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「サステナブルファイナンス有識者会議」(第29回)議事録
- 日時:令和7年6月20日(金曜日)16時00分~18時00分
- 会場:中央合同庁舎7号館 9階 905B会議室 及び オンライン
【水口座長】
それでは、定刻となりましたので、ただいまよりサステナブルファイナンス有識者会議(第29回)を開催いたします。本日も御多用のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
高崎は大変暑いのですけれども、東京も暑いですね。ここまで暑いと、本当に地球温暖化を何とかしてくれという感じになりますが、非常に気候変動の問題が本格化してきたなと。かつて地球温暖化は嘘であるという本を書いた人がいて、責任取ってくださいと思うのですけれども、ひどい話になっております。これ以上悪化しないように、サステナブルファイナンスを頑張っていただきたいと思っているところです。
さて、本日は、大きく議題を2つ御用意しております。前半で報告書案について1時間ほど御議論いただき、後半では残りの1時間で金融庁におけるサステナブルファイナンスの足元の取組と今後の課題について議論していただきたいと思います。
早速ですが、議題1ということで報告書案についての御説明をいただきたいと思います。前回いろいろ御意見をいただきまして、前回の御意見を踏まえて修正していただいたものをお手元にお配りをしていると思いますので、こちらを御覧いただければと思います。それでは、高岡さん、お願いいたします。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
水口座長、ありがとうございます。
それではまず、1つ目の議題である報告書案について、前回の5月27日の会議でいただきました御意見、それから会議後に事務局宛てにいただいた御意見も含めまして報告書の修正した箇所について、細かな修正もございますけれども、主な修正点について、私のほうからご説明させていただければと思います。
お手元にも配付させていただいておりますけれども、まず、報告書の「はじめに」のところ、ページ数でいうと2ページになりますけれども、こちらの注2を追加させていただいております。こちらにつきましては、「サステナビリティ投資を選好する」という、「選好」という文言ですと、あたかも2つを並べてサステナビリティ投資とそうでない投資のどちらかを選ぶといったようなニュアンスで捉えられ得るのではないかという御指摘がありまして、二者択一になるような文脈にしない方がよいのではないかということで、注2のところで、「サステナビリティ投資を選好する」の注記として、本報告書で「サステナビリティ投資を選好する」という表現については、単にサステナビリティ投資を選択するということのみならず、ポートフォリオの一部にサステナビリティ投資商品を組み入れるといったようなところも含めた趣旨で用いているというような注記を追加させていただいたところになります。
次に、次ページの3ページの1ポツの(1)の冒頭のところをハイライトさせていただいています。こちらは従前の案ですと、足元のサステナブルファイナンスをめぐる情勢について記載させていただいた上で、サステナブルファイナンスの推進の意義を(2)に持ってくるという構成にしておりましたけれども、やはり足元の情勢に係る記載よりも、まずはサステナブルファイナンス推進の意義というところの内容をまず(1)に持ってきて、その重要性もニュアンスとして出すべきでないかという御指摘なども踏まえまして、(1)の冒頭のほうでサステナブルファイナンスの推進の意義・効果について記載をさせていただく構成に変えさせていただきました。
次のポイントが、4ページの、これも注記になるんですけれども、注6のところです。これは本文中にある成長志向型カーボンプライシング構想についての注記をもともと記載しておりましたが、GX推進の取組に係る記載がややカーボンプライシングに偏っていた内容となっていたため、その点の御指摘も踏まえまして、本文の方で「カーボンプライシング構想等」と「等」を付すとともに、注記のほうでは、カーボンプライシングのみならず、トランジション・ファイナンスなどについても記載するような形で注記を修正させていただいております。
次の点が、次ページの5ページの1行目からになります。こちらはサステナブルファイナンスのナラティブとしてリスク低減に着目することも重要だけれども、現下の世界情勢も踏まえると、次の世代に向けて新たな価値を創出すると、バリュークリエーションにつながる機会の獲得ということが重要であるというのもサステナブルファイナンスのナラティブとしてそういうふうに変えていく必要があるのではないかという御指摘も踏まえまして、こちら、特に4行目のところの本文で、「リスクの低減だけでなく機会の獲得を図ることが、中長期的な企業価値の向上の実現を目指す上で求められている」といったような形で文章を修正させていただいております。
それで、少しページ飛びまして、7ページになります。7ページ目の18行目、19行目のところで、サステナビリティ投資の手法の具体的な例示という形になりますけれども、括弧書を追記させていただいております。こちらはサステナブルファイナンスとは何なのかの定義の部分を少しどこかに書き込んでもよいのではないかという御指摘も踏まえまして、CFA、GSIA、PRIの責任投資の定義をこのような形で記載させていただきまして、サステナビリティ投資の手法について具体的にイメージがつくような記載ぶりとさせていただきました。
次は、また少しページが飛びまして、9ページになります。こちらは各国におけるサステナビリティ投資の名称等に関係する取組の中で米国の記載になります。こちらは単純に事実関係にアップデートがあったということでリバイスをさせていただいたところでございます。具体的には、2022年5月に公表されたファンドなどに関する開示規則改正案が2025年6月に撤回されたということがございましたので、その修正をさせていただいております。
また、ページ飛びまして13ページの12行目からのところになります。こちらはサステナビリティ投資をしている、またはしたい理由として、もともとの記載ぶりですと、投資リターン向上以外の理由を選択した回答割合が高いというふうな記載をしておりましたけれども、こちらについては、リターンはなくてもESGに取組のがいいからサステナビリティ投資をやっている、要は、リターンは全く考えないというふうな形で読み取られると誤解されるということが懸念されるのではないかという御指摘も踏まえまして、実際に実態調査の中でアンケート調査の回答で選択された選択肢を、投資リターンに係る理由を含めて選択した方々についての記載も含めて書き下す形で記載を修正させていただきました。
具体的には、前段が、「自身がESGに関連する課題に取組むことは良いことだと思う」以降が、投資リターンに必ずしも着目しないでサステナビリティ投資を選択していると回答した方々の選択で、どういう選択をしたのかといったところを書き下した上で、16行目のところで、これらに次いでサステナビリティの考慮を通じた投資リターンの向上に関する理由の回答割合が高くなっているというような記載を追加させていただいています。
すみません、またページが少し飛びまして、18ページになります。18ページの20行目からになります。こちらの記載ですけれども、監督指針に基づくESG投信が公募株式投信に占める純資産総額の割合は1.76%というところの記載ですが、従前の記載ですと、2%未満という数字がこの前の段落に記載しております実態把握結果と乖離が見られたというふうな記載にしておりましたけれども、粒度の異なるものが比較されているので、乖離が見られるとの記載は適当ではないのではないかという指摘も踏まえまして、「こうした実態が確認された一方で」という形で記載を修正させていただいております。
すみません、またページが飛びまして、23ページになります。こちらも注記になりますが、注記のところで、会議の場でも、金融経済教育の重要性と、それから情報入手チャネルであるメディアに対する情報発信の重要性といったところについて御指摘がありましたので、その旨を注記で追加する形としております。
次ページになりますけれども、24ページも注記の修正になります。前回の有識者会議の場でプレゼンテーションをしていただきましたソニーコンピュータサイエンス研究所のプレゼン内容を踏まえた注記を注50のところに「また」という形で追加させていただいております。
次が、25ページになります。こちらの3行目からのところをハイライトさせていただいております。こちらについては、投資選好の違いを踏まえたアプローチに関する記載や、どういうふうに認知・理解を高めていくかというところのアプローチに関する記載部分につきまして、サステナビリティ課題に関心が高い方にはこれ、投資リターンへの影響を重視する方にはこれというように読めるような記載ぶりになっているのではないかと。やはりその辺はグラデーションがありながらも両方とも重要だという御指摘も踏まえまして、具体的には5行目のところですけれども、重視する程度に応じて説明内容を工夫することが有効ではないかということで下に2つポツを並べる形とさせていただいております。
主な修正点については以上となります。すみません、少し長くなりましたが、私の方からは以上とさせていただきます。
【水口座長】
ありがとうございました。いろいろな方の御意見を踏まえて修正をしていただいたところです。これから御意見をいただこうと思いますが、渋澤さんが今日16時半までと伺っています。もし渋澤さん、今の時点で何かコメント等ありましたら伺えればと思いますが、渋澤さん、いかがですか。オンライン出席とお伺いしておりますが。
【渋澤メンバー】
はい、オンラインでございまして、大変申し訳ございません。前回ご指摘させていただいたサステナブルファイナンスというのはバリュークリエーションであるということをしっかりと明記していただきましたので、特にございません。ありがとうございます。
また、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2025年改訂版」でも、しっかりとサステナブルファイナンスのことが明記されていましたので、事務局の皆様の御尽力に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
【水口座長】
それでは、オンラインの方、会場の方含めて、ここからは自由討論ということでさせていただきたいと思います。どなたからでも結構ですが、もしコメント、御意見などがありましたらいただきますが、いかがでしょうか。
では、足達さん、お願いします。
【足達メンバー】
ありがとうございます。これまでの議論を非常に丁寧に反映いただいたと思っておりまして、まず事務局の皆さんに感謝いたします。
