「サステナブルファイナンス有識者会議」(第27回)議事録

  1. 日時:令和7年3月31日(月曜日)13時00分~15時00分
  2. 会場:中央合同庁舎7号館 9階 905B会議室 及び オンライン

【水口座長】

ただいまより、サステナブルファイナンス有識者会議の第27回を開催いたします。本日も御多忙のところ御参集いただきまして誠にありがとうございます。本日は最初に事務局からこれまでの振り返りと、今日議論していただきたいことについて、簡単にお話をいただいた後に、3つのプレゼンを予定しています。

1つは恐縮ですが、私から簡単に最近調査したことの気づきをお話させていただき、次に金融庁が委託をして調査していただきました、サステナビリティ投資の実態等に関する調査の結果概要につきまして、本日有限責任監査法人トーマツの前田様、森様、伊藤様にお越しいただいております。今日はありがとうございます。お話をいただきたいと思います。

そして最後にサステナビリティ商品の提供の実務課題ということにつきまして、日本証券業協会様から、野村證券の高橋様にプレゼンをいただきたいと思います。その上で、1時間ほど皆様と議論をし、6月には報告書をまとめていきたいと思いますので、この報告書の取りまとめに向けた議論をさせていただければと思います。

それでは早速金融庁の方からよろしくお願いいたします。

【高岡サステナブルファイナンス推進室長】

サステナブルファイナンス推進室の高岡でございます。今回も皆様お忙しいところどうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。では時間も限られていますので私の方から資料1の事務局説明資料を簡単に御説明させていただければと思います。

資料右下1ページは既に前回12月の会議の際にもお示しした10月でいただいた御意見ということでサステナブルファイナンスの意義ですとか、サステナビリティ向上とリターンとの関係についての御意見、それからサステナビリティ投資商品の普及に向けた観点からの御意見といったところになります。こちら一度御説明させていただいているところですので、割愛させていただければと思います。

次に資料右下2ページを御覧ください。だいぶ時間が空いてしまいましたけれども、こちらが前回12月に開催した会議の際の主な御意見でございます。1つは、個人のサステナビリティ投資に関する理解・選好に関する御意見ということで、こちら水口先生から御説明いただいた調査についての概要から得られた示唆というところになりますけれども、投資経験がある個人のうち4割弱がESG投資又はインパクト投資を選んだということから、環境や人権のリテラシーが高く環境への意識の高い人ほどESG投資・インパクト投資を選ぶ傾向があるのではないかということ。

それからESG投資・インパクト投資がこれらの社会課題・環境課題への解決に貢献し得るという情報を継続的に発信してリテラシーを高めていくことが有用なのではないかということ。また、金融リテラシーが高いとESG投資・インパクト投資を選ぶ傾向があるのではないかといったところになります。

次の下のところになりますけれども、サステナビリティ投資に関する実態・課題についての御意見ということで、1つ目の丸ですけれども中長期的な投資リターンの最大化やダウンサイドリスクの抑制、更には、その持続可能な社会の実現にESG投資やサステナビリティ投資が資するということで、運用する全ての商品についてESGを最大限考慮しているという投信協様からの御意見。

2つ目の丸は中長期的に社会的課題が解決されてそれが企業価値の向上に繋がるという投資の時間軸を正確に理解してもらうことが必要なのではないかということ。その上では、社会的価値を容易に想像することができる名称を付すなどといったことが考えられるのではないかといった御意見。

3つ目の丸ですけれども、サステナビリティ課題への対応というものが企業価値の向上に繋がるというところのロジックの説明ですとか、ESG評価の高い企業の方が株価収益率が高いといったことが分かるデータの提示などというものが理解の促進に繋がるのではないかという御意見。

次の丸ですけれども、こちらは端的に申し上げますと金融リテラシーの確立というのが重要になってくるのではないかという御意見。

最後の丸が生命保険会社においてはですけれども、保険加入者とのサステナブルファイナンスに関する対話を通じてリテラシーの向上ですとか、意識の醸成を図ることがサステナブルファイナンスの底上げに繋がるのではないかという御意見でございます。

次のページ資料右下3ページになりますけれども、こちらは個人への投資機会の拡充に関する御意見ということですけれども、1つ目の丸でございますが、サステナビリティ投資商品に関する啓蒙・広報活動が重要ということと、特に若い資産形成層がESG投信に投資を行い、長期的な資産形成が推進されることが重要ではないかといった御意見。

次の丸ですけれども、IOSCOの提言内容については事務局から御説明を一度させていただいておりますけれども、必要条件として最低限求められる内容ということですが、やはりサステナブルファイナンスについては焦点を当てるテーマというものが間々移り変わることが多く変化が激しいということで、やはりルール・ベースよりかはプリンシプル・ベースとすべきではないかという御意見。

それからサステナビリティ投資商品の分かりやすさを向上するという上ではどのような点に、例えば環境重視型なのか、あるいは社会的な、何かそういう特定の課題を重視するものなのかといったようにどういったところに重点が置かれているのかといったところで分類するということも考えられるのではないかという御意見。

次の3つ目の丸ですけれども、米国のようにESGフォーカスからインパクト投資といった、ある程度幅広くこのサステナビリティ投資商品というものを幅広く捉えつつ、教育を通じてリテラシーの向上を図る中で段階的にサステナビリティ投資とはどういうものなのかという分類化みたいなのを進めていくというのが日本の実態に即しているのではないかという御意見。

次の丸ですけれども、ファンドマネジャーが投資判断に当たってどのようにファンドのパフォーマンスへの貢献を見ているかという観点で類型化をして、それを投資方針ですとか目論見書、パンフレットなどにおいて示すということが個人投資家の機会の提供ということに繋がるのではないかという御意見。

次の丸ですけれども、個人投資家においてはやはり投資先企業の事業内容の理解を通じて商品理解を深めるということにはやはり一定程度の難しさがあるのではないかという、そういう投資商品の手触り感を感じるための、その理解を深めることは、やはり個人においてはなかなか難しいという前提に立つと、やはり何らかのラベルを付すということで投資家は認知しやすくなり、また商品選定の判断材料となる効果を期待できるのではないかという御意見。

最後に論点整理のあり方ということで個人投資家の目線でサステナブルファイナンスの意義、それからサステナビリティ投資を行う課題、それからその課題への対応策という切り口・観点から整理をしたらどうか、といった御意見をいただいたところでございます。

次のページ資料右下4ページになりますけれども、こちらが本日御議論いただきたい事項でして、本日トーマツの方から実態把握結果について御報告させていただきますけれども、この実態把握結果を踏まえまして、サステナビリティ投資の意義・効果に対する認知・理解を促進する上で、リスク・機会・リターンの関係性に関する分かりやすい説明など、サステナビリティ投資商品の組成、提供実務の観点から、具体的にどのような取組みが有効であると考えるか。その際グリーンウォッシュの防止を含め投資家保護などの観点からどのような点に留意すべきと考えるか、といったことについて御議論いただければと存じます。実態把握を踏まえた議論の主な着眼点として、以下5つのチェックでお話をさせていただいているところでございます。また今申し上げた個人に関しての御議論がアセットオーナーへの投資機会の拡充を図る観点からも、どういった示唆があるのかといったところも含めて御議論いただければというふうに考えてございます。

事務局からは以上となります。

【水口座長】

はい、ありがとうございました。いろいろ質問もあろうかと思いますが、全部終わってから御質問・御意見いただきたいと思いますので、続きまして私の報告を少しさせていただきたいと思います。

資料の1ページ目は表紙なのでこういうESG投資に関する個人投資家向けのインタビューをしました、ということでそこから得られた示唆ということですということで、次のページをお願いします。

実は大学の研究で前回御紹介した研究の続きということで、次の段階の研究をしておりまして、個人投資家の心理尺度を作ろうという研究をしているのですが、その一環で個人投資家10人にインタビューをしました。

今回はその研究の報告ではなく、そのインタビューから得られた示唆について皆さんに共有したいということです。どんな人にインタビューをしたかというのがその下なんですけども、岸上さんにも御協力いただきまして「きんゆう女子」という、投資をきちんと勉強している女性のグループがあるんですが、この人たちから6人、それと、いわゆるアンケートのプラットフォームから抽出をした、「ESG投資を知っています・やったことがあります」という男性を4人という形でインタビューしました。

次のページを御覧いただきたいんですが、そこから発見されたことがいくつかあります。1つ今日このお話は、個人投資家に対する60分のインタビューで、10人しかいないので、必ずしも社会の全体を把握しているとは限りません。非常に限られた範囲のインタビューであります。

この後のトーマツさんからサーベイの結果はいただいていますから、サーベイでその幅広で網羅性のある調査をしていただいていると思うんですが、一方でサーベイではなかなか入っていけないような個人の方のその回答の裏側にある本音みたいなものは、こういうインタビューで把握できる部分があるので、大規模サーベイとインタビューというのは相互補完的な関係にあると思っております。

その前提で聞いていただければと思うんですが、インタビューをしてですね、聞いてみて分かったことの1つは個人投資家といってもいろんなタイプがいるなということです。特に「きんゆう女子」のようにきちんと投資を勉強する人、きちんと投資を勉強して、さあ始めましょうっていう人たちは大体、大きく2つの方向に分かれるという印象を受けました。

1つは個別株をきちんと分析をするという人たちでして、投資先をきちんと分析をして、自分で投資先を選ぶ人たち。この人たちの中には、やっぱり単にリスクリターンだけではなくて、応援したい企業かどうかとか、どういうふうに地域に貢献してくれている企業であるのか等、そういうものも判断基準の1つに入っている。比較的事業をきちんと分析をしていくと、企業に対するある種の親近感も生まれてきて、長期の方針、会社の経営方針ですとか、そういうものを理解して投資をするという方向にいくようではありました。

この考え方はESG投資とかサステナブルファイナンスと親和性があるなというふうに思います。しかし、先ほどの高岡さんの御説明の中に出てきたサステナブルファイナンス商品とか、サステナブル投資商品というカテゴリーには入りません。個別株を個別で売買しているわけですから、というか比較的長期で持つ人たちばかりなので、長期投資家なんですけども、でもそれはサステナブル投資商品を買っている人ではなくて、自分でサステナブル投資をしているので、統計にはあんまり出てこないのですね。

こういうものをどう捉えたらいいのか、こういう、いわば、自分でサステナブル投資をしている人たちがサステナブル投資商品とは別のところにいるとして、ここは可視化されなくていいのかというのは1つの論点ではありました。

一方で、投資をきちんと勉強し始めて普通にいくと長期分散というところに行き着く。長期分散を進めていくとオルカンにいくということで、比較的インデックス型の投資信託を買っているんですという人が多いんですね。それで、インデックス商品をどうやって選ぶんですか、と聞くと、それは手数料の安いところですと答えるわけでして、そこにはESGの入る要素はあんまりない。一見、サステナブル投資をしない人というのは目先の利益を追求する人というふうに思われがちですが、そうではなくて、目先の利益じゃなくて長期に安定的に運用する人がインデックスにいっちゃうので、そうすると個別企業のESG要因のリスクリターンへの影響みたいなことはあんまり考えないという傾向があって、そういう人が多いもんですから、サステナブル投資商品を広めようってなかなか難しいのかなと。というのも、この後トーマツさんの調査でも出てきますが、社会全体で見ると、投信商品の7割~8割と比較的多くの部分はインデックス投信なんですよね。アクティブは少ない。

