II. 金融サービス仲介業者の検査・監督に係る事務処理上の留意点

II-1 検査・監督事務に係る基本的考え方

 前述(I-1(1))のとおり、金融サービス仲介業者の監督の目的を達成するためには、金融サービス仲介業者の監督を行う担当課室及び財務局(以下「監督部局」という。)においても、金融サービス仲介業者に対し、個々の金融サービス仲介業者の規模や特性に応じた対応を継続的に行っていくことが必要である。

 このため、金融サービス仲介業者の監督事務を行うに当たっては、まずは、各金融サービス仲介業者がどの様にしてビジネスモデルの構築や、金融サービス仲介業の健全かつ適切な運営の確保、顧客保護、コンプライアンス・リスク管理態勢の構築等の課題に取り組もうとしているかの方針を理解し、その上で、当該方針がどの様なガバナンス体制で実施され、如何なる潜在的なリスクや課題を内包し、各金融サービス仲介業者がこれらのリスク等をどの様に認識し対応しようとしているか、的確に把握することが不可欠である。

 経営全体を見据えた重要課題に対応し、国民経済の健全な発展及び顧客保護につなげていくには、各金融サービス仲介業者が、当局から指摘されることなく自らベストプラクティスに向けて改善するよう、金融サービス仲介業者自身で経営体制を変革していく必要がある。金融庁としては、実態把握や対話等を通じた継続的なモニタリングの過程で、より良い実務を追求する各金融サービス仲介業者の取組みを促していく。

 その上で、上記の過程で、金融サービス仲介業の健全かつ適切な運営の確保又は顧客保護上の観点から重大な問題が認められる場合や金融サービス仲介業者の自主的な取組みでは業務改善が図られないことが認められる場合は、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律(以下「金融サービス提供法」という。)第37条等に基づく業務改善命令等の行政処分の発動等を検討することとする。

 さらに、金融サービス仲介業者の監督事務を行うに当たっては、以下の点にも十分に留意した上で実施することとする。

  • (1) 金融サービス仲介業者との十分な意思疎通の確保

    監督に当たっては、金融サービス仲介業者の経営に関する情報を的確に把握・分析し、適時適切に対応していくことが重要である。このため、監督部局においては、金融サービス仲介業者からの報告に加え、金融サービス仲介業者との健全かつ建設的な緊張関係の下で、必要に応じ、日頃から十分な意思疎通を図り、積極的に情報収集する必要がある。具体的には、経営陣や社外取締役、内部監査の担当者を含む金融サービス仲介業者の様々な役職員との定期・適時の面談や意見交換等を通じて、金融サービス仲介業者との日常的なコミュニケーションを確保し、財務情報のみならず、経営に関する様々な情報についても把握するよう努める必要がある。

  • (2) 金融サービス仲介業者の自主的な努力の尊重

    監督部局は、私企業である金融サービス仲介業者の自己責任原則に則った経営判断を、法令等に基づき検証し、問題の改善を促していく立場にある。監督に当たっては、このような立場を十分に踏まえ、金融サービス仲介業者の業務運営に関する自主的な努力を尊重するよう配慮しなければならない。

  • (3) 効率的・効果的な監督事務の確保

    監督部局及び金融サービス仲介業者の限られた資源を有効に利用する観点から、監督事務は、金融サービス仲介業者の規模や特性を十分に踏まえ、効率的・効果的に行われる必要がある。したがって、金融サービス仲介業者に報告や資料提出等を求める場合には、監督事務上真に必要なものに限定するよう配意するとともに、現在行っている監督事務の必要性、方法等については常に点検を行い、必要に応じて改善を図るなど、効率性・有効性の向上を図るよう努めなければならない。

    報告や資料提出等については、金融サービス仲介業者の事務負担軽減等の観点を踏まえ、年1回定期的に点検を行う。その際は、金融サービス仲介業者の意見を十分にヒアリングすることに留意する。

    また、金融サービス仲介業者の監督において、金融サービス提供法上に規定されている自主規制機関である認定金融サービス仲介業協会は、金融サービス仲介業者に対して自らを律していくことにより顧客からの信頼を確保させる自主規制機能を担っており、監督上の連携を密接に行う必要がある。

    (注)金融サービス仲介業者の小規模な営業所等に関して、金融サービス仲介業者に報告や資料提出等を求める場合には、取り扱うサービスや商品などに関する当該営業所等の特性を十分に踏まえ、業務の円滑な遂行に支障が生じないよう配意する。

  • (4) 多様性を踏まえた監督事務の遂行

    金融サービス仲介業者は、預金等媒介業務を行う者、保険媒介業務を行う者、有価証券等仲介業務を行う者、貸金業貸付媒介業務を行う者といった様々な種類の業者が含まれており、その規模や特性、金融サービス提供法等の法令等遵守態勢の状況等は様々である。そのため、金融サービス仲介業者について、本監督指針に記載している監督事務を行うに際しては、かかる金融サービス仲介業者の多様性を踏まえつつ、個々の金融サービス仲介業者の規模や特性等に即した手法を選択していく必要がある点に特に留意するものとする。

  • (5) 検査部局との連携

    検査部局との間では、モニタリングを通じて把握された情報をタイムリーに交換すること等によって情報を共有し、相互の問題意識を共有するなど、連携を図ることに留意する。

II-1-1 検査・監督事務の進め方

 金融サービス仲介業者の監督事務の基本は、実態把握や対話等を通じたモニタリング、監督上の措置、フィードバック、情報発信といった各手法を、各金融サービス仲介業者の状況や抱えている問題の性質・重大性等に応じ適切に組み合わせることを通じて、各金融サービス仲介業者に必要な改善を促していくことにある。

 これに加えて、日常的なモニタリングを通じて、金融サービス仲介業者を巡るグローバルな経済・市場環境の変化を的確に把握するとともに、金融サービス仲介業者の規模や特性を十分に踏まえたモニタリングを行い、その結果を踏まえ、金融サービス仲介業者との対話の中で、リスク管理等に関するベストプラクティスの追求や、変化に柔軟に対応できる経営・ガバナンス態勢の整備等の課題の解決に向けた取組みを促していくことが求められる。

II-1-2 一般的な監督事務

  • (1) オフサイト・モニタリング

    監督部局は、顧客の利益の保護や金融サービス仲介業者の業務の健全かつ適切な運営の確保のため、以下に示すヒアリング等を通じ、オフサイト・モニタリングを実施し、金融サービス仲介業者の業務の実態把握に努めるものとする。

    • マル1 経営実態に関するヒアリング
       事業報告書からの情報に加え、必要に応じ、詳細な報告を求めた上で、金融サービス仲介業の状況等について、深度あるヒアリングを行う。

