II.為替取引分析業者の監督に係る事務処理上の留意点

II-1 監督事務に係る基本的な考え方

I-1(1)の目的を達成するためには、為替取引分析業者に対し、個々の為替取引分析業者の規模や特性等に応じた対応を継続的に行っていくことが必要である。

このため、為替取引分析業者の監督事務を行うに当たっては、まず、法令等遵守・リスク管理態勢の構築、変化するマネー・ローンダリング等に係るリスクへの対応、業務の適正性・確実性や情報の取扱いの適切さの確保等の課題に各為替取引分析業者がどのように取り組もうとしているのか、その方針を理解し、その上で、当該方針がどのようなガバナンス体制で実施され、いかなる潜在的なリスクや課題を内包し、各為替取引分析業者がこれらのリスク等をどのように認識し対応しようとしているのかを的確に把握することが不可欠である。

経営全体を見据えた重要課題に対応しつつ、取引フィルタリング、取引モニタリング等の実効性の継続的な向上を実現するには、各為替取引分析業者が、当局から指摘されることなく自らベストプラクティスに向けて改善するよう、為替取引分析業者自身で経営体制を変革していく必要がある。

金融庁としては、実態把握や対話等を通じた継続的なモニタリングの過程で、より良い実務を追求する各為替取引分析業者の取組を促していく。

その上で、上記の過程で、為替取引分析業の適正かつ確実な遂行等の観点から重大な問題が認められる場合や、為替取引分析業者の自主的な取組では業務改善が図られないことが認められる場合は、法第63条の36の規定に基づく業務改善命令等の処分を検討することとする。

さらに、為替取引分析業者の監督事務を行うに当たっては、以下の点にも十分に留意した上で実施することとする。

(1)為替取引分析業者との十分な意思疎通の確保

監督に当たっては、為替取引分析業者の経営に関する情報を的確に把握・分析し、適時適切に対応していくことが重要である。

このため、金融庁においては、為替取引分析業者からの報告に加え、為替取引分析業者との健全かつ建設的な緊張関係の下で、日頃から十分な意思疎通を図り、積極的に情報収集を行う必要がある。

具体的には、経営陣や社外取締役、内部監査の担当者を含む為替取引分析業者の様々な役職員との定期・適時の面談や意見交換等を通じて、為替取引分析業者との日常的なコミュニケーションを確保し、経営に関する様々な情報を把握するよう努める必要がある。

(2)為替取引分析業者の自主的な努力の尊重

金融庁は、民間事業者である為替取引分析業者の自己責任原則にのっとった経営判断を法令等に基づき検証し、問題の改善を促していく立場にある。

監督に当たっては、このような立場を十分に踏まえ、為替取引分析業者の業務運営に関する自主的な努力を尊重するよう配慮しなければならない。

(3)金融機関等のAML/CFTに係る義務等との整理

為替取引分析業者における不適切な業務運営の結果、委託元金融機関等において、犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯収法」という。)等が求めるAML/CFTに係る義務等の履行が不十分なものとなった場合には、その個別具体的な態様等も踏まえつつ、まずは、当該為替取引分析業者に対する監督権等の行使により対応することを検討する。

なお、金融機関等が為替取引分析業者に為替取引分析業務を委託している場合においても、犯収法等に基づくAML/CFTに係る義務は引き続き各金融機関等に課せられていること及び委託元金融機関等は、他の委託先と同様に、各業法等に基づき、委託先である為替取引分析業者の業務の適正性を管理・監督すべきことに変わりはないことに留意する。

(4)効率的・効果的な監督事務の確保

金融庁及び為替取引分析業者の限られた資源を有効に利用する観点から、監督事務は、為替取引分析業者の規模や特性等を十分に踏まえ、効率的・効果的に行われる必要がある。

したがって、為替取引分析業者に報告や資料提出等を求める場合には、監督事務上真に必要なものに限定するよう配意するとともに、現在行っている監督事務の必要性、方法等については常に点検を行い、必要に応じて改善を図るなど、効率性・有効性の向上を図るよう努めなければならない。

既に行われた報告や資料提出等については、為替取引分析業者の事務負担軽減等の観点を踏まえ、年1回定期的に点検を行う。その際は、為替取引分析業者の意見を十分にヒアリングすることに留意する。

また、為替取引分析業者の監督において、財務省が共管となる場合には、監督上の連携を密接に行う必要がある。

II-1-1 監督事務の進め方

為替取引分析業者の監督事務の基本は、実態把握や対話等を通じたモニタリング、監督上の措置、フィードバック、情報発信といった各手法を、各為替取引分析業者の状況や抱えている問題の性質・重大性等に応じて適切に組み合わせて用いることにより、各為替取引分析業者に必要な改善を促していくことにある。

これに加えて、金融のデジタル化の進展やマネー・ローンダリング等の手口の巧妙化等により絶え間なく変化するマネー・ローンダリング等に係るリスクの特性を踏まえ、為替取引分析業者との対話の中で、金融機関等におけるAML/CFTの実効性の向上に資する創意工夫の不断の追求を促していくことが求められる。

II-1-2 一般的な監督事務

(1)オフサイト・モニタリング

金融庁担当課室は、為替取引分析業者の業務の適正かつ確実な遂行の確保のため、以下に示すヒアリング等を通じ、オフサイト・モニタリングを実施し、為替取引分析業者の業務の実態把握に努めるものとする。

