金融行政モニター委員と金融庁幹部との意見交換会
(令和7年3月25日)議事要旨

議事要旨

・日時:

令和7年3月25日(火曜)15時00分~16時00分

・場所:

オンライン会議

・議事要旨:

冒頭、金融庁から意見の受付状況等についてご紹介。その後、以下のようなテーマについて議論が行われた。(○:金融行政モニター委員、●:当庁幹部)

(保険関係)

金融行政モニター委員

  •  何を「公正」「フェア」と考えるかということに対する世の中の人々の感覚が変わってきている一方で、保険業界の考えがついていけてないと感じる。保険業界には、保険業法や監督指針だけを守っていれば良いという旧態依然とした部分があるため、金融庁はしっかりと指導すべき。また、保険に限った話ではないが、金融行政は専門性の高い分野であることから専門性の高い人材を育成していく必要があり、予算、機構・定員をしっかり要求して体制整備を図っていただきたい。

当庁幹部

  •  今後、保険業法の改正案を国会でご審議頂くことになるが、金融審等でご議論いただいた課題を解決していくには、法律に加えて政省令や監督指針での対応が重要である。特にビジネスのあり方にかかわる部分は、監督指針ですらなく、保険業界のビジネスをどう変えてもらうか、世界と日本のマーケットをどうつなげるか、といったことを業界の方々と話す必要がある。これらの点は、半年や一年で大きく変わるものではないが、ある意味大変な変革のチャンスの時期でもあると捉え、世間の期待に応えられるビジネスの世界を創っていきたいと考えている。
  •  保険監督の体制整備については、今後、機構・定員や予算の要求の中で可能な限り定員・予算増を認めて頂けるように努力していきたいと考えている。

金融行政モニター委員

  •  保険経済学の観点から申し上げれば、消費者教育や認証制度など、規制を補完するようなものも含めて制度設計をしていただきたい。業界任せにするのではなく、当局としてもっと踏み込んだ対応を期待する。そもそも、損保商品というのは、価格だけではなく、将来の事故への対応という見えない部分を評価しなければならない商品であり、それをどう見える化して消費者の理解を促進していくかを考えるとよりよい制度設計になるのではないか。ただ規制を行えばよいというのではない。

(NISA、金融経済教育)

金融行政モニター委員

  •  昨今の不祥事件は、若者が気軽にスマートフォンなどで日中に株式等を売買できる環境になったことも影響していると考えており、金融経済教育において、インサイダー取引に関する知識も取り扱っていただきたい。

当庁幹部

  •  インサイダー取引規制に関する知識の普及を金融教育の中で取り扱うべきとの指摘はごもっとも。一方で、NISA口座での買付のうち6割が投資信託の買付であり、株式の売買はNISA口座以外で行う方が多いという実態があるため、どういった層にどのような方法で周知していくことが効果的か、しっかり検討していきたい。

金融行政モニター委員

  •  NISAは大変好評と言われているが、理念や掛け声が先行している面もあるように思うため、バイアスのない実証的なデータを活用し、政策検証を行っていく必要があるのではないか。現在、ある程度のデータがたまってきていると思うので、例えば、研究者と金融庁で共同して実証的なデータを活用した分析・効果検証を行うなど、掛け声のみで終わらないようにしてほしい。

当庁幹部

  •  新NISAが昨年1月に始まって、分析の基となる実績データが徐々にそろってきているため、今後、データ分析や効果検証を行う体制を整えていかねばならないと感じている。その際には、NISAだけを評価するのではなく、金融経済教育がどれくらい浸透しているのか、そういったことも併せて総合的に評価していきたい。

(クロスボーダー収納代行への規制)

金融行政モニター委員

  •  本規制の立法目的が、マネロンなのか消費者保護なのかはっきりしないことで、国内の決済事業者は、自分たちが規制対象かどうかよくわからず混乱が生じている。さらに、こうした新しい分野のサービス、技術のイノベーションを既存の為替取引という概念で縛ってしまうことで、新規参入に対してチリング・エフェクト(萎縮効果)が発生してしまう。実務をもっとよく調べたうえで、立法を考えたほうがよかったのではないか。

当庁幹部

  •  規制外の新たなビジネスについては、取引先との契約上の守秘義務等により当局として実態把握がなかなか難しいという実態もあり悩ましいがところだが、我々としてはそれを調べたうえで、摩擦の少ない安定的でかつ安全な規制を入れていきたいと思っている。今後、内閣府令で適用除外を決めていく方針であるが、最近では色々と話を聞かせてくれる業者も増えてきたので、現実的に規制をかける必要がない事業者には内閣府令で対応するなど、引き続き、事業者から意見を聞きながら丁寧に対応していきたい。

(プロダクトガバナンス)

