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金融行政モニター委員と金融庁幹部との意見交換会
(令和8年3月31日)議事要旨
議事要旨
・日時:
令和8年3月31日(火曜)15時30分~16時40分
・場所:
中央合同庁舎第7号館12階 共用第二特別会議室
・議事要旨:
冒頭、金融庁から意見の受付状況等についてご紹介。その後、以下のようなテーマについて議論が行われた。(○:金融行政モニター委員、●:当庁幹部)
(貸金業法の柔構造化等)
- 事業性融資の促進に関し、貸金業法や金利規制が借主の属性等を問わない一律のルールになっていて、借主によっては過剰である。解釈論としても立法論としても検討すべき点が多い。
- 貸金業法については、昨年1月の「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」報告書においても同様の指摘を受けており、当庁としても問題意識は持っている。
他方、利息制限法や出資法の見直しに関しては論点が多く、簡単ではない。実務的には、全銀協において「新株予約権付融資に関する検討会」が開催され、解釈面での明確化が図られているところであり、今後もこうした取組を支援していきたい。
(信託を通じた有価証券取得に関する開示規制及び販売・勧誘規制の解釈・運用の合理化・明確化)
- 信託銀行などの信託受託者に有価証券を発行・販売する場合、受益者が適格機関投資家等のプロ投資家か否か、特定運用信託か指定運用信託か、金銭信託か金外信託かによって規制の適用が変わるはずである。しかしながら、企業内容等開示ガイドラインを不適切に反対解釈する事例を見かける。これは一例に過ぎないが、信託を通じた有価証券の取得に関する開示規制・販売(勧誘)規制について、全体的に解釈を整理すべきである。
- 企業内容等開示ガイドラインの当該箇所の記載の趣旨はルールを示すというより、例示による潜脱防止と理解しており、本来、反対解釈は適切ではない。また、ガイドラインは行政庁(金融庁・財務局)を拘束する性質のものであり、企業内容等開示ガイドラインA1-1-1において「法令等の解釈・適用に当たっては、法令の趣旨を踏まえた実質的な解釈・適用がなされることに留意する」とされている旨も周知していきたい。
(信託を通じた上場株式等の取得・保有に関する公開買付け(TOB)規制/大量保有報告規制の合理化・明確化)
- 信託銀行が信託財産において上場株式等を保有する場合、その株式数は、公開買付制度・大量保有報告制度において原則として信託銀行の株券所有割合・株券保有割合にカウントせず、例外的に議決権行使権限・投資権限を有する場合にカウントすることになっている。しかし、最近、信託銀行の受託者としての議決権行使は、重要な信託業務として認識され、その結果が公表されるなど意識が大きく変わってきている。また、信託財産に属する上場株式等は、経済的には固有財産とはまったく異なり、信託銀行が自らの都合で売り買いできるものではない。現在の原則と例外との線引きは、そのような実態にそぐわないように思われる。公開買付制度における特別関係者あるいは、大量保有報告制度における共同保有者と評価すべき場合に限ってカウントすべきではないか。
- 信託銀行における自己勘定と信託勘定では議決権行使基準・投資基準が異なるという前提が制度として担保されていない。そういう意味では実質的に「合算して扱う」整理が現実的で、議決権等が元々の投資家により留保されている場合には除くなどといった取り扱いが実務的には簡便的。
(日本に拠点を持たない海外事業者に対する金融規制(特にペナルティ)に関する域外適用・エンフォースメント)
- 日本に拠点がないと、無登録営業等の違反行為をしても、日本の刑事訴訟の対象とならないため、訴追できず、従って没収もできないと理解している。海外の事例などを研究して、例えば海外事業者に対する裁判所による禁止・停止命令、あるいは課徴金、行政没収等の導入について少なくとも検討はすべきではないか。特に、暗号資産については、組織的犯罪処罰法の改正によって、検察官への移転による没収方法が定められたが、その運用についてはなお検討の余地があるのではないか。
