V 監督上の評価項目と諸手続(預金等媒介業務)

V-1 業務の適切性(預金等媒介業務)

V-1-1 預金等媒介業者の禁止行為、不適切な取引等

(1)預金等媒介業者としての取引上の優越的地位を不当に利用する行為(仲介業者等府令第55条第3号)

預金等媒介業者としての取引上の優越的地位を不当に利用する行為については、「金融機関の業態区分の緩和及び業務範囲の拡大に伴う不公正な取引方法について」(平成16年12月1日:公正取引委員会)も参考とするが、例えば次に掲げる行為は、預金等媒介業者としての取引上の優越的地位を不当に利用する行為に該当し得る(なお、このうちマル1及びマル2は、仲介業者等府令第55条第2号に規定する「顧客に対し、不当に、自己又は自己の指定する事業者と取引を行うことを条件として、金融サービス提供法第11条第2項各号に規定する契約の締結の媒介を行う行為」にも該当し得る。)。

  • マル1顧客に対し、自己が兼業業務として行う業務又は金融サービス仲介業務(預金等媒介業務以外の種別のものをいう。)について自己と取引しない場合には資金の貸付けを内容とする契約(その他金融サービス提供法第11条第2項各号に掲げる行為を含む。以下マル2からマル4において同じ。)媒介を取りやめる旨又は資金の貸付けを内容とする契約の媒介に関し不利な取扱いをする旨を示唆し、兼業業務又は金融サービス仲介業務(預金等媒介業務以外の種別のものをいう。)で取り扱う商品を購入することを事実上余儀なくさせること。

  • マル2顧客に対する資金の貸付けを内容とする契約の媒介に当たり、兼業業務又は金融サービス仲介業務(預金等媒介業務以外の種別のものをいう。)で取り扱う商品の購入を要請し、これに従うことを事実上余儀なくさせること。

  • マル3顧客に対し、自己が兼業業務として行う業務又は金融サービス仲介業務(預金等媒介業務以外の種別のものをいう。)の競争者と取引する場合には資金の貸付けを内容とする契約の媒介を取りやめる旨又は資金の貸付けを内容とする契約の媒介に関し不利な取扱いをする旨を示唆し、自己の兼業業務又は金融サービス仲介業務(預金等媒介業務以外の種別のものをいう。)における競争者からの商品の購入を妨害すること。

  • マル4顧客に対する資金の貸付けを内容とする契約の媒介を行うに当たり、自己の兼業業務又は金融サービス仲介業務(預金等媒介業務以外の種別のものをいう。)における競争者から商品の購入を行わないことを要請し、これに従うことを事実上余儀なくさせること。

 

(2)兼業業務における取引上の優越的地位を不当に利用する行為(仲介業者等府令第55条第5号)

兼業業務における取引上の優越的地位を不当に利用する行為については、「金融機関の業態区分の緩和及び業務範囲の拡大に伴う不公正な取引方法について」(平成16年12月1日:公正取引委員会(再掲))も参考とするが、例えば、以下に掲げる行為は、兼業業務における取引上の優越的地位を不当に利用する行為に該当し得る(なお、このうちマル1及びマル2は、仲介業者等府令第55条第4号に規定する「顧客に対し、不当に、法第11条第2項各号に規定する契約の締結の媒介を行うことを条件として、自己又は自己の指定する事業者と取引をさせる行為」にも該当し得る。)。

  • マル1顧客に対し、預金等媒介業務として媒介する預金の受入れを内容とする契約(その他金融サービス提供法第11条第2項各号に掲げる行為についても同様。以下マル2からマル4において同じ。)の締結に応じない場合には兼業業務に係る取引を取りやめる旨又は兼業業務に関し不利な取扱いをする旨を示唆し、預金の受入れを内容とする契約を締結することを事実上余儀なくさせること。

  • マル2顧客に対する兼業業務の取引を行うに当たり、預金等媒介業務として媒介する預金の受入れを内容とする契約の締結を要請し、これに従うことを事実上余儀なくさせること。

  • マル3顧客に対し、預金等媒介業務に係る業務として行う業務の競争者と取引する場合には兼業業務の取引を取りやめる旨又は兼業業務に関し不利な取扱いをする旨を示唆し、自己の競争者(銀行及び銀行代理業者を含む。マル4において同じ。)と預金の受入れを内容とする契約を締結することを妨害すること。

  • マル4顧客に対する兼業業務の取引を行うに当たり、自己の競争者と預金の受入れを内容とする契約を行わないことを要請し、これに従うことを事実上余儀なくさせること。

 

(3) 金融サービス提供法第29条で準用する銀行法(以下「準用銀行法」という。)第52条の45、仲介業者等府令第55条各号に規定する禁止行為を防止するための態勢整備に関しては、以下の点に留意することとする。

  • マル1禁止行為を防止するための措置を講ずる責任を有する部署又は担当者を配置し、かつ、それらの部署又は担当者によって禁止行為の防止措置が適切に講じられているかを検証するための内部管理態勢が整備されているか。

  • マル2禁止行為を防止するために必要な研修の実施等の体制、顧客からの苦情に対応するための体制等に関する社内規則の策定及び社内周知が行われているか。

  • マル3禁止行為を防止するため、預金等媒介業務に関する法令についての知識及び実務経験を有する者による定期的かつ必要に応じて適宜研修を実施しているか。

  • マル4禁止行為に係る顧客からの苦情受付窓口の明示、苦情処理担当部署の設置、苦情案件処理手順等の策定等の苦情対応態勢が整備されているか。

 

(4)正常な取引慣行に反する不適切な取引に繋がる媒介の防止

上記(1)から(3)のほか、過度な協力預金、過当な歩積両建預金等の受入れ、他金融機関への過度な預金紹介、顧客の印鑑等の預かり等独占禁止法上問題となる優越的な地位の濫用や顧客の実際の資金需要に基づかない決算期を跨った短期間の与信取引の依頼など正常な取引慣行に反する不適切な取引に繋がるような媒介をどのように防止しているかに留意する。

