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「サステナブルファイナンス有識者会議」(第30回)議事録
- 日時:令和8年6月23日(火曜日)13時00分~15時00分
- 会場:中央合同庁舎7号館 12階 共用第2特別会議室
【水口座長】
それでは、定刻となりましたので、ただいまよりサステナブルファイナンス有識者会議(第30回)を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。議論に入る前に、まずメンバーの一部変更がございましたので、御紹介させていただきます。
まず、全国銀行協会の黒澤様。それから、生命保険協会の髙尾様。そして、損害保険協会の堀様です。また、本日、オンライン出席ということで、日本証券業協会の木地様にも御参加いただいています。よろしくお願いいたします。
それでは、これから議事に入りたいと思います。本日は最初に事務局から、金融庁におけるサステナブルファイナンスの推進に関する足元の主な取組について御説明いただきまして、その御説明の内容も踏まえつつ、昨年の第五次報告書で示したとおり、サステナブルファイナンスの推進の意義を再確認していただくような大所高所からの御議論をいただければと考えております。
それでは、まず事務局から御説明をお願いします。
【髙岡サステナブルファイナンス推進室長】
事務局の金融庁サステナブルファイナンス推進室の髙岡でございます。本日も皆様、お忙しいところ、どうもありがとうございます。
では、最初に事務局からの説明としまして、私の方から、まず金融庁のサステナブルファイナンス推進の取組の全体像を概観した上で、サステナビリティ情報開示ですとか、人材育成、トランジション・ファイナンスに係る国際連携、インパクト投資、カーボン・クレジット市場といった、各テーマに関する足元の取組状況について御紹介させていただきます。
最後のスライドでは、「ご議論いただきたい事項」といたしまして御提示しておりますけれども、こちら、有識者の皆様における議論の材料として御活用いただければと思います。
具体的な内容の説明に入る前に、まず金融庁におけるサステナブルファイナンス推進に対するスタンスについて簡単に触れさせていただければと思います。昨年取りまとめた第五次報告書の記載内容から変わりなく、米国における政策変更ですとか、EUにおける規制の簡素化の動き、それから、中東はじめ国際情勢が緊迫化する中にあっても、金融庁といたしましては、企業・経済の持続的成長等、安定的な資産形成などによる国民の厚生の増大を目指すというミッションの下で、中長期的な投資リターンですとか、企業価値の向上の実現を目指す各経済主体の主体的な取組を支援するため、引き続きサステナブルファイナンスを推進していくという方針に変更はないということで取組を続けているというところでございます。
本日御説明する今事務年度における主な取組は、こうした方針の下で、金融庁として相応にリソースを割いて取り進めてきたものとなりますので、そういった観点から御説明を聞いていただければと思います。
それでは、お手元にございます事務局説明資料に沿って御説明させていただきます。表紙をめくりまして、右下1ページ目から入らせていただきます。こちらは金融庁におけるサステナブルファイナンス推進の全体像を示したものでございます。これまでは「市場制度の整備」、「幅広いステークホルダーへの浸透」、それから「分野別の投資環境整備」、そして「脱炭素に係る取組」の4つのカテゴリーで整理しておりましたけれども、今事務年度はこれを少し整理し直したものでございます。
まず大きな枠組みとしまして、「制度・枠組みの整備」と、「活性化に向けた深化・探索」の2本柱がございます。この2つを相互に連動させることで好循環を生み出し、持続可能な経済社会の実現を目指しているという形になります。
制度面では、SSBJ基準に基づく情報開示制度の構築ですとか、「ESG評価・データ提供機関に係る行動規範」の策定後の市場実態把握、カーボン・クレジット市場の健全な発展に向けた取組などを進めておるところでございます。また、気候関連金融リスクの管理ですとか、顧客の気候関連リスクへの対応支援に関しては、今事務年度は、当庁の気候関連リスクモニタリング室におきまして、風水害リスクに関する金融機関の取組の動向や課題について実態把握を行っておりまして、現在は、その結果について報告書として取りまとめを行っているところでございます。
そうした状況でございますので、誠に恐縮ですけれども、本日の事務局説明資料に盛り込むのがギリギリ間に合わなかったということで御容赦いただければと思います。報告書については近々公表を予定してございますので、公表後に是非御覧いただければと存じます。
一方、活性化に向けた施策といたしましては、「アジアGXコンソーシアム」を通じたASEAN域内におけるトランジション・ファイナンス案件の創出に向けた議論ですとか、インパクト投資の拡大に向けた官民対話の場の整備などに取り組んでおります。これらの取組によりまして、企業、投資家、金融機関、ESG評価機関など、多様なステークホルダーの連携を促進し、資金の流れをサステナブルな投融資へとシフトさせていき、新たな産業・社会構造への転換を促し、持続可能な経済社会の実現を目指していく、そのような全体像として整理させていただいております。
次のページ、右下2ページになります。こちらのスライドは、政府全体におけるサステナブルファイナンス推進の取組の一覧となります。金融庁のみならず、経済産業省や環境省など関係省庁が連携し、制度整備と市場形成の両面から取組を進めてございます。例えばカーボン・クレジット市場との関連では、経済産業省において排出量取引制度、いわゆるGX-ETSの本格稼働に向けて具体的な制度整備が進められております。
グリーン分野では、グリーンボンドガイドラインの改訂や、ネイチャーポジティブ、サーキュラーエコノミーといった新たな領域への広がりも見られるところでございます。
また、トランジション分野では、政府のGX経済移行債の資金充当先ですとかインパクトに関する報告が開始されておりますほか、基本指針の改訂、ADBやERIAと連携したAZECの枠組みの下でのプロジェクト推進に向けた取組なども進められております。
次のページ、右下3ページになります。こちらはサステナブルファイナンスの現状についてお示ししたものでございます。日本のサステナビリティ投資残高は2020年の約310兆円から、2025年には約672兆円へとおよそ2倍超に拡大してございます。これはESG投資の普及ですとか投資家の意識の変化、制度整備の進展などが背景にあるものと認識しているところです。また、グリーンボンドやソーシャルボンドなどの発行額についても、金利などの発行環境の変化による増減はございますけれども、一定の市場規模は維持されているといった状況にございます。いわゆるラベル債の市場においては、発行体も投資家も相応にリテラシーが高まってきていることを踏まえますと、今後は単なる量的拡大だけではなくて、どれだけ実質的な社会・環境改善につながっているのかということがより重要になってくるのではないかと考えておるところでございます。
次のページ、右下4ページ、お願いします。次に、サステナビリティ情報開示の制度について御説明いたします。金融庁では、2024年3月より、金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」におきまして、サステナビリティ開示基準に基づく情報開示と第三者保証のあり方について具体的な検討を行ってまいりました。これまで11回にわたり御議論いただき、今年1月に報告書を公表しているところでございます。
こちらのスライドはその報告書の内容をまとめたものでございます。まずSSBJ基準に基づく開示の義務化の方向性が示されてございます。対象は東証プライム市場の上場企業で、時価総額の多い企業から段階的に適用することとしております。具体的には時価総額3兆円以上の企業が2027年3月期から、1兆円以上は2028年、5,000億円以上は2029年と、段階的な適用となってございます。また、開示に加えまして第三者保証も導入されまして、開示の信頼性向上が図られることを企図してございます。保証は、適用開始の翌年から義務化されまして、当初は限定的な範囲での実施となります。
開示や保証の制度整備の背景といたしましては、国際的にISSB基準が整備されたことですとか、投資家による比較可能性の高い情報へのニーズが高まっているといったことが挙げられます。こうした制度改正によりまして、日本企業の情報開示の質が向上し、グローバル投資家との対話がより円滑になることが期待されるところでございます。この情報開示・保証制度を導入するために法改正を行うべく、今年の4月10日に「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」を国会に提出いたしまして、現在、引き続き国会において御審議いただいているところでございます。
次のページ、右下5ページが、こちらがサステナビリティ情報の第三者保証制度のより詳細な内容ですけれども、時間の都合もありますので、こちらの説明については割愛させていただければと思います。またお時間のある時にでも目を通していただけると幸いです。
次のページ、右下6ページになります。次に、「ESG評価・データ提供機関に係る行動規範」への市場関係者における対応状況などに関する実態把握について御説明いたします。この行動規範は2022年に策定されまして、ESG評価ですとかデータの質の向上を目的としてございます。特徴といたしましては、柔軟性を重視したプリンシプルベースでございまして、「コンプライ・オア・エクスプレイン」の形式を採用してございます。2026年5月時点で29社の評価・データ提供機関が賛同を表明しておるという状況でございます。
規範の内容といたしましては、品質確保、人材育成、独立性及び透明性の確保、守秘義務、企業とのコミュニケーションの6つの原則を提示してございます。本行動規範では、「3年後を目処に、本行動規範の改訂その他の更なる対応の要否等について検討」としておりまして、これを踏まえまして、今事務年度において市場実態を把握するべく、市場関係者に対するヒアリング等を実施したところでございます。
次のページ、7ページになります。こちらが実態把握の結果の概要となります。海外では、EUや英国で規制導入が進む一方、シンガポールや香港では行動規範型の対応が採用されているというところでございます。
各市場関係者について見ますと、ESG評価機関側では、評価手法の標準化や人材育成、透明性向上など、規範に沿った対応が進展していることが確認されました。
企業からは、ESG評価機関等の対応の改善を評価する声があった一方で、引き続き、評価手法の透明性やアンケート対応の負担などの観点から課題が挙げられているところでございます。
投資家におきましては、外部のESG評価の活用状況といったものは、現状、参考情報といった取扱いにとどまっておりまして、独自の分析や企業との対話が相対的に重視されているといったことが確認されました。また、ESGデータの精度向上へのニーズも指摘されているところでございます。
今回の実態把握を踏まえますと、投資家保護という観点からは、我が国における規制の導入ですとか、行動規範の改訂に関しては、現時点では慎重に検討を行う必要がある一方、ESG評価市場においては、依然、解消が期待される課題が残されていることも踏まえますと、市場関係者への本行動規範のさらなる浸透を企図しまして、各市場関係者による本行動規範への対応に関して参考となるような事例を実態把握結果とともに提示することが有用ではないかと考えておるところでございます。こちらの結果報告につきましては、6月末までに公表を予定しているところでございます。
次のページ、右下8ページでございます。こちらはサステナブルファイナンスに係る人材育成の現状と課題についてフォローアップを行ったものでございます。これまで金融庁では、スキルマップの策定ですとかアンケート調査などを通じて課題の把握を進めてまいりましたけれども、今般、そのフォローアップとして、対象は限定されますけれども、関係機関に対するヒアリングを実施いたしました。ヒアリングからは、研修や資格制度の充実が進んでいるほか、サステナビリティの視点を経営戦略にも組み込もうとする動きが進展しつつあるということもありまして、特に実務に直結した知識へのニーズが高まっているといったことがうかがわれました。
