「サステナブルファイナンス有識者会議」(第22回)議事録
日時:令和6年3月28日(木曜日)14時00分~16時00分【水口座長】 皆さん、こんにちは。それでは、只今よりサステナブルファイナンス有識者会議(第22回)の会合を開催したいと思います。御多用の中、御参集いただきまして、ありがとうございます。
本日、議事に入ります前に、この会議の過去の資料に関して少し御報告があるということですので、高田さんから一言お願いいたします。
【高田総合政策課長】 総合政策課長の高田でございます。本題に入ります前に1点御報告をさせていただきます。
令和3年3月に開催されました、このサステナブルファイナンス有識者会議(第5回)におきまして、5名の外部専門家からプレゼンテーションを頂いたのですけれども、そのうちの4つ目、自然エネルギー財団様の御提出資料につきまして、資料提出者から、誤って特定企業の透かしが入っていたため資料を差し替えたいとの連絡がございました。これを受けまして、当該資料の掲載を3月25日付で一旦取りやめております。現在、事実関係などを確認しているところでありますけれども、この旨、御報告をさせていただきます。
【水口座長】 ということで、幾つか他の会議体でもあった事案と同じことですけれども、このような状況でございますということです。
それでは、本日の議論に入りたいと思います。本日は、事務局から前回のまとめと本日の事務局資料について御説明いただきまして、その後続けて、日本・東京商工会議所の大下様、そして北九州市の森永様からプレゼンテーションを頂きます。今日の議論は前回のまとめと内容的につながっておりますので、全体をまず御説明いただいた上で、まず前回のまとめに対する追加の御意見、それから、プレゼンテーションに対する質疑、御議論をいただければと思います。最後に、この有識者会議の次の報告書の方向性についても、少し時間を取って議論をしたいと思いますので、最後の15分、20分ぐらいは、報告書の方向性についての議論をしたいと思います。
それでは、早速、まず事務局から御説明をお願いします。松本さんお願いします。
【松本サステナブルファイナンス推進室課長補佐】 (事務局資料に基づき説明)
【水口座長】 ありがとうございました。
地域金融に関して、脱炭素だけでもいろいろな取組があり、脱炭素以外のことについても論点が多いのだということがお分かりいただけたかと思います。
それでは、続きまして、商工会議所の大下様と北九州市の森永様から、それぞれ10分ぐらいずつでプレゼンをしていただければと思います。
では、まず大下様、お願いいたします。
【大下様】 日本商工会議所・東京商工会議所でエネルギー環境政策を担当しております大下と申します。今日は貴重な機会を頂きまして、誠にありがとうございます。
今、スライドを画面に投影いただいておりますけれども、各地の商工会議所でも脱炭素の推進、とりわけ中小企業の取組推進に向けた支援の動きが少しずつ具体化してきています。私、日商・東商、両方の肩書を持っていますので、今日は、東京商工会議所がこの1年というか、約半年というか、取り組んできた中小企業支援の事業の具体的な中身と成果、あるいはそこから感じてきた課題等を少しお話させていただいて、今後の検討の参考にしていただければと思っております。
今日のお話の中身ですけれども、初めに、昨年8月、定点的にこの時期に調査を行っているのですが、中小企業の脱炭素についての意識、簡単に調査結果の御報告をさせていただいた後、東商の脱炭素支援事業、“塾”、“市場”、“ラボ”という3本柱でやっていますが、こちらの内容と1年間の成果、それから、それを踏まえ、来年度はどんな取組を考えているのかということをお話させていただいた上で、その経験を踏まえて、今後、会議所としての取組、また金融機関への期待等についてお話をまとめとさせていただければと思います。
初めに、調査結果でございます。左側がカーボンニュートラルについての意識、それから、右が自社の排出削減に向けた取組の状況について伺った内容です。左側、カーボンニュートラルについてどう考えていますかということに関しては、一番多い答えが、エネルギーコストが上がるのではということを心配していますというのが6割を超える形になっています。これは毎年調査をするたびに増えてきています。これは、具体的なカーボンニュートラルによってどういう影響が及ぶかということへの懸念もありますが、御案内のとおり足元でエネルギー価格が上がっていることが先に頭に浮かんでいるのではないかなと思っています。他方で、我々として期待をしている省エネやCO2の削減に向けた取組、これをコストの削減あるいは経営改善につなげていきたいという答えは3割弱ということで、あまり増えていないという状況でした。
右側の具体的な取組についての調査も同じような結果が出ていまして、特に取組を行っていない、あるいは何をしたらいいかよく分からないというこれまで多かった結果が若干減ってきています。一方で、具体的な計測把握や削減の取組が伸びているかというと、そこはあまり増えていなくて、少し増えたのは、情報収集を行っていますよというところです。我々、商工会議所の会員の中小企業というのは、中小の中でも比較的規模の小さい企業さんが多いです。そうしたところの実態としては、少しずつ何かやらなきゃな、どうしたらいいんだろうということで、情報収集は行っているけれども、まだ具体的なアクションまではたどり着いていないというのが現状かと思っています。
こうした状況を踏まえて、東京商工会議所としては、まずはしっかり情報収集をしていただいて知っていただく、加えて自社の排出量の計測把握をし、さらに削減に向けた設備の入替えと、この「知る・測る・減らす」という3つのステップで中小企業の取組を支援していきたいと考えまして、特に2番目「測る」と3番目「減らす」、このステップについて、新たに昨年の8月に「Tosho攻めの脱炭素」という事業をスタートしたところになります。
事業は3本柱になっていまして、一番左の“塾”は、企業さんが具体的にどうやって排出削減に取り組むべきかということを、少人数・実践型で、グループ形式で学んでいただく勉強会。真ん中は、中小企業のニーズと、そうした脱炭素の取組、省エネの取組を支援するいろいろな企業さんとをマッチングする仕組みの“市場”。そして右が脱炭素テーマにした産学連携を進めていく“ラボ”という仕組みの3本柱になっています。
初めに塾でございますけれども、我々がニーズが高いと思った5つの分野で10社ぐらい集まって勉強してもらうということで最初スタートしました。全体のキックオフセミナーから現状把握、そして改善のプランを立てていただく3回コースの塾という仕組みをつくって、省エネセンターの専門家の方に講師をお願いしました。1回目のキックオフセミナーは180人の方がオンライン、オフラインを含めて御参加いただきました。
大変非常に活況のイベントになったのですが、実際に3回参加して削減に取り組もうと思っていただいた企業さんは、5クラス50社目指したんですけれども、今申し上げた全体のセミナーあるいは様々なルートを通じたPR、それから我々も23区で行われている会員企業の集まりにいろいろ出かけては説明をして名刺交換をして、参加しませんかとやってかき集めて33社でした。具体的なアクションをしようと踏み出そうと思っている企業さんは、我々が思っているよりもまだまだ少ないのかというのが実感です。
ただ、御参加いただいたうち7社は、さらに次のステップ、実際の企業における省エネ診断、省エネの取組に進んでいただいていますので、こうした取組は、受けてもらえば有用性はあると思っております。参加者の方からも「満足をした」との声をいただいているところであります。
今度はマッチングのための市場という仕組みです。我々は支援のメニューとして、コンサル、省エネ支援、再エネ導入、資金支援の4つが概ねあるかと思いまして、これらの支援をやっていらっしゃる企業様にいろいろお声かけをして、ネットに各社の支援内容を掲載していただいて、そこを中小企業さんが検索できるような仕組みを市場というマッチングサイトとして立ち上げさせていただきました。掲載も無料という形になっています。
こちらはいろいろお声かけをさせていただいたおかげで、50社69サービスが掲載されておりまして、また会員優待も13件御用意いただきました。サイトを立ち上げているだけでは厳しいので、実際のリアルのビジネスピッチもやってみようということで、東京ガスさんと三菱マテリアルさんにお願いして、中小企業に協業の呼びかけをしていただくイベントを行いました。その際に61社63名の中小の方に御参加いただいて、そこから個別のエントリー、そして東京ガスさん、三菱マテリアルさんとの個別面談にそれぞれ2社が進んでいる状況です。
ここが今掲載いただいている市場の参加支援企業の一覧の主な内容になっています。省エネ支援がかなり多くなっています。
資金支援のところでは7件、グリーンローン等の御案内とか、あるいは補助金申請代行のコンサルの方などが御登録をいただいております。ぜひ金融機関の方、積極的な御登録をお願いしたいと思っております。
