II  業務の適切性

II -1 法令等遵守

信用保証協会の業務の公共性を十分に認識し、法令や業務上の諸規則等を厳格に遵守し、健全かつ適切な業務運営に努めることが顧客からの信頼を確立するためにも重要であることから、当面、特に留意すべき点は以下のとおりである。

II -1-1 不祥事件等に対する監督上の対応

役職員の不祥事件等に対する監督上の対応については、以下のとおり、厳正に取り扱うこととする。

  • (1)不祥事件等の発覚の第一報

    信用保証協会において不祥事件等が発覚し、第一報があった場合は、以下の点を確認するものとする。

    • マル1本部等の事務部門、内部監査部門への迅速な報告及びコンプライアンス規定等に則った理事会等への報告。

    • マル2刑事法令に抵触しているおそれのある事実については、警察等関係機関等への通報。

    • マル3事件とは独立した部署(内部監査部門等)での事件の調査・解明の実施。

  • (2)不祥事件等届出書の受理

    法第35条に基づく報告命令により、信用保証協会が不祥事件の発生を知った日から30日以内に不祥事件等届出書が提出されることとなるが、当該届出書の受理時においては、法令の規定に基づき報告が適切に行われているかを確認する。

  • (3)主な着眼点

    不祥事件と業務の適切性の関係については、以下の着眼点に基づき検証する。

    • マル1当該事件への役員の関与はないか、組織的な関与はないか。

    • マル2当該事件の内容が信用保証協会の経営等に与える影響はどうか。

    • マル3内部けん制機能が適切に発揮されているか。

    • マル4改善策の策定や自浄機能は十分か。

    • マル5当該事件の発覚後の対応は適切か。

  • (4)監督上の措置

    不祥事件等届出書の提出があった場合には、事実関係、発生原因分析、改善・対応策等についてヒアリングを実施し、必要に応じ、法第35条に基づき報告を求め、さらに、重大な問題があるときは、法第36条に基づく監督命令等を発出することとする。

II -1-2 役員による法令等違反行為への対応

II -1-2-1 意義

  • (1)信用保証協会が業務を遂行するに際しての役員による組織的な法令違反行為については、当該個人の責任の問題に加え、法人としての信用保証協会の責任も問われる重大な問題であり、信用失墜・風評等により信用保証協会の経営に重大な影響を及ぼすことに留意すべきである。

  • (2)さらに、公共性を有し、地域経済において重要な機能を有する信用保証協会において、中小企業者等との信頼関係を阻害するような問題が発生した場合には、地域の中小企業金融の円滑化に大きな影響を及ぼすおそれがあることを銘記する必要がある。

II -1-2-2 監督手法・対応

  • (1)検査結果、不祥事件等届出書等により、役員による組織的な法令違反の疑いがあると認められた場合には、厳正な内部調査を行うよう要請し、法第35条に基づき報告を求める。

    特に、重大な法令違反の疑いがある場合には、事案に応じ、弁護士、外部専門家等の完全に独立した第三者(注)による客観的かつ厳正な調査を行うよう要請し、法第35条に基づき報告を求める。

    • (注)例えば顧問弁護士は、完全な第三者には当たらないことに留意する。

  • (2)当該調査結果及び信用保証協会の対応等を踏まえ、法第36条に基づく行政処分など、法令に則して、厳正な行政上の対応を検討する。

II -1-3 反社会的勢力による被害の防止

II -1-3-1 意義

反社会的勢力を社会から排除していくことは、社会の秩序や安全を確保する上で極めて重要な課題であり、反社会的勢力との関係を遮断するための取組みを推進していくことは、企業等にとって社会的責任を果たす観点から必要かつ重要なことである。特に、公共性を有し、経済的に重要な機能を営む信用保証協会においては、信用保証協会自身や役職員のみならず、顧客等の様々なステークホルダーが被害を受けることを防止するため、反社会的勢力を金融取引から排除していくことが求められる。

