加藤財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要
(令和7年5月20日(火曜)9時58分~10時11分)
【冒頭発言】
今朝の閣議において、カナダで開催されるG7財務大臣・中央銀行総裁会議に出席するため、本日から24日まで、私が海外出張することについて、了解をいただきました。
今回の会議では、世界経済、経済安全保障、ウクライナ支援、金融犯罪をはじめとする、現下の諸課題について議論がなされるものと承知をしております。
今回の出張においては、こうした議題について日本の立場をしっかりと表明することで、G7の議論に貢献していきたいと考えております。
また、この出張機会を活用して、二国間会談も実施することで、各国財務大臣との関係を深めていきたいと考えております。
【質疑応答】
- 問)
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一つ目が、先程おっしゃられたG7財務大臣・中央銀行総裁会議についてです。カナダのバンフで開催されますが、アメリカの関税措置を含めて、日本政府としてどのようなご主張をされる予定でしょうか。また、バイ会談をされるということですが、アメリカのベッセント財務長官とのバイ会談を予定されているのかどうか、その場合は日米の関税交渉が始まって2度目の会談となります。政府としてどのような主張をされる予定でしょうか。
- 答)
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まずG7会合でありますが、先程申し上げたように、世界経済をめぐる諸課題について議論がなされるものと承知しています。
現下の国際情勢の中、米国の関税措置を含め、各国と率直な意見を交換し、先程申し上げた日本の立場をしっかりと表明したいと思いますし、こうした議論を通じて、国際社会における日本の信頼感を高め、プレゼンスを発揮できるように努力をしてまいります。
また、ベッセント長官との会談でありますが、会談を行うことを前提に現在日程の調整をしているところでありますが、その際には、為替を含め二国間の諸問題について議論を行いたいと考えております。
- 問)
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二つ目ですが、大手格付け会社のムーディーズが膨らむ債務残高などを理由に、米国債の格付けを最高位から1段階格下げしました。大臣の受け止めを教えてください。また、今月2日に大臣はテレビ東京の番組で、日本が保有する米国債について、日米交渉の「カードとしてはあると思う」とご発言されました。この発言の意図を改めて教えてください。
- 答)
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まず、16日にムーディーズ社が、米国の長期債格付けを最上位の「Aaa」から、1段低い「Aa1」に引き下げたということは承知をしておりますが、民間格付会社による他国国債の格付けについて、政府としてコメントするのは差し控えさせていただきたいと思います。
その上で、米国政府からは、ベッセント財務長官が、米国の財政状況等については、既に市場に反映されていること、米国政府は、歳出削減と経済成長による歳入増の両面に取り組んでいくことといった発言をされていることも承知しております。
今後とも、米国の政策、経済・物価・金融情勢の動向や、それらが世界経済や日本経済に与える影響について注視をしていきたいと考えています。
5月2日の私の発言は、これまで何度か申し上げたとおりでありまして、「米国債を安易に売らないことをあえてコメントすること」が日米協議の一つの手段になりうるか、とのご質問にお答えしたもので、「保有する米国債を売却すること」に言及したものではございません。
外為特会が保有する米国債については、「我が国通貨の安定を実現するために必要な外国為替等の売買等に備え、十分な流動性を確保する」、その範囲内で「可能な限り収益性を追求する」といった方針を、既に明らかにしておりますが、その方針にのっとって保有・運用しているものであり、今後ともその方針に則って対応していきたいと考えています。
- 問)
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ムーディーズに関係してですが、格付けを引き下げて、現在のところは金融市場、大きな混乱は見られていませんけれども、4月に米国の為替、債券、株が同時に売られるというトリプル安に見舞われた経緯もあるだけに、金融市場への影響というのはどう見ていらっしゃいますでしょうか。
もう一つ、日本は米国債の保有額では最大の保有国であり、政府は外為特会を通じて米国債を保有していますけれども、この格下げを受けて、この米国債の運用方針というのはこれまでどおりと変わりないのかどうか確認させてください。 - 答)
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まず、影響でありますが、先程申し上げましたように、しっかり今後の影響も見ていくということに尽きるというように思います。現下、今後の影響についてコメントすることは、差し控える必要があるだろうと思います。
それから、外為特会における米国債の運用をどうするかというお話でありますけれども、先程申し上げた、外為特会が保有する米国債を含めた、外為特会全体の運用方針をもう1度申し上げますと、「我が国通貨の安定を実現するために必要な外国為替等の売買等に備え、十分な流動性を確保する」、その範囲内において「可能な限り収益性を追求する」といった方針に則り保有・運用しているわけでありますから、今後ともその方針に則って対応していくと、これに尽きるものと思っております。
- 問)
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福島県いわき市の、いわき信用組合について伺います。いわき信用組合が、預金者に無断で別の口座を偽造し、そこに融資する形で資金を流出させていた疑いがあることが報道で分かりました。これについて大臣の受け止めと、金融庁としての対応状況について伺います。
- 答)
