「ベンチャーキャピタルに関する有識者会議」(第1回)議事録

1.日時:令和6年4月30日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室 ※オンライン併用

 
「ベンチャーキャピタルに関する有識者会議」(第1回)
令和6年4月30日

【幸田座長】  
 皆さん、おはようございます。お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、定刻になりましたので、ただいまより、「ベンチャーキャピタルに関する有識者会議」第1回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参加いただき、誠にありがとうございます。私は、当有識者会議の座長を務めさせていただきます、京都大学の幸田です。どうぞ皆さんよろしくお願いいたします。

 初めに、当有識者会議につきましては、昨年12月に公表されました、金融審議会「市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォース」報告書において提言されましたベンチャーキャピタル向けのプリンシプル策定に向けた議論を行うため、本会合を開催いたします。

 本日は、第1回目の会合でございますので、メンバーの皆様を御紹介したいところではございますが、審議内容も多々ございますため、お手元の資料1-2に名簿がございますので、そちらで代えさせていただきたいと存じます。また、出席者につきましても、同様に資料1-2及びお手元の座席表をもって御紹介に代えさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、会議の運営要領(案)について事務局から御説明をお願いいたします。

【齊藤企画市場局市場課長】
 金融庁市場課長の齊藤と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、有識者会議は、金融庁と経済産業省の共催となります。事務局としての作業は金融庁が行います。
 
 次に、運営要領(案)につきまして御説明させていただきます。お手元の資料、右上に資料1-3と書いてある資料を御覧いただけますでしょうか。ベンチャーキャピタルに関する有識者会議運営要領(案)でございます。資料の内容につきましては御覧のとおりでございますが、若干補足させていただきます。

 まず、第2条2項で、情報通信機器を利用して会議を開催することができるということで、オンライン併用にさせていただいているところでございます。また第5条、有識者会議の公開につきまして、当会議につきましては公開とさせていただければと思います。また第6条、議事要旨の作成及び公表につきまして、議事要旨は会議の都度作成し、公表するものとさせていただければと思います。また第7条、有識者会議の資料につきまして、資料は公表するものとすると、こういった扱いとさせていただいております。以上でございます。

【幸田座長】
 御説明ありがとうございました。皆様方、以下のような運営要領の方針について御承認いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【幸田座長】
 それでは、御承認いただきましたので、この運営要領に基づいて運営をしてまいります。

 それでは、議事に移らせていただきます。本日は、まず事務局より、これまでのベンチャーキャピタルをめぐる検討経緯と取り巻く環境について御説明いただいた後、経済産業省の亀山課長、富原室長、日本ベンチャーキャピタル協会の郷治会長、産業革新投資機構の久村様、日本取締役協会の宮下会長補佐から、それぞれの取組みについて御説明をいただきます。その後、事務局から、ベンチャーキャピタル向けのプリンシプル策定に向けて御議論いただきたい事項について御説明いただき、メンバーの皆様から御意見を賜りたいと思います。

 まず、事務局説明資料について、事務局より説明をお願いします。

【齊藤企画市場局市場課長】
 右肩の資料番号、資料2-1と書いております資料を御覧いただければと思います。「これまでの経緯と取り巻く環境等」と題している資料でございます。

 次のページでございますけれども、2ページ目、目次としましては、これまでの検討経緯、そしてベンチャーキャピタル取り巻く環境、そして、ILPAのプリンシプル等について若干補足させていただければと思っております。

 右下のページ番号3ページ目をおめくりいただけますか。昨年12月に取りまとめられました金融審議会「市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォース」報告書の概要でございます。インベストメント・チェーンを通じた「成長と分配の好循環」を推進し、資産運用立国の実現に向けた取組みを進めるということを目的とし、種々の取組みが盛り込まれているところでございます。そのうち、④の成長資金の供給と運用対象の多様化、これを通じてスタートアップの活性化、収益機会の拡大を図るということで、ベンチャーキャピタル向けのプリンシプルの策定が盛り込まれているところでございます。

 4ページ目を御覧いただけますでしょうか。こちらは続きまして、先ほどの報告書の概要をより具体的に示した絵となります。左側のaのところでございますが、機関投資家からVCへの資金の流れを拡大するため、「ベンチャーキャピタル・プリンシプル」を策定するという内容が入っているところでございます。

 次のページ、5ページ目が報告書の記載本文でございます。黒四角の1つ目でございますけれども、「スタートアップ企業への資金供給を円滑化するためには、国内外の機関投資家の資金がVCを通じて国内のスタートアップ企業に供給される流れを拡大することが重要である。そのためには、国内のVCの運営について、海外VCと同等のガバナンスや情報提供等が確保されていく必要があることが指摘されている」とされております。そして、2つ目の四角の真ん中でございますけれども、「我が国スタートアップ企業を取り巻く状況やグローバルな実務等を踏まえたベンチャーキャピタル・プリンシプルを策定し、広く機関投資家から調達を行うVC全体のガバナンス等の水準の向上を図ることが適当である」といった指摘をしていただいているところでございます。また、「なお」ということでございますけれども、「多数の投資家からのLP出資を予定していないVCとして、例えばCVC等もあるため、そうしたVCがあることも踏まえながら、プリンシプルの範囲や内容等を検討していくことが適当」と指摘されているところでございます。その下の資産運用立国実現プランにおきましても、「ベンチャーキャピタル向けのプリンシプルを策定する」といった内容が盛り込まれているところでございます。

 次の6ページ目でございますが、こちらはベンチャーキャピタル・プリンシプルの策定に関する提言の概要を示すものとしてまとめた資料でございます。真ん中の図がございますけれども、左側の機関投資家ないしはアセットオーナーからのLP出資の流れ、これを太くしていくと。そして左側のアセットオーナーについては、アセットオーナー・プリンシプルというものを政府として定めるということになっております。受益者に適切な運用の成果をもたらすよう、アセットオーナーに求められる役割を明確化したプリンシプルを策定することとなっております。そのお金の受け手としてのベンチャーキャピタル向けでございますけれども、広く機関投資家からLP出資の獲得を目指すベンチャーキャピタルへの期待を示すものとして、ベンチャーキャピタル・プリンシプルを策定してはどうかということでございます。

 次の7ページ目でございます。新興運用業者促進プログラム(EMP)ということで、こちらは先ほどの報告書ないしは資産運用立国実現プランにも盛り込まれているものでございます。我が国の金融業界及びアセットオーナーが新興運用業者による運用成果を通じて、より顧客の最善の利益を実現できる環境を整備するための総合的な取組みを示すものということでございます。真ん中の図の左側、金融機関の取組みあるいはアセットオーナーの取組みによりまして、投資運用力の高い投資運用業者を発掘し、運用資金を供給していくと。そして、真ん中でございますけれども、多様な運用を行う多数の新興運用業者の登場を目指していくと。これを後押しすることをやっていくということで、上側に記載する様々なアセットクラスの一つにベンチャーキャピタルも含まれているところでございます。

 続きまして、次のスライドから、ベンチャーキャピタルを取り巻く環境ということで若干データの資料を用意しているところでございます。

 9ページでございます。機関投資家からVCに対する投資の状況についてでございます。VCへの資金供給者を日米で比較しております。左側の円グラフ、日本では事業法人や銀行等の預金取扱金融機関が約半数を占めている一方、右側の米国では年金基金、財団、寄付基金、保険会社が6割程度を占めていると、そういった状況でございます。

 次のスライドは、スタートアップへの資金供給の状況についてでございます。国内スタートアップの資金調達額は、左側の棒グラフでございますが、年々増加傾向にあり、2022年は1兆円に迫る水準でございました。そして右側の円グラフでございますけれども、国内スタートアップに投資を行う主体のうち、VCによる投資額は全体の37%を占めるということで、重要な役割を果たしている状況が見てとれるかと思います。

 次のページが規模別・属性別VCの組成・投資状況でございます。左側の円グラフは日米の規模別VCファンド数の割合でございます。2023年に組成された我が国のVCファンドのうち、100億円を超えるVCファンドの割合は11.3%である一方、2021年に組成された米国VCのうち、1億ドルを超えるVCの割合は36.4%に及ぶ状況になっております。また、右側のグラフでございますけれども、日本のVC属性別の投資額割合ということで、一番下の青の濃く塗っているところがVCの独立系ということでございまして、4割近くと最も多くなっている状況でございます。

 続きまして、次のページから、ILPA等のプリンシプルの内容を若干御説明させていただければと思います。
 13ページをお願いします。ILPAのプリンシプルの概要でございます。ILPAにつきましては、(注1)でございますけれども、非上場株式投資を行うLPのために設立された国際的な非営利団体と承知しております。このILPAにおきましては、非上場株式投資におけるベストプラクティスとしてプリンシプルを策定しているところでございます。運用主体たるGPと出資主体たるLPの双方が本プリンシプルの考え方を理解し、対話し、議論すると。これを促すことが目的とされておりまして、御覧のように透明性、ガバナンス、利害の一致等に関しての項目が並んでいるところでございます。

 次のスライド、14ページ目でございますが、ILPAにおきましては、レポーティング・テンプレート・ガイダンスを作成しているところでございます。御参照いただければと思います。

 続いて15ページ目、これはILPAの会員機関の概要ということで、これも御参照いただければと思います。

 16ページ目でございます。日本取締役協会のスタートアップメンバー会が、昨年4月に取りまとめている提言でございます。我が国のベンチャー・エコシステムの高度化に向けた提言ということで、この後、宮下様から詳細の御説明があると思いますけれども、ユニコーン企業の輩出を目指して、国内ベンチャー・エコシステムの環境整備を図るための提言といった内容となっているところでございます。私からは以上でございます。
 
【幸田座長】
 ありがとうございました。それでは、次に、経済産業省から御説明をお願いします。
 
【経済産業省 亀山産業資金課長】
 ありがとうございます。経済産業省産業資金課長の亀山と申します。まず、私から、今回の会議に際しまして、経産省の問題意識、取組みについて全体の考え方を御説明させていただきます。資料2-2の1ページ目を御覧ください。

 改めて申し上げるまでもないですが、スタートアップは経済成長のドライバー、イノベーションの担い手でございます。そういう意味で、経産省の産業政策の中でもこの育成の取組みというのは非常に重要な位置づけをしてございます。政府全体といたしましても、スタートアップ育成5か年計画というものを定めまして、金融庁さんも含めて政府一丸となって取り組んでいるところでございます。

 他方、スタートアップの資金調達環境、これは改善してきているとは思いますけれども、まだまだ海外との格差が大きい状況でございます。それから、特にレイターステージのスタートアップへの資金供給が不足をしている状況と認識してございます。今の日本のスタートアップは、かなり産業界の取組み、政府の取組みを含めて、裾野は広がりつつあるのかなと思っておりますが、まだまだ大きな課題としては、世界と戦えるメガスタートアップの創出・育成、これがまだまだできていないところがあると思っております。

 いろんな要因がもちろんございます。大きく育てるためのセカンダリー取引の活性化ですとかM&Aの活性化、海外展開の支援、いろいろ課題はあると思いますが、一つ大きな課題としては、先ほど申し上げた、大きく成長するためのレイターステージの大規模な支援、これがまだまだ不十分である。そのためには、大規模な投資ができる機関投資家とか海外の投資家の呼込みが重要であると思っておりまして、現状、先ほども御説明ありましたが、国内外の機関投資家から資金受託できているような国内のGPはまだまだ少ない状況と認識をしてございます。

