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令和7年1月17日
金融庁

監査法人の処分について

金融庁は、令和6年11月1日、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)から、アスカ監査法人(法人番号9010405004181、以下「当監査法人」という。)に対して行った検査の結果、当監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるよう勧告を受けました。
 同勧告を踏まえ、金融庁は本日、下記のとおり、当監査法人に対して公認会計士法(昭和23年法律第103号。以下「法」という。)第34条の21第2項に基づき、以下の処分を行いました。

1.処分の概要

(1)処分の対象

アスカ監査法人(法人番号9010405004181)(所在地:東京都港区)

(2)処分の内容

契約の新規の締結に関する業務の停止6月(令和7年1月20日から令和7年7月19日まで)
 業務改善命令(業務管理体制の改善。詳細は下記3.参照。)

2.処分の理由

当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、令和6年11月1日、金融庁は審査会から行政処分勧告を受け、調査を行った結果、下記ア.からウ.までに記載する事実が認められ、当該事実は法第34条の21第2項第3号に規定する「運営が著しく不当なものと認められるとき」に該当する。

ア.業務管理態勢

当監査法人は、法人の使命として、中堅企業を中心とする被監査会社に対して品質の高い監査業務を提供し、公共の利益及び社会の発展に貢献することを掲げている。また、当監査法人は、「新規の顧客獲得を重視する中で、監査の品質の向上のための風土が醸成されていない」との過去の審査会検査における指摘や、金融庁長官からの業務改善命令を踏まえ、監査の品質を重視する組織風土の醸成に向けた取組を実施したとしている。
 しかしながら、経営管理担当者である代表社員及び品質管理担当責任者である代表社員は、職業的専門家としての倫理感が欠けており、法人内において、外部検査等での指摘の回避を最優先事項とし、職業的専門家としての誠実性・信用保持を軽視する風土が形成され、まん延する状況を助長・放置している。このため、業務執行社員が、監査報告書日後の追加的な監査手続の実施、監査調書の事後的な作成や改ざん等を指示し、監査補助者が当該指示を躊躇なく実行するなど、社員及び職員において、法令、監査の基準、倫理規則等を遵守して業務を遂行する意識が保持されていない。
 また、経営管理担当者である代表社員が、収益維持・拡大を志向する経営姿勢を保持する中で、社員会等において、監査の品質の維持・向上に向けた施策(監査業務数の適正水準への調整等)について議論する風土が形成されていない。このため、当監査法人では、業務執行社員が、人的資源が不足している状況について十分に考慮することなく、監査契約の新規の締結又は更新を行い、また、十分かつ適切な監査証拠を入手していない状況において監査手続を終了させるなどの事態が生じており、各業務執行社員において、監査の品質を適正な水準に保つ意識が保持されていない。

こうしたことから、下記イ.に記載するとおり、品質管理態勢において、利益相反取引の承認、審査会検査及び日本公認会計士協会(以下「協会」という。)が実施する品質管理レビューに対する不適切な対応、監査調書の管理及び最終的な整理(監査調書の変更等)並びに監査業務に係る審査に関して重要な不備が認められるほか、広範かつ多数の不備が認められる。
 また、下記ウ.に記載するとおり、今回の審査会検査で検証対象とした全ての個別監査業務において、業務執行社員及び監査補助者に、監査の基準に対する理解が不足している状況、職業的懐疑心が不足している状況及び監査業務を実施するために必要な時間が確保できていない状況が認められ、それらに起因する重要な不備を含む広範かつ多数の不備が認められている。

イ.品質管理態勢

(利益相反取引の承認)

経営管理担当者である代表社員は、他の社員の過半数による承認を受けることなく、当該代表社員が代表社員を務める税理士法人との顧問契約の締結、当該代表社員が代表取締役を務める株式会社との業務委託に関する契約の締結等を行っている。

(品質管理レビューに対する不適切な対応)

当監査法人の社員及び職員は、令和4年度品質管理レビュー(通常レビュー)及び令和5年度品質管理レビュー(改善状況の確認)において、レビュー対象個別監査業務とする監査業務に係る通知を受けてから、協会のレビューアーに当該監査業務に係る監査ファイルを提出するまでの期間において、監査調書の改ざんを組織的に行っている。

(審査会検査に対する不適切な対応)

当監査法人の社員及び職員は、今回の審査会検査において検証対象個別監査業務とする監査業務に係る通知を受けてから、審査会検査の検査官に当該監査業務に係る監査ファイルを提出するまでの期間において、監査調書の改ざんを組織的に行っている。

(監査調書の管理及び最終的な整理(監査調書の変更等))

当監査法人は、監査報告書日後に実施した監査手続の結果に基づき、監査調書を新たに作成する行為等を防止するための措置を講じておらず、監査調書の事後的な作成や、監査調書の改ざんを組織的に行っている。

(監査業務に係る審査)