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いわき信用組合は、昨年11月に旧経営陣等による迂回融資が発覚した旨及び調査のための第三者委員会を設置した旨を公表しており、現在当該第三者委員会による調査が行われているものと承知しております。
金融庁としては、このような不正融資が行われていたことは大変遺憾であるというように認識をしています。同信組に対しては、第三者委員会による調査を通じて、徹底した原因究明を行うこと及び、実効性のある再発防止策を講じることを強く求めるとともに、これまでも同組合の事実認識や原因分析などの状況を確認しているところであります。
金融庁としては、第三者委員会による調査結果なども踏まえつつ、法令に基づき厳正に対応していきたいというように考えておりますが、ご承知のように、いわき信用組合は、東日本大震災の影響を受けた地域での金融仲介機能の発揮に万全を期するため、金融機能強化法に基づき、2012年1月に200億円の資本参加を受けているところでございます。
そういった点も含めて、こうした事態は本当に大変遺憾であります。
重ねて、金融庁としては、第三者委員会による調査結果なども踏まえつつ、法令に基づき厳正な対応を図っていきたいと考えています。
- 問)
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先程おっしゃられた、2012年1月の200億円の公的資金の注入に関して、公金が入っているという意味で、金融庁として、他の金融機関よりも厳しいチェックが必要だったかと思いますが、金融庁として、しっかりとモニタリングができていたのかについて、ご見解はいかがでしょうか。
- 答)
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金融庁では事案の発覚以降、直ちに事実関係の確認や徹底した原因究明を求め、その後も同組合の事実認識、原因分析などの状況、再発防止策の検討状況について随時確認を行っているところでございます。
それらも含めて、昨年の11月でありますから、もう半年経っておりますけれども、できるだけ早急にそうした調査結果が第三者委員会において取りまとめられ、またその内容を踏まえて、金融庁としては速やかな対応を図っていこうと思っております。
その際には今お話がありましたように、まず、本来こういうことは資本参加があろうがなかろうが、あってはならないということでございます。その上に、資本参加を行っているということも含めて、しっかりと金融庁として検討していきたいと考えています。
- 問)
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関連して、この200億円の公的資金については、本来目的としては被災企業のために使われるという目的があったと思いますが、この資金が本来の目的である被災企業のために使われたというようには言えるのでしょうか。その辺りのお考えはいかがでしょうか。
- 答)
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まさに、そういった点も含めて、現在、第三者委員会などで議論、調査がなされているというように承知をしております。まずは、そうした調査結果を待ちながら、また、金融庁としても、あまり具体的なことは申し上げられませんが、これまでも、いわき信用組合に対して確認をしているところでございますので、そうしたことを含めて、最終的な判断をしていきたいというように考えています。
- 問)
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先程、言及のありました、ベッセント長官との会談なのですが、以前に、これまでの議論に基づいたお話を期待するというようなことをおっしゃっていたかと思うのですけれども、その方針に日本としてお変わりないかというのをお伺いしたいと思います。
- 答)
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前回においては、為替相場はマーケットによって決定されるものであるということ、また、過度な変動は、経済や金融情勢に対して悪影響を与えるという、これまでずっと確認されてきた中身について、改めて確認をさせていただきました。それをベースに、引き続き議論がなされていくものと承知しています。
- 問)
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もう1点なのですが、先週、政府税調や財務省の関税・外国為替等審議会にて、少額貨物の輸入をめぐる課税方針について議論が行われました。中国などからの少額貨物の輸入の増大を受けている中で、各国が色々と、関税ですとか、消費税の免除の見直しの動きが出ていますけれども、日本としては、今後この問題をどのように議論、検討を進めていきたいか、お考えがあればお聞かせください。
- 答)
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まず、我が国においては、課税価格1万円以下の少額輸入貨物について、平成元年、まさに消費税導入の時でありますが、輸入を行う納税者の事務負担の軽減、また税関における円滑な通関処理を維持するという観点から、消費税などを免除するという制度が設けられてきたところでございます。
諸外国においても、少額輸入貨物に対して同様の制度が導入されていたという経緯はありますが、免税で販売を行う国外事業者と課税で販売を行う国内事業者との競争上の均衡を図る観点から、EU加盟国等においては、少額輸入貨物にかかる免税制度について近年廃止等の見直しが行われていると承知をしています。
先日開催された政府税調の専門家会合においては、少額免税制度に対する国内事業者からの意見や諸外国での対応状況について、議論が行われたところであります。
現時点で本制度の見直し等について何ら決まったということはございませんが、令和7年度与党税制改正大綱において、諸外国における制度・執行両面での対応を参考としつつ、事業者間の公平性や通関実務への影響などを考慮の上、国境を越えた電子商取引に係る適正な消費課税の在り方について検討を行うとされているところでもあります。
今後、諸外国の実態や実務等への影響なども含めて、引き続き検討していきたいと考えています。
(以上)