 こういった問題意識の中で、経産省としても、下に少し並べておりますが、内外の機関投資家からの投資促進ということで、例えば産業革新投資機構とか中小機構、官民ファンドによる内外のVCへのLP出資の推進、それから、LPS会計規則において、公正価値評価を原則に位置づけまして、ファンドのパフォーマンスの見える化をすることで機関投資家からの資金を呼び込みやすくすると。それから3つ目のところ、ベンチャー投資に係る契約の留意事項を策定いたしまして、グローバルスタンダードを踏まえた契約慣行が普及するように取り組んでいるというところでございます。

 この3点目はこの会議の議論にも直接関わってくるところでありますので、中身を御紹介させていただきます。
 
【経済産業省 富原新規事業創造推進室長】
 ご説明させていただきます。次のページをお願いします。

 次のページにございますが、平成30年のところです。こちらは、一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会様の協力を得まして、「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」というものを策定しました。その後、さらにベンチャー投資に係る投資環境の変化を受けまして、さらにその成長戦略の御指示を受けまして、公正取引メンバー会が実態調査を開始しまして、令和4年3月に、指針と、あとこの留意事項の改訂がございます。指針においては、事業連携や出資によるイノベーションの創出を促すため、スタートアップと連携事業者、出資者との間のあるべき契約及び取引の姿、考え方を目指すということを目的に、その際に生じるような問題事例、ないし、その事例に対する独占禁止法競争政策上の考え方、問題の背景、解決の方向性を示すものになります。この指針のところですけれども、次のページにございますが、営業秘密の開示だったりとかNDA違反、無償作業、出資者が第三者に委託した業務の費用負担とかを書いてございますけれども、これらについては、この有識者会議のスコープの外と認識をしているCVCの方々なんかもその想定をしたものになってございます。

 次のページをお願いします。その中でも大きく論点として取り上げられましたのは、こちらに書いてございます、株式の買取請求権、①、②と書いてございますけれども、左側につきましては、買取請求権の規定については、出資者とスタートアップ側が十分な協議の上、その行使条件については重大な表明保証違反や重大な契約違反に明確に限定すべきではないか、また、それの行使を示唆した不当な圧力を阻止すべきじゃないかというところが一つ指摘されているというところと、あと②に関しましては、発行会社と経営株主の連帯責任を求めるような出資契約の情報については、グローバルな観点からはあまり例がない、また融資に関しても、その経営者の個人保証みたいなことを求めない方向で融資慣行がシフトしているということ、あるいは、その発行会社と連帯責任を求めるような商慣行は、企業や企業経営のインセンティブを阻害するという点に鑑みまして、契約違反時の買取請求権は発行会社のみに限定し、経営株主等の個人を除いていくことが望ましいということがこれらにおいて指摘されました。

 6ページ目に一旦戻っていただきまして、こちらのページに戻っていきますと、そういったことを踏まえまして、「留意事項」というところが改訂はされているんですけれども、今年の2月から改めてこの検討会を開催しておりまして、改めてスタートアップをめぐる環境の変化を受けて、かつ、最近におきましては、ローカルで小型のITを実現するようなスタートアップのみならず、グローバルの投資家からも資金調達を受けながら、グローバル市場を目指していくようなスタートアップが増えてきたと、そういったことを目指して、グローバルスタートアップを支えるような契約慣行の在り方について、この留意事項の増補版として策定するということを目指しているものでございます。

 最後のページをお願いします。また、今御説明したものとはもう一つ違う取組みとしまして、投資事業有限責任組合に係るモデル契約書についてという取組みがございます。こちらに関しましては、経産省において、LPS法を所管する立場から、「投資事業有限責任組合モデル契約」というものを平成22年に作成したことに加えまして、組合契約(例)及びその解説を平成30年3月に公表してございます。これらについては、契約の一つの例を示したものでございまして、これにそのまま依拠して実際の契約書が作成されるということを想定しているというよりは、GPと多くのLP間の交渉の効率化という観点で、一つのモデルを示しているというものでございます。一番下のポツにもございますけれども、これらについては、LPSのあるべき姿を規範として公表しているものではございません。右下のグラフにはございますが、実際多くの方にこのモデル契約書を活用した契約締結をしていただいていると認識をしております。以上です。
 
【幸田座長】
 ありがとうございました。それでは、次に日本ベンチャーキャピタル協会から御説明をお願いします。
 
【日本ベンチャーキャピタル協会】
 日本ベンチャーキャピタル協会会長の郷治でございます。本日はこのような資産運用立国の実現に向けてベンチャーキャピタルにハイライトをして御審議いただく機会をいただきまして、また発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。それでは、協会の資料を御説明させていただきたいと思います。

 まず2ページの協会概要でございますけれども、当協会は2002年の設立で、ちょうど20年ちょっと経っているところでございます。私は、前職では、通商産業省にて「投資事業有限責任組合契約に関する法律」の制定を1997年から98年にかけて担当しておりました。その後、金融庁でも2003年に2か月ほどですが、勤務させていただいていたことがございます。2004年からはベンチャーキャピタルの仕事をしておるのですけれども、協会におきましては10年ほど前から主に政策担当ということで理事を務めてまいりました。

 協会では、次の4ページで御覧のとおり、この10年で374社まで会員が増えてきたところです。中でもVC会員とCVC会員は、計280社以上となっており、この10年で6倍ほどに増えているところでございます。
 活動方針といたしましては、この5ページにもございますが、まさにこの有識者会議でも目標にしております投資マネーの拡大ということで、LP様から、よりご投資をいただけるVC業界をつくっていければということでございます。また、資金循環の促進ということも2点目にうたっております。日本では、VC業界におけるCVCの役割は非常に大きいという特徴がございますので、大企業のCVC活動でありますとか、M&Aといった活動とも一緒に連携しながら、この業界を盛り上げていきたいということでございます。

 6ページでは、当協会として目指しているところとして、上場・非上場を含むスタートアップの株式時価総額、いわゆる企業価値を100兆円規模とするということを謳っております。政府で5か年計画を22年の11月に策定いただきましたけれども、そちらではスタートアップへの投資額を10倍にすると、27年までに10兆円規模にするという目標をされておりまして、私どもとしては、その投資対象である企業の価値を高めることで、その実現に向けて尽力してまいりたいと考えております。

 その次の7ページが当協会の体制でございますが、3つのメンバー会、あと10ほどの部会、室等に分かれておりますが、赤で囲みましたところが、今回の有識者会議のテーマに特に関連がある活動を行ってきたところになります。

 具体的には、8ページに見出しを5つ載せておりますけれども、機関投資家からの資金をしっかりとお預かりするために、VC業界としてこの10年間いろいろ活動してまいったことの御紹介をさせてください。1点目が、ファンドの公正価値評価でございます。有責法においては、当時としては日本で初めて、時価評価による会計制度を導入したのですが、それはあくまでも有責法の会計規則にとどまっていたということで、金融商品会計の世界においても、時価評価として公正価値評価が導入されていくように、ということをこれまでも勉強させていただいてきたところでございます。おかげさまで有責会計だけではなくて、金商会計におきましても公正価値評価の導入に向けて進めていただいていると理解をしておりまして、感謝申し上げたいと思います。

 10ページですが、公正価値評価が実際にどれぐらい使われているかということですが、こちらのデータを提供した日本のVCファンドのうち、金額規模で見た場合には、直近ですと46%が公正価値評価を行っているということでございます。日本のVCファンドでは、何らかの時価評価は有責会計上これまでもやられてきているのですけども、ILPA等で採用されている公正価値評価の基準を充足しているものはこれだけの割合、ということでございます。また、なぜ公正価値評価が大事かといいますと、VCファンドのパフォーマンスを測る際に各ファンド間で同じ物差しになるということがあるわけでございますけれども、それに関するデータが11ページの国内VCパフォーマンスベンチマークというものでございます。こちらの策定については、国内の主だった機関投資家様の御指導をいただきながら、2018年ぐらいから議論をしておったのですけども、2020年にPreginというヨーロッパのファンドデータ提供会社と提携いたしまして、VC協会の会員企業を中心にデータを集めてきたということでございます。直近ですと、これは箱の中に図表1というのがございますが、国内のVC市場のコミットメント総額は3.3兆円あると言われておるのですが、その7割強に当たる2.3兆円のデータを2010年以降の設立年ごとに集めまして、日本のVCファンドのパフォーマンスのベンチマークを公表いたしました。こうした取組みは、海外を含む機関投資家の呼込みにもプラスになってきたかと思っております。

 よりプラクティスのほうに入りまして、12ページですが、③でDDQの作成とございます。こちらは、デューディリジェンス・クエスチョネアということで、LP様がGPをデューデリジェンス(精査)するときのモデル的な質問項目をまとめたものということでございます。国内の主要な機関投資家の皆様にお知恵をいただきながら、つくってきたということでございます。

 こちらについては、13ページに具体的な項目を挙げておりますけども、1番の会社情報全般から12番の法務/管理まで、今回の有識者会議でもテーマにされております、受託者責任・ガバナンス、情報提供、利害の一致について、それぞれの審査項目のひな形を提示しているものでございます。

 続きまして14ページですけれども、より法務面の運用実務ということで、まずコンプライアンスハンドブックというものでございます。こちらは2021年に森・濱田松本法律事務所様の御協力をいただきまして、本日も同事務所から田中先生が御出席されておりますけども、このようなコンプライアンスハンドブックというものを作成いたしました。会員向けにも勉強会を頻繁に行っておりまして、会員におけるコンプライアンスの向上に努めているところでございます。こちらの中でも、受託者責任・ガバナンス、情報提供、利害の一致等々の項目について取り上げているところでございます。

 次の15ページは、先ほど経産省からも御紹介いただきましたが、LP様とGPの間の投資事業有限責任組合契約の例の解説でございまして、こちらでも、5つのテーマについての契約例を提示し、解説をしているところでございます。

 さらに、16ページですが、国内のみならず海外の機関投資家様にも、日本のVC業界の周知でありますとかパフォーマンスの認知度向上ということで活動しておりまして、最近ではシンガポールやロンドンで説明会を行ってまいりました。今年はアメリカで行う予定でございます。また、ここには書いてございませんけども、今年の秋には、世界各国のベンチャーキャピタル協会の方々に、一堂に東京に集まっていただいて、グローバル・ベンチャーキャピタル・コングレスという会議を日本で初めて開催する予定でございます。

 当協会としてはこれまでそういった活動を進めてまいったところですけども、最後のスライドが、当有識者会議に望むことでございます。「VCプリンシプル」という形で今回、御検討をいただいているということでございますが、こちらは、金融審の市場制度ワーキング・グループで議論されて出てきた概念ということでございますけども、そもそも、このVCファンドへの投資というアセットクラスは、機関投資家様などのLP様と、GPであるベンチャーキャピタルとの共同事業という形で行われる形態でございます。有責法の3条1項にも明記されているのですけれども、このファンドの形態は、GPに対してLPがお任せしっ放しのものではない、共同事業であるパートナーシップであります。LPといっても、リミテッドパートナーと申しますように、GPへの委任はございますが、あくまでもLPとGPの間の共同事業として規律されるというのがVCファンドであり、それが各LP様の出資目的や利益にかなうという大原則があるのかと考えております。