もとより信用保証協会として公共の信頼を維持し、業務の適切性及び健全性を確保するためには、反社会的勢力に対して屈することなく法令等に則して対応することが不可欠であり、信用保証協会においても、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)の趣旨を踏まえ、平素より、反社会的勢力との関係遮断に向けた態勢整備に取り組む必要がある。

特に、近時反社会的勢力の資金獲得活動が巧妙化しており、関係企業を使い通常の経済取引を装って巧みに取引関係を構築し、後々トラブルとなる事例も見られる。こうしたケースにおいては経営陣の断固たる対応、具体的な対応が必要である。

なお、役職員の安全が脅かされる等不測の事態が危惧されることを口実に問題解決に向けた具体的な取組みを遅らせることは、かえって信用保証協会や役職員自身等への最終的な被害を大きくし得ることに留意する必要がある。

  • (参考)「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)

    • マル1反社会的勢力による被害を防止するための基本原則

      • 組織としての対応

      • 外部専門機関との連携

      • 取引を含めた一切の関係遮断

      • 有事における民事と刑事の法的対応

      • 裏取引や資金提供の禁止

    • マル2反社会的勢力のとらえ方

      暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標榜ゴロ、政治活動標榜ゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である(平成23年12月22日付警察庁次長通達「組織犯罪対策要綱」参照)。

II -1-3-2 主な着眼点

反社会的勢力とは一切の関係をもたず、反社会的勢力であることを知らずに関係を有してしまった場合には、相手方が反社会的勢力であると判明した時点で可能な限り速やかに関係を解消するための態勢整備及び反社会的勢力による不当要求に適切に対応するための態勢整備の検証については、個々の取引状況等を考慮しつつ、例えば以下のような点に留意することとする。

  • (1)組織としての対応

    反社会的勢力との関係の遮断に組織的に対応する必要性・重要性を踏まえ、担当者や担当部署だけに任せることなく役員が適切に関与し、組織として対応することとしているか。また、信用保証協会単体のみならず、関連会社とも一体となって、反社会的勢力の排除に取り組むこととしているか。

  • (2)反社会的勢力対応部署による一元的な管理態勢の構築

    反社会的勢力との関係を遮断するための対応を総括する部署(以下「反社会的勢力対応部署」という。)を整備し、反社会的勢力による被害を防止するための一元的な管理態勢が構築され、機能しているか。

    特に、一元的な管理態勢の構築に当たっては、以下の点に十分留意しているか。

    • マル1反社会的勢力対応部署において反社会的勢力に関する情報を積極的に収集・分析するとともに、当該情報を一元的に管理したデータベースを構築し、適切に更新(情報の追加、削除、変更等)する体制となっているか。また、当該情報の収集・分析等に際しては、関連会社とも情報の共有に努め、保証業務支援機関等から提供された情報を積極的に活用しているか。さらに、当該情報を保証審査に、適切に活用する体制となっているか。

    • マル2反社会的勢力対応部署において対応マニュアルの整備や継続的な研修活動、警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関との平素からの緊密な連携体制の構築を行うなど、反社会的勢力との関係を遮断するための取組みの実効性を確保する体制となっているか。特に、平素より警察とのパイプを強化し、組織的な連絡体制と問題発生時の協力体制を構築することにより、脅迫・暴力行為の危険性が高く緊急を要する場合には直ちに警察に通報する体制となっているか。

    • マル3反社会的勢力との取引が判明した場合及び反社会的勢力による不当要求がなされた場合等において、当該情報を反社会的勢力対応部署へ迅速かつ適切に報告・相談する体制となっているか。また、反社会的勢力対応部署は、当該情報を迅速かつ適切に役員に対し報告する体制となっているか。さらに、反社会的勢力対応部署において実際に反社会的勢力に対応する担当者の安全を確保し担当部署を支援する体制となっているか。

