平成23年10月3日
金融庁

株式会社ディー・ディー・エスに係る有価証券報告書等の虚偽記載に対する課徴金納付命令の決定について

金融庁は、証券取引等監視委員会から、(株)ディー・ディー・エスに係る有価証券報告書等の虚偽記載に係る検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告新しいウィンドウで開きますを受け、平成22年11月19日に審判手続開始の決定(平成22年度(判)第29号金融商品取引法違反審判事件)を行い、以後、審判官3名により審判手続が行われてきましたが、今般、審判官から金融商品取引法(以下「法」といいます。)185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、本日、下記のとおり決定(PDF:202KB)を行いました。

決定の内容

被審人に対し、次のとおり課徴金を国庫に納付することを命ずる。

  • (1)納付すべき課徴金の額金3330万円

  • (2)納付期限平成23年12月5日

事実及び理由の概要

別紙のとおり


(別紙)

  • (課徴金に係る法178条1項各号に掲げる事実(以下「違反事実」という。))

    被審人は、その発行する株券が東京証券取引所マザーズ市場に上場されている株式会社であるが、

    • 第1 東海財務局長に対し、それぞれ、下表(以下、単に「表」という。)記載のとおり、重要な事項につき虚偽の記載がある第14期事業年度連結会計期間に係る有価証券報告書(以下「第14期有価証券報告書」という。)及び第15期事業年度第1四半期連結会計期間に係る四半期報告書(以下「第15期第1四半期報告書」といい、第14期有価証券報告書と併せて「本件各報告書」という。)を提出し

      開示書類の虚偽記載内容
      番号 提出日 書類 虚偽記載
      会計期間
      (連結)
      財務計算に
      関する書類
      内容(※) 事由
      1 平成21年
      3月31日
      第14期有価証券報告書 平成20年1月1日~同年12月31日 連結
      損益計算書
      連結当期純損益が▲1889百万円であるところを▲1828百万円と記載 棚卸資産の架空計上
      連結
      貸借対照表
      連結純資産額が175百万円であるところを237百万円と記載
      2 平成21年
      5月15日
      第15期第1四半期報告書 平成21年1月1日~同年3月31日 連結
      貸借対照表
      連結純資産額が▲275百万円であるところを▲215百万円と記載 棚卸資産の架空計上

      (注)金額は、百万円未満切捨てである。

      また、▲は、損益計算書では損失であることを、貸借対照表では債務超過であることを、それぞれ示す(以下、本文中において同じ。)。

    • 第2

      • 平成21年6月10日、東海財務局長に対し、本件各報告書を組込情報とする有価証券届出書(普通株式)(以下「本件普通株式届出書」という。)を提出し、これに基づく募集により、同年7月24日、4万0676株の株式を4億0676万円で取得させ、

      • 平成21年6月10日、東海財務局長に対し、本件各報告書を組込情報とする有価証券届出書(新株予約権証券)(以下「本件新株予約権証券届出書」という。)を提出し、これに基づく募集により、同年7月24日、2000個の新株予約権証券を2億円(新株予約権の行使に際して払い込むべき金額を含む。)で取得させ、

      • もってそれぞれ、重要な事項につき虚偽の記載がある発行開示書類に基づく募集により有価証券を取得させ

      たものである。

  • (違反事実認定の補足説明)

    • 第1被審人が争わない事実

      前記各違反事実のうち、下記1ないし3の各部分は、被審人が争わないから、そのとおり認められる。

      • 被審人

        被審人は、その発行する株券が東京証券取引所マザーズ市場に上場している株式会社である。

      • 本件各報告書の提出

        被審人は、平成21年3月31日、東海財務局長に対し、第14期有価証券報告書(連結会計期間・平成20年1月1日から同年12月31日まで)として、連結当期純損益を▲1828百万円とする旨の連結損益計算書及び連結純資産額を237百万円とする旨の連結貸借対照表を提出した。

        また、被審人は、平成21年5月15日、東海財務局長に対し、第15期第1四半期報告書(連結会計期間・平成21年1月1日から同年3月31日まで)として、連結純資産額を▲215百万円とする旨の連結貸借対照表を提出した。

      • 各有価証券届出書の提出及びこれらに基づく各募集

        被審人は、平成21年6月10日、東海財務局長に対し、本件各報告書を組込情報とする、本件普通株式届出書及び本件新株予約権証券届出書(以下、これらを併せて「本件各届出書」という。)をそれぞれ提出し、同年7月24日、本件各届出書に基づく各募集により、4万0676株の株式を4億0676万円で、2000個の新株予約権証券を2億円(新株予約権の行使に際して払い込むべき金額を含む。)で、それぞれ取得させた。

