「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」(令和7年度第2回)議事録

  1. 日時:

    令和8年2月26日(木曜日)9時30分~12時00分

  2. 場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

【翁座長】

少し定刻よりは早いですけれども、ただいまより「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」第2回会合を開催いたします。皆様御多用のところ、御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

本日の会議におきましては、対面とオンライン会議を併用した開催とさせていただきます。また、ウェブ上でライブ中継をさせていただきます。

なお、議事録は通常どおり作成の上、金融庁ホームページにて後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

会議を始める前に、事務局から留意事項の御説明をお願いいたします。

【小長谷企業開示課長】

事務局を務めます企業開示課の小長谷でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

本日の会議におきましては、オンライン会議を併用した開催としております。オンラインで御参加のメンバーにおかれましては、御発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャット上にて全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを御確認の上、座長から指名させていただきます。なお、対面で御参加のメンバーにおかれましては、御発言を希望される際には、お名前のプレートを立てていただければ、座長から指名いただきます。御発言後は、名前のプレートを元にお戻しいただくようお願いいたします。

【翁座長】

ありがとうございます。それでは、議事に移らせていただきます。本日は事務局より資料の説明をした後、討議を行いたいと思います。

まず、金融庁から御説明をお願いいたします。

【小長谷企業開示課長】

それでは、資料1に沿って事務局より御説明いたします。

資料の1ページから5ページでは、第1回有識者会議でいただいた主な御意見を論点ごとにまとめております。幅広い論点について御意見を頂戴しましたが、補充原則を中心にコード全体を見直してプリンシプル化・スリム化を図るという大きな方向性については、おおむね御賛同いただけたものと認識しております。

資料の6ページを御覧ください。コードの再整理の方向性に関するスライドを再掲しております。前回会合では、各原則の下に「考え方」を新設することを御提案しましたが、メンバーの方々からいただいた御意見を踏まえまして、「解釈指針」という呼び名を御提案しております。この解釈指針の位置づけにつきましてはコード改訂案の序文において詳細に記載しておりますが、このスライドにも書いておりますとおり、コンプライ・オア・エクスプレインの対象ではなく、各原則への実質的な対応を支援する役割を担うものとすることを想定しております。

また、前回会合では、このスライドを用いて事務局から補充原則47個を一旦解体して、その内容に応じて3通りの仕分をしてはどうかと御説明いたしましたが、本日お示ししている改訂案では、結果として、補充原則のみならず、基本原則や原則も含めて再整理を行っております。この点において前回の事務局説明と少し異なる姿となっておりますことを御容赦いただければと思います。

なお、今回の改訂におきましては、原則の記述はなるべく概念的なものにとどめ、具体的な記述や例示などについてはなるべく解釈指針に記載するという方向に沿って整理を行っていることを申し添えます。

次に資料の7ページと8ページで、今回お示ししている改訂案の概要を御説明いたします。まず、序文についてですが、2015年に策定されたコーポレートガバナンス・コード原案の序文を参考にしつつ新設しております。序文にはここの6つの矢羽根にあるような内容を盛り込んでおります。

まず、本コードの目的を記載した上で、続いて、プリンシプルベース・アプローチ及びコンプライ・オア・エクスプレインの趣旨に言及しております。ここでは企業の置かれた状況によっては、形式的にコンプライするのではなく、むしろエクスプレインを選択すべき場合もあることや、エクスプレインを選択した場合には原則の趣旨・精神に照らして丁寧に説明すべきであることなどに言及しております。また、第1回会合において複数の御指摘をいただいたコンプライ・アンド・エクスプレインにつきましても、建設的な対話に資する取組として望ましいと言及しております。また、先ほど申し上げた解釈指針の位置づけや、プリンシプル化・スリム化の趣旨につきましても序文において言及しております。

次に、株主との対話についてです。第1回会合において御提案したとおり、同一テーマの整理・統合という観点から、株主に関する第1章と第5章を統合するとともに、上場会社と株主との対話というテーマの重要性に鑑み、対話に関する原則は第1章の冒頭に置くこととしております。

次に、取締役会関連の規定についてです。1つ目のポツにございますとおり、中核的な責務と考えられるものについては原則に格上げするとともに、先ほども申し上げたとおりですが、具体的な記述や例示部分は解釈指針に移管しております。

次に、2つ目のポツにございますとおり、今回の改訂におきましては、リスク管理体制の整備の一環として、サイバーセキュリティリスク、地政学的要因によるサプライチェーン途絶リスク及び技術等の情報流出リスクへの対応も考慮事項に含まれ得ることを原則4-3の解釈指針に記載しております。

3つ目のポツでございますが、第1回会合において、社外取締役の実効性向上、とりわけ質の向上の必要性について複数の御意見をいただきました。これを受けて、社外取締役に求められる役割・責務、質・量の確保、独立性確保に関して、改めて趣旨の明確化を図っております。

最後に4つ目のポツですが、取締役会事務局の役割・機能を取締役会における審議の活性化等に関する原則の解釈指針に記載しております。

資料8ページを御覧ください。次に、経営資源の配分というテーマについてです。この経営資源の配分に関する記述は、いずれも先ほど御説明した第4章、取締役会等の責務に盛り込まれているものでございますが、今回改訂における重要テーマの一つですので、抜き出して御説明いたします。

まず、原則4-1においては、取締役会は、会社の目指すところに向けた成長の道筋を構築・提示する役割・責務を負う旨、また、取締役会は、成長の道筋を踏まえた成長投資や事業ポートフォリオの見直し等の経営資源の配分に関して具体的に何を実行するのかについて説明すべき旨を規定しております。また、原則4-2では、様々な投資機会を認識しつつ、適切に資源配分を行うべきであり、現預金を投資等に有効活用できているかを含め、現状の配分が適切かについて、取締役会は不断に検証すべき旨を規定しております。

次に、サステナビリティについてですが、原則2-3、補充原則2-3①、補充原則4-2②前段に規定されている内容を、新設する原則4-4及びその解釈指針に統合・整理いたしました。また、社内における多様性の確保は、引き続き重要と考えられるため、補充原則2-4①を原則に格上げしております。

次の政策保有株式につきましても、縮減は進んでいるものの、引き続き重要な論点と考えられるため、補充原則1-4①及び②は原則に格上げしております。

最後に、有価証券報告書の総会前開示についてですが、株主総会における権利行使に係る適切な環境整備を促進する観点から、原則1-2において新たに規定しております。他方で総会の3週間以上前に提出されることが望ましいといった点は、ベストプラクティスとして解釈指針に記述しております。

資料9ページでは、補充原則のうち原則に格上げするものの一覧を掲載しております。

また、資料10ページ及び11ページでは、解釈指針に関する原則等の一覧を掲載しております。

資料12ページ及び13ページでは、コードから削除する原則等の一覧をお示ししております。

最後に、資料14ページを御覧ください。本日御議論いただきたい事項を列挙しております。もっとも、ここで挙げている事項に限定されず、コード改訂案全般につきまして、御意見をいただければと考えております。

事務局からの御説明は以上でございます。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは、討議に移る前に、本日御欠席の円谷メンバーから意見書を提出いただいておりますので、事務局より概要の説明をお願いいたします。

【小長谷企業開示課長】

それでは、円谷委員から御提出いただきました意見書を読み上げさせていただきます。

金融庁企業開示課はじめ改訂原案作成に御尽力された全ての皆様に感謝を申し上げます。第2回会議開催に当たり、メンバーの皆様に御議論していただきたく、意見書を提出させていただきます。

原則4-3、取締役会の役割・責務(3)に関連し、日本企業でCEOが解任されることはほぼ皆無であり、かつ本コード改訂の趣旨が企業の中長期の成長の実現であることを鑑みて、「CEOの選解任」とあるところを「CEOの適時適切な選任」に、「CEOの解任」とあるところを「CEOの早期の交代を促す」といった、より実現性のある表現にしてはどうだろうか。ただし、「(CEOの)選解任」という表現は相当程度に浸透しているため、この提案の是非について有識者会議で御議論をしていただければ幸いである。

以上でございます。

【翁座長】

ありがとうございます。それでは、これよりメンバーの皆様から御意見、御質問をお伺いする討議の時間とさせていただきます。時間が限られておりますので、メンバー皆様の御発言のお時間を確保できるよう、大変恐縮ですが、お一人当たり5分程度をめどにお願いいたします。御発言開始から5分経過したタイミングで、事務局より御発言者にメモを入れさせていただきます。どなた様からでも結構ですが、いかがでございますか。

古布メンバー、お願いいたします。

【古布メンバー】

発言の機会をありがとうございます。

まず初めに、大変短い期間でこれだけのものを作っていただいて、金融庁企業開示課の皆様、ありがとうございます。

今回序文を入れていただき、プリンシプル化を明確にされたことで、このコードが何を目指すのかということが改めて打ち出すことができると考えます。日本企業において透明性・公平性を担保して迅速果断な意思決定を促すというコードの趣旨が明確になったと考えますので、この序文策定、プリンシプル化については賛同いたします。

また、第1章に株主の権利、株主との対話を入れていただきありがとうございます。我々投資家は、お客様から資金を委託され、スチュワードシップ責任の下に、投資先企業の皆様とリスクを共有するという特別なステークホルダーだと考えております。この第一章の位置づけによって投資家は投資先企業とウィン・ウィンの関係を目指す存在であるということを打ち出していただいた、そのように考えています。

この今回コード改訂の意図をより明確に伝えるために必要なのではないかというコメントを大きく4点ほどさせていただければと思います。

まず1点目が、今回スライド13ページでいただいた削除する項目の中の1-5から1-7です。ほかのところとの重複ということで削除の背景は理解しました。ただ、やはり少数株主の利益、株主共同の利益を守るということは非常に重要な点ですので、さらに強調することが必要だと考えます。例えば今回議論する点でも挙げられていた4-7の解釈指針の23行目、独立社外取締役と株主との対話というふうに挙げられていますが、少数株主利益を保護する、そのプロセスの透明性を向上させるために、独立社外取締役の皆様は株主と対話をすべきであると、より強い表現を行っていただいてもいいのではないかと思います。必要に応じてはなくて、基本的に対話をすべきであるという記載が必要なのではないかと思います。また、4-7(4)に「助言」という言葉がありますが、(1)には「監督」ともありますので、より望ましい「監督」に統一されてもいいかと考えました。

2点目が政策保有株式です。原則に格上げいただいた2つの項目、本当にどうもありがとうございます。ここは従来から記載のある議決権に関してですが、この原則に合致しているということは、具体的な基準に基づいた議決権行使が政策保有株主によってなされているということになります。、例えばですが、「議決権行使結果を開示する」としていただくと、この原則の透明性をより向上させるのではないかと考えます。

3点目、議論する事項の1つの、一番重要な点である経営資源の適切な配分4-1、4-2についてです。4-1の原則、経営資源の配分等に関してというところですが、ここの文言にぜひ並列して、「資本効率の一層の向上」というような文言を記載すると、より明確に原則の意図が伝わるのではないでしょうか。

また、4-2の解釈指針に、「現預金を投資等に有効活用できているか」という文言があります。今回の改訂において、また成長戦略を加速するという観点において非常に重要な点ですので、「過剰な現預金が資本効率を損なっていないかどうかを検証し開示する」という文言を入れていただくと、まさにコードが求めることというのを端的に表すことができるのではないかと思ってございます。現預金からの資金使途というのは、企業の皆様がそれぞれの責任において決定することです。その意思決定のプロセスを開示していただくことが重要かと思ってございます。

最後に4-12についてです。こちらは今回、(2)に経営経験を有する方を取締役会にというような内容が入っており、この点賛成です。上場企業の経営者の方がまた別の企業で重責を担っていただくというのは、企業価値創造の好循環につながると思いますので、大変望ましいことだと思います。この点に加えて、取締役会に必須のスキルとして「コーポレートファイナンス」という文言を入れていただくことを提案させていただきます。ファイナンスに関しては財務・会計・経理といったようなスキル項目も目にしますが、コーポレートファイナンスは、例えば取締役会に二、三人いればいいというものではなくて、取締役会のメンバー全員が備える必須のスキルであると考えます。その結果取締役会は少数株主の利益を担保し、より良い監督機能を発揮することができるということが広く伝わるのではないかと考えています。

私からは以上です。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは次に、井口メンバーお願いします。

【井口メンバー】

御指名ありがとうございます。また、御説明いただきありがとうございました。全体観では、コード全体を整理していただいて、大変読みやすくなったものと考えております。その上で、幾つか意見、コメントをさせていただければと思います。

1つ目は、古布委員もおっしゃっていましたが、コンプライ・エクスプレインの考え方を浸透させるため、序文に説明を入れていただき、ありがとうございます。特に、先ほどの小長谷課長の御説明でもありましたが、2ページ目の25行目辺りにあります、コンプライやエクスプレインにかかわらず、重要な取組については説明することは重要と考えております。

一方、34行目のところで、「会社によるエクスプレインを歓迎すべきである」という箇所については、少し違和感を感じております。ガバナンス・コードというのはそもそも罰則のないソフトローでありますので、無条件に投資家がエクスプレインを歓迎するようになれば、規律がなくなり、崩れてしまう懸念があると考えております。したがって、ここは「丁寧なエクスプレインがある場合には」という条件をつけていただいたほうがよいのではないかと考えております。

