企業会計審議会の意見書の公表について

平成18年6月に成立した金融商品取引法により、上場会社を対象に、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者の「評価」と監査人の「監査」を義務づける内部統制報告制度が、平成20年4月1日以後開始する事業年度から導入されることになっています。

この内部統制報告制度については、実務においていかに実施していくかが大きな関心となっています。企業会計審議会(会長 安藤英義一橋大学教授)では、先行して制度が導入された米国での制度の運用状況等も検証しながら検討を行い、平成19年2月15日、本制度における経営者の評価と監査人の監査を実施するための基準及び基準を実務に適用していくための実務上の指針(以下「実施基準」といいます。)をとりまとめ、意見書として公表しました。

今般の基準及び実施基準は、財務報告の信頼性を確保するという制度の実効性を確保しながらも、企業や監査人に過度の負担とならずに、できるだけ効率的・効果的に内部統制の構築・評価・監査が行われるよう指針を示したものであり、本基準等に基づいて実施される内部統制の充実を通じて、ディスクロージャー全体の信頼性を高めるものになることが期待されています。

基準・実施基準は、ともに内部統制の構築・評価・監査の3部で構成されており、実施基準は、基準を引用し、当該部分に係る実務上の指針を記載するという体裁をとっています。

基準・実施基準のポイントとしては、以下の点が挙げられます。

1.財務報告に係る内部統制の構築・評価・監査に関する基準を統合的に整備

先行して制度が導入された米国において、構築・評価の基準がなかったことから、監査の基準を構築・評価に当てはめるという実務が行われ、その結果、保守的な運用がなされたのではないかとの指摘を考慮し、基準等においては、財務報告に係る内部統制の構築・評価・監査の全体について統合的な指針を示しています。

2.内部統制の整備に向けた具体的な指針の提示

内部統制をどのように整備し、運用していくかについては、個々の企業が置かれた環境や事業の特性、規模等によって異なるものであることから、一律に示すことは困難であり、経営者には、各企業の状況等に応じて、内部統制の機能と役割が効果的に達成されるよう、自ら適切に工夫を行うことが期待されています。

基準・実施基準においては、各企業の創意工夫を尊重するという基本的な考え方を維持しながらも、財務報告に係る内部統制の構築・評価・監査について、数値的な例示も含めてできるだけ具体的な指針を示しています。

(例)

  • 財務報告に係る内部統制の構築プロセスを例示
  • 全社的な内部統制に係る評価項目を例示
  • 開示対象となる「重要な欠陥」に係る判断方法、判断基準を明示
  • 内部統制の運用状況の検証に係るサンプリングの信頼度を明示

3.過度のコスト負担の軽減

内部統制報告制度の実効性を確保しつつも、できるだけ効率的・効果的に内部統制の構築・評価・監査が行われるよう、先行して制度が導入された米国の状況も検証し、評価・監査のコストが過大とならないための方策を講じています。

(例)

  • 業務プロセスに係る内部統制の評価範囲の絞り込み方法を記述
  • 経営者と監査人の適切な協議プロセスを明示
  • 内部統制監査と財務諸表監査について、監査計画は一体的に策定し、監査証拠は相互に利用可能であることを明示
  • 評価手続等の記録は、企業が現に作成・使用している記録等を適宜、利用し、必要に応じそれに補足を行っていくことで足りることを明示
  • 小規模で、比較的簡素な組織構造を有している企業の場合には、職務分掌に代わる代替的な統制や外部専門家の利用等、その特性等に応じた工夫が行われるべきであることを記述

平成20年4月1日以後開始する事業年度からの適用に向け、内部統制報告制度の対象企業等においては、内部統制の着実かつ計画的な整備が求められます。本基準等においては、財務報告に虚偽記載の発生するリスクを的確に把握して、これに対応した内部統制を整備していただくことを強調しています。各企業においては、こうした基準等の趣旨を踏まえ、真にリスクのあるところには、適切な内部統制の整備を行い、重要性の乏しいところには、効率的にその整備を行うなど、それぞれの企業の状況等に応じて、創意工夫をこらして内部統制の整備を行っていただくことが期待されています。

PDF(別添)財務報告に係る内部統制の評価及び監査 (実施基準のポイント)(PDF:506K)

※ 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から、「企業会計審議会の意見書の公表について」(平成19年2月15日)にアクセスしてください。


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