「生活設計・資産運用について考えるシンポジウム」(大阪開催)の概要

金融庁では、近畿財務局との共催により、「生活設計・資産運用について考えるシンポジウム」を平成19年11月17日(土)に、(社)大阪銀行協会大会議室(大阪市中央区)において開催しました。

今回のシンポジウムは、地域の住民の方々を対象に、金融商品が多様化するなかで金融商品の選び方や金融広告の注意点に触れながら、生活設計・資産運用の在り方について考えてもらうことを目的として、以下のプログラムにより開催しました。

主催者挨拶、基調講演、プレゼンテーションの後に行われたパネルディスカッションの模様は以下のとおりです。

プログラム(敬称略)

  • 開会挨拶(戸井田 とおる(内閣府大臣政務官))

  • 基調講演「「生活設計と資産運用の基本的な考え方」~ライフプランを実現するためのマネープランの作り方~」(神戸 孝 (FPアソシエイツ&コンサルティング(株) 代表取締役))

  • プレゼンテーション「最近の金融商品トラブル」~資産運用で失敗しないために~

    (大久保 育子(大阪府金融広報アドバイザー))

  • パネルディスカッション

    • コーディネーター

      いちのせ かつみ(ファイナンシャルプランナー、生活経済ジャーナリスト)

    • パネリスト

      神戸 孝 (FPアソシエイツ&コンサルティング(株) 代表取締役)
      大久保 育子 (大阪府金融広報アドバイザー)
      篠原 総一 (同志社大学経済学部 教授)
      勢登 朗彦 ((株)近畿大阪銀行 営業推進部長)

パネルディスカッション

  • (いちのせ氏) 皆さん、こんにちは。

    今から、こちらにおられる4人の専門家の先生方と一緒に、いろいろな角度からお金というのを見ていきたいなと思っております。ただ、日本人というのはなかなかお金のことに関してタブーですよね。人前で話しをすることがあまり良くないと思われたり、投資をしてお金を稼ぐことに関してあまりいいイメージがないというのが日本人ではないかと思うのですが、世界から見たら違うようで、日本人というのはエコノミックアニマルと言われており、「利益を追求する動物」といいましょうか、本当は腹の中、心の内は、お金のことが嫌いではないです。では、好きなのだけれども、お金の勉強をしないというのも日本人の特徴だと思います。好きこそ物の上手なれ。好きなことは一生懸命練習をします。例えばゴルフの好きな人はゴルフの雑誌を買ってきて読んで、打ちっぱなしで練習する。でも、お金のことはどうでしょう。なかなか雑誌まで買って読んだり、勉強会に積極的に出席される方は少ないのが現状です。だからこそ先ほど大久保さんが言われたように、だまされやすいということではないかなと思います。

    今日は、そういうところも含めまして4人の先生方にお話を聞いていきたいと思います。神戸さん、大久保さんは、先ほど基調講演、プレゼンテーションでお話いただいたので、そのほかの先生に最近の活動を聞いてみたいと思うのですが、勢登さん、普段はどういうご活動をされているのでしょうか。

  • (勢登氏) 皆さん、こんにちは。勢登でございます。

    私は、いわゆる近畿大阪銀行で営業推進と申しまして、個人の皆さまですと住宅ローン、あるいは今回の大きなテーマであります資産運用ならびに銀行全体では、やはり法人先への事業貸し等、こういったところへの統括をしている、あるいは個々の支店がたくさんあるのですが、そういったお店のトレースを中心にやっているというのが仕事です。

  • (いちのせ氏) はい。最近は、先ほどお話がありましたが、銀行でほとんどの商品を売るということになってきておりますので、そういう面では昔の金融機関ではなくなってきていますよね。

  • (勢登氏) そうですね。私も、もともと運用の方を7年ほど前に近畿大阪銀行で、当時まだまだ投資信託や今主流の個人年金保険もあまり一般的ではなかったわけですが、もうすでに私どもの銀行でも13万人を超える投資信託のご購入者が出ております。そういった中で、先ほど来いろいろ出ております貯蓄から運用、特にゼロ金利が長い間続いておりました。何とかこのお金、働いてもらえないかというのがポイントです。先ほど神戸先生からもいろいろお話が出ました。このあたり、私どもはコンサルティングという一つをベースにビジネスを拡大しております。特に前半は、当初5~6年前にスタートしたときには男性行員が中心でしたが、最近は75%程度は女性の社員がお店、あるいはお客さまの方にご訪問させていただきましていろいろな運用のご提案をさせていただいております。後ほどいろいろお話があろうかと思うのですが、やはり特に女性のきめ細かいご説明、そして何よりも大切ないろいろな分配などのタイミング、あるいはマーケットが動いたときなどのフォロー、このあたりを一つのキーワードとして全行的に取り組んでいるという状況です。

  • (いちのせ氏) はい、ありがとうございます。やはり金融機関、銀行も大きく変わってきているというのが伝わってきます。後ほど、金融機関の立場からいろいろとご発言いだきたいと思います。

    次は、篠原さん。篠原さんは大学の先生なのですが、それ以外にもいろいろとご活動されているようなのですが。

  • (篠原氏) 同志社大学の篠原と申します。シンポジウムにパネラーとして出席する場合には、シンポジウムのトピックスに関して専門的な知識をもっているのが普通ですが、実は私は経済学を教えることに関しては専門家でも、生活設計や資産運用について他人に語るものは何も持ち合わせておりません。その意味で、本来は、皆様と同じように専門家の話を聞かせていただく側に座るべきなのですが、それでもこちらに座らせていただいているのは、おそらく中学生、高校生に経済教育を行なっているからかと思います。

    その他に、一昨年から、北京の大学でも経済学を教えています。先ほど、戸井田政務官がご挨拶をされましたが、戸井田氏に限らず地方に選挙区をもつ政治家は、通常「金帰月来」と呼ばれる生活をされています。金曜日の夜に選挙区に帰り、週末は選挙区で仕事をこなし、月曜の朝に東京へ戻り、金曜日までは国会議員として東京で働く、そして金曜になるとまた選挙区に帰る、という生活の繰り返しですが、実は、私も、今年はスケジュール調整に失敗したため、金帰月来ならぬ、「日来火帰」生活をしています。日曜日の朝、北京へ行って、その日の午後と月曜日に北京で講義をし、火曜日に日本へ帰ってきて、土曜までは日本で働く、しかも日本にいる間に東京でも仕事が入るという、ややばかげた生活の繰り返しになってしまいました。ただし、それには理由があります。日本では、いま、学力低下が問題視されていますが、その上、どの大学でも入学してくる学生の幼稚化が急速に進んでいます。私に限らず、大学で教える者は皆、日本の将来を憂い始めています。私も、そんな状況の中でなんとかしたい、子供たちが、社会にでるときに必要な知識や社会を見る目を養って欲しいと思い、数年前から、中学生、高校生を対象にした経済教育を始めました。いちのせさんを初め、多くの方の協力を得て、いま、少しずつ形になろうとしています。

    もう一つは、日本の大学生の学力低下が激しく、大学で教えることに消化不良というか、やや寂しい気持ち、優秀な学生に教えられたらさぞ楽しいだろうと思っていましたら、ちょうど、北京のトップスクールの一つから、その中でも毎年20人だけ選び抜いたクラスがあるので、そこで教えてみないかというお誘いがあり、その話に飛びついたというわけです。経済学の分野では、中国では、あの有名な北京大学、清華大学と並ぶレベルの高い中国人民大学で、政府の特別プロジェクトとして、数学と経済学の2つの分野で学位をとる「実験班」と呼ぶ、本当に優秀な学生を相手に、毎週、大変楽しい仕事をさせていただいているわけです。

    そんなわけで、忙しいけれども、私は楽しいし仕事をしているのですが、このままでは、20年もたつ前に、日本の大学の卒業生が、企業に勤めたまではよいけれども、気がついてみると上司や経営者は中国人と韓国人ばかり、自分たちは外国人の指示に従って機械的に働くだけ、という事態になってしまう。潜在的な能力は、どの国の若者も同じ、でも教育やトレーニングが違いすぎるのです。だから、このままでは、日本人だけ雇い続ける企業は競争に負けてしまう、それほど事態は深刻だと私は思っています。もちろん、いくら懸念しても、私のできることは限られています。これが、私が、子供たちに経済の知識や考え方を身につけてもらえるような教育に時間を費やしている理由であります。