しかし、ESG投資に限って言うとESG投資商品の大部分はアクティブで、インデックスもちょっとあるわけですけども、アクティブの方が多いですね。ここのミスマッチはあるなということと、このインタビューで分かったのは、インデックス商品を買うときに運用会社の名前を気にしていますかっていうと、ほとんど気にしてないし、あんまり区別もついてないわけです。なので、どこの運用会社が運用しているかっていうことがあまり判断の材料になっていないわけです。

しかし、それで手数料の安いところにどんどん行くということは、普通に考えると、ESGをあまり考慮しない、そこにコストをかけないところにお金が集まるということになりますから、あんまりうまくいかないのではないかと、そういうこともちょっと思いました。

一番下にちょっと書いてみたんですけども、実はインデックス型でパッシブ運用している運用会社でもエンゲージメントという形でサステナブル投資をしているのですね。そしてそのいわゆるパッシブエンゲージメントにおけるエンゲージメントの質は、運用会社によって相当違うと思うんですけども、その質の違いは実は顧客には考慮されていないし、可視化されていない。

そこの部分を少し明確にすると、社会全体として、パッシブインデックスでも良い投資にお金が集まるということはあり得るのではないか。ちょうどGPIFがエンゲージメント強化型という形でマンデートを与えていますけども、それと同じような売り出し方をインデックスファンドでもできるのではないか。そう考えると実はESGインデックスだけじゃなくて、通常のパッシブファンドであってもサステナブル投資であり得るんだと思うんですけども、そういうことは言わないんですね。通常のパッシブファンドなんだけども、実はエンゲージメントしてます、エンゲージメントは全体でやるわけですから、エンゲージメントしている運用会社はみんなそれをやってるはずなんですけども、しかしそこのところは打ち出してないわけでして、何でそこは打ち出さないのかなと。だから、なかなか難しいらしいんですけど、そういう問題が1つあります。

それからもう1つ、ちょっと上に書いたんですけど、男性で投資経験が長い、30年ぐらい投資やっていますという人で、ESG投資もやっていますという人にも行き当たりました。ESG投資も一部組み込んでいますという、その投資経験の大変豊富な方は、なんでESG投資をやっているんですか、と聞くと、それはいろんな分散投資の中でこういうものの波が来るかもしれないから、それは分散投資の一環としてリスクリターンを考えて、これも1つの商品として買っているんですと、こういうことでした。それは大変投資に経験のある方にとってはそうなのかなと。

ESG投資と名付けたものの中でも、これから波が来るかもしれないものもあるから、それもちょっと入れておこうと、こういうことなんですけど、金融庁がサステナブルファイナンス有識者会議を通して広げたいサステナブル投資というのが、そういうものでいいのかと。つまり、それはそういうタイプの投資をやっていますよという人は結構いるんだと思うんですよね。いるんだと思いますけども、それは別に社会をサステナブルにしたいからやっているわけじゃなくて、合理的にやっているということなんだろうと思うわけです。

最後のページなんですけども、そういういろんなことを考えたときに、この6月の報告書で誰に対してどういうメッセージを出すべきなのか、そもそも金融庁がサステナブル投資を推進するのは一体何のためで、その目的に対してどういうサステナブル投資の推進をしたらいいのかということがあるんだろうと思います。

そもそもサステナブルファイナンスとは何のことなのか。それは個人投資家が幅広くすることなのか、機関投資家がやるべきことなのか、どういうサステナブル投資をしたらいいか。もう1つ、インタビューの中で特徴的だったのは、サステナブル投資がまだよく分かりませんという人も結構いました。「きんゆう女子」の人でもそう言うんですよ。これは何故かと言うと、まだ勉強を始めたばかりだから、まだそんな難しいことにはいきません、まずは基本から勉強しようと思っています、というのですね。

そこで気がついたのは、サステナブル投資とかESG投資というのは、基礎編ではなくて、応用編の勉強だというふうに世の中で認識されているということです。

でも本当はそうじゃなくて、サステナブル投資を通じて社会にどんなインパクトを与え、自分にどう跳ね返ってくるかっていうのは、実は当初勉強するときの一番最初の基礎編で入っているべきだと思うんですけど、基礎編ではなくて、なんだかとても難しい応用編のことを誰かがやっているらしいというふうに思われている。この認識を変えないことにはサステナブル投資というのはあんまり広がっていかないだろうなということを思いました。

こういうことをちょっと前提として頭に入れていただきながら、この後のトーマツさんとそれから高橋さんのお話を聞いていただいて、私達はどんな報告書を作ったらいいのか皆さんの御意見をいただければと思います。

それではお待たせしました、トーマツの皆様から御報告をお願いできればと思います。よろしくお願いします。

【前田様】

はい、ありがとうございます。有限責任監査法人トーマツの前田と申します。資産運用を専門領域としてございます。本日は貴重な機会をいただきまして誠にありがとうございます。

金融庁様より受託いたしまして私どもトーマツが今般実施させていただきました「国内外におけるサステナビリティ投資の実態等の調査」について御報告をさせていただきます。本調査はですね、国内外のサステナビリティ投資商品の受益者・商品提供者の双方の実態把握調査を行うことで、関係者の認識や実務の現状を改めて把握することを目的にしてございました。

御報告なんでございますけれども、冒頭私の方から概要を御説明の後、詳細資料に沿ってですね、御説明をさせていただきます。御報告は大きく2つのパートになってございまして、1つ目は、日本国内の個人を対象に実施いたしました、サステナビリティ投資に関するアンケート調査の整理・分析結果の御報告でございます。調査概要とサマリーを4ページ、5ページにまとめてございますが、個人向けアンケートでは、日本国内の個人に対しまして質問を送付し、回答を依頼しました。投資経験の有無、年齢等の属性のスクリーニングを行った上で、有効回答1万2,000人を対象に分析を行ってございます。

アンケート分析に基づきまして、本邦の個人投資家の実態調査から得られました示唆をサステナビリティ投資の認知度であるとか、投資への選好・経験、それから投資をしたい、または、したいと思わないのであればその理由といったような8項目に整理して御報告をさせていただきます。

2つ目のパートでございますけれども、本邦と海外のサステナビリティ投資の実態把握を目的といたしまして、国内外の代表的アセットオーナーおよびアセットマネジャー約40社弱を対象に実施をしてございます。そのインタビュー結果を御報告いたします。

調査概要とサマリーは20ページ、21ページにまとめてございますが、アセットオーナーにつきましては、国内7つ、海外10つのエンティティにインタビューを実施いたしました。国内におきましては、本邦の保険会社、企業年金、大学基金等を対象に、また海外につきましては、ソブリンウェルスファンド、保険会社等を含めましてかつ地域分散の観点から、欧州、英国、米州、そしてアジアからヒアリング対象を選定してございます。

アセットマネジャーにつきましては、国内の代表的な資産運用会社10社を対象に、海外につきましては、こちらも地域分散の観点から、欧州、英国、米国から各地域の代表的な資産運用会社9社、合計19社からヒアリングをしてございます。

インタビューでの聴取内容は、サステナビリティ投資をどう定義されているかとか、サステナビリティ考慮とリスクリターンの関係等5点に渡って整理をしてございます。国内外のアセットオーナーとアセットマネジャー双方から得られた御意見をこの後御紹介させていただきます。

それではですね、この後、私とともにこの調査を担当いたしました伊藤から、個別のスライドに沿ってポイントを御説明させていただきます。よろしくお願いいたします。

【伊藤様】

監査法人トーマツの伊藤でございます、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは早速ではございますがお手元の資料4ページ目を御覧ください。前田から御説明ございましたとおり、1万2,000名の個人に対してサステナビリティ投資への関心等に係るアンケート調査を行いました。回答者の割り付けとしては男性6,000名、女性6,000名、そして投資経験者と投資非経験者がそれぞれ混じるように投資の非経験者が2,400名、投資経験者が9,600名となるように割り付けをしております。

回答者の属性としては職業、世帯年収、保有金融資産、投資経験、そして金融リテラシーについて属性を調査しております。1点ちょっと注意として申し上げることとしては、金融リテラシーについてです。これについては金融リテラシーの調査で広く使われる正誤問題、複利、インフレ、分散効果、債券価格、住宅ローン、そして変動金利・固定金利に関する6問の正誤問題を出しまして、この正誤問題に何問正解できたかということで金融リテラシーを評価しております。

そして正誤問題ですので6問あるうち当てずっぽうで答えたとしても3問当たってしまうというところがございますので、こちら、金融リテラシーのとこの構成比を見ていただくと分かるかと思いますが、3問正答より上の構成比が大きいのと、0問、1問という人はめちゃくちゃ運が悪かったのか、わざと外したかっていう方々になっておりますので、3問以上のところを今回は主に見ていただければというふうに思います。ある意味3問が当てずっぽうのベースラインというところでそれより上が金融リテラシーのある人ということになります。

それでは5ページ目を御覧いただきまして、まずは今回の個人向けアンケートから得られた全体の示唆、サマリーを申し上げたいと思います。投資をする際に重視する要素としては多くの方々がやはり当然ではありますが、中長期のリターンや値下がりのリスク、そして投資対象の資産や地域、これらを重視しているということがあります。その上でESG課題への関心がどれくらいあるかということを見てみると、年齢、投資経験、世帯年収そして保有金融資産等に応じてESG課題への関心が高まるということが分かります。

そしてサステナビリティ投資の認知度ということを見ますと、こちらやはり保有金融資産が多いほど、サステナビリティ投資の認知度は高まるのですけれども、一部若年層で認知度が高いというところがございますので、ここがESG関心との少しギャップがあるところです。そしてサステナビリティ投資の選好や経験、実際にしたことがあるかということを聞きますと実際にサステナビリティ投資をしていない、したいんだけれども実際にはしていないという方がかなりいらっしゃるというところで、こちら様々な示唆が導けるかと思っております。

そして中には、サステナビリティ投資をしたいとは思わない、というふうに答えた方も多くいらっしゃいましたが、その理由を尋ねると、サステナビリティ投資のやり方が分からない、という方が多かったので、サステナビリティに対して反対しているからしたくないというような方は意外と少ないのかなという印象ではございます。

それから、サステナビリティ投資と投資のリスクリターンがトレードオフかどうか、というところの関係については、これについては両立の可能性について大半の投資家がまだ考えを固めていないのではないかということが今回のサーベイからは導けるかと思います。後ほど詳細を御説明いたします。

そして情報の取得チャネルとしては、やはりサステナビリティ投資を実際に経験している人ほど広いチャネルからサステナビリティに関する情報を集めているということが言えます。そしてこれらの情報を踏まえた上でどのような情報を提供していったら良いかということにつきましては、特定の情報への好みというものは見られなかったものの情報をもっと欲しいということに関しては確実に言え、情報がもっとあった方が投資商品の魅力が高まるということは言えるのではないかというふうに考えています。

それでは以上を踏まえまして個別のスライドの御説明に移ります。6ページ目を御覧ください。6ページ目は投資する際にあなたが重視する要素は何ですか、ということで複数回答を許可して各項目について、全く重視しない、あまり重視しない、重視する、非常に重視する、の4段階で回答を得たものです。これを見ますと、上位から順番に将来を見据えた中長期的な資産形成に有用か、そして値下がりをして損失を被るリスクがあるか、そして、株式を発行している企業の事業内容が何か、そして、投資信託の投資対象がどこの地域か、どのアセットクラスかということ、これがトップ5を占めておりまして、これは自然な結果であろうかと思います。

