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「サステナブルファイナンス有識者会議」(第28回)議事録
- 日時:令和7年5月27日(火曜日)14時00分~16時00分
- 会場:中央合同庁舎7号館 9階 905B会議室 及び オンライン
【水口座長】
それでは、定刻となりましたので、ただいまより、サステナブルファイナンス有識者会議の第28回を開催します。御多用のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
議事に入ります前に、メンバーの変更が一部ございましたので、御紹介したいと思います。まず、全国銀行協会の上野様です。上野様、よろしくお願いいたします。
【上野メンバー】
よろしくお願いいたします。
【水口座長】
続きまして、日本取引所グループの吉田様です。吉田様、よろしくお願いいたします。
【吉田メンバー】
よろしくお願いいたします。
【水口座長】
本日は最初に事務局から、これまでいただいた主な御意見と、第五次報告書の素案について15分ほど御説明をいただきます。その次に、個人投資家における理解促進の観点から、人工知能によるESG投資信託責任投資手法の試験的分類について、ソニーコンピュータサイエンス研究所の田尻様にお越しいただいておりまして、田尻様から15分ほどプレゼンテーションをいただきます。その上で、プレゼンテーションも含めて議論をさせていただきたいと思います。
カメラ撮影はここまでということとさせていただきますので、今日マスコミの方がいらっしゃったんですけれども、御退席をお願いします。
それでは、最初に、事務局から御説明をお願いします。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
事務局のサステナブルファイナンス推進室長の高岡でございます。本日も皆さん、お忙しいところありがとうございます。
早速ですけれども、事務局からの説明ということで、まず、横紙の資料になりますけれども、右下1ページ目からですけれども、前回3月の有識者会議の場でいただいた主な御意見というところで御紹介させていただければと思います。
まず、サステナブルファイナンスの意義に関しましては、いただいた御意見として、例えば上から3つ目の御意見ですけれども、サステナブルファイナンスの意義ということですけれども、次世代に国のインフラや社会制度などを残すために、公的部門だけでなく民間の力も借りながら、金融の力で何ができるのかといったことを発信することが有識者会議にできることではないかということですとか、その次の丸ですけれども、公的関与すべきサステナブルファイナンスの領域はどこかということについて合意形成することは有効ではないかということ。それから、その次の丸ですけれども、資産運用立国との関連で、サステナブルファイナンスとは何かという位置づけをもう少し明確にする必要があるのではないかという御意見。
それから、次の幅広い投資家への投資機会の拡充に向けた取組に関する御意見ですけれども、例えば上から2つ目の御意見として、サステナビリティ投資を当たり前のものとされる状況を実現していくことが重要ではないかということ。
それから、次のページ右下2ページになりますけれども、上から1つ目の丸ですが、個人が投資を通じて自らの安定した生活基盤を構築し得るという意義を整理した上で、アセットオーナーを通じた方法や自ら投資する方法があることを伝える必要があるのではないかということ。それから、1つ飛ばしまして3つ目ですけれども、サステナビリティ投資にエンゲージメントが含まれるのであれば、投資信託や年金を通じて国民全員が行っているということがいえると。サステナビリティ投資を行っているという、こうした認識を醸成することが重要ではないかということ。それから、最後の丸ですけれども、サステナビリティ投資のコアの部分は何かということを考えると、インパクト投資が1つのポイントであり、それをどのように個人投資家に手触り感のあるように提供するかという議論に行き着くのではないかといった、このような御意見が前回の会議では出たところでございます。
今般、こうした御意見等も踏まえまして、第五次報告書の素案ということで事務局のほうで取りまとめまして、一通り事前に皆様から御意見頂戴いたしましたので、その辺も本日の会議に間に合わせられるよう、事務局のほうで可能な限り反映したものを今、お手元に配付させていただいておりますけれども、こちらについてざっとポイントを御説明させていただきたいと思います。
まず、2ページ目からですけれども、「はじめに」ということで、こちらのほうで記載させていただいている内容は、第一次報告書をまとめてから、この有識者会議ではサステナブルファイナンス推進の取組の進捗状況ですとか課題、方向性について議論を行っていただきまして、四次にわたり報告書をまとめてきたところでございます。
そうしたことも踏まえまして、今事務年度の有識者会議におきましては、個別具体的な課題に関して大局的な視点から議論を深めるということで、2つ目のパラグラフのほうで記載しておりますけれども、サステナビリティ投資を選好する幅広い投資家への投資機会の拡充をテーマとしまして、欧米の足下の動きなども踏まえまして、サステナブルファイナンスの意義を再確認しつつ、今申し上げたようなテーマで議論をしていただきまして、サステナビリティ投資を選好する幅広い投資家において、サステナブルファイナンスの意義・効果が認知・理解され、その投資選好に応じた投資機会の提供につながり得ると考えられる取組というものについて議論を取りまとめたものが、こちらの報告書の素案となってございます。
次のページ、3ページ目からがサステナブルファイナンスの推進の意義と課題ということで、(1)のところでサステナブルファイナンスを巡る情勢について記載してございます。こちらの内容としましては、欧米を中心に気候変動への対応をはじめ、サステナブルファイナンスをめぐる情勢には変化が見られるということで、米国におけるパリ協定からの脱退といったような政策変更の動きですとか、それから、EUにおけるいわゆる「ドラギレポート」ですとかオムニバス法案という、これまでEUが進めてきた脱炭素をはじめとするサステナビリティに関する規制の簡素化の動きが見られるといったところについて触れてございます。
22行目からが我が国における状況ということで、こちらはこうした欧米における政策変更などの動きが見られる中、我が国においては政府の方針の下、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取組が着実に進展している状況にあるという現状認識を示した上で、具体的な取組として、例えば28行目からですけれども、エネルギー安定供給確保、経済成長、脱炭素の同時実現を目指すGXの推進ですとか、次のページにまいりまして、1行目からですけれども、「GX2040ビジョン」ですとか、我が国の新たなNDCを決めました改訂版「地球温暖化対策計画」の閣議決定といったところについて触れております。
その上で、10行目において、我が国の状況をまとめた記載としまして、米国における政策変更と、EUにおける規制の簡素化の動きが見られる中、脱炭素への現実的な移行に向けてトランジション・ファイナンスなどの取組を進めてきた我が国においては、こうした方針を維持し、引き続き2050年カーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでいく方針が示されているというふうに記載しております。
(2)のサステナブルファイナンスの推進の意義ということで、まず、第一次報告書において整理されました意義・効果について、18行目から26行目まで記載してございます。その上で、金融庁はどのような観点からサステナブルファイナンスを推進しているのかといった点については、この会議の場でもよりクリアに打ち出すべきで、メッセージとして出すべきじゃないのかといった御意見も踏まえまして、28行目におきまして、金融庁においては、企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成などによる国民の厚生の増大を目指すというミッションの下、サステナブルファイナンスに関する各経済主体の自主的な取組が中長期的な投資リターンや企業価値の向上の実現につながるよう、引き続き環境整備に取り組んでいくことが期待されるというふうな形で記載してございます。
(3)からは、幅広い投資家への投資機会の拡充に向けた課題ということで、まず5行目からですけれども、サステナビリティ投資を選好する投資家に対して、運用対象の多様化や新たな投資機会の提供を図る観点から、やはり認知・理解の向上を図ることが重要だということ。それから、8行目ですけれども、「資産運用立国実現プラン」においても、このサステナブルファイナンスについて、持続的成長のための成長資金の供給拡大や分散投資の観点から、サステナビリティ投資などの運用対象の多様化の重要性が指摘されているということで、資産運用立国とのつながりというところについても、本文のほうで記載する形とさせていただいております。
課題につきましては、13行目以降で記載ございますけれども、昨事務年度、2023年12月より、計4回にわたって行いました「サステナビリティ投資商品の充実に向けたダイアログ」において、今後の課題や論点等を示した「対話から得られた示唆」というものをまとめておりますけれども、そこで示された課題に触れた上で、こうした指摘を踏まえた上で、第四次報告書のほうで、投資家層の特性や意向などについて実態把握を行い、サステナビリティ投資の基本的な意義や戦略、説明や対話などの中核的な概念・実務について議論することが考えられると、有識者会議の場においてということで、今般、有識者会議において、このテーマで議論しているというところの位置づけについて記載をさせていただいております。
7ページからが、サステナビリティ投資商品などにおける国内外における主な取組ということで、7行目の(1)の海外における主な取組ということで、IOSCOの報告書の内容ですとか、あとは20行目以降は、主要国における名称・分類・ラベル、商品情報の開示などに関する規制・監督の枠組みについて、有識者会議の場で事務局から御説明させていただいた内容をまとめる形で記載してございます。
ページ飛びまして、9ページ目の27行目からが我が国における主な取組ということで、こちらではスチュワードシップ・コードですとか、次のページにいきまして、7行目からはアセットオーナー・プリンシプルの話、それから12行目のところでは、ESGに関する公募投信に関する監督指針の改正の話について触れておるところでございます。
11ページからが、こちらも有識者会議の場で水口先生から御紹介のあった高崎経済大学の調査ですとか、当初は今事務年度、デロイトに外部委託ということで実施しました実態把握について、その結果概要を記載しているパートになります。
(1)が個人によるサステナビリティ投資の実態ということでして、こちらはちょっとかいつまんで、詳細は触れませんが、ごくごく簡単に御紹介しますと、例えば12ページの2の課題への関心というところで見ますと、この会議の場でも何度か意見が出ましたけれども、サステナビリティに関する課題への関心は若年層のほうが相対的に高いというふうな話が聞かれる中、今回の実態把握では、年齢層が上がるほど関心が高いという傾向が見られたということ。
それから、16行目ですけれども、逆に中高年層では関心が高いという一方で、サステナビリティ投資商品に接する機会は、若年層に比べると相対的に少ないということが見られたというところ。
それから、次のページ、13ページになりますけれども、6行目に記載ございますが、サステナビリティ投資をしたいと思わないと回答した方々のその理由として一番多かったものが、サステナビリティ投資の方法が分からないというものが最も多くなっていたということ。
それから、12行目ですけれども、サステナビリティ投資をしている、またはしたいというふうな回答をした方の理由としては、サステナビリティの考慮を通じた投資リターンの向上以外の理由というものを主な理由として挙げていることが把握されました。ただ、これは、リターンに全く関心がないということではないということについては、留意が必要であると考えております。
次のページの3行目からが、サステナビリティの考慮と投資リターンの関係についての実態把握の結果概要ですけれども、12行目のところから御覧いただければと思いますが、サステナビリティの考慮によって投資リターンが毀損するということを理由に「したいと思わない」と回答している個人においては、「論理的な説明が提供されれば考えが変わるかもしれない」という回答割合が比較的高かったということ。それから、サステナビリティ投資の効果やその評価基準に疑義があることを理由に「したいと思わない」としている個人については、「論理的な説明/データが提供されれば考えが変わるかもしれない」との回答割合が比較的高くなっているということが把握されました。