    • マル2 法令等遵守等に関するヒアリング
       監督部局は、検査の指摘事項に対する改善報告などの各種報告や金融サービス仲介業者に対する苦情等の状況等から、金融サービス仲介業者に対して、法令等遵守状況に関する深度あるヒアリングを行うものとする。また、必要に応じ、経営管理態勢、内部管理態勢、内部監査態勢のヒアリングを行うものとする。

    • マル3 トップヒアリング
       必要に応じ、監督部局関係幹部が直接、経営陣に対し、経営管理態勢、内部管理態勢、内部監査態勢等に関するトップヒアリングを実施するものとする。

    • マル4 随時のヒアリング
       金融サービス仲介業者の業況の変化や金融サービス仲介業者に対する顧客の姿勢の変化をはじめ、金融サービス仲介業者の業務の健全かつ適切な運営に影響を及ぼしかねない事象が生じるなど、監督上の必要が認められる場合には、随時ヒアリングを実施することとする。

    • マル5 オフサイト・モニタリングに当たっての留意点
       オフサイト・モニタリングの実施により、金融サービス仲介業者が抱える経営実態や法令等遵守態勢等の問題点を早期に把握し、当該問題点を踏まえ、金融サービス仲介業者の自主的な改善を促すことも含め行政上必要な対応の検討につながるよう十分配意するものとする。また、問題点がどのような背景や土壌から発生し、どのようなリスクを有しているかなど、問題の本質を探究することにも留意するものとする。
       なお、監督部局は、金融サービス仲介業者の規模・特性、健全なイノベーションを促進する観点等も踏まえ、その効率的・効果的な実施に努めるものとする。

  • (2) 金融サービス提供法第36条に基づく立入検査

    顧客保護のため詳細な検証が必要と判断された場合等、必要が認められる場合には法に基づく立入検査を行う。その際、経営上重要な問題は何で、その根本的な原因は何かを常に念頭に置き、経営陣と議論を行うことで、安易な結論ではなく金融サービス仲介業者の経営や金融行政上重要な課題について根幹に根差した議論を行うよう心掛ける。
     なお、立入検査に係る基本的な手続は、別紙1「立入検査の基本的手続」を参照。また、検査結果通知書を交付し、又は提供した場合は、その交付日から原則として1週間以内に金融サービス仲介業者に対し、指摘事項についての事実確認を行うとともに、発生原因分析、改善・対応策等について、金融サービス提供法第35条に基づき、1か月以内に報告することを求める。

  • (3) 対話

    対話は、コンプライアンス等に係る重大な問題発生の有無や蓋然性、金融サービス仲介業者の経営状況の改善に向けた自主的な取組み状況等その時々における個別具体的状況、問題の性質、金融サービス仲介業者の規模や業務特性に応じて実施される。
     対話を実施する際は、当局側の思い込み、仮説の押し付けを排し、可能な限り、金融サービス仲介業者が安心して自らの立場の主張をできるよう努めつつ、まずは、金融サービス仲介業者側の考え方や方針を十分に把握し、その上で事実の提示を伴いつつ行うことを徹底する。
     さらに、対話に当たっては、それまで、当局が各業者と行ってきたやりとり等を十分に踏まえ、対話の継続性に配慮した運営に努める必要がある。

    • イ.当局による実態把握において、コンプライアンス等に係る重大な問題発生の蓋然性が高まったことが認められた場合においても、まずは、金融サービス仲介業者自らが課題・根本原因・改善策の妥当性について検証を行った上で、当局と金融サービス仲介業者との間で改善策の策定・実行について深度ある対話を行うこととする。ただし、既に上記問題が発生している等高度の緊急性が認められる場合においては、当局が考える要改善事項の明確な指摘を行った上で各金融サービス仲介業者の対応方針を確認する。

    • ロ.上記問題が発生する蓋然性が認められない金融サービス仲介業者については、自らの置かれた状況に応じ多様で主体的な創意工夫を発揮することで、ビジネスモデルやリスク管理の高度化の努力を続けることが重要である。そこで、当局としては、日頃のモニタリングを通じた特性把握を基に、各金融サービス仲介業者の置かれた経営環境や経営課題あるいは、各金融サービス仲介業者の戦略、方針について深い理解を持った上で、特定の答を前提とすることなく、金融サービス仲介業者自身に「気付き」を得てもらうことを目的に、金融サービス仲介業者との間で、ビジネスモデルやリスク管理、人材育成等について深度ある対話を行っていく(この過程でベストプラクティス等の他の参考事例を必要に応じて共有する)。

  • (4) 無登録業者に係る対応

    顧客からの苦情、捜査当局からの照会、金融サービス仲介業者・認定金融サービス仲介業協会等からの情報提供又は新聞広告等から、無登録で有価証券等仲介業務又は貸金業貸付媒介業務を行っている者を把握した場合の対応については、II-1-3(1)を参照する。

II-1-3 監督部局間の連携

  • (1) 金融庁と財務局における連携

    金融庁と財務局との間では、金融サービス仲介業者を監督する上で必要と考えられる情報について、適切に情報交換等を行い、リスクの存在や問題意識の共有を図る必要がある。そのため、II-1-5に掲げる内部委任事務に係る協議等以外の情報等についても、適宜適切な情報提供や積極的な意見交換を行う等、連携の強化に努めることとする。また、財務局間においても、他の財務局が監督する金融サービス仲介業者について、公表されていないリスクの存在や問題等を把握したときは、適宜監督する財務局や金融庁への情報提供を行い、連携の強化に努めることとする。
     顧客からの苦情、捜査当局からの照会、金融サービス仲介業者・認定金融サービス仲介業協会等からの情報提供又は新聞広告等から、無登録で有価証券等仲介業務又は貸金業貸付媒介業務を行っている者を把握した場合は、速やかに、金融商品取引業者若しくは登録金融機関又は貸金業者を監督する財務局や金融庁への情報提供を行い、連携の強化に努めることとする。

  • (2) 管轄財務局長との連絡調整

    • マル1金融庁長官又は財務局長(福岡財務支局長及び沖縄総合事務局長を含む。以下同じ。)は、他の財務局長が管轄する区域における金融サービス仲介業者の営業所の設置、所在地の変更、名称の変更、業務の廃止に係る届出書を受理した場合は、その資料を当該営業所の所在地を管轄する財務局長に送付するものとする。

    • マル2金融庁長官又は財務局長は、所管する金融サービス仲介業者の他の財務局長が管轄する区域に所在する営業所に対して、金融サービス提供法第37条又は第38条第1項の規定に基づく処分をした場合は、速やかに当該営業所の所在地を管轄する財務局長にその処分内容を連絡するものとする。

