金融税制調査会(第一回)議事要旨

1.日時:

平成22年7月30日(金曜日)9時30分~11時03分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

3.議事内容:

大塚副大臣および田村大臣政務官から挨拶。その後、資料1~4に基づき、各委員より意見を聴取した後、自由討議が行われた。参加者の主な意見は以下の通り。

【総論】

○高齢者層の全資産に占める預貯金の割合は2割程度。2割程度の預貯金を株式に誘導すべきかは慎重に考えるべき。日本の個人保有資産としては実物資産が多いため、金融商品に限定せず国民の財産全体を有効に活用する方法を議論し、一貫性のある税制を構築していくべき。

○グローバルな制度が大きな変換期にある中で、大きな視野に立ち、日本の税をどのようなかたちにすべきかを議論すべき。

○金融税制の設計に当たっては、高齢者の資産を目減りさせないような安心感のある制度にする必要。

○個人投資家の視点だけでなく、機関投資家や外国投資家から見ても、我が国の市場が信頼するに足るものである必要。

○現行の金融商品の税制は複雑でわかりにくい。新しい金融商品を開発した場合でも税務上の取扱いが不明確であることが多く、それが金融商品開発のネックになっている。また、総合課税にした場合、どの所得区分にするかで課税方法が異なるといった問題は残るし、損益通算が制限され、大幅な課税強化となる可能性も高い。主要国でも金融所得に対し純粋な総合課税は導入されていない。金融商品のような流動性が高く移転が容易なものは、分離課税を維持したまま、簡素な仕組みにしていくことが望ましい。

○金融税制を設計するに当たって、所得税の再分配機能の視点からは、金融資産が高齢者に偏っているという現状を考慮に入れた上で、総合課税との関係を考えるべき。あわせて、若者の人的資本を含む資産形成をサポートするための方策を盛り込めないか。

【軽減税率】

○1000万円の給与所得の世帯においても実効税率は11.3%。軽減税率の10%が低いとの議論については疑問の余地あり。

○株価の現状や個人金融資産の状況を考慮すると、軽減税率の延長は必要。仮に、軽減税率の撤廃が先行すると、投資家心理を冷え込ませる可能性があるため、金融所得一体課税の道筋とセットで考えていく必要がある。なお、10%という軽減税率は、ほとんどの投資家が確定申告不要という簡便な二重課税調整方法でもある。

○配当については金融所得間の実質的な中立性を保つためにも二重課税の調整が必要。方法として、配当2分の1課税という考え方もありうるのではないか。

○個人金融資産をより効率的に使っていくため、金融税制は簡素にすべき。さらに、金融商品間の歪みをなくすとの視点や厳しい財政状況も加味して考えれば、金融所得課税の一体化を優先すべきであり、税率の見直しはやむを得ない。

○本則税率20%に戻す際の経済や金融市場へのインパクトとの関係については、廃止時点で再度状況はよく見極めなければならないが、現時点では、中長期的に望ましい制度という視点で考えていくべきではないか。

○軽減税率については、pay as you goの観点からも、延長すべきかどうか慎重に検討するべき。

○軽減税率の導入前は4%だった個人金融資産に占める株式の比率は、現在は7%に増えている。また、中所得者層が株・投信の保有額を伸ばしていることから、軽減税率は投資を招く効果はあるのではないか。本則に戻すとすれば、ただの課税強化に終わらないよう、幅広い損益通算を認めた上で実施すべき。

○理論的には、キャピタルゲインに対して軽減する理由はないのではないか。軽減税率の問題は、リスクマネーに誘導する必要があるか否か等の立法政策の問題。本則20%に反対の人は、意外に軽減税率の影響を受けない人なのではないかと考えられるため、新たな投資を呼び込むためには10%を維持する必要はなく、税率を20%に戻して一定額の所得を非課税とするなど、少額投資に対する優遇措置を導入してはどうか。

○特定の層の税負担等を問題視するのであれば、日本版ISAのような非課税措置等によるべきであって、一律に適用される税率をどうするかという話とは次元が異なるのではないか。