 先ほどILPAのプリンシプルについて、齊藤課長から御説明がございました。このILPAはワシントンD.C.に本拠がございますけれども、日本よりもはるかにVCファンドというアセットクラスが発展しているアメリカ等の海外におきましては、規制当局がVCの行為規範をつくっているわけではありません。あくまでも民間のLPの団体であるILPAを中心に、LPSの受任者となるGPを対象としたプリンシプルを定めているということでございまして、日本においてだけ規制当局が直接VCプリンシプルをつくるという体を取るということは、グローバルなスタンダードに反するのではないかと考えてございます。

 また、スタートアップ推進5か年計画の中にも、VCの発展を支援することや、海外投資家や海外VCの呼込みといったことが書いてございますし、事業会社からのVCへの参画を促進するといったことも書いてあるのですけども、もし、日本においてのみ、国が直接当局として「VCプリンシプル」をつくろうとするのであれば、そのような「プリンシプル」は海外にない行為規制につながりかねないとの懸念を招くなど、5か年計画の方向性に反することにならないか、ということを危惧しております。

 ですので、この有識者会議では、直接VCプリンシプルを当局としてつくるということではなく、大きな目的である資産運用立国の実現のために、アセットオーナーがVCファンドにLP出資する際の留意事項について議論をするという形としていただいて、VCの行為規範やプリンシプルについては、米国等と同様、民間同士でつくるように促していただくこととしていただけると大変ありがたいと思います。あくまでもVCプラクティスの規範形成は民間に委ねることとしないと、国の関与として過剰な形になってしまうのではないかということを危惧しております。

 その上で、「基本的な考え方」につきましては、ご議論いただく上で、まずは、対象となるアセットオーナーとVCの範疇についてご議論いただくのがよろしいかと思います。アセットオーナーの皆様はいろいろな目的で出資していらっしゃるわけですし、それぞれの出資者の出資目的と利益にかなうように、各LPの属性や目的に応じてどのようなものを考えるのがいいのか、というご議論をいただきたいと思います。

 また、ベストプラクティスと一言で申しましても、LP、GP間で様々に、またグローバルに、そのありようは進化するもの、変化するものかと思います。私どもも日々、LPの皆様によいリターンをお返しするために工夫をしておるのですけども、投資対象の国・地域、法制度、契約慣行は様々ですし、また投資対象企業でも日本のスタートアップと海外のスタートアップでは大分違いますし、エグジット環境も違う、時期も違ってまいります。日本の規制当局が「VCプリンシプル」という形で、一律に行為規範を定めるというようなことはしていただきたくないと考えております。

 その上で、当有識者会議で議論されるべき論点としては、当有識者会議の想定するアセットオーナーやその機能の範疇、対象となる出資者の属性や出資目的、対象となるVCやその事業について確認すること。また、VCはアセットオーナーである各LPの出資目的に沿って、そのアセットの毀損を防ぎながら良い成果をもたらすためにいろいろな創意工夫をしておるのですが、そういった具体的なプラクティスが妨げられるような、一律のルールをつくることにならないようにしていただきたいということがございます。そのための留意事項として、受託者責任・ガバナンス、情報提供、利害の一致、投資先企業の価値向上といったテーマについて、その意義と目的をしっかり議論いただいて、具体的なプラクティスに関するプリンシプルについては、プロフェッショナルであるアセットオーナーのLPがGPとの間で定められるよう、議論の土台を提供いただくことに留めていただきたいと考えております。以上でございます。
 
【幸田座長】
 御説明ありがとうございました。それでは、次に産業革新投資機構から御説明をお願いします。
 
【産業革新投資機構】
 JICのCIOを務めております久村と申します。よろしくお願いします。

 初めに、説明資料に入る前に、簡単にJICの御説明をさせていただければと思います。JICは官民ファンドでございますが、ファンド投資のチームにつきましては、私以下、グローバルに、VCですとかバイアウトファンド等も含めて投資してきた民間の出身者、ゲートキーパーですとかファンド、ファイナンス業界出身のメンバーでチームを構成しています。それで、これから申し上げることは官民ファンドとしての視点というよりは、民間のLPとして、かなりピュアなLPとして見てきて、日本のスタートアップ、特に今回はVCに関してですけども、そこの課題がどのように見えているか、また、JICがどのような取組みをしてきたかということについてお話させていただければと思っています。

 JICが民間のファンドに投資し始めてから約3年半が経過しているところでございます。この間、ファンド、VCさんですと、ファンドサイズで50億円ぐらいを超えるものについては、ほぼほぼ全て見させていただきました。ただし、CVC専属ですとか、キャプティブ系のファンドは除いて、ということになります。その中で30件ほどのファンドに投資させていただいております。このうち半数以上が、機関投資家さんが御覧になるにはまだ早い段階、ファーストファンド、セカンドファンド、サードファンド、この辺りを中心に投資してきているという形でございます。

 それでは、説明資料に入りまして2ページ目です。こちら、色々なアングルで語られているものですけども、国内のスタートアップに流れる資金について、2022年のイニシャルのデータに基づいて作った資料でございます。これを御覧いただきますと、スタートアップに流れるお金については、国内VCがかなり大きな部分を占めており、事業会社もしくは金融機関がダイレクトインベストメントをしている、ここもかなり大きな割合を占めています。国内VCのLPにつきましては、事業会社並びに事業目的の金融機関、これが大半を占めていたということだと思います。

 この10年を振り返ってみますと、スタートアップの投資額が10倍になったと言われておりますけども、この流れというのは、事業会社のオープンイノベーション、ここを支える形でVCさんがしっかりと御活躍されてきたということだと理解しております。ですので、ここは引き続き重要だと理解をしています。
 一方で、このオレンジの線のところを御覧いただきますと、国内外の機関投資家の資金が国内のVCに流れるところですけども、ここが非常に細いというのが見てとれると思います。国内のリスクキャピタルはどうなっているのだ、もっとVCに投資すべきだという声もあるのですけども、リスクキャピタルはあります。あるのですが、残念ながら海外のVCもしくはPEで広くバイアウト、こういったところに行っていて、国内のVCは相対的に魅力度が低いということで、リスクキャピタルが回っていないというのが実態と御理解いただくのがいいだろうと思っております。

 また、VCを介さずに、スタートアップに投資されるグローバルVCの資金というのも一定程度入ってはおりますけども、金額そのものが少ないということと、割合的に見ても、米国、欧州及びアジアに比べても少ないのではないかと言われていますので、国内のスタートアップの、投資家から見た魅力度を高める、投資家、LPから見た国内VCの魅力度を高めるということが非常に重要と考えてございます。

 特に、5年で10倍と言われていますけども、ヨーロッパを見ますと、ヨーロッパも10年前はマーケットでスタートアップの資金調達が1兆円、これが2020年、21年で10兆円になって10倍になりました。そのときのVCの資金が、ヨーロッパも10年前まで5,000億円ぐらいだったのですけども、それが大体5倍、2兆5,000億円ぐらいになっていますという、そういう世界です。ですので、国内で今後スタートアップへの資金を増やそうとすると、国内VCの今の、大体年間5,000億円から7,000億円ぐらいのレベル、これを5倍ぐらいにしていくことが必要だと理解しています。

 3ページ目を御覧いただきますと、VCの成長段階を表したものでございますが、右下に記載しているのですけども、事業会社さんは、オープンイノベーションの目的で投資をされていらっしゃるんですけども、ファンドに投資した後は御自身でCVCを作るとか直接投資をされるということで、国内VCのLPとして継続的に期待できるかというと、実態としてはそれほどでもないのではないかと見ています。

 実際私どもの投資先ファンドを見ていても、そういった事業会社さんのLPの継続率が低く見えていますので、今までは今までとしてオープンイノベーションのために非常に重要だったのですけども、今後、国内のVCさんは、国内外のLP、ここのリスクキャピタル、をどうやって取っていくかというのが重要ではないかと思っています。

 現状は、ここの4段階目、5段階目、これが国内外の機関投資家から資金受託できているファンドというイメージですけれども、2019年で、私どものカウントでいきますと、大体10社ぐらいのVCが、主に国内の機関投資家の資金を受託していたのかと思います。足元では大体20社程度、ちょっと緩めに見て20社程度ということかと思います。JIC投資先の30社のうち11社について国内外の機関投資家からの資金が入っています。この11社のうち7社が、JICが投資する前に、これから申し上げるような形でかなりいろいろな交渉をし、改革もしていただいているのですけども、JICが投資した後に、国内外の機関投資家さんから初めて資金を受託されたという結果になってございます。

 4ページ目でございます。国内外の機関投資家が、どういった形でファンドを見るかというところです。これは御出席のLPの方、GPの方はよく御存知だと思いますけども、2つあります。まずリターンの面でございますけども、LP目線でいきますと、グローバルに投資する投資家からすると、グローバルにトップ4分の1のファンドリターンを求めるという方が多いです。これは2倍ではなくてネットでは3倍、グロスでは4倍から5倍のリターンということになるかと思います。

 国内のバイアウトとVCでも、投資家の資金を競い合うことになるのですが、国内バイアウトでも2倍ぐらいはリターンが取れるかと思います。どうしてもリスク面ではバイアウトの方が低いということで、皆さんどうしてもバイアウトを選好されるということでございますので、ここのVCさんのリターン目線というのは上げていただく必要が大きいだろうと思います。これがリターン改善の努力ということで、色々な取組みがあり得ると書かせていただいております。

 もう一つは定性的なGP評価のところでございます。ここについては、ちょうど後ろの方に説明資料もございますけども、どちらかというとネガティブチェック的といいますか、ここで引っかかると、なかなか前に進めないというのが機関投資家でございます。ここのリスクを取ってもリターンにはつながらないので、いかにここのところをスムーズにLPの方に評価をいただくかというのは重要だろうと思っています。

 ここはもちろん、GP・LPの関係でいけば、GPさんとしてリターンを3倍、5倍と平気で出しています、今後も期待できますということであれば、何を言われようと我が道を行くということで結構ですけども、グローバルにより多くのLPを入れようということをお考えであれば、グローバルスタンダードに近いところにしていただく必要があるのではないかと思います。

 右下の方に、今回のVCプリンシプルを作られるということへの期待ということで、記載させていただいていますが、GPのレベルアップ、これは機関投資家から資金を受託するという意味でのレベルアップということでお考えをいただければと思います。2つ目は、機関投資家さんから資金受託できる可能性があるVCのプールを増やすことに確実に寄与すると思っています。

 リターンがついてこないと、幾ら定性面を磨いても資金受託はできませんけども、ここが磨かれていないと引っかかって、それを乗り越えられる投資家さんからしか資金を受けられないという、そんなことになるかと思っています。また、GPにとっても、個々のLPが勝手に言うよりも、ある程度、共有されたものがあった方が対処はしやすいのではないかと考えてございます。

 5ページ以降に、今までのJICの取組みということで視点を書かせていただいています。全ては触れさせていただきませんが、1番目はコンフリクト、ここのところ、特に初号、2号ファンドあたりは、かなり組織的にもコンフリクトのある組織になっているところがありますので、ここはどういったファンドを目指すのだということを決めていただいて、機関投資家からの資金受託を目指すのであれば、初めからクリアしていただく必要があるかと思います。

 投資家の利害一致、ここは事業会社さんがLPであったとしても、本来入っているべきものではあるのですけども、往々にして事業会社さんはあまりここのところは気にされなかったりするとか、もしくはマイノリティーのLPなので、発言はするのだけども、GPさんに取り合ってもらえないというのが実態だと理解しておりますので、ここもGPとして、業界として見ていただくことが必要かと思っております。

