融資に関する検査・監督実務についての研究会(第2回)議事録

  • 1.日時:

    平成30年9月10日(月)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館 12階共用第二特別会議室

融資に関する検査・監督実務についての研究会(第2回)
平成30年9月10日
 
 
○岩原座長  
 それでは、定刻になりましたので、ただいまから融資に関する検査・監督実務についての研究会の第2回会合を開催いたします。皆様にはお忙しいところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 初めに、前回の会合を欠席されたメンバーの方、本日の議論のためにご出席いただいているゲストの方のご紹介、及び前回の会合でのご議論を踏まえた対応について、事務局より説明をお願いいたします。

○渡辺総合政策局地域金融監理官  
 事務局よりご紹介を申し上げます。

 加藤貴仁様です。

○加藤メンバー  
 よろしくお願いします。

○渡辺総合政策局地域金融監理官  
 多胡秀人様です。

○多胡メンバー  
 どうぞよろしくお願いします。

○渡辺総合政策局地域金融監理官  
 米山正樹様です。

○米山メンバー  
 よろしくお願いいたします。

○渡辺総合政策局地域金融監理官  
 吉野直行様です。

○吉野メンバー  
 よろしくお願いいたします。

○渡辺総合政策局地域金融監理官  
 さらに、本日の議題に関連して、株式会社栃木銀行管理部長、仲田浩之様にゲストとしてご出席いただいております。

○仲田様  
 よろしくお願いします。

○渡辺総合政策局地域金融監理官  
 後ほどお話を伺いたいと思います。

 また、前回の会合でご議論いただいた点のうち、関様からご指摘いただきました潜在的な信用リスクに関する分析については第3回会合で菅野様から、田中様からご指摘いただいた引当金制度等に関する日米比較については第4回会合にて金融庁よりご説明をさせていただく予定です。

○岩原座長  
 どうもありがとうございました。

 それでは、議事に移らせていただきます。

 本日は、まず國井様、仲田様及び馬場様より、融資実務や引当等についてご意見をいただいた後、事務局から、対話会の模様について説明をいただき、その後、自由に討議を行っていただきたいと思います。

 それでは、國井様、仲田様、ご説明をよろしくお願いいたします。

○國井様  
 第二地方銀行協会の会長行を務めます京葉銀行の國井でございます。本日はこのような説明の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 当協会からは、償却・引当に関して工夫している点や、今後工夫が必要だと日頃感じている点等につきまして、会員行の状況、意見、要望を取りまとめいたしましたので、私から簡単に紹介をさせていただきます。その後、栃木銀行より具体的な事例を紹介させていただきます。

 それでは、早速ですが、1ページ飛ばしまして、3ページをご覧ください。

 まず、現行の償却・引当に関して工夫している点でございます。会員行において工夫している点としては、リスクに応じた区分の細分化や引当率の調整として、ここに記載したケースが挙げられております。このうち、リスクに応じた区分の細分化の上から2つの事例について、後ほど栃木銀行よりご説明いたします。

 続いて4ページをご覧ください。償却・引当に関して、今後工夫が必要だと日頃感じている点についてでございます。

 貸倒実績率の業種別・商品別・地域別などの細分化。将来予測的な情報の引当への反映の必要性。また、償却・引当額の十分性の確保の観点から、貸倒実績率の算定期間数の拡大や、DCF法対応先の基準金額の引き下げなどが挙げられております。

 最後に5ページをご覧ください。今後の検討に当たっての意見・要望を5点申し上げたいと存じます。

 まず、地域において金融仲介機能を十分に発揮していく観点から、償却・引当方法については、現行の枠組みを含め、金融機関の選択の自由度を認めていただきたいと思います。

 その一方で、検査・監督の観点から、予見可能性を高める意味でも、一定の指針を示していただけると実務対応がしやすく、ありがたいと考えております。

 また、償却・引当方法を変更するなど、制度的な変更を行う場合は、厳しい収益環境下では、事務負担の増加やシステム改修費用等を考慮する必要があり、実施までには十分な準備期間を設けていただきたいと思います。

 その上で、変更の趣旨等を金融機関だけではなく、監査法人を含め、関係者間で意識共有を図ることが重要と考えます。

 なお、開示の比較可能性について問題が生じるのではないかとの意見もあることから、開示上の工夫の仕方についても検討いただけるとありがたいと考えます。

 最後になりますが、各行のそれぞれの実情や意見等を別添に取りまとめておりますので、後ほどご覧いただきたいと存じます。

 これをもって、私からの説明を終わらせていただきます。

 それでは、続いて、栃木銀行へバトンタッチしたいと思います。よろしくお願いします。

○仲田様  
 栃木銀行管理部の仲田と申します。本日はこのような機会を設けていただきまして、誠にありがとうございます。弊行は、今ご説明があったように、償却・引当に関して工夫している点を中心に、具体例を挙げながら、これから説明したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず第1ページ目をご覧ください。弊行では2つ、今の時点で、償却・引当について特徴ある追加引当をやっております。

 まず1つ目が、予防的な追加引当ということでございます。こちらは、下の対象先にありますように、装置産業の破綻懸念先の個別引当金につきまして、追加で工夫しながら引当をしているというものでございます。こちらは平成16年から行内で適用しております。

 資料に沿ってご説明いたします。

 目的としましては、装置産業については倒産時に多額の償却・引当費用が発生する場合があり、これを予防するために実施しております。

 背景としまして、手前どもの地盤である栃木県は、日光・鬼怒川、那須・塩原など観光地を多く抱えておりまして、過去にバブル経済の崩壊等の景気悪化の影響を受けまして、多くの温泉旅館やゴルフ場等々が破綻をし、多額の不良債権が発生しておりました。

 装置産業に対する融資は、現在、融資全体のポートフォリオに占める割合は低いものの、1先に対する融資額が大きく保全率が低くなる傾向があり、倒産時の影響も大きいことから、監査法人との協議により引当ルールの見直しを行ってまいりました。

 対象先につきましては、いわゆる装置産業と言われる旅館、ホテル、ゴルフ場、テーマパーク、遊戯施設等々でございます。

 与信額等の基準につきましては、弊行では、与信額3億以上、そして、要償還の債務返済年数が35年以上ということで、区切りをつけております。

 次のページをご覧ください。細かな引当方法につきましては、①から⑤まで、記載のとおりなんですが、まとめますと、通常の実績率による引当額以外の未引当額、Ⅲ分類の未引当額から、直近の簡易キャッシュフローの5年分を除いた額を追加で引当するものでございます。

 下に、A社、B社ということで、事例、2つ記載しましたが、この事例でございますと、引当率が通常の貸倒実績率による引当率30%に対して、約80%を引当しているという状況でございます。これによりまして、以後の抜本的な再生手法への移行であるとか、倒産等に対する事前準備が可能となるものでございます。

 次のページをお願いします。もう1つ目なんですけれども、こちらはその他引当ということで、こちらも破綻懸念先の個別引当金にその他引当という形で追加で引当しておるものでございます。 それでは、説明をいたします。こちらのほうは平成21年度より適用を開始しております。背景としましては、ちょうどそのころから企業再生抜本策、DDSであるとか、債権カットを含めた抜本的な事業再生に弊行が本格的に注力し始めた時期でございます。

 この時に私的再生中の債務者であるとか、将来、実質破綻懸念先にランクダウンする可能性が高いお客様等々、業種に関係なく、多額の償却・引当等が発生する可能性が極めて高い場合に備えるために実施するということで、監査法人との協議によりルールの見直しを行ったものでございます。

 この中で、将来、実質破綻懸念先にランクダウンする可能性が高いお客様というものがあります。例えば私的再生にまだお客様が同意しないとか、粘り強く交渉している先、廃業を支援するためにお客様と交渉しており、直ちに実質破綻先にランクダウンさせることが不適当であると考えておる先様について行内で議論して、もし万が一交渉がうまくいかない場合には、破綻に至るリスクが相当高いという結論に至った先には、監査法人との協議によって引当を追加的にしておるものでございます。

 下の事例でいいますと、30%の通常実績率による引当金に加えまして追加をしまして、この2つの事例では100%、Ⅲ分類に対して100%を引当しているというものでございます。

 今現在、その他引当で追加している債務者につきましても、Ⅲ分類の100%引当をしているという状況でございます。

 次のページをお願いいたします。その中で1つ、弊行で、再生先に対する融資取組事例というものを1つご紹介したいと思います。こちらの内容はちょっと細かいんですけれど、破綻懸念先に対して、追加引当を積みながら融資を実行して、改善支援をしているという事例でございます。

 この企業様は、とある町の駅前に立地をしております地場のビジネスホテルです。開業以来、60年以上経過しております。そんな中、駅前に立地しているビジネスホテルといいますと、大手資本のホテルが続々と進出しておりまして、競争が激化しておりまして、売上げが低迷。現在は条件変更を対応しているという先でございます。

 ここのお客様に対して、事業性評価を行いまして、強みであるとか弱み、課題等々、お客様と共通な認識を持ちまして、その中で、改善のためには、設備投資が不可欠であろうという結論に達しまして、老朽化した客室の改修及び大浴場、男女別の大浴場の改修を行いました。それと、遊休不動産をお持ちだったので、そちらを飲食店向けのテナントへ改修しました。

 その結果、改善計画に沿った売り上げの増加が見られ、収益の改善が図られておりまして、二、三年のモニタリングの後にはランクアップが見込めるような状況でございます。

 このように手前どもも他行様と同じように、この事例におきましては、装置産業の破綻懸念先については、先ほど前ページで説明したとおり、予防的な引当というものを与信額3億円以上のお客様に対しては行っておるんですが、このように予防的引当を行う先がある一方で、自力再建の可能性があるお客様に対しては、たとえ、一時的に追加引当が発生しようとも積極的な改善のためには融資を実行しまして、ひいては銀行の財務健全化にもつながります。お客様の健全化にもつながりますので、このような融資はこの事例にとどまらず、現在は積極的にどんどん行っている状況でございます。

 次のページをご覧ください。こちらは、地域性を考慮した融資の取組みの工夫ということで、1つご紹介したいんですけれども、不動産賃貸向けの融資でございます。こちらにつきまして、1つ目としまして、手前どもの基本的な融資のスタンスとしまして、これはもうかれこれ、六、七年前ぐらいでございますが、人口減少、そして、少子高齢化が進む中で、不動産賃貸向けの融資は積極的には推進はしておりません。

 また、投機的な賃貸の融資は取り上げない。サラリーマンの方のマンションの購入等々、投機的とまでは言いませんけれども、極めて投資的なマンションの購入等々については、取り上げは行っておりません。そして、お客様に過度なリスクを負わせないということで、複数の物件の建築による債務過多を招くような融資は、取り上げはしておりません。

 2つ目に、その融資の対象者なんですが、富裕層に限るということでやっております。そして、よく不動産業者様が事業計画等をお持ちいただくんですが、そちらの事業計画は当然参考程度ということで、手前ども独自で家賃相場の聞き込みを行ったり、空室率、修繕費などについてはストレスをかけた上で、返済可能性、資産、負債のバランスについて検討をしております。