- 域外適用は非常に頭の痛い論点であり、特に暗号資産分野ではどう実効性を担保するかが課題。
足元、金融審議会の「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」においてご議論をいただいたところ、暗号資産取引に係る規制を金商法へ移すことにより、無登録業者への対応が強化され、証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告や裁判所への緊急差止命令の申立てができるようになるとともに、EMMoU(証券監督者国際機構(IOSCO)が策定した各国証券監督当局間の協議・協力及び情報交換に関する強化された多国間覚書)に基づく海外当局との調査協力が強化されて海外に対する執行面での助けになる側面はあると思われる。
(暗号資産規制の根拠法移行(金商法)に伴う「暗号資産の定義」の妥当性)
- 暗号資産に関する規制の根拠法が資金決済法から金商法へ移行するに当たって、暗号資産の定義を現行のまま使う前提となっている。現行の定義・ルールは暗号資産が決済のために用いられることを前提として整備されてきた。他方、移行の一つの理由として、暗号資産が資金決済の手段としてだけ使用されているわけではなく、むしろ投資対象として使われている実態を踏まえてということがある。
現状、何等か問題が生じているわけではないが、暗号資産に該当しなければ金商法が適用されず、無登録業者規制などの実効性にも影響するため、暗号資産に該当するか否かという論点がより一層問題になる事例が増えてくる可能性がある。移行後の実務の状況を見ながら、暗号資産の定義について慎重に見極めていく必要あり。
- 暗号資産の定義は、現時点において実務上一定程度ワークしており、金商法への移行時に混乱を生じさせない観点から同一定義を使用しているところ。移行後の実務動向を注視し、投資者保護の観点から過不足がないか、法令適用の状況も見ながら必要に応じ検討していきたい。
(ステーブルコイン規制の基本構造)
- 日本は世界に先駆けてステーブルコインに関する規制を導入したが、その後、各国でもステーブルコイン規制の整備が進む中、日本の規制の基本構造との整合性を改めて確認すべき。さらに、資金移動業者がパーミッションレス型の分散台帳を用いて発行する例があるが、必ずしも資金移動業者がステーブルコインを発行することを明確に念頭において議論をしていたわけではなかったことから、現行の資金移動業規制がそのようなステーブルコインのリスクに見合ったものとなっているか、国際的なルール規制の進展等も踏まえて再検討する余地があるのではないか。
- 資金決済法の令和4年改正時点ではパーミッションレス型分散台帳を用いたステーブルコインの発行は具体的に見られていなかったが、法制的には将来的にも対応し得るよう設計されていると承知している。米国等で信託受益権型が主流でない点は理解しているものの、諸外国の規制の整合性や状況を踏まえつつ、必要な制度設計は行ってまいりたい。
(官学共同の調査研究(NISA効果分析等))
- NISAが導入され、そろそろNISAに関する分析が必要ではないか。当方も研究の一環として家計における資産運用について分析をしているところであるが、NISAや金融資産の保有については、単に広く一般的にアンケートを行うだけでは方向性を見誤る可能性について最近分かってきた。個人の特性、資産・負債構成、収入・支出、調査対象者の家計内における役割を正しく見ないと結果が大きく違ってしまう。銀行等が持つ個人情報と関連付けないと、違う結果を見てしまうのではないか。欧米では20年ほど前から条件付きで銀行・証券口座情報の研究利用が広く認められている。日本でも官学民の共同研究の枠組みを考えてほしい。
- NISAの普及状況に関しては、地域や金融教育環境による差があり、民間の調査によると金融教育に触れる機会が少ない地域や職業の方ではNISA口座数が少ない傾向があるといった分析結果が得られている。金融庁としては、まずは、地域金融機関やJ‐FLECといった教育機関と連携し、こういった重点地域での金融教育を進めつつ、ご指摘のような個人の金融資産の保有状況等といった属性から深度ある分析を行うことで新たに見えてくるものがあると考えている。