 

V-1-2 利用者保護のための情報提供・相談機能等

金融サービス提供法第26条、準用銀行法第52条の44第2項及び仲介業者等府令第48条から第55条を踏まえ、預金等媒介業者における利用者保護のための情報提供・相談機能等に関する監督は、以下の点に留意する。

 

V-1-2-1 与信取引等(貸付契約及びこれに伴う担保・保証契約)に関する顧客への説明態勢

V-1-2-1-1 意義

(1)金融サービス提供法第26条及び仲介業者等府令第35条は、預金等媒介業者に対し、その行う業務の内容及び方法に応じ、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的を踏まえた重要な事項の顧客に対する説明その他の健全かつ適切な業務の運営を確保するための措置(書面の交付その他の適切な方法による商品又は取引の内容及びリスクの説明並びに犯罪を防止するための措置を含む。)に関する社内規則等(社内規則その他これに準ずるものをいう。)を定めるとともに、従業員に対する研修その他の当該社内規則等に基づいて業務が運営されるための十分な体制を整備することを義務付けている。
 また、預金等媒介業者はその預金等媒介業務に関し、顧客に対し虚偽のことを告げる行為、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれのあることを告げる行為等をしてはならないとされている(準用銀行法第52条の45、仲介業者等府令第55条)。これらの行為は、そもそも金融サービス提供法第26条で定める業務の健全かつ適切な運営が確保されるための措置に違反する行為として禁止されるものである。
 

(2)以下は、広く貸し手の責任において整備すべき与信取引等(貸付契約及びこれに伴う担保・保証契約)に関する説明態勢及びそれを補完する相談苦情処理機能について、主として中小企業向け取引、個人向け貸付(住宅ローンを含む。)を念頭において、当局が預金等媒介業者の内部管理態勢の検証を行う際の着眼点を類型化して例示している。
(注)以下は、説明義務・説明責任(アカウンタビリティ)の徹底を中心に顧客との情報共有の拡大と相互理解の向上に向けた取組みまで幅広い領域を対象としている
 

V-1-2-1-2 主な着眼点

(1)全社的な内部管理態勢の確立

  • マル1顧客への説明態勢及び相談苦情処理機能に関する全社的な内部管理態勢の確立に関し、経営陣が適切に機能を発揮しているか。

  • マル2法令の趣旨を踏まえた社内規則等の作成

    • イ.業務の内容及び方法に応じた説明態勢が社内規則等で明確に定められているか。
       与信取引には、例えば、手形割引、貸付金(手形貸付、証書貸付、当座貸越)等の多様な取引があるが、それぞれの類型に応じた態勢整備がなされているか。
       さらに、インターネット取引等の異なる取引方法に応じた態勢整備がなされているか。
    • ロ.顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的に応じた説明態勢が社内規則等で明確に定められているか。特に、中小企業や個人については実態に即した取扱いとなっているか。
  • マル3法令の趣旨を踏まえた社内の実施態勢の構築

    • イ.社内規則等に基づいて業務が運営されるよう、研修その他の方策(マニュアル等の配布を含む。)が整備されているか。
    • ロ.説明態勢等の実効性を確保するため、検査・監査等の内部牽制機能は十分発揮されているか。
 

(2)契約時点等における説明

以下の事項について、社内規則等を定めるとともに、従業員に対する研修その他の当該社内規則に基づいて業務が運営されるための十分な体制が整備されているか検証する。その際、預金等媒介業者と顧客が契約を締結しようとする銀行等との間の顧客に対する情報の提供及び説明に関する役割分担を適切に踏まえ、機械的・画一的な取扱いとならないよう配慮するものとする。

  • マル1商品又は取引の内容及びリスク等に係る説明
     契約の意思形成のために、顧客の十分な理解を得ることを目的として、必要な情報を的確に提供することとしているか。

     なお、検証に当たっては、特に以下の点に留意する。

    • イ.住宅ローン契約の媒介に際しては、利用者に適切な情報提供とリスク等に関する説明を行うこととしているか。特に、金利変動型又は一定期間固定金利型の住宅ローンに係る金利変動リスク等について、十分な説明を行うこととしているか。
    • ロ.住宅ローンの説明に当たっては、例えば、「住宅ローン利用者に対する金利変動リスク等に関する説明について」(平成16年12月21日全国銀行協会申し合わせ)に沿った対応がなされる態勢となっているか。また、適用金利が将来上昇した場合の返済額の目安を提示する場合には、その時点の経済情勢において合理的と考えられる前提に基づく試算を示すこととしているか。
    • ハ.個人保証契約については、保証債務を負担するという意思を形成するだけでなく、その保証債務が実行されることによって自らが責任を負担することを受容する意思を形成するに足る説明を行うこととしているか。
    •   例えば、保証契約の形式的な内容にとどまらず、保証の法的効果とリスクについて、最悪のシナリオ即ち実際に保証債務を履行せざるを得ない事態を 想定した説明を行うこととしているか。
    •  また、必要に応じ、保証人から説明を受けた旨の確認を行うこととしているか。
    • ニ.経営者等と銀行等との間の保証契約の締結の媒介を行う場合には、「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、以下の点について、主債務者と保証人に対して丁寧かつ具体的に説明を行うこととしているか。
      • a.保証契約の必要性
      • b.原則として、保証履行時の履行請求は、一律に保証金額全額に対して行うものではなく、保証履行時の保証人の資産状況等を勘案した上で、履行の範囲が定められること
      • c.経営者保証の必要性が解消された場合には、保証契約の変更・解除等の見直しの可能性があること
    • ホ.連帯保証契約については、補充性や分別の利益がないことなど、通常の保証契約とは異なる性質を有することを、相手方の知識、経験等に応じて説明することとしているか。
      • (注1)「補充性」とは、主たる債務者が債務を履行しない場合にはじめてその債務を履行すればよいという性質をいう。
      • (注2)「分別の利益」とは、複数人の保証人が存在する場合、各保証人は債務額を全保証人に均分した部分(負担部分)についてのみ保証すれば足りるという性質をいう。
    • ヘ.経営者以外の第三者と銀行等との間で個人連帯保証契約の締結を媒介する場合には、契約者本人の経営への関与の度合いに留意し、原則として、経営に実質的に関与していない場合であっても保証債務を履行せざるを得ない事態に至る可能性があることについての特段の説明を行うこととしているか。併せて、保証人から説明を受けた旨の確認を行うこととしているか。
      • (注)契約者本人が経営に実質的に関与していないにもかかわらず、自発的に連帯保証契約の申し出を行った場合には、銀行等又は預金等媒介業者から特段の説明を受けた上で契約者本人が自発的な意思に基づき申し出を行った旨を証した書面の提出を受けるなどにより、当該契約について金融機関から要求されたものではないことを確認しているかに留意する。
    • ト.信用保証協会の保証付き融資については、利用する保証制度の内容や信用保証料の料率などについて、顧客の知識、経験等に応じた適切な説明を行うこととしているか。
  • マル2契約締結の客観的合理的理由の説明

