金融行政モニター委員と金融庁幹部との意見交換会(令和6年3月25日) 議事要旨

議事要旨

・日時:

令和6年3月25日(月曜)17時00分~18時00分

・場所:

中央合同庁舎第7号館5階 委員会室

・議事要旨:

金融庁から、金融行政モニター制度の運用について説明した後、金融行政モニター委員が問題と考えている事例等について、以下のような議論が行われた。(○:金融行政モニター委員の発言、●:当庁の発言)

(資産運用立国)

  •  海外投資家は、金融庁の資産運用立国に関する発信力を非常に評価している。金融庁の発信力は、コーポレートガバナンスコードの熟成とともに、今回の株高を招く要因の一つになったと思う。このように金融庁の発信力が、日本に良い影響を与えていることをもっとアピールしていけるといいと思う。
  •  資産運用立国が、シンガポールのように他国からお金を引き寄せて、資産運用業を国の商売としようとしているのか、米国のように貯蓄から投資へという流れを作りたいのか、何を目指しているのかわからない。日本を豊かにしたいのであれば、シンガポールのように外から日本にお金を持ってくることを考えるべきではないか。
     また、未公開株やスタートアップ投資といったものも絡んでいるので、そういったものに個人が入り込んでいかないよう留意してほしい。
  •  インバウンド(日本への投資)とアウトバウンド(海外への投資)両方が相まって本当の意味で資産運用立国が実現できると思う。特に、インバウンドには、企業のガバナンス改革や資本効率を意識した経営、それらに関する意識改革等、色々な取組みが必要であり、間接的なものも全部含めて、両方の動きを促進していくような資産運用立国を目指していくべきだと考えている。

(金融教育、金融経済教育推進機構)

  •  消費者教育、金融教育関係者の間で、金融経済教育推進機構(以下、機構)の設立が関心の的となっている分、標準教材や認定アドバイザーのあり方については、厳しい意見も出てくる可能性があるが、タイムリーに、真摯に、誠実に厳しい声を受け止めて、対応を進めてほしい。
  •  機構運営費の大部分を業界団体から拠出してもらうことは、ありがたい反面、中立性の観点で懸念があり、ガバナンスのための情報開示とともに、持続可能な機構のあり方についても検討してほしい。
  •  貯蓄から投資へという流れの推進は重要だが、現在の金融教育はパーソナルマネジメント、リスクマネジメントでいうと資産サイドの話が中心となっている。例えば、住宅ローン金利で変動・固定どちらを選ぶか、といった負債サイドでリスクを取るか否かも非常に大切なことなので、負債サイドの金融教育もしっかりやってほしい。
  •  設立当初は、色々な問題が出てくる可能性もあるが、国民の金融リテラシー向上という機構の大目的のもと、活動しながら改善していきたい。色々なご意見を頂戴すると思うが、真摯に受け止めて対応していきたい。

(事業性融資、企業価値担保権)

  •  企業価値担保制度がより活用されるには、金融機関による事業性融資の実務スキル向上が必須。企業価値担保権の設定には、セキュリティトラスト(担保権の信託)が必須とされているが、今後は、契約書条項の標準化のほか、金融機関によるモニタリング手法の高度化、コベナンツ融資の標準化といった実務的な検討がより重要となると思うので、金融庁としてそうした動きを後押ししてほしい。
  •  制度を創設しただけでは意味がなく、いわゆる事業を見る目、体制を金融機関が育てることが必須だと思うので、しっかり後押ししていきたい。
  •  色々な理由があって、金融機関の事業性融資の目利き力が落ちているところに、この制度が一矢報いることを期待しているが、それだけでは駄目で、例えば、もっとエクイティプレイヤー的な視点を持ってデットを出すなど、新制度の活用だけではなく、融資の根本的なところに対応してもらいたいと思っている。金融庁としても後押ししていきたい。

(保険関係)

  •  保険業界特有の競争環境や慣行に対し、政策保有株式の解消や代理店管理態勢の強化といった対応は必要だと思うが、そもそもの儲け方やビジネスモデルがこのままで良いか、という点に着目した金融監督も検討してほしい。
  •  保険募集における特別利益(以下、特利)の提供の禁止に関する意見を担当する中で、保険ビジネスにおいて、国民が、自分の損得を超えて「公正か」ということに敏感な社会になってきたのかもしれないと感じる。そういった中で今回のような大きな事件が損保業界で発生したことから、法律を超えたところで、今のあり方がどうなのか、見直すべきではないか。
     顧客本位の業務運営は、元々、資産運用の世界で出てきた考え方であり、これまで保険会社には当事者意識がなかったのではないか。そのため、保険会社には、実際に7つの原則が自らに当てはまるのかを考え直していただき、保険業界自身で顧客本位の業務運営を見直し、自主的なプリンシプルという形で作り直していただくことが望ましい。金融庁はそれをサポートしてほしい。
  •  この1年、特利の提供禁止に関する意見が多かったように思うが、これは難しい問題。保険商品は原価が事後的に決まるため、一律に線を引くことは難しく、規制をかけてもすぐに抜け穴ができてしまうため、理想論ではあるが、インセンティブを考慮した規制、チャネル別の制度設計を考えなければならない。
  •  損保業界には、今回起こった事件をきっかけに、仕事の仕方・考え方を根本から変えていただきたい。業界ベース、監督レベル、法律を駆使するなどの対応が考えられるが、根本的に問題を解決するには、保険会社が良い保険商品を作り、それを顧客に理解してもらい、保険商品の中身で勝負する業界になっていただく必要がある。どう監督していくかも重要であり、保険会社と対話しながら進めていきたい。

(投資運用関係業務のアウトソース)

  •  担当した意見に、資産運用会社と信託銀行とカストディ専門信託銀行の間での業務分担の不明確さを問題としたものがあった。今後、アウトソースが更に進むと金融監督がますます難しくなると思うので、より一層留意してほしい。
  •  このような問題の根本的な原因は、非競争領域に優秀な人材が配置されていないこと。大事な分野であり、資産運用立国を支えるベースにもなるので、適正な人事や資源配分を求めていきたい。

(規制の域外適用)

  •  日本に拠点を持たない海外業者による違法行為に対するエンフォースメントの確保について、真剣に取り組むべき時がきているように思う。その際は、複数の省庁間をまたいだ取組みが必要な場合もあると思うが、金融庁が主導的に連携を進めていただきたい。
  •  金融庁では、無登録の海外業者に対し警告を発して閉鎖勧告を行う等の対応を行っており、一定の効果を上げているが、各国当局との協調を含め、引き続きしっかり取り組んでいきたい。

(金融サービス利用者相談室)

  •  カスタマーハラスメントやクレーマーへの対応については、相談員の心身の安全確保や業務の効率性といった観点からも、謝絶する基準を明確化するとともに、金融庁全体の問題として組織的に対処する必要があるのではないか。
  •  行政当局として国民に対し丁寧に対応することは大切だが、一方でカスタマーハラスメント等への対策も必要。
     金融庁では、ADR機関等との連絡会議を行っており、先般、厚生労働省のカスタマーハラスメントに関する指針を議題に取り上げ、対応の必要性について申し上げたところ。引き続き関係機関とも連携しながら対応していきたい。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総合政策局総合政策課(内線3154、3716)

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