当庁の金融研究センターでは、非公開の行政情報を用いた研究のための閲覧環境として、守秘義務が課された非常勤研究員としての受入れ等も整備しているが、人的制約もあり十分進んでいない。海外当局ではこうした取り組みが積極的に進められていることから、NISAに限らず、各分野の研究についてできることを拡げていきたい。 - 産学官の連携に関しては、非常に大事であり、様々な取り組みをしようとしている。東京大学や一橋大学と連携協定を締結しており、ビックデータの活用や、双方向の情報交換など、金融庁としてもアカデミックと連携し、互いに高め合うといった点に取り組んでいるところ。
(サステナビリティ投資)
- 米国を中心にサステナ投資の実績は落ち込んできているが、日本では金融庁のリーダーシップもあり、証券投資においても融資においてもそれほどの落ち込みは見られない。今後、サステナビリティを推進していくためには、本来何を解決すべきか、金融は何をすべきかを改めて確認する時期にあるかと思う。環境問題でいえば負の外部性の解決が本質。ここ数年、業界全体として欧州の各協会・団体が新たに基準を作ったから追いかける姿勢が目立った。本来の課題と金融の役割を考えるべき。
- 日本は極端な理想主義に寄り過ぎず進めてきた面もあり、足元の海外の変化があってもこれまで通りのことをきちっとやってきている。
本来の課題と役割を考えるべき時期に来ているというのはその通り。 - 「欧州を追えば良い」という時代は終わっており、そうした認識を事業者が持っているのであれば問題。欧州では金融規制の中に環境政策も含めた公共政策を取り組んできた側面があり、欧州当局も反省し是正してきている。金融分野は経済活動としても回っていかないといけない面があり、負の外部性を如何に克服していくかは金融規制だけでは対応しきれなく他の省庁所管に属する部分もある。
(生命保険募集人の資質(知識・倫理)と資産形成商品の拡大を踏まえた横断的資格・不適格者対応)
- 生命保険募集人に関する不祥事は特定の会社に限った問題なのかが気になっている。募集人の資格制度は、生命保険協会が資格試験を実施し金融庁に登録するという建付けになっているが、証券外務員の資格制度と比較しても、試験の内容や違反行為をした者に対する処分体制は十分とは言えないように思える。保険会社でも資産形成商品(投資商品)を扱うようになっており、その場合、顧客から託される金額は格段に大きい。資産形成商品を取り扱う者の業界横断的な資格の創設や、職業倫理上の問題行為があった者を金融業界で働かせないための制度づくりが必要ではないか。
- 生命保険募集人については我々としても問題意識は強く持っている。募集人の資質の問題だけでなく、入口の試験・継続教育・管理、会社内の報酬の在り方やガバナンス等、複合的論点として確認し、必要な手直しを進めたい。
(投資信託の「代行報酬」の位置づけ・見直し(販売会社が引下げに応じない問題等))
- 投資信託業界ではプロダクトガバナンスの観点から、自分たちが提供している商品のパフォーマンスを検証し、不芳ファンドについては信託報酬の引き下げを行って品質の改善を図ろうとする動きがある。投資家としては歓迎するが、一部の販売会社が代行報酬の引き下げに反対し、信託報酬の引き下げができず、ファンドの品質改善が進まないという話も聞いている。代行報酬の元々の趣旨は運用報告書の送付や分配金支払い等の事務を代行するための報酬であったが、運用報告書の電磁的交付等も進んでおり、代行報酬を引き下げる余地があるのではないか。ノーロードファンドは代行報酬が高くなっている。代行報酬とは何のための報酬かを再定義する時期ではないか。
- まず業界の実態を確認したいが、双方に言い分はあると思う。原則論には大きな異論はないと見ているが、過去の経緯や収益構造など個別事情もあるため、確認の上で、当局として何ができるか検討していく。
(省庁横断分野(例:クレジットカード、キャリア決済等)に関する対応)