ページ飛びまして16ページのところでは、8行目からのところは、いわゆる名称・分類・ラベルの希望、選好について確認したところですけれども、ここについては、希望の有無ですとか、どのような名称・分類・ラベルがあるとよいかという点に関して、特段顕著な傾向は見られなかったというところが把握されてございます。
18ページからは、国内外の機関投資家によるサステナビリティ投資の実務ということで、これを把握するためにヒアリングを実施したところ、例えば7行目以降が投資戦略に関することですけれども、13行目から17行目において記載があるのが、国内のアセットオーナーである生命保険会社ですとか、国内資産運用会社においては、いずれにおいてもサステナビリティを相応に考慮しているという回答が得られた一方で、19行目ですけれども、監督指針に基づくESG投信について見ると、公募投資の占める割合というのは2%未満にとどまっているということで、ここはちょっとヒアリングで把握された実態との間に乖離があるのかなということで、そういったことを記載しております。
19ページがエンゲージメントに関する事柄についてヒアリングした内容ですけれども、具体的な取組事例を把握した上で、19行目のところですけれども、一部の資産運用会社においては、エンゲージメントを通じて取組が順調に進捗している企業については、当該企業への投資リターンが向上しているとの結果が見られるとの指摘もあったところでございます。
次のページ、20ページがサステナビリティ投資商品に関する情報提供に関する意見を聴取したものですけれども、下のほうですが、22行目からのところで、一部の国内資産運用会社からは、商品の分かりやすさの向上や個人投資家への訴求の観点からは、分類・ラベルが有用ではないかという指摘があった一方で、個人投資家はサステナブルファイナンスに関する認知・理解がそもそも不足しているので、分類等を導入しても、投資実践には必ずしもつながらないのではないかという指摘も見られたところです。
ページ飛びまして23ページ目からが、今まで説明した記載内容である国内外の取組状況、それから実態把握を踏まえまして、4ポツということで、幅広い投資家への投資機会の拡充に向けた示唆と期待といったところをまとめたパートになります。
サステナビリティ投資を選好する幅広い投資家において、サステナブルファイナンスの意義・効果が認知・理解され、その投資選好に応じたサステナビリティ投資の機会の提供につながり得ると考えられる取組を考える上でのポイントということですけれども、8行目以降が総論的な話ですけれども、認知・理解の向上の重要性について記載しているところになりますが、14行目で記載ありますが、若年層に限らず中高年層や投資経験が豊富な投資家において、サステナビリティ投資を選好する個人が存在するということですとか、18行目ですけれども、サステナビリティ投資を選好する未経験者の割合が半数を占めているという結果があるということ、それから、方法が分からないことを理由として選好していない個人もいるということと、こういったことも踏まえると、認知・理解が進めば、投資選好が変化し得るのではないかといったこと。
それから、24行目のところではまとめ的に、認知・理解が進めば、運用対象の多様化や新たな投資機会の提供につながり得ると考えられるといったことを記載しております。
(2)がサステナビリティ投資商品の組成・提供におけるさらなる取組に関する示唆というところですけれども、次のページで24ページの下のほうで記載しておりますけれども、21行目から26行目のほうでは、実態把握結果からは、経験者及び、それから選好する未経験者においては、投資リターンの向上以外の理由を主な動機として投資選好をしているということがうかがわれたということ。それから、投資リターンが毀損されることなどを理由に、選好していない未経験者については、論理的な説明やデータが提供されれば選好が変化する可能性があるといったことがうかがわれたということ。
こうしたことも踏まえまして、個人に対して投資機会の提供を、選好している、あるいはするかもしれない個人に対して投資機会を提供していく上でのアプローチとしては、31行目からですけれども、社会・環境課題の解決への貢献を重視する個人については、中長期的なインパクトの創出、ひいては持続可能な社会の実現に、サステナビリティ投資というものがつながり得るということ。
それから、リターンについて、関心というか影響を重視する個人については、論理的な説明やデータに基づき、中長期的な投資リターンにつながり得るということについて説明をして、理解を得ることが有効ではないかといったことを記載してございます。
7行目のところでは、上記を踏まえまして、まずはサステナビリティ投資を選好する個人のサステナブルファイナンスに関する認知・理解というものを、今申し上げたようなアプローチも取り入れながら進められていくことが重要であるということが考えられるということで、10行目に記載してございますけれども、そうした取組状況も踏まえまして、今後、必要に応じて、ESG投信を含むサステナビリティ投資商品に関する分類の在り方などについて検討することが考えられるといったところにも触れているところでございます。
すみません、最後のページの26ページですが、「おわりに」ということで、こちらのほうでは最後の12行目以降が、これまでの有識者会議の取組も振り返りながらの記載になりますけれども、有識者会議におきまして、2020年12月以来、サステナブルファイナンスの諸課題を俯瞰的に捉えて議論を行って、これまでに四次にわたって報告書を取りまとめてきたところであると。サステナブルファイナンス推進の取組の黎明期においては、こうした議論を継続的に行ってきたことで、一定程度課題の把握ですとか、政策枠組みが構築できたものと考えられると。
今後、個々の政策課題への対応は、基本的には金融庁はじめ関係省庁において適切に対応することが求められるということとした上で、有識者会議に関しましては、5年の節目というものを迎えまして、今後はこれまでのように年に複数回開催して俯瞰的な議論を行う場ということではなく、各施策の進捗状況ですとか、国内外の情勢を定点観測しながら、サステナブルファイナンスの意義を再確認するような大局的・根源的な議論を行い、そのモメンタムを維持するような時宜を得たメッセージを発信する場として活用していくということが重要なのではないかということを念頭に置いた記載を、ここでさせていただいているところでございます。
すみません、少し時間を超過してしまいましたけれども、事務局からの説明は以上となります。
【水口座長】
ありがとうございました。いろいろ御意見はあろうかと思いますが、その前に田尻さんのお話をいただいた後、全員で議論したいと思います。
それでは、ソニーコンピュータサイエンス研究所の田尻様、プレゼンのほうをお願いいたします。
【田尻様】
初めまして、ソニーコンピュータサイエンス研究所の田尻といいます。よろしくお願いいたします。
本日は、人工知能(AI)を用いまして、ESGの投資信託に関する責任投資手法を、AIを使って試験的に分類をしましたので、その結果について供述差し上げたいと思います。次のページ、4ページをお願いします。
まず簡単に、当研究所を紹介させていただきますと、沿革に関しましては記載のとおりなんですけれども、平たく言いますと、ソニーは手広く事業をしておりますけれども、その事業ドメイン以外の研究分野を研究しているというのが、当研究所の位置づけになります。
具体的に申し上げますと、例えば農業でありましたり、宇宙空間におけるネットワークの構築でしたり、ピアニストをテクノロジーを使って効率的に育成をしていくというようなところでしたり、これまでのソニーグループの事業ドメインとは必ずしも直接的に関係していない先進的な研究をしているというのが特色になっております。次のページお願いします。
その中で、手前どもはaSSe22という名前で、主に当局、公的な機関でしたり、金融機関のほうに、これまでになかったようなモデリングというものを開発、提供するという活動をしておりまして、一部簡単に御紹介差し上げますと、GFIN、各国の金融当局のコンソーシアムのような位置づけのところがあるかと思いますけれども、そこはEUにおけるSFDR、あと最近施行されましたUKのSDRのような、ESG投信に対する開示規制が、皆さん御認識のとおりあるかと思いますけれども、施行はされたんですけれども、実際に開示されたとおりに資産運用会社、ファンドが運用しているかというところを、実態モニタリングするのは実質的に不可能だというところを、我々がいろいろな情報を使いまして、間接的にちょっとグリーンウオッシングの可能性がある。具体的に言いますと、目論見書にはESG投資をしていると言いながら、実態的にはしていないんじゃないかというところのファンドを間接的に検知するというようなモデルを、各国当局のアドバイスを受けながら開発をしましたり、あとは野村證券さんとSDGsの債券判定モデルというのがありまして、こちらは基本的に格付会社さんのほうが、ソーシャルとかグリーンボンドという形で評価をして、SDGs債券というふうに位置づけるかと思うんですけれども、マーケットの参加者の中では、格付会社がグリーンとかソーシャルとか評価をしてなかったとしても、ソーシャルとかグリーン的な性質を持っている債券は一部あると。それをもって新たなSDGs債券のインデックスをつくれないかという取組を考えておったようでして、人が評価しますとやっぱりどうしても経験でありましたりバイアスというのが入ってしまいますので、それをモデルのほうが機械的、客観的に評価、抽出をするというモデルです。
あとはサステナビリティとは直接関係ないんですが、公的な機関ということでいいますと、GPIF、公的年金基金のアクティブファンドに対するセレクションとかモニタリングを一部AIが人間の判断のサポートをできないかという、そういうモデルの開発をしましたり、最後は昨今、生成AIかなり活用されていますけれども、皆様御認識のとおりハルシネーションというもっともらしいうそをつくという懸念があります。それゆえに社内の文書をドラフトするというような利用にとどまっているというふうに多くは認識しておりますけれども、我々のモデルのほうで、偽情報を出さないというようなアーキテクチャーモデルのほうを開発しまして、実際に対顧客向け、一般ユーザー向けに生成AIを実際に活用しているという、例えばそういうものであると思います。
では、本題のほうに入りまして、7ページをお願いします。今回の目的が、個人投資家のESG投信の理解の促進というところで、大きく2点掲げております。まず1つが、機械的・客観的に分類をしてみましょうというところで、ESG投信に様々なものがあるというふうに認識しております。それが人を介して分類してしまうと、やはりどうしてもいろいろ人によって差でしたり解釈の違いが出てしまいますので、機械的・客観的にまずAIで分類をしてみましょうというのが1点目になります。
2点目が、非ESG投信、ESG投信とはみなされてはない、そういう位置づけのものじゃないんですけれども、ESG的性質を持っている一般的な投信がマーケットにあるというような御意見があるようでして、それを機械的に抽出、検知をして、なぜそのようなことが評価できるのかというところを説明可能にするというモデルをつくりまして、そういう客観的な評価ができないかというところを2つ目の目的としております。
検証の事項としましては、1点目のところに関しましては、御覧のPRI等を始めまして、スクリーニング、インテグレーション、テーマ投資、インパクト投資、スチュワードシップという5分類を仮に採用させていただきまして、今回、ごく一部、数十の投信を評価サンプルにいたしまして、その評価サンプルを機械的に分類したときに、この分類のどれに分類されるか、かつなぜAIがそのように判定したかというところを説明できるようにしております。かつこの5分類の関係性はどうなのか。平たく言いますと一部、もしかしたら似たような投資法なんですけれども、5分類にしてしまってないかというところをちょっと客観的に見てみましょうというのが1つ目の検証事項です。
2つ目は、ESG投信ではないはずなんですけれども、ESG的性質を持っている投信というのは実際あるのかないのか、あるとしたらどのように評価をすればいいのかというところを検知、評価をするということになります。
8ページをお願いします。検証方法なんですけれども、まず分類基準が、繰り返しですが、PRI等によります5つの責任投資手法、スクリーニング、ESGインテグレーション、テーマ投資、インパクト投資、スチュワードシップを使っております。その5つの責任投資手法それぞれにつきまして、様々な各投資信託の目論見書の中に、各責任投資手法に関する関連文書が記載されておりますので、そちらのほうを抽出しておりまして、基準文書とさせていただいております。