    本日は、そういう立場からお話しをさせて頂きたい、というのが一つですが、それでは余り皆さんのお役には立たないでしょうから、いま一つ、経済と金融について経済学者という立場から日頃考えていることをお話したいと思います。

  • (いちのせ氏) よろしくお願いいたします。

    さて、先ほどお二人の講演の方でも出ておりましたが、どちらかといいますと2007年問題というのが非常に大きなテーマになっているようで、団塊の世代の方々が退職金をたくさんもらって世の中に出てきたと。その退職金をどのように運用するかということも非常に大きなポイントにはなろうかと思うのですが、ただ、増やす、もうけるということよりも大事なことは、先ほど大久保さんがお話しされていたように、だまされないとか、トラブルに巻き込まれないということが一番大事なことではないかと思います。

    私も全国の小学校から中学校、高校、大学の子供たちにマネー教育、お金の教育を行っているのですが、先生方も保護者の方も知らないということが非常に多く、もっと自分を守ってくれる法律というのを知っておくべきではないかと感じています。

    せっかくたくさん来られていますので、いつも高校生におこなっているクイズを出します。皆さん方に答えていただきたいと思いますが、クーリングオフのクイズです。第1問です。

    気に入った商品があったので、電話でセールスマンに家に来てもらい、商品を購入しました。三日後、気が変わり、クーリングオフをしたいのですが、できるでしょうか、できないでしょうか。できると言われる方は、手を挙げていただけますか。できないと言われる方は? できない人は少ないですね。大久保先生、どうぞ。

  • (大久保氏) 電話をかけてセールスマンに来てもらったのですよね。電話をかけて来てもらった場合は、クーリングオフできないと思います。

  • (いちのせ氏) そうですね。電話で呼ぶとできないのです。何でもかんでもできるようなイメージを持たれている方も非常に多いのです。

    では、第2問。テレビショッピングで健康器具を購入しました。大きすぎたのでクーリングオフしたいのですが、できるでしょうか、できないでしょうか。できると言われる方、手を挙げてください。はい。できないと言われる方。はい。大久保さん、どうでしょうか、答えは。

  • (大久保氏) 通信販売ですので、クーリングオフはできません。テレショップの場合には「返品ご希望の方は」というように表示してありますが、あれはあくまでも自主規約です。通信販売だったら何でもクーリングオフができるという法律規定はありません。

  • (いちのせ氏) そうなのですよね。ですから、私たちが通信販売で買うときというのは、何日まで返品可能かというのをしっかり見ておかないといけないということになるのです。

    では、最後にもう1問だけいきましょうか。道を歩いていると声をかけられて、30万円の英会話セットを買わされました。そのときにクーリングオフはしないと同意書にサインをしました。そういった場合はクーリングオフ、できるのでしょうか、できないのでしょうか。できると言われる方。はい。できないと言われる方。はい。どっちですか。結構だんだん自信がなくなってきたようですね。答え、大久保さん、お願いできますか。

  • (大久保氏) はい。クーリングオフできます。

  • (いちのせ氏) ということで、結構知っているようで知らないでしょう。「私は大丈夫」。そしてだまされる。そして、クーリングオフの期間をうまく使ったりできずに結局は泣き寝入りしているという方もたくさんおられるようです。

    そこで、先ほどプレゼンテーションの方で大久保さんからトラブルのお話をさせていただきましたが、勢登さん、すみません、金融機関の中でのお客さんとのトラブルがありましたら、教えていただきたいのですが。

  • (勢登氏) はい。先ほどちょっと申し上げましたように、私どもこのビジネス、既に7年ほどずっとやっております。当然のことながら、例えば手数料の話を聞いていない。分配が一定だとしか聞いていないとか、いろいろなお客さまからのクレームはありました。あったというのは、もちろん、現在でもぽつぽつあるのですが、先ほども少し申し上げましたように、特に銀行の立場で申し上げますと、男性渉外がいるのですが、数字が欲しいから売ってしまって、あとのフォローをしていなかったということで、お客さまから、むしろこういうリスク商品を売っていて銀行としてきちんとフォローしていないのかというようなクレームが、先ほど申しました早い段階にはありました。

    ただし、今ご説明申し上げましたように、今私どもの投資商品の担い手が女性が大半を占めております。当初にきっちりした説明。これは商品説明に行く前に、先ほど神戸先生からいろいろ話がありました、ゴールは何なのか、あるいはお客さまのニーズというのですか、何を目的とされているのか。そのために、厳密な言い方をしますと適合性の原則というようなところを把握しておかなければいけないのですが、いわゆる資産背景、場合によっては家族構成、そしてお客さまの資産、このあたりのところをあらかじめきっちり。

    後ほど金商法の話も出るかと思うのですが、私どもは早い段階から運用会社様等の連携によりましてきっちりとした教育をしておりまして、最近ではかなりそのあたりは少なくなってきているのではないか。また、マーケットも非常に動いておりますが、継続的にお客さまにフォローしていくことによって、お客さまにリスクに慣れてもらう、為替・金利、いろいろな変動に慣れていただくと。こういったところをずっとやってきております。従って、今何が起こっているのかと言われますと、少し回答には詰まるのですが、説明責任という意味では、冒頭の最初の説明はさることながら、ご購入後のフォロー。特に分配金が出るようなものは、必ずそのときに一声お電話をかけて、為替の相場の変動によって、今回はこういう形で基準価格が変わっていますとか、このあたりのフォローをきっちりしていくことによって、比較的全体的な投資商品に関するお客さまからのクレームは減ってきているのではないかと感じています。

  • (いちのせ氏) どちらかといいますとコミュニケーションの部分で不足しているようなケースの場合は、やはりトラブルが起こりやすいというようなことになっているのかもしれないですね。

    では、神戸さん。神戸さん自身は独立系のFPなので、直接お客さまが神戸さんのところへ行きまして投資の相談を受けるということなのですが、その中で、相談者がトラブルになりやすい例というのは、どのようなときですか。

  • (神戸氏) そうですね。今いちのせさんがおっしゃったように、コミュニケーション不足という部分で考えますと、金融機関さんなども含めて販売する側は、大抵の場合きちんと説明しているのではないかと思うのです。お客さまの方が聞きたい話だけ聞いている場合が結構あるようです。言った、言わないというのは、結局記憶にどこが残っているかということではないかと思います。聞きたい話の記憶だけが強く残っていまして、もめる点というのは、本当は説明されているのだけれども、聞いた方が忘れてしまっているみたいなことが多いのではないでしょうか。

    あとは、仕組みの分かりにくい商品を買われてトラブる場合が多いです。良い金融商品というのはコストが低いか、あるいはリスクとリターンが見合っているか、このあたりで考えるのですが、自分が説明を受けて仕組みがよく分からないという商品は、コストが高いかリスクとリターンが見合っていない場合が多いといえます。その結果、後でそれに気付くと、これがそんなものだと思わなかったというクレームにつながりがちなのです。仕組み預金とか仕組み債などと呼ばれるタイプの商品に多いのですが、トラブルになりやすいといえるでしょう。

    先ほど大久保さんの話の中にブラックタイガーへの投資の話があったのですが、最近ですと円天みたいなのもあります。多くの方は、「どうしてあんなのにだまされる人がいるのだろう」とか、「私は、そんなの絶対引っかからない」と思っておられるかもしれません。でも、実は誰でも引っかかる可能性はあると思うのです。誰でも陥る可能性があると思うのは、金融商品というのは形がないという特徴があるからです。目に見えません。かつ、良いものか悪いものかというのは、後になってみないと結果が出ないのです。生命保険入っていて良かったというのは、亡くなったときです。自動車保険に入って良かったなというのは事故ったときでしょう。定期預金で良かったなというのは、インフレにならなかったときだし、外貨建て商品で良かったなというのは円安になったときです。