 そして、3番目として、地域性を考慮した取組みということで、こういった案件に関しましては、栃木県の人口減少エリア、これは主に栃木県の北部でございますが、こちらについての案件に関しては、極めて消極的に取り扱っております。反対に、宇都宮の中心部であったり、県の南部、埼玉地区に関しましては、前向きな検討を行っております。

 こちらの不動産賃貸向けの融資に関しましては、現在、入り口の審査においては、このように種々のリスクを踏まえた対応を行っておりますが、既存の融資につきましては、一律のリスク管理となっております。

 そこで、例えばエリアに応じて引当率を変えるといった方法でリスク認識を引当に反映させることも考えられるんですが、母集団が小さくてデフォルトの実績率が安定しないといった点、そして、システム対応の負担がちょっと重いといった問題がありまして、現状のところは検討が進んでいないというのが現状でございます。

 弊行からは以上でございます。どうもありがとうございました。

○岩原座長  
 どうもありがとうございました。

 続きまして、馬場様に説明をお願いいたします。

○馬場様  
 川崎信用金庫の馬場でございます。本日も誠にありがとうございます。

 お手元には、レジュメと書いてあるのが、表紙をめくって2枚、それから、資料とあるのが表紙の裏表の形で、資料①から⑥まであろうかと思います。

 さて、今回の議論に向けまして、全信協が信用金庫と意見交換を行っておりまして、資料1、表紙の裏の資料1には、信用金庫から寄せられた主な意見を取りまとめています。先ほどと一部かぶるところもありますので、幾つか抜粋をして読みます。上から3つ目の丸、「金融検査マニュアルで一般的とされている方法」以外は認められないことも多く、仮に認められた場合でも、説得に膨大な時間・手間がかかるとあります。この傾向は近年強まっておりまして、新たに潜在的なリスクを認識しても、それが引当に反映できない。やや硬直的な運用になっていると思います。

 上から5つ目の丸、現在の引当方法では、「好況期に引当が減少し、不況期に増加する」ようになっており、不況期に備えた引当の計上という本来の機能を果たしていない。これは実績率あるいは実績というものに基づいている限り、どうしても本質的にこうなってしまう構造的な問題であります。第1回でもお話に出た、足元の情報を踏まえた将来のリスクをいかに適切に取り入れるかが鍵を握っていると思います。

 その1つ下の丸、地域の経済情勢や産業構造の変化等の見通しを加味して引当を行いたい。また、より顧客の特性・状況を考慮した引当を行いたい。これが今回、私どもが主張したいメインテーマでありますが、先ほどと同じ、本質的、構造的な問題を抱えています。よりミクロ的であるがゆえの難しさもあろうかと思います。

 対話会の取組事例には、リーマンショック時に某メーカーの下請け階層ごとのような特別なリスクがある債務者を切り出し、将来の見通しを機動的に反映するといった事例が幾つか紹介されていました。そういう取組みを柔軟に取り入れることが肝要かと思います。

 一番下の欄、その他の欄は、要管理先の扱いにくさや、それに絡んでDCF法は実務負担が非常に大きいといった意見が出ております。

 本日は、これらの内容をもとに議論の方向性に対する意見を述べさせていただいた上で、私の経験から、より具体的に実務的な考えを述べたいと思います。

 まずレジュメ1枚目は、今後の議論の全般的な意見、方向性についてです。

 これまで信用金庫は、検査マニュアルを踏まえ、さらには中小企業金融の実務との整合性を確保しつつ、体制整備やシステム整備を築いておりますので、これまでの査定体制が全面的に否定されるといった方向性は当然望ましくありません。

 他方で、企業倒産が歴史的な低水準で推移していることを背景に、信用金庫、よその業態でもそうでありますが、引当方法について、貸倒実績率の算定期間の工夫を実現したり、リスクカテゴリー、地域、産業別等による工夫を模索するなど、さまざまな取組みがありますが、残念ながら、特に後者は、実施ができなかったというケースも多いというのが実情だと思います。

 監査法人から、必ず求められるのは、合理性・適時性・継続性の3点セットであります。

 マニュアルの廃止は、ある意味でよい機会かなと思います。マニュアル廃止を契機として、適時性が満たされることになり、今後、継続的に運用すれば継続性も満たす。合理的で適切なものであれば、各金融機関が、あるいは各業態がみずからの顧客特性、リスク特性、モニタリングや支援の体制、あるいは経済環境、産業構造の変化に応じて創意工夫をすることがこの際、より柔軟に認められるということが望ましいのではないでしょうか。

 さらには、画一的なマニュアルが廃止されるわけですから、その後についても、世の中の諸変化に柔軟に対応できるよう、引当方法の創意工夫につき、監査法人さんとしても協力的に対処していただければと思います。

 以上の2点がレジュメの今の1枚目の下段、①から③に集約されております。

 次にめくって、レジュメの2枚目については、あっちに行ったり、こっちに行ったりしますが、他の添付資料を用いながら説明をいたします。

 私自身、前回も申し上げましたが、ここ数年、償却・引当あるいは不良債権処理等を担当してきまして、経営や監査法人とのはざまで苦心をしたこともままございました。その経験から、若干実務的な意見を述べたいと思います。

 つまるところは、将来リスク、あるいはリスク態様というものに見合った段階的な引き上げを実現したいということであります。

 資料②をご覧ください。詳細の説明は割愛いたしますが、これは一昨年度の当金庫の実際の引当状況表であります。黒塗りは社名なので、黒塗りであります。上段が一般貸倒引当金、下段が個別貸倒引当金、合計額は表の右下、60億円を若干切ったレベルであります。

 融資残高は1兆円を超えておりますが、経営トップは、「こんなんじゃ引当足りないよ」が口癖であります。これでも検査マニュアルの額面どおりになれば、さらに大変大きな取り崩しになったはずで、何とか可能な範囲で引当水準の維持に努めてきたというのが実情です。ちなみに、中央左に、CF法とある黒塗りは、キャッシュフロー控除法を適用している大口先数社であります。

 当金庫では、表の左下、※印に書いてありますように、貸出金平均残存期間8年を、ある意味で会計基準のようにやっているわけですが、貸出金平均残存期間8年を観測期間として、8算定期間の平均貸倒実績率を用いて、リーマンショック時のクレジット・イベントの高かった率を織り込み、かかる水準を維持しているわけです。

 観測期間の長期化と、先ほどのキャッシュフロー控除法等をあわせても、破綻懸念先の引当率は50%を若干切っているという状況であります。

 次に、資料③をめくっていただいて、現在の引当率イメージ図をご覧ください。この結果、正常から要管理までのところと、次の破綻懸念とでは恐ろしく極端な段差がございます。ここが問題だと言っているわけですが、次の資料④をめくっていただいて、債務者区分と、当金庫の信用格付ランクとの関係を示しています。信用格付ランクは、当該中小企業の経営者の資質のようなものもファクター、要素に含まれていますので、より客観性を持たせるため、右のほうにあるSDB、これは信金データベースというもので、有効抽出先数は数十万先というビッグデータでありますが、そこの公表財務に基づくランクもフィルターとして、そことの極端な違いが出ないような形で比較をした上で、最終格付を決定しております。

 当金庫のデータが十分豊富とは言えませんが、信用格付と倒産確率(PD)はおおむね階段状に並びます。特にこの10格のところは、不良債権との境目のところであり、本来ここが要管理先だと思います。ただ、歴史的な経緯によって、要管理先は、要注意先の中2階のように後づけで設けられ、その定義は相当複雑化し、使いづらいものであります。

 実抜計画や合実計画を立てたり、それを追いかけたりするのもかなりしんどいものがございますし、また、低下している基準金利によって、ここから卒業してしまうケースも増えております。

 また、要管理の大口先で使うことのできる狭義の、狭い意味のDCF法、いわゆるキャッシュフロー見積法でありますが、これはそれぞればらばらな将来キャッシュフローや、ばらばらな実効金利等を原則、債権ごとに見積もり計算をする。条件変更すれば、その都度、将来キャッシュフローを見直すといった、誠に煩雑な方法であり、我々の業態で、要管理でこのキャッシュフロー見積法を実際に使っている例は、アンケートの結果、ほぼ皆無に近い状況であります。

 この辺は若干、IFRS9を否定的に意識したような発言になっておりますが、この要管理をずっと使いやすい簡便的なものに生まれ変わらせ、将来的なリスク、あるいはリスクの態様、特性に見合った段階的な引当ゾーンとして、有効に活用できるようにしようというのが私どものアイデアです。

 それが、資料⑥のイメージ図に示されております。地元の経済情勢、顧客、地域、業態の特性、リスクテイクや支援の方針等、さまざまなリスクカテゴリーへの対応については、それぞれ監査法人が一定の合理性を納得できるのであれば、新たな管理ゾーン、新たな引当ゾーンでもいいんですが、あくまで仮称です。ちょっといい名前が思いつかなかったので、ここに幾つかのバリュエーションというか、そういうものを持たせた別管理グルーピングをして、仮に1先でも構わないんですけれども、一般的な正常先や要注意先とは切り離して、別建ての引当を集中的に実施するのがよいのではないかと考えます。

 今までの要管理債権の、まあ、ややこしいというか、複雑な定義はさておき、潜在的なリスクが高いと、経営的に認識するような債権。例えば当金庫の例で言えば、先ほどの10格先、境目の10格先で信用額が大きいグループだとか、あるいは私どもの土地柄、都心への時間距離が短いので、マンションとかが多いわけですが、残債が大きく残っている築古マンションですね。マンションはメンテナンスが行き届いていても、物理的にあまりに古くなり過ぎると、にわかに空室率が高まるといった傾向があり、そういったものはやはり、残債が減っていればいいんですが、ある程度かなり残っているということであれば、個別に見ておく必要があろうかなと思います。また、別の例として、北海道の信金さんには、水産漁業者の取引先も多く、漁業は大体10年サイクルとか、十二、三年サイクルで二、三年不漁になるということが経験則的にわかっていて、そうなると、それまでピカピカの正常先であっても、赤字、赤字ということで、たちまち破綻懸念になり、大幅な引当増になってしまう。本当は正常先の段階でも、ある程度引当を積んでおければいいのにという声が多く聞かれます。

 こういうものに対し、別建てで、横でずらっと出ているこのゾーンに一般貸倒引当金を計上する、リスクの態様といいますか、ボラティリティのうねりのあり方みたいなものが他とは異なるため、個別性を持たせて積むものを可能とし、さらにはグルーピングをして、別計算で引当するので、正常や要注意及び新しいゾーンも含めてですが、それらの債権母集団には含めない。それらの実績率がはね上がってしまっては意味がありませんし、会計基準的にもそうすることは可能で、これにより当該引当ゾーンのショックアブソーバー的な機能が高まるといった措置を講ずれば、新たな管理ゾーンの使い勝手は格段によくなるものと確信をいたします。

 グルーピングという考え方は今でも認められていますが、グルーピングして、過去からのデータを整備し直すのは結構な手間ですが、何よりもやはり実績率でやっている限りは、グルーピングをしても加重平均の結果の引当金水準全体は、全体として同じことになってしまいます。つまり、冒頭の取組事例にもありましたように、リスクを感じて、グルーピングをしたカテゴリーに対し、どう将来のリスクを織り込み、実績にあらわれない潜在的なリスクを捕捉していくのかがやはり問題解決の核心であります。

