株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会(第1回)議事要旨及び資料

議事要旨

1.日時:

令和元年12月17日(火)16時00分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室

3.議題:

株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する問題について

4.議事内容:

 株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等の現状等について、金融庁、東京証券取引所及び、日本公認会計士協会より説明。その後、監査法人、ベンチャー企業関係者、証券会社などの関係者間において、IPOに係る監査事務所の選任等に関する問題の現状認識などについて、意見交換を行った。
 主な発言のポイントは以下のとおり。

ベンチャー企業関係者
 〇 足もとの好況によりIPOを目指す企業は増加傾向にある一方、4年程前から監査法人が監査を引き受けなくなっている印象。監査法人を見つけるために首都圏以外の地域の監査法人に相談に行く企業もある。また仮に企業が監査法人を見つけても証券会社が認めないケースもある。実感としては、半年から1年程度かけて監査法人を探し回らなければならないほど、厳しい状況にある。
 
 〇 特に大手監査法人において、監査契約のハードルが高くなっていると認識。足もとの業績、管理体制、成長性、資本政策の蓋然性などを企業側がきちんと説明できないと、監査契約は難しいという印象。要因としては、①2015年に問題となったIPO直後の不正会計事案を受けた監査手続の厳格化により、監査コストが高くなっていること、②働き方改革、スタートアップ企業による会計士の引き抜きなどにより、監査に必要な人員の確保が難しくなっていること、③金融庁や日本公認会計士協会による検査やレビューにおいて求められる監査品質の水準が上がっていること、などが考えられる。
 
 〇 監査法人によるショートレビュー(IPOに向けた課題抽出を行うための短期調査)を受けた後、相当期間が経過した後に監査契約を断られるケースもある。その後、監査法人をなかなか見つけられず、新規上場までのスケジュールが更に1年後ろ倒しになった事例もある。
 
 〇 監査法人と契約するために、決算期のピークの時期(3の倍数月)を外して設定する企業もある。
 
 〇  IPOを目指す企業側にも問題があり、監査法人へ持ち込むタイミングが早すぎるケースもあると認識。時価総額が数十億程度と見込まれる企業がIPOを前提に監査法人に契約を持ち込むことにそもそも意義があるかという観点からも検討が必要。
 
 〇 内部管理体制の整備のタイミングについて、IPOを目指す企業と監査法人との間に認識のズレがある。ベンチャー企業側には、内部管理体制を整備してから監査法人に相談するという感覚はない。もし、監査法人として、上場するタイミングの2期前までに内部管理体制の整備を終えてから相談に来て欲しいということであれば、監査法人の方針として示すべきではないか。
 
 〇 IPOを目指す企業が増えている状況を踏まえ、大手・準大手監査法人のリソースを捻出する体制を構築していくための議論が必要ではないか。監査法人のリソースだけでは解決が難しい場合は、外部のリソースからのサポートも検討すべき。
 
 〇 IPOを目指す企業の多くは、監査法人の支援のもと適切な監査を受けたいと考えている。IPO準備に当たり監査法人からどのようなサービスが受けられるか、取引所が上場審査でどういう点を見ているか、といった情報が少なく、IPOを目指す企業が悩む要因となっているのではないか。
 
 〇 将来的に東証一部への上場も視野にいれると、企業にはIT統制を含めた内部統制の構築も視野に入れた対応が求められる。このような体制構築をサポートしてくれる監査法人のリストがあることが望ましい。
 
 〇 IPOを目指す企業においても、公認会計士のサービスはプロフェッショナルなものであることを認識し、監査に必要な報酬はきちんと支払うなど、会計監査の質を維持するような仕組みを確保していくべき。また、IPOを目指す企業の監査を行うことにより、監査法人も何らかのメリットを享受できるような仕組みを構築していくとよいのではないか。
 
 〇 足もと、未上場であっても100億以上の資金調達ができる環境にある。今後、機関投資家も未上場の企業に投資するような状況になることが見込まれる中、監査法人によるデューデリジェンスの重要性はさらに高まってくる。上場準備とは別の観点から監査法人の役割を考えることも必要ではないか。
 
 〇 日本公認会計士協会が公表している「上場会社監査事務所名簿」に登録されている監査事務所数と、実際のIPO時の監査事務所数を比較すると、大きく乖離している。監査の担い手のすそ野を広げる仕組みの構築に向けたリーダーシップの発揮が必要となるのではないか。例えば、IPOを目指す企業の監査を大手監査法人が受嘱した上で、中小規模の監査事務所のリソースを活用していくことも考えられるのではないか。また、監査法人業界の再編により、中堅の監査法人を増やしていくことも、問題解決の一端にはなるのではないか。
 
 〇 解決策として、①監査法人におけるIPO関連部門の組織構造の変更、②監査法人における公認会計士以外の人材の有効活用、③監査法人がIPOを目指す企業に最低限求めるレベルを示したガイドラインの策定・周知、④成長が止まっている企業の新陳代謝を促すことによる監査法人のリソース確保、などが考えられる。
 
