「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」(令和7年度第1回)議事録

  1. 日時:

    令和7年10月21日(火曜日)10時00分~12時00分

  2. 場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

【翁座長】

それでは、ただいまより、コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議第1回会合を開催いたします。皆様、御多用のところ御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

このたび有識者会議の座長を務めることになりました日本総合研究所の翁でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

本日の会議の運営について、後ほど事務局より説明がございますが、先んじてウェブ上でライブ中継をさせていただいております。なお、議事録は通常どおり作成の上、金融庁ホームページにて後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

初めに、金融庁井上企画市場局長より御挨拶をいただきたいと思います。井上企画市場局長、よろしくお願いいたします。

【井上企画市場局長】

おはようございます。金融庁企画市場局長の井上俊剛でございます。本日は、メンバーの皆様には、大変お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議の開催に当たり、一言御挨拶申し上げます。

これまで金融庁では、日本企業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向け、東京証券取引所様はじめ様々な関係機関と連携しながら、コーポレートガバナンス改革の取組を推進してまいりました。2014年のスチュワードシップ・コード策定と、2015年のコーポレートガバナンス・コード適用開始から約10年が経過しましたが、この両コードの下で、日本企業のコーポレートガバナンス改革は一定程度進んできたものと認識しております。他方、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けては、形式的な対応にとどまることなく、企業と投資家の双方の取組におけるコーポレートガバナンス改革の実質化が重要との御指摘もなされていると承知しております。

こうした状況も踏まえまして、さらなるコーポレートガバナンス改革の実質化を進めるべく、金融庁では本年6月30日、「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム2025」を公表いたしました。この文書では、企業と投資家の緊張感ある信頼関係に基づく対話の促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの見直し等を掲げております。コーポレートガバナンス・コードについては、2015年の適用開始後、2018年、2021年と改訂を行っており、それ以来の改訂の検討となります。2023年から策定してまいりましたアクション・プログラムでも、形式から実質に向けて取り組んできたコーポレートガバナンス改革をより確かなものとすべきとの方向性が示されておりますが、これを実現するためにはコードそのものも実質化を検討しなければならないと考えております。

現在のコードには、細目にわたる規定となっている箇所も存在しているものと認識しておりまして、こうした項目が企業に不必要な対応コストを強いるとともに、形式的な対応を助長しているという側面も一部あるのではないかと受け止めております。この有識者会議では、経営資源の適切な配分など、企業に対して追加的な取組を促す論点についてももちろん御意見をいただきたく存じますけれども、より重要なことは、企業がこうした本質的な項目への対応に注力できるよう、実務に十分浸透した箇所や他法令との重複が生じている項目を中心に削除や統合を検討いただき、コードのスリム化を図ることで、より実質的にコードに対してコンプライやエクスプレインをしていただくよう促していくことだというふうに考えております。

メンバーの皆様には、コーポレートガバナンス・コードの実質化に向けた積極的な御議論をいただくようお願い申し上げまして、私からの御挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【翁座長】

ありがとうございました。メンバー御紹介の前に、恐縮ですが、カメラ撮影はここまでとさせていただきたいと思います。それでは、続きまして、事務局からメンバーの御紹介をお願いいたします。

【小長谷企業開示課長】

事務局を務めさせていただきます金融庁企業開示課長の小長谷でございます。よろしくお願いします。

まずは事務局から、有識者会議のメンバーの皆様を御紹介させていただきます。座席順に御紹介させていただきます。

お手元に配席図をお配りしておりますが、メンバーの皆様から御覧になって右側から、井口譲二様です。

上田亮子様です。

神作裕之様です。

古布薫様です。

武井一浩様です。

円谷昭一様です。

中神康議様です。

長谷川隆代様です。

松岡直美様です。

松田千恵子様です。

山口博臣様です。

なお、本日は御欠席ですが、メンバー名簿にもございますとおり、小林充佳様、ジェン・シッソン様にも御参加いただくこととなっております。

次に、オブザーバーを御紹介申し上げます。

一般社団法人日本取締役協会、丸尾執務室長です。

日本公認会計士協会、吉田常務理事です。

法務省、宇野参事官です。

経済産業省、鮫島課長です。

なお、事務局につきましては、金融庁と東京証券取引所が共同で務めさせていただきますが、時間の都合もございますので、配席図をもって紹介に代えさせていただきます。

【翁座長】

ありがとうございました。続きまして、事務局から、運営要領案と会議に関する留意事項の御説明をお願いいたします。

【小長谷企業開示課長】

有識者会議の運営要領案につきましては、資料3に記載のとおり定めているものでございます。記載内容の御説明は、時間の関係上、割愛させていただきます。

次に、会議の留意事項について御説明申し上げます。御発言を希望される際には、お名前のプレートを立てていただければ、座長から指名いただきます。御発言後は、お名前のプレートを元にお戻しいただくようお願いいたします。

【翁座長】

ありがとうございました。皆様、このような進め方でよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【翁座長】

ありがとうございます。それでは、このように進めさせていただきます。

それでは、議事に移らせていただきます。本有識者会議は、資料1にございますとおり、本年6月30日に公表された「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム2025」において、コーポレートガバナンス・コードの見直しを行う旨が示されたことを踏まえ、開催することとしたものでございます。

本日は、事務局である金融庁と東京証券取引所より資料の説明をいただいた後、討議を行いたいと存じます。

まず、それでは金融庁から説明をお願いいたします。

【小長谷企業開示課長】

それでは、お手元の資料4に沿って御説明をさせていただきます。

資料1ページを御覧ください。スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードの策定から、先ほど局長の井上からも申し上げましたとおり、約10年が経過いたしました。コーポレートガバナンス・コードにつきましては、前回改訂が2021年となっておりますので、もし来年改訂が行われることとなると、5年ぶりの改訂ということになります。2023年以降は毎年、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議において御議論いただき、アクション・プログラムを取りまとめております。この3回のアクション・プログラムに通底するテーマが、ここにございますとおり、形式的な体制の整備ではなく、実質的な対応をより一層進展させるといった点、すなわち実質化であると認識しております。

資料2ページは、本邦のコーポレートガバナンス・コードの概要、3ページから5ページは海外でのコード改訂等に関する動きをまとめております。説明は割愛させていただきます。

資料6ページは、先ほども言及しましたコーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラムの最新版、2025年版の概要となっております。このページの2つ目の四角にございますとおり、アクション・プログラム2025では、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に真に寄与する緊張感ある信頼関係に基づく対話の促進に向けて、コーポレートガバナンス・コードの3回目となる改訂を行うことが提言されております。

コードの見直しに当たってのテーマに関して、アクション・プログラム2025ではどのような点を挙げているかにつきましては、資料の7ページ、8ページを御覧ください。こちらはアクション・プログラム2025の本文からの抜粋となっております。

まず、7ページのローマ数字の「Ⅰ.はじめに」にあるとおり、上場企業の対応コスト・開示負担に配慮し、策定・改訂時から一定期間が経過し実務への浸透が進んだ箇所等を削除・統合・簡略化し、前回コード改訂時(2021年)以降に法制化された内容との重複排除に努めるなど、コードのスリム化/プリンシプル化も同時に検討するとされています。

また、ローマ数字の「Ⅱ.フォローアップと今後の方向性」の「1.稼ぐ力の向上」にございますとおり、経営資源の配分先として、多様な投資機会、選択肢があることを認識することの重要性ですとか、現預金の状況を含め、現状の資源配分が適切かを不断に検証しているかといった点にも配慮、留意しつつ、経営資源の最適な配分の実現という観点からもコードの見直しを検討することとされております。

資料の8ページを御覧ください。次に、「2.情報開示の充実・投資家との対話促進」にございますとおり、上場企業による有価証券報告書の総会前開示の取組をさらに促す観点から、制度横断的な検討を進めることと併せてコードの見直しを検討することとされております。

次に、「3.取締役会等の機能強化」では、執行側のみの立場に立つのではなく、自律的に機能し、議長や独立社外取締役を含む取締役をサポートする取締役会事務局の重要性に言及されております。

次の資料9ページを御覧ください。こちらには、アクション・プログラム2025が示唆するコード改訂の検討の方向性を箇条書にしております。資料7ページ、8ページで御説明した点を踏まえると、この4点に集約されるかと考えております。

次に、資料の10ページ、11ページでは、コードのスリム化/プリンシプル化をどのような考え方で進めていくかについて、事務局としての御提案を御説明したいと思います。

まず、資料10ページにある「現状の課題に関する指摘」という欄を御覧いただければと思いますが、「形式的なコンプライにとどまっている場合もあり、企業間で取組の質に大きな差がある。コードの趣旨に立ち返って、各企業の置かれた状況に応じた取組を検討することが必要なのではないか。形式的な遵守をすることより、丁寧なエクスプレインをすることも重要ではないか。」といった指摘がなされているところです。

こうした課題への対応に当たって参考になるかと考えられる点を、「諸外国の状況」という欄に記載しております。例えばイギリスのコードではガイダンス、ドイツのコードではリコメンデーションズがあり、コンプライ・オア・エクスプレインの対象とはしない形式で、企業に対するアドバイスや各原則への対応方法の具体例などが示されております。また、直近のイギリスでのコード改訂に当たっては、企業の報告負担を抑えつつガバナンスの質を向上させることを意図して、的を絞ったアプローチを採用したものと認識しております。

次に、資料の11ページを御覧ください。前のページで御説明した点を踏まえ、コードのスリム化/プリンシプル化をどのように進めていくかという方向性を示したのがこのスライドとなっております。現行のコーポレートガバナンス・コードは、このスライドの左下にございますとおり、基本原則が5つあり、各原則にはその考え方が付されております。また、基本原則の下には、原則が合計31個、補充原則が合計47個設けられており、特にこの補充原則を中心に、先ほど井上からも申し上げましたが、やや細くて具体的な記載となっている部分もあるのではないかと考えられます。このため、この補充原則47個を一旦解体して、その内容に応じて3通りの仕分けをしてはどうかというふうに考えております。

まず①ですが、引き続き重要性が認められ、コンプライ・オア・エクスプレインの規律に付す必要があると考えられる補充原則については、原則に格上げしてはどうかと考えております。次に②ですが、コンプライ・オア・エクスプレインの対象とするよりも、他の原則等の補助的な位置づけとしつつ、より実質的な対応を促進することが適当と考えられるものにつきましては、スライドの右下にございますとおり、原則の考え方を新設した上で、そちらに記載することとしてはどうかと考えております。最後に③ですが、実務への浸透が進むなどによってコードに記載する必要性が低下したと考えられる箇所や、コード策定以降にルール化され、重複が生じている箇所などにつきましては、この際削除してはどうかと考えております。

次に、資料12ページと13ページですが、2015年に策定された本コードの原案に付されていた序文を参考までに掲載しております。このコードが目指すところですとか、あるいはプリンシプルベース・アプローチ、コンプライ・オア・エクスプレインといった手法の意味するところなどについて言及されておりまして、策定から10年がたった今でも意味のある文章なのではないかと考えられます。ただ、これはあくまで原案の序文でございますので、現在のコーポレートガバナンス・コードに付されているものではありません。