審査担当社員は、監査チームが実施した、不正リスク対応や会計上の見積り、グループ監査等に係る監査手続に関し、業務執行社員との討議や関連する監査調書の査閲を十分に実施することなく、監査チームによる重要な判断及びその結論には問題がないとして審査を完了させており、今回の審査会検査で検証対象とした個別監査業務において検出された重要な不備を含む複数の不備を、審査において指摘できていない。

このほか、内部規程の整備及び運用、品質管理レビューでの指摘事項の改善状況、職業倫理及び独立性、監査契約の更新、社員及び非常勤職員の評価等、監査補助者に対する指示・監督及び監査調書の査閲並びに品質管理のシステムの監視に不備が認められる。
 このように、当監査法人の品質管理態勢については、検証した範囲において、利益相反取引の承認、審査会検査及び協会が実施する品質管理レビューに対する不適切な対応、監査調書の管理及び最終的な整理(監査調書の変更等)並びに監査業務に係る審査に関して重要な不備が認められるほか、広範かつ多数の不備が認められており、著しく不適切かつ不十分である。

ウ.個別監査業務

業務執行社員及び監査補助者は、会計基準及び監査の基準の理解や、現行の監査の基準が求める手続の水準の理解が不足している。特に、不正リスクへの対応、会計上の見積りの監査、確認手続及びグループ監査に関し、会計基準及び監査の基準の理解や、現行の監査の基準が求める手続の水準の理解が不足している。
 また、業務執行社員及び監査補助者は、被監査会社の特性に応じたリスク評価を適切に実施していない、監査証拠に不自然な点が認められる状況において追加の監査手続を実施していないほか、会計上の見積りに係る経営者の仮定の合理性を批判的に検討していないなど、職業的懐疑心が不足している。
さらに、業務執行社員は、各業務執行社員が担当する監査業務を実施するために必要な時間を確保できていないほか、監査補助者を過度に信頼しており、監査補助者に対する適切な指示・監督及び監査調書の深度ある査閲を実施していない。
 くわえて、監査補助者は、十分な監査手続を立案・実施するために必要な時間を確保できておらず、必要な監査手続を完了させることなく監査を終了している。
 これらのことから、収益認識における不正リスクへの対応、固定資産の減損の検討、確認手続及びグループ監査に係る監査手続が不十分といった重要な不備が認められる。

上記のほか、連結範囲の検討、リスク評価手続、違法行為への対応、収益認識における不正リスクへの対応、経営者とのディスカッション、関係会社に対する債権の評価、収益認識基準の検討、企業結合取引に関する監査手続、訴訟事件への対応、注記の検討、内部統制監査、内部統制の運用評価手続、内部監査人の作業の利用、関連当事者取引の注記、監査役等とのコミュニケーション、後発事象の手続及び継続企業の前提の検討が不十分、また、重要な虚偽表示リスクの評価、仕訳テスト、資産除去債務の検討、関連当事者取引の検討及び虚偽表示の評価が不適切かつ不十分、さらに、監査上の主要な検討事項(KAM)、監査報告書のその他の事項区分の検討及び監査報告書の日付が不適切並びに経営者確認書が未入手といった、広範かつ多数の不備が認められる。

このように、検証した個別監査業務において、重要な不備を含む広範かつ多数の不備が認められており、当監査法人の個別監査業務の実施は著しく不適切かつ不十分なものとなっている。

3.業務改善命令の内容

(1) 法人代表者は、職業的専門家としての倫理観を保持する重要性を十分に認識し、職業的専門家としての誠実性・信用保持を重視する風土を醸成し、社員及び職員に法令等を遵守して業務を遂行させる態勢を整えること。併せて、監査の品質の維持・向上に向けた施策(監査業務数の適正水準への調整等)について議論する風土を醸成し、各社員に対して監査資源(人的資源及び時間)の確保等、監査の品質を確保する必要性を浸透させるなど、十分かつ適切な監査業務を実施するための環境整備に向け、当監査法人の業務管理体制の改善に主体的に取り組むこと。

(2) 法人代表者は、審査会の検査及び日本公認会計士協会の品質管理レビューにおいて指摘された不備の根本原因を十分に分析したうえで改善策を策定及び実施するとともに、改善状況の適切な検証ができる態勢を整備すること。利益相反取引に関する社員会等への報告・承認態勢を整備すること。併せて、監査ファイルの最終的な整理や、その後の監査調書の管理が着実に行われるよう実効性のある措置を講じるとともに、監査手続に関する業務執行社員との討議や監査調書の査閲等十分かつ適切な審査を実施するための態勢を整備するなど、当監査法人の品質管理態勢の整備に責任を持って取り組むこと。

(3) 現行の監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること(収益認識における不正リスクへの対応、固定資産の減損の検討、確認手続及びグループ監査に係る監査手続など、審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)。

(4) 上記(1)から(3)までに関する業務の改善計画を含む、登録上場会社等監査人が整備すべき組織体制、評価・監督機能及び監査業務遂行体制等の整備に係る計画について、令和7年2月17日までに提出し、直ちに実行すること。

(5) 上記(4)の報告後、当該計画の実施完了までの間、令和7年5月末日を第1回目とし、以後、3か月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

企画市場局企業開示課(内線2769、3804)

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