続きまして、3ページにあります5行目から始まる解釈指針の位置づけとなります。先ほど事務局、小長谷課長から御説明がありましたように、今回、多くの原則や補充原則を解釈指針に入れたことになっております。このため、解釈指針の位置づけというのは、このコードの設計において極めて重要と考えております。コードの実質化の観点からこのような措置に対して必ずしも反対するものではありませんが、この12行目にあります「解釈指針において示されたこれらの内容も参照することが考えられる」という表現は、弱い表現だと思っております。

企業は必ずこの解釈指針を参照した上で、原則の事項に対しコンプライ・オア・エクスプレインの判断をする、という仕組みをつくらなければ、コードの実質化と異なり、コードの緩和になってしまうのではないかと懸念しております。ですので、コードの実質化を目指し、例えば、「解釈指針において示されたこれらの内容を参照しなければならない。ただし、その具体的な実現手法は各企業に委ねられる」といった趣旨の表現のほうがコードの実質化につながるのではないかと思っております。

次に、各原則ごとにコメントさせていただければと思います。最初に全体観となりますが、今回原則をまとめていただいて、非常に分かりやすくなっていると思います。一方、幾つかの原則がひとつの原則に入っておって、何をコンプライして、エクスプレインしているのかの判断が難しくなっている箇所もあるのではないかと思っています。私の見たところでは、原則1-1、1-2、4-1、4-2、4-3あたりがそのような状況ではないかと思っております。ですので、非常にテクニカルな話になってしまいますが、原則の中で枝番をつけるなどして明確化を図られたほうがいいのではないかと思っております。

以下、個別の原則のところになります。まず、原則1-2に株主総会日前の有報提出を入れていただきありがとうございます。投資家に対する株主総会前の情報の充実ということはもちろんですが、先進国の資本市場でも日本だけが有報の総会前開示が実現できていないというグローバルな批判がある中、日本の資本市場にとって非常に重要な事項と思いますし、解釈指針で、3週間以上前に提出されること、必要に応じ株主総会開催日の後ろ倒しの検討も明記されているということは非常に重要と考えております。

この基本原則1の中で一つ懸念しておりますのは、今回、旧原則の1-5、1-6に記載されておりました買収防衛策とかMBOという記載が全くなくなっているということです。東証さんのほうで企業の開示を強化されているということはあると思いますが、御存じのように資本市場では、企業の対応について大きな問題となるケースもあります。ちょうど5ページの29行目以降の基本原則1の解釈指針で少数株主の権利や資本政策について既に御記載いただいておりますが、こちらに買収防衛策とかMBOについて追記いただくというのも一つではないかと思っております。

続きまして、16ページの原則4-2となります。先進的な日本企業さんもいらっしゃいますが、全体で見れば、日本企業の資本効率性はグローバルで劣っているという中、取締役会が経営資源の配分適切性について不断に検証を行うというのは重要なことと思っております。特に16ページの解釈指針の24行目に記載されております、「現預金を投資等に有効活用できているか」を不断に検証を行う部分というのは非常に重要と考えています。現状、機関投資家の議決権行使基準では、キャッシュリッチ基準、つまり、キャッシュを多く持っている企業にはより厳格な基準を適用するということが通常となっております。また、企業の対話においてもこの現預金の有効な活用を議論することが多いです。このことは、過大な現金保有が、いわゆるアクティビストの方だけではなくて、中長期視点の機関投資家にとっても大きな課題と認識されているということを示していると考えております。

続きまして、18ページの原則4-4の解釈指針の20行目となります。細かいところで非常に恐縮ですが、こちらで取締役会の対応としてサステナビリティ事項の監督について記載されていますが、ここで記載されている項目は、かなりダウンサイドリスクの項目に偏っていると思っています。ちょうど有報で開示強化が行われており、企業・投資家にとっても非常に重要な経営資源である人的資本の活用も取締役会で監督すると入れるべきではないかと思っております。

最後となりますが、24ページの原則4-13の解釈指針の4行目となります。これは内部監査部門の取締役会のダブルレポーティングを示しているところとなります。最近の不祥事も含め企業の不祥事というのは大体、内部監査部門が機能発揮してない、社外取締役や取締役会にちゃんと報告がなされなくて、経営陣が暴走してしまうということが多いと認識しております。従って、さすがにこの項目は選択の余地はないので、原則4-13に格上げすべきと思っております。

以上でございます。ありがとうございました。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは、小林メンバー、お願いいたします。

【小林メンバー】

御指名ありがとうございます。前回第1回は所用で欠席いたしまして、本日より参加させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。今、関西経済連合会の副会長を兼任しておりまして、経済界あるいは企業の立場から御意見をさせていただきたいと思います。

コードの策定・適用から10年が経過したということでございますが、この間、企業への貴重な資本を提供いたします株主への対応というのは相当程度充実あるいは進展したのではないかと思います。一方で、企業が創出する付加価値の配分が株主に偏重しているのではないかというようなこと、あるいは成長投資や人材投資、さらには取引先、地域社会への付加価値の配分が必ずしも十分ではないのではないかという懸念が起こっているのではないかと認識しております。

しかし、この2つの事象は、株主とそれ以外のマルチステークホルダーに対して背反するものかというと、成長投資やあるいは労働配分率の高い企業は、同時に株主還元、ひいては企業成長もしているというようなデータもございます。このように、企業が現在よりさらに成長するためには、株主をはじめとする多様なステークホルダーとの共創を通じ価値を創出し、その価値を公平かつバランスの取れた形で配分・還元をしていくことで、持続的な成長の好循環をつくり出していけるのではないかと考えております。

今般のコードの改訂につきましては、10年という節目もございまして、繰り返しにはなりますが、様々なステークホルダーとの健全な協働と対話を通じて持続的な成長と中長期的な価値創造に取り組むことを促す、実質的なガバナンス改革を後押しする、そういうものでなければならないと考えます。

その観点で、現行のコードを眺めてみますと、マルチステークホルダーへの配慮も盛り込まれてはいるものの、基本原則の第1章が株主、それから、その次につながる第2章がその他のステークホルダーというような位置づけでありまして、これは株主偏重と受け止められやすく、企業の経営の短期思考を助長しかねないのではないかというようなことも考えられます。

そこで、現行の基本原則1と2を統合して新たに基本原則1とした上で、マルチステークホルダーを等しく重視する考え方を明確に打ち出すべきではないかと思います。その上で、企業が多様なステークホルダーに対し、自社のパーパス及び中長期的な成長の方向性を経済的価値あるいは社会的価値の両面から明示した上で、対話を深めて、創出された価値を公平かつ適切に配分することの重要性をしっかり明記すべきではないかと考えます。

以上が総論でございまして、以下、各論につきまして3点述べさせていただきたいと思います。

まず、序文についてでございます。この序文が新設されることにつきましては、コードの目的やあるいは位置づけを明確にできて非常にいいのではないかなと思います。さらに、改訂案に記載された内容につきましても、おおむね賛成をいたします。

ただし、基本原則、原則の背景となる考え方等を述べます解釈指針、この表現につきましては少しきついのではないかなと思います。本来、企業の理解促進を目的とするということに鑑みると、「観点」だとか、あるいは「視点」というような表現のほうがいいのではないかと考えます。

また、過度な規範性を伴うと受け止められる表現は避けるべきではないかと思います。現行案の3ページ10行目にございますが、「解釈指針は原則と一体であり、本コードの一部をなすものである」という記載は、解釈指針も規範性を持つものと受け止められかねないために削除すべきではないかと考えます。

さらに、各原則の解釈指針で随所に見られます、「何とかすべき」、「何々すべき」という表現も同趣旨から表現を改め、例えば、「何々が重要」というようなことにするのが適切ではないかと考えます。

それから2つ目は、経営資源の活用に関する考え方についてでございます。企業の成長のために経営資源の積極的な活用あるいは配分を促すということは本当に重要だと思います。ただ、企業の経営資源の配分というのは、経営者が中長期的な視点に立ってしっかり配分を考えるということが経営の専決事項ではないかと思っております。現行案の中にございます4-2の解釈指針にある、現預金のみを取り上げて、これを検証・説明を推奨することは、企業の自主性・自律性を阻害し、また、一部の投資家の要請による過度な株主還元を助長して企業の持続的成長を阻害する可能性もあり、適切とは言い難く、削除するほうがいいのではないかと考えます。

最後に、有報の開示時期でございます。これは3週間前開示というようなことを記載されているわけでございますが、開示の時期が目的ではなく、いかに株主の判断に資するような有用な情報を株主総会前に提供するかということが重要だと考えております。そういう意味でいいますと、どのような情報を開示するというようなことを、有報全体をというよりも、有報の中のどのような情報を開示するのが適切であるかというようなことを考えるべきだと思います。

私から以上でございます。ありがとうございました。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは次に、中神メンバー、お願いいたします。

【中神メンバー】

中神でございます。ありがとうございます。本日の改訂案は、全体として大変整理されていて、完成度の高い内容になっていると感じております。まずは、事務局の御努力に敬意を表したいと思います。その上で、コードの精神をより明確にして、形式から実質へというものをもう一段進める工夫ができないかという視点で何点か申し上げたいと思います。

まずは、序文についてです。本コードの目的は、経営陣にとっての制約ではなく、果断な意思決定やリスクテイクを後押しすることにあると理解をしております。一方、コンプライ・オア・エクスプレイン手法ですが、この表現はどうしても、まずはコンプライせよという印象を与えがちかと思っております。ピーター・ドラッカーが言ったとおり、「経営の目的は顧客の創造」であるとするならば、経営はまさに創意工夫の塊のはずです。特にデフレ下のコストカット型一律経営から脱却をし、成長志向型の経営を目指すのであれば、経営はなおさら「自由演技」でなければならないと思います。

この大きな方向観からすると、例えば“エクスプレイン・オア・コンプライ”という表現も盛り込んでみて経営の創意工夫を促したり、あるいは“コンプライ・アンド・エクスプレイン”という表現も盛り込んで説明の自由度を同列に置くといった工夫によって、経営の自由演技性をより明確にするというのはいかがでしょうか、というのが第1点目でございます。

第2点目は、原則4-2についてです。現預金を投資等に有効活用できているかを含め、不断に検証とあります。これは成長志向型のコードとしては非常に重要だと思っております。しかし、私はその活用前提として、「会社にとって最適な現預金水準はどの水準かを取締役会が試算、議論、開示する」と加筆・追記してはどうかと思っております。

最適現預金水準を見極めるには3つの視点があると思います。一つは「定常的運転資金」。これは支払いのピーク等がありますので、キャッシュフローマネジメントということです。2つ目は、リーマンショックやコロナ危機のようなことに備えるための「突発的危機対応資金」でございます。そして3つ目は、大型のM&Aや成長投資に必要となる「突発的投資対応資金」です。これらの3つを定量的に見定めた上で初めて成長投資に回せという議論が成立するのではないかと思います。最適現預金水準を開示しておくことは、先ほど小林委員からあったとおり、短期的な株主還元要求への合理的な説明にもなり得るのではないかと思います。

次に、社外取締役の責務でございます。我が国では依然として社外取締役の主たる役割が助言者、貢献者と理解される傾向があります。しかし、基本原則4が明示しているのは、独立した立場からの監督です。まさに社外取締役の第一義的責任は監督であり、助言は第二義的なものだと考えます。したがって、原則4-7から4-11にかけての「助言」、「貢献」、「寄与」といった表現は削除し、監督責務をより明確にしたほうが、今現在の我が国の実態を踏まえた改訂になるのではないかと考えます。

最後に、現在、アクティビスト対応や同意なき買収など有事が増えております。有事に問われるのは、取締役としての役割・行動規範への理解、そして定量的な企業価値算定・評価能力、この2つが特に重要だと思います。その意味で、原則4-14の不断に向上すべき資質・対処といったものに、「企業価値算定やガバナンス最新動向の知見習得」を明示的に含めてはいかがでしょうか。そして、「トレーニング」という言葉も、監督を担う取締役に対しては少しどうかなと思っておりまして、「資質向上」と、例えばそういった言葉に改めてはいかがでしょうか。

私からの第1巡目の発言は以上でございます。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは次、松田メンバー、お願いします。

【松田メンバー】

ありがとうございます。まず、ここまで大きく変えていただき、全体としてプリンシプル化ということに重きを置いて改訂していただいたということに対して非常にすばらしいと思いますし、その方向を大変評価しております。スリム化・プリンシプル化と言われてきましたけれども、この順番も逆にして、やはりプリンシプル化が重要であるというところをきちんと打ち出していただいたというのは大変重要なことであるかと思っております。それを踏まえて、3点申し上げます。

一つは、原則と解釈指針に結構同様のことが書かれている部分がございます。プリンシプル化を重要だと考えますと、なるべく原則のところは簡素であり、シンプルであるほうがよろしいのではないかと思っております。そういう意味でいくと、例えば原則1-2あるいは1-3は、原則の中身と解釈指針の中身にほぼ同じようなことが書いてあるということであるならば、要らないのではないか。特に原則1-3は、原則1-2の解釈指針の中に入れてしまってもいいのではないかとも思います。そういった形でなるべく原則の中身をシンプル化していただきたいと思います。

2つ目は、逆に重要な考え方が抜けているというようなものがございます。先ほどから出ている前の原則1-3から1-7の資本政策、MBOなどについて、具体的な言及が削除されています。私はこれを削除すること自体には反対はいたしませんが、もともとあった原則1-3から1-7までを通底しているポリシーは、やはり利益相反ということに対する注意事項だったのではないかなと思います。しかし、基本原則1(第1章)において株主との、あるいは株主間の利益相反という内容は全てなくなってしまっています。この利益相反を防ぐべきという非常に重要なポリシーは、やはり何らかの形で原則1にきちんと明記しておくべきだと思います。原則4-3に出ていますが、4-3は取締役会が考えるべきことであり、経営陣として株主間の利益相反、株主との利益相反に留意するというのはまた別の問題であるように思います。