次のスライドをお願いいたします。最後3本目のラボ、産学連携ですが、これはもともと東商が脱炭素以外のテーマで産学連携の仕組みとして持っていた内容になっています。
ここにある55の大学・研究機関と連携させていただいて、中小企業との産学連携のマッチングをさせていただいている内容になっています。いつでもこの大学に、あるいは研究機関と連携をしたいというオーダーを会員企業が出せば、マッチングさせていただく仕組みになっているのですが、実際このラボで脱炭素のメニューを立ち上げてから問合せがあったのは1件のみ、それも事前で具体的な産学との相談のところまでは届かない状態になっています。
これも場を用意しているだけではということで、東京工業大学さんに御協力をいただいて、2月に「新技術発表&情報交換会」というのを開催しました。お二人の先生からCO2の分離・吸収、あるいはレアメタル等の資源循環という、我々が普段接している中小企業さんのビジネスからすると、いささか難しいテーマかと思ったのですが、この35社42名、我々が思ったよりも集まっていただきまして、それぞれ説明の後、お二人の先生との名刺交換、意見交換もかなり活発に行っていただいていました。
3つの取組とも、なかなか中小企業の関心はそれほど温度が上がっている状況ではありませんが、しっかりやっていけば成果にはつながっていくのかというのがこの1年と半年の取組の感想であります。
こうした内容を今年の結果も踏まえて下に少し書いていますけれども、この3本柱、塾に関しては省エネ・再エネに今度少し間口を広げて、環境ブランディングといった視点でもクラスを開講してみようかと思っています。また、東京以外に大阪、名古屋の会議所ではかなり同様の取組が進んでいますので、真ん中の市場に関しては、オンラインで3商工会議所合同でのビジネスピッチを開催してみたいと思っておりまして、今準備を進めているところです。また、ラボに関しては、今回、東京工業大学さんに御協力いただきましたが、引き続き複数の大学・研究機関とのリアルでの情報交換会に取り組んでいきたいと思っています。
もう一個、御参考までに来年度の事業について、日商として民間の企業の排出量把握をウェブサービスとしておやりになられているアスエネさん、Zeroboardさん、e-dashさんと包括提携を結ばせていただきまして、各地商工会議所の会員事業者さんが会員特典つきでこの3社の見える化ツールの利用ができるサービスをスタートすることとなりました。こちらも各地の会議所を通じてPRをしていき、これまでエクセルベースのCO2チェックシートというのを普及、取組、利用促進をやってきたんですけれども、そちらの比較的簡易な把握の仕組みと、もう少し踏み込んだ見える化ができるこの3社のサービスをうまく組み合せながら、まずは各地商工会議所会員の中小企業の排出量把握のお手伝いをさらに充実をしていきたいと思って、新たに立ち上げる事業でございます。
最後、まとめとして上段に、商工会議所としての取組をやった感覚で言いますと、関心は徐々に高まっていますけれども、具体的なアクションはまだ依然一部だというところです。と言いますのも、今、課題が中小企業には山積しています。そういう中で、よくも悪くもと言いましょうか、優先順位がまだ高くないという状況なのかと思っています。ただ、実際にいろんなイベントに御参加いただいている事業者さんのお話を聞きますと、取引先から排出量の把握提出を求められたという声を聞くことがかなり増えてきています。こうしたこともあって、恐らく取組の裾野は、徐々にではありますけれども、着実に広がっていくと思っています。
他方で、我々が行っているような取組がなかなかそうした企業さんにきっちり届かないという状況はまだあるのかと思っています。何とかPRにも工夫をしながら、3つの事業をより多くの人に利用していただけるように、引き続き取組を進めてまいりたいと思っております。
こうした中で、金融機関の皆さんへの期待ですけれども、最終的に設備更新等をするためには資金が必要です。金融機関の支援というのは不可欠だと思います。ただ、今申し上げたように最後のアクションのところにたどり着くまではかなりのステップが必要で、PR等、あるいはセミナー等が行われても、なかなか最終的な金融機関さんのビジネスになるには時間がかかる、手間がかかるというところは実態かと思っております。ぜひ我々と一緒に、中小企業に寄り添って、地に足の着いた、長い目での支援をお願いしたいと思っております。
また、日商は2月に「中小企業等の成長資金調達の多様化に向けた提言」というのを公表させていただいております。足元で、これまでの融資を中心とした資金面での支援からクラウドファンディング等の様々な資金調達手段の多様化が実際に見られています。これをますます進めていただきたいという趣旨の提言であります。この辺りもぜひ金融機関の方に、脱炭素に向けた資金調達手段の多様化の取組を期待したいと思っております。
また、環境省の地域ぐるみの脱炭素モデル事業では、23年度の採択、16地域の多くで商工会議所と金融機関が検討グループのメンバーと共に参画している状況です。こうした地域を手始めとしながら、商工会議所と金融機関が双方の脱炭素支援のメニューをお互いに紹介し合ったり、お客様をお互いに紹介し合ったり、さらなる連携促進ができればということも期待しております。
私からは以上です。ありがとうございます。
【水口座長】 ありがとうございました。大変広範で前向きなお取組をたくさんされているということが分かりました。ありがとうございます。
それでは、続きまして、北九州市の森永様、お願いできますでしょうか。
【森永様】 北九州市産業経済局地域経済振興部の森永と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。私からは、昨年12月に北九州市が設立をいたしましたGX推進コンソーシアムを中心に、北九州市のGXの取組につきまして御説明をさせていただきます。
まず北九州市の紹介ですけれども、北九州市は九州の最北端にありまして、人口が約92万人、九州第二の都市でございます。
北九州市は、1901年の官営八幡製鉄所の開設以来、120年にわたり、ものづくりのまちとして発展してまいりました。鉄鋼から素材、化学製品、ロボット、自動車関連などを中心とした製造業が多く集積してございます。また、こうした大企業を支える中小製造業が多数集積していると、そういった構造となってございます。
また、資料にはないんですけれども、こういった製造業が発展する過程において、公害が発生いたしましたが、それを克服いたしまして、これまで政府の環境未来都市でありますとかSDGs未来都市、またOECDからSDGs推進に向けた世界のモデル都市にアジアで初めて選ばれたというような評価もいただいてございます。
また、北九州市には日本最大級のエコタウンがございます。25社のリサイクル企業が集積しておりまして、投資額累計で888億円、雇用者数は1,000人を超えておりまして、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーの実現にも貢献してまいりました。
次お願いいたします。こちらは北九州市の温室効果ガス排出量の部門別割合を表示したものでございます。先ほど、ものづくりのまちと申しましたけれども、全国と比べまして、産業部門の排出量の割合が2倍あるというところが特徴となってございます。この市内排出量の約6割を占める産業部門の脱炭素化が重要であると認識しておりまして、この現状を踏まえ、GXの取組を進めているところでございます。
さらに言いますと、大半が中小企業でございまして、先ほど事務局からも御説明があったと思いますけれども、中小企業は多くの経営課題を抱えており、またリソースも限られている中で、この中小企業のGXをいかに進めていくのかというところが肝だと考えてございます。
次お願いします。こちらは国の動きと私ども北九州市の動きを時系列的に示したものでございます。国の動きに呼応して、私ども北九州市でも政策の立案をしているというところでございまして、先般、国が示されました官民GX投資150兆円を成長のチャンスと捉えまして、この投資を北九州地域に呼び込むために北九州GX推進コンソーシアムを設立いたしました。
次お願いいたします。こちらも、国がお示しされたGXで成長が期待される重点14分野でございますけれども、赤字で書いてございますのが、北九州市の強みや特徴を生かして取り組めるのではないかと考えている分野でございます。こうした分野を中心に、地域企業の投資促進、成長につなげていきたいと考えてございます。
次お願いいたします。これはスローガンみたいなところはあるんですけれども、3つ掲げてございまして、「国内外のGX投資を呼び込む」、「企業の経営層の意識を変える」、「カーボンニュートラルを前提とした社会に備える」ということで、スローガンであるんですけれども、先ほども申しましたが、中小企業さんがメインのターゲットでございますので、そういった経営層の方々に、GXはコストではなくて成長のチャンスですよということをしっかりと理解してもらう必要があるという現状でございます。