最後に、14ページを御覧ください。本日御議論いただきたい事項をまとめております。(1)ですが、まず総論として、コーポレートガバナンス改革の現在地と今後の課題につきまして、また、そうした課題を踏まえて、この会議で議論するテーマについてどのように考えるか、御意見をいただければと思います。また、(2)ですが、コードの中で、形式的・表面的な遵守にとどまっていることにより実質化の妨げとなっているような原則があるか、もしあれば御指摘をいただきたいと思います。

次に(3)ですけれども、コードのスリム化/プリンシプル化に関連して、スライド11でお示しした補充原則の整備の方向性につきまして御意見をお聞かせください。また、(4)ですが、スリム化の観点から、現行コードの複数箇所に記載されている同一テーマの事項を統合することも考えられるかと思います。一例として、株主に関する記載が第1章と第5章に分かれている点などを挙げております。この点につきましても御意見を頂戴できればと思います。

最後に、プリンシプルベース、コンプライ・オア・エクスプレインといったコードの趣旨を再周知する観点から、コードに序文という形式を設けることにつきまして御意見を伺いたいと思います。

事務局からの説明は以上でございます。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは引き続き、東京証券取引所から御説明をお願いいたします。

【渡邉上場部長】

それでは、お手元の資料5に基づきまして、東京証券取引所における最近の取組を御紹介させていただきたいと思います。

2ページ目を御覧いただければと思いますけれども、東証では、日本経済の活性化ですとか魅力ある市場の提供といった観点で、ガバナンス改革や市場改革を推進しているところでございます。最近のところでは、2023年に資本コストや株価を意識した経営の推進を上場会社の皆様にお願いしたりですとか、2025年9月からグロース市場改革をスタートしているというところでございます。

3ページ目は、資本コストや株価を意識した経営、2023年に出した要請の概要でございます。具体的な内容は、左側一番上のポツにありますとおり、中長期的な企業価値向上を目的として、資本コストや資本収益性を意識した経営を実践していただきたいということを要請したというものでございます。

4ページ目が、上場会社の皆様の御対応の状況を示しているものでございます。左側がプライム市場、右側がスタンダード市場となっておりまして、プライム市場のほうを御覧いただきますと、弊社の要請を受けて、上場会社の皆様が自社の取組の開示を進めておられまして、大体9割の会社さんが自社の取組を開示されているという状況になっております。そのうちの7割、全体の63%の上場会社では、自社の取組について、投資家との対話などを踏まえてアップデートをして、アップデートした内容を開示しておりまして、PDCAサイクルが回り始めている状況にあるかと思います。

一方、スタンダード市場でございますけれども、直近のところでは5割弱、48%の会社が自社の取組を開示されており、そのうちの4割、全体の2割の会社がアップデートした内容を開示しているというような状況にございます。依然として残り半数の会社はまだ未開示という状況になっております。

5ページ目、6ページ目が、弊社から要請をした後の株価の推移につきまして、2023年3月末を100といたしまして、その後の推移を折れ線グラフにしたものでございます。示すにあたりグルーピングを行っておりまして、一番上の赤い線で示しておりますのが事例集掲載企業ということで、投資家の方から高い評価を得ている企業をまとめて、好事例集という形で我々から提供していますけれども、そこに載っている企業の株価パフォーマンスを示しているものでございます。次のスタンダード市場のほうも御覧いただくとはっきり分かりますけれども、投資家から高い評価を受けるような取組を進めている会社では、株価の上でも高いパフォーマンスを示しているというのがはっきり表れているかと考えているところでございます。

7ページ目は、縦軸に市場評価としてPBRを、横軸に資本収益性としてROEを取りまして、目安としまして、PBRについては1倍、ROEについては8%というところで線を引きまして4つの象限に分けまして、要請の前後で会社の分布がどう変化したかというのを図示しているものでございます。

こちらは好事例集に載っているような投資家から高い評価を受けている企業を取り上げたものですが、全体としては左下から右上のほうに分布が移ってきているというものがはっきり表れているかなと思います。こうした企業ではどういう取組をしているかというのが、その右側にまとめてございまして、例えばM&Aや成長投資、事業ポートフォリオの見直しなど、抜本的な取組を進められ、その結果が投資家からも評価されているところでございます。

8ページと9ページが、プライム市場、スタンダード市場全体につきまして同じように分析した結果を示しているものでございます。8ページのプライム市場の方を御覧いただきますと、こちらでも一応、左下から右上の方への遷移はみてとれるかと思いますが、事例集に掲載している企業と比べると、そこは弱いところがあるのかなと思っているところでございます。右側は、より具体的にPBRとROEの分布を示している分布図でございますけれども、こちらからみてとれますように、多くの企業は、まだROE8%とか、PBR1倍とか、その辺に固まっている状況にあると認識をしております。

9ページはスタンダードですが、傾向としては非常に似ている状況となっております。

弊社の取組について、今年に入りまして国内外の機関投資家と意見交換をしておりまして、そこでいただいたフィードバックを10ページ以降で記載しております。

まず全体的な評価としましては、全般的には企業の変化について、ポジティブな御評価をいただいております。一方で、取組の実効性に関してはやや厳しい意見も寄せられておりまして、計画の開示は進んだけれども、これからそれがちゃんと実行に移されるかどうかが課題であるだとか、実際にそれが実行されて、ROEやROICなどの数字の改善がしっかり認識できないと、なかなか日本株へのアロケーションは増やせませんよ、といった御意見をいただいております。

また、この取組を進める中で、PBR1倍やROE8%といった数字に少しフォーカスが当たっていた面がございまして、その目安を超えていれば一安心みたいな企業もあるのではないかというふうな御意見も投資家からいただいておりまして、そこで満足せずに、上に上にということで目指して頑張っていっていただきたいということも御意見として寄せられております。

11ページ目は、今後の課題や東証の取組みに対する示唆についても御意見が寄せられておりまして、まず、資本コストの概念などに対しては、上場会社の皆様の御協力もありまして、御理解が進んできているというような評価を投資家もしているようですけれども、それをいかに経営に反映させていくかというところについては、投資家としてはまだやや不満を感じるところもあるといったご意見が寄せられています。具体的には、不採算事業からの撤退や、成長事業への資源配分といったドラスティックな経営判断になかなかつながっていないというところを投資家は感じているようでして、そのためには、いかに経営者の方に腹落ちして動いていただけるかというところが鍵になるので、しっかり東証としても後押ししてほしいといった意見が寄せられております。

また、自社株買いが増えているけれども、場当たり的な株主還元は、もう株価に対して何の意味もないということを投資家の方もおっしゃっているということでございます。そういったことを踏まえて、中長期的な企業価値の向上を投資家は期待しているので、そこに向けたコアビジネスへの投資もしっかりやっていただきたいという意見が海外投資家からも寄せられているところでございます。

以上が投資家からのフィードバックになりますけれども、12ページは、上場会社の皆様に対しましても、弊社からの要請を踏まえた取組を進めるに当たっての課題や、取引所に期待するサポートなどに関するアンケート調査をしておりまして、その結果を御紹介しております。

課題としましては、組織・体制面、取組の内容、投資家との対話といったカテゴリーにつきまして、それぞれいろいろな課題が寄せられております。そういった課題を踏まえまして、取引所に対しては、他社の取組事例といったものをきちんと紹介して、それを参考にしたいですとか、あとは経営者などに向けて取引所からしっかり東証の取組について説明するような機会を設けてほしいですとか、そういった声が寄せられております。

13ページ目が、これまでの状況を踏まえて今後どうしていくかをまとめているものでございます。

プライム市場におきましては、開示は一定程度進んでおり、引き続き、事例集のアップデートですとか、実用的なコンテンツを上場会社の皆様に提供して、上場会社の皆様の前向きな取組を後押ししていきたいと考えているところでございます。スタンダード市場につきましては、まだ半数の企業が未開示であるというところでございます。ただ、やらされ仕事としてやってもあまり効果が上がらないというのは明らかですので、いかに自律的、自発的に経営者の皆様に取り組んでいただくかというところが課題と認識をしておりまして、どういった形で後押しできるか今後考えていきたいと思っております。

また、先ほど投資家の意見でもありましたけれども、これまでやってきたところで一安心という企業も多いというような指摘もありますので、さらに目線を上げていって一緒に頑張っていきましょうということを上場会社の皆様に働きかけていきたいということでございます。

最後、企業と機関投資家とのコミュニケーションにつきましても、引き続き改良していきたいというところで考えているところでございます。

残りは参考資料でございまして、詳しい御説明は割愛させていただきますけれども、例えば15ページをちょっと御覧いただければと思いますけれども、投資家の皆様と意見交換する中では、例えば、ガバナンス・コードの原則5-1で株主との建設的な対話がありますけれども、そちらについてコンプライというふうに宣言されているような会社であっても、投資家がIRの面談をお願いしたいと上場会社に申し込みますと、投資家から見ると合理的な理由もなくお断りをされてしまうことがあるようでして、コンプライについて投資家と上場会社の認識がずれているところがあるかと思いますので、改善が必要な課題の一つではないかと思います。

ほかは独立社外取締役の選任状況、指名・報酬委員会の設置状況、コードの各原則ごとのコンプライの比率といった資料をつけております。

私からの説明は以上でございます。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは、討議に移る前に、本日御欠席の小林メンバー、シッソンメンバーから意見書を提出いただいておりますので、事務局より簡単に概要の説明をお願いいたします。

【小長谷企業開示課長】

それでは、小林メンバー、シッソンメンバーより頂戴した意見書の概要を説明させていただきます。

まず、小林メンバーから御紹介します。

コーポレートガバナンス・コードの適用開始から10年を迎え、企業の「稼ぐ力」は確かに向上してきたものの、持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向けては、なお課題が残されている。コード改訂に向けて議論を深めるに当たり、3点申し上げる。

初めに、コードのスリム化/プリンシプル化について、足元の形式から実質へという方向性には賛同する一方、近年、コードに新しい論点が次々と追加され、多くの企業が形式的な対応に追われている現状には問題意識を持っている。そのため、序文に改めてプリンシプルベース・アプローチの趣旨や精神を明記することが適切である。その際、多様なステークホルダーへの付加価値の分配についても盛り込んではどうか。また、単にスリム化されるだけではなく、シンプルで分かりやすいコードとなることが必要。例えば原則4-8、独立社外取締役の有効な活用は、独立社外取締役の人数要件を満たすこと自体が目的化しており、形式的な遵守にとどまっている。さらに、議決権行使助言会社による形式的な賛否の推奨についても是正する必要がある。米国同様、助言会社の透明性や説明責任を強化する規制の検討が必要ではないか。

次に、経営資源の配分については、本来、企業の自律的な判断に委ねられるべきものであり、経営者が自らの責任において決定すべき事項であることを踏まえると、経営資源の適切な配分を通じた投資促進をコードで規律することについては極めて慎重な議論が求められる。そもそも企業の内部留保は、将来の投資や研究開発、有事対応への備えという性格も有しているが、コードに盛り込まれた場合には、企業は短絡的な資本効率を意識せざるを得ず、結果として株主還元圧力が一段と強まるおそれがある。

