 それでは、渋澤さんからお手が挙がっていますので、渋澤さん、長谷川さん、河本さんの順番で行きたいと思います。渋澤さん、お願いします。
 
【渋澤メンバー】  ありがとうございます。こちらのインパクトコンソーシアムは水口先生を支える立場で発起させていただきました。ただ、このコンソーシアムの話が最初に持ち上がってきたときに、立ち位置がよく分からないという発言しておりました。GSG(Global Steering Group for Impact Investment)国内諮問委員会が10年ぐらい活動を続けており、そちらの存在とこちらの新しい存在の何が違うかなというのは当初分からなかったです。
 
 ただ今回、実際に発起されて、自分の中ではっきり見えてきたことは、金融庁、日本政府の下で呼びかけすると、そのリーチの幅がすごく広くなるということが印象に残りました。もともとGSGの国内諮問委員会の議論ではNAB(国内諮問委員会)2.0という表現で、インパクト投資から始まった議論を、インパクトエコノミーへの流れをつくるべきという展開を模索しておりました。今回のコンソーシアムは、「インパクト投資コンソーシアム」でなく、多分意図的に「インパクトコンソーシアム」と名づけていただいたのではないかと思いますが、まさにインパクトエコノミーを目指すような土台づくりをしていただいたと私は理解しております。とても重要なことだと思います。
 
 最近の永田町の動きで、「あ」も出ない新しい資本主義ですが、実はきわめて大事なキーコンセプトが示されています。それは外部不経済を資本主義に取り込むという表現です。岸田総理が『文芸春秋』2022年2月号の寄稿で使われた表現ですが、この外部不経済を資本主義に取り込むということが、まさにインパクトエコノミーであると私は思っています。その手段の1つとしてインパクト投資がある。そして、そのもう一つの手段としてインパクト加重会計がある、と色々な展開が期待できると思います。
 
 この流れを政府が今回のように土台をつくることは、多分ほかの国ではないことなので、とても重要なことだと思います。
 
 一方、これは私の偏見になりますが、政府は土台をつくることはとてもお上手でいらっしゃいますが、その中のコンテンツを詰めることは外部リソースに頼るという傾向があると思います。そういう意味で、インパクトコンソーシアムのこれからのコンテンツづくりはGSG国内諮問会議が今まで10年間積み上げてきたコンテンツと是非とも連携していただきながら、インパクトエコノミーが拡大するように、様々なセクター、そして、先ほど話があった個人も含む、ご発言があった地方も含む、活動にコンソーシアムが取り組むことに水口会長のリーダーシップに期待しております。よろしくお願いします。
 
【水口座長】  ありがとうございます。渋澤さんにはGSG、そして、トリプル・アイ(グローバルヘルスのためのインパクト投資イニシアティブ)とインパクト投資の領域を本当に幅広く見ていただいておりまして、感謝をしております。また、途中でおっしゃられた外部不経済を資本主義の仕組みの中に取り込むという点は、それはまさに岸上さんからありましたIFSIの話だと思っておりまして、いわゆる手段的IFSIというのはそういうことだと思っています。それはインパクト投資よりも広い概念で、渋澤さんがおっしゃったように、そういう大きな概念の中にインパク投資も入っているということだと思っています。
 
 それでは、長谷川さん、河本さんの順番で行きたいと思います。長谷川さん、お願いします。
 
【長谷川メンバー】  ありがとうございます。足達さんや渋澤さんの発言とかぶるところがあるのですが、経団連もこのインパクトコンソーシアム発起人メンバーに入れていただきまして、積極的に参加して推進していきたいと考えております。他方、既に指摘されているとおり、インパクト投資とインパクト評価がどう関係しているのか、もしくは、林さんからご指摘のあったESG、ESG投資、ESG評価とインパクト評価、インパクト投資がどう違っていて、どう関係しているのか、ESGの発展型がインパクト投資で、ESGを進化させていくと全部インパクトになるのか、などが本当に今、混乱しておりまして、企業の方からも私も質問を受けるのですが、明快な御説明ができない状況です。これらの点もぜひこのコンソーシアムで皆様の知見を共有して整理していただければと思っております。
 
 それから、これも既に何回か述べていることですが、インパクトコンソーシアムの議論は、GSGのGIINの議論や、IRISプラスなどのツール、さらに渋澤様も関与されたUNDPのSDGSインパクト、といった既にあるものとの連携もぜひ考えていただきたいと思っております。
 
 また、先ほど足達様がおっしゃられた、行政目的を補完するためのインパクト投資に関しては、いわゆるブレンデット・ファイナンス、開発援助や開発金融でもよく最近話題になるものだと思いますが、理念としてそういうことをやっていきましょう、ということはよく伺うのですが、具体的にどういうスキームがあって、どういう形で、官の資金と民の資金がどの程度で、どの程度の効果を狙うのかなど、具体的な事例の形で示していかないと、なかなか前に進まないのではないかと思っておりますので、ぜひ検討していただきたいと思います。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 そういえば、定義の問題の中では、PRIとCFA Instituteなど幾つかの組織が、責任投資のアプローチの定義というのを出しています。責任投資のアプローチの中に、インパクト投資も入っていて、責任投資のほうが広い概念だという、彼らはそういう整理をしているんですけれども、これもまた議論のあるところかもしれません。
 
 では、河本さん、お願いします。
 
【河本メンバー】  全国銀行協会、河本です。全国銀行協会もインパクトコンソーシアム発起人として呼んでいただきまして、しっかりと協力してまいりたいと思います。全銀協がお声かけいただいたというのは、我々は地方銀行も抱えておりますので、裾野を広げていく、これは地銀もそうですし、地方にもということで、その観点からいろいろと御協力できればということで、そういう裾野という観点で、一部のプロだけでやればいいということではなく、広げていくことも考えると、ぼやっと社会的意義と言っているものの物差しをしっかりと透明性というか、分かりやすく示せるように議論していかなきゃいけないということですし、それと併せて、我々の立場からすると、経済性のバランスをしっかりと確保した上で、そうはいっても多い少ないというのは出てくるというのもあると思いますけれども、どういう構造になっているのか、足達さんがおっしゃった類型とかいろいろあるので、そこを分かりやすくお金を出す人にも説明できるような形の議論にしっかりと取り組んでいければなと思っていますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。金融機関にはポジティブ・インパクト・ファイナンスということで、大分広がってきました。ありがたいなと思っております。
 
 ほかにいかがでしょうか。
 
 ちょうど時間が迫ってくると、こうして皆さん御配慮いただけるところがこの会のいいところなんですけれども。何か最後に言いこととかあればと思いますけれども、よろしいでしょうか。
 
 それでは、ちょうど時間になってまいりました。本日も大変多くの貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 
 本日は、取組の全体像のうち、市場機能の発揮の部分について議論しましたが、次回は、アジアを含む世界の脱炭素の加速ということについて議論していきたいと思います。次回の有識者会議は3月1日の開催を予定しております。
 
 その前にユースの会を予定しております。1月23日に、非公開の会ではありますが、若手をお招きして皆さんと懇談するユースの会を企画しておりますので、よろしくお願いいたします。
 
 それでは、本日は以上にしたいと思います。御協力いただきましてありがとうございました。お疲れさまでした。

 
―― 了 ――
 
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