① 経営実態に関するヒアリング

業務報告書からの情報に加え、必要に応じ、詳細な報告を求めた上で、業務の状況等について、深度あるヒアリングを行う。

② 法令等遵守に関するヒアリング

金融庁担当課室は、検査の指摘事項に対する改善報告などの各種報告や、為替取引分析業者に対する苦情等の状況等から、為替取引分析業者に対して、法令等遵守状況に関する深度あるヒアリングを行うものとする。また、必要に応じ、経営管理態勢、内部管理態勢、内部監査態勢等に関するヒアリングを行うものとする。

③ トップヒアリング

必要に応じ、金融庁は、直接、為替取引分析業者の経営陣に対し、経営管理態勢、内部管理態勢、内部監査態勢等に関するトップヒアリングを実施するものとする。

④ 随時のヒアリング

為替取引分析業者の業況の変化や、為替取引分析業者に対する委託元金融機関等の姿勢の変化を始め、為替取引分析業者の業務の適正かつ確実な遂行に影響を及ぼしかねない事象が生ずるなど、監督上必要と認めるときは、随時ヒアリングを実施することとする。

⑤ オフサイト・モニタリングに当たっての留意点

オフサイト・モニタリングの実施が、為替取引分析業者が抱える経営実態や法令等遵守態勢、AML/CFT、情報管理に係る課題等の問題点を早期に把握すること及び当該問題点を踏まえた行政上の必要な対応(為替取引分析業者の自主的な改善を促すことを含む。)の検討につながるよう十分配意するものとする。また、問題点がどのような背景や土壌から発生し、どのようなリスクを有しているかなど、問題の本質を探究することにも留意するものとする。

なお、金融庁は、為替取引分析業者の規模・特性等を考慮し、その効率的・効果的な監督事務の実施に努めるものとする。

(2)法第63条の35の規定に基づく立入検査

為替取引分析業の適正かつ確実な遂行のために必要と認めるときは、法第63条の35の規定に基づく立入検査を行う。

その際、経営上重要な問題は何で、その根本的な原因は何かを常に念頭に置き、経営陣と議論を行うことで、安易な結論ではなく、為替取引分析業者の経営や金融行政上重要な課題について根幹に根差した議論を行うよう心掛ける。

なお、立入検査に係る基本的な手続は、別紙1「立入検査の基本的手続」を参照。

また、検査結果通知書を交付した場合は、その交付日から原則として1週間以内に為替取引分析業者に対し、指摘事項についての事実確認を行うとともに、発生原因分析、改善・対応策等について、法第63条の35第1項の規定に基づき、1か月以内に報告することを求める。

(3)対話

対話は、法令等遵守等に係る重大な問題発生の有無や蓋然性、為替取引分析業者の経営状況の改善に向けた自主的な取組状況、AML/CFTに係る課題認識等その時々における個別具体的状況、問題の性質、為替取引分析業者の規模や業務特性等に応じて実施される。

対話を実施する際は、当局側の思い込みや、仮説の押し付けを排し、可能な限り、為替取引分析業者が安心して自らの立場を主張できるよう努めつつ、まずは、為替取引分析業者側の考え方や方針を十分に把握し、その上で事実の提示を伴いつつ行うことを徹底する。

さらに、対話に当たっては、それまで、当局が各為替取引分析業者と行ってきたやりとり等を十分に踏まえ、対話の継続性に配慮した運営に努める必要がある。

当局による実態把握において、重大な問題発生の蓋然性が高まったことが認められた場合においても、まずは、為替取引分析業者自らが課題・根本原因・改善策の妥当性について検証を行った上で、当局と為替取引分析業者との間で改善策の策定・実行について深度ある対話を行うこととする。ただし、既に重大な問題が発生している等高度の緊急性が認められる場合においては、当局が考える要改善事項の明確な指摘を行った上で各為替取引分析業者の対応方針を確認する。

上記問題が発生する蓋然性が認められない為替取引分析業者については、自らの置かれた状況に応じ多様で主体的な創意工夫を発揮することで、取引フィルタリング、取引モニタリング等の実効性の継続的な向上等の努力を続けることが重要である。そこで、当局としては、日頃のモニタリングを通じた特性把握を基に、各為替取引分析業者の置かれた経営環境や経営課題あるいは、各為替取引分析業者の戦略、方針について深い理解を持った上で、特定の答えを前提とすることなく、為替取引分析業者自身が「気付き」を得ることを目的に、為替取引分析業者との間で、AML/CFTに係る当局の認識やリスク管理、人材育成等について深度ある対話を行っていく(この過程でベストプラクティス等の他の参考事例を必要に応じて共有する。)。

(4)無許可業者に係る対応

利用者その他の者からの苦情、捜査当局からの照会、為替取引分析業者等からの情報提供等により、無許可で為替取引分析業を行っている疑いのある者を把握した場合には、まずは当該者における業務実態の把握に努め、その業容に応じて適切に対処することとする。

II-1-3 共管省庁との連携

金融庁と共管省庁である財務省との間では、為替取引分析業者を監督する上で必要と考えられる情報について、適切に情報交換等を行い、リスクの存在や問題意識の共有を図る必要がある。

そのため、公表されていないリスクの存在や問題等を把握したときなどには適宜適切な情報提供や積極的な意見交換を行う等、連携の強化に努めることとする。

II-1-4 関係省庁との連携

為替取引分析業者に対して業務改善命令等の処分を行おうとする場合には、あらかじめ、当該為替取引分析業者に係る委託元金融機関等を所管する厚生労働大臣等と協議しなければならないとされている(法第63条の39)。

