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令和4年6月14日
(令和4年6月22日更新)
(令和4年7月7日更新)
金融庁

金融庁主催国際シンポジウム
“Transition to Net-Zero: The Role of Finance and Pathway toward Sustainable Future”の開催結果について


 気候変動はグローバルに解決が必要な喫緊の課題です。カーボンニュートラルの実現には、すべての産業が、パリ協定の目標達成に資する「トランジション(移行)」の取組みを進めるとともに、その取組みを適切に評価し、資金供給を促す「トランジションファイナンス」が重要です。
 
 金融庁では、令和4年5月26日に、虎ノ門ヒルズフォーラム及びオンラインにて、この「トランジション」に焦点を当て、ネットゼロへのトランジションの道筋(パスウェイ)や、トランジションファイナンスの役割について議論を行う、国際シンポジウムを開催しました。
 
 本シンポジウムでは、日本国内に留まらず、シンガポール・アメリカ・ヨーロッパ諸国等より、産業界・金融界・政府関係者約30名にご登壇いただき、活発な議論を行っていただきました。感染症対策のため、会場参加人数に上限を設けつつ、グローバルな課題解決に必要な参加者同士のネットワーキングを行うため、ハイブリッド形式での開催とし、当日は、会場・オンラインの参加を合わせ、約850名の参加がありました。

1.開催目的

  • モメンタムを逃さないこと:G20や民間の取組みに見られるように、パリ協定の内容を実現するためには、トランジションが差し迫った課題であるという国際的な合意が得られています。このモメンタムに乗ることが必要です。
  • 協働の呼びかけ:気候変動というグローバルな課題を解決するためには、世界中の産業界や金融界のリーダー、公共セクターなど、様々なステークホルダーの確固たる協力が重要です。そこで、国内外の主要な代表者が一堂に会する場を設けたいと考えました。
  • 金融の役割に光を当てること:トランジション期間の資金調達における民間金融セクターの役割の重要性が高まっていることから、金融規制当局として、金融の観点からトランジションを議論する場を設けることが有意義であると考えました。

2.シンポジウムの概要

(1)プログラム・スピーカー一覧
      
 (2)議論の内容

開会挨拶
 鈴木大臣から、20年前環境大臣に就任された際の京都議定書発効に向けた議論の思い出とともに、世界に先駆けて日本政府が「トランジションファイナンス」の重要性を訴えてきたことや、特にカーボンニュートラル2050宣言以後の日本政府・金融庁の取組みについて紹介がありました。また、トランジションファイナンスに関しては、こうした政府の取組みに留まらず、民間主導の動きも活発であり、気候変動という課題の解決のために、本シンポジウムに集まった官民の関係者が国境を越えて協力をすることが大事であるといった旨のメッセージがありました。
      鈴木大臣より開会挨拶

日本語音声動画(金融庁YouTubeチャンネル)
英語音声動画(金融庁YouTubeチャンネル)
 
PDF発言原稿【日本語】
PDF発言原稿【英語仮訳】

◆基調対談
 シンポジウム開催にあたり、マーク・カーニー 気候変動対策・ファイナンスに関する国連事務総長特使 兼 ネットゼロのためのグラスゴー金融同盟(GFANZ)議長と、水野弘道 革新的ファイナンス及び持続可能な投資に関する国連事務総長特使に、米国・ロサンゼルスにて対談を行っていただきました。GFANZの作業の紹介に加え、昨今のエネルギー価格の高騰によって、化石燃料依存からの脱却を更に進める必要が生じていること、新興国支援・脱炭素に向けた技術革新(イノベーション)支援に果たす日本の役割への期待が聞かれました。
      基調対談(マーク・カーニー氏、水野弘道氏)

日本語音声動画(金融庁YouTubeチャンネル)
英語音声動画(金融庁YouTubeチャンネル)

◆パネルディスカッション1「カーボンニュートラルへの挑戦と課題」

  • 基調講演

 ディスカッションを始めるにあたり、シンガポール金融管理局(MAS)のダリアン・マクベイン チーフ・サステナビリティ・オフィサーより、アジアにおける脱炭素にむけた挑戦と機会について、基調講演としてお話がありました。葛飾北斎の絵も引用し、気候変動が海面の気温上昇や生物多様性損失に与える影響について触れながら、ネットゼロ達成のために、アジア地域に必要な投資額や投資機会の紹介がありました。
      パネルディスカッション1:基調講演

PDF投影資料(シンガポール金融管理局(MAS) マクベイン氏)

日本語音声動画(金融庁YouTubeチャンネル)
英語音声動画(金融庁YouTubeチャンネル)

  • ディスカッション
 続くディスカッションでは、グローバルや日本国内におけるセクター別パスウェイを描く取組みや、その背景となる国内外のエネルギー事情、トランジションファイナンスの重要性について議論が行われました。具体的には、日本政府が作成している分野別ロードマップの説明や、グローバルにセクター別のパスウェイを作成しているトランジション・パスウェイ・イニシアティブ(TPI)の取組みの紹介があったほか、トランジションを達成するための研究開発(R&D)の必要性、こうした将来の技術開発といった不確実性がある中、トランジションの信頼性を金融界としてどのように評価するか、について意見交換が行われました。
       パネルディスカッション1:ディスカッション

