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「企業のリスクマネジメントの高度化に向けた検討会」(第2回)議事要旨及び資料
議事要旨
1.日時:
令和8年2月10日(火曜)10時30分~13時00分
2.場所:
オンライン
3.議事内容:
(1)事務局説明(資料1)
リスクマネジメント高度化の意義、日本企業・損保会社の現状と課題等(2)三菱重工からの発表(資料2)
三菱重工における事業リスクマネジメントと保険リスクマネジメントの体制、保険付保意義の整理と検証視点等(3)横浜銀行からの発表(資料3)
上場企業を取り巻く環境の変化、非公開化に関する動向等(4)日本保険仲立人協会からの発表(資料4)
リスクマネジメント体制(欧米と日本の違い)、日本のリスクマネジメントと損害保険(保険ブローカーの視点から)等(5)エーオンジャパンからの発表(資料5)
リスクマネジメント体制・損害保険市場・リスクファイナンス手法の活用状況についての日本と欧米との比較等(6)意見交換
(1)から(5)の説明や発表を踏まえ、意見交換を実施した。
意見交換においては、保険キャパシティのひっ迫やアンダーライティング高度化、リスクマネジメント文化、リスクエンジニアリングについての意見が出た。概要は以下のとおり。- (保険キャパシティ不足・アンダーライティングの高度化)
- 損保会社側としては、政策保有株式の売却等により損保会社の資産運用リスク量は削減されており、損保会社が引き受け可能なリスクの総量は増加しているとの認識。また、適切なアンダーライティングにより、適切な条件の下で保険契約を引き受けた結果、一部の企業においてはキャパシティが集まりにくくなっているという認識をもっている。
- 一方で、企業側としては、慶応義塾大学が実施している日本企業のリスクマネジメント実態調査の回答結果にも表れているように、保険のキャパシティ不足は深刻化しているとの認識。また、これまで不要だったアンダーライティング情報を急に求められても、企業はすぐに対応することは困難である。
- 特に企業財産保険分野を中心に、高額リミットの提供が難しくなっている。従前は、損保のフロンティング機能が発揮されていたが、再保険環境や資本効率等の観点から見直しが進んでいると考える。これは、市場環境の変化であり、一概に否定すべきものではない。
- こうした企業側が認識する保険キャパシティ不足については、企業側がリスクマネジメントの高度化を図るとともに、損保側がアンダーライティングの一層の高度化を図ることが期待される。保険会社・企業・仲介業者が協力し、時間をかけて、リスク評価及びリスクに応じた対応のための情報収集、情報提供の体制を支援する必要がある。
- (リスクマネジメント文化・経営関与)
- 多くの日本企業は内部統制やコンプライアンス管理の延長としてリスクマネジメントを発展させてきたため、保険リスクマネジメントのようなリスクの定量化や財務的処理との親和性確保が難しい。両者の連携を強化し、特に保険付保可能(Insurable)な領域のリスク管理は保険リスクマネジメント部門が中心となって進めるべき。
- (金融市場・資本市場や取引先による評価・動機づけ)
- 不動産・鉄道等の日本企業が海外で資金調達を行う際、リスクマネジメントの状況は必ず問われ、融資条件等に反映される。資本・金融市場からの評価は重要であり、日本の金融機関も同様の対応が必要ではないか。
- 欧米では株主構成の変化やアクティビストの行動が保険を活用した高度なリスクマネジメントの発展に寄与しており、日本でも同様に新たな変革をもたらすのではないか。
- 企業が保険を購入する目的は、単なる「ファイナンス」にとどまらず、ビジネスを遂行するうえでの必須の要件になっているという側面がある。特に米国では、賠償責任保険の付保証明書がなければ入札への参加や現地工事の実施等ができないため、賠償責任保険は事実上の“通行手形”となっている。一方、日本では契約上、このような保険加入が契約条件とされるケースが少なく、実務上保険の重要性が十分に認識されにくい環境にある。
- (仲介者・ブローカーの役割)
- 企業側インテリジェンス向上にはブローカーの役割が重要である。
- (共同保険・共同行為)
- 共同保険では、幹事保険会社が引受事務や保険証券の発行など、さまざまな事務負担を一手に引き受けている。そのため、幹事の事務コストの回収には一定の引受シェアを確保する必要があり、これが過度なシェア獲得競争の要因のひとつとなった可能性がある。そこで、共同保険組成の事務コストを、共同保険の参加保険会社が公平に分担する仕組や、シンジケートローンのリードアレンジャーフィーのように、顧客が幹事保険会社へ保険料とは別に役割に応じたフィーを支払うなどの仕組を検討していくことも考えられる。
