III 銀行の検査・監督に係る事務処理上の留意点

III -1 検査・監督事務に係る基本的考え方

前述(Ⅰ-1(1))の金融検査・監督の目的を達成するためには、金融庁においても、銀行に対し、個々の銀行の規模や特性に応じた対応を継続的に行っていくことが必要である。

このため、銀行の検査・監督事務を行うに当たっては、まずは、各行がどのようにしてビジネスモデルの構築、金融仲介機能の発揮、財務の健全性の確保、コンプライアンス・リスク管理態勢の構築等の課題に取り組もうとしているかの方針を理解し、その上で、当該方針がどのようなガバナンス体制の下で実施され、如何なる潜在的なリスクや課題を内包し、各行がこれらのリスク等をどのように認識し対応しようとしているか、的確に把握することが不可欠である。

経営全体を見据えた重要課題に対応し、国民経済の健全な発展につなげていくには、各行が、当局から指摘されることなく自らベストプラクティスに向けて改善するよう、銀行自身で経営体制を変革していく必要がある。金融庁としては、実態把握や対話等を通じた継続的なモニタリングの過程で、より良い実務を追求する各行の取組みを促していく。

その上で、上記の過程で、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題が認められる場合や銀行の自主的な取組みでは業務改善が図られないことが認められる場合は、法第26条に基づく業務改善命令等の行政処分(Ⅱ-5)の発動等を検討することとする。

さらに、銀行の検査・監督事務を行うに当たっては、以下の点にも十分に留意した上で実施することとする。

  • (1) 銀行との十分な意思疎通の確保

    検査・監督に当たっては、銀行の経営に関する情報を的確に把握・分析し、適時適切に対応していくことが重要である。このため、金融庁においては、銀行からの報告に加え、銀行との健全かつ建設的な緊張関係の下で、日頃から十分な意思疎通を図り、積極的に情報収集する必要がある。具体的には、経営陣や社外取締役、内部監査の担当者を含む銀行の様々な役職員との定期・適時の面談や意見交換等を通じて、銀行との日常的なコミュニケーションを確保し、財務情報のみならず、経営に関する様々な情報についても把握するよう努める必要がある。

  • (2) 銀行の自主的な努力の尊重

    金融庁は、私企業である銀行の自己責任原則に則った経営判断を、法令等に基づき検証し、問題の改善を促していく立場にある。検査・監督に当たっては、このような立場を十分に踏まえ、銀行の業務運営に関する自主的な努力を尊重するよう配慮しなければならない。

  • (3) 効率的・効果的な監督事務の確保

    金融庁及び銀行の限られた資源を有効に利用する観点から、検査・監督事務は、銀行の規模や特性を十分に踏まえ、効率的・効果的に行われる必要がある。したがって、銀行に報告や資料提出等を求める場合には、検査・監督事務上真に必要なものに限定するよう配意するとともに、現在行っている検査・監督事務の必要性、方法等については常に点検を行い、必要に応じて改善を図るなど、効率性・有効性の向上を図るよう努めなければならない。

    既報告や資料提出等については、銀行の事務負担軽減等の観点を踏まえ、年1回定期的に点検を行う。その際は、銀行の意見を十分にヒアリングすることに留意する。

    また、銀行の小規模な営業所等に関して、銀行に報告や資料提出等を求める場合には、取り扱うサービスや商品などに関する当該営業所等の特性を十分に踏まえ、業務の円滑な遂行に支障が生じないよう配意する。

  • (4) 複数の業態を含む金融グループのリスク管理

    我が国では、平成5年の金融制度改革による業態別子会社での相互参入の解禁や、平成10年の金融持株会社の解禁、金融システム改革法による子会社規定の整備等を経て、複数の業態を含む金融グループが形成されている。

    こうした複数の業態を含む金融グループの形成は、金融機関の経営体質の強化やサービスの向上に寄与する可能性がある一方で、組織の複雑化による経営の非効率化、利益相反行為の発生、抱き合せ販売行為や優越的地位を濫用した取引の働きかけの誘因の増大、グループ内のリスクの波及、グループにおけるリスクの集中等が生じるおそれがある。

    かかる特性を踏まえれば、銀行グループにおいては、個別の銀行の健全性等を確保するのみならず、銀行グループ全体の経営管理態勢やグループとしての財務の健全性、業務の適切性について実態把握を行うことが重要であり、業務の適切性の確保の観点から、銀行グループの一体的な管理を促していく必要がある。また、銀行が他の業態の金融機関や外国の金融グループ、事業会社の子会社等である場合においても、銀行主要株主への監督権限のほか、深度あるヒアリング等により、銀行に上記で挙げたリスクの波及やリスクの集中等が生じるおそれがないか検証することが重要である。

    なお、金融グループの態様は様々であって、グループが抱えるリスクの特性やリスクの波及の過程も異なる結果、グループにおける経営管理態勢も自ずと異なるため、各々の金融グループの実態を踏まえ、その態勢を検証する必要がある点には留意する。また、業態や適用法令が異なる場合であっても、同様の趣旨に基づく規制に関しては、同様の目線や着眼点で検査・監督を行う必要がある。特に金融グループ内における異なる業態の金融機関が一体的に提供する金融サービスについては、関係部局が連携して検査・監督対応を行うことが効果的である。こうした観点から、証券監督担当部局等の他の監督部局や証券取引等監視委員会といった関係部局間での連携強化を図ることが重要となる。

III -1-1 検査・監督事務の進め方

銀行の検査・監督事務の基本は、実態把握や対話等を通じたモニタリング、監督上の措置、フィードバック、情報発信といった各手法を、各行の状況や抱えている問題の性質・重大性等に応じ適切に組み合わせることを通じて、各行に必要な改善を促していくことにある。

また、限られた行政資源を効果的に活用する観点からも、これらの実施に当たっては、我が国の金融システム全体の安定確保や金融仲介機能の発揮等の観点から銀行を巡る環境変化を的確に把握するとともに、各行における個別的状況についても、モニタリング・データや随時のヒアリング等の結果を踏まえ将来を見据えた分析を行い、機動的に優先順位を判断し、重点的な課題の性質に応じて、時間軸を意識した対応を行うことが求められる。

例えば、収益上の深刻な課題や健全性の問題、あるいはコンプライアンス上の重大な問題を抱える銀行については、比較的短い時間軸の中で、経営の改善に向け早急に対応することが必要である。このような場合においては、オンサイトを含めた機動的なモニタリングを活用し、当該問題の詳細やその根本的な原因を検証し、当局が考える要改善事項を明確に示した上で、各行に対し具体的な改善を求めることとなる。

他方、こうした課題・問題を抱えていない銀行については、金融仲介機能等を適切かつ継続的に発揮し、これを通じて将来にわたる経営基盤や健全性を確保する観点から、社外取締役を含む取締役会をはじめとするガバナンスが有効に機能し、経営陣が的確な現状分析に基づいた実現可能性ある経営戦略・計画を策定・実行していくことが必要である。こうした銀行に対しては、将来の見通しや改善に必要な時間等の「時間軸」をしっかりと意識しつつ、経営陣等と経営やガバナンス等について深度ある対話を行っていくことを通じて、銀行の取組みを促し、改善状況を注視していく。

III -1-2 検査・監督事務の具体的手法

  • (1) オン・オフ一体の継続的かつ重点的なモニタリング

    金融庁は、各行の特性・課題を把握した上で、課題の性質・優先度に応じて立入検査を含むモニタリング手法を機動的に使い分け、改善状況をフォローアップする継続的なモニタリングを実施する。

    モニタリング手法の使い分けについては、各行の個別具体的状況に加え、各手法における実態把握に係る有効性や当局側・銀行側における負担の程度、問題の緊急性等の観点も十分に踏まえるものとする。基本的には、まず、経営・財務・リスク計数等に係る資料の分析や、行内外の関係者からのヒアリングといったモニタリングを実施し、足下の健全性・適切性等に係る課題が見られるかどうか等の分析結果を踏まえて、法第25条に基づく立入検査の要否について判断するものとする。