また、為替取引分析業者の行う為替取引分析業の適正かつ確実な遂行が確保されていないと疑うに足りる事情を把握した場合には、厚生労働大臣等は、内閣総理大臣及び財務大臣に対し、当該為替取引分析業者に対して適当な措置をとることが必要である旨の意見を述べることができることとされている(法第63条の40第1項)。

上記の点を踏まえ、為替取引分析業者に行政処分等を行おうとする場合には、必要に応じて、これら関係省庁と緊密に連携して対応する。

また、AML/CFT関係事務を所掌する関係省庁等との間においても、必要に応じて情報共有・意見交換を行うなど、密接な連携を図ることとする。

II-1-5 為替取引分析業者等が提出する書類における記載上の留意点

本監督指針の各様式における氏名の記載欄について、氏を改めた者においては、旧氏(住民基本台帳法施行令第30条の13に規定する旧氏をいう。以下同じ。)及び名を氏名に併せて括弧書で記載することができることに留意する。

なお、法第63条の24第1項の許可申請書又は法第63条の33第2項の規定による届出書に旧氏及び名を併せて記載して提出した者については、これらの書類に記載した当該旧氏及び名を変更する旨を届け出るまでの間、当該旧氏及び名を括弧書で併せて記載し、又は当該旧氏及び名のみを記載することができることに留意する。

II-1-6 書面・対面による手続についての留意点

為替取引分析業者等による当局への申請・届出等及び当局から為替取引分析業者等に対し発出する処分通知等については、それぞれ情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(以下「デジタル手続法」という。)第6条第1項及び第7条第1項の規定により、法令の規定において書面等により行うことその他のその方法が規定されている場合においても、当該法令の規定にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができることとされている。

こうしたデジタル手続法の趣旨を踏まえ、デジタル手続法の適用対象となる手続に係る本監督指針の規定についても、当該規定の書面・対面に係る記載にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができるものとする。

また、経済社会活動全般において、デジタライゼーションが飛躍的に進展している中、政府全体として、書面・押印・対面手続を前提とした我が国の制度・慣行を見直し、実際に足を運ばなくても手続ができるリモート社会の実現に向けた取組を進めている。

金融庁としても、こうした取組を着実に進めるため、所管事業者等から受け付ける申請・届出等について、全ての手続についてオンラインでの提出を可能とするための金融庁電子申請・届出システムを更改したほか、押印を廃止するための内閣府令及び監督指針等の改正を行うこと等により、行政手続の電子化を推進してきた。

さらに、民間事業者間における手続についても、「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」を開催し、業界全体での慣行見直しを促すことにより、書面の電子化や押印の不要化、対面規制の見直しに取り組んできた。

このような官民における取組も踏まえ、本監督指針の書面・対面に係る記載のうち、デジタル手続法の適用対象となる手続に係るもの以外についても、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により行うことができるものとする。

以上のような取扱いとする趣旨に鑑み、本監督指針の規定に基づく手続については、手続の相手方の意向を考慮した上で、可能な限り、書面・対面によらない方法により行うことを慫慂するものとする。

II-1-7 申請書等の提出方法に係る留意点

II-1-6を踏まえ、為替取引分析業者等による金融庁への申請・届出等については、原則として、金融庁電子申請・届出システムを利用する方法による提出を求めることとする。

II-2 相談・苦情等への対応

(1)為替取引分析業者及び為替取引分析業者の行う業務に関する相談・苦情等に対しては、金融サービス利用者相談室が第一義的な受付窓口となるが、申出人に対しては、当局は個別の事案に関してあっせん等を行う立場にないことを説明するものとする。

なお、寄せられた相談・苦情等のうち、申出人が為替取引分析業者側への情報提供について承諾している場合には、原則として、監督部局において、当該為替取引分析業者への情報提供を行うこととする。

(注)寄せられた相談・苦情等が申出人の利用する金融機関等に関するものでもある場合には、当該金融機関等への情報提供が必要となることも見込まれることから、原則として、当該金融機関等への情報提供についての承諾も併せて得るものとする。

(2)監督部局においては、金融サービス利用者相談室に寄せられた相談・苦情等の監督事務への適切な反映を図るため、次の対応をとるものとする。

① 金融サービス利用者相談室から回付される相談・苦情等の分析

② 金融サービス利用者相談室との情報交換

II-3 法令解釈等外部からの照会への対応

II-3-1 法令照会

(1)照会を受ける内容の範囲

照会を受ける内容の範囲は、法及びこれに関連する法令であって金融庁が所管する法令に関するものとする。

なお、照会が権限外の法令等に係るものであった場合には、コメント等は厳に慎むものとする。

(2)照会に対する回答方法

① 本監督指針、審議会等の答申・報告等の既存資料により回答可能なものについては、適宜回答するものとする。

② 金融庁担当課室長は、金融庁が所管する法令に関し、金融庁所管法令の直接の適用を受ける事業者又はこれらの事業者により構成される事業者団体から受けた、以下のア.及びイ.で定める要件を満たす一般的な照会であって、書面又は電磁的方法による回答及び公表を行うことが法令適用の予測可能性向上等の観点から適切と認められるものについては、これに対する回答を書面又は電磁的方法により行い、その内容を公表することとする。

