平成19年2月に実施した「中小企業金融モニタリング」の取りまとめ結果の公表について

「中小企業金融モニタリング」は、中小企業金融の円滑化に向けた取組みの一環として、財務局・財務事務所職員が、商工会議所等、日本公認会計士協会地域会及び税理士会の協力を得て、各地域における中小企業から見た中小企業金融の実情等について的確に把握するために四半期毎に実施しているものです。

今般、平成19年2月に実施した中小企業金融モニタリングの結果を当庁において以下のとおり取りまとめ、公表しました。

今回の調査結果について俯瞰してみると、

  • (a)中小企業に対する融資姿勢は、全地域において、「積極的である」、「やや積極的である」との回答が概ね6割~8割を占めています。

  • (b)また、中小企業金融の実情については、他の金融機関が融資していない企業に対する融資は実行しないなど融資姿勢が消極的といった意見も少数聞かれるが、全体としては金融機関の融資姿勢は積極的、との意見が多く見られます。

金融庁としては、今後とも本モニタリングを通じて中小企業金融の現場の声を積極的に把握するとともに、得られた情報について、金融機関の検査・監督の実施に当たり重要な情報として活用するなど、中小企業金融の円滑化に向けて引き続き努力していきます。

1.モニタリング聴取先について

全国47都道府県の商工会議所、商工会連合会、商工会、中小企業団体中央会等の経営相談に携わる者、税理士、公認会計士386人(246団体)からヒアリングを行いました。

団 体 先 聴取人数(団体数)
商工会議所 158人( 76)
商工会 111人( 97)
商工会連合会 43人( 21)
税理士会 18人( 17)
中小企業団体中央会 25人( 16)
日本公認会計士協会 23人( 14)
商工会議所連合会 6人(  3)
中小企業家同友会 2人(  2)
合計 386人(246)

(注) 当モニタリングは毎回同じ訪問先に調査を行うといった定点観測ではないため、ヒアリング対象数、対象先が調査実施毎に異なる場合があります。

2.ヒアリング結果概要

  • (1)「中小企業金融に関する最近3ヶ月間の貸出動向について」のヒアリング結果概要

    • (a)地域毎の概要

      地域毎にばらつきは見られるものの、全地域において「積極的である」、「やや積極的である」との意見が概ね6~8割を占めています。また、「消極的である」、「やや消極的である」との意見は全地域において概ね1割を下回っています。

    • (b)業態毎の概要

      最近3ヶ月の動向 主要行 地方銀行
      第二地方銀行
      信用金庫
      信用組合
      政府系金融機関 全体
      1 積極的である 41 22.4% 94 26.2% 103 29.9% 142 38.8% 380 30.3%
      2 やや積極的である 70 38.3% 167 46.5% 152 44.1% 137 37.4% 526 42.0%
      3 どちらとも言えない 54 29.5% 78 21.7% 67 19.4% 68 18.6% 267 21.3%
      4 やや消極的である 10 5.5% 17 4.7% 20 5.8% 14 3.8% 61 4.9%
      5 消極的である 8 4.4% 3 0.8% 3 0.9% 5 1.4% 19 1.5%
      合計 183 100.0% 359 100.0% 345 100.0% 366 100.0% 1253 100.0%
      (注1) 当モニタリングは毎回同じ訪問先に調査を行うといった定点観測ではありません。
      (注2) 上記表は、有効回答の内訳を表したものです。無回答及び不明は含まれておりません。このため、聴取人数と意見の合計数は一致しません。

      上記表の「4 やや消極的である」・「5 消極的である」を選択したものの理由

      上記4・5の理由 主要行 地方銀行
      第二地方銀行
      信用金庫
      信用組合
      政府系金融機関 全体
      新規融資姿勢関連 10 43.5% 5 14.3% 5 14.3% 8 30.8% 28 23.5%
      担保・保証関連 4 17.4% 8 22.9% 6 17.1% 8 30.8% 26 21.8%
      金利関連 0 0.0% 1 2.9% 0 0.0% 2 7.7% 3 2.5%
      融資条件関連 6 26.1% 10 28.6% 12 34.3% 6 23.1% 34 28.6%
      審査手続関連 1 4.3% 2 5.7% 2 5.7% 1 3.8% 6 5.0%
      その他 2 8.7% 9 25.7% 10 28.6% 1 3.8% 22 18.5%
      合計 23 100.0% 35 100.0% 35 100.0% 26 100.0% 119 100.0%

