第3回総合的な取引所検討チーム(議事概要)

金融庁

農林水産省

経済産業省

1 日時:

平成22年11月19日(金)15時00分~16時35分

2 場所:

農林水産省7階第3特別会議室

3 出席者:

金融庁:東副大臣、和田大臣政務官

農林水産省:筒井副大臣、田名部大臣政務官

経済産業省:松下副大臣

日本証券業協会:増井副会長

全国銀行協会:三島市場国際委員長代理

FIAジャパン:茂木バイスプレジデント

AIMA JAPAN:白木副会長

国際銀行協会:藤本ディレクター

日本商品先物振興協会:加藤会長

日本商品清算機構:高橋社長

住友商事:高井理事

JX日鉱日石エネルギー:佐藤部長

ホクレン農業協同組合連合会:安永部長

カーギルジャパン:佐藤部長

石戸谷弁護士

4 主な発言要旨

○ 関係業界代表からの主な発言要旨

(現状及び問題点)

最近ではコモディティーのETF(上場投資信託)が登場し、世界では取引所のグローバルな再編が起こっており、商品、証券の垣根はなくなりつつある。

機関投資家は商品投資を増やしているが、シンガポール、香港といったスピード感のある市場と比較して日本は後手に回っており、日本に呼び込めていない。

国際競争力をもった総合取引所を実現するには、多様なプレーヤーが参加し、流動性が高く、取引コストの低い市場の実現が不可欠。

多様な投資資金を吸収し、アジアのリーディングマーケットとなることが必要であり、その中で商品市場が産業インフラとして発展し、そこでの価格がアジアの現物取引の指標となることが必要。

清算機関にとっては、信用力の強化、利便性及び効率性の向上、投資家の安全の確保が重要。利便性向上は、清算機関のアウトハウス化によって複数の取引所の清算を行うことは一歩前進だが商品分野に止まっている。取引所の総合化とクリアリング強化は大きく関連し避けて通れない。機能論アプローチではクリアリング強化が重要論点。

現状の阻害要因は縦割り行政、旧態依然の法規制環境と魅力のない高コスト市場。

(具体的な施策など)

取引所の統合は、取引所の経営判断にまかせるべきで、第3者が介入すべきでない。一方、清算機関は統合により、より強い方が望ましい。

日本の取引所は証券取引所が5、それら取引所による新興市場が5、プロ向け証券取引所が1、金融先物取引所が1、商品取引所が4あるが、競争を通じて淘汰・統合されることが必要。

クリアリング機関の一元化により、1つの証拠金で多様な取引を行うワンストップ取引の実現が必要。

総合取引所のメリットとしては、システム共通化、証拠金制度の横断化が重要で、国内外の競争が働きやすい環境整備が重要であり、競争を通じて優れたサービスに淘汰・統合されていく。

単なる取引所の統合ではなく、投資しやすいインフラの整備が重要。

海外と異なり日本では金融所得課税が単一でなく損益通算ができない。これが横断的取引の障害となっている。システムも統合されておらず、この解消が必要。

税制一元化やネッティング(複数の取引の債権・債務を相殺し差額分を決済すること)など商品と金融を同様に扱えるようにすることが重要。

総合取引所化によって経営基盤が強化されエンドユーザーの利便性が高まることが重要であるが、取引所の器だけでなく、商品の魅力が高まること、そのために規制、税、言語等の環境整備を行うことが重要。

米国でも先物市場はCFTC(商品先物取引委員会)と現物株式市場はSEC(証券取引委員会)に分かれており、短期間に単一規制機関の創設が困難で、現物とデリバティブを分けるのであれば両者の規制を整合、合理化するために「統合規制委員会」といった機関が必要。