  • (3)適切な事前審査の実施

    反社会的勢力との取引を未然に防止するため、保証審査においては、反社会的勢力に関する情報等を活用し、保証委託者等への適切な事前審査を実施し、併せて、契約書へ暴力団排除条項を導入するなど、反社会的勢力が取引先となることを防止しているか。

  • (4)適切な事後検証の実施

    反社会的勢力との関係遮断を徹底する観点から、既存の保証債務及び求償権や契約の適切な事後検証を行うための態勢が整備されているか。

  • (5)反社会的勢力との取引解消に向けた取組み

    • マル1反社会的勢力との取引が判明した旨の情報が反社会的勢力対応部署を経由して迅速かつ適切に役員に報告され、役員の適切な指示・関与のもと対応を行うこととしているか。

    • マル2平素から警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関と緊密に連携しつつ、反社会的勢力との取引の解消を推進しているか。

    • マル3事後検証の実施等により、取引開始後に保証委託者等が反社会的勢力であると判明し、信用保証協会が求償権を取得した場合には、可能な限り回収を図るなど、反社会的勢力への利益供与にならないよう配意しているか。

    • マル4いかなる理由であれ、反社会的勢力であることが判明した場合には、資金提供や不適切・異例な取引を行わない態勢を整備しているか。

  • (6)反社会的勢力による不当要求への対処

    • マル1反社会的勢力により不当要求がなされた旨の情報が反社会的勢力対応部署を経由して迅速かつ適切に役員に報告され、役員の適切な指示・関与のもと対応を行うこととしているか。

    • マル2反社会的勢力からの不当要求があった場合には積極的に警察・暴力追放運動推進センター・弁護士等の外部専門機関に相談するとともに、暴力追放運動推進センター等が示している不当要求対応要領等を踏まえた対応を行うこととしているか。特に、脅迫・暴力行為の危険性が高く緊急を要する場合には直ちに警察に通報を行うこととしているか。

    • マル3反社会的勢力からの不当要求に対しては、あらゆる民事上の法的対抗手段を講ずるとともに、積極的に被害届を提出するなど、刑事事件化も躊躇しない対応を行うこととしているか。

    • マル4反社会的勢力からの不当要求が、事業活動上の不祥事や役職員の不祥事を理由とする場合には、反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案を担当する部署が速やかに事実関係を調査することとしているか。

II -1-3-3 監督手法・対応

検査結果、不祥事件等届出書等により、反社会的勢力との関係を遮断するための態勢に問題があると認められる場合には、必要に応じて法第35条に基づき報告を求め、当該報告を検証した結果、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題があると認められる場合等には、法第36条に基づく監督命令等の発出を検討するものとする。その際、反社会的勢力への債務保証や反社会的勢力との不適切な取引関係を認識しているにもかかわらず関係解消に向けた適切な対応が図られないなど、内部管理態勢が極めて脆弱であり、その内部管理態勢の改善等に専念させる必要があると認められるときは、法第36条に基づく業務改善に要する一定期間に限った業務の一部停止命令の発出を検討するものとする。

また、反社会的勢力であることを認識しながら組織的に債務保証や不適切な取引関係を反復・継続するなど、重大性・悪質性が認められる法令違反又は公益を害する行為などに対しては、法第36条に基づく厳正な処分について検討するものとする。

 