II-1-4 自主規制機関との連携

 金融サービス仲介業者の監督に当たっては、法令上の規制と併せて自主規制機関の定める規則を重視する必要があることに留意する。また、自主規制機関との間では、金融サービス仲介業の健全かつ適切な運営の確保又は顧客保護を図る目的の範囲において、金融サービス仲介業者を監督する上で必要と考えられる情報についての情報交換を適切に行うとともに、積極的な意見交換等を通じたリスクの存在や問題意識の共有を図るよう努めることとする。

II-1-5 内部委託

  • (1) 金融庁長官への協議

    財務局長は、金融サービス仲介業者の監督事務に係る財務局長への委任事項等の処理にあたり、次に掲げる事項については、あらかじめ金融庁長官に協議するものとする。
     なお、協議の際は、財務局における検討の内容及び処理意見を付するものとする。

    • マル1金融サービス提供法第15条の規定による登録の拒否

    • マル2金融サービス提供法第37条、第38条第1項の規定による業務改善・停止命令、登録取消の行政処分

    • マル3金融サービス提供法第38条第2項の規定による電子決済等代行業の廃止処分

    • マル4金融サービス提供法第38条第3項の規定による役員の解任処分

  • (2)委任事項等の処理に係る報告等

    財務局長は、金融サービス仲介業者の監督事務に係る財務局長への委任事項等の処理にあたり、次に掲げる事項については、当該事務処理後総合政策局長に報告等を行うものとする。

    • マル1財務局長は、本庁監理金融サービス仲介業者につき金融サービス提供法第14条第1項又は第16条第1項の規定による登録を行った場合は、速やかに登録申請書(書面で受理した場合は正本)及び添付書類を総合政策局リスク分析総括課金融サービス仲介業室へ送付すること。

    • マル2財務局長は、財務局管内の金融サービス仲介業者から下記の届出書等を受理した場合は、その内容を翌月20日までに総合政策局リスク分析総括課金融サービス仲介業室に報告すること。

      • イ.金融サービス提供法第16条第3項各号、金融サービス仲介業者等に関する内閣府令(以下「仲介業者等府令」という。)第19条に規定する届出書

      • ロ.仲介業者等府令第26条第3項に規定する保証金等内訳書

      • ハ.金融サービス提供法第34条第1項に規定する事業報告書

    • マル3財務局長は、金融サービス仲介業者の監督に関し、下記に掲げる場合は、その内容を遅滞なく総合政策局長に報告すること。

      • イ.金融サービス提供法第35条第1項及び第2項の規定により報告及び資料の提出を求めた場合

      • ロ.金融サービス提供法第36条第1項及び第2項による立入検査の結果を受領した場合

      • ハ.金融サービス提供法第37条による業務改善命令等を行った場合

      • ニ.金融サービス提供法第38条第1項から第3項までの規定による監督上の処分を行った場合

    • マル4財務局長は、事故確認に関する事務(金融サービス提供法第31条及び同法第77条で準用する金融商品取引法(以下「準用金融商品取引法」という。)第39条第3項ただし書)について、半期ごとに取りまとめ、各半期末の翌月15日までに総合政策局リスク分析総括課金融サービス仲介業室へ報告すること。

    • マル5財務局長は、財務局監理金融サービス仲介業者の前事業年度(前年4月1日から当年3月末日まで)における登録免許税(登録免許税法第2条に規定する登録免許税)の納付状況を調査し、毎年4月末日までに総合政策局リスク分析総括課金融サービス仲介業室へ報告すること。

  • (3)管轄財務局長の権限の一部の管轄財務事務所長への内部委任

    金融サービス仲介業者の主たる営業所の所在地が財務事務所、小樽出張所又は北見出張所の管轄区域内に所在する場合においては、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律施行令(以下「金融サービス提供法施行令」という。)第47条の規定により管轄財務局長(福岡財務支局長及び沖縄総合事務局長を含む。以下同じ。)に委任した権限は、当該管轄財務局長の判断により当該財務事務所長又は出張所長に行わせることができるものとする。
     なお、これらの事項に関する登録申請書及び届出書等は、管轄財務局長宛提出させるものとする。

II-1-6 金融サービス仲介業者が提出する書類等における記載上の留意点

本監督指針の各様式における役員等の氏名の記載欄について、氏を改めた者においては、旧氏(住民基本台帳法施行令(昭和42年政令第292号)第30条の13に規定する旧氏をいう。以下同じ。)及び名を括弧書で併せて記載することができることに留意する。
 なお、金融サービス提供法第13条第1項の登録申請書又は金融サービス提供法第16条第3項第1号の規定若しくは仲介業者等府令第19条第1項の規定による届出書に旧氏及び名を併せて記載して提出した者については、これらの書類に記載した当該旧氏及び名を変更する旨を届け出るまでの間、当該旧氏及び名のみを記載することができることに留意する。

II-1-7 書面・対面による手続きについての留意点

金融サービス仲介業者等による当局への申請・届出等及び当局から金融サービス仲介業者等に対し発出する処分通知等については、それぞれ情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(以下「デジタル手続法」という。)第6条第1項及び第7条第1項の規定により、法令の規定において書面等により行うことその他のその方法が規定されている場合においても、当該法令の規定にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができることとされている。

こうしたデジタル手続法の趣旨を踏まえ、同法の適用対象となる手続きに係る本監督指針の規定についても、当該規定の書面・対面に係る記載にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができるものとする。
 また、経済社会活動全般において、デジタライゼーションが飛躍的に進展している中、政府全体として、書面・押印・対面手続きを前提とした我が国の制度・慣行を見直し、実際に足を運ばなくても手続きができるリモート社会の実現に向けた取組みを進めている。

金融庁としても、こうした取組みを着実に進めるため、金融サービス仲介業者等から受け付ける申請・届出等について、全ての手続きについてオンラインでの提出を可能とするための金融庁電子申請・届出システムを更改したほか、押印を廃止するための内閣府令及び監督指針等の改正を行うこと等により、行政手続きの電子化を推進してきた。
 更に、民間事業者間における手続についても、「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」を開催し、業界全体での慣行見直しを促すことにより、書面の電子化や押印の不要化、対面規制の見直しに取り組んできた。

このような官民における取組みも踏まえ、本監督指針の書面・対面に係る記載のうち、デジタル手続法の適用対象となる手続きに係るもの以外についても、II-1-8に掲げる原本送付を求める場合を除き、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により行うことができるものとする。
 以上のような取扱いとする趣旨に鑑み、本監督指針の規定に基づく手続きについては、手続きの相手方の意向を考慮した上で、可能な限り、書面・対面によらない方法により行うことを慫慂するものとする。