 ちなみに、あえて不良債権の定義を変更する必要までは特になく、したがって、このゾーンの中には不良債権とそうでないものとが、今の要管理先と同様に存在することになります。

 なお、1つ前の資料⑤にあるように、おなじみの図かもしれませんが、同じ融資先であっても、ご存じのように、債務者区分によって分類債権額は異なります。ちなみに、これは100万円単位の表ですが。しかし、自己査定システムが今、大変浸透してきている。こういう昨今、当該債務者が正常や要注意の段階にあっても、仮に破綻懸念先にダウングレードした場合のⅢ分類額相当額は、既にシステムで自動計算されていることが普通でありまして、したがって、新たな要管理ゾーンの予想損失率計算において、Ⅲ分類額相当額を分母に持ってくることも実務的には可能であります。

 担保・保証に依存しない融資を推進するといったような場合は、信用相当額は多くなりますので、キャッシュフロー控除法的な、そういう計算が簡便な引当方法も考慮に値すると思います。

 また、要管理の大口先についても、狭義のDCF法、つまり、キャッシュフロー見積法ですね。ではなく、簡便なキャッシュフロー控除法を用いることができるようにすることも含めて、今申し上げております。

 キャッシュフロー控除法も広い意味のDCF法の一種という理解ももちろんできるので、既に要管理の大口先に対し、簡便なキャッシュフロー控除法を適用している向きもあるかもしれませんが、公にそれが認められれば、実務的には大いに助かる話になるでありましょう。

 さらに、キャッシュフローの控除をやめて、例えばですが、Ⅲ分類相当額の2分の1引当というような超簡便法でも私はよいかなと思います。

 ちょっと乱暴かもしれませんが、こうしたゾーンの引当金は、先ほどの資料③の引当率イメージ図にあった極端な段差のところを、段階的な踏み台的なものをつくる。そういう段階的なものに是正する効果があります。

 同時に、リスクマネー対応とか、地域特性対応等の多様な資金ニーズに応えるための段階的引当ゾーンとのイメージになり、柔軟な債務者区分を指向しつつ、各金融機関の目利き力や、その後をフォローする支援力が試される――すみません。資料⑥のほうに行っていますが、そういうチャレンジしやすい環境を用意することになろうかと思います。

 これは、逆から言えば、あまりに段差が大きいため、資金供給のチャレンジを躊躇してしまう、そういうケースもあろうかと思いますが、そういう弊害を排除することにもつながると思います。上りやすいし、下りやすいということです。

 資料⑥ですが、その右下の吹き出しにありますように、既往先についても、債務超過は解消していないものの、事業キャッシュフローは出ていて、返済能力が認められる。例えば5年後には十分上に行けるというものであれば、そういう状況を重視し、破綻懸念先ではなく、新たな管理ゾーンに持ってくるのもありだと思いますし、このケースでは、要引当額が逆に減少することになります。

 この新たな管理ゾーンの中身は、幾つかのパターン、バリュエーションがあり得、それぞれの予想損失率計算は極めて煩わしく、すぐにはデータもそろわず、統計的サンプル数としても不十分であると、先ほど第二地銀協さんもおっしゃっていたように思いますが、そういうことが容易に想定されるため、先ほども申し上げたように、例えば線形補間的に破綻懸念先の貸倒実績率の半分にする。もともとが正常先なら、さらにその半分にするとか、それがちょっと多いということであれば、要注意先に対しては破綻懸念先の3分の1、もとが正常であれば、さらにその半分あたりが妥当かなという気もしますが、まあ、こういうこともある種の実績率、破綻懸念先のですが、実績に基づいていることになりますが、といった決め方が現実的で簡便な良い方法かと私は考えます。

 やや乱暴にも見えますが、足元の情報を踏まえた将来のリスクを織り込むには、まあ、こうした方法しかないようにも思いますし、実績率とは異なる引当率を柔軟に取り入れることになり、リスク態様の段階的かつ適切な引当という観点から、引当金水準の全体的な適切性は今よりもずっと増すものと私は思います。

 結論として私のイメージでは、極端な段差を半分あるいは3分の1程度、段階的に埋めておくということが、信用リスク管理においても最低限望ましいのではないかと思っております。

 最後に、第1回でも発言しましたように、債務者区分の壁は、実務的には乗り越えられつつあり、基本的に現在の枠組みでも実務は回っていきます。そういう意味では、マニュアルの廃止に際し、現在の骨格だけでも前回の参考資料で概要が大変上手に2枚にまとめられておりましたけれども、あのようなものを監督指針や、あるいは実務指針第4号とかに、まあ、それは会計基準と言うべきか、監査の方と言うべきかという問題はあるのかもしれませんが、そういう最低の規範、ミニマムスタンダードとして、アペンディックス的に付すべきとの意見もあると思います。

 自己査定の適切性を前提として、充分予見可能なリスクに対する備えさえも過失的に怠っていたかといった、まあ、司法的な議論の足がかりは残しておいたほうがベターかなというふうに思います。

 細かい話になりましたが、会計基準等が現在の枠組みから大きくかけ離れてしまうことはぜひとも避けていただきたいと思います。天網恢恢ではありませんが、多少目が粗くてざっくりでも構わないので、少なくとも私ども国内基準行には、複雑じゃない簡便的な方法を用いることを認めていただき、もって、リスク管理の適切性を確保せしめるという方向で議論をお願いいたします。

 次の大きなショックが起きた場合の着地点は、実は同じなのです。何の着地点かと申せば、自己資本の着地点、あるいは自己資本比率の着地点はどのみち同じだということです。しかし、ショック時直後の決算が大幅な赤字になってしまうのか、あるいは事前の予防的な引当がある程度積んであるので、そうでもなく済むのかといった違いが出てきます。また、ご存じのように、大雨や大地震といった天変地異等により想定を超えるリスクが既に顕在化している地域、地区があることも忘れてはならない点であります。

 このあたりは、マクロ的には金融システムの問題でありますが、健全な金融機関経営者であれば、大赤字になっても、翌期にV字回復すればいいとは普通考えないはずです。そういう方々のニーズに応えられる柔軟な考え方を示し、それをバックアップする、こういう研究会で後押しをするということが必要かなと僣越ながら思います。

 あまりに不条理なものはともかくとして、ある程度条理が立つものは、必ずしも実績に基づかない引当を、むろん地区の実情も踏まえて、あくまで任意ということにはなりますが、そういうものを極めて簡便的な方法で新たな管理ゾーンみたいなところで集中的に認めるということではどうかという提案であります。そして、このゾーンに関する開示さえ、注記を含めて工夫をすれば、開示面の問題もクリアしやすいのかと思います。

 それから、最後にもう1点だけ。前回、IFRS9に関する減損のお話がちらっと出ておりました。私見ではありますが、IFRS9の考え方には、将来キャッシュフローの置き方にちょっと主観がまじりやすいのではないかなという側面もあるのではないかと感じております。本研究会でもさまざまな意見が今後出るかもしれませんが、どのような方法が本当に検査・監督上の不都合になり得るような恣意性の拡散をすることなく、安定的な引当を行うために望ましいか。また、金融機関の現実的な実務やコストベネフィットの観点も含めて、私どもの規模、特性等の実務や意見も踏まえていただき、慎重に検討を進めていただくということを期待しております。

 すみません。以上でございます。

○岩原座長  
 どうもありがとうございました。

 それでは、事務局から説明をよろしくお願いします。

○渡辺総合政策局地域金融監理官  
 それでは、私から1月から2月の間に全国で行いました対話会での意見を、幾つか主なものですれども、当庁で分析したものについてご説明をしたいと思っております。

 配付した資料は、金融機関の声、このようなことをなさりたいという声があるのはどういう融資行動であるとかリスクの分析をされたいのか、その上で、リスクの引当への反映をどのようにされたいか、それを今後の検査・監督で仮に議論するとすれば、どのような検討項目があるか、という形で当庁にて分析をしたものになります。

 あくまでも、研究会におきましてご議論いただくための資料ですので、何がしかここで何かこうすべきであるとか、こうすべきではないとかいったような検査・監督の方向性を示すものではありません。

 全体的に申し上げますと、先ほどもご説明ありましたけれども、地域銀行、信用金庫が地域や顧客の特性、あるいはご自分の融資方針などとの関係で、健全性と金融仲介をどう両立していくか。それらを係数に反映していくということで、例えばリスク管理ですとか経営管理にも役立てたい。リスクに対しても備えたい。引当にも使いたい。こういったような問題意識の下に取り組まれていたものだというふうに理解しております。

 第1回会合の資料でもご説明いたしましたけれども、今の仕組みの中で必ずしも合わない点がある。その中で現状の制度を前提にいろいろご努力をされているものだというふうに思います。

 詳細は後ほどご説明いたしますけれども、大まかにまとめますと、1つは、他と異なる特徴のあるリスク、この部分をどうグルーピングしていくか。この資料でいくと、①から⑥あたりが相当するかと思います。

 次に、お客さんとの関係によるいろいろな違いを、どういうふうに引当に反映していくか。、⑦とか⑨がそういったものになります。

 さらに、不確実な状況下で、どのようにリスクを把握していったらいいか、あるいはいろんなものを見ていったらいいか。⑩、⑪のあたりがそういった問題です。さらに⑫が大口の与信先、⑬は前回、田中様、川上様からお話ありました設備資金ですとか運転資金といった資金使途の性格による違いです。今、簡単にグルーピングいたしましたけれども、いろいろ重なっているところもありまして、例えばキャッシュフローをより見たいとか、ご自身がフォワード・ルッキングに見たいとか、いろいろ各項目共通に基層に流れているものもございます。以降、個別に簡単にご説明を申し上げたいと思います。

 まず1ページ目の①をご覧ください。こちらは、先ほど申し上げた既存の顧客とは異なるリスク特性のある先に取り組む場合の問題、これが債務者区分という括りが、このリスクの特徴をうまく捉えられていないのではないかと、おそらくこういうことを問題意識として持っておられる先だと思います。

 資料に沿ってご説明いたしますと、①の信金さんは、新しく取り組む創業資金の融資先ですとか、あるいは経営改善支援をする先、これを既存の他の貸出と別に区分いたしまして、当面は貸出当初から要管理先と同じ引当を適用していき、実績が出たところで、それを置きかえていくという、こういう取組みをされています。

 なぜそういうことをされたいかというと、この「考えられる融資行動とリスクの分析方法」の部分ですけれども、こちらは信用状況がやや悪化していても、事業を見て改善が見込まれるのであれば、本業支援とセットで長期のローンを出しているので、既存の商品、顧客層とは異なるリスクなので、そこを適切に把握したい。

 こちらの検討項目といたしますと、先ほども第二地銀さん、信金さんからお話ありましたが、データ蓄積が十分でない状況で、数値の客観性をどう確保するかといったような問題があるのだというふうに思います。

 次に、②、③、こちらにつきましては、ある産業への貸出割合が高くて、しかも、その産業の景気変動が大きい場合、ある時点での実態バランスで、債務者区分を判断していくということは、ご自分の融資の方法ですとか、あるいはリスクの管理の方法に合わないため、もっとキャッシュフローを見て判断したいというようなご事情があるのだと思います。②、こちらは自動車の協力メーカーに対する融資でありまして、個別の債務者のバランスシートに反映される前に、受注量の増減見込みですとか、産業構造の変化ですとか、こういったものに応じて債務者区分を変更して、機動的な引当を実施したいという信金がおられます。