  •  顧客から説明を求められたときは、事後の紛争等を未然に防止するため、媒介を行う契約締結の客観的合理的理由についても、顧客の知識、経験等に応じ、その理解と納得を得ることを目的とした説明を行う態勢が整備されているか。
  •  なお、以下のイからハの検証に関しては、各項に掲げる事項について顧客から求められれば説明する態勢 (ハの検証にあっては、保証契約を締結する場合に説明する態勢)が整備されているかに留意する。
    • イ.貸付契約
    •  貸付金額、金利、返済条件、期限の利益の喪失事由、財務制限条項等の契約内容について、顧客の財産の状況を踏まえた契約締結の客観的合理的理由
    • ロ.担保設定契約
    •  極度額等の契約内容について、債務者との取引状況や今後の取引見通し、担保提供者の財産の状況を踏まえた契約締結の客観的合理的理由
    • ハ.保証契約
    •  保証人の立場及び財産の状況、主債務者や他の保証人との関係等を踏まえ、当該保証人と銀行等との間で保証契約を締結する客観的合理的理由
      • a.根保証契約については、設定する極度額及び元本確定期日について、主債務者との取引状況や今後の取引見通し、保証人の財産の状況を踏まえた契約 締結の客観的合理的理由
      • b.経営者以外の第三者との間で個人連帯保証契約を締結する場合には、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立」するとの観点に照らし、必要に応じ、「信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止について」における考え方にも留意しつつ、当該第三者と銀行等との間で保証契約を締結する客観的合理的理由。
      • c.経営者等に保証を求める場合には、 「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、当該経営者 等と銀行等との間で保証契約を締結する客観的合理的理由
  • マル3契約の意思確認

    • イ.契約の内容を説明し、借入意思・担保提供意思・保証意思があることを確認した上で、契約者本人(注)から契約内容への同意の記録を求めることを原則としているか。特に、保証意思の確認に当たっては、契約者本人の経営への関与の度合いについても確認することとしているか。
    • (注)いわゆる「オーナー経営」の中小企業等との重要な契約に当たっては、形式的な権限者の確認を得るだけでは不十分な場合があることに留意する必要がある。
    • ロ.上記イの契約者の借入意思・担保提供意思・保証意思の確認に係る対応については、顧客保護及び法令等遵守の観点から十分な検討を行った上で、社内規則等において明確に取扱い方法を定め、遵守のための実効性の高い内部牽制機能が確立されているか。
    • ハ.銀行等が貸付の決定をする前に、顧客に対し「融資は確実」と誤認させる不適切な説明を行わない態勢が整備されているか。
 

(3)貸付けに関する基本的な経営の方針(クレジットポリシー等)との整合性

 与信取引面における説明態勢については、各銀行等の貸付けに関する基本的な経営の方針(クレジットポリシー等)との整合性についても検証する必要がある。
 その際、例えば以下のような健全な融資慣行の確立と担保・保証に過度に依存しない融資の促進の観点に留意する。
 預金等媒介業者は、健全な融資慣行はできる限り担保・保証に頼ることなく、貸付けは、借り手の経営状況、資金使途、回収可能性等を総合的に判断して行うものであることを認識しているか。また、銀行等が「事業からのキャッシュフローを重視し、担保・保証に過度に依存しない融資の促進を図る」、「経営者保証に依存しない融資の一層の促進を図る」(主要行等監督指針III-9-2参照)、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立する」(主要行等監督指針III-10参照)との観点から、預金等媒介業者において、銀行等が定める経営の方針を実際の説明態勢にどのように反映させているか。
 

(4)苦情等処理機能の充実・強化

  • マル1苦情等の事例の蓄積と分析を行い、契約締結の媒介における説明態勢の改善を図る取組みや苦情が多く寄せられる商品、取引の媒介を継続するかどうかの検討を行うこととしているか。
     また、説明態勢の改善に取り組んだ後に媒介した商品、取引に関する苦情相談等を確認し、当該取組みの効果を確認することとしているか。
     なお、検証に当たっては、特に、III-2-9-1(苦情等対処に関する内部管理態勢の確立)に関する苦情等の取扱体制の実効性に留意する。

  • マル2優越的地位の濫用が疑われる等の重大な苦情等の検証に当たっては、検証の客観性・適切性を確保する観点から、苦情等の発生原因となった営業店担当者等の報告等のみを判断の根拠とせず、必要に応じ、本部等の検証部署の担当者が苦情者等に直接確認するなどの措置を適切に講じる態勢となっているか。