    つまり、買うとき、加入するときは、自分でいいと思って入ります、あるいは買いますが、本当にいいかどうかは、後にならないと結果が出ません。それが金融商品の特徴なのです。そういうものは、まず選びにくいのだということを正しく認識すべきです。だから、情報を幾ら集めまくって比較サイトで検討しても、普通の人は独力では買いにくいわけです。それでは、買う場合、金融商品を何を決め手にして買っているかというと、ブランドで買っているという方が結構おられると思うのです。「あそこのだから大丈夫だ」と。エルメス、グッチならというのと近いイメージです。

    もう一つは、評価付きの情報で買っているケースです。あの人がいいと言っているからいいだろうという話です。つまり金融商品の場合には、商品がどうかという以上に、誰から勧められたかというのが大きな要素になるのです。自分の親友から勧められた、あるいは恩師から勧められたと考えてみてください。地元選出の国会議員から勧められたら、それこそ、いちのせさんから勧められたら、買うかもしれないとは思いませんか。つまり、誰でも買ってしまう可能性はあるのです。「うまい話はないよ、そんなもの」と、皆さん、思っているかもしれませんが、ひょっとしたらどこかにあるかもしれないという気持ちがあれば、誰から言われたかということで買ってしまう可能性はあるので、そこのところを注意しないと、詐欺的な商品に引っかかる人はいなくならないと思います。

  • (篠原氏) よろしいですか。

  • (いちのせ氏) 篠原さん、お願いします。

  • (篠原氏) 今おっしゃったことはまさにそのとおりなのですが、もう少し敷延しますと、こういうことだと思います。皆さんが取引するとき、たとえばリンゴを買うときには必ずお金を払うはずです。ということは、「リンゴを手に入れて、お金を払う」という取引と決済と同時に行われるのです。ところが金融商品の場合、取引と決済は同時に終わるわけではありません。金融とは、分かりやすく言えば、「現在の所得」と「将来の所得」を交換すること、これがまさに「お金の取引」なのです。そして、リンゴの取引の場合、リンゴとおカネの交換比率は、リンゴ1個100円とか150円というようにモノの値段になっています。ところが現在のお金と将来のお金の交換比率は、通常の場合、(1+利子率)になっているはずです。例えば10%の金利が付く場合、今100万円借りれば、1年後に110万円払うという意味で、(1+利子率)が、「今のおカネ」を入手する代わりに1年後に支払う値段に他ならないわけです。ですから、利子率とは、実は今と将来のおカネの交換比率なのですが、これが実は曲者なのです。なぜかといえば、取引は現在おこなう、しかし決済は1年後、あるいは長ければ10年後、20年後になる、だから取引を行う時点では、本当に決済されるかどうか分からない、だからこそ、うさん臭いことがおこるか、あるいは犯罪がおこるか、今は分からない。これが、金融取引と、リンゴのようなモノの取引とが決定的に違う点です。

    それから、リンゴの場合、代金を払わずにリンゴを持ち去れば、これは窃盗ですから、非常に分かりやすいし、捕まえに行きやすい。しかし、金融の場合には、約束不履行が起こるのは10年先になるので、ついつい借りる方も返す当てがなくても安易に借りてしまう、貸す方も安易になってしまう。金融にはこういう性質があることをしっかり認識していただけると、これまで皆さんが繰り返してこられたこと、とくに先ほど神戸さんが強調されたことが非常によく分かるのではないでしょうか。そして、そのような不都合に対処するために金融商品取引法があるわけです。

    もう一つ付け加えますと、昔、あるテレビ局でニュース番組のコメンテーターをしていた頃、しょっちゅうどこかで不祥事が起こるわけです。かつての大蔵省や日銀の不祥事など、おカネにまつわる不祥事が最も多かったと記憶していますが、それに対して、アナウンサーが必ず「こういうことは二度とあってはいけないことです」と繰り返すわけです。私は天邪鬼(あまのじゃく)なのか、それに対して「いや、そんなことはない。こんなことは二度でも三度でも、何度でも起こるのだ」と。なぜって、自分のおカネで自分の仕事をしているのではなく、他人のカネで仕事をしていれば、ついつい不祥事が起こりやすい。

    私は時代劇が好きで、テレビでも時々、勧善懲悪ものを観ますが、そこでは毎週、詐欺や収賄がでてきて、それを高橋英樹扮する桃太郎侍がやっつける。でも、桃太郎侍が悪を退治しても、また次の週に別の悪者がでてくる。それも毎週毎週、同じ時間に何十回も繰り返し、登場しますよね。しかも、悪い代官や幕府の役人と組むのは、不思議に大黒屋とか越後屋さんと、名前まで繰り返し、繰り返し出てくるわけです。金融と汚職の不祥事は、江戸時代から連綿と続いているのだから、二度とないようになど考えないほうがよい。なぜなら、額に汗しないで儲かるわけですから、不祥事への誘惑はそれほど強いのです。ですから、金融のトラブルが起こらない世の中はない、だから金融商品取引法で何が禁止され、何が守られているか、われわれ一人一人が知っておかねばならないのです。

    この点は、アメリカ人はよく心得ているというか、日本人ほど無防備ではないようです。その意味で、金融商品取引法の勉強をして、われわれ一人一人が、日頃から悪代官・大黒屋組の不祥事の被害を受けないよう、そして被害を受けた場合の対処法も含め、気をつける必要があります。ただ、難を言えば、皆様のお手元にも配布されている解説書は、もう少し分かりやすく書いていただきたかったとは思います。

    ただし、最後にもう一言だけ付け加えると、いくら金融商品取引法が整備されても、必ず法の網をかいくぐって奇妙なことが起こりますから、それに対しては自己防衛するしかない。日ごろからアンテナを張って、信用できる人のアドバイスに耳を傾けることが大切なのかもしれません。ただし、要らぬことを言うようですが、役に立つ情報はただでは教えてもらえません。神戸さんも、こういう勉強会では儲けにならない内容だけを話されているわけで、本当にためになる話はコンサルタント料をとってお話しになるか(笑)、そうでなければ、金融機関を頼ると手数料を要求される、だから金融商品の収益率は手数料だけ低くなるということを忘れないようにしていただきたいと思います。冒頭に、私はフロアーで話を聞く側の人間だと申しましたが、私もコンサルティング料や手数料を頂く側ではなく、支払う側の人間なのだ、ということなのです。

  • (神戸氏) とりあえず弊社に相談に来られるお客さんの中には、「金融機関さんで勧められたのだけれど本当かな」という方が結構おられます。セカンドオピニオンを求めるというのはすごく重要だと思います。誰かから話が来たときに、別にプロでなくてもいいですから、知り合いですね、話を持って来た人と同じグループではなくて、違うグループの友人や知人に、こういう話が来たのだけれどどうだろうかというので意見を求めてみれば、客観的に多分判断してくれるのではないかと思います。うまい話はないのです。それでもひょっとしたらと思ってしまうのが人間なのです。それは誰にでも起こりうることだと思うので、冷静な第三者にセカンドオピニオンを求めるというのは有効だと思います。

  • (いちのせ氏) お客さんからいろいろと金融商品の内容を聞くのですが、日本人的だなと思うのは、必ずいいところを先に聞きます。まず「どこがいいの?」から入るのです。それに対して説明をされた後、悪いところを言っているのですが、先ほど神戸さんが言われたように、もう聞いていないのです。頭の中で「増える、増える」と。これからというのは、先に悪いところ、どうなったらマイナスが生じるのか、先を聞いていると、増える仕組みもよく分かる。そういう時代ではないかと思います。