25ページのところに黄色でマーカーをつけていただいている書きぶりが登場して、分かりやすくなったなと思う一方で、実は今回のこのテーマはサステナビリティ投資に絞っていまして、私の経験を少し御披露したくなりました。今から25年ぐらい前にエコファンドを世に出して、10年で満期償還になったのですが、償還のときに実は基準価格が八千数百円で元本割れをしていたんですね。そのときにある個人投資家の方から、「これだったら最初から寄附しといたほうがよかった」という感想をいただいたのでした。サステナビリティに関する課題の解決への貢献をより重視される方にとって、サステナビリティ投資の対象というものが、まずリスク資産であるということが必ずしも理解されていなかったということだろうと思います、そのことをこの報告書にどう書いたらいいのだろうかということがちょっと気になりました。
同時に、今回はサステナビリティ投資を扱ったわけですけれども、リスク選好の必ずしも大きくない方というのが比較的多くいらっしゃるわけで、そうすると、例えばサステナビリティ預金とか、リスクフリーとは言いませんけれども、リスクが小さいそういう金融商品についても、サステナブルファイナンスの適用の余地というのをどこかで将来的に議論すると注釈しておいたほうが、生産的なのではないかということを感じました。
繰り返しますと、25ページのところでどういうふうに書くかなんですけれども、「サステナビリティ投資の対象がリスク資産である、リスクがあるということを認識した上で」とか、そういう一言が要るのかなと思っておりますことと、脚注で預金についても将来的に何かブリッジをかけておくということに意味があるのではないかということ、その点を提言申し上げたいと思います。今にわかに良い修文のアイデアが浮かばないことはお許しいただきたいのですが、以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。私、座長の立場を離れて個人的なコメントを差し上げますと、投資というものに対する理解の足りなさというのはあります。最初から寄附をすればよかったというのは多分間違いで、寄附によって手の届く、つまりインパクトを与えられる領域と、サステナビリティ投資によって手の届く領域は違うので、お金を投資することで変わった部分、企業に対して影響が与えられた部分というのは多分別にあるのだろうと思います。ですから、それはエコファンドに対する理解不足であったり、投資がもたらすインパクトというのが寄附を通じるインパクトとは違うルートで、だからこそこれを皆さんで作ってきたということがあんまり理解されないのだろうとは思います。
【足達メンバー】
そうですね。されていないですね。
【水口座長】
リスクがあるということを前提に、サステナブル投資の投資という部分からすると多分前提条件だとは思うのですけれども、今回、個人向けの議論をしているという意味では、どこかにそういうことを書いてもいいのかもしれません。
【足達メンバー】
貯蓄から投資へという大きな流れの中でこの報告書が位置づけられているので、そんなことを細かく言わなくてもいいということかもしれませんけれども、皆さんの御意見なり、事務局の御判断にお任せしたいと思います。
【水口座長】
難しいところですよね。ありがとうございます。では、林さん、岸上さん、の順でお願いします。
【林メンバー】
今の点で思ったのですが、23ページの中の注48に金融経済教育という記述がありますが、あとほかにこの報告書の中で金融経済教育があったかどうかもう1回ソートしてみれば分かると思うのですが、やはりどこかに今、J-FLECとか、そもそもの金融経済教育とか金融リテラシーを上げようという話があろうかと思うので、それを一番最初の「はじめに」に入れるのか、この23ページの、25ページの細かい内容よりも、もうちょっと全体をカバーするような形で、そもそもサステナブル投資は今の日本の資産運用立国の中の一環だと思いますので、そういう中の一つで、金融経済教育とともにこれを普及させていくというのをどこかに入れていただければいいかなと思います。
【水口座長】
確かにそうですね。そういうところに入れていくのが素直かもしれませんね。ありがとうございました。では、岸上さん、お願いします。
【岸上メンバー】
ありがとうございます。今のところに関連してまず追加なんですけれども、JSIFのほうでも金融経済教育とサステナブルファイナンスの関係を議論していたんですけれども、その中でもやはり現状のJ-FLECの材料の中でそもそもの投資リスクについて個人の投資家が、詐欺とかではなくて金融商品としてのリスクのところの知識を提供することで、ベースが出来た上でサステナブルファイナンスにもアクセスできるといったところも議論しておりましたので、サステナブル投資商品のリスクが高いというよりも、投資商品そもそものリスクのところがより理解されるとよいのではないかなと私も思いました。
ちなみになんですけれども、概要版も含めてコメントしてもよろしいでしょうか。
【水口座長】
はい。概要版もお願いします。
【岸上メンバー】
ありがとうございます。まず、本編についてなんですけれども、先ほど足達さんから、今回投資にフォーカスしているという御意見があったかと思いまして、私もその認識なんですけれども、後ほど事務局資料で御紹介いただく内容の中で、例えばシナリオ分析におきましては、融資の引受とか保険引受のリスクのシナリオ分析になっているかと思います。サステナブルファイナンス全体としては、投資も融資も両方カバーしているような状況かと思います。
一方で、年次で報告書として出ているものがいきなり投資だけにフォーカスしていると思います。「はじめに」で、後半のところからサステナブル投資に触れていると思いますが、例えば個人が最も関係してくるサステナブルファイナンスの領域としての投資の部分について課題認識があったので、そこについてどういった意義と今後の対策があるかというのを今年度はフォーカスした、といった前文があることによって、この報告書の中で融資等がカバーされていないことへの理解へつながるかなと思いました。以上が報告書についてです。
概要版についてなんですけれども、特に内容についてというところではないんですけれども、前段に関しては最終的な方向性だけがカバーされており、後半の実態調査等が含まれているところに関してはそれぞれ1、2で課題の整理と今後の対応が含まれているかと思いますので、それが分かるように、細かいんですけれども、課題認識のところと対応という副題をつけたほうが読み手において、特に流れが上下と左右になっているので分かりやすくなるのではないかなと思いました。
あと、内容について、ある意味当たり前の結論に見えると思います。なので、それに至った経緯として、例えば1のところで括弧で「1万2,000人の実態調査等より」と加えるとか、2のところで「国内外のアセットマネジャー、アセットオーナーのヒアリングより」とすることで、改めて一般の方、そして、専門機関の方の意見を踏まえて現状を確認したということが伝わるかと思いましたので、御検討いただければと思います。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。では、鍋嶋様、お願いします。
【鍋嶋メンバー】
ありがとうございます。前回の議論の意見を反映していただいた内容に全般的になっているかなと思います。
今お話のあった金融経済教育というところですけれども、最初のサステナブルファイナンスの推進の意義と課題のところに、5ページですが、(2)、16行目に資産運用立国実現プランということが書いてあるので、ここにもう少しそういう金融リテラシーを高めていく必要性みたいなことを入れ込んでもいいのかなと思いましたし、23ページの注記48は、注釈じゃなくて本文のほうに入れ込んでもいいのではないかなと感じました。 以上です。
【水口座長】
そうですね。ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいですかね。
御意見を踏まえて検討といいますか、私からも一つ、事前に見せていただいていながら、今聞いていてふと思ったんですけれども、これは全くのコメントなんですけれども、2ページ目の注記2で「サステナビリティ投資を選好する」の説明をしていただきました。なかなか「サステナビリティ投資を選好する」と言ってしまうと、サステナビリティ投資とそうじゃない投資が分かれていて、どっちかを選ぶという、そういうイメージになっちゃいますよねということで前回も御意見いただきました。
その御意見をよくよく考えてみると、たしかこの場でいろいろな議論の中で、長い目で見ると投資全体にサステナビリティをみんな考慮していくようになるのが将来像で、あれかこれかじゃなくて、みんながサステナビリティを投資の中に組み込んでいくという、そういう方向が目指されるべきじゃないかと、こういう議論があって、そういう意味でこの「選好」という言葉がちょっとどうかなと、こういう御意見だったのかと思いますと、この2の注釈でもまだ何か二者択一感から抜けにくい。
これ、なかなか説明しにくい部分があるんだろうなと思うんですけれども、例えば本報告書では、「サステナビリティ投資を選好する」という表現を、多様な投資手法や運用対象がある中で、投資家が一つの投資手法としてサステナビリティ投資を選択し、又はポートフォリオの一部にサステナビリティ投資を組み入れるという趣旨や、投資行動全体としてサステナビリティを組み込んでいくということも含めて、というぐらいに、何かいろいろなものが含まれているのでよく分からないかもしれませんけれども、でも、言わんとすることは、そういうものもいろいろ含めて用いておりますという感じでどうかと、ふと思いました。ということで、これはコメントですから、また精査していただいて、採用できるかどうか御判断はお任せしたいと思います。
では、オンラインの中村様、お願いします。
【中村メンバー】
生命保険協会の中村です。参加が遅れまして申し訳ございません。まずは報告書を取りまとめいただきまして、改めて感謝申し上げます。今年度のこの有識者会議については、様々な議論がある中、生命保険業界にもプレゼンの機会をいただきまして非常に感謝しております。改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
プレゼンの際も申し上げましたけれども、このESGの課題解決によって社会的インパクトが生み出されて、中長期的な視点ではそれが投融資先企業のプレゼンスの向上や業績の改善に結びつくという、この好循環に関する共通の理解を醸成するということが非常に重要であると。また、それにまつわるエビデンスをみんなでそろえていくことが重要であるというお話をさせていただきました。この点について報告書に反映いただいているということでございまして、この点についても感謝申し上げるとともに、報告書全体についても異論はございません。
また、23ページのサステナビリティ投資商品の組成・提供に更なる取組、ここのところで金融機関による教育の重要性についても、改めてでございますけれども、報告書でも触れていただいております。生命保険協会としても今、会員各社でサステナビリティに関する様々な取組を行っておりまして、積極的な情報発信を進めているところでございますが、引き続きというか、さらにこの取組を充実化していく必要があるということを改めて認識いたしましたので、会員各社にも報告書が出た段階でしっかり伝えてまいりたいと思います。
改めてになりますけれども、1年間どうもありがとうございました。以上でございます。
【水口座長】