海外の投資運用会社の呼び込みと国内の投資運用会社の強化が必要。

統一された規制と税制、国内外取引参加者の要望への対応、英語によるディスクロージャーの整備が必要。

多様な投資資金・ヘッジ資金を呼び込むためには、その担い手である取引業者の横断的な市場参入が必要で、規制・監督機関の一元化が不可欠。

規制の一元化に際しては、財務規律強化による商品取引員の廃業によって流動性を低下させないよう、財務規制については経過措置を置く等の激変緩和措置が必要。

日本の金融市場の発展のため、シンガポールのように東京金融センター(事務局)を設立し、マーケットのプロモーションが必要。

カリフォルニア州退職年金基金は約2,000億円を投資顧問会社に商品分野で運用させているが、国内でも投資顧問会社経由で商品運用があるものの、その運用先は日本国内ではなく、外国に向かっており、投資運用会社が運用できるような環境をつくるべき。

○ 取引所の利用者代表等からの主な発言要旨

(現状及び問題点)

これまで取引所間の再編が進まず今に至っている。現状のままでは、韓国、中国、シンガポールに負けてしまい、崖っぷちに来ている。

国内では流動性が低いため、現物と先物の価格が乖離することが多く、大量の取引を吸収できない。

東工取の存在意義は、公設市場であり、実際の現物取引価格が先物価格と連動するようになっていること。価格形成機能が非常に重要。

小豆は年1度の収穫であるが、販売は年間を通じて行う必要。消費者に届くまでには商人系の産地問屋、和菓子メーカー等様々な業者を経由。

このため、先物市場を利用して市況変動の価格ヘッジ、現物受渡し、在庫の調整や仕入れを行いながら現物を流通。

小豆の年間消費量は8万トンであるが取引所の取組高は1万トン程度なのでその拡大を希望。

日本に商品市場が必要であることが根本問題であるが、商品市場の出来高が減少し、流動性が乏しく本来の機能を発揮しづらくなっており、その機能を発揮させるのに役立つのであれば総合取引所に賛成。

清算機構も一本化すべきだが、欧米では反対の動きもあるので、それをみた上でよく検討すべき。米国ではドッド・フランク法が可決され、今後は、店頭取引も全て清算機関の対象となるが、日本に大きな清算機関がなければ海外の清算機関に取られる。1つか2つに集約しないと国際競争に負ける。

金商法のFX取引は、5年で口座が10倍に激増し、電話、訪問による勧誘がないためトラブルも少なく評価しているが、取引所取引に対する不招請勧誘禁止がない。一方、商品デリバティブでは取引所取引も含め全面的に不招請勧誘禁止となる。

(具体的な施策など)

石油の現物市場は卸売りのプロ市場、先物市場はプロと一般が参加する市場であり、東工取の活性化と流動性を高める方策を検討してほしい。

商品取引所が株式会社化したことが総合化の足かせ。法律を改正し、資金を投入するなど、政治的判断がなければ競争力のある市場にはできない。

国内取引所が赤字の原因は巨大なシステムコスト。投資家の観点から、法律の整備、税制の一本化、更にクリアリングハウスの一本化による信頼性向上が最も大切。

総合取引所が成功する条件は5点。(1)投資家ニーズに合致した魅力ある上場商品、(2)外国の顧客などグローバルなプレーヤーへの対応、(3)低いコストで取引ができる超高速のマッチングシステム、(4)リーマンショックにも耐えられる財務基盤がある清算機関、(5)国際基準のルールの整備。

取引所という玄関は複数でも良いが、台所(ルール、税制、清算機関)は使いやすいものに一本化すべき。取引所は現物株とデリバティブでは異なるので2つが丁度良い。

ここ10年で取引所はシステム産業化しているが、国内には膨大なシステム投資に耐えられる取引所はなく、1つか、2つに大きな取引所に統合再編すべき。その際、ルールと税制の一本化が必要。