3つ目ですが、少々入り交じっているものがあるように見受けられます。具体的には、特に第4章のところ、原則4-3に取締役会の役割・責務としての監督の内容として、、サクセッション、それから先ほどの利益相反の話とともにリスク管理体制の話が載っております。

ここで申し上げたいのは、リスクマネジメントというのはもう少し大きなものなのではないかということです。私も独立社外取締役を務めておりますが、取締役会の重要な役割としては、当然ながら、原則4-1にあるような大きな方向性を示す、そして原則4-2の通りリスクテイクを支えることはもちろんなのですが、それと並んで、やはり取ったリスクをきちんとコントロールするということが非常に大事だと、最近改めて痛感しております。その重要性に鑑みると、原則4-3の中にリスク管理体制整備として押し込めてしまうというのは、やや矮小化しているのではないかと考えられます。

また、解釈指針においても、4-2のほうでリスクテイクについて述べていることと、4-3でリスクコントロールについて述べていることというのが、どうしてもどちらかというとリスクテイクに引っ張られてしまって、例えばリスクコントロールについて書いてあるにもかかわらず、収益機会にもつながり得るようなというような表記がございます。入れなければいけないような理由もあるのかと思いますけれども、こういったリスクテイクにつながるものは4-2のほうでしっかり言い切っていただいて、やはりリスクマネジメント、リスクコントロールについての重要性をもう少し明記していただきたいというのが第3点でございます。

その他、個別で気がついたことを幾つか申し上げます。原則2-4に多様性の確保が書いてあります。これは非常に重要なことだと思うのですが、原則をなるべくシンプルにするという意味からいくと、そろそろ「女性の活躍促進を含む」というタイトルは取ってもいいのではないかと思います。

それから、原則2-5の内部通報の話は基本原則2(第2章)から削除され、取締役会の責務として先ほどの原則4-3にまとめられておりますが、それは良しとして、基本原則2はステークホルダーとの関係を述べたものであり、その中でも重要な従業員との関係性の問題として、やはり基本原則2(第2章)に残しておくべきものなのではないかと思います。

最後です。原則4-1で「中期経営計画」という言葉がございます。経営計画、経営戦略という言葉については随分整理されていただいたと思うのですが、ここだけ残っているのは少し違和感がございます。コミットしたものが未達であったらきちんと説明しろという趣旨は首肯致しますが、もう今さら中期経営計画という言葉は要らないのではないかと思います。

以上です。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは次、シッソンメンバーお願いいたします。

【シッソンメンバー】

まず、このセッションを主催していただいた日本の金融庁、さらに東京証券取引所に感謝申し上げます。我々ICGNがこのような専門家協議会で継続的に活動できることにお礼を申し上げます。

ICGNは、企業が年次有価証券報告書を株主総会の少なくとも3週間前までに公表するという記載を強く支持します。コードは、これは明確なベストプラクティス基準として定めるべきです。直ちに目標を達成できない企業は、進捗状況を示し、代替の時期を説明する必要があります。

また、我々は株主総会及び株主権利確定日の調整に関する検討を歓迎します。企業には、世界的な慣行に反し、株主総会の集中化や株主会のエンゲージメントの制約につながるような会計年度末の株主権利確定日を変更することを検討するよう奨励します。また、報告書による報告義務の統合に向けた取組は有益ではあると考えていますが、コードの進展は法改正を待つべきではありません。投票前に有意義な対話を可能にするための3週間という期間は、上限ではなく最低限の基準として捉えるべきです。

取締役会は、長期的な価値創造を推進するために資本を配分する責任を負っています。改訂版コード案における資本政策の開示と効率性に関するより強い期待は歓迎しますが、資本配分を成長の原動力として明確に位置づけるためにはさらなる強化が必要です。例えば、最適な資本構成、望ましいバランスシートの位置づけ、そして株式の持合いに関する検討と開示についてより明確な期待が示されることを歓迎します。年次評価と開示の要件を維持することは好ましいことですが、削減目標と撤退のタイムラインの設定と開示に関する明確な期待を含め、より具体的な内容が必要です。

また、私たちは、株式売却を目指す持合株主の妨害を企業が阻止することを禁じる文言も支持します。

私たちは、コンプライアンス・オア・エクスプレインのアプローチに関する改訂された規範における強化された文言、特に定型的な開示を明確に控えるよう指示したことを歓迎します。企業が遵守ではなく説明を選択する場合、その目的は単なる開示ではなく、説明責任を果たすことです。説明においては、代替アプローチが企業の特定の状況においては株主にとってより有益である理由を示す必要があります。そのためには、投資家の意見に耳を傾け、それに応えるなど、投資家との有意義なエンゲージメントが不可欠です。

また、この中で実際にこのコードがストリームラインされるということ、また、それがベストプラクティスになるということを非常に期待しております。また、その中でさらにガバナンス改革アジェンダ、それに対して目標を完全に達成するためには、こうした対話に向けた継続的な変革が不可欠だと考えております。

また、特にガイダンスに関してですが、とりわけ要件が緩和されたりガイダンスへ移されたりする場合には、期待水準の低下や後退との印象を与えないよう十分配慮すべきです。また、買収防衛策に関しては、株主利益を保護するための適切な取締役会への行動への言及は維持され、かつ強化されるべきです。

増資やマネジメントバイアウトなどの取引は、株主にとって有益な方法で、少なくとも損害を与えない形で実施されるべきです。したがって、買収防衛政策に関するコードの要件を、取締役会が株主利益を保護するために行動することを明示的に求める形で強化することを提言します。また、ポイズンビルに関して、株主には説明や手続以上のものが必要であり、取締役会の行動に関する明確な記載が求められます。

さらに、原則4-3などの場合には、重要な事項が十分に目立つようにするためにさらに細分化することが有益であると考えています。

また、取締役会研修の開示と取締役会の有効性レビューに対する記載の強化は、市場全体の基準向上につながる歓迎すべき改善点です。

また、プライムマーケット企業が各委員会において独立取締役の過半数を維持することへの期待が強まったことも歓迎しています。しかし、国際的なベストプラクティスに沿うためには、この規範はさらに踏み込むべきです。取締役会の過半数が独立社外取締役で構成されることは例外的なものではなく、ほとんどの企業にとって標準となるべきです。

コードは、取締役会の独立性に関するリーダーシップについてもより明確に規定すべきです。理想的には、企業は移行措置として独立した議長あるいは少なくとも筆頭独立取締役を任命すべきです。我々は、この規範が取締役会選挙における投票数の開示についてまだ触れないことについて留意しています。これは透明性を確保するための重要な措置であり、その導入は必要です。

また、原則3-1で言及されているポリシーと手順に加えて、報酬の枠組みと構造のより詳細な開示を推奨します。

また、株主との建設的対話に関する文言が強化されて、とりわけ議題がそれを要する場合には社外取締役が対話に関与すべきという期待が追加されたことを歓迎いたします。ただ、さらにそれを強化する余地があると私たちは考えています。ガバナンス改革アジェンダがその目標を完全に達成するためには、企業と株主の間の真の双方向対話に向けた継続的な文化的な転換が必要です。

株主の権利を損ない、実質的な参加を制限するおそれがある完全オンライン株主総会をコードが支持または推奨するべきではないとの立場を改めて表明します。株主が対面で出席・参加する能力を維持しつつ、国内外投資家のアクセスを拡大できるハイブリッド型の株主総会を私たちは支持します。コードにおいて、株主総会に関する国際的ベストプラクティスを強く支持する明確な声明を盛り込むことを求めます。

結論といたしまして、ICGNは日本のガバナンス改革アジェンダへの支持を改めて表明します。日本はガバナンス改革への取組において主導的な地位を既に確立しており、そのリーダーシップが維持・強化されることを望んでいます。政府に対し、改革の歩みを緩めないように求めます。継続的な対話を維持するとともに、有識者会議の継続的取組に対し、グローバル投資家の視点を提供するという用意が私どもにはこれからもございます。ありがとうございました。

【翁座長】

どうもシッソンメンバー、ありがとうございました。

それでは、神作メンバー、お願いいたします。

【神作メンバー】

学習院大学の神作でございます。御指名ありがとうございます。短期間で、前回の会議の議論を十分に踏まえた上で、さらに、作業の過程で判明した本コードをブラッシュアップするためのいろいろな追加の見直しもしていただき、本日このような形で御提示いただき、大変ありがとうございます。私は基本的に全面的に賛成させていただきます。

総論について3点と各論について2点、コメントさせていただければと思います。

第1に、第1回の会議で申し上げましたように、私はスリム化について大きな懸念を有しておりました。本コードから非常に有益な記述が落とされてしまうことにならないか心配していたわけですけれども、今回安堵いたしました。すなわち、実務上浸透しているもの、コード内の重複があるもの、および法令等の重複があるものという3つの観点から各事項について精査をしていただき、この3つのいずれかに当たるものに限って削除するという形で、スリム化を進めていただきました。今回の見直しはスリム化自体が目的ではないと思いますので、そういう意味では残していただきたい記述が残っているという点でまず安心し、その点において賛成させていただきます。

第2に、解釈指針についてです。解釈指針につきましては、序文の第9節で、解釈指針は各原則についての実質的な対応を支援する役割を担うものであり、当該原則の背景となる考え方・目的のほか、当該原則を履行するための最良の方法や優れた手法の一つと考えられる方策も含まれ、本原則と一体を成すものである、すなわち解釈指針も本コードの一部をなすものであるということをしっかり明記していただき、私はこの点も非常に重要なことだと思います。

今回の見直しは、決してコードを緩和するというものではなくて、実質化を進めるという観点から行われているものだと理解しています。そのような観点からも、序文のパラグラフの9、それからパラグラフの12に上述した記載を入れていただいており、この点についても安心したところでございます。

それから、総論の3点目ですけれども、今の点も含めて、序文を復活していただき、先ほどの解釈指針の位置づけをはじめとして、それからまた冒頭、パラグラフの1では、そもそもこのコードが何を目的とするものか、攻めのガバナンスの実現を目指し、中長期的な企業価値の向上を図るものであるということをしっかり明確に書いていただいているなど、序文についても基本的に賛同させていただきます。

次に、各論について2点申し上げさせていただきます。原則1-2に追加いただいた有価証券報告書の総会前の開示の点でございます。これを原則1-2に入れていただき、また、解釈指針におきましては、総会開催日の3週間以上前の開示が望ましいと書いていただいております。私は、会社法を専攻しておりますけれども、会社経営に対するガバナンスの基本は、会社法上株主に付与されている株主権の行使であると理解しています。すなわち、株主が株主権をより実効的に行使する、そしてさらに、序文にも書いていただいておりますけれども、本コードと車の両輪をなすスチュワードシップ・コードに従った有効なスチュワードシップ活動とあいまって、コーポレートガバナンスがより実質化することになると思います。そのためにも、やはり有価証券報告書が総会の前に、十分に検討する時間を確保した上で開示されることが極めて重要なことだと思います。

その意味では本当はこの3週間以上前の開示というのは原則のほうに入れていただいても良いのではないかと思います。しかし、そうはいっても、実務の現実的な対応可能性等を考えると、私は現時点では原則ではなく解釈指針に入れることはやむを得ないのかなとは思います。しかし、少なくとも将来的には、3週間以上前に有報を開示することは、本来、原則に入れられるべき事項ではないかと感じます。今、法制審で会社法改正の議論がされておりますけれども、そこでも研究者や投資家サイドの実務家委員の方から、総会前開示の重要性が繰り返し指摘されています。会社法のようなハードローの形でそういったことを規定するのではなく、まずはコーポレートガバナンス・コードで対応していただくことがぜひとも必要だと思います。

それから各論に関するもう1つのコメントが、原則の4-1に関するものです。先ほど松田先生からも御指摘があった点だと思いますが、中計に関する記述について一言感想を申し上げさせていただきます。原則4-1の解釈指針の最後の「加えて」以下の文章ですが、「中期経営計画も株主に対するコミットメントの一つであるとの認識に立ちつつ、その実現に向けて最善の努力を行うべきである」という表現は少し強いのではないかという印象を持っております。

本コードは企業の継続的な成長、中長期的な企業価値の向上を目指しておりますが、中計に強く拘束されることはそのことと少し矛盾するような印象を受けております。もちろん中期経営計画の位置づけも各社ごとに決めていただければ良いものと考えます。株主に対するコミットメントとして中計を守らねばならないという会社があってももちろん良いと思いますが、全ての会社がそうしなければいけないのかという点には私は少し疑問を感じておりまして、この部分についてはもし可能であれば若干修文をしていただければと思います。

以上でございます。ありがとうございました。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは次に、オンライン参加の山口メンバーお願いいたします。

【山口メンバー】

発言の機会をいただきありがとうございます。日本労働組合総連合会、連合の山口でございます。まず、コーポレートガバナンス・コードの改訂に当たって、様々な意見がある中で、それらを適宜取り上げて改訂案にまとめるという御苦労は想像するに余りあります。金融庁企業開示課の皆様の御尽力に感謝を申し上げます。私の発言は、総論的な点から1点、個別の内容について1点申し上げたいと思います。