それに対して分類の対象となる評価のデータなんですけれども、合計で60、内訳としましては、御覧のようなESG投信のものもあれば非ESG投信のものもあり、あとアクティブとパッシブというところを一部入れております。評価の手法といたしましては、上にあります60の投信の評価データの目論見書がありまして、そこに責任投資手法に関する言及があります。そちらのほうを機械的に抽出いたします。その抽出された結果というものを、上にあります基準文書、分類基準であります基準文書との類似性を客観的に定量的に評価いたしまして、自然言語のモデルをつくりまして、ベクトル化をいたしました。ベクトル化をいたしますと、近い順でざっとリストが出てくるんですけれども、リストだけ見るとやっぱりなかなかちょっと解釈がしにくいというところで、理解促進のために類似度マップというものを作成しております。かつ、なぜAIがそのように評価をしたのか、分類をしたのか、検知をしたのかというところはブラックボックスにならないように、全て説明可能になるように、XAI(説明可能AI)というものを用いたというところと、あと実際どれぐらい遠いかというところがもう少し感覚的に定量的に分かるように、類似度の距離というものを出して評価できるようにしております。
9ページをお願いいたします。こちらのほうが出力の結果になっておりまして、ESG投信のアクティブのほうを対象としたものになっております。左側のほうに類似度マップがありまして、まず見方のほうを説明させていただきますと、X軸とY軸は無視してください。ペケのマーク、バツのマークとドットがあるかと思うんですけれども、これが近く位置されているものは似たような投信、ないしは似たような責任投資手法を取っている投信というふうに御覧ください。離れていたら離れているものというふうに御覧ください。
黄色のペケ、バツのところは、冒頭申し上げました5つの責任投信手法でスクリーニング、ESGインテグレーション等々になりまして、緑のところがESG投信になっております。これのマップの解釈、1つの留意事項といたしましては、本当は三千数百次元でかなり多次元になっているものを視覚的に分かりやすくするために二次元にあえてしておりますので、時空のゆがみ、次元のゆがみがありまして、一部本来はここに位置されないんだけれども、ちょっとゆがんで位置されているものもなきにしもあらずということは御認識いただければと思います。
まず、ESG投信(アクティブ)を機械的に分類したときの幾つか解釈、結果があるかと思うんですけれども、まず5つの責任投資手法というところに関しましては、真ん中ぐらいにあります3番のテーマ投資、あとそのちょっと上にあります5番のインパクト投資、あとは11時の方向にあります4番のスチュワードシップ、それぞれの距離があることが確認できます。これは何を意味しているかといいますと、この3つの責任投資手法に関しましては、それぞれ独自性といいますか、類似性はあまりない、それぞれ独自の固有の責任投資手法というふうに見て取れます。
一方で、4時から5時の方向にあります1番と2番のスクリーニングとESGインテグレーションに関しましては、ほぼかぶっているように位置づけられています。これは何を意味しているかというと、限りなく似た投資手法というふうに機械的に判断されているという形になっております。これが責任投資手法の分類の関係性になりまして、それに対しまして、緑のESG投信やアクティブがどのように評価されているかといいますと、まず、11時の方向にありますスチュワードシップのところにDと書かせていただいたんですけれども、この周辺には緑のドット、ESG投信のアクティブが1つもプロットされていないです。これは何を意味しているかというと、今回評価対象としたものの中に、スチュワードシップに類した責任投資手法を使っているESG投信はなかったということを意味しています。
次にCのところで、ちょうど真ん中ぐらいのところに2つドットがあるかと思いますけれども、これはインパクト投資かテーマ投資、どちらかの手法を使っているものが、この場合ですと2つの投信があったという形になります。一番の特徴がAのところになりまして、今回対象としました数十のESG投信のアクティブ投信に関しましては、ほとんどが1番のスクリーニングと2番のESGインテグレーションの近辺にプロットされていまして、このどちらかの手法、ないしは両方の特徴を持ったESG投信というふうに分類できるかなというふうに考えております。
もう一つ最後の解釈としましては、Bのところになるんですけれども、ESGインテグレーションとスクリーニングと、テーマ投資とインパクト投資の中間ぐらいにある投信がちょっと複数あるかと思うんですけれども、恐らく両方の特色を持ったような投信というのも一部あるんだろうなというところが見て取れます。ここからの解釈が下のほうに記載されておりまして、まず、分類基準なんですけれども、1番のスクリーニングと2番のESGインテグレーションに関しましては、個人投資家に対する説明性ということでいいますと、ちょっと違いについてはなかなか理解が難しい可能性があるかなというところが見て取れるかなと。ないしはほぼ同じもの、要は何が違うのというところは、なかなか理解が難しい可能性があるというふうに見て取れます。
2つ目がスチュワードシップという責任投資手法に関しまして、今回、たまたまなのかもしれませんけれども、分類されているものがなくて、ここをもう少しユニバースを増やしてみたほうがいいと思うんですけれども、もし仮に少なかった場合は、基本的にESG投信をしている投資信託に関しましては、どの投信もスチュワードシップは対応しているというふうに想定しておりまして、それぞれ固有の特色とはならない可能性があるのかなというふうに考えております。あとはBのような、ESGインテグレーションとスクリーニングと、インパクト投資・テーマ投資の双方を兼ね備えたような両方の特徴を持ったような投信も一部あるということが見て取れるかなと。
次に、真ん中のほうにあります31番の投信を例に取りまして、AIが何をもってこの真ん中、テーマ投資とインパクト投資の辺りにプロットしたのか、AIが何を見たのかというところを、次の10ページのほうで事例として説明をさせていただきます。先ほどの類似度マップの真ん中の31番の投信、これは具体的にはインパクト投資というふうにAIは評価をしておりまして、先ほどスコアリングをするというお話をしましたけれども、これは類似のスコアというものであります。御覧のようなスコアになりまして、理解の仕方としましては、ゼロですと完全一致になります。0.55というのは限りなく近いというふうに御認識いただければと思います。この投信の目論見書、いろいろ記載がありますけれども、その中で特にAIが着目したところが、一番最後の段落にある、基準と判断した目論見書内の文章というところなんですけれども、該当箇所の行のところをAIが、ここの投信の責任投資手法を評価するときに確認を評価した箇所になりまして、赤線でアンダーラインを引いてあるんですけれども、社会的インパクトを与えるインパクト投資、インパクト分析というような記載がありまして、これをもってこの投信はインパクト投資に一番近く、そこに分類されるという形で評価をされまして、先ほどの類似度マップのところでインパクト投資に近く評価をされている。それ以外のESG投信も同じような手法で、それぞれどれに近いか定量的に出して、先ほどの評価、プロットされているという、そういう手法になっております。これがXAIといいますか、何を見てAIがそのように評価したかという形になります。
次の11ページは、こちらは類似度マップのほうは出してはいないんですけれども、ESGのパッシブの投信を別途評価させていただきました。こちらはあるESGのパッシブ投信なんですけれども、結果からしますと、AIは、この投信はESGインテグレーションというふうに評価をしておりまして、類似のスコアは御覧のところで、限りなく類似性が高い。何を見てESGインテグレーションというふうにAIが評価をしたかといいますと、下の行の段落のところになりまして、赤線で下線を引かせていただいたんですけれども、基本的に、先ほど御説明しましたアクティブ投信は、やはり皆さん創意工夫をかなりされておりまして、目論見書はかなり書きぶりが多様になっております。それを人が判定、評価をしてしまいますと、やはりどうしてもいろんな評価結果が出てしまいますので、AIによる先ほどのような客観的・機械的な評価というのがいいのではないかというふうに考えられるんですけれども、パッシブの場合は、ESGの何らかのインデックスを採用しているという形でパッシブ投信を組成していることが多いようでして、AIを使うこともなく、ESGのインデックスというのはたくさんあるかと思いますので、それをキーワード検索して、それが引っかかったらESGのパッシブで、それぞれのインデックスがどのような責任投資手法を使っているかというところを見れば結果として分かるということで、AIを使わなくてもESG投信か否かというところと、じゃあどれに分類されるかというところは見て取れるのかなというふうに考えられます。
最後に、ESG的性質を持つ非ESG投信の客観的評価ということで、12ページを御覧いただければと思います。こちらはESG投信ではないという形でマーケットで流通しているものなんですけれども、類似のスコアが御覧のようなところにありまして、最も近い基準というのが、多くの非ESG投信は、ESG投信の5つの分類のどれにも属さないという形での評価結果になっているんですが、これだけが唯一、ESGインテグレーションに類していて、近いというような評価となっておりまして、じゃあAIは何を見て、非ESG投信にもかかわらず、ESGインテグレーションの手法に近いというふうに判定したかといいますと、やはり一番下の段落を御覧いただきますと、ESGに対する取組を勘案という記載があります。具体的には、右側の水色の枠のところが実際の目論見書を切り抜いたものになるんですけれども、この投信自体を改めて人の目で見ても、ESG投信というような記載は全般的にないんですけれども、ここの箇所だけ1か所記載がありまして、そこをAIがESGインテグレーションに近いという形で評価をしております。
これはたまたまこういうような投信が見つかったんですけれども、ユニバースを国内の公募投信全体に広げた場合に、こういう商品というのは意外にあるんじゃないかというような声もありまして、特に個人投資家を対象と想定した場合に、このような性質の商品というものをどのように認知を広げて理解促進を図るかというのは、1つ論点になり得るのかなというふうに考えおります。
では最後に、14ページを御覧いただきまして、今後の課題というところを説明させていただきます。今回、評価対象のユニバースとESG投信につきましては、時間の制約がちょっと残念ながらありまして、先ほど御説明しました数十のサンプルで、スモールスケールのみで有効性を評価しました。目的としましては、基本的にモデルの有効性というものを検証するということが、一部目的として捉えられるかなというふうに考えておりまして、一定モデルの有効性は検証できたかなと。ただ一方で、今後ユニバースを拡大して、例えば日本のマーケットで販売されているような全てのESG投信を対象として、このような分類とか検知をするというところが、1つ選択肢としてはあるのかなというふうに考えております。
かつ非ESG投信、ESG投資と考えられてないものというところに関しても、今回偶然1つ検知することができたんですけれども、マーケットの関係者の中にはもっとあるんじゃないかというような肌感覚をお持ちの方もいるようで、まず事実確認をするために、全ユニバースを対象として事実確認をするというところと、事実確認をした上で、個人投資家に対して、非ESGと名乗っているにもかからず、どのような形で分かりやすく情報提供するのがよろしいのかというところの整理というのも、1つ今後の課題になるかなと考えおります。
続きまして、評価基準なんですけれども、今回使用した基準文書というところで、基本的に基準文書は網羅性が高いほうが高精度で評価できる形になっております。今回も一定の基準文書を用意しましたので、高精度で検知は評価できているんですけれども、やはり全文、全投信を対象とした場合には、もう少しその設定の仕方というところを改める必要があるかなと。かつ今回、5つの責任投資手法で評価をいたしましたけれども、それ以外にもあるというふうに理解しておりまして、それ以外だとどうなるかというところ。あとさらには、責任投資手法、いろいろ皆様のほうで議論されましたり分類されているものをあえて使わないで、AIでピュアに分類をさせたときに、どのような分類になるかというところも1つ参考として見てみる価値はあるのかなと考えています。