次お願いいたします。こうした中で、昨年12月に北九州市域の産学官金オール北九州による北九州GX推進コンソーシアムを設立いたしました。地域のリーディングカンパニーであります日本製鉄さん、九州電力さん、西部ガスさんはじめ190社に御参加をいただいております。北九州市の強みであります、ものづくり産業の集積、環境分野の先進的な取組を生かしたグリーンとテクノロジーを掛け合わせによるGXの取組を進めてまいりたいと考えてございます。
次お願いいたします。このコンソーシアムには、本有識者会議のメンバーでもあります高村先生、江守先生にも顧問に御就任いただいているところでございます。
次お願いいたします。このコンソーシアムで具体的にどういったところに取り組むのかということで、4つの視点でまとめてございます。1点目が最先端の研究開発・社会実装、私どもは北九州学術研究都市という大学が集積したエリアを持っておりますので、ここで最先端の研究開発・社会実装を進めていきたいと考えております。2つ目がGX関連産業の集積、3番目がGX人材の育成、4番目が地域企業のGXに向けた支援ということで、これらを産学官金オール北九州で取り組んでいきたいと考えてございます。
次お願いいたします。昨年12月の設立後、直ちに取り組んだものを4つ御説明させていただきます。
次お願いいたします。まず、部会の設置でございまして、190社と多くの企業さんに、業種や規模も多様な企業さんに御参加いただいておりますので、テーマを決めて少し深掘りをしながら取組みを進めていければと考えておりまして、ここに掲げている部会のほか、地域の金融機関様からも御要望がありますので、ファイナンス系の、地域でファイナンスをいかに有効に活用していくのかといったことを検討する部会の設立も検討してございまして、本有識者会議の議論も参考にしたいと考えております。
次お願いいたします。次は人材育成で、北九州GXエグゼクティブビジネススクール、こちらは全国初ではないかと思っておりますけれども、脱炭素経営、GXのための経営者層向けのビジネススクールを実施しております。今年度の受講企業は15社27名、主に中小企業の経営者の方に御参加いただいて、最後はGX実現に向けた自社のアクションプランの作成というところまで行うプログラムとなってございます。
次お願いいたします。地域企業のCO2排出量の見える化の支援ということでございまして、希望する市内企業、最大2,000社にCO2排出量可視化ツールを無償提供することとしてございます。12月から始めてまだ21社ですけれども、これをどんどん進めて、まずは見える化により、自社のCO2排出量を把握して、次のステップにつなげていくというようなことに取り組んでいきたいと考えてございます。
次お願いいたします。ワンストップ相談窓口・専門家派遣ということで、中小企業さんは、「GXってよく聞くけど何をどう取り組んだらいいのか分からない」というような声を多く聞きますので、まずはワンストップで様々な御相談を受けようということで、相談窓口を設けまして、その相談内容に応じましてGXの知識、技術を有する専門家が実際に企業を訪問して、GXに係る設備投資につながるまでの伴走支援を行うという取組をやってございます。
次お願いいたします。企業さんの御相談は多岐にわたりますので、相談内容に応じまして専門家に登録していただいておりまして、現在15社に登録をいただいております。省エネ・再エネ、IT導入、環境技術、生産ラインの見直しから金融など、多岐にわたる相談内容を支援できる体制を整えてございます。
次お願いいたします。こちらは、地域企業の変革、GXに向けたロードマップですけれども、ステップ1、2、3ということで、気づきから準備、実行というステップで考えているんですけれども、最初は気づきということでセミナーから始めて、次にエグゼクティブスクール、見える化に取り組んでいただいて、最終的には省エネ設備投資等につなげていければと考えています。その際には些少ですけれども、市でも補助金を用意して、財政的な負担も軽減することができればということにも取り組んでございます。
この支援フレームですけれども、実はGXに取り組む前に、DXに北九州市は取り組んでおりまして、そのときの中小企業向けの支援フレームを踏襲しているんですけれども、実はこの支援のフレームが、地域企業のDXの推進にとって非常にいい取組ということで、一昨年、政府が実施した夏のデジ田甲子園で内閣総理大臣賞をいただきまして、これを踏襲しておりまして、こうした伴走支援により、地域企業のGXが進めばいいなと考えてございます。
次お願いいたします。GXに取り組むに当たりまして、スタートアップさんの技術にも非常に注目しておりまして、北九州市はスタートアップの創出にも力を入れておりまして、内閣府からスタートアップ・エコシステム推進拠点都市の指定を受けておりまして、この取組を進める中で、例えば地域企業とスタートアップの共創によるGXの加速化にもチャレンジしていきたいと考えてございます。
次お願いいたします。最後にコンソーシアムのこれまでの成果と、北九州市におけるプロジェクトを御紹介させていただきます。まず、IHIさんと日本IBMさんの熱マネジメントの実証が北九州市で取り組まれてございます。またAGCさんが、水素製造関連製品のプラントを北九州市内に建設するということが決定してございます。
また、IT企業のメンバーズという企業さんがあるんですけれども、このコンソーシアムの設立をきっかけに地域脱炭素DXセンターを北九州市に開設していただきました。また一昨日、日産自動車さんがEVの拠点を九州に置くでありますとか、地元の吉川工業さんが、EVのモーターコアの工場を、300億円投資するとか、日本製鉄の電炉化の計画もございます。また、洋上風力発電の建設も始まっております。こうしたプロジェクトが地域で着々と進むと同時に、この成果が地域企業にも波及していって、地域経済の活性化につながるよう、行政としてもしっかりとサポートしているというところでございます。
私の説明は以上でございますけれども、引き続き金融庁様をはじめ有識者会議の皆様の御指導を賜りますようお願い申し上げまして、私の説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
【水口座長】 ありがとうございました。地域での大変熱意を持ったお取組だと思います。それでは、本日は全国地方銀行協会から福岡銀行の池辺様、そして、第二地方銀行協会から京葉銀行の本村様に御参加いただいております。せっかくの機会ですので、現状のお取組を踏まえて課題、要望など、感じられていることがありましたらコメントをいただけますか。最初に池辺様からお願いいたします。
【池辺様】 ありがとうございます。全国地方銀行協会の会長行を務めております福岡銀行の池辺でございます。本日はこのような機会をいただき、誠にありがとうございます。
はじめに、取引先の脱炭素化に向けた地方銀行の取組の現状について御説明いたします。当協会会員である地方銀行は、気候変動問題への対応を重要な経営課題と捉え、脱炭素化に向けた取組を推進しています。地方銀行にとりましては、主要な取引先でありサプライヤーである中小企業の脱炭素化を支援することが非常に重要です。
一方で、中小企業におかれましては、業種や規模などによって脱炭素化に向けた意識やノウハウに濃淡がございます。そのため、各地方銀行は、お取引先との対話、エンゲージメントを通じて、気候変動問題に対する共通認識を醸成しながら、脱炭素社会への移行に寄与する資金的な支援に加え、CO2排出量の可視化サービスの提供などの非資金的な支援、つまりファイナンスとコンサルティングに力を入れています。
次に課題とその対応についてです。中小企業にとりましては、以前よりはこの問題に対する優先度は高まっていますが、物価高や人手不足などの課題もあり、先ほどの東京商工会議所様からのお話にあるとおり、脱炭素への対応はこれからという先が多いのも事実です。物価高などの様々な課題も抱えるお取引先に、脱炭素化対応の優先順位を上げていただくためには、脱炭素化の対応がビジネスの機会、つまりは収益につながるという意識醸成、それから、地域の関係者が連携した面的な支援が重要だと考えます。
最初に申し上げましたビジネスの機会につながる意識醸成につきましては、我々の事例を一つ紹介させていただきますと、地元九州では、TSMCの進出を起点に、半導体関連産業が活気づいています。ご存知かと思いますが、TSMC熊本工場の運営会社であるJASMを中心としたサプライチェーンがこれから構築される中、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指す動きもあります。地場の中小企業がこのサプライチェーンに入るためには、脱炭素化の対応、それからクリーンエネルギー化が重要な課題だと思っております。