  • (2) 具体的手法

    • マル1 実態把握及び対話の実施に当たっての前提行為

      • イ.情報収集・プロファイリング(特性把握)

        金融庁は、各行の特性や課題の改善に向けた自主的な取組み状況等その時々における個別具体的状況を把握することを目的としてモニタリングを実施する。この中には、銀行を巡る環境変化が及ぼす経営への影響やこれへの各行の対応状況について把握することも含まれる。

        また、内外の経済や金融・資本市場の動向と個々の銀行の行動は相互に影響を及ぼし得るため、その相互作用についても分析・把握する必要がある。

        こうした情報収集やプロファイリングは、日常的なモニタリングの成果の集積であり、特定の形式にとらわれるものではないが、例えば以下のような視点で取組みを行っていく。

        • a.マクロの視点

          経済、金融市場、政治、社会等内外の環境変化が各行や金融システムに与える影響について分析・把握する必要がある。そのため、例えば、庁内の関係部署や財務局、関係省庁等と連携し、一般事業者を含む国内外の不祥事、国内外の法令・制度の改正や判例の動向、海外当局や国際機関における議論の動向、経済・社会環境の変化(SDGsへの注目の高まり等)等の内外の環境変化に関する情報を収集した上で、同業他社や他業界、類似業務・商品、法制度等に潜む共通の課題を分析・把握することが有用となる。

          こうした情報収集・分析を通じた、問題事象の横展開・広がりの分析を通じ、金融セクター全体に内在する課題の把握・特定に努めていく。

        • b.ミクロの視点

          銀行との実効性のある対話等を実現するためには、各行固有の実情についての深い知見の蓄積が不可欠である。特に、その出発点として、銀行が、それぞれの経営環境(顧客特性、競争環境等)の中でどのような姿を目指し、そのために何をしたいのかといった経営理念を確認することが必要となる。そのために、例えば次のような、当該銀行やそのステークホルダー(従業員、顧客、地域社会、株主等)からの情報収集が有用となる。

          • ・財務データやリスク計数データ等の定型資料のみならず、経営の意思決定に係る会議体の資料や議事録等を分析すること(金融仲介の機能発揮に関する戦略及び状況についての情報を含む)
          • ・決算やリスク管理に係る定期的なヒアリングのみならず、各部門の責任者をはじめとする各階層の者からビジネス動向や金融仲介機能の発揮の状況等について随時ヒアリングを行うこと
          • ・銀行自身のリスク認識や業務のあり方を把握するため、内部監査部門、監査(等)委員・監査役、社外取締役等と意見交換を行うこと
          • ・銀行の顧客特性・産業特性についての理解を高めるため、事業者や地域の関係者等と意見交換を行うこと
          • ・金融サービス利用者相談室に対して寄せられた相談・苦情等の情報や、融資先企業ヒアリングの結果など、様々なチャネルを活用して収集した金融サービス利用者の声のほか、メディア報道や外部からの照会等を含めた外部情報を分析すること
          •  上記のような情報収集・分析やこれまでのモニタリングを通じて、銀行のビジネスモデル・経営戦略、業務運営及び組織態勢を理解した上で、それぞれの課題や特性、銀行を巡る環境変化による影響について把握する。
      • ロ.優先課題の洗い出し及びモニタリング方針・計画策定

        上記情報収集・特性把握を通じて特定された各行の課題や業態等に共通する横断的な課題については、銀行の経営陣と経営上の実質的な重要事項を議論するため、また、限られた行政資源を最大限有効活用するため、社会的要請など時々の重要度・緊急度も十分に踏まえ、優先順位を付ける必要がある。こうして特定された横断的な優先度の高い課題については、事務年度当初に金融行政方針等で設定・公表する。

        次に、各行特有の経営状況等を踏まえ、モニタリング方針・計画を策定し、優先課題への具体的な対応方針・計画を定め、適正な人員配置等の体制を構築する必要がある。その際、銀行が実質的な重要事項の改善に経営資源を集中できるよう、重点的な課題の性質に応じて立入検査とそれ以外のモニタリング手法、各行のモニタリングと水平的なモニタリング等を使い分ける。

        なお、立入検査については、従来のように一定期間ごとに実施するのではなく、一連のモニタリングプロセスにおける実態把握のための手法の一つと位置付けられる。但し、長期間立入検査が実施されていない場合には、当局の予見困難な問題事象が生じている可能性が相対的に高まっていることも考えられ、そのことがリスク要素の一つとも捉えられる。

        また、期中に新たな課題が発生・発覚した場合にはモニタリング計画を柔軟に見直すなど、その時々に応じた適切なモニタリングを心掛ける。

    • マル2 各行の詳細な実態把握

      実態把握のため、課題の性質又は対応の進捗、各行の実態に応じ、各種ヒアリングや任意の資料提出依頼、アンケート、法令上の報告徴求、立入検査などの中から、最も効率的かつ効果的な手法を選択することとする。

      また、当局において、過去に情報を把握していたり、別途把握を行っている場合には、その内容を事前に確認の上、それらを最大限活用するなど銀行の負担軽減に配慮する。

      更に、一旦行った分析に基づきモニタリングを実施している場合においても、情報収集や実態把握、対話に基づき新たに課題が判明した場合には、新たな課題の性質に応じて、適切な対応を行っていく。

      選択された各手法については、それぞれ例えば次の点に留意して実施する。なお、いずれの手法を実施するにしても、当局がどのような課題を認識した上で、どのような議論を志向しているのかを、銀行に対して丁寧に説明していく。

      • イ.各種ヒアリング

        優先課題について銀行との相互理解を深めるため、課題の性質に応じて経営トップ、各部門や各支店の責任者、実務者レベル等との間で重層的にヒアリングを行っていく。

        なお、ベストプラクティスの追求に向けた取組みについては、銀行が自らの置かれた環境と特性に応じ創意工夫を行うものであることを踏まえ、当局が特定の答えを押し付けることのないよう留意する必要がある。

        また、こうした各種ヒアリングの一環として、銀行の施設内において、特定のテーマに関して一定期間集中的にヒアリングや対話を行う場合がある。

      • ロ.任意の資料提出依頼

        銀行の負担に配慮し、また、依頼趣旨が明確かつ正確に伝わるよう、当該依頼がどのような課題認識に基づくものか、そのためにどういった内容の資料が必要なのかといった点を明らかにし、銀行に対して丁寧に説明し理解を得るよう努める。その際、実施時期の分散、二重の依頼の回避、余裕をもった提出期限の設定といった銀行に課せられる負担の軽減に努めることとする。特に、アンケート等、複数の銀行を対象とする場合は、各行の特性・置かれた環境にも十分留意する。

        ハ.法第24条に基づく報告徴求

        必要が認められる場合には法第24条に基づき報告を求める。その際、当該報告徴求が当局のどのような課題認識に基づくものか、銀行に対して丁寧に説明する。

        ニ.法第25条に基づく立入検査

        足下の健全性・適切性等について検証が必要と判断された場合等、必要が認められる場合には法第25条に基づく立入検査を行う。その際、経営上重要な問題は何で、その根本的な原因は何かを常に念頭に置き、洗い出した優先課題の正確性について、経営陣との議論の中で再確認し、仮説を構築する。更にその仮説の立証のために更なる事実・実態の収集・把握を行い、収集した事実・実態に基づき、経営陣と議論を行うことで、安易な結論ではなく銀行の経営や金融行政上重要な課題について根幹に根差した議論を行うよう心掛ける。

        なお、立入検査に係る基本的な手続きは、別紙2「立入検査の基本的手続」を参照。また、検査結果通知書を交付した場合は、その交付日と原則として同日付けで、銀行に対し、指摘事項についての事実確認、発生原因分析、改善・対応策等について、法第24条に基づき、1か月以内に報告することを求める。報告を求める事項については、様式・参考資料編 様式 III -1-3-3(1)を基本様式として参照するが、指摘の内容に応じ、個々に適切かつ十分な報告事項を定めるよう、十分検討することとする。