ありがとうございます。23ページのところ、確かに注48、49と書いてあるところを、「有効であると考えられる。特に金融経済教育を通じてサステナブルファイナンスの認知を図ることが重要であるとの指摘もあった」というふうにすれば、本文にも入れられるんですね、別に。本文に入っていてもいいですよね。
では、上野さん、お願いします。オンラインの上野様、お願いします。
【上野メンバー】
全銀協の上野でございます。まず、取りまとめに感謝申し上げたいと思います。大変ありがとうございます。
ちょっと話題になっています23ページの脚注のところは、前回私のほうからも、サステナブルファイナンスの認知・理解の向上については少し発言をさせていただきまして、その中でやはり環境変化というのが現実問題としてある中で、金融経済教育の重要性を少し発言の中で指摘させていただいた次第でございます。そういう中で、記載ぶりは最後は事務局にお任せしたいと思いますけれども、趣旨としては、やはりそもそものサステナブルファイナンスの認知というのは全体の中の議論の中でもよりファンダメンタルな課題になってくるのかなと思っておりますので、本文のほうがより適切かなというふうに思いますけれども、最終的な記載ぶりは事務局の皆様にお任せしたいと思います。
以上でございます。
【水口座長】
ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。それでは、鳥海さん、お願いします。
【鳥海メンバー】
まず、選好のところ、いろいろ御検討いただいてありがとうございます。ちょっと難しい扱いだとは思うんですけれども、工夫していただいて、また、先ほど先生からもコメントがあったので、また御検討いただければと思います。
最初のサステナブルファイナンスの意義のところは、大分足していただいて、フレーミングしていただいていると思うのですけれども、最後に(2)の上で足されたことで言っていることというのは、理解しようとしていたんですが、「気候変動以外の課題についても様々な課題が企業価値に影響を与えるということを理解したうえで企業が行動し、企業価値を改善・向上させていけるようにファイナンスという手段を使って促していく」というようなことをおっしゃっているのかなと理解をしております。
一方でといいますか冒頭の定義のところでは、一次報告書を引いているので、結構気候変動のところに課題と言いますか重心があるかなと思いました。その後も、気候変動のことをずっとGX経済移行債のところまで書かれていて、その後足されたところが、気候変動も重要であるがほかにも様々な課題があるという形になっているので、ややバランスが前半で気候変動に寄っているかなというような印象も少し持っておりました。なので、一次報告書の時点ではやはり気候変動がすごく大きな課題だったと思うのでそういう書き方になっているのはそうだと思うのですが、その後は環境の変化があるので、少し気候変動以外にも様々な課題があり、そういうことも含めてサステナブルファイナンスが解決に力をつけられるのではないかというような書き方のほうがよいのではないかと思いました。
【水口座長】
なるほど。3ページの(1)のところですが、最初は第一次報告書において、以下のとおり整理されていると。
【鳥海メンバー】
そうですね。これは、引用とのことなので。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
一応、5ページの1行目からですけれども、まさに同様の指摘を前回いただいておりまして、その御指摘も踏まえまして、気候変動は当面最も喫緊かつということで、一応書かせていただいております。
【鳥海メンバー】
なるほど、分かりました。
【水口座長】
多分、鳥海さんの御指摘は、5ページはこう書いてあるけれども、3ページと5ページがちょっということですよね。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
ちょっと欧米の動きとかのところで触れている、特に米国が脱炭素関係で顕著な動きもあったというところもあって、全体としてやや気候変動に寄っているような記載ぶりになってしまっているのは御指摘のとおりではございますけれども。
【水口座長】
多分書くとしたら、「足元、欧米を中心に」という文章の1個前に、その後、サステナビリティの課題がより広がりを見せ、人権、人的資本、それから生物多様性等の問題がクローズアップされているみたいな、特に日本では、人的資本といいましょうか、人口減少の問題とか、地域の活性化の問題とか様々ですけれども、様々な問題があるというフレーズがちょっとあって、それで「足元、欧米を中心に」という流れでもいいかもしれません。「足元、欧米を中心に」にすると、欧米はまた、気候変動に後ろ向きなだけじゃなくて、DEIにも後ろ向きだったりするので、いろいろと…。
【林メンバー】
欧米ではなく、アメリカですかね。
【水口座長】
アメリカですね。欧米じゃない、米ですよね。
【林メンバー】
米です。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
今の御指摘を踏まえて、5ページの冒頭で記載しているようなものと同様の趣旨の記載を、今、水口先生から御示唆あったところもうまく合わせて記載できればと思います。
【水口座長】
ありがとうございます。
【鳥海メンバー】
骨太方針とかを見ると、結構課題がたくさん書かれていたので、そういったところとちょっとスコープが違うかなというふうに思いました。お願いします。
【水口座長】
ありがとうございます。では、岸上さん、お願いします。
【岸上メンバー】
今のところへの反応ですが、ちょっと適切な題名が浮かばないんですが、この意義のところに何かしら「変遷」という言葉を入れることによって、一次報告書の段階ではこのように整理されていたことは事実だと思うので、それはなかなか変えられないと思うので、全体としては時系列でこの議論の中での変遷をカバーしているという位置づけになれば、もう少し分かりやすいかなと思ったのですけれども、ただ一方でもしかすると、この第一次報告書の説明の前に一段落、現在と結びつけるまとめがあってからその変遷をカバーすると、懸念も減るのではないかなと思いました。
【水口座長】
なるほど、先に書くということですね。ありがとうございます。では、林さん。
【林メンバー】
大体皆様のコメントとかぶっているんですけれども。もし骨太の方針の中にいろいろ書き切れないことがあるんだったら、脚注でというのも一案かと。全部書いていると本当に拡散するので、その他社会課題にはこのようなことも指摘されているぐらいにしておけば、それはそれでいいかなと思います。
【水口座長】
ありがとうございます。助け舟をいただきました。ほかにいかがでしょうか。大体よろしいでしょうかね。
それでは、いろいろと貴重な御意見いただきまして、ありがとうございました。今いただいた御意見をまた事務局のほうで精査していただきまして、どう反映するかを考えて、最終化をしていきたいと思います。
この先の修文につきましては、恐縮ですが、座長一任ということでお願いできればと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、この後は座長に一任していただきまして、修文をして公表を行いたいと思っております。
それでは続きまして、事務局から、議題2ですけれども、金融庁におけるサステナブルファイナンスの推進に関する足元の主な取組について御説明をお願いします。よろしくお願いします。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
ありがとうございます。では、2つ目の議題でございます。足元この1年間にございました、主として金融庁の関わっておりますサステナブルファイナンスを巡る主な取組状況について、資料3、事務局説明資料で御説明をさせていただければと思います。
ページめくりまして、右下1ページです。こちらが足元で金融庁において取り組んでいるサステナブルファイナンスの取組の全体像というところです。皆様も何度かお目にかかっている資料かもしれないんですけれども、大きく4つの区分というか括りで取組をしておりまして、本日は、まず上の2つのボックスの左側の市場制度の整備ということでサステナビリティ開示の取組についてお話をさせていただければと考えております。ちなみに、右側の幅広いステークホルダーへの浸透の幅広い投資家への投資機会の拡充につきましては、まさに今事務年度、この有識者会議で皆様に御議論いただいたものになります。
もう一つが、下に2つボックスがあります左側の分野別の投資環境整備ということで、一つは、トランジション・ファイナンスの推進をアジアでも進めていくということで、アジアGXコンソーシアムに関する取組。それから、2つ目のポツのインパクト投資の推進ということで、インパクトコンソーシアムにおける議論状況。それから、右隣の脱炭素に係る取組ということで、金融機関における気候関連金融リスク管理とか、あるいは顧客支援に関する取組などを体系的に実態把握したということでして、その取組。それから、2つ目のポツのカーボン・クレジットの取引に関する検討会を昨年6月に開催し議論してきまして、まさに本日午前中に報告書を公表しておりますので、こちらについての取組状況について御説明をさせていただければと思います。
次のページ、右下2ページが、今申し上げた全体像を文字で詳細記載したものになります。
では、次の右下3ページを御覧ください。こちらがサステナビリティ開示に関する取組ということでございます。こちらの概要を説明させていただきますと、まず、皆様既に御案内のところも多いかと思いますけれども、サステナビリティ開示基準、それから保証制度に係る内容についての御紹介ですが、前段を申し上げますと、IFRS財団が設置したサステナビリティ基準審議会、ISSBにおいて、サステナビリティ情報の比較可能性の向上とか信頼性確保の観点から2023年にISSB基準が最終化されております。
また、我が国におきましては、サステナビリティ基準委員会、SSBJにおいてこのISSB基準を踏まえまして、我が国における具体的なサステナビリティ開示基準、SSBJ基準の開発を進めてきたところでございます。こうした中、我が国におきましては、まさに法令改正も視野に入れまして、サステナビリティ開示基準及び保証制度の導入に係る検討・議論を始めるため、昨年、金融審議会においてサステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループを設置しまして、直近では6月5日に第7回を開催したところでございます。
今御覧いただいている右下3ページの資料は、その第7回ワーキング・グループの資料になります。この第7回のワーキング・グループでは、グローバルな比較可能性を確保し、中長期的な企業価値の評価に必要な情報を提供して、投資家との建設的な対話を促進する観点から、プライム市場の上場企業の全部または一部に対してSSBJ基準に準拠して有価証券報告書を作成することを義務づける方向で議論が進められております。