 こちらは、先ほど申し上げたように、自動車産業の貸出割合が高くて、しかもその変動が大きく、さらには、自動車産業の場合は部品の商流が明確でありますので、受注量の増減から、その各社に対する影響を見込みやすいといったような事情がおありになるのだというふうに思います。
 また、③、こちらは外航船貸渡業、船をつくりまして、それの賃料を収入としていくということですが、ある瀬戸内海の銀行さんは、現在の債務者区分の実態バランスで見るというよりは、今後数年予想されるキャッシュフローを見まして、それによって引当なども変えていきたいということを取り組んでおられます。

 このような取組みをされますのは、船の貸渡業につきましては、非常に瀬戸内海のこういった銀行さんはポートフォリオに対する率が高いということもありますけれども、担保の価格の変動が大きく、担保不足となる可能性があるので、主にキャッシュフローから回収するような融資あるいはリスクの分析をされたいということを考えておられます。

 いずれにつきましても、今後の検討項目といたしますと、個別の債務者の損益に反映されていない段階で、こういった影響をどのように評価、推計していくかという問題があろうかと思います。また、他のものにも共通いたしますが、特に引当金を取り崩す局面での妥当性をどう判断するかといった問題があろうかと思います。

 次に、2ページ目をご覧ください。④から⑥、こちらにつきましては、第1回会合でもご意見をいただいております不動産の取組みをまとめてみました。

 不動産業といっても、業種、地域あるいは融資方針、こういったものによって、リスク特性が異なるのではないか、おそらくそういう融資行動、あるいはリスク分析の考え方があって、④から⑥にあるような金融機関の声があるものだと思います。こちらについては、そのキャッシュフローでどう見るかでありますとか、あるいは足元や将来の情報をどのように取り入れていくのかといったような問題が背景にあろうかと思います。

 ④につきましては、基本的に賃貸不動産をメインにされていく際に、ある地域銀行さんですけれども、人口動態に着目して、家賃あるいは空室率を予測して、個社別にというよりも地域ごとに引当を調整できないかということを研究されていらっしゃるところがあります。

 また、⑤ですが、こちらの信組さんは、景気変動の影響を受けにくい賃貸不動産をメインに取り組まれています。しかも、損切りのポイントを設定し、当初の計画からずれてしまった場合に、一旦そこで物件を売りまして、損失を確定することとしています。その際に出た損失については、この信組さんがおっしゃるには、保証、何か残債が残っていても請求しないというようなことをおっしゃっておられましたけれども、そういうようなことをされていると。

 そういう仕組みでやっているので、仮に景気変動が起きたとしても、それを実績でかなり早いタイミングで反映させる仕組みになっていると思うので、特に将来情報を反映する必要がないのではないかとおっしゃっている信組さんもいらっしゃいます。

 また、今、賃貸のお話を申し上げましたが、開発物件、あるいは建売の案件、こちらにつきましては、景気変動の影響を受けやすいので、むしろその影響を引当に反映させる必要があるというご意見もあります。

 なぜこういう声が出てくるかは、「考えられる融資行動とリスクの分析方法」の部分ですが、不動産といっても、先ほど申し上げたように、いろいろ種類によって貸し方も、あるいはリスクの分析方法も違う可能性があるということだと思います。先ほどもありましたように、賃貸であれば、賃料、空室率、すなわちキャッシュフローが非常に重要であるのに対して、開発物件の場合は、出口の販売価格、これによって返済の可能性が変動し、また、賃貸不動産にありましても、立地する場所によって、地域の経済ですとか、あるいは人の動きに影響を受けるグループもあれば、比較的それが少ないグループもあり、そういった差異がある中で、融資あるいはリスク分析をしていきたいと、多分こういうことではなかろうかと思います。

 引当の反映につきましては、ここにありますようなことでおっしゃっておられるわけですけれども、検討項目といたしますと、先ほどのと同じですが、具体的な方法をどういうふうにしていくのかというようなことがまず一つあろうかと思います。

 もう一つは、その地価が仮に下落したとしても、それに対して引当が抑えられるといったグループとされているものに対して、その方法の妥当性をどういうふうに担保していくのか、これはトラックレコードなどをどういうふうに考えていくかということがあろうかと思います。

 ⑦につきましては、お客さんとの関係の長短にかかわるものになります。破綻懸念先のⅢ分類が、これは担保などで未保全の部分でありますけれども、この引当率を算出する際に、中期の見込み期間を設定して、算出したいというものです。これは融資、リスクの分析でどういうことをされたいかということですけれども、お客さんと長期の関係を維持したい一方、長期間を通じたお客さんのリスクを把握したいけれども、3年間の損失あるいは直近のデータだけでリスクを見込みますと、リスクの過小評価になってしまうといったことがおそらく背景にある金融機関の問題意識だと思います。

 こういったもの検討項目といたしますと、一つは、破綻先送りのインセンティブを生まないか。損失が表面化しなければ、それだけ率が低くて済みますので、そういったことがないかどうか。あるいはそもそも長期にわたって破綻しない先が多いということは、そもそもグルーピングに問題があるのではないかといったような課題があろうかと思います。

 次に⑧は、ポートフォリオ全体の特性になります。こちらの信用金庫さんは⑨と同一ですので、どんなことをされているかというのを先に⑧、⑨とご説明した上で、⑧にまた戻らせていただければと思います。

 こちらの信用金庫さんは、営業エリア内に多くの業種がまんべんなく存在し、全体として、景気動向の影響を受けにくい融資ポートフォリオを構成していると考えておられます。また、経営改善計画をつくられたとしても、それだけでランクアップせずに、必ず進捗状況を確認して、その旨も開示をしています。そのため、外部環境が変化しても、全体としての引当率は実績率を使っていけばいいのではないかと、こういう声です。

 ⑨にもありますが、こちらは経営の再生支援先に対しては、一定のプロセスを用意しておりまして、例えば一定のお客さんの経営会議には定期的に職員を派遣するとか、あるいはコンサルタントをつけるであるとか、そういったプロセスを用意しています。したがって、そのプロセスの対象となっている先を、グルーピングの上、引当率を調整できないかというような問題意識を持っておられます。

 ⑧に戻りますけれども、検査・監督上の検討項目といたしましては、一番右側ですが、先ほども出ましたけれども、破産を先送りするなどによって見かけ上、損失が安定しているような場合がないかどうか、あるいはそもそも全体としての安定性をどのように確保していくかどうか、仮に現時点で安定的だとして、融資方針が変わっていないということをどのように確認していくか、こういったような検討項目があろうかと思います。

 また、⑨の経営支援という文脈で申し上げますと、こちらは背景としては、お客さんが中小零細企業の場合ですと、先ほども馬場さんから少しお話ありましたが、紙ベースの計画というものが少し合わず、問題を明らかにした上で、対応策をやっているかどうかをモニタリングすることのほうが重要であると。そうしたこととセットで資金ニーズを開拓していきたいということをお考えだと、背景にあろうかと思います。

 この場合、検討項目といたしますと、実効的な支援体制が構築されているかどうかというのをどのように評価していくのか、あるいは再生の見込みが薄いにもかかわらず、このプロセスの対象になっていることを思って、引当が低くなるということがないように、どのようにしたらいいかというような課題があろうかと思います。

 ⑩、⑪は、こちらは不確実な状況下で、リスクをどのように把握していくか。⑩は一定のグループでリスクの特性を概算で推定するものです。⑪のほうは一定の期間、この経過を見ることで、その不確実性を減らそうとするものです。いずれも特に破綻懸念先には事業継続性があるものと、そうでないものが混在しており、かつ、それが見込みにくい、あるいは本当はキャッシュフローを見たいのだけれども、なかなかその推計がしにくいといったような事情が背景にあろうかというふうに思います。

 ⑩の信用金庫さんにつきましては、破綻懸念先に長期間とどまっている先について、事業継続性に対する一定のスコアリングを行いまして、それで全体としてどの程度の引当を立てたらいいかということを計算されている先があります。

 融資あるいはリスクの分析で、どのようなことをされたいかというと、おそらくはお客様が破綻懸念先に区分されても、なるべく継続的に関係を維持したい一方で、その事業キャッシュフローを見積もるということが難しいということがあろうかと思います。こちらについては、検討項目といたしますと、全体としての引当額の十分性をどう検証していくかといったような問題があろうかと思います。

 また、⑪ですが、こちらにつきましては、一定期間以上、破綻懸念先にとどまった場合は、先ほど申し上げたⅢ分類額に対する予想損失率を100%とするという地域の銀行がいらっしゃいます。こちらもどのような融資、あるいはリスクの分析をされたいかというと、なるべく継続的な関係を破綻懸念先だとしても維持していきたい。一方で、再生が可能かどうかは手がけてみないとわからないといったようなご事情があると思われます。こうした引当の対応について、時間を置いて判断するという考えでありますけれども、検討項目といたしますと、再生の可能性の可否をどのように見極めていくか、あるいはあまりにもⅢ分類額に対する引当率が高い場合には、再生支援に消極的にならないかといったような問題があろうかと思います。

 次に、⑫、⑬であります。⑫は、大口先の信用リスクの個別性が高いというもので、ある意味、引当を平均値で考えることの限界ということかと思います。これは先ほど馬場様からお話があったこととも共通するかと思います。

 大口先については、個別に予想損失率を見積もりたいという信金さんや地銀さんはたくさんいらっしゃいます。大口先に対する融資の比率が一定以上の割合を占めており、しかも、経済環境の影響を受けて、大きく変動する先も多く、さらには、このリスクの特性、個別性が多いため、個々に判断をしたい。他方で、データで損失率を計算する際には、どうしてもその率がこの直近でとりますと、中小企業のデータで計算されることになるので、特性の違う先に対して、性格の異なるデータで予想を行っていると。

さらには、こういったことをされたいという一つの背景として、現在の債務者区分の枠組みですと、先ほど馬場様からお話あったように、この債務者区分が移るごとに引当の繰り戻し、あるいは追加、これが非常に大きい額になるので、もっと実態がシームレスに動いているのだとすれば、それに対して予想損失額もシームレスに見積もりたいと。こちらは検討項目といたしましては、信用毀損に至っていない先、特に大口先の正常先につきましては、これはどのような方法で見積もることが可能なのかと。また、先ほどもありましたけれども、引当を取り崩す場合の判断、妥当性をどう判断するかという問題もあろうかと思います。

 最後に⑬ですけれども、前回、田中様、川上様からご指摘ありました短期運転資金、経常運転資金、設備資金といった資金使途に着目して、引当方法を変えていきたい。設備資金であれば、事業そのものの将来性、運転資金であれば、それが回転していくかどうかといった点を着眼点にしたい。検討項目といたしますと、現在も正常運転資金に対しては、一定の計算方式でⅠ分類とすることが可能であるというような方法もありますけれども、いろいろな多様な融資行動がある中でどのような評価方法があり得るかと。また、資金使途が違っていても、融資先が倒産してしまった場合に、担保等を除きますと、回収額で差はないと考えられるところをどのように考えていくかと、こういったような問題かと思います。