 あと、組合契約のところで評価基準がございます。ここもいろいろと議論もあると思うのですが、私どものプラクティスというところで現状認識としては、ILPAガイドライン準拠の評価は、コストがそれなりにかかるということと、これを引き受けていただける監査法人のキャパシティーに限界があるというのが現状と理解しています。

 ですので、より現実的にということでいきますと、機関投資家からの資金受託を、そのファンドで意図して、それが望める段階のファンドには適用をお願いしています。100億円以上のファンドの場合には推奨という形にさせていただいていて、100億円未満の場合には、なかなか機関投資家が入ってくる段階ではありませんので、旧通産省モデルについても許容という形で進めさせていただいております。

 また、ミドルバックのところはあまり議論がないかと思いますけども、ここも機関投資家さんから資金受託すると、いろいろと問題になることが多いのですが、推奨としては、アウトソーシングをしていただくというのが実務的には現実解としていいかということで、推奨させていただいている次第でございます。

 8ページ目でございますけども、出資前の交渉例ということで、かなりハードにやっています。ここはJICとして各ファンドにおける最大の投資家のポジションを取らせていただいて、GPさんにも話を聞いていただける形にさせていただいた上で、もちろん、機関投資家さんから将来的に資金受託する方向性、これを望んでいる方についてはということですけども、長いファンドですと3年、短くても半年以上かけて、GPのストラクチャーのオーナーシップの変更なども含めて取組みをさせていただいているということでございます。

 9ページ目には、投資後にコミュニケーションを取るということで、主にレポーティング並びにミドルバックのところですけども、ここについても、いろいろと種々改善する点は多いかと思いますので、取組みをさせていただいているというところでございます。

 以上でございます。
 
【幸田座長】
 御説明ありがとうございました。それでは、次に日本取締役協会から御説明をお願いします。
 
【日本取締役協会】
 改めまして、宮下と申します。本日はこのような機会を賜りまして、誠にありがとうございます。

 私はふだん3つのハットをかぶりながら仕事をしているんですけども、一つは経営コンサルティングファームのフロントの人間として仕事をしております。肩書はジェネラル・カウンセルですけども、基本的には戦略コンサルとして仕事をしております。2つ目がグループ・ローファームの代表ということで、法律家としてのハットを被っております。3つ目が、日本取締役協会の会長補佐という役職を持っておりまして、本日はその立場でプレゼンテーションをさせていただければと思っております。

 5ページまで進んでください。日本取締役協会から、昨年の4月25日に、我が国のベンチャー・エコシステムの高度化に向けた提言というものを公表しております。なぜ日本取締役協会なのか。日本のコーポレートガバナンスの発信基地を我々は自負しておりますけども、その日本取締役協会からなぜスタートアップに関する提言を出したのかという部分でございますが、その理由が7ページでございます。

 これは一言で言うと、日本の稼ぐ力、これを向上させると、非連続的に向上させる、その柱としてのスタートアップを育てたいということでございます。にぎやかし的にスタートアップを出していこうということではなくて、本当に日本という国の稼ぐ力を向上させるその柱の一つとしてスタートアップをしっかりと生み出すために、我々ができることをやろうということでございます。

 スタートアップ育成5か年計画が出されまして、8ページに飛んでいただきまして、こういう政府の制度による後押しであるとか、予算による裏づけ、こういうものは、この数を増やしていくというところでは非常に重要なファクターになるわけです。我々はこのトライアングルモデルを前提にしておりますが、この横だけでは駄目だろうと。縦のほうもしっかりと深めていく必要があるということで、ページをめくっていただいて9ページ目です。

 スタートアップというのは、Winner takes allの世界です。要するに、小さな粒をたくさん集めても全体としては大きくならないんです。まさにPower Lawの世界です。なので、一つの粒を大きく育てるということが非常に重要で、一つの粒を大きく育てるというのはどういうことかというと、要するに、その経営力を高度化させるということです。なので、我々は規模の拡大のために個社の実力の底上げ、つまり、グローバル型のスタートアップを生み出すためのベストプラクティスを言語化したというのが、先ほど御紹介させていただいた提言ということでございます。

 その詳しい内容については、別途ユーチューブのほうで無料解説を公表しておりますので、そちらのほうに委ねるとして、ここでは結論部分だけお話をしたいと思います。それが10ページ目です。

 我々がその提言、42の提言を通じて実現したいと考えているこの世界観が、こちらのグローカル成長投資モデルという世界観です。この手の話をすると、よくありがちな、陥りがちなわなとして、私は純血主義のわなと呼んでいるんですけども、日本発のスタートアップを、日本発のVCが、日本で大成功させてグローバルに持っていると、こういう発想をしがちですけど、我々はそうじゃないだろうと思っておりまして。

 一言で言うと、戦略的な借り物協創モデル、これを実現したいということです。ここで言う協創というのは、competeの競争じゃなくてco-creationのほうの協創ですけども、戦略的な借り物協創をしてグローバルスタートアップを育成していくと。ここにありますとおり、創業期は創業メンバーがしっかりと事業の立ち上げを行って、シード期はローカルVCがその育成に向けた貢献を行い、そしてアーリー以降は、グローバルVCを招聘してくると。例えばセコイアとかファウンダーズファンドとかアンドリーセン・ホロウィッツとか、そういうグローバルファンドです。グローバルVCをしっかりと招聘してきて、グローバルモードへの切替えをそのタイミングで加速して、G型スタートアップの非連続的成長を実現していくと。こういう戦略的借り物協創モデルを実現するために、スタートアップが、またはそのスタートアップを支援するVCが、どのようなアティチュードで臨まなければいけないのかということを42の提言にまとめた、つまり言語化したというのが先ほど御紹介した提言でございます。
 こういう話をすると、よくありがちなのが、出羽守的な批判を受けることがございまして、実は我々はそういうことではないです。これは我々の実体験に基づくモデルでございまして、実は我々IGPIは北欧のほうでベンチャー投資を行っております。これはアドバイザリーとしてその活動を行っているのではなくて、実はGPをやっているんです。プリンシパルとしてVCの活動を行っております。北欧は、御存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、これは年によってばらつきもございますが、この3年ぐらいをならしてみると、毎年10以上のユニコーンを輩出している、そういうエリアです。日本というのは累計でそれぐらいですよね。

 何でそんなに違うんだと。経済規模でいうと、日本は600兆円のマーケットがあって、北欧の中で一番大きなスウェーデンでも60兆円です。人口でいうとたった1,000万人です。そういうエリアで、なぜそれだけ多くのユニコーンを輩出できるのかというと、一つは、その経済規模の小ささを逆手にとっていると。つまり、スタートアップを生み出すときには、day1からグローバルを目指すという、そういうマインドセットがもう既に根づいているわけです。

 もう一つが、それをしっかりと実現するための仕組みが出来上がっていて、それが、私が先ほど御紹介させていただいたモデルです。つまり、北欧におけるローカルなVCたちがやっていることは何かというと、アーリー以降でしっかりとグローバルなVCを連れていくための準備をしっかりとやっていると。

 例えば、北欧では英語は必ずしも公用語ではありません。スウェーデンはスウェーデン語が公用語ですけども、例えば、ボードを運営する際には英語を使った議論を行い、議事録も全て英語で残していると。それは後でDDを受けやすくするためにです。あと、投資契約なんかも当然英語で、グローバルスタンダードに準拠したものを初めから使っているということでございます。

 そのようなモデルを実現するための42の提言ということを御紹介させていただき、13ページまで行っていただきたいんですけども、その提言の中で、VCさん、これはVCさんだけではありませんけども、スタートアップを応援するステークホルダーに向けた提言という部分もございます。そこを抜き出したのが、その中でVCさんに対する提言を抜き出したものがこの13ページの2.2.1から2.2.9ということですけども、ここで書かれている内容は、後ほど金融庁さんから恐らく御紹介になる論点整理とほぼかぶっておりますので、私のほうはこちらを割愛させていただいて、紙に書いていない話をさせていただきたいと思います。

 ここに記載のあります内容は、これは言ってみれば各論です。これらに通底する総論がございまして、それは何かというと、グローバルアセットオーナーから選ばれるアセットクラスとしてのVC、これを目指していただきたいというのが通底する総論でございます。もう一度言いますと、グローバルなアセットオーナー、ペンションファンド、エンダウメント、ファンデーションですね、ここから選ばれるようなアセットクラスとしてのVCを目指していただきたいと。

 こういう話をすると、また先ほどと同じように出羽守というような批判を受けることがあるんですけども、私から言わせるとピントの外れた批判でございまして、それはどういうことかというと、金融というのはプラットフォームです。コンテンツそのものではないです。プラットフォームの価値というのは何で高められるかというと、要するに外部性です。外部性の効果を発揮しなければいけないと。そのためには、プラットフォームというのは、徹底的にその仕様はスタンダダイズしていなければいけないわけです。

 スタンダダイズして、多くのコンテンツをその上に乗せて、そのコンテンツがユニークネスを発揮し、また競争力を発揮することによってプラットフォーム全体の価値を高めていくと、これをつくっていかなければいけないと。なので、これは好むと好まざるとにかかわらず、グローバルなマーケットで勝負をしたいんだったら、そのスタンダードに合わせて徹底的にプラットフォームの立場はスタンダダイズするということが非常に重要になります。なので、ベンチャーにおける金融の役割を担われるVCの方々には、まさに先ほど申し上げたような世界化を目指していただきたいということであります。

 ちなみにですけども、スタートアップにおけるプラットフォームということでは、VCさんだけではなくて、投資契約とか投資プラクティスというのも、これもまさにプラットフォームです。これはコンテンツそのものではありません。なので我々はその部分に関してもスタンダダイズ、徹底的にグローバルスタンダードに合わせたスタンダダイズをしていただきたいということで、14ページ以降になりますけども、投資契約を英文で、しかもその内容をグローバルスタンダードに標準を合わせるような形でモデル契約を作成して、これを全て無料で公表しております。なので、日本で本当にグローバルスタートアップを目指したい方々に、ぜひこれを使っていただきたいということで、これも無料で公表しているものです。

 我々はこれを、提言を公表してから一貫して申し上げておりますけども、今ある日本のスタートアップエコシステムを無理に変えたいとか壊したいとかそういうことは一切思っておりません。そうではなくて、本当に日本の中でグローバルに勝負したいと思っているスタートアップとか、または勝負したいと思っている技術、これをグローバルに展開するための新たな選択肢を設けたいということでこの提言を打ち出しているということでございます。
 皆様におかれましては、ぜひ、国内外の機関投資家とテーマ設定されておりますけども、私が申し上げたのは、どちらかというと外のほうですけども、グローバルなアセットオーナーから選ばれるVCというような視点でもぜひ御議論を行っていただきたいと思っております。私からは以上となります。
 
【幸田座長】
 御説明ありがとうございました。それでは、次に事務局より、ベンチャーキャピタル向けのプリンシプル策定に向けて御議論いただきたい事項について、御説明をお願いします。
 
【齊藤企画市場局市場課長】
 資料3を御覧いただければと思います。

 1ページ目、目次でございますけれども、まずプリンシプルの基本的な考え方につきまして整理させていただいた上で、その後、プリンシプルに盛り込むべき各論点ということでまとめさせていただいております。