- 最近、クレジットカードやキャリア決済など、省庁をまたぐテーマについて、国民から金融庁金融行政モニター宛てに意見が寄せられることが多い。金融庁の対応がどうこうというわけではなく、他省庁においても、連携して対応できる体制を整備する時期ではないか。
- 関係省庁との連携を含め、問題意識として受け止める。
(資産集約型再保険(AIR))
- 最近、保険会社の資産運用の中で、資産集約型再保険(AIR:Asset Intensive Reinsurance)が増えてきている。この点は、日本に拠点を持たない海外事業者に対する金融規制の域外適用とも深く関係しており、併せて対応していただきたい。
(事業性融資推進法に基づく「企業価値担保権」導入と、地域金融機関(地銀等)への指導)
- 企業価値担保権は評判が良くない。個人的にはフローティングチャージという概念を法制度に盛り込むこと自体は悪くはないと考えているが、「なぜ信託しなければならないのか」といった根本的な批判もあり、風当りが強い。
また、1990年代の金融業界にとって厳しい時代だったことを踏まえると、地銀が対応できるのか心配。事業性融資推進法は、銀行が企業価値を常に評価しながら企業と一緒に走る設計であることから、地銀が複数案件を抱えて対応していくのは難しいのではないかと危惧している。
- 不安の声があるのは承知している。インフレ下で資金需要が増える中、担保価値依存から事業性評価へ軸足を移すことは重要であり、そのための枠組みとして企業価値担保権を作った。役所だけで運用は考えられず、民間金融機関と一緒に考える必要があることから、三メガ・地銀・信金等の融資企画担当者等を交え、計11回の勉強会を開催し、コベナンツ設定方法や債務者格付等細かい議論をしている。こうした議論の結果を近く公表予定。
また、金融機関には、拙速に件数を追う必要はないことを強く伝えている。まずは取り組める金融機関から取り組んでいただき、知見を蓄積させていきたい。
(資金決済分野の「グランドデザイン」と、規制変更時の業界への背景等の説明不足)
- 資金決済法が改正された際、弁護士事務所の顧客から「どうしてこうなったのか、今まで問題なくやってきたのに」と言われた。金融庁は将来的に資金決済がどうあるべきかというイメージ(グランドデザイン)を業界に示せていない。
金融育成庁として日本では具体的にどうやっていくかの配慮が足らない。もう少し競争の激しい国際金融社会の中で日本を代表する国家公務員としての気概を持つべきではないか。
- グランドデザインの観点では、平成30年6月の金融制度スタディ・グループの中間整理(同一機能・同一リスクには同一規制等)を踏まえ、制度整備を進めている。
また、FSB等で決まったから国内で対応するだけでなく、我々としてはその一歩先へ行きたいと考えており、国際ルールメイキングに日本として積極的に貢献し、日本の実務も踏まえた国際ルール形成を目指すという気概で取り組んでいる。金融庁としてもグローバルなルールメイキングに関与できる職員の育成に取り組んでいる。 - 国際的な発言力を確保していくためには、当局の努力に加え、マザーマーケットで活躍する金融機関が国際競争力を維持してくことが重要であり、官民挙げての取組も必要である。
官学民の共同研究に関しては、委員の先生方を前に僭越であるが、世界に通用するようなマクロ経済学者が我が国から出ていないというのが現状。金融分野についてはそこまでではないが、ぜひ「学」においてもそうした人材育成に取り組んでいただきたい。 - 国家公務員としての気概は本当に大事である。昨年8月から「金融庁20年委員会」を立ち上げており、金融庁の職員がどうやって金融庁の目的を意識しながら働いていくかについて、幹部だけでなく、全職員で議論をしているところ。1年だけの取組ということではなく、継続していくことが重要であり、金融庁職員が気概を持って楽しく働けるようにしていきたい。
以上
(参考)開催実績
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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
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