最後、テクニカルな話になるんですけれども、今回いろいろと検証させていただきまして、かなり専門用語が多い金融業界といいますか資産運用業界というところで、今回一般的なモデルを使用させていただいたんですけれども、金融業界に特化したモデルも昨今幾つか出てきておりますので、そのようなモデルを用いまして、より精度の差というものを見てみるというところも1つあるのかなと考えております。
以上となります。ありがとうございました。
【水口座長】
ありがとうございました。いろいろコメントしたいこともあるのですが、私がしゃべり出すと長いので、ここから議論に入りたいと思います。
御発言を希望される方は、名札を立てていただくか、オンラインの方は挙手機能でお知らせいただければと思いますが、今日途中退席というふうに伺っております委員の方に先に御意見をいただきたいと思います。井口様、高村様、そして渋澤さんの順に、最初にプレゼンと、それから先ほどの報告書と両方併せて御意見いただければと思います。
では井口さん、お願いします。
【井口メンバー】
ありがとうございました。皆様の御説明いただきました内容は、興味深いところなんですけど、時間の関係もあるので、報告書に絞ってコメントさせていただければと思います。
3ページのところは、意見なんですが、今回のEUの動きは、EUオムニバス法案とかありますが、今までちょっと進み過ぎたところが返ってきたということで、ある意味日本にとっては有利な状況になっているので、日本はここから下がる必要はないと思っております。注2に書いていただいている、グローバル報告基準、ISSB基準のことですが、こことのインターオペラビリティを損なわないようなところを踏まえて、開示要求事項を削減するというところは非常に重要なところと思っております。
25ページまで飛ぶのですが、ここは質問が1つだけ入るんですが、25ページの6行目から12行目は、この報告書の中でも、非常に重要なところだと思うんですが、記載のある、サステナビリティ投資を選好する個人のサステナブルファイナンスに関する認知・理解が進んでいくことが重要ということはまさにおっしゃるとおりだと思うんですが、一方、政策的には難しいところもあると思います。これは、最近つくられた教育機関のJ-FLECとか、そういうところを活用してやっていこうということなのか、それとも別のことを考えておられるのか、もしその辺、アイデアがあったら、事務局のほうから教えていただければと思います。
26ページの最後の今後の運営につきましては、私も同様に思っておりまして、これまで水口座長のリーダーシップの下、第一次報告書からずっと有益な提言をしてきましたと思います。例えば、サステナビリティ情報の有報での開示、ESG評価・データ機関の監督、個人投資の関係でESG投信の監督などです。一方、現状、サステナビリティファイナンス推進の運営も軌道に乗ってきたと思っていますので、今後ですけど、ガバナンス・スチュワードシップ活動の司令塔である金融庁さんのフォローアップ会議、これも昔は年に6回か7回やっていたんですけれども、現状、年に1回だけやっているという感じで、あとは、それぞれ有識者会議を立ち上げるということをされていますので、同じようなやり方をする考え方もあるのではないかと思っております。
以上でございます。ありがとうございます。
【水口座長】
ありがとうございます。井口さん出てしまわれるので、御質問のところだけちょっとお答えいただいてもいいですか。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
御質問いただいたところについては、当然J-FLECという新たな機関もあるので、そこと連携して何ができるのかというところも当然検討の俎上になり得るところなんですが、現状具体的にこれをやっていこうというのを、何か金融庁として既に検討の俎上に乗せているという状況ではないので、まさにこれから、今回実態把握しましたけれども、この報告書を踏まえて、それこそ商品提供側である資産運用会社の取組状況とかもしっかりとフォローしながら、金融庁としてもどういう打ち手を打っていけるのかというところは検討していく必要があるのかなというふうに考えているところです。
【井口メンバー】
問題提起ということで理解しました。ありがとうございます。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
ありがとうございます。
【水口座長】
それでは、高村先生、お願いします。
【高村メンバー】
水口先生、どうもありがとうございます。私も井口さんと同じですけれども、報告書(案)に絞って3点発言させていただければと思います。
1点目は冒頭のところ、「はじめに」でも書いていただいておりますし、今日の事務局からのこれまでの議論の紹介にもありましたけれども、やはりこの会議は、様々な変化がある中で改めてサステナブルファイナンスをなぜするのか、なぜ重要なのかということをしっかり発信することが必要だということだと思います。
その上で、少し細かくて恐縮なんですけれども、幾つか今の3ページ以下のところで検討いただきたいところがございます。若干粒度が細かいんですけれども、1つは2ページ目のところで、これはミスタイプかもしれませんが、報告書の中には、なぜ重要かというところが含まれているように必ずしも読めないのですが、この報告書はまさにサステナブルファイナンスを推進する意義を再確認するための報告書でもあると思いますので、それは記載いただいたほうがいいんじゃないかというのが細かな点の1つです。
それから、3ページ目以下のところで幾つかの情勢について書いていただいております。これは検討いただければと思うんですが、ここ実はすごく大事だと思っていまして、この報告書は特に金融庁さんの下でのサステナブルファイナンス有識者会議が出す情勢認識というふうに受け止められることもあり、その意味で、少し付け加えていただきたいと思う点がございます。1つは4ページ目のところで第一次報告書の整理を踏まえた上で、サステナブルファイナンスの意義と効果について書いていただいているんですが、それまでの書いていただいている内容と、この会議での議論を踏まえると、2点を新たに報告書に加えていただいたほうがいいんじゃないかというふうに思っています。
1つは、GX政策についてもかなり丁寧に書いていただいているんですけれども、本当にグリーントランスフォーメーション起こそうとしたときに、こうしたサステナブルファイナンスは日本の政策上、極めてさらに重要な意義を持つようになっているという点です。それからもう1つは、サステナブルファイナンスを本当にやっていくためには当然、この後の記載にもありますけれども、その受皿といいますか投資先となる企業自身が、中長期的な視点を統合した経営や事業などの企業の体質強化を図っていく必要があり、それだからこそ、中長期的なリターンも得られる投資先として、そしてサステナブルファイナンスの名宛先といいましょうか、行き先として成長していくということかと思っております。そのため、多分企業のところの、いわゆる投融資先としてのお金の受皿としての企業側の文脈での追加が必要ではないかなというふうに思っております。
2点目のところですけれども随分後ろですが、24ページ辺りで、この辺りは調査結果も踏まえて書いていただいているところで、非常に大事なところだと思います。とある評価も高くてリターンも高い企業さんで行われた、その企業さんの個人の株主さんとお客様の調査の結果を拝見したことがあるんですけど、やはりリターンだけでなく、その企業が事業で社会をよくしていくことを期待しているし、逆にリターンがないのも嫌だという、そういう両方のニーズがあると思っております。ここの24ページ辺りの記載のところは「個人は」という形で特定されているんですけれども、そうではなくて、恐らく両方が必要で、そのことによって今までそもそも投資に関心がなかった、しかし、社会課題に対して取組をしたいと思っている人たちも投資に参加をする機会になり得るという意味で、裾野を広げるということになるかというふうに思っております。ここは調査も踏まえた結果だと思いますけれども、かなり厳格に書かれているようにも思いまして、恐らく両方が今、情報として必要じゃないかということではないかというふうに思っております。
最後ですけれども、26ページ目の最後のまとめのところです。基本的に事務局からお示しいただいた評価、基盤、枠組みは再構築されて、個別の政策課題について関係省庁において、金融庁をはじめとして適切に対応されるという方向性については異論ありません。他方で、やはりサステナブルファイナンス有識者会議というのは、様々な主体に参加をしていただいて、この推進あるいは環境整備のために、特に多様な主体、部局、省庁にまたがる課題もある中で、どの担当者も対応せず落ちてしまっているような、今回の調査もそうですけれども、例えば、新たな状況の変化における課題というものをしっかり発見をしていく役割というのがあると思っております。その意味で、この会議がそうした場として、例えば、一定の期間での開催であったり、定期的に例えば年1回は、といったようなペースでも結構ですけれども、やはりしっかり継続をされることを期待をしております。
以上です。
【水口座長】
渋澤さん、どうぞ。
【渋澤メンバー】
今回も包括的な報告書をまとめていただきまして、事務局の皆さんの御尽力に大変感謝しております。特に今回は、個人投資家に結構膨大な数の方々のアンケート調査を行って、非常に興味深かったです。
それを踏まえまして2点ありますが、今の世界情勢の中で、特にESGをはじめサステナブルファイナンスへのナラティブを変える必要があると思っております。ESGはもともとリスクを抑えるため、つまり、財務的なリスクを情報開示してください、それに加えて非財務的な情報を開示してください、それで投資家がそれを投資判断にしますという流れであって、必要な流れだったと思っています。
ただ現在、目の前に大きな政治的なリスク、訴訟リスクが出てきたので、ですから、ちょっとESGのリスクは横に置いておくというのが現状だと思います。ですから、リスクをコントロールするということはとても大切だと思いますが、やはりサステナブルファイナンスという意味では、これからの世の中、次世代に向けて新しい価値をつくっていくというバリュー・クリエーション、こちらへナラティブを変えていく、そういう必要があるのではないかなと思っております。
2点目ですけれども、先ほどの御説明で、新しい資本主義の資産運用立国に関わることを本文に反映していただくということは御説明ありましたが、逆に新しい資本主義の実現会議の資産運用立国の検討が今月ありましたが、サステナブルという言葉がどこにも出ていません。論点案でも出てきませんでしたし、大臣の御発言からも、資料からも出てこなかった。ですから、ぜひ今回の新しい資本主義実現会議の資産運用立国の中に、サステナブルファイナンスの重要性を訴えていただきたいと思っております。
特にJ-FLECがポイントだと思います。アンケートでは若年層がサステナビリティには関心あるけど、気候変動、人権はそうでもないという御説明がありましたが、やはり新しい資本主義、資産運用立国の中で、つみたてNISAによって若年者の口座開設がかなり増えたことが重要だと思います。ところが、ほとんどが「オルカン」へ流入しています。オルカンというのは、オール・カントリーというものの、実は5割から6割の比重が米国株であって、米国株の比重の約5割ぐらいが上位10社ぐらいという、つまり、全体でいうと3割ぐらいが実は10社へ投資されています。これが分かった上で、そこにお金が流れるのはいいと思いますが、サステナブルという投資方針は全くそこでは反映できてない。意図的にそうしているわけではなくて、単純に知らないということではないでしょうか。知った上では問題ないと思うんですけど、そもそも知らない。
これはJ-FLECが改正NISAとセットとして設置されたということは、まさに知った上で投資してくださいということです。ぜひ、このようにサステナブル志向投資を、新しい資本主義まで打ち込んでいただきたいなと思っております。
以上でございます。
【水口座長】
そのとおりですよね。
それでは、あと吉高さんも早めに出られるということで、もし先に御発言いただけるなら、吉高さん、いただきますが。まだ用意されてないかな。では、吉高様、何かあったら積極的にお声がけいただければと思います。
会場の皆様、それから、オンラインの皆様、お待たせしました。ここからは自由討論ということにしたいと思いますので、報告書案、そして田尻様の御発表も含めて、御意見、御質問等いただければと思います。どなたからでも結構です。いかがでしょうか。お願いします。
【上野メンバー】
全国銀行協会、三菱UFJ銀行の上野と申します。まず、私自身は今回から出席させていただきますけれども、今回、事務局より御説明いただきました報告書につきましては、これまでのこの会議におけます議論、調査の内容が反映されたものだというふうに認識しておりますので、これは全銀協としても特段の異論はございません。