一方で、金融機関内では、サステナビリティ推進部門と現場との連携に課題が見られ、取組が現場に十分浸透していないというケースもあることが見受けられたところでございます。また、人材には専門知識だけではなくて、部門間調整ですとか対話を担う能力も求められているといったことが確認されました。
大学におきましても関心は高まっているところですけれども、学際的な教育体制の整備といったものには引き続き課題が残っているといったところも、うかがわれました。こうした状況を踏まえますと、組織横断的な人材育成と実務との接続といったことが今後の鍵となってくることが言えるのではないかと考えておるところでございます。
次のページ、右下9ページになります。こちらはヒアリングが示唆する金融機関におけるサステナブルファイナンスに係る人材育成の方向性について、概略をまとめたものでございます。ここで特に重要な点として示されているのは、サステナビリティの知識を金融・ビジネスにいかに結びつけ、戦略として実行できる人材を育成していくのかということに対するニーズの高まりでございます。こうした人材は、専門知識と実務理解を兼ね備え、経営戦略の策定と実行の両方に関与する役割を担うことが期待されているものだと思います。
人材は大きく3類型に整理されるのではないかと考えておりまして、専門人材、実行人材、そして、戦略推進人材の3つがここでお示ししておるところでございますけれども、人材育成の方向性としましては、戦略推進人材の育成がより重要になってきているということがうかがわれます。
育成手法としましては、中途採用や外部連携に加えまして、社内研修、部門間交流、営業経験者の登用などが具体的な取組として確認できました。また、重要なのは短期ではなく中長期的な視点で計画的に人材を育成することであると考えられます。
次のページ、右下10ページを御覧ください。こちらはトランジション・ファイナンスに関するものですけれども、トランジション・ファイナンスの推進に関しましては、足元では国際的にも、特にアジアに焦点を当てて取組を展開しているところでございます。アジア地域が世界の温室効果ガスのおよそ半分を占めていることですとか、今後の経済成長の見通しを踏まえますと、世界の脱炭素化に貢献し、成長機会を取り込むためには、アジアにおけるグリーン・トランスフォーメーション、いわゆるGX、GX投資を推進していくことが重要であると考えております。こうした観点からアジア地域においてトランジション・ファイナンスを推進すべく、金融庁とASEANの金融当局が主導する形で、ADB、GFANZ、それから、アジアで活動する金融機関の参画も得まして、アジアにおける事例などをベースに実務的な議論を行って、具体的なトランジション・ファイナンスの手法の形成ですとか案件組成につなげていくことを目的としまして、2024年10月に「アジアGXコンソーシアム」を設立したところでございます。
設立後は、実務担当者レベルでの会合を複数回開催いたしまして、アジアにおけるトランジション・ファイナンスの実施上のボトルネックの特定ですとか、実践上のポイントを明確化するための事例研究を進めておりまして、昨年の10月には東京でハイレベル会合を開催いたしまして、それまでの活動報告などを行っているところでございます。
次のページ、右下11ページです。次に、インパクト投資の推進に係る取組といたしまして、「インパクトコンソーシアム」について御説明いたします。この「インパクトコンソーシアム」は、水口座長に会長、そして、渋澤様には副会長を務めていただいているので、お二人には釈迦に説法というか、十分にご存知な内容ですけれども、このコンソーシアムは、投資家、企業、自治体、金融機関など多様な主体が参加する官民連携の枠組みでございまして、インパクト投資の機運醸成と裾野拡大という目的の下で活動を行っているものです。2026年5月末時点で、470を超える法人、個人の会員数を擁してございまして、官民の幅広い関係者の間で、知見、事例の共有を行いつつ、インパクト投資の担い手の拡大と実践の後押しにつなげるべく、「データ・指標」、「市場調査・形成」、「地域・実践」、「官民連携促進」というテーマ別に設けた4つの分科会が中心となって、様々な議論を進めているところでございます。
次のページ、右下12ページが、今申し上げた各分科会の今期の成果と来期の取組の方向性をお示ししたものでございます。各分科会において、去年の9月から本年6月に至るまで議論して取りまとめてきた内容と今後の方向性に関してですけれども、「データ・指標分科会」では、インパクト目標・指標を検討する際に参考となる「インパクト指標集」や「事例集」の整理を行ってございまして、来期は、この整理した指標集の実用性を検証するような実証事業といったものを行うことを予定してございます。
「市場調査・形成分科会」におきましては、インパクト評価・開示に関する事例研究を通じたインパクトと企業価値を接続する上での実務的な課題の整理を行ってございまして、来期は今期の成果を踏まえました議論の深掘りを行いまして、アセットオーナーのインパクト投資市場への参画促進などを後押ししていければということを考えておるところでございます。
「地域・実践分科会」におきましては、地域でのインパクト投資事例におけるファイナンス・スキームのポイントなどを盛り込んだ事例集の作成を行ってございまして、来期は、作成した事例集の普及と、さらなる有用事例の深掘りを予定してございます。
「官民連携促進分科会」におきましては、自治体とインパクトスタートアップとの連携を促進するための「実践ガイド」というものを策定しておりまして、これのさらなる活用に向けた改訂を今期行ってございます。来期は自治体とスタートアップの連携事例の創出に、一層取り組んでいくということを予定してございます。
インパクト投資市場の健全な発展に向けましては、政府としても引き続き環境整備などに努めてまいりますけれども、今後は、より一層、民主導での議論の活性化を図り、市場関係者における様々な創意工夫や取組につなげていくべく、インパクトコンソーシアム会長でもある水口先生をはじめ、関係各方面と、その運営の在り方について議論を進めていければと考えてございます。
また、この資料上にはないので恐縮ですけれども、インパクト投資推進に関連するその他の取組といたしまして、来事務年度におきましては、地域課題の解決と地域活性化に資する資金循環を創出する観点から、資金提供者と資金調達者の間の対話の円滑化を図り、必要な支援策が適切に講じられることを促すべく、中小企業庁と共同で事業が創出・発揮する地域経済のインパクトや事業性を考慮した投融資戦略・手法の導入に向けて参考となるようなガイダンスの取りまとめを検討することを予定してございます。
では、次のページ、右下13ページになりますが、ソーシャルボンド市場の実態把握について御説明いたします。ソーシャルボンドに関しましては、令和3年10月にガイドラインを策定してございまして、それ以来、市場動向について体系的に把握してこなかったことも踏まえまして、今般、外部委託も活用して国内外の市場動向について実態把握調査を行いました。
日本では発行額が2024年まで増加しておりまして、2025年はやや減少したものの、高水準を維持してございます。また、GSS、グリーン、ソーシャル、サステナビリティの略ですけれども、GSS債全体の中でソーシャルボンドの割合は相対的に高く、一定の存在感を持っている状況にあると考えております。
世界的には、コロナ禍で急増した後、緩やかに減少してございますけれども、依然として大きな市場規模を維持しているという状況にございます。地域別で見ますと、欧州や米国が中心となっておりますけれども、日本も一定のシェアを占めている状況となってございます。また、発行セクターについて見ますと、日本は公共交通機関が大宗を占めておりまして、世界では金融機関による発行が多くなっているという状況でございます。
次のページ、右下14ページになります。続いて、ソーシャルボンドの資金使途の内訳について見てみますと、日本では「手頃な価格の基本的インフラ整備」が中心でございまして、世界では「手頃な価格の住宅」ですとか「必要不可欠なサービスへのアクセス」が主流となってございます。国別の発行状況と特徴について見ますと、発行額はフランスが最多で、日本は第5位。テーマの特徴としましては、韓国、米国、ドイツ、英国、いずれでも「住宅供給支援」、いわゆるアフォーダブルハウジングといったものかと思われますけれども、そういったものが挙がってございます。日本について見ますと、多様な分野に投資が広がっているという点が特徴ではないかなと考えてございます。
次のページ、右下15ページになります。こちら最後に、海外におけるカーボン・クレジット市場の実態把握調査について概要を御説明いたします。この調査は、2027年度から取引開始が見込まれてございます排出量取引制度、GX-ETSに関して、GX2040ビジョンにおきまして、「市場における排出枠の余剰増加による価格低迷が起きた場合等には、将来的に、取引参加者の更なる拡大やデリバティブ取引の導入等を検討する」とされていることも踏まえまして、金融庁としても一定のストックテイキングを進めておく必要があろうという観点から、昨年6月に公表したカーボン・クレジットに関する検討会報告書の論点整理を深掘りするものとして実施したものでございます。
まずカーボン・クレジットの法的位置づけについてでございます。各国において公法上の統一的な定義といったものは整備されていないケースが多く、また金融商品として明確に位置づけている国は、今回の調査では確認されておりません。実務上は、私法の観点から、無形資産あるいは財産として取り扱われるケースが一般的となっているようです。
次に、会計上の整理ですけれども、こちらも国際的な統一基準というものは存在しておりませんで、実務的には保有目的によって分類が異なりまして、例えばオフセット目的であれば無形資産、売買目的であれば棚卸資産として処理される傾向があるようでございます。なお、米国では今後、環境資産としての新たな整理が導入される予定とのことでございます。
続いて、排出量取引制度、ETSにおける排出枠についてです。法的には、EU及び英国では金融商品として扱われている一方、米国やシンガポールではそのような整理はされてございません。一方で、会計上の扱いは、カーボン・クレジットと同様に保有目的に応じて無形資産か棚卸資産かに分かれているといったところでございます。
さらに、これらを原資産とするデリバティブについて見てみますと、各国とも他のデリバティブ商品と同様に金融規制の対象となってございます。つまり、現物の法的性質とは切り離して、取引の性質に基づいて金融商品として取り扱われている点が特徴ではないかなと思います。
最後に法規制の範囲ですけれども、カーボン・クレジットの創出から取引、オフセット、情報開示に至るまでの各段階におきまして、金融当局の直接的な規制対象とはなっていないケースが多いことが確認されました。例外的にEUのサステナビリティ報告指令が法令に基づく情報開示に適用されている点が挙げられるかと思います。
続きまして、右下16ページ、こちらは海外における市場実務の状況でございます。
まず、取引仲介者や売主の実務といたしましては、内部でデューデリジェンスプロセスを確立し、顧客への説明責任を果たすとともに、契約上もリスク管理に関する条項を整備している点が共通して見られました。また、格付情報の活用については、事業者ごとに差が見られるものの、顧客ニーズに応じて柔軟に取り入れられているといった状況でございます。
次に、取引所・取引インフラに関する事項のところです。市場の規律については、主要な取引所では顧客確認、利用規約への同意取付け、資本要件などの参加要件といったことが整備されてございまして、一定の参入規制が設けられてございます。特徴的なのは、個人投資家の参加が明示的または実質的に制限されているという点かと思います。
また、決済につきましては、中央清算機関、いわゆるCCPによる清算が中心となっておりまして、これにより取引の安全性が確保されている状況でございます。