開示基準の適用の2つ目の四角に記載のスケジュール案を事務局より提示しておりまして、具体的には、小文字のローマ数字の1で時価総額3兆円以上の企業に対しては2027年3月から、ローマ数字2は、時価総額3兆円未満1兆円以上の企業に対しては2028年3月期から、ローマ数字3になりますが、時価総額1兆円未満5,000億円以上の企業に対しては2029年3月期から、それぞれSSBJ基準を適用することを基本線としつつ、ローマ数字2とローマ数字3の適用時期については、国内外の動向などを注視しつつ、引き続き柔軟に対応するということとするロードマップ案をお示ししているところでございます。
第7回ワーキング・グループでは、このローマ数字2の3兆円未満1兆円以上の企業についてもスケジュールを確定すべきではないかという意見も聞かれたところでございまして、今後当該スケジュール案を固めてまいりたいと金融庁としては考えておるというところでございます。
それから、保証のところですけれども、保証につきましては、開示基準の適用開始時期の翌年から義務づけを行うということとしているところでございます。また細かな論点につきましては、引き続きサステナビリティ情報の保証に関する専門グループがございますので、そちらで議論をすることとしておるところでございます。
次のページ、右下4ページが、アジアGXコンソーシアムに関する取組でございます。こちらはASEANが中心ですけれども、アジア地域においてもトランジション・ファイナンスを推進していくという趣旨で立ち上げたものでございます。具体的には、目的といたしましては、やはりアジア地域が世界の温室効果ガスの約半分を占めているということや、今後経済成長をしていくことが見込まれるということで、引き続きエネルギーの消費量が増加傾向にあるということも踏まえますと、やはりグローバルでの脱炭素、カーボンニュートラルを進めていく上では、アジアにおけるグリーントランスフォーメーション投資、GX投資を推進していくことが重要だろうということで目的の2ポツに記載がございますけれども、金融庁とASEANの金融当局が主導する形で、アジア開発銀行とかGFANZ、それから民間金融機関が参画する形でこのアジアGXコンソーシアムを昨年の10月に立ち上げまして、まさにアジア地域におけるトランジション・ファイナンスの実践に結びつくような議論を事例ベースでやっていくという取組をしておるところでございます。
次のページ、右下5ページになります。こちらはインパクトコンソーシアムになります。水口座長にはこちらの運営委員会の会長もやっていただいております。こちら、皆様も御案内のところが多いかと思いますけれども、一昨年の11月にインパクト投資に関心を有する、あるいは関係する様々な関係者、投資家、金融機関、企業、NPO、自治体といった幅広い関係者が協働・対話を図る場として開催しております。下の絵がインパクトコンソーシアムの構成になるわけですけれども、総会・運営委員会の下に4つ、テーマ別に分科会を設けて、具体的にインパクト投資の裾野拡大、機運醸成を図るという観点から、具体的な知見の共有と事例の共有といったことを中心に議論を行っているところでございます。
次のページ、右下6ページが、今申し上げました各分科会における議論状況と来年度の方向性ということで、まさに先週金曜日の6月13日に運営委員会を開きまして、そこで、各分科会から昨年度の取組状況についての成果物の報告がありまして、まさに今週月曜日にインパクトコンソーシアムのホームページにおいて、各分科会の成果物について公表しておるところです。
各分科会について簡単に御紹介しますと、1つ目、1ポツがデータ・指標分科会ということで、こちらではインパクト投資をする、あるいはインパクトを意識した事業展開をするという事業者にとって、自らが創出するインパクト、投資を通じて実現するインパクトなどについて、その測定・管理をする上で活用可能な、活用し得るデータ・指標について議論を行い、その整理の方向性について議論を行ってきたところでございます。この中でやはり関心の高い分野としましては、気候変動・生物多様性とか、健康・医療といったヘルスケア、それからインフラ整備・都市開発といったところについて関心が高いということがこの分科会の現地調査等でも分かってきたところでございますので、来事務年度におきましては、この関心の高い分野を中心に実用的なデータ・指標の整理について引き続き議論をしていくということを予定しておるところでございます。
2ポツの市場調査・形成分科会は、インパクト投資というのはインパクトの創出と事業性の発揮を投資を通じて図っていくということで、投資手法として投資先企業との間でかなり密接なエンゲージメントをしながら投資をしていく投資手法だということもあって、やはり未上場企業向けの投資が主流となって発展してきたというところでございます。したがいまして、上場企業向けのインパクト投資はなかなかまだ事例としては多くないということもございまして、こちらの分科会では、上場企業向けのインパクト投資に焦点を当てて議論を行ってきたところでございます。
そうした中で、例えば上場企業となれば、やはり事業ポートフォリオは多角的であるというケースも多いですので、そういう中で、例えば一部がインパクト創出に関わるような事業だけれども、ほかはなかなかインパクトという観点からは評価が難しいみたいな場合はどのように評価したらいいのかとか、そういったような、上場企業にインパクト投資する際の着眼点とか投資手法について具体的な事例を紹介しながら議論をしてきたというところになります。来事務年度の方向性としましては、さらに、今回議論してきた内容を踏まえまして、事例研究、知見共有をさらに進めていくということを予定しております。
3ポツの地域・実践分科会におきましては、こちらはまさに去年の夏から議論してきて、初年度ということもありまして、まずは地域におけるインパクト投資の機運醸成・裾野拡大ということで地域における取組事例の共有というところを中心にやってきたわけです。あまりファイナンス面にフォーカスした議論ができなかったということもありますので、来事務年度におきましては、地域における多様なファイナンス手法の活用に目を向けて事例ベースで議論していくということを考えておるところでございます。
4ポツの官民連携促進分科会につきましては、こちらは地方自治体とインパクトスタートアップの連携促進をどうやって図っていくかというところを議論しました。端的に申し上げますと、地域の課題解決、行政が対応するようなところについても、インパクトスタートアップの有している技術とか知見・サービスが活用できる余地があるのではないかということで、その連携を促進するということで議論をしてきました。まさに自治体とインパクトスタートアップそれぞれが、お互いのかなり企業文化というか組織文化が違う中でマッチングする上でのポイントを実践ガイドラインという形で取りまとめて、成果物として公表しておるところでございます。来事務年度につきまして、この実践ガイドをさらに周知して利用の促進を図っていくということを予定しておるというところでございます。
次のページ、右下7ページになります。こちらは7ページ以降で気候関連リスクに関する取組を3つ御紹介させていただきます。まず、1つ目が7ページになります。こちら、気候関連リスクに関する金融機関の取組の実態把握に関するものでございます。金融庁におきましては、皆様も御承知のところでございますが、2022年に「金融機関における気候変動への対応についての基本的な考え方」、ガイダンスを公表しておりまして、その公表以降、金融機関とアドホックでありますけれども対話を続けてきまして、昨年7月のサステナブルファイナンス有識者会議第四次報告書でいただいた御指摘も念頭に、金融機関における気候変動への対応状況をより体系的・業界横断的に把握する観点から、昨年8月に金融庁のモニタリング部門に気候関連リスクモニタリング室を新たに設けまして、金融機関における取組の実態把握を進めてまいりました。
今事務年度におきましては、大手行、地銀、それから大手生損保約20社に対しまして、気候変動対応のための戦略の策定とかガバナンス、リスク管理、顧客支援の状況などについてヒアリングなどを実施しまして、その実態把握結果を主な取組の動向と課題ということで報告書として取りまとめまして、本日午前に公表しておるところでございます。その結果、実態把握を行った金融機関では、規模や属性に応じた気候関連リスク対応の進展が一定程度見られたというところでございます。
主な取組としましては、戦略の策定・ガバナンスについて、気候関連戦略の策定とか目標・評価指標の設定に加えまして、近年サステナビリティをテーマとした内部監査を実施しているというところも見られたところでございます。
金融機関から聞かれた主な課題がその右隣にございますけれども、課題といたしましては、気候関連リスクを従来のリスク管理の枠組みで特に定量的に捉えることにはやはり課題感があるという話も聞かれましたし、特に中堅・中小企業では他の経営課題への優先度が高い場合などがあって、こうした顧客の意識も相まって、金融機関自身の職員の意識や知識に差があるというような声も聞かれたところでございます。あとそれから、これも従前より言われていることでございますけれども、多排出セクターの顧客に対してトランジション・ファイナンスを実行すると、一時的に投融資を通じたファイナンスドエミッションが増えてしまうということも引き続き課題として聞かれたところでございます。
次の右下8ページ、こちらが銀行セクターに対する第2回の気候関連シナリオ分析の実施結果となります。金融庁と日銀で実施したものですけれども、3メガバンクと連携しまして共通シナリオに基づく気候関連リスクに関する第2回目のシナリオ分析を実施いたしまして、こちらの結果につきましても本日午前中に公表しておるところでございます。第2回シナリオ分析におきましては、第1回シナリオ分析と同様、気候関連リスクの定量的な把握ではなくて、分析手法に係る課題把握とか、改善を主眼として銀行の財務への影響が大きい貸出金の与信への影響(信用リスク)にフォーカスしてシナリオ分析を実施したというところでございます。前回からの違いという点におきましては、今回のシナリオ分析では、気候関連リスクは短期的に大きく変動する可能性も考えられるということを踏まえまして、より短期間、7年の移行リスクの分析を実施したところでございます。シナリオとしましては、8ページの第2回シナリオ分析における採用シナリオという3つのシナリオで実施したところでございます。
次の右下9ページ、こちらがその分析結果のポイントになります。参加していただいた金融機関においては、第1回以降、セクター専用モデルによる分析可能な範囲の拡大とかモデルに関する文書の整備などにより、分析態勢が充実してきたということが確認できたところでございます。また、分析結果の比較を通じまして、シナリオ分析の活用に向けた課題について参加行との対話を実施いたしまして、気候シナリオと与信先個社の移行戦略との乖離が分析結果に与える影響とか、炭素価格の転嫁率など、分析結果には気候に影響を与え得る重要なパラメーターの特性、それから、それが変化した場合の影響に留意し分析を行うことの有用性などが確認されたところでございます。金融庁としましては、日銀と連携しまして、今回のシナリオ分析を通して明らかになった課題への対応の方向性を含めまして、シナリオ分析の手法とか活用方法について、引き続き金融機関と議論を進めていく予定としておるところでございます。