ちょっと今までの御発言とかぶりますので、先に御発言させていただいた次第ですけれども、やはり今後の取組を見据えますと、ここまでありましたようなサステナビリティ、あるいはサステナブルファイナンスの認知向上、これと金融経済教育を絡めるということが非常に重要だというふうに思いまして、報告書の御説明を拝聴しながら同じようなことを考えておりました。
やはり欧米の状況を考えますと、サステナビリティを取り巻く環境というのは変化がやっぱり生じていると言わざるを得ないというふうに思いますし、やはり認知向上、今よりも状況がよくなるというか、サステナビリティに関して認識が上がる方向の議論が多いと思いますけれども、一方で、やはりモメンタムが低下することも懸念する必要があるんじゃないかなというふうに考えております。
ただ、これも一方でなんですけれども、やはりこういったサステナビリティも含んだ社会的な価値が中長期的な経済的価値につながって、社会の持続的な成長、また、企業そのものの成長にも資するという点は、私ども三菱UFJフィナンシャルグループでも、こういった考え方で中期経営計画等々で述べておりますし、企業一般でも共有されつつある考え方じゃないかなというふうに思います。サステナブルファイナンスを推進することの重要性というのは、いろいろな情勢の中でも不変だというふうに思います。
今回の報告書の中では、個人によるサステナブルファイナンスの拡大に向けて、若年層の理解、認知の向上が引き続き課題という記載もございます。これも先ほど御指摘ありましたけれども、私も12ページの一番上にあります、若年層のほうがサステナビリティに関する関心は相対的に高いけれども、気候変動、人権問題への関心が高いのは年齢が上がるほど高いと、ここの点は面白い指摘だなというふうに思いました。やはりここの背景にあるのは、やはり家計資産、金融資産が大きい人が自分の投資も絡めると、様々な投資テーマに対して関心が高いというふうにも言えるというふうに思いますし、全銀協でも幾つかの場面でプレゼンしておりますけれども、やはり高齢者の預金を何らかの形で投資に向かわせること、もちろん安心安全に配慮するという観点もありますけれども、ということも1つの社会的なテーマかなというふうに思っておりますし、若年層の家計資産拡大への動き、認知向上というのも重要だというふうに思います。
やはりここにサステナビリティ、あるいはサステナブルファイナンスというテーマをしっかりと絡めるということも重要だというふうに思いまして、報告書の中にも論理的なデータ、あるいは説明があれば考え方が変わるかもしれないという御指摘もあったというふうに思いますけれども、投資リターンだけじゃなくて意義も含めまして、やはり金融経済教育としっかりと絡めて、また、教育というとどうしても、我々もそうなんですけど、学生を対象としがちですけれども、やはり今の金融経済教育は、これを受けないまま大人になった働く世代、あるいは高齢者世代、ここの金融経済教育というのは重要だというふうに思いますので、そういう観点で幅広く意義と論理的リターン、ここのところの説明もしっかりと金融経済教育の中に埋め込んで認知向上を図っていく、そのことによってサステナビリティのモメンタムを維持していくということも重要かなというふうに考えた次第でありますので、我々も金融経済教育の一端を担っておりますので、しっかりそういった意識を持って取り組んでまいりたいと思います。コメントでございます。
【水口座長】
ありがとうございました。では、吉田様、お願いします。
【吉田メンバー】
今回から参加させていただいています、日本取引所グループの吉田と申します。よろしくお願いします。
田尻さんからのプレゼンテーションに対する御質問と、それとそれに絡めての意見1点ずつなんですけれども、質問のほうは9ページのところに「個人投資家は」と書いてあって、ESGインテグレーションとスクリーニングの違いが理解できていないという記載があります。これはAIで目論見書の記載を分析しているということだと、分析対象は多分商品を組成した側の説明事項ということになるのかなと。そうすると、組成した方の、例えば幾つかの5つのテーマについての認識の区別ができていないのか、それともそれを読んだ人の投資家のところが区別ができていないのか、ちょっと私には明確に理解できなかったので、ちょっとそこの御説明をお願いしたいということ。
何でこんなことを申し上げているかということなんですけど、そこは全体の報告書についてのコメントにつながるんですが、報告書につきましては特段のコメントはありません。いろんな分析に従って書いていただいていますし、これまで意見を述べられた皆さんの意見とも全く同感であります。
それで私どもの立場から考えると、まさに意義のところに書かれている企業価値の向上というところが非常に重要だと思っていて、企業価値の向上というのを考えたときに、ESGとの絡みで検討しなきゃいけないかというと、まず、企業サイドにとってみるとESGの取組というのはある種コストとして認識される部分があると。もう一つ、将来のESGリスクに対して取り組むことによって未然に防止できるというメリットの部分があると。そこのメリットの部分をどうやって、財務指標も含めて説明していくかというのが投資家に対しての説明として求められていて、そのための情報開示というのをちゃんと進めていかなきゃいけないなと思っているんですが、同時に企業価値の向上といったときに、それを見たときの投資家が、その企業が将来にわたってどういうふうに成長していくんだろうかなと。
ですから、まさにバリュエーションにどういうふうに影響してくるかというところで、そこは大きく言うと投資家のパーセプションにある程度訴えかけざるを得ないところがあって、その企業がつくっている商品が、ESGの意識の高い人たちに対してアピールになることによって将来的に成長が見込めるとか、あるいはプロダクション手法が非常に環境に優しいものであるので評価できるとか、それを見ている投資家の見方というのと、あるいは、資産運用で商品を組成していくときに、例えばETFや何かでも、グリーンハウスガス削減目標をこんなふうに達成しましたという人たちをバンドルすることも可能でしょうし、あるいは再エネに取り組んでいる企業群というのを束ねることもできるでしょうし、あるいは人権重視しているところというのも束ねることもできて、その商品を提供することによって、投資家の方々に選好して選んでいただいて、それがバリュエーションにつながっていくというプロセスがある程度健全な形で出ていくというのが必要なんだろうなと思うんですが、そのときに、これがまた最初のクエスチョンに戻るんですけれども、そういうのをつくろうという目論見なのか、投資家がどう認識しているのかというところは割と重要な分かれ目のような気がしていて、今の考え方からすると。
そうするとこういったAIを使って、逆に投資家がどういうふうに考えているのか、どういうものに対して魅力を感じているかというような分析ができるのかなと、ちょっと一番最初の質問と最後の質問、似ているようでちょっと違う見方だと思うんですけれども、そこについてお伺いできればなと。
報告書については、特段のコメントはございません。
【水口座長】
田尻さん、もし何か簡単にコメントいただけるなら。
【田尻様】
どうも御質問ありがとうございます。まず、今回の試験的取組の前提としまして、今後の課題のところにも記載させていただいたとおり、ちょっとスモールスケールでサンプル的に試験的にまず検証させていただいているというところと、今回の5つの責任投資手法の基準文書の設定につきましても、まだちょっとブラッシュアップの余地があるという前提で御理解いただければというところと、あと類似マップのところで示唆されるところということでいいますと、今回5つの責任投資手法がありますと。仮に今後、法人投資家に、例えばAというファンドはスクリーニングです、BというファンドはESGインテグレーションです、Cというファンドはテーマ投資、スチュワードシップ、幾つか仮に分類してお伝えをしたときに、多分テーマ投資とインパクト投資とスチュワードシップはそれなりに結構明確に特徴がある、個性が結構パキッと分かれている手法なので、今の書きぶりであったとしても御理解いただけるのかなと。個人投資家、いろんなリテラシーがあるというのは御説明があったかと思うんですけれども。
それに対しまして、スクリーニングとESGインテグレーションは限りなく文書が、平たく言いますと似ているといいますか、似ている文章で限りなく、これをAというファンドはスクリーニング、Bという投資信託はESGインテグレーションという形で、かなりきちんと説明しようと思えば思うけど、限りなく専門的な話であったりとか、かなりディテールに入った説明をすることになってしまうのかなと思っていまして、今は限りなく個人投資家の方にも分かりやすく投信の目論見書が書かれているかと思うんですけれども、似たような内容が多いので、今のままですと、少なくとも書きぶりとしてはちょっとなかなかどっちがどっちというところが分からない可能性があるかなというのは、今回の試験的取組で見て取れたと。
【水口座長】
ありがとうございます。では鳥海さん、吉高さんの順番でいきたいと思うんですが、鳥海さん、お願いします。
【鳥海メンバー】
ありがとうございます。3点ほどちょっと申し上げようと思います。
1点目は、今の投信の分類に関連するところなんですけれども、やはりどれだけ精緻に定義をして、それが分類基準に当てはまっているか、当てはまっていないかということが、当てはまるように達成されたとしても、やはり投資家の立場から見ると分かりづらいというところは変わらないのかなと思っております。特にこういったサステナビリティ関連投資商品ということの場合に、少し主観的なお話になりますけれども、運用者の持っている価値観とか目的といったようなものが明確に投資家のほうに伝わらないと、投資を通じてサステナビリティを実現するということにつながらないのではないかというふうに思うので、ちょっと私、運用者の立場ではないんですけれども、運用会社のほうでどのような企業に、どういう目的を持って投資するのかということを明示するということ、それから、投資される企業の側も、どのような社会を創造していくかとか、どういうふうにパーパスですとかミッションですとかそういったものに結びつけて企業行動していくのかということを開示していくことが重要ではないかなと思いました。
それから、2つ目は報告書のほうに関連してなんですけれども、広くサステナビリティ投資を広めていくという文脈の中で、個人投資家がサステナビリティ投資を選好するという言い方をかなり複数使っていると思うんですけれども、選好と言ってしまうと2つを比べて、サステナビリティかそうじゃない投資とどちらを好みますかというふうに聞こえるのですけれども、必ずしもそういうことではなく、様々な投資、ポートフォリオの中で、そういったサステナビリティ投資商品に興味があるかないかというような意味で使っているのかなと思いましたので、二者択一になるような文脈にしないほうがよいのではないかなというふうに思いました。
また、前回も意見があったと思うんですけれども、サステナビリティ投資が特別で限定的な投資手法ということではないので、こちらを選びますというような話ではなく、わざわざ分類しなくてもむしろそれが当たり前になっていくという状況が必要だというお話をしたかと思いますので、結果として、ことさらにサステナビリティ商品を際立たせるということではなく、そうした選好というかそういった意思をお持ちの方に機会を提供するというような文脈のほうがよいのかなというふうに思いました。
それから、3つ目です。やや矛盾するかもしれませんけれども、あえて、現段階においては幅広い投資家にサステナビリティ投資商品への投資を促す方法を考えるという場合に、NISAの言及は複数あるんですけれども、やはり長期投資、継続投資ということであれば、つみたてNISAへの採用というのは重要ではないかなというふうに考えております。
【水口座長】
ありがとうございます。言葉の使い方、難しいですね。英語でもプリファレンス、プリファーだから、どっちか選ぶということですかね。
【鳥海メンバー】
ええ、そういうふうにちょっと聞こえます。
【水口座長】
ちょっとよく考えてみたいと思います。ありがとうございました。では、吉高さん、お願いします。
【吉高メンバー】
今回の取りまとめありがとうございました。まず、申し上げたいのが、昨今、ESGを含めて金融を教えている大学の講義で、ESGはブームだったみたいなことを学生におっしゃる先生がいたというのをお聞きして驚きました。今回の報告書の前段に関しまして、いかにサステナブルファイナンスがブーム的なものではなかったということをきちっと示すというのは、先ほど高村委員もおっしゃっていたように大変重要だと思っております。特に前段には「経済安全保障」の言葉がなかったと思うんですけれども、サステナブルファイナンスは日本の経済安全保障にもつながるようなファイナンスになっていくと思います。もう少しはっきりと、サステナブルファイナンスが、ブーム的なものではなかったというのを入れていただければと思っております。