やはり個人としては、中長期のリスクリターンをまずは重視しているというところが見えるかと思います。その一方で、ではサステナビリティやESG課題に関する関心はどうかというと、下の方の緑色の太字になっているところが関連する回答項目になりますが、株式を発行している企業の環境・社会・ガバナンスへの取組み、そして、投資信託が投資戦略において環境・社会・ガバナンスを考慮しているかというところ、これについては、確かに先ほどの中長期のリスクリターンと比べると順位としては落ちるのですけれども、ただ、非常に重視する、重視する、を合計すると4割超の方々がこういったESGに関する考慮事項というところも重視する、というふうに答えてはいます。第1位ではないけれども、重視されるところではあるということが言えるかと思います。そしてこういった状況を踏まえて、もう少しESG関心のところを深掘りしたいというところが次の7ページ目になります。

左側の図表2にございますとおり、各ESG課題に関心があるかどうかということで9つのESG課題、環境・社会・ガバナンスから3つずつ課題を例示しまして、この9つの課題に関心がありますか、ということを調査しています。これを見ますと、特にガバナンスに関しては結構横ばいではあるんですけれども、環境・社会問題というところに関しては、年齢が上がれば上がるほど、関心がある、と答えた人が多くなっています。

これについてはもちろん年齢が上がるほど年収が増えたり、保有金融資産が増えたりといったことがありますので、擬似相関ではないかと疑われるところでありますけれども、これはやはり年収であったり保有金融資産や投資経験といったところの他の変数を調整し、年齢だけ切り出したとしても、年齢が上がれば上がるほどESG関心が高まるといったところが今回のデータから確認できます。

そして年齢以外の要素、右側の図表3のところですけれども、これは先ほどの9つの課題のうち何個関心があると丸をつけたかというところで見てみると、やはり世帯年収、保有金融資産、投資経験、それぞれについて増えれば増えるほどESG課題への関心も伸びるということになっています。

そして右下の金融リテラシーの質問ですが、これも先ほど申し上げましたとおり0問、1問、2問はちょっと無視していただいて、3問以上正解した方というところを見てみると、やはり正解数とESG課題への関心というところが相関しているというふうに見えるかと思います。

それでは8ページ目に移ります。サステナビリティ投資の認知度に関する調査でございます。ESG課題やサステナビリティを考慮した投資、これは本資料でサステナビリティ投資と仮に呼んでおりますけれども、このサステナビリティ投資を知っていて実際に投資したことがあるか、知っていて具体的な商品を見たことがあるか、名前だけ聞いたことがあるか、それとも全く聞いたことがないか、の4段階でサステナビリティ投資の認知や経験を尋ねています。これを見ますとまず年齢別では20歳から24歳、そして25歳から29歳という若年層でこのサステナビリティ投資を実際にやったことがある、もしくは、商品を見たことがある・聞いたことがある、というような経験・認知が高いというところがございます。

先ほどのページでは、実は高齢層の方が関心が高いのではないかということを申し上げましたが、ちょっとそれとは逆行している訳になりまして、もしかしたら若い世代には、ここから先は推測ではありますが、若い世代に対してはサステナビリティに関する情報がたくさん発信されている、各メディアからたくさん発信されているけれども実は関心を持っているのは高齢層なんじゃないか、そこで関心のある人と情報を受け取る人のミスマッチがあるのではないか、というところが1つ仮説としてはあるかもしれません。

それから右上の図にありますとおり保有金融資産別で見ますと、やはり保有金融資産が増えれば増えるほど、サステナビリティ投資の経験や認知が増えていくということになります。こちらもやはり保有金融資産が増えるほど様々な投資商品に分散をするということもございますし、保有金融資産が多い人ほど、様々な投資商品の勧誘であったり説明を受けるという機会も増えてくるかとは思いますので、こちらは自然な回答結果になったかと思います。

次に9ページ御覧ください。続いてサステナビリティ投資の選好や経験ということで、いわゆるESG投資をしたことがあるか、インパクト投資をしたことがあるか、そして金融庁の監督指針上のESG投信にあたる投資信託を購入したことがあるかという3種類で質問をしております。

それぞれについて、したことがある、したいと思うけれども実際にはしていない、そしてしたいと思わない、の3種類で質問したところ、したことがある、という人はどの分類であっても大体7%程度、そしてしたいと思うけれども実際にはしていない、という人が大体半分の5割程度、そしてしたいとは思わない、という人が4割程度ということになっています。ですので、回答者の半分はしたいと思うけれども実際にはしていない、ということで、実は皆様ESG投資・サステナビリティ投資への関心はあるのだけど、何らかのボトルネックが存在していて、したいということと実際に実践するということの間に壁があるのではないかということがうかがえます。

そして、このしたいと思わないというこの4割の人々だけを抽出して、なぜしたいと思わないのですか、という質問を追加したところ、一番多かった回答としては、特定の企業をスクリーニングしたり、環境や社会にとってプラスの効果を与えることを企図している企業の株式や投資信託を選ぶ方法が分からない、インパクト投資のやり方が分からないからという人が43.4%ということで、実はこのサステナビリティ投資をしたいと思わないという人も、やり方が分からないだけだというところもかなりの回答の割合を占めているということです。そのため、こういう情報を提供していく、啓発をしていくという余地はあるかと思っております。

続いて10ページ目を御覧ください。過去様々な証券会社様、そして資産運用会社様が個人投資家向けのアンケートというところを実施しておりますけれども、過去のアンケートを見ると、国際比較なんかでは日本人は特にサステナビリティを考慮するということとリスクリターンを追求するということに関して、これがトレードオフではないかと考える傾向が少し強いのではないか、という結果が出ています。

なので、これが1つサステナビリティ投資の普及のボトルネックではないかと考えているところでして、それを確かめるために、今回このサステナビリティ投資と投資のリスクリターン、これは両立すると思いますか、というところの質問をしています。

これを見たところですね、回答者全体ではサステナビリティ考慮と投資のリスクリターンを両立できると思う、という人が13%、そして、現状は両立できるかどうか懐疑的だけれども、なぜサステナビリティを考慮すると投資のリスクリターンが良くなるのか、というところの論理的な説明であったり、もしくは、サステナビリティを考慮した銘柄というのが、確かにリスク調整後にリターンが良くなっているというヒストリカルデータが得られたりといったような証拠があれば考えが変わるかもしれない、という人が41%。そして単純によく分からない人という人が36%ということになっていますので、今は懐疑的だという人とよく分からないという人を合わせると、77%の人が何かまだ考えを決めきれていないという状況かと思っています。

逆にサステナビリティとお金儲けというか投資のリターンというものは本質的に相いれないものであるので、もうこれは絶対に両立しないと考える人というのは全体の1割程度にすぎないということがございますので、7割のまだしっかり考えを固めていないという人に対していろんな説明であったり、データを提供する、啓発活動をしていく、金融経済教育をしていく、そういった余地は大きいかと思っております。

続いて11ページ目を御覧ください。少し特殊なところではございますけれども、今回調査した中にですね、サステナビリティと投資のリスクリターンは両立できないと考えているにも関わらず、サステナビリティ投資をしている、もしくは経験があると答えた人が119名と全体の1%いらっしゃいました。こういった人たちが何を考えているのかというところで、もちろん慈善的な目的やある意味寄付的な目的で世の中に良いことをしよう、世の中に良い投資のために自分のリターンは多少犠牲になっても構わないというふうに考える方ももちろん一定数いらっしゃるものと思います。

それ以外に何か可能性はないかということで今回の質問の中から様々なクロス集計をしてみた結果がこちらの下の表になります。この119名はサステナビリティとリスクリターンを両立しないと考えているけれども、投資をした人の回答を見てみると、例えば、ESGに取り組む企業への投資は、最近ブームなので短期的なリターンが得られると思う、という回答、これが他の回答者よりも明確に多くなっている。それから、すぐに価格が値上がりして、短期的に使うお金に充てることができるか。つまり投資において短期リターンを重視するという方、これもその他の人と比べると明らかに多くなっているといったようなことだと思います。

ですので、サステナビリティ投資をやる理由として、これで良いのかというところで先ほど水口先生からも御指摘ございましたけれども、こういった短期投資、短期的なテーマとしてサステナビリティ投資をやるという方ももしかしたらいらっしゃるのかもしれませんが、これを進めて良いのかというところがあるのかなと思います。

12ページを御覧ください。サステナビリティ投資を経験している人はサステナビリティ投資をしたいけれども実際にはしていないという方と比べて、金融機関の窓口説明であったり金融機関の資料での説明を特に利用し、参考になったという方が非常に多いということがございますので、今後サステナビリティ投資を普及させていく上で主な情報提供者として金融機関というところはやはり重要ではないかというところがここから読み取れます。

お時間迫っておりますので少し駆け足になりますが、13ページ目を御覧ください。こちらは情報提供の拡充に関する希望というところでして、サステナビリティ投資をもし自分が行うとしたらどのような情報が追加されると投資商品の魅力が高まると思いますか、ということを質問しています。

これに関してはサステナビリティ投資をしたいと思わないという人は8割ぐらいの人が、こういったサステナビリティ情報が追加されても特に魅力的だと思わない、魅力が高まらない、という回答ですけれども、サステナビリティ投資をしたいが実際にはしていない、という方は大体6割ぐらいの方がそういった追加情報があると魅力が高まる、もしくは、魅力がやや高まる、と回答しています。そしてサステナビリティ投資をしたことがあるという人については、大体8割の人がこういった追加情報があると魅力が高まる、もしくは、魅力がやや高まる、というふうに回答しておりますので、こういった情報をさらに充実させていくというところの方向性は合っているのだろうというふうに思います。

その一方で、ここには8種類挙げていますけれども、この8種類のどの情報が欲しいかということに関しては明確な差異は見られなかったというところで、まだそこまで個人投資家の方々も意識をされていないのかなと思いますけれども、全体的な方向としては、より情報があった方が良いかと思います。そしてこのページに関して1点お詫びなんですけれども、一番左側のサステナビリティ投資をしたいと思わない、というところのグラフ、こちらが事前にデータでお送りさせていただきました資料ではこちら少し誤っておりまして今お手元にあるバージョンが正しい数値となっております。こちらお詫びをして訂正させていただきます。

そして14ページ目以降を説明したいと思います。まず14ページ目投資信託の名称や分類に関してこういった名称のルール、そして分類の表示といったものがあれば、よりサステナビリティ投資をしやすくなると思うかということに関して質問をしています。これに関しては基本的にはサステナビリティ投資をしたいと思わない人よりもしたいと思っている人、そしてさらには、したことがある、という人ほど、こういった名称や分類に関する希望が強くなっている、ということが挙げられます。

ただこれも前のページで説明しましたとおり、具体的にどういった名称・ルールでどういった分類が役に立つかということに関しては、特段の回答ごとの差異が見られなかったというところになります。

そして15ページ目、16ページ目、こちらも回答の傾向としては同じになりますので一括して説明させていただければと思いますが、こういった投資信託の表示や分類、投資の目的、考慮の程度であったり、もしくは投資の手法ですね、トランジション、インパクト、ネガティブスクリーニング・ポジティブスクリーニング、インテグレーションといった手法のどれを使っているかというラベルがあったら、便利かどうかというところを質問しておりますけれども、これに関しても15ページ目、16ページ目のグラフを御覧いただくとそのとおりでございますが、やはり、したいが実際にはしていない、という人、実際に投資をしたことがある、という人では希望が高まるものの、どの分類表示が特に有効かということに関しては、こちらでもやはり差異は見られなかったというところになります。

それでは、駆け足になりましたが個人投資家のアンケートは以上といたしまして、続いて20ページ目を御覧ください。こちら国内外のアセットオーナー、および資産運用会社に対するヒアリングの結果を簡単に御説明させていただきます。先ほど前田からも申し上げましたとおり、今回国内と国外のアセットオーナー計40社弱に対してインタビューを行いました。その結果を御報告させていただきます。それでは、サマリーのところは少し重複になりますので22ページを御覧ください。