 最初にも申し上げましたけれども、いずれも健全性と金融仲介をどう両立していくか。リスク管理ですとか経営管理、あるいは最終的には引当にも反映していきたい。こういう問題意識が背景にあろうかと思います。第1回会合の資料でもご説明いたしましたけれども、このリスクの特徴、あるいは足元や将来の情報の反映、キャッシュフローベースでの融資、あるいはお客さんとの関係をどう反映するか。こういったいろんな事情が背景にあろうかというふうに思っております。

 説明は以上となります。

○岩原座長  
 どうもありがとうございました。

 それでは、皆様からご質問、ご意見をお伺いする自由討議の時間とさせていただきたいと思います。どなたからでも結構でございますので、ご意見、ご質問等承りたいと思います。いかがでしょうか。森さん、どうぞ。

○森メンバー  
 先ほど事務局のほうからご説明があった「対話会等で聴取した分類・償却・引当に関する実務の例」について、第二地方銀行協会、全国信用金庫協会の償却・引当のプレゼンとも関係しますので、3つ述べたいと思います。

 実務のまず①の創業や事業再生支援です。考えられる融資行動とリスクの分析方法とあるところで、地域の創業ニーズに応える上で、また、財務諸表上、信用状態が悪化している先であっても、事業を見て改善が見込まれる、つまり、将来キャッシュフローを償却・引当に適切に反映させる上で、まさにそこがポイントだと思うのですが、本業支援とセットで資本類似の長期ローンで取り組んでいるとあります。私、中小企業を支援する立場で、こういった創業とか事業再生に日々直面していますが、創業で、創業赤字が3年続いているとか、どんどん債務超過幅が拡大するとか、あと、事業再生で赤字・債務超過やリスケ先、ただ、地域にはなくてはならない企業であるといった意味では、まさにここに整理されているように、創業とか事業再生でリスクプロファイルは似通っているなというふうに思います。

 まさに創業も将来キャッシュフローをいかに生んでいくか、事業再生も今、赤字で債務超過なんだけども、将来の事業価値を見極めていくといった意味で、リスクプロファイルが似ていると。その時に、ここにありますけれども、資本性類似といいますか、私自身が実際に民間の金融機関で、業績連動型金利で長期の期限一括返済、無担保無保証という、資本性ローンと呼んでいますけれども、それを活用しながら、創業支援とか事業再生支援に取り組んでいます。つまり、赤字なので、金利は足元、ほぼ0%でいいですよと。ただ、営業キャッシュフローですね。事業キャッシュフローが黒字化、拡大していけば、金利は2%、3%、5%になっていくと。まさに事業そのものを改善させていくインセンティブ構造にフィットする。インセンティブ・コンパティブルな業績連動型の資本性ローンなんですけれども、これはまさに融資。創業だからファンドだと短絡的に考えるのではなくて、昔を思い起こせば、松下、ホンダ、ソニーもベンチャー企業で、銀行が寄り添って融資と本業支援で伴走して成長を導いた事実があります。銀行なので、これはファンドとは違って、運転資金のところは専用当座貸越で運転資金の支援をしながら、先ほどの資本性ローンは主に設備資金関係に当たっていくことになります。専用当座貸越のほうで決済勘定を見ていますから、仕入とか製造・販売などの商流の動態モニタリングですね。動態事業性評価ができますので、雨の予兆で傘を差し出す、つまり、適時の本業支援につなげていくと。そうすると、業績改善のスピードもかなり高まります。

 「実務の例」の一番右の検査・監督上の検討項目にございます融資審査体制とか期中管理態勢の実効性をどのように評価すべきかについては、今申し上げましたような、まさに運転資金の商流に対する動態モニタリングをいかにやっているかとか、それによって本業支援を適時にやっているかを検査・監督する。つまり金融機関の初期審査と同時に、途上与信管理を検査・監督の方々が検証していくということになると思います。

 その下のデータ蓄積が十分でない状況、数値の客観性をどのように評価すれば良いかですけれども、この資本性ローンに関しましては、日本政策金融公庫ですね。日本、まさに北海道から沖縄まで営業店舗を持っている。その日本政策金融公庫が創業とか事業再生支援で、この資本性ローン、私が申し上げたのは民間金融機関のプロパーの資本性ローンなんですけれども、日本政策金融公庫も数年前から取り組んでいまして、創業とか再生支援でデータの蓄積は相応にあると伺っています。そういったデータの利活用ができるのではないかというふうに考えます。

 2点目は②の自動車部品です。これはまさに足元の情報と数年先の受注量の変化というような将来の情報を償却・引当にいかに反映させるかについて、将来キャッシュフローをいかに組み込んでいくかといった観点では、私はこの事例は根拠があるものと考えます。これは監査の観点でもそこを重視するようになると良いと感じています。

 私自身の経験ですけれども、ここの事例の引当積み増しとは逆のケースになりますが、2008年のリーマンショックの時に、日銀の金沢支店長をしていまして、北陸3県の富山、石川、福井をカバーしていました。大手自動車メーカーの部品製造の協力会社を視察で訪れた時に、工作機械、50台ほどある中で、実際に稼働しているのは4台、5台というような状況だったんですね。

 ただ、その社長と意見交換をしていた時に、社長は非常にしっかりした顔つきで、当時、3年後の新車の試作品の受注を今しているところなんだと。そういう意味では、今、工作機械の稼働状況はご覧のとおりなんだけれども、将来のキャッシュフローを含めた状況は厳しくないと。あとはいかに量産体制に持ち込むかとの説明でした。そういった将来キャッシュフローの面で受注があるなどの根拠があるところについてはしっかりと金融機関に評価してもらいたいと。だから、今の赤字や債務超過だけで判断しないでほしいというような、切実な社長からのお話がありました。現在は高収益企業です。当時、10年前は、金融機関は不良債権処理をまだやっていたので、金融機関からはかなり厳しい対応をされていた局面だと思います。

 そういう意味で、「実務の例」の一番右側にあります大きな経済情勢の変化には、よく使われますけれども、スルー・ザ・サイクルで見るのと同時に、産業構造の変化についてはやはり、例えばこのケースの新車の試作品の受注をしているといったような、そこを切り出して評価に組み込む重要性を示唆しているのではないかと思います。

 また、③の外航船についても、同じような形で対応するべきではないかと。まさにこの事例はいい事例だなというふうに思っています。

 それと、3点目でございますけれども、これは一番最後の13番目で、まさに資金使途と融資期間に応じたリスクのところです。償却・引当を工夫・改善していく上で、全ての事例に関係する最重要論点の一つと考えます。考えられる融資行動とリスク分析にありますように、顧客がこの実質債務超過か否かに注目するのではなくて、事業の将来性、資金使途。まさに将来性と資金使途というキーワードですね。これらに着目して、融資の可否を判断すると。リスクと引当を考えるところでございますけれども、この横棒で、設備資金はまさに事業の将来キャッシュフローから生まれる収益弁済ですし、続いて、経常運転資金を融資するところについては、先ほどもご説明ありましたけれども、正常運転資金については、その検証はここにあります不良在庫の発生とか、売り掛けの焦げつきとかの有無などに着目して、返済可能性をチェックしていくということであって、まさに事業性評価に基づく適切な融資行動そのものがされるんだと。将来キャッシュフローとか、資金使途を見ることによって、金融機関の融資行動が適切になります。私は中小企業の社長さんとか、次世代経営者を直接支援していますが、金融機関の適切な融資行動こそ、やはり社長さんとの信頼関係を結ぶ一番重要なところになりますので、そこが肝心だと思います。適切な融資行動がないと、社長さんとの信頼関係ができない。となると、どうしても決算書に手を加えてしまうとか、月次試算表は出したくないとか、そういうふうな行動に逆になりがちになってしまう。これは実際、中小企業大学校で社長や次世代経営者向けに、私、講師を努めていまして、社長さんからはやはり信頼関係という話がございます。

 ポイントをさらに述べますと、この資金使途、一番右側の検査・監督上の検討項目のところで、資金使途が違っていても、融資先が倒産してしまえば担保等除いて回収額に差がないので、引当方法に差をつける、つまり、引当対象債権から正常運転資金を控除することの妥当性についてどうかといった点についてですけれども、債務者区分の正常先、要注意先については、事業継続を前提にしていますので、正常運転資金見合いの短期継続融資に引当をするというのは無理があると考えます。まさに要償還債務から正常運転資金見合いの短期継続融資を除くのと同じように、引当からも控除すると。
 ただ、一方で、破綻懸念先以下になりますと、そこが自己査定上も破綻を想定しているということなので、ここは引当を考える。そういう意味で、この債務者区分のところで切り分けをしてはどうかというふうに考えます。

 さらに申し上げますと、正常先とか要注意先から破綻懸念先を経由しないで破綻する、いわゆる突然死のケースもありますけれども、これは金融機関として、その突然死をいかに途上与信管理、初期審査から途上与信管理をしっかりやっているかといったところ。いわゆる予防管理体制をどのように構築し取り組んでいかを、これは検査官、監督官がしっかり検証すれば良いと考えています。

 以上です。

○岩原座長  
 はい。ほかにございませんでしょうか。田中さん。

○田中メンバー  
 ありがとうございます。今日のプレゼンテーションをしていただいた方は、どうもありがとうございました。大変参考になりました。

 幾つかの論点、これから議論をされるに当たっての論点について、少し申し上げたいと思うのですが、第1点は、この引当とか償却というのは、十分であればそれでいいのかということです。諸外国の当局ともお話をした中で、引当や償却というのはsufficiencyが基準じゃないという事です。appropriateness、その水準が適正かどうかということだというのが基本的な考え方です。

 ここを外すと、ただ単に積めばいいということになりますけれども、そうではなくて、その引当の水準が適正なのかどうかということが極めて重要だという、そのそもそものスターティングポイントをしっかり把握しておく必要があるだろうと思います。

 業態とか、上場か、非上場かということで、金融機関についてもそのあり方は変わってくる面があるでしょうが、当然、引当をたくさん積むということは利益を減らすということですから、株主にとってはマイナスになります。それから、資本の量も当然、本来あるべき量よりも減るわけですね。したがいまして、その引当の水準については、その適正性というものがそもそもの構造原理になければならないんじゃないかと思います。また、その健全性を考える時には、引当だけではなくて、資本の量と一緒に考える必要がありますので、その点はよく見ておく必要があると思います。

 特に我が国においては、上場をしている金融機関は現時点でほぼ全てPERは1以下だと思います。これは資本市場の観点からは、金融機関の経営というものが全く評価されていないということが明確でありまして、この点からしましても、こうした基本的な考え方を持っていることは極めて重要だろうというふうに思います。

 それから、2つ目は、今日ちょっと期待してきたのですが、残念ながら、若干期待外れみたいなところが正直言ってありました。それは引当を積む、もしくは引当の算定をするという際に、本日のプレゼンテーションの中ではAIを使うというような話は全く出てこなかったですね。データをどのように集め、それをどのように分析し、アルゴリズムをどのような形でつくり上げ、そして、AIを活用して、どのように適正な引当水準というものを考えていくのか。そして、そういうことをどういうふうな形でプロジェクトとしてやっておられるのかというようなことが聞けるかなと思ったのですが、残念ながらそういうお話はありませんでした。