日本語音声動画 (金融庁YouTubeチャンネル)
英語音声動画 (金融庁YouTubeチャンネル)

◆パネルディスカッション2「ネットゼロ達成に必要なトランジションパスウェイ」
 続いてのパネルでは、より実務的な議論を行うため、「鉄鋼」「航空」「電力」の3つのセクター毎の分科会に分かれ、パリ協定の目標を達成するための信頼できるパスウェイの在り方について議論しました。
  • 鉄鋼セクター: 政策立案者、アカデミア、鉄鋼メーカー、民間金融団体のパネリストが、ネットゼロを達成するための技術的な課題を解決するため、研究開発の努力を行っていることの紹介に加え、ネットゼロの在り方と同様にトランジションの道筋は多様であり、その描き方が重要であるという示唆が聞かれました。また、鉄は加工性に優れ、自動車など幅広い他産業の基盤としても重要な役割を果たすことから、トランジションという社会の構造改革を達成するために、産業界や金融界といった各種ステークホルダーが立場を越えて協力して対応することの重要性が聞かれました。
       パネルディスカッション2:鉄鋼セクター

PDF投影資料(地球環境産業技術研究機構 秋元氏) 

日本語音声動画 (金融庁YouTubeチャンネル)
英語音声動画 (金融庁YouTubeチャンネル)
 
  • 航空セクター:政策立案者、業界団体、航空会社、燃料製造会社、金融界のパネリストが、航空業界の脱炭素に向けた、複数の移行シナリオを実効性の高いものに向上させるため、立場を越えた取組みの必要性を議論し、協業事例が紹介されました。例えば、国際民間航空機関(ICAO)における長期目標設定やより速やかな日本国内の取組みの必要性、2050年ネットゼロを達成するには持続可能な航空燃料(SAF)の供給拡大に向けた課題を議論し、金融の果たす役割が強調されました。
       パネルディスカッション2:電力セクター

PDF投影資料(IATA 藤原氏)  
PDF投影資料(Neste ヤウヒアイネン氏)  

日本語音声動画 (金融庁YouTubeチャンネル)
英語音声動画 (金融庁YouTubeチャンネル)
 
  • 電力セクター:国内外の電力会社、シンクタンク、アカデミア、第三者評価機関のパネリストが、電力業界のネットゼロに向けた取組みや課題、昨今のエネルギー価格とエネルギー安全保障問題、1.5度目標を達成するための信頼性のあるパスウェイの在り方や金融の役割について議論を行いました。また、2030年に向けて日本の電力セクターが行うべきことについて意見交換が行われました。
       パネルディスカッション2:電力セクター

PDF投影資料(JERA 酒入氏) 

日本語音声動画 (金融庁YouTubeチャンネル)

英語音声動画(金融庁YouTubeチャンネル)

◆パネルディスカッション3「秩序だったトランジションを達成するファイナンス」
 最後のパネルでは、実体経済のトランジションを支える金融の役割や、金融セクター自身のトランジションについて、銀行・資産運用会社・機関投資家の立場からディスカッションを行いました。フォワードルッキングに企業のトランジションを評価するための金融機関の目線や現時点での日本企業の評価、技術革新や顧客とのエンゲージメントの促進方法、地域差や産業界・金融界の間に生じ得るギャップへの解決策などについて議論が行われました。
      パネルディスカッション3

日本語音声動画(金融庁YouTubeチャンネル)
英語音声動画(金融庁YouTubeチャンネル)

◆閉会挨拶
 天谷金融国際審議官から、参加者への感謝を述べるとともに、高排出セクター・企業にアプローチする、日本の事業体(エンティティ)ベースのトランジションファイナンスへの取組みに関し、現時点でDynamic、Flexible、Interactiveの3つの観点から価値が見いだせるとの説明がありました。そのうえで、信頼性の高いトランジションファイナンス市場の更なる発展のために、金融庁が取り組むべきと考えていることとして、(1)民間と連携した公的セクターによる取組みの継続、(2)外部評価者や金融機関の取組みの質と信頼性の向上、(3)企業自身の取組みの強化、を掲げ、本シンポジウムが、パリ協定の実現に向けた長い旅路の礎となることへの期待が述べられました。

当庁関連施策の詳細はこちら:
「金融機関における気候変動への対応についての基本的な考え方」
PDF「日本におけるトランジション・ファイナンスの取組み 」

      天谷金融国際審議官より閉会挨拶

日本語音声動画(金融庁YouTubeチャンネル)
英語音声動画(金融庁YouTubeチャンネル)
 
PDF発言原稿【日本語仮訳】
PDF発言原稿【英語】

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

国際室 国際企画第二係(内線2550)

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