こうした中、脱炭素化への取組は、コストもかかりますけれども、投資に対するリターンやビジネスの機会、成長へのチャンスにつながり、同時に脱炭素化社会への移行という社会課題への解決、つまりはインパクトを生むということを、我々地方銀行が地道にお取引先と対話する必要があると考えております。これが地域の好循環サイクルを創出し、ひいては持続可能な地域社会の実現につながると考えます。
次に、面的な支援の事例も紹介します。我々は昨年5月、地元九州エリアの小売・流通業界のサステナビリティ推進を目的に、「九州流通サステナビリティサロン」を設立しました。メーカー、商社、物流等、様々な業界と関係が深い、九州エリアの小売・流通業が結集し、共同販促、それから脱炭素分科会を開催することによって、地域全体の脱炭素化などを進めてまいります。
このような面的な支援は、業態を超える形、同じ業態で取り組む形と、様々な形があると思います。こうした取組が全国に広がっていくということが大切だと実感しています。ただ、進める上では、金融庁様の資料22ページで「企業特性に応じた中小企業に対する脱炭素支援のあり方」といった参考になるマトリックスを作成していただいていますけれども、我々ふくおかFGでもメインバンク先数が約4万社あり、全てに同じリソースをかけることも難しいため、こちらも参考にして優先順位をつけながらお客様とエンゲージメントを図っていくことが必要かと思います。
最後に1点、要望でございます。脱炭素化に向けて、政府におかれましては多くの支援策を御用意いただいております。ただ、事業者の取組や課題に合った最適な施策を見つけにくいという声もあります。このため、支援策の活用を進めにくいことも課題だと感じております。政府におかれましては僭越ながら類似施策の整理、統合や事業者、金融機関の行員が施策を目的別に簡単に検索できるよう、例えば省庁横断的なポータルサイトのようなものの整備などを御検討いただければ非常にありがたく思っております。
私からの説明は以上でございます。
【水口座長】 ありがとうございました。それでは続きまして本村様、お願いいたします。
【本村様】 それでは、第二地方銀行協会の会長行をしております京葉銀行の本村です。本日はこのような発言の機会を頂きまして誠にありがとうございます。限られた時間ですので、脱炭素に関わる弊行の取組を簡単に御紹介するにとどめまして、日頃業務を通じて課題と感じていることを中心に御説明させてもらいます。
まず、弊行の取組ですけれども、私どもは2021年に策定しましたサステナビリティ方針に基づきまして、脱炭素を中心としたサステナビリティをめぐる課題に取り組んできております。具体的には、本部の使用する電力を再生可能エネルギーにするなど銀行自身の取組、投融資や取引先支援など本業を通じた取組、そしてスタートから7年になりますけれども、地元の国立大学と連携しました地域の環境負荷削減プロジェクトの推進などが挙げられまして、その成果や指標等は適宜開示しております。
次に、弊行の主要な取引先になります地域の中小企業との関係におきまして、課題と認識していることを5点ほど申し上げます。1点目が取引先の脱炭素に対する反応です。現場から上がってくる声を聞きますと、残念ながら中小企業者の環境課題に対する優先順位はまだまだ低いように感じます。足元、中小企業者は資源、原材料高に伴うコスト上昇や人手不足による厳しい経営環境が続いておりまして、環境問題の対応は先送りとなっている事業者が大半です。環境問題の解決を図るには時間と資金、両面におきましてコストがかかるという意識が根強く、脱炭素に向けた中小企業者の能動的、主体的な行動には道半ばと感じております。
また、中小企業の脱炭素算出量は国内全体の1割から2割程度と言われておりまして、弊行の個々の取引先レベルでは脱炭素の効果は実感されにくいのではないかと感じております。そういった中で、2028年度からの導入と聞いております炭素に関する賦課金によって取引先の意識がどのように変化するのかを注目しております。
2点目はGHGの排出量の算定についてです。スコープ3の算定につきましては開示対応はもちろん、取引先支援を考えるに当たっても必要です。一方、現状、ファイナンスド・エミッションの算定につきましてはデータ入手や対応コストにハードルの高さを感じており、より簡便、安価な手法の開発を期待しております。
3点目はマネタイズについてです。取引先企業の脱炭素化に向けた支援の一つとしまして、金融仲介機能の発揮は必要不可欠と考えており、現状まず、省エネ効果が期待できる先といったような経済合理性を有する取引先から支援を進めるところであります。持続的な収益を確保するためには一定規模以上の企業やプロジェクトを対象としていくことが必要ではありますけれども、取引先の大宗を占める中小零細企業への支援の在り方は課題と感じております。
4点目は、脱炭素支援に関する評価についてです。脱炭素に係る取引先支援を進めるに当たって、例えば関連商品の販売残高や顧客への提案件数といった単純な評価手法を用いることは、行員の行動やステークホルダーの理解をミスリードする可能性があると考えております。脱炭素につながるのであれば特定の支援手法にこだわらず、多様な対応を意識して進めたいと考えております。
最後に5点目は人材の育成についてです。これまで申し上げた取組を進めるためには、当然に脱炭素に係る知見と取引先との対話スキルが必要となります。しかしながら、その人材育成については現状、強化し始めたばかりであり、大きな課題と認識しております。
以上、試行錯誤しているところでありますけれども、御出席の皆様からお知恵も借りまして、脱炭素社会の構築に弊行としましても貢献してまいりたいと思います。御清聴ありがとうございました。
【水口座長】 ありがとうございました。御説明が長くなりましたけれども、ここから議論に入りたいと思います。最初に手塚さんと渋澤さんが今日、多分早く出られるということだったと思うので、もし全体として何かコメントがあれば最初に頂こうかなと思いますけれども、手塚さん、いかがですか。
【手塚メンバー】 ありがとうございます。典型的な大企業の立場で私がこれを聞くのはある意味では新鮮ですけれども、大変勉強になりました。東京商工会議所さんのやられている塾、市場、ラボという大変すばらしい取組ですね。私自身、これもう何年か前から地方あるいは中小企業の温暖化対策をやっていくには、このように各地の商工会議所さんが窓口になって、こういう導入編の塾のようなものをつくって、そこで事業を展開していくのが理想的なんじゃないのかと申し上げてきました。そこには省エネセンターの専門家みたいな方が具体的にどうやったらいいかというようなことのレクチャーをして、それを実際に行動につなげていくやり方がいいんじゃないかということを申し上げたんですけれども、まさにそういうことが実際に行われているということで大変うれしく思います。
大体、今日のお話で共通して課題として皆さん、御指摘されているのは、まだまだ必要性が認識されてない、あるいは直接的な必要性を感じていないということです。したがって、なかなか具体的な行動にはつながらない、あるいは必要性は感じていても、どこからやったらいいかわからないというところで、具体的なアクションのところがつながりにくいというお話があったと思うんですね。
私、たまたまこの前、広島県の県の環境政策の皆さんがセットされている研究会で中小企業の皆さん相手に弊社の取組等を講演する機会があったんですけども、並行してそこでケーススタディーをされてたんですね。地元の中小企業の方で加熱のためのボイラーのようなものをこういうものに入れ替えることで、実は環境対策としてCO2が下がっただけではなくてコストもこれだけ下げることができましたというご紹介です。つまりCO2の削減ということが前面に出てくるんで何となく環境対策でお金がかかる、儲からないんじゃないかって話ですけれども、一番最初にインセンティブとしてあるのは省エネを行うと基本的には元が取れますということで、そういうものからまず手をつけていく。それを見える化するためには実はアカウンティングが必要で、結果的にCO2のアカウンティングレポーティングというのもできるようになるというお話です。
実際の中小企業経営で温暖化対策のメリットがどこにあるのかということを前面に出して、何て言ったらいいんですかね、誘い水にするようなところから行くのがいいのかなと思います。しかも、それをうまくいったケースを実際に他の企業、経営者の皆さんが集まられているような勉強会のような場で事例、ケーススタディーとして紹介して、だったら、うちもやってみようかなみたいな感じで広げていく。そうすると、横に見たらば商工会議所さんなり、あるいは地銀さんが用意されているいろんなプログラムがあって、そこではコンサルタントの紹介であったり、あるいは省エネセンターのようなところの専門家の方のアドバイスを受けられる窓口もあってという、何か実利に関わるようなところで誘発するような仕組みがあったら、よりこういうものが早く広がりやすいんじゃないかと思って聞いていました。