また、有価証券報告書の株主総会前開示に関連して、本来、株主への説明は企業が自らの創意工夫で行うべきものであり、コードで規律することについては極めて慎重な議論が求められる。近年、企業の開示負担は増加しており、成長戦略の策定や投資家との対話に経営資源を振り向けられない要因の一つとなっている。開示の在り方を抜本的に見直し、制度横断的に再整理することが必要である。

以上でございます。

続いて、シッソンメンバーの意見書を紹介させていただきます。

初めに、ICGNとしては、今回の改訂の方向性には総論として賛成する。その上で、海外投資家の視点から優先度が高いと考えられる論点について数点意見を述べる。

まず開示のタイミングについて、我々は、企業の早期開示に向けた努力を歓迎する。他方、議決権行使基準日を年度末にそろえている慣習は、グローバルスタンダードから離れた日本独自のものである。この実務が変化すれば、長年の課題である総会時期の集中も解消できるため、我々も支持する。また、株主総会前の開示については、投資家が十分に理解する時間と、企業から投資家に説明する時間を確保する観点からも、1日、2日よりもさらに前に開示されるべきである。

コードのスリム化については基本的に賛成だが、過度なスリム化や、いまだ重要な役割を果たしている規定を削除してしまわないよう留意が必要である。ガバナンスの改善について、日本の大企業では進展が見られるが、全ての企業に行き渡ったとはまだ言えず、性急な規定の削除や再分類には慎重を期すべき。また、考え方を導入する際には、コンプライ・オア・エクスプレインの対象となる原則との関係性の整理が必要不可欠である。プリンシプルベース本来の役割が発揮されるためには、良質なエクスプレインがなされるべき。

また、コードのさらなる強化に向けて、幾つかの論点についてはコードに明示することを推奨する。例えば、取締役会の過半数を独立取締役とすることや、議長の独立性を含む独立取締役のリーダーシップ、委員会の役割の明確化、取締役トレーニングの促進などを含めるべき。また、株主価値への貢献と連動した報酬体系の構築や、ガバナンスの取組状況の開示、取締役選任プロセスでの候補者の得票数の開示、良質な取締役会実効性評価なども、さらなるガバナンス実務の改善に資する。

キャピタルアロケーションについては、重要なガバナンスの責任である。特に資本効率とROEの継続的な向上を求める。また、政策保有株式はゼロにすべきと考えており、コード改訂により、この取組を後押しすることで、効率的な資源配分が実現される。政策保有株式を持ち続ける正当性と、解消に向けたタイムラインのより明確な開示が期待される。

株主総会について、完全なバーチャル株主総会には反対するが、ハイブリッド株主総会は、より多くの株主に対して参加機会を提供するものであり、支持する。

以上でございます。

【翁座長】

ありがとうございました。

それでは、これよりメンバーの皆様から御意見、御質問をお伺いする討議の時間とさせていただきます。本日は初回ということもありますので、事務局やメンバーからの説明内容に限らず、当会議の進め方も含めまして、それ以外の論点についても何かございましたら御発言をお願いいたします。

時間が限られておりますので、メンバー皆様の御発言の時間を確保できるよう、恐縮ですけれども、お一人5分程度をめどにお願いいたします。なお、御発言開始から5分が経過したタイミングで、事務局員より御発言者にメモを入れさせていただきます。また、御発言を御希望される際には、お名前のプレートを立ててください。私のほうで、それらを拝見して御指名をさせていただきます。

それでは、どなたからでも結構でございますが、いかがでしょうか。

古布メンバー、中神メンバー、井口メンバー、よろしくお願いいたします。

【古布メンバー】

よろしくお願いいたします。御発言の機会、ありがとうございます。私のほうからは、コード全体の在り方について1点、株主との対話、バランスシートに関して1点、最後に取締役会について1点、3点述べさせていただければと思います。

企業の方々、金融庁の皆様のおかげで、日本におけるガバナンスがここまで進展してきたことに、改めて感謝申し上げます。その中で、実質化を目的としてスリム化、プリンシプル化を打ち出すことについて同意いたしますが、その際、これはガバナンスの一層の進化を促すためなのだというコミュニケーションを行っていただくよう留意していただきたいと思います。形式ではなく実質面でのガバナンスの強化を目指すのであれば、先ほどの東証様の資料の15ページにあるような形骸化したコンプライの背景が、コードの書きぶりが原因なのか、あるいはコンプライという意思決定において経営陣や取締役会の関与というものが十分になされていないのか、原因に応じて対応いただきたいと思っております。

また、序文の設置について同意いたします。この序文において、ガバナンス・コードを何のために設定しているのか、ガバナンス強化、そして資本効率の向上というのは、何も投資家のためだけに行われるものではなく、従業員の皆様を含む全てのステークホルダーにとってポジティブな成果を生むためだということを、ぜひ記していただければと思います。

次に2点目で、株主との対話です。コードのスリム化の流れは理解しますが、株主との対話、この重要性が決して現状から低下することのないようにお願いをしたいと思います。現状、株主との対話が重視されると考えられる現預金の活用についてコメントさせてください。

日本企業における現預金の保有額というのは、この20年間で倍増しており、総資産に対する比率も同様に倍増して、15%を超える水準になっています。一方でアメリカにおいては、その水準にほぼ変動は見られないという状況になっております。また、毎年、生命保険協会様が行っている企業価値向上の取組に向けたアンケートにおきましても、中長期的な投資・財務戦略の重要項目として、企業様のほうが投資家よりも株主還元を重視する一方で、投資家は、資本構成をより重視しているという結果が出ております。やはり多くの投資家は、最適な資本構成と有効な資本活用を望んでいるのであって、単純に株主還元だけを望んでいるわけではないということを強調させていただければと思います。成長に向けた投資の意思決定、そしてそれを取締役会がしっかりとモニタリングした上で、株主との対話によって説明責任を果たしていただく、これこそが投資家が望んでいることではないかと思います。

原則1-4の政策保有株式についても、ここで発言させていただければと思います。企業の皆様の大変な御努力、そして開示府令の改正もありまして、情報開示もが進展し進んでおって、改めて感謝を申し上げます。現在、非常に株価が大きく変動する中、保有している企業においてはリスク管理の必要性がやはり以前にも増して増していること、そして、保有されている企業においては、自らの株主構成や流動株比率を勘案しリスクプレミアムつまり資本コストを勘案した経営を行う必要性があることをしっかりと御理解いただければと思います。

政策保有株式の問題は、まさに日本全体の課題であって、お叱りを受けるかもしれませんが、例えば一定期間を定めて、この機会に売却されれば何らか税制上優遇措置があるとか、やや現実離れしているかもしれませんが、思い切った案も含めて議論されることが必要なのではないかと思います。私どもが企業様と対話をしていると、現預金の積み上げや政策保有関係の構築をリスク回避のためにしているんだという御説明をいただくことがあるんですが、現状においては、リスク回避ではなくて、リスクを増大させている側面があることを御理解いただければと思います。

3点目、最後に取締役会の機能強化についてです。やはり少数株主の利益を考えた機能が発揮される必要があると思っております。今後様々なコーポレートアクションが増加していくと思うんですが、その際に取締役会が本当に説明責任を果たすべく準備ができているのかどうか、懸念を覚えることもございます。例えば、2022年以降に行われた上場企業のMBOのうち半数近くが買収価格がPBR1倍以下で設定されたとのデータがございます。少数株主の利益という観点から取締役会が、企業のコーポレートアクションに関して十分に説明責任を果たすべく機能強化が必要であると思っております。加えて機関設計も、今3種類も存在しておりグローバルの投資家にはとても分かりづらい状況になっておりますので、こちらも検討が必要なのではないかと思います。機関設計に関しては日本取締役協会様でも議論が行われていると理解しております。

加えて、日本企業における取締役会の独立性、多様性、そしてスキルの向上についてはまだ改善の余地がありますので、こうした点に関しては、今回のガバナンス・コード改訂においてもさらに強調される必要があると、そのように考えております。

以上です。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは、中神メンバー、お願いいたします。

【中神メンバー】

中神でございます。諸先輩方を差し置いて発言する機会をいただきまして、ありがとうございます。

この10年間、コーポレートガバナンス・コードは、本当に完成度を高めてきたと思います。経営の現場からすると、意識すべき最低限の線であるというふうに考えられていますし、エンゲージメント投資の現場でも対話の重要な結節点になっています。逆に、ここまで完成度が高まってきたコード、これをどう改訂したらいいのかというのは、今回の有識者会議の大事なテーマかなと思っております。その意味で、序文を設けて趣旨を改めて明確にすること、それからスリム化を進めることに賛成いたします。一方、単なるスリム化のみではなく、全体構造の再整理、再編集を通じて、さらなる実質化を進めることが可能ではないかと考えております。

ここで問題提起したいのが、現場で見られる「独立社外取締役の機能不全」という問題でございます。社外取締役は、制度としては整備され、その「量」は格段に充実したと思います。しかし、投資や経営の現場では、その「質」に関する懸念はむしろ広がっているのではないでしょうか。中には、第二の人生にぴったりの仕事と考えて、選んでくれる会社を一生懸命探すというような行動も見られますし、選ぶ側の企業も無難な人物を選ぶという傾向があるのではないでしょうか。そういったことの帰結として、執行からは、社外取締役は役に立たないという発言が出たり、投資家面談には怖くて出せないというような発言も見聞きします。一方、投資家からは、何を聞いてもちょっと頼りない、あるいは監督の本質を分かっていないんじゃないかというような不信もあるように思います。こういった機能不全状況というのは、コードが本来目指した姿とは乖離していると思いますし、今現在、日本の資本市場が直面している環境変化に対応できていないと思います。

まず第1に、日本企業の変革に期待する国内外の機関投資家は、ガバナンスに対しても世界水準を求めるようになっています。しかしながら現状では、企業価値向上策あるいは企業統治の在り方について、機関投資家と堂々と議論できるような社外取締役は限られているというのが実態ではないでしょうか。このままでは海外投資家から、やっぱり日本企業のガバナンスは不十分だよねと判断され、世界の株式市場との比較の中でいうと過少評価されてしまうリスクがあるのではないかと考えます。

第2に、アクティビズムが活発になって、同意なき買収も頻発してくる、こういった足元の環境においては、執行、株主双方から独立した立場で判断を担う社外取締役の責任が非常に重くなっていると思います。実際、社外取締役個人の法的な責任が問われる事態も発生しています。現場でたくさんの経験をしておりますが、いざこういったアクティビズム、同意なき買収という有事になってから慌てて対応しようとしても、拙速な経営判断、事業戦略の誤り、あるいは従業員の離反といったものを通じて、企業価値が大きく損なわれる事態も発生しがちです。平時から社外取締役の実効性を高めておくことが、株主のみならず、全てのステークホルダーのために必要不可欠だと考えます。