- (リスクエンジニアリングの課題)
- 保険会社やブローカーが実施するリスクサーベイレポートが、アンダーライティングに有益。他方で、現場では、消防法など規制を遵守しているにもかかわらず追加の指摘を受けることで軋轢が生じている。リスクサーベイは「保険のため」ではなく、「企業全体のリスクマネジメントの向上に役立つもの」と現場に認識してもらうことが重要である。
- 工場等現場とのリスク改善に関する議論では、趣旨背景の説明が重要。人命安全を目的とする消防法と、事業継続視点のリスクマネジメントの違いを丁寧に説明し、過去の事故実績やマーケットからの情報(リスクセンサー)も踏まえて、全社的コンセンサス形成が不可欠。こうした知見や情報を持つ損保業界からの支援も重要である。
- 欧米では保険業界が保安防災の取組をリードしてきた歴史がある。日本においても、損害保険業界には優秀なリスクエンジニアが多数在籍しており、こうした知見を活かしながら国内の防災水準の向上に尽力いただけると有難い。
- 損保業界は、防災・減災という観点からの建築基準の見直しなどを積極的に提言し、社会課題を解決する役割を果たすべき。保険は単に保険金を払うという経済機能だけでなく、災害に備えるという観点で顧客の行動を変えていく、仕組を変えていく力もあると考えている。
- 日本のリスク認識が一般的に甘いとすれば、想定外の最悪シナリオを前提としたリスクマネジメントを行うことの多い海外の姿勢を見習う必要がある。
- (新種リスクへの対応)
- 新種のリスクはデータが乏しく、不確実性が大きいため、保険料率の引上げや免責強化につながっており、リスク移転が難しいが、今後、損害保険会社のアンダーライティングの高度化による新種リスクへの対応を期待したい。
- 海外では新種リスクに対応した保険商品がある中、日本で提供されない状況は日本企業の競争条件を不利にする(イコールフッティングの観点で問題)。新種リスク対応は保険会社だけの課題ではなく、企業側も必要な情報を提供する責任がある。
- 平成25年6月に取りまとめられた「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」において、個社では引き受けられない新たなリスクについて、各社が共同して保険を引き受けることで、保険料算出に必要なデータ収集に係る時間の短縮やリスクの分散が見込まれるという視点で、共同行為の範囲の拡大の論点があった。もう一度このような検討を行っていくことも考えられる。
- (今後の方向性)
- 日本企業のリスクマネジメントは守りになっており攻めの観点がない。企業のみの対応、保険会社のみの対応ではなく、複合的な取組が必要である。その際、必ずしもグローバルプラクティスに完全同調する必要はなく、日本の風土や文化を踏まえた強み(細かさ・品質重視)を生かした保険の活用や企業のリスクマネジメントを考えていくとよい。
- リスクマネジメントの高度化に向けては、「動機(資本市場からの働きかけ)×能力(人材・データ)×体制(基盤)」の3要素が必要である。人材・データは保険業界にも蓄積がある。体制や経営資源については企業においてしっかりと投資をしていく必要がある。
- リスクデータには競争領域と非競争領域が混在しており、どこまでを共同化できるかの切り分けは今後の重要論点。
- 企業のリスクマネジメント高度化に向け、各ステークホルダーにさまざまな前提がある中で、中長期的には何らかルールづくりが必要である。一方で、いきなりルールを策定するのは非現実的のため、いわば「基本原則」、「ガイドライン」のような、リスクマネジメントはどのようなものなのかという観点を世の中に提示していく意義があるのではないか。
- 企業にリスクマネジメントを根付かせるためには、ルールやガイドラインなどに加えて、ある程度企業側で取り組むためのインセンティブ付与も重要である。適格保険契約者に対するインセンティブの検討は有効な方策となり得る。また、キャプティブに関する論点についても、今後の議論に大いに期待したい。
- (保険キャパシティ不足・アンダーライティングの高度化)
以上
資料
- 資料1
事務局説明資料(PDF:1,192KB)
- 資料2
三菱重工資料(PDF:842KB)
- 資料3
横浜銀行資料(PDF:633KB)
- 資料4
日本保険仲立人協会資料(PDF:1,991KB)
- 資料5
エーオンジャパン資料(PDF:6,820KB)
(参考)開催実績


