大塚内閣府副大臣記者会見の概要
(平成22年4月23日(金)13時17分~13時28分 場所:金融庁会見室)
【副大臣より発言】
今日は、お手元の資料について私のほうから説明させていただいて、詳細はまた事務方からもしっかり取材してほしいと思いますけれども、「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」を解くべく、やはり金融庁としても努力しなければならないということで…。冒頭からこんなことを言うとなんですが、金融庁にしては珍しく分かりやすい資料を作ったなと思っています(笑)。
中身を見ていただくと、「全般的事項」、「個別的事項」と目次がありますけれども、1ページずつ見ていっていただくと、IFRSの、世間で巷間言われている、流布されている常識について、「それは誤解ですよ」ということを解説させていただいているということになっています。
例えば、最初の1.を見ていただくと、「上場会社は直ちにIFRSが適用される。だから、大至急準備しなければならない」ということなのですが、実際は、「今年3月期から、一定の要件を満たす上場企業の連結財務諸表については、IFRSを任意に適用できるようになった」と。あくまで「任意だ」ということ。
次のページを見ていただくと、2.などは結構大きな問題ですが、「非上場の会社にもIFRSが適用されるので大変ですよ」と言って、あまり断言するのもはばかられますが、そういうことをセールストークにしていろいろビジネスをやっている人たちがいるわけです。そのこと自身は、大変、中小企業の負担にもなりかねないということなので、これも正確に言えば、「非上場の会社はIFRSを適用する必要は必ずしもない」ということであります。「必ずしも」というか、連結になると、日本基準でも良いし、IFRSを使っても良いということではありますが、少なくとも単体であれば全くその必要はないわけであります。
それから、3.を見ていただくと、「全面的なITシステムの見直しが必要だ」ということで、これもビジネスにつながるわけなのですが、本当に必要な部分だけ、しかも、今、申し上げたように、非上場の中小企業であれば、「連結で、一部IFRSを適用する」と自分たちで任意に決めたところは、そういう対応をする必要もあると思いますけれども、また、そうであったとしても、必ずしもシステムをいじらなければできないというものでもないですので、この辺も誤解を解く必要があると。
4.は、人材のことですね。相当、高度なことなので、「そういう人材が必要です」ということも、ちょっと過度の誤解を呼んでいる気がいたします。
それから、5.は監査人の対応について書いてあります。
6.は、「財務諸表を英語で作らなければいけないのか」とか、そういう話であります。7.もそうです。
それから、8.を見ていただくと、「監査は国際監査基準(ISA)で行う必要があるのか」と。「ISAでやらなければいけない」と思われがちですが、我が国の企業は、日本の監査基準に従って行えば良いと。諸外国においても、それぞれの国のルールに従っています。
これは、一瞬余談になりますけれども、郵政とか金融庁のかかわる他の問題でもそうですし、他の省庁の問題でもそうなのですけれども、どうも、やはり正確に海外の情報が伝わっていないですね、日本の国内というのは。例えば、金融庁マターで言えば、自己資本比率規制一つとって見ても、アメリカではバーゼル II の導入が大変遅れていましたし、今でもきちんとやられていないのに、日本だけが相当厳格にやっているわけですね。あらゆる分野でそういうことが起きていて、今回のこの件も、その範疇(はんちゅう)に属する現象だと思っています。
それから9.は、「監査は大手監査法人でないとできない」ということですが、必ずしもそういうことでもありません。
10.は、ガバナンス(内部統制)についてでありますが、これもご覧のとおりです。
11.は、業務管理や内部管理に関するもの。
それから、その後は番号が変わっていますが、そこから「個別的事項」に入っていますが、(1.は)「IFRSは徹底した時価主義ではないか」ということでありますが、詳細は、そこの表に出ていますように、必ずしも現行の日本基準と大きく変わらないと。
それから、その次の個別事項の2.などは大きな話だと思いますけれども、「厳格な時価評価だ」というところの誤解から更に派生して、持ち合い株式の損益について、「当期純利益に計上しなくてはいけない」と言っている人たちもいるのですが、そうではなくて、「その他の包括利益という形で、別枠で計上し、当期純利益が悪化することはない」というのが、実は、正確な表現であります。
それから、3.は、同様に、「包括利益のみになる」ということを逆に言う人たちがいますが、「そうではない」という話であります。
それから、4.は、企業年金の話でありますが、これも、やはり、特にこれを当期純利益というか、「その他の包括利益以外のところに計上すれば、大変、大きな影響が出る」といってびっくりしている人たちもいるのですが、これは、その他の包括利益として認識させる方法とか、あるいは一定額以上のみの将来債務を平均残存期間で均等償却するとか、いろいろなやり方があるという話であります。
それから、ちょっとマニアックなのですけれども、5.ぐらいになると、売上等ですね。日本では、出荷基準とか工事進行基準とか、計上するときの従来の慣行があるわけです。「そういう慣行も一切行えなくなるのではないか」というような誤解も生じておりますが、その誤解は、後で包括的にも申し上げますけれども、ここの、今、ご覧いただいている5.の「実際」というところに、「実現主義」と「収益認識基準」という言葉が出てきますけれども、日本の企業会計というのは、皆さんご承知のとおり、長い間、確定利益主義とか実現主義でずっと行われてきたのですけれども、それを、目に見えない将来債務とか、そういうことまで含めて認識されている収益とか損益を、全部、「現時点できちんと計上するのだ」というアプローチの違いに由来して、「この出荷基準とか工事進行基準という日本の従来の慣行にも影響が出る」と言われていますが、「必ずしもそうでもありません」という話であります。
6.あたりは、ちょっとマニアックな話ですけれども。
詳細は、後で、事務方に聞いていただければと思いますが、やはり、この国際会計基準の問題は、さっき申し上げたように、日本では、長い間、企業会計と税務会計の領域において、日本には日本の定着した慣行がある中で、企業会計のほうに国際会計基準という新しいムーブメントが起き、もちろん一定の合理性のある範囲で、それと整合性をつけていくという作業は行わなければならないし、今も続いているのですけれども、それを「非上場や中小企業、あるいは日本のこれまでの確定利益主義の慣行を完全に無視するかのような導入の仕方が強制的に行われるのか」というと、「そういうことではありません」ということを、この分野を所管する金融庁としてもしっかり誤解のないように伝えていかなくてはいけないということで、今回、事務方の皆さんに、一生懸命これ(資料)を作っていただきましたので、今日、皆さんにこれをご紹介し、この後、個別にブリーフをしてもらいます。
これは、貸金業の改正の内容がなかなか正確に伝わっていないということなどとも共通する問題でもあると思っておりますけれども、例えば、ちょっと、一瞬脱線しますけれども、貸金業であれば、個人事業主の皆さんはきちんと事業のために借りるということさえ証明できれば、別に、総量規制には引っかからない、ということが正確には伝わっていないので、今回、それを一生懸命伝えようと我々としてはしていますし、これからも努力は続けるのですが、この国際会計基準についても、だいぶ誤解が、中小企業経営者の皆さんの不安も呼んでいる面もありますので、それを解消するべく、これから最大限の努力をしていくということであります。
(以上)