 一方、フィンテックの世界では既にそういうことが、日本でもそうですし、世界的にも起きています。具体的には、レンディングクラブというのは極めて有名なところですけれども、ほかにもクラウドファンディングが発生していたりとか、もう既にこの世界は伝統的な商業銀行のやり方を超えたさまざまな手法が、フィンテックの世界では、日本でもグローバルにも起きています。そうしたものを全く無視した形で議論を進めていくというのは、これはやっぱり日本の金融の成長とか発展、それから、利用者利便、そうしたことに資するという観点からは、やはり少し画竜点睛を欠く面があるんじゃないかという気がいたします。

 実際に、過去のデータだけでやるということは非常に限界があるというご報告もありましたけれども、そのクラウドファンディングにしましても、フィンテックのレンディングにしましても、これはモニタリングを中心としたレンディングということを考えているわけで、こうした時には、例えば借り入れをする中小企業の経営者の行動特性みたいなものまで、非常に重要な要素としてデータの中に入ってくるわけですね。「経営者の資質を見ます」と、昔から銀行は言うんですけど、じゃあ、どうやって見ているんだという点が具体的には掘り下げられていない。例えば、こうしたフィンテックの会社は、フェイスブックにおける行動をモニターするとか、ほかにもそうした形でもってモニターをしながら、実際にレンディングをしていくというアプローチを取っています。

 その結果、何が起きているかといいますと、通常、審査の世界というのは5つの要素があると言われているんですね。1つはクレジットポリシー。これは審査の政策ですね。2つ目はクレジットアプルーバル。これがいわゆる審査で承認をするかどうか。3つ目はクレジットのモニタリングですね。ローンモニタリングとも言いますけれども、貸出をした後のモニタリングですね。4つ目がプロブレムローンマネジメント、不良債権処理。最後にクレジットレビュー、与信監査。大体この5つが常に骨格だと言われているんですけど、日本の金融機関はずっと入り口のところの審査、アプルーバル、しかも過去のデータをベースにしたアプルーバルというところに重点を置きまして、その後のモニタリングが非常に弱いという、そういう特性があります。

 それに対してフィンテックがやっているのは逆で、そのアプルーバルのところは広く、そして、その後のモニタリングをきちんとできるデータ分析ができる体制をとっているということですから、そうした形の与信行動が今、マーケットでだんだん広がりつつあるということも考えながら、検討していく必要があるだろうと思います。ただ単に従来のやり方にちょっと手を加えるというだけでは、もう既に我が国の金融は遅れてしまうんじゃないかというところがあるかというところがあります。

 それから、幾つかのプレゼンテーションの中で、ポートフォリオをセグメントとして考えるという考え方がありました。これは欧米でもやっているやり方ですから、一つ非常に重要なアプローチだろうとは思います。そうしたポートフォリオセグメントでの、いわば抱えるリスクというものをどのようにして分析するか。これはもう既に今やAIの活躍する場になってきているというふうに理解していますけれども、そこにおけるアルゴリズムをどのようにして判断するのか、評価するのかというのが非常に重要なテーマだと思います。これは会計評価でも極めて重要なテーマになっていくだろうと思うんですけれども、こういう時に最も大事なのは、そうしたアプローチをする時に、責任体制はどうなっているのかということです。そういう意味では、取締役会の構成が重要です。そういうことが理解できる人たちがいるのか。そして、その人たちというのはきちんとした議論をされているのか。そうしたアルゴリズムを理解し、そして、それが最も適正な引当、もしくは資本の量というものにつながっているのかということをやっておかれるということが大事だと思います。

 したがって、今、金融庁の検査・監督の世界ではガバナンスというものが非常に重要なテーマになってきているというのは、前回も申し上げたと思うんですが、今回も繰り返しておきたいと思います。

 それから、4つ目なんですけれども、創業支援という言葉が何回が出てきます。しかしながら、創業支援を貸出金で行うということ、そのことについて一度考えてみる必要があるかなと思っています。

 といいますのは、貸出金といいますのは、基本的には回収可能性というものが重要な判断要素になっていまして、回収できない見込みのお金を貸すということになりますと、それは単なる背任行為になります。そういう意味では、そもそも創業支援というのは、回収可能性、つまり、回収するお金でやるべきなのか、それとも本来、ベンチャーキャピタルでやるべきなのかというところは非常に重要な論点だろうと私は思います。

 幸いなことに、最近ここ数年、日本ではベンチャーキャピタルの量が非常に増えてきているという報告があります。したがいまして、創業支援ということが必要であれば、そのお客様に対してベンチャーキャピタルを紹介し、一緒になって、その会社の創業というものをつくり上げていって、そして、資本が出てくれば、その資本をバッファーとして、例えば運転資金を出すとか、そうしたような形に動いていくのが本来の役割ではないでしょうか。

 実際に日本ではその起業の数というのは、諸外国に比べて非常に少ないというふうに言われていますし、その失敗例もたくさんあります。したがいまして、回収というものを前提にしたお金でそもそもやっていくということ自身が適切なのかという検討をする必要があると思います。

 これはひいてはこれは金融庁にもぜひお考えいただきたいんですけれども、金融を考える時に、こうした間接金融だけじゃなくて、資本市場というものの発展、それから、資本市場と間接金融との共同というものがもっと広がっていく必要があるんじゃなかろうかというふうに私は思っています。

 そういう観点からしますと、繰り返しになりますけれども、今回のこうした融資の検討という時にも、資本市場の活用というもの、それから、フィンテックの成長というもの、そうした観点も入れながら議論をしていく必要があるんじゃないかと、そういうふうに思います。

 以上です。

○岩原座長  
 ほかに。吉野さん、どうぞ。

○吉野メンバー  
 ありがとうございます。今の田中委員のと非常に似ているところなんですけど、従来からのさまざまな融資の時には、各金融機関の方というのはある程度自分の中でモデルを解かれているというふうに思うんですね。それはこういう先であればこれぐらいだけども、ここにいろいろプラスマイナスをつけてと。だから、そういうモデルがそれぞれどういう形で組まれているかを、お話伺えば大体わかると思うんですね。そこに定量変数と定性変数と両方があって、実際にやられていると思います。もしそのデータがあれば、既にビッグデータを使って、これまでの経験からほんとうに引当が適切であったかどうかというのも、本来であれば計量できるはずです。だから、そういう意味では今回の見直しの時に、各金融機関の方がこれをやっていただく時に、エクセル表で全ての金融機関が同じようなフォーマットで、全てこれが入れられるというものをつくっていく必要があると思います。

 その時には定量的なところも先ほどのいろんな話でありますけど、例えば社長の資質であれば、1から5を入れてくださいというような形で、少しスケールの変数を入れると。そのエクセル表を非常にうまくつくれば、それがビッグデータになりますから、5年後、10年後に同じような議論をする時に必ず使えると思います。

 そのデータからいきますと、私、CRDのデータというのをよく見ているので、信金のデータは見たことがございませんけども、債務者区分と先ほどの引当率でいくと、急にガクンとなっているのは実際の破綻の確率とは全然違っています。実際の破綻確率は、正常、要注意先は低いので、それから実質の破綻は非常に上がっていくんですけども、あのような階段状ではなくて、もうちょっとノンリニアな形になっていますから、ということはやっぱり現実と比べて、現在の引当率のやり方というのは少しデータから見れば、適していないということがわかると思います。

 それから、簡便な方法でというのがやっぱり必要だと思います。なるべく報告や何かもそのエクセル表で簡単にできて、一々金融庁に報告しなくてもいいと。それさえ見ればわかるんだというような形で簡便な方法で現場の方々があんまり時間をとらなくてできるということが必要だと思います。

 それからあとは、裁量を認めてあげまして、プラスマイナス何%ぐらい裁量していいですよと。例えば今の現在の年金の運用というのは、債権がこれぐらい、外国債、これぐらい、プラスマイナス何%という形で入れていますので、その許容範囲を認めてあげるということも一つの方法だと思います。

 それから最後は、田中委員がおっしゃいましたように、まさにふるさと投資ファンドとか、新しいところはそういう貸出の形ではなく、やっていって、それから、何年後かに金融機関が貸出として入っていくという、それが私は一番重要ではないかというふうに思います。

 それから最後は、先ほどの各金融機関が持たれている、頭でこれまで経験された中には、もうここに質問されてらっしゃる景気に大きく変動する業種であるのか、あるいは為替リスクに大きく変動する業種であるのかというのは、多分皆さんの現場では頭の中で解かれているんだと思うんですね。ただ、それを変数として計量分析でやられていないというところだけですので、やっぱりもう少しいろんな金融機関がこれまでどういう形でやられていたかというのを見ていただいて、その中の変数を見ていくと、おそらく計量分析ができるというふうに思います。

 以上です。

○岩原座長  
ほかにいかがでしょうか。渡邊さん、どうぞ。

○渡邊メンバー  
 渡邊でございます。基本的に引当の適正性ということで言いますと、1社1社、銀行の人がDCF法で評価して引当すれば、多分それなりの確度は、確保されると思います。ただ、当然にマンパワーにも限界があり、現実的ではなく非効率な話なので、そういうアプローチはとらないと思います。私も当社でファンドを運営していますが、200先ぐらい投資をすると、マネジメントサイドとしても、また、監督官庁の金融庁さんからも、どういう投資先があって、どういった分類をしているのかと聞かれますので、結局、債務者区分の話をすることになります。これは多分普遍的なものだと思っていまして、私が例えば銀行さんに投資したいと思った時に、取引先企業がどういう債務者区分になっているのかということは、1社1社の引当金の積み上げによる分析は不可能なので、対応できないということになると思います。

 そうすると、債務者区分だと、要注意と破綻懸念先、実質破綻先、この辺の話は、引当の手法としては、一般貸引率で掛けるか、個別で積むかという話になってくると思います。多分議論になっているのは、一般貸引のところで、これが、要は、ひとまとめになっており、各銀行さんによって戦略ややっていることが違うので、みんな同じだとやりづらいと、簡単に言うとそういう話かと思います。

 個別引当の話は、私も当社で事業再生をやっているからわかりますけれども、結局下に落ちた先というのは、再生をして上に上がるか、M&Aなりして、取引先でなくなるか、破綻して法的整理されていくか、この3パターンぐらいしかなく、つまり、回収できるか、とどまるかという話になると、手法としてはいろいろな手法があると思いますが、過去の投資の引当金の率を掛けるというのは、実はあまり合理的ではなく、1社1社評価すればよいのではないかと思っています。

 問題は、ひとまとめの一般貸引について、金融機関さんがどういう戦略でどういうことをやっていくのかと関連しており、例えば創業支援をうちはやらないとか、うちは人口増加しているから、住宅ローンをやるんだとか、うちは人口減少しているから、成長産業に特化しないと生きていけないという話になるので、この辺のところは正直、金融庁さんが検討していくことが必要ではないかと思います。

 ただ、それは、監査であったり、検査する側からすると、第三者によって客観性を担保できるかという議論が当然必要になってきますので、第三者がどう見ているかというところの話かと思います。

 例えば社外取のガバナンスを効かせるとか、第三者的な立場である公認会計士が見たりとか、金融庁の皆様方も第三者的に金融機関がやっていることと、その引当の連動性を検証できるかどうかというところが重要ではないかと思います。