(注)事業者団体とは、金融庁所管法令の直接の適用を受ける、業種等を同じくする事業者が、共通の利益を増進することを主たる目的として、相当数結合した団体又はその連合体(当該団体に連合会、中央会等の上部団体がある場合には、原則として、最も上部の団体に限る。)をいう。

ア.本手続の対象となる照会の範囲

本手続の対象となる照会は、次の要件の全てを満たすものとする。

a. 特定の事業者の個別の取引等に対する法令適用の有無を照会するものではない、一般的な法令解釈に係るものであること(法令適用事前確認手続の利用が可能でないこと。)。

b. 事実関係の認定を伴う照会でないこと。

c. 照会内容が、金融庁所管法令の直接の適用を受ける事業者(照会者が団体である場合はその団体の構成事業者)に共通する取引等に係る照会であって、多くの事業者からの照会が予想される事項であること。

d. 過去に公表された事務ガイドライン等を踏まえれば明らかになっているものでないこと。

イ.照会書

本手続の利用を希望する照会者からは、次の内容が記載された照会書(当該照会書に記載すべき事項を記録した電磁的記録を含む。以下II-3-3までにおいて同じ。)の提出を受けるものとする。

a.照会の対象となる法令の条項及び具体的な論点

b.照会に関する照会者の見解及び根拠

c.照会及び回答の内容が公表されることに関する同意

また、照会内容及びア.に記載した事項を判断するために、照会書の補正や資料の追加を要する場合には、照会者に対して照会書の補正又は追加資料の提出を求めることとする。

ウ.照会窓口

照会書の受付窓口は、照会内容に係る法令を所管する金融庁担当課室とする。

エ.回答

a.金融庁担当課室長は、照会者からの照会書が照会窓口に到達してから原則として2か月以内に照会者に対して回答を行うよう努めることとし、2か月以内に回答できない場合には、照会者に対してその理由を説明するとともに、回答時期の目途を伝えることとする。

b.回答書(当該回答書に記載すべき事項を記録した電磁的記録を含む。以下II-3-3までにおいて同じ。)には、次の内容を付記することとする。

「本回答は、照会対象法令を所管する立場から、照会書に記載された情報のみを前提に、照会対象法令に関し、現時点における一般的な見解を示すものであり、個別具体的な事例への適用を判断するものではなく、また、もとより捜査当局の判断や司法判断を拘束し得るものではない。」

c.本手続による回答を行わない場合には、金融庁担当課室は、照会者に対し、その旨及び理由を説明することとする。

オ.公表

エ.の回答を行った場合には、金融庁は、速やかに照会及び回答の内容を金融庁ウェブサイト上に掲載して、公表することとする。

③ 上記②に該当するもの以外のもので照会頻度が高いもの等については、必要に応じ応接箋を作成した上で、関係部局に回覧し、金融庁担当課室の企画又は法務担当係が保存するものとする。

④ 照会者が照会事項に関し、金融庁からの書面又は電磁的方法による回答を希望する場合であって、II-3-2(2)に照らし法令適用事前確認手続の利用が可能な場合には、照会者に対し、法令適用事前確認手続を利用するよう伝えることとする。

II-3-2 法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)

法令適用事前確認手続(以下「ノーアクションレター制度」という。)とは、民間企業等が実現しようとする自己の事業活動に係る具体的行為に関して、当該行為が特定の法令の規定の適用対象となるかどうかを、あらかじめ当該規定を所管する行政機関に確認し、その機関が回答を行うとともに、当該回答を公表する制度であり、金融庁では、「法令適用事前確認手続に関する細則」を定めている。

本項は、ノーアクションレター制度における事務手続を規定するものであり、制度の利用に当たっては、必ず「金融庁における法令適用事前確認手続に関する細則」を参照するものとする。

(1)照会窓口

照会窓口は、金融庁監督局総務課とする。

なお、照会窓口である金融庁監督局総務課は、(2)③の記載要領に示す要件を満たした照会書が到達した場合は速やかに受け付け、照会事案に係る法令を所管する担当課室に回付する。

(2)照会書受領後の流れ

照会書を回付された後は、担当課室において、回答を行う事案か否か、特に、以下の①ないし③について確認し、当制度の利用ができない照会の場合には、照会者に対しその旨を連絡する。

また、照会書の補正、追加資料の提出等が必要な場合には、照会者に対し所要の対応を求めることができる。ただし、追加資料は必要最小限とし、照会者の過度な負担とならないよう努めることとする。

① 照会の対象

民間企業等が、新規の事業や取引を具体的に計画している場合において、金融庁が本手続の対象としてウェブサイトに掲げた所管の法律及びこれに基づく政府令(以下「対象法令(条項)」という。)に関し、次のような照会を行うものか。

ア.その事業や取引を行うことが、無許可営業等にならないかどうか。

イ.その事業や取引を行うことが、無届け営業等にならないかどうか。

ウ.その事業や取引を行うことによって、業務停止や許可取消し等(不利益処分)を受けることがないかどうか。

エ.その事業や取引を行うことに関し、直接に義務を課され又は権利を制限されることがないかどうか。

② 照会者の範囲

照会者は、実現しようとする自己の事業活動に係る具体的行為に関して、対象法令(条項)の適用に係る照会を行う者又は当該者から依頼を受けた弁護士等であって、③の記載要領を満たした照会書を提出し、かつ、照会及び回答の内容が公表されることに同意しているか。