    大久保さん、そのような方々の中でも、よくだまされるというか、そのような性格というのか、おられるのですか。

  • (大久保氏) 共通しているのは、政治経済に関心のある方です。少し意外かもしれませんが、「金利がなかなか上がりませんね」とか「このごろ日経平均、下がっていますよね」というような話に、「いや、そんなもの知らん」とか「関心ない」とか言う人は、そこで勧誘の話も進まないわけです。新聞やテレビニュースを見ていらっしゃる方は、このような話が電話や店頭で販売員から出ると、「ああ、そうやな。いつになったら金利が上がるんかなー」とか、「原油高がどう影響するかなー」という話をし始めるわけです。そうすると、セールスの話になって行く頃には、よく分からない状況になっていても引っ込みがつかなくなる。「よくわからない」「興味ない」ということが言えなくなってくる。また、これだけ長い間説明もしてくれたし間違いないだろうというようなことで、購入してしまったというような話を消費者相談現場ではよく聞きます。

    「知っていることと知らないことが大きな差になる」と神戸さんがおっしゃってましたが、危ないのは、チョイ知りです。ちょっとだけ知っているのは、どの辺りから自分がわからなくなるかがわからない。わからなくなるポイントがきっちりわかる人というのはわかっている人。うわべの話でわかっていると思っている人は結構トラブルに巻き込まれやすいのではないかなと思います。

  • (いちのせ氏) ということは、大久保さん、今日、出席されている方というのは、だまされやすいということですかね(笑)。そういう面では、興味があるかないかは、ものすごく大きいですよね。ここからは、トラブルを避けた上で、「投資をする」ということになりますが、貯蓄から投資の時代と叫ばれる現在、非常に難しい部分もあるのではないかと思います。

    皆さん方の中にも、かつて、リスクのある商品を買ったことがある、手がけたことがあるという方は、どれぐらいおられますか。やはり興味のある方が来られているということもありますので、何らかの形で投資とかかわってきているというのが現状だと思います。とにかく今、郵便局も民営化し、その他の金融機関でも、どんどんと窓口では投資商品の販売が行われていくと思います。

    そこで、勢登さん、最近銀行へ行きましても、説明などに結構時間がかかっていますよね。

  • (勢登氏) 時間のかかるという点では、まさしく10月に施行されています金商法というのがありまして、やはりお客さまへのご説明をきっちりやらなければいけない。これは新しいルールですので、当然銀行の方としては一定の書面に基づきましてご説明をしているというところで、従来にも増して時間がかかってきているというのが事実です。

    特に書面で求める、例えば事前の同意書から始まりまして、先ほど少し申し上げました、お客さまの資産背景、経験、もろもろを聞き出して、お客さまが基本的に安全性なのか、少しリスクを取っても一定の一部のお金は運用に回してもいいのかと、この辺りのご判断がついて初めて商品の方に話を進めていくという形で、例えば従来1時間かかったのが1時間半、場合によっては2時間というのが、今1カ月少しなのですが、始まったばかりの中での時間がかかっているというのは、まさしく新しい法律の中で私ども金融機関としても、しっかりお客さまへの一番最初のご説明をしていきたいと、こういうことの裏返しではないかというように考えております。

  • (いちのせ氏) 皆さま方も、チラシの内容が変わったというのはお分かりですか。紙面でのコマーシャルの内容というのは結構変わってきておりまして、リスクの部分というのは字の大きさも、ある程度大きくしないといけないとか、基本的にはしっかりと教えていかないといけない、伝えていかないといけないという形にはなっていると思います。

    そこで、先ほど神戸さんの講演にも出ていましたが、貯蓄と投機の線の引き方、大久保さん、消費者の方から見た投機と投資の違いの線引きみたいなのはありますか。

  • (大久保氏) なかなか難しいです。先ほどのようなエビ養殖も、投資信託を買うのも、同じ投資行為だと考えている消費者は多く、むしろ投資と投機を区別して考えておられる方は少ないように思います。どこかで「投資には愛があって、投機には愛がない」というようなことを聞いたことがあります。「投資は、お金を育てる行為であって、投機というのは、お金を運に任せる行為」というようなことも聞いたことがあります。投機は、安いときに買って高いときに売って利益を出す。チャートを示され説明されると買い時も売り時も大変わかりやすく、すぐに出来るように思うけど、実際には今が安い時か、高い時の判断が難しい。投資の方は、育てるということですので、種まきの時期、水のやる時期、肥料を与える時期、収穫時期が大事。ほったらかしも駄目だし、過保護すぎても育たないし、収穫時期を延ばすと、そのまま枯れてしまうというようなこともあるので、ここもやはりタイミングが難しい。いずれにしろこのタイミングを知り判断するための情報が消費者には少ない。だから、投機と投資の線引きができたからといって資産運用に成功するとも限らない。この最適な時期を見出すというようなことを分かっていないと、なかなか資産運用はうまくいかないし、情報量の少ない消費者にとってはそこを知ることがかなり難しいというのが現状ではないでしょうか。

  • (篠原氏) いまおっしゃったことは、まさにその通りなのですが、再び敷衍する話で恐縮ですが、本当はこういうことだ、という金融の本質が分かれば、後の対処が極端に楽になるのではないかと思います。

    例えば株式のケースをとりあげると、こういうことです。最近は、中学生や高校生、あるいは小学生にまで株式のことを教えようとする教育の例が多くなっています。私は、どちらかというと、そのような傾向を苦々しい思いで見ている方なのですが、とにかく株式は教育の現場でもよく取り上げられています。先生方は、まず、株式は世の中のためになっていることを強調されます。その際、学校の先生方は歴史好きですから、株式の始まりは東インド会社だという辺りから子供たちの説得にかかられます。インドの西海岸、ゴアに東インド会社の跡があり、ついでに言うと、ゴアはフランシスコ・ザビエルの宣教の基地でもあり、今でも彼のミイラが保存されています。歴史に興味がおありの方には、ゴアは大変面白い町です。

    それは別にして、とにかく先生方は、東インド会社の例を挙げて株式会社の意義を語ります。ヨーロッパから地の果て、極東にでかけ、香辛料や絹織物、陶磁器を持ち帰るには、大型の船と資金が必要、しかしアフリカ沖で沈没するリスクも高い、しかし成功した場合には莫大な利益がうまれる。だから、多くの人が出資し、木の株を分けるように利益を分配する、しかし沈没すれば出資金は戻らない、これが株式なのだ、と説かれるわけです。

    それはそれでよいのですが、実は、残念なことに、現在の株式は、通常の場合、東インド会社の株式とはまるで違うものだということに気付かずに教えられる先生が少なくありません。東インド会社の株式は、実は、事業ごとに出資を募り、航海を終えて利益を分配したら、それで解散。次の事業については、また株を発行して資金を集めるという形でした。これに対して現代の株式は、事業に投資するのではなく、企業に投資することになっています。ですから、企業が倒産すれば、その段階で出資金は完全に消えてしまいますが、企業が倒産しなければ、資金投資の満期は無限大になってしまいます。しかし、皆さんのうちで、将来の利益がどれだけになるか分からない、そんな満期無限大の金融商品に何百万、何千万という自分のおカネをつぎ込みますか?

    しかし、それでは企業が成り立たない、そして企業が成り立たなければ社会が成り立たないわけですから、投資する側が投資額を選べ、投資期間を自分で設定できるような制度を工夫する必要があったわけです。つまり、一度株式を買うと、それを永遠に持ち続けるのではなく、いつでも、自分の都合のよい大きさに分割して他人に転売できれば、人々はだれでも、安心して株式を経由して資金を企業に融通するはずです。そのためにできたのが、既発行株式の取引市場にほかなりません。これがあるから、安心して株式に投資できる。ここまではいいのです。

    ところがこの既発債市場は大きな副作用を生み出します。先ほど大久保さんがおっしゃったように、「安いときに買って高いときに売ればもうかる」という話になってしまうわけです。従って、最初に出資するときには、確かに、投資家のおカネは企業の設備投資に回るという意味で、先生方が強調されるように、世の中のためになっているのですが、それが一度転売されたら、それからは「安いときに買って高いときに売ると儲かる」いうゲームに形を変えてしまうのです。しかし、誰かが「安いときに買って高いときに売ればもうかる」ということは、必ず「高いときに買って損をして安いときに売る」人がいるからそうなるのです。