 したがって、例にあったとおり、不動産投資の話が出ていますけれども、不動産投資に対して、金融庁さんがある程度自分たちの仮説なりを持っていないと、結局それを金融機関に証明してくださいという話になって、現場は苦労しながら資料をつくることになり、当局対応の困難さから、手を引いてしまうといった話になってしまうので、実務的には検査なり、監査なりのそういった理解をするための認識というか、知識向上がない限り、議論しても実現しないかと思っています。

 以上です。

○岩原座長  
 関さん、どうぞ。

○関メンバー  
 今まで皆さんのお話を伺っていますと、田中さんのAIをどう活用するかとか、あるいは吉野先生の計量分析に係るデータというものをどういうふうに確保するかというようなことが非常に大事なポイントだということがわかってくるわけですから、私はそういうことを考えると、少なくともそういう、例えばこの地域産業構造だとか、地域構造だとかといったことを含めて、いわゆる社会インフラというか、経済インフラとしてのこのデータというものを我々が判断する特性に応じて、きちっと、整備するということがやっぱり一つの大きなテーマになるのではないかと、こう思うわけですね。

 先ほど地銀や信金の方から、自分の金融機関だけではデータの母集団が少なくて、それがほんとうに適正かどうかということを説明することがなかなか難しいというお話もございましたし、監査をやる上でもほんとうにそれが適正かという証明がどうしても要る訳でして、これには相当な手間と労力がかかるということもございましたし、一方で、先ほど日本政策金融公庫でもいろんなデータの蓄積があるという議論も出てきました。

 あるいは地銀でも、いろんなデータの蓄積があるという話もございますし、また、信金の皆さんでもデータの蓄積が一部ある。しかし、これは必ずしもみんなが共通して使えるというインフラにはなっていない。検査・監督の立場から言っても、まあ、個別には必ず判断しなければいけない事項が残るとは思いますが、少なくとも将来キャッシュフローを見込むとか、いろんな手法をとる上でもどういうデータを蓄積しなければいけないのかという、そして、それをどういう形でみんな共有の財産にするかという論点というものを一つ、ぜひ踏まえてご検討いただきたいなというふうに強く思います。

 以上です。

○岩原座長  
 ほかに何かございますか。小倉さん。

○小倉様  
 ご説明ありがとうございました。お話に出ていましたように、田中様からの引当金の水準のところですね。やはり十分性というよりは適切性が重要だというところは、まさにそうだと思います。お話の中で、上場、非上場でも変わってくるというお話もありましたけれども、やはり上場の金融機関さんは、おっしゃられていたように、業績について外部投資家にコミットされている部分もございますし、信用金庫さんになりますと、地域の協同組織ということですので、そのあたりの考え方は少し変わってきてもいいのかなと感じたところです。

 テーマの中で、一般貸倒引当金の実績率のところのお話が川崎信金様からございましたが、やはりグルーピングが重要だということであっても、グルーピングをしても、結局実績率でやっている限りは、加重平均して、結果は同じになってしまうというところが、工夫をしてもあまり成果が得られないということのご説明がございまして、それはまさにそのとおりと考えているところです。

 ですので、そういった引当率のところに将来、現在の経済環境等を加味して、フォワード・ルッキングな引当ということをやっていくためには何をしていけばいいかというと、お話があったデータの蓄積というところかと思いますが、やはりデータの蓄積は、過去の引当のデータは十分にたまってきているとは思いますけれども、経済環境とデフォルト率ですとかそういったところのデータがどのぐらいたまってきているのかというところが重要かと感じたところです。

 もう一つ、栃木銀行様のご説明の再生に対する融資の取組事例というところで、破綻懸念先の引当のところで、やはりランクアップする可能性がないところは実績率以上に追加の引当をしたいというところは、まさにそういったお考えは理解できるものと思ったところです。

 この再生のところは、そういった破綻懸念先の中でも再生するような先があって、そういったところについては、このケースですと通常の30%ということで引当ていただいているのかなと思いましたけれども、1点、今後その検査マニュアルのところからの検討があるとすると、やはり検査マニュアルでは分類というのが非常に重要になっていまして、Ⅰ分類、Ⅱ分類、Ⅲ分類というのが債務者区分との関係で分類の仕方が変わってくるところがありますが、やはりこのような再生をする場合であっても、破綻懸念先になってしまうと、この追加の融資額が全額Ⅲ分類になってしまうというようなところは、きちっとこのお金を入れることで、再生を図るようなケースであれば、今までの分類に固執した引当というのがどうなのかというところを感じたところですので、こういったところは今後検査マニュアルが改訂というか、廃止をされる中では、考えていくことができるような内容ではないかなと感じたところです。

 また、川崎信金様から、監査法人はこういった引当の変更をする時には、合理性・適時性・継続性を求めるというところは、まさにおっしゃられたとおりでございますので、我々、やはり独立の第三者として金融機関さんのお考えについて、そういった合理性があるか、適時性があるかというところは十分に検討した上で、銀行さんのこの引当の考え方が受け入れられるものかどうかというところを考えて、監査対応しているところです。

 工夫をするところについては、第1回目でも当然いいと、望ましい方向と感じましたが、今日は、2金融機関さん両方とも賛同されていたと思うんですが、そういった工夫があるところには開示で担保をしていくということがセットで図られていけば、財務諸表の利用者の方もご理解いただけるのかなというところは、重ねてになりますが、そのように感じたところでございます。

 以上です。

○岩原座長  
 ほかにいかがでしょうか。川上様、お願いします。

○川上メンバー  
 川上でございますが、ちょっと漠然としたことで一言お話申し上げます。一つは、先ほど関さんがおっしゃいましたデータベースの話というのは、本質的な話であります。20年ぐらい前からそんな話はありまして、私はCRDを創立する時にお手伝いさせていただいたのですけれども、いわゆるその当時から中小企業のデータベースは日本にはないという前提でありました。結局のところ、CRDという会社は、残念ながらあんまり成長ができませんで、信金とか信組さんのデータベース会社として存続しておりまして、一方、民間であると、地銀さんがよく活用されておられるのはRDBとかあるんですが、また他方、依然として帝国データバンクだとか商工リサーチみたいなところに中小企業の信用リスク、信用情報が蓄積してきて時を経ています。

 したがって、これはただ民間だけではなくて、先ほど話に出ました政策金融公庫とか、要するに、公がかかわっている保証協会なんかそうなんですけども、そういうところを抜本的にどう考えるかということも含め非常に重要であります。だから、そのような視点でもう一回、国の中にある中小企業データというものが統一的に運営できていく体制が今更ながら必要であります。今はそういうものはありませんが、もう一回、一方で、AIなどを活用しながらやるということは国策としてもトライする価値はあるかというふうに思っているのが1点でございます。

 2点目は、前回申し上げましたけど、どんな金を出しているのか、運転資金なのか、コンテンツなどの貸出なのかということを申し上げましたけれども、これは20年、そういう体質でやってきてしまっておりますので、特に地銀とか、信金・信組が、20年この方貸出てしまったものが、今振り返ってみて、ほんとうにそういう形で分類できるのかということですね。それを実感していただいて、どこまで対応できるかということは見ていただいたほうがいいかと思います。その原点に立ち返って貸出を棚卸できるかということになります。

 やっぱりずるずる来てしまっていて、環境が変わり、特に要注意とか要管理になってしまいますと、どんな質の金かというよりは、これをどう会社を維持するかというところにどうしても目線が行きますので、やはり、前回も田中さんが申し上げた、そういう金の質にかかわるところについて、どこまで今、振り返って考えられるのかということが一つのテーマとしてあるんじゃないかと思います。

 3点目は、極めてミクロな話ですけれども、やっぱり不動産にかかわる信用リスクというものの開発が遅れてきたという認識をしております。総じて不動産貸出という名前を聞くと、いろんな形の不動産貸出がありまして、リテール(個人貸出)であれば、住宅ローンもあれば、アパートローンもあればという形がありますし、法人貸出について言いましても、開発的な不動産なのか、商業ビルを持つためのものなのか、マンションを持つものか。更には地域性もあります。それがしっかり認識された上で実行されているかということであります。

 地方の事例を見ていますと、バブル期、更には10年ぐらい前のリーマンショック前ぐらいまでは、例えば地方の温泉地は大体ちょっと大きめのものを造りました。あの時に造ったものが今マイナスになっているケースが結構あります。というように、そのことについて事業性評価と言うんですけど、裏方にその不動産の価値が関わっているものが相当ありまして、そういうものの不動産価値に対する信用リスクの見方が一辺倒に行われてきているのではないかと思っています。それを回収することが難しいとの前提で、いわゆる引当をして、結局タイミングを見て私的整理か何かで処理をしてしまうと。このことは一方では、モラルハザードを起こしてしまっているようなのが多数あります。引当し処理する前にその過程で不動産に関わるよ信用リスクの取り方の技術開発というか、そういうものが必要じゃないかということを感じております。

 最後にありましたけど、これはここの議論とは別に、実は今、議論していただいていると、正常先、要注意、要管理等々というんですけど、どこかでは営業部店の支店長がこの融資をやりたいといって、やってもらって、1年後になると、これは要注意になりました、要管理になったという例があると思うんですが、要するに、皆さんがおられる本部と営業店の行員と部店長の評価というのはどの段階でどういう評価をされているのかということを本当はお聞きしたいと。今日は個別に聞きたいというんじゃなくてですね。

なぜかというと、営業部店長は頑張ってやって、融資の実行をしましたと。頑張ってやるぞということで、残念ながら1年間のモニタリングの後に、要注意になりました、要管理になりましたといった時に、どの段階で部店長の評価をしているのかということなんです。そういう要管理になったら、要管理になった段階で、おまえはだめだったと言うのか。私が今かかわっている、ある銀行のところは、1年間は部店長に何が問題だったのか、どう解決したらいいのかを出させて、1年間トライさせて、その後、1年後に評価しています。

 要するに、これは今日の議論と外れるんですけれども、本部主導型でやってきたことのツケみたいなことが今起きている可能性もあるので、それを現場レベルの人たちにそういうところに絡ませてどうやることを、それぞれの金融機関がどうやっておられるかということは非常に興味あるというか、重要なことじゃないかと思っていますので、そこはまた別の機会にお話を聞かせていただければというふうに思っています。

 以上でございます。

○岩原座長  
 ほかに。小野さん、どうぞ。

○小野様  
 ありがとうございました。2点、コメントをさせていただきたいと思います。

 1点目は、前回もお話をさせていただきましたけれども、私ども企業会計基準委員会では、日本基準を国際的に整合性のあるものとする取組みを行っておりまして、その取組みの一つとしまして、金融商品会計基準の改正がございます。その改正に向けた検討に着手するか否かを検討するために、この8月30日に金融商品に関する会計基準の改正に関連しました意見募集文書を公表しております。その中の項目の一つに減損、すなわち貸倒引当金でございますけれども、その問題も含まれておりまして、この研究会で議論される金融検査マニュアルの別表の廃止の問題が関連する可能性があるかもしれませんけれども、まだその影響につきましては明らかではないため、意見募集文書では影響につきましては記載をしておりません。この研究会の議論の内容についても、理解をさせていただいた上で、検討を進めていくことを考えております。