 次のページから基本的な考え方ということで、右下の3ページ目でございます。まず、目的についてでございます。一番上の四角でございますけれども、金融審議会の市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォースの報告書におきましては、以下を目的とすることとされています。四角で大きく囲っておりますけれども、「広く内外機関投資家から資金調達を目指すVCについて、国際水準を踏まえた投資先評価や受託者責任を果たす体制等の確立を推進し、長期運用に資するアセットクラスとしての魅力を高め、VC業界の発展を後押しする」と。つまり、広く内外機関投資家から資金調達を目指すVCを対象として、VC業界の発展を後押しすると、そういった目的が示されているところでございます。

 次の4ページ目でございます。プリンシプルの対象についてでございます。「広く内外機関投資家から資金調達を目指すVC」としてプリンシプルの対象となるVC、これにつきましては、GPにより判断され、またLPが投資判断するに当たって考慮すべきものということですが、次の点を明示してはどうかということでございます。
 まず、コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)についてでございますけれども、ガバナンスの在り方等については、当事者の合意に基づく特殊性があるということで、本プリンシプルの対象外であることを明確にしてはどうかということでございます。また、2点目としまして、初期段階のVCについてでございます。将来的に広く機関投資家から資金を集めることを視野に入れているものの、現段階ではそうしたフェーズになっていないVCということで、例えば初号ファンド、2号ファンドなど初期的な段階にあるVCでございますけれども、徐々に体制を整備していくことが考えられるのではないかということです。このプリンシプルの画一的な遵守を求めると、その後の発展等に阻害を来してしまう可能性があるということで、VCの規模や資金調達状況に応じた運営体制をとり、将来に向けて体制の構築を図っていくことを説明することで差し支えないということを明確にしてはどうかということを示させていただいております。また、その他金融系・大学系のVCなどでございますが、独立系ではない、金融機関や大学が本業との関係で戦略的に設立した金融系や大学系のVCについては、LPの状況や意向等に応じ、必要に応じてプリンシプルが参照されることが望ましいのではないかと示させていただいております。

 資料の下側に指摘されている内容を記載しております。ここでの意図でございますけれども、全てのVCに一律にプリンシプルを適用するということではなく、広く内外機関投資家から資金を集めようとする相応規模のVC向けのプリンシプルであるとの位置づけを明確にすべきといった御指摘でありますとか、プリンシプルの策定により、新興事業者によるVCの設立が難しくなるといったことがないように配慮することが必要と、こういった御指摘があることを踏まえたものでございます。

 次の5ページ目でございます。プリンシプルの位置づけについてでございます。画一的に遵守を求めるようなルールベースのアプローチではなくて、あくまで広く内外機関投資家から資金調達を目指すVCに期待されるベストプラクティスではないかと。また、機関投資家の目線で、どのような点が重視されるかをプリンシプルベースで示すものと、こういった位置づけがよいのではないということを示させていただいております。また、2つ目の四角でございますが、プリンシプルの対象となるVCのGPであっても、プリンシプルを遵守するためには体制整備に相応のコストが必要となることを踏まえまして、記載された事項を実施しない合理的な理由などをLPに説明することによる対応も許容されるということを明示してはどうかということを示させていただいています。また、3点目でございますが、広く内外機関投資家から資金調達を目指すVCにより、プリンシプルを意識した運営がなされ、また、LPが投資判断するに当たってプリンシプルを考慮することによって、両者が相互利用することにより活用されると、そういった位置づけがよいのではないかということを示させていただいております。
 また、括弧で書いておりますけれども、政府によりまして受入状況を集計・公表してフォローアップする位置づけではないということにしてはどうかということでございます。

 次のページから具体的な論点についてでございます。7ページ目をお開きください。論点として14項目ほど提示させていただいています。事務局で幅広くヒアリングを実施し、御指摘を受けたものをまとめたものでございます。次のページ以降で、具体的な点について御議論いただく事項を示させていただいております。

 8ページ目をお願いします。まず、受託者責任・ガバナンスについての1つ目として、受託者責任についてでございます。GPはLPに対する受託者責任を果たすために、LPの持分価値の最大化に向けて、VCを運営していくことが求められるということを十分認識すべきではないかと。(注)でございますけれども、VCにつきましては、基本的に、金商法上、顧客等に対する忠実義務あるいは善管注意義務が適用されることのほか、昨年成立しました法改正によりまして、顧客の最善利益を勘案しつつ誠実公正に業務を遂行することが義務づけられたところでございます。2つ目の四角としまして、GPとLPの意思疎通を促進する観点から、LPACを設置し、GPに利益相反の可能性がある場合を含め、ファンド運営に関する重要な決定等を議論すべきではないかと示させていただいております。

 次の9ページ目でございます。持続可能な経営体制の構築に関するものでございます。1つ目の四角でございますけれども、やむを得ない事情がある場合を除き、キーパーソンはファンド運営に専念する体制を整備すべきではないか。また、キーパーソンが離反する場合の考え方について、御覧のように示させていただいているところでございます。2つ目の四角につきまして、VCのファンドとしての継続性を高める観点から、複数のキャピタリストやミドルバックオフィス担当者を備えるなどの持続可能な体制を構築するべきではないかと。これは例えばミドルバックオフィス業務の体制ということであれば、必ずしも自前で整える必要はなく、アウトソースも含めて体制を構築することもあり得るということは念頭に置いているところでございます。

 次の10ページ目でございます。利益相反管理につきましてでございます。1つ目の四角としまして、ファンド組成時におきまして、利益相反が生じうる事項の特定とその管理体制に関する検討を行い、LPに説明すべきではないか。また、利益相反事項については、LPACに諮問を求めていくべきではないか。2つ目の四角でございますが、特にGPが他事業との兼任・兼業や複数ファンドの運営を行う場合には、利益相反管理の徹底が必要ではないか。他事業との兼任・兼業については、ファンド運営に影響があり得る場合には、投資先企業の価値向上につながるものなど、LPのリターン向上に資するものに限定すべきではないかと。また、複数ファンドの運営についてですが、これはやってはいけないということではなくて、ファンド間の利益相反に関する明確な管理体制を整備すべきではないかとまとめさせていただいております。

 次の11ページ目でございます。コンプライアンス管理についてでございます。コンプライアンスの責任者の明確化、あるいは必要な規程を整備することで、コンプライアンス管理の体制を確保すべきではないかと指摘させていただいております。

 次の12ページ目でございます。LPの権限の透明性確保、こちらはサイドレターに関する指摘を踏まえたものでございます。一部のLPが認識しないうちに不利益を被ることがないよう、特定のLPに対する個別権利の付与については、他のLPにも透明性が確保されるべきではないかといった点を指摘させていただいております。

 次の13ページ目でございます。ここからGPとLPのエコノミクスについてでございます。まず、出資コミットメントとして、いわゆるセイムボート出資についてでございます。GPとLPの利害を一致させるために、GPによるファンドに対する適切な出資コミットメントが行われるべきではないかと指摘させていただいております。

 次の14ページ目でございます。利益分配構造についてでございます。1つ目の四角でございます。2文目ですが、組合契約における利益分配構造等の主要な条件については、グローバルな機関投資家からの資金調達も見据え、ILPAプリンシプル等のグローバルスタンダードに配意したものとすべきではないか。2つ目の四角でございますが、GPとLP間の個別の経済条件については、民間当事者間の交渉において決められるべきものであるため、プリンシプルにおいて定めるものではないということで整理してはどうかということを指摘させていただいております。

 次の15ページ目でございます。ここからが情報提供についてでございます。まず、保有資産の公正価値評価についてでございます。保有する非上場企業の株式について公正価値評価を行った上で、LPに情報提供すべきではないかといったことを指摘させていただいております。

 次の16ページ目でございます。情報提供の頻度・内容でございます。基本的にはLPに対し、四半期ごとに財務情報を提供すべきではないかといった指摘をさせていただいております。

 次の17ページ目でございます。ここからが投資先企業の価値向上に関する論点でございます。スタートアップへの投資実行に関し、スタートアップとの投資契約については、事後の資金調達ラウンドでの円滑な資金調達、これは海外投資家の呼込みも含まれますが、こういったものや事業活動の展開に過度な制約とならないか、経営者による事業拡大・挑戦に向けたインセンティブ・意欲を適切に引き出すものとなっているかといった観点から、条件設定をすべきではないかという指摘をさせていただいております。

 次の18ページ目でございます。投資先の経営支援についてでございます。資金供給に加えまして、VCによる付加価値の提供が重要ではないかということでございます。これはVCの戦略に応じてということでございますけれども、人材の紹介、ビジネスマッチング、ノウハウの提供・コーチング、M&Aの支援等の各種経営支援を提供すべきではないかといった点でございます。また、2つ目の四角でございますが、VCから取締役を派遣する場合も多いと思いますけれども、そうした場合においては、株主全体の利益のために行動を行うべきではないかといった点を指摘させていただいております。

 次の19ページ目でございます。投資先の資本政策支援でございます。これはフォローオン投資についてでございます。自身が参加した資金調達ラウンド以降においても、当該企業の成長に向けた資金調達に必要な協力を行うべきではないか。その際、必要とされる場面においてはフォローオン投資の実施や投資契約の修正等の相談にも応じるべきではないか。また、ファンドの存続期間との関係でございますが、投資先企業の価値向上やLPのリターンの最大化の視点を踏まえて、ファンド期間の延長にも柔軟に取り組むべきではないか。また、2つ目の四角でございますが、投資先企業のエグジットについてでございますが、リターン最大化を図る観点から、上場だけでなく、M&Aも含めた、最適なエグジットの方法・タイミングを検討して、投資先企業の価値向上に向けた対応を行うべきではないかといった論点を掲げさせていただいております。

 続いて、20ページ目でございます。投資先の上場後の対応でございます。上場した後にVCが保有株式を売却する場合には、その売却価値が最大となるよう、売却時期や手法について、十分に検討すべきではないか。また、上場した後でございますが、例えば、レイター期から投資を行うVCなど、VCの戦略に応じてでございますけれども、株式を保有し続けること、クロスオーバー投資も期待されるのではないかといった点を挙げさせていただいております。

 21ページ目でございます。その他の論点でございます。まず、ESG対応でございます。LPを含むステークホルダーにおけるESGへの関心の高まりを踏まえまして、VCの戦略でESGポリシーを定める場合には、そうした観点からのファンド運営を行っていくことが必要ではないかといった点でございます。また、その他の論点ということで、これは指摘されている内容の御紹介でございますけれども、機関投資家はジェンダーダイバーシティに係る取組みを投資先企業に求めている動きもあるということで、スタートアップにおいてもそうした取組みを推進することが望ましいのではないか。その前提としまして、VC自身においても、ダイバーシティを尊重したファンド運営を行うことが重要ではないかといった視点があるものと承知しております。

 最後22ページ目でございますが、以上14項目の論点を挙げさせていただきましたけれども、その他盛り込むべき論点があるかどうかといった点についても御議論いただければと思っております。以上でございます。
 
【幸田座長】
 御説明ありがとうございました。

 それでは、本日の事務局説明、経済産業省の御説明、郷治様、久村様、宮下様からの御説明等を含めて、御質問、御意見等、メンバーの方々からお願いできればと思います。全体の会議時間の制約もございますので、御発言のお時間といたしましては、3分から4分を目安にしていただければと思います。

 その際、皆様からは、まずは、先ほど事務局から最後に御説明いただいた事務局説明資料のうち、まずはプリンシプルの基本的な考え方、目的、対象、位置づけの3点について、その考え方についてどう捉えているのか、皆様の全体感の御意見をいただいた上で、その上でプリンシプルに盛り込むべき論点についての各論に関し、御意見をいただき、また、必要に応じて、本日お話しいただいた方からの御説明に関する質問などもお願いいたします。
 また、御発言の順番に関しましては前後する可能性がございますので、あらかじめ御了承いただきますようお願いいたします。