II -2 金融機関及び各支援機関等との連携等

II -2-1 意義

中小企業の経営の改善発達を促進するための中小企業信用保険法等の一部を改正する法律(平成30年4月施行)により、中小企業者による経営の改善発達を促進するため、信用保証協会が、その業務を行うに際し、金融機関と連携(法第20条の2)を図るとともに、中小企業者に対する経営の改善発達に係る助言その他の支援(法第20条第2項第1号)を行うことが規定された。
 加えて、様々な課題を抱える中小企業者の課題解決に向けて、事業者のフェーズに応じたきめ細やかな支援が必要であり、財務改善等の経営改善支援のみならず、創業支援、事業承継支援等も含めた広義の経営支援(以下、「経営支援」という。)、事業再生支援などが求められているところ。
 信用保証協会は、こうした趣旨を踏まえ、金融機関に加え、商工会・商工会議所やよろず支援拠点、事業承継・引継ぎ支援センター、中小企業活性化協議会などの支援機関(以下、「各支援機関等」という。)と密に連携し、金融機関に適切な期中管理や経営支援・事業再生支援等を実施するよう、促していくことに加え、自らも主体的に取り組んでいくことが重要である。

II -2-2 主な着眼点

上記意義を踏まえ、各信用保証協会が金融機関や各支援機関等との連携を図るとともに、自らも中小企業者の経営支援・事業再生支援等を行うための態勢の整備状況について、以下の着眼点に基づき検証していく。

  • (1) 保証審査時及び支援体制の構築における対応

    信用保証協会は、中小企業者からの相談に応えるとともに、保証審査時においては、事業継続のために迅速な資金調達を必要とする中小企業者の目線に立って対応することを第一とし、利用資格等の基礎的事項はもとより、業歴、業況、成長性、財務バランス、返済可能性、信用保証の必要理由や資金使途(運転資金、設備資金等)等を適切に勘案し、審査を行っているか。その際、定量的な基準だけではなく、例えば、財務状況は悪化していても本業に再生等の可能性がある場合には、当該中小企業者に対する地域金融機関の支援姿勢等といった非財務情報を含めて総合的な判断を行っているか。
     信用保証協会は、金融機関における、個々の中小企業者に対するア)既往の信用保証の付かない融資(以下「プロパー融資」という。)等の与信取引の状況やその推移、イ)業況や事業性の把握状況、ウ)今後のプロパー融資の実施方針を含めた支援の方向性、に着眼して柔軟に保証付き融資とプロパー融資のリスク分担(以下「リスク分担」という。)を行っているか。その際、経営改善・事業再生の局面等においては、金融機関の支援姿勢が当該局面を円滑に進展させることにつながることから、信用保証協会は、上記ア)イ)ウ)に特に留意しているか。
     一方で、中小企業者が創業期であることや事業規模が小さいこと等の理由により著しく信用力に乏しい場合、危機等の突発的事態の発生により中小企業者が信用保証協会による保証がなければ必要十分な資金調達を行えないと考える場合においては、信用保証協会は画一的にプロパー融資を求めるのではなく、個々の中小企業者の実態に応じて柔軟に対応しているか。
     なお、仮に金融機関が中小企業者に対して十分な融資を行えない場合には、信用保証協会が中小企業者に対して他の金融機関を紹介する取組みを行っているか(なお、その取組みの実施にあたっては、中小企業者から中小企業支援機関に資金繰りの相談がなされた場合に速やかに信用保証協会に連絡がなされるよう、日頃から、信用保証協会が中小企業支援機関との連絡体制等を充実させていくことが重要である)。