 2点目は、今日のご議論の中で、現行の日本基準を前提としまして、金融機関のリスク管理を引当に反映させる工夫に関する実務をご説明いただきまして、ありがとうございました。

 中には、国際的な会計基準で採用されております将来予測に関する情報を利用する方法につきましてもご発言があったと思いますけれども、その将来予測に関する、あるいは将来予測を利用する情報はどういった情報をどのように使うべきかということが非常に難しい点があるわけですけれども、IFRS、あるいは米国会計基準といった国際的な会計基準では、将来予測情報は合理的であるとともに、裏づけ可能な情報であることが必要とされております。

 先ほどもIFRS9の減損につきまして、将来キャッシュフローの見積もりに主観性が入りやすいというようなご発言がございましたけれども、将来予測情報に関してどの程度の裏づけを必要とするかということが、今後議論を行う上で一つのポイントになるのかなと思いました。

 以上でございます。

○岩原座長  
 はい。それでは、玉井さん、お願いします。

○玉井メンバー  
 私は事業者サイドのアドバイザーをやっている立場から一言感想を言わせていただきます。今日のプレゼンテーションは第二地銀さんや信金さんがいろんな具体的なところで工夫をされていることが分かり、中には初めて知ったことも多くて勉強になりました。ただ、今日の議論の角度として、健全性と金融仲介をどう両立していくかという点からすると、引当とか償却の制度をこう変えることが、事業者にとってこういうプラスになるんだという切り口からの議論が不足しているのではないかと思います。

 断片的には多少なされているかもしれませんが、事業者目線から見た時に、この制度をどういうふうに運営していくのが一番日本の事業者のためになるのかという視点が大事です。そこのところを押さえながらやらないと、監督官庁とその監督される業界、それから、公認会計士とか監査法人といったプロフェッショナルが自分たちの業務の都合のためにやっているというような議論になってしまいますので、それであれば、こんな立派な研究会でやる必要もないんじゃないかと思います。先ほど田中さんがおっしゃいましたけど、私の経験からしても、ソーシャルビジネス関連の人たち、あるいはかなり厳しい事業再生の会社などと接していると、金融機関に対する期待度がかなり低いんですね。言ってもわかってもらえないということで、ベンチャー企業とかソーシャルビジネスの人たちは今、NPOバンクのようなところでファイナンスを受けるケースが多いようです。

 それから、一般の事業会社においても、既存の金融機関に関して結構不満を持っていて、例えば、資料にありましたけども、歴史的な低水準に倒産確率があるというのであれば、何ゆえに信用保証協会の保証をずっと使い続けるのかという不満があります。本当は自分たちでもっとリスクがとれるのではないか。体力もあるし、ノウハウもあるのであれば、戦後復興期にリスクをとるのが難しい状況の中でできた公的な信用保証制度にいつまで依存する必要があるのでしょうか。これをなくせとか極論を言うつもりは全くなくて、それを必要とする人たちは、創業だったり、事業が厳しい状況にある人たちは引き続き存在すると思いますし、あるいは小口に限定するといった方法もあろうかと思います。しかし現在の信用保証残高のかなりの部分は正常先が中心で、売上高が数億円といった中堅レベルの債務者企業まで及んでいます。従来からとっている個人保証や保証協会保証、これは絶対に外せませんというような伝統的なスタイルで、自分たちの既得権はそのまま維持しようとする金融機関目線でもしやっているとすれば、事業者からだんだん相手にされなくなるのではありませんか。

 繰り返しになりますが議論の角度として、明確に持っていただきたいのは、「それが事業者から見た時にどれだけ役に立つのか」という視点です。それは金融庁が今掲げている「国民のため、国益のために絶えず自己改革できる組織へ」という考え方に合致するでしょうし、そういう金融庁のスタンスを金融機関サイドも当然理解しているのだろうと思います。ですから本日のプレゼンでは当たり前過ぎて言及されなかったのかもしれませんけれども、いま一度その辺を意識しながら議論されたほうがいいのかなということでございます。

 以上です。

○岩原座長  
 ほかに何か。多胡さん、どうぞ。

○多胡メンバー  
 多胡です。すみません。前回出ておりませんものですから本日フォローしたのですけど、私も実は、田中さんや川上さんや、玉井さんもそうかな、と同じ古い銀行員なものですから、ごめんなさいやっぱり13番の資金使途のところが一番気になるんですね。やはりここが肝だと思っています。それで、今日の両業界のプレゼンとか資料を見ても、実はここが全くないんですね。それで、両業界おっしゃっておられる引当方法の選択の自由度ですとか平準化とか、それぞれごもっともなんですが、その前に基本のところが抜けていると思います。私が見ているデータですから正確には違うのかもしれませんが、先ほど森さんもおっしゃいましたけど、やはり資金使途とは関係なく、融資における長期比率が非常に高いわけですよね。

 だから、法人事業性融資で本来どのぐらいの長短比率かというのはわからないんです例えば2つの金融機関さん、今日お見えになってらっしゃいますけど、借り手を長期づけの状態にしていることはないですか。今日伺ったいろんなお話、それはもちろんいいんですが、やはり本来の運転資金は短期、それから、設備には設備のための長期資金、場合によっては資本性資金など、資金使途に応じて融資を切り分けることが第一歩ではないでしょうか。それに対してちゃんと適切な、さっきから適切という言葉で出ているんだけど、長期漬けというのは適切じゃないお金が出ているわけですよね。こういうところから是正していかないと、この議論というのは進まないんじゃないかという気がするんですが、逆にこの点を両業界に聞きたいことなんですね。すみません。古い銀行員なものですからお許しください。

○岩原座長  
 金融機関の方から何かコメントありますか。はい、どうぞ。

○仲田様  
 栃木銀行でございます。ご指摘どうもありがとうございます。まさに今、先生がおっしゃった資金使途の切り分けもございますが、長期資金ばかり導入されて、お客様が資金繰りだとかそういった部分で苦労されているという、これは今に始まった議論ではなくて、ちょっと前から言われていることだと思うんですけれども、多分、手前どもだけじゃなくて、全国の金融機関様が今そのような状況、お客様のところに入って、本業支援をしていこうという中で、特に資金繰りの支援というのも一つ大きな柱として取り組んでいるところでございます。先ほどいろんな先生方から言われたような資金使途をきちんと深堀りして、今の財務、BSとかPLにそれを当てはめて、適正な運転資金であるとか、長期でこれは分割で収益弁済できるものとか、切り分けをきちんとやって、リファイナンスという形で、短期であれば、当座貸越でやったり、手形貸付であったり、そういった形にして、収益弁済が可能な部分であれば、長期にという形で、それは今、全支店挙げて、いろいろ努力している最中でございます。

 以上でございます。

○多胡メンバー  
 信用金庫協会はいかがですか。

○國井様  
すみません。京葉銀行からも一言。栃木銀行さんと同じように、森先生の勉強会のほうでもよく言われていまして、数年前から短期継続資金というのはやっぱり話にも出ていましたし、また長期運転資金という名前の運転資金の使途はないということもよく話に出ております。銀行でも前々から短期と長期の切り分けがそうそうできておらずに融資をしていたという実態が残っていますけれども、数年前から適正運転資金の範囲内であれば、資本とみなして、その分は短期で対応してくれと。残りの長期の部分について収益弁済が可能か考えてくれと支店指導しておりますので新規の貸出については資金の切り分けは非常にできてはきていますが、数年前からの蓄積した融資の全部ができているかというのはまだまだなところでありまして、今後もそれを継続しながらやっていくというのが実態でございます。

 以上です。

○馬場様  
 多胡先生がおっしゃったような面というのは歴史的な経緯によって起こっていた面もあろうかとは思いますけれども、確かに製造業に対する手形貸付が年々少しずつ減ってきたとか、そういうような実態がありましたので、その辺はきちっと切り分けをして、資金使途違反というようなことがあったら大変ですから、本部指示の実態として是正されつつあります。それでも手貸がほとんどないというような支店もゼロではありませんけれども、大きくではありませんが、実態としては変わってきているというのが実際でございます。

○岩原座長  
 五島さん。

○五島様  
 地方銀行協会、福岡銀行の五島と申します。私どもも、従前はしっかりした資金使途別の管理ができていない部分もあったかもしれません。しかしながら、ここ数年の事業性評価の中で、商流や資金使途も含めたお客様のお金の流れを確認し、まずはお客様のことを十分理解した上で、お客様が何を求めていらっしゃるかという点をしっかり確認しながら対応しているところであり、先ほど各団体からもありましたとおり、この点に関してはいずれの金融機関も重点的に取り組んでいる部分だと認識しています。

○岩原座長  
 よろしいでしょうか。ほかに。森さん。

○森メンバー  
 私、冒頭で、まさにこの資金使途、あと、将来キャッシュフローというところについて、玉井さんがおっしゃいましたけれども、事業者が金融機関をどのように見ているかについて述べました。今、金融機関と事業者、特に中小小規模事業者との信頼関係といった点では、私が見るところ、かなり地に落ちているような感じなんですね。事業者サイドからすると、金融機関は事業を見てくれないとかいろいろと。対話しても、本質的な議論にはならずに、投信とか保険商品の、いわゆるプロダクトアウトの話に終わってしまうと。もちろん、今、金融機関サイドからいろいろと資金使途に見合った貸出に取り組んでいるというお話もありましたけれども、私は中小企業基盤整備機構とか、東京商工会議所とか、各県の同友会とか、いろんな社長さんと話をする限りでは、まだまだ信頼関係を回復するような意味でも貸し方とか事業の理解とか、それは十分できてないんじゃないかと、それは強く感じています。

 金融庁のほうで事業性評価というのを数年前に打ち出されて、まさに事業性評価の核心部分は、事業者の将来キャッシュフローの根源である商流に対応した正常運転資金をいかに適正に捉えるかどうか。そこが一丁目一番地だと考えていますけれども、その適正な正常運転資金を表面財務の、例えば売り掛け足す在庫引く買い掛けみたいな、表面財務だけで計算して、極度額の設定をすると。その後、ほとんど途上与信管理ができていないと。そうなると、その資金使途自体がぐちゃぐちゃになってしまう。中小小規模事業者の方でも丼ぶり勘定になっているところが少なくない。そういったところの一番最初の事業性評価と一体になったところのこの資金使途。特に正常運転資金を切り分ける。不良在庫。売り掛けの焦げつきを切り出す。適切な償却・引当をしていく上で、基本的な、まさに倉庫や工場など現場に銀行員がしっかり行って、現場確認をする。そこをしっかりやらないとだめだなというふうに強く感じています。

 以上です。

○岩原座長  
 ほかに何かございますでしょうか。

 特にほかになければ、終了予定時間となりましたので、本日の自由討議は以上で終わらせていただきたいと思います。大変鋭いご指摘を多くの委員の方からいただきまして、今後の審議の上で非常に有益であったと思います。

 それでは、事務局から連絡があればお願いいたします。

○渡辺総合政策局地域金融監理官  
 7月4日に開催しました第1回会合の議事録につきましては、8月13日に公表させていただきました。ご協力ありがとうございました。

 次回日程につきましては、皆様方のご都合を踏まえた上で決定させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○岩原座長  
 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了したいと思います。どうも長時間、熱心なご討議、誠にありがとうございました。

 以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総合政策局リスク分析総括課(2602, 2543)

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