右下10ページ、これは保険セクターのシナリオ分析でございます。こちらは銀行セクターと同様に保険セクターでも、損害保険会社19社と、あとは損害保険料率算出機構と連携して共通シナリオに基づく気候関連リスクに関する第2回シナリオ分析を実施したというものになりまして、こちらの結果につきましても本日午前中に公表しておるところでございます。第2回のシナリオ分析は、第1回シナリオ分析と同様に、急性物理的リスクである風災と水災における保険金支払額の変化を対象としております。採用シナリオにつきましては、第2回採用シナリオという2つのシナリオに基づいて実施しておるところでございます。
次のページ、11ページがそのシナリオ分析の結果です。具体的にはこのページの左側のグラフを御覧いただければと思います。こちらのグラフで示しておりますとおり、風災と水災のそれぞれについて、1年辺りの保険金支払額の確率分布が温暖化に伴いどのように変化するかを分析したものでございます。風災と水災のいずれもその平均値は温暖化とともに増加しているというところになります。また、全社が同一のリスクモデルを使用しているため、右側のボトムアップ分析結果というところですけれども、この右側のグラフのように会社ごとの横比較が可能となっておりますけれども、保険会社によって御覧のとおり相応の差異が認められたというところでございます。金融庁としましては、第1回・第2回シナリオ分析の結果やその課題・制約も踏まえまして、シナリオ分析の手法や活用方法について引き続き保険会社と議論をしていくということを予定しております。
次の右下12ページ、こちらが最後になります。カーボン・クレジットに関する検討会ということで、昨年の6月、金融庁ではカーボン・クレジット取引の健全な発展に向けまして、その透明性・健全性を高めて投資家保護を促進するという観点から、カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会を昨年の6月より開催しておりまして、まさに日本においてはまだ黎明期であるカーボン・クレジット取引における初期的論点について議論をしてきたところでございます。今般、金融界を中心とする関係者へのヒアリングを通じて把握されたカーボン・クレジットの取引実態などを踏まえまして、取引の透明性・健全性の向上において重要と考えられる論点を整理して報告書としてこちらも本日の午前中に公表したところでございます。
報告書の構成としましては、こちらの下のローマ数字1で記載のとおり、今回この検討会で実施しました足許の取引に係るストックテイクの成果ということで、取引プラットフォーム、それから売買に係る仲介、組成支援、金融関連商品の組成、リスク管理、信頼性評価、テック活用といった各テーマ別に実態把握を行いまして、その具体的な事例も含めまして報告書の中で整理しておるところでございます。
ローマ数字2が論点整理の骨子ということで、4つの切り口で整理をしております。一つが共通事項ということで、取引の透明性・健全性を確保する上での基本的事項ということで、当然のことでありますけれども、取引に当たって適切な情報開示とか利益相反の防止、関係法令の遵守、それから、取引参加者の知識・経験などの適格性、キャパビルの重要性などについても触れているところでございます。
2つ目、2ポツが取引仲介者、それからクレジット売主に関する事項ということで、こちらでは仲介時、それから売却時に顧客属性などに応じた適切な商品説明と、販売の仕方が重要であるといったところを中心にまとめております。
3ポツが取引所・取引インフラに関する事項です。こちらでは二重譲渡などがないように、カーボン・クレジットが取引上然るべく管理されるように登録簿の正確性の確保とか、あとはプラットフォームですので、取引所・決済インフラのリスク管理の重要性などについてまとめておるところでございます。また、将来的な課題としてデリバティブ取引に係る留意事項にも触れておるところでございます。
4ポツがクレジット買主に関する事項ということで、クレジットを買った事業者などが実際にカーボン・クレジットを活用して排出量をオフセットした場合の情報開示の在り方・重要性などについて、まとめておるところでございます。
すみません、駆け足になってしまいましたけれども、ここ足元1年間、今事務年度において、金融庁として取り組んできたサステナブルファイナンスをめぐる各種取組について御説明させていただきました。
私の方から以上になります。
【水口座長】
ありがとうございました。それでは、ここから意見交換ということにしたいと思いますが、最初に、本日御欠席の吉高さんから事前にコメントを預かっておりますので、事務局のほうで代読をお願いします。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
では、すみません、再び高岡でございます。では、吉高さんからいただいているコメントを私の方から代読させていただきます。
足元の取組の進捗状況及び今後の課題に関してコメントさしあげたいと存じます。報告書にも書かれていたとおり、欧米のみならず、世界の情勢の先行き不透明感がサステナブルファイナンスに影響を及ぼし、民主主義さえも危ぶまれる現状ではありますが、今こそ日本にとっては機会にもなり得るのではないかと思います。周回遅れが功を奏し、ここで着実に地固めをする。そのためには、サステナブルファイナンスのモメンタムを日本なりにどう進めるか、欧米主導の国際標準に引っ張られるだけではなく、日本としてサステナブルファイナンスのあるべき姿を考えることが重要かと思います。ガバナンス改革、情報開示、投資家とのエンゲージメントなどの進捗を実感いたしますし、遅行する欧米を横目に今後も確実に進むことが期待されます。
一方、日本のサステナブルファイナンスを考えるに当たり、事務局説明資料の2ページ目の取組の詳細において、地域についての取組がインパクト投資と地域GXにしかないように見受けられるのが気になります。サプライチェーンリスクはGXだけに限ることではありません。財務的リターンやリスクだけではなく、社会的リターンのインパクトを握るインパクト投資が地方創生の目的に資するとは思いますが、それだけでは包括的な課題に対処できるファイナンスではありません。政府で地方創生2.0基本構想が取りまとめられ、インパクト投資やGXなど個別課題項目だけで考えるのではなく、もっと広い視野で包括的に地方のサステナブルファイナンスについて議論していく必要があるのではないかと考えます。
以上、吉高さんからのコメントになります。
【水口座長】
ありがとうございました。今の吉高さんのコメントも含めて、皆様から御意見をいただきたいと思います。足元の御説明いただきました取組の進捗状況について、そして今後の課題につきまして、幅広に御意見をいただければと思います。
ここから先は自由討論ですので、どなたからでも結構です。いかがでしょうか。では、藤井さん、お願いします。
【藤井メンバー】
私のほうから2点申し上げたいと思います。1点は、感想というかウィッシュリストみたいな感じでありまして、もう1点がコメントとお願い、両方とも今後の取組についての論点です。
まず、感想、ウィッシュリストの方ですが、事務局資料2ページの4つの柱、あるいは3ページの取組全体像及び本日御説明いただきました内容を含め非常に包括的な取組をいただいて、それが着実に進展していると理解いたしました。一方で、こうした取組が2040ビジョンや温暖化対策計画に照らして、その内容あるいはスピード感が必要十分になっているのか、あるいはそれをモニタリングするためには何らかのKPIの設定があるといいなと思ったところでございます。これはなかなか言うは易くのところもあるので、感想とウィッシュリストということで申し上げました。
コメントといたしましては、この先、この有識者会議の頻度や運営方法が変わると理解をしておりまして、例えばモニタリングの頻度も、1年に1回とかに変わってくるといったときに、モニタリングを行う項目の包括性の確保及び項目の進捗の内容・スピードの十分性といったところをどうモニタリングしていくかということについてご配慮いただきたいと思います。
例えば、今年に入って、アダプテーションとかアダプテーションファイナンスということの議論が非常に盛り上がってきております。これは逆に言いますと、地球温暖化がここまで進んでしまっているので、パリ協定の1.5度だけでもとは言っていられなくて、当面の自然災害の増加を見越したアダプテーションということが意識されているという展開のようにも思いますけれども、2ページ、3ページの中ではまだフォーカスされていないと思いますので、こういった新しい論点をどのように追加で織り込んでモニタリングしていくかといったところについて、今後のモニタリングの中で御考慮いただきたいと思います。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。御指摘のとおりだと思います。前段でいただいた、例えば2040ビジョンに照らして十分なのかどうかとか、何かKPIがあってモニタリングすべきではないかというのはそのとおりだと思いますが、どんなKPIが良いのかもし何か御教示いただけることがあれば、お知恵をいただけますか。
【藤井メンバー】
確かに難しくて、温室効果ガスについては比較的分かりやすいし、既にモニタリングもされていると思うのですけれども、それ以外の例えば銀行の地球温暖化対策支援のファイナンス状況であれば、各社が目標を掲げておられて、それぞれにモニタリングをしておられます。そうした数値を足し上げて全体像とするのは、リンゴ対リンゴになっていないのでどうなのかといった議論はありますけれども、少なくとも個社の目標に対するモニタリングの総括のようなものはできることだと思います。そのためお願いということになるわけですけれども、できる部分、できない部分といったことを認識した上で行うことを考える、やり方を工夫するということかなと。
【水口座長】
例えば150兆円のうちの130兆円だといっても、民間の金融機関さんがやることで、モニタリングという言葉が合うのかどうかもなかなか難しいところだと思います。そういう難しさもあり、しかも先ほどいろいろ議論がありましたように、気候変動だけではないサステナブルファイナンスというときに、サステナブルファイナンスがどのぐらい進んでいるのかをどうモニタリングするのかというのはなかなか技術的にも難しいなと思いながら、でも、それをしないと、口で言っているだけということになってしまいますので、何かしたほうがいいんですよねということかなと思いました。引き続き考えたいなと思います。
【藤井メンバー】
今ないものを一から考え出すのは難しいので、先ほどの個社目標とか、あるいはサステナブル投資の残高とかシェアとか、そういう今あるものを使うことで見られる部分といったことの工夫はあるのかなと思います。
【水口座長】
ありがとうございます。では、林さん、お願いします。
【林メンバー】
ありがとうございました。何年かやっていますけれども、大分進んだなと思いつつ、2ページの資料で実施予定の取組というふうになっていて、この表は私、昔から結構好きなんですけれども、ここから先どうするんですかというのは、本文の中に今後の課題が沢山書いてあって、A4では収まらないので、A3ぐらいの紙にしていただいて、それぞれある程度のタイムラインがあるはずだと思うので、タイムラインを定めて、どこまでどういうふうに進んだという記述をされたら良いと思います。