  • (2) 保証承諾後の対応

    • マル1期中管理

    •  信用保証協会は、債務の保証を実施した中小企業者に対する期中管理や経営支援・事業再生支援等が行われるよう、金融機関及び各支援機関等との対話に努めているか。

    • マル2経営支援・事業再生支援等の取組み

    •  信用保証協会は、金融機関と連携して、有事(収益力の低下、過剰債務等による財務内容の悪化、資金繰りの悪化等が生じたため、経営に支障が生じ、又は生じるおそれがある状況)に移行してしまった場合に提供可能なソリューションについても積極的に情報提供を行う等、中小企業者の状況の変化の兆候を把握し、中小企業者に早め早めの対応を促すことが重要であり、中小企業者を取り巻く状況が変化した場合などには、資金繰り支援にとどまらない、中小企業者の実情に応じた経営支援・事業再生支援等に取り組む必要がある。
       上記を踏まえ、信用保証協会は、経営支援・事業再生等に従事する職員の人材育成を通じた支援能力の底上げが必要であり、各支援機関等への出向・派遣等の経験を積ませるなど、持続的な支援体制を構築する取組を行っているか。
       経営支援を行うに当たっては、関係金融機関等と目線合わせを行うなどの連携及び協議の上、例えば、信用保証付き融資の割合が高い中小企業者など、重点的に支援を行う中小企業者を特定した上で、信用保証協会が主体的に経営支援の必要性を検討し、支援を行っているか。
       中小企業者が事業再生等の支援を必要とする状況にある場合や、支援にあたり債権者間の調整を必要とする場合には、当該支援の実効性を高める観点から、弁護士や公認会計士等の外部専門家や中小企業活性化協議会等の外部機関(以下、「外部専門家・外部機関等」という。)の第三者的な視点や専門的な知見・機能を積極的に活用することが重要である。
       上記を踏まえ、信用保証協会は、外部専門家・外部機関等と連携して、中小企業の事業再生等に関するガイドライン等の活用を促すなど、中小企業者の事業再生等の支援について積極的な対応をしているか。特に、事業再生支援等が必要と思われる事業者のうち、信用保証付き融資の割合が高い中小企業者(求償債権事業者含む)については、関係金融機関等と目線合わせを行うなど連携の上、信用保証協会が主体的に事業再生支援等の必要性を検討し、必要に応じて、直接又は間接的に、中小企業活性化協議会への相談持込みが実施されているか。
       事業再生の道筋が立たず代位弁済に陥ってしまった中小企業者についても、事業を継続しながら信用保証協会に対する求償債務の弁済を誠実に行っている場合には、事業の収益性や将来性等を勘案した上で、例えば、金融取引を正常化させ事業再生を後押しすることを目的とした求償権消滅保証等の活用を促しているか。
       一方で、事業が継続されていなくとも、保証人がその資力に応じた弁済を誠実に行ってきたなど考慮すべき事情がある場合には、保証履行時の履行請求は、個々の債務者やその保証人の実情に応じた柔軟な対応に努めているか。
       また、過去に破産や廃業等を経験している経営者であっても、過去の事実だけを以て保証審査判断するのではなく、過去の失敗を活かした事業計画等を踏まえ、例えば再挑戦支援保証を活用するなど、中小企業者に応じた公正な保証審査を行うことに努めているか。

  • (3) 改善活動

    信用保証協会は、上記(1)及び(2)にかかわらず、保証審査から代位弁済実行までの間、金融機関及び各支援機関等の対応を含めて改善の余地があると考えられる場合には、金融機関及び各支援機関等との対話を通じ、自らも主体的にその対応の改善に努めているか。
     また、信用保証協会が行う経営支援について、経済情勢等の変化に応じた効果的な経営支援を行っていくために、毎年度、経営支援の「アウトカム指標」を設定し、信用保証協会がそれぞれの経営支援の取組について効果を検証し、検証結果を踏まえた工夫や改善の検討に努めているか。
     なお、「アウトカム指標」の設定例としては、営業利益率、自己資本比率、EBITDA有利子負債倍率などを指標として設定することが考えられる。

  • (4) 情報開示等

    信用保証協会は、信用保証利用の状況、代位弁済の状況、プロパー融資の状況や経営支援・事業再生支援の状況等について情報開示を行っているか。また、信用保証協会は、上記(2)マル2の取組を促すため、以下のマル1からマル4について公表を行っているか。

    • マル1各支援機関等への出向等の派遣状況

    • マル2中小企業活性化協議会への相談持込み件数

    • マル3再挑戦支援保証の利用実績

    • マル4信用保証協会が設定する「アウトカム指標」及び目標・達成状況

    II -2-3 監督手法・対応

    上記の監督上の着眼点に基づき、開示される情報や各種ヒアリングを活用し各信用保証協会における取組み状況を把握しつつ、信用保証協会との対話を通じて、中小企業者の経営の改善発達を促す機能が十分に発揮されるよう、対応を促すこととする。