こういった投資、経営両方の現場での問題意識を踏まえ、私からは、次回の改訂では、「独立社外取締役の責務と発揮すべき機能」という新たな章を設けてはどうかという提案をしたく思います。世界各国のコードを見ると、社外取締役専用の章を設けることはまれなようです。しかし、我が国独自の状況、つまり、この10年という短期間で、企業経営/企業統治の核心中の核心に、1万人規模の社外取締役という新しい、ある種職業ができたという独特の状況、あるいはアクティビズム隆盛といった資本市場の急速な変容を鑑みると、取締役会という機関とか機構に関わる章、これは既にあるわけですけれど、この機関とか機構とは別に、その機関を担う人、社外取締役個人にフォーカスした章を立てて、量を質に転換していく、その推進力とするというのがよいのではないかと考えます。

具体的な新しい章のイメージは別途事務局に提出してありますが、社会取締役の使命、求められる覚悟、あるいは資質、行動規範、こういったものを含むものを想定しております。現行コードに既に存在している要素がありますので、これらを整理統合する一方で、各国のコードあるいは上場規則等々を踏まえて、世界水準の章に編成することが可能だと考えます。

最後になりますが、社外取締役がその質を上げて、本当に独立した存在になること、結果、執行・投資家双方から頼られる存在になること、すなわち社外取締役のエンパワーメント、これこそが日本の企業経営あるいはガバナンス改革を、もう一段進化させることにつながるのではないかと考えます。

私からは以上でございます。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは、井口メンバー、お願いいたします。

【井口メンバー】

御指名ありがとうございます。また、御説明どうもありがとうございました。私は、資料の最終ページの御議論いただきたい事項に沿って意見を申し上げたいと思います。

最初の(1)ですが、資料9ページに挙げられている個別項目3点について、コードに追加する方向で賛同いたしたく思います。1点目の資源配分に関しましては、これは古布さんもおっしゃっていましたように、非常に投資家にとっては重要な事項で、当社の対話のエンゲージメントアジェンダの中でも大きな割合を占めているということになっております。先進的な企業では既にやられておることと思いますが、獲得したキャッシュフローを事業への投資を使い、どのように事業の資本効率を高めるか、そして目指すべきバランスシートを踏まえて余剰資金をどのように株主還元するかといった計画を、中長期的な企業価値向上に責務がある取締役会がしっかり検証し、投資家に説明するということは重要と思っています。また、検証と説明と申し上げましたが、この中には、実績と計画に乖離が生じたときにはどのように対応するのかといったことも含めるべきと思っております。

2点目の有報の総会前開示ですが、これはICGNのシッソンさんの意見書にもありましたが先進国でこれができていない国は日本だけということで、喫緊の課題と思っております。なお、ここで言う総会前開示というのは、これもICGNの意見書にもありましたように、総会の数日前ではなくて、投資家が十分に議決権行使の判断が可能なタイミング、通常は3週間前開示ということを目指すべきこともコードに明記すべきだと思っております。また、今後、本格的なサステナ開示など、企業の実務担当者の方の御負担が増えるとは思いますが、申し上げた、総会前開示の実現による事業報告書等と有報との一体開示によりまして、こういった開示負担の大きな軽減にもつながると考えております。

3つ目の取締役会事務局の機能強化にも賛同いたします。ただ、期待される機能についてはコードで明確にしたほうがいいのではないかと思っております。私の理解では、取締役会の独立性が増す中、取締役会にもレポーティングラインを持って、取締役会の参謀として議題設定などのサポートを行う組織というのが求められていると理解しております。本年6月に公表されておりますアクション・プログラム2025でも、執行におもねることなく、という表現が記載されておりますが、日本でもこの文脈で求められているといったことだと思いますので、こういった機能を明確化する必要があると思います。このことは、今ほど中神さんがおっしゃったような御懸念の解消、社外取の機能強化ということにも大きく寄与するのではないかと思います。

ただ、こういった機能を前提にした場合、OECDのガバナンス原則でも、英国などのコードでも、カンパニーセクレタリーという用語が使われております。グローバルでは、これが一般的だと思っておりますので、海外投資家の理解度向上という観点でも、このカンパニーセクレタリーという言葉の追記というのは御検討いただければと思っております。

次のコードのスリム化等につきまして、これも賛同いたします。ちょっと順番が逆になるかもしれませんが、特に(4)のテーマごとにまとめるということには強く賛同いたします。例えば、第2章のサステナビリティに関わる事項ですが、10年前のコード策定時から状況が大きく変わっていると思っております。具体的に言いますと、重要なサステナビリティ事項はキャッシュフローや企業価値に影響するという、こういったことが広く市場関係者にも認識されるようになっていること、有報のサステナ記載欄の設置、あるいはSSBJ基準のガバナンスの開示でも取締役会の監督の位置づけが明確になってきているということが大きな変化と思っております。したがって、第2章の原則の多くは、原則4-5の取締役会・監査役等の受託者責任というところにまとめられるのではないかというふうに考えております。あと原則2―5の内部通報も、原則4-3のコンプライアンス事項にまとめられるのではないかと考えております。その他詳細ありますが、時間の関係もありますので、後で事務局のほうに案として送らせていただければと思います。

あと、(3)の補充原則の再整理についても賛同いたします。例えば補充原則の4-12の①の取締役会の運営とか、あるいは5―1の②の対話の手続といったことは、重要であるとは思うのですが、かなり詳細な手続論となっておりまして、コンプライ、エクスプレインの対象とする必要はないのではないかと考えております。また、補充原則1―2の⑤の信託銀行の名義関連の部分、ここは現在もう必要ではないのかなと個人的には考えておりまして、削除でもよいのではないかと思っております。こちらのほうも細かくなりますので、あとで、事務局にメールで送らせていただければと思います。

あと、資料9ページ記載の3項目のほかに、3点をコードに追加ということで検討してはどうかと思っております。

1点目は、アクション・プログラムでも取り上げられ、今ほど古布さんからも言及がありました原則1-4の①の政策保有株式についてです。最近、政策保有株式を純投資に移管するという企業が増えてきております。これは、投資家から見ると政策保有株式の対応が不透明になったということになりますので、純投資への移管後の適切な対応について求めることを追記すべきではないかと思います。

2点目は、補充原則3―1の③の記載にありますTCFDの開示というところとなります。御存じのように、TCFDはIFRS財団に吸収されまして、TCFDという言葉は、まず聞くことがなくなっております。ですので、この言葉をSSBJ基準ということに置き換えてはどうかと思っております。このことは、SSBJ基準の強制適用以外のプライム上場企業へのサステナ開示の奨励にもつながると思っております。

3点目は、原則4-8の独立社外取の有効な活用です。ICGNの意見書にもありますが、近年、日本のグローバル企業を中心に、独立社外取の方が取締役会議長になるケースが増えていること、こういったことは市場からも大きく歓迎されているということを踏まえ、当原則に取締役会の議長を入れるということを検討してもよいタイミングなのではないかと考えております。現状を考えると、いきなり全ての日本企業にこの取締役会議長を独立社外取にするというのは厳しいと思いますので、例えば原則4-8の2段落目の「上記に関わらず」とか、あるいは補充原則4―8の②の「例えば」とか、そういったところに類型として1つ入れるということでよいのではないか、と思っております。ただ、コードで、全く、独立した取締役会議長に触れられていないのは、現状と大きく乖離しているのではないかと思います。

最後に、⑤のプリンシプルベースの周知徹底について序文を設けるということに賛同いたします。一方、資料13ページの11のところとなりますが、コンプライせずエクスプレインする場合には、投資家が納得する十分な説明をするという趣旨も追記いただければと思っております。これはICGNの意見書では良質なエクスプレインという表現がありましたが、クオリティー・オブ・エクスプラネーション、説明の質というのは海外でも言われておりまして、非常に重要なことと考えております。コードというのは罰則のないソフトローですので、エクスプレインばかりを強調し過ぎると、投資家のモニタリング効果もなくなって、コードが単なるガイダンスになってしまうというリスクもありますので、そこはぜひ追記していただければと思っております。

以上でございます。ありがとうございました。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは次に、松田メンバー、お願いいたします。

【松田メンバー】

ありがとうございます。「議論いただきたい事項」ということで3点挙がっておりますので、この3点について、まず総論的な意見を申し上げまして、少し後で補足をいたします。

まず総論についてですが、基本的に賛成いたします。この10年、金融庁、東証の皆様、そして多くの企業、投資家の尽力により、非常にコーポレートガバナンスは進展してきたかと思います。コーポレートガバナンス・コードが導入された当時には、ある経営者が、エクイティガバナンス時代の経営の指南書であろうというようなことをおっしゃられたことを私も記憶しているのですけれども、今、10年が経過して、そういった手取り足取りの指南書というのは、もうそろそろ脱皮してもよろしいのではないかということで、ここでの見直しに賛成します。個別論点についてはまた別途お伝えします。

それから、スリム化についても賛成いたします。10年経過したことによって、企業もそうですが、投資家も多様化しております。東証の皆様がお作りになられた資料に、企業の3層構造というものを説明した資料がございますが、私は、投資家も同じように、少なくとも3層構造ぐらいになっているのではないかと思います。そうすると、3掛ける3で9通りぐらいの関係性が少なくともある、これを一律のコードで全て規定するというのは、もはや無理であろうと思います。いろいろお考えあると思いますけれども、私は、コードについては非常に大きな骨太の方針を主に残して、そして、細則であるとか、そういったものは、なるべくガイドライン、アドバイス、あるいは好事例集、あるいはギャップのある事例集といったようなところに委ねていくべきではないかと思います。

基本的に、そういった差のある事項というのは、企業の将来の方向性、すなわち、企業が企業理念を追求し、そのために経営戦略を策定し、そして組織をそのように動かすというところの自主性にかなり大きく任されていると思います。その自主性を発揮する上での参考になるような取組というのを豊富に開示していく、そのほうがはるかに実効性があるのではないかと思っております。

それから、序文についてですが、これについても賛成いたします。ただ、この序文については、ぜひ経営者が読みたい、読むべきだと思うような内容という、そういう観点での作成が必要かと思っております。と申しますのは、開示が進んでいない企業に特徴的なのは、コーポレートガバナンス・コードをそもそも経営者が読んでいない、あるいは一読して担当者に任せ、後は担当者が対応すればよろしいというような考えになっているところが多くございます。したがって、経営者にこれはぜひ読んでいただくというような内容およびデリバリーを確保した序文になるということを希望いたします。

少し補足をいたします。スリム化の方向性でございますけれども、大きく分けて2つあると思います。1つは、やはり改めて見直すと、いわゆるハウツー的な内容が結構まだ残っているように思います。こうしたところは、細かくはまた事務局のほうにお伝えいたしますけれども、そろそろ削除してもよろしいのではないかということです。

それからもう一つは、重要でありながら分散もしくは重複している、あるいは形式的な言及にとどまっているがゆえに、企業の形式的な対応を招いているということがございます。サステナビリティ、あるいは株主の対話については既に出ましたけれども、あと2点、そういった意味で気になっているところを申しますと、1点は多様性についての記載でございます。重要でありながら幾つかの原則に分散しているということと、かなり個別具体の言及になっていること、それが企業としては、それさえ満たしていればいいという形式的な行動を生んでいるように思います。ここはそろそろイギリスのコードに倣って、多様性は非常に重要であるけれども、それをどういうふうに満たすのかとは企業が考えるというような方向に持っていくべきではないかと考えます。