II-1-8 申請書等を提出するに当たっての留意点

II-1-7を踏まえ、金融サービス仲介業者等による当局への申請・届出等については、原則として、以下(1)、(2)に掲げる方法により提出を求めることとする。
 ただし、公的機関が発行する添付書類(住民票の写し、身分証明書、戸籍謄本、税・手数料等の納付を証する書類等)については、原本送付を求めることとする。

(1)金融庁電子申請・届出システム

金融サービス仲介業者等による当局への申請・届出等のうち、(2)に掲げる金融庁業務支援統合システム(以下「統合システム」という。)を利用して提出を求める手続を除いては、原則として、金融庁電子申請・届出システムを利用して法令に定める提出期限までに提出を求めることとする。
 ただし、金融庁がホームページにおいて掲載するe-Govを利用して申請書等の提出が可能な手続については、当面の間、金融庁電子申請・届出システムを利用した提出と並行して、e-Govを利用した提出についても可能とする。

(2)金融庁業務支援統合システム

事業報告書については、原則として、統合システムを利用して提出を求めることとする。

II-2 相談・苦情等への対応

  • (1)基本的な対応

    金融サービス仲介業者及び金融サービス仲介業務に関する相談・苦情等に対しては、金融庁にあっては金融サービス利用者相談室が、各財務局にあっては担当課室が、第一義的な受付窓口となるが、申出人に対しては、当局は個別取引に関してあっせん等を行う立場にないことを説明するとともに、必要に応じ、金融サービス提供法に基づき相談・苦情等への対応を行う機関として、指定ADR機関(金融サービス提供法第11条第9項に規定する指定紛争解決機関をいう。以下同じ。)、認定金融サービス仲介業協会を紹介するものとする。
     なお、寄せられた相談・苦情等のうち、申出人が金融サービス仲介業者側への情報提供について承諾している場合には、原則として、監督部局において、当該金融サービス仲介業者への情報提供を行うこととする。

  • (2)情報の蓄積

    各財務局においては、金融サービス仲介業者に関する相談・苦情等のうち、金融サービス仲介業者に対する監督上、参考になると考えられるものについては、その内容を記録するものとし、特に有力な情報と認められるものについては、速やかに総合政策局リスク分析総括課金融サービス仲介業室に報告するものとする。

  • (3)金融サービス利用者相談室との連携

    監督部局においては、金融サービス利用者相談室に寄せられた相談・苦情等の監督事務への適切な反映を図るため、以下の対応をとるものとする。

    • マル1相談室から回付される相談・苦情等の分析

    • マル2相談室との情報交換

II-3 法令解釈等外部からの照会への対応

II-3-1 法令照会

  • (1)照会を受ける内容の範囲

    照会を受ける内容の範囲は、金融サービス提供法及びこれに関連する法令であって金融庁が所管する法令に関するものとする。なお、照会が権限外の法令等に係るものであった場合には、コメント等は厳に慎むものとする。

  • (2)照会に対する回答方法

    • マル1本監督指針、審議会等の答申・報告等の既存資料により回答可能なものについては、適宜回答するものとする。

    • マル2財務局が照会を受けた際、回答に当たって判断がつかないもの等については、「連絡箋」を作成し、金融庁担当課室と電子メール等により協議するものとする。

    • マル3金融庁担当課室長は、当庁が所管する法令に関し、当庁所管法令の直接の適用を受ける事業者又はこれらの事業者により構成される事業者団体(注)から受けた、次のイ及びロの項目で定める要件を満たす一般的な照会であって、書面又は電磁的方法による回答及び公表を行うことが法令適用の予測可能性向上等の観点から適切と認められるものについては、これに対する回答を書面又は電磁的方法により行い、その内容を公表することとする。

      (注)事業者団体とは、当庁所管法令の直接の適用を受ける、業種等を同じくする事業者が、共通の利益を増進することを主たる目的として、相当数結合した団体又はその連合体(当該団体に連合会、中央会等の上部団体がある場合には、原則として、最も上部の団体に限る。)をいう。

      • イ. 本手続の対象となる照会の範囲

        本手続の対象となる照会は、以下の要件の全てを満たすものとする。

        • a. 特定の事業者の個別の取引等に対する法令適用の有無を照会するものではない、一般的な法令解釈に係るものであること(法令適用事前確認手続制度の利用が可能でないこと。)。

        • b. 事実関係の認定を伴う照会でないこと。

        • c. 照会内容が、金融庁所管法令の直接の適用を受ける事業者(照会者が団体である場合はその団体の構成事業者)に共通する取引等に係る照会であって、多くの事業者からの照会が予想される事項であること。

        • d. 過去に公表された事務ガイドライン等を踏まえれば明らかになっているものでないこと。

      • ロ. 照会書(当該照会書に記載すべき事項を記録した電磁的記録を含む。以下II-3-3までにおいて同じ。)
         本手続の利用を希望する照会者からは、以下の内容が記載された照会書の提出を受けるものとする。また、照会書のほかに、照会内容及び上記イに記載した事項を判断するために、記載事項や資料の追加を要する場合には、照会者に対して照会書の補正及び追加資料の提出を求めることとする。

        • a. 照会の対象となる法令の条項及び具体的な論点

        • b. 照会に関する照会者の見解及び根拠

        • c. 照会及び回答内容が公表されることに関する同意

      • ハ. 照会窓口

        照会書の受付窓口は、照会内容に係る法令を所管する金融庁担当課室又は照会者を所管する財務局担当課室とする。財務局担当課室が照会書を受領した場合には、速やかに金融庁担当課室に電子メール等により照会書を送付することとする。

      • ニ. 回答

        • a. 金融庁担当課室長は、照会者からの照会書が照会窓口に到達してから原則として2か月以内に、照会者に対して回答を行うよう努めることとし、2か月以内に回答できない場合には、照会者に対してその理由を説明するとともに、回答時期の目途を伝えることとする。

        • b. 回答書(当該回答書に記載すべき事項を記録した電磁的記録を含む。以下II-3-3までにおいて同じ。)には、以下の内容を付記することとする。

          「本回答は、照会対象法令を所管する立場から、照会書に記載された情報のみを前提に、照会対象法令に関し、現時点における一般的な見解を示すものであり、個別具体的な事例への適用を判断するものではなく、また、もとより捜査当局の判断や司法判断を拘束しうるものではない。」

        • c. 本手続による回答を行わない場合には、金融庁担当課室は、照会者に対し、その旨及び理由を説明することとする。

      • ホ. 公表

        上記ニの回答を行った場合には、金融庁は、速やかに照会及び回答内容を金融庁ホームページ上に掲載して、公表することとする。

    • マル4上記マル3に該当するもの以外のもので照会頻度が高いもの等については、必要に応じ「応接箋」を作成した上で、関係部局に回覧し、金融庁担当課室又は財務局担当課室の企画担当係に保存するものとする。