品質管理の面では、外部機関の認証基準ですとか第三者による格付が活用されてございます。ただ、市場として最低基準を設定する方式と、十分な情報提供を前提に最終判断を参加者に委ねる方式の両方が存在しているという状況でございます。
さらに、商品の標準化についてですけれども、コンプライアンス用途では流動性向上や取引コスト削減の観点から標準化が有効である一方、ボランタリー市場におきましては、個別プロジェクトの内容を重視する傾向が強いため、標準化商品の需要は限定的であるといったことが確認されました。
最後に、クレジット買主における情報開示と調達方針についてでございます。英国及びシンガポールにおきましては、VCMI、Voluntary Carbon Markets Integrity Initiativeという国際イニシアチブですけれども、こういった国際イニシアチブに基づき、カーボン・クレジットの利用や情報開示に関するガイドラインが整備されていることが確認されました。これによって企業がどのようにクレジットを活用しているのかについての透明性向上が図られているといったところでございます。
また、企業の調達方針について見ますと、特に先進的な企業では、自然由来や炭素除去型のクレジットに重点が置かれるなど、質を重視した調達戦略といったものが明確化されている傾向が確認されたところでございます。
次、最後のページになりますけれども、こちらが本日の「ご議論いただきたい事項」となります。2点お示ししております。「現下の情勢におけるサステナブルファイナンスの意義等」についてと、そしてもう一つ、「足元の取組状況を踏まえた今後の課題」についてのこの2点でございます。これらについて有識者の皆様から御意見いただけましたら幸いです。
駆け足になってしまって大変恐縮ですけれども、事務局からの説明は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
【水口座長】
ありがとうございました。冒頭、アメリカやヨーロッパの情勢にかかわらず、金融庁として引き続きサステナブルファイナンスの推進という姿勢に変わりはないという大変強いお言葉をいただきました。今いただいた御説明に対する御意見、御質問もよいのですけども、本日はこの先、サステナブルファイナンスの意義について、そして、今後の課題についてということで、大所高所から御意見をいただければと考えております。
といいますのも、昨年まとめました第五次報告書のまとめのところでこのように書かれているということです。「折に触れてサステナブルファイナンスの推進の意義を再確認するような大局的・根源的な議論を行い、サステナブルファイナンスのモメンタムを維持するべく、時宜を得たメッセージを発信していくことが重要」と、こういうまとめを前回しておりまして、それを踏まえて、本日、皆様から御意見をいただきましたら、それをサステナブルファイナンス有識者会議の有識者からの意見という形で社会に発信していこうと、こういうことであります。
有識者会議からのメッセージを社会に発信する。そういう機会として皆様の御意見をまとめたいと、こういうことであります。金融庁から発信されるメッセージですので、非常に強いインパクトがあろうかと思います。市場関係者、それから、金融関係の皆様、さらには事業会社、そして、アカデミアまで、いろいろな方々が参照されるということになろうかと思いますので、そういう視点で、本日、大所高所からの御意見をいただければ大変幸いであります。
最初に、本日御欠席の林様から事前にコメントをあずかっておりますので、事務局から代読させていただきます。よろしくお願いします。
【髙岡サステナブルファイナンス推進室長】
それでは、事務局から、林様の御意見について代読をさせていただきます。
本日は株主総会と重なるため、参加できず申し訳ありません。以下のとおり、コメントさせていただきます。
1 現下の情勢認識とサステナブルファイナンスの意義
マクロ環境に関する情勢認識については、以下のとおりと理解しています。
- 地政学的リスクの上昇。予見不能な世界情勢。
- インフレリスク、サプライチェーンの途絶、エネルギー、食料などの脆弱性。
- AIに牽引される株価の上昇と金利の上昇(債券価格の低下、円安の進行など、市場のボラティリティの上昇)。
- AIの導入による社会構造の変化。
- 人口減少、地方の過疎化の進展。
- 減税、補助金を期待する声の高まり。
上記のとおり、我が国は多くの社会課題や不確定要因を抱えている中、真に持続可能な社会を実現するためには、官民協働でのサステナブルファイナンスの拡充の必要性が一層増している状況であると考えます。
2 今後の課題
サステナブルファイナンスの拡充が一層必要であり、中でも民間からの資金の流れが一層加速されるべきところ、むしろ、上記のマクロ情勢において、関係者の短期的な収益志向が高まって、ラベル付き債の発行減などにも示されているとおり、同ファイナンスが停滞を見せているように感じています。
サステナブルファイナンスは、これまで金融庁はじめ、各関係者がその推進のために様々な制度・枠組みの整備を行ってきており、結果として、事務局説明資料の2ページに示されたとおり、CT国債の発行をはじめとして、多くの成果物が生まれました。まずは事務局説明の2ページの右にある2026年7月以降実施予定の取組についても着実に進められることを期待します。
一方、上述のとおり、サステナブルファイナンスの停滞が見られる中、事務局説明資料2ページの下段にあるサステナブルファイナンスの活性化に向けた深化、中でも取組の浸透・人材育成、インパクト投資の促進が必須であると考えます。特に取組の浸透に関しては、政府及び各業界団体が協力して、幅広いステークホルダーへの効果的な発信を続けるとともに、その具体的手法についての議論を深めることが極めて重要であると考えます。その場としての、本会合の活用を御検討いただければと存じます。
以上。
【水口座長】
ありがとうございました。というわけで、林様からの御意見をいただきました。
ここからは自由討論ということで、活発に議論いただければと思っているのですが、ここで皆様が話し始めると、私が意見を言えなくなってしまうので、私が口火を切らせていただきたいと思います。
ということで、まず私の意見を述べさせていただきますと、サステナブルファイナンスの拡大が大事だというのはそのとおりですが、より重要なことは、どういうサステナブルファイナンスを推進するのかということだと思います。サステナブルファイナンスの中身を考えることが大事だと思っています。GXですとか、インパクトファイナンスなど、非常に進んでいる面はあって、これは大変喜ばしいと思っております。
一方で、リスクも高まっています。気候変動も問題ですし、ネイチャーポジティブも問題です。そして、経済的な格差が拡大することで民主主義が壊れ始めている。特に日本では人口減少が地域の疲弊を招いている。他方で、AIの発展が働き方を大きく変えるなど、非常に様々な課題があって、これらの課題が互いに結びついて全体を複雑にしている。
例えば、経済格差の拡大が社会的な不安を煽り、それがポピュリズムにつながって、国際的な協調が阻害されると、気候変動問題の解決を難しくするというように、これらは全てシステミックにつながっている問題だと考えられます。したがって、投資行動の面でもそれを明示的に考慮して、システミックに物事を考えていくシステムレベル投資がこれからは必要なのだろうと考えています。
システムレベル投資という考え方は、目先の短期的な企業利益だとか、企業価値の向上ということだけではなくて、もちろん企業価値の向上は重要ですが、それだけではなくて、目先のアルファを超えて、市場全体の底上げをする。つまり、ベータを高めていくような、そういうことを考える投資です。システムレベルのリスクを考慮し、ベータを底上げしていくということは、結局、市場関係者や金融関係者の全体の利益につながるわけです。この金融資本市場と社会全体の利益のために、金融そのものの考え方を変えていくということが必要なのだろうと思います。
ところが、私たちは既存のファイナンス理論に縛られているので、どうしてもアルファを中心にして、個々の投資行動では市場平均リターンは変えられないという前提に立った投資行動を取りがちです。この金融の常識も変える、そして、ベータに働きかけていくような新しいタイプの金融というものを、例えば金融教育やファイナンス理論の中に組み込み、そして、投資行動の中にも組み込んでいく必要があるのではないかというのが私の意見です。
ここから先は皆様に自由に発言していただければと思います。早速お手を挙げていただきましたので、吉田様、お願いいたします。
【吉田メンバー】
日本取引所グループの吉田でございます。外国回りをするのが仕事でございまして、去年、ロンドン、パリ、ミラノ、ルクセンブルク、イスタンブール、ドバイで、投資家とデータサービスベンダーの方々といろいろ話をしてまいりましたので、議論の間口を広げるという意味で、そのときの印象論みたいなものを皆様と共有させていただければと思っております。林様から話がありましたが、サステナブルファイナンスが沈滞化しているかというと、そういう印象は必ずしもなく、逆に、問題意識が多様化しているなという印象を非常に持ちました。そういう意味では、今、水口座長がおっしゃったシステムレベルでいろいろ考えていく必要があるというのは全くそのとおりだと思います。
それで、まず一つは、グリーンや気候変動でありますけども、投資家の話を聞いてみますと、もうアセットクラスとして既に確立してしまっているので後退することはあり得ないですし、投資意欲も相当程度のものがあったと感じています。加えて、日本の企業についても情報開示は相当程度進んでいるので、さらにこれ以上深掘りするという必要性は必ずしもないのではないかという話がございました。他方で、比較可能性について若干、今後、新しいインプットが必要だなという話がございまして、当然、SSBJの基準もできまして、これから情報開示が進んでいくことはよく認識されていたので、これについては取引所に対する要望ではございますが、開示された情報を、全体像を把握した上で、例えばマッピングであるとか、ベンチマーキングであるようなサービスを提供して、企業価値向上のためにつなげてもらったらどうかというような話がありました。
それからもう一つは、情報開示の中で投資家からあったのは、できるだけAIフレンドリーな情報開示をしてくれと、要するに、AIで読み込みやすいフォーマットということだと思いますが、そんな話がございました。
それからもう一つは、その既存のデータベンダーさんと我々も、先ほど言ったベンチマーキングとかの意味でいろいろな協業をしたいなと思って話をしてきているのですけれども、かなり過当競争が進んでいて、もう相当程度集約されていると。今、彼らの関心はどちらかというとグリーンの世界からネイチャーの世界、平等社会関連という方向にシフトしてきている。それは地政学的な背景が当然あって、これが2つ目の問題意識ですけども、生物多様性と、それから、ネイチャーについては水に対する関心があった。恐らく、イラン紛争で淡水化プラントが攻撃を受けたということもあるのだと思うのですけども。他方で、海洋資源もあるという意味で、日本が今後、水関連のデータベースの上でリードしていくのではないかという非常に強い関心が寄せられました。
加えて、ヨーロッパで感じたのは、ウクライナとかいろいろあって、人権意識の高まりで、あとは平等とか社会関連のところで、TISFDの作業が始まりましたけど、まさに先ほど水口座長のおっしゃったような社会不安が、全体としてのサステナビリティの深化であるとか進展に対して水を差しているという局面が多分あるのだろうなと思います。
3点目は、ディフェンスの話で、これは従来当たり前だと思っていた定義自体が、侵食されてきているという非常に危機意識があって、防衛産業については、ヨーロッパの中では明確に禁止されている対人地雷であるとかクラスター爆弾とか生物化学兵器以外の分野は何となく容認する雰囲気があって、これに対しては相当の危機感がございました。