もう1点は、委員会です。特に指名委員会をはじめとする指名のあり方については、後から改訂によって追加された部分もあり、かなりいろいろな条項にまたがってしまっている。そのことが企業にとっては、指名委員会を設置さえすればいいのであろうというような形式的な行動を招いているように思います。やはり取締役会の役割も非常に重要ですけれども、先進企業を見ておりますとそれ以上にこれから重要になっていくものとして、指名委員会の役割というものがあるかと思います。非常に重要であるというようなことが分かるような内容にまとめていくべきではないかなと思います。

あともう一つだけ申し上げたいのは、リスクマネジメント、守りのガバナンスと言われていることに関して、やはりもう少しまとめて記載してもいいのではないかということです。企業にとっては、昨今、不祥事その他も増えております。また、大企業ではグループガバナンスといったものも非常に大きな問題になっております。機関設計が複数あることで、監査の在り方といったものも悩みの1つです。そういったところをまとめて、これも非常に重要なものということで記載できるとよろしいのではないかと考えます。

私からは以上です。

【翁座長】

どうもありがとうございました。それでは、神作メンバー、お願いいたします。

【神作メンバー】

神作でございます。発言の機会をいただき、大変ありがとうございます。

スライドの9ページのアクション・プログラム2025が示唆する検討の方向性に従って、今般のコードの見直しを進めていくことに賛成いたします。

何点か気になっている点についてコメントさせていただきたいと思います。スライド9ページの個別の論点のほうですけれども、2番目に記載されている有価証券報告書の定時株主総会前の開示については、先ほど井口メンバーも御指摘されたとおり、これはぜひプリンシプルに盛り込む方向で検討いただきたいと思います。開示の中心は法定開示です。さらに法定開示の中でも、中心は継続開示の有価証券報告書です。有価証券報告書に基づく情報が株主権の行使、あるいは株主と経営陣との対話の言わばコアになるべき情報であるということだと理解しております。したがって、株主総会の前、しかも十分に開示された情報について検討し、経営陣とエンゲージメントを行う時間を確保することができるように、有価証券報告書が総会前に一定の期間を確保して開示されることが、コーポレートガバナンスの一層の実質化にとって、私は、どうしても必要なことではないかと思います。

確かに非財務情報の開示や保証制度など、企業の負担は非常に増えていることは確かでございますけれども、他方で、法制審議会の会社法制部会におきましても、あるいは金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループにおきましても、これらの開示制度の合理化が、現在議論されているところですので、そうした流れと併せてぜひ総会前の有報開示については前向きに進めていただきたいと思います。

次に、スライド9ページの3つ目に記載されている取締役会事務局の機能強化について申し上げます。私はこれも非常に重要なポイントだと考えております。特に独立社外取締役の比率が大きくなっていくと、また、とりわけ議長が社外取締役に就任するという場合には、事務局の充実が必須になると思います。さらに人材育成という観点からしても、このように極めて重要な役割を期待されている取締役会の事務局に配置されるということは、当該会社にとっても非常に有意義な人材開発のチャンスになるのではないかと考えております。取締役会事務局の機能強化は、先ほど申し上げた独立社外取締役の比率のさらなる上昇ですとか、あるいは取締役会の議長に社外取締役の方が就任するということは、恐らくこれからますます進めるべき方向だと思っておりまして、そうだとすると取締役会事務局の重要性というのもそれに応じてますます高まっていくであろうと認識しています。

続きまして、スリム化とプリンシプル化について申し上げます。スライドの11ページでございますけれども、再整備の方向性に賛成いたします。補充原則を3つのカテゴリーに分けて再整理するというのは大変結構なことだと思います。そのうち一番下の③、すなわち必要性が低下したり、重複等しているものを削除するという記述がございますけれども、重複している部分について統合すると、例えば、非財務情報やサステナビリティ関係の記述は確かにコーポレートガバナンス・コードができた後、改訂の際に関連性の高い箇所に盛り込まれてきたといった経緯等もあると思いますので、こういったものをまとめるというのはあり得るかと思いますけれども、私は、補充原則はよいことを言っている部分が非常に多くて、削除してしまうのはよっぽど慎重に検討していただきたいと思います。そういう意味では、②、すなわちコンプライ・オア・エクスプレインの対象にするのではないけれども、参考になる、あるいは指針になり得る記述は、ぜひ簡単に削除してしまうのではなくて、②として残していただくことを希望します。私は、何度も繰り返しになって恐縮ですけれども、補充原則には非常に良いことがたくさん書いてあると思っておりまして、ぜひ削除については慎重にご検討いただければと思います。

問題は①と②、コンプライ・オア・エクスプレインの対象にするのか、それとも考え方として参考に供するのかという点でございますけれども、ここはプリンシプルベース・アプローチの原則、基本的な考え方に立ち戻って考えるべきだと思います。私の理解ではプリンシプルベース・アプローチのプリンシプルというのは、それをどのように理解して、どのように解釈して、どのように具体化して、どのように実践していくかというのは、各社ごとに取扱いが変わり得る、すなわちすべての会社にとって1つの正解があるわけではないという考え方に立っていると思います。そうだといたしますと、まさにこういったプリンシプルに値するものをプリンシプルに、補充原則の中で原則に格上げすることが必要で、それとともに先ほど述べたようなプリンシプルベースの考え方からすると、プリンシプルについては、コンプライしている場合であってもエクスプレインするのが当然だということになると考えられます。各社でどのように考えて、どのようにそれを実施、実践しているのかということは、説明していただくことが必要になると思われますので、そういったことも含めて序文を設けて、プリンシプルベース・アプローチの考え方、あるいはコンプライ・オア・エクスプレイン、場合によってはコンプライ・アンド・エクスプレインの考え方について説明をしていただくことは非常に重要かつ有意義なことのように思います。

先ほどちょっと申し上げましたけれども、重複する部分についての統合というのは何か所か進める余地があると思いますので、それはぜひ進めていただきたいというふうに思います。

取り留めのない発言でございましたけれども、私からは以上です。どうもありがとうございました。

【翁座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に松岡メンバー、お願いいたします。

【松岡メンバー】

発言の機会をいただきましてありがとうございます。松岡でございます。

まず、日本企業のコーポレートガバナンスについてですけれども、本来の目的である事業会社の中長期的な成長という点を、改めてまずは確認したいと思います。その上で、時間の経過や取組の進展もある中で、事業会社においてコーポレートガバナンスの報告義務が過重なものとならないよう、実質化に向けてコードの内容が整理及びスリム化されるということについては賛成をしております。一方で、これまでの策定や改訂の歴史の中で、実務上の要望を踏まえて整えられた項目などについては、政策的に退行しているとの解釈がなされないような留意も必要であると考えております。

加えまして、コンプライ・オア・エクスプレインというのがコーポレートガバナンスの原則とされているところですが、実際企業において、また、一部の投資家においても、エクスプレインは望ましくないという認識の広がりの下で、形式的にコンプライする企業が多いという現象についても長く指摘されてきておりますけれども、解消に至っていないという状況だと思います。企業が中長期的な企業価値向上のためにキャピタルアロケーションを考えるというのは経営者の重要な責務であり、また、その検討の結果をステークホルダーに説明するということは重要なものでありますが、企業にとって何が最適な選択であり、それを例えばコンプライしない場合も、その理由について適切な説明を行い、投資家の理解を得るということも必要なことであり、コーポレートガバナンスの1つの在り方として、適切なエクスプレインというのも重要な軸であるということを改めて啓発をしたいと思っております。

日本におけるコーポレートガバナンスは企業の稼ぐ力の強化、それと、それによる持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に主眼が置かれているところ、株主、投資家との対話を稼ぐ力の強化に結びつけ、企業がリスクテークを行うことができ、成長投資に注力できる環境が醸成されるということが重要であると考えます。その際に、企業による経営資源の配分について、適切な投資の方針や考え方についての説明が行われるように促すということは重要でございますけれども、個別の項目を検証することには、記載の在り方やその影響について十分に留意した検討というのが必要であると考えます。

例えば、現預金についてですけれども、企業が現預金を持つことの合理性そのものが否定される風潮に向かうことがないよう、慎重な検討を行う必要があると思います。経営陣がリスクや機会を十分に認識し、キャピタルの投資について検討し、実行に移すには、リードタイムやオポチュニスティックな側面、また、開示できる時点という側面も考慮する必要がございます。そうした中で、あくまでも中長期的な成長を目指すというのが本旨であるということは、ここで強調しておきたいと思います。また、企業と投資家では非対称性、すなわち市場への入退出の即時性や自由度というのが異なります。その辺りも十分に踏まえる必要があると考えております。

また、定時株主総会前の有価証券報告書の開示については、企業の実際の開示負担も聴取、勘案をした上で、実現可能性も踏まえた制度となるように検討が必要だと考えております。なお、日本企業のコーポレートガバナンスの取組を進めていく上で、取締役会をより実効性のあるものとするというのは重要であると考えます。経済産業省から本年4月に公表された「稼ぐ力」のコーポレートガバナンスガイダンスにおいても、例えば、取締役会事務局の体制や仕組みということについて検討のポイントを示しています。このように、今般のコーポレートガバナンス・コードの改訂に当たりましては、企業において中長期的な成長を目指し、経営に対する考え方を自律的に説明する、そして実効性が促されるものとなるような結果となることを望みたいと思っております。

よろしくお願いいたします。以上です。

【翁座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に長谷川メンバー、お願いいたします。

【長谷川メンバー】

御指名いただきありがとうございます。私どもは製造メーカーであり、コーポレートガバナンス・コードを使って会社を運営しているという立場でございますので、その視点から少しお話をさせていただきたいと思っております。

2015年にコーポレートガバナンス・コードが制定されて、私どもも大きな経営改革をしなければいけないという状況の下で、何を指針としたかというと、やはりコーポレートガバナンス・コードにある程度理想とする会社の形が書かれていたというのがとても私としては大きくて、やはりガバナンスを改革することは、経営を改革することに先んじて行わなければいけないと思い、これを大事にずっと扱ってきているつもりでございます。10年たちまして、やはり我々も振り返ってみると、10年前と今のガバナンスでは随分と異なるという話を社内でしてまいりました。やはりこの10年で、大きく変わったということは、ガバナンス・コードが有効に働いたということの1つの示唆ではないかと思っております。

ただ、10年経過してみますと、現在では常識と思われるようなことが書いてあったり、複数の原則で細かく書き過ぎているために、非常に回答に苦慮したりというところがございますので、この時点のスリム化、シンプル化には賛成でございます。

論点について幾つか出されているものについてお話をさせていただきますと、まず、多様な投資機会があることを認識することの重要性、現預金、資源配分の問題でございますが、やはりキャピタルアロケーションを開示して、それをステークホルダーの皆様に説明することというのは、経営者の大きな仕事であると思っています。また、投資の有効性を検証して、次のアクションに反映させるよう、PDCAという言い方をされますけれども、それは経営者にとって非常に大事なことであるということは言うまでもないところでございます。ただ現預金という言葉が何回も出てきましたけど、現預金に限って検証、説明責任というような絞った言い方というのは、経営をやっている者として少し引っかかるところでございます。やはりどういう考え方でこれを持っているのかという説明責任は必要でございますけれども、やはり投資の中には中長期で語らなければいけないこともありますし、リスクで語らなければいけないこともございますので、やはりそこはしっかりと説明すること、それで中長期の会社の成長に寄与することを説明させるということが大事ではないかと思います。一律的にこれがよくないものという書き方は、経営をやっている者として少し抵抗があると思います。