仮に1年後、このメンバーかどうかは置いておいて、集まったときに、何をやりましたというのが、当初の目標とその目標に達しているのか、達していないのかというのが分かるようにするだけでもいいかなと思います。この表に加えて、さきほど地域の話とか、あるいは社会課題とかいろいろあったと思うので、もう1個新しい行を下に足していただいて、その他というのでこんなのもあると、ウィッシュリストですけれども、入れて頂いても良いと思います。
あと、どこまでの金融機関を対象にするかというのはあると思うんですが、各行が2050年カーボンニュートラルと言っていて、オレンジとリンゴをくっつけられないかもしれないんですけれども、何らか共通の例えばGHGの排出量でも何でもよくて削減量や排出量など、何か1つでもKPIを設けることはできるかなという気はいたしました。それも別にすぐ答えは出ないかもしれないんですけれども、サステナブルファイナンスを幾らやったという指標が各社にあれば、それを足し合わせて、それを少なくともファイナンスでどれぐらいやったんだというのが示せるといいのかなというふうに思いました。
なので、KPIをまた1個ずつやるのはすごく大変なのですが、せめてすぐできる対応として、金融庁さんの御負担がかからないようにという思いも込めて、この表をちょっと拡充し、将来に向けてのタイムラインとかを拡充して、あとは、新しい要素を入れて、その中に、例えば大手行のサステナブルファイナンスの金額とか、何かそういったものがあるといいかなという感じがします。
それで、1年に1回でもいいんですけれども、先に言ってしまうと、あんまり報告とかじゃなくて、今、各ステークホルダーの抱えている課題のディスカッションタイムみたいなものもあってもいいと思いますし、それからインパクトコンソーシアムとか、いろいろなコンソーシアムで何をやっているというものの簡単なアップデートがもし期中にあれば、それは各関係者も大変ありがたいのではないかと。何か情報共有の機会が、書面でも何でもいいんですがあると、仮にこれが1年後にミーティングがあったときに、聞くだけで終わらないようになるのではと思いました。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。聞くだけで終わってしまったらもったいないですよね。ありがとうございます。おっしゃるように、数字のKPIもありますけれども、この表をおっしゃるような形で少し拡充すると、政策とか施策のKPIというかモニタリングはできるんだなということで、施策がどれぐらい進んでいるんですという、そういうモニタリングも必要だなと思いました。
それでは、岸上さん、鍋嶋さんの順番で行きたいと思います。岸上さん、お願いします。
【岸上メンバー】
ありがとうございます。初めに、本当に包括的な報告をしていただきまして、ありがとうございます。
まず初めになんですけれども、昨年度までは、報告書の中でほかの各取組も盛り込まれた形でまとめられて、それが英訳されて発信されるということが行われてきたかと思います。報告書だけではないと思いますが、そういった形とか、各国際会議等での積極的な発信の甲斐もあって、日本が割と現実的なアプローチでサステナブルファイナンスに取り組まれているということを国際社会においても一定の評価を受けてきたかと思います。
そうした観点から、今までの流れですと、報告書だけが英訳されるといったことだと思いますが、こちらのそれ以外の様々な取組が英訳されないのは少しもったいないかなと思いますし、やはり特に例えばアジアGXコンソーシアムとか、国内で収まり切らないような取組があると思いますので、ぜひこの事務局説明資料で、お手間をかけることになると思うんですけれども、日本がそれこそ国際的に貢献するといった役割も踏まえまして、自動翻訳の機能を活用して英訳を御検討いただけたらというのが1点目です。
それ以外のコメントはもう少し具体的なところになります。頻度が減ってしまうかもしれないという前提で、ちょっと細かいところで恐縮ですけれども、まず1点目、今までの有識者会議の資料を見返しておりまして、令和5年の最初の会議のときに、人材育成について様々、その当時の実態調査と傾向分析をしていたかと思います。その当時の様々な活動の中で、現時点でカバーされていないところが一番そこかなと感じました。もちろん金融経済教育といった部分はカバーしていると思うんですけれども、保証機関やコンサルタント、金融機関と、全体のエコシステムそれぞれにおいて、各業界、各層においての適した人材育成や必要なツールがあるかどうかというのを、どこかの時点で改めて実態調査とフォーカスすべきところを洗い出してもよいのではないかなと思いました。
次の点ですけれども、気候変動のシナリオ分析のところについて御報告いただいたかと思います。恐らくNGFSが基になっているので、銀行からといったところで調査がされていると思うんですけれども、投資の部分におけるファイナンスドエミッションのリスク分析も当然重なるところと独特なところがあるかと思います。次のステップになるかもしれませんが、投資機関におけるシナリオ分析、特にプライマリー市場とセカンダリーにおいても性質が異なるかと思いますが、そのようなところをもし既に御検討されていらっしゃるのであればお伺いしたいと思いますし、していないのであれば、今後御検討いただけるのかどうか、現状を教えていただけたらと思いました。
あとは、インパクトコンソーシアムのところについてです。すみません、前後してしまって申し訳ないですが、今後の方向性について、様々、事例の共有とか収集といったところが挙げられていたかと思います。いろいろな分野において日本は特に事例を産出するのが得意だと思いますが、その中でよい事例もたくさんあると思うのですが、いろいろなところで発信されているので、なかなか必要な情報が見つけられないというもったいなさがあり、かつ作業が重複してしまうといったところがあるかと思います。インパクトコンソーシアムだけではないと思うんですけれども、事例集の集めかたについてぜひ御検討いただければと思いました。
あともう1点ですが、なぜそれが事例として取り上げられているかといった事例の解説もぜひ伴った形での事例集をつくることによって、やはり事例だけが出ていると、なかなかどのようにそれを、完全にまねする以外に応用したらよいかというのが分からないものが散見されるので、こちらのコンソーシアムにおいても御検討いただければと思いました。
細かい点は以上となりますが、皆さんおっしゃっていた、特に林さんもおっしゃっていたように、できれば、年に1回ですとなかなか深い議論もできないと思いますし、前回も意見をさせていただいたように、日々変わっていく状況の中なので、もう少し、年1回以上の頻度があると役割が果たせるのではないかなと思いました。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございました。簡単に回答のできる部分は今コメントいただいてもいいのかなと思うんですけれども、高岡さんいかがでしょうか。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
シナリオ分析のところですか。
【水口座長】
そうですね。シナリオ分析のところです。
【宮本マクロ・データ分析室参事官】
どうもコメントありがとうございます。マクロ・データ分析参事官をしております宮本です。また、去年8月に出来た気候関連リスクモニタリング室長も兼務しておりまして、案件により立場は異なりますが、一方で相互に関係もするので、両方の立場からお応えします。
シナリオ分析ですが、まず一言で言いますと、来期以降何をやるかというのは今後検討ということで今のところ決まっておりません。具体的な投資の話が挙がったところがありますけれども、今のところ、銀行の貸出や保険をカバーしております。そこも含めて検討ですが、少なくとも来年のシナリオ分析はいろいろ負担感等も考える必要があるので、少なくとも来事務年度については一旦休止し検討期間ということにしています。また様々な内外の動向等も踏まえて金融機関、業界側とも議論して決めていきたいと考えています。
いただいた質問はシナリオ分析に関するもので、それとは少し話が変わりますが、もう一つのほうの気候関連リスクに関する金融機関の取組の動向や課題の方では、融資や投資についても見ています。また、対象が大手行と大手生損保で、特に生保については保険というビジネスの側面のほか資産運用的な側面もあるので、後者では債券への投資やアセットオーナー的としての活動も見て実態把握を行っています。したがって、シナリオ分析の枠組みでやるのかどうか、もしくはこういう実態把握でやるのか、そこも含めて検討ですが、現時点ではそのような面も入っているということです。
アダプテーションファイナンスの話が出ましたが、我々も関心をもっており、ホームページに本日11時に公表した報告書には、35ページのボックス7にヒアリングした状況をまとめていますので、また後ほど御確認いただければと思っています。
あと、英訳の話は、我々も国際発信というのはすごく重要と考えています。シナリオ分析保険セクターの方は本日、全体の英語版を公表しています。シナリオ分析銀行セクター及び実態把握については、本日、概要の英語版を公表しており、全体の英語版も近々予定しているというところでございます。
最後に、本日は銀行、生保、損保と業界の方が出席していらっしゃると思いますが、実態把握やシナリオ分析に多大な御協力をいただきましてどうもありがとうございました。一言お礼を申し上げておきます。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。では、鍋嶋さん、そしてオンラインで上野さんということで行きたいと思います。鍋嶋さん、お願いします。
【鍋嶋メンバー】
ありがとうございます。今、シナリオ分析の話が出ましたので、その点について少しコメントしたいと思います。今回のシナリオ分析の実施によりまして、従来から検討されてきた業界統一モデルを活用したシナリオ分析の実施が実現したことになりまして、特に中小社においてやっぱり自社モデルを開発せずともこの気候モデルをシナリオ分析に活用できるようになったことは非常に意義深いものと考えております。
気候変動の影響度の評価自体は、気象現象だけではなくて、社会の脆弱性とか、不動産・動産の資産の集積状況、あるいはインフレの進行状況などが影響しますので、いろいろな不確実性が存在する中で、持続可能なビジネスモデルを構築していくということでは、変化する傾向を、最新の知見、それから直近の事例を考慮しながらリスクモデルに適切に反映させていくこと、それから、リスク分散、再保険を活用した適切なリスクコントロールを行うこと、そして、ここでも書いていただいていますけれども、防災・減災情報の提供を通じた社会全体のレジリエンス強化に寄与していく必要があると考えております。今後のシナリオ分析に関しましては、分析の手法とか活用方法について金融庁さんとも引き続き議論を行ってまいりたいと思っております。