それともう一つ、先ほどのAIの絡みで出てきたのは、今、ウクライナ、イランのときもそうだったのでしょうけれども、指揮命令系統の中でAIを活用していく。AIの判断に人間の生命が委ねられてしまうということについてどう考えるか。そういう意味で、人間の安全保障と言うのですかね。人間の本質に関わって、その生命をどうやって保全していくのかという非常に大きな問題意識がヨーロッパの人たちには芽生え始めているなという感じがありました。それは多分、一つにはローマ法王がAIを規制しなきゃいかんと言っていることも軌を一にしているのだと。
最後に、ちょっと面白かったエピソードを一つお話ししたいと思うのは、ある投資家と話していた際に、AIを活用したIRビジネスを展開したいと思うのだけれども、どうかと。要するに、投資家の皆様が相手企業に対して質問したいことをAIに投げると、AIはそれを全部項目別に並べてくれて、それを企業側に投げると。今度、企業側のほうは質問されたものに対して、AIを通してそれに回答すると。そういうモジュールを提供したらどうかと思うのだけど、どうかと聞かれたのです。そうすると、そもそもインプットするほうもAIがやって、結局、最終的に回答したものを、それをもう1回、AIにフィードバックする形で、真ん中がブラックホールみたいなことになって、ただ単に電力消費が進むだけではないかと。最終的にはサマリーみたいなものを読んで、本質的に問題になるようなことは、ひょっとしたらブラックボックスの中に隠れてしまうかもしれません。
ですから、何を申し上げたいかというと、AIの話がここまで来たのは、ひょっとすると、システム思考の世界の中でそういう問題が出てくるかもしれませんけど、サステナビリティの実現自身にも、電力消費の話もありますし、そもそも人間が全くそこから疎外された状況になってしまうことについて、サステナビリティという中で位置づけるのかどうかというのはまたありますけれども、一つの課題であるのかなと思いました。
以上になります。
【水口座長】
ありがとうございます。AIと防衛の話をどう考えていいのか、本当に難しいところですよね。ありがとうございました。
それでは、藤井様、渋澤様、足達様という順番で行きたいと思います。藤井様からお願いします。
【藤井メンバー】
ありがとうございます。余談から入りたいのですけども、今、吉田様からヨーロッパでの安全保障の話がございました。国際金融協会がコロナ明け以降、毎年春にヨーロピアンサミットという会議をしておりまして、私は毎年参加しているのですけども、2023年、24年は、アジェンダの8割、9割がサステナビリティでありました。一方で、今年の3月に開催されたヨーロピアンサミットのアジェンダは、ほぼほぼ安全保障、国防関連でありまして、サステナビリティのアジェンダは一つもなく、ノルウェーの財務省長官が、ノルウェーの水力発電の優位性についてコメントをしていたのが唯一のサステナ関連でした、それぐらいにヨーロッパでは安全保障がトップアジェンダになっているということ、ちょっとこれは余談でございます。
コメントに入りたいと思います。まず現下の情勢におけるサステナブルファイナンスの意義についてということで、現下の情勢を何と考えるのかという点はあるわけですが、昨年の五次報告書を検討した時点で、既に第二次トランプ政権は始まっておりましたし、反ESGの動きもあったし、関税問題も認識されていたということでございますので、その後の動きということを考えますと、やはり地政学リスクの高まりに伴った安全保障問題、とりわけイラン紛争以降のエネルギー安全保障の短期的な確保と、さらにAI導入に係る電力需要の急増ということで、脱炭素あるいはGHGの削減というのは容易に進まない状況であることを現下の情勢として認識しております。
そもそも気候変動において、移行リスクと物理的リスクというのは天秤状態にありますから、GHGの軽減を図る移行対応が進まないと物理的リスクが高まるということになります。結果といたしまして、異常気象の事象が日に日に悪化しているというのは、我々だけではなくて、全世界で認識していることだと思います。
そういう意味では、中長期的な軽減施策もさることながら、より短期的な適応施策、ミティゲーションからアダプテーションといったところは、その重要性についてより切迫感が出てきているということだと思います。その意味で、適応ファイナンスも含めたサステナブルファイナンスの意義というのは、必要性においても、緊急性においても、意義が非常に高まっていると認識しております。こちらが1点目についてのコメントになります。
一方で2つ目の、取組状況を踏まえた今後の課題というところですけれども、2ページ目に御説明いただいた取組が非常に着実に進んでいるということを確認させていただきまして、ここは本当にお礼申し上げたいと思います。その上で、ここでの取組の項目は、基本的には軽減施策を出発点とした政策のミックス、あるいはロードマップということだったと思います。そこに、今、より緊急性も高まっているアダプテーション、適応施策として何が必要かといったところを言わばサステナブルリスクのデモグラフィックな変化と考えて取り組む必要があるのではないかと思います。
先ほど吉田様から、水のリスクという話がございましたが、今月、OECDが農業における水リスクに係る政策提言の報告書を公表しています。この中では、農業に対する水のリスクというのは、洪水とか干ばつといったような災害対応としてだけではなくて、例えば水の水質問題といったより社会的な影響も含めた包括的な政策対応が必要だと提言しています。サステナブルファイナンスにおける取組も、軽減から適応へという、言わば質のデモグラフィックな変化を取り込んで、包括的な、水口先生のお言葉をかりれば、システムワイドな変化を織り込んで取り組んでいく必要があるのではないかと思いましたので、コメントとして申し上げます。ありがとうございました。
【水口座長】
ありがとうございました。それでは、渋澤様、足達様、そして、長谷川様、黒澤様という順番で行きたいと思います。渋澤様、お願いします。
【渋澤メンバー】
ありがとうございます。4点について手短に申し上げます。
1点目:ISSBにつきまして、この数年間は小森氏が理事として活躍されていましたが、今回退任されるとのことです。次の理事を日本から輩出できるのかという点を懸念しております。予算の関係で理事数が絞られるとの話も伺っておりますが、SSBJの基準適用スケジュールが公表された今、ISSBに対し「日本はもう十分だ」と受け取られないよう、金融庁から日本人理事の選任をぜひ後押しいただきたいと考えております。
2点目:ESGという言葉がブランド化している点について申し上げます。先月、日経新聞で「政府発行のESG債急増」という見出しが掲載されました。また、直近では、ある県庁が発行するESG債のプロモーションとして、知事との対談依頼を受けました。私自身、ESGが否定されているアメリカが駄目だから日本も駄目という必要はないと考えています。一方で、欧米でESGの潮流が変化しているにもかかわらず、国内ではESGという言葉が一般に浸透しているため、そのまま使い続けることに違和感を覚えています。
ESG債の幹事会社の説明では、国内投資家向けであるため現状の呼称を用いているとのことでしたが、国内の個人など一般投資家の中にも海外の潮流を理解している方は多く、下手をするとガラパゴス化する懸念があります。私の理解では、ESGはもともと民間企業の行動変容を促すため、投資家や政府がディスクロージャー規制を整備したことが起源です。ただ、政府や自治体は本来、環境・社会分野で取り組むことが当然です。ESG債と呼びつつも一般財源ではなく目的財源であるという点は理解できますが、整理が必要ではないかと考えます。
また、ESG評価という言葉が使われていますが、もしそれをESG債と呼ぶのであれば、ESGの6原則に沿って発行しているかというと、必ずしもそうではありません。先ほどの日経新聞のESG債のデータソースはLondon Stock Exchange Groupのレポートですが、同レポートにはESG債という表現はなく、GSS債と記載されています。日本が時代遅れとならないよう、言葉やブランディングの整理が必要ではないかと考えるのが2点目です。
3点目:最近、知人のサステナビリティ関連コンサルタントから仕事量が以前より減っていると聞きました。これは悪いことではなく、企業側が「自社のビジネスリスクとどう結びつくのか」という点によりフォーカスし始めているためだと理解しています。その中で、企業がサステナビリティという言葉を使うと、「外部不経済への対応」という意味合いが強くなり、サステナビリティ部門が外部課題を扱うものというメンタルモデルになっているように思います。
私は、サステナビリティという言葉を変えるべきだと言うつもりはありませんが、企業がその重要性を語る際のナラティブとして、「レジリエンス」をより重視すべきだと考えています。リスクに適切に対応することで企業のレジリエンスを高めることができ、これは経営トップだけでなく、サステナビリティ部門、サプライチェーン、総務、人事など、組織全体が関わる概念です。サステナビリティの中にレジリエンスという概念をより組み込むことを、今後検討いただきたいと考えています。
そうすることで、経済安全保障や国土強靱化といった現在の政策潮流とも接続できる可能性があります。これはシステムレベルの議論ではなく企業レベルの議論であり、水口座長のご指摘と逆のように聞こえるかもしれませんが、実際にはそうではなく、個別企業にレジリエンスがなければシステムとしてのサステナビリティは成立しないと考えます。これは「オア」ではなく「アンド」の関係です。
4点目:最後に、骨太方針について申し上げます。現在、さまざまな調整が進んでいると承知していますが、その中で17事業分野が中心的に取り上げられると見込まれます。その際、サステナブルファイナンスがどのように位置づけられているのか、差し支えない範囲で教えていただければ幸いです。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。骨太の話とか分かりますか。
【髙岡サステナブルファイナンス推進室長】
まだ閣議決定されていない段階ですので、内容については差し控えさせていただけると幸いです。
【水口座長】
ありがとうございました。足達様、長谷川様、黒澤様の次に井口様、お願いします。井口様、すみませんでした。私がよく見えていなかったのですけれども、足達様、長谷川様、黒澤様、そして、井口様、小野塚様、髙尾様、岸上様、そして、吉高様という順番でいきたいと思います。では、足達様、お願いします。
【足達メンバー】
ありがとうございます。私は実務的なベースで、まず情報共有ということで皆様にお知らせしたいことがあります。私が関係しておりますISOのサステナブルファイナンスの技術委員会、この1年の動きということを紹介したいと思います。
6月に、金融機関のネットゼロのための国際規格というのが、国際金融協会の猛烈な反対を押し切って、発行されております。イギリスが主導したのですけれども、金融機関のネットゼロということについての熱意もまだ消えてはいないということをまずお伝えしておきたいと思います。
そして、もう一つ、3月にできた規格がサステナブルファイナンスのプロダクト・アンド・サービスという規格です。これには融資であるとか、補償であるとかそういうことが入っているのですけれど、この中にデジタルアセットという1項目が立ちました。ISOでは、イギリス、中国、シンガポール辺りが非常に牽引していますが、サステナブルファイナンスの領域とデジタルファイナンスとかフィンテック領域との統合をされた将来像を先導していこうという動きが非常に顕著でございます。例えば今の開発中の規格にも、データモデル・フォー・カーボン・マーケットというものがあります。カーボン・クレジットのマーケットでやり取りをする、その裏づけをきちんと取るためのデータモジュールの規格化を進めようとするものです。それから、もう一つ開発中のもので、インフォメーションテクノロジー・アンド・ユースケースというものがあります。情報技術と、それをうまく活用したサステナブルファイナンスの事例集のようなものを作ろうと、こういう動きが活発化しています。