まずサステナビリティ投資の定義と意義というところになります。国内の資産運用会社では、責任投資、ESG投資、サステナビリティ投資といった様々な単語を使ってはいるのですけれども、例えば同じ会社1社の中で、ESG投資はこれ、サステナビリティ投資はこれ、というふうに分けて定義をするというところはあまり見られず、うちの会社の場合はこういった関連する取組みをESG投資と言っています、というふうに、どれか1つの単語で取組みを代表させてそのESG投資もしくはサステナビリティ投資といったものをそれぞれ定義しているというような動きかと思います。

定義の仕方としては、自社でそれぞれ独自に定義をしているもの、外部の定義を参照しているもの、それぞれございました。もしくは2点目のところ、サステナブルな成果、サステナビリティ投資をやった成果、というのは顧客のウェルビーイングに資するものであるというところがございますので、アセットオーナー、特に生命保険会社様の場合は、保険契約者、最終受益者の健康長寿に貢献するというところの企業のパーパスのところでサステナビリティ投資の成果というところが整合的であるので、わが社としても取り組んでいますとそういった回答が多く聞かれております。

またここのところ1点補足すると、サステナビリティ投資の定義に関して現在の監督指針のように、ESG投信とESG投信以外というような区分けとしては二分的な区分け、ESG投信はESGを考慮している、ESG投信じゃないものはESGを考慮していない、というようなそういったゼロイチの区分ではなくて、今ほとんどの資産運用会社様というところでESG投資への考慮というのを段階的、もしくはグラデーションのようになっているというところで、ESG要素を5%しか考慮していない、10%しか考慮していないっていう商品もあれば、40~50%考慮している、もしくはESGを主要な要素として考慮している、というところまで、かなり段階的になっているのでその点を踏まえて定義を考えてほしいというところの意見が、今回のヒアリングで多く聞かれたところです。

そして23ページ目、サステナビリティ考慮とリスクリターンの関係です。これに関しましては国内外のアセットオーナー、そして、資産運用会社それぞれで違いは見られず、サステナビリティを考慮するために財務リターンを犠牲にするといったようなそういったことはしないというところでこちらは共通認識かと思います。まずは財務リターンを確保した上で、同じ財務リターンを出せる中でサステナビリティを考慮していくという流れかと思います。そして、サステナビリティを考慮することがリスクリターンに対してどれくらいの影響を与えるか、ということに関してはこちら各社でばらつきがあるところです。

サステナビリティを考慮すると長期的には企業の価値が増加して株価に反映されるはずだというふうにロジックとして理解しているという会社もあれば、実際に自社内で独自のESGレーティングをつける、もしくは外部のESGレーティングを参考にして、ESGレーティングが高いところほどリスク調整後リターンが良くなっているかというところを定量的に検証しているという会社様もございました。そして定量的に検証しているというところも、やはりリスク調整後リターンが良くなっているというところもあれば、まちまちですというところもありましたので、この辺りについてはまだ共通のコンセンサスは得られてないところかと考えています。

そして24ページ目を御覧ください。目論見書等における開示・説明とマーケティングというところですが、こちらについては目論見書の方で誤認を防ぐための様々な開示を行っているところでして、目論見書にどのように表示するかということでは各社様で非常に工夫を凝らしているところでございます。

その一方で、個人投資家のサステナビリティに対する選好がやはり見えづらいというところもあって、サステナビリティに関心が高い個人投資家に売りたいということで資産運用会社、もしくは販売会社の立場でターゲティングすることが非常に難しいという意見が多く聞かれたところでございます。

また先ほど水口先生からも、コストの問題について御指摘がございましたけれども、やはりサステナビリティ商品を作るのは非常にコストがかかると。専門のアナリストもそうですし、その社内プロセス整備、体制整備というところもございますし、このESGに関連するデータを購入するにもお金がかかるということで、どうしてもプレーンなインデックスと比べるとコスト面で見劣りをしてしまうので、なかなか魅力を訴えづらいというところの意見も聞かれましたので、この点も1つ議論のポイントになるかと思っております。

そして25ページ目を御覧ください。こうした企業、運用委託先とのエンゲージメントというところですけれども、こちらについては、各社様非常に活発なエンゲージメントをされておりまして、テーマの選定からマイルストーンの設定による進捗管理モニタリングに至るまで一連のエンゲージメントのプロセスにおいて、このESG要素の専門家を配置したり、もしくは関連するデータセットを整備したりといったところの取組みがございます。

そして、これも先ほど水口先生からございましたけれども、やはりエンゲージメントというのは投信単位で行うものではございませんので、そういったところから、ESG投信とそうではない投信でエンゲージメントが違うというわけではないけれども、ただ1つのエンゲージメントのプロセスとしてどのエンゲージメントでも、ESG要素というのは企業によって軽重あれど、エンゲージメントの中にESG要素を取り入れているというところの意見が聞かれました。

そして最後に26ページ目になります。名称やラベル、開示等に関して海外規制の枠組からどのような示唆が得られるかということに関しては、特に海外のアセットオーナー、資産運用会社からはSFDRやSDRのカテゴリーというのが個人投資家の商品に対する理解の促進において有用であった、個人にサステナビリティ投資を広げていくために有用であったという意見が聞かれております。その一方で、やはり定義が非常に広範すぎる・複雑すぎる、それから頻繁に改定されるというところに関して、分かりにくさがあるのではないかというところの意見もございます。

これに関してはESMAの名称ガイドライン等が非常に分かりやすく今後広まっていくのではないかといったところ、そういった意見を出した海外の資産運用会社もございました。これに関して、アセットオーナーの側ですけれども、こういったSDRやSFDRといった開示規制に関しては、さほど有用ではないという意見もいくつかの会社から聞かれました。こういった情報があるに越したことはないのだけれども、ただこういった1つ1つの商品が、例えば8条ファンドである、9条ファンドである、といったところでそういった開示がされたとしても、本当に自分たちのサステナビリティ選好に合った商品なのかというところは、アセットオーナーの側で1つ1つ商品を精査しているので、ラベルがあるに越したことはないけれども、別にさほど気にしていないというところの意見は複数のアセットオーナーから聞かれたところでございます。

すみません、少し説明が長くなってしまいましたが、一旦説明としては以上とさせていただきます。ありがとうございました。

【水口座長】

はい、ありがとうございました。それでは引続き野村證券の高橋さんから御説明いただければと思います。

【高橋様】

改めまして本日はこのような貴重な機会をいただきまして誠にありがとうございます。

野村證券の商品企画部で、様々な投資家の皆様に向けた商品開発を担当しております高橋と申します。よろしくお願いします。本日は私達が考えるサステナビリティ投資商品の提供実務と課題というところで御説明させていただきます。お手元の資料4を使って御説明させていただければと思います。

1ページ目を御覧いただけますでしょうか。はじめに、そもそも野村證券ではどのようにお客様に対して資産管理の提案を行っているかといった点から御説明したいと思います。私達は投資家の皆様のライフスタイルやリスク許容度、投資資金の性格を分析し、お客様1人1人のニーズに合った商品・ポートフォリオを提案することが重要である、というふうに考えています。例えば、野村證券ではお客様1人1人の目標実現に向けた運用ナビゲートの資産管理システム「野村ナビゲーション」を積極的に活用しています。このシステムでは、まず現状分析を行いまして、その上でお客様1人1人の資産運用のゴール設定を行います。そしてそのゴールの実現に向けて具体的なポートフォリオの提案を行うというこういった流れになっております。

このようなポートフォリオソリューションに加えて皆さんが議論いただいたようなサステナビリティ投資を推進していくためには、様々なサービス提供上の工夫が必要であるというふうに考えています。次のページからは、当社の具体的なサステナビリティ投資商品提供の取組みについて御説明いたします。

2ページ目を御覧ください。サステナビリティ投資商品は、環境社会的な影響といった非財務リスクも考慮されていることから、長期的な投資に向いている投資商品だというふうに考えています。したがって投資のタイミングを分散し、継続的に投資を行うことができる投資信託の積立との親和性が高いというふうに考えています。

野村證券ではSDGsの目標達成に貢献する投資方針である信託を厳選しまして、ESG商品のラインナップとしてWebページで公表しています。当該ESG商品を投信積立で購入いただいた場合、毎月の一定金額までの購入手数料相当額をキャッシュバックする取組みを行っています。投資のコストを抑えて、投資家の皆さんもサステナビリティ投資に対するハードルを下げることでこういったサステナビリティ投資商品の活用拡大をサポートしてまいりたいと思っています。

続いて3ページを御覧ください。こちらですね、サステナビリティ投資商品を推進する取組みとして野村グループでは、「TASUKI」と名付けた地方公共団体への寄付プロジェクトを運営しています。「TASUKI」は投資信託を通じてSDGsの達成を目指すとともに地方公共団体が実施するSDGs関連事業を支援するプロジェクトです。具体的には、いわゆる企業版ふるさと納税の仕組みを活用して、まちひとしごと創生の取組みをしている地方公共団体に、対象ファンドの残高に応じて対象ファンドを運用する野村アセットマネジメントの収益の一部を寄付する仕組みとなっています。より多くの投資家の皆様にサステナビリティ商品を親しんでいただくためには、このような地方創生の貢献を通じて、自身の投資が世界に役立っていることを実感できる取組みも重要なのではないかと考えています。

続いて、サステナビリティ商品の内容特性の説明に関する取組みを御説明いたします。4ページ目を御覧ください。投資信託では皆さん御存知のとおり、目論見書ですとか販売資料を使ってお客様にファンド投信商品や運用プロセスなどを説明しています。左の図表は、当社が取り扱うESG投信の目論見書に記載されている運用プロセス事例です。一部企業ですとか、特定のセクターに対する投資除外、もしくはスチュワードシップ、いわゆる責任ある経営者としての姿勢の評価をどのように運用プロセスに取り組んでいるか等を記載しています。また、右の図表は、販売用資料に記載されているESG投資の投資先資産の説明事例です。こちらは投資先の1つであるグリーンボンドに関して特徴の説明と、一般的な債券や株式と比較した残高になりますけども、この数字をベースに出しています。

このようなコンテンツを活用しまして、サステナビリティ投資に対する投資家の皆さんの理解を深めていただく取組みを推進しておりますが、先ほどからありましたとおり情報開示に関する改善余地はまだまだあると考えています。

次にサステナビリティ投資商品に関する運用会社との連携について御説明します。5ページを御覧ください。投資信託の運用会社とは、お客様向けの資料の作成に加えて、様々な社内の勉強会資料ですとかQ&A資料を活用した研修で右の特徴に関する認識共有を行っています。

左の図表は、当社が取り扱うESG投信の社内限Q&A資料の記載事例です。サステナビリティ投資に関して、より詳しい説明を記載し、社内勉強会等で活用しています。加えてサステナビリティ運用に実際に携わる運用担当者から、ファンド設立の背景ですとか、具体的な企業エンゲージメントの事例等をレクチャーいただく機会も設定しています。右の図表は、こういった運用会社の1つである野村アセットマネジメントが作成したインパクトレポートのESGレポートの事例です。メッセージですとか、ファンドを通じた社会的インパクトの試算、エンゲージメントの実施状況や銘柄事例、ESGスコアの活用方法など、多様な情報が開示されておりまして、このような情報連携もサステナビリティ投資を行う運用会社が提供できる大きな付加価値の1つであると考えています。