  • マル3反社会的勢力との絶縁等民事介入暴力に対する適切な対応態勢が整備されているか。

 
V-1-2-1-3 監督手法・対応
 顧客への説明態勢及びそれを補完する相談苦情処理機能が構築され機能しているかどうかは、顧客保護及び利用者利便の観点も含め、預金等媒介業者の健全かつ適切な業務運営の基本にかかわることから、関係する内部管理態勢は高い実効性が求められる。
 当局としては、日常の監督事務や、事故等届出等を通じて把握された預金等媒介業者のこれらの内部管理態勢に関する課題については、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて金融サービス提供法第35条第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、預金等媒介業者における自主的な業務改善状況を把握することとする。また、金融サービス仲介業の健全かつ適切な運営の確保又は顧客保護の観点から重大な問題があると認められる場合(例えば、法令の趣旨に反し重要な社内規則等の作成自体を怠っていたことや顧客に対し虚偽の説明を行っていたことが確認された場合など)には、金融サービス提供法第37条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。さらに、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、金融サービス提供法第38条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。
 

V-1-2-2 預金・リスク商品等の販売・説明態勢

V-1-2-2-1 意義
 預金等媒介業者は、預金等媒介業務を行うに際し預金等に関する情報提供を行わなければならないとされており(金融サービス提供法第25条、準用銀行法第52条の44条第2項、仲介業者等府令第49条)、特に仲介業者等府令第50条第1項に定める金融商品を取り扱う場合には、預金等との誤認を防止するために適切な説明を行うこととされている。また、預金等媒介業者は、その行う業務の内容及び方法に応じ健全かつ適切な業務運営を確保するための措置に関する社内規則等を整備し、当該社内規則等に基づいて業務が運営されるための十分な体制を整備することとされている(金融サービス提供法第26条及び仲介業者等府令第35条)。
 リスク商品の販売に当たっては、金融サービス提供法のみならず金融商品取引法などの関係法令の規定も踏まえた上で、上記の体制整備を行う必要がある。
 特に、金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動によりその元本に損失が生ずるおそれがある預金又は定期積金等(以下「特定預金等」という。)については、金融商品取引法の行為規制が準用され、契約締結前の書面交付義務、広告等の規制等の対象とされていることにも留意する必要がある。(金融サービス提供法第31条第2項、仲介業者等府令第48条、第66条から第90条、第92条、第93条、第100条、第106条、第110条)
 
V-1-2-2-2 主な着眼点
 こうした観点から、以下のような態勢が整備されているかについても検証するものとする。その際、預金等媒介業者と顧客が契約を締結しようとする銀行等との間の顧客に対する情報の提供及び説明に関する役割分担を適切に踏まえ、機械的・画一的な取扱いとならないよう配慮するものとする。
 

(1)全社的な内部管理態勢の確立

  • マル1顧客への説明態勢に関する全社的な内部管理態勢の確立に関し、取締役会が適切に機能を発揮しているか。

  • マル2法令の趣旨を踏まえた社内規則等の作成

    • イ.業務の内容及び方法に応じた説明態勢が社内規則等で明確に定められているか。
    •   特に、特定預金等のリスク商品を取り扱う場合には、それぞれの類型に応じた態勢整備がなされているか。
    •  さらに、インターネット取引等の異なる取引方法に応じた態勢整備がなされているか。
    • ロ.顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的に応じた説明態勢が社内規則等で明確に定められているか。
  • マル3法令の趣旨を踏まえた社内の実施態勢の構築

    • イ.社内規則等に基づいて業務が運営されるよう、研修その他の方策(マニュアル等の配布を含む。)が整備されているか。
    • ロ.説明態勢等の実効性を確保するため、検査・監査等の内部牽制機能は十分発揮されているか。
    • ハ.説明態勢等の実効性の検証を踏まえて、金融商品販売態勢の見直しを行っているか。
  • マル4金融サービス提供法等を踏まえた対応
     金融サービス提供法第26条並びに仲介業者等府令第33条及び第50条等の観点から、金融商品の販売に際しての顧客への説明方法及び内容が適切なものとなっているか。また、金融サービス提供法上の勧誘方針の策定・公表義務の趣旨に鑑み、適正な勧誘の確保に向けた説明態勢の整備に努めているか。

  • マル5不公正取引との誤認防止
     優越的な地位の濫用の防止のための態勢整備に当たっては、顧客が「当該取引が融資に影響を与えるのではないか」との懸念を有している可能性があることを前提に、優越的な地位の濫用と誤認されるおそれのある説明を防止する態勢が整備されているか。

 

(2)預金等の受入れ(特定預金等の受入れを除く。)

 金融サービス提供法第26条及び仲介業者等府令第49条の規定の趣旨を踏まえ、預金等の受入れの媒介に際し、預金者等に対する情報提供や預金者等の求めに応じた商品情報の説明を適切に行うための態勢が整備されているか。例えば、以下の点に留意する。
・ 変動金利預金で金利設定の基準や方法が定められている場合には、これらの基準等及び金利情報の適切な提供を行う態勢が整備されているか。
 

(3)特定預金等の受入れ

 特定預金等については、金融商品取引法の行為規制が準用されていることに鑑み、監督上の着眼点については、III-2-6、VII-1-3、VII-1-4(1) マル1、VII-1-4(1) マル2、VII-1-4(1) マル3、VII-1-4(1) マル4、VII-1-4(1) マル5等を参照するものとする。
 特に、通貨の価格の変動によりその元本について損失が生ずるおそれがあること等の詳細な説明を行う態勢が整備されているかに留意するものとする。
 例えば、以下の事項について、契約締結前交付書面を交付して説明することとしているか。
  • イ.中途解約時に、違約金等により元本欠損が生ずるおそれがある場合には、その違約金等の計算方法(説明時の経済情勢において合理的と考えられる前提での違約金等の試算額を含む。)。
  • ロ.外貨通貨で表示される特定預金等であって、元本欠損が生ずるおそれのある場合にあってはその旨及びその理由。
 