      (注) 一つのヒアリング先から複数の意見が寄せられることもあるため、上記4・5の合計回答件数(80件)と上記表の全体の合計回答件数(119件)は一致しません。

  • (2)「中小企業から見た地域における中小企業金融の実情等について」のヒアリング結果概要

    中小企業から見た地域における中小企業金融の実情等について以下の10項目を聴取しました。

    (a)  融資姿勢に関するもの

    (b)  担保・保証に関するもの

    (c)  経営指導に関するもの

    (d)  創業・再生支援に関するもの

    (e)  融資の際の説明態勢に関するもの

    (f)  相談苦情処理機能に関するもの

    (g)  金融機関の資質・能力に関するもの

    (h)  融資の際の審査期間に関するもの

    (i)  金利に関するもの

    (j)  その他

    各項目に寄せられた主な意見は以下のとおりです。

    (注) 主な意見における( )内は、意見を収集した財務局名を指しておりますが、同一財務局において多様な意見を収集しており、それぞれの意見を抜粋して記載しています。

    (a)  融資姿勢

    • 信用保証協会と提携した制度融資等を活用するなど、融資姿勢は積極的である(全地域)。
    • 新規融資開拓のプロジェクトチームを編成するなど、新規融資に積極的に取り組んでいる(北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、福岡)
    • 業況が悪化した企業の経営者とのコミュニケーションを図り、企業の実態把握に努めるなど、企業の定性要因を考慮して融資を行っている(北海道、東北、北陸、中国、沖縄)
    • 他の金融機関が融資していない企業に対する融資は実行しないほか、融資に際して担保・保証が必要であるなど、融資姿勢は消極的である(関東、東海、中国、四国、九州、福岡、沖縄)

    (b)  担保・保証

    • 信用保証協会等の制度融資を利用するほか、スコアリング・モデル(企業業績を定量分析し、算出された信用リスクに基づき融資可否を判定)を用いた金融商品を推進するなど、無担保・無保証の金融商品は以前に比べて多くなった(北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、四国、九州、福岡)
    • 融資の借り換え時に追加担保を徴求しないほか、保証についても代表者保証などが主流で第三者保証は求めないなどの姿勢が見られる(北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、福岡)
    • 担保評価の目減り分について保証人を求めるケースがあるほか、融資を相談する段階では担保・保証を求めない前提で話を進めていても、最終的には担保等を求めることが多いなど、担保・保証に依存した融資姿勢が見られる(全地域)
    • 経済環境が芳しくない地域においては融資に際して担保・保証に頼りがちになるほか、スコアリング・モデルの活用は活発であるが企業の定性面に対する評価能力が乏しい(北海道、近畿)

    (c)  経営指導

    • 経営コンサルタント会社の経営指導を取り入れるほか、顧客の利便性に配慮して相談業務の時間を拡大するなど、組織として経営指導に積極的に取り組んでいる(北海道、東北、関東、東海、近畿、中国、四国、九州、福岡)
    • 観光客誘致のため、温泉組合のホームページ作成に金融機関が協力するほか、企業の資金繰り表の作成を指導するなど、踏み込んだ経営指導を行っている(北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国)
    • 経営指導の窓口はあるが実効的に機能しておらず受動的姿勢であるほか、経営指導よりも債権管理を優先しているなど、積極的な経営指導は行われていない(北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、福岡)

    (d)  創業・再生支援

    • 創業の準備段階から金融機関が積極的に関与しているほか、企業再生に取り組む企業に職員を派遣するなど、創業・再生支援に積極的に取り組んでいる(北海道、東北、関東、東海、近畿、四国、福岡)
    • 小規模企業の創業については、商工会議所と金融機関が密に連絡を取り合い協力を図っているほか、業況不芳の企業について、財務状況や再建計画を見極めた上で貸出条件の緩和を行うなど可能な限り対応している(関東、九州)
    • 金融機関にリスクをとる姿勢が見られず融資につながらないほか、企業からの創業支援に関する相談に対して実績を見てから判断するという対応であるなど、積極的な創業・再生支援は行われていない(北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州)。
    • 再生支援については、複数の金融機関と取引がある企業の場合は金融機関間の協調が必要なため、一金融機関が単独で支援することは難しいほか、創業支援に当たっては、評価価額や信用力の高い担保・保証が必要である(北陸、四国)