    • 第2争点並びにこれに対する指定職員及び被審人の主張

      争点は、本件各報告書及びこれらを組込情報とする本件各届出書に、重要な事項につき虚偽の記載があるかであって、これに対する指定職員及び被審人の主張は、それぞれ次のとおりである。

      • 指定職員の主張

        本件各報告書には、実際には納入されていない棚卸資産及び工具器具備品が資産として計上されている上、当該資産相当額の資産計上を基礎付ける取引があったともいえない。そうすると、本件各報告書及びこれらを組込情報とする本件各届出書は、架空の資産が不正に計上されたもので、重要な事項につき虚偽の記載がある。

        被審人は、上記資産計上につき、実体のある2つの開発取引で支払われた前渡金として計上すべきところを、勘定科目を誤って計上したにすぎないと主張する。しかし、そのような取引がいずれも正常なものとして実在していたことをうかがわせる証拠は一切存在しない上、被審人の主張に係る各取引につき、被審人内部で経営会議、稟議等が行われた形跡もなく、これらの各取引に関与したという被審人の役職員も存在しないことなどからすれば、被審人の主張に係る各取引は、いずれも実在しないものというべきである。

        被審人は、株式会社Aからの売掛金の回収が滞ったため、株式会社Bに対し、株式会社Aに対する資金の融通を依頼した。上記各取引は、この依頼を受けて株式会社Bが融通した資金相当額を被審人が補填するため、偽装されたものである。

      • 被審人の主張

        本件各報告書については、次の各開発行為に係る各取引の前渡金として計上すべきものを、棚卸資産及び工具器具備品として計上した誤りはあるが、資産計上したことに誤りはないから、重要な事項につき虚偽の記載があるとはいえず、本件各報告書を組込情報とする本件各届出書についても、重要な事項につき虚偽の記載があるとはいえない。

        すなわち、被審人は、平成20年10月ころ、株式会社Bに対し、株式会社Cと行っていたディジタルTV共同開発事業(以下「本件TV共同開発」という。)の一環として、コンテンツ配信システムの開発(以下「本件システム開発」という。)を発注し、同月9日、この前渡金の支払に充てるため、株式会社Bに対して手形を振り出した。被審人が資産計上していた5105万円の棚卸資産は、この開発の前渡金として計上すべきであったものである。

        また、被審人は、平成20年11月7日、海外メーカーから株式会社Bを介してGSMモジュールを仕入れた際、株式会社Bに対し、このGSMモジュールの検査装置の開発(以下「本件検査装置開発」という。)を代金1150万円で発注し、同日、この前渡金等の支払に充てるため、株式会社Bに対して手形を振り出した。被審人が資産計上していた1150万円の工具器具備品は、この開発の前渡金として計上すべきであったものである。

    • 第3認定事実

      後掲各証拠及び審判の全趣旨によって認められる事実は、次のとおりである。

      • 被審人と株式会社Bとの関係

        被審人は、平成20年6月27日ころ、株式会社Aに対し、指紋認証機器等(以下「本件指紋認証機器等」という。)を代金約5900万円で販売していた。しかし、株式会社Aが資金繰りに窮し、上記売買に係る売掛金が予定されていた期日に回収できない見込みとなったため、被審人は、株式会社Bに対し、株式会社Aから本件指紋認証機器等を買い取るよう依頼した。

        株式会社Bは、この依頼を受け、平成20年9月、本件指紋認証機器等を代金約6000万円で株式会社Aから購入し、この代金を株式会社Aに支払ったが、本件指紋認証機器等を在庫として抱えるに至った。他方、株式会社Aは、そのころ、被審人に対し、本件指紋認証機器等の代金約5900万円を支払っていた。

      • 本件TV共同開発に係る取引

        被審人は、平成20年6月ころ、株式会社Cとの間で、本件TV共同開発を開始し、この一環として、同年10月24日、株式会社Cから、蓄積型ディジタルメディアアダプタSDKを代金3150万円で購入していた。

      • 本件システム開発の存否に係る事実関係

        • (1)平成20年10月9日付け約束手形の振出し等

          被審人は、平成20年10月9日、株式会社Bに対し、支払金額を5360万2500円とし、満期を平成21年1月31日とする約束手形(以下「本件10月手形」という。)を振り出した。