V-1-2-2-3 監督手法・対応

(1)リスク商品等の販売・説明態勢等については、金融商品取引法などの関係法令等に定められている規制に沿った業務運営を通じ確保されていくものであるが、例えば、検査結果通知のフォローアップ、事故等届出書の受理、相談・苦情等の分析などを端緒として、関係法令等に定められている規制に沿った業務運営の確保、適切なリスク商品等の販売・説明態勢等の有効性等に疑義が生じた場合、顧客を誤解させるおそれのある表示を行うなど禁止行為に該当する疑義がある場合には、原因及び改善策等について関係法令等に照らしつつ深度あるヒアリングを行い、必要な場合には、関係法令に基づく報告徴求等に併せて金融サービス提供法第35条第1項に基づく報告を求めることを通じて、着実な改善を促すものとする。
 また、重大な問題があると認められる場合には、関係法令に基づく業務改善命令等に併せて金融サービス提供法第37条に基づき業務改善命令を発出するものとする。

(2)さらに、検証の結果、経営としてV-1-2-2-1の法令の趣旨に反し重要な社内規則等の作成自体を怠っていたことや顧客に対し虚偽の説明を行っていたことが確認された場合など重大な法令違反と認められるときは、金融サービス提供法第38条に基づく行政処分(例えば、社内規則等の作成等の十分な体制整備がなされるまでの間の業務の一部停止)を検討する必要があることに留意する。

 

V-1-2-3 その他の説明態勢に係る留意事項

 預金等媒介業者における利用者保護のための情報提供・相談機能等に関する監督は、V-1-2-1及びV-1-2-2のほか、以下の(1)から(3)に留意する。
 

(1)優越的地位の濫用と誤認されかねない説明を防止するための態勢

 預金等媒介業者が他業を兼業する場合には、預金等媒介業務に係る業務及び兼業業務に係る業務を行うに際して、特に独占禁止法上問題となる優越的地位の濫用と誤認されかねない説明を防止する態勢が整備されているかを確認するものとするが、例えば、V-1-1(1)及びV-2-3-2(4)に掲げる行為は、優越的地位の濫用に該当する行為となり得る点に留意する必要がある。
 

(2)預金等との誤認を防止するための体制(仲介業者等府令第50条)

 預金等媒介業者が金融商品の販売の媒介を行う場合には、預金等との誤認防止のための態勢整備が必要であることにも留意する。
 

(3)顧客情報管理

  • マル1顧客情報管理については、基本的にIII-2-2に準じるものとするが、預金等媒介業者が他業を兼業する場合には、預金等媒介業務で得た顧客情報が顧客の同意なく兼業業務に流用されることのないよう、顧客情報を適正に管理するための方法や体制(例えば、組織・担当者の分離、設備上・システム上の情報障壁の設置、情報の遮断に関する社内規則の制定及び研修等社員教育の徹底等)の整備が行われているかどうかについて留意する。

  • マル2特に、非公開金融情報及び非公開情報(なお、顧客の属性に関する情報(氏名、住所、電話番号、性別、生年月日及び職業)は個人情報であるが、非公開金融情報及び非公開情報に含まれない。)の取扱いに関する事前の同意(仲介業者等府令第55条第7号)については、例えば以下のような適切な方法により事前に当該顧客の同意を得るための措置を講じているかについて確認することとする。

    • イ.対面の場合
    •  事前に、書面による説明を行い、契約申込みまでに書面による同意を得る方法
    • ロ.郵便による場合
    •  事前に、説明した書面を送付し、銀行等への提供の前に、同意した旨の返信を得る方法
    • ハ.電話による場合
    •  事前に、口頭による説明を行い、その後速やかに当該提供について説明した書面を送付(電話での同意取得後対面にて顧客と応接する場合には交付でも可とする。)し、契約申込みまでに書面による同意を得る方法
    • ニ.インターネット等による場合
    •  事前に、電磁的方法による説明を行い、電磁的方法による同意を得る方法

V-2 諸手続(預金等媒介業務)

V-2-1 登録申請に係る事務処理

V-2-1-1 登録申請に当たっての留意点

V-2-1-1-1 登録の要否

(1)登録の要否の判断基準等

 登録の要否については、預金等の受入れ、資金の貸付け又は手形の割引、若しくは為替取引を内容とする契約(以下「預金等の受入れ等を内容とする契約」という。)の成立に向けた一連の行為における当該行為の位置付けを踏まえた上で総合的に判断する必要があり、一連の行為の一部のみを取り出して、直ちに登録が不要であると判断することは適切でないことに留意する。
 

(2)登録が必要である場合

 例えば、以下の マル1から マル3のいずれか一つの行為でも業務として行う者は、原則として、金融サービス提供法第12条に規定する金融サービス仲介業の登録を受ける必要があることに留意する。
  • マル1預金等の受入れ等を内容とする契約の締結の勧誘

  • マル2預金等の受入れ等を内容とする契約の勧誘を目的とした商品説明

  • マル3預金等の受入れ等を内容とする契約の締結に向けた条件交渉

 

(3)登録が不要である場合

  • マル1顧客のために、預金等の受入れ又は為替取引を内容とする契約の媒介を行う者については、金融サービス仲介業の登録は不要である。
      ただし、例えば、銀行と当該者との間で合意された契約上又はスキーム上は顧客のために行為することとされている場合でも、当該者が実務上、その契約若しくはスキームに定められた範囲を超えて又はこれに反し、実質的に銀行のために媒介業務を行っている場合には、登録が必要となる場合があることに十分留意する必要がある。

    • (注1)「資金の貸付け又は手形の割引」を内容とする契約の締結の媒介に関しては、顧客のために行う者であっても、原則として登録が必要である点には留意が必要である。
    • (注2)「顧客のために」とは、顧客からの要請を受けて、顧客の利便のために、顧客の側に立って助力することをいう。
  • マル2媒介に至らない行為を銀行又は顧客から受託して行う場合には、金融サービス仲介業の登録を得る必要はない。
     例えば、以下のイからニに掲げる行為の事務処理の一部のみを銀行から受託して行うに過ぎない者は、金融サービス仲介業の登録が不要である場合もあると考えられる。