私から以上です。
【水口座長】 ありがとうございます。おっしゃるとおりですよね。中小企業の皆さんに動いてもらうにはそういうことは必要だろうなと思います。
渋澤さん、いかがでしょうか。
【渋澤メンバー】 ありがとうございます。地域社会の取組、中小企業の取組を御説明いただきましてありがとうございます。
私が参加している新しい資本主義の実現会議では中小企業のM&Aが討議の対象になっていまして、事業承継の課題とか、従業員1人当たりの売上げがM&Aで高まるというデータもあるようですね。
今日の資料でも、中小企業が地域社会において脱炭素化に取り組むことは資源配分の課題があるとご説明ありました。また、例えば二つ会社が合併すれば排出する炭素ガスも減るという削減効果もあります。そういう意味で、地域金融機関のM&Aの仲介や支援とサステナブルファイナンスって、何かつなげられるような考え方ってあるでしょうか。
【水口座長】 それはある意味、中小企業もある程度大きくなって。
【渋澤メンバー】 規模が大きくないと脱炭素化ができないって話もありましたし、何をやっていいか分からないという御意見もあるということを考えたときに、別々の小規模の会社ではなく、一緒に一つの会社として実施した方が色々な成果が高まると思いましたが。そういう文脈でM&Aって考えられますか、地域社会において。
【水口座長】 いかがですか。金融機関の方、御解答があれば。M&Aもいろいろ、仲介入られているかもしれませんけど。
【池辺様】 そうですね。脱炭素化だけではなくて、先ほどありましたDXやM&A、そういうところも広くソリューションとして応えられるように動いている地域金融機関も多いと思いますので、M&Aも含めた全体での意識醸成は考えられるのではないかと思います。
【水口座長】 なるほど。中小企業を中小企業という枠組みだけで考えるんじゃなくて、中小企業の構造自体も考えていくということもあるような気がしますよね。ありがとうございました。
それでは、あとお時間が限られている方、多分あとは皆さん、大丈夫でしょうかね。今からできれば30分以内ぐらいでこの話の議論をさせていただいて、最後、報告書の議論もしたいと思うのですが。そうですね。
それでは、ここからは自由討論ということにしたいと思いますが、前段の前回のまとめと、それからその後の地域金融の話と含めまして、どこからでも結構です。コメント、御意見、あと御質問等もありましたら頂ければと思います。特に大下様、森永様への御質問も頂ければと思いますがいかがでしょうか。
では岸上さん、お願いします。
【岸上メンバー】 ありがとうございます。まず、前回のまとめについて1点だけ細かいですが、官民で強調した形での議論ということが書かれていますが、議論だけではなく、さらにそのビジョンや戦略の共有といったところ、アクションのところまで共有する意見もあったのではないかなと思いましたので、コメントいたします。
本日の資料ですが、前回も見せていただきました8ページのところをもとに、この1ページを見ますと、地方銀行におきましては多排出産業への融資が少ないといったメッセージになっているかと思います。一方で、全体像で見ていきますと、例えば運輸に関する地域金融の役割が大きいといったところで、気候変動だけではないと思いますが、環境社会へのインパクトが様々多い産業かと思いますので、例えば地域金融としての一番重点的に見ていく産業といったところを整理するのも一つの方法かと思いました。
一方で、直接的な金融サポートをしていないとしても、地域の中で皆様のほうがよく御存じかと思いますので、現実を教えていただきたいと思ったんですけれども、多排出産業の今後の地域の中での移行の営みによって、その他の産業へのインパクトはあるかと思いまして、そこへの地域金融の役割というのはあるかと思いました。そういった意味で地域に根差した多排出産業による、その他の中小企業のインパクトといった意味での経済移行での視野も入れた戦略が必要ではないかと思いました。
あと感想のようなものですが、全体的にこの資料と発表の中でCO2削減の可視化についてのツールが本当に改めて様々あり、有償のもの、意外と安価なもの、無料のものといったところで、恐らく利用者としてもどこに何があって、どこに最低ラインとしてあるかというのが、恐らくコストとしても行政としても重複しているところも結果的に出てきてしまうのではないかなと思いましたので、そこを最低ラインのツールの共通的なものを土台をつくるといったところと、その上で地域に合わせた柔軟性といったところは行政としても何かしらできるところではないかと思いました。
以上です。
【水口座長】 ありがとうございました。
それでは林さん、そしてオンラインの小野塚さん、高村先生という順番でいきたいと思いますが、林さん、お願いいたします。
【林メンバー】 ありがとうございます。大下さんの資料を見て、それからあと、森永さんのも見て、こんなにすごいことやっていらっしゃるんだと思ったんですが、相談した会社の数を見ると、190社も手を挙げたのに5社だけ?という感想を持ちました。先ほどの御説明でも、実は分かっているけど、やっている暇がないということだと勝手に思いまして。両方とも取組はすばらしいのに何となくもう一声、浸透すればいいのになと、でもそれが浸透しない理由は今、縷々、皆さんがおっしゃったことだと考えます。
一方ですごく象徴的だと思ったのが、TSMCになるとみんな張り切ってやるということです。結局、目の前で儲かりそうだとか、この波に乗らなきゃって思ったら、人ってどんなに面倒くさくてもやるという、すごく当たり前のことが今日、皆様の話を伺っていて、改めて理念だけでは人は動かないということがよく分かりましたという、それは私なりのまとめです。
だとすれば、理念はこうやってエンゲージメントだとか対話を続けることはとても大事だと思うんですけど、実弾やビジネスにつながるような話が本当にどれぐらい金融機関なり、日本商工会議所さんなり、北九州市のコンソーシアムなり、勉強だけじゃなくて、これをこのビジネスをみんなでやろうというのをどうやって具体化できるかということが実は一番大事じゃないかと思います。それをどうやったらできるのかは答えがあったらとうにやっているのかもしれないですけど、それはでも現実としてきっとそうなんだろうと思いました。
TSMCみたいなのが世界中というか、日本中にいっぱいあればいいんですが、多分そうはならないので、何をやったらいいかということと、あともう一つは、当たり前のことですけれども、スコープ3が本当にマンデタリーになっていったら、いやが応でもサプライチェーンの中小企業に波及するんだよということはちゃんと伝えないと、いけないんじゃないかなと思います。これは、あめとむち作戦だったら、あめはTSMCだと思いますが、むちと言ったら金融庁さんに悪いですけど、それをどうやってやればいいのかと基本的な発見ですけど、改めて思いました。
【水口座長】 ありがとうございました。それでは小野塚さん、高村先生、そして長谷川さん、足達さんという順番でいきたいと思いますが、小野塚さん、お願いいたします。
【小野塚メンバー】 ありがとうございます。地方に出張中なので、リモートで失礼いたします。プレゼンターの方ありがとうございました。
私は科学と金融による未来創造イニシアティブというNPO、一般社団法人をやっている者ですけれども、今、林さんがおっしゃったように実弾の話というのはビジネス界、金融界ですごく重要だという一方で、私もそこに25年ぐらいいたんですけれども今、やっている活動の一つがこの科学と金融の距離を近づける活動で、それに関連する産学連携の話というのが皆様からそれぞれ出てきたと思うんですけれども、この辺りで例えば、これは大下さんでしたでしょうか、のところでラボをつくっても応募がなかったというような話もあったんですが、この辺りはぜひもう少し聞かせていただきたくて、できれば例えば協働するような形でさらに啓発していきたいと思うんですけれども。
実弾に行く前のコラボレーションというところも、ここは時間がかかってもよい形でじわじわと浸透させていくものなのかなと私は信じているんですが、この辺りの継続活動についてどのような形でお考えかを、ぜひ大下さんと、それから森永さんと、できれば地銀の関係の方からも一言で構いませんのでお伺いできればと思いました。
【水口座長】 ありがとうございます。大下さんと森永さんには、最後に少しコメントしていただきたいと思います。
【小野塚メンバー】 お願いします。
【水口座長】 その前に高村先生、お願いいたします。
【高村メンバー】 ありがとうございます。日商の大下さん、それから北九州の森永さん、どうもありがとうございました。この間、中小の企業の皆さんとお目にかかる機会があり、取り組みの一歩を踏み出していらっしゃる企業の方のお話を聞くと、どこから、どういうきっかけで、どういう情報があって動かれたんですかと伺うと、地域の金融機関、それから自治体、それから日商さん、都商さんのような経済団体っておっしゃるんですよね。そういう意味で、今日プレゼンをしていただいた日商さんと北九州市さん、それから地方銀行のお二方の主要な、ある意味で中小企業に対して情報を伝える取組をしていただく上での、キーステークホルダーに来ていただいていると思います。
