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金検第147号
平成23年3月31日
検査監理官 統括検査官 特別検査官 専門検査官 金融証券検査官 |
殿 |
金融庁検査局長 細溝 清史
平成23年東北地方太平洋沖地震による災害についての金融検査マニュアルの特例措置及び運用の明確化について
今般の東北地方太平洋沖地震の影響により、被災地では債務者と一時的に連絡が取れないこと等から、金融機関による債務者の実態把握や担保物件の確認等が一時的に困難となっているものと見込まれる。また、金融機関は、全国で、同地震の影響により計画停電や原材料の調達難等から財務状況等が一時的に悪化した債務者を抱えているものと見込まれるほか、貸出条件の変更時に直ちに経営再建計画を策定できない債務者を抱えているものと見込まれる。
こうした異例な事態を踏まえ、金融検査マニュアルについて、別添のとおり、特例措置及び運用の明確化に係る事項を付記した「資産査定管理態勢の確認検査用チェックリスト」の別表を定めたので、了知されたい。
また、貸出条件緩和債権の特例措置については、「平成23年東北地方太平洋沖地震による災害に関する主要行等向けの総合的な監督指針の特例措置について」等に留意されたい。
本通達については、平成23年3月期の決算処理から適用する。
なお、保険検査マニュアルの「資産査定及び償却・引当の確認検査用チェックリスト」についても、本通達に準じて取り扱うこととしたので了知されたい。
別表における留意事項
東北地方太平洋沖地震による災害の影響について、金融機関は、金融機関及び債務者の被害状況並びに担保物件・保証人の状況等の実態を、合理的に判断できる範囲内で可能な限り自己査定に反映させることとする。その上でもなお、災害の影響のため、債務者との連絡が一時的に取れないこと等により、一時的に当該債務者などの実態把握が困難であり、又は担保物件の実査・再評価が困難であること等により、基準日における自己査定を行うことができない一部の資産については、それまでに把握している情報を用いることを妨げない。その際は、財務諸表等への注記が必要となる場合があることに留意する。具体的な注記内容については、金融機関の利害関係者に対して必要な会計事実を明瞭に表示する観点から会計監査人の意見等を踏まえつつ検討する必要があるが、特に預金者等に対して適切な情報開示を行う観点からは、少なくとも、それまでに把握している情報を用いて査定した事実を記載することとする。
I. 「債務者区分」とは、債務者の財務状況、資金繰り、収益力等により、返済の能力を判定して、その状況等により債務者を正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先及び破綻先に区分することをいう。
II. 自己査定において、II、III及びIV分類に分けることを「分類」といい、II、III及びIV分類とした資産を「分類資産」という。また、II、III及びIV分類としないことを「非分類」といい、分類資産以外の資産(Ⅰ分類資産)を「非分類資産」という。
III. 「債権区分」とは、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号。以下「金融機能再生緊急措置法」という。)第6条第2項の規定により、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律施行規則」(平成10年金融再生委員会規則第2号。以下「金融機能再生緊急措置法施行規則」という。)第4条に定める資産の査定の基準に基づき、債権を債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として正常債権、要管理債権、危険債権、破産更生債権及びこれらに準ずる債権に区分することをいう。
IV. 自己査定における分類区分
自己査定においては、回収の危険性又は価値の毀損の危険性の度合いに応じて資産をⅠ、II、III、IVの4段階に分類する。
1. Ⅰ分類は、「II分類、III分類及びIV分類としない資産」であり、回収の危険性又は価値の毀損の危険性について、問題のない資産である。
2. II分類とするものは、「債権確保上の諸条件が満足に充たされないため、あるいは、信用上疑義が存する等の理由により、その回収について通常の度合いを超える危険を含むと認められる債権等の資産」である。なお、II分類とするものには、一般担保・保証で保全されているものと保全されていないものとがある。
3. III分類とするものは、「最終の回収又は価値について重大な懸念が存し、従って損失の可能性が高いが、その損失額について合理的な推計が困難な資産」である。ただし、III分類については、金融機関にとって損失額の推計が全く不可能とするものではなく、個々の資産の状況に精通している金融機関自らのルールと判断により損失額を見積ることが適当とされるものである。
4. IV分類とするものは、「回収不可能又は無価値と判定される資産」である。なお、IV分類については、その資産が絶対的に回収不可能又は無価値であるとするものではなく、また、将来において部分的な回収があり得るとしても、基本的に、査定基準日において回収不可能又は無価値と判定できる資産である。
V. 自己査定における基準日
基準日は決算期末日である必要があるが、実務上、仮基準日を設けて自己査定を行っている場合には、仮基準日は原則として決算期末日の3カ月以内となっているかを検証する。なお、債務者の状況の変化に応じて、適宜、信用格付、債務者区分及び分類区分等の見直しを行なっている場合は、信用格付等の見直しが適時適切に行われているかを検証する。
項目 | 自己査定基準の適切性の検証 | 自己査定結果の正確性の検証 | 備考 |
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1. 債権の分類方法 | |||
(2) 信用格付 | 債務者の財務内容、信用格付業者による格付、信用調査機関の情報などに基づき、債務者の信用リスクの程度に応じて信用格付を行う。また、信用格付は、次に定める債務者区分と整合的でなければならない。 なお、東北地方太平洋沖地震の影響のため、債務者との連絡が一時的に取れないこと等により、当該債務者の業況及び今後の見通しについて把握することが一時的に困難である場合があることに留意する。 |