    金融庁が主催されるこのようなシンポジウムの席では不適切な発言かもしれませんが、こうなると、本質は賭けマージャンと同じ、ゼロサムゲームに他なりません。ですから、経済全体のためになるかどうかだけを問題にする場合、全体のパイの大きさは同じですから、この種のゲームはそれほど意味のあるものではないのです。しかし、個人個人でみればゼロサムゲームでも、ゲームには勝ちたい。だからこそ、マージャンに勝つためには勉強しなければならない。そのためには勉強する、しかし勉強するには金融専門家が有料で教えてくれる。ざっとこんな構造になっているのではないでしょうか。

    株式の本質は、このように、それほど複雑ではないのですが、問題はもっと深刻です。株式がゼロサムゲームだとして、その市場に誰でも同じ条件で参加できればよいのですが、先ほど、消費者には情報が届かないという発言がありましたが、実は金融のプロは情報をもっているわけです。今様の表現をすれば、一般投資家と金融プロの間に情報格差が確実に存在しているのです。しかも、さらにやっかいなことに、アメリカなどの、いわゆる「愛のない」ファンドが暗躍し、世のためにならない金融取引を繰り返す。もちろん、ファンドは「安いときに買って、高く売る」多額の取引を、ごく短期間のうちに世界中で繰り返す。みなが長期投資する場合には、売る人、買う人が結構相半ばし、情報もある程度平均化されるため、価格はそれほど大きく振れませんが、膨大な資金が短期に売り買いされるとき、しかも情報がそのような取引を進めるファンドに偏るとき、価格は想像を絶する幅で大きく振れだしてしまいます。さらに、このような価格の大幅変動は、株式に限らず、原油から鉱物資源、素材などにも拡散し、それが経済を混乱させるようになっていることは、よく知られているとおりです。私は、いま、株式市場は不健全な方へ走り出してしまったのではないかと危惧している一人です。

    さらに困るのは、ニューヨークの株式市場がこけたら日本がこける。上海がこけたら日本がこけるというように、世界中の株式価格が連動していることです。そうすると、「株価はその企業の将来価値を反映する」などという経済学者の主張はあやしくなります。それは分かるのですが、では情報格差はどうやって埋めればよいのかと言われると、これは難問であります。初めから情報格差があるゼロサムゲームは、一般投資家にとってはゼロサムゲームではありません。最初から、平均すれば負けることがほぼ分かっているゲームなのです。その中でゲームに勝つには、私には妙案は浮かびませんが、手数料を払って情報優位にあるファンドや金融機関にゲームを任せるか、それでなければ、情報格差に惑わされる確率が低い長期投資に徹するか、こんなところが私の考えられるサジェスチョンです。

  • (神戸氏) よろしいですか。今篠原先生からお話がありましたが、ファイナンシャルプランナーというのは、プロといっても投機のアドバイスをするプロではありません。私の資料の6ページに、投機と投資の違いというのがあります。私なりの解釈ですが、投機というのは、機会、チャンス、タイミングにお金を投げると書きます。投資というのは、資産、財産にお金を投げるというように書くわけです。

    基本的に投機というのは、今篠原先生のお話にありましたが、ゼロサムのマーケットでの勝者を目指すことだと思います。非常に短期間で、時間をかけずにもうけようとしますと、自分が勝つためには誰か負けてくれる人が必要です。合計がプラスマイナスゼロなわけで、ジェイコム株で何十億もうけたそうだ、うらやましいなと思う陰には、みずほ証券が損をしているという現実があります。プラスの人とマイナスの人がいて合計プラマイゼロなわけです。

    ではゼロサムの勝負でどうやったら勝てるかを考えてみましょう。勝つためには、私は大体四つぐらい条件があると思うのですが、一つ目が資金量です。お金をいっぱい持っていると、勢いがつけられて強いです。短期間の勝負では、例えば運動会の綱引き、分かると思いますが、一度ずるずる動き出したら、大体そちらが勝ちますよね。もしも綱引きを1時間やるのならばどちらが勝つかは分からないでしょうが、2分間の勝負なら最初に引いた方が勝つ場合が多いのです。お金をたくさん持っているとこの勢いがつけられる、買えば値上がりしますからね。これが短期勝負では一番勝ちやすい条件でしょう。2番目が、情報の収集力。3番目が、その情報の分析力。4番目に運という感じかなと思います。個人投資家の方はこの4つのうちどれを持っているでしょうか。運ぐらいですよね。そうすると、これは分が悪いわけです。だから投機はやめておきなさいと、これが、いわゆる「親の遺言でやるな」と言われる株式投資だと思います。

    では、やはり株は買わないのか。知らないから株はやらないで預貯金にしておくかと。それだと0.何%の世界になってしまうわけです。それではどうするか。負けないようにやることを考えます。負けないやり方があるか。それが長期投資です。基本的には6ページの一番上にありますが、株式というのは、長期的に保有すると値上がりする可能性が高い投資対象と言えます。株式なら何でもいいというわけではありませんが、個人投資家が勝つ可能性が高いのが長期の株式投資なのです。

    例えばここにトヨタ自動車の例がありますが、トヨタの株価は1983年のころは大体600~700円だったのです。最近値下がりしていますが、でも6000円くらいです。25年で10倍になっているわけです。この場合、この株式をずっと保有していた方は、誰かが損をして自分が儲かっているわけではありません。以前買った方は全員資産が増えています。なぜか。それはトヨタ自動車自体が成長して、合計をプラスにしてくれた、つまりプラスサムにしてくれたからです。時間をかけることによって成長するものを買っておく。これが長期投資の基本だと思います。

    個人投資家というのは、プロと戦わなければいけないと先ほどお話ししたのですが、実はプロに負けないための武器を持っているのです。それが時間です。プロというのは通常は時間を武器にできません。今どうなっているのか、今どうなっているのかと、期間損益を問われ続けます。投資信託のファンドマネージャーが「過去の実績は?」と問われて、「5年間も泣かず飛ばずです。でもいつか必ず上がります」。これでは売れないですよね。いつか上がる前にクビになってしまいます。でも、皆さん方個人投資家なら、売らない、買わない、見ているだけで痛くもかゆくもない。最後に上がればすべてが癒されます。途中はイライラするかもしれませんが。

    つまり、個人投資家は時間を武器に使えるわけですから、いつか上がりそうなものを買っておけばいいのです。いつか上がりそうなものというのは何かと考えてください。昔の日本だったら土地でした。なぜか。面積が有限の中で人口が増える、企業が増える。単価が上がりやすいわけです。でも、これから先は、今日お話ししたように日本の人口は急激に減っていくのです。では、いつか上がりそうなものは何かなと考えます。今だったら、資源の奪い合いだ、石油だとなるのかもしれません。でも、冷静に考えると、私は長期的に見て一番いつか上がる可能性が高いのは成長企業の株価だと思っています。日本の人口が9000万人になるころ、確かに北海道電力や東北電力は厳しいかもしれません。しかしトヨタのような企業には痛くもかゆくもないはずです。

    日本人が9000万人になるころ、世界の人口は90億人になっているといわれています。お客さんが増える企業、これは引続き成長する可能性が高いでしょう。そういう企業に長期的に自分のお金を提供する行為、これが私は投資だと考えています。この投資というのは、先ほどの投機とは全く違って、ゼロサムではありませんから、きちんとお金を投げる相手さえ見極めればいいわけです。ブラックタイガーに投げては駄目です。投げる相手さえ間違えなければ、勝つ可能性は一番高いのではないかなと思います。