そのときに、これらの地域の金融機関と自治体と経済団体がどういうふうに連携をしていくか。私、北九州市さんいらっしゃるのであれですけど、本日事務局から事例で示していただいたところでも自治体というのは一つの取組を、それから連携をつくっていく上でも非常に重要な鍵になるんじゃないかと思いました。これが1点目です。
2点目ですけれども、スライドの22のところで、企業の特性に応じた中小企業に対する脱炭素支援の在り方についてお示しいただいているかと思います。私、若干このスライド、ミスリーディングな気がしていまして、むしろ先ほどまでの議論や御報告を聞きますと、中小の企業のできるだけ多くの方、中小企業の皆さんに取り組んでいただく、今、取り組んでいただかないといけないことというのを今、企業特性に応じて整理をしていただいているんですが、そうじゃなくて、改めて取引先の拡大も含めて考えたときに、こういう取組が必要ですよということを強く押し出したほうがいいんじゃないかと思います。
一つは、もう明確に個社の排出量の算定と情報を開示していくところについては、報告にもありましたようにそういう報告、排出量の算定をサプライヤーに対して求めているという企業も、求められたという企業も圧倒的に増えてきていまして、さらに取引先を本当に広げていこうと、事業を拡大しようと思う企業さんにとっては、それが本当に必要な情報になってくると思います。
もう一つ、手塚さんがおっしゃった点、重要だと思っていまして、これは温暖化対策、気候変動対策でもあるんですけれども省エネの対策ですとか、あるいはスライド22にも書いていただいているんですが、ZEB、ZEHといったような建築物対策などは国の政策としても整合していますし、どの類型、特性の企業であっても今、取組を考えていただくのが企業の収益にとってもいいという、そういう対策をしっかり出したほうがいいんじゃないかと思っております。
申し訳ありません。3点目が岸上さんおっしゃった点、私、同じことを申し上げようと思っていまして、今、金融機関を通じても様々な排出量の算定ツール、サービスを提供していただいていて、それが中小企業さんの算定、排出量の開示にもつながってきているんですが、実際にはサプライヤーの企業さんから情報をもらって開示につなげていこうという動機があって情報を求められていると思いますので、そうした情報開示の要求事項と合った形の算定の方法になっているかどうか。これは、何らかの形で確認といいましょうか、そういう情報がサービスに伴って示される必要があるんじゃないかなと思います。
もう一つ最後ですけども、今回1個だけ、もう少し掘り下げて、ぜひいただけるといいなと思っていましたのが、地域の金融機関が貸出し、あるいは投資をされることの関わりで中小企業さんに直接というのはもちろんそうですけれども、広く地域の例えば住民に対していろんなサービスですとか、商品について貸付けを行うような、金融商品、サービスの提供が結果的にその地域の脱炭素化と地域の中小企業さんのGXの取組を支えるというタイプの類型があるんじゃないかと思っています。
先般、近畿経産局さんの取組で滋賀銀行さん、御紹介になっていましたけれども、ZEHの取組につながる太陽光パネルですとか、蓄電池といったようなエネファーム、こうした設置をされた部分について、ローンの金利について免除する、ローンのそこの部分について金利を免除して全体として金利を下げるという商品を提供すると。そうすると住宅業者さんも良質な住宅を比較的安く提供ができる形で、住宅業者さんにとってもそういう製品を押し出しやすいし、滋賀銀行さんの貸出額も大きくなるという、そうしたお取組がありました。
こうした製品サービスの提供というのは恐らく他にも例があると思っていまして、先ほどどなたか、林さんでしょうか、おっしゃった、いい取組を広げていく例として、この類型についてもぜひ地域金融の金融機関の皆さんの取組を御紹介いただけるといいなと思います。
すいません、以上です。
【水口座長】 ありがとうございました。それでは長谷川さん、お待たせしました。お願いします。
【長谷川メンバー】 ありがとうございます。経団連にとっては、地域の中小企業の脱炭素への取組は少し距離のあるテーマだったので、非常に今日は勉強になりました。
たまたまですが、昨日の経団連のESG情報開示関係の会合で、資料の21ページにございますサステナビリティデータ標準化機構の方に御説明をいただきました。以前から中小企業のサプライヤーが複数の大企業や取引銀行から、異なるフォーマットで脱炭素や最近では人権DDなどの調査依頼を受けて、それらに対して回答するだけでかなりの時間やコストがかかるという話を聞いておりましたので、グローバルフレームワーク対応ではなく、中堅中小企業、非上場企業を対象に非常に絞り込んだ開示テーマを標準化したものを提供することで、銀行とサプライヤーとのエンゲージメントのコストを引き下げるという取組は非常に重要だと思います。
これは単に中小企業のサプライヤーにとって重要ということだけでなく、今後、EUのCSRDのように内外からサステナビリティ情報開示の要請が大企業に対しても強まる中で、大企業がバリューチェーン全体を通じた脱炭素を実現していこうと思えば、必ず中小のサプライヤーにも取り組んでいただかなければ困るので、そういう意味で、中小企業の負担軽減を目指すこうした取組は、横展開し、全国的に広げていっていただきたいと思います。
また北九州市や東京商工会議所のご説明の中で、中小企業も脱炭素の重要性は分かっているけれども、現下のコストプッシュインフレや人手不足の問題がより緊急なので、脱炭素は後回しになっているというお話を聞きました。経団連では、現在、パートナーシップ構築宣言への賛同を求めることで、大企業が適正な調達価格を実現し、成長と分配の好循環をサプライチェーン全体に広げるという取組に力を入れておりますが、こうした取組も、中小企業の脱炭素への取組にとっても重要だと改めて感じました。
最後に、これは本当に感想ですが、地域での事業創造等に関わる課題のところで、大学発スタートアップや日本のベンチャーキャピタルに関わる課題をいろいろ書いておられますが、これは特に地域に限った課題ではないと思います。日本の大学関係者に起業家のマインドがないとか、技術水準は高いけれども、その技術をスタートアップに結びつけるパスが欠落しているとか、ベンチャーキャピタルにおいても、アメリカのように技術や研究の目利き・価値判断ができる、Ph.D人材がいないとか、日本全体に言える課題であり経団連のスタートアップ委員会で、今年は、大学発スタートアップとベンチャーキャピタルのエコシステムに関して提言をまとめる予定です。そういうところがうまく回っていけば、地域においてもうまくいくのではないかと思います。以上です。
【水口座長】 ありがとうございます。では、足達さん、お願いします。
【足達メンバー】 ありがとうございます。2点あります。手短にやります。
1点目は、脱炭素の脈絡で確信犯的に領空侵犯しますが、第一次産業に対する金融というのが、日本の場合は、地方銀行さんの領域と制度上分かれています。しかし、例えば足元で言うとソーラーシェアリングとか、農地を金融機関が一旦買い取って多様な使い方ができるようにするとか、規制改革で脱炭素にも結びつくし、地域の発展にも結びつくような可能性があります。金融庁さんの委員会でもありますので、ぜひ地域のサステナブルファイナンスを考えるときに、一次産業向けの金融というところも積極的に捉えていくべきだということを申し上げたいと思います。
それから2つ目は、脱炭素も大事ですけれども、適応、もしくはその先にある災害に対する金融ですね。これも視野に入れたい。自然災害は1月の能登半島の例でも分かるように、日本特有と言ってもいいぐらいのイベントです。これに対して金融がきちんとサポートができるかは、サステナブルファイナンスの日本の特色ある側面として、議論をしていきたいなと考えます。
例えば今回の能登の例でも、クラウドファンディングが随分今、活用され、被災された事業者への支援に役立っています。それから、東日本大震災も13年たって、復興で成功した企業、そうでない企業、そこで金融機関がどんな役割を果たしたかというケーススタディーができるような材料もあります。そこで、ディザスターリスクファイナンスという領域、国際的にも議論が始まっていますので、この辺りもクライメートと両輪になるぐらいの形で、地域金融というアジェンダのなかで議論できればというのがコメントでございます。以上です。
【水口座長】 ありがとうございます。確かに一次産業の話が全然抜けていましたし、災害、それから適応ファイナンスという議論も必要ですね。ありがとうございました。