③ 照会書の記載要領

照会書は、次の要件を満たしているものか。

ア.将来自らが行おうとする行為に係る個別具体的な事実が記載されていること。

イ.対象法令(条項)のうち、適用対象となるかどうかを確認したい法令の条項が特定されていること。

ウ.照会及び回答の内容が公表されることに同意していることが記載されていること。

エ.イ.において特定した法令の条項の適用に関する照会者の見解及びその根拠が明確に記述されていること。

④ 回答

照会書を回付された課室の長は、照会者からの照会書が照会窓口に到達してから原則として30日以内に照会者に対する回答を行うものとする。

ただし、次に掲げる場合には、各々の定める期間を回答期間とする。

なお、いずれの場合においても、補正期間を含め、できるだけ早く回答するよう努めることとする。

ア.高度な金融技術等に係る照会で慎重な判断を要する場合 原則60日以内

イ.担当部局の事務処理能力を超える多数の照会により業務に著しい支障が生ずるおそれがある場合 30日を超える合理的な期間内

ウ.他府省との共管法令に係る照会の場合 原則60日以内

(注)照会書の記載について補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した日数は、回答期間に算入しないものとする。また、30日以内に回答を行わない場合には、照会者に対して、その理由及び回答時期の目途を通知することとする。

⑤ 照会及び回答についての公開

金融庁は、照会及び回答の内容を、原則として回答を行ってから30日以内に全て金融庁ウェブサイトに掲載して公開する。

ただし、照会者が、照会書に、回答から一定期間を超えて公開を希望する理由及び公開可能とする時期を付記している場合であって、その理由が合理的であると認められるときは、回答から一定期間を超えて公開することができる。

この場合においては、必ずしも照会者の希望する時期まで公開を延期するものではなく、公開を延期する理由が消滅した場合には、公開する旨を照会者に通知した上で、公開することができる。

また、照会及び回答の内容のうち、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条に規定する不開示情報が含まれている場合、これを除いて公表することができる。

II-3-3 グレーゾーン解消制度

産業競争力強化法(以下「強化法」という。)第7条第1項は、新事業活動を実施しようとする者は、その実施しようとする新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する法律及び法律に基づく命令(告示を含む。以下この項において「法令」という。)の規定の解釈並びに当該新事業活動及びこれに関連する事業活動に対する当該規定の適用の有無について、その確認を求めることができる制度(以下「グレーゾーン解消制度」という。)を規定している。本項は、グレーゾーン解消制度における事務手続を規定するものであり、制度の利用に当たっては、「「グレーゾーン解消制度」、「規制のサンドボックス制度」及び「新事業特例制度」の利用の手引き」(令和4年7月15日経済産業省)(以下同省による改正後のものを含め、この項において「利用の手引き」という。)を参照するものとする。

(1)照会窓口

照会窓口は、金融庁総合政策局総合政策課とする。

なお、照会窓口である金融庁総合政策局総合政策課は、(2)③の記載要領に示す要件を満たした照会書が到達した場合は速やかに受け付け、当該照会書の提出先が2以上の主務大臣であるときは、他の主務大臣に対し、その確認を求めるものとする。

(2)照会書受領後の流れ

照会書を受け付けた後は、金融庁総合政策局総合政策課において、当該照会書を当該照会書に記載された確認の求めに係る法令を所管する担当課室に速やかに回付するとともに、当該担当課室と協議しつつ、回答を行う事案か否か、特に、以下の①から③までについて確認し、当制度の利用ができない確認の求めの場合には、当該照会書を提出した者(以下この項において「提出者」という。)に対しその旨を連絡する。また、照会書の補正、追加資料の提出等が必要な場合には、提出者に対し所要の対応を求めることができる。ただし、追加資料は必要最小限とし、提出者の過度な負担とならないよう努めるものとする。

① 確認の求めの主体

次のア.及びイ.を満たすか。

ア.提出者が、新事業活動を実施しようとする者であること。

(注)「新事業活動」とは、新商品の開発又は生産、新たな役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動のうち、当該新たな事業活動を通じて、生産性(資源生産性(エネルギーの使用又は鉱物資源の使用(エネルギーとしての使用を除く。)が新たな事業活動を実施しようとする者の経済活動に貢献する程度をいう。)を含む。)の向上又は新たな需要の開拓が見込まれるものであって、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがないものをいう(強化法第2条第4項及び産業競争力強化法に基づく新技術等実証及び新事業活動に関する規制の特例措置の整備等及び規制改革の推進に関する命令(以下「強化法命令」という。)第2条)。

イ.提出者が、当庁所管の事業に係る新事業活動を実施しようとしている者であること又は、提出者が、その新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する当庁が所管する法令の規定の解釈及び当該規定の適用の有無について、その確認を求めようとしている者であること。

② 照会の対象

提出者が、その実施しようとする新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する当庁が所管する法令の規定の解釈及び当該規定の適用の有無について、その確認を求めるものであって、次のような照会を行うものか。

ア.その事業や取引を行うことが、無許可営業等にならないかどうか。

イ.その事業や取引を行うことが、無届け営業等にならないかどうか。

ウ.その事業や取引を行うことによって、業務停止や許可取消し等(不利益処分)を受けることがないかどうか。

エ.その事業や取引を行うことに関し、直接に義務を課され又は権利を制限されることがないかどうか。

③ 照会書の記載要領

強化法命令様式第9に従い、また利用の手引きを踏まえ、次の事項が記載されているか。

ア.新事業活動及びこれに関連する事業活動の目標

イ.新事業活動及びこれに関連する事業活動の内容

ウ.新事業活動及びこれに関連する事業活動の実施時期

エ.解釈及び適用の有無の確認を求める法令の条項等

オ.具体的な確認事項

(3)回答

照会書を回付された課室は、金融庁総合政策局総合政策課が回答を行う事案と判断した場合においては、提出者からの照会書が照会窓口に到達してから原則として1か月以内に提出者に対し強化法命令様式第11による回答書を交付するものとする。