金融行政モニター委員

  •  プロダクトガバナンスや製販連携が謳われているが、販売会社と投信委託会社で情報連携して、実際に商品を購入した顧客属性を検証する必要があるなど、だんだんソフトローアプローチからハードローアプローチになってきて息苦しい。毎月分配型ファンドについて、現在でも生き残っているのは、資産を取り崩しても生活費に充てたいという投資家の要望もあるからなので、頭からそれを押さえつけるのは違うと思う。また、対象商品について金融庁の認識が遅れていると感じる。コモディティはリスクが高いとすぐに言いがちだが、実際は米国REITのインデックスのほうがボラティリティが高かったりする。商品の流動性や市場規模を考えた上で製販連携の考え方を打ち出すべきではないか。

(デジタル関連規制)

金融行政モニター委員

  •  デジタル関連の新たな分野、例えば暗号資産やステーブルコインなどの分野に世界的にお金が流れる潮流があり、そういった分野にどう規制を課していくのか、どう規制の適正化を図るのか、というのは非常に難しい課題だと思っている。政治的にはこの分野を推奨する流れだと承知しているが、適切に規制を及ぼし被害を最小化することについてますます検討が必要になると考えている。
  •  関連して、為替取引分析業者について、その役割を拡大していくことも重要だと感じている。立法当時には個人情報保護法の観点からやや慎重に考える必要があったと思うが、一般の事業者であれば個人情報保護法でやってはいけないことも、この為替取引分析業者であれば一定程度は認めるという方向もあり得ると考えており、そういったことも検討していく必要があると考えている。

(AI関連)

金融行政モニター委員

  •  AIが一般の業務で使われるようになってきている。金融機関でAIを利用したサービス、商品もあるし、リスク管理といった業務での適用も増えていると理解している。また、行政サービスへのAI活用も増えていくだろうし、検査・監督業務にどういった形で活用していくことが有効なのかも考えていく必要がある。

当庁幹部

  •  AIと金融行政に関しては、包括的な論点をまとめたディスカッションペーパーを3月4日に公表したところだが、これは完全なものではないと思っているので、今後も適宜リバイスをしながら金融行政での活用を進めていきたい。

(企業価値担保権)

金融行政モニター委員

  •  企業価値担保権については、金融機関の融資実務の変革を合わせて実施しなければ使われる制度にならないと思うので、当局として、金融機関の融資実務の変革・向上に取り組んでいただき、制度がより強力に活用されるよう推進していただきたい。

当庁幹部

  •  金融機関の実務に関わる話であり、確実に進めていかなければならないと感じている。

(昨今の不祥事件、金融犯罪)

金融行政モニター委員

  •  警察絡みの案件が増えてきたという印象がある。おそらくこれは社会の環境変化に金融が追い付いていないのではないか、今は時代の転換点にあるのではないかと感じている。従来の反社、闇バイトもそうだが、何かそういった世界と一般の人と金融が絡まったというか、それが広がりつつあるのではないかと思っている。不正行為による逮捕者も多かったなという印象。厳しいことを言うと、金融庁もその例外ではない。コーポレートガバナンスコード、スチュワードシップコード、企業開示制度を所管する役所として適正に対応する必要がある。市場の評価と同様に、世間の評価があるので、襟を正す必要があるのではないか。

当庁幹部

  •  貸金庫窃盗や証券会社元社員の不祥事件について、それぞれに管理の杜撰さなど個別の理由はあるが、全般的に言えることは、現場職員のインセンティブ構造がどうなっているかを経営陣がしっかりと理解し、当局も分かったうえで経営なり監督なりしていかなければならないということ。個別の問題は行政処分や法令・監督指針の改正で改善されていく部分があるのだが、根本の部分で経営陣や当局がしっかり分かっていたか、という点がある。国民の方々と接するのは現場の方なので、ここがしっかりしていないと「金融は信用できない」となってしまうので、どう再構築していくかが重要だと思っている。
  •  金融犯罪については、警察庁と様々なレベルで協力を重ねており、官民一体で協力していく話だと思うので、警察・金融機関・業界団体とも協力して連携していきたい。マネロンなど金融機関の現場にも負担をかける話は、警察庁とも連携のうえその負担にも配慮しながら検討していきたい。
  •  証券監視委としては不公正取引には厳正に対処するが、再発防止という点では、勧告事案をまとめた事例集を作っているので、一般投資家や、業界団体を通じて関連する業者等にも広く案内していきたい。SNSを通じた風説の流布のような案件があるが、当局はSNSにも目を光らせている、ということをPRしていくことも必要と考えている。
  •  当庁職員のインサイダー取引については、庁内の研修・教育を含めしっかりと対応して二度とこのような事案が起こらないようにしていかねばならない。

(国際情勢)

当庁幹部

  •  国際的な観点から申し上げると、FSBほか様々な国際的なフォーラムで議論があるが、金融庁としては、米国の政権が替わったことで、米国当局と緊密な連携をして同国の金融制度の動向を的確に把握し、それが国際的な金融規制にどう影響していくかを見極めるとともに、日本の立場をしっかりと持ちながらこうした議論をリードし貢献していくことが重要。

以上

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