あとほかの委員も、J-FLECのことを言及されていたと思いますけども、金融教育の現場でも、まだまだサステナブルファイナンスに関しての認識が低いので、もっと認識を高めるような政策も今後考えていく必要があると思っております。
あともう1点なんですけれども、報告書に関しましては、私も選好という言葉が気にはなりました。幅広い分野でのサステナビリティ投資を広めるということで、個人投資家に焦点を当てた今回の報告書というのは非常に意義のあるものだと思ってはおります。一方でまだ認識度が低いということでは、ラベリングについては、まだまだ段階的に考えるとしたほうがいい段階ではないかと思っております。特に長期的視点のリターンという言葉がありますが、長期的なリスクもあるわけで、ラベルといったときに、リスクとリターンの両方について、サステナブルファイナンスにはあるはずなので、その辺りの記載があってもよいかなと思いました。
最後に、今後、有識者会議がどう運営するべきかというのはお示しいただいたとおりで私も賛成ではございますけれども、モニタリングが重要だと思っております。先ほど申し上げたように、一時的な世界動向に対して、ここで話されているメッセージが金融関連者に届いているかというと決してそうではないのです。届いているかどうかのモニタリングというのもしていく重要性があろうかと思っています。
以上でございます。ありがとうございます。
【水口座長】
ありがとうございます。それでは、オンラインの長谷川さん、そして林さんの順番でいきたいと思います。長谷川さん、お願いします。
【長谷川メンバー】
ありがとうございます。これまでの議論をうまくまとめていただいているので、報告書の内容自体に大きな異論はございません。
ただ、皆様と同じ点なのですけれども、高村先生が最初に指摘されたとおり、4ページのところで、今、非常にバックラッシュがいろいろある中で、金融庁がサステナブルファイナンスを推進する意義を改めて記載することは非常に重要なことだと思います。できるだけ前向きなトーンで書いていただけるとありがたいと思います。
それから、13ページ、ここはもともとアンケート調査結果ですし、先ほどの説明でも高岡室長からも、投資リターン向上以外の理由、例えば自身がESGに取り組むのはよいことだからという回答は、リターンがゼロでも良いという意味ではないという御説明がありましたが、この文章だけを読んでいると、リターンはなくてもESGに取り組むことが良いことだからサステナビリティ投資をしているのだ、というような誤解を生む懸念があると思います。また、次の、投資リターンとESGのところの、サステナビリティ投資とリターンの両立には疑義があるといった記載も、リターンは少し毀損しても、サステナブル投資が重要だというのは分かるのですが、以前にESGとインパクト投資の分類をしたときも、リターンがゼロだとフィランソロピーになってしまうという説明もありました。
それから、24ページ、25ページで、「投資選好に応じた投資機会を提供するためには」というところで、社会・環境課題への貢献を重視する個人には、中長期的なインパクト、ひいては持続可能な社会の実現につながり得ることについて、中長期的な投資リターンへの影響を重視する個人には、論理的な説明やデータに基づき、サステナビリティ投資が中長期的投資リターンにつながり得ることについて説明をして理解を得ることが有効と記載されていますが、それはそのとおりなのですけれども、そのために必要な基盤整備といいますか、今まさにインパクトコンソーシアムで議論しているような、そのためのロジックモデルをどうするのか、インパクトストーリーをどう組み立てるか、どういうKPI、指標を使って、そのためにどういうデータベースが必要かといったインフラ整備の議論も同時に進めないと、まさにそうした理解を得ることができないのではないかと感じまして、その前提条件を記載することも必要なのではないかと思いました。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。では、林さん、お願いします。
【林メンバー】
ありがとうございます。まず、今日の田尻さんのレポートなんですが、インテグレーションとか絵を見ながら、水口先生と私が一緒に、あと岸上さんとかいろんな方が関わっている日本サステナブル投資フォーラムというところで毎年出版物を出していて、インテグレーションとか、投資となんとかの違いは何かとか、一生懸命説明をしているんですけれども、個人の投資家が分からない以前の問題で、毎年の出版物で定義を一生懸命説明するんですけど、機関投資家の中でも必ずしも分かっていないと思われる回答もあります。なかなかPRIがつくったものを活用しているというがゆえに、先ほどもどなたかおっしゃいましたけれども、運用会社さんもどこまで分かってラベリングしているかというのもあると思いますし、やはり定義だけじゃなくて中身を分かりやすく、それは個人向けだけじゃなくて機関投資家に向けてもやっていく必要もあるし、事業会社も自分たちが何をやっているのかということを説明していく必要があるなというのを改めて感じたというのが感想でございます。
それから、この報告書については、皆さんおっしゃるとおりによくまとまっていると思うんですが、2点ほどありまして、まず、最後の「おわりに」のところで、最後の2行なんですが、モメンタムを維持するべく、時宜を得たメッセージを発信と、アクションにつながるようなメッセージが望ましいのではと考えます。最初の頃の会議だと、誰が主語で、何のアクションプランみたいなのを結構具体的に提言してきたと思うんですけれども、別に1年に一度にでもいいと思うんですが、行く行くの会議の中で、次のアクションにつながるような形の取りまとめというのをぜひやっていただければというふうに思っています。
あともう一つ、サステナブルファイナンスのこの資料の中を見ていくと、気候問題と人権って大体それがセットで書いてあるんですが、あとは一言で日本の社会的課題みたいに書いてあって、日本の社会的な課題って、本当に気候と人権問題だけじゃなくて、さっき吉高さんがおっしゃったように、経済安全保障の問題もありますし、いろんな課題があると思うので、その2つに集約されないような書きぶりをどこかでしていただければいいかなというふうに思っています。
あと、最後、金融教育との絡みにおいても、別に気候変動と人権だけじゃなくて、本当に社会課題をみんなで解決していくために民間の資金も大事で、それがサステナブルファイナンスであり、事業会社も、会社のあるべき姿を考えるときに必要なんだということを金融教育の中で、それが結局、資産運用立国のコンセプトにつながるんだということを、ぜひ忘れずに進めていただけるといいなと思いました。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。それでは、お手を挙げた順番ということで、オンラインの小野塚さん、そして手塚さん、藤井さんという順番でいきたいと思います。では、小野塚さん、お願いします。
【小野塚メンバー】
ありがとうございました。私のほうからは2点なんですけれども、まず報告書のほうなんですが、16ページだったと思いますけれども、こちら投影は難しいんでしたかね。16ページの下のほうに、個人の方が情報を取るすべということで幾つか挙げられていたと思います。最後のところのメッセージで、こんなふうに啓発していこうというところがあったと思うんですけれども、ぜひこの会議の在り方も踏まえて、例えば、メディアのところの接続というのも何か入れていただいたほうがいいかなというふうに思います。今回のESGが、例えばトレンドだったみたいな話とか、ちょっと認識・理解が進まないところには、一般の新聞、雑誌等のメディアの取り上げ方もあるのかなということで、これはぜひ我々会議体として何か接続をして、そういったところの方々の理解の醸成、認識の深化、深まりという意味での深化を何かお助けできたらなというふうに思いますので、ぜひ一般メディアとの接続みたいなことを入れていただけるといいのかなというふうに思いました。あとは私が以前申し上げたところを反映していただいて、ありがとうございます。
もう一つはソニーの方に御質問なんですけれども、私、今回のAIのテスト結果は、とても興味深いなと思いました。必ずしも正確性という意味では、ちょっとはてなのところもあるんですけれども、やってみてこんな結果が出ましたというのは、アセットマネジメントの会社にも絡む立場としては、こんな書きぶりをすると、こんな読み取られ方が機械にはされるんだといういい気づきになりましたし、逆にこういったことを使って、今後どのカテゴリーに入っていくかもしれないということを考えられるのかなと思って、それで質問なんですけれども、例えば、今回は特別な調査ということで御依頼をさせていただいてやっていただいたかと思うんですけれども、こういうものを例えば、今後のファンドの登録ですとか、あるいは、投信協会のようなところと連携して、自分たちのファンドをこんなふうな書きぶりにするとこんなカテゴリーに入るよ、あるいは見られるよというような形で、一般的に一般投資家というよりは運用会社が使うことというのは、可能性としては考えられるものなのでしょうか。質問です。
【水口座長】
田尻さん、いいですか。
【田尻様】
御質問ありがとうございます。結論から言いますと可能です。例えば、1つの手法で皆さん活用し始めています、先ほど申し上げた生成AIみたいなものを活用して、幾つかの文章をちょっと分かりやすく区別して書き直してくれみたいな形で、ちょっと幾つかプロンプトをするであったりとか、一番簡単なのがそういうところでしょうし、幾つか技術的なやりようがあるかと思いますので、そこは必要に応じて全然対応可能かと考えています。
【小野塚メンバー】
ありがとうございます。であれば、恐らく報告書の中にもあったように、カテゴリーをつくるということは、まだ時期尚早感、やらないということだと思うんですけれども、書きぶりをより洗練させるということは業界全体としてできるのかなというふうに思っていて、こういう自動とかAIのような手法を使って、より洗練させていくということは検討してもいいんじゃないかなというふうには思いましたので、ぜひ投信協会さん等、運用会社も含めて、金融庁さんも含めて連携できたらいいんじゃないかなというふうに思いました。どうもありがとうございました。
【水口座長】
ありがとうございます。では、手塚さん、お願いします。
【手塚メンバー】
どうもありがとうございます。ソニーさんへのコメントが1つと、レポートのほうにコメントをさせていただきます。
ソニーさんにコメントなんですけど、私、全然金融商品の専門家でも何でもないので僭越なんですけども、非常に興味深く聞かせていただきました。買う側、投信を使う側の立場で見るとこうだという評価をされていると思うんですけれども、AIって多分物すごい能力があって、要するに普通の人だと嫌になるような約款を全部読んでくれて分類してくれるというのが多分長けているんだとすると、せっかくやるのであれば60本ではなくて、日本に存在している投資信託全部やってしまうということはできませんでしょうか。数百あるのか、どうなのか分かりませんけれども。そうすると、統計的にどこにそういう商品が集中しているか、どういう特徴のものに集中しているかということが見えてくると思います。実際投資信託をつくる側からすると、どうやって差別化するかというテーマが必ず出てきますよね。そうすると、例えばAのユニバースのところにみんなが固まっているというのが見えてくると、その中でどう差別化しているかというのは、小分類で使われている用語とか位置づけみたいなものが見えてくると、そこもまた見えてくるようになるのではないか。こうなると商品設計するような皆様にとっては有意義なものができるのかもしれないなと思うわけです。そういうインフラが、この手法だとつくりやすいのかもしれないなと思いました。これはコメントです。
報告書のほうへのコメントなんですけれども、中身に関しては、ここで議論してきた内容を全部きれいに整理していただいて、全く異議はございません。