巡航速度でこの有識者会議は動いているというご説明で、この間、何もやっていないというわけではないというのは大変、よく分かったのですけれども、一つぐらい、次の事務年度で新しいことがあってもいいのかなと思います。デジタルアセット、これにはAIも含みますけれども、こことサステナブルファイナンスの重複領域、インテグレートされた領域というのが今後、世界で物すごいスピードで進みそうな予感があります。ここのところにフォーカスを当てて、日本は何ができるのか、あるいは先ほどカーボン・クレジットのところもまだ日本の金融商品としての扱いというのが非常にファジーですけれども、この辺りもある一定の方向性を示すことに意味があるのではないかと思います。
若干脱線ですけど、台湾の大学の仕事を去年から兼業で受けています。この大学は、年間に60人、デジタル・アンド・サステナブルファイナンス学科という大学院、MBAコースをつくっています。国立大学です。その60人のうち半数は金融機関からの派遣で、費用は全部金融機関持ちです。そういう国を挙げての金融人材教育をやっているということも皆様に事例として共有させていただければと思います。
もう一つだけ申し上げたいのは、先般4月でしたけれども、日本の大企業、グローバル企業が、サステナビリティのイシューを基にアクティビストから株主提案を受けたという事例がありました。事業会社のサステナブル担当者の皆さんには一種の衝撃が走っております。他方で、サステナビリティの問題が企業価値と連携して投資家に取り上げられているという証でもある。企業の経営の中核に、サステナビリティ課題が入ってくる状況になってきたというふうに、ポジティブに解釈をすれば、そういう出来事だと思います。
この会社は、長らくESG評価機関の評価で言えば、大変優れたパフォーマンスを残しておられる会社でありまして、そういう会社が、非難の対象もしくは、問題視の対象になるというのは日本にとって非常に残念なことだなと私は思います。NISAの普及というのは、足元まで非常に成功裏に進んできたと思いますし、株価もこういう状況であるということで、非常に評価できる話だと思うのですけれども、やはり日本の国民なり、一人一人がそういう非財務側面の情報も知って、企業の株に投資するというパスをつくるということも大事です。ある意味では、日本の優良企業を守るということでもあり、きちんと支持されているということの証になるということでもあります、グローバルなマーケットに向けての一つのメッセージになりうると思います。
NISAの活用というのは、今まではサステナブルファイナンスとは全く切り離されて、金融行政の中で行われてきたのですけれども、そろそろそれを統合して、勿論、政府が市場に介入するという意味ではないのですけれども、日本企業の強さとしてアピールするような道筋を考えていくということも、2つ目の今後の課題として御提案を申し上げたいと思います。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございました。並んでいるので、長谷川様、黒澤様、井口様、小野塚様、髙尾様、岸上様、吉高様、堀様、手塚様、木地様という順番で、全員理解しておりますのでということを申し上げた上で、では、長谷川様、お願いします。
【長谷川メンバー】
まず、現下の情勢におけるサステナブルファイナンスをどう捉えているか、ということですが、既に皆様が御発言になったとおり、一律ではなくなってきており、かつテーマも多様化していると考えています。ヨーロッパの状況は皆様御存じだと思うのですが、アメリカも、トランプ政権の反ESG、DEI政策のもと、ESGという言葉は非常に政治的に使いづらくなっており、テキサスやフロリダ州など一部の州では、反ESG法ともいえる法律も成立しています。他方カリフォルニア州などのブルー・ステイツでは相変わらず年金基金などが中心になって、ESG投資を協力に推進している。また、システムレベルでのリスクに着目した投資を推進する動きもあり、アメリカの状況は一律ではない。また、テーマについても、水口先生がおっしゃったとおり、エネルギー安全保障やレジリエンスから、トランジション、そして、アダプテーションというように広がってきている。また、自然資本・ネイチャーへの投資も広がってきていると思っています。今後、TNFDのガイダンスの公開素案が公表されて、それがISSBにも一部取り入れられるという動きもありますので、TNFDのアーリーアダプターの企業数は既に日本が一番多いのですけれども、今後、自然分野のテーマへの投資は、さらに大きくなっていくのではないかと考えています。
今後の課題については、インパクト投融資をさらに推進する必要があると思っています。その上でインパクトコンソーシアムの活動は非常に重要であって、今後もぜひ続けていただきたいと思います。他方、経団連でもインパクト投融資ワーキング・グループを立ち上げて、事業会社の方々を中心に、インパクト測定、管理のベストプラクティスの共有や、事業・サービスのインパクトを価値創造ストーリー、エクイティストーリーにどのように反映、統合させていったら良いのかといったことをこの2年近く検討していますが、やはり個別企業レベルで、大きな効果、インパクトを示すのは難しいと実感しております。
そういったところで、水口先生が最初におっしゃったこととも通じるのですが、やはりシステムレベルでの課題を解決するためには、インベストメントチェーン全体での取組が必要であって、特に機関投資家、アセットオーナーの役割は大きいのではないかと思います。サステナブルファイナンスを推進していく上での事業会社の役割は、経団連のワーキング・グループでもずっと検討していて、それは、企業のパーパスに沿って、中長期的な社会課題の解決に貢献できる事業を行うことである、ということで、各社が取り組んでいるのですが、そうであれば、機関投資家としての社会に対する責任や生態系も含めた地球環境に対する責任は何かといった視点も必要ではないかと。それがユニバーサルオーナーとしての役割という視点にもつながってくるのではないかと考えます。そういった観点から、何らか、アセットオーナーから運用会社へのインセンティブの提供なども含めて、インパクト投資を推進するための取組があると良いのではと感じております。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。アセットオーナーの役割、大事ですよねと言いながら、髙尾様、お願いします。
【髙尾メンバー】
その自覚を持ちながらということですが、今の状況認識を踏まえたサステナブルファイナンスの意義について、確かにサステナブルファイナンスの射程はすごく広がってきており、社会にしても企業にしても、サステナビリティというと構成要素が非常に多く、多岐にわたっていくと思います。他方で、もともと課題の中心にあった、いわゆる温暖化対策、GHGをどう抑制していくのかという点が非常に重要な問題だと思っていまして、昨今、欧米の中で、この問題については若干揺らぎが見えているというか、我々、背中を追いかけていたつもりが、気がついたらオフサイドトラップに引っかかって前に出ているみたいな印象もなくはない。
ただ、この問題は、本当に地球温暖化が、温室効果ガスが原因で起きているという前提に立つのであれば、為政者の交代だとか、政治体制が変わったタイミングで、では、やろうかと取組を進めても短期間で結果が出るものではないので、やはり愚直にやり続けていくべきだと考えています。そういう意味では、冒頭、髙岡室長の力強いお言葉をいただいていたのですけども、このサステナブルファイナンスの取組については、日本が政府の強力な旗振りの下で、ぶれずに官民一体となって取組を推進していくことが、国内のみならず、将来的には国際的な課題解決の中でも大きな意味をなしてくると思いますので、ここは我々もしっかり取り組んでまいりたいなと思っています。
そういった中で、課題として、機関投資家の立場という意味で、非常に勝手な部分もあるのかもしれないのですけど、プリミティブな話として、やはり投資対象がどれだけの厚みを持っていくかというのが非常に大事かなと思っています。フレームワークについては、冒頭、髙岡室長からいろいろ御説明もいただいて、かなり整備されてきていますし、情報開示の枠組みもできてきていると思うので、あとはそういうものを踏まえて、どれだけ実際に投資すべき案件の厚みができてくるかということと、それに我々がどう投資していくかが重要になってくると考えています。また、これも冒頭お話ありましたけど、その結果に対する評価というか、開示みたいなものがより充実していくのが望ましいと思っていまして、我々も自分のお金で投資しているわけではなく、生命保険会社であれば契約者様のお金をお預かりして投資していくので、その中でサステナブルファイナンスとして投資したことが、実際に世の中をどういうふうに良くすることにつながっているのかということを、資金の出し手であるステークホルダーに理解していただくことが、非常に重要だと思っています。それを理解いただければ、恐らくお客様のほうから、そうした案件に投資していけというような背中を押される部分もあると思いますし、それが分からないと、純粋にパフォーマンスみたいなところに流れていく部分もあるのかなと思いますので、そういったところをしっかり我々としても一緒に協力していきながら、機関投資家として本来のサステナブルファイナンスの目的というか、世の中をサステナブルにしていくための循環をうまく回していくという役割を果たしていけたらなと思っています。
【水口座長】
ありがとうございます。では、井口様、お待たせしました。井口様、お願いします。
【井口メンバー】
本日はオンラインで申し訳ございません。最初のポイントで言うと、皆様がおっしゃったように、かなり多様になってきているなとは思っております。環境だけではなくなってきたということかと思います。ただ、サステナブルファイナンスのファイナンスという言葉がついた場合にリターンというのは、特に資本市場と絞ったとき、これを抜きには語れないと思っております。これがなければ、小さな部分で動くと思うのですけど、資本市場全体で見たときには物事が動かなくなると思います。なので、多様なサステナビリティをビジネスとかリターンに落としていくかということが非常に重要になってくると思います。そのためには、今、皆様がおっしゃったような様々なサステナビリティの事象が起こっているのだという理解があった上で、リターンにどのようにつなげていくのかということができる人材が必要になってくると思います。これは、事務局資料で言いますと、人材の育成になると思いますが、今後、ここが非常に大事だと思っています。
私は日本証券アナリスト協会でも積極的に人材育成の活動をやっておるのですが、例えば、渋澤委員がおっしゃったISSB基準で言うと、現状、サステナビリティの情報を誰が消化しているかというと、多くはESGスペシャリストの方が、御興味があって、そういう方を中心にやっている。ただ、そのような人たちは、運用の意思決定をやっていないと、こういったねじれが投資家の方で生じましていますし、企業さんの方でも、サステナ部門だけでなく、それを会社全体の経営にまでどう取り込んでいくか、という課題があると思います。
サステナブルファイナンスや開示はこの5、6年で、先ほど事務局資料でもありましたように急激に広がっており、枠組みも急激にできたので、今後の課題というのは、しっかり定着していくような仕組み作りだと思います。そのためには人材の育成というのが非常に重要になってくるのではないかと思っております。
短いですが、以上でございます。ありがとうございました。
【水口座長】
ありがとうございました。すみません。私、順番を間違えましたね。黒澤様、失礼しました。お願いします。
【黒澤メンバー】
ありがとうございます。全国銀行協会、みずほ銀行、黒澤でございます。よろしくお願いします。
サステナブルファイナンスの意義ということですが、皆様からも御指摘ありますとおり、足元、課題というのが非常に広がっていまして、大きく言うと地球環境保全と成長と社会の安定みたいなことを、バランスを変えながら、いろいろな形で課題が現れているということではないかと思っています。ただ、その中でも、引き続きサステナブルファイナンスというものにつきましては、積極的な資金供給を通じて、企業の社会課題の対応を支援することで、その成長や価値向上を実現する上で引き続き重要な役割を果たすと考えています。