最後に私達が考えるサステナビリティ投資商品の提供に関する課題を説明いたします。6ページを御覧ください。ここで3つ提示させていただいておりますが、まず1つ目はサステナビリティ投資と親和性が高いと考えられるチャネルでの取り扱いファンドの拡大です。サステナビリティ投資を拡大するには、そういった投資商品にアクセスできる機会を増やし、投資家の皆様に当該商品をより身近に感じていただくことが必要であると考えています。特に、長期投資・継続投資を制度的に行うことができるつみたてNISAですとか、DCチャネル、こういったチャネルでのラインナップの拡充を行うことで、より長期的・安定的な資金がサステナビリティ投資に向かうことが期待できるというふうに考えています。

2つ目の課題は、サステナビリティ要素の考慮と投資収益の関係性の提示等の情報開示の強化です。先ほどからも御説明いただいたとおりですね、このサステナビリティ投資がファンドのリターンにどのような影響を与えるのかといった分析や開示は、非常に運用会社にとっても開示が難しいというふうに聞いています。一方で社会的なインパクトだけではなくて、投資リターンやリスクにこういったサステナビリティの考慮がどのように影響しているかを定量的に提示できると、ファンドとしての立ち位置がより明確になるのではないかというふうに考えています。投資家の皆様にとっても、サステナビリティ投資の比較や選択をより効率的にできるのではないでしょうか。

3つ目の課題ですけども、こちらはこれまでの説明とやや矛盾するように聞こえるかもしれませんが、サステナビリティ投資を特別なものから当たり前のものにしていくといった試みも考えていかなければいけないのかなというふうに考えています。先ほどから御説明いただきましたようにサステナビリティ投資に関しては様々な基準がございます。その基準に関する運用方針ですとか成果の開示を義務付けることは投資家皆様の誤認を防ぐ意味でも非常に重要だと考えています。

その一方で、サステナビリティ投資が特別で限定的な投資手法であると認識されてしまうことで、逆に投資家の皆様からのサステナビリティ投資へのハードルを高めてしまうといったことがあるのではないでしょうか。サステナビリティ投資は多くの一般的なファンドでも行われており、先ほどインデックスの事例もありましたけども、わざわざ分類しなくてもむしろそれが当たり前であるといった状況を実現することで、結果としてサステナブル投資への道を太くするといったような仕組みができないかということも考えています。

こういった常に現状満足することなく、どういった形が一番お客様にとってサステナビリティ投資に取り組んでいただきやすいかという点を考えながら、今後もこういった商品の提供を行っていきたいと考えております。私の説明は以上になります。ありがとうございました。

【水口座長】

はい、ありがとうございました。御協力いただきましてちょうどあと1時間ぐらいということでして、今高橋さんが最後におっしゃられたこのサステナビリティ投資が特別なものではなくて当たり前のものにしていく、ここがとても重要なところだと思うんですけども、トーマツさんの資料のですね、8ページ目のところサステナビリティ投資の認知度という、この図表4では、実際にサステナビリティ投資の経験がある人たちというのは、5%から多いところで10%ぐらいという、こういう比率になっています。

これを5~10%から2~3割へと広げていくということが、この会議とか金融庁の目的なのか、それとも、その前の6ページ目のところに、「投資する際に重視する要素」というのがあって、もちろん中長期的な資産形成に有用かというのが一番重視されているんですけども、これと同じようにサステナビリティ要因を重視するというような普通の投資の考え方として広まっていくということが目的なのか。高橋さんがおっしゃる普通のことにしていくというのはおそらく後者で、通常の投資判断が、いわば、サステナブルになっているということが目指す姿なのだろうと。

とすると、特定の投資商品をいかに広げていくかということとは、少し違う切り口で物事を考えていかないと、なかなかそうはならないだろうなというようなことは思うわけですが、というようなことをちょっと念頭に置いていただきながら、今いただきました大変詳細な調査をしていただきましてありがとうございました。非常にいろいろ示唆に富むデータが得られたと思いますので、こちらもぜひご活用いただきながら、皆様から御意見いただきたいと思います。

いつものとおり、発言したい人は札を立てていただき、オンラインの方は手挙げボタン押していただければと思います。どなたからでも結構です。いかがでしょうか。

では、渋澤さん。

【渋澤メンバー】

御説明もありがとうございます。

うまく考えはまとまっていないんですけども、今回の委員会は発足以来、一番クリティカルなタイミングで今皆さんと討議していると思っています。1つは今日議論しているESGというこの言葉がアメリカではもう使えなくなっているっていうことです。欧州にもそういう流れが出てきています。日本国内ではESGという表現が政治的な分断をつくっていないという救いがありますが、世界ではその流れができています。今週はたまたまISSB・IASBやIIRCとの意見交換の会合が色々とありましたが、私の限られた視点から、かなり動揺が走っていると感じました。つまり今まで作ってきたグローバルベースラインの情報開示のルールが、またまたバラバラに断片してしまうという懸念です。

したがって、日本のスタンスとして日本国内の情報発信の言葉と海外っていう二つの側面があると思いますが、国内は別に分断がないのでこのままのとおりで良いと思う一方、海外に発信したときに、海外の流れに沿ってアメリカの大手の金融機関の動きに追って着いていくということで良いのか。それとも、我々はこれが大事と思っているからとスタンスを貫くのか。結構そのようにクリティカルな場面に立っていると思っています。

また、改めて過去の議論のキーワードを整理いただいた中で、2024年10月の資料の上から3番目のところで「特にエクイティはグリーンボンド等と比較すると距離が遠く」と書いてあります。その後の御説明の中でもエクイティ投資・ESG投資については個人投資家にとってどうなのかという話がある中ですが、立ち返ってみると、「資本主義再考」というオックスフォード大学の前ビジネスクラスの学長であったコリン・メイヤー先生の本では、エクイティは大事という主張がありました。つまりオーナーシップのことだと思います。グリーンボンドの場合、償還前の一定の期間の中だけでやってれば良いのかという考えが生じますが、やはり行動変容を起こすのは個人投資家だろうがアセットオーナー、アセットマネジャーだろうが、やはりエクイティが根本的なところにあると思います。当事者意識をどのように変えることができるか。つまり今の自分のメリットも当然大事ですが、他の人、あるいはその次の世代の人、このようなことも委員会できちんと議論して意思を固めないと、流されてしまうリスクが生じると今感じています。

うまく表現できないと思いますが、非常にクリティカルだと思っています。私の期待としては、この当事者意識で日本としては、日本の金融機関・企業としては、これが大事。だから、このようにサステナビリティを、このようにESGが大事なんだということをきちんと整理して、国内・国外にきちんと伝えるってことがとても重要だと思います。実態として、前に使っていたナラティブが世界では使えなくなっているということは悩ましいなと思い、答えがありませんが、皆さんに対する課題提供というか、どのように皆さんお考えかなっていうことをお伺いしたいと思います。

【水口座長】

はい。ありがとうございます。問題提起としては非常によく分かりました。はい、では、鳥海さん、そして、井口さんの順番で。

【鳥海メンバー】

今の渋澤さんのおっしゃられたエクイティが大事なんじゃないかっていうのは全く私も同感でございます。確かグリーンボンドとエクイティが違うという言い方は私前回したかもしれないのですけれども、そのとき意図したことは、グリーンボンドの場合は資金使途がはっきりしているので投資家からすると効果が見えやすいということで浸透しやすいけれども、エクイティの場合には効果が発現するまでに時間がかかるので、投資家側からすると分かりづらいということで少し性質が違う、ということをちょっと申し上げようと思いました。

なのでそこはエンゲージメントをしてエクイティ投資を通じて変えていくんだ、という意思については何ら変える必要はないかなと。という意味では、先ほど高橋が話しておりました最後のポイントの「当たり前のものにしていく」というか、もうエンベッドしたものにし、所与のプロセスにしていくというのが一番重要なのではないかなというふうに思っております。

ただそこに至るまでの、もうちょっと目先できることということで申し上げると、先ほど積立投資という話をしておりましたが、特に資産形成層でESGとかそういったところの投資に興味を持っている人、あるいは時間軸がある程度長く投資できる人というところに訴求するという意味では、つみたてNISAの対象にそういうインデックスを入れていくということは、時間軸が短いところでできる方策としてはそういうことが関連していくのではないかと思うところです。

【水口座長】

ありがとうございます。では井口さん、長谷川さん、林さん、二木さんの順番で。井口さん、お願いします。

【井口メンバー】

ありがとうございます。何を今日発言したらいいのかなと今まで思ってたんですが、水口先生の最後の御発言というのは重要だと思います。あと渋澤さんがおっしゃったようにこの委員会でやってきた議論も踏まえる必要があるのかなと思います。

特に第1回目の報告書を出すときに、水口先生がおっしゃって私も当時、なるほどと思ったのですが、サステナビリティ投資には、リスクリターンだけではなく、確か、嗜好とおっしゃり、それが報告書に書かれていると思いますけど、そういう第3の軸があるっていうことをおっしゃっておったと思っております。

ここは非常に重要なところで、サステナビリティ投資は、当たり前の投資の部分だけではなくて、そういう部分も残ってくると思います。それを、個人投資家の方も意識するし、運用者も意識する部分もあると思います。そこを無くすと、普通の投資になってくると思います。

申し上げたいのは、先生がおっしゃった部分がどこに適合するのかを考えなければならないのではないか、ということです。例えば、前回、出たようにESGインテグレーションは、そういう意味で普通の投資だと思います。そこまで広げると、議論がすごく難しいところにいくと思っております。あと運用会社もコストだけが上がって、結局良い製品が作れないという状況になってくると思います。

サステナビリティ投資のコアの部分は何かっていうことを考えると、そうすると前申し上げたことと同じ結論になるんですけど、インパクト投資が1つのポイントになっていて、そこをじゃあどういうふうに個人投資家の方にも手触り感のあるように提供するかという議論にいきつくと思います。

インパクト投資では、普通の投資とは異なり、例えばリターンを少し抑えても、個人投資家含め投資家の御了解があればインパクトを求めるようなもの、これも第1回目の報告書で、受託責任の関係で整理されてることですけど、そういった特殊な投資ですので、こういったことを踏まえた上で議論していくことが大事なのかなと思いました。

はい。以上でございます。ありがとうございます。

【水口座長】

ありがとうございます。では長谷川さん、お願いします。

【長谷川メンバー】

ありがとうございます。トーマツさんの資料に関して1つコメントと、渋澤様の御意見に触発されまして、全体的なことについて1つコメントさせていただきます。

トーマツさんの資料の9ページですが、サステナビリティ投資をしたいと思わない最大の理由が「方法が分からない」ということで、今後の施策としては、具体的なサステナビリティ投資のやり方を伝えていくことも必要となっていますが、実際のこの右側の回答を見ると、サステナビリティ投資が環境や社会にとってプラスの効果を与えているとされる企業の選択された理由が分からない、実際どの程度社会・環境にプラスのインパクトがあるのか分からない、評価が難しく情報が入手できないという順に多くなっており、これは、やり方が分からないというより、そもそもサステナビリティ投資が社会・環境にインパクトを出しているのか、インパクト評価の方法、それから商品に組み込まれている企業の選定理由が周知されてない、もしくは十分説明されていないという、より根本的な問題があるからではないか、という感じがいたします。ですので、前回も指摘したとおり、リターン・リスクへの影響や、インパクトストーリーの組み立て方、ロジックモデルなどをもう少し精緻なものにして普及させていくことが必要ではないかと感じました。