また、有価証券報告書の早期開示について、株主様、投資家様がこれを求めるということは非常に理解ができます。こういうものをしっかりと読んでいただいて、株主総会の投票行動をとっていただく、SR、IRをやるということは、私どもも非常にそれを望むところだと思っております。ただ、実務をやっている側から申し上げますと、特に最近、非財務情報の開示、さらにはSSBJが加わってくるということを考えると、かなり業務負荷が増大しているということが事実でございます。そうした状況で、やはり早期開示に十分対応できてないという反省をするところでございます。やはり総会前に出す書類数の減少、例えば、会社法の事業報告書、金商法の有価証券報告書の統合など、先ほど何人かのメンバーの方々から御意見が出ておりましたけれども、やはり報告書の負荷を軽減する措置を併せて取っていただいて、これを有効な開示文書としてお使いいただくということは考慮いただきたいと思っております。

それから、コーポレートガバナンス・コードの中で、形式的な遵守にとどまっているというお話が先ほどから出ております。これがガバナンス改革の実質化の妨げとなっているとは申しませんが、原則の4、4-1、4-3の中で、取締役会の役割・責務について記載されております。ただ、補充原則までよく読んでみると、取締役会と経営陣の責任分担がよく分からなくなってまいります。そのため、私もいつも、取締役会とは、執行役員会とは、それから社外取締役とは、という定義、役割、責任というものを何とかうまく分けようと思ってはいるのですが、なかなかこの書き方が微に入り細に入り書かれている割には、一緒くたになって書かれているような気がしており、ぜひ改訂の際には、この辺、取締役会とはどういうものか、また、執行役、経営陣と書いてありますけど、どういう役割をするものか、社外取締役の役割と責務はどういうものか、ということが、読んですっと分かるような直し方をしていただければよいと思っております。毎年1回ずつ実効性評価を行うのですが、実効性評価の案文もガバナンス・コードに沿って出てくるため、イエスと答えればいいのか、やってないと答えればいいのかというのが非常に迷うところです。やはり定義をしっかり出していただければと思っております。

それから、コードのスリム化、シンプル化についてですけれども、これは先ほど申しましたように賛成でございます。御説明いただいたスライド11の補充原則を3段階に分けるということにも賛成でございます。例えば、情報開示の記載などは、基本原則の3と5に含まれていたり、やはり追加したり、いろんな皆さんの思いが含まれているだけに、非常にいろんなところにいろんな文言として出てきて煩雑になっているところがありますし、原則の1-2の補充原則、これは会社だったら当たり前なことが書いてあったりして、やはり見直してみると、整理していただきたいもの、これはもう要らないのではないか思うものも、幾つかあると思っております。

ただ、申し上げておきたいのは、記載から外れると、やらなくていいんだという誤ったメッセージを送る場合があって、苦労していたのに、記載から外れたのでこれはもういいんだと企業側が思ってしまうということ、ここはやはり株主様、投資家様との意見のずれが出てくるところだと思いますので、ぜひその外し方も、考え方に入れ込むなど、そういうことで補充できるのではないかと思っております。

最後にコンプライ・オア・エクスプレインのところでございますが、確かに御指摘いただくような、形式だけのコンプライというのが、会社側にいるとどうしても出てきます。私どもの今までの改革を考えてみると、こういうことを求められているんだと、言い方は悪いですけれども、ひとまずコンプライでいいかというようなコンプライの仕方をしてしまいます。ただ、やはり時間をかけて、これを本当の意味でのコンプライにしていくというのは、我々が何をしなければならないのか、会社側も、全てかどうか分かりませんが、しっかりそこは考えており、やはりコードの考え方が浸透してきている、よくなっている会社が増えているということは、形式だけというよりも、その中身を理解しようとしている企業側の考え方も御理解いただければと思っております。だから、そこはどういう考え方なのかということを会社側が、エクスプレインでもコンプライでもどちらでもよいのですが、しっかりと考え方を説明できるような記載を求めるというところは重要なことではないかと思っております。

以上でございます。ありがとうございました。

【翁座長】

どうもありがとうございました。それでは、次、山口メンバー、お願いいたします。

【山口メンバー】

御発言の機会をいただきありがとうございます。今まで様々な方が大所高所から御発言いただいている中でありますが、ステークホルダーの一員でもある従業員かつ、こうした開示情報の作成実務に携わる従業員に恐らく一番近い立場であろうという労働者の立場から発言いたします。

現在ある基本原則、補充原則を再整理するという点について、事務局資料でも指摘されているとおり、ほかの開示書類との重複もあって負担が大きいという点は、組合員との会話の中でも肌感覚として違和感がありません。私、今は労働組合の専従ですが、会社にいたときは様々なルールが導入されるようになった頃でもあって、ルールがどんどん厳しくなると、全社的にそうした対応に追われがちになって、自社の利益を向上させる、あるいは新しいビジネスについて議論する、あるいは頭を巡らせるということがついつい後回しになりがちだったなということを思い出します。東証さんからの御説明資料にも、リソース不足や負荷が大きいという意見がアンケートの結果として記載があったところです。したがいまして、こうした点も踏まえて、実質化に向けての議論が重要であると考えます。

もう一つは、既にほかのメンバーからも御発言があったように、企業の現預金額が相当大きくなっている点です。一方で、日本企業の投資額の低さが国際比較から指摘されているところでもあります。とりわけ労働分配率が長らく低迷しているという事実もありますので、この点も十分認識して議論していくことが重要であると考えます。

以上です。

【翁座長】

どうもありがとうございました。それでは、次は上田メンバー、お願いいたします。

【上田メンバー】

御指名ありがとうございます。また、御説明もありがとうございました。

コードが策定されて10年間たっているということで、ほかの委員の皆様からもありましたけれども、日本のガバナンスが変わったと感じています。そこでは恐らく定期的にコーポレートガバナンス・コードが、改訂は先ほど課長から御説明あったように毎回ではないとしても、コードはフォローアップがなされてきました。とりわけこの近年、東証からの資本コスト等の通知や底上げの取組みが功を奏して、実際に経営者、企業側にここを取り組まなくてはいけないというような意識が高まりました。特に、開示をしている会社の株価が相当顕著に違いが出ているというところを見て、その効果というものが着実にあると感じたところです。

そういう背景の下に、今、アクション・プログラムに沿って今後ガバナンス・コードをどうしていくかといったところかと思いますが、まずは方向性については賛同いたします。全体的なポイントについて、ここに書いてある方向性、多くの部分では賛同いたすところです。その点に従って幾つか個別の指摘をさせてください。

まず、個別の内容に入ります前に、一番大事なのは5点目だと思っております。序文というのは、コードにおいて一番大事な理念であるとか、あるいはよりどころとなる考え方を示すものかと思います。逆に改めてこのガバナンス・コード、今日御配付いただいたものを読んで、あれ、ないなという感じで、今まで私が見ていたのはどこにあったんだろうと思ったところでございます。序文の内容は、これを知っている関係者だけが原案を見れば分かるとか、スチュワードシップ・コードにも書いてあったよねではなくて、企業の方にぜひ知っていただきたいところでございます。いま一度序文のところをしっかりつくること、策定時の原案の序文は10年たっても色あせない内容ということですので、今回入れていただきたいと思います。

どうしてもガバナンスの対応、個別の実務の場面で判断に悩むことがあると思うんです。その際に、理念やよりどころが明確になりますと、どう判断すればいいかという柱になるというところになると思いますので、しっかりした序文の内容ができるとよいと思います。

では、個別の議論についてです。まず、コードのスリム化でございます。私はコードのスリム化に、賛同いたします。具体的な内容は、今後詰めていくと思います。削除については、削除すると不要であると誤解されてしまうという事実も否定できないと皆様のお話を聞いて思ったところでもありますので、削除を慎重にされるのか、コミュニケーションを取りながら進めるのかというところも1つの材料だと思います。

私は、むしろ、いろいろなものがコードに詰め込まれて複雑になってないかというところを感じております。恐らくコーポレートガバナンス・コードというのは、日本政府が行っておられる経済政策の中で最も成功した施策の1つではないかと思います。というのが、いろいろな政府レベルで行われている企業関係の政策について、割と出口がコーポレートガバナンス・コードになっていると感じるものがございます。いずれももちろん経営上重要であるということは間違いないのですが、必ずしもコーポレートガバナンス・コードのスコープかなというと、すごく広く解釈すればそうなんですが、若干ちょっと違うかな、広過ぎるかなというものも散見できます。例えばで言いますと、知財の部分、サステナビリティの中で人的資本と並んで入っていますけれども、若干違和感のある配置でありますし、しかも知財については、政府レベルにおいて知財ガバナンスのガイドラインのようなものを出されておると思います。

また、補充原則2-4①にありますように、女性・外国人・中途採用者についての記述、これらはいずれも重要な経営課題であるということは間違いありません。ところが、女性活躍の下にミドルマネジメントの採用プロセスも含めた多様性について入っているという点ですとか、あるいはミドルマネジメントの在り方というのはガバナンス上の、例えば取締役会で議論をするというよりも、まずは執行サイドにおいて考えるような内容ではないかなと思います。こういったものがいろいろ粒度の違うものが入っているなと考えております。リソースが足りないという話もあったところでございますので、ぜひより重要なコーポレートガバナンスのテーマにリソースを割けるように、こういう整理を行うということについては賛同いたすところでございます。そこで構成の見直しについては、今まで金融庁さんの御議論であるとか、ほかの開示含めた施策であるとか、あるいは委員の皆様の御意見を聞いて感じたところなんですが、恐らくコードの構成を見直す上での整理の仕方として3点あるかと思います。

1点目が、コーポレートガバナンスのシステムです。取締役会、委員会、総会、トップマネジメントのリーダーシップ、社外取締役、そして事務局などです。2点目が、株主との対話でございます。これは日本のコーポレートガバナンスの一番の柱になるでしょうし、スチュワードシップ・コードとの連結、ディスクロージャーにも関連するかと思います。3点目が、企業価値です。企業価値の問題というのは、財務は資本政策含めて議論がたかまっていますし、加えて非財務のなかでもサステナビリティについては、開示制度等の見直しに注力しているところかと思います。こういった3つの視点で大きく考え、その下にいろいろ個別の話が入ってくるかと思いますので、そういった整理をしていただくというのも1つの考え方なのかと思います。

現状コードにあるものについて、より具体的な粒度が細かいものは、ガイダンスという形でこういうやり方ありますよとお示しする意味ではよい指摘もたくさん入っているかと思います。そのため、そういう整理で大きなところから具体的に細かくしていくというような、一度ちょっと力作業になるかもしれませんが、御検討いただくとよろしいかと思います。