    • マル3 対話

      対話は、財務の健全性やコンプライアンス等に係る重大な問題発生の有無や蓋然性、銀行の経営や金融仲介機能の発揮の状況の改善に向けた自主的な取組み状況等その時々における個別具体的状況や、問題の性質に応じて実施される。

      対話を実施する際は、当局側の思い込み、仮説の押し付けを排し、可能な限り、銀行が安心して自らの立場の主張をできるよう努めつつ、まずは、銀行側の考え方や方針を十分に把握し、その上で事実の提示を伴いつつ行うことを徹底する。

      更に、対話に当たっては、それまで、当局が各行と行ってきたやりとり等を十分に踏まえ、対話の継続性に配慮した運営に努める必要がある。

      • イ.当局による実態把握において、財務の健全性やコンプライアンス等に係る重大な問題発生の蓋然性が高まったことが認められた場合においても、まずは、銀行自らが課題・根本原因・改善策の妥当性について検証を行った上で、当局と銀行との間で改善策の策定・実行について深度ある対話を行うこととする。但し、既に上記問題が発生している等高度の緊急性が認められる場合においては、当局が考える要改善事項の明確な指摘を行った上で各行の対応方針を確認する。

      • ロ.上記問題が発生する蓋然性が認められない銀行については、自らの置かれた状況に応じ多様で主体的な創意工夫を発揮することで、ビジネスモデルやリスク管理の高度化への努力を続けることが重要である。そこで、当局としては、日頃のモニタリングを通じた特性把握を基に、各行の置かれた経営環境や経営課題あるいは、各行の戦略、方針について深い理解を持った上で、特定の答えを前提とすることなく、銀行自身に「気付き」を得てもらうことを目的に、銀行との間で、ビジネスモデルやリスク管理、人材育成等について深度ある対話を行っていく(この過程でベストプラクティス等の他の参考事例を必要に応じて共有する)。

    • マル4 多様な手法の柔軟かつ適切な組合せ

      上記のとおり、金融庁が銀行に対する行政対応として用いる手法は様々なものがあるが、有効性や当局側・銀行側における負担・費用等の観点から、それぞれメリット・デメリットがある。そこで、金融庁としては、各行における課題や財務の健全性・コンプライアンス等に係る重大な問題発生の有無等その時々における個別具体的状況に応じて、各手法のメリットを最大限生かす柔軟な組み合わせを実現することで、有効かつ効率的な検査・監督事務の実現を目指す。例えば、既に述べた手法以外にも以下の方法が考えられる。

      • ・業界共通の状況や課題、特定分野における事例等をフィードバックすることは、銀行自身による創意工夫の発揮に資するものである。特に、これらの取組みを各行の有する課題に即してフィードバックを行うことで、当局・銀行間における高度の共通価値を構築した上での深度ある対話が可能となる。その場合においても、各行の自主的な経営判断を尊重し、個別取引の判断に当局として不適切な介入を行うことのないように配慮する必要がある。
      • ・銀行が自主的に開示する経営方針やその改善に向けた取組み、金融仲介機能の発揮状況といった情報は、銀行と当局との間の対話のみならず、顧客等の関係者との対話を深め、銀行による経営改善に向けた取組みに資する可能性がある。
      • ・各行の課題が金融仲介や顧客利便といった分野である場合は、当局・銀行間でのやり取りに終始するのではなく、取引先や利用者といった第三者にアンケートやヒアリングを実施し、その結果を当局・銀行間の対話の際にフィードバックすることで、対話の効果を高めることが可能となる。
      • ・必要に応じ、金融庁が、銀行以外の関係者と共通価値や目標を共有したり、金融庁としての各種分析や金融行政のスタンスを情報発信していくことで、銀行の経営環境に関係するステークホルダー等に働きかけることが考えられる。
    • マル5 モニタリング結果を踏まえた対応

      上記の金融モニタリング結果の還元については、従来の「検査結果通知」の形式に捉われることなく、認識が一致しない点については相違点を確認の上、継続的に議論を続けるなど、優先課題についての重点的な議論に適した進め方を工夫する。

      例えば、以下のような形で銀行に還元し、継続的な議論や必要に応じて改善対応を求めるなど、適切なフォローアップを行っていく。

      • イ.通年で実施したオン・オフのモニタリングの成果は、必要に応じ年間を通じた「フィードバックレター」として文書で交付する。

      • ロ.立入検査を実施した際には、原則として、その都度、結果の還元を行う。その方法は、把握した事象や立入検査の内容により様々であるが、例えば、軽微な事象や上記③ロのような対応を行う項目については「講評」や「当局所見」のような形で、あるいは、重大な事象については「検査結果通知」のような形で行う。
      • ハ.業界共通の課題については、上記「イ」又は「ロ」のほか、金融レポート等で公表する。
         モニタリングによって認められた問題点・収集した情報を①個別銀行限りのもの、②当該業態共通のもの、③他業態にも共通のもの、④当局の他の所掌業務や関係省庁その他業界団体等に影響するものに分類し、上記Ⅲ-2(2)①イのプロセス等を通じて、次期の金融行政方針やモニタリング計画に反映するほか、業態横断的な水平的モニタリングの検討、また、モニタリングのみに留まらない問題の広がりを踏まえた当局の他の所掌業務や関係省庁その他業界団体等への働きかけを行っていく。

III -1-3 品質管理

検査・監督事務の全過程において、実態把握及び対話を通じたモニタリングの質や深度について適切な判断が確保されるよう、組織として品質管理を行う。各行の経営環境や経営理念等各々の固有の実情を踏まえ、各行の創意工夫を尊重しているか、各行に対して不適切な負担を強いていないか等について、国民全体の厚生の最大化という幅広い視点に立ちつつ、金融機能が最大限発揮されるよう、検査・監督事務の品質の確保に努める。

そのため、総合政策局・監督局関係幹部において、例えば次の点について、銀行から寄せられた意見も踏まえ、多角的・重層的な検証を行い、継続的に必要な改善を図る。

  • ・情報収集やヒアリング、対話にあたり、銀行に重複徴求等の過大な負担をかけないよう、業態別・分野別モニタリングチームの間で実効的な連携・情報共有を行っているか。また、資料提出依頼にあたり、依頼内容が明確か、各行の違い・特性に留意しているか、余裕をもった期限が設定されているか。
  • ・特性把握にあたり、各行の経営環境や経営理念等各々の固有の実情を十分踏まえているか。また、当局担当者が思い込みに陥らないよう、客観的な資料・事実を踏まえているか。
  • ・優先課題の洗い出しにあたり、各行固有の実情に応じた経営上の実質的な重要課題に着目できているか。また、他の銀行や業態に広がりを持つ共通的な課題を見落としていないか。
  • ・モニタリング方針・計画の策定にあたり、適切なモニタリングの対象や手法が選択されモニタリングの実施を行う体制が整備されているか。
  • ・報告徴求にあたり、当局の課題認識を銀行に丁寧に説明しているか。
  • ・上記Ⅲ-1-2(2)③を踏まえ、適切な対話になっているか。また、対話が一方的な指導となっていないか。
  • ・モニタリングの結果認められた課題や問題点について、根本原因分析が行われているか。
  • ・モニタリング結果の還元にあたり、優先課題を重点的に議論するために最も適した方法が選択されているか。また、還元する内容について、問題の重要性に応じた的確な議論や改善の要請等ができているか、些末な問題を指摘していないか、不適切な経営介入を行う結果となっていないか。

その際、モニタリング全般に関する意見申出制度に加え、幹部が銀行を訪問し、銀行から直接モニタリングについての意見を聞くなど、銀行からの率直な意見や批判を受ける機会を充実させるよう努める。

また、銀行及び金融庁職員等へのヒアリング等を通じた金融行政に対する外部評価や有識者会議等を通じた外部有識者からの意見聴取を実施する。

III -1-4 監督部局間における連携

  • (1) 金融庁との連携

    銀行から財務局に対し、事前相談や認可又は承認等の申請があったときは、以下の点に留意するものとする。

    • マル1施行規則第37条の規定により、銀行から財務局に対し、銀行法施行令(以下「施行令」という。)第17条の2第1項及び第17条の3第1項の規定に基づき金融庁長官の権限のうち財務局長(福岡財務支局長及び沖縄総合事務局長を含む。以下同じ。)に委任されている権限以外の権限に係る認可又は承認等に係る事前相談があったときは、速やかに監督局担当部門に連絡の上、同部門及び財務局が一体となってヒアリングを実施し、また、これに係る申請があったときは、速やかに監督局長に進達することとするほか、当該銀行に関して参考となる情報があれば、適宜、監督局担当部門に情報提供する など、密接な連携に努めるものとする。