II -3 「経営者保証に依存しない融資慣行」としての浸透・定着等

II -3-1 意義

中小企業の経営者による個人保証(以下「経営者保証」という。)には、中小企業の経営への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や創業を志す者の起業への取組み、保証後において経営が窮境に陥った場合における早期の事業再生、経営者等の変更を伴うM&A・事業承継等を阻害する要因となっているなど、企業の活力を阻害する面もあるとの指摘があるなど、経営者保証の契約時及び履行時等において様々な課題が存在する。
 こうした状況に鑑み、中小企業の経営者保証に関する中小企業、経営者及び金融機関による対応についての自主的自律的な準則として「経営者保証に関するガイドライン」(平成25 年12 月5 日「経営者保証に関するガイドライン研究会」により公表。以下「ガイドライン」という。)が定められた。
 このガイドラインは、経営者保証における合理的な保証契約の在り方等を示すとともに主たる債務の整理局面における保証債務の整理を公正かつ迅速に行うための準則であり、中小企業団体及び金融機関団体の関係者が中立公平な学識経験者、専門家等と共に協議を重ねて策定したものであって、主債務者、保証人及び対象債権者によって、自発的に尊重され、遵守されることが期待されている。
 信用保証協会においては、経営者保証に関し、ガイドラインの趣旨や内容を十分に踏まえた適切な対応を行うことにより、信用保証制度が原則として経営者保証が必要であるかの誤解を生じないよう、説明方法を工夫の上、信用保証制度における経営者保証を不要とする取扱いについて中小企業者・金融機関の双方に対して一層の周知を行うことが重要である。
 また、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を加速するために、信用保証協会による債務の保証について、信用保証料率の引上げ等を条件として、経営者保証を提供しないことを中小企業者が選択できる「事業者選択型経営者保証非提供制度」が創設(令和6年3月15日施行)されており、信用保証協会は、当該制度の制定の趣旨を鑑み、金融機関を介するなどして中小企業者に対し、当該制度の内容を十分に踏まえた適正な説明や提案を行っていくことが重要である。

II -3-2 主な着眼点

  • (1)保証審査時及び支援体制の構築における対応

    • マル1信用保証制度が原則として経営者保証が必要であるかの誤解を生じないよう、説明方法を工夫の上、信用保証制度における経営者保証を不要とする取扱いについて、中小企業者及び金融機関の双方に対して周知を行っているか。

    • マル2「事業者選択型経営者保証非提供制度」について、金融機関を介するなどして、該当中小企業者に対し十分に、当該制度の趣旨や内容を踏まえた適切な説明を行っているか。また、経営者保証を提供する申込においては、保証申込書面などによって、中小企業者が説明を受けたことを確認しているか。

    • マル3金融機関や主債務者、保証人からの経営者保証に関する相談に対して、適切に対応できる態勢が整備されているか。

    • マル4 金融機関が保証人を不要と判断した一方、信用保証協会が保証人を必要と判断し保証契約を締結する場合においては、どの部分が十分ではないために保証契約が必要なのか、どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるかといった客観的合理的理由について、金融機関を介して中小企業者の知識、経験等に応じ、その理解と納得を得ることを目的とした説明を行うとともに、金融機関が説明したものの中小企業者の理解と納得を得られないなどの場合には、必要に応じて信用保証協会から中小企業者へ直接説明する態勢が整備されているか。また、その結果等を書面又は電子的方法で記録する態勢が整備されているか。

    • マル5 経営者保証の契約を締結している中小企業者について、M&A・事業承継など、主たる株主等が変更になることを信用保証協会が把握した場合は、金融機関を介するなどして、「事業者選択型経営者保証非提供制度」の活用を促すなど、経営者保証の契約の変更・解除の検討や、経営者保証ガイドラインの趣旨・内容を十分に踏まえた適切な説明を行っているか。​