全銀協としては、2021年12月にカーボンニュートラルの実現に向けた全銀協イニシアティブというものを策定していまして、年次で更新していますけれども、裾野拡大というものが重点分野の一つということではないかと思っていまして、一つの現れとしては、会員行向けの勉強会ですとかコミュニケーションツールの作成を通じて、知見向上を行ったり、情報発信をするということもやってきているということです。
個別行の私ども、みずほとしても、今申し上げたように、いろいろな課題が複雑に絡み合っている中で、単純なグリーンの領域だけではなくて、トランジションに資するファイナンス等ということも通じて、実体経済の着実な移行を支えていくということも一つの大きな役割であると考えておりますし、先ほど出てきたインパクトファイナンスといったものについても、新たな切り口で、先ほどの裾野拡大という意味では、商品を広げていくということについても非常に重要な役割だと思っていまして、そこに努めているところでございます。
課題のほうですけれども、人材とファイナンス両方あります。人材については、先ほど事務局からも御指摘ありましたけれども、現場への動機づけや実務への落とし込みというところに課題が見られるという点でお示しいただきましたが、現場という点については、サステナに関する対話をお客様への一過性の提案という形ではなくて、継続的にちゃんとお話をして、しっかり事業やビジネス実態の把握をしていくということが大事なのだろうと思っていますので、関連情報を整理して、現場が必要な知見を使いやすくするということ、お客様に接する部門以外含めて、サステナという問題について自分事として捉える機会を広げていくことが必要であると思っています。
それから、サステナブルファイナンスの裾野拡大という意味については2つありまして、一つは、そうは言っても、お客様サイドで外部評価ですとかモニタリング等の負担があるというのも事実ですので、私ども、みずほの個別行の取組ですけれども、銀行サイドでの評価のフレームワークを使って、お客様の取組を確認できるような商品を拡販するというような取組をしているというところでございますし、先ほど幾つか御指摘ありましたけれども、新しいものとして、適応ファイナンスの発展ということにつきましても、気候変動に伴ういろいろな物理的なリスクへの関心が高まる中、レジリエンス向上を目指したような資金調達の事例も少しずつ出てきているということだと思っていますが、本ファイナンスについては、市場がまだ限定的ですので、評価手法ですとか、ファイナンスのフレームワークの整理というものについても今後の課題と考えています。
こうやって新しい課題やお客様の悩みを見つけて、サステナブルファイナンスの裾野の拡大ですとか、商品の活性化というものの形で、課題も感じながら、銀行界としては貢献してまいりたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございます。では、小野塚様、お願いします。
【小野塚メンバー】
ありがとうございます。事務局の冒頭のお話で、サステナブルファイナンス推進に変更がないということは大変心強く伺いました。ありがとうございます。そしてまた、この会議は様々な立場の方が集まっているのですけれども、大変雰囲気がよくて良いですね。言い換えれば、心理的安全性の高い場ということで、議論の対象が大変マッチしたカルチャーがあるのではないかと安心しました。
現下の状況ということですけれども、キーワードだけ挙げたいと思います。AIの発展とエネルギー問題、それから、海洋とか、裾野を広く環境の持続可能性の課題、それから、地政学リスクと防衛産業、グローバル課題対応と各国の立ち位置というところが私の現下での認識と、それから、注目しているような部分になります。
3つほど今後についても現状認識と絡めてお話ししたいのですが、一つは、私個人としては、サステナブル金融とサステナブル経営の接続をテーマに日々活動していますけれども、冒頭お話のあったSSBJ基準の導入ですとか、今後の第三者保証を見据えて、いよいよ大企業から、中堅企業のほうでもサステナビリティに関するガバナンスですとか、一体となるバリューチェーン全体のモニタリングというのがもういよいよ始まっていると。それが今年度中に対応してくださいねということを求められているというのを現場で見ていますので、この流れを数年前、もしかすると対話という意味では10年前ぐらいにつくったというのは着実に進んでいるという実感があります。
それから、2つ目ですけれども、先ほど井口様のお話にもあった投資家と企業の対話というテーマです。第五次の報告書にはもちろん言及があったのですけれども、今回の項目には入っていないので、今後、今年はコーポレートガバナンス・コードの改訂もありますし、これは引き続き重要テーマとして取り上げていただきたいなと思います。
渋澤様のお話でもあったESGという言葉ですけども、やはりサステナビリティあるいはレジリエンスというファクターと、それから、ガバナンスというファクターというのが、言ってみれば2つあって、特に対話の中で進めてほしいなという、企業と投資家の間でのトピックという意味では、ガバナンスという観点からのサステナビリティ、あるいは大きな意味での経営戦略という中においてこれをどう落とし込んでいくか、対応していくかということだと思います。
でないと、やはりサステナビリティをやっている部署の話と事業戦略をやっている部署の話という分断が起きるということと、あとはコーポレートガバナンス・コードでもテーマになっていると思いますが、やはり企業のガバナンスにおける実効性、ここにサステナビリティあるいはサステナブルファイナンスの関わり、いかに企業が資金調達を資本市場あるいはデットに銀行等から含めてやっているかということが戦略と合っているのかということを、財務部門もそうですけれども、取締役会のレベルできちっと把握しているのか。これは資本コストの問題でもあると思いますので、その取締役会の実効性とサステナビリティ、サステナブルファイナンスというのは絡まってくるところだと思いますので、2027年度、この辺り、注目できたらと思います。
最後は、サステナブルファイナンス人材のところですけれども、私は、この会議には、一般社団法人科学と金融による未来創造イニシアティブの代表理事という肩書で出席させていただいていますが、当初、金融庁でまとめていただいたサステナブルファイナンスにかかる人材というものも掲げながら、どういった人がこのサステナブルファイナンスを推進できるのかということで4年ほど考えてきまして、今年5年目になりました。ここの8・9ページ目にお示しいただいている課題感というのは全くそのとおりだなと思います。できればぜひ、この後で構いませんので、各団体がおっしゃっている内容なども御共有いただけたら大変ありがたいと思いますけれども、やはりサステナビリティ分野というところと戦略が少し遠いところにあるであるとか、実際に、先ほどのお話もありましたが、リターンや利益というところにつなげるという意味では、まだまだチャレンジングであるというところ。それからあと、実際に人材という意味で、裾野の人材もそうですけれども、個人的にはやはり経営陣が、金融機関の経営陣がこの辺りの統合的な思考ができているのかなということについては、やはり我々も活動を広げていきたいと思っていたりします。
特にポイントとしては、AIやエネルギー問題、環境問題がある中で、サステナビリティ自体を例えば商品につくり込むとかそういうことではなくて、企業経営、あるいは金融機関経営の中でサステナビリティというものをどう考えていくかという、AIの時代が来たときに、人間ができるのは価値判断ですから、そこの部分を金融機関でどれぐらい高度化されているか、していけるかというのが、これからサステナブルファイナンス推進と、あと、日本の金融業界の発展の肝ではないかと思っています。
あとは最後に1点だけ。大学での学部横断的な連携の難しさというのは、まさにそうでして、ここは例えば気候変動もそうですけれども、デジタルでもそうです。一つの学問分野に限らない知見がやはり必要だということで、我々の団体では、先ほど台湾というお話出ましたけれども、今年は台湾で開かれる学会に接続しようと思っていまして、それはなぜかと申しますと、日本からは東大、アメリカからMIT、ロンドンからはUniversity College of Londonというところが集まって、社会課題に対して超学際的な工学という視点からディスカッションするということで、やはり今まで我々、国内で科学と金融を、アカデミアと金融をつなげるという活動をしてきましたけども、やはりそこは範囲を広げて、超学際的分野に出ていきたいなと思っていますので、こちらの知見なども別途共有できたらと思います。ありがとうございます。
【水口座長】
ありがとうございました。では、岸上様、お願いします。
【岸上メンバー】
ありがとうございます。まず初めに、長期的に持続可能でない金融市場や経済活動を意図的につくりたいという人はいないと思いますが、どうしても近視眼的になりがちな日々の中で、大義と現場を行き来することが非常に重要になってくるかと思います。そうした中で、この有識者会議の位置づけですとか、毎年、現状把握をしていくという意義は非常に賛同いたしますので、最初に申し上げます。
そして、水口先生の最初のコメントに付随するコメントですけれども、金融機関だけではなく、個人投資家におきましても、やはり資産運用立国を促進していく中で、個人に向けての金融、経済教育におきましても、サステナブルファイナンスが全体の中で自然な形で浸透するような位置づけでの教育が進められるとよいかと思われます。
皆様、現下の情勢、いろいろ課題を既に挙げられておりますので、私からは細かいことはお伝えしないのですけれども、いろいろと課題が山積みだからこそ個人的に非常に前向きに見ているところがございます。こんな時代だからこそ、グローバルに活躍されている企業の皆様が「共に生きる」の共生力のほうで、誇りに思って、民間自らリードしていこうという機運がむしろ高まっているところが日本企業も含めて見て捉えております。なので、そういった企業のリーダーシップ、経営を後押しするのがサステナブルファイナンスの役割かと思いますので、そういったところをアナリストやファンドマネージャー、そして、融資担当者が役割を担えるのではないかと思います。
そして、先ほど最初に、冒頭に金融庁としての位置づけを非常に力強くおっしゃっていただいたかと思いますが、やはり海外に向けてそういった発信をしていくことも非常に大きいと思われます。このたび、本日の有識者会議を踏まえて、何かしら報告書を作成されるということで、その内容が英語でも発信されるということはもちろんですし、それに加えて、こちらの事務局資料もぜひ、それを下支えしている個別の施策といったところで英訳も検討いただければと思いました。
そして、黒澤様の御意見、また、ほかの皆様にも本当に課題が多様化しているというコメントを聞いている中で、最初は同意していたのですけれども、途中から、果たしてそうなのかと思いまして。といいますのも、ちょうど2014年頃、最初のESGレーティングの枠組み作成に関わらせていただいておりましたが、その時点でESGレーティング、12のテーマがありまして、決して増えていないと思います。一番大きな違いとしましては、地政学的なところのここまでのリスクの高まりといったところは予測ができていなかったのですけれども、その他のテーマに関しては、実はもう十数年、認識はされており、完全ではないとしても評価軸としてもあったと思うのです。ただ、現状として、経営課題として、より、そして、社会としてよりマテリアルになってきていて、危機感ですとかその存在意義が変わってきているということが異なるのではないかと思います。
以上が全体像ですけども、せっかく御用意いただいた事務局資料と関連して追加のコメントです。まず3ページ目に私も関わらせていただいております、JSIFでサステナブル投資残高についてです。まとめて、こちらでも御紹介いただいているかと思いますが、関わっているからこそのあえてのコメントです。決してこの数字だけではないというところで、恐らく数字、量と質の両方が重要になってくるかと思いまして、現状、特に日本におきまして、よりインパクトを見ていくといった中で、必ずしも量ばかりを増やすわけではなくて、その質を、インパクトを測定していくといったところに力を入れていく可能性もございますので、たとえ短期的に残高が伸びないとしても、それを懸念する必要はないのではないかなと思います。