    • マル2Ⅲ-4-2-2(4)に係る事前相談があった場合は、速やかに監督局担当部門に連絡のうえ、同部門及び財務局が一体となったヒアリングを実施することとする。なお、当該銀行に関して参考となる情報があれば、適宜、同部門に情報提供するなど、密接な連携に努めるものとする。

  • (2) 財務局間における連携

    施行令第17条の2第1項及び第17条の3第1項の規定により認可又は承認の権限を行う財務局長は、認可(予備審査を含む。)又は承認をしようとする事項が他の財務局の管轄区域に及ぶときは、あらかじめ当該他の財務局長と協議することとするほか、その他参考となる情報があれば、適宜、当該他の財務局に情報提供するなど、密接な連携に努めるものとする。なお、認可又は承認に係る申請が、すでに予備審査終了済のものであり、かつ、その内容の重要な事項について変化がない場合には、当該他の財務局長との協議は省略して差し支えない。

  • (3) 銀行持株会社の子銀行に対する監督上の留意点

    財務局長に監督権限が委任されている子銀行を監督するに当たり、銀行持株会社と当該子銀行に対する監督権限が異なっている場合には、以下の点に留意するものとする。

  • マル1 銀行持株会社の監督権限が金融庁にある場合
    • イ.金融庁との連携

      施行令第17条の3第4項の規定に基づき、銀行持株会社の監督権限が金融庁にある場合には、財務局は当該銀行持株会社を監督する監督局担当部門との間において、当該銀行持株会社に係る情報を共有するなど、密接な連携に努めるものとする。

    • ロ.金融庁を通じて報告徴求をする場合の留意点

      財務局は、自らが監督する子銀行の適切な業務運営を確保するために当該子銀行の銀行持株会社に対して報告徴求等の必要があると思料する場合は、報告徴求等が必要な理由(関連資料を添付のこと)を付して、銀行持株会社を監督する監督局担当部門に対して意見を具申するものとする。

  • マル2 銀行持株会社の監督権限が他の財務局にある場合
    • イ.財務局間における連携

      財務局長に監督権限が委任されている持株会社について、その子銀行が他の財務局の管内にある場合にあっては、当該銀行持株会社を監督する財務局が施行令第17条の3第1項及び第2項の規定に基づき報告徴求等をしたときは、当該他の財務局に対して監督上重要と思料される情報を提供するなど、財務局間において密接な連携に努めるものとする。

    • ロ.報告徴求する場合の留意点

      施行令第17条の3第2項の規定に基づき、他の財務局管内の銀行持株会社に対して報告徴求をしようとするときは、財務局は当該他の財務局に対して、報告徴求が必要な理由(関連資料を添付のこと)を付して協議するものとする。

III -1-5 預金保険機構が行う検査との連携

  • (1)預金保険機構(以下「機構」という。)が預金保険法に基づき実施した検査の検査結果通知事項に対する改善状況等の報告について以下のとおり行うものとする。

    • マル1機構が被検査銀行に対し付保預金の円滑な払戻しのための整備状況等の検査又は保険料検査の検査結果を通知した旨の通知を機構から受理後速やかに、対象銀行に対し、当該通知書において指摘された事項(保険料検査においては、単純な計算ミスを除く。)についての事実確認、発生原因分析、改善・対応策、その他を取りまとめた報告書を1か月以内(法令違反の状態が継続しているとの指摘を受けた場合には2週間以内)に提出することを、必要に応じ、法第24条及び預金保険法第136条に基づき求めるものとする(様式・参考資料編 様式 III -1-3-4(1)参照)。

    • マル2上記マル1の報告書が提出された段階で、銀行から十分なヒアリングを行うものとする。ヒアリングに当たっては、機構とも緊密な連携を図るものとし、預金保険法第137条に基づく立入検査チェック項目(「預金保険法第50条第1項関連チェック項目」、「預金保険法第55条の2第5項及び第58条の3第1項関連チェック項目」)を参考にするとともに、機構の出席を原則として確保するものとする(様式・参考資料編 資料3参照)。

      • (注1) 機構が報告書を共有しヒアリングに同席することについて、あらかじめ銀行に同意を得るものとする。

      • (注2) 機構との日程調整については、財務局金融監督担当課と預金保険機構検査部担当課が行うものとする。

    • マル3機構から、保険料検査において法令違反の状態が継続しているという指摘を受け、機構の検査結果並びに法第24条及び預金保険法第136条に基づく報告書の内容等により、監督当局において問題ありと判断した場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

    • マル4機構から、保険料検査において銀行の法令等遵守態勢に関する指摘を受け、又は付保預金の円滑な払戻しのための整備状況等の検査においてシステム開発の進捗状況、データ整備の進捗状況及び手順書・マニュアル整備の進捗状況(以下「各種進捗状況等」という。)に問題があるとの指摘を受け、機構の検査結果並びに法第24条及び預金保険法第136条に基づく報告書の内容等により、当該法令等遵守態勢又は各種進捗状況等の改善に一定の期間を要すると認められる場合には、法第24条及び預金保険法第136条に基づき期限を定めて報告を求めるものとする。その結果、自主的な改善努力に委ねたのでは当該銀行の各種進捗状況等の整備に支障を来すと認められる場合には、法第26条に基づく業務改善命令(付保預金の円滑な払戻しのための整備状況等については、法第26条に基づく業務改善命令及び預金保険法第58条の3第3項に基づく是正命令)を発出するものとする。

      • (注)監督部局は、上記のほか、金融機関にかかる情報のうち、付保預金の円滑な払戻しのための整備状況等について、必要と考える場合は、随時、機構に対し、情報を提供するなど、適切な連携を行うものとする。

  • (2)機構が振り込め詐欺救済法に基づき実施した検査の検査結果通知事項に対する改善状況等の報告について以下のとおり行うものとする。

    • マル1機構が被検査銀行に対し、犯罪利用預金口座等に係る預金等債権の消滅手続や、被害回復分配金の支払い手続等の検査結果を通知した旨の通知を機構から受理後速やかに、対象銀行に対し、当該通知書において指摘された事項についての事実確認、発生原因分析、改善・対応策、その他を取りまとめた報告書を1か月以内(法令違反の状態が継続しているとの指摘を受けた場合には2週間以内)に提出することを、必要に応じ、法第24条及び振り込め詐欺救済法第35条に基づき求めるものとする(様式・参考資料編 様式 III -1-3-4(1)参照)。

    • マル2上記マル1の報告書が提出された段階で、銀行から十分なヒアリングを行うものとする。ヒアリングに当たっては、機構とも緊密な連携を図るものとし、機構の出席を原則として確保するものとする。

      • (注1) 機構が報告書を共有しヒアリングに同席することについて、あらかじめ銀行に同意を得るものとする。

      • (注2) 機構との日程調整については、財務局金融監督担当課と預金保険機構検査部担当課が行うものとする。

      • (注3) 監督部局は、上記のほか、銀行にかかる情報のうち、被害回復分配金の支払のための整備状況等について、必要と考える場合は、随時、機構に対し、情報を提供するなど、適切な連携を行うものとする。

  • (3)機構が民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律(以下「休眠預金等活用法」という。)に基づき実施した検査の検査結果通知事項に対する改善状況等の報告について以下のとおり行うものとする。

    • マル1 機構が被検査銀行に対し、休眠預金等に係る資金の移管及び管理の手続や、支払等業務の委託又は再委託の状況の検査結果を通知した旨の通知を機構から受理後速やかに、対象銀行に対し、当該通知書において指摘された事項についての事実確認、発生原因分析、改善・対応策、その他を取りまとめた報告書を1か月以内(法令違反の状態が継続しているとの指摘を受けた場合には2週間以内)に提出することを、必要に応じ、法第24条及び休眠預金等活用法第43条に基づき求めるものとする(様式・参考資料編 様式 Ⅲ-1-3-4(1)参照)。