    • マル5照会者が照会事項に関し、金融庁からの書面又は電磁的方法による回答を希望する場合であって、II-3-2(2)に照らし法令適用事前確認手続の利用が可能な場合には、照会者に対し、法令適用事前確認手続を利用するよう伝えることとする。

II-3-2 法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)

法令適用事前確認手続(以下「ノーアクションレター制度」という。)とは、民間企業等が実現しようとする自己の事業活動に係る具体的行為に関して、当該行為が特定の法令の規定の適用対象となるかどうかを、あらかじめ当該規定を所管する行政機関に確認し、その機関が回答を行うとともに、当該回答を公表する制度であり、金融庁では、「法令適用事前確認手続に関する細則」を定めている。本項は、ノーアクションレター制度における事務手続を規定するものであり、制度の利用に当たっては必ず「金融庁における法令適用事前確認手続に関する細則」を参照するものとする。

  • (1)照会窓口

    照会窓口は、金融庁監督局総務課とする。
     なお、照会窓口たる金融庁監督局総務課は、下記(2)マル3の記載要領に示す要件を満たした照会書が到達した場合は速やかに受け付け、照会事案に係る法令を所管する担当課室に回付する。
     財務局所管の金融サービス仲介業者は、財務局に照会する。財務局が照会を受けた場合には、金融庁監督局総務課に対し、照会書を原則として速やかに電子メール等により送付する。

    (注)財務局においては、照会書を金融庁監督局総務課に送付する際、原則として審査意見を付するものとする。

  • (2)照会書受領後の流れ

    照会書を回付された後は、担当課室において、回答を行う事案か否か、特に、以下マル1ないしマル3について確認し、当制度の利用ができない照会の場合には、照会者に対しその旨を連絡する。また、照会書の補正及び追加資料の提出等が必要な場合には、照会者に対し所要の対応を求めることができる。ただし、追加資料は必要最小限とし、照会者の過度な負担とならないよう努めることとする。

    • マル1照会の対象

      民間企業等が、新規の事業や取引を具体的に計画している場合において、当庁が本手続の対象としてホームページに掲げた所管の法律及びこれに基づく政府令(以下「対象法令(条項)」という。)に関し、以下のような照会を行うものか。

      • イ. その事業や取引を行うことが、無許可業務等にならないかどうか。

      • ロ. その事業や取引を行うことが、無届け業務等にならないかどうか。

      • ハ. その事業や取引を行うことによって、業務停止や免許取消等(不利益処分)を受けることがないかどうか。

      • ニ. その事業や取引を行うことに関し、直接に義務を課され又は権利を制限されることがないかどうか。

    • マル2照会者の範囲

      照会者は、実現しようとする自己の事業活動に係る具体的行為に関して、対象法令(条項)の適用に係る照会を行う者及び当該者から依頼を受けた弁護士等であって、下記マル3の記載要領を満たした照会書を提出し、かつ、照会内容及び回答内容が公表されることに同意しているか。

    • マル3照会書の記載要領

      照会書は、下記の要件を満たしているものか。

      • イ. 将来自らが行おうとする行為に係る個別具体的な事実が記載されていること。

      • ロ. 対象法令(条項)のうち、適用対象となるかどうかを確認したい法令の条項が特定されていること。

      • ハ. 照会及び回答内容が公表されることに同意していることが記載されていること。

      • ニ. 上記ロにおいて特定した法令の条項の適用に関する照会者の見解及びその根拠が明確に記述されていること。

    • マル4回答

      照会書を回付された課室の長は、照会者からの照会書が照会窓口に到達してから原則として30 日以内に照会者に対する回答を行うものとする。ただし、次に掲げる場合には、各々の定める期間を回答期間とする。なお、いずれの場合においても、補正期間を含め、できるだけ早く回答するよう努めることとする。

      • イ. 高度な金融技術等に係る照会で慎重な判断を要する場合 原則60日以内

      • ロ. 担当部局の事務処理能力を超える多数の照会により業務に著しい支障が生じるおそれがある場合 30日を超える合理的な期間内

      • ハ. 他府省との共管法令に係る照会の場合 原則60日以内

        照会書の記載について補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した日数は、回答期間に算入しないものとする。また、30日以内に回答を行わない場合には、照会者に対して、その理由及び回答時期の見通しを通知することとする。

    • マル5照会及び回答についての公開

      金融庁は、照会及び回答の内容を、原則として回答を行ってから30日以内に全て金融庁ホームページに掲載して公開する。
       ただし、照会者が、照会書に、回答から一定期間を超えて公開を希望する理由及び公開可能とする時期を付記している場合であって、その理由が合理的であると認められるときは、回答から一定期間を超えて公開することができる。この場合においては、必ずしも照会者の希望する時期まで公開を延期するものではなく、公開を延期する理由が消滅した場合には、公開する旨を照会者に通知した上で、公開することができる。また、照会及び回答内容のうち、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条各号に規定する不開示情報が含まれている場合、これを除いて公表することができる。

II-3-3 グレーゾーン解消制度

産業競争力強化法(以下「強化法」という。)第7条第1項は、新事業活動を実施しようとする者は、その実施しようとする新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する法律及び法律に基づく命令(告示を含む。以下、この項において「法令」という。)の規定の解釈並びに当該新事業活動及びこれに関連する事業活動に対する当該規定の適用の有無について、その確認を求めることができる制度(以下「グレーゾーン解消制度」という。)を規定している。本項は、グレーゾーン解消制度における事務手続を規定するものであり、制度の利用に当たっては、「「グレーゾーン解消制度」、「規制のサンドボックス制度」及び「新事業特例制度」の利用の手引き」(令和4年7月15 日経済産業省)(以下、同省による改正後のものを含め、この項において「利用の手引き」という。)を参照するものとする。

  • (1)照会窓口

    照会窓口は、金融庁総合政策局総合政策課とする。
     なお、照会窓口たる金融庁総合政策局総合政策課は、下記(2)マル3の記載要領に示す要件を満たした照会書が到達した場合は速やかに受け付け、当該照会書の提出先が二以上の主務大臣であるときは、他の主務大臣に対し、その確認を求めるものとする。
     財務局監理金融サービス仲介業者は、財務局に照会する。財務局が照会を受けた場合には、金融庁総合政策局総合政策課に対し、照会書を速やかに送付する。

    (注)財務局においては、照会書を金融庁総合政策局総合政策課に送付する際、当該照会書に記載された確認の求めのうち当庁が所管する法令に関するものに限り、原則として審査意見を付するものとする。