あと1つは質問です。2ページ目の左上に書いていただいているESG評価・データ提供機関に係る行動規範ですけれども、策定から3年がたっていて、策定時にも3年ぐらいを目途に見直しとなっていたと思います。今後の実施予定の取組、2ページの右上に態勢整備の状況についての実態把握、更なる対応の要否を今後検討というふうにありましたので、態勢整備の状況等についての何か課題意識を既にお持ちになっているのか、それとも、それをまさに実態を把握してから今後どうするのかを検討するのか、その辺りを教えていただければと思います。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
ありがとうございます。実態把握について、まだ対外的に発信できるようなレベルというか粒度ではないですけれども、現状、評価機関自身の状態と、あと、投資家から見たらどうなのかというのと、あと、評価される側の企業から見たらどうなのかというところについては、ある程度状況は一部ヒアリング等を通じて把握しております。
当然、評価される側の企業からしてみると、評価の手法も含めて透明性が不十分なんじゃないのかとか、評価機関とコミュニケーションを取りたいけれども、ちょっとうまくコミュニケーションを取れないとかという課題感が示されていたり、評価機関側については、行動規範に賛同しているとする一方で、実質的にちゃんとやっているところもあれば、やや形式的なところにとどまっているのではないかとうかがえるようなところなどが見受けられるのかなという感触です。
あと、投資家サイドからは、現状、ESG評価機関の評価の活用状況というのが、参考情報の一つとして活用されているという向きが強いというか、専らのようですので、投資家サイドからは特段何か強い課題認識のようなところは示されていないのかなという感触を現状では抱いていますけれども、いずれにしましても実態把握を含めて来事務年度しっかりと進めていくということで予定をしているというところになります。
【鍋嶋メンバー】
ありがとうございます。
【水口座長】
ありがとうございます。それでは、オンラインの上野さん、お待たせしました。その後、足達さん、そして手塚さんと行きたいと思います。上野さん、お願いします。
【上野メンバー】
全銀協の上野でございます。まずは今事務年度につきましても、幅広いテーマにつきまして精力的に議論を進めていただきまして感謝申し上げたいと思います。
2点コメントさせていただければと思います。1点目は、今回、1ページ、2ページでおまとめいただいていますけれども、テーマごとの関連性とか、全体観、これを把握することは非常に重要だなと感じております。特に本日1ページの御説明でいうと、4つのテーマの連関性は、こういうふうにお示しいただきますと非常に分かりやすいですし、それぞれがどういう方向に向かっていくのか、全体としてどこに結びついていくのかというところが非常に分かりやすいなと思っております。私も幾つかの会議に参加させていただいておりますが、一つ一つが非常にやはり深度深く議論されていっていますので、逆に言うと、ともすると全体観を見失いがちでもありますけれども、こういった形で定点観測的に全体観を確認していくことも議論の中で重要かなと感じておりますので、今回の取りまとめ、今日の御説明にも感謝申し上げたいと思います。
それから2点目は、これは幾つかの銀行の実務に関するレポートの発表についても本日言及いただいていますけれども、まさにサステナビリティに関するいろいろなテーマの取組が実行フェーズに入ってきているというふうに非常に実感しております。枠組みづくりとか制度整備、それから企業サイドの態勢整備、目標設定、こういったことは一定程度進捗してきているのかなと思います。先ほど少しKPIというようなお話もありましたし、必ずしも個々の銀行、金融機関の目標の設定のことを書かれているわけではないと思いますけれども、大手行では例えば2030年のセクター別の排出量目標を開示しておりますし、サステナブルファイナンスの目標もこれも開示して、それに向かってまさに日々実行をしているというようなステージにあります。
それから、今日のこのリスク管理の取りまとめにつきましても、これもまさに我々が日々悩みながらどういう取組をしていくのがいいのかということの実践の中での悩みが反映されているかなと思いますし、インパクトにつきましても、これも本当に世の中にインパクトに対して定量目標を設定するような試みというのは、幾つかの企業、金融機関、こういったところでもトライがされていると、こういう段階にあるかなと思います。
こういった実践の取組を進めていく中で出てくる課題を踏まえて、継続的に枠組みとか制度の見直しが議論されていくことが重要だなと考えておりますし、全銀協としては、会員行の取組状況をしっかりと確認しながら、そういった実際の取組をこういった議論の場にフィードバックさせていただきながら引き続き議論に貢献していきたいと考えてございます。
以上2点、コメントでございました。
【水口座長】
ありがとうございました。それでは、足達さん、手塚さんの順番で行きたいと思います。足達さん、お願いします。
【足達メンバー】
ありがとうございます。私からは4点ほど申し上げたいと思います。
先ほど藤井メンバーあるいは林メンバーからありましたKPIの件なんですけれども、一つの手がかりとしてはトランジション・パスウェイ・タスクフォースというNGOがありますが、そこがそれぞれの金融機関もしくは事業会社のネットゼロに向けた軌跡の実態と理想的なシナリオとの乖離を図示して評価しているというような例がございます。乖離の算定に関する正確性というのはありますけれども、そのような一つのモデルをつくってみるというのも、この有識者会議もしくは金融庁様の施策の一つとしてあるかなということで御紹介をしておきたいと思います。
それから2つ目は、今のこととも関連するんですけれども、金融機関側、そして事業会社側から今一番私が耳にするお悩みといいますか、どうしたらいいんだろうという話題は移行計画、トランジションプランについての悩みであります。SSBJの開示項目の中にも、移行計画があればという留保条件はついていますけれども、それを開示するということが求められておりまして、日本のSSBJではやや意欲的に、そうした各社の移行計画が比較できるようにするということに言及しています。
私は最近、移行計画を生かすも殺すも金融機関次第と、こういうふうに言っております。多分、事業会社の皆さんは、これはつくるのが難しい、将来の設備投資だとか資産の在り方を時系列的に表現するなんて難しいとおっしゃるんだろうと思います。けれども、その上でつくれとなれば、ある仮定の上でどちらかというと自己アピール的につくられるのではないかと思いますが、それを金融機関の目で実現可能かどうかを見ていく目利き能力こそが金融の安定性だとか資産を守ることになると思いまして、これは多分何らかのやはりワーカブルな、機能していく移行計画をこの日本でつくっていかなきゃいけないんだろうという認識を持っております。
この部分はもちろん経産省さんの関心事でもあり、そういう研究会もこれから先へ進まれるんだろうと思いますけれども、ぜひ金融機関の立場から、こういうふうに使っていけるんだとか、あるいはこういうふうにエンゲージメントを行うんだという視点も次のフェーズの施策として盛り込んでいただければありがたいかなと申し上げておきたいと思います。
それから、ちょっと長くなってすみません。3つ目なんですけれども、気候変動の問題というのは、状況が改善しているわけでは全くなくて、二酸化炭素の大気中濃度も423でしたか、ちょっと正確には忘れましたが、ppmとして上がり続けています。その中で起こっている現象として、一つは株主提案のようなことにこの気候変動の問題がなっている。それからもう一つ、訴訟、これが世界で増えているということがあります。FSBが最初に気候変動のリスクの問題を議論したときに、あのときには損害賠償リスクというのが物理リスク、移行リスクと並んで入っていたんですが、あるところからそれは現実的じゃないということで消された。その背景について私は認識していませんけれども、気候関連の訴訟とか株主提案がどの程度出現しているかという世界の状況を、これは情報収集というレベルで構わないので金融庁さんにお願いしたいわけなんです。
何か具体的な議論をしたり、日本でそれらのガイダンスをつくるというところまではまだ時期尚早かと思いますけれども、情報収集をしてぜひ日本の金融機関にも共有していただけないかということを提案したいと思います。多分2050年に近づいて、状況が今のままだと、気候訴訟などは顕在化してくる、かつてのアメリカの土壌汚染だとかそういうものと同じような性質になってくる可能性はあると思っておりますので、御提案を申し上げたかった次第です。
それから、4つ目、先ほど御指摘のあった評価機関の在り方についての検討を3年前にやって、私も加わらせていただきましたけれども、そのときと今の最も大きな違いはAIの利用なんです。AIを使ってある企業の開示情報を調べろと言えば、いかようにでも出てきますし、A社とB社とどちらがどうですかなんていう相互比較の質問を生成AIに投げかけると回答が出てきちゃう時代になってきているわけですね。こういう状況に対して、評価機関が使うとき、どうあるべきかという議論があるでしょうし、運用機関の皆さんが使うということについての議論もあると思います。この辺りというのは欧州では議論がスタートしているようなことも聞いておりますけれども、ぜひ将来の課題としてこの評価機関のガイドラインの改訂のポイントとして押さえておいていただければありがたいかなと思います。
以上4点でございました。ありがとうございます。
【水口座長】
ありがとうございました。では、手塚さん、お願いいたします。
【手塚メンバー】
私の立場でこれを何かいろいろ申し上げるポイントはあんまりないんですけれども、1点、8ページと9ページに銀行さんのシナリオ分析が入っています。昨夜これを手に入れて全然読めておらずまだ咀嚼ができていないんですが、今この資料を御説明いただいた中でちょっと気がついたことをコメントいたします。
これ、定量的な分析をするということが目的ではなくて、感度分析というか、これから何が咀嚼できるかということを見て、その変化を見ることが目的だということで、今後それを議論していくと書かれているのはそれはそれでいいと思うんですけれども、実は非常に興味深いのが、シナリオ分析で1、2、3とあるわけですね。1は今までどおり何もしない、2は理想的な対策をあらゆる投資が行われて実現する、3は、2の場合だけれども、実は価格転嫁みたいなものが進まない、つまり、カーボンプライスが均等にシェアされず不均等にシェアされるというようなことが起きると、どういう悪さが起きるかということを検討しましたということと理解しました。
9ページでは、そのどのケースでも基本的には累積信用コストが増えていく、つまり、銀行に対する負担は増えていくんだけども、実は何もしないケース、灰色のケースのほうが累積信用コストはあんまり増えていかない。これは、要は、新しいことにいっぱいお金をかけないからリスクがたくさんかかってこないということを意味しているのかなという気がします。つまり理想的なことを赤色のようにやっていくとリスクが増えていきますよということかなと思います。ただし、うまくやらないと、青のようにもっとコストがかかりますよということを言っているんだと思うんですね。ただ、下のほうに書いてありますけれども、この累積信用コストの上昇というのは、平均的な純利益と比べてコントローラブルな範囲が入っているので、最終的には、前のページにあるようにGDPはこの赤い線あるいは青い線でやったときには日本のGDPを0.5%とか1%弱押し上げることになるのでいいことですよねということが書かれているように読めるんですが、私のこの解釈が間違っていたらまたちょっと別なんですけれども。