また、照会書を回付された課室は、当該照会書に記載された確認の求めに係る法令の規定の解釈及び適用の有無についての検討の状況に照らし、上記期間内に回答書を交付することができないことについてやむを得ない理由がある場合には、当該回答書を交付するまでの間1か月を超えない期間ごとに、その旨及びその理由を提出者に通知するものとする。

II-4 行政指導等を行う際の留意点等

II-4-1 行政指導等を行う際の留意点

為替取引分析業者に対して、行政指導等(行政手続法第2条第6号に規定する行政指導又は当該行政指導との区別が必ずしも明確ではない情報提供、相談、助言等の行為をいう。)を行うに当たっては、行政手続法等の法令等に沿って適正に行うものとする。特に行政指導を行う際には、以下の点に留意する。

(1)一般原則(行政手続法第32条)

① 行政指導の内容が飽くまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されているか。例えば、次の点に留意する。

ア.行政指導の内容及び運用の実態、担当者の対応等について、相手方の理解を得ているか。

イ.相手方が行政指導に協力できないとの意思を明確に表明しているにもかかわらず、行政指導を継続していないか。

② 相手方が行政指導に従わなかったことを理由として不利益な取扱いをしてはいないか。

ア.行政指導に従わない事実を法律の根拠なく公表することも、公表することにより経済的な損失を与えるなど相手方に対する社会的制裁として機能するような状況の下では、「不利益な取扱い」に当たる場合があることに留意する。

イ.行政指導を行う段階においては処分権限を行使するか否かは明確でなくても、行政指導を行った後の状況によっては処分権限行使の要件に該当し、当該権限を行使することがあり得る場合に、そのことを示して行政指導をすること自体を否定するものではない。

(2)申請に関連する行政指導(行政手続法第33条)

申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしていないか。

① 申請者が、明示的に行政指導に従わない旨の意思表示をしていない場合であっても、行政指導の経緯や周囲の客観情勢の変化等を勘案し、行政指導の相手方に拒否の意思表示がないかどうかを判断する。

② 申請者が行政指導に対応している場合でも、申請に対する判断・応答が留保されることについても任意に同意しているとは必ずしもいえないことに留意する。

③ また、例えば、次の点に留意する。

ア.申請者が行政指導に従わざるを得ないようにさせ、申請者の権利の行使を妨げるようなことをしていないか。

イ.申請者が行政指導に従わない旨の意思表明を明確には行っていない場合、行政指導を行っていることを理由に申請に対する審査・応答を留保していないか。

ウ.申請者が行政指導に従わない意思を表明した場合には、行政指導を中止し、申請に対し、速やかに適切な対応をしているか。

(3)許認可等の権限に関連する行政指導(行政手続法第34条)

許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合であるにもかかわらず、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせていないか。

例えば、次の点に留意する。

① 許認可等の拒否処分をすることができないにもかかわらず、できる旨を示して一定の作為又は不作為を求めていないか。

② 行政指導に従わなければすぐにでも権限を行使することを示唆したり、何らかの不利益な取扱いを行うことを暗示したりするなど、相手方が行政指導に従わざるを得ないように仕向けてはいないか。

(4)行政指導の方式(行政手続法第35条)

① 行政指導を行う際には、相手方に対し、行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示しているか。

例えば、次の点に留意する。

ア.相手方に対して求める作為又は不作為の内容を明確にしているか。

イ.当該行政指導をどの担当者の責任において行うものであるかを示しているか。

ウ.個別の法律に根拠を有する行政指導を行う際には、その根拠条項を示しているか。

エ.個別の法律に根拠を有しない行政指導を行う際には、当該行政指導の必要性について理解を得るため、その趣旨を伝えているか。

② 行政指導(行政手続法第35条第4項各号に掲げるものを除く。)について、相手方から、行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を記載した書面の交付を求められたときは、行政上特別の支障がない限り、原則としてこれを交付しているか。なお、当該書面の交付に当たっては、次の点に留意する。

ア.書面の交付を求められた場合には、できるだけ速やかに交付することが必要である。

イ.書面交付を拒み得る「行政上特別の支障」がある場合とは、書面が作成者の意図と無関係に利用、解釈されること等により行政目的が達成できなくなる場合など、その行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を書面で示すことが行政運営上著しい支障を生じさせる場合をいう。

ウ.単に処理件数が大量であるだけの場合や単に迅速に行う必要がある場合であることをもって、「行政上特別の支障」がある場合に該当するとはいえないことに留意する。

II-4-2 面談等を行う際の留意点

職員が、為替取引分析業者の役職員等と面談等(面談、電話、電子メール等によるやりとりをいう。以下同じ。)を行うに際しては、次の事項に留意するものとする。

① 面談等に参加する職員は、常に綱紀及び品位を保持し、穏健冷静な態度で臨んでいるか。

② 面談等の目的、相手方の氏名・所属等を確認しているか。

③ 面談等の方法、面談等を行う場所、時間帯、参加している職員及び相手方が、面談等の目的・内容からみてふさわしいものとなっているか。

④ 面談等の内容・結果について双方の認識が一致するよう、必要に応じ確認しているか。特に、面談等の内容・結果が守秘義務の対象となる場合には、そのことが当事者双方にとって明確となっているか。