    (e)  融資の際の説明態勢

    • 金融機関が連帯保証人を往訪し、債務額及び償還期間等の説明を行っているほか、融資が困難な場合にはその要因となっている経営状況、財務内容等の箇所についても説明するなど、十分な説明を行っている(北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄)
    • 渉外担当の職員が安易に融資の可否などを答えていたケースも以前はあったようだが、現在は書面などを使ってきちんと説明しているほか、説明用パンフレットの文字を大きくするなど、説明はよくなった(北海道、九州)
    • 信用保証協会等の制度融資を利用する際に保証料が必要であることを説明していないほか、融資条件の変動金利を引き上げる際に十分な説明がなかったなど、説明不足と認められる事案がある(北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、福岡)

    (f)  相談苦情処理機能

    • お客様相談室などの専門部署を設置するなど、相談苦情処理態勢が整備されている(北海道、東北、関東、東海、近畿、四国、九州、福岡)
    • 相談処理機能については、支店長など上級職の職員が質問に直接対応するほか、スコアリング・モデルに基づいた理論的な金利等を提示し債務者の納得を得ているなど、適切に対応している(北海道、東北、関東、東海、近畿、四国、九州)
    • 融資先からの申し入れ、苦情は後手に回るほか、対面による会話を必要とする場合でも、本店に専門部署を設置しているため電話対応のみとなりがちである(近畿、九州)

    (g)  金融機関の資質・能力

    • 中小企業大学校や商工会議所等の研修に職員を派遣するなど、組織として積極的に取り組んでいる(北海道、東北、関東、東海、近畿、中国、四国、福岡)
    • 業種別に担当グループを作って経営指導等を行う態勢が広がっており、金融機関の資質・能力は十分であるほか、金融機関は商工会と積極的に情報を共有するようになってきているなど、企業の実態を把握しようとする姿勢が見られる(四国、九州)
    • 未だに決算書の数字だけを見て判断する担当者が散見されるほか、水産加工業界など個別事情等に関する勉強が更に必要であるなど、目利き能力が不足している(北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州)
    • 目利き能力については、担当者や支店長によって姿勢が異なり、組織全体の底上げにはなっていないほか、決算書などの数字だけで判断しており地域の実情などを見極める能力が不十分である(北海道、中国、九州)

    (h)  融資の際の審査期間

    • 融資に必要な書類等が整っていれば、資金が必要な時期に合わせたスケジュールを提示してくれるなど、融資の際の審査期間について適切な対応となっている(全地域)
    • スコアリング・モデルを用いた金融商品の活用や、事前協議の実施などにより、審査期間は短くなっている(北海道、東北、関東、東海、近畿、中国、四国、福岡)
    • 自己査定態勢が整備されたことから全般的に審査期間は短縮され、無駄な時間をかけなくなっている(北海道、東北)。
    • 新規融資の申込から実行までに1ヶ月以上かかる場合があるなど、審査期間は短くなっていない(東北、関東、東海、北陸、近畿、中国)

    (i)  金利

    • 依然として低利率で推移していると感じるなど、金利に関する不満はない(北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州)
    • 融資先に対する金利水準は、金融機関独自の信用格付に基づき、客観的な根拠に基づき決められているなど、企業の信用リスクに応じて適切に設定されている(北海道、東北、関東、東海、近畿、中国、四国、福岡、沖縄)
    • 金利交渉は困難であるほか、金融機関間の競争原理があまり働いておらず、金利水準は高い(東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州)

    (j)  その他

    • 19年10月実施予定の責任共有制度(信用保証協会の保証付融資において、金融機関が代位弁済額を一部負担)により、金融機関の融資姿勢が厳しくなるのではないかと懸念している(北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、九州)
    • 19年1月に実施された本人確認義務の変更(10万円を超える現金送金などを行う際に、金融機関に対し送金人の本人確認等を義務付け)は、利用者にとって手間や時間がかかりすぎる(東海、近畿)
    • 現在検討中の政策金融改革について、政府系金融機関の民営化により公的金融機関の果たしてきた役割が損なわれないか懸念している(北海道、北陸、福岡)
    • 金融庁が取り組んでいる施策「地域密着型金融」は今後も推進することが望ましい(北海道、四国、沖縄)
  • (3)「中小企業金融の円滑化策の浸透を示す事例について」のヒアリング結果概要