      • (2) 保証審査後の対応

        保証債務の整理に当たっては、ガイドラインの趣旨を尊重し、関係する他の金融機関、外部専門家・外部機関等と十分連携・協力するよう努めているか。

      • (3) 情報開示等

        信用保証協会は、経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた取組を促すために、以下のマル1マル2について公表を行っているか。

        • マル1経営者保証に関するガイドラインの活用実績(事業者選択型経営者保証非提供制度の利用実績も含む。)

        • マル2スタートアップ創出促進保証の利用実績

II -3-3 監督手法・対応

これらの取組みに当たって、適切な説明責任を果たすことも必要である(II-3-2(1)参照)。こうした取組態勢・取組み状況を踏まえ、監督上の対応を検討することとし、内部管理態勢の実効性等に疑義が生じた場合には、必要に応じて法第35条に基づき報告を求め、当該報告を検証した結果、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題があると認められる場合等には、法第36条に基づく監督命令等の発出を検討するものとする。

II -4 経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立

II -4-1 意義

一般に、多くの中小企業(個人事業主を含む。)においては、家計と経営が未分離であることや、財務諸表の信頼性が必ずしも十分でないなどの指摘があることから、こうした中小企業に対する融資においては、企業の信用補完や経営に対する規律付けの観点から、経営者に対する個人保証を求める場合がある。他方、経営者以外の第三者の個人保証については、副次的な信用補完や経営者のモラル確保のための機能がある一方、直接的な経営責任がない第三者に債務者と同等の保証債務を負わせることが適当なのかという指摘がある。
 また、保証履行時における保証人に対する対応如何によっては、経営者としての再起を図るチャンスを失わせたり、社会生活を営む基盤すら失わせるという問題を生じさせているのではないかとの指摘があることに鑑み、信用保証協会には、保証履行時において、保証人の資産・収入を踏まえたきめ細かな対応が求められる。

II -4-2 主な着眼点

個人連帯保証(以下「個人保証」という。)契約については、経営者以外の第三者の個人保証を求めないことを原則とする態勢を整備しているか。
 また、下記のような特別な事情により例外的に経営者以外の第三者との間で個人保証契約を締結する際には、民法に定められた意思確認手続を経たうえで契約を締結することに加え、経営者以外の第三者が、経営に実質的に関与していないにもかかわらず、個人保証契約を締結する場合には、当該契約は契約者本人による自発的な意思に基づく申し出によるものであって、信用保証協会等から要求されたものではないことが確保されているか。

  • マル1実質的な経営権を有している者、営業許可名義人又は経営者本人の配偶者(当該経営者本人と共に当該事業に従事する配偶者に限る。)が連帯保証人となる場合

  • マル2経営者本人の健康上の理由のため、事業承継予定者が連帯保証人となる場合

  • マル3財務内容その他の経営の状況を総合的に判断して、通常考えられる保証のリスク許容額を超える保証依頼がある場合であって、当該事業の協力者や支援者から積極的に連帯保証の申し出があった場合(ただし、協力者等が自発的に連帯保証の申し出を行ったことが客観的に認められる場合に限る。)

II -4-3 監督手法・対応

信用保証協会による上記取組みについては、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立し、また、保証履行時における保証人の資産・収入を踏まえた対応を促進する」という政策趣旨に鑑み、適切に取り組む必要がある。また、これらの取組みに当たって、適切な説明責任を果たすことも必要である(II-4-2参照)。こうした取組態勢・取組み状況を踏まえ、監督上の対応を検討することとし、内部管理態勢の実効性等に疑義が生じた場合には、必要に応じて法第35条に基づき報告を求め、当該報告を検証した結果、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題があると認められる場合等には、法第36条に基づく監督命令等の発出を検討するものとする。

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