平成15年8月7日
金融庁
「保険業法の一部を改正する法律の施行に伴う保険業法施行令の一部を改正する政令(案)」に対する意見募集の結果について
金融庁では、標記政令案について、7月25日(金)から8月1日(金)にかけて公表し、広く意見の募集を行いました。御意見を御提出いただいた皆様には、政令案の検討に御協力いただきありがとうございました。
本件に関して、お寄せいただいた主なコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方は下記のとおりです。
(内容についての照会先)
金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局信用課保険企画室(内線3571、3569)
コメントの概要とコメントに対する金融庁の考え方
1.変更対象外契約の範囲について
コメントの概要 |
コメントに対する考え方 |
- 契約条件の変更の対象外となる保険契約として「基準日において保険期間の中途で解約その他の保険契約の終了が発生しているものを含み」とされているが、これは「中途解約の受付をしている者」は「変更対象外契約の範囲」に含まれると読める。しかし、この場合であっても「解約停止」がかけられる。かけられるが、3ヵ月後に解除されたときは、もとのままの予定利率で解約に応じることになるのか。不平等ということにはならないのか。
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- 契約条件の変更に当たっては、保険会社に対し、解約に係る業務の停止を命ずることができることとされていますが、解約に係る業務の停止期間中であっても、契約条件の変更の基準となる日までに保険契約者が正当に解約の意思表示を行い解約が成立したものについては、契約条件の変更の対象外となります。
この場合、解約に係る業務の停止命令の解除後に、解約成立時点で計算される解約返戻金が支払われることになります。
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- 「変更の基準となる日」(基準日)は、「契約条件の変更を申し出た日」と理解するが、それでいいのかどうか。「内閣総理大臣が申し出を承認した日」とも読める。しかし、後者となると中途解約がより多くなされ一層混乱すると考える。
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- 契約条件の変更の基準となる日については、契約条件の変更の内容に含まれるものであり、契約条件の変更手続の中で定められることとなります。
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- 「基準日」が申し出た日、承認した日いずれであっても中途解約は受け付けていることになるわけだが、この状態で破綻した場合はどうなるのか。
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- 契約条件の変更手続は、破綻の状態には至っていないが、契約条件の変更をしなければ将来において保険業の継続が困難となる蓋然性がある保険会社が対象となるものでありますが、仮に破綻の状態となった場合には、破綻処理が行われることとなります。
この場合、契約条件の変更手続において解約に係る業務の停止命令により解約返戻金の支払いが停止されている保険契約は、保険業法による破綻処理に伴う契約条件の変更の対象とできない保険契約(特定契約)の範囲から除かれています。(保険業法第250条) これは、契約条件の変更手続の進行中における解約の申込みを助長させないよう、手続中に解約申込みをしておいた保険契約者と、手続終了までの間申込みをしなかった者との公平を図るという趣旨によるものです。
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2.契約条件の変更の限度について
コメントの概要 |
コメントに対する考え方 |
- 今後、予定利率の変更の下限は政令で行政が決めることになるのか。もともと、今の生保契約の大半は相互会社の私的自治の下におかれているわけだが、行政の関与の根拠はどこにあるのか。
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- 契約条件の変更手続は、基本的には保険会社・保険契約者間の自治的な手続により行われるものですが、保険契約者の保護を図る観点から、予定利率の引下げの下限を政令で定めることや、監督当局による契約条件の変更の内容の承認の手続等が定められています。
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- 今回、予定利率の変更の下限として政令で「年3%とする」としている。仮に「年3%」とした場合、かなりの契約が変更の範囲に入ってくると考えるが、このようなことはどの程度検討されたのか疑問である。なぜ、3%としたのかの根拠の明示が必要である。
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- 予定利率の引下げの下限については、保険契約者等の保護の見地から保険会社の資産の運用の状況その他の事情を勘案して政令で定めることとされています。(保険業法第240条の4)
今回の政令案においては、平成13年度における生命保険会社の平均運用利回りや過去の破綻事例における取扱い等を勘案し、予定利率の変更の下限を3%としています。 (参考)
- 生命保険会社の平均運用利回り(13年度全社ベース)
2.31%
- 現在の平均予定利率(13年度全社ベース)
3.56%
- 3%まで引き下げた場合の平均予定利率
2.5%前後
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3.その他
コメントの概要 |
コメントに対する考え方 |
- 下限の限度額の3%を生保会社が申し出て承認された場合、契約者は「異議申立て」の道しかないが、イエスかノーだけでなく、例えば「4%なら・・・」といった再提案の道はないのか。
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- 契約条件の変更は、株主総会や総代会の特別決議や、契約条件の変更の対象となる保険契約者の異議申立て手続等の手続を経て行うこととされています。
その手続においては、保険会社は、契約条件の変更がやむを得ない理由や契約条件の変更後の業務及び財産の状況の予測等を保険契約者に十分説明し、その理解を求めることが必要となります。 なお、監督当局においても、契約条件の変更に係る承認に当たっては、保険契約者等の保護の見地から適当であると認められるかどうかについて審査することとされています。
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- 将来状況が好転したときには「配当」に回すといったようなことの明示はできないのか。
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- 契約条件の変更手続においては、保険会社は、契約条件の変更に係る保険契約に関する契約者配当、剰余金の分配その他の金銭の支払に関する方針があるときは、その内容を契約条件の変更の対象となる保険契約者等に対して示さなければならないこととされています。また、その方針を定款に記載し、又は記録しなければならないこととされています。(保険業法第240条の5等)
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- 契約者の意思確認として総代会と異議申立ての仕組みだけでは不十分である。2年前の金融審のとりまとめでは契約者集会の開催が提案されていたが、なんらかの追加的検討が必要である。
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- 契約条件の変更手続においては、意思決定手続を(1)会社の機関意思決定手続と(2)保険契約者の権利の保護手続に大きく区分し、(1)は総代会や株主総会の特別決議によることとし、(2)は異議申立て手続の活用によることとしています。さらに、異議申立て手続を行うに当たっては、事前に監督当局が、必要に応じ保険調査人による調査を実施した上で、保険契約者の権利が不当に害されていないか等を審査することとしています。
なお、契約者集会の開催は、極めて多数の保険契約者集団の意思決定手続としては、実務的に実施困難ではないかと考えられたところです。
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- 生保会社の便乗申請が発生することがないようにすべき。
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- 契約条件の変更の申出に当たっては、保険会社は、契約条件の変更を行わなければ保険業の継続が困難となる蓋然性があり、保険契約者等の保護のため契約条件の変更がやむを得ない旨及びその理由を示さなければならないこととされています。監督当局は、保険会社の申出に理由があるかどうか審査し、保険会社の申出に理由がないときは契約条件の変更は認められないこととされています。(保険業法第240条の2)
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- 予定利率引下げ時の保険金削減額に上限を設けるべき。
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- 契約条件の変更に当たっては、保険契約者等の保護の見地から、それまでに積み立てられた責任準備金は削減できないこととされているとともに、予定利率の引下げの下限を設けることとされています。
予定利率の引下げの下限については、今回の政令案で3%としています。
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その他、今回の保険業法の一部改正に関してご意見をいただいております。これらのご意見は、今後の制度の企画・立案等の参考にさせていただきます。ご協力ありがとうございました。