          被審人は、本件10月手形の振出しにつき、材料仕入高勘定及び仮払消費税勘定の各借方にそれぞれ5105万円及び255万2500円を、支払手形勘定の貸方に上記支払金額を、それぞれ計上し、平成20年10月31日、上記材料仕入高と同額を、製品勘定の借方及び期末製品棚卸高勘定の貸方にそれぞれ計上して振り替えた。

        • (2)本件システム開発の存否に関連する各書類の記載内容等

          被審人は、株式会社Bとの間で、本件システム開発の契約書等を取り交わしていなかった。

          他方、株式会社Bは、被審人に対し、次の各書類を交付していた。これらの各書類に記載されていた品物のうち「ネットTVコンテンツ配信向けプログラム」以外は、株式会社Cのみが取り扱うことのできる株式会社Cの製品で、前記2のSDKを構成するものでもあった。

          • 平成20年9月5日付け「STBシステム販売構成承認図」
          • 平成20年10月7日付け「御見積書」
          • 平成20年10月9日付け「預り書」
        • (3)本件システム開発の存否に関連する関係者の動き等

          • 被審人が社内手続を経た形跡の不存在

            本件システム開発につき、被審人内部には、稟議書等が存在しておらず、また、定期的に開催されていた、ほぼ全役員が出席する役員会及び常勤の役員等が出席する経営会議で検討された旨の議事録等も存在していない。

            また、被審人においては、5000万円以上の開発案件は、経営会議の議題とされていた。しかし、この経営会議に出席していたE役員(当時)は、本件システム開発を全く把握しておらず、同じく出席していたF社員(当時)も、本件システム開発が経営会議の議題となった記憶がない。

          • 株式会社Bが本件システム開発に係る業務をした形跡の不存在

            株式会社Cは、株式会社Bと全く取引関係がなく、本件システム開発につき、株式会社Bと協議したこともなかった。

            また、本件システム開発につき、株式会社Bには、その業務に係る資料等が存在していない。

          • 本件システム開発の成果物の不存在等

            株式会社Bは、被審人に対し、前記(2)の各書類に記載されていた各製品を納品しなかった一方、被審人は、株式会社Bに対し、本件10月手形の支払金額に係る金銭の返還を求めなかった。

      • 本件検査装置開発の存否に係る事実関係

        • (1)平成20年11月7日の約束手形の振出し等

          被審人は、平成20年11月7日、株式会社Bに対し、支払金額を2672万2500円とし、満期を平成21年2月28日とする約束手形(以下「本件11月手形」という。)を振り出した。

          被審人は、本件11月手形の振出しにつき、材料仕入高勘定、工具器具備品勘定及びこれらに係る仮払消費税勘定の各借方にそれぞれ1395万円、1150万円及び合計127万2500円を、支払手形勘定の貸方に上記支払金額を、それぞれ計上した。

        • (2)本件検査装置開発の存否に関連する関係者の動き等

          被審人は、平成20年9月から、その子会社を通じ、海外のメーカーからGSMモジュールを仕入れ、他社に転売する取引を行っていた。被審人は、同年11月、同様の商流で仕入れをしようとした際、子会社から株式会社Bが仕入れたGSMモジュールを仕入れる形式を採った。

          株式会社Bは、被審人に対し、平成20年11月7日付けの「御請求書」及び「預り証」をそれぞれ交付した。これらの各書類には、品物としてGSMモジュール及びその検査装置一式が記載され、後者の検査装置一式の金額は1150万円と記載されていた。

          株式会社Bは、被審人に対し、上記GSMモジュールを納品したものの、上記検査装置一式の納品はもとより、開発もしなかった。他方、被審人は、株式会社Bに対し、本件11月手形の支払金額のうち、上記GSMモジュールの代金相当額を差し引いた金銭の返還を求めなかった。