最後に、コーポレートガバナンスの実質化についてコメントさせてください。この10年間、ガバナンス・コードの形式化が進んで、次は実質化というような議論をずっとしていたかと思います。この実質化も、現時点では形而上学的なあるべき論ではなくて、具体的な実質化という個別の議論をコード文言の変更を含めて検討するタイミングかと思っています。その1つの重要な柱というのが、ほかのメンバーからもたくさん指摘ありましたけれども、社外取締役の機能強化でございます。私自身の体験も含めて感じているところでございます。

社外取締役というのは独立した客観的な立場から、平時においては経営陣に執行を委ねつつ、取締役会における大局的な議論や意思決定に貢献するということが期待されています。また、最近アクティビストも増えていますけれども、あるいは親子上場の解消など含めて、昨今増加している企業買収等の場面においては特別委員会というものが設定される場合も少なくありません。そこでは、企業価値向上という観点から、社外取締役が中心的な役割を果たすことが期待されています。今回の改訂ではこの質のところ、私は数もいずれ議論する必要があるだろうなとは思うんですが、まずは質のところというものが、本当に足元必要なことではないかと思っています。

その具体的なポイントとして、質を改善するためにはどうしたらいいかというところですが、まず、機能の明確化、これはほかの委員からもありましたけど、役割の明確化であります。また、指名プロセスの強化です。指名委員会は、でサクセッションプランの観点からリーダーシップに関する議論の中心でした。けれども、社外取締役についても、指名プロセスの透明性の確保、スキルマトリックスとして会社にどういう人材が必要とされているかでありますとか、あるいは実効性評価も成績評価として活用できると思いますので、この点についても検討できるのかと思いました。

以上でございます。ありがとうございました。

【翁座長】

どうもありがとうございました。それでは、円谷メンバー、お願いいたします。

【円谷メンバー】

御指名ありがとうございます。まず、最初に、これまでの10年間の事務局の御尽力に心から敬意を表したいと思います。私も、御議論いただきたい事項に沿って少しお話をさせていただきたいと思っております。

まず、1番目のところですが、スライド9についてということで、私はここについては、小林委員や、先ほど長谷川メンバーからもお話が出ましたが、現金に限定するわけではなくて、やはり多様なステークホルダーへの付加価値をどう分配するのかという考え方でいいのではないかと。ただ、多様なステークホルダーというのを一時点だけではなくて、時間軸で考えてみると、当然その中には研究開発や設備投資の考え方も当然入れ込まないとできなくなってきますので、中長期の時間軸も踏まえた多様なステークホルダーへの分配、学術界でも最近水平的エージェンシー問題ということで、株主さんの中でも、ずっと付き合わなければいけないパッシブの投資家さんと、短期のリターンを狙う投資家さんとで全然利害が違うというような議論も出てきていますので、そうした時間軸を入れたステークホルダーへの付加価値の分配、また、フローの分配と言ってもいいかもしれませんが、ということでいいのではないかなと思っております。

今後の課題についてですけれども、これも中神委員等皆さんおっしゃっていますが、社外取締役をどう活用するか、これはそのとおりだと思うんですが、私はいきなり実質化にいくのではなくて、実質化されているかどうかが分かる情報がないことがまずは問題だと思っていまして、例えば社外取締役が何を考えているのかと、どのような権限が与えられているのかと、何をしているのかとか、それに対してどういう報酬が与えられているのかとか、そうした情報が今の資料だと分からないので、まずはそうした実質化しているかどうかが分かる判断の材料をもう少し提供するような、これはガバナンス・コードではないのかもしれませんが、そうした方向がまずは重要かなと。その上で、実質かどうかというのは判断するということが必要かなと思っています。

2番目についてですが、これは私はちょっと皆様とは違う意見かもしれませんが、2番の形式的な遵守にとどまっている、妨げになっていることなんですが、政策保有先から来ている社外取締役が独立性が認められることが私は問題視しておりまして、独立性の定義にもよると思うんですが、ちょうど武井先生が横にいらっしゃいますが、私は社長に嫌なことを言ってクビになっても平気な人、という武井先生の簡潔な御定義を、私はすごく同意しているんですけれども、じゃあ政策保有の人たちがこの今の簡潔な定義を満たすのかと、政策先から来たら、恐らく全く満たさないということだと思いますし、今、定義の話を置いたとしても、原則1-4の縮減のところが、政策保有先から来た人が、自社の縮減の議論ができるのかとか、または短期的に株価が下がるようなモニタリングを言えるかと。それは株価の下落を通じて自社の財務体質を悪化させますので、そうしたモニタリングができるのかという矛盾がずっとあると思っていますので、これもガバナンス・コードの話ではないかもしれませんが、そこをちょっとお考えいただきたいというのがもう一つです。

最後なんですけれども、まず、(3)から(5)のスリム化、プリンシプル重視というところは、私は賛成でございます。賛成でございますし、どういう方向性でスリム化するかというのも皆さん御議論いただいていることなので、あえて重複するようなことは申し上げませんが、ただ、スリム化の前提になる考え方として、負担という言葉がずっと出ているかと思うんですが、この負担とは何かというのはしっかり考えるべきなんだと思っています。これが工数や費用だけの話なのであれば、何で任意資料である統合報告書、手の込んだものを先を争って皆さんつくっているのかという、工数、費用だけの話ではないんだと思うんです。これはちょっと学術研究の蓄積は必要なんですが、例えばですけれども、自分だけつくっていないとか、自分だけ開示していないという不安、負担ですね。不安と言ってもいいかもしれませんがそういうのもあるでしょうし、またはエクスプレインを強化したとしても、どう書くかを考えること、またはそれが世の中にどう伝わっていくというか、どう読み取られるかという不安というか負担、そうしたものも含めて負担という言葉でスリム化を何とか下支えしているんだと思うんですが、じゃあ工数や費用を削減する負担を減らしたとしても、自分で考えるという負担が上がれば負担の総量はあまり変わらないわけで、どこをどう改訂したらどの種の負担が減るのかということは、発行体側ともう少ししっかり議論した上で煮詰めていく必要があるのではないかなと思っております。

以上になります。どうもありがとうございました。

【翁座長】

どうもありがとうございました。それでは、武井メンバー、お願いいたします。

【武井メンバー】

武井でございます。よろしくお願いします。

6点ほどあるのですが、まず、今回、ガバナンスコードのスリム化で2層に分けるということですね。コンプライ・オア・エクスプレインの対象とするものとしないもの。コンプライ・オア・エクスプレインの対象としないものについて、「考え方」という言葉がちょっと軽いかなという感じがしております。今日、皆さんからもコメントがありましたし、相当な重要な意義があると。またさきほど長谷川さんからのお話もありましたけれども、相当プラスの効果を与えていて、企業さんが自発的にいろんなことをやるのに重要な情報になっております。その中で原則の「考え方」という言葉だとちょっと重みがなくなるというか。その意味で2層目の箇所は、私は補充原則、原則という言葉を残したほうがいいと思います。ほかにいい言葉があったらちょっと考えていただきたいのですけれども、ちょっと「考え方」では軽いかなと思っているという懸念があると。しかも、今日新しくいろんな各論的な事項も出てきていますし、そういったものをどちらの層で書くのかという中で、「考え方」ですかとしていいのかどうか迷う事項も相当今日は出てきているのかなと思います。2層目の言葉は、言葉だけといいながら結構重たい話だと思うのですけれども、「考え方」という言葉で果たして良いのか、違和感がありますというのが最初のコメントです。

2点目が、まさに10年たってCGコードはとても重要な目的を果たしていまして、前文について、今回、資料の12ページに7、8以下をつけていただいていますけれども、10年たつと、もともとガバナンス・コードを進めていた趣旨、特に経済成長戦略に資すると、成長投資を促すと。最近の言葉で言うと「強い経済」をもたらすというためにやってきているということ。これは前文にも書かれていますし前文に重要な趣旨が書かれていますから、そういった趣旨にもう1回立ち返るという意味でも、この前文を含めたものを序文としてきちんと書いていくということは本当に大事だと思います。

今でもまさにリアルタイムで経済成長戦略、成長投資というのが一番大事なテーマ、日本経済のために重要なテーマであり、そこをまさにガバナンス・コードさんが率先してやられていることであり、それを実現してきた10年間の中で、その歩みを止めることなくやっていくためにも、そういった趣旨を込めてスリム化アンド前文、序文の復活というのをやっていただければと思っています。

3点目が、昨今、これは日本に限りませんが、欧米でも起きていることとして、ショートターミズムからの弊害。これはやはりきちんと今回向き合わなきゃいけないのだと思います。ショートターミズムが本当に相当強くなってきていまして、もともとこちらも、前文の8にきちんと、ダブルコードで、投資家さんの中でペイシャントキャピタルと企業は向き合う、ともに中長期目線での投資家と向き合うということなわけです。しかし、どうしてもショートターミズムが強くなりがちになると。さきほど円谷先生から水平的エージェンシーの話もありましたけれどもいろんな研究開発投資とか、今回アクション・プランにも書かれています、各種の研究開発投資であったり、地方への投資であったり、人への投資であったり、知財への投資。こういう事項がどうしても後回しになっちゃうと。それだと本当にもともとコードをやっている趣旨とは違いますから。つまり、成長投資をきちんと促すという観点からこれをやっているんだということを確認する意味でも、ちょっとショートターミズムに関するものについても一定の抑止効果があるといいましょうか、コードの趣旨はショートターミズムなのではなく中長期の向上なのだということを分かるような形にしたほうがいいと思っています。

それにも絡んで4点目なのですけれども、今、そういう意味で実質化の中で一番大事なのは、価値創造ストーリーをまず、企業さんがきちんと描いて社内で構築し、それを外に出すことなのだと思います。先ほども言及ありましたけれども、今年の4月に経産省さんで取りまとめられました、「稼ぐ力」強化のための5原則というのがあるのですが、その一丁目一番地のところに、価値創造ストーリーをきちんと企業側が構築して、それを出してほしいということが明確に書かれています。価値創造ストーリーとは、自社のパーパスの実現、中長期的に目指す姿の実現に向けて、どのようなビジネスモデルを通じて、どのような社会課題を解決し、どのように中長期的な企業価値向上に結びつけていくのかということの一連のストーリーです。価値創造ストーリーの構成要素としては、自社の強み、差別化、競争優位性にちゃんと根差しているというものであること。社会課題の解決やステークホルダー利害にちゃんと配慮していること。長期的な経営環境変化に基づいた複数のシナリオを考慮していること。あと、P/L視点だけではなく、B/S視点とキャッシュフロー視点も持って、中長期的な資本効率や成長性を考慮していることなど。これらの要素を全部組み込んだ価値創造ストーリーをつくってほしいと。多分ここが一番大事な点なんだと思います。ガバナンス・コードで、企業側はまずそこに取り組んでいってほしいと。しかもこういった企業価値、価値創造があるということをまず、企業は上の句を読まなきゃいけないのです。企業はまず価値創造ストーリーという上の句を読んで、下の句として投資家の方と対話するというのがダブルコードでの関係なので、まず、価値創造ストーリーという上の句を読む。それによっていろいろなショートターミズムに対するいろんな懸念も払拭されうるということだと思いますので、価値創造ストーリーをちゃんと読むということをまずきちんと書くべきだと思います。