    • イ.商品案内チラシ・パンフレット・契約申込書等の単なる配布又は交付若しくは提供
      • (注)このとき、銀行名や同銀行の連絡先等を伝えることは差し支えないが、配布又は交付若しくは提供する資料の記載方法等の説明をする場合には、媒介に当たることがあり得ることに留意する。
         また、比較サイト等の商品情報の提供を主たる目的としたサービスにおいて銀行等から提供を受けた商品案内等のコンテンツを単にホームページ上に転載することは差し支えないが、加工したコンテンツを掲載したり、例えば、自らが推奨する商品のコンテンツを上位に表示されるようなデザインやアルゴリズムの仕組みを設けること等をしたりする場合には、媒介に当たることがあり得ることに留意する。
    • ロ.契約申込書及びその添付書類等の受領・回収
      • (注)このとき、単なる契約申込書の受領・回収又は契約申込書の誤記・記載漏れ・必要書類の添付漏れの指摘を超えて、契約申込書の記載内容の確認等まで行う場合は、媒介に当たることがあり得ることに留意する。
    • ハ.金融商品説明会における一般的な銀行等の取扱商品の仕組み・活用法等についての説明
    • ニ.勧誘行為をせず、単に顧客を銀行等に紹介する業務
      • (注)上記「紹介」には、以下の行為を含む。
      • a.当該業者の店舗に、銀行等が自らを紹介する宣伝媒体を据え置くこと又は掲示すること。
      • b.当該業者と銀行等の関係又は当該銀行等の業務内容について説明を行うこと。
      • c.銀行等のサイトへの単なるリンクの設定のみを行い、金融サービス契約の締結に至る交渉や手続は当該銀行等と顧客との間で行い、当該契約締結に当たり当該業者は関与をもたないこと。
  • マル3銀行から委託を受けて、営業所又は事務所内にATMのみを設置する行為については、当該ATMが銀行法施行規則第35条第1項第4号の「無人の設備」に該当する場合には、金融サービス仲介業の登録は不要である。

 

V-2-2 添付書類

(1)「金融サービス仲介業務の内容及び方法として内閣府令で定めるものを記載した書類」(金融サービス提供法第13条第2項第3号)

  • マル1預金等媒介業者に関しては、業務の内容及び方法に次の事項が記載されているか否かを確認するものとする。

    • イ.取り扱う金融サービス提供法第11条第2項各号に規定する契約の種類(預金の種類並びに貸付先の種類及び貸付けに係る資金の使途を含む。)
      • (注)上記イの「契約の種類」は、以下に掲げるところにより記載されているかを確認する。
      • a.「預金の種類」として、例えば、円貨・外貨の区分ごとの当座預金・普通預金・貯蓄預金・通知預金・定期預金の別が記載されているか。
      • b.「貸付先の種類」として、例えば、消費者・事業者の別が記載されているか。
      • c.「貸付けに係る資金の使途」として、特定の使途がある場合は当該使途(生活費、住宅購入資金、自動車購入資金、教育費など)が、使途が特定されていないものについてはその旨が、記載されているか。
    • ロ.金融サービス仲介業者が預金等媒介業務の一部又は全部を第三者に委託する場合においては、その旨及び預金等媒介業務受託者の名称
    • ハ.金融サービス仲介業の実施体制
      • (注)上記ハの「実施体制」には、準用銀行法第52条の45各号に掲げる行為その他金融サービス仲介業(預金等媒介業務に限る。)を適正かつ確実に行うことにつき支障を及ぼす行為を防止するための体制のほか、次に掲げる場合の区分に応じ、それらに掲げる体制を含むものとする。
      • a.電気通信回線に接続している電子計算機を利用して預金等媒介業務を行う場合 顧客が当該預金等媒介業者と他の者を誤認することを防止するための体制
      • b.兼業業務(預金等媒介業務及び預金等媒介業務に付随する業務以外の業務をいう。以下同じ。)を行う場合 預金等媒介業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いのための体制
 

(2)「金融サービス仲介業務を適確に遂行するに足りる能力を有することを明らかにする書面」(仲介業者等府令第12条第3号)

  • マル1「金融サービス仲介業を適確に遂行するに足りる能力を有することを明らかにする書面」については、III-3-1-3(7)を参照するほか、以下の事項が記載されているかを確認する。

    • イ.その行う預金等媒介業務の業務に関する十分な知識を有する者及びその知識を有する者が当該知識を習得した方法(当該知識を有することを明らかにする書面がある場合には当該書面を含む。)並びに当該者の配置予定先
      • (注1)その行う預金等媒介業務の業務に関する十分な知識とは、当該業務を健全かつ適切に運営する上で必要となる知識のことをいい、例えば、その行う預金等媒介業務の業務の実務に関する知識、金融サービス提供法、銀行法、個人情報保護法、犯収法、外為法等の法令に関する知識などが考えられる。
      • (注2)その行う預金等媒介業務の業務に関する十分な知識を有する者は、「その行う預金等媒介業務の業務に係る法令等の遵守を確保する業務に係る責任者」又は、「法令等の遵守の確保を統括管理する業務に係る統括責任者」として配置されているかを確認する。
      • (注3)その行う預金等媒介業務の業務に関する十分な知識を有する者は、上記(注1)に記載の法令等についての専門的な知識が必要となるほか、次に掲げる知識も必要となることに留意する。
        • a.「その行う預金等媒介業務の業務に係る法令等の遵守を確保する業務に係る責任者」に配置される場合
        •  民法、商法、会社法、刑法等の基本法につき、当該預金等媒介業務の業務に関連する部分についての専門的な知識
        • b.「法令等の遵守の確保を統括管理する業務に係る統括責任者」に配置される場合
        •  民法、商法、会社法、刑法等の基本法につき、当該預金等媒介業務の業務に関連する部分のみならず広く法令等遵守にかかわる事項についての専門的な知識
      • (注4)申請者が個人(二以上の事業所で預金等媒介業務を行う者を除く。以下同じ。)であるときは、上記(注1)及び(注3)に記載する知識を有する必要があることに留意する。
    • ロ.その行う預金等媒介業務の業務に携った経験を有する者の経歴(当該経験を有することを証する書面がある場合には当該書面を含む。)及び当該者の配置予定先
  • マル2その行う預金等媒介業務の業務に携った経験を有する者の経歴は、勤務先会社名、部署、役職、配属年月日、在籍期間、担当業務等、当該者の経験を正確に把握するために必要な記載がなされているかを確認する。