    • マル2上記マル1の報告書が提出された段階で、銀行から十分なヒアリングを行うものとする。ヒアリングに当たっては、機構とも緊密な連携を図るものとし、機構の出席を原則として確保するものとする。

      • (注1) 機構が報告書を共有しヒアリングに同席することについて、あらかじめ銀行に同意を得るものとする。

      • (注2) 機構との日程調整については、財務局金融監督担当課と預金保険機構検査部担当課が行うものとする。

      • (注3) 監督部局は、上記のほか、銀行にかかる情報のうち、休眠預金等に係る資金の移管及び管理、支払等業務の委託又は再委託のための整備状況等について、必要と考える場合は、随時、機構に対し、情報を提供するなど、適切な連携を行うものとする。

III -1-6 管轄財務局長権限の一部の管轄財務事務所長への内部委任

  • (1)内部委任

    銀行の本店の所在地が財務事務所の管轄区域内にある場合においては、管轄財務局長に委任した権限は、財務局長の判断により当該財務事務所長に内部委任することができるものとする。

    なお、これらの事項に関する申請書、届出書等は、管轄財務局長宛て提出させるものとする。

  • (2)財務事務所長の行政報告

    管轄財務事務所長が内部委任事項の処理を行ったときは、原則として毎月分を取りまとめのうえ、翌月10日までに財務局長に報告させるものとする。

III -1-7 個別銀行に関する行政報告等

  • (1)決算等に関する提出資料

    決算状況表及び日計表等については、銀行に対して提出を求めているが、提出期限等は別紙3のとおりとすることに留意する。

    なお、各様式の改正を行う場合は、監督局担当部門から財務局に対し、適宜周知する。

  • (2)行政報告

    次の事項につき行政処理を行ったときは、その結果を遅滞なく監督局長に報告するものとする。ただし、⑮及び㉖に関しては、金融庁の指示により、(1)の各様式の改正に係る報告徴求命令をした場合には、この限りでない。

    なお、銀行議決権大量保有者等に係る銀行の本店所在地を管轄する財務局が行政処理を行った財務局とは別にある場合、及び銀行を子会社とする持株会社の子銀行の本店所在地を管轄する財務局が行政処理を行った財務局とは別にある場合には、当該管轄する財務局にも報告するものとする。

    • マル1資本金の額の減少の認可

    • マル2商号変更の認可

    • マル3取締役の兼職の認可

    • マル4外国における支店その他の営業所の設置、種類の変更又は廃止の認可

    • マル5会社分割の認可

    • マル6事業譲渡又は譲受けの認可

    • マル7上記マル1からマル6に係る認可効力の延長の承認

    • マル8大口信用供与規制の特例の承認

    • マル9アームズ・レングス・ルールの承認

    • マル10業務報告書等の提出延期の承認

    • マル11貸借対照表等の公告の延期の承認

    • マル12資本金の額の増加の事前届の受理

    • マル13海外駐在員事務所の設置の事前届の受理

    • マル14劣後ローンの期限前弁済又は劣後債の期限前償還の事前届の受理

    • マル15法第24条の規定による報告及び資料の提出の命令

    • マル16法第26条第1項、第52条の14第2項及び第52条の33第3項の規定による命令(業務の全部又は一部の停止の命令を除くものとし、改善計画の提出を求めることを含む。)

    • マル17法第52条の2の11第1項の規定による銀行議決権保有届出書の受理

    • マル18法第52条の3第1項、第3項の規定による変更報告書及び第4項に規定する訂正報告書の受理

    • マル19法第52条の4第1項の規定による基準日の届出、同項に規定する銀行議決権保有届出書及び同条第2項に規定する変更報告書の受理

    • マル20法第52条の5の規定による訂正報告書の提出命令

    • マル21法第52条の6の規定による訂正報告書の提出命令

    • マル22法第52条の7の規定による報告及び資料の提出命令

    • マル23法第52条の9第3項の規定による特定主要株主が主要株主基準値以上の数の議決権の保有者でなくなったときの届出の受理

    • マル24法第52条の11の規定による報告及び資料の提出命令

    • マル25法第52条の17第2項及び第4項の規定による届出の受理

    • マル26法第52条の31の規定による報告及び資料の提出命令

    • マル27法第53条第1項第7号の規定による届出の受理

    • マル28法第53条第2項の規定による届出の受理

    • マル29法第53条第3項第8号の規定による届出の受理

    • マル30施行規則第35条第1項第26号及び第38号並びに区分等を定める命令第6条各号に係る届出の受理

  • (3)銀行の営業免許等に係る登録免許税納付額の報告について

    銀行の営業の免許等を行う金融庁長官(登記機関)は、登録免許税法第32条の規定に基づき、登録免許税法を所管する財務大臣に対し、登録免許税の納付額を通知しなければならない。

    したがって、登記機関である金融庁長官が上記の通知を行うために必要となるので、財務局においては、その年の前年の4月1日からその年の3月31日までの期間内にした認可等に係る登録免許税の納付件数及び納付額を様式・参考資料編 様式 III -1-5(4)により取りまとめ、これをその年の4月末日までに監督局に報告するものとする。

(別紙3)決算等に関する提出資料(PDF:266KB)

III -1-8 災害における金融に関する措置(災害対策基本法等関係)

  • (1)災害地に対する金融上の措置

    災害対策基本法第36条第1項に基づく金融庁防災業務計画並びに武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(以下「国民保護法」という。)第33条第1項及び第182条第2項に基づく金融庁国民保護計画において、金融に関する措置が規定されている。こうしたことから、災害(災害対策基本法第2条第1号に規定する災害又は国民保護法第2条第4項に規定する武力攻撃災害若しくは国民保護法第183条に規定する緊急対処事態における災害をいう。以下同じ。)が発生し、又は発生するおそれがある場合においては、現地における災害の実情、資金の需要状況等に応じ、関係機関と緊密な連絡を取りつつ、銀行に対し、機を逸せず必要と認められる範囲内で、以下に掲げる措置を適切に運用するものとする。

    • マル1災害関係の融資に関する措置

      銀行において、災害の状況、応急資金の需要等を勘案して融資相談所の開設、審査手続きの簡便化、貸出の迅速化、貸出金の返済猶予等災害被災者の便宜を考慮した適時的確な措置を講ずることを要請する。

    • マル2預金の払戻及び中途解約に関する措置

      • イ.銀行において、預金通帳、届出印鑑等を焼失又は流失した預金者については、り災証明書の呈示あるいはその他実情に即する簡易な確認方法をもって災害被災者の預金払戻の利便を図ることを要請する。

      • ロ.銀行において、事情やむを得ないと認められる災害被災者等に対して、定期預金、定期積金等の中途解約又は当該預金等を担保とする貸出に応ずる等の適宜の措置を講ずることを要請する。

    • マル3手形交換、休日営業等に関する措置

      銀行において、災害時における手形交換又は不渡処分、銀行の休日営業又は平常時間外の営業についても適宜配慮することを要請する。

      また、窓口における営業ができない場合であっても、顧客及び従業員の安全に十分配慮した上で現金自動預払機等において預金の払戻しを行う等災害被災者の便宜を考慮した措置を講ずることを要請する。

    • マル4営業停止等における対応に関する措置

      銀行において、窓口営業停止等の措置を講じた場合、営業停止等並びに継続して現金自動預払機等を稼動させる営業店舗名等を、ポスターの店頭掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載し、取引者に周知徹底するよう要請する。

  • (2)  南海トラフ地震の事前避難対象地域内外における金融上の諸措置

    南海トラフ地震防災対策推進基本計画により国は、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)の内容その他これらに関連する情報(以下「巨大地震警戒」という。)が発表された場合における預貯金の払い戻し、平常時間外営業等金融機関がとるべき措置についての指導方針等を定めることとされている。

