平成15年6月24日
金融庁

証券取引法施行令の一部を改正する政令(案)及び会社関係者等の特定有価証券等の取引規制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)に対するパブリックコメントの結果について

金融庁では、標記政令(案)及び内閣府令(案)について、平成15年5月23日(金)から6月6日(金)にかけて公表し、広く意見の募集を行いました。ご意見をいただいた方には、政令(案)及び内閣府令(案)の検討にご協力いただきありがとうございました。

本件に関してお寄せいただいた主なコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方は下記のとおりです。

【内容についての照会先】

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課 佐藤(内線3609)、田中(内線3620)


コメントの概要とコメントに対する金融庁の考え方

コメントの概要 コメントに対する考え方
 今回の見直しでは、証券取引所等に提出された事実が公衆縦覧された場合は即時に規制が解除される一方で、いわゆる「12時間ルール」はそのまま残り、2以上の報道機関に重要事実を伝達した場合は12時間が経過しないと規制が解除されず、周知期間に大きな格差が発生する。情報通信手段の発達や媒体の多様化で、現行の規制の根拠は乏しくなっており、主要な新聞、放送メディア、通信社、マスコミのホームページなどで報道された時点で公表となるようにし、事実上 12時間ルールを撤廃すべきである。  現行のインサイダー取引規制においては、上場会社等から内閣総理大臣に提出された有価証券報告書や臨時報告書等に重要事実が記載されている場合には、当該有価証券報告書や臨時報告書等が財務局において公衆縦覧されたときに、インサイダー取引規制が解除される「公表措置」が行われたとされているところです。
 証券取引所等(証券取引所及び証券業協会)は、証券取引法により、企業の株式等の上場等を行う市場の開設者とされ、その規則に基づいて上場会社等に対するタイムリー・ディスクロージャーを求めるなどの自主規制を行う、いわば公的な機能を果たしている機関であることから、財務局で行う公衆縦覧と同様に、インサイダー取引規制の解除要件である公表措置としての公衆縦覧を行う主体として適当であると判断したものです。
 他方、報道機関は上場会社等が発表したものだけでなく、上場会社等以外に対する独自取材に基づいた報道も行っており、投資家にはその区別ができません。また、仮にインサイダー取引に関する捜査が行われる場合には、捜査当局は公表時点や公表内容を把握することが必要となりますが、報道の自由との関係で報道機関が捜査当局の照会にどこまで協力できるのかといった問題もあります。したがって、報道機関により重要事実が報道された場合をインサイダー取引規制の解除要件としての公表措置とすることは難しいと考えられます。
 証券取引所による公衆縦覧に加え、日本国内に広く確実に情報を伝達するネットワークを持っている大手情報ベンダーを、重要事実開示の有力手段として認知することを要望したい。  前述のように、証券取引所等はいわば公的な機能を果たしている機関であることから、インサイダー取引規制の解除要件である公表措置としての公衆縦覧を行う主体として適当であると判断したものです。
 他方、日本国内に広く確実に情報を伝達するネットワークを持っている大手情報ベンダーも、前述のとおり、報道機関としての性格を持つことを勘案すると、大手情報ベンダーにより重要事実が伝達された場合をインサイダー取引規制の解除要件としての公表措置とすることは難しいと考えられます。
 証券取引所等のホームページにおいて公表された直後から会社関係者の売買を可能とすると、一般投資家と比べて分析時間が不要なため、公表直後は会社関係者の方が有利な立場にあり、ある程度の周知時間を設けるか、インターネットによる公衆縦覧は立会時間終了以降とするなどの対応が必要ではないか。  インサイダー取引規制は、未公表の重要事実を知った会社関係者や第一次情報受領者(会社関係者から直接情報の伝達を受けた者)が、当該重要事実が公表されるまでの間の取引を規制するものであります。
 この公表とは、未公表の重要事実が多数の者の知り得る状態に置かれることであり、一般の投資家がその情報にアクセス可能となった状態と捉えられています。
 したがって、一旦そのような状態に置かれた場合には、会社関係者や第一次情報受領者に対して、引き続き取引を規制することは困難であると考えられます。
 このような考え方から、現行の規制でも、重要事実が記載された有価証券報告書や臨時報告書等が財務局で公衆縦覧された場合には、直ちにインサイダー取引規制が解除されることとされているところです。
 上場会社等が直接一般投資家に公表する機会を持つことになるが、公表された内容が理解できないものとなることのないよう、公表内容をチェックする体制が必要ではないか。  現在、証券取引所等の適時開示規則に基づいて上場会社等から通知された重要事実については、証券取引所等がその内容をチェックしています。また、昨年8月に公表した「証券市場の改革促進プログラム」に基づき、証券取引所等において、事後チェックの専任担当者を配置するなど体制の強化等を行い、ディスクロージャーの適正性を確保するための施策も行われているところです。