最後「おわりに」の部分の、これからどうするかというところでちょっとコメントをさせていただきますと、5年間、私もこの会議に出させていただいている中で、外の状況がすごく大きく変わっているわけですよね。しかも幸か不幸かなのかもしれませんけれども、第五次報告書が出るタイミングというのがまた大きく変わるターニングポイントにあるのかもしれないわけです。そうすると、これから先がどうなるかというのはなかなかよく見えていない中で、やっぱりこの有識者会議っていろんなバックグラウンドの方、私とか長谷川さんみたいに、事業会社であり発行体であり資金需要家の立場で出ている者もいれば、金融も様々な長期、短期の、あるいは直接、間接の金融の方もおられるという中で、しかも皆さん国際イニシアチブとか、国際的なルールメーキングの世界にもそれぞれ関与されているということで、いろんなバックグラウンドの情報をお持ちの方が集まってここで議論しているということに多分価値があるのではないかと思うんですけど、そうすると今起きている世界のいろんな変化、動向だけではなくて、その背景にある大きな流れとか理屈とか、そういうものを共有化することで、最後にある、今後のサステナブルファイナンスの動きに関する「大局的、根源的な議論」を定点観測的に行って、どういうふうにこれから進めるかというようなことを再確認していくというのには、非常に大きな意味があるんじゃないのかなというふうに思います。
先ほど井口さんのほうから、EUのオムニバス法案の話で、EUはちょっとアクセル踏み過ぎたので、ここで少しブレーキを踏んで日本に近いところに来たとの発言がありました。なので日本はあんまり心配しなくていいんじゃないか、むしろ日本のペースでやっていったほうがいいんじゃないかというような話をコメントされていたと思うんですけれども、一言で言うと、EUは多分、少なくとも気候変動政策に関してはサステナブルではないという状況があまりにも見えてきたので、今方針転換を少ししつつある。ただ、オムニバス法案って中長期的なことしか書いてないので、実際に個別具体的な政策で何をやっていくかというのはこれから出てきますよね。なので、これはやっぱり見ていかないと、本当にそういう政策的なパッケージが見えてこない限り、これが投資という視点で見たときに、どこに向かっていくかというのはよくまだ見えていない、私も見えていないという状況にありますので、そこら辺はやっていく必要があるのかなと思います。
日本はもともとEUみたいにウルトラグリーンではなくて、トランジションという途中経過をどうやってつなぐか、そこでちゃんと事業なり利益なりを出し続けてやる必要があるということを言い続けていたんで、何となくEUはそこに今、着地点を求めてきているのかなというような気がしますけど、そうだとすると、じゃあ日本はどういうふうに立ち回ると貢献を含めてできるのかという議論にもつながるのかもしれませんし、その際の投資なり金融なりファイナンスがどうなるかという議論は、ある意味日本は先回りしてやっていたところがあるので、共有できるということもあるかもしれないというふうに思う次第です。なので、継続的にそういう視点でこういう議論をやっていって、世界の変化の背景を議論していくのがいいんじゃないかなというふうに思います。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。確かに今まさに大きく動いているところですよね。それでは、藤井様、お願いします。
【藤井メンバー】
ありがとうございます。今回の報告書につきましては、投資家の動向をかなり丁寧に拾っていただいていまして、ある意味でボトムアップのフィールドリサーチに支えられているという点で非常に意義があるというふうに感じております。
その中で、すでに何人かの方もおっしゃいましたけれども、冒頭の環境変化といったところで何が重要かというと、アメリカにおいてはESGバッククラッシュというのが明らかになっている、ヨーロッパにおいては行き過ぎた規制を調整する動きが出ているという中で、日本は整斉として軸をぶらさずに進んでいるというのが重要なんだと思います。GX移行債から2024ビジョン、それからNDCとしての地球温暖化対策計画、これらをしっかり軸をぶらさずに日本が進んでいるということが分かるように書き込んでいただいていますし、そこが重要だと思います。
そういう意味で、報告書をやや超えたコメントになってしまうかもしれないですけれども、これからこれらの計画を達成するためには、150兆円もの資金が必要とされています。そのうちGX移行債が20兆円として、残りの部分をいかにファイナンスするか。もちろんその一部は、今回の報告書にある個人投資家や機関投資家からのサステナブル金融商品を通じた投資になるわけですし、それ以外には銀行を中心とした融資が大きいと思いますけれども、そうした組合せでギャップがあるのかないのか、その過程でのKPIをどのくらいに置いて追いかけていくのか。これはある意味でサステナブルファイナンスのデットエクイティーレシオをどう考えるかということともいえると思うのですけれども、そういったトップダウンの見方、ないしモニタリングを並行的に行っていかないと、それぞれ努力しましたけれども、結果として何十兆円足りませんでしたということではいけないと思います。今回の報告書を超えた、と先ほど申しましたけれども、日本の脱炭素目標をどう達成していくかという全体のポートフォリオといいますか、それに対するモニタリングということを意識していかないといけないのかなというふうに思いましたので、コメントとして申し上げます。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。おっしゃるとおりです。では、岸上さん、そして鍋嶋さんの順番でいきたいと思います。岸上さん、お願いします。
【岸上メンバー】
ありがとうございます。大きなコメントと細かいコメントが行き来してしまうかもしれません。皆様からも多く意見がありましたサステナブルファイナンスの推進の意義のところがやはり重要だと思いますし、今後の役割として大局的なといったところにもつながると思うので、ちょっと具体的なんですけれども、1の(2)になっているんですけど、むしろこれを(1)に持ってきて、意義の整理をしてから情勢のところに行ってもよいのではないかなと思いました。
個別の調査の中で御紹介いただいた、金融リテラシーが高い人はインパクト投資を選好するといった結果が傾向として出ていたかと思いますが、このメッセージにちょっと勇気づけられたといいますか、より包括的な金融教育をすることによって、長期的に持続可能な成長を実現するための金融の仕組みが醸成されていく。なので、決して別物というよりも、本当に金融リテラシーをきちんと理解してれば、その必要性が分かるということが意識調査でも分かったことかなと思いますので、それも含めて意義のところで整理すると、その後につながってくるかなと思いました。
現状、(1)にあるサステナブルファイナンスの情勢のところですけれども、先ほど林さんがちょっと触れられていたところにもつながってくると思いますが、少し気になったのが、もちろん気候変動中心ではあると思いますが、現状の書きぶりですと、本当に気候変動のみではないかなと思いまして、だからこそ(1)よりも(2)のほうがよいのではないかなというところもあるんですけれども、気候変動になぜ取り組むかというと、それによって現状も起きていると思うんですけれども、気候難民の移動があったりですとか、産業変革が起きることによる労働者への影響だったり、個人の生活への影響といった、結局人に関わってくるものですし、一方で、後半ほとんど個人投資家の傾向といったところで個人のところなので、そのつなぎ目といったところでも、細かく全て書くというよりも、結局は人々のために気候変動への対応を行っていて、そこに資金を投入しているから、サステナブルファイナンスの全体の意義の中でそれを重視しているといった整理があるとよいのではないかなと思いました。
GX関連の会議に参加していない身としての素朴なコメントになるかと思いますが、3ページのところの成長志向型カーボンプライシングについてです。脚注において御説明もいただいていると思いますが、少し気になりましたのが、CO2削減だけではなく、今後適応が必要になってきたときに、カーボンプライシング以外の気候変動対策の部分が必要になってきます。それはまさに移行のための資金であって、そこへのメッセージが、実際にはそこにも資金を投じられるのかもしれませんが、誤解は生じないのかなというところがちょっと気になりましたので、そこはもし可能であれば、御意見を伺えたらと思います。
18ページのところで、ほかの方もお気づきになったかと思いますが、ヒアリングの中で、資産全体でサステナビリティを考慮しているという一方で、ESG投信での純資産総額が1.7%ということで乖離があったというようなコメントになっていますが、ちょっと粒度の違うものが比較されているので、乖離があったということではないように思いました。ここの報告書で整理されている意義といったところはより広義のサステナブルファイナンスを指していると思いますが、その中で明確なラベル債だったりラベル投資の部分にこのESG投信が位置づけられるかと思いますので、そこは誤解がないような形での紹介があるとよいのではないかなと思いました。
あと24ページ、25ページは皆様と同じ意見でして、2つに分けるというよりも、先ほど言ったような形での全体像として金融リテラシーを上げることによって、持続可能な長期投資を促していくけれども、それぞれの出発点の御認識のリテラシーギャップがあるので、それによって強化すべきところが違うということだけではないかなと思いますので、ちょっと書き方を変えられるとよいのかなと思いました。
あと皆様の意見を聞いていて1点だけ、生成AI、ソニーさんの御発表へのコメントです。皆様の質問に対して少し気になりましたのは、現状として商品の説明が分かりにくいということが分かることはいいことだと思うんですけれども、ただ単に紹介の仕方だけを上げるような調査をしていくと、逆にウオッシングを進めるような形になってしまうかと思いますので、最終目的がどこにあるかということに気を付けながらの活用が必要ではないかと思いました。
以上です。すみません、長くなりました。
【水口座長】
ありがとうございました。では、鍋嶋さん、お願いします。
【鍋嶋メンバー】
ありがとうございます。事務局の方、本当にこの報告書をまとめられるのに大変な尽力をされたと思います。ありがとうございます。
1点目は、岸上さんが今おっしゃられたことに全く同意でして、まず、サステナビリティファイナンス推進の意義というものを最初に持ってきたほうがいいなと私も思っています。第一次報告書というのは5年前にまとめられたものであり、その中でこういうふうに整理をされていますと。その後、今の情勢がこういうふうに変わってきているけれども、やはり重要な意義があるということを改めてここで再確認した上で、4ページの18行目、「金融庁においては」につなげていったほうがいいかなと思いました。
やはり「金融庁においては」のところに書いてある企業・経済の持続的成長、それから安定的な資産形成、ここが非常に大きな目的になっていると思いますので、サステナブルファイナンス自体の意義もさることながら、やはりこれを推進することによって何を達成したいのかをもう少し肉付けしてもいいのかなと感じました。
5ページ目の(3)のところ、「幅広い投資家への」というところですけれども、今もう一回よく見たら、「サステナビリティ投資を選好する、」となっているので、選好する人にさらに拡充していくというふうに読めてしまいますけれども、今現時点で必ずしも選好していない、様々な理由によって選好していない人を排除するわけではないのだと思いますので、若干ここの表現は修正したほうがいいかなと思いました。
資産運用立国のところに関しては、サステナブルファイナンスと資産運用立国がどう関連するのかというのももうちょっと書いてもいいかなと思いましたけれども、いずれにしてもこのように入れていただいたのはよかったと思います。
それから、最後の有識者会議のところ、26ページ。発信していくことが重要であるということですが、有識者会議というフォーラムがどのように具体的に発信するのかというのは、ちょっと私もイメージがつかなかったものですから、その辺りどのように考えているかということを教えていただきたいなと。
それから、最後にAIについてちょっと質問ですけど、単純な質問で恐縮ですけれども、人には経験や、あるいは価値観のバイアスがあるということではあったんですけれども、AIはAIでバイアスがあると思うので、それをこの調査の中でどう排除できるのか、あるいは課題を感じたところがあれば教えていただければと思います。
【田尻様】
最後の課題のほうで書かせていただきましたとおり、基準文書の選定というところに今回、人の知識が入っていますので、これをもってESGインテグレーションはスクリーニング基準文書だという人の知識を使って今回選んでしまいましたので、それを機械的に置き換えることによって、より排除できるのではないかというところもあります。