  • (2)照会書受領後の流れ

    照会書を受け付けた後は、金融庁総合政策局総合政策課において、当該照会書を当該照会書に記載された確認の求めに係る法令を所管する担当課室に速やかに回付するとともに、当該担当課室と協議しつつ、回答を行う事案か否か、特に、以下のマル1からマル3について確認し、当制度の利用ができない確認の求めの場合には、当該照会書を提出した者(以下、この項において「提出者」という。)に対しその旨を連絡する。また、照会書の補正、追加資料の提出等が必要な場合には、提出者に対し所要の対応を求めることができる。
     ただし、追加資料は必要最小限とし、提出者の過度な負担とならないよう努めるものとする。

    • マル1確認の求めの主体

      以下のイ及びロを満たすか。

      • イ. 提出者は、新事業活動を実施しようとする者であること。

        (注)「新事業活動」とは、新商品の開発又は生産、新たな役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動のうち、当該新たな事業活動を通じて、生産性(資源生産性(エネルギーの使用又は鉱物資源の使用(エネルギーとしての使用を除く。)が新たな事業活動を実施しようとする者の経済活動に貢献する程度をいう。)を含む。)の向上又は新たな需要の開拓が見込まれるものであって、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがないものをいう(強化法第2条第4項、産業競争力強化法に基づく新技術等実証及び新事業活動に関する規制の特例措
        置の整備等及び規制改革の推進に関する命令(以下「強化法命令」という。)第2条)。

      • ロ. 提出者が、当庁所管の事業に係る新事業活動を実施しようとしている者であること。または、提出者が、その新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する当庁が所管する法令の規定の解釈及び当該規定の適用の有無について、その確認を求めようとしている者であること。

    • マル2照会の対象

      提出者が、その実施しようとする新事業活動及びこれに関連する事業活動に関する規制について規定する当庁が所管する法令の規定の解釈並びに当該規定の適用の有無について、その確認を求めるものであって、以下のような照会を行うものか。

      • イ. その事業や取引を行うことが、無許可営業等にならないか。

      • ロ. その事業や取引を行うことが、無届け営業等にならないか。

      • ハ. その事業や取引を行うことによって、業務停止や免許取消等(不利益処分)を受けることがないか。

      • ニ. その事業や取引を行うことに関し、直接に義務を課され又は権利を制限されることがないか。

    • マル3照会書の記載要領

      強化法命令様式第九に従い、また利用の手引きを踏まえ、以下の事項が記載されているか。

      • イ. 新事業活動及びこれに関連する事業活動の目標

      • ロ. 新事業活動及びこれに関連する事業活動の内容

      • ハ. 新事業活動及びこれに関連する事業活動の実施時期

      • ニ. 解釈及び適用の有無の確認を求める法令の条項等

      • ホ. 具体的な確認事項

 (3)回答

 照会書を回付された課室は、金融庁総合政策局総合政策課において回答を行う事案と判断した場合において は、提出者からの照会書が照会窓口に到達してから原則として1か月以内に提出者に対し強化法命令様式第十一による回答書を交付し、又は提供するものとする。
また、照会書を回付された課室は、当該照会書に記載された確認の求めに係る法令の規定の解釈及び適用の有無についての検討の状況に照らし、上記期間内に回答書を交付し、又は提供することができないことについてやむを得ない理由がある場合には、当該回答書を交付し、又は提供するまでの間1か月を超えない期間ごとに、その旨及びその理由を提出者に通知するものとする。

II-4 行政指導等を行う際の留意点等

II-4-1 行政指導等を行う際の留意点等

金融サービス仲介業者に対して、行政指導等(行政指導等とは行政手続法第2条第6号にいう行政指導に加え、行政指導との区別が必ずしも明確ではない情報提供、相談、助言等の行為を含む。)を行うに当たっては、行政手続法等の法令等に沿って適正に行うものとする。特に行政指導等を行う際には、以下の点に留意する。

  • (1)一般原則(行政手続法第32条)

    • マル1行政指導等の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されているか。

      例えば、以下の点に留意する。

      • イ. 行政指導等の内容及び運用の実態、担当者の対応等について、相手方の理解を得ているか。

      • ロ. 相手方が行政指導等に協力できないとの意思を明確に表明しているにもかかわらず、行政指導等を継続していないか。

    • マル2相相手方が行政指導等に従わなかったことを理由として不利益な取扱いをしてはいないか。

      • イ. 行政指導等に従わない事実を法律の根拠なく公表することも、公表することにより経済的な損失を与えるなど相手方に対する社会的制裁として機能するような状況の下では、「不利益な取扱い」に当たる場合があることに留意する。

      • ロ. 行政指導等を行う段階においては処分権限を行使するか否かは明確でなくても、行政指導等を行った後の状況によっては処分権限行使の要件に該当し、当該権限を行使することがあり得る場合に、そのことを示して行政指導等をすること自体を否定するものではない。

  • (2)申請に関連する行政指導等(行政手続法第33条)

    申請者が当該行政指導等に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導等を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしていないか。

    • マル1申請者が、明示的に行政指導等に従わない旨の意思表示をしていない場合であっても、行政指導等の経緯や周囲の客観情勢の変化等を勘案し、行政指導等の相手方に拒否の意思表示がないかどうかを判断する。

    • マル2申請者が行政指導等に対応している場合でも、申請に対する判断・応答が留保されることについても任意に同意しているとは必ずしもいえないことに留意する。

    • マル3例えば、以下の点に留意する。

      • イ. 申請者が行政指導等に従わざるを得ないようにさせ、申請者の権利の行使を妨げるようなことをしていないか。

      • ロ. 申請者が行政指導等に従わない旨の意思表明を明確には行っていない場合、行政指導等を行っていることを理由に申請に対する審査・応答を留保していないか。

      • ハ. 申請者が行政指導等に従わない意思を表明した場合には、行政指導等を中止し、申請に対し、速やかに適切な対応をしているか。

  • (3)許認可等の権限に関連する行政指導等(行政手続法第34条)

    許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合にもかかわらず、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導等に従う事を余儀なくさせていないか。

    例えば、以下の点に留意する。

    • マル1許認可等の拒否処分をすることができないにもかかわらず、できる旨を示して一定の作為又は不作為を求めていないか。

    • マル2行政指導等に従わなければすぐにでも権限を行使することを示唆したり、何らかの不利益な取扱いを行ったりすることを暗示するなど、相手方が行政指導等に従わざるを得ないように仕向けてはいないか。

  • (4)行政指導等の方式(行政手続法第35条)

    • マル1行政指導等を行う際には、相手方に対し、行政指導等の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示しているか。