 証券取引所等で公衆縦覧された場合をインサイダー取引規制上の公表措置に新たに加えることになると、企業の間に「重要事実は証券取引所等で公衆縦覧する形でしか公開できない。」という誤解が広がるおそれがあり、さらに、証券取引所等が企業に取引所での公衆縦覧を優先するよう圧力をかけ、報道機関の独自取材を妨害する可能性もあることから、インサイダー取引規制が報道機関による自由な取材活動を妨害したり、企業の広報活動を制限したりすることのないよう、格段の配慮をお願いしたい。
 また、報道機関は新聞上だけでなく、ホームページなど電子媒体上でも企業のディスクロージャーに貢献していることから、今回の改正にあたっては、報道機関の電子媒体によるディスクロージャー業務について、証券取引所等が阻害することのないよう留意していただきたい。
 インサイダー取引規制は、未公表の重要事実を知った会社関係者や第一次情報受領者が取引することを規制するものであり、取材活動や報道の自由を制約するものではありません。
 なお、証券取引所等からは、上場会社等においてご指摘のようなインサイダー取引規制に対する誤解が生じて、報道機関の取材活動などに支障が生じることのないよう対応したいと聞いております。
 証券取引所の適時情報開示システム(TDnet及びED-NET)は、もともと報道機関向けに整備された経緯があり、その運営費を利用報道機関が応分に負担している。同システムについては、公的機能を担っていることに鑑み、その運営について報道機関が協議に加わることができるように要望する。  証券取引所の適時開示システム(TDnet及びED-NET)は、上場会社の情報が迅速かつ公平に伝わるようにして欲しいとの報道機関からの要請に応えて構築されたものと聞いております。そうした背景からも、適時開示システムの運営につきましては、証券取引所と報道機関の間で十分な話し合いが持たれることが望ましいと考えております。
 なお、TDnet、ED-NETを運営している東京証券取引所及び大阪証券取引所は、それぞれの適時開示システムの運営のあり方について、報道機関から具体的なご要望をお伺いした上で検討を進めたいと考えていると聞いております。
 証券取引所又は証券業協会の適時開示規則において、適時開示の対象として列挙されている項目のうち、証券取引法上、インサイダー取引規制の対象として具体的に明示されている重要事実に該当しないものが、証券取引法第166条第2項第4号又は第8号(いわゆるバスケット条項)に該当するのかどうか明らかにすべきである。また、バスケット条項に該当することとなる基準も明確に示されたい。  インサイダー取引規制は、上場会社等の役職員などの会社関係者等(インサイダー)が、投資判断に影響を及ぼすべき未公表の重要事実を知りながら、その重要事実を知る機会が与えられていない一般投資家と取引して一般投資家に損害を与えるという、いわば一種の詐欺的行為を禁止するものです。
 株価に影響を与えるような重要事実を予め明示的にすべて列挙することは困難であり、仮に一定の限定的な事由だけを規定した場合には、抜け穴が生じて実効性がなくなってしまいます。
 このような理由から、米国においては、従来からインサイダー取引については、有価証券取引における欺瞞的策略を禁止した一般的禁止規定により規制されているところであり、法令上、具体的な定義規定は設けられていません。また、同じ理由から、他の規制分野とは異なり、インサイダー取引規制については、取締当局の具体的な運用方針を明らかにするセーフハーバールールやノーアクションレターの制度は設けられていません。
 我が国においても、証券市場を幅広い投資家が安心して参加できる公正な市場として我が国金融システムの中核を担うものとしていくためには、このようなインサイダー取引を実効性をもって防止していく必要があることから、欧米の制度を参考として、平成元年にインサイダー取引を禁止する規定が設けられたところです。
 その際には、インサイダー取引を実効性をもって防止できるようにするとともに、新たに導入される規制であることに鑑み、正当な取引を不必要に阻害することのないようにとの配慮から、法令において、インサイダー取引規制の対象となる「重要事実」について、具体的な類型を例示的に記述(軽微な事由については、内閣府令において、数値基準を定めて適用除外となる旨を明示的に規定しています。)するとともに、それとあわせて「当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」(いわゆるバスケット条項)についても規制の対象とする規定が置かれたところです。
 この我が国の規定は欧米の規定に比して規制対象をより明確に示しているものであり、また、上述のインサイダー取引禁止の趣旨・目的からみても、このバスケット条項の内容を明確に定めることは困難であることをご理解下さい。

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