信用格付が行われている場合には、信用格付が、債務者の財務内容、信用格付業者の格付、信用調査機関の情報などに基づき、合理的な格付となっているか、信用格付と債務者区分の概念とが整合性のとれたものとなっているかを検証する。 また、被検査金融機関内部のデータに基づき信用格付を行っている場合は、当該データの信頼性及び標本数が十分であるかを検証する。当該データが不十分と認められる場合には、外部の信用調査機関等のデータをもって補完されているかを検証する。 さらに、債務者の業況及び今後の見通し、信用格付業者による当該債務者の格付の見直し、市場等における当該債務者の評価などに基づき、必要な見直しが定期的かつ必要に応じて行われるとともに、信用格付の正確性が監査部門により検証されているかを検証する。 |
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(3) 債務者区分 | 原則として信用格付に基づき、債務者の状況等により次のように区分する。 なお、債務者区分については、東北地方太平洋沖地震の影響のため、債務者との連絡が一時的に取れないこと等により当該債務者の実態把握が一時的に困難である場合には、それまでに把握している情報を用いても差し支えない。 |
債務者区分の検証は、原則として信用格付に基づき、債務者の状況等により正確に債務者区分が行われているかを検証する。なお、プロジェクト・ファイナンスの債権については、回収の危険性の度合いに応じて、見做し債務者区分を付して分類を行うことに留意する。 債務者区分は、債務者の実態的な財務内容、資金繰り、収益力等により、その返済能力を検討し、債務者に対する貸出条件及びその履行状況を確認の上、業種等の特性を踏まえ、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュ・フローによる債務償還能力、経営改善計画等の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案し判断するものである。 特に、中小・零細企業等については、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて判断するものとする。 また、当該債務者の親会社等の状況を勘案する場合には、単に親会社の財務状況が良好であるとの理由だけで債務者区分を決定することは適当ではない。なお、当該債務者の親会社等の支援を勘案する場合には、親会社等の支援実績、今後の支援見込み等について十分検討する必要がある。 さらに、債務者が、法令等に基づき、国又は地方公共団体が民間金融機関の貸出に対して利子補給等を行うなどの政策金融(以下「制度資金」という。)を利用している場合には、債務者の財務状況等の検討に加え、制度資金の内容をも踏まえた上で、債務者区分の検討を行うものとする。 |
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正常先 | (略) |
(略) | |
要注意先 | 要注意先とは、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者をいう。 また、要注意先となる債務者については、要管理先である債務者とそれ以外の債務者とを分けて管理することが望ましい。 |
左記に掲げる債務者が要注意先とされているかを検証する。 また、要注意先となる債務者について、要管理先である債務者とそれ以外の債務者を分けて管理している場合には、当該区分が適切かを検証する。 さらに、債務者の財務状況等により判断すれば、破綻懸念先と判断されるものが、単に当該債務者の親会社等の財務状況が良好であるとの理由で債務者区分を要注意先としていないかを検証する。
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ハ. (略) | |||
破綻懸念先 | 破綻懸念先とは、現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)をいう。 具体的には、現状、事業を継続しているが、実質債務超過の状態に陥っており、業況が著しく低調で貸出金が延滞状態にあるなど元本及び利息の最終の回収について重大な懸念があり、従って損失の発生の可能性が高い状況で、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者をいう。 |
左記に掲げる債務者が破綻懸念先とされているかを検証する。 ただし、金融機関等の支援を前提として経営改善計画等が策定されている債務者については、以下の全ての要件を充たしている場合には、経営改善計画等が合理的であり、その実現可能性が高いものと判断し、当該債務者は要注意先と判断して差し支えないものとする。 なお、本基準は、あくまでも経営改善計画等の合理性、実現可能性を検証するための目安であり、経営改善計画等が策定されている企業の債務者区分を検討するに当たっては、本基準を機械的・画一的に適用してはならない。 債務者区分の検討は、業種等の特性を踏まえ、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュ・フローによる債務償還能力、経営改善計画等の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案して行うものとし、本基準の要件を形式的に充たさない債務者を直ちに破綻懸念先と判断してはならない。 |
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特に、中小・零細企業等については、必ずしも経営改善計画等が策定されていない場合があり、この場合、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて検討するものとし、経営改善計画等が策定されていない債務者を直ちに破綻懸念先と判断してはならない。 さらに、債務者が制度資金を活用して経営改善計画等を策定しており、当該経営改善計画等が国又は都道府県の審査を経て策定されている場合には、債務者の実態を踏まえ、国又は都道府県の関与の状況等を総合的に勘案して検討するものとする。 |