      例えば、以下の点に留意する。

      • イ. 相手方に対して求める作為又は不作為の内容を明確にしているか。

      • ロ. 当該行政指導等をどの担当者の責任において行うものであるかを示しているか。

      • ハ. 個別の法律に根拠を有する行政指導等を行う際には、その根拠条項を示しているか。

      • ニ. 個別の法律に根拠を有さない行政指導等を行う際には、当該行政指導等の必要性について理解を得るため、その趣旨を伝えているか。

    • マル2行政指導等について、相手方から、行政指導等の趣旨及び内容並びに責任者を記載した書面の交付を求められた時は、行政上特別の支障がない限り、原則としてこれを交付しているか(ただし、行政手続法第35条第4項各号に該当する場合を除く。)。

      • イ. 書面の交付を求められた場合には、できるだけ速やかに交付することが必要である。

      • ロ. 書面交付を拒みうる「行政上の特別の支障」がある場合とは、書面が作成者の意図と無関係に利用、解釈されること等により行政目的が達成できなくなる場合など、その行政指導等の趣旨及び内容並びに責任者を書面で示すことが行政運営上著しい支障を生じさせる場合をいう。

      • ハ. 単に処理件数が大量であるだけの場合や単に迅速に行う必要がある場合であることをもって、「行政上特別の支障」がある場合に該当するとはいえないことに留意する。

II-4-2 面談等を行う際の留意点

職員が、金融サービス仲介業者の役職員等と面談等(面談、電話、電子メール等によるやりとりをいう。以下同じ。)を行うに際しては、下記の事項に留意するものとする。

  • マル1面談等に参加する職員は、常に綱紀及び品位を保持し、穏健冷静な態度で臨んでいるか。

  • マル2面談等の目的、相手方の氏名・所属等を確認しているか。

  • マル3面談等の方法、面談等を行う場所、時間帯、参加している職員及び相手方が、面談等の目的・内容からみてふさわしいものとなっているか。

  • マル4面談等の内容・結果について双方の認識が一致するよう、必要に応じ確認しているか。特に、面談等の内容・結果が守秘義務の対象となる場合には、そのことが当事者双方にとって明確となっているか。

  • マル5面談等の内容が上司の判断を仰ぐ必要のある場合において、状況に応じあらかじめ上司の判断を仰ぎ、又は事後に速やかに報告しているか。また、同様の事案について複数の相手方と個別に面談等を行う場合には、行政の対応の統一性・透明性に配慮しているか。

II-4-3 連絡・相談手続

面談等を通じて行政指導等を行うに際し、行政手続法に照らし、行政指導等の適切性について判断に迷った場合等には、金融庁担当課室に連絡し、必要に応じその対応を協議することとする。

II-5 行政処分等を行う際の留意点

II-5-1 行政処分(不利益処分)に関する基本的な事務の流れについて

II-5-1-1 行政処分

監督部局が行う主要な不利益処分(行政手続法第2条第4号にいう不利益処分をいう。以下同じ。)としては、マル1金融サービス提供法第37条に基づく業務改善命令、マル2金融サービス提供法第38条第1項に基づく業務停止命令、マル3金融サービス提供法第38条に基づく登録取消し等があるが、これらの発動に関する基本的な事務の流れを例示すれば、以下のとおりである。

  • (1)金融サービス提供法第35条第1項に基づく報告徴求

    • マル1オンサイトの立入検査や、オフサイト・モニタリング(ヒアリング、事故等届出書など)を通じて、金融サービス仲介業者のリスク管理態勢、法令等遵守態勢、経営管理(ガバナンス)態勢等に問題があると認められる場合においては、金融サービス提供法第35条第1項に基づき、当該事項についての事実認識、発生原因分析、改善・対応策その他必要と認められる事項について、報告を求めることとする。

    • マル2報告を検証した結果、さらに精査する必要があると認められる場合においては、金融サービス提供法第35条第1項に基づき、追加報告を求めることとする。

  • (2)金融サービス提供法第35条第1項に基づき報告された改善・対応策のフォローアップ

    • マル1上記報告を検証した結果、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題が発生しておらず、かつ、金融サービス仲介業者の自主的な改善への取組みを求めることが可能な場合においては、任意のヒアリング等を通じて上記(1)において報告された改善・対応策のフォローアップを行うこととする。

    • マル2必要があれば、金融サービス提供法第35条第1項に基づき、定期的なフォローアップ報告を求める。

  • (3)金融サービス提供法第37条に基づく業務改善命令

    • 上記(1)の報告(追加報告を含む。)を検証した結果、例えば、業務の健全性・適切性の観点から重大な問題が認められる場合又は金融サービス仲介業者の自主的な取組みでは業務改善が図られないと認められる場合などにおいては、金融サービス提供法第37条に基づき、業務改善計画の提出とその実行を命じることを検討する。

  • (4)金融サービス提供法第38条第1項に基づく業務停止命令

    • 業務の改善に一定期間を要し、その間、当該業務改善に専念させる必要があると認められる場合においては、金融サービス提供法第38条第1項に基づき、改善期間を勘案した一定の期限を付して全部又は一部の業務の停止を命じることを検討する。

  • (5)金融サービス提供法第38条に基づく登録の取消し等

    • 上記(1)の報告(追加報告を含む。)を検証した結果、重大な法令等の違反又は公益を害する行為が多数認められる等により、今後の業務の継続が不適当と認められる場合においては、金融サービス提供法第38条に基づく登録の取消し等を検討する。

      なお、(3)から(5)の行政処分を検討する際には、以下のマル1からマル3までに掲げる要因を勘案するとともに、それ以外に考慮すべき要素がないかどうかを吟味することとする。

      • マル1 当該行為の重大性・悪質性

        • イ. 公益侵害の程度
           金融サービス仲介業者が、例えば、顧客の財務内容の適切な開示という観点から著しく不適切な商品を提供し、金融市場に対する信頼性を損なうなど公益を著しく侵害していないか。

        • ロ. 利用者被害の程度
           広範囲にわたって多数の利用者が被害を受けたかどうか。個々の利用者が受けた被害がどの程度深刻か。

        • ハ. 行為自体の悪質性
           例えば、利用者から多数の苦情を受けているのにもかかわらず、引き続き同様の商品を販売し続ける行為を行うなど、金融サービス仲介業者の行為が悪質であったか。

        • ニ. 当該行為が行われた期間や反復性
           当該行為が長期間にわたって行われたのか、短期間のものだったのか。反復・継続して行われたものか、一回限りのものか。また、過去に同様の違反行為が行われたことがあるか。

        • ホ. 故意性の有無
           当該行為が違法・不適切であることを認識しつつ故意に行われたのか、過失によるものか。

        • ヘ. 組織性の有無
           当該行為が現場の営業担当者個人の判断で行われたものか、あるいは管理者も関わっていたのか。さらに経営陣の関与があったのか。