 本日は10名のメンバーの方々のうち、会場に9メンバーがお見えいただいています。オンラインで渡辺メンバーが御参加いただいています。先に会場の方々から進めさせていただきたいと思いますが、途中でオンラインの渡辺様にタイミングを見てお話しいただきたいと思います。

 それでは、まずは御発言のある方は挙手をお願いいたします。それでは、御発言をお願いいたします。村田メンバー、お願いします。

【村田メンバー】  
 村田でございます。国内外の機関投資家から資金をお預かりしているベンチャーキャピタルのGPとして発言させていただきます。

 資料3の3ページ、上段に記載されております目的について意見を申し述べさせていただきます。国内VCにおいて機関投資家からの資金調達を広げること、受託者責任の体制確立を推進していくこと、アセットクラスとして魅力を高めていくこと、これらはいずれも推進すべきことかと認識をしておりますが、規制当局がこれをプリンシプルとしてルールのようなものをつくることには違和感がございます。

 本件は、本来LPとGP間のガバナンスの問題かと考えていまして、先ほどJICの久村さんがおっしゃっていたように、LPがGPを個別に鍛えてレベルを上げていくというプロセス自体が非常に重要かと考えております。規制当局のルールにアラインしていくというものではないかと考えております。

 このページの下段の2ポツ目に、国際的な実務から乖離した日本独自のものとならないように留意が必要と書いてございますが、規制当局がこのルールそのものをつくっていくこと自体がガラパゴスになってしまわないかということを懸念しています。既に国際的にスタンダードになっているILPAのガイドラインについて、こちらの資料でも言及がございますが、機関投資家LPを招こうとする国内VCは皆これを意識しておりまして、このILPAという団体自体がLPで構成されている、あくまで民間の団体と捉えています。

 私自身、JVCAでの企画部長等、それから理事の立場で9年間、公正価値評価、パフォーマンスベンチマーク、DDQなど民間で多くのルールをつくり、VC業界の皆で底上げをしてきました。そこでつくってきたもののうちの一つとして、先ほども言及いただきましたDDQですが、こちらはILPAの1.0をベースにつくったものですが、機関投資家から初めてファンドレイズをしようとする国内VCの多くがこれを使っております。これに今回指摘されているようなガバナンス、エコノミクスに関する言及も多く存在しています。

 このように、民間主導で自主的に環境整備を進めてきている中で、今回成果としてソフトローのようなものが作成されてしまうと、中小機構などの政府機関や、大企業のLP投資部門などがこのルールを強く意識し始めることになり、結果として、国内VCに対するLP出資全体の総量が事実上大きく制約がかかってくる可能性をかなり懸念しているところであります。

 資料3の4ページに、新興事業者によるVCの設立が難しくなる懸念と書いてありますけども、先日、この有識者会議について報道がなされて、私のもとに新興VCからたくさんの連絡があり、今後VCファンドをつくるのに非常にハードルが上がってくるんじゃないかという懸念が実際に寄せられています。

 従いまして、私からの提言というか御意見とさせていただきたいのが、別途アセットオーナー・プリンシプルの策定が進んでいると聞いておりますけども、こちらのほうに機関投資家が投資対象とすべきVCのガバナンス・エコノミクス・ケイパビリティなどの在り方について一本化して策定していただくというのが良いのではないかと考えました。ILPAがLPサイドでルールを決めて、投資すべきGPの在り方というのが決められていて、GPサイドもこれにアラインしていくということがグローバルスタンダードになっていることを考えれば、こちらのほうに考え方を寄せていく。もしくはGPサイドのベストプラクティスを民間主導でつくっていくということに帰着できれば良いのではないかと考えました。私から以上です。
 
【幸田座長】
 ありがとうございました。それでは片田江メンバー、お願いします。
 
【片田江メンバー】
 ご説明ありがとうございました。片田江と申します。私は昨年まで18年間、ディープテック投資に従事しておりまして、現在は新たなパートナーと共に初号ファンドを立ち上げる準備を進めております。これまで前職で1号から5号ファンドまでのファンドの規模の拡大に伴う、GPプラクティスの成長、あるいはLPの期待値の推移を現場で見てきた立場と、現時点は、独立して初号ファンドを立ち上げる立場と、2つの立場で意見を述べさせていただければと思います。

 VC業界に対する成長資金の供給と運用対象の多様化を実現するために、長期投資に資するアセットクラスとしてのVCの魅力を高めると、これはおっしゃるとおりで非常に重要な点であり、御指摘のとおりだと思っています。御説明にもありましたとおり、米国では年金等の資金が6割を占めているということからも、他のアセットクラスと多様な視点で比較ができる必要があるため、提言に示された課題認識もごもっともだと思います。ただ一方、こちらも御説明にありましたとおり、日本では事業会社や、銀行等の預金取扱金融機関がLPとして約半数を占めているという現状、米国と日本の機関投資家の顔ぶれの違いについては配慮が必要ではないかと思います。

 2点目としまして、対象となるGPについては、資料の中でもCVCや新興VCに当てはまらないので留意が必要と懸念点を明記いただいておりますものの、実際にプリンシプルとしてVCの行動規範が示された場合に、事業会社からのVCファンドへの資金の流入や、新興ファンドの設立にブレーキをかける要因にならないことを引き続き御配慮いただけると非常にありがたいと思います。

 最後にLP・GP間の関係についてですが、既にそのILPAのレポーティングガイダンスが2016年に公表されておりまして、グローバル水準でのベストプラクティスとして透明性、ガバナンス、LP・GPの利害関係の一致などが示されております。国内においても、民間の各VCが自律的な規律を持って、ILPAのガイダンスなどを参考にしつつ、かつ、個別のLP・GP間における関係性がそれぞれあると思うので、その関係性を考慮しながらファンド運用することによって、結果として、グローバルを含む有力な機関投資家からLP出資を受けて継続的に成長することが非常に期待されると思います。

 したがいまして、この夏を目途に先行してアセットオーナー・プリンシプルが策定されるという計画があるので、まずはこちらを実践してアセットオーナーに認められたVCが生き残るという市場の原理にのっとったVC業界の発展が期待されると考えます。以上です。
 
【幸田座長】
 ありがとうございます。ほかのメンバーの方々、いかがでしょうか。藤本メンバー、お願いします。
 
【藤本メンバー】
 藤本でございます。御説明ありがとうございました。私からも、今の基本的な考え方のところで少しコメントさせていただきます。まずプリンシプルの位置づけですけれども、これはほかの一般事業会社でも同じような考え方があると思いますが、基本的にはソフトロー的な考え方であって、これによって何か規制が加わるという認識は持っておりません。

 先ほどアセットオーナー・プリンシプルと両輪で、このベンチャーキャピタル・プリンシプルを策定して、それらを動かしていき、資産運用を活性化させていく、投資を活性化していくという観点においては、このプリンシプルを策定すること自体については、特段異論はないと思っております。

 ただ一方で、対象をどうするのかという点が非常に重要かと思っております。資料の中でもありましたように、日本のVCの現状とアメリカのVCの現状はかなり状況が異なっているのではないかと思っております。アメリカは金額が非常に大きいということ、かつ、機関投資家を中心とした年金基金等からの投資が多いということからしますと、日本の場合は事業会社中心で、比較的規模も小さいということで、一足飛びにアメリカのようなマーケットを目指せるのかというと、それもなかなか難しいところもあると思います。

 そういう観点で、どこまで何を対象とするのかということ、初号とか2号ファンドは除くなどもあると思いますが、あくまでも金額的にも大きなところを目指していくことになると思いますので、その辺りの対象を明確にしていただくのが現実的かと思います。そのような観点から、CVCは対象にしないということですが、確かに少し位置づけは異なるものの、ベストプラクティスということを示す意味では、対象に含めるということも一つの考え方ではないかと思っております。

 それから、これはテクニカルな話になりますが、ファンドの法的な形態、匿名組合などもございますが、今回は法的な形態は関係なく共通の原則として策定されるという理解でよいのかどうか、また、ファンドの運営者と投資家との責任関係でも法令によって少し違いがあるケースがあると思います。GPが第二種金融商品取引業者である場合もあれば、投資運用業者である場合もあり、その場合、法令の立てつけが少し異なってくると思っております。このような前提のところも、検討していただければありがたいと思っております。私からは以上でございます。
 
【幸田座長】
 ありがとうございます。ほかのメンバーの方々、いかがでしょうか。増田メンバー、お願いします。
 
【増田メンバー】
 ありがとうございます。私自身が比較的アセットオーナーと、それからVC、あるいはPE業者さんとの間でつなぐような形のゲートキーパーみたいな業務をさせていただいているんですが、過去に年金基金様から相当解約プレッシャーを受けた事象というのがございました。これは具体的にはAIJという固有の業者が起こした、言わば悪貨が良貨を駆逐するような事象が実際に発生した件でございまして、この際の考え方として、例えば資産の価値の存在そのものがあるのかどうかと、こういったところから相当基本的なところからの質問を相当受けたということでございます。

 今回のプリンシプルの中で、本来的にあるべきものとして、こういうアセットオーナーから選ばれる資産クラスとして、どういうプリンシプルでやっていくかという部分と、もう一つが、その中で、このアセットクラスの運用者としてのVCとして選ばれるためには、どのような形のベストプラクティスがあるのかと。この2つが混在していると私は理解しています。

 この中で、先ほど皆様方からも有識者、このメンバーの方からもいろいろ御意見が出ていますけど、選ばれるべきVCという部分と、アセットクラスとして本来守るべき事象というのが混在するのはできれば避けたいと考えておりまして、基本的にまず初めに大切なものは、このVCという運用形態をしっかり守っていけるような形の基本的な原則だと考えています。これは基本的に、どの関係者の方々においてもほぼ同じようなことを求められるんだろうと。

 あわせて、ソフトローというのもある意味ベストプラクティスとしてこういうものがあるといいですよねということをアセットオーナーサイドも認識した上で、ベストプラクティスとしての行為みたいなものが示されていくと、こういう整理かと考えておりまして。そういう観点で少し御議論をさせていただければと考えている次第でございます。

 十数年前に一度、そういう目に遭っている立場から言いますと、この部分だけはきっちりと守りたいという部分はございますので、資産クラスとしてのVCというものの信頼を損ねないような形での関係者全体での共通認識、これがされていくというのが大切じゃないかと考えている次第でございます。私から以上でございます。
 
【幸田座長】
 ありがとうございます。一旦、オンラインでお入りいただいている渡辺メンバーに御意見があればお願いしたいと思います。渡辺メンバー、大丈夫でしょうか。
 
【渡辺メンバー】
 ありがとうございます。私は米国におりますので、オンラインで出席させていただいています。

 議論をお伺いしていて、全体的に日本のベンチャーキャピタル、もしくはスタートアップエコシステムがどのように大きなイノベーションを起こして、海外の投資家から選ばれるかというそこの議論のコンテンツ自体は非常にいい議論で、私も概ね、我々のやっているファンドとしても賛同していることで、非常に有意義な議論だと思います。

 一方で、このアウトプットとかベストプラクティスをどういうふうに誰が外に出すのかということに関しては、私も若干懸念を持っていまして、これは大きな議論が必要かと思っています。特に今回の議論というのは、プロの投資家を主な受益者とするものと理解しているんですけれども、割といろんな市場の取引の中で、非常によい市場原理が、自由競争が働いた結果、進化している種類の取引かと思っています。