日本企業の現預金の積み上がりについては、ほかのメンバーの御指摘にもあったとおりでございます。事務局にお示しいただいた参考資料にも、日米欧の現預金比率、売上高設備投資比率、そして売上高研究開発投資比率が出ております。別の審議会の話になって恐縮ですが、中長期的な企業活動の向上が重要であり、そのために人的投資、設備投資、研究開発投資が重要であるという指摘がなされております。ただ、現実には短期収益重視、ほかのステークホルダーよりも株主重視となってしまっているのではないかと思っております。

様々な方がその是非や原因について緻密な分析されておりますが、連合としては3つの可能性があるのではないかと考えております。1つ目は、経営者が短期収益を重視するような考え方があるのではないかということです。2つ目は、コーポレートカバナンス・コードに書かれていなかったとしても、経営者が短期収益、もしくは株主を重視せざるを得ないような、もしくは重視したほうがよいと解釈してしまうようなものがあるのではないかということ。3つ目が、投資家が短期収益もしくは株主重視を促すような行動をしているのではないかという懸念です。

今回事務局がお示しいただいた資料の中に、経営資源配分に関する企業と投資家の認識ギャップが掲載されてございます。そのグラフからは、資本コストを意識した経営の実現には、企業は株主還元を充実させることは必要と考えている一方で、投資家サイドはそこまで重要とは考えていないことが分かります。

他方で、幾つかの機関投資家が議決権行使基準としてROEのような目標値を3期あるいは5期連続で下回った場合ということを挙げていますけれども、これは経営者を短期収益を重視するような方向にさせる要因になり得はしないかと考えています。

個別の話に移りますけれども、今回の改訂案において、ほかのメンバーから、株主以外のステークホルダーが基本原則2にあることについて御意見があり、確かにそうだな、そうであるなと思いつつも、従業員をはじめとする株主以外のステークホルダーとの適切な協働は、基本原則として維持されております。また、原則4については、成長の実現を目指すこと、成長を通した事業ポートフォリオの見直し等の経営資源の配分に関して具体的な内容を実現することとあります。

投資先の配分に当たって考慮すべき事項が並んでおりますけれども、中長期的な企業の成長を目指すため、経営資源をこれまで低く抑えられてきた人的資本、設備、研究開発への投資に振り向けることをより強く意識することが重要であると考えております。

最後に、原則4-2、現預金を投資等に有効活用できているかどうか不断に検証すべきことを明記されました。これがより中長期的な成長に寄与することを期待しております。

以上です。

【翁座長】

山口メンバー、どうもありがとうございました。それでは、長谷川メンバー、お願いいたします。

【長谷川メンバー】

御指名いただきありがとうございます。冒頭に、今回の改訂版を読ませていただいて、現在のコードに比べてすごくすっきりして読みやすく、狙いがはっきりしていると感じました。様々な意見が出たものを取りまとめて、このようにまとめていただいた皆様の努力に感謝し、敬意を表したいと思います。

事前に御説明いただいたときには幾つか細かい点もお話ししましたけれども、今日は時間があまりございませんので、重要と考えている4点について意見を申し上げさせていただきます。

まず、本コードの目的というところです。プリンシプルベース・アプローチ、コンプライ・オア・エクスプレインという箇所がありますが、このコンプライ・オア・エクスプレインの考え方がしっかりと書き込まれている点で非常にいいと思います。それに加えて、やはりコンプライしても具体的な取組を示すようにということを書いていただいておりますので、コンプライしても企業側として100点を取れるわけではない場合もありますが、こういうことを考えてこういうことをやっているんだということの説明の機会をいただけるということは、私としてはいいことだと考えております。

ただ、本コードの適用の中で、解釈指針のところで、コンプライ・オア・エクスプレインの対象としないベストプラクティス、グッドプラクティスの役割を負うと記載しながら、前に御指摘がありましたが、解釈指針は原則と一体であり、本コードの一部をなすものであると明確に書いてあるんです。これに対して賛否の意見があると思いますが、やはり本コードに基づいて会社経営をする側としては、こういうふうに書かれると、グッドプラクティス、ベストプラクティスを超えて、これもきちっとやらなきゃいけないなというモードが入ってきてしまいます。わざわざ一体であり、一部をなすものであると書かなくても、グッドプラクティス、ベストプラクティスであるということは、十分この記載で理解できるのではないかと思っており、削除しても構わないんじゃないかと思っております。

2点目は、先ほどから議題に出ている原則1-2の有価証券報告書の3週間以上前開示のところでございます。上場企業を経営する者として、総会開示前の3週間以上前に有価証券報告書を提出して、株主様にしっかり読んでいただいて御判断いただいて投票行動をしていただくということは、もちろんよく理解しているつもりです。このように記載をされれば、会社としてはそれに沿うように努めますし、現に私どももその趣旨をしっかりわきまえて、なるべく早く開示するために動いているところでございます。

ただ、こういう状況になると、会社に大きな負担がかかるということを、要請している投資家様、株主様にも十分御理解をいただきたいところでございます。あと、株主総会までの準備という点では、やはり監査が入ってきますので、3週間前開示に全企業が行ったときに監査法人が対応できるのかどうか、その過渡期はきちんと対応できるのかという点が、話に聞くと課題が残っていると言われており、それも心配なところです。

前にもこの場で申し上げましたが、やはり有価証券報告書を3週間以上前に出すということをここに書くのであれば、せめて有価証券報告書と事業報告書の一体化のような法制の整備をなるべく早く進めていただきたいと思います。日本の企業の企業価値を高めるためのガバナンス・コードであるはずですので、一方的に会社に負担を押しつけてはならないと思っておりますし、せっかくこういう場に出させていただいておりますので、いろいろな方が聞いていただいていると思いますが、やはり国を挙げて動きを支援していただく、サポートいただくということに動いていただければと思っております。

それに加えて、同じ文脈の中で、総会の開催日、基準日の後ろ倒しということも書いてございます。この環境を整えるというのは会社にとっては結構大変で、定款の変更、特に基準日のうち、配当確定の基準日を後ろにずらしていくということは、株主様に対しても説明をきちんとしていかないと合意を得られないということもあり、もしこれをやるのであれば、SRのような機会で、それなりの労力をかけて会社としても動いていかなければならないということも確かでございますので、いろいろな意味も込めてここに書くことには賛成でございますが、各方面からのサポートをぜひいただきたいと思っております。

3点目は、原則2-2の女性活躍推進を含む社内の多様性の確保の記載でございます。ここに、女性、外国人、中途採用者という記載がまだ残っていますが、私どもの目から見ると、この書き方は、アンコンシャスバイアスの解消と言っている会社としては、ある意味非常に差別的にも見えるところがあります。特に今、中途採用者、キャリア採用といっていますが、既にかなりの人材が流動している中で中途採用者を多様性の一つとして考えなければいけないのか、という社会状況になっているかと思っております。

そういうこともございますので、やはりここは、ほかの多様性も含めて、解釈指針には「異なる経験・技能・属性を反映した」と記載していただいていますので、できれば原則のほうも、このような言い切った言葉を使わずに、もう少し多様性を含んだ人材の活用ということが分かるような表現にしていただきたいと思っております。

最後、4点目です。原則4-1の解釈指針に記載された、企業価値向上のため。自社のフェーズを考慮した経営戦略、経営企画、資本政策を実現するために実施する内容ということで、投資の例がかなりの分量を割いて書いてございます。企業成長をさせるためには、社内に蓄えている資産をどう有効に投資をして、それによって投資を超える利益を上げていくかということは非常に大事なことですが、その投資をあまりにも具体的に書き過ぎていて、特に括弧の中でいろいろな投資の例が書いておりますが、この投資の例は果たして必要かと非常に疑問に思いました。

これは企業を経営する者として、ここまで細かく書かなくても、何をやるのが資本効率を高めて会社を成長させ、収益を上げるかということは理解しているはずですし、取締役はそれに向けて議論をしているはずですので、あまり細かく投資の内容を書き過ぎるということは、先ほどの一体化という観点から見ると、これを一々説明しなければならないのかというマインドに入ってまいります。やはり投資の内容、国内・国外、人的資本とか大きなところは残っていてもいいと思いますが、括弧の中、例えば一番気になったのは、地方への投資が会社の資本効率をどう上げていくのかよく分からないと素直に思いました。やはりこのような少し書き過ぎているような箇所は削除していただいてもいいのではないかと思います。企業に投資内容は説明させるべきだと思いますので、御考慮いただければと思います。

以上でございます。ありがとうございました。

【翁座長】

ありがとうございました。それでは、松岡メンバー、お願いいたします。

【松岡メンバー】

松岡です。発言の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。私は経団連の資本市場部会長も務めておりますので、多くの上場企業の皆様からの声も反映し発言をさせていただく次第でございます。

まず、今回の改訂で掲げているプリンシプル化、スリム化については、全面的に賛同し、これを徹底すべきであると考えております。原則、補充原則の総量を現行の半分以下まで減らすことを目指すとする金融庁の御尽力に対しては、大変感謝を申し上げ、また、支持をさせていただいております。

ただし、改訂案には、まだまだ現在の企業経営の努力や工夫を踏まえていないのではないか、また、実態を踏まえると違和感があるといった部分も散見されます。このうち、改訂案の中で必ず修正が必要と考えております点が、全体を通して1点、また個別に2点ございますので、まずそれらに触れさせていただきます。

まず、全体を通して問題視をしておりますのは、解釈指針の位置づけです。さきに金融庁のほうからも御説明がありましたが、解釈指針は原則本文ではなく、あくまでも原則の解釈を助け、実践を支援する役割を担うものであるというにもかかわらず、解釈指針の量が大変膨大であり、また冗長であるということから受けるコード全体の印象としては、むしろ細則化が進んだのではないかと受け止められる懸念がございます。

とりわけ、ほかの委員の方々からも御指摘がございますけれども、序文の9でせっかく解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではないと明記いただいているにもかかわらず、多くの解釈指針の文末の表現が原則本文と同じく、何々すべきであるというものが頻出しており、また、コンプライを迫るかのような表現ともなっております。加えまして、序文の9に設けられた「解釈指針は原則と一体である」との記述がさらに混乱を招くおそれがあると大変憂慮しておりまして、これについては削除を求めます。

解釈指針は、原則の内容を実践する際の重要ポイントを、具体例などを示しながら企業と投資家に検討材料を提供するものです。したがって、改訂案の書きぶりについては、経営者自らが自社の事業特性などに合わせてより適切な資源配分方針を決定し、エクスプレインする能力の向上を後押しするものになっているべきであり、それとはかけ離れた改訂案なのではないかとも言えます。

コードの策定から10年間のガバナンス改革の成果を投資家に印象づけ、また、企業の創意工夫による自律的経営を支える枠組みとしてのコードを目指す観点から、今回のコード改訂での過度の細則化から脱却する姿勢を打ち出すということは極めて重要と考えます。したがって、解釈指針には元来、各社の判断に委ねられているべきである具体的な取組も多数盛り込まれている状況でございますので、何々すべきという表現ではなく、何々は重要である、何々などが望ましい、何々などが考えられるといった表現に修正すべきと考えております。

次に、個別分野に関してですが、1つ目は、原則1-2の解釈指針における有価証券報告書の定時株主総会前の開示に関する記述です。

まず、本件については、単純な比較論や一部の意見を取り上げるというべきものではなく、現在の日本の法的・制度的な枠組みを含めた全体観を視野に議論すべきものと考えております。

そして、実際には経済界の中で、現実に基づいて強い批判であり疑問の声があることは事実としてございます。それらは例えば、投資家が有価証券報告書の全ての情報を本当に利用しているのか、また、なぜ会社法上の事業報告に政策保有株式の情報などを加えるという対応ではいけないのかなどで、そういった声は根強いものがございます。

しかし、経団連といたしましては、これまでの経緯を踏まえまして、有価証券報告書を定時総会前に開示する環境を整えること自体には前向きに議論をさせていただきたいと考えておりまして、ただ、一方で、解釈指針において株主総会開催日の3週間以上前の提出が最も望ましいとされている点については、現行の法制度的枠組みの下での実務を踏まえると、現実的に対応が困難であり、このままの記載ということには問題があると考えております。

現在、法制審議会等で有報と事業報告書などの一本化をはじめ、先ほども御指摘がありました企業や監査の現場での実務を合理化する議論が行われております。これらの制度設計がなされていない中で本コードの改訂のみが先行するという状況は、対応困難です。新しい制度が整備されるまで、具体的な時期を示すことは適切ではないと考えます。したがって、株主総会開催日の3週間以上前の提出が最も望ましいという記述については削除を求めます。

仮にこうしたことが求められるということなのであれば、少なくともハードローを含めて総会前開示の推進に必要な環境整備を進めるといった文言があり、また、それが進められる前提であるならば、総会前開示に前向きに取り組むことを日本企業に促し、実現をさせるということができるとも考えます。

具体例としては、有価証券報告書における開示内容の見直しやスリム化、株主総会準備の負担軽減、さらには、事業報告書や有価証券報告書以外の開示も含めた開示全体の見直しということが挙げられます。

次に、個別分野の2つ目でございますけれども、原則4-2の解釈指針における現預金についての記述です。経営資源の配分方針の決定と多様なステークホルダーへの説明は経営者の重要な責務の1つでございますけれども、投資のためにどのような経営資源を振り向けるかは各社の経営判断に委ねられるべき内容と認識をしております。