⑤ 面談等の内容が上司の判断を仰ぐ必要のあるものである場合において、状況に応じあらかじめ上司の判断を仰ぎ、又は事後に速やかに報告しているか。また、同様の事案について複数の相手方と個別に面談等を行う場合には、行政の対応の統一性・透明性に配慮しているか。

II-5 行政処分等を行う際の留意点等

II-5-1 行政処分(不利益処分)に関する基本的な事務の流れについて

II-5-1-1 行政処分

金融庁が行う主要な不利益処分(行政手続法第2条第4号に規定する不利益処分をいう。以下同じ。)としては、①法第63条の36の規定に基づく業務改善命令、②法第63条の37の規定に基づく許可の取消し等があるが、これらの発動に関する基本的な事務の流れを例示すれば、以下のとおりである。

(1)法第63条の35第1項の規定に基づく報告徴求

① オンサイトの立入検査や、オフサイト・モニタリングを通じて、為替取引分析業者の法令等遵守態勢、経営管理態勢、業務遂行態勢等に問題があると認められる場合においては、法第63条の35第1項の規定に基づき、当該事項についての事実認識、発生原因分析、改善・対応策その他必要と認められる事項について、報告を求めることとする。

② 報告を検証した結果、更に精査する必要があると認める場合においては、法第63条の35第1項の規定に基づき、追加報告を求めることとする。

(2)法第63条の35第1項の規定に基づき報告された改善・対応策のフォローアップ

① (1)の報告を検証した結果、業務の適正性・確実性の観点から重大な問題が発生しておらず、かつ、為替取引分析業者の自主的な改善への取組を求めることが可能な場合においては、任意のヒアリング等を通じて報告された改善・対応策のフォローアップを行うこととする。

② 必要があれば、法第63条の35第1項の規定に基づき、定期的なフォローアップ報告を求める。

(3)法第63条の36の規定に基づく業務改善命令

(1)の報告を検証した結果、例えば、業務の適正性・確実性の観点から重大な問題が認められる場合、為替取引分析業者の自主的な取組では業務改善が図られないと認められる場合などにおいては、法第63条の36の規定に基づき、業務改善計画の提出とその実行を命ずることを検討する。

(4)法第63条の37の規定に基づく許可の取消し等

(1)の報告を検証した結果、重大な法令等の違反や公益を害する行為が認められる等により、今後の業務の継続が不適当と認められる場合等には、法第63条の37の規定に基づく許可の取消し等を検討する。

なお、(3)又は(4)の行政処分を検討する際には、以下の①から③までに掲げる要素を勘案するとともに、それ以外に考慮すべき要素がないかどうかを吟味するものとする。

① 当該行為の重大性・悪質性

ア.公益侵害の程度

為替取引分析業者が、例えば、業務方法書等に定められた情報の管理方法の主要な部分の実施を怠ることにより、業務において取り扱う情報の漏えいを生じさせるなど、公益を侵害していないか。

イ.利用者等の被害の程度

広範囲にわたって多数の利用者その他の者が被害を受けたかどうか。個々の被害者が受けた被害がどの程度深刻か。

ウ.行為自体の悪質性

例えば、利用者その他の者から多数の苦情を受けているのにもかかわらず、対応を怠り続けるなど、為替取引分析業者の行為が悪質であったか。

エ.当該行為が行われた期間や反復性

当該行為が長期間にわたって行われたのか、短期間のものだったのか。反復・継続して行われたものか、1回限りのものか。また、過去に同様の違反行為が行われたことがあるか。

オ.故意性の有無

当該行為が違法・不適切であることを認識しつつ故意に行われたのか、過失によるものか。

カ.組織性の有無

当該行為が担当者(業務委託先(2以上の段階にわたる委託に係るものを含む。)及びその従業者を含む。)個人の判断で行われたものか、あるいは管理者も関わっていたのか。さらに経営陣の関与があったのか。

(注)当該担当者、管理者又は経営陣であった者の関与についても考慮する。

キ.隠蔽の有無

問題を認識した後に隠蔽行為はなかったか。隠蔽がある場合には、それが組織的なものであったか。

ク.反社会的勢力との関与の有無

反社会的勢力との関与はなかったか。関与がある場合には、どの程度か。

② 当該行為の背景となった経営管理態勢及び業務運営態勢の適切性

ア.代表取締役や業務執行取締役、取締役会の法令等遵守に関する認識や取組は十分か。

イ.内部監査部門の体制は十分か。また、適切に機能しているか。

ウ.法令等遵守担当部門やリスク管理部門の体制は十分か。また、適切に機能しているか。

エ.業務担当者の法令等遵守に関する認識は十分か。また、社内教育が十分になされているか。

③ 軽減事由

以上のほかに、行政による対応に先行して、為替取引分析業者自身が自主的に当該行為の背景となった問題点を改善するための所要の対応に取り組んでいる、といった軽減事由があるか。

(5)標準処理期間

(3)又は(4)の行政処分をしようとする場合には、為替取引分析業者(法第2条第18項第1号に掲げる行為を業として行う者を除く。)については、(1)の報告書を受理したときから、原則としておおむね1か月(法第63条の39の規定に基づく協議を要する場合はおおむね2か月)以内を目途に行うものとし、為替取引分析業者(同号に掲げる行為を業として行う者に限る。)については、(1)の報告書を受理したときから、原則としておおむね2か月以内を目途に行うものとする。

