麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要

(令和2年9月1日(火)10時46分~11時09分)

【質疑応答】

問)

安倍総理が28日に辞任を表明されました。現政権の7年8カ月の経済財政運営ではアベノミクスで景気が拡大し、企業収益は7年連続で過去最高を更新しました。一方、人件費の占める割合である労働分配率はほぼ横ばいで、企業収益が賃金に振り向けられていないという指摘もございました。企業収益の増加で賃上げを目指した政策の成果や課題につきまして、大臣はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。改めてで恐縮ですが、ご見解を伺えれば恐縮です。

答)

2012年12月の時点と今と比較すれば、いろいろな数字が軒並み上がっているというのは確かですね。特に昨年12月までの7年間を見れば明確に数字は上がっています。経済というのは数字ですから、そういった意味では私共としては少なくとも安倍内閣の間に極めて短期間にデフレ不況からの脱却、インフレでも不況があれば好況もあるのと同じようにデフレでも不況もあれば好況もありますから、デフレ不況からの脱却というものを、我々としては日本銀行も含めて一緒に共同歩調をとってこれまでやれてこれたというのがその背景であって、おかげさまでGDPが伸びたという話もあります。また、GNI、国民総所得、グロス・ナショナル・インカムも大きく伸びましたし、日本の経済構造というものがものづくりの大きな比重から金融とかITとかというソフトが大きな部分を占めるように変わったのだと思っています。そういった中で今、賃金の話が出ていましたけれども、労働分配率が下がってきたというのは、これは昔から私がよく言うセリフであったんですけれども、景気がよくなってくると給料がそれに比例して上がっていくというのではなく、今までとほぼ同じようなものだとするならば労働分配率というのは当たり前に下がってきて、給料がそのままで景気が悪くなると企業の収益が減る割には給料が減らないから労働分配率は上がる、これは一番基本的なところです。そういった意味では企業収益が上がってきた割には給料はそんなに伸びなかった、今までのデフレの習慣というのは企業経営者の側にとってはかなり強く残っていたんだと思いますね。したがって今言われたように、賃金が伸びなかったではないかと言われているけれども、少なくとも春闘では2%前後、1.何%から2%台という高い賃上げというのを6年連続でできましたので、そういった意味では雇用者の数も伸びて、昔は求職難でしたけれども、民主党内閣のときは。間違いなく求人難に変わりましたから、明らかに雇用情勢は変わったというので、賃金がもう少し伸びたっておかしくないんじゃないかと私はそう思っていましたけれども、それでもマイナスからプラスに変わっていったことは事実です。バブル期を超えて税収でも60兆円なんていう声が出てくるほどに伸びましたし、景気のためにいろいろ物が全然、金が動かない、簡単に言えば、GDPで言えば個人消費という金が動かない、民間で言えば設備投資が動かないというときに政府の支出も止めたらGDPの三大要素が全部駄目になりますから、GDPというものを考えたら、景気というものを考えたら、経済成長というものを考えたら、政府支出を一緒に縮めたら景気はさらに悪くなってくる、デフレになってくるのは当たり前でしょうがというのでこの内閣は予算の額を増やしていきましたし、政府支出を増やしていったんだと思います。その割に景気がよくなったために税収が増えましたから、景気をよくするために国債を新たに借り入れてさらに景気を刺激するということの額、新規国債発行の額ですが、12~13兆円減りましたから、そういった意味では昨年まではそれで来ることができたんだと思っています。予算ベースで比べてみても8年連続縮小ということができましたので、国債発行がね、経済再生と財政再建の両立というものをやる、まずは経済、それで財政再建もやりますと申し上げてきたとおりのことはきちんとやらせてきていただいたんだと思います。