  • (いちのせ氏) はい、ありがとうございました。

    先ほど控え室で話しをしていたのですが、勢登さん、すみません。大阪の人特有の投資があるというのを聞いたのですが、少し教えていただきたいのですが。

  • (勢登氏) はい。実は今、郵便局も含めて投資信託を中心に運用のマーケットが随分広がってきているのですが、関東と関西で少し違う、あるいは決定的に違うと言ってもいいのでしょうか。実は私どもの銀行、りそなグループもそうなのですが、いわゆる定期的に分配を受け取るファンド。ファンドの中身は外債ファンドといいまして、日本の格付けより高い先進国、具体的に米国であるとかイギリスであるとか、そういう国債への運用で高金利で、通貨は分散されています。それが毎月毎月クーポンから生まれる収益で、これだけ生まれますということなのですが、要するに分配型のファンドが関西では圧倒的に販売が多いです。これは郵便局の全国的な販売の中でも、郵便局の後発ではいらっしゃるのですが、6資産で隔月でもらえてしまうプランとか。私どもで言うと、具体的な商品を申し上げていいのか分からないのですが、グローバル・ソブリンとか、このように通貨、国別に分かれて、過去の実績からいいますと定期的にもらえる。大阪、あるいは関西のお客さまは、「毎月毎月確実に入ってきているね」と、この部分に対しては大変魅力を感じて、それから次のリピーターにつながっていると、こういう事例は大変多いかと思います。

    私どもの方でも、先ほど来、女性というようなお話をしましたし、当然運用の中身で、今まで定期預金、銀行預金しか知らないお客さまに、どういう提案をして、どういう型を示して、運用の世界に入っていただくかということなのですが、まずは先ほど来、いろいろな資産背景などを聞きます。ただし、100あるうちの100とか50とか言いながらつぎ込んでしまうと、やはりリスクが分かっていない中で大変大きな問題になります。ですから最初のスタートは、10か20からとりあえず一度スタートしてみて自分で経験を踏んでいただく。その中で、先ほどから一つの企業に株式でということがあったのですが、私どものほかの地銀さん、あるいは、りそなもそうなのですが、今現実に動いている、特に取引商品の周りでは外債の国債で運用しているタイプ、外債ファンド。そして特に関西では今申し上げました定期的に分配が出るものに大変注目が集まっております。中には3カ月ごと、6カ月ごとにブリックスファンドみたいに、あくまでも好きなお客さまですが、それが一発動きますとチャイナあたりも30~40%もらってしまうのですが、そういうのが出てしまうと爆発的にボンとお金が動いてしまう。申し上げたかったのは、それだけお金に非常にシビアなマーケットが関西であろうなというように感じております。

  • (いちのせ氏) そういう面では、お金のことはそこそこ考えている方が多いのかもしれませんね。皆さま方の中でも本日一番聞きたいことは何かといいますと、昨日も株が下がり、円高になっています。その中で日本の株を買っている方は多いと思いますし、投信もそうだと思います。4人の方々がおられますが、これからの日本を含めて投資家としてこの状態をどう見たらいいのかというのを、神戸さんから、すみませんが。

  • (神戸氏) 今のマーケットの状況ですか。

  • (いちのせ氏) 今の現状から投資家がこれからどう見たらいいのかということを。

  • (神戸氏) 現在は、非常に先行きが見えにくい中で、投資環境としてはあまりよろしくない状況が続いています。これはなぜかというと、投資に向かうお金自体がだんだん減ってきているということが背景にあると思います。分散投資が一般的に有効なのは、どこかのマーケットで運用されていたお金が引き上げられればほかの有望なマーケットへ行くからです。ですから全部が駄目になるということは起こりにくいのです。ここ2~3年間、バランス型ファンドの運用結果が非常に良かったのは、日本で低金利で調達したお金がさまざまなマーケットでの運用に回ったので、多くのマーケットが値上がりしやすい状況にあったわけです。それが今は逆回転の状況になってしまいました。マーケットで運用されていたお金が引き上げられて借金の返済に回ってしまいますから、どこのマーケットにもお金があまり行かないわけです。唯一行っているのが商品市場というところでしょうか。そのような状況では分散投資していてもある程度のマイナスは避けられません。ここから3カ月から半年ぐらいのタームで見ると、まだ向かい風は続きそうです。ただ、中長期的に考えていきますと、分散投資というのは相変らず有効で、投資環境の厳しい時期でも、1年間で見ればマイナス10~15%程度を覚悟しておけばいいのではないかと思います。

    ポートフォリオ運用というのをベースにして考えていただくと、かなり安定的な運用が期待できるというのは、過去のデータが示しています。先ほどの基調講演資料の8ページにありますのは、実線が過去のトピックスの値動きです。株価がこう推移しているというときに、点線、これはアメリカの国債の値動きです。いつもとは言いませんが、多くの場合反対向きに動いていることが多いということがわかると思います。これが基調講演でお話ししたルーレットの赤と黒に当たります。これを両方同時にいつも持っているという状態が、つまり負けにくい状況を作ることにつながるわけです。

    9ページをご覧ください。株だけへの1年投資ですと、これは年末に買って年末に売るというのを1年ごとに繰り返した結果がグラフ化されているのですが、5割もうかった、翌年も1割もうかったというように、大きくもうかる年もありますが、3~4割負ける年もあります。過去20年間で見ていただくと、上がプラス、下がマイナスなので、11勝9敗という感じです。これだと9回のマイナスの時に、複利効果が敵に回ってしまいます。

    左下のグラフを見ていただくと、日本とアメリカの株と国債に単純に4分の1(25%)ずつ分散した場合です。そうすると、過去20年で15勝5敗と勝率が7割5分まで上がりました。と同時に重要なのは、マイナスの年のマイナスの幅を見てください。株だけだと3~4割負けている年がありますが、4資産への分散投資では、最もマイナスが大きくても1割ぐらいなのです。これが基調講演でお話しした、負けてもちょっとだけという状況を作る具体的な方法です。単純に四つに分けて放っておいただけです。全く当てにいってないですよね。

    これを1年間ではなくて、もう少し長く放っておくとどうなるかというのが、次の10ページです。四つに分けた上で、5年間放っておきますと、今度は左上のグラフ。90から始まっているのは、85年の年末に買って5年間持って90年に売ったということです。次が86年から91年というように保有期間を5年、5年で切ると、過去ずっと見ていくと、わずかに2回だけ0.1~0.2%マイナスのケースがあるだけです。

    さらに10年持っていただくと、何と一度も負けはありません。それが左下のグラフです。11勝0敗だけでなく、見事に5%から10%の間にそろっているのがわかると思います。これが負けにくいという状況を作る基本形なわけです。長期かつ分散投資ですね。実際グローバルバランス型の運用をやっていただいていれば、足下はバランス型運用にとっても逆風が吹いていますが、恐らく1年間たってみれば、先ほどご覧いただいたように、1年当たりの利回りで考えると、やられても1割ちょっとという状況に落ち着くと思っています。基本的に短期的な値動きというのはリスクのある資産につきものなわけで、値動きが違うものを同時に長期的に保有しながら全体のぶれをコンロトールしていくという考え方こそが、失ってはいけない退職金などの運用に関して、まず持つべきものだと思います。その上で初めて相場観なのです。順番を間違えない方がいいと思います。

  • (いちのせ氏) なるほど。やはり広い目で見ていくということは一番大事なことなのでしょうね。

    大久保さん、消費者の立場という形になるかもしれませんが、今後の日本経済も含めてですけれども。

  • (大久保氏) そんなに大きなテーマを語れるほどの知識はもってはいないのですけれど。私は消費生活相談員の仲間で投資クラブを作っていて、メンバーみんなでお金を出し合い、研究して株式投資をするという活動をしています。先がすごく読めていたわけではないのですけど、サブプライムローンが問題になり株価が下がる前に、当クラブではいったん全部保有株を売却しました。

    個人投資家という立場でお話しするなら、ファンドマネージャーのように仕事ではないので投資や投機をやり続けなければならないという義務はないわけです。神戸さんは「ずっと持っていられる時間がある」と言われましたが、休む時間を持っているところも個人投資家のいいところだと思うのです。私たちのクラブでは今は状況を見極めながら次の投資のために勉強する時期かなと思っています。

    神戸さんの基調講演で24時間時計を埋められない方の話を聞きました。先行きがなかなかわかり難い時は、投資活動はちょっと休憩して、自分はどうありたいか、楽しむためには何をやりたいかというようなことを考え、そのためのお金や時間を使ったりする時期ととらえてはどうかと思います。