 

V-2-3 登録審査に当たっての留意点

V-2-3-1 業務遂行能力に関する審査

 金融サービス提供法第15条第1号タの「金融サービス仲介業を適確に遂行するに足りる能力」の審査は、登録申請書及び添付書類のほか、適宜、その他の書類又は資料を参考にするとともに、必要に応じ、ヒアリングや追加資料の提出など申請者の協力を得て実施することとする。
 

(1)当座預金の受入れを内容とする契約の締結の媒介、金融サービス提供法第11条第2項第2号に掲げる行為を行う場合の留意事項

  • イ.申請者が個人(二以上の事務所で金融サービス仲介業を行う者を除く。)であり、特別預金等媒介行為(当座預金の受入れを内容とする契約の締結の媒介又は金融サービス提供法第11条第2項第2号に掲げる行為(銀行が受け入れたその顧客の預金等又は国債を担保として行う貸付契約に係るもの及び事業以外の用に供する資金に係る定型的な貸付契約であってその契約の締結に係る審査に関与しないものを除く。)をいう。以下イ及びロにおいて同じ。)を行う場合にあっては、次のマル1又はマル2に掲げる特別預金等媒介行為の内容の区分に応じ、当該マル1又はマル2に定める者であるかを確認する。
    • (注)「定型的な貸付契約」とは、契約締結の可否や契約条件の設定の手続等が定型化されているために、融資担当者の裁量の余地の乏しい貸付をいう。
       V-2-3-2(1)の「規格化された貸付商品」に係る貸付契約は、この「定型的な貸付契約」に含まれる。
    • マル1当座預金の受入れを内容とする契約の締結の媒介 当座預金業務若しくは資金の貸付け業務に従事したことのある者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者であって、当座預金業務を的確に遂行することができると認められる者

    • マル2金融サービス提供法第11条第2項第2号に掲げる行為 資金の貸付け業務に従事したことのある者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者であって、当該業務を的確に遂行することができると認められる者

  • ロ.申請者が法人(二以上の事務所で預金等媒介業務を行う個人を含む。)であるときは、その行う預金等媒介業務の業務に係る法令等の遵守を確保する業務に係る責任者(当該預金等媒介業務の業務に関する十分な知識を有するものに限る。)を当該預金等媒介業務の業務を行う営業所又は事務所(主たる営業所又は事務所以外の営業所又は事務所(以下ロにおいて「従たる営業所等」という。)に他の従たる営業所等における当該預金等媒介業務の業務を管理する部署を置いた場合にあっては、当該部署を置いた従たる営業所等)ごとに、当該責任者を指揮し法令等の遵守の確保を統括管理する業務に係る統括責任者(当該預金等媒介業務の業務に関する十分な知識を有するものに限る。)を主たる営業所又は事務所に(従たる営業所等において預金等媒介業務を営まない場合を除く。)、それぞれ配置しているかを確認する。ただし、特別預金等媒介行為を行う場合にあっては、これらの責任者又は統括責任者のうちそれぞれ一名以上は、次のマル1又はマル2に掲げる特別預金等媒介行為の内容の区分に応じ、当該マル1又はマル2に定める者であること。
    • マル1当座預金の受入れを内容とする契約の締結の媒介 当座預金業務若しくは資金の貸付け業務に従事したことのある者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者であって、当座預金業務を的確に遂行することができると認められる者

    • マル2金融サービス提供法第11条第2項第2号に掲げる行為 資金の貸付け業務に従事したことのある者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者であって、当該業務を的確に遂行することができると認められる者

 

(2)資金の貸付け業務に従事したことのある者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者

  • マル1上記(1)の「資金の貸付け業務に従事したことのある者」とは、例えば、金融機関や貸金業者等において融資業務に従事したことのある者のことをいう。なお、「資金の貸付け業務」とは単に書類の取次ぎ等のみを行うことを指すものではなく、申請者が預金等媒介業務として取り扱う貸付け業務に応じた内容である必要があることに留意する。

  • マル2上記(1)の「資金の貸付け業務に従事したことのある者と同等以上の能力を有すると認められる者」については、例えば、公認会計士、税理士、財務コンサルタント、投資銀行業務担当者 、商工会議所等の経営相談員等などとして企業財務の分析等に従事した経験を有する者はこれに該当すると判断できる場合があること 、申請者が預金等媒介業務として取り扱う貸付け業務に応じた知識及び経験について資格・業務経歴に照らして判断する必要があることに留意する。

  • マル3資金の貸付け業務に従事したことのある者及びこれらの者と同等以上の能力を有すると認められる者であっても、当該預金等媒介業務の業務に関する十分な知識を有する必要があることに留意する。

 

(3)社内規則に係る主な留意点(金融サービス提供法第15条第1号ソ、仲介業者等府令第35条)

  •  預金等媒介業者は、その行う預金等媒介業務の内容及び方法に応じ、当該預金等媒介業務に関する社内規則を定める必要があるが、登録の審査において社内規則の内容を確認するに際しては、例えば、以下のマル1からマル6につき留意することとする。
    • マル1契約の締結の勧誘及び契約の内容の明確化の方法
       社内規則に、顧客への勧誘、契約の内容の明確化及び説明並びに契約締結時の書面交付の方法が具体的に定められており、法令等を遵守した適切な業務を行うこととしているか。また、それら法令等の遵守状況について適切に検証する方法等が具体的に定められているか。