二木さん、お願いします。
【二木メンバー】 各社さん、地域においてもいろいろな支援をされているというのは大変感銘を受けたところであります。ただ、これって、各地域金融機関さんも結構時間かけて、手間かけて、コストかけてやっていらっしゃると思うんですよね。私、いつもこのサステナブルファイナンスの議論を聞いていて思うのは、旗を振ってそれを支援されている側の収益性みたいなもの、ふくおかフィナンシャルグループさんも京葉銀行さんも上場されていますので、収益性についてはどうしても経営上大きな課題にはなってくるはずなので、いろいろな支援をされている中で、そういう観点からの議論というのはないのか。例えば何かKPIみたいなものがあれば、それは一つ教えていただけるとありがたいなと思います。
【水口座長】 ありがとうございます。
ご質問の点は、後ほど、池辺様と本村様からコメント頂きたいと思いますが、その前に、お手元に吉高さんからいただいたコメントをお配りいたしました。オンラインの方に届いているのか分からないですけれども、吉高さんは今日御欠席ということで、事前に御意見をいただいております。細かく全部を読む時間はないのですけれども、地域金融機関向けのファイナンスド・エミッションの計測の問題、それからカーボンニュートラルに向けた地域コンソーシアムの洗い出しということで、各地でできていますよねということ。それから具体的な事例の共有、そして、地方財務局でケースセミナーに実際に参加されたということについて、コメントをいただいております。詳しくは御覧いただければとは思うのですけれども、特にファイナンスド・エミッションの計測・活用の部分は、先ほど各金融機関さんのサポートもいろいろありますという御議論もあって、今日の議論の一つの中心なのかなと思いました。
高村先生からも少しコメントあったかと思いますけれども、ファイナンスド・エミッションのいろいろなサービスがある一方で、これがそもそもの目的に適合した計測になっているかどうかということが非常に重要でありまして、単純に係数を掛けて計算したのでは、結局実態と合わないものが出てきてしまい、サプライチェーンを構築していくときの参考になりません。しかし、あまり細かい難しい計算をさせたのでは実務に広がりませんということですので、そこの点は今後検討すべき課題なのかなと思っていますということで、御参考であります。
藤井さん、お願いします。
【藤井メンバー】 ありがとうございます。手短に。今おっしゃられたポイントと、それから吉高さんからのコメントの中で、コンソーシアムの洗い出しというコメントがあり、今日の資料でもいくつかの「コンソーシアム」が紹介されているのですけれども、その洗い出し、あるいはエミッションの計測方法の洗い出し等といったことは必要だと思うのですが、ただ並べるのではなくて、例えばこのイニシアチブは概算を行うためのものだとか、これはPCAFベースだとか、あるいはコンソーシアムも、例えば情報交換のためのコンソーシアムだとか、ビジネスマッチングまでフォーカスしたコンソーシアムだとか、あるいは事例の共有も同じだと思うんですけれども、そうした類型を分けると、どこを見るべきかというところがフォーカスされるのではないかと思いましたので、コメントとして申し上げます。ありがとうございました。
【水口座長】 ありがとうございます。それでは、ここで、先ほど小野塚さんからも御質問いただきましたけれども、大下様と、それから森永様から、それも含めて全体について、コメントとか御感想などいただければと思いますが、大下様、いかがでしょうか。ここまでまとめて。
【大下様】 皆様、いろいろとコメントをありがとうございました。先ほど御説明したとおり、具体的な成果というのは少ないですけれども着実に出てきていますので、取組の方向性自体は間違っていないと思っています。粘り強く取組を進めていきたいと思っています。
その中で、お話があった、儲かりそうだという視点というのは、非常に中小企業に取組の裾野を広げていく上で大事なポイントだと思っています。エネルギー価格が高止まりしている、Scope3で排出把握の要請があって取引先から外されるかもしれない、何年か後には賦課金が導入になってエネルギー価格がさらに上がるかもしれないという中で、環境問題への貢献というのももちろんあるけれども、あなたの会社の経営を安定的に成長していく上で、収支を改善していく上で、あるいはこうした取組をすることによってイメージが上がって若い人の採用につなげる上で、脱炭素の取組って中小企業にもメリットありますよということを訴え、そうなった事例をしっかりと紹介をしていくことで、裾野を広げ、アクションを促していきたいなと思っています。東商の事業の冠につけた「攻めの脱炭素」の「攻めの」というのは、単に環境貢献ではなくて経営改善につなげていくんだという意味を込めたタイトルになっていますので、こうした取組をしっかりやっていきたいと思います。
あともう一つの課題は、最終的には資金もですけれども、実際に取り組む人が中小企業の中に必ずしもいないんですよね。人手として足りない、あるいは知識や技術が足りないということがあります。先ほどパートナーシップ構築宣言のお話がございましたけれども、我々、GX実行会議で日商の小林会頭なども発言をさせていただいていますが、具体的に中小企業が削減の取組を進めていく上で、我々や金融機関さんがやりましょうという投げかけはしていきますけれども、実際に必要な作業の部分に関しては専門家も非常に限られていますので、可能なのであれば、お取引関係でつながっている大手の企業さんは、傘下にある中小企業さんの取組を自社の技術者が協力をすることで前へ進めていくというようなことも、ぜひお願いをしたいなと思っています。
私からは以上です。いろいろと御意見いただきまして、ありがとうございました。引き続き頑張ってまいりたいと思いますので、金融機関の御協力・連携をぜひお願いをしたいと思います。ありがとうございました。
【水口座長】 ありがとうございます。それでは、森永様、お願いいたします。
【森永様】 北九州市、森永です。いろいろ御意見頂戴いたしまして、ありがとうございました。
私ども北九州市は、人口が92万人で、企業数でいきますと、全産業で2万7,000社ほどございます。ですが、基礎自治体でございますので、地域の企業と日頃から顔の見える関係をつくって仕事をしておりますので、そういう意味では、2万7,000社あるんですけれども、その中で市が直接支援できる件数は限りがあるんですけれども、成功モデルをつくってそれを展開していくとか、支援を待つまでもなくどんどんGXの取組みを進めている企業もありますし、そういう意味でいきますと、GXはまだ緒に就いたばかりですけれども、数年前、DXの取組を始めたときも、最初は少なかったんですけれども、ここ5年ぐらいで、市の支援を受けた企業だけでいきますと、もう200社程度出てきておりますし、国の支援を使っている企業を含めますともっと増えていますし、また、行政が把握できていなくて、世の中がそのように動いていく中で、どんどん自ら変わっていかれる企業さんたちも出てこられておりますので、そういった形でGXも広げていくことができればいいかなと思っております。
もう1点、今回のコンソーシアムもそうですけれども、産学官金で集まったときに行政が意識しているのが、行政としては地域の経済をよくしたいという思いがあるんですけれども、参加するそれぞれの皆様にとってメリットがないと、それはもう全く行政のやりたいことだけ押しつけても全然結果としていいものにはなりませんので、きちんと、中小企業のメリットだけではなくて、大企業さんも、Scope3といった話もありますので、ぜひコンソーシアムに入って、そのメリットをお感じいただきたいと考えております。また、金融機関さんも、設備投資が進めば資金需要が発生するわけですし、大学も、企業さんの課題が、自分たちの研究のシーズを使って解決することができれば、共同研究といったメリットが出るわけですから、このように参加する方にとってメリットが出るような運営になるというようなことを心がけながらやっているというところでございます。以上でございます。
【水口座長】 ありがとうございました。それでは、時間が押していて申し訳ないですけれども、少し簡単に、池辺様と本村様のコメントをいただければと思います。
【池辺様】 福岡銀行、池辺でございます。先ほど二木さんから、自社の収益性も経営上のポイントではないかというお話がありましたので、ここだけ申し上げます。
我々ふくおかフィナンシャルグループは、「サステナビリティ方針」の中で、「地域経済発展への貢献」と、我々「FFG企業価値の向上」との好循環サイクルを創り、持続可能な地域社会の実現に貢献することを方針としております。我々は、先ほどファイナンスとコンサルティングをやるということを申し上げましたけれども、高度なソリューションを地域のお客様に対して提供することで地域の課題を解決すると、競合との差別化、お客様のウィリングネス・トゥ・ペイ、手数料や収益につながると思いますので、そこが我々の持続的な収益向上につながり、この収益が成長投資や人的投資、投資家様への還元につながると考えております。こちらの好循環を回していきたいと思っておりますので、コメントさせていただければと思います。以上です。