現預金を投資などに有効活用できているかを含め、不断に検証を行うべきであるとの記述ですが、経営資源は現預金に限らず多種多様であるにもかかわらず、経営資源があたかも現預金しかないような誤解を招く表現となっていることに関しては、強く違和感を感じざるを得ません。

実際には、様々な経営資源を扱う経営の実態を踏まえ、その配分に関する不断の検証を促す観点から、もし列挙するということが必要であるならば、現預金をはじめとする金融資産、土地・設備をはじめとする実物資産、また政策金融を含めた借入金や資本調達といったような様々な経営資源を効果的に組み合わせた企業の成長に資する投資などに対しての有効活用ができているかを含めた不断な検証を行うことが重要である、といったような修文をご検討いただければと思っておる次第でございます。

以上、まずは重要な点について触れさせていただいた次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【翁座長】

ありがとうございました。

次、上田メンバー、お願いいたします。

【上田メンバー】

御指名ありがとうございます。また、前回の議論を踏まえ、その間いろいろな御準備、我々の意見も取りまとめいただいて、今回の改訂案を提示いただきましたことも、重ねて御礼申し上げます。

まず、大きな方向性については、御議論を踏まえていただいているということで、賛同しております。特に今回、序文をつくり、基本原則、原則、解釈指針という構成になっているかと思います。これは大きい視点から各論に入っていくという分かりやすい構成で整理し直しているということで、大変よい構成になっていると思います。

また、序文において、コードの本質であるコンプライ・オア・エクスプレインの解説、さらにそれをこの10年間で発展したコンプライ・アンド・エクスプレインを含めてしっかり説明してあるというのはよいことだと思います。とりわけ日本企業は上場会社数が多くて裾野が広うございますので、こういうことをきちんと言葉で、それも、コードは企業の方にお手に取っていただけるものですので、ここに明確にしっかりと丁寧に説明しつつあるということは大変重要かと思います。それを踏まえて、私から幾つかコメントさせていただきます。

まず、ほかのメンバーの皆様からも議論がありましたが、解釈指針についてです。定義が明確化されているということ、そして、これまでの議論に含めてしっかりと記述内容が膨らんでいるということで、今回の改訂の大きな柱の一つであると思います。特にコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではないとしつつも、原則についての実質的な対応をサポートするという位置づけ、そして、その背景となる考え方の説明は有益です。仮に、エクスプレインするにしても、背景となる考え方とか趣旨が分かるか分からないかで全く違う対応になるわけです。しかも、企業にとって最も重要なこととして、何をすればこれがコードに即した行動なのかという指し示しであるベストプラクティスあるいはグッドプラクティスが示されているということは、大変有用なものであろうと思います。

この解釈指針を参考に企業が具体的に自分事として取り組むということで、コードに基づいた期待される行動というものが規定されてくるのかと思います。よく古い言い方で、コーポレートガバナンスについて、仏をつくって魂を入れるところが大切だということを私も四半世紀ぐらい前からよく聞いていたところでありますけれども、このまさに魂を入れる部分というのが今回明記されたと思います。

ただ、先ほど申したように、コーポレートガバナンス・コードの対象となる企業数、上場会社数が日本は大変多いということもあって、コードの趣旨とか具体的にどういう行動が期待されているかということを全上場会社に理解していただいて取り組んでいただくことが課題でございます。

そのような観点からは、この解釈指針の部分は、現時点でのベストプラクティスだと思いますが、今後、状況が変わったりとか、あるいは、企業の活動がより進展して必要がなくなれば、解釈指針のところは柔軟な対応を可能とすると、こういう仕組みをあらかじめ設計されるとよろしいのかと思います。

この柔軟な運用について、例えば原則4-1の解釈指針については、具体的な投資内容について設備投資とか研究開発、人的投資というもの、あるいは知財というような記述がございます。また、M&Aについてもあります。そのほか、原則4-3については、ERMで特に重要となるサイバーセキュリティとか地政学リスクというものもございます。

これはいずれも経営上重要な指針ですが、もしかしたら企業のなかには個別論点に入り過ぎというご意見もあるかもしれません。一方で、それに気づいていない会社に向けて、これを示していくというのもコードの重要な役割であろうかと思います。他方、これらについては、繰り返しになりますが、今後状況が変わった場合には、ぜひ柔軟に見直しをいただきたいと思います。

この点について、先ほど多くの委員から、特に企業の御経営者から「べき」という言葉がちょっと強いのではないかという御意見もあったところです。企業の心配として、これがコードの中でコンプライの対象に近しいものとして見られることへの懸念だと思って、大変もっともだなと思いながらお伺いしたところです。

こういう懸念を払拭するためにも、ぜひ序文においてしっかりとこの解釈指針の位置づけとか意味合いについて説明を尽くしていただきたいと存じます。さらに、コード改訂後は、金融庁様あるいは東証様においてこういったところの啓蒙活動をしっかりとしていただいて、企業において誤解なく活用されるということを期待するところでございます。

2点目なんですが、有報の総会前開示についてです。今、総会前の開示について機運が高まっているように感じております。まさに実務が動きつつある分野でありますし、本日、多くの、特に投資家のメンバーからは、これが日本においてぜひ取り組んでいただきたいという御意見を皆さんからいただいたところです。

他方、企業サイドからは、どうしても法制審の動きを踏まえて慎重に取り組みたいと、実務上のインパクトも大きいというような御意見もございました。実務が大きく変化するとともに、法律と制度が絡まっている分野であって、企業の懸念は大変理解するところです。

他方、有価証券報告書というのは、日本企業にとって最重要の情報開示文書であります。有価証券報告書の正確性、網羅性、信頼性が投資家にとっての信頼の我が国上場会社の信頼の基盤になっていると思います。

さらに言うと、ちょうど今、サステナビリティ等の開示についての法制度の整備も進んでいるところで、有価証券報告書はさらに重要な書類になってくると考えております。この情報を参考にして議決権行使を行うことは、投資家についてのメリットだけではなく、企業にとっても、これだけの参考情報を基に行使してもらえるというのは有益なものであると思います。

したがって、コードにおいては、現状できることだけではなくて、少しストレッチしても先を見据えて方向性を示していただくことも必要と考えます。実際に頑張っておられる会社とか、ちょっと先んじて取り組まれている会社もあろうかと思いますので、そういう会社の背中を押してあげて、そういった会社の取組みが参考例として共有されて広がるということも期待されます。これもコードの役割かと思いました。

続きまして、現預金についてでございます。現預金、特に経営資源の適切な配分というのは、各企業の企業価値を通じて、我が国経済社会全体への発展と機動力としても位置づけられていると思います。したがって、マクロ的な視点からもコードのこの部分は大変重要な位置づけがあるかと思います。

ただ、どうしても現預金、キャッシュを強調してしまうと、趣旨を誤解される場合もあるのではと懸念いたします。キャッシュというのはある意味、最後の結果なんです。重要なのは、どのようにキャッシュのポジションを持っているか、キャッシュを必要としているかというプロセスのところであるかと思いまして、そこでは、資金配分がどのように必要であるのか、さらには、取締役会にそういうことをモニタリングできる仕組み、あるいは判断できる仕組みがあるのか、これを株主やステークホルダーに説明責任を果たしているのかというところかと思います。

何が一番大事かと、まずもってバランスシートのマネジメントがしっかりできているか、それが事業環境あるいは事業に基づいて行われているということが重要です。したがって、キャッシュがあるといっても、ボラティリティーが高い事業においては、当然、ある程度キャッシュのポジションを取っておきたいというのが当然のリスクマネジメントであると存じます。したがって、その辺りについては、まずは、経営の課題であるというところにまで、キャッシュに矮小化するのではなく、もっと大きい視座で見てもいいのかと思います。

ただ、他方、マイナス金利下においてすら銀行からの借入れに対する意識というのが大変強く、負債を圧縮したいと、自己資本比率を厚く持ちたいと、結果としてROEは低くなるわけですが、そういう思いが強い会社もあるようにも感じます。したがって、この辺りは、キャッシュ、現預金という小さい視点ではなく、より広い視座で、ガバナンス・コードはまさに広い経営、そして取締役会、両方入っていますので、御議論いただくとよいのかと思います。

ここはガバナンス・コードを通じて改善を促してきた政策保有株式の結果にもつながるところでございますので、少し広い視点で御議論いただきたいと思います。恐らく問題なのは、十分な議論も説明もないままに無為に持ち続けている過剰な現預金ということだと思っています。

また、ほかの委員の方からもご意見ありましたが、守りのガバナンスについてです。序文に入れていただいて、ありがとうございました。ここも少し御議論があったようですので、踏まえておまとめいただければと思います。

最後、1点だけ。コードの位置づけについてです。コーポレートガバナンス・コードは、日本の企業経営改革の一番の中心的規定だと思っています。ここから派生して、経産省様、東証様、あるいは内閣府様等の政府機関等においていろいろな規範性のある文書が出ていると思います。取締役の義務として当然のことではありますが、それらの関連文書の中心にコーポレートガバナンス・コードが位置付けられ、関連する文書にも配慮するといま一度書いていただくことで、企業を巡る制度を踏まえた取組みがより統合的となり、改善を促せるのではないかと思いますので、御検討いただければと思います。

以上でございます。ありがとうございました。

【翁座長】

ありがとうございました。

それでは、武井メンバー、お願いいたします。

【武井メンバー】

ここをこう直すというコメントはもちろんいろいろ出てくると思いますけれども、その前に、今回の改訂が、いかに全体的な流れの中で大事なことなのかについて、私が読んでいて感じた点を何点か先に申し上げたいと思います。

まず、御存じのとおり、今、一番大事なのは成長投資の促進であって、その成長投資をどう進めていくか。そういう中で、今回、ガバナンス・コードがそれに向けすごく強い、すばらしいメッセージを出している改訂であるということを改めて強調したいと思います。

特に今回、「成長の道筋」という言葉を書いていただいており、私は成長の道筋を価値創造ストーリーと訳していますけれども、それが一丁目一番地として随所に書かれています。例えば、最初のところの1ページ目のところにも、「会社が自社の中長期的な成長の道筋を自ら語ることを前提として」と書かれていますし、4-1でも、「取締役会とマネジメントは会社の目指すところに向けた成長の道筋を構築すること」とはっきり書かれています。あと、4-2のところでも、「自社の経営資源の配分が成長の実現を目指して策定・公表した経営戦略や経営計画に照らして適正なものとなっているか」と書かれています。成長の道筋を踏まえて成長投資をするという、すごく強いメッセージが出ています。これらの点は本当に大事な点です。今まさに日本経済が抱えている課題に真っ向から大事なことをやっているんだということは、今日の資料にも強調されていますが、そういうことを改めてきちんとメッセージとして出すことが大切だと思っています。

加えて言うなら、3-1の開示のところの3-1の(1)で、会社の目指すところの経営理念、経営戦略、経営計画、そこに追加で「成長の道筋」と書かれていても良いかなと思いますが、そこはお任せします。その代わり、今回、成長の道筋をちゃんとやって、それこそが成長投資の礎であり、きちんと成長投資をするために大事なのだということが書かれているのが大事だと思います。以上が1点目です。

2点目が、10年前からの変化をきちんと取り入れている点です。特に10年前は、2015年は監査等委員会設置会社が施行したてほやほやで、ほとんど監査等委員会設置会社がありませんでした。今回は、監査等委員会設置会社が過半数を占めているような現状で、指名委員会等設置会社もありますけれども、そういう中で、まさに取締役会の役割の変化についてもきちんとアップデートされている改訂である。この点もきちんと申し上げたいと思います。

例えば、24ページの辺りで、取締役会と経営陣の役割分担について、きちんと不断に見直してくれということがはっきり書かれています。これも大変重要なメッセージです。あと、4-1のところで、「重要な業務執行事項の決定を行う場合には戦略的方向を踏まえるべき」という箇所が削除されている。業務執行事項を決めるという位置づけを前提としていない。これも10年間の変化だと思います。

あと、4-7。さきほど中神さんもおっしゃっていましたが、助言というものを1から4に落とした。助言をおよそするなというのは言い過ぎだと思うので、助言がメインじゃないんだよと改訂している。こういうメッセージもきちんと送られています。

それと、取締役会事務局の関係での4-13あたりで、取締役会において、主体的に審議の実質化・活性化を図る取組を行うこと。また、実効性のある場となるよう、取締役会傘下の委員会の会議体の果たすべき役割・責務に照らして、きちんと適切な審議事項を定めてくださいと明確に書かれています。それらの流れで、今回、取締役会事務局の重要性も出てきているわけです。

このように取締役会の在り方に関してきちんと考え方を整理した改訂であると。これは10年分の大変重要なアップデートであって、そういった形でまさに成長投資をするための取締役会の在り方に関して、重要事項がちゃんと今回アップデートされたと。これらも大変重要な改訂のポイントだと思います。

あと、4-3の後継者候補とか4-8、4-9のあたりで、「資質」という言葉が書かれています。これは私の表現ですとコア・コンピタンスだと思いますが、スキルマトリックスでのスキルのほうばかりではなくて、ちゃんとどういう資質が大事なのかという資質、コア・コンピタンスも今回書かれています。これも大変重要な点だと思います。

そういう意味で、実質的に本当に今回やるべきことについてのプリンシプルが、きちんと重要なアップデートがなされていると思いますので、私はすばらしい改訂だと思います。

三つ目が、ちょっと細かい点ですが、さきほど4-1の中期経営計画の箇所で少し議論がありましたが、中期計画をつくっている先はまだまだ多いわけですが、つくることは必須ではないということで、例えば、「中期経営計画をつくる場合には」ぐらいの表現かなと思っています。

