第9回総合的な取引所検討チーム(議事概要)

金融庁

農林水産省

経済産業省

1.日時

平成23年3月10日(木)16時00分~17時40分

2.場所

農林水産省別館4階第2特別会議室

3.出席者

東 祥三   内閣府副大臣
和田 隆志   内閣府大臣政務官
筒井 信隆   農林水産副大臣
田名部 匡代   農林水産大臣政務官(議事進行)
松下 忠洋   経済産業副大臣
田嶋 要   経済産業大臣政務官
佐藤 広宣   株式会社カーギルジャパン 穀物グループ統括部長
浅田 浩之   全国卸商業団地厚生年金基金 管理課 課長
数原 泉   NYSE Liffe(NYSE-EURONEXTグループ)駐日代表

4.主な発言要旨

(佐藤部長)

今日の東証・大証の統合協議の報道が事実なら内外の再編が進んでいる証左であり、具体的に再編を進めて欲しい。日本の商品市場は出来高低迷により存亡の危機にあり手を打つべき。

理論的には日本市場と同じスペックのものが外国で取引されることもあり得、総合取引所創設によって国際競争力の強化が必要。そうしないと外国にとられてしまう。

国際競争力の要素は利便性・効率性・信頼性と差別化。取引システム・清算機関・規制監督・税制の一元化、その上で更なる規制緩和が必要。

穀物は常に価格変動リスクがあるが、日本は一部品目で産業保護。自由化されたときに今の保護政策から価格変動リスクマネージメントにうまく切り替えられるか心配。商品市場はあらゆる情報が価格に凝縮され、経済インフラとして不可欠。その機能発揮によって経済発展にもつながり振興策を期待。

(浅田課長)

当基金は1200社、従業員2万8千人、約650億円の基金を運用。基金は直接運用はせず、投資顧問会社や信託会社を通じて証券会社等が組成した商品に投資。

2006年から商品への一部投資をはじめ、現在の投資額は約25億円、全体の4%程度。平成10年の規制緩和を受け、内外の株式と併せて商品に少しずつ投資していくことを決定。

基金としては大きな市場の方が投資しやすく、取引所を1つにして活性化することに賛成。

(数原代表)

NYSEユーロネクスト・グループは持株会社の傘下に米国・欧州の多数の株式・デリバティブ・商品等の取引所を運営。清算機関は米国、欧州に2つずつ。

2010年度の総利益の34%がデリバティブ部門、17%がIT・情報部門でシステム投資を重視。

日本とは東証、東金取、東工取、東穀の現地取引所とのパートナーシップ(商品リンク、システム提供、商品プロモーション等)を推進。東工取等における外国のシステム導入によって、海外勢の参入が促進されるとともに国内勢の外国市場参加が技術的に容易となった面がある。

【意見交換】

○アジアのメインマーケットを目指すために取引所や清算機関の集約統合を国が促す必要性及び各分野の専門家を結集し独立した監督機関を設置する必要性について(筒井副大臣)

(佐藤部長)

利便性が重要。市場に参加する際、商品ごとに証拠金がバラバラになっているのは資金移動の障害。利用者にとって柔軟性のある清算機関が必要。

強い取引所同士が統合して1+1が3になるのであれば統合は自然に進むが、現状ではそうならないことを危惧。国は統合を促すだけなく背中を押すべき。一緒にならざるを得なくなるような踏み込んだ政策が必要。

商品・金融商品・株はそれぞれに特性・専門性。特に農産物は量がかさばり、品質変化の問題があるため専門家が必要。規制・監督は一元化することが望ましく独立した機関とすべき。

(浅田課長)

取引所の統合には賛成。統合によって余裕をもって取引所を運営することができ効率化が図られる。東証が高速システムのために多額の投資をしたが、その効果に不安。

今後、オプションなどの取引も考えているが、証拠金を一元化すれば商品の入替えがスムーズにできる。

規制・監督は専門家が集まって横断的に行う独立機関がベスト。

(数原駐日代表)

日本の現状・将来像についてはコメントを差し控えるが、一般論として。

米国や欧州における経営判断は株主利益が第一でそのニーズにいかに応えるかということ。統合等についての経営判断は、利害関係者、特に株主の意向を重視。

清算機関は、一般論として言えば、お客にとってシステム・プロセスは一本化した方がよいが、証拠金の一元化は資産クラスが異なる場合は別々に管理するので一緒にしにくいこともある。例えば、商品の証拠金を払っているから株価指数がやりやすくなるとは限らない。

国境・資産クラスを超えた複数の取引所を経営するためにはそれぞれの国の監督機関とうまく付き合う必要。

○3月8日に申請のあった米の先物取引の試験上場に対する見方について(筒井副大臣)

(佐藤部長)

現在は平成18年の不認可の時と状況が変わっている。先物価格が下がれば供給を減らすといった経済原則に従って価格を通じた需給バランスの調整機能の発揮の観点から米の試験上場を是非やってみるべき。

○NYSEユーロネクストが清算機関をアウトハウスからグループ内に変更する理由、日本ではデリバティブに活気がない理由及びデリバティブの役割について(東副大臣)

(数原駐日代表)

取引所ビジネスは、垂直モデル(商品売買だけではなく、清算、決済、価格情報、株価指数等の算出等のインフォメーションに関するビジネスを縦のラインで統合しようという考え方)と水平モデル(同じ商品を扱うような取引所をできるだけ集め、例えば国境をまたいで、より大きな、よりたくさんの商品を扱う取引所をつくろうという考え方)がある。従来、NYSEは、水平モデル型で、ドイツ取引所は垂直モデルと言われていたが、NYSEはこれから垂直モデルを拡充していくとの経営判断。そのような中、清算機関をグループ内部化し一つの企業体にすることは、素早い経営判断とその実行を可能とし、利便性も向上。