2点目の全体的なコメントに関してですが、経団連でもアメリカの反ESGの動きをどう受け止めるかを内部で検討していますが、アメリカにおける動きは規制や訴訟への対応という意見が多く聞かれます。他方、アメリカだけでなく、2月にブリュッセルを訪問して、DG FISMAやDG TRADEとオムニバス法案について意見交換をする機会がありましたが、彼らが言っていたこととしては、グリーンディールへの取組みをやめるとか、見直すわけではなく、欧州企業の産業競争力に資するよう、規制の重複を排除して簡素化を図り、企業負担を軽減する、それによってより欧州企業の競争力を強化するということでした。規制の簡素化・合理化であって規制緩和ではないということを何度も強調されていました。サステナビリティに取組む手法を、精緻化しつつ、負担軽減を図るということかと思いますが、そういう動きもある中で、改めてESG投資、もしくはサステナブルファイナンスの意義や、評価法、価値創造ストーリーの立て方などを検討する節目に来ているのではないかと思います。

【水口座長】

はい。ありがとうございます。では、林さん、二木さんの順で。林さん、お願いします。

【林メンバー】

ヨーロッパについても今、長谷川さんがおっしゃったとおりで、これはぜひ手塚さんのお話を聞きたいと思うんですけれども、やっぱり産業競争力だと思ってるんですね。ヨーロッパもアメリカでもそうですが、日本においてもその要素っていうのがGX実行会議でもすごく強くなっていると感じます。

翻って、これはむしろ金融庁の方にお伺いしたいと思うんですが、この有識者会議で何を目指すか、別に産業競争力だけじゃなくて、日本の国力あるいは次世代の方々にきちっとした国のインフラですとか社会制度ですとか、そういったものを残すために何ができるのかと、金融の力で何ができるのかっていうことかなと私は勝手に思ってるんですけれども、パブリックセクターだけではやりきれないことを民間の力も借りようということだと思います。それをさっき渋澤さんがおっしゃったようなクリティカルなタイミングで、より分かりやすい形で発信するっていうことが、この委員会ができることで、そこをぜひ御当局にもエンドースしてほしいというふうに思っており、政権として、経済界としてどっち向いてるのかということと、平仄が合う形で、少し中長期的な観点で進められることを期待します。

それで、ぜひ野村證券さんにお伺いしたいんですが、やっぱりそのストーリーをはっきりするとかそういう本来あるべき姿をやると同時に野村證券さんとして踏み込んでいると思ったのが、一部を寄付とか、あるいはキャッシュバックとか、結構、経済的合理性を紐付けて、ESGのプロダクトとかサステナビリティ投資商品をプロモーションしてて素晴らしいと思うんですが、結果としてどれぐらい効果があったのか、本当にどうやったらストーリーも大事ですけれども投資家がどうやったら付いてくるか、個人の投資家という意味ですけれども、実際野村證券さんの経験上どうだったのかってのはそれはちょっと個人的意見も含めて、もし御回答いただけたらということで以上です。

【水口座長】

ちょっと二木さんの前に高橋さん、コメントいかがでしょうか。

【高橋様】

今の御質問に戻るとやっぱり親和性はすごく大事だと思っていて、さっきおっしゃった経済的な合理性とか、いろんな方でも投資のハードルを下げるためにサービスを提供するんですけども、そこはやっぱり投資家皆様の思い等を考えると、親和性がないとなかなか中長期的な結果には繋がりにくいのかなと思っておりまして、そういう意味では、例えば、より多くの投資家の方々のハードルを下げて、まずは体験していただくってことを鑑みると、やっぱり積立っていうのは一般的な投資手法になってまいりましたので、そこを我々としてももう一度提示するっていうのは大事かなと思います。

先ほど一番最初に話がありましたインデックスがそうは言っても、投資の場合は重要になってきますので、コストだけではなくて、ESGに投資をするとこういった効果、成果が期待できますよっていうのは改めてこちらの方でも整理して御提示する必要があるのかなというふうには思っています。

【水口座長】

ありがとうございます。では、二木さん、岸上さん、足達さんの順で行きましょう。二木さん、お願いします。

【二木メンバー】

投資っていう切り口でその社会のサステナビリティを高めていこうというのが大きな目的としてあって、そのためにサステナビリティ投資を盛り上げていこうという発想になると思うんですが、証券取引所が上場企業に対して、TCFD基準で開示をしてくださいだとか、人的資本経営をどのように行っているのか開示してくださいだとか、そういうことをお願いしているのは、先ほどの目的に適うようにというところだと思うんですね。

なので、サステナビリティ投資で何か精緻な基準を作るとなったとしても、ある意味何か差別化されている状態が存在しているがゆえの対応であるので、それは我々が望んでいるような状況なのか改めて考えなきゃいけないんだと思うんです。

何が言いたいかというと、やっぱり全ての上場企業に、サステナビリティの観点から、いろんな対応をしていただいて社会全体を高めていくことを究極的な目的としたときに、サステナビリティ投資を定義して、これはこういうことですと言ってる間は、そうした目的に達することができないと思うんです。なので、あえてそういうサステナビリティ投資を推進するという言い方をするのではなくて、いろいろ対応していただいていることを開示してもらった上で、投資を行うという状況を作り、育んでいくっていうことがより重要なのではないかと思います。基準をいろいろ作るとか、これは完全に利益相反なんですが何らかの指数を作るとか、っていうことが本当に大きな目的に資することなのかっていうのは考えなきゃいけないんじゃないのかというのが正直な思いです。

【水口座長】

はい。ありがとうございます。重要な御指摘です。岸上さん、お願いします。

【岸上メンバー】

ありがとうございます。まず6月に報告書ということを念頭に入れた際に、今日の事務局資料およびトーマツの調査結果を見ていてもいろいろメッセージがあり重要ですが、本当にいろいろメッセージがあるので、仮にこれを全部詰め込んだ場合、読み手としては消化不良になりそうだなと思いました。特に個人投資家にも読んでもらいたいのかにもよりますが、そのあたりはどこにフォーカスを当てて整理するかというのは次回までに検討すべきことかなというのが大枠としてのコメントになります。

資料3のトーマツの調査結果についてなんですけれども、最初に4ページのところで投資の経験なしが20%となっています。今回の調査におきましては投資経験の度合いによってどのような傾向が出るかというのを把握するためにこのような割り当てを行ったと認識していますが、20歳以上の人口の割合でいうと、投資経験なしという方が7~8割と認識しております。今まで全く投資してない方の認識を高めることが目的なのか、それとも、ある程度最初のステップにいった方を対象にしていくのかで、ちょっと取組みの仕方が異なってくるのではないかなと思いました。

例えばですけれども、7~8割にフォーカスするとした場合、8ページですと経験なしという方のわずか2.3%が実際にESG投資やサステナビリティ投資をしているという実態がありまして、それもちょっと不思議ですね。あと13ページのところで、サステナビリティの投資経験有無を書いていませんが、サステナビリティ投資をしたいと思わない方々の約8割がその項目の有無に関わらず情報があっても魅力は変わらないという結果が出ています。おそらく、そもそも求めていないのでどの情報をもらっても魅力に特に影響がないということだと思います。そういったことを考えたときに皆様がおっしゃっていることと、重なってきますがやはり、なぜそもそもサステナブル投資を考えなければいけないのという「Why」が抜けていると、いくら方法ですとか情報を充実しても、意味がなくなってしまうので、その際にはやはり自らが個人として安定した生活環境ですとか生活基盤を作るためにお金がそのよい働きかけをするというその意味合いを先に整理して、それが年金を通してっていう形もあれば自らの個別銘柄を選ぶという方法がありますという、その大前提が、まず重要なのではないかなと思います。

あと2点は細かいところですけれども、水口先生がおっしゃっていたパッシブ運用のエンゲージメントの効果についてというところで、いろいろな面で日本が各国に比べて周回遅れのところもあると思いますが、先生がおっしゃっていたようにGPIFのエンゲージメント、強化型ファンドの選定ですとか、エンゲージメントの付加価値を評価していく、それを可視化することで市場全体のエンゲージメントに対する価値の可視化というところは特徴があると思います。後ほどよろしければ事務局を通して共有いたしますけれども、先日のBayesビジネススクールの方の学術論文で、各国のアセットオーナーがどのようにそのエンゲージメントの行動変容の効果とインベストメントバリューチェーンを通じたその連鎖を行っているかという調査の中でも、そのGPIFの取組みが特徴あるものとして取り上げられていますので、そういったパッシブ運用が多い日本だからこその付加価値の可視化といったところの今後重点的に見ていっても良いのではないかと思います。

最後に1点ですけれども、先ほどの資料の中の14~16ページのところで選好に対する特徴が見られないということですが、おそらくここにいるサステナビリティ有識者の方においてもこの選択項目を見ていくとなかなか難しい内容かと思います。正直私もこれに応えた場合それほど差がつけられないんじゃないかなといったところもあると思うので、特に全く関わっていない方にとって余計そうだと思うので今後さらに追加的な分析を行う場合には、よりシンプルな設問にすることでより傾向が確認できるのではないかなと思いました。

以上です。

【水口座長】

はい、ありがとうございました。一言だけコメントすると、このアンケートでサステナビリティ投資をしたいと思わないという回答が結構多いとしても、その回答者がサステナビリティ投資をどういうものと認識して回答しているかによっても回答の意味が変わってきてしまうので、こういう調査はなかなか難しいなというのは思いました。

では、足達さん、手塚さんの順番でいきたいと思います。足達さん、お願いします。

【足達メンバー】

ありがとうございます。まずはトーマツさん、そして、野村證券の高橋さん、御発表ありがとうございました。大変興味深い内容でございました。

先ほど渋澤メンバーがおっしゃった、今がクリティカルなフェーズであるという点は、私も同感でありまして、きちんとしたメッセージを発するタイミングだろうと思います。今日、収穫といいますか、なるほどなと思いましたのは、高橋さんが最後に、このサステナブルファイナンスのプロダクトを特別視というか別物扱いするのか、そうでないままのものにしておくのか、という問題提起があった点です。私が日頃考えていること、あるいは、今このアメリカの様子から思うのは、その両者を取り持つという意味で、「公的関与をすべきサステナブルファイナンスとは何なのか」という問いに対して皆で合意形成をするということが有効ではないかと考えます。

今、米国で反ESGと言っているのは「公的関与をしてはならない」という主張です。ウォークキャピタリズムとかウォークポリシーズを否定しているわけです。他方、例えば、Trillium Asset Managementという運用機関がありますが、彼らが提供している非常にダークな価値観を持った投資信託それ自体を禁止するとは言ってない。
つまり、投資の世界ってのは自由でいいんだと言っている。しかし、公的関与がどの部分であって良いかというと、アメリカは公的関与が一切あってはならないと政策転換したのだと私は解釈しています。では、日本はどう判断するのか。この有識者会議もこれまではあまりはっきりできずに「サステナブルファイナンスを後押しすることはいいことだ」っていうぼんやりとした雰囲気の中で議論が進んできてしまった。水口座長が冒頭に「金融庁がやるというのはどこの領域にフォーカスを当てるんだ」とおっしゃったことと全く通底している問題意識です。6月に会議の報告書をもしまとめるのであれば、「公的関与すべき領域はここだと思います、こんな形で公的関与をするんです」とまずきちんと書き込むのが良いと思います。

私から見ると「こんな形で」のレベル感ってのは3つほどありまして、普及啓発が第一です。「こんなものもありますよとか、実態はこうなってますよ」という程度のレベルですね。第二は、市場創出というような公的関与のレベルがあって、ラベルを作るっていうのもそうかもしれませんし、企業側の情報開示を一層促す・整備するというのもそうかもしれません。