こういった統計もなかなか定義づけが課題になっておりまして、世界的にも特に進んでいると思える国ほど、もはや全てがサステナブル投資なので、計る必要がないのではないかということで、JSIFではアンケート調査を今も実施しているのですけれども、やめてしまっている国もあります。そうすると何が起きるかというと、特にアセットオーナーの公開されていないような残高というものがカバーされなくなるので、全体がかなり把握できなくなってくる。関わっている皆様にとっては実態感があるままだと思いますが、例えば対外的に見て、特に投資対象となっている企業はそれによってやはり減っているのではないかといった認識になってしまうので、完璧でないとしても定点観測として測定していき、また、測定した数字だけではなく、その裏にある、その時々の各関係者がサステナブルな投資とは何かといった自問自答の結果を見ていくことが非常に重要ではないかと思いましたので、改めて共有いたします。
そして、8・9ページのサステナブルファイナンス人材育成のところに関してですけれども、小野塚様もおっしゃっていたように、非常にここに書かれている問題意識のところ、私も共感するところが多いかと思います。中でも2点、強調したい点です。部門間調整の課題といったところで、非常に企業においても、投資家サイドにおいても課題視されているということはあるかと思います。例えばですが、人権と人的資本といったテーマで見ていきますと、これまでですと、どうしても人権はサプライチェーンですとか投資バリューチェーンで見ていく。外に向けたリスク管理のもの、そして、人的資本は内部の資本を醸成していくためのものということで、対外的、そして、サプライチェーン、バリューチェーン、サステナビリティの領域で、人的資本を人事担当ということになりがちなのですが、サプライチェーン上においても企業価値向上につながる資本のところにもなりますし、一方で、人権尊重がなければ人的資本もそもそも生まれないという内部なところもある中で、やはり部門間の調整が重要になってくるかと思いますし、それを促進するような声を発信するという意義も非常に高いのではないかと思います。
あともう1点ですが、現場力のところに関してです。本気で取り組まれている企業においても、金融機関におきましても、やはり現場に足を運べているところが大きな特徴かと思います。もちろん会議も重要ですが、それに加えて、実際に経済活動が行われている現場、サプライチェーンの現場を見られていることによって、よりマテリアルなところにつなげていくことができているかと思うのですけれども、こうしたところもなかなか経営層に理解を得られないといった課題も認識されているかと思いますので、その現場力を促進、理解していくといったところも重要なメッセージかと思います。
あと、インパクトコンソーシアムのところで、1点、官民連携のところに関してですが、様々な各省庁において施策に対する指標を策定する上でも、いろいろなステークホルダーの中で、アウトカムベースの指標を期待するといったことも増えてきているかと思います。そうした中で、スタートアップ関連だけではなく、より広い視野で各省庁へのノウハウの共有ができるのではないかと思われます。
具体的な例で言いますと、ビジネスと人権に関して、省庁連携型の行動計画が日本としてもあるかと思いますけれども、そうした中で、金融庁の貢献の一つとして、このインパクトコンソーシアムで出てきているような指標でのノウハウですとか共有いただくことで、より出てきている成果物の効果が発揮されるのではないかと思われます。
駆け足となりましたが、以上となります。
【水口座長】
ありがとうございました。それでは、吉高様、お待たせしました。吉高様、お願いします。
【吉高メンバー】
ありがとうございます。まず現状、現下の情勢については、皆さんと認識は同じでございます。そういった現状を考えますと、欧米の後退というのは、根底的にサステナブルファイナンスを変えるものではないということで、冒頭、水口先生がおっしゃったように、リーマン・ショックのようなシステムリスクを起こさないということでは、サステナブルファイナンスはデフォルトになっていると思っています。ただ、サプライチェーンリスクに関しては、欧米と日本は違っています。
また、先ほど藤井様もおっしゃっていましたけど、レジリエンスが非常に重要だと思っています。風水害についての報告書が発表になるとおっしゃっていましたけど、(音声途切れ)東京都が発行しているレジリエンスボンドが(音声途切れ)保険会社からの購入が多く、(音声途切れ)議論を進めてほしいと思っています。
【水口会長】
吉高さん、音声が途切れがちなので、カメラをオフにしてしゃべっていただければと。
【吉高メンバー】
分かりました。すみません。大丈夫でしょうか。厳しいようでしたら、後で、メモで出します。申し訳ございません。
【水口会長】
はい。では、後でメモでいただくということにいたしまして、それでは、堀様、お願いします。
※後日、受領した意見は以下の通り。
現状についての認識はみなさんと同じです。昨今の現状を考えると、欧米の後退により、根底的にサステナブルファイナンスが変わるものではなく、リーマン・ショックのようなシステミックリスクを起こさないためにも、サステナブルファイナンスの重要性は不変と考えます。ただし、サプライチェーンリスクは、欧米とは違う、アジアや日本のレジリエンスの課題があると思っています。東京都が発行したレジリエンスボンドを保険会社が中心に購入し、さらに発行に期待があると聞きました。風水害についての報告書が発表になるとおっしゃっていましたが、適応も含め、レジリエンスに対するファイナンスの議論を進めるべきだと思っています。
情報開示については、「非EU欧州持続可能性報告基準」、N-ESRSができ、日本では、SSBJでの情報開示が今後義務化と保証制度が進む中で、それが、日本の今後の成長戦略なかで、どのような戦略になるのか。アジアでもISSB基準の導入が進んでいますが、自国の価値向上にどのように導入しているか、サステナブルなファイナンスで社会構造を変えるということであれば、このような点もモニタリングをすべきではと思います。
排出量取引が入ると、排出量が実質的コストとして企業のP/Lに直結し、金融機関が行う気候関連金融リスクの対応は、財務インパクト評価となります。削減貢献量や削減実績量は、経済的リターンと社会的リターンを両立させる「インパクト投資」に考え方は合致しています。日本の関係者はこの考え方を欧米での浸透に努めていますが、アジアでの横展開も視野にいれていたほうがよいのかと思います。その点において、アジアGXコンソーシアムは重要で、日本国内で培ったこのトランジションと排出量取引のノウハウなどを、日本がルールメイカーとしても確立できるようになってもらいたいかと思います。
それから、日本のサステナブルファイナンスにおいては、地域が大変重要かと思っております。インパクトコンソーシアムで、地域・実践分科会や官民連携での取組がありました。お聞きした、中小企業庁とのスタートアップの資金調達の取組も期待しております。私自身、地域金融のサステナブル経営や、サステナブルなまちづくりにかかわりますと、スタートアップ以外にも、サステナブルな資金調達が必要となってきている地域の中小企業があります。先般、GX産業立地の有望地が発表され今後決定されていくにあたり、高市政権でいう地域未来戦略会議において、まだ地域金融については触れられていません。大手金融機関だけでなく、地域金融機関が地元の中小企業のサステナビリティに資するエンゲージメントできるよう、様々なインフラ構築や人材育成の支援についていかに早く具体化できるか重要かと思います。
金融機関の稼ぐ力を、企業のイノベーション」にどう結びつけ、現場の金融人材が活用しながら、いかにサステナブル社会構築に資するか、に関して、具体的議論を継続すべきと思います。
サステナブルファイナンスを取り巻く課題は、サーキュラーエコノミーにおける「ウォッシュ」への懸念や、自然資本に関わるトレードオフ問題、さらにはTISFDフレームワークの実装など、急速に多様化・複雑化しています。こうした中、金融市場の信頼性を担保するためにも、今後は「ウォッシュ」に関する議論や監視体制をさらに強化していくべきだと考えます。
以上です。
【堀メンバー】
では、堀のほうから手短に。皆様からもいろいろと御意見をいただいていて、私が一番共感しているのは、適応という言葉でございまして、私ども損害保険業界でございますので、自然災害に非常に興味があるというか、大きな関心事でございます。御承知のように昨年度は非常に、日本国内だけでなく、海外においても比較的自然災害が少ない極めて良い年だったのですが、今年はもう既に台風が上陸しておりますし、7号も既に発生して向かっているといった状況でございまして、どうなるかというところ、心配なのですが、自然災害は気候変動と非常に関係があるというところで、ネットゼロというのは非常に重要な取組だと思います。
ここについては、実はネットゼロ、着々と進んでいるのではないかという見方を私はしておりまして、弊社自身の開示の情報を見ましても、いろいろな会社の情報を見ましても、やはりGHG排出量で減らすように大分動いていらっしゃると思います。J-クレジットも始まっているというところを見ると、そこは驚異的に進んだとは申しませんが、でも、一定進んでいる。けれども、全然そういう実感がないというのはやはり世の中変わってきているのではないかと考えています。
例えばほかの方からもありました、AIですとかそういうことがあったり、地政学だったりとかということがあると、せっかく積み上げ型でどんどん排出量を減らしていっても、それを完全に裏返してしまうとか、爆発的に増えてしまうというところで、努力が、ゼロになるとは言わないまでも、やはり違う方向に大きく世の中が動いていっているということを考えると、引き続きGHG排出量を減らすとか気候変動対策はしつつも、適応についてもっと力を入れていかないと間に合わないのではないかと思っています。
今年も恐らく、気象庁様、新しく酷暑という言葉をつくりましたけども、恐らく酷暑になるでしょうし、台風も来ますし、水害もまだ起こるだろうということを考えると、これにどうやって適応していくかと考えると、これはどちらかというと、各地方でやるしかないと思っています。各地方で、それこそネイチャーを活用して何ができるのか。それは自然地形ですとか、産業ですとか、文化ですとか、そういったところを踏まえた中で何ができるか、レジリエンスを考えていかなくてはいけないということがございますので、できればこのレジリエンス、適応というところにもっとサステナブルファイナンスとしてもに力を向けていけないだろうかというのが私の願いというか、思いというか、ということでございます。
以上でございます。
【水口座長】
ありがとうございます。では、手塚様、お願いします。
【手塚メンバー】
いつもながら唯一、事業会社から出席しているということで、ちょっと違う観点からお話しさせていただきたいと思います。昨年から1年たって、実はGX戦略というのは着実に進んでいるのだろうと思います。現実に私どもJFEスチールも大きな高炉を1本止めて電気炉に入れ替えるという投資、これを例のGX移行債に基づくファイナンスで補助をいただきながら3,000億円の投資を決めていますし、同時に日本製鉄さんも、やはり高炉1本、電気炉に取り替えるという工事を行うために、8,000億円の投資をするということも決められています。そういう意味で、現実に一歩は踏み出しているということです。これは2030年までにできる現実的なCO2削減解はここまでで、水素とかが実際に手に入るのはもっとずっと先の話だろうということでやるのですけども、では、これで完全にうまくいくのかというと、全然まだそういう状況ではなくて、課題は山積みの中で投資を決めたという極めてリスクの高い判断をした結果、これを行うことになっています。