    • 第4争点に対する判断

      • 本件各報告書には、実際には納入されていない棚卸資産及び工具器具備品が資産として計上されていることについては、被審人が争わないから、その旨が認められる。

      • 本件システム開発の存否について

        • (1)本件システム開発については、そもそも契約書等が存在しない(第3の3(2))上、その検討がなされるであろう経営会議の出席者らが存在を認識しておらず、稟議書等並びに役員会及び経営会議の議事録等も一切存在していない(第3の3(3)ア)。また、本件システム開発が本件TV共同開発の一環であるとの被審人の主張によれば、株式会社Cと株式会社Bとの間で何らかの協議がなされてしかるべきであるのに、両者間には、このような協議はおろか、取引関係すらない(第3の3(3)イ)。さらに、株式会社Bには、本件システム開発についての業務に係る資料等が全く存在していない(第3の3(3)イ)上、本件システム開発の成果らしきものが全く納入されていないのに、被審人は、株式会社Bに対し、本件システム開発の精算を求めていないというのである(第3の3(3)ウ)。そして、本件システム開発が実際に存在していたのであれば、そのとおり会計処理をすれば済むはずであるのに、株式会社Cから購入していた製品を株式会社Bからも仕入れたという真実と異なる書類も複数作成されている(第3の3(2))ことからすると、本件システム開発が存在していたとは認められない。

        • (2)アこれに対し、被審人役員のGは、審判廷において、本件システム開発については、経営会議で検討したが、記録がないだけである旨陳述する。

          しかし、本件システム開発以外の取引のうち、実体があるとされている株式会社Bとのグリッドペンの取引(以下「グリッドペン取引」という。)については、追加開発の稟議書、プレゼンテーション資料、解約に係る営業報告資料等が残っている。本件システム開発は、このグリッドペン取引より取引金額が大きいにもかかわらず、全く書類が残っていないのは不自然で、Gが審判廷で陳述するとおり、最終的には8億円から10億円という大規模となるプロジェクトの一環というのであれば、なおさら不自然というべきである。また、Gは、証券取引等監視委員会の調査に対してはおろか、社内調査委員会の事情聴取に対しても、陳述書においても、そのような供述をしておらず、これをしなかったことにつき、合理的な理由もうかがわれない。

          そうすると、Gの上記陳述は、採用することができない。

        • また、Gは、審判廷において、真実と異なる仕入れがあったような体裁の各書類(第3の3(2))について、H役員(当時)が監査法人とのやり取りに追われていて勝手に作成したものである旨陳述する。

          しかし、実際に本件システム開発が行われていたのであれば、そのまま会計処理をするための書類を作成すれば足り、あえて真実と異なる書類を作成し、監査法人とのやり取りをこじらせるような会計処理をするいわれはない。実際、開発中止となったグリッドペン取引については、前渡金としての会計処理が支障なくなされているのである。

          そうすると、Gの上記陳述も、採用することができない。

        • さらに、Gは、審判廷において、本件システム開発の精算を求めていないこと(第3の3(3)ウ)につき、単に求めていないだけである旨陳述する。

          しかし、本件システム開発については、既に5000万円を超える支払がなされている上、その金額も、Gが審判廷で陳述するとおり、当時資金繰りが苦しかった被審人にとっては、かなり大きかったものである。そうであるのに、本件システム開発が頓挫したにもかかわらず、上場企業である(第1の1)被審人が、特段の理由もないのに、その精算を求めないということは合理性を欠くものというべきである。実際、本件システム開発より取引金額の小さいグリッドペン取引については、開発中止となった後、開発費として支払われていた前渡金が返金されているのである。

          そうすると、Gの上記陳述も、採用することができない。

        • G及び株式会社B役員のDは、審判廷において、本件システム開発と同様の開発については、その仕様変更が頻繁になされるため、少なくとも当初段階では、契約書等が作成されないのが通常であるし、開発が長期にわたるときは、仕様等が確定する前でも前渡金を請求できるのが通常である旨陳述する。また、Dは、本件システム開発については、費用はさしてかかっていないが、打合せの前段階として、従業員に海外の事情を調査させていた旨陳述する。

          しかし、本件10月手形の振出し時点で、本件システム開発については、そもそも誰が何をするのかさえ、関係者間で共通認識が全く形成されていない。そのような段階で、当時の被審人にとっても高額の前渡金の支払がなされるというのは、不自然である。また、Dの陳述に係る調査が実際に行われたならば、少なくとも何らかのメモ等が残っているはずなのに、株式会社Bには、本件システム開発の業務に係る資料等が全く存在していない(第3の3(3)イ)。