あと、少し細かい点ですが、4-10の独立性のところで、「所属組織の影響するおそれがない」とあります。苦心の跡が見られるのですけれども、独立性の要素の例示がこれなのかなと思いました。シンプルに、「経営陣から著しい影響を受ける立場・関係にないなど」とか、そういう例示のほうが分かりやすいかと思います。さきほども幾つか利益相反のご指摘がありましたが、経営陣からの著しい影響を受けないとかかなと。独立性の要素はいろいろあるので例示だけでも全部書き切れないですけれども、ここの「所属組織の影響を受けるおそれがない」は、細かい点ですが、少し違和感がありました。

4つ目で、先ほど幾つか、特に投資家の方とかから、1-5から1-7は復活させてほしいとか、あと、独立社外取締役の話がありましたが、私は復活させることには反対です。すでに他の箇所で書かれてあるなど幾つか反対の理由がありますが、一点、ここにいらっしゃる投資家は皆さんとても立派な方で、本当に中長期の成長を目指して、本当にすばらしい方々ばかりなのですけれども、世の中の投資家にはそうではない方もいらして、極めて短期志向で相当強圧的で、果たして中長期的企業価値を求めているのかと疑わしい方もいらっしゃいます。そういった中で、いろいろ感じている現場の認識の違いが今日のいろいろな意見の違いになっているのだと思います。そういった中で、株式還元だけが伸びているのではないか、人的資本とかそこら辺の成長投資の原資を奪っているんじゃないかという懸念も出てきています。日頃の対応とかでもそうですし、あとMBOとかそういうイベントでも、できるだけたくさんのリターンを求めることで、そのリターンが会社の借金として跳ね返って、その先の成長投資の原資を奪っているのではないかという懸念も起きているわけです。そういう御指摘も幾つか出ています。そういった諸状況の中で、バランスがとれている表現なのだと思います。独立社外取締役が投資家と会うという話も、投資家側の形式主義とか短期志向とか、投資家側にもいろいろ問題があるままなのに、そうした投資家側の問題をさて措いて、とにかく独立社外取締役は投資家と会わなきゃいけないという書きぶりでは書き過ぎなのだと思います。投資家側の課題も一緒に直していくということがないとやはりおかしいわけで、そういうことをどんどんコードで書き過ぎると、企業ばかりに負担を、という話につながってくるのだと思います。そういう意味で、あんまりこれ以上書くべきではない。しかも、今の文面案ですら書き過ぎとか細則化とかいろいろなコメントが今日もすでに出ています。全体の中で本当にバランスが取れていて、その上できちんと書かれていますから、いろいろな意見が出ていますけれども、解釈指針を含めてこれ以上書き足すということは、私はやめたほうがいいと思います。

ちなみに1―5から1-7のプリンシプルについても、ちゃんと今の案で、4-3の(3)に1-5、1-7のプリンシプルも書かれています。今の表現で私は十分拾えていると思いますので、1―5から1-7のプリンシプルの復活も要らないと思います。そういう意味で、今の原案で基本的に進める。細かい修文はあるかと思いますが、今の原案が私はバランスが取れていて良いと思います。

以上です。

【翁座長】

ありがとうございました。

メンバーの方は皆様御発言いただきましたので、次にオブザーバーの方から御発言をお願いしたいと思います。日本取締役協会からお願いいたします。

【日本取締役協会】

発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。日本取締役協会を代表して、コーポレートガバナンス委員会の副委員長である太田から意見を申し述べさせていただきます。

最初に、全体感としては大変良いものになっていると思いますので、このような改訂案の取りまとめに尽力されている金融庁の皆様の御努力に敬意を表したいと思っております。その上で、日本取締役協会から、5点、コメントさせていただければと思います。

1点目は、改訂案の原則4-2に関してでございます。持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に繋がる成長投資への経営資源の有効活用を積極的に促す方向での改訂には、基本的に賛成でございます。

もっとも、我が国の上場企業における株主還元が2013年から2024年までの約10年間で3.5倍になっており、短期的利益志向の投資家の影響力が強まっている昨今の資本市場においては、上場企業が安易に短期的利益志向の投資家からの株式還元の要請に応じてしまう事例も目立ってきているのではないかと思っております。そのため、コーポレートガバナンス・コードにおける記載が、そのような短期主義的な株主還元のために経営資源を用いるべきという趣旨のものと誤読されたり、短期的利益志向の投資家に切り取られて利用されたりするような事態は避ける必要があると思っております。

したがいまして、改訂案の原則4-2に関しましては、中長期的かつ持続的な収益性・資本効率を向上させ、「稼ぐ力」をより向上させる観点からは、安易に短期主義的な株主還元に応じるべきではなく、むしろ、事業ポートフォリオの見直しや成長投資などを適切かつ果敢に実行していくべきである旨をもう少し踏み込んだ形で記載することでも良いのではないかと思います。また、その上で、そのような成長投資などを通じて得られた収益を用いて、中長期的な成長による株主利益も考慮した株式還元を実施すべきである旨をもう少し明確化されても良いのではないかと思っております。

2点目は、改訂案の原則4-3の取締役会の役割・責務に関してでございます。中長期的な企業価値の向上の観点から事業ポートフォリオの見直しや成長投資などを適切かつ果敢に実行するためには、それを実行することができる経営陣を指名する機能を取締役会が十分かつ実効的に備えることが必要であり、その観点からは、そのような経営陣の指名を実効的に行うことを可能にするガバナンス体制の整備が非常に重要になると思っております。そのため、東証プライム市場の上場会社においては、法定ないし任意の指名委員会を通じて、経営陣、取締役候補者をきちんと決定していくべきである旨を明記すべきであると思っております。

3点目は、改訂案の原則4-8の独立社外取締役の質の確保に関してでございます。まず、独立社外取締役の数や比率が向上していく中で、ガバナンスの実効性強化のためには、独立社外取締役の数や比率だけでなく、独立社外取締役の「質」を確保することが極めて重要であるため、改訂案の原則4-8で独立社外取締役の「質」の確保について明確に記載していただいていることは大変良いことであると思っております。

コーポレートガバナンス・コードは、コンプライ・オア・エクスプレインという建付けであるため、各原則は基本的に上場会社を主語にしており、例えば、上場会社はその役割・責務を果たすことができる資質を備えた人物を独立社外取締役の候補者として選定すべきであるといった形で記載されていること自体は理解できるのですが、実務での現状を見てみますと、独立社外取締役の中にはその役割・責務を十分に認識しておられないような方も見受けられます。特に「有事」の際に、自己の法的責任やレピュテーションなどを過度に気にして、会社の中長期的な企業価値の向上などについて最優先に行動することができていない独立社外取締役も少なからず見受けられるところです。

したがいまして、むしろ主語を独立社外取締役にする形で、「平時」の際に独立社外取締役が果たすべき役割・責務とは、個別の業務執行の細かな点について助言をすることではなく、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するために経営の「監督」を行うことであり、かつ、「有事」の際には、自己の法的責任やレピュテーションなどを優先することなく、会社の中長期的な企業価値の向上に照らして適切と解される意見を述べ、CEOなどの経営陣に不適切な振舞いがあったような場合には、その解任を決定することこそが最大の使命であるということをもう少し明確に規定すべきであると思っております。

改訂案の原則4-7も上場会社が主語になっているわけですが、例えば、改訂案の原則4-11は独立社外取締役を主語にしていますので、同様に、改訂案の原則4-7も独立社外取締役を主語にすることでも良いのではないかと思っております。

4点目は、取締役会事務局の機能の強化に関してでございます。改訂案ではコーポレートセクレタリーに言及されているわけですが、英国では会社法によりカンパニーセクレタリーの設置が義務付けられており、改訂案の内容は、これを踏まえた書きぶりになっているものと理解しています。ただ、昨今、「同意なき買収」やアクティビスト対応などの場面で、取締役会において高度な法的判断を伴う意思決定をしなければならないことがますます増えてきていると思っておりまして、その観点からは、取締役会の議題の設定や議論の枠組みを法的な観点からしっかりと整理することは非常に大事であると思っております。米国では、このような機能をチーフ・リーガル・オフィサーやジェネラル・カウンセルが果たしており、これらが英国におけるカンパニーセクレタリーのような機能を果たしているということであると思っております。そのため、改訂案では、コーポレートセクレタリーが唐突に出てくるわけですが、法的な観点から助言を行ったり、取締役会を支えたりするチーフ・リーガル・オフィサーやジェネラル・カウンセルも、コーポレートセクレタリーのような形で例示していただくのが良いのではないかと思っております。

最後の5点目は、改訂案の原則1-2の定時株主総会前の有価証券報告書の提出に関してでございます。ICGNの方がおっしゃっていたとおり、機関投資家による実効的な議決権行使を確保するためには、少なくとも定時株主総会の3週間以上前に有価証券報告書が提出されている必要があろうと日本取締役協会としても思っております。

コーポレートガバナンス・コードは、あくまでもコンプライ・オア・エクスプレインの原則の下にあり、経団連よりご指摘いただいたような様々な環境整備も必要であるかと思いますが、それらを踏まえた上で、少なくとも東証プライム市場の上場会社については、定時株主総会の3週間以上前に有価証券報告書を提出すべきであり、それが困難であると考える場合には、理由とともに定時株主総会の開催日を後倒しにできないのかといった点や、どのような理由で現在の定時株主総会の開催日や有価証券報告書の提出時期を選択しているのかといった点を含めて、その理由をエクスプレインすべきであるという旨も明記してはどうかと考えております。これにより、定時株主総会の3週間以上前の有価証券報告書の提出が促されていくようになれば良いのではないかと思っております。

以上でございます。

【翁座長】

どうもありがとうございました。

そのほかオブザーバーの方から。それでは、経済産業省お願いいたします。

【経済産業省】

ありがとうございます。経産省からは手短に6点でございます。

まず、今回のコード改正が、本来の趣旨である会社の成長、また中長期的な企業価値の向上、これを主たる狙いとして改正されることは強く賛成いたします。また、そういう意味で、成長・価値向上という意味での実質化、これを促す目的でのスリム化・プリンシプル化にも賛成でございます。

次に、2点目は、エクスプレインを積極的に選択すべき場合があること、さらには、エクスプレインを株主等も歓迎すべきと強調されたことは、先ほど述べた企業の対応の実質化にもつながる大事な視点だというふうに考えてございます。

3つ目が、改訂の原則4-1、経営資源の配分、キャピタル・アロケーションに関しまして具体的に説明すること、これを新たに記載されたことは重要で、賛成でございます。

経産省の審議会、価値創造経営委員会でも成長投資ガイダンスの策定を進めてございますが、この中では、資本効率の改善、成長投資の拡大などを通じまして企業価値向上に向けた成長、これを経産省としても後押ししてまいりたいというふうに考えてございます。

これに関して、原則4-1にある「成長投資」という言葉でございますが、これまでのコードでは原則であるとか補充原則に位置づけられておりました設備投資、研究開発投資、人的資本投資や知的財産への投資、これを原則での「成長投資」という言葉に集約して抽象化したものというふうに理解してございます。

今回の改訂に介しまして、これらの個別の言葉、投資が原則本体からは削除されてはございますが、重要性まで低下したと誤って企業に認識されないよう、経産省も金融庁とともに正しい理解の周知に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

その上で、具体的な記載ぶりにつきましては、さらに丁寧な検討を要する部分もあると考えてございます。例えば、現預金の保有目的、先ほど中神委員からいろいろな目的があるというふうにございましたが、現預金のみを特出しして記載することは、それだけ、つまり現預金だけが象徴的な項目となって、結局は現預金だけを形式的に対応してしまう懸念を払拭できないというふうに考えてございます。

現預金の保有の理由、例えば、流動性の確保であるとか、将来の成長投資に向けた機動的な資金確保など、リスクや業績に備えて様々な理由で現預金を保有する状況も考えられますので、そういった現預金保有の理由の提示であるとか、それを許容され得る点を併せて示すなど、具体的な書きぶりについては、より丁寧な表現ぶりを慎重に御検討いただければというふうに考えてございます。

4点目が、総会前開示でございます。企業の実態、開示負担もよく聴取した上で、有報と一本化の環境整備も含めた上での検討が必要というふうに考えてございます。

5点目は、適正な取引ということでございます。価格転嫁・適正取引に関しましては、発注側企業が受注側企業との共存・共栄を目指しまして、価格転嫁の推進も含めて適切に協働することが重要というふうに考えてございます。このコードにおきましても、それに関する記載は充実化されるべきというふうに考えてございます。

6点目、最後は知的財産でございます。内閣府の知財ガバナンス検討会、昨年12月に、知財の投資についてはより実効的な規定として充実させるように議論が行われるべき旨の御意見が公表されてございます。この知的財産の重要性が経営者にも十分に認識されるよう、知財という言葉をコードの原則に、設備投資や研究開発、人的資本投資と並びでコードの原則に入れることも含めて検討すべきというふうに考えてございます。

以上、経産省としましては、先ほど申し上げました成長投資ガイダンスを示していく方針でございます。このコードの本来の趣旨である企業の持続的な成長に不可欠な成長投資、これを後押しするメッセージとして発信してまいりたいというふうに考えてございます。ありがとうございます。