ただ、今は感染症という話が出てきていますから、この影響がいろいろな形で出ていますけれども、幸い死亡者は絶対数も人口比率も日本は極めてほかの国に比べればいいところで推移してここまで来れたんだと思っていますけれども、これによって人の動き、物の動きが止まるということになりましたので、いろいろな形で物流が止まるということは景気が悪くなるということですから、その意味で言えば、やっぱり何としても景気を回復するためにはということで、これは日本だけが悪いならまだしも、世界中が具合が悪いことになっていますので、その意味では外国との関係等を考えて予算規模で、事業規模というのが正確ですかね、事業規模で230兆円ぐらいの補正予算を組むとかというような措置を講ずることにしました。感染の拡大というのはそれなりに収まりつつあるとは思いますけれども、影響というのはまだ残っていて、景気の気の部分に関してはまだ不安が残っているという部分は事実だと思いますので、薬なりワクチンの開発をできるだけ急ぐと同時に、できたワクチンがきちんと皆さんの手のところに届くような形にしていかなければいけない。いずれにしてもコロナによって働き方改革を変えなければいけないとか、いろいろな話を言っていましたけれども、この働き方改革なんていうのは最も難しいかなと、私自身は働き方改革が実質的になるかなというのはあまり期待感はなくて、むしろなかなか日本人は難しいんじゃないかなという意識があったんですけれども、リモートというシステムができてきて、少なくとも役所で半分ずつ出勤させるというようなことをやっても結果としてそれなりに役所は動きます。記者会見も、少なくとも密集を避けて各社1人にしているわけだろう。こういったようなものは1つの方向として、このリモートという、災いを転じて働き方というものを変えていくという、福の方に変えていけている部分もあるんだと思います。ただ、大事にしておかなければいけないのはITなんていう話をえらくあおって書いてあるけれども、ITだけでどれくらいの人が飯が食えるか。今までものづくりというものをやってきた。米をつくるにしても自動車をつくるにしても皆ものづくり。ITは違うからね。ソフトでどれくらいの人が飯が食えるか。例えばイギリスなんて重商主義政策をやってえらい儲けた金を集めてロンドンでシティーというのをつくって金融で飯を食うように変えた。その代わり、ものづくりはどんどんやめていく。それでもあの国は大きくそれなりにやったんだけれども、日本は1億2,000万人、ITとかソフトとか金融だけで飯が食えるかというと、そんなにいかないと思う。何かほかのもので日本は稼ぐものを考えなければいけない。例えば観光なんていうのは非常に大きな要素だったと思うけれども、そういったようなものをやったらいかがかというのでビザの緩和によって非常に多くの訪日外国人旅行者が増えたということになっているけれども、今までに比べてどれくらい増えたと思う。10%から12~13%だろう、緩和によって増えた。国内旅行の13%以下だよね、外国人の比率というのは。残り90%は日本人が、それが止まったというのは日本人が止まっているんだから。外国人の旅行者の話ばかり書いてあるけれども、外国人の比率は1割、そんなもんですよ。残りの9割は日本人が動いていたのだから。その日本人が動かなくなってしまったというのが今の現状。コロナがうつるから、うつされるから、わんわん書いて人が動かなくなってしまったということになっている。そういうのを含めて日本経済を考えたときには、ITとか、そういう先端の話ばかりしか書いていないし、その他の部分でどういったようなもので今後この国は飯を食っていくかというのは真剣に考えないといけない。その1つの部分が我々は、旅行とか観光とか、日本の持っている治安がいいとか、交通手段がすべて正確に動くとか、そういったものは日本の持っている大きなソフトのパワーの1つなんだから、そういったものを使って海外からというので事実成功して、800万人ぐらいだったものが6~7年間で3,000何百万人まで来たんだというのは大きな成果だったとは思います。そういったものが今コロナのおかげで止まっていますから、またそういったものの復活を含めていろいろなことをやっていかなければいけないというのが、これからの日本というものを考えたときには今後さらに取り組んでいかなければいけないところかと思っています。