    • 中小企業金融モニタリングでは、中小企業金融の円滑化策の浸透を示す事例として、毎回、検査・監督に関する特定のテーマを設定し調査を行っています。
    • 今回の質問調査事項とそれに対する主な意見は、以下のとおりです。

    金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編](改訂版)の中小企業への浸透状況について

    【寄せられた主な意見】

    • 商工団体、経営指導員等の関係機関においては、マニュアル別冊の内容が浸透してきているが、中小企業者への浸透は十分ではないと思われる。
    • 金融機関が中小企業へ融資をする際にマニュアル別冊の内容を説明することがあり、中小企業の経営者へも浸透しつつあると思われる。
    • インターネット、広報等の媒体を駆使して周知してほしい。
    • 専門用語・活字を極力使用せず、イラストや図表等を取り入れ、読みやすいリーフレットにした方が良いと思われる。

3.「中小企業金融モニタリング」の活用状況について

  • (1)ヒアリングの実施

    中小企業金融モニタリングで得られた個別金融機関に関する情報を活用し、当該金融機関の対応方針、態勢面等についてヒアリングを行いました。

  • (2)意見交換会における要請(金融庁での活用)

    金融庁幹部と業界団体代表者の意見交換会(毎月開催)等において、中小企業金融モニタリングで得られた事例を紹介しています。具体的には、(a)事業からのキャッシュフローを重視した、担保・保証に過度に依存しない融資など、健全な中小企業に対する資金供給の一層の円滑化や、(b)これまでの取引関係や顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえた、顧客の理解と納得を得るような十分な説明の実施、(c)金融検査マニュアル別冊の周知等について要請を行っています。

  • (3)地域金融円滑化会議の活用等(財務局等での活用)

    都道府県毎に設置し、半期毎に開催している「地域金融円滑化会議」(金融当局、中小・地域金融機関及び関係業界団体から構成)や、財務局幹部等と金融機関代表者との面談など、諸々の機会を通じて、顧客への説明態勢の整備や相談・苦情処理機能の強化について注意喚起を行うとともに、中小企業金融の円滑化に向けた取組みの要請を行っています。

※ 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から、「19年2月に実施した「中小企業金融モニタリング」の取りまとめ結果の公表について」(平成19年4月25日)にアクセスしてください。


「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」における議論の状況について

金融審議会金融分科会に設置された「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(以下「スタディグループ」といいます。)は、今年の1月以降、現在まで11回会合を開催し、メンバーや外部有識者からのヒアリング等を踏まえ、精力的に討議を行っています。

これまでの議論では、基本的な問題認識として、

  •  少子高齢化が進展する中で、我が国経済が持続的に成長するためには、資産運用及び金融サービスの果たす役割が重要である。
  •  グローバルな市場間競争が激しさを増している中、我が国金融市場の国際的な競争力を強化していく必要がある。
  •  そのためには、これまでの金融・資本市場改革の流れを更に進め、我が国金融・資本市場の裾野を拡大することにより、内外の市場参加者にとって魅力ある市場を構築する必要がある。

といった点が指摘されました。

また、こうした取組みを進めることにより、以下のようなメリットが考えられることから、国民的に優先度の高い課題である、との指摘がありました。

  •  投資家にとって、より多様な運用機会が得られるようになる。
  •  資金調達者にとって、事業の拡大等に必要な外部資金の調達により、更なる成長のチャンスにつながる。
  •  投資リターンの増大や企業収益の拡大は、仲介する金融サービス業が生み出す付加価値とともに、国民所得の増大につながる。
  •  市場を通じた資源配分機能やガバナンス機能の適切な発揮は、経済活動の効率化や生産性の向上により、経済全体にプラスの影響を及ぼす。

これらを踏まえ、4月17日には、これまでのスタディグループにおける議論の状況を整理した「主な論点」を提示したところです。

「主な論点」の中には、今後議論を詰めていく必要がある論点等も含まれており、スタディグループでは、こうした点を中心に更に議論を深め、我が国金融・資本市場の国際競争力の強化に向けた具体的な方策について検討を進めていく予定です。

※ 詳しくは、金融庁ホームページの「活動について・審議会・研究会等」から「金融審議会・我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」にアクセスしてください。


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