VI 行政処分を行う際の留意点
VI -1 行政処分(不利益処分)に関する基本的な事務の流れについて
VI -1-1 行政処分
監督部局が行う主要な不利益処分(行政手続法第2条第4号にいう不利益処分をいう。以下同じ。)としては、法第36条に基づく監督命令(業務の停止、設立認可の取消し等)等があるが、これらの発動に関する基本的な事務の流れを例示すれば、以下のとおりである。
(1)法第35条に基づく報告命令
オンサイトの立入検査や、オフサイト・モニタリング(ヒアリング、不祥事件等届出書など)を通じて、信用保証協会の法令等遵守態勢、経営管理態勢、リスク管理態勢等に問題があると認められる場合においては、法第35条に基づき、当該事項についての事実認識、発生原因分析、改善・対応策その他必要と認められる事項について、報告を求めることとする。
報告を検証した結果、さらに精査する必要があると認められる場合においては、法第35条に基づき、追加報告を求めることとする。
(2)法第35条に基づき報告された改善・対応策のフォローアップ
上記報告を検証した結果、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題が発生しておらず、かつ、信用保証協会の自主的な改善への取組みを求めることが可能な場合においては、任意のヒアリング等を通じて上記(1)において報告された改善・対応策のフォローアップを行うこととする。
必要があれば、法第35条に基づき、定期的なフォローアップ報告を求める。
(3)法第36条第1項に基づく業務停止命令
上記(1)の報告(追加報告を含む。)を検証した結果、業務の改善に一定期間を要し、その間、当該業務改善に専念させる必要があると認められる場合においては、法第36条第1項に基づき、改善期間を勘案した一定の期限を付して当該業務の停止を命じることを検討する。
(4)法第36条第2項に基づく業務停止命令
法第36条第1項に基づく命令を受けたにもかかわらず、当該命令に従わなかった場合で、重犯性や故意性・悪質性が認められる等の重大な法令等の違反又は公益を害する行為などに対しては、法第36条第2項に基づき、当該業務の停止を命じることを検討する。
(5)法第36条第2項に基づく設立認可の取消し
法第36条第1項に基づく命令を受けたにもかかわらず、当該命令に従わなかった場合で、重大な法令等の違反又は公益を害する行為が多数認められる等により、今後の業務の継続が不適当と認められる場合においては、法第36条第2項に基づく設立認可の取消しを検討する。
(6)標準処理期間
上記(3)から(5)の不利益処分をしようとする場合には、上記(1)の報告書又は不祥事件等届出書(法第35条に基づく報告徴求を行った場合は、当該報告書)を受理したときから、原則として2か月以内(関係地方公共団体及び地方支分部局を経由して金融庁及び経済産業省に報告された報告書等を踏まえ、金融庁及び経済産業省が処分を行うこととなることから)を目処に行うものとする。
(注1)「報告書を受理したとき」の判断においては、以下の点に留意する。
複数回にわたって法第35条に基づき報告を求める場合(直近の報告書を受理したときから上記の期間内に報告を求める場合に限る。)には、最後の報告書を受理したときを指すものとする。
提出された報告書に関し、資料の訂正、追加提出等(軽微なものは除く。)を求める場合には、当該資料の訂正、追加提出等が行われたときを指すものとする。
(注2)弁明・聴聞等に要する期間は、標準処理期間には含まれない。
(注3)標準処理期間は、処分を検討する基礎となる情報毎に適用する。
VI -2 行政手続法との関係等
(1)行政手続法との関係
行政手続法第13条第1項第1号に該当する不利益処分をしようとする場合には聴聞を行い、同項第2号に該当する不利益処分をしようとする場合には弁明の機会を付与しなければならないことに留意する。
いずれの場合においても、不利益処分をする場合には同法第14条に基づき、処分の理由を示さなければならないこと(不利益処分を書面でするときは、処分の理由も書面により示さなければならないこと)に留意する。
また、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合には同法第8条に基づき、処分の理由を示さなければならないこと(許認可等を拒否する処分を書面でするときは、処分の理由も書面により示さなければならないこと)に留意する。
その際、単に根拠規定を示すだけではなく、いかなる事実関係に基づき、いかなる法令・基準を適用して処分がなされたかを明らかにすること等が求められることに留意する。
(2)行政不服審査法との関係
不服申立てをすることができる処分をする場合には、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第82条に基づき、不服申立てをすることができる旨等を書面で教示しなければならないことに留意する。
(3)行政事件訴訟法との関係
取消訴訟を提起することができる処分をする場合には、行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)第46条に基づき、取消訴訟の提起に関する事項を書面で教示しなければならないことに留意する。
VI -3 意見交換制度
(1)意義
不利益処分が行われる場合、行政手続法に基づく聴聞又は弁明の機会の付与の手続とは別に、信用保証協会からの求めに応じ、監督当局と信用保証協会との間で、複数のレベルにおける意見交換を行うことで、行おうとする処分の原因となる事実及びその重大性等についての認識の共有を図ることが有益である。
(2)監督手法・対応
法第35条に基づく報告徴求に係るヒアリング等の過程において、自協会に対して不利益処分が行われる可能性が高いと認識した信用保証協会から、監督当局の幹部(注1)と当該信用保証協会の幹部との間の意見交換の機会の設定を求められた場合(注2)であって、監督当局が当該信用保証協会に対して聴聞又は弁明の機会の付与を伴う不利益処分を行おうとするときは、緊急に処分をする必要がある場合を除き、聴聞の通知又は弁明の機会の付与の通知を行う前に、行おうとする不利益処分の原因となる事実及びその重大性等についての意見交換の機会を設けることとする。
(注1)監督当局の幹部:金融庁監督局・中小企業庁の担当課室長以上
(注2)信用保証協会からの意見交換の機会の設定の求めは、監督当局が、当該不利益処分の原因となる事実についての法第35条に基づく報告書等を受理したときから、聴聞の通知又は弁明の機会の付与の通知を行うまでの間になされるものに限る。
VI -4 関係地方公共団体の長が不利益処分等を行う場合の金融庁監督局(財務局含む。)及び中小企業庁(経済産業局含む。)との連携
上記 VI -1-1(1)から(2)の不利益処分等をしようとする場合には、関係地方公共団体担当課は金融庁監督局(財務局含む)及び中小企業庁(経済産業局含む)担当課室との十分な連携によりこれらの事務を行うものとする。