日本のデリバティブに活気がないとは思っていない。デリバティブの悪玉論は、取引所取引と店頭取引(OTC)で分けて考える必要。OTCは、フレキシブルだが、商取引相手方リスクがある。取引所取引は価格の透明性があり、清算機関を通すため安全性が高い。

市場にはリスクテイカーが必要。高速売買を行う者は、数秒・数分のリスクをとることを考えており、リスクを出す者に流動性を供給する。リスクを取りたい者、出したい者、いろいろな意図を持つ市場参加者のニーズに応えることができるマーケットを作ることが取引所の使命。

(佐藤部長)

デリバティブの悪玉論は、リスクのメカニズムが十分理解されていないことが原因。ヘッジと投機の境目はなく、市場に参加すれば必ずリスクがあるが、リスクに比例して現物を安定した価格で仕入れるチャンスもある。

○商品市場の監督に現物所管当局が関与すべきか否か及び法律・規制監督機関の一本化について(東副大臣)

(佐藤部長)

デリバティブの大きな役割は、ニーズに合わせカスタマイズできること。とうもろこし等のデリバティブ商品は取引参加者のニーズに合わせたものを提供しており、専門性が高いので専門家が市場管理を行う必要。役所的な判断で管理すべきでない。例えば、値が下がったら空売り規制をすれば良いなどの単純な対処をすべきでない。専門性のない機関が単独で監督することには賛成できず、商品に対する専門性が高い監督機関が良い。

○様々な投資の選択肢がある中でデリバティブに投資する理由について(東副大臣)

(浅田課長)

以前、厚生年金基金がヘッジファンドに投資をしていることが報道され批判を受けたこともあり、理解が得られていないのが現状。しかし、デリバティブはポートフォリオの一部。年金基金は直接投資はできないため、信託会社・保険会社・投資顧問会社が年金向けに組成した商品に投資。

○国内外で統合の動きがある中、我々がすべきこと等について(松下副大臣)

(佐藤部長)

双方にメリットがあれば統合は進む。進まなければインセンティブを与えるため、法律による規制等が必要。国内商品市場が取り残されることを危惧。何らかの政治的判断が必要。東穀と東工取は統合の方向だが展望がなく非常に心配。証券市場はアジアの中で統合が進むだろうが、商品市場は物理的に物を動かす必要があり、どこで取引をしても同じ金融商品とは異なり、実際に現物としての「重み」をもった価格を取引。商品市場は日本で発展させるべき。

(浅田課長)

海外の業者に聞くと日本の市場は閉鎖的という印象。また、言語も日本語なので入りづらいという声もきく。裁定取引という戦略もあるので、何が何でも合併すべきとは思わない。

(数原代表)

今回のNYSEユーロネクストとドイツ取引所の統合は、国際的な競争が激化する中で一歩前に進まなければならないという経営判断をさせたもの。ステークホルダーから要望があればそれをマネジメントに反映できる仕組みが必要。

○NYSEユーロネクストと各国の規制監督当局との関係について(和田政務官)

(数原駐日代表)

ドイツ取引所との統合発表後に、関係する多数の国の監督当局と話し合いを開始していると理解している。

○今後の年金基金のデリバティブ市場での運用について(和田政務官)

(浅田課長)

証券会社は、3、4年前は現物株中心だったが、デリバティブにも参入。厳しい運用環境でも良い運用成績を残しているものもあり、流れとしては今後デリバティブへの投資は大きくなる方向。

○商品取引所の株式会社化が統合の障害になるとの見方について(和田政務官)

(佐藤部長)

株式会社化により合併や事業譲渡について1人でも反対の株主がいると進められなくなっている。会員組織のときの方がやりやすかったとの印象。

○現状のまま何もしない場合のシナリオ及び経営者の危機感について(田嶋政務官)

(佐藤部長)

何もしなければ株式会社なので資金繰りがショートする。是非商品の取引の土俵は確保してほしい。土壌がなければ商売できない。東工取と東穀はシステム統合したが、その先の展望が描けていない。

(浅田課長)

現状は中途半端との印象。国内の取引所が潰れてしまっては困るが、信頼がなくなれば海外に流れてしまう。

(数原駐日代表)

日本の市場が国外にできてしまうこともあり得る。日本に市場がなければ海外に向かう。中長期的には商品だけでなく証券でも起こり得る。日本の取引所が国内、海外或いは両方の投資家を向いているのか見えない。総合取引所イコール日本市場の活性化とは限らない。資金の流れは、国内資金が国内、国内資金が国外、国外資金が国内、国外資金が日本経由で第3国に向かうという4つのルートがあり、こうした資金の流れをつくる必要。日本は金融インフラが整っており、金融機関のバックオフィスもしっかりしているが、国内外を同等に取引することが難しい。これを是正することも本当の活性化につながるのでは。

○海外と日本の市場ルールの違いについて(松下副大臣)

(数原駐日代表)

国内外の商品の取扱いが一本化されておらず、例えば同種の商品であっても税率が異なる。

(佐藤部長)

省庁ごとに違う管理のされ方になっており、個別に課税され損益通算できないのは大きな阻害要因。

○年金基金が商品投資をするようになった理由について(松下副大臣)

(浅田課長)

商品は直接資産査定ができないので、投資顧問業者を介して信頼できる海外投資マネージャーを使っている。試験的に商品投資を導入して少しずつ運用成績を見ながら投資額を増やしている状況。

(以上)

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3562、3618)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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