 一方で、消費者とか経済弱者を守ったりとか、公平な競争を促すという観点においては、政府当局が規制するべきものというのは多々あると思うんですけれども、特に市場原理によって成長を促すという観点においては、市場の進化にとってプレーヤーの多様性と、あとその変化、突然変異も含む変化が起こっていることが肝かと思っています。

 なので、このアウトプットがソフトローなのか、もしくはレコメンデーションなのか、ベストプラクティスなのか、というのはさておきというか、いずれにしても、政府が指針を出すというのは、業界団体が指針を出すというのに比べて、かなり大きな重みを持ちますし、本当に多様な生態系に、善意で抗生物質を投入して、多様性を失うような効果というのは避けないといけないと思っています。

 この後、個別の論点の議論の時間があるように認識していますけど、個別の議論それぞれ、概ねマジョリティーのVCはこういうふうに活動すべきだというところには同意ですけど、それぞれエッジケースがありまして、そのエッジケースの存在というのは非常に市場の進化に重要だと思っていますので、この民間の役割と政府の役割というのは、明確にそこは切り分けて議論していただきたいというのが私の思いでございます。
 
【幸田座長】
 渡辺様、ありがとうございました。それでは、引き続き会場のほうで御意見いただきたいと思います。片岡メンバー、お願いします。
 
【片岡メンバー】
 片岡でございます。アセットオーナーとしての立場が強い話になるかと思いますが、御容赦ください。 

 アセットオーナーとしては、極めて単純な話でありますが、投資をするに当たり、リターンは高ければ高いほどいいと、契約、定性面、そういったものも洗練されていればいるほどよいという単純な発想になるものでございますし、その点においては否定はいたしません。

 ただ一方、例えば私が勤めている第一生命におきましては、2015年からベンチャーファンド、あるいはベンチャー企業様への投資をやってまいりました。アーリーステージについてはベンチャーファンドへの投資、ミドルレイターについては直接投資ということで、様々な投資をした経験で申しますと、定量のリターンと定性の洗練度合い、こちらは鶏と卵のところもございます。理想は洗練されたストラクチャーでファンドを運営すること、その結果リターンが出ることでございますが、逆のパターンもございます。リターンが出て、それによってお金が集まり、人が集まり、スタッフが集まり、より洗練されていくという逆の関係もありますので、機関投資家として冒頭に申し上げた、よいリターン、洗練された定性面、この2つを徹底追及するということは、現実からすると少しギャップはあるのかもと認識はしております。

 ただし、それでも機関投資家としては、高いプリンシプルというものが業界には必要ではないかと思っております。一例としてお話ししますと、今回いろいろお話がありましたけれども、コーポレート・ベンチャーキャピタル、CVCはプリンシプルの対象外ではないかといった議論もあったかと思いますが、その点はそのとおりだと思うところもございますが、実態として私が感じていることで申しますと、結局はファンドが大きくなってくると、事業会社様も入りますし、アセットオーナーも入るということで、呉越同舟的に混ざり合ってくるという実態もございます。

 それと、最終的には、その呉越同舟を一つにまとめ上げるものはいろいろありますが、フィナンシャルリターンではないのかと思うところもございます。一例で申しますと、例えば事業会社様がストラテジックな観点でCVCをお立てになって、ストラテジックな観点で投資をなさるという場合、それはもちろん一つの投資スタイルではございますけども、もしここでディシプリンが緩いとなりますと、例えば高いバリエーションで投資をしてしまうということもあり得なくはないかと思います。

 これは全く問題がない投資でございますけども、もし高いバリエーションで投資を行った場合、ベンチャー企業様は次のラウンドが難しくなります。すなわちバリエーションは切り上げていかないと上場に向かっていけませんので、そういうふうに考えますと、高いバリエーションで、もし投資してしまった場合、戦略上は、その事業投資はありだとしても、長い目で見るとフィナンシャルリターンが損なわれるということであれば、回り回ってそのベンチャー様の首を絞めることにもなりかねないというような事例もございます。

 このように考えますと、フィナンシャルリターンが一つの幹になり、それを高めるための洗練された契約LPA、公正価値評価、DDQ、こういったことも必要になってきますので、そういう面ではCVC様であっても純投資であっても、根底に横たわるものとして高いディシプリンを求めるということは正当化されるのではないかと思っています。

 ただし、これが法的なものか、それともソフトロー的なもの、あるいはプリンシプルとするもの、あるいはレコメンデーションなのか、こういった立てつけ、効力のところに関しては色々な議論があるかとは思っております。以上です。
 
【幸田座長】
 ありがとうございます。それでは田中メンバー、お願いします。
 
【田中メンバー】
 森・濱田松本法律事務所の弁護士の田中光江です。VCファンドのGP側、LP側双方のファンドの法務に関与しております。また、東北大学の官民ファンドのGP会社の社外取締役として、ファンド運営実務に8年間携わりました。その立場から、本日は意見をさせていただければと思います。

 今日御説明いただきましたプリンシプルの目的として説明されている点については、全く異論はございません。ただし、改めてプリンシプルの法的な意味について考えてみますと、金融庁の金融サービス業におけるプリンシプルについてや、顧客本位の業務運営に関する原則において、プリンシプルとは、金融事業者がベストプラクティスを目指す上で有用と考えられる、金融事業者が遵守すべき行為規範、原則を意味すると考えられているように思われます。

 翻って、今般のプリンシプルに持ち込むべき論点を見ますと、論点7を含め民間当事者間の交渉において決められるべきGP・LP間の個別の経済条件に係る論点が多く、これらはプリンシプルと位置づけるのにはふさわしくないように思われます。

 また、記載の内容が抽象的な原則にとどまらず、個別具体的なルールとなっているものもあるように思われ、こちらもプリンシプルとするのにふさわしくないと思われます。さらに投資先企業の価値向上に関する論点10から13については、国内外の投資事情の相異を踏まえた分析であるように見受けられますが、投資手法は、投資先の事業分野、市場環境、商品、サービスの特性等を踏まえて、GPがファンドの利益を最大化することを目指して、自ら最適と考えるものを選択すべきであり、プリンシプルとして取り上げるのになじまないように思われます。なお、プリンシプルが策定された暁には、このプリンシプルにおいてその対象を初号ファンド、2号ファンドを含まないというふうに仮に定めたとしても、このプリンシプルの内容というものは、機関投資家や公的資金の拠出者の個別の投資方針に一律に取り込まれることとなる可能性が否定できません。その結果として、かかる投資方針に合致しない、特に初期段階のVCや特徴的な投資手法、戦略を持つVC等への資金供給が妨げられる結果となるのではないかという点が危惧されます。

 以上を踏まえますと、各論点の記載について、詳細にわたるのは避け、また、投資先の価値向上に関連する論点10から13については、対象から外すのがよいのではないかと考えます。

 また、想定されている記載内容の粒度を維持したいということであれば、ベストプラクティスを目指す上で有用な原則や行為規範としてのプリンシプルというよりは、機関投資家にとってのベストプラクティスそのものということで、プリンシプルということではなくて、表題を「LP出資者が対応を期待する項目」などと変えて整理をし、GPとLPが交渉する際に参照される論点集として整備するのがよいと考えます。

 本来的には、GPが自ら主体的に創意工夫を発揮し、ベストプラクティスを目指して良質なサービスの提供を競い合い、よりよい取組みを行うGPが顧客から選択されていくメカニズムが重要であり、このようなメカニズムが民間を中心に発展していくというのが望ましいと考えます。以上が私の意見です。
 
【幸田座長】
 ありがとうございます。ほかのメンバーの方々、玉木メンバー、お願いします。
 
【玉木メンバー】
 玉木と申します。私はスタートアップ側、VCの皆様から出資を受ける側の立場と、あと、私の所属している会社は、国内の投資家から出資を受け、その後、海外からも広く出資を受けるに至って、そういうことをレバレッジして事業を成長させている会社でございますので、その経験も踏まえてお話しさせていただければと思っております。

 先ほどから話題になっておりますJVCAさんからも御指摘いただいている本会議のアウトプットの位置づけについてですけど、我々もこのソフトロー化することで、何かVCさんの足かせになって柔軟性が下がるということは、スタートアップ側としても避けたいと思っている部分があります。なので、これの位置づけがどういうものなのかであって、何を対象にするかというのは、もうちょっと掘り下げて、合意・認識ができるといいのかと思っております。

 それから観点で御意見させていただきますと、総論的な、基本的な考え方、目的というところには、概ねこのとおりでぜひ進めていただきたいと思う反面、対象となる部分のところに、初期段階のVCという方々が省かれるというところを記載いただいていると思いますと。今回この議論の主目的としては、仮にそのVCさんの中でも初号ファンドであったりとか2号ファンドのVCさんが、スタートアップでいうところのシードアーリーに当たる部分だとすると、いかにそれを成熟させて、ファンドの規模を大きくしたり、実績を積み重ねてVCとして成熟させていくための、その考え方とかガイドラインみたいなものを御提示するべきポイントかと想定しておりますので、一律にここを離すというよりかは、どうやってそのVCの方々が実績を上げて、グローバルな投資家からも投資を受けられるような状態に持っていくべきかというものだという位置づけにしていただくとよいのかと考えております。

 その観点で、個別にいろいろと挙げていただいているところを拝見しているところですけど、スタートアップ側として、ぜひともVCさんにお願いしたいと思っているところは、いかにアップサイドをVC、そしてその投資先のスタートアップで享受、両方、共通の利害の下にアップサイドを取っていくかという部分だと考えております。
 そのために、何かベストプラクティスを御提示していただく、そのためのプリンシプルであったりとか、ベストプラクティスの共有みたいな位置づけなのであれば、ぜひとも取締役協会の宮下様から御提示いただいております、いかにスタートアップのアップサイドを狙うために、海外の投資家からも受けられるスタートアップにしていくかであったりとか、海外に羽ばたいていくようなスタートアップをつくっていくか、そのために、いかにVCが寄与できるかという点もぜひ加味いただきたいと考えております。

 全体的な話ですが、私のコメントとしては以上です。
 
【幸田座長】
 ありがとうございます。それでは、佐村メンバー、お願いします。
 
【佐村メンバー】
 エー・アイ・キャピタルの佐村です。エー・アイ・キャピタルも増田メンバーと同じように、LPとGPの間にいるゲートキーパーの立場におりますが、その立場も踏まえながら発言をさせていただきます。

 最初に、この位置づけ的なものですけれども、いろんな議論が出ていまして、私も一旦これが世に出てしまうと、どうしてもそれが規制的な見方をされてしまったりするという懸念はございます。ただ、ここでやる議論は非常に重要なことだと思っていますので、5ページとかですか、機関投資家の目線でどのような視点が重視されるかというような留意点みたいな形でやるのか、その表現はともかくとして、金融庁さんがプリンシプルを策定して、これを遵守すべきものというところから少し離れた形がいいのかと思っています。

 私どものお客様にもいろんなアセットオーナーさんがいらっしゃいますけれども、アセットオーナーの見方として、どのようなアセットクラスも同一視点で見るということを考えると、ベンチャーキャピタルについても、他のアセットクラスと比較する必要があります。これまでなかなかベンチャーキャピタルにアセットオーナーから資金が入ってこなかった事実がございます。その理由として簡単に3つにまとめると、1つ目はパフォーマンスです。それからサイズ感、そして最後に、多分今日これから議論するような体制的なものが十分でなかったことだと思っております。