  • (いちのせ氏) なるほど。待つのも投資という形で。

  • (神戸氏) 私がお話しした長期分散投資というのは、先ほどのグラフの10年保有の場合で年平均6.9%という結果になっています。年数%の運用を目指すならば、いつ始めてもいいですし、ずっとやっていていいわけです。ですから、年数パーセントの運用を目指して、分散投資を継続するというのは一つのやり方なのです。

    今、お話がありましたが、タイミングを考えて当てにいくということ自体は、私は別に悪いこととは思っていません。また、年1割以上欲しいということになると当てにいかないと難しいでしょう。

    ただ、先ほどの株式だけの1年投資の結果を見ていただいて分かると思うのですが、当てにいく場合には、今、大久保さんがおっしゃった通り、当てにいっていい時期と悪い時期があるわけです。つまり、投資すべき時期と休むべき時期があるのです。失敗される方は、何かを売るとすぐ次のを買おうとします。いつでも当てにいきたくなってしまうのです。これでは必ずどこかで大きなマイナスを被ってしまい、うまくいかないでしょう。

    だから、おっしゃる通り、当てにいこうとして株式だけに投資するのであれば、これは休む時期がないと駄目でしょう。しかし、分散投資というのは全く当てにいかない方法です。単純に4分の1に分けて放っておくだけです。この方法ならいつやってもいいです。逆に、休んでいてはいけません。時間をかけて目標の金額に到達するまで継続した方が効率的なのです。だから、自分がどちらのスタイルの投資を行うかということによってやるべきことは異なってくると思います。

  • (いちのせ氏) はい、ありがとうございます。では、篠原先生。

  • (篠原氏) お二人のお話を聞きながら、私の投資の成績を評価してみましたが、なんとか大丈夫かと思った次第です(笑)。長期につけてあるのもあるし、休んでいるのもあるしということなのでしょう。

    私は、今、毎週のように中国へ行っております。明日も10時半の飛行機ででかけますが、中国へ行くといっても、通常は、飛行場から大学へ直行し、そこで講義をして、ホテルへたどり着く、翌日も大学へ行って、講義をして、人と会い、中央銀行、政府や他の大学の研究機関に行って、また飛行場へ直行して自宅に帰るという単純な移動で、街を歩くことは滅多にありません。

    しかし、その滅多にないことから、先日、おもしろい現象を発見しました。お恥ずかしい話ですが、私は中国語をほとんど話せません。しかし、長年通っていれば、なんとなく理解できる中国語も増えていきます。先日、大学近くのレストランへ歩いていっているとき、出稼ぎ労働者が株の話をしているのが耳に入ってきました。農村では、家族が食べていけない、だから親、子供を置いて夫婦で街に出稼ぎにきている、屋根があるかないかという建設現場で寝泊りしている労働者もめずらしくない、そんな出稼ぎ人たちが「株を買ったら、云々」という話をしているのです。同行していた大学の同僚に、とっさに「正確に翻訳してくれ」と頼んだら、どうやら本当に自分で株式の売買をやっていることが分かりました。今、中国の株式ブームは、この位、何か危うさを感じる話なのです。

    申し上げたいのは、こういうことです。出稼ぎ労働者も含め、個人個人のレベルでは、それぞれ対処する必要はあるのですが、いま困った状態になっているのは、先ほど言ったファンドなどが短期に大口資金を一方向に動かすことです。しかもそれがかれらの情報と思惑で動かす。そうすると、皆さんもおっしゃるように、株式の調子が悪くなると、株式以外の商品に大量に移していきます。Aという銘柄の株からBという銘柄の株に資金が移る、あるいは株式から国債に資金が移る、そのすべてがマネーゲームの範囲内であれば、

    結局は、誰かの儲けは誰かの損なので、社会全体としてみれば損も得もない、だからそれほど心配する必要はないとも言えます。

    しかし、そんな資金が不適切なモノに回るとき、実体経済に極めて深刻な影響を与えることがあります。大量の資金が株式から原油に流れたため、原油価格が100ドルに近づくほど高騰し、それが企業や消費者に影響する、あるいはサブプライム問題のような深刻な事態に発展するなど、いま問題はますます拡散しているように思われます。

    さらに打撃が大きいのは為替レートです。このようなマネーゲームが、マネーの投機だけに留まっている限り、社会的にそれほどの不都合はありません。しかし、これが実態経済に影響を与えるようになると、話はまったく別です。経済政策を考える立場にある人ならすべて、われわれのような研究者も政府関係者も政治家も、こういった事態をなんとか回避すべきだとは思っているのでしょうが、そのような金融取引を規制してしまえば、今度は資金の効率的な運用が止まってしまうという、いわば二律背反的な問題を抱えているのです。その意味で、大量の短期資金を動かすファンド関係者に、もう少し「愛を持ったビジネス」を強く望みたいと常々思っております。

  • (いちのせ氏) ありがとうございます。では、勢登さん、お願いします。

  • (勢登氏) はい。銀行の立場で申し上げますと、マーケットそのものは、今年も上海ショックから今回のサブプライムという形、あるいは長期的に言いましても、当然、浮き沈みはいたします。この中で一つご提案ということなのですが、やはり本当はお金に色は付いていないのでしょう。ただし、お金にひとつ、色を付けるという意味合いなのでしょうか。すなわち、100あるお金のうち、この部分は残すお金なのか。いわゆる使ってしまうお金なのか。あるいは増やしていくお金なのか。この辺りをやはり3等分なのか。それは、個人のお考えによっては、やはりきっちり定期預金で半分以上は元本確保の部分で残したいと。この大きなお金のくくりの色分けをぜひしていただきたいです。

    その辺りが、先ほど来、長期的な時間の中で分散投資をしていけば、長い目で見ると平均的な運用コストが株への一本的な運用よりもいいというところは、そこにも言われると思うのです。よく「卵を同じかごに盛らないでください」というような説明を、投資信託なんかでは一番最初に申し上げるのですが、やはりお金というものは、当然、公的な年金部分だけでは足りません。今の1年ものの大口定期も0.4%です。これを増やしていこうと思うと、よく72の法則というのを、ここにおいでいただいているお客さまはよくご存じだと思います。72を0.4でやると倍にするのにどれぐらいかかるのですか。これは180年かかるのですが、逆に投資信託のマーケットでは6%ぐらいで回ってきた商品まであります。例えば、こういうのは12年で倍になります。

    ですから、実際、今、お持ちのお金の、どの部分は本当に増やすお金なのか。ここはぜひ色分けをしていただきたいです。その中で、長期的なスタンス、あるいは分散投資という形で、債権や株やREITや、同じかごに入れないような仕組みでやっていただければ、マーケットそのものは必ず変わると思います。私もマーケットに長い間携わってきております。ディーラーもやりました。ただし、これはどの世界でもあります。だから、そういった意味での本当の分散投資、いわゆるお金に色を付けて考えていただいたらどうかなというのが今の金融からのアドバイスでございます。

  • (いちのせ氏) はい、ありがとうございます。ちょっと時間がなくなってきましたので、今度は最後に、今日来られているパネラーの皆さん方に、各自が思われている資産運用なり、経済教育のあり方など、漢字一文字とか一言で書くのとすれば、どういう文字なのか。ちょっと書いていただきまして、一言ずつお言葉をもらって、締めにしていきたいなと思います。

    では、すみません。パネルを渡していただきたいなと思います。

    書けた方から順番に行きましょうか。まず神戸さんが書けたようなので、神戸さん、お願いします。

  • (神戸氏) 投資とは、「カ(ちから)」です。

  • (いちのせ氏) ああ、「カ」とは違いますか。

  • (神戸氏) 「カ(か)」じゃなくて「力(ちから)」です。今日お話ししたように、収入を作る上で本当に役に立ってくれるものなのです。勘と度胸で当てにいくのではなく、しっかりとリスクをコントロールする方法を身につけてください。個別の商品の良しあしばかりを判断しようとすると失敗します。自分の運用資産全体がどうなっているかというのを注意しながら、労務管理をしてそこそこ働いてもらうという考え方で行なえば、自分の代わりにちゃんと収入を生み出してくれる大変大きな力、それが資産運用だと思います。