さらにもう1つ先にいきますと、優遇制度、優遇策ってなものがあり得ます。1999年10月の日経新聞に「エコファンドの配当課税を軽減」という記事があるんです。これなどはまさに優遇策そのものだと思うんです。ただ、実際には、これ外形的基準をどうするんだという暗礁に乗り上げて消えてしまいましたけれど、こういうところまでの公的関与もあり得るとは思います。サステナブルファイナンスのプロダクトのどこにフォーカスをして、なぜ公的関与するのか、そしてどこまでの公的関与をイメージするのか、という議論を時間の制約もあるなかですけれどもしてはどうか、というのが私からの御提案であります。

最後に1つだけ、水口先生もお書きになった1996年の「ソーシャル・インベストメントとは何か」という本があります。この本の最後のところに、「市場に任せるという経済運営もある、そして、市場の失敗というものがあればそこに政府が登場して規制を作ったり資源の再配分をしたりする経済運営もある。ところが、このソーシャル・インベストメントはその中間にあるんだ」という含意のくだりがあります。

さっき林メンバーがおっしゃった、「国には財政制約がある、民間資金を活用する、そのことで公共の福祉が増進できる、市場と政府による市場の失敗の救済という間にサステナブルファイナンスのプロダクトを作るんだ」みたいなことを書き込めるのであれば、非常に素晴らしいと思います。そのメッセージが伝わると個人投資家の方もなにか気持ち悪いとか、いかがわしいというふうにこれを見るんじゃなくて、「なるほど、こういう形で政府が旗振りをしてるのね、これに乗るかどうかなのね」と判断がつくようになり、サステナブルファイナンスというのは個人の意思でやればよいということになっていくんじゃないかと私は思います。

以上です。ありがとうございました。

【水口座長】

昔の本を紹介していただきましてありがとうございます。

【林メンバー】

AMAZONで買えるんですか。

【水口座長】

どうでしょうね。絶版かもしれません。

1つだけ公的関与のところで、公的年金のサステナブルファイナンスは公的関与になるのでしょうか。

【足達メンバー】

公的関与だと思います。

【水口座長】

なるほど。アメリカの場合は逆にESGをしている運用機関は政府との取引から排除されるということが、州政府別に行われています。

これもある種の公的関与ですから、Trillium Asset Managementが存在してはいけないとは言ってないけれども、少なくとも政府の取引には入っていけないという意味では、そこは姿勢を示しているということですよね。

では手塚さん、そして吉高さんの順番でいきたいと思います。では、手塚さん、お願いします。

【手塚メンバー】

はい、どうも。今日は皆さまからサーベイをいろいろと教えていただきまして、勉強になりました。これに関するコメントが1つとそれから先ほどから出ている少し大きな話について林さんからも振られたんで、これもコメントしたいと思います。

まず本日の資料についてなんですけども、トーマツさんの資料の5ページ目に個人向けのアンケートのところで、下から3つ目ですかね。「サステナビリティとリターンの両立可能性について大半の個人投資家はまだ考えを固めていない」とありますが、これはそのとおりだと思うんですね。その背景が21ページに国内外のアセットオーナーへのヒアリングのサマリーっていうところの上から2つ目に、「国内外問わずサステナビリティ考慮のために財務リターンを犠牲にしないという共通認識はあるが、それによるリスクリターンの影響についてコンセンサスを得られていない」って書いてあるわけです。機関投資家というプロの人たちがこういうスタンスでいるときに、個人が何か指針を持てるはずがないんで、言ってみれば震源地はこっちの方にあるような気がしますね。

なんでこうなのかっていうことをちょっと考えたんですけど、そもそもこのサステナブル投資商品とかサステナブルファイナンスって議論をするときにはサステナブルでない逆張りって何なのかって考えると、それは足達さんがおっしゃるように何の制約もなくリターンを最大にすればいいという投資商品のことを言ってるのか、それとも、サステナブルファイナンスがあえて選好しているグリーンであったり社会的に正しいというものの反対に振っている、例えば、化石燃料投資とかこういうものに対する投資のリターンがどうなのかっていうこととの比較の中で議論をしてるのかっていう問題です。

これがつまりサステナブルファイナンスって自分だけが何をやるかという定義をするんじゃなくて、そうでないものは何かという観点からも定義をする必要があんじゃないのかという気がします。

なんでそんなこと言ってるかっていうと、リスクリターンを検討する際にリターンがその投資に対するお金のリターンだけのことを言ってんのか、そうじゃなくてその外で外部的に発生するリターン、つまり社会に対して長期的に良いことができるとかインフラが整うとか健康が良くなるとか、こういうリターンも含めたリターンであるとすると、そこの部分をマネタイズして合計したものがリターンであると言ってるのかっていうことがやっぱり商品とかその話している人によって混ぜてる人もいれば混ぜてない人もいるのではないかということです。これがおそらくその投資家にとっても、あるいは個人でサステナブルファイナンス商品を考える人にとってもやっぱり曖昧なんじゃないのかなという気がするんですね。

もしそれが後者であるとすると、個人に対する金銭的リターンは少々犠牲にしても10年先20年先にいい社会になってそれがコレクティブアクションとして社会全体に何億円、何兆円っていうリターンを生むんだったらそれでいいやっていうそういうことを訴求する商品だったらそういうふうに作ればいいっていうことのような気がするわけです。そこが今やっぱりまだ黎明期にあるためにごっちゃになってるのかなっていう気がしました。これが1点目。

2点目の渋澤さんが提起されたESGから始まって起きたちょっともう少し大きな話に関しても、私の立場上何か言わなきゃいけないかなというふうに考えてたんですけども、まずEUのオムニバス、これ長谷川さんおっしゃっているとおり今やグリーンはやるんだけどもそれは産業競争力を高めるためにやるんだという、ある意味論法をすり替えてきてるとは思うんですけども、ずるいのはあれは規制を緩和することでもって企業の負担を減らすとは言ってんだけど、本当はあの中にはエネルギーコストを下げて、EUの企業の国際競争力を高めると本文には書いているけど、具体的に何をやるかといった内容は全く出てきてないですね。それに手つけた瞬間にグリーン政策とのトレードオフが出てくるはずなんだけど、そこはごまかしてる。だからまだこれはウェイト&シーの状況かなと私は思っているところがあります。

なんでそんなこと言ってるかっていうと、ちょうど2週間前にワシントンに出張に行ってまして、エネルギーのあるフォーラムがあったんでそこでアメリカ商工会議所とかアメリカの産業界の人と話をしたら、ちょうどその直前にヒューストンでエネルギーの世界最大のシンポジウムがあって、そこの基調講演の場でダニエル・ヤーギンが司会をして、ブラックロックのラリー・フィンク会長が出てきてスピーチというか30分対談をしたというのです。彼らが何を話したかっていうのがもう今はアメリカでは騒然と話題になっているんで、私はその場にはいなかったんですけど、全部ビデオで見れますんでYouTubeで御覧になっていただくと面白いかなと思うんですが、今年のラリー・フィンクのCEOへのレターに何が書かれるかというのは非常に興味深いところです。

というのは、自分はデカボナイゼーションは依然として信じるけども、エネルギーの世界が全く様変わりしてると言っているわけです。何が象徴的かと言う話なのですけども、4年前にアメリカのエネルギー戦略の議論をしたときには、例えばデータセンターとかAIとかでこれから需要が伸びるところに電力を新しくどんどん供給インフラとして使わなきゃいけないっていうときに、でも再エネでやろうねっていうふうになっていた。2年前にはそれが再エネであることが望ましい(preferable)という条件になった。今年は何でもいいから電気が必要だという条件になった。なぜならば、これからの世界の産業を制するのはAIとデータセンターを制するもので、つまり国の競争力はいかに早く確実に電力インフラを増やせるかにかかってるというわけです。従って四の五のいろんな条件つけないと彼は言った、ということだそうです。彼は「This is a wake up call for EU.」とまで言った。とそういう状況なそうです。

最後にですね、ダニエル・ヤーギンに向かって腕につけてるストラップを見せてこれを見ろっていうのですが、「何?」というと、「Make Energy Great Again.」と言ったわけです。10兆ドルを運用している世界最大の投資ファンドの会長さんが、そういうことを1万人の聴衆の前で言ってるっていうことが起きてるっていうのはやっぱり大きく様変わりしてるのは事実だと思うんですね。

だからESG投資をやる、やらないという問題じゃなくて、どこにオポチュニティがあるかということが大きく変わってきているということが、今後いろんなところの活動に大きく影響してくる可能性はトランプの存在に関わらずそういうことなのかなっていう気がするんで、渋澤さんがおっしゃるように今年とか来年ぐらいっていうのは大きな転換点が来るかもしれないなと思っております。

以上です。ありがとうございました。

【渋澤メンバー】

今の話って日本がずっとエネルギーは一番プラグマティックに、急激にオン・オフではなく、トランジションが大事ですと言ってたことなので、そのまま貫けば良いと思うと話を聞いておりました。

【水口座長】

ありがとうございます。では、吉高さん、お願いします。

【吉高メンバー】

はい、どうもありがとうございます。ちょっとすいません、考えがまとまっていないのでいろいろと言ってしまうかもしれないこと御容赦いただきたいと思いますけど、ちょうど先々週国連女性の地位委員会っていうのがあり、そこに参加された方からロシアとサウジアラビアと米国が同じ意見だということで、俗に何とかの枢軸みたいなことになっていると聞いて、また今アメリカの大学がすごい状態であると、特にD&Iに関してです。参加した方が、これは極端にふれてしまうことに対する反動が大きいのだろうとのこと。日本はきちんと地固めをしてコンセンサスを得ながら一歩一歩進めてきている、そして、それは簡単に戻らないというのが強みじゃないか、とおっしゃっていました。

だから、欧州でもオムニバス法案が出て極端に進んだ分調整があるというのは理由がつきます。国民は意識高い系とそうじゃない人がいるわけですが、日本とはどういう国なのかと思ったときに、まさに水口先生からおっしゃっていただいたように、日本とはどういう国であり金融機関はあらゆる産業、個人に対してもゲートキーパーになると言われており、どういう役割や意味があるのかというのが、我々がここで考えるのが1つあるというふうには思ってはいます。

渋澤委員がおっしゃったとおり、周回遅れならば本当にちょうどいいチャンスなんじゃないかというふうに思っていて、決して欧米と比較して日本が進んでいるわけでもないですし。そこでちょっと御質問があったのは、事務局資料2ページにある4割弱の方がESGに関心あるというのですが、欧米はどうなのかっていうことは知りたいですね。

私自身90年代ニューヨークではインパクト投資も始まっていたわけですが、個人投資家の方々は宗教のバックグラウンドの影響や社会貢献活動をしている方々がいらっしゃって、その方たちの意識がこういう投資に向かっているっていうのは実際にありました。そのような背景などはこの分析は入っているかと思った次第です。

例えば、その若い人と一概におっしゃいますけど、SDGsが義務教育に小中に入ったのが2020~2021年と試行的にはその辺りなのですが、教育との関係はどうなのかとか。あと私はミッションスクール出身ですが、母校ではすごい勢いでSDGsを子供たちが率先していて先生に言われることもなくやるほど意識が上がってるそうなんです。公立とか県立とかにもSDGsスクールがありますが、これは日本が先導しているESDの影響ですがこのような背景は分析されたのか関心があります。

若い人がSDGsが分かるといっても、若い人の半分以上ほとんど関心がなくこういった人たちとその教育との関係はどうなのかっていうのは、ぜひ知りたいなと思いました。そういった点ではトーマツさんの資料の8ページの結果の中に、そういう分析があってもよかったのかなと思った次第です。