今の現行のコードを見ていますと、価値創造ストーリーに関連する箇所がぱらぱら散らばっています。原則の3-1の(ⅰ)、補充原則の3-1③、4-1②、4-2②と5-2など、5、6か所に散らばっています。これを1か所にまとめて、まず、価値創造ストーリーをつくるということを明記したほうが良いと思います。ちなみに4-1②の中期経営計画という用語を残すのがいいのかどうかはあるのかもしれませんけれども。いずれにしても価値創造ストーリーをちゃんと作ってくれということをコードに書くことをやったほうがいいと思います。

あと関連して、今、原則の3が開示で始まっているのですけれども、価値創造ストーリーをつくるということをした上での開示であると、原則の3の書き方も変えたほうが良いかと思います。価値創造ストーリーをちゃんとつくってやっていく。しかもマネジメントとボードとの共同作業でつくると。ボードがちゃんと価値創造ストーリーの構築に関与することで、同意なき買収とかの局面への対処にもなりえます。そういった価値創造ストーリーをちゃんとつくってほしいということを明確にする。これらの点は、ガバナンス・コードの一丁目一番地の今回の実質化、効率化の中では大事なテーマかなと思っているということでございます。

あと5点目はそれに絡んでなのですけれども、価値創造ストーリーは当然社内横断的につくらなきゃいけなくて、統合報告書などもその例だと思いますけれども、統合報告書をつくることで、社内のいろんな機能が横断化やコラボがされるわけです。縦割りが横断化、コラボするといいましょうか。その観点で、こういうコラボの話が、対話のところの5-1②の(ⅱ)というところに書かれているのですけれども、対話のところだけでなく、価値創造ストーリーをつくるにも当然コラボが要るので、コラボも一緒に書いていただければというのが5点目です。

最後6点目が、ボード機能の強化です。この10年間で、ガバナンス・コードが行った大きな効能というのは、私はボード機能の見える化だと思っています。ボードの見える化が相当大きく10年間で進んだと。まだまだいろんな課題があるというのは、さきほど中神さんがおっしゃった論点とかがあるわけですけれども、その中で、やはりボードの実質化を考えていくにはまず、価値創造ストーリーをちゃんとマネジメントと議論するということが、ボードとしての実質化のために大事なのだと思うのです。価値創造ストーリーに関してちゃんとボードも理解をし、それをちゃんと壁打ちもし、かつ投資家とも話すということで、価値創造ストーリーの構築のところにボードがどう絡むかということも重要です。そういう意味で価値創造ストーリーということをきちんとつくることが、ボードの実質化にも相当資するのではないかと思っているのが1点です。

あと、さきほどの5原則にも書かれてあるのですけれども、さきほど長谷川さんからも御指摘がありましたが、ボードとマネジメントの役割分担。これは10年前はまだそこまで意識がされていなかった箇所もあります。そういう意味で5原則でも、マイクロマネジメントしないとか、中長期視点でやってくれとか、健全なリスクテークを促すとかいろんなことが5原則の2、3、4とかに書かれています。まさにボードと監督の仕事の中身があってこそのボードの実質化であって、ボードが本当に何をする場なのかという、監督と執行の監督の役割にも絡むので、5原則の2、3、4とかもご参照いただいて、ボードの実質化のところも今回踏み込んでいただければと思います。

以上でございます。

【翁座長】

どうもありがとうございました。

メンバーの皆様から御意見を伺いましたけれども、さらに追加的に御意見がおありの方につきましてはお名前のプレートを立てていただきたいと思いますけども、いかがでしょうか。追加的に皆様の御意見を聞いた上での、またコメントとかございましたら遠慮なくお願いいたします。よろしいですか。

私自身もスリム化、プリンシプル化の方向、皆様の御意見を伺っていて大いに賛成しておりますし、その上で、どうやって実質化を図っていくかということが極めて今回重要なミッションだと思っております。最後のほうで武井先生がいろいろな方の御意見を参照しながらおっしゃっていましたけれども、やっぱりどうやって成長していくのかということが基本的に非常に重要で、今回そうした趣旨を序文に復活させるということだと思うんですけれども、その上で価値を創造していく上で、どういうふうに取締役会が機能していくのか、マネジメントとボードがどういうふうに機能していくのかという役割とか、それから、多くの方がおっしゃいましたけれども、ボードの役割にも関係してきますけれども、社外取締役とか委員会の役割とか、こういったところが実質化のところで重要な点かなというふうに思いました。そのほかにも大変貴重な御意見たくさんいただいておりますので、ぜひこれから検討を深めていければと思っております。

それでは、オブザーバーの方で、経済産業省の鮫島さん、お願いいたします。

【経済産業省】

ありがとうございます。経産省からは5点、ポイントに絞って申し上げたいと思います。

まず、1つ目がスリム化でございまして、コード本来の目的、中長期の収益力の改善であるとか経済成長、企業価値の向上、これに沿って進められるべきというふうに認識してございます。その観点からも、コードのスリム化、これには賛成させていただきます。ただ、現実のニーズに基づいて追加された大事な項目もございますので、これが削除されて、政策的な重要性もなくなったと、そういうふうにならないようなことも考慮すべきだというふうに考えてございます。

2つ目が、コードの実質化ということでございます。おっしゃったように、形式的にチェックするだけのコンプライをすると、そういう企業も多いという状況ではございますが、それぞれの原則、プリンシプルを各企業ごとの実態に応じて、一番自社にとって最適な手段を選択する機会にすることが重要だと存じます。そのためにもコードにコンプライしない場合についても、その理由についても適切に説明を行う、そういったことも重要だというふうに考えてございます。すなわち実効性を高めるためには、適切なエクスプレインも重要な軸なんだと、こういったことの認識の共有、周知が必要ではないかというふうに考えてございます。

3点目は、武井先生からもお話あった、経産省の研究会、「稼ぐ力」を強化する、また、持続的な成長を目指すためのコーポレートガバナンスガイダンスを4月に公表してございます。これのエッセンスは、投資家との対話を稼ぐ力の強化に結びつけること、また、ボードと経営陣の関係、これを企業が大胆にリスクテイクでき、成長投資に注力できる、そういったことが重要だというものでございます。今回のコード改正に際しましても、企業が適切に成長投資を行えることが重要でございますので、企業の経営資源の配分、検討を促す方向性は基本的には望ましいというふうに考えてございます。もちろん具体的な記載ぶり、文言につきましては丁寧な検討が必要でございまして、例えば、現預金のみを特出しして、それの使い道を検証させるような記載であるとか。現預金につきましても、中長期の成長投資のため、また、サステナビリティのために必要だということもございますので、現預金を持ち続けることそのものの合理性が否定されないような慎重な検討が必要だというふうに考えてございます。

今後、経産省としては、金融庁さんにも御協力いただきながら、成長投資としての設備投資だとか研究開発とか人材の投資、M&A、こういった詳細の分析と、それを拡大するうえでの必要な対策についても整備する予定でございますので、タイミングを見て御紹介させていただければというふうに存じます。今のが3つ目。

4つ目が、総会前の有報の開示でございます。こちらにつきましては、有報と事業報告書等の一本化、また、一体開示の環境整備も、法制審はじめ行ってございます。そういった環境整備も含めた検討が必要だというふうに考えてございます。

最後、5点目が取締役会事務局でございます。稼ぐ力のガイダンスにおきましても事務局に触れてございまして、例えば、事務局の役割を明確にして、その重要性を社内で共有することであるとか、また、ガバナンス関連を統合的に、また、専門的に行う部署を設置すること、その部署には十分な人数、十分な知見を持った体制とすることと、こういったことを各企業の実態に即して検討すべきということを明示してございます。この点、事務局の重要性につきましては、我々も金融庁さんの施策と併せて周知を行って、より取締役会が実効性あるものになるように促してまいりたいというふうに考えてございます。

以上でございます。

【翁座長】

どうもありがとうございました。それでは、次に、公認会計士協会の吉田様、お願いいたします。

【公認会計士協会】

御発言の機会をいただき、ありがとうございます。日本公認会計士協会の吉田でございます。私からは、私どもが法定開示書類の監査を担う立場であるという点も踏まえまして、2点ほどコメントさせていただければと思います。

1つ目が、有報の定時総会前の開示の件でございますけれども、株主の皆様の議決権行使に有用な情報が総会前に提供されることを担保する観点から、定時総会前に議決権行使のための十分な期間が確保されて開示をされるということが望ましいというふうに考えております。

一方で、今日本編の議論の中でも多くのメンバーの方から発言がありましたけれども、今後、SSBJ基準に基づくサステナビリティ情報というのが有報に組み込まれてくるということになりますと、企業の皆様の負担というのはさらに増してくるというふうに考えられます。そうしますと、株主総会の開催の後ろ倒しであったり、開示書類の一体化によって、有効かつ効率的な開示というのを視野に入れて、その点を前提にして、コードのほうの見直しというのを議論をしていただければというふうに考えるところでございます。

なお私どもとしましては、今日、神作先生のほうからも法制審の議論の状況の御説明、御紹介がありましたけれども、効率的な開示制度として、会社法と金商法の開示の一本化、こちらへの法改正が必要だというふうに考えているという点も付け加えさせていただければと思います。

2つ目が、取締役会等の機能の強化というところにつきまして、コードにおいて、有価証券報告書に対する取締役会及び監査役会等の監督機関としての役割、それから関与、こんなところが明確化されると望ましいのではないかというふうに考えているところでございます。その場合、別途金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループのほうで、有価証券報告書の確認書の議論というのが行われていますけれども、そちらと歩調を合わせるような形で御検討いただけると望ましいのではないかというふうに考えております。

私のほうからは以上でございます。ありがとうございました。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは、日本取締役協会の丸尾様、お願いいたします。

【日本取締役協会】

日本取締役協会の丸尾です。今回オブザーバーとして参加させていただき、発言の機会をいただきありがとうございます。2点のみ述べさせてください。

1点は、今回事務局の重要性が取り上げられております。勿論それは重要だとは認識しておりますが、適切なアジェンダ設定による取締役会の実効性向上には経験深い、かつ独立した議長の役割や差配がより重要ではないかと考えます。執行と監督がきちんと両立した取締役会の運営には議長の貢献が不可欠だと考えます。

2点目に、サステナビリティや人的資本経営等々経営に必要な知識の範囲は、日々拡大、増加しています。取締役会の実効性の更なる向上のためにも、定期的に研修を受講して、経営者の研鑽・知識の最新化を図り続けることが必要だと考えます。現行ガバナンス・コード原則4-14にも記載されておりますが、改定後も更に実践を呼びかけていただきたく考えます。 研修プログラムは、様々な団体が提供しております。

以上です。ありがとうございました。

【翁座長】

ありがとうございました。

それでは、皆様の御意見もこれで今日は出尽くしておりますので、定刻に近づきましたので、これで本日の討議は終わらせていただきたいと思います。

最後に、事務局のほうから御連絡ございましたらお願いいたします。

【小長谷企業開示課長】

次回の有識者会議の日程についてですが、皆様の御都合を踏まえた上で、後日事務局より御案内させていただきます。

以上でございます。

【翁座長】

今日は皆様、貴重な御意見をどうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日の有識者会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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