  • (いちのせ氏) はい、ありがとうございます。力であるということですね。次、大久保さん。すみません、お願いします。

  • (大久保氏) 「買う」です。今まで、私たち消費者にとって、お金は預け、任せ、かけるものでした。これから資産運用を考えるにあたって消費者に必要なことは「金融商品を買う」という意識だと思います。買うという意識を持ったら、食品を買うときに原産国や価格表示を見るように「比べて選ぶ意識」が出てくると思います。自分のお金で買うとなると、当然ながら買うものに関心が出てくる。買うまでに積極的に情報を集めるようにもなる。だから「買う意識」が大切だと思います。

  • (いちのせ氏) はい。買うということですね。では、篠原さん、お願いします。

  • (篠原氏) 私は漢字一文字では書けませんでしたが、その前に、金融教育についてちょっと一言だけ。

  • (いちのせ氏) はい、お願いします。

  • (篠原氏) 実は、金融教育をどのように扱うべきか、とくに中学生や高校生、さらには小学生に金融をどう教えるか、教育関係者は思い悩んでいます。2週間ほど前、日経新聞の朝刊の株式欄のコラムで「いわゆる社会倫理の面から考えたときに、金融教育は子供に教えるべきではない」という趣旨の意見がでていました。これはこれで、私は極めて重要なポイントだと思います。ところが同じ日の同じ新聞の別のページにある大学の先生が「アメリカの学校では、金融投資の方法など資産運用について盛んに教えている。これらのことをしっかり教育しないと日本国民は損をする」ということが書かれていました。せめて同じ新聞上では、意見統一はして欲しいとは思うのですが、とりあえず、同じ日の同じ新聞に、金融教育に関して全く逆のことが書かれていました。

    このように、金融を教えることの是非を巡ってすら、賛否両論、極端な差があるのが実情なのです。その点を、いま、関係者の間で真剣に検討してみようという機運がでてきました。金融は、社会のなかでも極めて大切な役割を果たしています。その意味で、必ず教育の対象からはずすことはできません。しかし、私どもは、金銭投資のハウツーものを学校で教えることには大いに疑問を感じています。

    本日の話題はどちらかというとハウツーものですので、専門家ではない私は適切な答えを引き出せませんでしたが、あえて言えばということで、漢字ではありませんが「ローリスク、ハイリターン」と書きました。「ハイリスク、ハイリターン」なら誰でもできます。リスクの高い商品の収益率が高いことは、ごく普通のこと。ですから、誰にでもできることは賢い投資家の追及することではありません。もっとも、一番やってはいけないのは「ハイリスク、ローリターン」です。滅多にないほどの失敗のケースです。ですからこれも人には進められません。結局、賢い投資家が目指すべきは「ローリスク、ハイリターン」なのではないでしょうか。

    それでは、難しそうにみえる「ローリスクで高いリターン」をどう実現できるか。マージャンでも、少々強くても短期的には多少の勝ち負けは避けられません。でも長期間にわたって平均して勝ちを収めるには、マージャンの場合は、負けない相手とだけ対戦することも一案ですが(笑)、これは金融投資の世界では適わぬ方法です。結局は、短期的には焦らず、じっくり力を養うことに勝る方法はないのではないでしょうか。そのために、日々勉強する、それしか私のサジェスチョンは思い浮かびません。

    最後に、本日の最初の講演の中に、異論が1点あります。銀行預金を利子率が1%高い国債に回すだけで、かくかくしかじかの所得が増えるという話がありました。たしかに個人にとってはそれでよいのですが、それを経済全体で実行すると、経済全体の所得が増えるというわけにはいきません。皆が国債を買えば、国債の値段は必ず上がる、つまり金利が下がるのです。従って、最初の銀行貯蓄を国債に転換した人には、しばらくの間は1%分の所得増加がありますが、やがて皆が国債を買うようになれば、国債の値段が上がり、利子率が下がる、だから所得は増えないのです。このように考えれば、では銀行預金でも国債でも結局同じなのですが、ここが資産運用の妙で、最初に国債の値段が上がる前に預金から国債に乗り換えた人は、後で国債の値段が上がったときにそれを売れば、実は「安いときに買って、高いときに売る」という個人の所得増加を手に入れることができます。その代わりに、もちろん、後になって高く買う「鴨」が犠牲になることは明らかですね(笑)。こういう原理を学ぶことが、おそらく、私のいう「ローリスク・ハイリターン」の秘訣の一つなのでしょうか。

    それからもう一点、先の例で皆が銀行預金をやめて、すべて国債に回してしまったら、銀行を経由して企業などの融資していた資金が、今度は国家を通して流れるようになるのです。ですから、経済全体の所得が上がるかどうかは、結局、銀行の企業融資を活用するか、それとも国債で調達した資金を政府が活用するか、どちらが経済全体として効率的に所得を高めるか、といった点を考慮しない限り、金利の低い貯蓄から金利の高い国債に資金を移すだけではみなの所得は簡単には増えることはないのです。こんなことも、学んでおけば、ローリスク・ハイリターンに近づく一歩なのではないでしょうか。

  • (いちのせ氏) はい、ありがとうございます。では、最後に勢登さん、お願いします。

  • (勢登氏) はい、ありがとうございます。「買う」「ローリスク、ハイリターン」という言葉に対して、私は「時」という一文字にしました。これはもう言うまでもなく、先ほど来、話がございます時間を買う。いわゆる長期の運用という言葉の「時」であります。

    私ども金融機関でございます。もともと元本の確保されている、ペイオフがありますので、今は1000万円ということなのですが、銀行預金から次の新しい投資へ少しずつ流れていただく。先ほど来の国債もそうでしょう。そして、外貨預金。今は円高ですから、ひょっとしたら外貨の買いかもしれません。あるいは分散投資で表されております投資信託。最近の変額保険等でも、こういったバランスファンド、投資信託が運用の中身でございます。

    しかしながら、やはりいったん買った後も、長期的に時間をかけて、ご自身で慣れていただく。実際に、先ほど来、本当に一つ、100のうち5でも10でもいいのですが、自分のお金でマーケットに入りますと、やはり毎日の日経新聞の株価もさることながら、基準価格の変動が大変気になります。自分のお金ですから、本当に減っているのか。あの銀行にだまされたのではないだろうかと必ず気になります。そうした場合に、「今日は基準価格が下がっているな。そういえば、昨日、為替がぐーんと円高に振れたんだ。あるいは金利が高まったんだ」という経済の見方が確実に増えてきているのです。

    そういった目で、少しずつ自分の投資の世界を、時間をかけて広げていただくことによって、本当の運用の楽しみ、先ほど、「残す」、「ためる」、「増やす」というような言葉も申し上げましたが、時間という問題が、ある意味、今後のまだ広げていかなければいけない投資の世界が、時間という中で広がっていくのではないでしょうか。金融機関からのお話でございます。

  • (いちのせ氏) はい、ありがとうございました。私は「笑」と書きました。やはり人生、笑って過ごしたいと思いますし、やはり笑えるような運用ができないとつらいです。つらくなったら何のためにしているか分からないと思いますので、何か笑ってできるような人生設計を見いだすことをぜひ考えていただきたいなと思います。

    もう時間が来てしまいましたが、せっかくなので、会場から。時間的にはお一人かお二人になるかもしれませんが、ご質問等あられる方、ございましたらちょっと挙手をいただきたいなと思うのですけれどもいかがですか。せっかくの機会でございます。どうですか。寂しいですね(笑)。

    篠原先生が「ローリスク、ハイリターン」ですか。うちは、今、子供が二人とも大学に行っておりまして、うちの子供には「ハイリスク、ノーリターン」になっております(笑)。これから大変だなと思っておりますけれども、そういう部分でも生活設計というのは非常に大事かもしれません。

    では、もしもうこれでなければ、これでお開きにしたいなと思います。では、最後に4名の先生方に、大きな拍手をもって退場していただきたいなと思います。本当にありがとうございました。お疲れさまでございました。

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