証券会社
 〇 証券会社としては、IPO支援に積極的に取り組んでおり、大手・準大手監査法人の監査を必要条件としている事実はない。他方、IPOを目指す企業の監査は、当該企業に資本市場への門戸を開くべきか否かを決める上で重要な役割を担う以上、上場企業の監査とは内容的にも異なるところがあると理解しており、こうした監査に求められる品質や組織体制を備えた監査法人であることが不可欠。近時、上場企業においても不適切会計の事案が散見されており、監査の品質確保の重要性は増している。
 
 〇 IPOを目指す企業の監査について、証券会社としては、大手・準大手監査法人に限定はしておらず、監査法人としての経験や体制などに照らして個別に判断している。ただし、昨今の会計不祥事を踏まえ、投資家保護の観点から監査品質の確保を最優先に考えた結果、大手監査法人への依頼が多くなっているのは事実。また、監査品質や法人内の人員体制が整備されていないとIPOに向けた監査を行うことは難しいので、結果として準大手以上になっている。
 
 〇 大手・準大手以外については、監査法人におけるIPOを目指す企業の監査の経験の有無、監査法人としての経験がない場合には大手で経験を積んだ人員がいるかなどの個人の実績等を踏まえ、総合的に判断している。
 
 〇 大手監査法人のリソース不足の問題については、大手から独立・リタイアした有能な人材、若手で独立開業している人材を有効に活用するなどの方策を考えてはどうか。
 
 〇 証券会社がベンチャー企業などとIPOに向けたアドバイザリー契約を締結する際には、監査法人が選定されていることが前提条件。IPOを目指す企業が監査法人を選定する際の参考となるよう、監査の品質を確認できるガイダンスがあればよいのではないか。証券会社としても、IPOを目指す企業の監査ができる監査法人のリストがあると紹介しやすい。
 
 〇 このような状況が続くと、数年後にはIPOを目指す企業が減っていく可能性もある。IPOに向けた必要な支援を行い、経済活性化につなげていく取組みは重要ではないか。
 
監査法人関係者
 〇 IPOを目指す企業の監査と上場企業の監査は、同一の監査の基準の下で実施されるので、大きな違いはなく、特殊なスキルが求められるものではない。他方、ベンチャー企業の先進的なビジネスモデルや固有のビジネスリスクの理解、経営者リスク、IPOに向けたタイムマネジメント管理などへの対応は必要。こうした観点から監査法人の経験やリソースなどを勘案する必要があるかもしれない。
 
 〇 ビジネスモデルが新しく収益が急激に変動するベンチャー企業も多い。監査法人において、上場を目指す企業への指導助言機能をきちんと果たせる人材を厚くしていきたい。
 
 〇 ベンチャー投資の出口は、IPOだけではなくM&Aなど様々な手法があり、監査法人としては、IPOを目指す企業の監査にとどまらない広い視点から、ベンチャー企業育成のために、リソースを継続的に確保している。
 
 〇 証券会社がIPOを目指す企業の監査の担い手を大手・準大手監査法人に限定しているのではないかという声があったが、仮に証券会社においてこうした認識ギャップに基づくプラクティスがあるのであれば、解消すべき。
 
 ○ 監査法人としては、IPOを目指す企業において、内部管理体制の整備を進めた上で、監査契約の相談を持ち掛けて欲しいと考えている。他方、企業サイドにおいて、まず監査契約を締結した上で監査法人に相談しながら体制整備を進めていくという認識が定着しているということであれば、両者の認識の間には差があるということになる。
 
 ○ 公認会計士の人員に限りがある中、監査手続の厳格化や働き方改革により、余剰リソースを確保することが困難な状況であり、公認会計士以外の人材の活用は重要な課題。監査法人としては、事務作業の集約により余剰リソースを捻出し、そのうえでスキルを持った人材をIPO関係分野の業務にあてていきたい。
 
 〇 監査法人としては、既にIPO準備をサポートするコンサルタントとの連携も図りながら、IPOを目指す企業のニーズに応えている。
 
 〇 IPOを目指す企業の監査の多くは、大手監査法人が引き受けているが、大手監査法人を離れ、中小規模の監査事務所を立ち上げてIPOに向けた監査に携わりたいと考えている公認会計士も多数存在している。
 
 〇 日本公認会計士協会の「上場会社監査事務所名簿」には、上場会社の監査をしており、品質管理レビューの結果に基づき登録が認められた監査事務所が掲載されている。協会のホームページ上で品質管理概要などを確認することができる。名簿に登録されている監査事務所は、協会の品質管理レビューを受けているところであり、監査品質は同じである。今後、IPOに向けた監査の経験の有無だけでなく、IPOに向けた監査に関する研修などを実施し、一定の知見のある監査法人のリストの作成などを通じて、監査の担い手候補の間口を広げていきたい。

以上

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