    ただし、銀行業務の事務処理については、機械化とその無人サービス網の普及等により、地域的に分断して対応することが困難であることから、南海トラフ地震への対応については、現地における資金の需要状況等に応じ、関係機関と緊密な連絡を取りつつ、銀行に対し、以下に掲げる措置を適切に運用するものとする。

    • マル1  事前避難対象地域内に本店及び支店等の営業所を置く銀行の巨大地震警戒発表時における対応について

      • イ.業時間中に巨大地震警戒が発表された場合には、銀行において、本店及び支店等の営業所の窓口における営業は普通預金(総合口座を含む。以下同じ。)の払戻業務以外の業務は停止するとともに、その後、店頭の顧客の輻輳状況等を的確に把握し、平穏裡に窓口における普通預金の払戻業務も停止し、併せて、窓口営業停止の措置を講じた旨を取引者に周知徹底するよう要請する。ただし、この場合であっても、同地の日本銀行本支店や警察等と緊密な連絡をとりながら、顧客及び従業員の安全に十分配慮した上で現金自動預払機等において預金の払戻しを継続する等、居住者等の日常生活に極力支障をきたさないような措置を講ずることを要請する。

      • ロ.営業停止等並びに継続して現金自動預払機等を稼動させる営業店舗名等を取引者に周知徹底させる方法は、銀行において、ポスターの店頭掲示等の手段を用いて告示するとともに、その旨を新聞やインターネットのホームページに掲載するよう要請する。

      • ハ.休日、開店前又は閉店後に巨大地震警戒が発表された場合には、発災後の金融業務の円滑な遂行の確保を期すため、銀行において窓口営業の開始又は再開は行わないよう要請する。ただし、この場合であっても、同地の日本銀行本支店や警察等と緊密な連絡をとりながら、顧客及び従業員の安全に十分配慮した上で現金自動預払機等の運転は継続する等、居住者等の日常生活に極力支障をきたさないような措置を講ずることを要請する。

      • ニ.その他

        • a.巨大地震警戒に伴う避難指示の措置が解除された場合には、銀行において、可及的速かに平常の営業 を行うよう要請する。
        • b.発災後の銀行の応急措置については、上記「(1)災害地に対する金融上の措置」に基づき、適時、的確な措置を講ずることを要請する。
    • マル2  事前避難対象地域外に本店及び支店等の営業所を置く銀行の巨大地震警戒発表時における対応について

      • イ.業時間中に巨大地震警戒が発表された場合には、銀行において、事前避難対象地域内にある銀行の本店及び支店等の営業所向けの手形取立等の手形交換業務については、その取扱いを停止させるよう要請し、併せて当該業務の取扱いを停止することを店頭に掲示し、顧客の協力を求めるよう要請する。

      • ロ.銀行において、事前避難対象地域内の本店及び支店等の営業所が営業停止の措置をとった場合であっても、当該営業停止の措置をとった事前避難対象地域外の本店及び支店等の営業所については、平常どおり営業を行うよう要請する。

  • (3)  行政報告

    以上のような金融上の諸措置をとったときは、遅滞なく監督局長に報告するものとする。

III -1-9 銀行等が提出する申請書等における記載上の留意点

本監督指針の対象となる銀行等が提出する申請書等において、役員等の氏名を記載する際には、氏を改めた者においては、旧氏(住民基本台帳法施行令第30条の13に規定する旧氏をいう。以下同じ。)及び名を括弧書で併せて記載することができることに留意する。

なお、様式・参考資料編各様式における役員等の氏名の記載欄について、既に旧氏及び名を併記した別の書類を提出している場合には、当該書類以外の様式を含め、旧氏及び名のみを記載することができることに留意する。

III -1-10 書面・対面による手続きについての留意点

銀行等による当局への申請・届出等及び当局から銀行等に対し発出する処分通知等については、それぞれ情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(以下「デジタル手続法」という。)第 6条第 1 項及び第 7 条第 1 項の規定により、法令の規定において書面等により行うことその他のその方法が規定されている場合においても、当該法令の規定にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができることとされている。

こうしたデジタル手続法の趣旨を踏まえ、同法の適用対象となる手続きに係る本監督指針の規定についても、当該規定の書面・対面に係る記載にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができるものとする。

また、経済社会活動全般において、デジタライゼーションが飛躍的に進展している中、政府全体として、書面・押印・対面手続きを前提とした我が国の制度・慣行を見直し、実際に足を運ばなくても手続きができるリモート社会の実現に向けた取組みを進めている。

金融庁としても、こうした取組みを着実に進めるため、銀行等から受け付ける申請・届出等について、全ての手続きについてオンラインでの提出を可能とするための金融庁電子申請・届出システムを更改したほか、押印を廃止するための内閣府令及び監督指針等の改正を行うこと等により、行政手続きの電子化を推進してきた。

更に、民間事業者間における手続についても、「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」を開催し、業界全体での慣行見直しを促すことにより、書面の電子化や押印の不要化、対面規制の見直しに取り組んできた。

このような官民における取組みも踏まえ、本監督指針の書面・対面に係る記載のうち、デジタル手続法の適用対象となる手続きに係るもの以外についても、顧客保護の観点から書面・対面が望ましい場合等として以下の(注)に掲げる場合を除き、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により行うことができるものとする。

以上のような取扱いとする趣旨に鑑み、本監督指針の規定に基づく手続きについては、手続きの相手方の意向を考慮した上で、可能な限り、書面・対面によらない方法により行うことを慫慂するものとする。

  • (注)以下の場合については、上記取扱いの対象外であることに留意する。
    • ①Ⅲ-1-11に記載する原本送付を求める場合
    • ②Ⅱ-8に記載する自筆困難者等への対応

III -1-11 申請書等を提出するに当たっての留意点

Ⅲ-1-10を踏まえ、銀行等による当局への申請・届出等については、原則として、以下(1)、(2)に掲げる方法により提出を求めることとする。

ただし、公的機関が発行する添付書類(住民票の写し、身分証明書、戸籍謄本、税・手数料等の納付を証する書類等)については、原本送付を求めることとする。

  • (1)  金融庁電子申請・届出システム

    銀行等による当局への申請・届出等のうち、(2)に掲げる金融庁業務支援統合システム(以下「統合システム」という。)を利用して提出を求める手続を除いては、原則として、金融庁電子申請・届出システムを利用して法令に定める提出期限までに提出を求めることとする。

    ただし、金融庁がホームページにおいて掲載するe-Govを利用して申請書等の提出が可能な手続については、当面の間、金融庁電子申請・届出システムを利用した提出と並行して、 e-Gov を利用した提出についても可能とする。

  • (2)  金融庁業務支援統合システム

    業務報告書(中間期にあっては中間業務報告書)については、原則として、統合システムを利用して提出を求めることとする。

III -2 銀行に関する苦情・情報提供等

III -2-1 相談・苦情等を受けた場合の対応

  • (1)銀行に関する相談・苦情等を受けた場合には、申出人に対し、当局は個別取引に関してあっせん等を行う立場にないことを説明する。

    その上で、必要に応じ、銀行及び金融関係団体の相談窓口並びに指定ADR機関、金融サービス利用者相談室を紹介するものとする。

    また、寄せられた相談・苦情等のうち、申出人が銀行側への情報提供について承諾している場合には、原則として、当該銀行への情報提供を行うこととする。

  • (2)銀行に対する監督上、参考になると考えられるものについては、その内容を記録(様式・参考資料編 様式 III -2-1(2)参照)するものとし、特に有力な情報と認められるものについては、速やかに金融庁担当課室に報告するものとする。

  • (3)財務局管内における1年間の相談・苦情等の件数を、毎年3月末現在で取りまとめ、これを4月末日までに金融庁担当課室に報告するものとする(様式・参考資料編 様式 III -2-1(3)参照)。

III -2-2 金融サービス利用者相談室との連携

  • (1)監督部局においては、金融サービス利用者相談室に寄せられた相談・苦情等の監督事務への適切な反映を図るため、以下の対応をとるものとする。

    • マル1相談室から回付される相談・苦情等の分析

    • マル2相談室との情報交換

  • (2)金融サービス利用者相談室に寄せられた相談・苦情等のうち、申出人が銀行への情報提供について承諾している場合には、原則として、監督部局において当該銀行への情報提供を行うこととする。