【水口座長】 ありがとうございます。本村様、お願いします。
【本村様】 まさに今回の議論を通じて感じたことを一言で申し上げれば、先ほどもありましたが、何らかのインセンティブを与えることのできる環境を整えることが、脱炭素への近道と考えます。炭素税の導入もその一つであり、今年からは、住宅取得控除制度においても、環境に配慮した住宅が控除を受ける対象物件として設けられています。そして、我々金融機関も、環境に配慮した住宅へのローンについては、金利条件を引き下げるなどの商品提供しております。収益性に関するKPIのご質問について弊行に関して申し上げますと、ESG投融資の実行目標を掲げています。2030年度まで1兆4,000億、その半分を環境向け投融資として実行する目標を立てております。ただ、その投融資が環境改善につながっているかという検証については、課題として認識しています。簡単ではありますが、以上となります。
【水口座長】 ありがとうございました。地域の課題、いろいろあってなかなか難しいなと思いながら伺っていました。
先を急いでいて申し訳ないですけれども、今日、もう一つだけ皆様に聞いていただきたいことがありますので、本日の地域金融の話はここまでとさせていただきまして、最後に、この有識者会議としての報告書の在り方について、事務局からお話をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 次回は5月28日、次々回は6月中旬で会議のお時間をいただいていますところ、当会議では過去3年間、この時期に報告書をまとめてきており、進捗を定期的に発信するということは引き続き重要かと思います。
その上で、報告書のまとめ方について御相談です。どのぐらいのボリュームや構成にするのか、あらかじめ御意見をいただけると、作業や議論が組みやすいと思っています。
口頭で申し訳ありませんが、御相談は3点です。第一にボリュームでありまして、これまで、初年が30ページ程、2年目と3年目が40ページ程ありまして、用語や基礎知見を丁寧に発信しようという経緯があったと思いますが、より端的な報告書にするかどうかということが1点目です。
また、これまでは、企業開示、市場機能、金融機関、その他という、3本の柱プラス1という区分でまとめていました。その際に、例えば脱炭素というテーマを考えたときに、これは開示とか市場とか金融機関というような括りではないわけです。そのため、例えば報告書でまとめる際は、金融機関の柱が一番近いだろうということで区分していますけれども、様々な論点が混線してしまうので、もう少し分解した方がいいのではないかというお話を昨年いただいたかなと思います。
議論用に簡単な絵を1枚、投影させていただいていますけれども、分解してみるとすると、というものがこのイメージでして、個別には様々ご意見あり得ると思いますので、あくまでイメージですけれども、例えば、よくファイナンスの手法とその対象として重なってくる部分として、サステナビリティ、グリーン、トランジション、インパクト、ソーシャルなど、サステナビリティの分野についての区分というのが一つ、軸としてあると思います。グリーンというのは脱炭素についてのことと言えばそうですけれども、今日の御議論のように、地域で実践的に進んでいるか、大企業と大手金融機関や投資家との対話が進んでいくかといった、進捗管理という意味では別のことだとも言えます。一つのやり方として、進捗管理をしていく視点で、分割してまとめていく考え方もあるかと思ったところです。
当会議の意義として、サステナブルファイナンスに関わる本邦の取組の全体を総括して、足らざるところを発信していく役割があるというのは、今年特に何回か意見をいただいたところですけれども、そうした観点から、進捗と課題発信を重視して、少しきめ細かめに区分を分けて、テーマごとにより端的に記載していくやり方もあるかと思います。そうした場合、個別の項目の記載が短くなり全体感が分かりにくいかもしれませんので、例えばエグゼクティブサマリーのような形で全体感は端的に記載して、冒頭或いは最後に入れることも考えられると思います。
様々申し上げましたけれども、御相談は3点ありまして、分量を少しコンパクトにするかどうかという点が1点目。端的に進捗と課題を記載していくことが、分かりやすさという観点でも重要だろうかという点が2点目。別途サマリーのような形でポイントをまとめるというのが3点目です。
【水口座長】 いろいろなことがありますけれども、ありがとうございます。まず私から先にコメントさせて頂きますと、この話は、本当はこれだけで30分、1時間ぐらいの議論が必要だと思いますけれども、おっしゃられたように、結局何が進んだのか、何が課題として残っているのか、これから何をするのかということを報告するんだろうと思いますが、それをすごく細かくやっていくのかどうか。例えば開示については、ちゃんとSSBJとか、ディスクロージャーワーキンググループがやっているので、そっちに任せるのか。生物多様性とかネイチャーポジティブは環境省が委員会をつくっていますし、トランジションはここで扱うべきなのか、経産省の方で書けばいいのか、ここでは何をテーマにして細かく書いたらよいのか、そういうことと、それからそういう意味で、この枠組みを、多分、このサステナブルファイナンスの分野も細かく進んできたからこそ枠組みが細かくなっているんですけれども、この枠組みでいいのか、何か足りないものはないかとか、もうちょっとまとめたほうがいいのか、そういういろいろな議論があるんだと思います。今日御意見いただけなかったら、後ほど、個別にと思いますけれども、せっかく手が挙がっていますので、林さん、岸上さん、藤井さんの順番で、まずは一言いただきたいと思います。
【林メンバー】 書いてみないと分からないですが、気持ちはなるべく短く。それは、読む人が読まないから。私たち委員会のメンバーは40ページ読みますけれども、一般の方は読まないので、できるだけ短く簡潔に、そしてエグゼクティブサマリーを2枚ぐらいでできればベストかと思います。このサステナブルファイナンス有識者会議は、唯一とは言いませんけれども、一番包括的にやっているので、日本で今やっていることが包括的に分かるようにして、でも細かいところはQRコード行けば分かるよみたいにしておくのが一番親切じゃないかと思います。それから作る方にとってもレビューする側にとっても親切かなと思います。以上です。
【水口座長】 QRコードはすごいアイデアですね。
【岸上メンバー】 林さんの御意見に賛同するので、そこは割愛した上で。今日も池辺さんからもおっしゃっていただいたように、全体像というところで、コンソーシアムも委員会も、サステナブルファイナンスに関連してどういうものがあるかのマッピングが2ページとかあって、そこからそれぞれの委員会に飛ぶような形などにすれば、内容としてはコンパクトにしたとしても、すごく意味があるものになるんじゃないかと思いました。
【水口座長】 確かに。全体像がわかることが必要ですね、まず。藤井さん、お願いします。
【藤井メンバー】 報告書のボリュームについては林さんと同意見ですけれども、量を減らすためには脚注やレファレンスをうまく活用すればいいと思います。例えば第1次報告の書3章参照、といった形です。
それから、たしか私、去年のこの会議で、市場機能の発揮や企業開示の充実等といった報告書の構成は、金融庁の有識者会議としては網羅的だけれども、5年たってもこの分類なのかどうかは要検討というコメントをしたと思うんですけれども、まさに時代が動いて、金融庁のスコープの中でも、議論の軽重というのは変わってきているので、集中すべき論点を端的に切り出していくというということについては賛成します。
ただし、そうすると人によっては構成が変わって戸惑う方もおられると思うので、もし可能であれば、マッピングというか、前回の章構成と新しい構成を横に並べた対比表のようなものがあると、戸惑う方が少ないのかなと思います。以上です。
【水口座長】 なるほど。ありがとうございます。継続性は大事ですよね。ありがとうございました。
他によろしいでしょうか。ちょうど時間になってしまいました。この報告書の作り方については、皆さんそれぞれいろいろ御意見があろうかと思います。この後、メール等でぜひ御意見をいただければと思います。その上で、今後、案をつくった上で事前にお送りしてから、皆さんに議論していただくという形にしたいと思います。そういうことでよろしいでしょうかね。
次回は5月28日になります。
本日も大変御協力いただきまして、ありがとうございました。本日はこれで終了したいと思います。ありがとうございました。
―― 了 ――
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