○高齢者にとって確定申告は大きな負担となっている。少額投資を非課税とするだけでなく、申告の負担の軽減もセットで考えてほしい。

○一定額の所得を非課税にするために申告が必要な制度を導入した場合、それが国民健康保険料等の算定にも影響を与え、かえって負担増になることもある。

○一定額の所得を非課税にする提案については、複数の証券会社で株を保有している個人の場合は証券会社側では確認できないため、確定申告で精算する必要があり、個人の事務負荷が多大となる。

○日証協の個人投資家へのアンケート調査(6月15日)によれば、

(1)軽減税率が来年12月に期限切れとなることについて、67%は知らない。

(2)税率10%が20%になると、投資行動にマイナスの影響(投資をやめる、23年までに売却する、買い控えをする等)があると回答したのは、48%。

○ 投資家に10%か20%か、どちらがいいか聞けば、多くは10%と答えることが予想される。税率を維持するか、損益通算の範囲を広げるのか、どちらがいいかというアンケートが望ましいのではないか。

○ 平成22年度税制改正大綱において、金融商品間の損益通算の範囲拡大に向け、公社債の利子及び譲渡所得に対する課税方式を申告分離課税とする方向で見直すことを検討する旨が記載されているが、デリバティブ取引や預金の利子についての金融所得一体課税の方向性は明確にされていない。システム開発に時間がかかるため、金融所得一体課税の時間軸も考慮して、軽減税率の廃止を決めるべきではないか。

○ 軽減税率と金融所得一体課税の話は、並列に並んでいるものではない。金融所得一体課税はあるべき論で、軽減税率は、その中の特殊な政策目的として検討すべき事項。

【金融所得一体課税】

○金融所得一体課税については、幅広い商品を対象とし、是非推進してほしい。また、損失の繰越控除についても期間を7年程度まで延長してほしい。

○高齢者の投資の選択肢を増やすような制度とすべきであり、金融資産の値下がりリスクへの対応のため、繰越期間の延長や損益通算の範囲拡大を認めるべきではないか。

○(後期高齢者医療制度の対象者が、)譲渡損失の繰越を申告すると、譲渡収入が健康保険の窓口負担割合の判定に組み込まれ、医療費負担割合が増加するという問題がある。

○金融所得一体課税の利便性が高まるように、より一層、特定口座を活用することが必要。

○金融税制は、事前に予測可能で明確なものであることが必要であり、かつ、同じ経済的性質を有する所得については、税務上も同じように取り扱うべき。すなわち、税務上の取扱いの区分をできる限り少なくし、アービトラージ(裁定)の余地を減らすべき。

○金融所得一体課税を進めるに当たっては、特定口座間の通算も納税者番号を用いて名寄せすることで確定申告なしでできるようなシステムを税務当局が導入すべき。

○金融税制については、金融所得一体課税の方向性が望ましい。もっとも、損益通算の拡大により租税回避行動が減少するわけではないので、あわせて執行面で租税回避防止の仕組みを整備することが必要。

【納税者番号制度】

○納税者番号制度の導入には、システム投資との関係をしっかり考えていくべき。

○納税者の利便性向上の観点から、納税者番号制度については、検討することが必要である。

○納税者番号制度については、社会保障・年金も含めたトータルな観点から実現できるか検討する必要。

○納税者番号制度については、中長期的に進めていくべき課題。

【その他】

○米国で導入されている地方債の利子の非課税制度を検討してもよいのではないか。

○新成長戦略で述べられている、地域における住宅等への投資に対する税制についても、中長期的な問題として考えてもよいのではないか。

○リスクテイクしやすい年齢層に円滑に資産を移転していくための相続税・贈与税の特例措置を講じることが重要。

○リスク性資産に資金を回すため、確定拠出年金制度の充実につき、長い視野で考えていくべき。

○世界の中で安定的資産を取り込むため、整備すべき部分が残されているならば取り組むべき。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局政策課総合政策室(内線3182、3716)

サイトマップ

ページの先頭に戻る