        • ト. 隠蔽の有無
           問題を認識した後に隠蔽行為はなかったか。隠蔽がある場合には、それが組織的なものであったか。

        • チ. 反社会的勢力との関与の有無
           反社会的勢力との関与はなかったか。関与がある場合には、どの程度か。

      • マル2当該行為の背景となった経営管理態勢及び業務運営態勢の適切性

        • イ. 代表取締役や取締役会の法令等遵守に関する認識や取組みは十分か。

        • ロ. 内部監査部門の体制は十分か、また適切に機能しているか。

        • ハ. 法令等遵守担当部門やリスク管理部門の体制は十分か、また適切に機能しているか。

        • ニ. 業務担当者の法令等遵守に関する認識は十分か、また、社内教育が十分になされているか。

      • マル3軽減事由

        以上の他に、行政による対応に先行して、金融サービス仲介業者自身が自主的に利用者保護のために所要の対応に取り組んでいる、といった軽減事由があるか。

  • (6)標準処理期間

    上記(3)から(5)の行政処分をしようとする場合には、上記(1)の報告書を受理したときから、原則として概ね1か月(処分が財務局を経由して金融庁において行われる場合又は処分が財務局において行われるが金融庁との調整を要する場合又は処分が他省庁との共管法令に基づく場合は概ね2か月)以内を目途に行うものとする。

    • (注1)「報告書を受理したとき」の判断においては、以下の点に留意する。

      • マル1複数回にわたって金融サービス提供法第35条第1項に基づき報告を求める場合(直近の報告書を受理したときから上記の期間内に報告を求める場合に限る。)には、最後の報告書を受理したときを指すものとする。

      • マル2提出された報告書に関し、資料の訂正、追加提出等(軽微なものは除く。)を求める場合には、当該資料の訂正、追加提出等が行われたときを指すものとする。

    • (注2)弁明・聴聞等に要する期間は、標準処理期間には含まれない。

    • (注3)標準処理期間は、処分を検討する基礎となる情報ごとに適用する。

    • (注4)複数の当事者にわたる事案の場合には、当該当事者から必要な報告書を全て受理したときから、標準処理期間を起算する。

II-5-1-2 金融サービス提供法第37条の規定に基づく業務改善命令の履行状況の報告義務の解除

金融サービス提供法第37条の規定に基づき業務改善命令を発出する場合には、当該命令に基づく金融サービス仲介業者の業務改善に向けた取組みをフォローアップし、その改善努力を促すため、原則として、当該金融サービス仲介業者の提出する業務改善計画の履行状況の報告を求めることとなっているが、以下の点に留意するものとする。

  • (1) 金融サービス提供法第37条の規定に基づき業務改善命令を発出している金融サービス仲介業者に対して、当該業者の提出した業務改善計画の履行状況について、期限を定めて報告を求めている場合には、期限の到来により、当該金融サービス仲介業者の報告義務は解除される

  • (2) 金融サービス提供法第37条の規定に基づき業務改善命令を発出している金融サービス仲介業者に対して、当該業者の提出した業務改善計画の履行状況について、期限を定めることなく継続的に報告を求めている場合には、業務改善命令を発出する要因となった問題に関して、業務改善計画に沿って十分な改善措置が講じられたと認められるときには、当該計画の履行状況の報告義務を解除するものとする。その際、当該報告等により把握した改善への取組状況に基づき、解除の是非を判断するものとする。

II-5-2 行政手続法等との関係等

  • (1)行政手続法との関係

    行政手続法第13条第1項第1号に該当する不利益処分をしようとする場合には聴聞を行い、同項第2号に該当する不利益処分をしようとする場合には弁明の機会を付与しなければならないことに留意する。
     いずれの場合においても、不利益処分をする場合には同法第14条に基づき、処分の理由を示さなければならないこと(不利益処分を書面でするときは、処分の理由も書面により示さなければならないこと)に留意する。
     また、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合には同法第8条に基づき、処分の理由を示さなければならないこと(許認可等を拒否する処分を書面でするときは、処分の理由も書面により示さなければならないこと)に留意する。
     その際、単に根拠規定を示すだけではなく、いかなる事実関係に基づき、いかなる法令・基準を適用して処分がなされたかを明らかにすること等が求められることに留意する。

  • (2)行政不服審査法との関係

    不服申立てをすることができる処分をする場合には、行政不服審査法第82 条に基づき、不服申立てをすることができる旨等を書面で教示しなければならないことに留意する。

  • (3)行政事件訴訟法との関係

    取消訴訟を提起することができる処分をする場合には、行政事件訴訟法第46条に基づき、取消訴訟の提起に関する事項を書面で教示しなければならないことに留意する。

II-5-3 意見交換制度

不利益処分が行われる場合、行政手続法に基づく聴聞又は弁明の機会の付与の手続とは別に、金融サービス仲介業者からの求めに応じ、監督当局と金融サービス仲介業者との間で、複数のレベルにおける意見交換を行うことで、行おうとする処分の原因となる事実及びその重大性等についての認識の共有を図ることが有益である。

金融サービス提供法第35条第1項の規定に基づく報告徴求に係るヒアリング等の過程において、自らに対して不利益処分が行われる可能性が高いと認識した金融サービス仲介業者から、監督当局の幹部(注1)と当該金融サービス仲介業者の幹部との間の意見交換の機会の設定を求められた場合(注2)であって、監督当局が当該金融サービス仲介業者に対して聴聞又は弁明の機会の付与を伴う不利益処分を行おうとするときは、緊急に処分する必要がある場合を除き、聴聞の通知又は弁明の機会の付与の通知を行う前に、行おうとする不利益処分の原因となる事実及びその重大性等についての意見交換の機会を設けることとする。

  • (注1)監督当局の幹部の例:金融庁・財務局の担当課室長

  • (注2)金融サービス仲介業者からの意見交換の機会の設定の求めは、監督当局が当該不利益処分の原因となる事実についての金融サービス提供法第35条第1項の規定に基づく報告書等を受理したときから、聴聞の通知又は弁明の機会の付与の通知を行うまでの間になされるものに限る。

II-5-4 関係当局・海外監督当局等への連絡

報告徴求命令、業務改善命令若しくは業務停止命令を発出する又は登録を取り消す等の不利益処分をしようとする場合には、必要に応じて、関係当局・海外監督当局等への連絡を行うものとする。

II-5-5 不利益処分の公表に関する考え方

業務改善命令等の不利益処分については、他の金融サービス仲介業者における予測可能性を高め、同様の事案の発生を抑制する観点から、財務の健全性に関する不利益処分等、公表により対象金融サービス仲介業者の経営改善に支障が生ずるおそれのあるものを除き、処分の原因となった事実及び処分の内容等を公表することとする。

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