 この体制的なものとして、アセットオーナー側も、運用会社、運用アセットクラスを比較するに当たっては、ベンチャーキャピタルについては業界がまだ発展する過程なので、まだ脆弱なものがあるのは仕方がない部分があるとは思います。とはいえ、この業界を盛り上げる意味でこの会議が行われていると思っていますので、スタートアップの投資を増やしていく、パフォーマンスが上がっていく、お金が回っていくというエコシステムが活性化することを前提に議論ができればと思っています。

 これまで、幾つか議論してきたポイントの中で、増田メンバーがおっしゃったことと重なるかもしれませんけれども、アセットクラスとして、ベンチャーキャピタルをしっかりと認知していこうという事と、個別のVCがいいという議論は少し違うと思っています。個別のVCがいいかどうかという議論は、要はパフォーマンスに関するところだと思っています。パフォーマンスに関するところで言うと、この中の論点では、エコノミクスのところと、あとは投資先の付加価値向上的なところというのは、各GPが、LPとの交渉、ないしはGP自身がどういった戦略を持ってパフォーマンスを上げていくかというところの議論に帰結すべきであって、幅広くこれを行動規範のようなものとして定める必要はないんじゃないかと思っています。

 重要なのは、受託者責任、ガバナンスの点、それから投資家に対する情報提供、ディスクロージャーのようなところは、アセットクラスとして認められるために、ほかの伝統的資産も含めたものと比較間でしっかりしたものをつくっていく必要があるかと思っております。私の意見は以上でございます。
 
【幸田座長】
 ありがとうございます。それでは山口メンバー、お願いします。
 
【山口メンバー】
 DBJの山口でございます。私は、そういう意味ではベンチャーキャピタルへの出資ですとか、あとは個別のベンチャー企業への投資なんかもやらせていただいているという立場、さらには様々な機関投資家の方々の御意見だったり、ベンチャーキャピタル様とのいろんな会話もさせていただいているという立場で申し上げます。

 ここで御説明いただいたように、今の国内のベンチャーキャピタルをめぐる状況認識については同様な認識を持っておりまして、したがって、広く内外の機関投資家から資金調達を目指すのであれば、ここに提示されていただいたような論点について認識する必要があるのではないかということについては、全くそのとおりだと思っておりますし、こういうことを明確に御提示いただくということ自体には意味があるのではないかと思っております。

 他方で、いろいろと、初号ファンドであったりCVCであったり、様々ガバナンスとか情報提供の高度化に伴うコストの増加ですとか、そういった実際の負担感というところにも目を配りながら、ベンチャーキャピタル業界への新規参入みたいなものが阻害されないような形で、何らかこういったものが示されるということがよいのではないかと思っております。以上です。
 
【幸田座長】
ありがとうございます。メンバーの方々、皆さんから全員御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 それでは、一旦ここで若干の時間がございますので、オブザーバーの方から御意見等があれば発言をお願いします。久村さん、どうぞ。
 
【産業革新投資機構】
 ありがとうございます。今いろいろな御意見もいただいたのですけども、一、二点追加で、現場で国内VCさんに対峙している立場で共有させいただければと思います。

 プリンシプルについては、ここにはいろいろな要素が入っているので、いろいろな賛否があるのではないかと思います。一方で、よくLPとGPの間で決まるのではないかと、これは非常にそのように聞こえるんですけども、現状どうなっているかというと、海外ではILPAが定まったときには既に機関投資家が大半を占めていたという中で作られています。今、国内はどういう状況かというと、国内のVCについて、機関投資家は国内外ともに全体の調達額の数%でしかない、マイノリティーでしかないという状況です。

 ですので、現状は、国内VCに投資している機関投資家が集まって、作ったとしても、なかなか皆さんは興味を持たないのではないか、LPさんが興味を持たれるところが少ないのではないかというのが実態だと思います。ここはVC、これは業界としてということですが、このプリンシプルの中でも、先ほど来出ているような、CVCさんですとか、初号ファンドで足かせにならないようなところ、ここについては、モデルケースというのか分かりませんけども、それはお示しになられて、機関投資家から見たときのハードル、ネガティブチェックのところはクリアできるように始めからしてあげるというのがいいと思います。

 というのはなぜかというと、初号ファンドの話が出ているのですけども、初号ファンドで一旦立ち上げてしまうと、その後、GPのストラクチャーや、契約書の中身も含めてですけども、変えるのは相当大変です。先ほど申し上げたとおり、我々は1号から3号、取り組んでいますけども、我々が投資できるレベルになるまで、長いもので3年、短くても半年から1年かけて、交渉、変更をお願いして、ここの、VCの投資のバリューとは全く関係ないところを整備しないと、乗り越えられない部分があります。

 ここは、プリンシプルの中でも選別していただいて、ネガティブなところで引っかからないようにしていただくというのは、これは国内外の機関投資家だけではなくて、事業会社さんも同じだと思っています。我々は国内外のLP、機関投資家だけではなくて、事業会社さんとも話をしていますけども、いろいろ国内VCに対するコンプレインが出ています。よくJICさん、言ってくれたと、やってくれたということで、ようやく投資ができるようになりました、ようやく問題が解決しました、こういうお話を多々いただいています。

 LP任せにすると何が起きるかというと、結局まだ海外の投資家もマイノリティーしか入ってこられない、まだ入ってくるのは時期尚早だと思っているので、入ったとしても共同投資目的みたいな形で入ってこられるので、あまり真剣に国内のGPさんと対峙して、あるべき姿に持っていこうと思っていらっしゃる方はほとんどいません。ですので、LP任せに、GPとLPの個別の議論で任せるべきだと、それはそのとおりですが、LP側がまだそういう状況になっていないと考えていただく必要性は高いのではないかと思っております。共有させていただきました。
 
【幸田座長】
 久村さん、ありがとうございました。金融庁の太田原さん、オンラインかと思いますが、御発言をお願いします。
 
【太田原企画市場局参事官】
 太田原です。本日は皆様、貴重な御意見ありがとうございました。私のほうで伺って、そもそも論のところで、多少考え方に差異があるような気がしましたので、この段階で一言申し上げたいと思います。

 まず、プリンシプルかどうかということについていろいろ御意見がありました。私どものほうで考えていますのは、プリンシプルというのはあくまでルールではない、むしろルールと対比されるものとして考えていまして、例えば顧客本位の業務運営の原則なども、まさにベストプラクティスを目指すものということで、何か拘束的なものではないということで扱っているということで、今回もそのような形で考えておったということであります。ただ、いろいろ懸念される向きもあるようでありますので、その位置づけについては、また我々のほうも考えさせていただきたいとは思っています。

 また、民間ベースということで進めるべきというのもごもっともだとは思っています。ただ、それだけでは、直前の御意見でもありましたが、なかなかベスト、ベターに向かっていくために、もう一押し必要だという部分があれば、今回の議論でそういう方向に向かうことに貢献したいとは考えております。一旦以上です。
 
【幸田座長】
 ありがとうございました。あとオブザーバー方から御希望がありますので、そちらを対応させていただきます。最初に全国銀行協会、お願いいたします。
 
【全国銀行協会】
 全国銀行協会会長行でオブザーバーをさせていただいております三井住友銀行の齋藤でございます。私からも一言御意見申し上げたいと思っております。

 三井住友銀行は過去十数年にわたりまして、ベンチャーキャピタルさんへのLP出資という形でリスクマネーの供給を行ってきております。今回の議論につきましては、過度な対応にならないように、非常にバランスが重要かということでお聞きして思っております。機関投資家を招くとか、海外投資家を招聘するという観点で、日本のリスクマネーを増やすと。そのための体制整備であったり、プラクティスの見える化、これはすばらしいことだと思うんですけれども、一方で、有識者の方々からも御意見がありましたとおり、新興VCさんであるとかCVCさんにとって、リスクマネー供給の障害にならないように留意をしなければいけないのかと考えております。

 金融商品取引法で適格機関投資家等特例業務というものが設けられていると思いますけれども、恐らくそれはVCさんの参入であるとか育成という視点が盛り込まれて、あのような条項が設置されていると思うんですけれども、そういったVCさんを育成するとか育てるとか、新規参入を促すという視点で御議論を賜れるといいのかとお聞きしていて思いましたので、御意見申し上げます。私からは以上です。
 
【幸田座長】
 ありがとうございます。それでは、続いて、スタートアップエコシステム協会からお願いします。
 
【スタートアップエコシステム協会】
 スタートアップエコシステム協会の名倉です。このたび発言の機会をいただき、ありがとうございます。

 今回、位置づけのほうを今御議論されている中、個別の論点になって大変恐縮ですが、1点ダイバーシティの重要性について指摘させていただければと思っております。

 資料3の21ページのところで、ダイバーシティ、特にジェンダーダイバーシティについて重要だと書いていただいておりますが、こちら、今この有識者会議の中で御議論いただいているとおり、多くの海外の機関投資家だとか、あるいは海外VCとかを呼込み、かつグローバルに成長するスタートアップをどんどん育てていくエコシステムをつくるに当たっては、恐らくもっとダイバーシティに富んだエコシステムをつくっていく必要があるかと思っております。

 このため、ぜひ、こういったものが策定されるんであれば、ジェンダーダイバーシティも重要です。それに加えて、ジェンダー以外にダイバーシティも含めたことが尊重されて、VCあるいはLPがそういったことを常に意識するようなことにしていただければと思っておりますので、ここが重要だよというところを改めて指摘させていただければと思います。ありがとうございます。
 
【幸田座長】
 ありがとうございます。それでは、そろそろ時間ではありますので、メンバーの皆さん、それからオブザーバーの方からの御意見等についてはこの辺りにさせていただければと思います。

 最後に、皆さんからの御意見等を踏まえた上での私の感じについて、一言だけコメントさせていただきます。
 本件につきましては、特にマクロ的な観点で、今後さらにリスクマネーを増やしていくというようなことが非常に重要な中で、内外機関投資家からのVCへの投資というものを増やしていく必要性とか、あるいはそういう方向性を重要視していくことで、考えていくべき位置づけではないかと理解をしております。そうした中で、今日皆さんから御意見いただいた本件をどういう位置づけとするかについて、本日は幅広く事務局論点については御提示させていただいていますので、その辺りを含めて整理させていただくのがよいかと思います。

 付け加えて申し上げると、今回皆さんのメンバーの方々から、ソフトローあるいはプリンシプル、ベストプラクティス、レコメンデーション、あるいは留意事項というようなことで、様々な言い方が出ておりましたけれども、どうも聞く限りにおいては、共通の認識が合っていない部分もあるのかと思います。その辺りも事務局サイドで少し整理をさせていただければと考えております。

 本議論は、先ほど、どなたかが申し上げたように、パーツとしては非常にリスクマネーのさらなる導入に向けての後押しとして重要ではないかということ、それに際して、この位置づけについて、どういうふうに置いておくのか、また、各論については14の論点を示させていただきましたけれども、その中での少しカテゴライズを分けて考えるというようなことは、皆さんから御示唆いただいたというようなことであります。論点もその辺りはあるかと思いますので、本日いただきました御意見等を踏まえて、事務局におきまして、今後検討すべき課題について整理をいたしまして、次回の有識者会議での御議論につなげていきたいと考えております。

 また、次回日程につきましては、メンバーの皆様方の御日程等を踏まえて、後日事務局より連絡をさせていただきます。

 それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
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企画市場局市場課(内線:2352、2387)

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