問)

安倍総理と7年8カ月、副総理として支えてこられて、こうした形で体調の問題で辞任ということになりましたけれども、それについて改めて所感をお伺いしたいのと、新しい内閣ではどのような政策課題に取り組むべきだとお考えでしょうか。

答)

政権発足以来ずっと中で副総理だ、財務大臣だ、金融担当だというのをやらせていただいたので大変残念に思っているというのは正直なところですね。健康管理というのは、やはり激職ですからね、総理大臣というのは。だからよほどきちんと休みをとってやっていかないと、なかなかもたないということなんだというのは改めて思っているんですけれども、アベノミクスというような言葉ができて、三本の矢が始まって、いろいろなことが進んでいったんだと思いますけれども、東日本大震災からの復興とか、また地球儀を俯瞰するというふうなことも言われて外交とか内政とかいろいろな幅広い面でやってこられたというのは最近の内閣の中では極めて今の時代に合ったいいリーダーだったなと私自身はそう思っていますね。前回、あなた記憶があるかどうか知らないが、安倍内閣ができた当時に、途中で1年で倒れられたときは内閣所信表明が終わって途端に入院ですから。あのとき私は幹事長をしていて、代表質問をやる10分前にドタキャン、バタッと止まったんだから、正直慌てましたね。そういった話の経験をご自分でも踏まえておられるから、今回の記者会見を見ても今すぐ倒れられるような雰囲気ではないというのははっきりしていますし、前より健康の調子がいいのもはっきりしていると思いますけれども、あの病気は完治することのない病気だそうですから、その意味では大事をとってああいうことのないようにということを思われたんだと思いますので、それはそれなりのご判断だと思いますし、私共としては甚だ残念ではあるけれども、やはり体力、健康、そういったものは自分でやっていただかなければいけないということなんだと思って、残念ながら事実としてそれを受け止めた上でどうすればいいかということだと思います。次の内閣はどなたがなられるにしても、今コロナの話はやっておかなければならない、確実に対応しなければならないことですし、南シナ海、東シナ海、言うに及ばず、こういった状況は明らかに、米中韓言うに及ばず、南シナ海の自由航行の件に関していろいろな形で緊張感が増していることは確かですよ。従来とは全然状況が違うと思っていますね。そういったような状況にどう我々は対応していくか、これは我々にとっては、あそこを自由航行できるかできないかというのは極めて大きな話ですから、そういった意味では台湾の問題を含め、香港の問題を含め、いろいろなそういった問題にきちんと対応していく、日本という国の対応というものは問われているので、何となく誰かほかの人が解決してくれるだろうなんて期待していると、いつの間にか自由航行ができなくなったりすることになりかねませんから、そういったところはきちんと、開かれたインド太平洋戦略というものがきちんとでき上がっていますので、そういったものに沿って対応していただくということを、内政プラスそういったところは極めて大事なところだと思います。

問)

その新しい内閣に求めることの中で安倍政権では税・財政の面でも2度の消費増税を含めて進捗はあったと思うんですけれども、新しい内閣に対しても税・財政の視点からどういったことを求めたいと。税や財政の観点からどのように取り組むべきだと思われますか。

答)

税は今、景気が悪くなってきましたので、我々の予想した税収まで届かない確率は極めて高いのだと今の段階では思っています。パッと回復するとまた変わりますから何とも言えませんけれども、60数兆円のものを期待していた部分にはなかなか届かないという確率が高いかなということは覚悟しなければいけないと思っていますけれども、そういったものを含めて税のあり方というのは常に考えておかなければいけないところだと思っていますので、我々としては、税は生活に直結する部分でもありますので非常に大事な部分だと思っています。また、税というものは景気がよくなって、売上げが増えるとか利益が増えるとか、そういったようなものが出てこないと税金は払いやすくならない。景気が悪いと何となく税金の重みがむしろ見えてくるということになりますので、景気をよくしつつ利潤が増え、その結果として税収も増えるという形にしていって、結果としてそれが財政再建につながっていくというのであって、どんどん税率を上げて財政改善なんていうのは、それはどんどん経済が縮小するというのはこの間デフレ不況という時代に経験済みですから、そういったものをきちんと経験として学んだ上で我々としては景気対策というものを引き続きやりながら、いわゆる景気をよくしながら、経済をよくしながら財政を再建していくという方向で今まで同様やっていくというのが正しい答えなんだと思っています。

問)

自民党の総裁選挙についてお尋ねいたします。正式な出馬表明はまだこれからですけれども、自民党内で菅官房長官への支持が広がっております。菅長官が正式に出馬表明されれば大臣は菅長官を支持されるお考えでしょうか。

答)

ここは財務省の場所で、これは財研の記者会見であるというのであって、財務省関係以外のことで答えることはありませんというのが基本的なルール。したがって今の質問に対する答えは、言うことはありません。

(以上)

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