どれも出すというのはあるかなと思っていて、例えば1番目の良いことだからやるっていうのは主観的で環境や教育によって人は変わりますし、2番目の場合は、目前のリスクを感じている人たちにとってはその背景は関係ないなど、サステナブルファイナンスとは何か、日本ではそれをどう考えるか、次の段階としてあってもいいと思うし、もし考えているのでしたらお伺いできればなと思った次第です。

高橋さんのおっしゃっている、ESGとそうでないのを分けるのではなくESGが普通になるのが当然じゃないかと思います。

ただ機関投資家の場合はリターンを求められ、個人投資家は自身のフェーバーがあります。例えば、サステナブルファイナンスの商品を作るのにコストがかかるならそのコストの補助っていうのは出るのか、それが可能な場合、マーケットに歪みが生じるのか、GXでも様々な補助制度があります。サステナブルファイナンスにおいてのそのコストについても考えられるのかと思った次第です。

エンゲージメントについては、元来パッシブ運用が中心の日本なのでこのエンゲージメントに対する見える化をすることは重要かと思います。個社の資産運用会社で時間の制約もあり十分されていないと事業会社から聞いていて思います。ラベル付けだけでは十分でない。日本は金融でいかに日本のサステナビリティを上げるか。企業の知的財産や無形資産のストラテジーを審査させてもらいましたが、エンゲージメントができている企業はサステナブルファイナンスと関係性があるように見えました。サステナビリティもいろいろな項目があるので、ここはそれら全部を見て企業のサステナビリティに資する金融を考えていていく必要があるのではないかと思いました。

すいません、全然考えまとまっていませんが、ありがとうございます。

【水口座長】

はい、ありがとうございます。トーマツ様からお答えがあるかもしれませんけれど、ちょっと考えていただいて、その前に手を挙げた順番で安地様、小野塚様、そして鍋嶋様の順番でいきたいと思います。それでは安地様、お願いします。

【安地メンバー】

はい、どうもありがとうございます。三井住友銀行の安地でございます。ちょっと実務的な金融の銀行の関連でちょっと申し上げたいと思います。

トーマツさんのプレゼンテーションで、例えば、若年の方が一般的にESG課題に関心があると私も思ってましたけど意外と高齢の方があったりとか、次のページでその保有資産が割と影響してるとかっていうこの辺はどういうことなのかなというふうに考えると、何となくピュアな関心は若者・若年の方が多いんだけども、あの、お金がないから関心が下がってしまってるみたいな、逆に言えば若い方が資産を持てばもっとこう関心が出て、それがサステナブルファイナンスに向かうんじゃないかななんて思いながら今聞いていました。そうなってくると、やはり我が国は個人の金融資産が2,000兆円あって、その中でも我々の銀行に多分預金が1,100~1,200兆円あると思うんですけど、これ残念ながら若者よりも御高齢の方にかなり偏在してますので、この世代間の移転を一気に進めるっていうことがそうすると難しいこと言わなくてもおのずと若干若い方からこのサステナビリティファイナンスにお金・資金が回るんじゃないかなというようなことを今思いながら考えてました。

例えば、今、生前贈与は110万円っていう非課税枠が110万円とありますけども、これは野村證券さんのアイディアにちょっと触発されたんですけど、例えば、これはなかなか難しいと思うんですけど、110万円を例えば、つみたてNISAと同じ120万円に枠を変えて、例えば、息子さんとかお孫さんが親とかおじいちゃん・おばあちゃんの口座引き落としのクレジットカードで積立できるとかですね、そういうようなちょっと乱暴ですけど、そういうことまでして世代間移転をしていけば、一気にこの辺のいくらかはですね、解決するのではないかなというふうに思いました。これが実務的かなと。

あと、冒頭渋澤さんがおっしゃったあのハイレベルな議論についてはちょっと我々銀行が日本で一番最初にNZBAを抜けているんですけれども、御説明するときはしっかりちゃんとした場で説明したいなと思いますので、今日はですね、なかなか難しい議論もあるかと思うので今日はコメントを差し控えたいと思います。

以上です。

【水口座長】

はい、ありがとうございました。では小野塚さん、お願いします。

【小野塚メンバー】

はい、ありがとうございます。私の方から簡単に大きく2点ほど申し上げたいと思います。

まず、すごく重要だなと思うことは、このタイミングで皆さんおっしゃるところに関して申し上げますと、1つはサステナなブルファイナンスに関する認識をちゃんと整理することが、個人投資家も含め重要なことだと思います。例えば、先ほどのエンゲージメントとかパッシブの話というところから考えると、サステナビリティ投資というのを大きく考えたときにエンゲージメントというのが入るのであれば、投信や国民の年金を通じて、もう国民全てがやっている状態であると言えます。一方でやっていないと答える人が多いのであれば「サステナブルファイナンスはやっている」という認識を早く作ることだと思うんですね。

なので、その認識醸成のために啓発をするというのは急務であると思います。でなければこれまでのコーポレートガバナンス改革の10年間、機関投資家も企業もそこに向かってやってきた努力が水の泡になってしまうと思うので、やはりそのサステナビリティ投資ということについては国民の年金を通じて既に関与してるんだということ認識を改めるという再整理を行うということが重要だと思います。

もう1つのポイントは、やはりその追加的な資金をこの分野に投入するためには、パッシブ以外のアクティブもそれからインパクト投資のようなそういった社会的インパクトを重視するような投資もサステナブルファイナンスに含むというふうに整理をするとですね、短期的、中長期的に分けてできることがあるんだろうと思います。短期的にはやはり我々の報告書のようなものを使って認識をもう一度整理して、皆さんやってるんですよというところから出発すると、こういう整理になっていますという整理の図を示すことができると思います。中長期的にはやはりここがその公的関与っていうところだと思うんですけれども、ひたひたとやっぱり啓発っていうことを公的にやっていくっていうことも重要だと思います。

そして、追加資金のところについてはですね、短期的にはいろんな公的関与も含めて何かタックスブレークのようなものがあればそれがありがたいですが、ちょっとそこは検討に時間がかかるので短期的なインパクトだけども中長期的な議論が必要というところで、逆に中長期的な部分に関しては、ひたひたとそちらにお金が回るようにここはやっぱり金融庁の特徴活かして、機関投資家、アセットオーナー、運用会社含めて、ESG投資の効果をきちっと発表するということをもう一度後押しする。そして、それを何かショーケースするような場を作るであるとか、報告書の中に盛り込むであるとかそういったことができるんじゃないかと思います。以上のように、短期・中長期、既存・追加的活動(資金導入)に分けて実行してはいかがかなというコメントです。ありがとうございます。

【水口座長】

ありがとうございました。それでは鍋嶋さん、お願いします。お待たせしました。

【鍋嶋メンバー】

はい、ありがとうございます。岸上委員が先ほどおっしゃってましたが、やっぱり「Why」というなぜこれをやるのかを明確にしないと非常に分散した議論になってしまうと思いますし、6月にまとめられるのかなということになろうかと思います。

やはり国力の競争力っていう話もありましたけれども、資産運用立国を目指すのだということ、あるいは金融リテラシーの向上、特に若い人の資産形成ですね、先ほども世代間の移転という話もありましたけれどもそういうことを促していくという中で、サステナブルファイナンスって何なのかっていうところの位置づけをもう少し明確にしないといけないのかなと思っています。

民間の資金を動員していくっていうことの必要性であるとかそれによってやっぱり行動変容を促していくんだっていうところまでいけるといいのかなと思ってますけれども、結局一体何を目指しているのかがやはり明確にされる必要があるだろうと思いました。

【水口座長】

ありがとうございます。ちょっと時間は過ぎてるんですけども、トーマツさんから、もし吉高さんからいろいろ御質問ありましたのでコメントがあれば御回答いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【伊藤様】

ありがとうございます。それではいただいた御質問のところと、これまでのディスカッションの中ですいません、ちょっとお時間過ぎてはいるんですがせっかくの機会ですので今回アセットオーナー、そして資産運用会社様にヒアリングした中でちょっと関連する発言があったものをピックアップして御紹介できればというふうに思っております。

まず初めのところ、御質問いただいたところですね、サステナビリティ投資の経験や認知とその人の宗教であったり教育というところと関連があるかというところは、ちょっと残念ながらそこまで深掘りした質問はできておりませんでした。今後の調査の参考になればというふうに思っております。

そしてそういった人たちがサステナビリティ投資をしたいと思わない理由として方法が分からないとあるけど、方法が分かったらやるのかということについても、多分やらないというのはそう考えられます。なので方法が分かったらすぐにということではなくて、おそらくその場合はしたいと思うけれども実際にはしていないところにランクアップするかもしれませんが、ただそれをもってすぐに投資が始まるというわけではないだろうというふうに思います。

そして、あと他、ちょっと発言を御紹介というところですけど、まず米国の状況のところについて今回海外の資産運用会社アセットオーナーの皆様に質問させていただきましたが、米国については、訴訟リスク等のところについては実務的に淡々と対応していくけれどもその他会社としての姿勢が変わるわけではないというところで御意見をいただいてます。

そして、そういった米国の姿勢等もあって規制のフラグメンテーションについてはどう思うかというところ、これについてもやはり全世界で統一してくれた方が楽ではあるっていう意見と、あとはやはり地域ごとの事情があるので地域ごとの事情を勘案した規制とすべきというところの両方意見がございました。おそらく両方とも本音ではあるのだろうというふうに思っています。

それから産業競争力というところの話は、国内のアセットオーナーおよび資産運用会社の皆様からやっぱりそのグリーン資金をどう日本に取り込んでいくかっていうところの産業政策として考えるべきだという意見がございました。あとはフランスの資産運用会社からですねEUのタクソノミーもEUの産業っていうことを背景に作っているので、その辺は少し恣意的なところがあるよ、という御意見がございました。

それから何を目指すかというところに関しては、サステナビリティ投資というふうに区別をしなければ先ほどサステナビリティ投資の考慮の度合い、グラデーションでゼロイチではないというお話がございましたけれども、そのグラデーションの部分を全部含めれば、そのゼロイチで切り捨てなければ、実はサステナビリティをわずかに考慮している投資は実はものすごく広がっているんじゃないかというところの御意見もございました。

そして資産運用会社様3社から、全く同じ例えで全く同じ話をいただいたんですけども、グロース投資、バリュー投資っていうものがあるけれども、それが本当にグロース投資をしているかっていうことについて何も開示なんてしていない、っていうふうな、なぜサステナビリティ投資だけはサステナビリティ投資をしているという開示をしなくてはいけないのかというところで、それと同じように区別しない1つの投資手法として考えるべきではないかという意見を寄せていただいた資産運用会社さんもいらっしゃいました。

すいません、以上補足でございます。

【水口座長】

はい、ありがとうございました。少し時間が過ぎてしまって申し訳なかったんですが、もし池田さん、何かコメントがあれば。

【池田課長】

いや、ないです。ないっていうか、何か皆さんいろいろ考え方が違っていて、やっぱりこの分野は難しいんだなって改めて思いました。

【水口座長】

ありがとうございました。それでは最後に、事務局から御連絡があればいただきます。

【高岡サステナブルファイナンス推進室長】

次回の有識者会議は5月を予定しています。日はまだ決まっていなかったと思いますので、改めて皆様の御都合を踏まえまして、事務局から御連絡させていただきます。

【水口座長】

はい。というわけで次回は5月、そして6月にあと1回やって報告書をまとめるということで、あと2回はさせていただきまして、報告書をまとめていきたいと思いますので、引き続き御協力いただければと思います。本日はこれにて終会としたいと思います。

大変お疲れ様でした。ありがとうございました。

―― 了 ――

(参考)
開催実績
お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室(内線 2918、5404、3515)

サイトマップ

ページの先頭に戻る