私が気になっているのは、問題はこの青と赤の違いというのは、8ページの右側にあるように、実際に脱炭素投資を行った際に非常に高コストになることはもう目に見えているんですけれども、これの価格を最終消費に転嫁できるかという問題について、この赤い線は、当初の想定どおりに転嫁できるということが各行の既定値と書いてあるんです。それは100%転嫁できるということです。青い線は、それが最初7割ぐらいしか転嫁できず、だんだん転嫁が進んでいくときと書いてあるんですね。ただ、肌感覚で我々、今実際にコストが上がっているグリーンスチール等の販売を試験的に始めたりしていますけれども、半分も転嫁できたらいいほうというところからスタートしています。ですからいわゆるカーボンフットプリントを下げた製品に100%プレミアムを乗せるための方式・施策として政策的なバックアップをしていただけないかということを経産省さんとか国土交通省さんとかといろいろ議論をしているという入り口にいる段階なので、青でも多分まだかなり楽観的な見方だという感じを持ちます。
そうだとすると何が起きるかというと、実は選択肢が8ページの左側のグラフにあるように、赤が理想的な姿なんですけれども、それでも最初は凹んでいるわけですね。つまり、そういう投資は事業会社側として行えない、あるいはそういう投資を行いたいといっても、実際に金融機関さんがそういうお金をつけてくださるのか、あるいは投資家がそういう投資を認めてくれるのかという結構入り口の部分で、3つのケースがあってこうですねというんじゃなくて、本当に青いシナリオに行くようなお金が出てくるのかという、こういう課題が実はあるんじゃないかと思います。事業会社から見ると、そういう課題があると解釈したくなるシナリオ分析だなと思って読みました。
さて、これをどういうふうに政策につなげていくのか、それこそがトランジション・ファイナンスの仕組みだと思うんですけれども、トランジション・ファイナンスにおける初期的な投資がどのようにこの環境の中でサポートされていかなければいけないのかということをぜひ考えていただけたらいいのかなというふうにこれを読んでいて思いました。
以上です。
【水口座長】
大変奥の深い分析ありがとうございました。おっしゃるとおり、移行リスクに関する信用コストですから、それは政策を取れば信用コストは高まる。しかも、転嫁できない可能性は高い。そのような、信用コストが高いところに金融機関がお金を出せるのかということですよね。
【手塚メンバー】
そういうことです。
【水口座長】
それはそのとおりだと思いつつ、従ってそこに何らかの政策をせよということだと思うんですけれども。
【手塚メンバー】
8ページのシナリオ3のところに何でこんな赤じゃなくて青になってしまうかということの理由は、企業の炭素価格負担の価格転嫁が円滑に進まない、それで収益が悪化するというようなことが書かれていますけれども、それを克服するすべが何なのかということを議論しないと、理想的な赤には多分行かないということです。
【林メンバー】
質問いいですか。私も何かこの絵がいまいちよく分からなくて、赤でスタートしても、青でスタートしても、最後はこれ、一緒になっちゃうのでしょうか。見方がよく分かっていないんですけれども。
【手塚メンバー】
これはGDPですから、投資が全部行われると、ちゃんと経済全体でお金はそれなりに回るということを意味しているのかなとは思いました。ただ、最初に自分のお金で投資を行った人、あるいはそこにお金をかけた人たちは、この図の赤なら最初の1年損するだけで済むんだけど、青だと4年間は七転八倒するということを言っている。
【林メンバー】
倒れないでいってねという感じですね。
【手塚メンバー】
ええ。それ以外のセクターに投資のメリットが多分波及するんですね。だから、青と赤がどこかで一致するんでしょうけれども、問題は青のケースの場合、最初の死の谷の4年間をどう乗り越えるのか。これは、実感として4年で済むとは思いにくいんですけれども、それを乗り越えるのかというのは物すごく大きな課題になってくる。
【林メンバー】
若干楽観的かもしれないですね。
【水口座長】
原理的に言うと、価格転嫁の部分、つまり、経済システムのほうで担保するのか、金融側のほうで死の谷を克服する何かお金を出すのかということですか。
【手塚メンバー】
それも含めてだと思います。
【水口座長】
岸上さん、お願いします。
【岸上メンバー】
ありがとうございます。先ほど1つコメントをし忘れてタイミングを見ていたら、ちょうどそこに戻っていただけたので、追加できたらと思います。シナリオ分析をあまり複雑にできないという課題もあると思いますが、地政学的なリスクによる気候変動のシナリオリスクへの影響が結構あるんじゃないかなと思います。地政学リスクによってシナリオが変わるということもあれば、気候変動が悪化することによって地政学リスクが高まってシナリオが変わっていくといったところもあると思いますが、結構その影響は大きいと思うので、地政学的なリスクを織り込んだ形でのシナリオ分析は行わなくてもよいのかなという、ちょっと素朴な疑問でした。
【藤井メンバー】
いいですか。
【水口座長】
藤井さん、お願いします。
【藤井メンバー】
すみません、私はもともとリスクマネジャーなので、シナリオ分析は得意なんですけれども、シナリオ分析をやるときには、何をそのままに置いて、何を変数とするかということがポイントになります。今の御指摘の例えば地政学を入れるとすると、そもそも景気循環とかそういったことも入れないといけない、と考え始めるともう収拾がつかなくなるので、金融庁さんと日銀さんがやられたシナリオ分析は、やはり他国の中央銀行、監督当局がやっているシナリオ分析も横目で見ながら、気候変動に関する特に炭素価格とかそういったものに限定して変数としたうえで、そこで信用コストがどう影響が出るかということにあえてフォーカスしているということだと理解をしております。
【水口座長】
ありがとうございます。もし金融庁からもコメントあれば。
【宮本マクロ・データ分析室参事官】
いろいろと御意見、御質問いただき、ありがとうございます。何点かコメントさせていただきます。
まず、8ページの右下の図でございますが、これは確かに少し分かりにくいんですけれども、グラフの軸をよく見ると、何も数値は書いておりません。これは上の赤線は100%ではなくて、各行が提出した数値です。そして、具体的な数値は申し上げられませんが、各行が設定しているのは必ずしも100%ではありません。それからさらに、1年目40%、2年目30%、3年目10%、4年目10%というストレスをかけるということです。そういうことで、まず事実関係としては100%ではなくて、スタート地点は各行が設定していることで理解していただければと思います。その上で、4年でこれというのは楽観的だとその御意見はまた別途あるとは思いますが、一旦はこの過程で行っています。
なお、シナリオ3は、シナリオ2を補正したシナリオと書いています。例えばGDPのパスなど最終的なパスが一緒であっても、その中で一定程度の振れ幅というのは許容されており、一通りには定まらなくて何パターンもありえます。その中の幅を取っているというイメージで理解いただければと思います。このようなシナリオのつくり方であるため、最後の期間では一致してしまうというところではございます。
あとは、この40%、30%、10%、10%という数値の水準については、転嫁率に関して具体的な数値はなかなか過去の数値も探して出てこないので、ある程度置きの数値になります。一方で、データは少ないのですが、過去のエネルギー価格上昇時の製品価格への転嫁に要した時間等は一応確認しながら設定はしています。いずれにせよ、今後もそういうデータの蓄積や分析をする必要があると考えています。ただ、いずれにせよ今回言いたかったのは、こういう重要なパラメーター等が変わることによって相応に影響度も変わるということです。このため影響感応度分析も含めて、例えばこれが40%でなくて50%だとどうかなど、感応度分析をやっていくことに意義があると考えています。
もう一つ、これに資金需要がつくのかという話もあったかと思います。これもややシナリオのどこまでを内生変数的に取るか、外生変数的に取るかという、シナリオ分析の枠組みのつくり方によるので、これはそういうものだというふうに御理解いただければと思います。一方でその問題提起自体はすごく認識していまして、今回9ページ目の右側の表の主な論点・課題の1の「(なお、機会に着目した分析の参考として、トランジション・ファイナンスに関する学術研究や参加行との対話、シナリオ分析のモデル化の一例を紹介)」と載せているように、別途政策的な話として考えていきたいと考えております。
地政学的リスクの件は、藤井委員がお応えしたか思いますので、私からは以上です。
【水口座長】
ありがとうございました。ほかにコメント、御意見等ありますでしょうか。よろしいでしょうかね。
いろいろと貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。頻度に関しても御意見いただいて、なかなか難しい問題ではありますが、御検討いただければと思います。
最後に、堀本さん、そして池田さんも何かコメントをいただければと思います。堀本さん、まず。
【堀本総審】
1年間、今事務年度もありがとうございました。おかげさまでサステナブルファイナンスに関する大きな考え方であったり、論点というのはいろいろな形で整理することができたと思います。ただ、この議論の中でも、皆さんのお話の中にもありましたとおり、この分野というのは新しいテーマが次々と出てくる可能性がありますので、やはりその状況を見ながら、また皆様に御意見いただくようなこともあるだろうと思いますので、そこはちょっとまた持ち帰って検討させていただきたいと思います。どうもありがとうございます。
【水口座長】
ありがとうございました。池田さんからもコメントお願いできますか。
【池田課長】
堀本の申し上げたことにあまり加えることもないんですが、この報告書のほうでもいろいろ触れられていますけれども、皆さん御指摘いただいたように、今サステナブルファイナンスは世界的にいろいろな動きがあって、日本をどうするのかというのを改めて示す上ではいい報告書になっているのではないかと思います。今、堀本が申し上げたようにいろいろなことが起きていく可能性もありますが、一方で停滞していくだろうなというのも事実ではありますので、そうした中で何をタイムリーにやるかということを今後考えていく必要があるんだなと思っております。この1年ありがとうございました。
【水口座長】
ありがとうございました。それでは、一旦ここまでにさせていただきたいと思います。また次回ちゃんとお会いできることを期待しておりますが、よろしくお願いします。お疲れさまでした。ありがとうございました。
―― 了 ――
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