効率的な市場の視点から、3つの点が重要。(1)隙間のない一元的な規制、チャネルを実現するために二重規制を排除し、one stop shoppingを可能にする必要。仲介業者が3つの役所に報告、申請を行うことが参入意欲を削いでいるので、規制・監督の一元化、2つの法律の統合を目指すべき。(2)取引システムを統一し、財務基盤の強固なクリアリングを実現すべき(1つに統合することが望ましい)。併せて清算参加者の財務基盤の強化も必要。(3)株と商品の損益通算により中立的・一体的税制を実現すべき。

隙間のない一元的なルールができ質の高いものであれば安心して参加できる。総合取引所と平行して金融サービス法の取組みが必要。金融分野と商品デリバティブでは規制ルールの内容が別々に分かれており、例えば不招請勧誘禁止と適合性原則のルールが異なる。

商品と金融商品を整合したルールが必要。しかし、低い方に揃えることは認められず、高い方に揃えるべき。

取引所が1つになることで、国内の取引所間の競争が無くなることを懸念する声があるが、今は経営体力を強化し、海外との競争を考えるべき段階。各省庁のスペシャリストと仲介業者、当業者等からなるワーキンググループを立ち上げ、早急な対応策の検討が必要。アジアの物流は拡大しており、この1年、2年が勝負。

○ 自由討議

我が国の商品取引に投資が行われない理由は何か。

  • 銀行における商品への投資の取引の多寡は、顧客ニーズによるものであり、規制そのものが原因ではない。
  • 近年、我が国の機関投資家、個人投資家等は商品投資を増やしているが、投資信託のかたちを経由して、海外の取引所で取引を行っている商品投資顧問業者への委託となっているのが現状。

米国シカゴ・マーカンタイル取引所等は様々な商品を上場しているが、物資所管省庁の介入はあるのか。

  • 金融商品については割と制度設計は自由だが、農産物やエネルギー商品は、米国の規制監督当局が取引所と、かなりの時間をかけて対話を行っている。なお、規制監督当局はCFTCであり、議会の農業委員会の監視も受けている。

総合取引所に関する商品取引業界アンケートの結果はどのようなものだったか。

  • 総合取引所構想を推進して欲しいという意見が6割強、法律を一体化して欲しいという意見が7割程度であった。

商品取引所は日本に必要か。日本の市場で価格がつくられるメリット、海外で価格がつくられるデメリットはあるか。

  • 取引の電子化が進み、どの国の取引所でも取引可能だが、アウェイでなくホームでヘッジ等の活動をしたい。国外は規制・運営リスクがある。商品は、品質、スペックが日本で設計された日本の市場で取引がしたい。
  • 穀物の輸入・販売は品質変化があり、量もかさばるので現物がいつどれくらいあるかで決まり、同じとうもろこしでも東京とシカゴの取引所では異なるので、この点は海外ではなく、日本の取引所で取引をする意味がある。

統合化・一元化といっても、ルール、税、証拠金、口座、規制・監督機関について、それぞれの概念をどう整理すべきか。

  • ソフト面とハード面(取引所)の統合を分けて考えるべきで、規制ルール、証拠金、税制、クリアリングのソフト面は極力一つにすべき。例えば、大証で金のETFをやり、それを東工取の金先物でヘッジしても同じ金にもかかわらず税の損益通算ができないのは問題。

総合的な取引所を考えた場合、農産物は他の商品と比較してどのような点が異なるか。

  • 農産物市場の独自性は、価格ヘッジだけでなく、現物受渡しの機能があること。
  • 穀物は年一作で価格変動が激しい。外国では1年以上先の商品もあり、農家は先物市況をみてその年の栽培面積を決めている。食料貿易の自由化により商品市場の重要性は高まっている。

適合性の原則の適用について、金融商品と商品先物でどのような問題があるのか。

  • 適合性原則では、商品先物は行政の指針であるガイドラインがあり、数多くの行政処分を積み重ねてきているが、金融商品は、ガイドラインもなく、行政処分も平成16年の1件しかないため、裁判所が紛争解決の際に事後的に適合性原則を判断している状況。金融商品についてもガイドラインの整備等を進めることが必要。

(以上)

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3562、3601)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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