III -2-3 金融サービス利用者相談室で受け付けた情報のうち、いわゆる貸し渋り・貸し剥がしとして提供された情報に係る監督上の対応

  • (1)ヒアリング

    金融サービス利用者相談室で受け付けた情報のうち、情報提供者からいわゆる貸し渋り・貸し剥がしとして提供された情報については、四半期毎に取りまとめ、銀行の対応方針、態勢面等のヒアリングを行うこととする。また、これらの情報のうち、情報提供者等が銀行側への企業名等の提示に同意している場合には、臨機に、事実確認等のヒアリングを行うこととする。

  • (2)報告徴求

    • マル1上記(1)のヒアリングを行った結果、内部管理態勢の実効性等について確認する必要がある場合は、現状認識や今後の内部管理態勢の改善方針等を取りまとめた報告書を法第24条に基づき求めることとする。

    • マル2金融サービス利用者相談室で受け付けた情報のうち、情報提供者からいわゆる貸し渋り・貸し剥がしとして提供された情報を参考とした検査の結果、問題のあった銀行に対しては、改善措置に関する報告書を法第24条に基づき求めることとする。

  • (3)業務改善命令

    • マル1法第24条に基づく報告書の内容等により、更なる実態把握が必要な場合には、検査において確認することとする。その結果、重大な問題が把握された場合には、必要に応じて法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

    • マル2法第24条に基づく報告書の内容等により、自主的な改善努力に委ねたのでは当該銀行の法令等遵守態勢の整備に支障を来すと認められる場合には、法第26条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

III -2-4 預金口座を利用した架空請求等預金口座の不正利用に関する情報を受けた場合の対応

預金口座の不正利用に関する情報(具体的には、当該口座に振込みを行うよう、架空請求がなされたとの情報等)について、情報入手先からの同意を得ている場合には、明らかに信憑性を欠くと認められる場合を除き、当該口座が開設されている銀行及び警察当局への情報提供を速やかに実施することとする。

なお、当該情報に関しては、原則として、顕名情報とし、根拠となる請求書等とともに、文書、ファックス又は電子メールにて受け付けるものとする。

III -3 法令解釈等の照会を受けた場合の対応

III -3-1 照会を受ける内容の範囲

銀行法等金融庁が所管する法令に関するものとする。なお、照会が権限外の法令等に係るものであった場合には、コメント等は厳に慎むものとする。

III -3-2 照会に対する回答方法

  • (1)本監督指針、審議会等の答申・報告等の既存資料により回答可能なものについては、適宜回答する。

  • (2)財務局が照会を受けた際、回答に当たって判断がつかないもの等については、速やかに監督局担当部門に照会内容を連絡し、同部門及び財務局が一体となったヒアリングの実施などにより協議する。

  • (3)金融庁担当課室長は、当庁が所管する法令に関し、当庁所管法令の直接の適用を受ける事業者又はこれらの事業者により構成される事業者団体(注)から受けた、次のマル1及びマル2の項目で定める要件を満たす一般的な照会であって、書面による回答及び公表を行うことが法令適用の予測可能性向上等の観点から適切と認められるものについては、これに対する回答を書面により行い、その内容を公表することとする。

    • (注) 事業者団体とは、当庁所管法令の直接の適用を受ける、業種等を同じくする事業者が、共通の利益を増進することを主たる目的として、相当数結合した団体又はその連合体(当該団体に連合会、中央会等の上部団体がある場合には、原則として、最も上部の団体に限る。)をいう。

    • マル1本手続きの対象となる照会の範囲

      本手続きの対象となる照会は、以下の要件の全てを満たすものとする。

      • イ.特定の事業者の個別の取引等に対する法令適用の有無を照会するものではない、一般的な法令解釈に係るものであること(ノーアクションレター制度の利用が可能でないこと)

      • ロ.事実関係の認定を伴う照会でないこと

      • ハ.照会内容が、金融庁所管法令の直接の適用を受ける事業者(照会者が団体である場合はその団体の構成事業者)に共通する取引等に係る照会であって、多くの事業者からの照会が予想される事項であること

      • ニ.過去に公表された事務ガイドライン等を踏まえれば明らかになっているものでないこと

    • マル2照会書面(電子的方法を含む。)

      本手続きの利用を希望する照会者からは、以下の内容が記載された照会書面の提出を受けるものとする。また、照会書面のほかに、照会内容及び上記マル1に記載した事項を判断するために、記載事項や資料の追加を要する場合には、照会者に対して照会書面の補正及び追加資料の提出を求めることとする。

      • イ.照会の対象となる法令の条項及び具体的な論点

      • ロ.照会に関する照会者の見解及び根拠

      • ハ.照会及び回答内容が公表されることに関する同意

    • マル3照会窓口

      照会書面の受付窓口は、照会内容に係る法令を所管する金融庁担当課室又は照会者を所管する財務局担当課とする。財務局担当課が照会書面を受領した場合には、速やかに金融庁担当課室に電子メール等により照会書面を送付することとする。

    • マル4回答

      • イ.金融庁担当課室長は、照会者からの照会書面が照会窓口に到達してから原則として2か月以内に、照会者に対して回答を行うよう努めることとし、2か月以内に回答できない場合には、照会者に対してその理由を説明するとともに、回答時期の目途を伝えることとする。

      • ロ.回答書面には、以下の内容を付記することとする。

        「本回答は、照会対象法令を所管する立場から、照会書面に記載された情報のみを前提に、照会対象法令に関し、現時点における一般的な見解を示すものであり、個別具体的な事例への適用を判断するものではなく、また、もとより捜査機関の判断や司法判断を拘束しうるものではない。」

      • ハ.本手続きによる回答を行わない場合には、金融庁担当課室は、照会者に対し、その旨及び理由を説明することとする。

    • マル5公表

      上記マル4の回答を行った場合には、金融庁は、速やかに照会及び回答内容を金融庁ホームページ上に掲載して、公表することとする。

  • (4)(3)に該当するもの以外のもので照会頻度が高いものなどについては、必要に応じ「応接箋」(様式・参考資料編 様式 III -3-2(4))を作成した上で、関係部局に回覧し、金融庁担当課室又は財務局担当課の企画担当係に保存するものとする。

  • (5)照会者が照会事項に関し、金融庁からの書面による回答を希望する場合であって、III -3-3(2)に照らしノーアクションレター制度の利用が可能な場合には、照会者に対し、ノーアクションレター制度を利用するよう伝えることとする。

III -3-3 法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)

法令適用事前確認手続(以下「ノーアクションレター制度」という。)とは、民間企業等が実現しようとする自己の事業活動に係る具体的行為に関して、当該行為が特定の法令の規定の適用対象となるかどうかを、あらかじめ当該規定を所管する行政機関に確認し、その機関が回答を行うとともに、当該回答を公表する制度であり、金融庁では、法令適用事前確認手続きに関する細則を定めている。本項は、ノーアクションレター制度における事務手続きを規定するものであり、制度の利用に当たっては必ず様式・参考資料編 資料4「金融庁における法令適用事前確認手続に関する細則」を参照するものとする。

  • (1)照会窓口

    照会窓口は、金融庁監督局総務課とする。

    なお、照会窓口たる金融庁監督局総務課は、下記(2)マル3の記載要領に示す要件を満たした照会書面が到達した場合は速やかに受け付け、照会事案に係る法令を所管する担当課室に回付する。

    財務局所管の銀行は、財務局に照会する。財務局が照会を受けた場合には、金融庁監督局総務課に対し、照会書面を原則として速やかに電子メール等により送付する。

    • (注) 財務局においては、照会書面を金融庁監督局総務課に送付する際、原則として審査意見を付するものとする。
  • (2)照会書面受領後の流れ

    照会書面を回付された後は、担当課室において、回答を行う事案か否か、特に、以下のマル1からマル3について確認し、当制度の利用ができない照会の場合には、照会者に対しその旨を連絡する。また、照会書面の補正及び追加書面の提出等が必要な場合には、照会者に対し所要の対応を求めることができる。ただし、追加書面は必要最小限とし、照会者の過度な負担とならないよう努めることとする。