(注1)「報告書を受理したとき」の判断においては、次の点に留意する。

① 複数回にわたって法第63条の35第1項の規定に基づく報告を求める場合(直近の報告書を受理したときから起算した上記の期間内に報告を求める場合に限る。)には、最後の報告書を受理したときを指すものとする。

② 提出された報告書に関し、資料の訂正、追加提出等(軽微なものを除く。)を求める場合には、当該資料の訂正、追加提出等が行われたときを指すものとする。

(注2)弁明・聴聞等に要する期間は、標準処理期間には含まれない。

(注3)標準処理期間は、処分を検討する基礎となる情報ごとに適用する。

(注4)複数の当事者にわたる事案の場合には、当該当事者から必要な報告書を全て受理したときから、標準処理期間を起算する。

II-5-1-2 法第63条の36の規定に基づく業務改善命令の履行状況の報告義務の解除

法第63条の36の規定に基づく業務改善命令を発出する場合には、当該命令に基づく為替取引分析業者の業務改善に向けた取組をフォローアップし、その改善努力を促すため、原則として、当該為替取引分析業者の提出する業務改善計画の履行状況の報告を求めることとなるが、以下の点に留意するものとする。

(1)法第63条の36の規定に基づく業務改善命令を発出している為替取引分析業者に対して、当該為替取引分析業者の提出した業務改善計画の履行状況について、期限を定めて報告を求めている場合には、期限の到来により、当該為替取引分析業者の報告義務は解除される。

(2)法第63条の36の規定に基づく業務改善命令を発出している為替取引分析業者に対して、当該為替取引分析業者の提出した業務改善計画の履行状況について、期限を定めることなく継続的に報告を求めている場合には、業務改善命令を発出する要因となった問題に関して、業務改善計画に沿って十分な改善措置が講じられたと認められるときには、当該計画の履行状況の報告義務を解除するものとする。

その際、当該報告等により把握した改善への取組状況に基づき、解除の是非を判断するものとする。

II-5-2 行政手続法等との関係

(1)行政手続法との関係

不利益処分をしようとする場合において、行政手続法第13条第1項第1号イからニまでのいずれかに該当するときは聴聞を行い、同項第2号に該当するときは弁明の機会を付与しなければならないことに留意する。

いずれの場合においても、不利益処分をする場合には同法第14条の規定に基づき、処分の理由を示さなければならないこと(不利益処分を書面でするときは、処分の理由も書面により示さなければならないこと)に留意する。

また、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合には同法第8条の規定に基づき、処分の理由を示さなければならないこと(許認可等を拒否する処分を書面でするときは、処分の理由も書面により示さなければならないこと)に留意する。

その際、単に根拠規定を示すだけではなく、いかなる事実関係に基づき、いかなる法令・基準を適用して処分がなされたかを明らかにすること等が求められることに留意する。

(2)行政不服審査法との関係

不服申立てをすることができる処分をする場合には、行政不服審査法第82条の規定に基づき、不服申立てをすることができる旨等を書面で教示しなければならないことに留意する。

(3)行政事件訴訟法との関係

取消訴訟を提起することができる処分をする場合には、行政事件訴訟法第46条の規定に基づき、取消訴訟の提起に関する事項を書面で教示しなければならないことに留意する。

II-5-3 意見交換制度

(1)意義

不利益処分が行われる場合、行政手続法に基づく聴聞又は弁明の機会の付与の手続とは別に、為替取引分析業者からの求めに応じ、金融庁と為替取引分析業者との間で、複数のレベルにおける意見交換を行うことで、行おうとする処分の原因となる事実やその重大性等についての認識の共有を図ることが有益である。

(2)監督手法・対応

法第63条の35第1項の規定に基づく報告徴求に係るヒアリング等の過程において、自らに対して不利益処分が行われる可能性が高いと認識した為替取引分析業者から、金融庁の幹部(注1)と当該為替取引分析業者の幹部との間の意見交換の機会の設定を求められた場合(注2)であって、金融庁が当該為替取引分析業者に対して聴聞又は弁明の機会の付与を伴う不利益処分を行おうとするときは、緊急に処分する必要がある場合を除き、聴聞の通知又は弁明の機会の付与の通知を行う前に、行おうとする不利益処分の原因となる事実やその重大性等についての意見交換の機会を設けることとする。

(注1)金融庁の幹部の例:担当課室長

(注2)為替取引分析業者からの意見交換の機会の設定の求めは、当該不利益処分の原因となる事実についての法第63条の35第1項の規定に基づく報告書等を受理したときから、聴聞の通知又は弁明の機会の付与の通知を行うまでの間になされるものに限る。

II-5-4 関係省庁等への連絡

報告徴求命令、業務改善命令又は業務停止命令の発出、許可の取消し等の不利益処分をしようとする場合には、必要に応じて、関係省庁等への連絡を行うものとする。

II-5-5 不利益処分の公表に関する考え方

業務改善命令等の不利益処分については、他の為替取引分析業者における予測可能性を高め、同様の事案の発生を抑制する観点から、財務の健全性に関する不利益処分等、公表により当該不利益処分の対象となる為替取引分析業者の経営改善に支障が生ずるおそれのあるものを除き、処分の原因となった事実、処分の内容等を公表することとする。

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