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実質破綻先 | 実質破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者をいう。 具体的には、事業を形式的には継続しているが、財務内容において多額の不良資産を内包し、あるいは債務者の返済能力に比して明らかに過大な借入金が残存し、実質的に大幅な債務超過の状態に相当期間陥っており、事業好転の見通しがない状況、天災、事故、経済情勢の急変等により多大な損失を被り(あるいは、これらに類する事由が生じており)、再建の見通しがない状況で、元金又は利息について実質的に長期間延滞している債務者などをいう。 |
左記に掲げる債務者が実質破綻先とされているかを検証する。 法的・形式的には経営破綻の事実は発生していないが、自主廃業により営業所を廃止しているなど、実質的に営業を行っていないと認められる場合に、当該債務者を実質破綻先としているかを検証する。
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破綻先 | (略) |
(略) |
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(4) 担保による調整 | 担保により保全措置が講じられているものについて、以下のとおり区分し、優良担保の処分可能見込額により保全されているものについては、非分類とし、一般担保の処分可能見込額により保全されているものについては、II分類とする。 また、担保評価及びその処分可能見込額の算出は以下のとおりとする。 なお、東北地方太平洋沖地震の影響のため、担保物の実査を行うことができない等により、以下の方法による担保評価及びその処分可能見込額の算出が一時的に困難であり、その他の簡便な方法によっても合理的に見積もることが困難である場合には、それまでに把握している担保評価及びその処分可能見込額を用いても差し支えない。 |
左記に掲げるとおり、担保により保全措置が講じられているものが区分され、担保評価及びその処分可能見込額の算出が合理的なものであるかを検証する。 |
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(中略) |
(中略) |
(中略) |
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(5) 保証等による調整等 優良保証等 |
(略) |
(略) |
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一般保証 | 優良保証等以外の保証をいう。 例えば、十分な保証能力を有する一般事業会社(上記のロを除く。)及び個人の保証をいう。 なお、東北地方太平洋沖地震の影響のため、現に保証を行っている者が被保証人との連絡が一時的に取れないこと等により、現に保証を行っている者の保証能力について、把握することが一時的に困難である場合には、それまでに把握している当該者の情報を用いても差し支えない。 |
左記に掲げる保証が一般保証とされているかを検証する。 保証会社の保証能力の有無等の検証に当たっては、当該保証会社の財務内容、債務保証の特性、自己査定、償却・引当、保証料率等の適切性等を踏まえた十分な実態把握に基づいて行う。また、保証が当該金融機関の子会社によるものである場合において、例えば、当該子会社が親金融機関等から支援等を受けている場合には、経営改善計画の妥当性や、その支援等を控除した場合等の状況についても踏まえることに留意する。 |
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(中略) |
(中略) |
(中略) |
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(6) 分類対象外債権 | 分類の対象としない債権は次のとおりとする。 |
左記に掲げる債権が分類対象外債権とされているかを検証する。 |
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(7) 債権の分類基準 | (略) 住宅ローンなどの個人向けの定型ローン等及び中小事業者向けの小口定型ローン等の貸出金については、延滞状況等の簡易な基準により分類を行うことができるものとする。 この場合、東北地方太平洋沖地震の影響により、給与振込が一時的に途絶えていることなどによる一過性の延滞は延滞とみなさなくとも差し支えない。 |
(略) なお、簡易な基準により分類を行っている場合には、基準及び基準を適用する対象が合理的なものとなっているかを検証する。 |
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(後略) |
(後略) |
(後略) |
項目 | 償却・引当基準の適切性の検証 | 償却・引当結果の正確性の検証 | 備考 |
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1.貸倒引当金 | (略) | (略) | |
(1) 一般貸倒引当金 | 一般貸倒引当金については、正常先に対する債権及び要注意先に対する債権について、原則として信用格付の区分、少なくとも債務者区分毎に、以下に掲げる方法により算定された過去の貸倒実績率又は倒産確率に基づき、将来発生が見込まれる損失率(予想損失率)を求め、原則として信用格付の区分、少なくとも債務者区分の債権額に予想損失率を乗じて予想損失額を算定し、予想損失額に相当する額を貸倒引当金として計上する。 (略) |
一般貸倒引当金については、正常先に対する債権及び要注意先に対する債権について、信用格付の区分又は債務者区分毎に、償却・引当基準に基づき、予想損失額が合理的に見積られているかを検証する。 具体的には、以下に掲げる項目について検証する。
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(後略) |
(後略) |
(後略) |