    • マル2帳簿書類の作成及び保存の方法
       社内規則に、仲介業者等府令第138条に掲げる帳簿書類の作成及び保存の方法が具体的に定められているか。

    • マル3研修の実施方法
       社内規則に、法令等を遵守し、金融商品の適切な勧誘、説明及び書面交付を顧客に行えるよう営業の担当者等に適切に研修等を実施できる体制整備に関する規定が具体的に定められているか。

    • マル4内部管理態勢の整備
       社内規則に、内部管理に関する業務の具体的な運営方法及び社内における責任体制が明確に記載されているか。

    • マル5顧客情報の管理

      • イ.社内規則に、顧客情報を適正に管理するための方法や体制(例えば、組織・担当者の分離、設備上・システム上の情報障壁の設置、情報の遮断等)その他III-2-2に準じた取扱いについて、具体的に定められているか。
      • ロ.社内規則に、非公開金融情報及び非公開情報(仲介業者等府令第38条に規定するものをいう。以下同じ。)の取扱いに関し、事前に顧客の同意を得るための措置について、具体的に定められているか。
    • マル6社内規則の周知方法
       社内規則の内容を預金等媒介業務に携わる全役職員に周知徹底することとしているか。


V-2-3-2 他業の兼業に関する審査

 金融サービス提供法第15条第4号の他業の兼業に関する審査は、仲介業者等府令第16条に掲げる事項に配慮して行う必要がある。その主な留意点は、例えば、以下の(1)から(4)のとおりである。
 審査は、登録申請書、添付書類のほか、適宜、その他の書類又は資料を参考にするとともに、必要に応じ、ヒアリングや追加資料の提出など申請者の協力を得て実施することとする。
 なお、主たる兼業業務の内容と預金等媒介業務(金融サービス提供法第11条第2項第2号に掲げる業務に限る。)との関係については、仲介業者等府令第16条第1項第1号イ及び第2号等に規定されているところであるが、これらを整理すると別紙2のとおりとなる(ただし、他業の兼業に関する審査を行う場合には、必ずしも別紙2を機械的に適用するのではなく、個々のケースに即して、当該申請者が兼業を行うことにより預金等媒介業務の適正かつ確実な運営に支障を及ぼすおそれがないかについて、十分に検証しなければならないことに留意する。)。
 

(1)「規格化された貸付商品」(仲介業者等府令第16条第1項第1号イ及び第2号ロ(2))

 「規格化された貸付商品」とは、資金需要者に関する財務情報の機械的処理のみにより、貸付の可否及び貸付条件が設定されることがあらかじめ決められている貸付商品をいうが、ここでいう「財務情報」とは、財務諸表の各勘定科目など、資金需要者の財務に関連するデータで、融資担当者の裁量の働く余地のないものを指す。
 

(2)「貸付資金で購入する物品又は物件を担保として行う貸付契約に係るもの」(仲介業者等府令第16条第1項第2号ロ(1))

 「貸付資金で購入する物品又は物件を担保として行う貸付契約」には、例えば、住宅ローン(貸付資金で購入する住宅に抵当権を設定)や自動車ローン(貸付資金で購入する自動車に譲渡担保権を設定、又は所有権を留保する等)などが含まれる。
 

(3)「主たる兼業業務の内容」(仲介業者等府令第16条第1項第1号及び第2号)

 預金等媒介業者の行う兼業業務が「主たる」兼業業務に該当するか否かは、当該業務に係る費用・売上・収益、従事する人員の役職・人数及び当該業務に要する時間など当該兼業業務の規模を総合的に勘案し判断するものとする。
 

(4)「兼業業務による取引上の優越的地位を不当に利用」する行為(仲介業者等府令第16条第1項第1号ロ)

 「兼業業務による取引上の優越的地位を不当に利用」する行為については、「金融機関の業態区分の緩和及び業務範囲の拡大に伴う不公正な取引方法について」(平成16年12月1日:公正取引委員会(再掲))も参考とするが、例えば、次に掲げる行為は、兼業業務による取引上の優越的地位を不当に利用する行為に該当し得る。
  • マル1顧客に対し、預金等媒介業務として媒介する預金の受入れを内容とする契約(その他金融サービス提供法第11条第2項各号に掲げる行為についても同様。以下マル2からマル4において同じ。)の締結に応じない場合には兼業業務に 係る取引を取りやめる旨又は兼業業務に関し不利な取扱いをする旨を示唆し、預金の受入れを内容とする契約を締結することを事実上余儀なくさせること。

  • マル2顧客に対する兼業業務の取引を行うに当たり、預金等媒介業務として媒介する預金の受入れを内容とする契約の締結を要請し、これに従うことを事実上余儀なくさせること。

  • マル3顧客に対し、預金等媒介業務の競争者と取引する場合には兼業業務の取引を取りやめる旨又は兼業業務に関し不利な取扱いをする旨を示唆し、自己の競争者(銀行及び銀行代理業者を含む。マル4において同じ。)と預金の受入れを内容とする契約を締結することを妨害すること。

  • マル4顧客に対する兼業業務の取引を行うに当たり、自己の競争者と預金の受入れを内容とする契約を行わないことを要請し、これに従うことを事実上余儀なくさせること。

V-3 監督に係る事務処理

V-3-1 監督部局間の連携

(1)監督部局は、金融サービス仲介業者が預金等媒介業務を第三者に委託する場合、特に、いわゆるフランチャイズ形式などにより多数又は広範囲に業務を展開する場合は、当該委託をする金融サービス仲介業者により適切な指導監督がなされているか等の観点から、より密接に連携する必要があることに留意すること。
なお、預金等媒介業務の委託を行うことにより多数又は広範囲に業務を展開する意向を把握した場合、速やかに金融庁に連絡することとする。

(2)情報提供に当たっては、その方法を問わず、速やかに行うよう努めるものとする。

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