ただ一方で、人の専門性とか知識を排除することが目的ではなくて、できるだけ誰が見ても分かる客観性を持って、まずベースとなる出力を出すということ、かつそれが、先ほど御指摘もいただきましたとおり、マーケットには数百だけじゃなくて多分数千の投信がある中で、それを人が一つ一つ見て評価するというのはちょっと構造的にもあまり現実的ではないし、複数人でやった場合には、やはり皆様のレベル感に応じて品質が変わってきますので、一次的に機械が置き換わって実施し、最後の類似のマップはあくまでも便宜的なものなんですけれども、その距離感、類似性の定量的な評価みたいなところの最後の評価というのは人がするものですので、あくまで人の工数の代替をしているというふうに御理解いただければと思います。
【水口座長】
どのように発信するかの話は、事務局からございますか。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
発信の仕方は、別にこれといって現時点でこうだというふうに決まっているものではないんですけど、やり方はいろいろあると思うんですけど、それこそ施策の進捗状況とか足下の国内外の状況も踏まえていただいて御議論いただいて、これが重要だとか、こういうところの取組をさらに深掘りする必要があるみたいな御意見をいただいた内容を、例えば、議事要旨という形で、今まで議事録は毎回出しているんですけれども、それをもうちょっと、議事録は議事録として出すにして、それとは別に、例えば、議論のポイントが分かりやすいような形で議事要旨という形でまとめて公表することで情報発信していくとか、そういったことは考えられるのかなというふうに考えておるところでございます。
【水口座長】
岸上さん、もう一回ですね。どうぞ。
【岸上メンバー】
すみません、さっき言いそびれたので、ごめんなさい。恐らく今日決めることではないと思いますが、今後の有識者会議の開催頻度について、一応年に1回という前提で議論が行われてきたと思いますが、確かにスチュワードシップ・コードのような、何か具体的にもう制定されたものに関しては毎年1回進捗を確認するということで、段階によって十分になってくると思いますが、一方で、逆に大局的なところでの議論で、この4か月でもどれだけいろいろ変わってきたかということを考えると、それを年に1回するので、むしろ役割が担えないんじゃないかなと思いまして。恐らく毎回何かしらのアクションを起こさなければいけないという期待の下だと負担も増えると思いますし、必要ないとは思いますが、むしろ本当に今のこの情勢での直近の情報を共有し合うというのを四半期に1回ですとかやった上で、アクションは年に1回だけというような形もあってもよいのではと思いましたので、もしほかの方も御意見あれば聞きたいと思いました。
【水口座長】
おっしゃるとおりで、手塚さんもおっしゃったように、この大きな変化の中で、今回のようにテーマがあって、これについて御意見をという会はこういう形になりますけれども、それとは別に少し意見を出し合うというか、情報共有をし合う場としてもあってもいいのかなという感じはいたしましたが、御負担もあろうかと思いますし、開くだけ開いてどうするんだというのも、多分主催者側としてはあるんでしょうから、少し検討させていただければと思います。大変私は賛成であります。
足達さんからはいかがでしょうか。
【足達メンバー】
時間もないため、どうぞ。事務局の皆さんからのリアクションを。
【水口座長】
じゃあ私のほうからいいですか。
座長じゃなくて一委員としてコメントを幾つかしたいと思うんですが、まずソニーさんの発表を聞かせていただきまして、普通に研究者的なコメントで申し訳ないんですけれども、目論見書の評価をされているということだと思うんですが、AIによって目論見書を読み込んでいるということだと思うんですけれども、目論見書を読み込んでいるだけでは、投資の評価になっているかどうかというのは実はよく分からなくて、むしろ目論見書に書かれていることが、投資として実現されているかどうかこそAIで評価してほしいなという気がしました。もちろんデータの問題があるんだと思いますけれども。目論見書にどう書くかというよりは、実際の投資がどうなっているのかということをAIが調査、調べることができるならば、それは非常に大きな進歩だと思いますし、そうすると目論見書に書いてあろうとなかろうと、実はESG投資的なものもあり得るし、逆にウオッシュとは言いませんけれども、目論見書に書いてあるけど、そんな大したことないよねということもあるかもしれないということは思いました。それはコメントで、データの問題があってなかなかそう簡単にできないと思うんですけど、そこはチャレンジじゃないかなという気がしました。
【田尻様】
ありがとうございます。まさに御指摘のとおりでして、今回共有させていただいたのは、どちらかというと個人の投資家の皆様に、どうやって分かりやすくお伝えするかという目的でしたのでこういう手法を取りまして、今、水口さんのほうから御指摘、コメントいただいたところに関しましては、実際に数年前のGFIN、イギリスの金融庁、日本の金融庁とか、インドの中央銀行と一緒にグリーンウオッシングの検知をするという、多分そういうことをおっしゃっているのかなと理解しておりまして、そのモデルで実際に開発をしました。今、SFDRとSDRで開示して、結構うがった言い方をしますと、きちんとESG投信こういう手法でやっていますよと書いているんですけれども、実はやっていない投信とかファンドが幾つかあるんじゃないか、そういうものを検知できないかということだと思うんですが、実際にそれに近い行動を取っているファンドというのは、今実際に運用する中で幾つか検知はされていまして、当局のほうも情報共有させていただいて、もうちょっとどのように使われるのがいいかなというところは、ちょっと今内々で開発をしながら検討は進めております。なので、御指摘のところはごもっともで、そこは既に今、対応させていただいているというのがあります。
【水口座長】
この議論はサステナブルファイナンスとは何なのかということと非常に関わると思うんですけれども、投資行動として、例えばこういう銘柄とこういう銘柄とこういう銘柄が入っている、それをもってサステナブルと呼ぶのかどうか。それとも、ちょっと先ほどどなたかおっしゃいましたが、価値観が入っている。鳥海さんがおっしゃったんですよね。運用者側の意図とか価値観が入っていて、こういう一定の運用になっている。それをサステナブルと呼ぶのか、そういうこととも多分関わるんだろうなと思っておりまして、なかなか実は奥の深い議論につながるのではないかなという感じはします。
つまりは、そういうラベルを全く貼っていない。しかし、銘柄選択だけ見ると、全く同じ投資信託というものがあり得ますよね。なので、それをどう呼ぶのかということは、今後の検討課題の1つだろうというふうに思いました。
そういうことも踏まえて、私もこの報告書に、最後は座長一任になるのに私がコメントしていいのかというのはちょっとありますけれども、一委員のコメントとして言うと、やっぱりサステナブルファイナンスって何なのかの定義の部分を少し書き込んでもいいのかなという気がします。先ほど御紹介のあった、例えばインテグレーションとかスクリーニングとかと、エンゲージメントとかスチュワードシップとか、そういうものをサステナブルファイナンスと呼ぶということもちょっとどこかに書いてあってもいいのかなという気がしまして、それはグリーンボンドとかトランジション・ファイナンスとかそういうことも含めてあるのだろうなということと、多くの方々の御意見、非常にそのとおりだなと思っていまして、やっぱり意義を先に強調することが重要で、5年前にこの有識者会議で報告書を出したときに比べても、恐らくサステナブルファイナンスの重要性は高まっているんだと思うんですよね。それだけ世の中がサステナブルじゃなくなってきた感じがするものですから、今こそ重要だというふうに思いますし、いろんな意味で重要だと。日本がGXにこれから進んでいこうとするときに、ちょうど経産省のほうでもGXをすごく進めようとしている中で、本当にお金がついてくるのか、そういう側面ももちろんあると思うんです。
その辺も重要だし、それから、石破内閣が地方創生2.0と言っていますけれども、サステナビリティの課題の中の非常に大きな課題の1つが、地域のサステナビリティであったり、人口減少であったり、そういう問題もあって、そこにいかにお金を流していくのかという問題もあるし。経済安全保障の問題も含めて、社会システムそのものが今、崩れ始めているという、社会システムの維持というか、システムをきちんと守っていくという意味でもサステナブルファイナンスはとても重要で、言わば意義が大きくなったというか、初回には経済活動の基盤を守るとさらっと書いた部分が、本当に現実味を帯びてきたという感じがするものですから、少しそこはきちんと書き込んでもよいのかなと思いましたということですかね。
あと、金融教育の重要性はそのとおりでありまして、金融教育の概念をやっぱり変えていく必要があるなと思っていまして、これは前にもちょっと申しましたけれども、普通に金融教育を真面目に受ける人は、ESGはまだ難しいから、まず初歩から入りますというふうに言うんですけれども、初歩の初歩として投資が社会にも影響するということをまず最初に習わないと、サステナビリティの理解が進まないんじゃないかと思いますので、金融教育の順番を変えることが必要じゃないかなと思っていまして、それはアクションとしてぜひしたいなと思いますし、私に許されるならば教科書を書きたいぐらいなんですけど。誰も出版してくれないと。
というわけで、かなり発言をしてしまいましたが、足達さんからはよろしいですか。
【足達メンバー】
もう閉めていただいて結構です。
【水口座長】
じゃあ金融庁さんお願いします。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
1点、サステナブルファイナンスの定義やサステナビリティ投資については、2ページの脚注になっちゃうんですけど、そこで一応触れてはおります。
【水口座長】
脚注よりは上に上がっているほうがいいような気がします。でも、全体のバランスもあるでしょうし、考えていただければと思いますが。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
検討させていただきます。
【水口座長】
ここまでいろんな御意見をいただきまして、もし何か一旦この意見に対するコメントとかがあれば伺いますけれども、金融庁さんからどうですか。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
いただいた意見を踏まえて、またこちらのほうで報告書の素案のほうを修正させていただいて、次回に備えるということで準備させていただきたいと思います。
【水口座長】
ということで、今回のは素案ですので、今日いただいた御意見を踏まえて素案をまたブラッシュアップしていただいて、次回お持ちいただくと、こういう形にはなっておるのですけれども、いいですか。
それでは、ちょうどお時間ということにもなりましたので、本日も活発で建設的な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。
最後に事務局から、御連絡事項いただければと思いますが、その前に池田さんからも一言いただければ。
【池田総合政策課長】
いろいろ御意見いただいて、ありがとうございました。サステナブルファイナンスに対する期待の高まりを改めて皆さんから御指摘いただいたような気がいたしまして、一方で、世の中的には何となくブームが終わったみたいな捉えられ方をしている面ももしかしたらあるのかもしれないなと。皆さんの御指摘を受け止めようとすればするほど、なかなか金融庁でも受け止め切れないみたいなところもあるんですけれども、それはそれとしてしっかりしたメッセージが出せるようにしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【水口座長】
ありがとうございます。高岡室長はよろしいですか。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
本日も皆さん、お忙しいところ、活発かつ建設的な御議論をどうもありがとうございました。
本日いただいた御意見をちょっとそのまま反映できず、咀嚼して何とかというところもあるかもしれないですが、いろいろ工夫して修正させていただきたいと思いますので、また次回、6月20日16時からを予定しておりますけれども、それまでにしっかりと準備したいと思いますので、また6月20日によろしくお願いいたします。
事務局からは以上となります。
【水口座長】
というわけで、本日の議論は以上で終了したいと思います。皆さん、御協力いただきましてありがとうございました。
―― 了 ――
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-
金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室(内線 2918、2770、2893)