          そうすると、G及びDの上記各陳述は、いずれも採用することができない。

        • (3)以上の次第で、被審人の主張に係る本件システム開発は、前記(1)のとおり、これが存在していたとは認められない。

      • 本件検査装置開発の存否について

        • (1)Gは、審判廷において、本件検査装置開発については、継続の予定であったGSMモジュールの取引に必要なものであり、その発注をHに指示していた旨陳述する。また、Dは、審判廷において、被審人から、GSMモジュールの検査装置の開発の委託を受けたが、GSMモジュールの納品を急がされたことから、検査しないまま納品し、本件検査装置開発に対応する部分の代金は、GSMモジュールの代金が上記検査装置の開発費用と一括で決まっていたため、利益として受け取った旨陳述する。

          しかし、Hは、証券取引等監視委員会の調査及び社内調査委員会の事情聴取に対し、Gから、株式会社BからのGSMモジュールの仕入れ額に約1000万円を上乗せして支払うよう指示を受けており、本件検査装置開発に係るものとされる各書類(第3の4(2))のうち、検査装置一式に係る記載は虚偽である旨の、G及びDの上記各陳述に反する供述をしている。

        • (2)そこで、前記各陳述の信用性を検討すると、Gは、証券取引等監視委員会の調査に対しては、株式会社Bとの間で決済未了であった取引の差額の帳尻を合わせるため、過大な取引金額を決めてHに伝えた旨供述している。また、Gは、社内調査委員会の事情聴取に対し、GSMモジュールの金額より1000万円ほど余分に株式会社Bに支払をするよう指示をしたが、それ以上の具体的指示はしていない旨供述している。このように、Gは、Hの上記供述に符合することを述べながら、審判廷では自らの上記各供述と異なる陳述をしているのに、このように供述を変遷させたことにつき、合理的な理由もうかがわれない。

          また、Gの前記陳述からすると、株式会社Bは、GSMモジュールを納品した後も、検査装置の開発を継続しているはずで、これを行わないのであれば、被審人との間で、その精算をするはずである。しかし、株式会社Bは、上記検査装置の開発に着手すらしていない上、その精算もしていない(第3の4(2))。Dは、この理由につき、前記陳述をしているものの、何の開発もしていないのに、約1000万円という高額の利益を収受できる理由として首肯し難い上、その陳述自体、本来符合するはずのGの前記陳述とも矛盾しているのである。

          他方、Hの前記供述は、Gの従前の上記各供述と符合する上、その供述内容に沿った各書類も存在している(第3の4(2))。

          そうすると、G及びDの審判廷における前記(1)の各陳述は、いずれも採用することができず、かえって、Hの前記供述こそが、信用できるものというべきである。

        • (3)以上の次第で、被審人の主張に係る本件検査装置開発は、他にこれを認めるに足りる証拠もない以上、これが存在していたとは認められない。

    • 第5まとめ

      このように、被審人の主張に係る本件システム開発及び本件検査装置開発は、いずれも存在していたとは認められない(第4の2及び3)一方、本件各報告書には、実際には納入されていない棚卸資産及び工具器具備品が架空の資産として計上されている(第4の1)。

      そして、これらの架空計上に係る金額及び割合が相当大きいことに照らせば、本件各報告書及びこれらを組込情報とする本件各届出書は、いずれも重要な事項につき虚偽の記載があるものと認められる。

  • (課徴金の計算の基礎)

    被審人は、課徴金の計算の基礎となる事実については、特に争わない。

    • 第1違反事実第1のうち

      • 表の番号1の事実につき

        平成20年法律第65号による改正前の金融商品取引法172条の2第1項本文の規定により、被審人の第14期有価証券報告書に係る課徴金の額は、被審人が発行する算定基準有価証券の市場価額の総額に10万分の3を乗じて得た額(17万3378円)が、300万円を超えないことから、300万円となる。

      • 表の番号2の事実につき

        法172条の4第2項前段、1項本文の規定により、被審人の第15期第1四半期報告書に係る課徴金の額は、被審人が発行する算定基準有価証券の市場価額の総額に10万分の6を乗じて得た額(10万1724円)が、600万円を超えないことから、600万円の2分の1に相当する額である300万円となる。

    • 第2違反事実第2の各事実につき

      法172条の2第1項1号の規定により、重要な事項につき虚偽の記載がある発行開示書類に基づく募集により取得させた株券等の発行価額の総額の100分の4.5に相当する額が課徴金の額となることから、

      • 本件普通株式届出書に係る課徴金の額は、

        4億0676万円×4.5/100=1830万4200円

        法176条2項の規定により、1万円未満を切り捨てて、1830万円

      • 本件新株予約権証券届出書に係る課徴金の額は、

        2億円×4.5/100=900万円

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局総務課審判手続室(内線2398、2404)

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