    • マル1照会の対象

      民間企業等が、新規の事業や取引を具体的に計画している場合において、当庁が本手続の対象としてホームページに掲げた所管の法律及びこれに基づく政府令(以下「対象法令(条項)」という。)に関し、以下のような照会を行うものか。

      • その事業や取引を行うことが、無許可営業等にならないかどうか。
      • その事業や取引を行うことが、無届け営業等にならないかどうか。
      • その事業や取引を行うことによって、業務停止や免許取消等(不利益処分)を受けることがないかどうか。
      • その事業や取引を行うことに関し、直接に義務を課され又は権利を制限されることがないかどうか。
    • マル2照会者の範囲

      照会者は、実現しようとする自己の事業活動に係る具体的行為に関して、対象法令(条項)の適用に係る照会を行う者及び当該者から依頼を受けた弁護士等であって、下記マル3の記載要領を満たした照会書面を提出し、かつ、照会内容及び回答内容が公表されることに同意しているか。

    • マル3照会書面の記載要領

      照会書面(電子的方法を含む。)は、下記の要件を満たしているものか。

      • イ.将来自らが行おうとする行為に係る個別具体的な事実が記載されていること

      • ロ.対象法令(条項)のうち、適用対象となるかどうかを確認したい法令の条項が特定されていること

      • ハ.照会及び回答内容が公表されることに同意していることが記載されていること

      • ニ.上記ロ.において特定した法令の条項の適用に関する照会者の見解及びその根拠が明確に記述されていること

    • マル4回答

      照会書面を回付された課室の長は、照会者からの照会書面が照会窓口に到達してから原則として30日以内に照会者に対する回答を行うものとする。ただし、次に掲げる場合には、各々の定める期間を回答期間とする。なお、いずれの場合においても、補正期間を含め、できるだけ早く回答するよう努めることとする。

      • イ.高度な金融技術等に係る照会で慎重な判断を要する場合 原則60日以内

      • ロ.担当部局の事務処理能力を超える多数の照会により業務に著しい支障が生じるおそれがある場合 30日を超える合理的な期間内

      • ハ.他府省との共管法令に係る照会の場合 原則60日以内

      照会書面の記載について補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した日数は、回答期間に算入しないものとする。また、30日以内に回答を行わない場合には、照会者に対して、その理由及び回答時期の見通しを通知することとする。

    • マル5照会及び回答についての公開

      金融庁は、照会及び回答の内容を、原則として回答を行ってから30日以内に全て金融庁ホームページに掲載して公開する。

      ただし、照会者が、照会書面に、回答から一定期間を超えて公開を希望する理由及び公開可能とする時期を付記している場合であって、その理由が合理的であると認められるときは、回答から一定期間を超えて公開することができる。この場合においては、必ずしも照会者の希望する時期まで公開を延期するものではなく、公開を延期する理由が消滅した場合には、公開する旨を照会者に通知した上で、公開することができる。また、照会及び回答内容のうち、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に定める不開示事由に該当し得る情報が含まれている場合、必要に応じ、これを除いて公表することができる。

III -3-4 グレーゾーン解消制度

産業競争力強化法(以下、「強化法」という。)第7条第1項は、新事業活動を実施しようとする者は、その実施しようとする新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する法律及び法律に基づく命令(告示を含む。以下、この項において「法令」という。)の規定の解釈並びに当該新事業活動及びこれに関連する事業活動に対する当該規定の適用の有無について、その確認を求めることができる制度(以下、「グレーゾーン解消制度」という。)を規定している。本項は、グレーゾーン解消制度における事務手続きを規定するものであり、制度の利用に当たっては、「「グレーゾーン解消制度」、「規制のサンドボックス制度」及び「新事業特例制度」の利用の手引き」(令和4年7月15日経済産業省)(以下、同省による改正後のものを含め、この項において「利用の手引き」という。)を参照するものとする。

  • (1)照会窓口

    照会窓口は、金融庁総合政策局総合政策課とする。

    なお、照会窓口たる金融庁総合政策局総合政策課は、下記(2)マル3の記載要領に示す要件を満たした照会書が到達した場合は速やかに受け付け、当該照会書の提出先が二以上の主務大臣であるときは、他の主務大臣に対し、その確認を求めるものとする。

    財務局所管の銀行は、財務局に照会する。財務局が照会を受けた場合には、金融庁総合政策局総合政策課に対し、照会書を速やかに送付する。

    (注) 財務局においては、照会書を金融庁総合政策局総合政策課に送付する際、当該照会書に記載された確認の求めのうち当庁が所管する法令に関するものに限り、原則として審査意見を付するものとする。

  • (2)照会書受領後の流れ

    照会書を受け付けた後は、総合政策局総合政策課において、当該照会書を当該照会書に記載された確認の求めに係る法令を所管する担当課室に速やかに回付するとともに、当該担当課室と協議しつつ、回答を行う事案か否か、特に、以下のマル1からマル3について確認し、当制度の利用ができない確認の求めの場合には、当該照会書を提出した者(以下、この項において「提出者」という。)に対しその旨を連絡する。また、照会書面の補正、追加書類の提出等が必要な場合には、提出者に対し所要の対応を求めることができる。ただし、追加書類は必要最小限とし、提出者の過度な負担とならないよう努めるものとする。

    • マル1確認の求めの主体

      以下のイ.及びロ.を満たすか。

      • イ. 提出者は、新事業活動を実施しようとする者であること。

        (注) 「新事業活動」とは、新商品の開発又は生産、新たな役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動のうち、当該新たな事業活動を通じて、生産性(資源生産性(エネルギーの使用又は鉱物資源の使用(エネルギーとしての使用を除く。)が新たな事業活動を実施しようとする者の経済活動に貢献する程度をいう。)を含む。)の向上又は新たな需要の開拓が見込まれるものであって、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがないものをいう(強化法第2条第4項、産業競争力強化法に基づく新技術等実証及び新事業活動に関する規制の特例措置の整備等及び規制改革の推進に関する命令(以下、「強化法命令」という。)第2条)。

      • ロ. 提出者が、当庁所管の事業に係る新事業活動を実施しようとしている者であること。または、提出者が、その新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する当庁が所管する法令の規定の解釈及び当該規定の適用の有無について、その確認を求めようとしている者であること。

    • マル2照会の対象

      提出者が、その実施しようとする新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する当庁が所管する法令の規定の解釈並びに当該規定の適用の有無について、その確認を求めるものであって、以下のような照会を行うものかどうか。

      • イ. その事業や取引を行うことが、無許可営業等にならないか。

      • ロ. その事業や取引を行うことが、無届け営業等にならないか。

      • ハ. その事業や取引を行うことによって、業務停止や免許取消等(不利益処分)を受けることがないか。

      • ニ. その事業や取引を行うことに関し、直接に義務を課され又は権利を制限されることがないか。

    • マル3照会書の記載要領

      強化法命令様式第九に従い、また利用の手引きを踏まえ、以下の事項が記載されているか。

      • イ. 新事業活動及びこれに関連する事業活動の目標

      • ロ. 新事業活動及びこれに関連する事業活動の内容

      • ハ. 新事業活動及びこれに関連する事業活動の実施時期

      • ニ. 解釈及び適用の有無の確認を求める法令の条項等

      • ホ. 具体的な確認事項

  • (3)回答

    照会書を回付された課室は、総合政策局総合政策課において回答を行う事案と判断した場合においては、提出者からの照会書が照会窓口に到達してから原則として1か月以内に提出者に対し強化法命令様式第十一による回答書を交付するものとする。

    また、照会書を回付された課室は、当該照会書に記載された確認の求めに係る法令の規定の解釈及び適用の有無についての検討の状況に照らし、上記期間内に回答書を交付することができないことについてやむを得ない理由がある場合には、当該回答書を交付するまでの間1か月を超えない期間ごとに、その旨及びその理由を提出者に通知するものとする。

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