【翁座長】

ありがとうございました。

それでは、日本公認会計士協会の方からお願いいたします。

【公認会計士協会】

日本公認会計士協会の小島でございます。本日は、発言の機会をいただき、ありがとうございます。

昨今、大小様々な不正が取り沙汰されています。我々も監査人として、資本市場のゲートキーパーとして役割を果たすべく不断の努力に努めているところでございますが、本日の議論の中心になっています攻めの経営を支えるガバナンスの前提としては、経営者を監督するガバナンス体制、さらには、適正な情報開示のための内部統制システム、こちらも非常に重要だと考えております。その点を踏まえて3点発言をさせていただきます。

1点目です。プリンシプル化・スリム化の方向性には賛同ですが、一方、本日配付資料、資料1の6ページ、③に記載のある実務への浸透が進むなどによりコードに記載する必要性が低下したというので原則等から削除する判断基準には懸念を持ってございます。本来、実務に浸透したか否かで原則に含めるかどうかを判断するのではなく、企業のガバナンスに関する基本的な原則として必要かどうかというところで判断すべきと考えてございます。例えば、新規参入者が入ってきたときにミスリードとならないようなコード、これを目指すべきというふうに考えてございます。

2点目としては、資料1、7ページにおける取締役会の責務に対してのコメントでございます。冒頭にも発言させていただきましたが、攻めの経営を支えるガバナンスの前提としては、守りのガバナンスも重要になってくると思います。取締役に関しては、統一テーマの統合・整理として、原則4-3に含まれていた「取締役会は適時かつ正確な情報開示が行われるように監督を行う」という部分が削除されてございます。

OECDやICGNのガバナンス原則においては、企業報告に対する取締役会の監督についての原則が設けられてございます。企業報告に対する取締役会の監督機能、これはグローバルに見て非常に重要であるという認識がされているところでございます。

一方、現状、日本監査役協会様から情報が開示されてございますが、取締役会への有価証券報告書、これの付議状況については、昨年度、2025年3月期が中心となりますが、38%の会社が決議も、さらに報告もしていないという結果が出てございます。

こうした状況を考慮すると、日本においては、企業報告に対する取締役会の監督は十分果たされている状況とは言えないというふうに考えておりまして、現行の原則4-3にある取締役会は適時かつ正確な情報開示が行われるように監督を行うという部分、これを削除するという状況にはないため、改訂後もぜひここを明記していただきたいということ、これを御検討いただきたいというふうに考えてございます。

3点目でございます。改訂原則の改訂案の1-2、有価証券報告書の開示についてでございます。有報を総会前に十分な検討期間を確保した上で開示することについては賛同していますが、現状、決算日から3か月以内、ここにいろいろなイベントが固まっていまして、決算短信の開示、株主総会に関する資料の作成・送付、それから有価証券報告書の提出、株主総会の開催まで、これを詰め込んで実施する慣行になっているというふうに理解してございます。そのため、実務の集中がかなり生じておりまして、特に作成者、それから監査人の負担になっているということでございます。

この中で懸念しているのは、株主総会の日程、これを変更しないままに、有報の開示時期を早めるということを行うと、さらなる実務の集中が生じることとなり、現実的な対応が困難となります。開示書類の作成期間、それから監査期間、これを確保する観点から、株主総会の開催時期を後ろ出しすることが非常に重要であると考えております。

このため現改訂案の1-2における株主総会開催日や議決権行使に係る基準日をはじめとする日程、これを適切に設定する旨の記載をするということは非常に重要でありますので、しっかりと原則として残していただきたいというふうに考えてございます。

株主総会の後ろ倒しによると、株主総会前に株主との対話、これが充実するということはもちろんですが、会社法と金商法の開示を一体的に行うことが可能となり、企業開示の効率化というところが達成できると考えてございます。

最後になりますが、関係省庁の方には、我が国の法定開示制度が有効かつ効率的になるように、今の二元的な開示、これを一本化する方向でぜひ法律改正のほうも進めていただきたいということと、さらに、取引所の開示も含めまして、全体としての企業開示制度の在り方についても検討を進めていただきたいと考えてございます。

私からは以上でございます。ありがとうございました。

【翁座長】

どうもありがとうございました。

それでは、これまでいただいた御意見に対して、さらに御意見をいただけるメンバーがいらっしゃいましたら、二、三分をめどに御発言をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。それでは、シッソンメンバー、井口メンバー、小林メンバー、古布メンバー、中神メンバー、順番でお願いいたします。

それでは、まず、シッソンメンバー、お願いします。

【シッソンメンバー】

効果的にこれからも企業成長を促し、そしてまた、経済社会的な価値創造を促していくためには、新しいマインドセットというものをこれからも続けていかなければいけない、新しい考え方を続けていかなければいけないと思っています。

上場会社のためのコーポレートガバナンスの目的そのものというのをきちっとまた考え直さなければいけないと思っています。ですので、こうしたことを後退させてはいけませんし、さらには、リスク回避、また、こうした変化に対しての抵抗というのを認めてはならないと思います。

また、このコード自体ですが、ベストプラクティスになるべきだと考えています。少なくとも、最低限の基準であってはならないと思います。それこそがいわゆるコンプライ・オア・エクスプレインの基本だと思います。

また、実際にそうした取締役の株主に対しての善管義務というのも尊重しなければなりません。こうしたことは決して成長を阻害することではありませんし、こうしたことが上場企業の最も重要な部分だと考えております。

もちろん、R&D、テクノロジー、また社員に対しての給与の支払いというのは長期的な成長には不可欠なものです。ですので、そのために投資家、株主というのは、実際にキャッシュ、また、それに同等するような資金の建設的な活用というのを求めています。決してこれは短期的な成長を目標にしているものではなく、長期的な成長、また、企業の価値に資するためのグッドマネジメントだと考えています。

ですので、もちろんほかの委員の方の意見というのは尊重いたしますが、この中でクオリティーを担保することが必要だと考えております。

【翁座長】

ありがとうございました。

それでは、井口メンバー、お願いします。

【井口メンバー】

2度目の機会をいただき、ありがとうございます。

最初、1回目で解釈指針の位置づけについて発言させていただきました。この背景というのは、ジェンさんがおっしゃっているように、コードの緩和の懸念が国内外で広がって、せっかく今まで金融庁さんも含め資本市場関係者が築いてきた信頼が失われるということを懸念したからです。

ただ、神作先生の御発言、あるいは、逆に企業の方が現状でも解釈指針の制約を感じているということが理解できましたので、現状の解釈指針の位置づけでも役割を果たすと今は思っています。ただ、ここにある「原則と一体であり」といった表現は残していただけるようにお願いいたします。

各論でいいますと、株主総会前開示、これはいろいろな御議論が出ましたが、これもジェンさんがおっしゃったように、法制審議会で議論されておるのは事業報告書と有報を一体化するオプションというふうに理解しておりまして、これは必ずしも有報の株主総会前開示の是非を示すものではないと思っております。

その意味では、ソフトローとして、この機会に先進国では常識となっている有報の総会前開示を定めるということは重要ですし、会社法改正以降も重要なソフトローとして残ると思っております。

また、前回のスチュワードシップ・コード改訂で、実質株主の透明性について、法制審議会の議論の前に、ハードローの前にソフトローで定め、機関投資家中心に既に対応したという例もありますので、必ずしも前例がないことではないと思っています。

あと、委員の方から、有報の内容についてのご意見もありましたが、総会前開示のために有報の内容を削ってしまうと、そもそも有報の総会前開示の意味がなくなってしまいます。有報において必要とされるのは投資判断に必要とされる情報ですが、株主総会の判断でも同様の情報が求められると思っていただければと思います。

2つ目、「べき」をやめるべきという御発言もあったんですが、「べき」をやめてしまうと、解釈指針は、単なる解説文書になってしまいまして、これぞコードの緩和ということを国内外に示してしまうことになりますので、これは避けるべきというふうに思っています。上田さんがおっしゃったように、企業は選択できるということを序文に書くということは、すでに、現状でも書いていらっしゃると思いますが、解釈指針を参照した上で、選択できるということをよりわかるように記載されることもひとつかと思います。

3つ目が、マルチステークホルダーのところです。企業経営において投資家以外のステークホルダーの方の存在を無視するということはあり得ないと思っております。ただ、一方、ステークホルダーの方の目標というのは様々です。1ページ目にコーポレートガバナンス・コードの目的が書かれていますが、あくまで中長期的な企業価値向上が目的ということですので、そうすると、投資家以外のステークホルダーの方の目標と大きく違ってくることもあると思います。ですので、中長期的な企業価値向上の目線を持っている投資家に合わすために、まずは、1章で、株主の権利を定めて、2章で、ステークホルダーについて考慮するという、現状の定め方が正しいと思っております。

3点目は現預金についてです。過大な現預金については、先ほど申し上げましたように、一部の投資家だけじゃなくて機関投資家全てが懸念を持っているということなので、文言は残すべきと思います。ただ、全てを株主還元に回した方がいいと言っているわけではなく、まずは将来の成長に向けた投資があって、その後で、中神さんがおっしゃっていたように現預金の比率を設けるというのも1つかもしれませんが、残りの余剰を株主に回すというようなことが必要になってくると思います。現状も「現預金を投資等」と御記載いただいておりますので、基本的にはこのような表現になっているというふうに思っていますが、この表現は残すべきと思っています。

最後、中期経営計画のところで幾つか御意見がありました。確かに中期経営計画をやめている会社さんもあるということは理解しておりますので、必ずこれを出せということではないと思います。ただ、中長期的な投資家にとっては、中長期的な方向性とか考え方を出していただくということは重要ですし、それに基づいてPDCAを回していただくというのは非常に大事で、それを取締役会が監督するというのも大事だと思っています。

したがって、武井先生がまさにおっしゃったように、少し表現を変える必要はあるかもしれませんが、ここは削除するのではなくて、表現を修正した上で、ぜひ残していただきたいと思っております。

以上です。ありがとうございました。

【翁座長】

ありがとうございました。

次は、小林メンバー、お願いします。

【小林メンバー】

ありがとうございます。

現預金あるいは有報の開示について、重ねてになりますが、現預金というのは、先ほど来議論がありますように、いろいろなリスクに備えてというようなこともありますので、この持っている資産というか、経営資産をどういうふうに使うんだというようなこと、それを中長期計画とキャッシュアロケーションというんですか、それをしっかり説明し、それを協創に使うべきだというようなことは、書くのは非常に重要だと思います。現預金だけ取り上げるというのはいかがなものかなと思います。

それから、有報の開示につきましては、前倒しの議論もありましたが、前倒しするにしてもいろいろな課題があると思います。現実的な話として、有報の中でも本当に株主が有用なものであるというようなものはあるはずですので、そういうようなものをピックアップして、できるだけ早期に開示をして対話を深めるというような方向に持っていくというのが現実的ではないかと思います。もちろん、法制審議会の議論も踏まえてということになります。

それから、先ほど言っていない話で2点。1つは、株主の対話。これを今、第5章を第1章に合体という話になっているんですが、対話というのは何も株主だけではなくて、いろいろなステークホルダーとの対話というのがありますし、開示と対話というのは対をなすものだと思いますので、開示と対話を一体的に扱うような章立てにならないかというのが1点でございます。

それから、サステナビリティについて取締役会の責務のところに出てきているのですが、大原則のところで1、2、3と出てきて、それが原則それぞれにブレイクダウンされるような形になっているんですが、いきなりサステナビリティだけ大原則にはなくて原則のほうに出てくるというのは、多少平仄が取れないのかなと思います。

一方で、サステナビリティというのは取締役会だけの話ではなくて、会社そのものがどうやってサステナビリティ、持続性を保っていくのかという話は重要ですので、むしろ前のほうに持っていって、第1章あるいは第2章のほうに入れるというのが適切ではないかと思います。

最後、もう一点だけ。序文を入れていただいたんですけれども、序文の主語が「会社」なんですよね。原則、大原則のところが「上場会社」というふうになっていまして、これは使い分けているのであれば、その理由をお伺いしたいんですが。もしそこら辺が特にということであれば、混乱を招かないためにも統一されたほうがいいのではないかというふうに思います。

以上です。ありがとうございました。

【翁座長】

ありがとうございました。

次、松岡メンバー、お願いします。

【松岡メンバー】

重要なポイントについては先に発言申しましたので、追加の点と、あと最後にコメントだけさせていただきます。

1つは、取締役会の役割・責務についてですが、先ほど一部御指摘がありました、会社によっていろいろな形態があり、その中でモニタリングボード、いわゆる委員会等設置会社というのが1つの推進したい形態であるというふうに理解をしている中で、4章のところで、それにそぐわないいろいろな記述があると。いわゆるマネジメントボードを念頭に置いた書きぶりになっておりまして、例えば、原則4-3の内部通報体制の整備、原則4-3の解釈指針の非業務執行役取締役の活用、原則4-14の取締役などへのトレーニングのように、モニタリングボードの企業に当てはまらないような表現がありますので、ここはもしできましたら、注記でもいいですけれども、そういった形態の企業が増えてくる中で御対応いただく、文言で御対応いただくことを御検討いただきたいと思っております。

最後に、今回のコードのプリンシプル化・スリム化という趣旨、それから、2015年から10年にわたってかなりいろいろなことが進展している現実、投資家にいかに評価されるかということについて、当然、企業のほうも腐心して発展してきている状況というのも踏まえた上での今回のコードの改訂だということを十分に踏まえた検討がなされているという理解でございますので、その趣旨をぜひとも念頭に置いた形で収まることを希望したいと思っております。