といいますのは、このプロセスに変えることによって出てくる低炭素な鉄は従来と何にも変わらない鉄が出てくるのですが、コストは何割も上がってしまう。つまり、これを喜んでお客様が買ってくれること。いわゆるグリーンプレミアムをつけて買ってくれるということが前提でもってでなければ成立しないような投資を、いろいろ補助をいただきながらやっているということですので、今まさに次の段階で、このGX戦略を進めるためにはグリーン市場をいかに創出するかが課題となります。それを政府といろいろお話しさせていただいていますし、まさにそこは公共投資から率先垂範ですよねというような話もさせていただいていますが、リスクをとって、やりながら考えているのが実態でございます。そういう意味で、こういうのが進んでいるから、もうレールに乗っかっていますというのは必ずしも正しい見解ではなくて、暗中模索の中でやっているということです。
加えて、それをやり始めた中で、足達様が最初のほうにおっしゃられたように、世の中には今、地政学リスクとか、サプライチェーンのリスクとか、エネルギーコストのリスクとか、いろいろな想定外のリスク要因が出てきて、なおさら投資が短期志向のほうに走ってきている。ところが、鉄の投資なんていうのは、投資してしまうと10年、20年かけて元を取らなければいけない。つまり、20年間の確実なキャッシュフローが入らなきゃ元を取れないようなものに対してエネルギー多消費産業のプロセス転換投資というのが行われますので、リターンをどういうふうに担保していくとかという課題は、金融の世界だけではなくて、恐らく日本の産業政策全体の中に金融も政府の政策も組み込んで、システマチックに対応していく必要があるのだろうと思います。
といいますのは、実は私、先週、パリの国際エネルギー機関、IEAのワークショップに招かれまして、行ってきたのですけども、ここで何が話し合われていたかというと、特にプロセス転換しながらエネルギー多消費産業の競争力を今後どうする、どうすればいいのかというテーマの特別報告書を来年に向けてつくるために、エネルギー多消費産業からのいろいろな意見出しを求める公聴会のような場でした。そこで、鉄とアルミと化学の代表が行っているのですが、アルミと化学はヨーロッパの人が出ているのですけども、鉄はなぜか私が行って、代表でお話をしています。
ここで、ヨーロッパのアルミと化学の人たちが何を言っていたかというのを御紹介したいと思うのですけども、そもそもプロセス転換以前に、今、ヨーロッパでは、エネルギー多消費産業はエネルギーコストが跳ね上がってしまっていて、ほとんど競争力を失って、この5年間だけでも生産量を何割も落としているというのが実態である。そのエネルギーコストが上がっている理由というのは、もちろん地政学的リスクで、ロシアの問題もあるし、中東の問題もあるのですけども、それ以前からのGX戦略で、様々なエネルギーのグリーン投資が行われて、コストが上がってきて、産業用エネルギーコストが、例えばドイツはヨーロッパで一番高くなっているというわけです。これがエネルギー多消費産業の競争力を落としているので、まずそこを何とかしてくれるのが先で、その次にグリーン投資という話に行くのだと。グリーン投資をやるときには、必ずコストアップが伴うので、その市場、つまり、ウィリングネス・トゥ・ペイが存在しないと、つまりグリーンプレミアムを払う市場が存在しないと投資の回収ができないということで、そこは大きな課題であるというようなことを言うのですね。
これは実は大きな矛盾でして、グリーン投資を行うとコストが上がるのですけど、目の前は既にコストが上がっていて競争ができないという話は、価格転嫁できていないということなのですよね。ということは、この価格転嫁がもともとできない産業に価格転嫁をしなければ投資ができない投資をどうやってやるのだという話をしているということは大きな矛盾なので、やはりこれはIEAの中でどういう政策的なバックアップが必要なのかというようなレポートをぜひつくってくれということを私からはコメントしております。
本日、ここで申し上げたいのは、やはりサステナブルファイナンスがサステナブルに行われていくためには、その外的事業環境をサステナブルにする必要が多分あるということです。水口先生がシステミックリスクとおっしゃいましたけども、やはりいろいろな政策がやはり矛盾する方向に向いているものが存在していて、何を優先するかによって、ほかのものにしわ寄せが行くということです。あまりにも電力のグリーン化を先にやろうとすると、どうしても電力はコストが上がってくるということがあるのですが、そうすると、多消費産業のグリーン投資のほうにも阻害要因になってくるという矛盾が起きてくるわけです。そうすると、この順番をどういうふうにやっていくかという仕切り、こういうものがやはり必要で、低廉かつ安定的なグリーン電力があるということを前提に多消費産業のグリーン投資が行われていくというような、ある種の政策的な筋書がないと、前提条件がないところで両方やるというのはなかなか難しいなという問題があります。
それからもう一つは、国の相対的な競争力の問題ですけども、ヨーロッパで何が起きているかというと、ほとんどの業界、特に化学業界、アルミ業界は生産がどんどん中国に移っていっています。中国は物凄い補助金と低廉な火力、電力を使って製造業に肩入れをしていて、バッテリー、EVも含めて、今、製造業を回して過剰能力を持っている。この中では競争がとてもできないということを彼らは言っているのですけども、そうすると、国のサステナブル投資をサステナブルにするためには相対的な競争力をどこまで維持するかということも指標として持っていないと、個別のプロジェクトが儲かるからそこにお金つけましょうとか、個別のプロジェクトがサステナブルファイナンスに適格だからやりましょうというのを全部積み上げたからといって、全体が最適になるとは限らないわけです。
なので、順番づけと、それから、地域格差のレベルをどこに抑えるかという指標を入れた何か戦略を立てて、その中に日本のサステナブルファイナンスを組み込んでいくということをぜひ今後のテーマとして考えていただけないかなということを、実は先週、実感して帰ってきたところでございます。
以上です。
【水口座長】
ありがとうございました。岡田総括官、どうでしょう。
【岡田政策立案総括官】
会議のまだ続いている中で、次、どうしても行かなければならない会議があるので、私はここで失礼しますのですが、本日のこれまでのところもこの後も大変ありがとうございます。金融庁、御承知のとおり、大体6月末までが一つの区切りというか、事務年度で、今年は国会の都合で、私も、今野課長、髙岡室長も7月の後半ぐらいまではいると思うのですけど、その間に、本日、本当にいろいろな意見をいただいたので、改めてこれをメモか何かで残した上で、今後、次の年度に、あるいはそれ以降も含めてどういうことをやっていくかというのを考える上で参考にさせていただきたいと思います。本当に皆様、いろいろな諸外国の動きも含めて、いろいろな多角的な情報をいただいて参考になります。これも活かして、もちろん我々も、ヒューマンリソースも含めて、制約はあるのですけど、そうした中でどこに手を打っていくかというのは、とても大事なことだと思いますので、参考にさせていただきたいと思います。
中座いたしますが、この後も時間を許す限り、また追加でいろいろな御意見や情報をいただければと思います。本日はありがとうございます。途中で失礼すること、おわびいたします。引き続きよろしくお願いします。
【水口座長】
ありがとうございました。木地様、すみませんでした。岡田総括官の都合がありまして、先にお話しいただきました。お待たせいたしました。木地様、お願いします。
【木地メンバー】
ありがとうございます。大和証券の木地と申します。私は今、日本証券業協会のサステナブルファイナンス推進委員会委員長という大役を昨年拝命いたしまして、ですので、今回がこの有識者会議、初めての参加という形になるのですが、先ほどからの御議論を聞かせていただくと、首を縦に振って、うなずかされることばかりだったわけですけども、1点引っかかっていたのが、冒頭でお話があったサステナブルファイナンス、SDGsボンドのほうですね。発行市場が停滞という形で御指摘があったように思います。確かに資料中にもあるように、年間の発行額の推移を見ると、そのように捉えられても仕方がないとは思うのですが、これは様々な背景には要因があると認識しておりまして、この場で一々その要因について御紹介するということはいたしませんけれども、これは果たして停滞なのかというところには疑問を呈する余地があるのかとは感じております。
ですので、ヘッドライン的にこうした数字上の印象というものが先行してしまうという形になって、サステナブルファイナンスというものに対する世の中の流れみたいなものがそれこそ停滞するというようなことは防がないといけないなと考える一方で、では、果たして成長しているのかという逆の問いに関して言うと、これもなかなか首を縦に振るのが難しいといいますか。これは表現の仕方によっては、量から質への転換という形での申し上げようもあるかとは思うのですけれども、やはりサステナブルファイナンスに関して世の中の理解等を促進していく上では、活性化させていく必要が当然ながらある。
そのための施策というものを事務局からの御説明でも様々感じたところですが、それに加えて、これは私、いろいろなところで申し上げていることであるのですけども、資本市場におけるファイナンスの量のボリュームの増加というものに関しては、やはり市場参加者を一人でも多く増やしていくという努力が欠かせないのではないかなと常日頃から感じております。そのための施策というのは、これまでも、こうした社会あるいは各種推進委員会のほうでお進めいただいたところだと思うのですけども、1点だけ御指摘させていただく点として、同じように日本証券業協会様のほうでも議論が進んでいると理解していますが、足元、社債市場の活性化というところが一つ大きなテーマになって、これは報道等でもされておるところでございますけれども、SDGs債、ESG債というのも間違いなく社債、公社債の一部という形でございますので、この社債の発行市場というところがどのようにして活性化させていくのかという部分の議論が今、足元進んでいるという認識をしております。
当然に社債市場が活性化して大きくなっていくという過程においては、付随的にESG債の規模、市場マーケット規模というところも大きくなってくることが想定されますので、足元、同時進行的に進んでいる社債市場の活性化という問題に関しましても、ぜひ皆様に御注目いただきまして、今後の動向というところにまた御紹介する機会があればいいなと考えております。
この社債市場というところの制度あるいはプラクティスの変化というところは、冒頭、座長からもお話があったシステム的なところでの向上、改善というところにもつながるかと思いますので、全体的な話題の中にもフィットする内容なのかなというところで御指摘させていただきました。
以上でございます。
【水口座長】
ありがとうございました。ということで、ちょうど時間となってしまいましたが、まだ皆様、1回しか発言していないのにもう終わりかという感じで、最後にこれだけは言いたいということがあればいただきますが、よろしいでしょうか。もしありましたら、後ほどメールなどで御意見いただいてもと思います。それでは、ここまで御議論いただきまして、最後に事務局から、まとめをお願いします。
【髙岡サステナブルファイナンス推進室長】
最後に事務局から失礼します。本日は活発な御議論、大変ありがとうございました。本日いただいた御意見につきましては、事務局の方で取りまとめをさせていただいた上で、有識者会議における意見要旨という形で皆様にお示しさせていただいて、改めて御確認をいただき、皆様のコメントを反映させていただいた上で、最終的に金融庁のホームページで公表することで、有識者会議からの情報発信という形にさせていただければと考えてございますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
【水口座長】
ということで、今日の議論をまとめて、有識者会議としてのまとめをつくっていただいて、皆様に御覧いただくということになりますので、また、そのときにコメントいただければと思います。
それでは、本日は以上で終了させていただきたいと思います。お疲れさまでした。ありがとうございました。
―― 了 ――
- (参考)
- 開催実績
- お問い合わせ先
-
金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室(内線 2770、5404、3515)