以上です。

【翁座長】

ありがとうございます。

最初に、円谷委員からCEOの選解任という言葉についてもし何か御意見があったらというコメントもいただいていますので、もしこれから御発言される方で御意見ございましたら、それも少しいただければと思っております。

次は、中神メンバー、よろしくお願いいたします。

【中神メンバー】

ありがとうございます。

本日の様々な立場の方々からの御意見あるいはコメントを聞いておりまして、まだまだ投資家と経営の間に「距離」があったり、「誤解」があったり、「あつれき」があったりすると思いました。多分、それぞれの主体はそれぞれ一生懸命に、企業に成長してもらって、中長期的に価値をつくってもらって、みんなで豊かになるということを考えているんだと思いますけれども、ただ立場の違いがあって、そこの誤解やあつれき、距離があるなと。

であるがゆえに、原則1-1の文言、「株主と行った会話の内容を踏まえ、必要に応じて社内で情報共有や」と書いてあるんですが、ここは「必要に応じて取締役会及び社内で」というふうに変えることによって、取締役会、これが株主からの受託者責任を第一義的に負っておりますし、誤解、あつれき、距離を乗り越える主体、そして成長志向ガバナンスを議論していく主体としてきちんと位置づけるというのが非常に必要かなと。

また成長にはどうしても株主からの強力な支持が必要です。それはリスクテイクであるがゆえにです。したがって、ここの対話を促すためにも、きちんと取締役会が株主との対話で接続されているというのが大事かと思いました。

あともう一つは、事務局の機能でございます。4-13にある事務局の機能、解釈指針のところ、すごくよく書き込まれていているなと思いました。私の提案は、この部分を原則に、本文に盛り込めないかと。多少の簡潔化は必要だと思いますが、原則本文に書き込んではどうでしょうか。

取締役会の実効性、特に成長志向を十分に議論するためにも、事務局のアジェンダ設定あるいは時間の設定、これは非常に大事ですし、あとは、最近特に増えております有事のときに極めて迅速かつ的確に取締役会が判断を行うためには、平時からきちんと事務局がアジェンダを設定して企業価値なり有事の場合の対応方法について議論をしておくということが不可欠だと思います。

そのため、改めまして、この事務局機能が本文に盛り込まれてもいいのではないかと思いました。

私からは以上でございます。

【翁座長】

ありがとうございました。

それでは、次、古布メンバー、お願いします。

【古布メンバー】

ありがとうございます。現預金の点について1点だけ述べさせていただければと思います。

現預金という漢字3文字が象徴的になってしまっているかもしれません。ただ今回頂いた資料2の3ページのグラフにおいて過去20年を振り返っても、日本企業における現預金の比率が非常に高い水準にある、今後外部環境が変化する中でそれは解決すべき問題である、という点は明らかだと思いますので、やはり明確にコードに記載するべきだと考えております。

そして、現預金の額を減らすということだけが目的というよりも、目指しているのはキャピタルアロケーションの最適化、それに伴う企業価値の向上であると考えております。現預金を過剰に保有することがなぜ好ましくないのか、それは資本効率の向上を阻害し、企業価値にマイナスの影響を与えるからだということを明確に記載し共通認識とするといいのではないかと思います。

以上です。

【翁座長】

ありがとうございます。

次は、上田メンバー、お願いいたします。

【上田メンバー】

ありがとうございます。御意見を踏まえてコメントさせてください。3点あります。

1点目、スリム化の点です。スリム化のイメージが先行してしまって、簡素化して楽になるというようなイメージであってはならず、後退ではないということを強調したいと思います。となりますと、先ほど解釈指針の「べき」との表現は強いのではないかという御議論もありましたが、本当にそこのご懸念は理解するところなのですが、これは単なる表現の問題であろうと思っています。他方では、仮に英語で should を may にすると圧倒的に後退です。こういう点があるので、表現には留意しつつ、「べき」というのは維持しながらも、誤解がないよう、丁寧な説明と啓蒙というところが必要なのかなと思っております。本日はインタープリターが入っておられるので、英語をイメージしながら思ったところでございます。

2つ目、原則の扱いですが、原則というのは、先ほど一番最初に課長からも御説明がありましたが、概念的な内容ということで、普遍的なものであって、今後もあまり頻繁には改訂せずに運用するものと思います。

例えば、知財等の問題というのは大変重要な課題であり執行、経営、取締役会全体で見ていくべきとは思うものの、それは個別の経営上重要な具体的論点であろうと思います。これこそがまさに、解釈指針のところで入れるにふさわしい内容と思います。とはいえ、ぜひ、重要性を鑑みて政府全体で啓蒙活動を努めていただき、理解の広がりに繋げていただければと思います。

最後、円谷先生からの意見書について、座長からご下命がありましたので、簡単に。「選解任」は、確かに大変強い表現であるかと思いますが、すでに定着している表現であって、選解任に対する反応も昔ほどではないと思います。一方で、「早期の交代を促す」という表現は、大変耳に優しい言葉であろうとは思います。ただ、解任については重大な事案として取締役会はかなり慎重に臨みますが、「早期の交代」になると、早い段階でむしろ結果的に解任されやすくなるのではないかなとも若干思ったりしました。表現の問題もあろうかと思いますので、御検討いただければと存じました。

以上です。ありがとうございました。

【翁座長】

どうもありがとうございました。

それでは、長谷川メンバー、お願いいたします。

【長谷川メンバー】

御指名ありがとうございます。様々な御意見を聞いて、投資家や学識経験者の方々と企業経営を担う人間とのギャップというのが明らかに分かったという印象を持っております。

そこで明らかに違うなと思ったのが、有価証券報告書の3週間以上前開示と、現預金の取扱いでございます。繰り返しになりますけれども、有報の早期開示、3週間以上前の開示というのは、十分企業側としても理解をしているつもりですし、簡素化というお話もありましたが、株主さんにしっかりとした情報を早めにお渡ししていくということは会社の務めであるということは十分認識してございます。

ただ、本当に、繰り返しになりますが、それによりかなり大きな負担が企業にかかっているということもぜひ御理解いただきたい。法制も含めて御支援をいただきたいところでございます。

現預金につきましては、現預金ときっちり書かれているため、非常にその言葉が気になります。会社側として、現預金だけではなく、資産をどう効率的に使って成長していくかと恐らく多くが読み替えられて理解されていくと思います。そうした観点では、象徴的な言葉として現預金というものが残るということに関して、私は理解をしたつもりでございます。

最初のコードから10年たってからの改訂ですので、このコードも恐らく最低でも10年は使われていくものであり、10年後の日本の企業がどうあるべきかというのが書かれているはずです。企業側としては、1つの指針としてしっかりとこれを読み込んで行動に移していくということだと思いますので、あまり変に丸めず、あるべき姿を書いていただいたほうが会社としての判断はつきやすい。ただ、あまりにも細かく書き過ぎると、そこに左右されてしまうということがありますので、基本的な考え方をしっかり述べていただければと重ねてお願いいたします。ありがとうございました。

【翁座長】

ありがとうございます。

武井先生、どうぞ。

【武井メンバー】

ありがとうございます。先ほどの点、細かいのですが一点補足で、1-5から1-7のプリンシプルが書かれている箇所について、4-3の(3)を言いましたけれども、4-7にも書かれていますので、それを補足しますというのが1点目です。

あと、やや本質的な話ですが、今回の成長投資の前提で、今の現預金の話もそうですが、成長の道筋、価値創造ストーリーをちゃんとつくるというのが全ての出発点で、そこをもう少し強調する観点から、3-1の(1)に成長の道筋と書いたほうがよいかなと思ったのが2点目です。そこの上の句をちゃんと読んでもらうと。そこから現預金を含めてどうするのかとなっているので、もう少し書いたほうがいいなと思ったというのが2点目です。

選解任については、上田さんもおっしゃいましたけれども、気持ちは分かるのですが、「早期の交代」だと早く辞めろみたいなニュアンスがあって、任期が長い短いについてもいろいろ議論があるところです。どんどんトップが替わるのがいいのかという議論もあるので、「早期」という言葉をつけないといけない直しだったら、選解任のままでよいのかなと。なかなか価値判断が入れにくい言葉なので、「選解任」のままでいいかなと私は思いました。

あと、経産省さんの御指摘の無形資産・知財についてです。無形資産・知財は成長投資の観点からも本当に大事な点でして、しかもさきほどの成長の道筋、価値創造ストーリーの前提には当然競争優位性がなきゃいけないわけで、競争優位性の源泉がこの無形資産、知財なので、ものすごく大事な点です。なので、ここのところの重要性が落ちないようにというのはおっしゃるとおりだと思います。他方で、今回、原則のほうに各論は書かない、例示は解釈指針ということだとしますと、1つ思っていますのが、今回、4-1の解釈指針のところで、これまで、開示と書かれてある箇所はガバナンス報告書で開示してきたと思います。今回のこの知財・無形資産については解釈指針のところで「開示」となっていますから、この部分の開示はガバナンス報告書のほうへの記載を残すという形にすると。それで今までどおりの開示がなされることで、今のような懸念はなくなるのかなと思います。ちなみに、今後も開示と説明の用語はきちんと使い分けるという前提でです。その上で今回、知財・無形資産は「開示」とされていますから、その中でのガバナンス報告書への記載を残すという形で、現実問題として、無形資産・知財が後退したかのような現場でのネガティブな受け止めは避けられるのかなと思います。

以上です。

【翁座長】

どうもありがとうございました。

それでは、大体皆様の御意見は伺えたかなと思っております。皆様からは、中長期的な企業価値向上ということがしっかり序文に明記されて、成長の道筋というところが強調されたコーポレートガバナンス・コードになっている、また、今まで以上にエクスプレインを充実させるという、丁寧なエクスプレインをさらに進めるという方向性や、企業価値向上に向けた取締役会の機能の充実というようなことが書き込まれているという御評価をいただいている一方で、幾つか論点となったところがまだ残っています。

1つは解釈指針の位置づけでございますが、べきであるということの記載についてどう考えるか。コンプライ・オア・エクスプレインの対象ではないにもかかわらず、そのとおりに行動しなければならないような印象を与えかねないというような御意見がある一方で、解釈指針の位置づけは序文に明記されていて、現在のままで適切であるという御意見もございました。

それから、マルチステークホルダーについて、章立てを変えてはどうかという御意見がございましたけれども、これについては、現状の構成のままでよいのではないかというお考えの方がいらっしゃるのかもしれません。この辺も意見が分かれているところかと思います。

特に御意見が多かったのは、有報の総会前開示だと思います。企業側のほうから、株主総会の3週間以上前に提出することが最も望ましいと記載することについて、まずはハードローの整備とか有価証券報告書と事業報告の一本化を含めた制度横断的な検討を優先するべきという御意見がございました。他方、コードはソフトローでありますし、今回の改訂で解釈指針に記載することに、方向性として示すことが大事であるという御意見もございました。

それから、成長投資の促進についての大きな方向については御賛同いただいているのですが、具体的な書き方や、原則に書くのか、また、本来、各企業が置かれた状況で判断すべきだという御意見がある一方、少し書き込んだほうがいいのではないかという御意見もあり検討していく必要があるかなと思いました。

現預金のところ、これが御意見が最も多かったものの一つでございますけれども、現預金を単独で例示すべきではないという御意見もございました。ただ、やはり関心が高まっていて、今回のグラフでも表れていますように大きな課題になっておりますので、ここを解釈指針の中の例示として書くことについては適切であるという御意見もありました。これはバランスシート全体としてこれを見直すことが大事であるというようなことも含めて、より書き方を検討できないか、また、必要な水準の検討ということが最初に来るべきではないかという御意見もあって、これも含めて書きぶりなどを検討できればと思いました。

個人的に私が感じたものは、中計の書きぶりは、武井先生はじめ皆様おっしゃっていましたけれども、世の中、中計一辺倒でもなくなってきています一方で、中長期的な見通しを示すということは大事であり、この辺の書きぶりを少し工夫していただければと思いました。

多様性のところの書きぶりについても何人かの御意見がありましたけれども、私も少し書きぶりを工夫したほうがいいかと思いました。

それから、有事の対応ということで、今、随分そういう世の中になってきていますので、そういったところから、今のこのコードで十分かと。例えば、社外取締役のところや事務局のところなど、こういったところについて何か書けることがないかというご意見にも、個人的には賛同しています。

それから、利益相反とかリスク管理というようなことの重要性ということについてもう少し強調できないかというような御意見もいただいています。特に1-5から7というところは復活しなくてもいいという御意見は多かったと思うんですけれども、一方で、そこで重要になっているのは、少数株主とか一般株主の利益をどう考えるかとか、利益相反の観点かと思うので、こういったところがもう少しほかのところで強調できるといいかもしれないという意見も持っております。

いずれにしましても、今日、本当にいろいろな皆様の御意見を伺いましたので、これをこれからまた事務局のほうで御検討いただくということになると思っております。

それでは、この辺りで最終的なまとめとしたいと思いますけれども、事務局のほうから何かございますでしょうか。

【小長谷企業開示課長】

ありがとうございます。

次回の有識者会議の日程につきましては、後日連絡をさせていただきます。

私からは以上でございます。

【翁座長】

それでは、今日は2時間半にわたり、大変貴重な御意見をたくさんいただきまして、どうもありがとうございました。

以上をもちまして、本日の有識者会議を終了させていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――

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